2019年12月08日
九州看護福祉大学を正常化する会、職員有志が理事・評議員に送った要請書
九州看護福祉大学を正常化する会、裁判での和解について
豊田教授は裁判所に懲戒処分の執行停止を申し立てを行いました
大学内の様ざまな不正の実態および不正疑惑を追及した豊田保教授にたいし、学校法人熊本城北学園は懲戒委員会を設置し、懲戒委員会の答申に基づき、学校法人理事長は、7月9日、豊田教授に6か月間の懲戒処分を下しました。豊田教授は直ちに裁判所に懲戒処分の執行停止を申し立て、その結果、3か月の職務の自粛という和解が成立し、10月10日に豊田教授は大学に戻ることができました。みなさまのご支援に、九州看護福祉大学を正常化する会は、深く感謝申し上げます。……以下略。
2019年11月30日
明治学院大学事件、2019年11月 東京高裁において、和解が成立!
速報【明治学院大学事件】
2019年11月、東京高裁において、和解が成立!
詳細は後日発表。
https://sites.google.com/view/meiji-gakuin-university-jiken
2019年11月29日
京大元職員の解雇は無効 京都地裁、50歳女性勝訴
精神的不調を認識していたにもかかわらず、正当な理由のない欠勤として扱い懲戒解雇にした処分は裁量権を逸脱しており違法として、京都大元職員の女性(50)が大学側に地位確認を求めた訴訟の判決で、京都地裁(藤田昌宏裁判長)は25日、請求を認め解雇は無効と判断した。……
上智大の外国人元助教が訴える「不当解雇」抗議の署名サイトに1500筆
■Withnews
∟●上智大の外国人元助教が訴える「不当解雇」抗議の署名サイトに1500筆(2019年11月23日)
上智大学の元助教が、准教授へ昇進できなかったのを理由に雇用契約を打ち切られたのは、「審査に問題がある」などの不当な措置だとして、大学を運営する学校法人上智学院を相手取り、地位の確認などを求める訴訟を、東京地裁に起こしました。元助教は韓国系アメリカ人です。学生の中には大学側の対応に抗議する留学生もおり、ネット上では1500人以上の署名が集まりました。元助教の雇用契約打ち切りから、外国人研究者の活用、ポスドクなど「高学歴ワーキングプア」の問題について考えます。何が起きたのか
訴えているのは、9月まで上智大国際教養学部の助教だったクッキ・チューさん(48)です。専任教員を求める上智大の公募で採用されたチューさんは、2014年9月から、助教として任用されました。「グローバリゼーションと文化政策」「アジア横断的メディアの流れ」「大衆文化におけるジェンダーと身体」などを専門分野としています。
訴状などによると、チューさんは採用時に雇用契約書とは別の覚書を大学側と交わしていました。覚書では、助教の任期を「5年以内」とし、「この期間に准教授以上に昇任できない場合は、任用を解く」と定められています。大学側はこの覚書に基づき今年7月、助教だったチューさんに雇用契約の満了を通知。任用から5年となる9月に契約は終了となりました。
この間、チューさんは4回、昇任審査を申し立てましたが、昇進は実現しませんでした。弁護側は「資質、業績、勤務態度などが正当に評価されず、適正な審査が行われたとはいえなかった」としています。
特に2017年7月に申し立てた3回目の昇任審査については、11月の国際教養学部人事教授会で「准教授への昇任推薦人事が承認された」にもかかわらず、翌年2月に同じ教授会でその決議が撤回されたと主張。「理由があいまいで、到底納得できない」としています。
また4回目は申し立てをしたものの、審査が開かれず「門前払い」に。「昇任が実現できなければ身分を失うかもしれないチューさんに対して、審査を拒否したという事実には合理的理由を見いだせない」と訴えています。
大学側の主張は
チューさん側は先行して今年8月、チューさんの地位保全を求めた仮処分を東京地裁に申し立てています。この争いの中で大学側は3回目の審査について、「准教授への昇任審査は、教授会後の常務会や理事会での審議を経て決定されるので、大学として准教授の承認をしたことは一度もない」。4回目についても「研究業績が3回目と有意な変更がなかったため、申し立てを否決した」と反論しています。
また、チューさんの雇用について大学側は、覚書などに基づき、任期付きの契約であったと主張。解雇ではなく、任期を満了したものだとしてます。これに対して弁護側は、チューさんが採用された専任教員という立場は「期間の定めのない契約」だとし、「大学側は期間の経過をもって、契約の終了を主張することはできない」と争っています。
今回の件に関して、大学側は取材に対し次のような回答をしました。
「当法人としては、法令、諸規定、個別契約等に則り、本件を適正に対応しております。本件につきましては、現在、法的手続が継続しており、当法人の主張は同手続において明確にしておりますので、個別・具体的な回答は差し控えさせて頂きます」
学生に人気だった「チュー先生」
チューさんが契約を打ち切られた9月20日、上智大学の北門では、大学側の対応に抗議するデモがありました。所属する労働組合「全国一般労組東京南部」のメンバーとともにマイクを握ったチューさんは「5年間で4回も昇進を申請したにもかかわらず、大学は認めなかった。学部から受けたハラスメントのせいだ」などと訴えました。
チューさんの横には「上智大学はハラスメントによる不当解雇を撤回しろ!」「上智大学国際教養学部のハラスメントを隠蔽するな」などの横断幕。夏休み中だったため、留学生が多い国際教養学部では多くの学生が帰省中でしたが、それでも、チューさんの訴えを見守る教え子の姿がありました。
バイトの休み時間を利用し、デモの応援に駆けつけてきたネパール人女子学生は、「チュー先生が一番好きで、尊敬する先生」と話しました。
「好いところと悪いところを、はっきりするタイプ。女性としても、強くていい」
この日は上智大の夏の卒業式の日だったこともあり、チューさんの授業を受けたことがある卒業生たちも訴えに足を止めていました。
台湾出身の留学生は「非常に正直な態度を取り、まっすぐな性格」とチューさんを評しました。ネパール人の学生は、「授業は情熱的でパワフル」「授業内容が面白く、勉強になる」。例えば、初心者にはわかりにくい哲学者の話をするときも、日常から想像できる事例を交えながら説明してくれて、とても勉強になったそうです。
日本人の学生にとっても、チュー先生の授業は人気だったようで、日本人の男子学生は「人気投票すれば、上位3位に入る」と話しました。
「情熱的に教え、学生一人一人をきちんと見つめて、面倒見のよい先生です」
そして、署名サイト「チェンジ・ドット・オルグ」では8月にチュー先生を応援するページ「上智大学での教授に対するハラスメントを止めさせよう!Stop the Harassment at Sophia University」が作られ、現在、1500筆以上の署名が集まっています。
桜美林大学、文科省が禁止する“授業外注化”強行…解雇恐れる講師との団体交渉を拒否
■Business Journal
∟●2019年11月13日 田中圭太郎「現場からの視点」
大学で英語などの授業を「外注化」と称して民間に丸投げすることは、文部科学省が禁止している。にもかかわらず、外注化を試みようとする大学が後を立たない。今年も大規模な外注化を決定した大学が現れた。それは、東京都町田市にある桜美林大学だ。桜美林大学は今年7月、2020年から芸術文化学群の英語の授業をすべて外注化すると、突然学内に通知した。授業は全部で72コマあり、非常勤講師がすべての授業を担当しているが、講師たちの処遇がどうなるのか、11月に入っても何も明らかにされていない。
それどころか、首都圏大学非常勤講師組合と、外国人講師が所属する全国一般東京ゼネラルユニオンの2組合が団体交渉を要求しても、いまだに1度も開催されていないのだ。
10月下旬、桜美林大学の対応は不当労働行為だとして、2つの組合は東京都と神奈川県の労働委員会に救済を申し立てた。非常勤講師の大量解雇に発展する可能性がある、桜美林大学の現状を取材した。
約20人の非常勤講師が解雇の危機か
「英語の授業を外注化することだけがわかっていて、削減される授業のコマ数や、授業を担当している非常勤講師の処遇がどうなるのかなどは、まったく明らかにされていません。大学から説明がないままで、講師たちは大きな不安を抱えています」
桜美林大学で働く非常勤講師が置かれた立場の異常さを訴えたのは、首都圏大学非常勤講師組合と全国一般東京ゼネラルユニオンだ。両組合は10月29日、神奈川県庁で記者会見し、学校法人桜美林学園と桜美林大学の不当労働行為に対する救済申し立てを、東京都と神奈川県の労働委員会に申し立てたことを明らかにした。
問題が発覚したのは今年7月8日。大学は英語を担当する教員向けのニュースレターで、来年度から芸術文化学群の英語の授業を、ベネッセグループ傘下で英会話教室などを運営するベルリッツ・ジャパンに外注化することと、その結果として担当科目に大幅な変更が生じることを通知した。
芸術文化学群の英語の授業は72コマあり、非常勤講師が担当している。担当する授業がなくなれば、講師は解雇される恐れがある。ところが大学は、外注化を通知して以降、削減するコマ数の規模や講師の処遇など、何も説明していないのだ。
非常勤講師組合によると、72コマの授業がすべて外注化された場合、約20人の非常勤講師が解雇される恐れがあるという。非常勤講師の多くは無期雇用化されており、桜美林大学で長く勤務してきた外国人講師も多い。「外注化するからといって、詳細を明らかにしないまま解雇することは許されない」という非常勤講師組合の主張は当然だろう。
団体交渉の拒否は違法行為
問題発覚から10日ほどが経過した7月19日に、非常勤講師組合と東京ゼネラルユニオンは団体交渉を申し入れた。桜美林大学は「9月下旬まで待ってほしい」と回答。理由も示さずに2カ月以上も先延ばしにするのは異例だとして、非常勤講師組合は8月中の開催を求めたが、結局9月24日に初めての団交がセッティングされた。
ところが、この日の団交は、当日になって反故にされた。組合側は当事者も含めて20人程度が参加する予定だったが、場所が決まっていなかったため大学に問い合わせると、数人しか入れない会場を指定してきた。
組合側が大きな会場に変更するように求めると、大学側はいったんは「変えます」と答えたが、やはり小さな会場で開催すると述べ、参加する人数を調整しない場合は延期すると通告。組合側は可能な限り多くの人を会場に入れようとしたが、大学側は「こんな大人数では交渉できない」として退出してしまった。
さらに、外国人講師が加入する東京ゼネラルユニオンと大学側は、10月9日に団交を予定していたが、大学側は交渉は日本語だけで、5人までしか入場できないと一方的に決めた。ユニオン側は1回目は譲歩するけれども、英語でも対応するように団交の席で協議することを提案したが、大学側は拒否。結局折り合わず、団交は開かれていない。
大学が一方的に日本語だけで対応することを決めて、組合が応じなければ団交自体を拒否する行為は、過去に東京学芸大学が行なって、2016年に東京都労働委員会から不当労働行為だと認定されたことがある。ユニオン側は桜美林大学の対応は不当労働行為にあたるとして、10月28日、東京都労働委員会に救済を申し立てた。
そもそも、団交を拒否することは、労働組合法に違反する行為といえる。非常勤講師組合は組合員の多くが神奈川県に居住していることもあり、10月29日に神奈川県労働委員会に救済を申し立てた。これが現在までの状況だ。
外注化は大学教育の民間企業へのバラ売り
非常勤講師組合によると、桜美林大学は以前は組合との団交に誠実に応じてきたという。今回交渉に応じようとしないのは、外注化を強引に進めようとしているからではないかと感じている。
筆者は桜美林大学に取材し、2つの組合が労働委員会に救済を申し立てたことをどのように受け止めているのか聞いた。広報担当者は「団交を拒否しているわけではない」と説明する。
「首都圏大学非常勤講師組合との団体交渉については、慣例の通り、組合のしかるべき代表者と、学園のしかるべき担当者との間で、落ち着いた状態で話し合いたいと考えています。また東京ゼネラルユニオンについては、ルールが定まっていない中では交渉はできませんとお伝えしています。ルールが整えば、団体交渉をさせていただきたいと考えています」
大学側は団交に参加する人数やルールなどを理由にして、団交に応じない姿勢をいまのところ崩していない。しかし、本質的な問題は、団交の開催ではなく、外注化による非常勤講師の雇用への影響を説明していないことと、外注化が果たして適切なのかどうかということではないだろうか。
文部科学省は英語の授業の外注化が認められる例として「英語の授業全体を専任教員が進行しつつ、コミュニケーション部分を外部講師に担当させる」ことを想定している。全面的な外注化は認めていないのだ。この点についても大学側からの説明はない。首都圏大学非常勤講師組合の志田昇委員長は、桜美林大学でこのまま外注化が強行された場合、他の大学でも一気に外注化が進む恐れがあると警鐘を鳴らす。
「外注化は桜美林大学だけの問題ではありません。人件費を抑制するため、日本中のかなりの大学ができることなら英語の授業を外注化したいと考えているはずです。大学の教育が、営利企業にバラ売りされようとしているのです。
これは延期が決まった大学入学共通テストの英語民間試験と同じ構図ともいえます。外部の営利企業に授業や試験を丸投げしようとする大きな流れがあるのは間違いありません。国や大学が責任を持って教育をすべきだということも、改めて訴えていく必要があると考えています」
桜美林大学が団交に応じるのか、団交に関係なく外注化について説明をするのかは現時点では不明だ。来年度の契約について話し合う時期が近づくなか、非常勤講師の大量解雇という事態に発展するのかどうか、注視する必要がある。
(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)
解雇無効訴訟、2教授が和解 淑徳大
■毎日新聞(2019年11月27日)地方版
淑徳大(千葉市)の学部廃止を理由に解雇されたのは不当だとして、教授3人が大学を運営する法人に、解雇無効や雇用継続を求めた訴訟は26日、東京高裁(野山宏裁判長)で、2人と法人との間で和解が成立した。教授側代理人によると、2人が来年3月まで教授として大学に在籍し、未払い給与も支払われることが和解条項…
2019年11月01日
明治学院大学事件、文庫になって登場
【明治学院大学事件】新聞に広告が出ました。
明治学院大学の「発禁本」が文庫になって登場!
盗聴と検閲に抗議する「しのろシリーズ」復活。
[image: 新聞広告.jpg]
紀川しのろ『シノロ教授の大学事件』(世界書院、2019年10月)
(文庫、全219頁、750円+税、ISBN978-4-7927-9581-8)
https://books.rakuten.co.jp/rb/16083040/
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4792795818
2019年10月30日
下関市大問題、臨時監査 大学側の手続きは拙速
下関市立大学が、新たな教員の採用に向けて定款の変更を県に申請したことに、学部長などが反発している問題について、弁護士などによる臨時監査が行われ、「著しく不当な事実は認められなかった」とする一方で、「大学側の手続きが拙速だ」と指摘して、より丁寧な対応を求めました。下関市立大学では、新たな専攻科の設置に向け、教員の採用や定款変更の手続きを進めていますが、大学の学部長などが「定款の変更は透明性や公正さを損なう恐れがある」などと反発し、県に定款変更を認可しないよう求めています。
こうした中、大学の監事の弁護士と税理士が、この問題について臨時監査を行い、30日、報告書をまとめました。
それによりますと、「大学側に不正行為は認められず、法令違反や著しく不当な事実は認められなかった」としています。
その一方で、一連の手続きの進め方について、「拙速で、教授側に強い抵抗感があることは理解できた」などと指摘し、大学側により丁寧な対応を求めています。
これについて、下関市立大学の砂原雅夫事務局長は、「今後も法令などを順守し、引き続き、専攻科の設置に向けて準備を進めていく」とコメントしています。
2019年10月26日
2019年10月23日
2019年10月19日
下関市立大、学部長らが県に請願
下関市にある市立の単科大学で、教員の人事などをめぐり、市議会が大学の定款を変更する議決をしたことは問題だとして、学部長らが、定款の変更を認可する県に対して、留保を求める請願を行いました。下関市立大学の教員の人事などをめぐっては、市が先月、大学の経済学部の教授などが入る審議会を経ずに、新たに設けられる▼諮問機関としての「人事評価委員会」や▼外部の有識者も加わった議決機関としての「理事会」を経るように、大学の定款を変更する議案を議会に提出し、議決されました。
これについて、大学で唯一となる経済学部の飯塚靖学部長は、18日県庁を訪れ、定款を変更するのは問題だとして、変更を認可するかどうかを決める県に対して、留保を求める請願書を担当者に手渡しました。
請願書では、審議会を経ずに教員人事などが行われれば、透明性や公正さを損なう恐れがあるなどと指摘しています。
請願書を県に提出したあと、飯塚学部長は記者会見し、「定款変更の議決は極めて遺憾だ。県にはきちんと内容を吟味して審査してほしい」と述べました。
下関市立大学は経済学部だけの単科大学ですが、前田市長は多様な人材の輩出をめざして、総合大学にすることを公約に掲げていて、障害がある子どもへの教育法を学ぶ、新たな「専攻科」を設置する準備を進めています。
飯塚学部長などは、前田市長などが一方的に、新たな教員の人選も進めているなどと批判し、一連の手続きを問題視していますが、これについて下関市の山田之彦総務課長は、「手続きに問題はなかった。県に適正に審査してもらいたい」とコメントしています。
2019年10月18日
下関市立大学、「戦後の大学が保障されてきた専門家によるピア・レビュー体制を破壊する計画が進行中」石原俊・明治学院大学教授が批判
■論座
∟●「戦後文教行政の「最後の一線」が決壊する」より抜粋
下関市立大学は、経済学部のみの小規模な単科大学ながら、前身の短期大学から数えれば60年以上の歴史をもつ、西南日本の名門公立大学だ。この大学をめぐっていま、戦後の大学が保障されてきた専門家によるピア・レビュー体制を破壊する計画が進行中である。今年5月末、前田晋太郎・下関市長(安倍首相の元秘書)が、下関市大の理事長(元副市長)や学長ら幹部を市長室に呼び出し、インクルーシブ教育(または特別支援教育)の「専攻科」を学内に新設し、市長が推薦した特定の候補者を教員として採用するよう要請した。
市長の意向を受けた下関市大の法人幹部は、教育・研究に関する学内の最高審議機関である教育研究審議会(教研審:国立大学の教育研究評議会に相当)を招集して、3名の教員候補者の採用について承認を取り付けようとした。だが、学内教員・研究者からなる審査委員会による業績審査、教授会への諮問といった、人事に必要な手続きを一切経ていないとして、教員の大多数が猛反発するなか、教研審は流会となってしまった。
ところが大学法人幹部は、経営に関する学内の最高審議機関である経営審議会(経営審:国立大学の経営協議会に相当)を開催して「専攻科」新設方針を決定し、さらにその後まもなく、3名の候補者に対して「内定」を通知したのである。これは、「教育研究に関する規程の制定・改廃」「教員の人事」等について教研審の審議が必要であるとする、下関市大の定款(学則)さえもないがしろにする行為だ(朝日新聞9月19日朝刊 山口版、毎日新聞9月11日朝刊 山口・下関版)。
こうした異常事態を受けて8月に入ると、文部科学省高等教育局大学振興課法規係が大学側に対し、「教員採用手続の適切性に疑義が生じていることは好ましくない」としてメールで「助言」をおこなった。担当官は、「教授会に対する意見聴取を経ずに採用を内定とすること」が、「学内規程に則らない手続となっているおそれがある」としたうえで、「全学教授会、学部教授会の位置づけや権能を明確にするよう学則を見直した上で、学内規程に沿った適切な手続を採ることが必要になる」と述べた(『山口民報』9月15日)。文科省から下関市大への事実上の指導であった。
ところが8月末、下関市当局は大学側に一切の相談もなく、もちろん学内の教研審や経営審の審議を経ることもなく、大学の定款変更の議案を市議会に提出した。この議案は、教研審の審議事項から「教育研究に関する規程の制定・改廃」「教員の人事」等を除外し、非研究者を多数含む新設の理事会がこれらの権限を吸収するというものだった。当然にも市議会野党議員から批判が相次いだが、9月26日(「あいトリ」への補助金不交付決定と同じ日だ!)、与党会派(安倍首相に近い会派)などの賛成多数によって、議案は原案通り可決されてしまったのである――加えて本件では、市議会与党会派議員の一部と大学経営審委員の一部に、それぞれ重大な利益相反の疑惑があるのだが、本稿ではあえて横に置く――。
戦後日本の大学は、憲法23条の原則のもと、教育内容・研究内容やカリキュラム、研究者・教員の人事に関しては、学内に従来から所属する専門家の審査や審議を経て決められるという、ピア・レビューに支えられた自治制度を維持してきた。ましてや戦後日本の大学制度は、行政(政府・自治体)の長や議会が教育研究内容や教員・研究者の人事を左右することなど認めていない――新設部局・コースのおおまかな方向性を行政権力が大学側に要請することなら認められているが――。日本の大学のガバナンスにおいて、想定されていないこと、あってはならないことが、いま下関市の行政権力によって進められているのだ。
文科省側は下関市大側に対して、専門家による最低限のピア・レビュー(人事評価委員会による業績審査、教授会への諮問、教研審での審議)を経ることを含め、学則にしたがった手続きをやり直すよう「助言」した。これに対して、下関市当局は、後出しジャンケンで自らの「違法」行為を追認する定款(学則)改正をおこなったことになる。言葉は悪いが、文科省の指導は、下関市の行政権力によってコケにされたというわけだ。文科省は25万都市の首長と市議会与党から、完全に「足元をみられている」。
2019年10月11日
明治学院大学事件、大学が盗聴を謝罪し和解案を提出
2019年10月10日
札幌大・雇い止め特任准教授の上告と鈴木学長辞任を巡る点と線
■リアルエコノミー
∟●札幌大・雇い止め特任准教授の上告と鈴木学長辞任を巡る点と線
札幌大学(札幌市豊平区)のロシア語担当の元特任准教授の女性(45)が、違法に雇い止めされたとして札幌大を相手に地位確認などを求めていた訴訟でその女性は8日、札幌高裁が控訴を棄却した判決(9月24日)を不服として上告した。それと同時進行するように札大の鈴木淳一学長(68)が任期途中で辞任する。何らかの関係があるのだろうか。(写真は、札幌大学中央棟)女性は、札大ロシア語学科を卒業し東京外国語大学修士課程を卒業。札大は2008~9年当時、度重なるロシア語特任教員の突然の退職で困り、長期にわたり働いてもらうことを目的に卒業生から優秀な人材を採用する方針でその女性を採用。その後、女性は6回の契約更新をして特任准教授としては初めて教職課程も担当。また、教授会や各種業務などにも特任教員の校務を超えて出席を課せられていた。このため労働契約更新の期待する合理的理由があったと主張。
9月24日の控訴審判決で冨田一彦裁判長は、「労働契約更新を期待する合理的理由がなく控訴人(元特任准教授)の主張は採用できない」と棄却、札幌地裁判決を支持した。
高裁の審理から女性側は元副学長から受けたセクハラ・ストーカー被害を大学に相談したことが雇い止めに影響したとの主張を加えた。この点について冨田裁判長は、「労働契約が更新されると期待を抱いたかどうかは無関係」と退けたものの、セクハラ・ストーカー被害の事実は認定している。
女性は上告について、こうコメントしている。「改正労働契約法を悪用した違法な雇い止めが全国的に横行しており、非正規労働者は精神的にも経済的にも極限状態に置かれています。人間が部品のように使い捨てにされる社会に未来はありません。この悪循環を断ち切るために、最高裁判所には、改正労働契約法19条に関する規範・指針となる判断を示していただきたい」
なお、控訴審判決が出る数日前に札大鈴木淳一学長は法人側に辞任届を提出、任期途中の11月15日付で辞任することになった。鈴木学長はその女性の札大学生時代のロシア語担当教授で、女性が特任教員に採用された後も鈴木氏の授業を代講するなど師弟関係だった。鈴木氏は、女性が元副学長から受けたセクハラ・ストーカー被害とも関係しており、女性の雇い止めにも関わったとされる。
鈴木学長の任期は21年3月末までだったが、突然の辞任届提出は札大教員の間でも波紋が広がっている。女性の控訴審判決と上告、それと同時進行している鈴木学長辞任は点と線で関連しているのか。
2019年10月09日
札大雇い止め訴訟、元准教授が上告
札幌大に違法に雇い止めされたとして、元特任准教授の女性(45)が同大を相手取り、解雇の無効などを求めた訴訟で、女性側は8日、雇用打ち切りを適法とした9月24日の札幌高裁判決を不服とし、上告した。札幌高裁判決は「大学側は雇用継続を約束できない旨、3年前に女性に伝えていた」と認定。大学側は契約打ち切りを断言しておらず、更新を期待する合理的理由があったなどとする女性側の主張を退けていた。
女性は取材に対し「非正規労働者が使い捨てにされる現状を変えたい」と述べた。同大は「上告状を確認しておらず、コメントは控えたい」とした。
労働契約法は、有期労働者が契約更新を期待することに合理的理由がある場合、使用者は更新を拒めないと定める。
2019年10月06日
2019年10月04日
「明治学院大学事件」が小説になった!「日本の大学の病弊を象徴する大事件」が文庫で登場!
「明治学院大学事件」が小説になりました。
「日本の大学の病弊を象徴する大事件」が文庫で登場!■紀川しのろ『シノロ教授の大学事件』(世界書院、2019年10月)
(文庫、全219頁、750円+税、ISBN978-4-7927-9581-8)
https://books.rakuten.co.jp/rb/16083040/
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4792795818■概要
大事件勃発! 平成の世の大学案内をつとめてきたシノロ教授が、なんと「令和学院大学」で解雇処分に?
授業の盗聴事件が発覚し、シノロ教授の講義を受けたい学生が猛反発。令和の世の学問の独立と大学自治をゆるがす大事件。はたしてその背景にある陰謀とは。これは学問と大学をめぐるミステリーだ。■内容
本書は、「明治学院大学事件」の小説化で、ミッションスクールの「令和学院大学」を舞台に大学教授の受難を描いたフィクションです。若者の半数以上が大学に進学し大学の数が多すぎて余っている現代、教授の人員削減のために策を弄する大学側の思惑と、それを阻止するための作戦を展開する学生たちの行動がユーモア溢れる筆致で描かれています。学生たちに絶大な人気のあるラクタン倫理学の「シノロ教授」を主人公に、「シノロ教授の登場」「シノロ教授の災難」「シノロ教授の逆襲」「シノロ教授の教訓」という起承転結でアカデミックな世界で巻き起こった事件を形而上学的弁証法等も交えて描いたキャンパス小説であり、今時の大学や大学生たちの生態を揶揄しているような諧謔味が最大の特色ともなっています。■目次
1 シノロ教授の登場
シノロ教授の倫理学――カントかヘーゲルか
大学生が求める倫理――プラトンのアカデメイア
人気科目ランキング――ボランティア学とは
多人数授業は抽選科目――イギリスの古典派経済学
少人数授業は不人気科目――孔子と孟子
人数制限はクレームの嵐――ギリシア語のスコレー
抽選登録のひみつ――アリストテレスの形而上学
履修登録の秘訣と裏技――儒教の王道
シノロ教授の授業ガイダンス――マルクスの下部構造
倫理とは何ぞや――広くて浅い教養
2 シノロ教授の災難
大学当局のマル秘作戦――ヘーゲルの弁証法
シノロ教授を狙え――孫子の兵法
秘密録音される授業――法律か倫理か
仕掛けられた罠――人の道とは
左手に聖書、右手に日の丸――相対主義的寛容論
教養部主任の尋問――リベラルアーツ対パターナリズム
自白を迫る誘導尋問――世界史の変革
学びたい科目を学びたい――アイデンティティーの哲学
雇われの身――リベラリズムとリバタリアニズム
欠席裁判のゆくえ――信じるものは救われるか?
3 シノロ教授の逆襲
イケメン弁護士・草薙五郎の登場――該当性と相当性
学長への挑戦状――やむを得ず、法的措置を講じます
哲人三銃士の共闘――デカルトとデリダ
哲学者の生き方――人間ぎらいの倫理
学生の意向はいかに――授業評価のアンケート
相手を説得する――倫理的に正しい行為か自爆テロか
弁護士・草薙五郎の再登場――1億円の慰謝料請求
教授会、多数派で強行採決か――公正中立とは
ガチで総選挙――キルケゴールの実存主義的選択
シノローズ結成――言論の自由を守れ!
4 シノロ教授の教訓
研究・教育・社会活動・校務――大学教授の仕事
令和学院大学のドン・キホーテ――倫理を問いただす
独立自尊か間柄の倫理か――福沢諭吉と和辻哲郎
シノローズ登場――神さまの声か学生の声か
作戦名は〈シノロ准教授の恋〉――プラトンからマルクスへ
機動隊の突入――ルターの宗教改革
クビを切るか反省文を書くか――虚勢を張るか去勢されるか
「無」の存在証明――西洋の形而上学
懲戒処分取消等請求事件――証拠裁判主義
実利よりも倫理――ライプニッツの充足理由律
2019年09月29日
特許不正契約で解雇の前副学長、京都工芸繊維大を提訴
■産経
∟●特許不正契約で解雇の前副学長 京都工芸繊維大を提訴(2019.9.27)
大学と共有する特許使用の権利で不正行為をしたとして、京都工芸繊維大(京都市左京区)を懲戒解雇された同大の森肇前副学長(60)が27日、解雇処分は無効として大学側に地位確認と慰謝料など約1100万円を求める訴訟を京都地裁に起こした。大学は平成27年1月、森氏が設立した企業と英国企業との間で特許契約を不正に締結し、大学が単独出願するはずだった別の特許で大学を外して出願したなどとして、森氏を懲戒解雇処分。一方、森氏は訴状で、大学との共同特許は実際は森氏の企業の単独特許で、大学を外した特許の出願については大学側が手続きを故意に怠ったと主張。懲戒権の乱用だと訴えている。
森氏の代理人弁護士は「過去の問題を不当に蒸し返しており、次期学長と目される森氏に対する大学側の『粛清』だ」と指摘。大学は「訴状を見ておらずコメントできない」としている。
2019年09月27日
明海大学の組合役員に対する不当解雇事件、東京高裁における勝利和解にあたっての声明
■東京私大教連
∟●明海大学の組合役員に対する不当解雇事件、東京高裁における勝利和解にあたっての声明
<明海大学の組合役員に対する不当解雇事件>
東京高裁における勝利和解にあたっての声明1.東京高等裁判所(以下、「東京高裁」)において、明海大学教職員組合(以下、「組合」)の執行委員である教授を学校法人明海大学(以下、「法人」)が懲戒解雇したことについて、東京高裁より、法人による懲戒解雇は無効であるとの判断が示され、法人が懲戒解雇を撤回し退職金および違法解雇の慰謝料を支払うとともに、懲戒解雇撤回を学内で公示するなどの名誉回復措置を取ることを前提として、法人が返還を求めている通勤手当の一部を当人が支払うという和解提案がありました。この内容で、2019 年 9 月 24 日に和解が成立しました。
2.本件懲戒解雇は、以下に述べるとおりきわめて不当なものでした。
①この懲戒解雇は、組合が 2017 年 1 月 13 日に、東京都労働委員会へ不当労働行為(団交拒否・支配介入)の救済を申し立てたこと(2019 年 8 月 21 日に全面勝利命令、理事会が中央労働委員会に再審査申立)への報復として、また「見せしめ」として強行された組合攻撃です。同教授は、組合結成時から書記長をはじめとする組合役員を務めてきました。そうした同教授に対して、明海大学理事会(宮田淳理事長)は、組合が不当労働行為救済申立を行った直後に通勤手当についての追及を開始し、前例を無視した勝手なルールをでっち上げて、過去 10 年にわたり通勤手当を不正受給していたとして懲戒解雇を強行しました。
②同教授は、2017 年 3 月末日で定年退職の予定でしたが、法人は、そのわずか2週間前に懲戒解雇を強行し、勤続 29 年の退職金を不支給としました。これにより、同教授の就学中の2人の子どもの養育をはじめとする人生設計は破壊され、また大学教員・研究者としての名誉が著しく傷つけられることにより、退職後の教育・研究活動の継続に重大な支障が生じています。そればかりか法人は、懲戒解雇撤回を求める同教授の提訴に対し、通勤手当の「返還」を要求する反訴を起こし、同教授の生活をさらに困窮させようとしました。
③このような不当解雇について、東京地方裁判所立川支部(以下、「一審」)は 2019 年 3 月 27日、懲戒解雇を無効とし、法人に対して、退職金および違法解雇の慰謝料の支払いを命ずる勝利判決を言い渡しました。3.東京高裁で提示された前述の和解提案は、法人の控訴を退けて一審と同じく懲戒解雇処分を違法とし、一審判決にはその性質上含まれない名誉回復措置が盛り込まれたものであることから、裁判官の強い和解の勧めがある中で、同教授の名誉回復を第一に重視するとともに、今後の労使関係の改善を前進させるために、組合はこの高裁の和解提案を受けることにしたものです。このたびの和解は、本件懲戒解雇が、大学教職員の権利を侵害した違法な解雇であることを法人が公的な場において認めたものです。私たちは法人に対し、教職員に対する権利侵害を繰り返すことなく、組合に対する不当労働行為をやめ、教職員および教職員組合の権利を尊重し、正常な労使関係を確立することを強く求めるものです。
2019年9月24日東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)
明海大学教職員組合
支援する会
京都工芸繊維大、いきなり懲戒解雇は「粛清だ」 元副学長が大学を提訴へ
朝日新聞
∟●いきなり懲戒解雇は「粛清だ」 元副学長が大学を提訴へ(2019年9月20日)
大学と権利を共有している特許契約で不正をしたとして、京都工芸繊維大(京都市左京区)に懲戒解雇された元副学長が近く、大学側に解雇処分の取り消しを求める訴えを京都地裁に起こす。元副学長が取材に明らかにした。元副学長が設立したベンチャーは、薬のカプセルに応用できるたんぱく質を作る方法の特許を大学と共有していた。大学は12日、元副学長が2015年に英国企業と特許の使用契約を無断で結び、17年には関連特許の申請時に大学を出願人から勝手に外したとして、同日付で懲戒解雇したと発表。その際、元副学長が一連の行為が発覚しないよう大学事務局職員に働きかけていたとも説明した。
元副学長は取材に「使用契約は大学の了解を得て進めていた。関連特許の申請も、大学が決裁を滞らせたため、やむなく出願人から外し、後から追加する予定だった」と主張。事務局への隠蔽(いんぺい)協力の働きかけも否定し、「弁解の機会も不十分のまま、いきなり懲戒解雇するやり方は『粛清』だ」と訴えている。
大学の担当理事は取材に「訴状が届いていない段階でのコメントは差し控える」と話した。
札大の雇い止め訴訟 元准教授の控訴棄却 札幌高裁
■北海道新聞
∟●札大の雇い止め訴訟 元准教授の控訴棄却 札幌高裁(2021/09/24)
札幌大に違法に雇い止めされたとして、元特任准教授の女性(45)が同大を相手取り、解雇の無効などを求めた訴訟の控訴審判決が24日、札幌高裁であった。冨田一彦裁判長は、雇用の打ち切りは大学側の採用の自由の範囲内とした一審札幌地裁判決を支持し、女性側の控訴を棄却した。判決によると、女性は2010年度にロシア語担当の特任教員となり、1年ごとに契約を更新。大学側は15年度の契約更新時に「17年度以降の雇用を保障しない」との条項を契約書に加え、17年2月に同3月末で契約を打ち切ると通知した。
判決理由で冨田裁判長は「大学側は、14年3月の雇用に関する説明会で、数年後の雇用の継続は約束できないと女性に伝えていた」と指摘。大学側は契約打ち切りを断言しておらず、契約更新を期待する合理的理由があったなどとする女性側の主張を退けた。
判決後の記者会見で女性は「労働者の権利保護に逆行する残念な判決」と述べた。札幌大は「これまで主張してきたことが認められたものと受け止める」とコメントした。
労働契約法は、有期労働者が契約更新を期待することに合理的理由がある場合、使用者は更新を拒めないと定める。
元教授3人の解雇は「無効」 淑徳大に賃金支払い命令
■朝日新聞
∟●元教授3人の解雇は「無効」 淑徳大に賃金支払い命令(2019年5月23日)
学部の廃止にともなう解雇は不当だとして、淑徳大(千葉)の元教授3人が地位確認などを求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。春名茂裁判長は3人の主張を認めて解雇は無効だとし、大学側に未払いの賃金や手当など計5382万6094円を支払うよう命じた。判決によると、淑徳大は2017年3月に国際コミュニケーション学部を廃止した際、希望退職募集に応じなかった3人を解雇した。3人は翌月に雇用継続などを求め、提訴した。
春名裁判長は、大学の経営状態から人員削減の必要性は高くなく、同じ時期に新設した学部に異動させることも可能だったと認定。新設学部の教員を決めてから3人を解雇した経緯などから「原告らを大学から排除しようとした疑いが払拭(ふっしょく)できない」と指摘し、「解雇権を乱用したものであり、無効」とした。
原告の一人であるジグラー・ポール氏は判決後の記者会見で「職場復帰し、教育や研究に積極的に献身していきたい」と話した。大学を運営する大乗淑徳学園は「承服できない理由がある結果のため、控訴を検討している」としている。
淑徳大は、この3人が労働組合を結成して団体交渉を求めたのを拒否し、中央労働委員会から17年10月に不当労働行為を認定された。さらに中労委の認定取り消しを東京地裁に訴えたが今年2月に敗訴し、現在控訴している。
2019年09月26日
札大雇い止め訴訟、セクハラ被害を判断しない高裁判決
■リアルエコノミー
∟●札大雇い止め訴訟、セクハラ被害を判断しない高裁判決(2019/09/25)
札幌大学(札幌市豊平区)のロシア語担当の元特任教員の女性(45)が、違法に雇い止めされたとして札幌大を相手に地位確認などを求めていた札幌高裁の控訴審判決が24日あった。冨田一彦裁判長は「労働契約更新を期待する合理的理由がなく控訴人(元特任教員)の主張は採用できない」として控訴を棄却、一審の札幌地裁判決を支持した。また、女性が元副学長から受けたセクハラ・ストーカー被害を大学に相談したことが雇い止めに影響したとの主張は「無関係」と退けた。(写真は、札幌高裁の入っている札幌市中央区の裁判所)女性は、札大ロシア語学科を卒業し東京外国語大学修士課程を卒業。札大は2010年当時、卒業生から優秀な人材を採用して末永く働いてもらう目的を掲げて女性を採用した。その後、女性は特任教員として教職課程も担当、「特任教員が教職課程の担当になったことは過去になかったため、17年度以降も雇用継続への期待を持つ理由があった」と主張したほか、教授会への参加など特任教員の業務範囲を超えて各種会議への参加を課せられていたことも労働契約更新を期待させたなどと主張。
大学は14年3月の契約更新時に「16年度末までの雇用の継続は確実だが、労働契約が1年ごとに更新される以上、2年後、3年後の雇用の継続を約束することはできない」と回答したことや教授会への参加はオブザーバーとしてのものであり、会議等への出席も義務付けられていなかったと主張。
冨田裁判長は、女性の主張に「雇用契約更新に係る期待の合理性との関連性は認められないため控訴人の請求は理由がない」と一審判決を支持した。
女性は10年12月から15年7月までの4年半にわたって元副学長からセクハラを受け、学内の苦情相談員に被害を申し立て、大学側は副学長の研究室を移動させた。このセクハラ被害については大学側も記録を残している。女性はセクハラ・ストーカー被害を大学に申し立てたことに対する報復措置として雇い止めを強行したとも主張したが、冨田裁判長は「無関係」と断じ、このことが雇い止めと関係するかの判断はしなかった。
2019年09月25日
「学問の自由」シリーズの第2弾が発行、寄川条路編『大学の危機と学問の自由』法律文化社
ブックレット「学問の自由」シリーズの第2弾が発行されました。■寄川条路編『大学の危機と学問の自由』法律文化社、2019年。
(A5判、全66頁、1000円+税、ISBN978-4-589-04026-8)
https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-04026-8
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4589040263/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i2■概要
「学問の府」であるはずの大学が、いまサバイバル時代を迎え危機に瀕している。その危機のほころびとして大学権力が教員を排除するリアルな実態とその深刻さを問うとともに、本来の大学の公的役割や倫理の構築を提言する。日本の大学が直面する危機を知り、それを乗り切ることで「大学における学問・教育・表現の自由」を守ろうとする闘いの書がついに誕生。■内容
ハラスメントをねつ造され解雇された宮崎大学事件、授業の無断録音の告発によって解雇された明治学院大学事件、傷害をもつ教員が教壇から排除された岡山短期事件など、いま大学において、本来あってはならない事件が横行している。その深刻さを問うとともに、倫理学・哲学からあるべき大学像や大学倫理の構築を提言する。■目次
序 章 大学教授とは何か?(小川仁志)
第1章 明治学院大学「授業盗聴」事件とその後(寄川条路)
第2章 大学人の理性の「公的使用」(福吉勝男)
第3章 国立大学法人化による教授会運営の変化(野中善政)
第4章 岡山短期大学「障害者差別」事件(山口雪子)
終 章 人間学的「学問の自由」を求めて(石塚正英)
龍谷大学事件、「大学自治のあり方」訴訟-それは学生たちの訴えから始まった
以下に,龍谷大学事件に係わり,『Agendaアジェンダ;未来への課題』第66号(2019年秋号)<発行;アジェンダ・プロジェクト>に掲載された寄稿文を掲載います。
下関市立大学を私物化するな 市長による教員の縁故採用は許されるのか モリカケに通じる問題の性質
■長周新聞
∟●下関市立大学を私物化するな 市長による教員の縁故採用は許されるのか モリカケに通じる問題の性質(2019年9月21日)
下関市議会9月定例会で本紙記者でもある本池涼子市議は18日、一般質問に立ち、下関市立大学に新しい専攻科を設置する動きが9割の教員の反対を押し切って強引に進められている問題について追及した。その質問と答弁の要旨を紹介する。本池 下関市立大学への専攻科の設置について質問する。9月11日付の毎日新聞で報道され、既にご存じの方も多いかと思うが、「日本の大学のシステムとして想定されていないこと」がこの下関の街で、下関市長や元副市長たちがかかわった下関市立大学で起こっているという事実に衝撃を受けている。
その記事の見出しには「教研審経ずに計画進行」「理事長(元副市長の山村氏) 市長の要望受け担当教員採用」「教員9割が撤回求める」とあり、「ガバナンス上大いに問題」として、大学のガバナンス(統治)に詳しい明治学院大の石原教授の話として、「学内にこれまでなかった組織をつくるときには、従来いる専門家(教員)の意見を聞きながら進めるのが当然だ。そもそも、事前に教育研究審議会で承認を得ない限り、教育研究の中身に関わる人事やカリキュラムを決めることはできない。日本の大学のシステムとして想定されていないことを市長と理事長が決めているということは、大学のガバナンス上、大いに問題がある」との意見が紹介されていた。
何度も申し上げるが、「日本の大学のシステムとして想定されていないこと」が下関市立大学では起こっているというのだ。……(以下,省略,あとは当該新聞記事で)
2019年09月21日
2019年09月13日
下関市立大専攻科新設計画問題、「ガバナンス上大いに問題」
■毎日新聞
∟●下関市立大、揺れる専攻科新設計画 理事長、市長の要望受け担当教員採用(2019年9月11日)
同記事には,この問題に詳しい研究者による以下のようなコメントが付いていた。それを掲載する。
ガバナンス上 大いに問題大学のガバナンス(統治)に詳しい石原俊・明治学院大教授(社会学)の話 学内にこれまで無かった組織を作る時には、従来いる専門家(教員)の意見を聴きながら進めるのが当然だ。そもそも、事前に教育研究審議会で承認を得ない限り、教育研究の中身に関わる人事やカリキュラムを決めることはできない。日本の大学のシステムとして想定されていないことを市長と理事長が決めているということは、大学のガバナンス上、大いに問題がある。計画がこのまま進めば、学長や理事長に教員が協力せず、大学が機能しなくなるおそれがある。
2019年09月11日
下関市立大、揺れる専攻科新設計画 理事長、市長の要望受け担当教員採用
■毎日新聞
∟●下関市立大、揺れる専攻科新設計画 理事長、市長の要望受け担当教員採用(2019年9月11日)
山口県下関市の市立大学(川波洋一学長)が、特別支援教育の専攻科を新設する計画を巡って揺れている。計画は、同大設置者である市の前田晋太郎市長の要望を受け、山村重彰理事長ら大学経営側が教授らの審議を経ずに約1カ月で方針を決め、担当教員の採用を内定した。専門家は、学内に新しい組織を作る際は、既にいる教授らの意見を聴きながら進めるべきだと指摘している。【佐藤緑平】教研審経ずに計画進行
前田市長は6月4日、山村理事長宛ての文書で、大卒者らを対象とするインクルーシブ教育(障害児と健常児が共に学ぶ教育法)の専攻科設置などに取り組むよう要請した。
同大の定款は教員人事や、教育課程の編成に関する事項は、教育研究審議会(教研審)で教授らの意見を聴くよう定めている。関係者によると大学側は今回、教研審を開いていない段階で教員に対し、専攻科の組織概要を説明し、担当教授として「採用を想定している」とし、特定の研究者の名を挙げたという。同20日の教授会では山村理事長が「市長の意を介して、私も意志を持って(計画を)実行している」などと話したとされる。
大学側は同25、26両日、専攻科設置などの議題で教研審開催を呼び掛けたが、反対する教授らの欠席で流会。欠席した1人は「市長が意向を示し、理事長が実行するのは学則に違反する。そのことについて議論はできなかった」と話す。
大学側は欠席を事実上の権利放棄と判断し、同26日の経営審議会で、2021年度に専攻科を開設するなどの方針を決めた。同28日には担当の教授、准教授、講師として、名前を挙げていた研究者ら3人に採用内定を通知。関係者によると、内定した教授は事前に前田市長が大学側に推薦していた研究者で、5月30日に市長応接室で山村理事長らに対し「(研究者と)ぜひ会ってほしい。下関の何か役に立ってくれる方になりそうだ」などと話していたという。
教員9割が撤回求める
毎日新聞の取材に前田市長は「(内定した教授は)情熱的で頭が良く、改革志向で前進しようという気持ちが強い。下関で発達障害の子に対応する良い仕組みを取り入れたかった」と発言を認めた。「個人的な利益誘導や、誰かの思いでやっていることではない」とし「大学が少子化に立ち向かうため、変化を求めて良くしていかないと維持できない危機感がある」と話した。
計画を巡っては、同大教授会の9割を超える教員51人が撤回を求めて文書に署名し、7月に大学側に提出している。
下関市立大学で何が起きているか、「市長が持ち出した人物をルールを破って教授に採用」
山口民報(2019年9月8日)の「下関市立大学で何が起きているか」の記事を掲載します。
http://university.main.jp/blog/bunsyo/190908yamaguchiminpou.pdf
2019年08月30日
サイト紹介、九州看護福祉大学を正常化する会
九州看護福祉大学を正常化する会
http://www.bizserver1.com/toyoda-kyushu/index.html
豊田保教授に対する懲戒処分について本年7月9日、学校法人熊本城北学園は九州看護福祉大学豊田保教授(社会福祉学科)に対して停職6月の処分を下しました。
しかし、豊田教授は反社会的行為をしたわけでも、本学に損害を与えたわけでもありません。このような処分が下されたことは異常なことであり、懲戒手続きにも重大な問題があります。
2019年08月27日
明海大不当労働行為事件、都労委が完全勝利命令
■東京私大教連
∟●東京私大教連ニュース(2019年8月21日)
東京都労働委員会の勝利命令にあたっての声明2019年8月21日、東京都労働委員会は、明海大学教職 員組合 (以下、「組合 J ) が申し立てた不当労働行為救済申立事件(都労委平成29 年(不) 第3号)について、学校 法人明海大学の不当労働行為(団交矩否と支配介入)と認め、学校法人明海大学に対して 、これらの不当労働行為の是正、および、このような行為を繰り返さない趣旨の文書をキャンパスに掲示することを命ずる命令を下しました。
これらの団交拒否と支配介入は、以下に述べるとおりきわめて不当なものでした。1. 明海大学の2つのキャンパスは千葉県浦安市と埼玉県坂戸市にあり、両キャンパス問の移動には長時間かかるため、一方のキャンパスで就業時間終了後に団交を開催すると他方のキャンパスに勤務する執行委員の参加が困難です。そのため組合は、中間地点の代々木にある東 京事務所での団交開催を申し入れてきました。しかし、 学校法人明海大学の理事会は、坂戸キャンパス組合員の身分問題が議題のときに浦安キャンパスでの開催を一方的に指定するなど、東京事務所での団交開催を頑なに拒否しています。こうした理事会による団交場所の一方 的指定は、組合の団交参加者を制約して組合の力を弱めさせる不当な攻撃です。
2 .組合が結成されて以来、理事会は、就業時間内 ・大学敷地内での組合活動を 一切禁止し、組合ニュースの学内での配布等も禁止しています。このため、組合は、団交で法人に確認を取った上で、大学の教職員宛に組合ニュ スを封書で郵送しました。この封書は、メールボックスに投函されるなどして一旦は教職員に配布されましたが、封入物が組合ニュースであることを知った理事会 は、郵便物をメールボ ックスから抜き取り、既に個人に渡っていたものについても回収しました。さらに理事会は、「事情を全く知らない郵便局員と本学事務職員を道具として利用して」学内での組合活動を行った就業規則違反の行為であるとして、組合執行委員に対して「厳重 注意」を行いました。これは、組合の運営を妨害し 、執行委員を威嚇して組合を弱体化させようとする支配介入に他なりません。
これらの団交拒否や支配介入は、理事会の組合嫌悪 ・敵視に基づ く悪質な不当労働行為です。また、組合が本件について不当労働行為救済を申し立てた直後に組合執行委員を懲戒解雇( 2019年3月27日に東京地裁立川支部で解雇無効の判決、理事会が控訴)するなど、理事会の組合攻撃はエスカレートしています。
私たちは、学校法人明海大学に対し、本日下された命令を真塾に受けとめ、中央労働委員会に再審査申立をすることなく本命令を誠実に履行するよう強く求めるものです。
2019年8月21日
東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)
明海大学教職員組合
2019年08月26日
「無期転換逃れ雇い止め」地位確認求め長崎大提訴へ ベルギー人元助教
長崎大で有期契約の助教として8年間勤務し、2月末で雇い止めになったベルギー人男性が「無期契約への転換を逃れる目的で雇い止めにされた」と訴え、助教としての地位確認を求める訴訟を来月、長崎地裁に起こす。2017年3月の契約更新時に従来と同じ3年契約を結んでいれば無期転換を申し込む権利を得られるはずだったが、長崎大は日本語の読み書きが不自由な男性に対し、日本語の文書を渡して2年契約に変更していた。男性は、11年3月に3年契約で採用され、医学部の学生に医学英語を教えていたリュク・ロースフェルトさ…以下略。
2019年08月25日
明海大の団交拒否 不当労働行為を認定 都労委
■しんぶん赤旗(2019年8月24日)
明海大の団交拒否 不当労働行為を認定 都労委明海大学が、明海大教職員組合(東京私大教連加盟)の希望する場所での団体交渉開催を拒否し、大学の各教員あてに郵送した組合ニュースを回収した事件について、東京都労働委員会は21日、不当労働行為を認定し、「行為を繰り返さない」と誓約する文書を大学内に掲示するよう命令しました。
明海大は、千葉県浦安市と埼玉県壁戸市にキャンパスがあり、組合は両キャンパスの役員が参加できるよう中間にある東京事務所(東京都港区)での団交開催を求めましたが、2011年11月以降、当局は拒否を続けています。
また当局は敷地内での組合活動を一切禁止し、16年3月、組合が大学の教職員あてに郵送した組合ニュースをメールボックスから引き抜き、教職員からも回収。組合役員に対して「厳重注意」を行いました。
命令書は、かつて東京事務所で団交をしていたことを指摘し、「合理的な理由もなく拒んでいるといわざるを得ない。組合にとって支障のある開催条件を意図的に押し付けようとしているものとみざるを得ない」として、不誠実団交とともに支配介入だと認定しました。
組合ニュース回収については、「勤務時間の内外を問わず、法人施設内での一切の組合活動禁止を明言していた法人が、その意思を貫徹するために行ったものとみるべきであり、組合活動を抑制し弱体化することを意図したものである」として支配介入だと判断しました。
大学側は組合が都労委申し立てをした直後の17年3月、組合役員の教授を懲戒解雇しましたが、今年3月、東京地裁立川支部で解雇無効判決が出ています。
2019年08月24日
九州看護福祉大、豊田保教授に対する懲戒処分について
■九州看護福祉大学教職員組合
∟●豊田保教授に対する懲戒処分について
令和元年7月31日
九州看護福祉大学教職員組合
豊田保教授に対する懲戒処分について本年7月9日、学校法人熊本城北学園は九州看護福祉大学豊田保教授(社会福祉学科)に対して停職6月の処分を下しました。しかし、豊田教授は反社会的行為をしたわけでも、本学に損害を与えたわけでもありません。それにもかかわらず、このような重い処分が下されたことは弁護士も呆れるほど異常なことであり、懲戒手続きにも重大な問題があります。これは懲戒権の濫用に他なりません。今回の処分により、豊田教授担当授業の履修生が数コマの講義を残して単位を取れない事態になっており、学生に大きな不利益が発生しています。合理性・正当性を著しく欠いた今回の処分は、経営陣の意に沿わない発言・行動をした者は処分されるという悪しき見本であり、労働者が発言することはますます封じ込められることになります。教職員組合は豊田教授に対する懲戒処分の撤回および学生・保護者への説明を要求します。
本学の運営には、今回の問題だけでなく、論文不正疑惑の調査や動物実験の審査について看過できない問題があります。教職員が安心して働ける環境や正常な大学運営を取り戻すために声をあげましょう。
主な懲戒理由と豊田教授の主張
【理由】教員A氏の勤務時間について学園の指示に従わず、A氏と産業医との面談を妨害し遅らせた
【主張】社会福祉学科長であった豊田教授は本学に対して、睡眠障害を抱えている教員A氏(同学科)の出退勤時刻をスライドするよう要望したが、拒否されたため大学の指示に従うよう教員A氏に伝えた(本年3月1日)。それ以降、豊田教授は教員A氏の勤務時間には介入しておらず、大学の指示に従わなかった事実はない。また、教員A氏と産業医との面談を豊田教授が妨害し遅らせた事実はない。なお、教員A氏は主治医の診断書を提出したが、冨田淳事務局長は、本学での合理的配慮は震災時などのケースを想定しており、個別的な対応は認められないと回答し、その後の交渉のストレスから教員A氏は適応障害も罹患した。弁護士によれば、教員A氏への本学(学校法人)の対応は安全配慮(健康配慮)義務違反である。【理由】大学院研究科委員会の審議内容を研究科委員会以外に漏洩し、人事委員会の審議内容を漏洩した
【主張】大学院研究科委員会の審議内容とは、研究科長である肥後成美副学長(リハビリテーション学科教授、理事)が大学院入学試験成績の極めて悪い受験生を合格させようとしたことを指す。豊田教授はこのことを、研究科委員会委員ではない大学院教員にも知らせたが、研究科委員会の規定には守秘義務条項はない。また、受験生の個人情報は漏洩していない。問題視されるべきことは本学大学院での勉学に支障のあると思われる受験生を合格させようとした肥後副学長や本学の姿勢であり、豊田教授の行為ではない。人事委員会の審議内容の漏洩については、その内容が何を指すのか、誰に漏洩したのかが明記されておらず、懲戒理由として不適当である。【理由】高木義紀常務理事の個人情報(生年月日、職歴)を本人の許可なく職員全員に流布した
【主張】高木理事の本学での職歴については不正在職(定年を過ぎても事務局長に在職し続けた等)の疑いがあり、豊田教授はそのことを指摘する文書において高木理事の生年月日と本学での職歴を示した。高木理事の生年月日及び本学着任までの職歴は雑誌「くまもと経済」(2014年5月号)に記載されている。すなわち、高木理事は自身の生年月日等が不特定多数に知られることを容認している。また、本学での職歴は教職員向け通知や理事会資料等において周知のことである。つまり、弁護士も指摘しているように、本懲戒理由には根拠がまったくない。懲戒手続きの問題
肥後副学長は豊田教授の懲戒理由に関わる当事者であるにもかかわらず懲戒委員として審査に加わった。そのような懲戒委員会において中立・公正な審査を望めないことは明らかである。
2019年08月18日
山梨学院大学で異常事態、「非常勤講師切り捨て」とモラルの崩壊
■現代ビジネス
∟●山梨学院大学で異常事態…「非常勤講師切り捨て」とモラルの崩壊(2019年8月18日)
山梨学院大学で異常事態…「非常勤講師切り捨て」とモラルの崩壊田中 圭太郎
山梨県庁で記者会見の「異常事態」
山梨県甲府市に広大なキャンパスを構え、法学部、経営学部、健康栄養学部、国際リベラルアーツ学部、スポーツ科学部の5学部6学科と、2つの研究科をもつ山梨学院大学。運営する学校法人山梨学院は、3800人以上の学生が通う大学のほか、幼稚園、小・中学校、高校、短大も有している。
この山梨県を代表する総合大学で、異常な事態が起きているという。大学の非常勤講師2人と首都圏大学非常勤講師組合は6月24日、山梨県庁で記者会見し、次のように述べた。
「山梨学院大学ではいま、非常勤講師の違法な定年切り下げや雇い止めが起きていて、多くの教員が追い詰められています。このまま放置するわけにはいきません」
会見した講師らは、学校法人山梨学院が今年1月に甲府労働基準監督署から立ち入り調査を受けて、指導と是正勧告を受けたことを明かした。その理由は、労働基準法に定められた手続きをとらずに、非常勤講師の定年の切り下げや、65歳以上の講師を退職させることなどを定めた就業規則を作成していたからだ。
しかし、是正勧告を受けても、山梨学院は就業規則を改めていない。そればかりか、5年以上勤務して無期雇用転換権を有している非常勤講師を雇い止めしていることもわかっている。山梨学院大学に何が起きているのか、取材した。
労基署が立ち入り調査、是正勧告
甲府労働基準監督署は今年1月28日、学校法人山梨学院に対して立ち入り調査を実施し、ただちに是正勧告を行った。
問題となったのは、2018年4月に山梨学院が作成した非常勤講師の就業規則。慣例で70歳だった定年を65歳に引き下げ、65歳以上の講師は今年度末に退職してもらう、というものだ。しかし、在籍する約150人の非常勤講師たちは、このような就業規則が新たに作られていたことを知らなかった。
山梨学院には、労働者の過半数が所属する組合がなく、就業規則を作成もしくは変更する場合には、すべての労働者の中から過半数代表者を選んで意見を求めることが労働基準法で定められている。違反すれば、30万円以下の罰金が課される。
ところが山梨学院は、労働基準法で定められた手続きをとらずに、勝手に就業規則を作成していた。その上で非常勤講師の雇い止めを始めたのだ。
労働基準監督署は、就業規則に盛り込まれた、非常勤講師にとって不利益な変更内容の取り扱いを検討するとともに、法律に沿った手続きをやり直すことを求めた。労基署がこれだけ明確に指導し、是正を勧告するケースは、全国的にも珍しい。それほど悪質だったといえる。
にもかかわらず、山梨学院の就業規則の内容は、半年以上が経った現在も変わっていないのだ。
きっかけは非常勤講師の「雇い止め」
山梨学院が指導と是正勧告を受けたことを明らかにしたのは、非常勤講師として約15年勤務する高橋明弘さんと、同じく10年以上勤務している柴崎暁さん。2人が労基署に山梨学院の違法行為を申告した。
高橋さんと柴崎さんが異変に気づいたのは去年10月。同僚だった40代の非常勤講師の女性が、大学から突然雇い止めを告げられた。
2013年に改正された労働契約法では、非正規労働者が5年以上勤務した場合、無期雇用への転換権を得られるようになった。この講師は山梨学院に5年以上勤務していたことから、すでにこの権利を得ていた。
ところが、講師が無期雇用への転換を申し込もうと思っていた矢先、大学の人事課から突然「あなたは今期限りです」と告げられた。学科を改編するためという理由だったが、実際は学部と学科の名前が変わっただけで、中身は変わっていなかったことがのちに判明している。
つまりは無期雇用転換を逃れることが目的の、脱法行為が疑われる雇い止めだったのだ。
この講師は大きなショックを受けて、告げられた通りに大学を辞めてしまった。しかし、この他にも雇い止めされそうになっている講師がいることが判明。高橋さんらは調査を進め、職員も知らないうちに学院の就業規則が作成されていたことを突き止めた。
つまり、山梨学院は、無期転換権がある非常勤講師を雇い止めすると同時に、就業規則を作って65歳以上の非常勤講師を切り捨てる計画を立てていたのだ。
高橋さんと柴崎さんは今年1月24日に労基署に申告。労基署がわずか4日後に大学に対して指導し、是正勧告したことから、2人は山梨学院に就業規則の撤回と手続きのやり直しを求めた。
就業規則変更を巡るゴタゴタ
指導と是正勧告を受けて山梨学院は今年3月、就業規則変更のための過半数代表者選挙を実施した。しかし、このとき学院側が提出してきた就業規則の改定案は、前年に作られたものと同じ内容だった。非常勤講師にとって不利益な変更は再度検討するように、という労基署からの指導を無視した形だ。
選挙を実施した時期も問題だった。大学が春休み中の3月末に突然選挙を行うことを明らかにしたのである。立候補期間は土日を除くと3日間しかなく、投票期間に至っては2日間だけ。これでは多くの人が選挙を知らないまま終わってしまう。
さらに投票の方法を、直接匿名秘密投票ではなく、記名投票とした。言うまでもないことだが、記名投票では、山梨学院側が事実上擁立した候補者に投票しなかった人物がわかってしまい、教職員が萎縮するおそれがあった。
過半数代表者の選挙には、山梨学院側が擁立した候補と、柴崎さん、さらに「このままではまずい」と立ち上がった別の専任教員の3人が立候補。教職員の間に労働条件や労働環境に対する危機感が広がり、結局、山梨学院の思惑に反して専任教員が当選した。
すると山梨学院はこの専任教員に、18年度・19年度と2年分の就業規則変更について意見書を作成させた。2年分の意見書を1度に書かせる行為は、適正とは言えない。
しかも、専任教員がパソコンで作成した意見書を提出すると、山梨学院は所定のモデル形式を手渡し、A4用紙1枚に収めるようにと、手書きによる書き直しを強く指示した。書き直して提出すると、今度は「定年の引き下げなどの不利益変更をしないように」と意見を書いた部分を削除させたのだ。この書き直し要求は、労働基準法施行規則に抵触する。
しかし山梨学院は「(過半数代表者の)意見が(就業規則に)反映されるものではないから」と、問題ないという姿勢だった。そのまま就業規則を労基署に届け出て「法的に有効」と主張。高橋さんと柴崎さんは「労基署の指導と是正勧告を無視している」と抗議している。これが現在の状況だ。
「研究者とはマッチングしない」
高橋さんと柴崎さん、それに首都圏大学非常勤講師組合が調査を進めるうちに、山梨学院が教員の雇用を非常に軽く見ていることがわかってきた。
山梨学院の2016年の事業報告書を見ると、改正労働契約法によって非常勤講師を無期雇用に転換しなければならないことに対して、否定的な見解が明記されている。
〝非常勤職員への対応について、当初の「雇い止め」から「無期転換」への方針転換を軸に検討を進める動きもあったが、結果的には「雇い止め」を実施することで最終的な経営判断が下された。今後は、「雇い止め」をめぐる具体的な対応と適正な実務を検討していく〟
これは改正労働契約法を無視することを堂々と宣言したものだ。全国の大学などで無期転換を嫌がって非常勤の教職員を雇い止めするケースが問題になったが、公式な文書で脱法行為をおこなう意思を明確にしているのは珍しい。
しかも、専任教員や職員の待遇も改悪していた。今年4月以降、専任教員や職員の期末手当の乗率は、これまでの年間5・1ヵ月分から、評価によって3ヵ月分から4・6ヵ月分に変更されていた。平均的なB評価の場合は3・8ヵ月分の支給なので、ダウン幅は決して小さくない。評価の基準も明らかにされていない。
さらに、山梨学院の考え方が明確にわかる資料もある。山梨学院の古屋光司理事長兼学長は、先代の理事長兼学長である父親の跡を継ぐ形で去年4月、39歳の若さで着任した。司法試験に合格して弁護士登録をしたのち、2006年4月から法人本部で勤務。副学長などを歴任した。この古屋理事長兼学長が教授会で示したとされるのが、次の文書だ。
1枚目の冒頭には、〝本学は、あくまで教育に特化する〟〝高度な研究機関として評価される大学は目指さない〟と掲げている。その上で、2枚目には〝本学が求める大学教員像〟が示され、一番下には〝従来の日本の大学に見られる典型的な「研究者教員」を望む人は、今後、本学とのマッチングはない〟と明記されている。
言うまでもなく、大学の両輪は「研究」と「教育」であるはずだ。しかし「研究者は今後雇用しない」と受け止められる文言が、ここには堂々と書かれているのだ。
大学では、上層部のモラル崩壊も起きているという。昨年度、特定の運動部に所属する学生10数人が、本来は単位を落としていたのに、大学が担当教員に知らせずに補講を実施して、学生に単位を与えたことがわかった。
山梨学院大学がスポーツに力を入れていることは理解できる。だからといって、特定の部に所属する学生だけに、落としたはずの単位を秘密裏に与えていては、「何でもありの大学」だと思われても仕方がないのではないだろうか。
退職した教員の数は「答えられない」
労基署による指導と勧告の後も、就業規則作成の手続きが適法と言えないことと、非常勤講師の就業規則の内容が変わっていないことについて、山梨学院に質問した。広報からの回答は、次の通りだった。「今回の過半数代表者の選任については、労働基準監督署の是正勧告・指導に基づき、適切な対応・手続きを経て行っております。現在の山梨学院非常勤講師就業規則は法的にも有効であると考えております」
定年を65歳に引き下げることついても「顧問弁護士に確認し、現行規則が法的に有効」という認識を示した。
また、今後「研究者教員」を望む人とはマッチングしない、という教授会で示された内容について確認を求めると、事実と認めた上で次のように釈明した。
「『研究者教員を望む人は、本学とのマッチングはない』という表現については、『今後、学生の成長につながるように更に教育に力を入れていく』という趣旨の現れです。各教員には、学部教育の充実(学生指導)とともに、学部教育やリベラルアーツ教育の向上につながる研究、これまでも本学が行ってきた地元山梨の経済・政治・行政の活性化に具体的に貢献できる研究、全学的国際化の実現を目指し、海外大学との共同研究や学術交流などを積極的に推進していただきたいと考えております」
山梨学院は非常勤講師の無期転換について、現状では申し込みがあった場合は応じていると説明した。しかし、去年4月以降、何人の非常勤教員が退職したのかを訪ねると、「答えられない」と明らかにしなかった。
おかしな方向に進んでいる
労基署への申告者の1人である柴崎さんは、教員の雇用の問題が噴出してきたのは、現在の理事長が就任してからだと感じている。
「理事長は就任の際、山梨に必要とされる、愛される学園にしたいと話していました。それが本当なら全面的に賛同します。しかし、おかしな方向に進んでいるのは明らかです。以前の山梨学院は普通に学問ができる場所でした。軌道修正してほしいと思っています」
もう1人の申告者の高橋さんは、非常勤講師だけではなく、常勤の教員や職員も追い詰められていると指摘している。
「私たちのところには、教員からかなりの数の相談が来ています。闇は深いと思っています。辞めざるを得なかった人も少なくないはずで、いまも多くの人が追い詰められていると感じています」
首都圏大学非常勤講師組合では、7月と8月に甲府市内で説明会を開催した。今後は山梨県内の教職員を対象にしたユニオンを結成するために支援していくという。
また組合は、労基署から是正勧告を受けた後も適正な手続きがとられていないなどとして、現在も山梨学院に就業規則の撤回を求めて交渉を申し入れている。松村比奈子委員長は「山梨学院大学の行為はこのまま放置しておくわけにはいかないレベルだと考えています。このような不正がまかり通る環境は改善しないと、大変なことになるのではないでしょうか」と危惧している。
しかし、山梨学院が態度を変える気配はなく、現状では解決の道は見えていない。