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「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」(2017年10月)

京都の大学人の声明  (ホームページ

広島大学原爆放射線医科学研究所 

パワハラ訴訟 新聞記事1 新聞記事2 新聞記事3
これはひどい!
不当なパワハラを受けた原告教員に対して,提訴の報復として再任を拒否(3月末で解雇) 

[週刊金曜日に連載]
広島大学で“大人のいじめ”1──業績水増し告発の准教授が“クビ”へ
広島大学で“大人のいじめ”2──対応しない大学当局

岡山短期大学不当配転事件 

岡山地裁・判決(3月28日)・勝訴
訴状  判決文

山口雪子さんを支える会
障害者差別を訴える山口雪子(IPNET-J顧問)准教授を応援するWeb

常葉大短大部不当解雇事件

静岡地裁決文(2015年7月3日)  原告・完全勝訴 祝! 新聞報道
大学オンブズマン・巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会、声明(2015年7月4日)
仮処分異議申立裁判、静岡地裁決定(2016年1月25日) 完全勝訴 祝! 
静岡県内3大学教職員組合声明(2016年2月16日)
本訴裁判・静岡地裁判決(2017年1月20日) 原告・完全勝訴 祝! 新聞報道
東京高裁判決(2017年7月13日)学園の控訴棄却,原告・完全勝訴 祝! 声明1

追手門学院大学不当配転事件 控訴審 
学園側が控訴取下 大阪地裁判決(2015年年11月18日)が確定!
祝! 落合正行前学長の勝訴確定

大阪地裁判決(抄)  原告声明 左2つの文書提供は「支援する会」より

弘前学院大学 不当解雇事件

原告教員、青森地裁弘前支部に提訴(2015年12月28日)

四国大学

労災・損害賠償訴訟 新聞記事1 記事2 記事3  大学オンブズマン声明

追手門学院大学不当解雇事件  2015年10月25日懲戒解雇処分

懲戒解雇に対する声明 (文書提供は「支援する会」より) 訴状(2015年12月28日)

追手門学院大学で何が起こっているのか(「私大教連かんさい」No.115,2015年11月26日)

酪農学園大学長解任無効確認訴訟 

原告・前学長が札幌地裁に提訴(2016年1月8日) 訴状  学長解任に関する新聞報道

・酪農学園大学退職教授団HP 「酪農大はやっぱり素 晴らしい」

New! 酪農学園元評議員名誉毀損裁判、最高裁が上告棄却 教員側の全面勝訴!詳しくはこちら

(2017年7月16日現在)

常葉大短大部不当解雇事件・控訴裁判  2017年7月13日東京高裁判決 祝 勝訴! 声明 
岡山短期大学不当配転事件・本訴裁判  2017年3月28日岡山地裁判決 祝 勝訴! 記事 訴状 
宮崎大学不当処分事件  2016年10月28日最高裁判決 祝 勝訴! 記事 
京都産業大学昇任拒否雇止め事件  2016年9月27日京都地裁不当判決! 記事
名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件  2016年6月17日最高裁、上告を棄却 祝!原告勝訴   
 記事 鶴舞総合法律事務所  「AERA」2013年7月8日号  TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」2013年7月23日
四国大学労災損害賠償請求事件  原告教員が徳島地裁に提訴中
弘前学院大学不当解雇事件  原告教員が青森地裁に提訴(2015年12月28日)  
追手門学院大学不当配転事件  2016年3月1日学園側控訴取下 落合正行前学長の勝訴確定! 祝! 記事 
常葉大短大部不当解雇事件   2016年1月25日静岡地裁仮処分意義申立決定 祝! 勝訴!  地裁決定全文 
追手門学院大学不当解雇事件  2015年10月25日懲戒解雇処分 懲戒解雇に対する声明 原告・訴状(2015年12月28日)
吉備国際大学不当労働行為事件 2015年7月23日岡山地労委命令! 祝!勝訴 地労委命令書  
聖トマス大学解雇事件 2015年7月21日 神戸地裁で和解  
常葉大短大部不当解雇事件   2015年7月3日静岡地裁仮処分決定 祝! 勝訴!  報道 
九州産業大学教授降格処分事件   2015年3月18日福岡地裁に提訴   
野中教授「名誉毀損」不当提訴事件   2014年11月12日東京高裁   祝! 勝訴!   報道 判決文
名古屋女子大組合委員長不当解雇事件 名古屋地裁   祝! 勝訴!  新聞報道 
愛媛大学アカハラ等人権侵害事件 教官の違法行為と大学の責任を問う! 支援する会 訴状
専修大学職員解雇事件 東京地裁判決 新聞記事 
鈴鹿医療大学不当配転事件 理事会・名古屋高裁に控訴 鶴舞総合法律事務所 
岡山商科大不当労働行為事件 岡山県労委命令 2013年4月11日中労委再審申立
日本社会事業大学未払賃金請求訴訟 東京地裁2012年6月28日提訴  
東京女学館大学不当労働行為事件 東京地裁2012年12月14日提訴 募集停止問題  
東京国際大学不当労働行為事件 2012年2月27日都労委に救済申立  
大阪産業大学不当労働行為事件 2012年7月9日大阪府労委に救済申立  

北海道関係の訴訟一覧(2017年4月09日現在)

千歳科学技術大学不当解雇事件 最高裁・不当判決(2017年3月30日) 記事 
札幌大学未払い賃金請求訴訟 札幌地裁判決(2017年3月30日)祝 勝訴! 新聞記事 
酪農学園大学前常務理事の損害賠償等請求事件 最高裁上告棄却(2016年9月11日)祝 勝訴!  記事 
酪農学園大学前常務理事の損害賠償等請求事件 札幌高裁判決(2016年3月11日)祝 逆転勝訴!  記事 
酪農学園大学長解任無効確認訴訟 札幌地裁に提訴(2016年1月8日) 訴状
専修大学道短大前学長諭旨免職事件 札幌地裁不当判決(2015年12月18日 新聞記事 
専修大学道短大副学長不当解雇事件 札幌地裁不当判決(2015年9月18日) 声明文 組合HP 
札幌医科大学退職強要・バワハラ訴訟 札幌高裁・不当判決(2015年6月2日) 
千歳科学技術大学不当解雇事件 札幌地裁・不当判決(2015年5月28日) 記事 
酪農学園大学前常務理事の現学長を含む6教員に対する訴訟 札幌地裁・不当判決(2015年5月11日)  財界さっぽろ2015年5月号記事
北海道文教大学雇止無効訴訟 札幌地裁判決(2015年5月8日)元2教授の請求棄却 新聞記事 
専修大道短大不当整理解雇事件 札幌高裁・不当判決(2015年4月24日) 組合HP  声明 
天使大学懲戒処分無効確認訴訟 札幌地裁(2014年12月12日)   祝! 勝訴!  
札幌大学不当労働行為事件 2014年10月28日道労委命令!   祝! 勝訴!   道労委命令(全文)  
天使大学不当労働行為事件 2014年9月3日中労委命令!  祝! 勝訴!   中労委命令道労委命令 
室蘭工業大学不当労働行為事件 道労委へ提訴(2014年7月)
北海道教育大学旭川校不当解雇事件 最高裁(2014年2月20日)  祝! 勝訴! 新聞記事  
北海道教育大学学長選挙無効確認訴訟 札幌高裁・不当判決(2014年2月21日) 原告団・弁護団、抗議声明 
北海道大学非正規職員雇止無効訴訟 札幌高裁・不当判決(2014年2月20日) 上告!
専修大道短大不当整理解雇事件 札幌地裁・不当判決(2013年12月2日) 組合HP  声明文
専修大学道短大前学長諭旨免職事件 2013年5月24日札幌地裁へ提訴! 新聞記事 
東京理科大長万部キャンパス・職員懲戒処分事件 

[決着済訴訟一覧]
名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件  2016年6月17日最高裁、上告を棄却 祝!原告勝訴   
 記事 鶴舞総合法律事務所  「AERA」2013年7月8日号  TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」2013年7月23日
富山大学懲戒解雇事件 富山地裁で和解(2016年11月29日)  原告・支援する会のコメント  「シュレッダーから甦った書類ー富山大学懲戒解雇事件を考える」
北陸大学不当解雇事件 全面勝訴で和解  記事 
長崎県立大学懲戒処分事件 最高裁 勝訴確定 New 事件を考える会HP 
関西外語大昇給差別訴訟控訴審 最高裁判所が不当判決 組合ニュース 
金沢大出勤停止処分無効確認等請求事件 勝訴確定!大学側控訴断念 原告ブログ 
■東和大解雇事件 解雇撤回で和解 福岡地裁 記事 過去経緯1過去経緯2
■名古屋女子大組合員不当解雇事件 2009年6月に決着 自由法曹団通信1306号
■大阪工大解雇事件 解雇撤回 逆転勝訴 記事 過去経緯
■大阪芸術大不当労働行為事件 大阪地裁 勝利判決 記事  学園側が大阪高裁に控訴
■鹿国大不当解雇事件 最高裁・上告を棄却 三教授勝訴 記事 
■湘南工科大不当解雇事件 最高裁が上告棄却 勝訴確定! 譴責処分も撤回 記事
■APU常勤講師解雇事件 最高裁「特別抗告棄却」 記事 
■APU専任講師解雇事件 京都地裁が解雇権濫用を断定
■京都大学任期制再任拒否事件 最高裁が上告棄却  記事
全国大学の非正規雇止無効訴訟一覧
(2013年11月29日現在)

名城大学・金城学院大学非常勤講師裁判 原告の訴え
京都精華大学ユニオン
■京都産業大学 昇任拒否による雇止め,2013年3月28日京都地裁へ提訴 新聞記事
■九州共立大学 教授雇止め 2012年7月10日 福岡地裁へ提訴
■九州女子短期大学 講師雇止め 2012年11月6日 福岡地裁へ本訴提訴 新聞記事

首都圏大学非常勤講師組合、早稲田大学に対する告発状

 

2017年10月18日

有名私立大学が「学内で起きた職員の凄惨な自殺」を隠蔽…背景に雇用をめぐるトラブルか

Business Journal(2017.10.13)

 発見まで、自殺の決行から4日がたっていた。首吊りによる遺体は、相当に腐敗が進んでいた。研究室のドア近くで、その変わり果てた姿と対面した課長職の女性が、切り裂くような悲鳴を上げたのも当然だ。

 現場には、家族宛と学部長宛の遺書があった。

「人を人とも思わぬ非道を許せない。一死をもって抗議する」

 学部長に対しては、そのような激烈な怒りの言葉が綴られていた。

 これが複数の関係者から語られた、現場の状況である。さらに関係者たちの話を総合すると、N先生の死の背景には、雇用をめぐる大学側とのトラブルが浮かび上がってきた。

 N先生は、東京工科大学の特任講師だった。2015年6月12日、N先生が自殺を遂げたのは、同大学八王子キャンパス研究棟Cの自室研究室である。

 どんな企業や団体でも、構成員が死亡すれば訃報が公表されるのが当然である。だが東京工科大学では、N先生の訃報は公表されなかった。むしろ箝口令が敷かれ、N先生の死は隠蔽され続けている。そして今、彼が使っていた研究室では、何が起こったかまるで知らない新たな教員が仕事をしている。

 1947年に創立された創美学園が、東京工科大学の起源だ。東京都八王子市片倉町の八王子キャンパス、東京都大田区西蒲田の蒲田キャンパスがあり、工学部、コンピュータサイエンス学部、メディア学部、応用生物学部、デザイン学部、医療保健学部を擁している。

 ゲーム制作などを行うメディア学部は、日本で初めての設立だった。同学部の客員教授には、手塚治虫の息子でヴィジュアリストの手塚眞氏がいる。シンガーソングライターのダイスケは同学部出身だ。自由な校風で知られる同校で、なにゆえ凄惨な自殺が起こり、今に至るまで隠蔽されているのか。

突然「今年で辞めていただく」と告げられる

 N先生が東京工科大学に着任したのは、2012年10月。「特任教授募集」に応募したのだが、採用されてみると「特任講師」であった。N氏は講義を持たず、学生の就職指導を専門に行う講師を務めた。多かれ少なかれ、どこの大学でも就職率を気にするが、東京工科大学でもその傾向はあり、教員のボーナスにも影響するという。就職できそうもない学生にきつく当たったり、受かるところに無理矢理にでも就職させて、自分の研究室の就職率を上げている教員も少なくないという。

 N先生のもとに相談に来るのは、そうした研究室から弾き飛ばされかねない、就職力の弱い学生だ。そもそも就職する意思がなく「働きたくない」と口にする学生に対し、N先生は働くことの意義を一から説いた。昼食時間でも、学生が訪れれば相談に応じた。

 2014年11月12日、大学の最高議決機関である大学評議会で、N先生の雇用契約の延長が発議され、同年11月には雇用契約を2018年9月までとすることが承認された。

 だが、年が明けた1月、N先生は学部長から「今年で辞めていただく」と告げられた。N先生は、不当に雇い止めがあった場合に備えて、労働基準監督署への相談・申告、労働審判の件、弁護士への相談などの準備のため、その証拠保全に努めた。

 それが3月になると、学部長より「これからも、ずっとよろしくお願いします」と言われ、仕事が続けられ、家族を養っていくこともできるとN先生は安堵した。

 しかし6月12日、学部長より突然「9月で辞めていただく」と告げられた。普段は温厚なN先生が、あまりの理不尽さに怒鳴ったという。N先生が自分の研究室で自殺を遂げたのは、その夜だ。

 その日の夕方、夫人は「今日は大学の近くに泊まる」とN先生からの電話を受けていた。翌週になっても帰って来ず連絡もないために、夫人が大学に連絡したのが6月16日。午前9時過ぎ、N先生は変わり果てた姿で発見された。

 N先生の研究室のドアには、面談予約していた学生向けに「キャリアサポートセンターで相談に乗ります」とのみ記された紙が貼られた。

 学内広報に訃報は載らず、箝口令が敷かれ、N先生の死は隠蔽された。それから2年がたった今、N先生の存在そのものが無き者のようにされている。

口をつぐむ、不自然な大学の対応

 N先生と直接話をしていた当時の学部長から事情を聞くべく、筆者が東京工科大学に連絡をしたのは、今年7月14日の午後1時半頃だった。こちらが名乗ると受付スタッフは電話をつないでくれようとしたが、再び受付スタッフが電話口に出た。用件を尋ねられ、N先生の自殺の件であることを伝える。しばらくして受付スタッフが出て、「ただいま、席を外しております」と言った。1時間後に再び電話をすると、「本日は出張に出ていて、帰りません」とのことであった。

 週明けの7月18日に電話をすると、席を外しているとのこと。それなら学長と話したいと申し出ると、会議中と説明された。その日のうちに再び電話をすると、総務部のスタッフが出て、「(当時の学部長は)話をしたくないといっている」と言った。社会的説明責任のある問題であり、話したくないで済む話ではないと告げると、学長宛に文書を提出してほしいとのことであった。

・N先生の死に関して大学としてどのように総括しているのか?
・N先生の死を隠蔽しているのはなぜなのか? 

 取材によって把握した事実を記した上で、大学の見解を問う文書を7月21日に送付した。これに対し、8月9日付で東京工科大学の事務局長の名で送られてきた回答には、以下のように書かれていた。

 「本学でも●●特任講師の事故は把握しています。貴殿からの平成29年7月21日付書面の内容は、本学が把握している事実と大きく異なっていますが、●●特任講師のご遺族のプライバシーにもかかわることですのでお答えできません」(氏名への伏せ字は、筆者による)

 この前後の文章は、夏期休暇などに関する事務的な内容だ。全文を通じて、N先生への哀悼の意を表す言葉はひとつもない。起こった事態の印象を和らげるためか「事故」という言葉が使われている。遺書が残されていたこと、警察による検証から、N先生の身に起きたことは、事故ではなく自殺であることは明らかだ。国語的にも「自殺」は「事故」ではない。まして、社会的に使われる場合には、明確に区別される。結果として、大学の回答は、事実の根幹をなす部分において虚偽が書かれているといえる。

 ビルからの転落死や、溺死、薬物死、縊死などの場合、自殺なのか事故なのか、あるいは事件なのかが問われ、徹底した調査が行われる。もし、N先生に起きたことが、本当に自殺ではなく事故だと大学が考えているのなら、調査の結果を公表すべきだ。

 また、筆者がN先生に関して質したのは、職務上のことであってプライバシーに属することではない。筆者が把握した事実は、複数の関係者から確かめたものだ。プライバシーは、回答できない理由にはならない。事実に対して反論ができないというのが真相だろう。

 経緯を振り返ってみるならば、雇用に関する説明が二転三転することからくる不安が、N先生を自殺に追い込んだ可能性は大きい。取材によって、パワハラが行われていた疑いも浮上している。東京工科大学が真理を追究する学問の府であるならば、N先生の自殺を隠蔽することをやめ、事実関係を明らかにすべきだ。

(文=深笛義也/ライター)

2017年10月14日

名古屋芸大、教授に自宅待機命令 教職員組合と対立か

朝日新聞(2017年10月13日)

 名古屋芸術大学(愛知県北名古屋市)を運営する学校法人名古屋自由学院が9月、教職員組合の委員長と副委員長の教授2人に自宅待機命令を出し、教職員組合が「明確な理由がなく不当だ」と命令の撤回を求めていることがわかった。朝日新聞の取材に、法人の纐纈(こうけつ)正伸人事課長は「現在、審議中。それ以上申し上げられない」と答えている。

 組合関係者によると、9月22日、法人の川村大介理事長名で40日の自宅待機を命ずるメールが2人に届いた。後日、同じ内容の書面も郵送で届いた。理由として「職員の行為が懲戒に該当する。またはそのおそれがある」「職員が出勤することにより、正常な業務の遂行に支障をきたす。または他の職員に与える影響が大きい」などと記載されていた。組合が具体的な理由を問い合わせたが「個別の案件には回答しない」と書かれた文書が届いたという。

 一方、組合関係者によると、待機命令が出る前の9月7日、組合は「(法人の)理事会が評議会を廃止し、教授会規程を改正した」などとして、大学へ指導するよう文部科学省に陳情していた。組合の代理人の小島高志弁護士は「教育現場では労使が協力し合って、学習、学問、研究の環境を発展させるべきだ。一部の教職員や労組を敵視して大学を運営することは、学生の不利益につながり、教育機関に対する社会的要請にも反する」と話す。

 ログイン前の続きこの法人と組合は過去にも労働条件を巡って対立があり、愛知県労働委員会が2014年と16年にそれぞれあっせん案を示したほか、今年1月には組合が申し立てた不当労働行為の救済をめぐり、和解した経緯がある。

     ◇

 〈労働法に詳しい大阪市立大の西谷敏(さとし)名誉教授の話〉 具体的な理由なく自宅待機を命じ、一定期間であれ教授らの講義、研究の権利を制限するのは不当で、命令は無効だ。自宅待機命令の背景に組合活動があるとすれば、労働組合法にも抵触する。


2017年10月10日

「設置者変更」はリストラの打ち出の小槌か-私立大学の「公立大学化」から見えてくる問題-

『ねっとわーく京都』2017年10月号、11月号に連載したものを一部修正

「設置者変更」はリストラの打ち出の小槌か-私立大学の「公立大学化」から見えてくる問題-

細川孝(龍谷大学経営学部)

不払い賃金返還訴訟には隠れた争点がある

 8月3日、京都地裁で一つの裁判が始まった。この裁判の訴状は今年2月に奈良地裁に提出されたが、若干の経過があって京都地裁で審理が行われることとなったものである。裁判は「賃金等請求事件」であるが、この裁判の隠された争点は別の点にある。
 設置者変更、多くの読者には聞きなれない言葉であろうが、最近の報道では、京都に縁のある名前が出てくる。7月10日、苫小牧駒澤大学(北海道苫小牧市)の設置者が学校法人駒澤大学から学校法人京都育英館に変更されるのは違法だとして、苫小牧駒澤大学に学ぶ学生が、学校法人駒沢大学に計約245万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。あわせて国が大学設置者の変更を認可しないよう仮差し止めも申し立てた。
 この小論では、「設置者変更」が大学(経営)の持続的発展という本来の趣旨から離れ、リストラクチャリング(事業の再構築)という営利企業の手法と化しているのではないかという問題提起を、具体的事例を踏まえつつ行うものである。

設置者と学校の関係-設置者が学校を設置する

 教育基本法、第6条は「法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる」と規定している。同様に、学校教育法でも、学校を設置できるのは、国(国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む)、地方公共団体(公立大学法人を含む)、学校法人の3者のみとしている(例外は、構造改革特別区域法にもとづく株式会社立の学校とNPO法人立の学校が規定されている)。
 ここで注目したいのは、設置者である国、地方公共団体、学校法人と、設置される学校は別のものとされていることである。例えば、複数の学校(教育階梯の異なるものを含む)を設置する学校法人を想定していただければイメージしやすいであろう。学校法人Aが設置するB大学、C大学、D高校、E中学校、F小学校といった具合である(最近、話題の加計学園には、岡山理科大学、倉敷芸術科学大学、千葉科学大学の三つの大学のほか、岡山理科大学付属高校や付属中学校校などがある)。
 このように設置者と学校は別のもとして位置づけられており、学校を設置する設置者も変更されることが可能となっている。

私立大学の「公立大学化」は設置者変更である

 先に述べた苫小牧駒澤大学に関する報道では、「経営譲渡」や「譲渡」という表現が用いられているが、その内実は「設置者変更」である。学校の設置者が別の設置者に変更されるということである。この設置者変更は、学校法人駒澤大学から学校法人京都育英館への事例のような学校法人(私立学校の設置者)同士の場合だけではない。
 近年相次いでいる私立大学の「公立大学化」は、学校法人から公立大学法人への設置者変更という手続きをとって行われている。2017年4月現在、89大学の公立大学のうち74大学が法人化されている。公立大学法人は地方独立行政法人の一つであり、地方公共団体の一部局としての公立大学とは異なっている。
 「公立大学」化と聞くと地方自治体(地方公共団体)が設置した大学という印象を与えるが、実態は「公立大学法人への設置者変更」なのである。以下では、京都府下での事例の検討を通じて、この問題の有する光と影について若干の考察を行いたい。

京都創成大学から成美大学へ

 2000年4月、京都短期大学の商経科を改組転換し、京都創成大学が開学した。設置者は、学校法人成美学苑(当時)であり、福知山市との公私協力方式がとられた。京都創成大学は北近畿で唯一の四年生大学、経営情報学部(経営情報学科)のみの単科大学としてスタートした。当初の入学定員は195名であった。
 その後、2007年に経営情報学科をビジネスデザイン学科に名称変更するとともに、医療福祉マネジメント学科を設置した。2010年からは大学名を成美大学に改称し、法人名も学校法人成美学園となった。
 この間、さまざまな取り組みにも拘らず入学定員を下回る状態が続いた。2009年度における大学全体の収容定員に対する在籍学生比率は0.36、翌年度は0.46であった。この背景には、大学および学校法人(設置者)の管理運営の問題があった(2008年以降3年間に理事長が4回交代し、2006年以降4年間に学長が3回入れ替わり、適切な運営を行うことができなかった)。
 2011年3月には、認証評価で「不適合」の判定を受けることとなった。評価結果には「評価の結果、貴大学は、『学生の受け入れ』『研究環境』『教員組織』『管理運営』『財務』『点検・評価』および『情報公開・説明責任』に関して重大な問題を有すると判断した結果、本協会の大学基準に適合していないと判定する」と記されている。
 認証評価は国公私立の設置形態を問わず全ての大学、短期大学、高等専門学校に義務付けられている。7年以内ごとに文部科学大臣が認証する評価機関の評価を受けるのである。  
 成美大学の認証評価の受審は、第一巡目(2004~2010年度)の最終年度であった。「大学基準に適合していない」ということをもって、当該の大学が法令違反となるわけではないが、大学としての内実が社会的に問われることになるのである。

成美大学の「公立大学化」に向けた議論が始まる

 京都創成大学(成美大学)は2007年度以降、入学定員の削減を繰り返すことになった(2007年度~:100人、2013年度~:80人、2014年度:60人、2015年度:50人)。カリキュラム変更も毎年のように行われた。先述の医療福祉マネジメント学科の設置以降も、「ウェルネス総合マネジメント」資格(2008年度)、「フィンランド教育」「地域」(2011年度)、「2012年度」(観光)と次々に新機軸を打ち出す。
 しかし、これらの「改革」は十分な裏付けのない「場当たり的」とも言える対応であった。理事長や学長の意向によって行われた「属人的」なものでもあった。大学の運営がトップダウン化し、教育の現場である教授会の意見は取り入れられることはなかった。
 大きな転機は、2013年12月の理事会体制の刷新であった。福知山市役所OBの理事長、副理事長が法人経営の実権を握ることとなった。背景には、金融機関からの融資を断られ学校法人が資金的に立ちいかなくなっていたことと、前経営陣が事実上経営を投げ出したことがある。福知山市主導で経営の再建が進められることになったのである。
 新しい理事会と大学の体制が確立されたもとで、「公立大学」化に向けた議論と福知山市(民)への理解を求める取り組みが進められることになった。

成美大学の「公立大学化」に向けた急速な動き

 2014年度に入ってからの経過を時系列的に示せば、次のようである
4月、市民主導の名のもとに「成美大学の公立化を求める市民の会」が結成される。
6月、「市民の会」が福知山市長に公立化を求める要望書を提出する。
8月、成美大学が「成美大学・短期大学部経営改善に関する報告書」を市に提出する。
 市議7名からなる「福知山市における四年制大学の在り方調査研究委員会」が発足する(12月に「四年制大学のあり方検討特別委員会」に名称を変更)。
9月、「市民の会」から市長に公立化を要請する署名(34,285人)を提出する。福知山市に「四年制大学のあり方に関する有識者会議」が設置される(委員長は後に学長となる井口和起氏。12月までに5回開催される)。
12月、有識者会議が「検討報告書」を市長に提出する。京工芸繊維大学が成美大学の隣接地(成美学園敷地)に北京都分校(福知山キャンパス)の設置を発表する。
1月、福知山市に「公立大学検討会議」が設置される(委員長は井口氏。3回の会議)。
2月、検討会議からの「公立大学検討会議報告書」の提出を受け、市長が公立大学の設立を表明する。
3月、福知山市が「教育のまち福知山『学びの拠点』基本構想」を発表する。
福知山市議会が「公立大学開設準備費を含む2015年度予算」を可決する。
「市民の会」が「成美大学の公立化を支援する会」に名称を変更する。
 このようにごく短期間で「公立大学化」に向けた動きが進み、決定をみたことがわかる。同時に、この一連の過程のなかで、成美大学の教職員は「市民の会」が取り組む署名に協力したり、集会への参加を実質的に強制されたりした。また、オープンキャンパスで「事例に学ぶ大学の公立化セミナー」を開催する(7月、9月、10月、11月)など、「公立大学化」実現の一翼を担った(担わされた)ことに留意する必要がある。

「設置者変更」に向けた取り組み

 2015年度に入ると「公立大学化」を実現するために、「設置者変更」の準備が進む。
 4月には、福知山市に「公立大学検討事務局」と「公立大学設置準備委員会」が設立され、成美大学との協議も行われるようになる。5月には、大学内で「新たな公立大学の設置に向けた教員アンケート」が実施される。また、公立化に向けた学内ワーキンググループが開催されるようになる。
 福知山市では7月に、「公立大教員候補者の選考会議」が設置された(教員採用をめぐる問題については後述する)。福知山市議会では9月、公立大学関連の5議案が可決される。
 この間、文部科学省に対しては、入学定員の変更(地域経営学科(ビジネスデザイン学科))を30名から40名に増員、医療福祉マネジメント学科を20名から10名に減員)を届け出ている(6月)。また、2016年4月1日より学部名称を経営情報学部から「地域経営学部」に、学科名称をビジネスデザイン学科から「地域経営学科」に変更することを届け出ている(8月)。
 10月に入ると、福知山市は京都府に対して公立大学法人の設立認可申請を行う。翌月(11月)、公立大学法人福知山公立大学の設立が認可される。これを受け、成美学園は「設置者変更」に係る申請を文部科学省に提出する。同時に、学長・理事長予定者として井口氏が発表される。
 12月には、副学長・理事予定者として富野暉一郎氏、理事・事務局長予定者として山本雄一氏(高知工科大学が公立化された時の事務局長)が発表される。福知山市は大学政策課を設置している。福知山市の公立大学設置準備委員会では、2016年度から6年間の中期目標・中期計画が検討される(福知山市長からの認可)。
 以上の動きから見えてくるのは、「設置者変更」を想定して、福知山市と成美大学とが一丸となって準備を進めたことである。大学に関してのノウハウを有しないことからして、このことは自然なことであろう。しかし、表面的には、スムーズに見えるかもしれない「公立大学化」は大きな問題を孕んでいた。

包括承継か特定承継か

 近年相次いでいる私立大学の「公立大学化」の事例において、福知山公立大学は特異なものとなっている。それは、設置者変更の際に「部分承継」という手法が採られたということである。具体的には、教職員の雇用(継続)の問題である。
 これまでの私立大学の「公立大学化」の際には、大学の保有する権利や義務は全て新しい設置者に引き継がれ、教職員の雇用関係も維持されたと筆者らは認識している。しかし、福知山公立大学の場合には違った。
 2015年度に成美大学に在職した教員のうち17名が福知山公立大学への「移行」を希望した。応募者は、2015年3月に調書、5月にアンケート、6月にエフォート(仕事の時間のうちでどれくらいを特定の用務に充てているか)を提出した。これらを踏まえ7月に、「選考会議」によって模擬授業(5分)と面接(25分)が行われた。8月に公表されたのは、9名のみの「採用」(=公立大学法人による雇用)であった。
 通常、大学が設置される場合には、設置準備委員会など開設予定の大学の機関が選考を行う。しかし、福知山公立大学は「設置者変更」であって、そのような場合とは異なる。また、学術とは無関係の人間が市民代表として選考会議に加わっていた。きわめて異例としかいいようがない。
 成美大学の教職員は「公立大学化」に協力を惜しまなかった。私立大学の「公立大学化」の先行事例を見て、自らの雇用関係が継続すると信じた者がほとんどだろう。福知山公立大学の2016年度のカリキュラムも、成美大学のカリキュラム(2015年度)とわずかしか変更されてない。教員の「入れ替え」を行う必要があるとはとうてい思えない。
 「設置者変更」を申請する際には、学校教育法施行規則では「教員組織」に関する事項も記載しなければならないこととされている。しかし、実際の手続きでは、教員の名簿を提出する必要はなく(文部科学省に照会)、申請時の学長の氏名を記載するのみとなっている。したがって、大学や学部の新設のような業績審査も行われていない。
 筆者らは「設置者変更」は大学の公共性と継続性(安定性)を保証するものであり、福知山公立大学のような事例は想定されていないと考えたい。2016年からは名称が「地域経営学部」となったが、カリキュラムはわずかししか変更されず、「学士(経営情報)」は元のままというのも不思議である。2017年度入学生からは、「学士(地域経営)」となったとはいえ、文部科学省はどのように対応したのであろうか……。
 率直に言えば、性善説に立った制度の趣旨と実態との齟齬があるのではないだろうか。

大学は誰のために存在するのか

 「設置者変更」によってスタートした福知山公立大学は、多くの受験生を集めている。2016年度入試では、50名の入学定員に対し1,660名の受験者、同じく2017年度は120名に対し926名である。この点では、「公立大学化」の効果はあったと言えよう(「公立大学化」の評価は、市財政への影響や、地域の経済や社会への貢献など多面的な観点から行われるべきであるが、ここでは言及しない)。
 しかし、雇用関係が継承されなかったことのほかにも、成美大学に在籍していた学生に対するケアに関わる問題もある。このような事態の背景には、成美大学が継続していくことが困難になったもとで、ごく短期間に「公立大学化」を進めざるをえなかったことを指摘できるのではないか。
 もともと存続するには困難な条件のもとで公私協力によって誕生した大学が、「公立大学化」によって新しい発展の可能性を得たことは評価されなければならない。同時に、開学以来、16年間にわたって存続し、教育や研究を通じて地域社会に貢献してきたことも正当に評価されなければならない。しかし、さまざまな関係者の責任は不問にして、教職員のみに責任を帰したという印象をぬぐえない。
 大学は公共財であり、特定の誰かのためのものではない。そこに学ぶ学生だけでなく社会にとってもかけがえのない存在である。教職員は「学術の中心」としての大学を中心的に担う存在である。このような点で「大学界」についての市民社会の理解が深まることが、(国公私の設置形態を問わず)大学を発展させていくために不可欠であることを最後に強調したい。

(本稿は、『ねっとわーく京都』2017年10月号、11月号に連載したものを一部修正のうえで転載している)


2017年10月04日

札幌大、2審も敗訴 減額分支払い命令

毎日新聞(2017年10月4日)

 札幌大(本部・札幌市)の教授と元教授の計14人が、定年後の再雇用で一方的に給与を下げられたとして、減額分の賃金や慰謝料などの支払いを求めた訴訟で、札幌高裁は4日、減額分計約1億400万円の支払いを命じた1審・札幌地裁判決を支持し、大学側の控訴を棄却した。

 佐藤道明裁判長(細島秀勝裁判長代読)は判決で「最大4割もの大幅な減額で不利益は重大。経過措置や代償措置を全く講じておらず、合理的とは言えない」と判断した。

 判決によると、札幌大は2007年に定年を70歳から65歳に変更し、本人が希望すれば賃金を引き下げたうえで再雇用するとの雇用延長制度を教職員組合に提案。08年に労働協約を締結したが、11年に一方的に労働協約の破棄を通告し、給与支給の内規を改定したうえで、教授らの年俸を13年4月から引き下げた。

 札幌大は「今後の対応について検討中」としている。【真貝恒平】


2017年10月03日

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明(PDF)

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明

2017年10月3日

 臨時国会の冒頭で、安倍晋三首相は衆議院を解散しました。安倍政権は特定秘密保護法、安保法制(戦争法)、共謀罪、軍学共同など憲法破壊の政治を強行し続けてきました。立憲野党はこの間、憲法第53条にもとづいて臨時国会の開催を要求してきましたが、安倍首相は政治の私物化=「森友・加計」疑惑の追及を恐れて不当にも冒頭解散するにいたりました。疑惑隠し解散以外の何ものでもありません。
 代表質問や予算委員会における質疑をいっさい行わずに解散・総選挙を行うという暴挙を厳しく批判したいと思います。同時に、この選挙を通じて、安倍政権を退陣に追い込み、日本の政治に立憲主義・民主主義・平和主義を取り返す機会にしていかなければならないと考えます。
 総選挙を目前にして、「希望の党」が結成され、民進党から「合流」するという事態が生じています。憲法の改変や安保法制の容認を掲げる小池百合子氏らの政策を見れば、安倍政権が進めてきた政治を転換するものとは言えないことは明らかです。わたしたちは「市民と野党との共闘」にもとづいて立憲勢力が前進することが不可欠と考えます。
 この点で、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が9月26日に、民進党、日本共産党、自由党、社民党に申し入れした「衆議院議員総選挙における野党の戦い方と政策に関する要望」に示された方向が重要と考えます。「要望」では、憲法とりわけ9条の改変反対、安倍政権が行った立憲主義に反する諸法律(特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法など)の白紙撤回、原発再稼働を認めないなど7つの政策を示しています。そして、4野党がこれらの政策を「重く受け止め、安倍政権を倒すという同じ方向性をもって、全力で闘うことを求めます」と述べています。
 今回の衆院選にあたって、政党の解体や新党の結成がどのようになされようとも、立憲主義を重んじる野党や無所属の候補者が、市民連合の「要望」に示された方向で選挙を戦われることに希望を見出したいと思います。そして、わたしたち自身が政治の主役であることを改めて確認したいと思います。
 わたしたちは、この間、安保法制や共謀罪、軍学共同に反対する運動を通じて、京都の大学人の共同を進めてきました。そのような前進を基礎にしつつ、衆議院選挙において、思想・信条の自由を前提にしながら、市民社会とともに立憲勢力の前進を求めて奮闘していく決意を表明するものです。

【呼びかけ人】         
池内了(総合研究大学院大学名誉教授)       
碓井敏正(京都橘大学名誉教授)         
岡田直紀(京都大学准教授)     
岡野八代(同志社大学教授)      
木戸衛一(大阪大学准教授)            
木下由紀子(神戸女子大学名誉教授・京都大学非常勤)
小松浩(立命館大学教授)              
宗川吉汪(京都工芸繊維大学名誉教授)       
高山佳奈子(京都大学教授)             
細川孝(龍谷大学教授)              
本多滝夫(龍谷大学教授)              
松尾匡(立命館大学教授)              

【事務局連絡先】  
細川孝(hosoyanhp@yahoo.co.jp)

東大、職員4800人雇い止めで失職も…組合と大学側が全面対決、国の働き方改革に逆行

ビジネスジャーナル(2017年09月28日)

東大、職員4800人雇い止めで失職も…組合と大学側が全面対決、国の働き方改革に逆行

東京大学安田講堂(「Thinkstock」より)

 東京大学で、政府の進める「働き方改革」に反することが行われようとしているという。詳しく話を聞こうと、東大に向かった。

 赤門をくぐり、三四郎池や安田講堂を見ながら、広大な本郷キャンパスの奥まで進んでいく。周囲と比べると、こぢんまりとした3階建ての建物。入っていくと左右ともにある階段がカーブしながら2階に続いている。2階は生協第2食堂。3階まで上ると、そこから廊下が続いている。古ぼけたソファーや家具、電子オルガンやシタールまでが無造作に置かれている。「楽器は決められた場所で演奏してください」の貼り紙があった。どこかからバイオリンを奏でる音が聞こえてくる。どこの大学も小ぎれいになり、東大も例外ではないだろうが、この一角には昔の大学の空気が流れている気がした。

 長く垂れ下がった白い布暖簾の向こうが、東京大学教職員組合書記局である。入っていくと、執行委員長の佐々木彈氏(社会科学研究所教授)と書記長の高橋登氏(工学系研究科技術専門員)が迎えてくれた。小学生ほどの少年がその部屋にはいる。組合職員のお子さんらしい。

 働き方改革に逆行する東大本部のあり方について、2人は語る。

「男女共同参画とか、一億総活躍、働き方の多様化という世の中の流れに、東大がひとりで逆行しようという企てとしか思えないです」(佐々木氏)

「仕事の内容をよく理解していないから、パートタイムというだけで、単純な作業しかしていないと思い込んでいるんです。実際は常勤職員と同じことをやっていて、長い経験がありますから、常勤職員にスキルを教えていたりします。上は3年くらいで異動するので、深くはわからないのです」(高橋氏)

 2013年4月1日に施行された「改正労働契約法」によって、パートタイムやアルバイト、契約社員、準社員、パートナー社員、メイト社員など、雇用期間の定められた有期契約労働者が、契約の更新の繰り返しによって通算5年を超えた場合、本人の申し込みがあった場合は無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換しなければならなくなった。働き方が多様化していることを踏まえ、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇の差を少しでも埋めようとする施策である。

 契約期間のカウントは、施行の日から始まる。来年4月から、5年間契約期間が続いた有期雇用労働者に無期転換への申し込みの権利が発生する。東大では、その権利が発生する前に5年で雇い止めする規則を設けていたのだ。これによって、1年に約1000人、5年間で約4800人の有期労働者が職を失うことになる。

●現場の実務の実態を無視

 東大の有期雇用教職員には、2つのタイプがある。ひとつは、週38時間45分働くフルタイムで月給制の「特定有期雇用教職員」だ。もうひとつは、週35時間以内のパートタイムで時間給制の「短時間勤務有期雇用教職員」だ。2人が特に力説したのは後者についてだ。

「ワークシェアリングの考え方が進んでいるヨーロッパでは、部長と次長が両方ともパートタイムで、部長が週に3日出てくる。残りの2日を次長が出てくるということがある。2人とも、子育て中のお母さんだったりするわけですよ。だけど会社に行けば、管理職として2人のどちらかがそこにいる。そういう多様な働き方を認めようというのが、今の世の中の潮流であるにもかかわらず、『フルタイムはいい仕事』『パートタイムは単純な反復作業』というような変な身分差別を設けているのが、東大本部のやり方です。子育て中だとか、病気の親を抱えているとか、家庭責任があって、週2~3日しか働けなくとも、本当にいい仕事をしたいという人はいっぱいいるのに、そんなこと一切考えてない。想像もしたことがない。中年男性正社員だけの人事担当者は、こういうことがみえてないです」(佐々木氏)

 話をしていると、少年が「家庭責任って何?」と聞く。「君がここにいるってことだよ」と佐々木氏が答えた。

 東京大学は来年4月以降、公募選考で採用されれば有期雇用の職員が無期雇用になれる新しい雇用形態をつくるとしている。しかし、これはフルタイムの労働者についてである。現在フルタイムの労働者でも、採用されなければ仕事を失う。パートタイムの労働者なら、フルタイムへの道を選ぶのでなければ、そもそも応募できない。

「東大は『週2~3日で無期転換なんてみみっちいこと言わないで、もっといい職をちゃんと用意するから、こっちに応募してくださいよ』と言っているわけです。『単純な作業を週に3日、それを5年以上やるなんて辛いでしょう』というようなことを説明会でも言っています」(佐々木氏)

「うちの研究室の秘書さんは、週3日の勤務です。『夫の扶養の範囲で働きたいから、3日でいいです。時間も短くしてほしい』と本人が言って、うまく調整して働いてもらっている。実際3日間と残業で、なんとかこなせる業務量なんですよ。それがフルタイムになったら、どっちも困っちゃう。こちらには予算に限りがあるわけだし、秘書さんは扶養から外れてしまう。どっちにとっても、いいことはないのです」(高橋氏)

「たとえばの話、特殊な植物に1週間に1回水をやる係の人がいるかもしれない。10~15年勤めあげていて、職人芸になっていたりする。この人をフルタイムにして週5日職場に来ても、やることはないんですよ。だけど週1日のその仕事に関しては、この人は神の手でこなす。こういう人を5人解雇して、その替わりにフルタイムの人を1人雇っても、何をする気なんだと思います」(佐々木氏)

「工学系の事務でいうと、最高レベルの情報を扱っているわけです。パートタイムでも、常勤職員と同じ仕事をやっている。常勤職員だけではやりきれないくらいの数があるから、パートタイムで分担しているわけですが、質としてはまったく同じだし、高いスキルのいる仕事です」(高橋氏)

「社会系の事務だと、データをくれる取引先との交渉に関して、神業を持つ人がいます。その人が週に1日、たとえば火曜日だけ来るということになれば、取引先は火曜日に集中的に連絡してくるわけです。『コーディングはどうしますか?』などと私に言われても、何もわからない。その人でなければ、何もわからないということがあります。しかし、その人に言えばツーカーとわかるから、取引先は毎週火曜日に連絡してくるわけです。それで仕事は回っているので、フルタイムになる必要はない。『フルタイムだったらいい仕事』『週に1~2日だったら単純作業』ということは、まったくないのです。東大本部は、実務がわかっていないのです」(佐々木氏)

「東大内の財務会計システム、旅費システムや購買システムを、パートタイムの人が扱っていますが、けっこう複雑なので、熟知するまで2~3年はかかります。任期の半分です。それであと任期の半分で辞めさせられちゃうというのは困るわけですよ。5年経ったらもうプロですから、離したくないわけですよ」(高橋氏)

「有能な人が任期の途中でどこかに引き抜かれてしまう事態というのは、結構あります。そういう時、残された我々は血相を変えて、代わりのできる人が誰かいないかと血眼になって探すわけです。週に数日しか来ない人たちのやっている仕事の性質を、東大本部は無視していて、『単純な作業を5年も6年も続けていても、本人も嫌でしょう』などと、貶める発言も目につくのです。しかし本人が嫌どころか、取引先だって『えっ、あの人いなくなっちゃったの?』と頭の中が真っ白になってしまうのです」(佐々木氏)

「本部や部局が、難しい財務会計システムや旅費システムなどの講習会を開く時に、呼びかけている相手は、パートタイムの秘書さんたちです。複雑な作業をやっているとわかっているけど、認めたくない。認めると大変なことになっちゃうから。パートタイムの時給が、今1300円くらいですよ。本部は『それに見合う仕事だけさせてくださいね。させていますね』と言うのですが、実際に部局はそういう決して高くはない給料の人にも、同じ仕事をさせてるわけです。逆にパートタイムから仕事を教わっている常勤職員が、その何倍ももらっていたりする。だから、その人たちは不満だらけですよ。同じことをやっているのに、なんでこんなに差があるんだという不満です」(高橋氏)

●クーリングの主旨

 改正労働契約法には、クーリングという考え方がある。契約のない期間が6カ月以上あれば、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めないのだ。有期労働契約が5年を超えたら無期労働契約に切り替えなければならないが、5年に至る前に6カ月のクーリング期間を設ければ、再び有期労働契約ができるということだ。

 厚生労働省によればクーリングの制度はそもそも、デパートなどで繁忙期にだけ働く労働者や季節労働者を想定して設けたものだという。同じ会社で1年間に数カ月だけ毎年働いている労働者に関してまで、無期労働契約への転換を迫るのは使用者に対して酷だ、との考えである。通年働いている有期契約労働者の契約期間が5年に至ろうとする時に、無期への転換を避けるためにクーリングを置くのは、立法の趣旨から逸れており、そうした使われ方には危惧を抱いているが、法的に止める手立てはないとのことだ。

 以前の東大ルールでは、クーリングは3カ月だったが、改正労働契約法の成立に合わせて、6カ月に変えられた。3カ月では改正労働契約法によって、以前の契約期間まで通算契約期間に含まれてしまうからだ。このことから、厚労省が危惧している方向で、東大はクーリングを使おうとしていることも窺える。

「無期転換権が発生しないために6カ月空けるというのは、法の趣旨に反する脱法行為だからやめてくださいと、労働局のホームページでも言っています。6カ月空けて5年来て、また6カ月空けてまた5年来るんだったら、その6カ月になんの意味があるのか。6カ月、その人は何をしてればいいのか。たとえば入札課など、特定業者との癒着を阻止するために、間を空けたほうがいい場合もあるでしょう。しかし、それはごく少数ですし、ほとんどの職種は、継続性があったほうがいいに決まっています。労働契約法が変わった時点で、クーリング期間が3カ月だったのを6カ月にするという業務上の必要性があるのか、と問われれば、これは苦しいですよ。そこを、我々は東大側に団体交渉で突いたのです。そしたら、理事が『今まで3カ月しか雇えなかったところが、6カ月雇えるようになる』とトンチンカンことを言って、あちこちから怒号が飛んで、向こうは黙ってしまったことがありました」(佐々木氏)

「6カ月だけのために働きに来てくれる人がいるのかということと、6カ月で来た人がそれまでのプロフェッショナルと同じだけの仕事ができるのかとを考えたら、無理な話です。無期転換を逃れるためとしか、考えられないです」(高橋氏)

 そもそも東大は、なにゆえ無期労働契約への転換を拒もうとしているのか。

「おそらく、財務が逼迫した場合を想定して、無期契約の職員は解雇しづらいので、雇い止めで人員整理できる有期雇用を残しておきたいという意図があるのではないでしょうか。これが通ってしまったら、他の大学も右へならえで、『東大さんがこうやってますから』というかたちで、間違ったお手本になりかねません」(佐々木氏)

●法的見解

 では、東大のやろうとしていることは、改正労働契約法に照らして、違法にはならないのだろうか。弁護士法人ALG&Associates弁護士の竹中朗氏は、次のように解説する。

「現時点で、東大が定める5年ルールが法の趣旨に反し、違法であるとはいえないと考えられます。そもそも労働契約法18条1項が制定された趣旨は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、いつ雇い止めされるかわからないという不安の中働いている有期労働者の雇用の安定を図ることにあります。

 東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則によると、東大は、有期労働者を採用する際に、5年で雇い止めすることを労働者に伝えていると考えられます。この場合、労働者は採用時から、5年で契約が終わることを予期して働くことが可能なため、いつ雇い止めされるかわからないという状況は事前に回避することができるでしょう。そのため、5年ルールが法の趣旨に違反し、違法であると断言することは困難であると考えられます。

 もっとも、実際に東大が5年ルールを適用し、有期労働者の雇い止めをした場合、労働契約法19条の適用の有無が問題となり、雇い止めの有効性が争われることになるかもしれません。しかしながら、東大が採用時に5年ルールを明確に伝えていれば19条は適用されない可能性もあり、その際、この5年ルールの是非についても争点となるのではないかと考えられます。

 公募選考は、東大の有期労働者が5年ルールにより5年目以降働くことができなくなるという状況の中、5年以上働きたいと考える労働者にとって希望の光となるでしょう。しかし、この公募選考は、5年ルールを前提としたものですので、これが周知されるということは、つまり5年ルールも同時に周知されるものとなり、結果として、雇い止めの有効性を判断する重要な要素である有期労働者の更新への期待はより認められづらくなる可能性があります。その意味では、公募選考は東大の5年ルールによる雇い止めの違法性を弱めるものと考えることができると思います。

 クーリング期間が設けられた趣旨は、無期転換制度が有期労働契約の利用を阻害することを防止することにありますが、無期転換への可能性を狭めるものとして立法段階から問題視されてきたという事情もあります。しかし、実際に施行されている以上、6カ月間のクーリング期間を設け、ある有期労働者を長期間雇い続けることは、18条2項に沿った運用と考えることができると思われます。もっとも、クーリング期間給料は払われず出勤しつつ、再雇用時にクーリング期間分の給与をまとめて払うなど、クーリング期間とは評価できないような運用をしていた場合には、18条の潜脱としてクーリング期間は無効と判断される可能性があります」

●東大の見解

 法曹界に最も多くの人材を送り込んでいるのが、東大法学部である。明らかに違法となることを、東大が行うはずもない。だが、改正労働契約法の趣旨には反しているのではないか。

 東大本部の見解を聞くべく、本部広報課に以下の質問を送った。

【質問1】

 有期雇用の労働者の契約が更新されていき5年を超えた場合、無期契約に転換できる権利を与える、2012年に改正された労働契約法の「5年ルール」は、雇用の安定を図ることが目的だとされています。東京大学は契約が5年に達する前に雇い止めする規則を定めた、と報じられています。財務が逼迫した時に無期契約の労働者は解雇がしにくいなどの意図で、無期転換を拒む動きだと捉える声が聞かれました。実際の意図はどこにあるのでしょうか?

【質問2】

 東京大学は来年4月以降、公募選考で採用されれば有期雇用の職員が無期雇用になれる新しい雇用形態をつくると報じられています。これはフルタイムの労働者についてであると聞いております。有期のうちパートタイム労働者は、女性が4分の3を占めており、育児や介護など家庭責任を抱えながら働いている場合が多いと聞きます。パートタイムのまま無期雇用される道は開かれておらず、政府が掲げている「働き方改革」に逆行しているとの声もあります。いかがお考えでしょうか?

【質問3】

 現場の先生らからは、週1~3日の勤務でも複雑な業務を熟している労働者は多いと聞きます。東京大学本部が呼びかける、財務会計システムや個人情報の講習会に参加するのもパートタイム労働者が多く、彼らが複雑な業務を熟していることは、本部も承知しているはずだとの声もあります。現場が彼らを必要とするなら、6カ月のクーリングを設ければいいわけですが、6カ月クーリングして、また5年働くのだったら、6カ月空ける意味はどこにあるのか、との疑問の声もあります。いかが、お考えでしょうか?

【質問4】

 厚生労働省は無期転換することの企業へのメリットを、「意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなる」「長期的な人材活用戦略を立てやすくなる」と説明しています。

 5年を待たずに前倒しで無期転用している一般企業も増えていると聞きます。一般企業が「働き方改革」を進めているのに対して、日本の知のトップリーダーである東京大学がそれに逆行しているように見受けられるのですが、いかがお考えでしょうか? 

 東大本部広報課の返信は、以下の通りであった。

「ご質問いただいた内容については、大学として検討を重ねている最中であり、また、職員組合とも協議を進めているところでございます。それぞれのご質問への回答について、上記の状況を踏まえて、改めてご回答させていただきたいと考えております」

 現在のところ、東大本部は回答を持ち合わせていないようだ。

 東京大学のホームページを開くと、五神真総長による「総長あいさつ」に次のようにある。

「社会の姿が急速に変化する現代において、東京大学憲章に掲げる、人類社会全体の平和と福祉のための学術を現代的な形で押し進めるためには、時代の要請に応える柔らかさを備える必要があります。伝統として守るべきものはしっかり堅持する一方で、システム改革が欠かせません。これまで進めてきた学部の教育改革を定着させつつ、知のプロフェッショナルを鍛え価値創造の主体となる大学院の抜本的改革を進めます。同時に、男女共同参画、若手登用、流動性と安定性を両立させる人事制度の実現、これらは最重要の課題です。この改革を推し進める前提として、科学と学術の社会からの信頼を高めていかねばなりません。その基本である研究倫理と規範の徹底と、産学連携機能の強化は喫緊の課題です」

 働き方の多様化という「時代の要請」に、「世界を担う知の拠点」として、東京大学はしっかりと応えてほしい。
(文=深笛義也/ライター)

2017年09月08日

東京工科大学で「パワハラ抗議自殺」

2017年9月号 LIFE

 有名学長に疎まれた大学教員が再雇用を撤回され、研究室内で首吊り自殺。大学側は労基署に届けず箝口令。

東京・八王子市の東京工科大学の軽部征夫(いさお)学長(75)は東京大学先端科学技術研究センター教授などを歴任した著名な学者である。人の遺伝子配列を調べるゲノムチップの研究、ワインやパンの酵母菌を使った有毒物質検出センサーの開発などの業績で知られ、立花隆や筒井康隆と対談するなど、一時はバイオ分野の花形教授だった。だが、他方では、東大先端研時代に、大学院生名義の通帳に架空の研究費を振り込ませていたとして「サンデー毎日」で批判されたこともある。その高名な軽部氏が学長を務める東京工科大学で、教員の自殺事件が起きていたことが本誌の調べでわかった。いったん大学が再雇用を決定した教員が、その後、上司の学部長から解雇を通告された挙句、大学内の自分の個室で自殺していたのだ。関係者によると、教員は軽部学長から「徹底的に嫌われていた」といい、大学内では、軽部氏 ………

2017年09月07日

宮崎大学による「ハラスメント捏造」その悪辣手法

紙の爆弾9月号

 二〇一六年十月十八日、筆者が以前勤務していた宮崎大学から嫌疑をかけられたハラスメント事件での無実が最高裁で確定した。この事件は、その後、宮崎大学(以後宮大)に文科省の指導が入るという異例の事態になり、ハラスメント捏造事件として、現代ビジネス(一七年三月二十八日付)、週刊金曜日(同三月三十一日付)、西日本新聞(同五月三日付)、朝日新聞(同五月十日付)などで大きく報道された。石原俊「日本の大学をぶっ壊した、政官財主導のガバナンス改革」(現代ビジネス同五月十二日付)でも無理筋のでっち上げ事件として紹介された。
本件は、一二年六月、筆者が女子学生の「裸写真」を、指導学生の卒論に無理矢理入れさせたなどの虚偽発表を宮大行い、全国的に報道された。ハラスメントは一四項目で、一項目に数件あり、三〇件を越えるハラスメントが捏造されている。その詳細は三月二十八日付の現代ビジネス(田中圭太郎)を参照されたい。
本稿では、宮大がどのようにハラスメントを捏造し、筆者を陥れたのかを、証拠保全で宮大から押収した証拠資料をもとに検証する。

捏造組織の「特別調査委員会」

事の発端は、一二年二月二十四日に筆者のゼミ生である女子学生Aが精神疾患で自殺したことから始まる(筆者は同年二月七日に卒論成績を出している)。Aに関しては、彼女を最初に診察した宮大附属安全衛生保健センター(以下、センター)医師、およびセンターが紹介したクリニックの佐藤医師から、①詳細な記録を付けること ②Aを一人にしないこと ③Aには二人以上で対処すること ④紐、ライター、カッターを渡さないことなどを指示されていた。センターとは、Aの件で頻繁に情報交換していた。
Aは発病前から友人関係などでトラブルを抱えており、「○○とは会いたくない」との要望も多かったが、発病後は暴力的になることも多かったので、筆者がAと会う際は、医師の指示通りゼミ生のBとC(ともに女子)のどちらかが同席していた。Aが特に避けていたのがゼミ生Dなので(理由の記載は控える)、ゼミ時間をずらして二人が会わない配慮をしていた。Bのゼミの様子を知っているのは筆者とゼミ生IとTの3人だけであった。
Aは、Bと「学部重点経費(学生・院生の研究プロジェクト)」に「癒やし宮崎の映像表現」(以下「学生企画」)で応募を企画していた。途中、筆者のゼミ生ではない学生四名が加わったが、その一人が、竹川昭男准教授のゼミ生e(ゼミと無関係な学生は小文字表記)である。eが学生企画でまとめた冊子が「『裸写真』の掲載された卒論」とされ、さらには自殺したAの卒論に捏造され、ハラスメント事例とされた。「裸写真」は「学生企画」で撮影されたものだった。
この「学生企画」の責任者(認可者)は兒玉修学部長(当時)で、記者会見で虚偽発表をした人物である。なお、会見の内容は裁判で名誉毀損が認定され、多額な慰謝料が国民の血税や学生授業料から支払われている(兒玉は本事件後、副学長に昇進している)。
 本捏造事件を行った中心は「特別調査委員会」(以後「委員会」)なる組織だ。メンバーは原田宏・岩本俊孝・石川千佳子の3名。しかし、この「委員会」の設置自体が学則上、極めて根拠に乏しいように思われたので、弁護士を通して大学当局にその根拠を質問すると、大学当局は「根拠規定や条項は存在しないが、学長の権限(裁量)によって設置された」(原田宏名義一二年三月十九日付)と回答してきた。この文書から、この時点ですでに宮大が学則無視の状況にあったことがわかる。学長権限は国立大学法人化で強化された。法人化後、宮大の学長は全て医学部教員で、独裁体制に拍車がかかっていると推測される。
 この原田名義の書類に「委員会」の目的は「亡くなった学生の卒論指導上、教員として適切な指導がなされたのかどうか、又、その経緯・写真の必要性を調査」と記されている。つまり、「委員会」の目的は、Aの卒論指導を調査することであるが、実際に行われたのは、Aとは関係のないハラスメント事項の捏造であった。石川(当時教務長)は大学側代表として法廷(証人尋問)で「自殺したAのことは全く調べていない」、さらには「(Aの発病時から対応をしてきた)センターにも全く連絡をしていない」と証言している。大学側にとって、センターがケアをしていたのに自殺が起きたと外部に知られると困るからであろう。「委員会」の本当の目的は、Aの当時の状況を明らかにすることでなく、最初から筆者を懲戒解雇することにあった。筆者はAの入院の必要性をセンターに再三伝えたが、Aの主治医(宮大医学部教授)は入院させなかった。さらに、Aの入院を主張したセンター医師が筆者の前に、やはりセクハラ嫌疑で懲戒解雇になっている。そこから、本件は医学部(Aの主治医)を守るための捏造事件だった側面が強いと推測できる。医学部絶対主義の思想である。

特別調査委員会の手法

 石川らはAの卒論ゼミに同席していたBとCを一切調査せず、代わりに彼らが調査したのは、「Aから会いたくないと言われた」「Aのゼミは知らない」と自ら証言しているゼミ生Dと、そのDが連れてきた学生f・gとeらである。fとgの二人も、自殺したAから「会いたくない」と伝えられた人物で、もちろん筆者のゼミとは関係ない。筆者の知るところでは,「委員会」が本件で最も利用したeも、Aとトラブルを起こしていた。
結果として「委員会」は、Aに対してやましいところのある学生らを利用したのだ。学則無視の姿勢を終始貫く「委員会」が使った手法を整理する。

(1)関係者を調査せず、悪意ある伝聞証言を多数集めて虚偽報告書を作成
学生調書には伝聞であることが記されているが、石川作成の報告書ではすでに直接的関係者のごとく扱われ、実際にAの様子を知るBやCの存在は審議会等には全く報告されていない。さらには、「裸写真」の撮影に関しても証言したのはeだけで、代表者のBや他の撮影当事者が委員会の調査を受けると申し出ても拒否している。
実は、ハラスメント認定をした時点では、卒論(とされた「学生企画」の冊子)や「裸写真」の事情聴取をeに対しても行っていなかった。つまり、誰一人当事者を調査していないにも関わらず、「事情聴取した殆どの学生等からの多くの具体的証言を得ている」と言った虚偽事項で報告書がまとめられ、大学執行部を欺くに至っている。しかし、そのような調査委員を任命したのは他ならぬ大学執行部であり、大学執行部が「報告」と「検証」のチェック機能を全く理解していなかったことの帰結だ。ちなみに、その虚偽報告の直後、つまり当事者を全く調査していない段階で筆者の懲戒解雇が決定している。

(2)ハラスメント申立書そのものを捏造
一二年三月十一日付けのハラスメント申立者は、D・f・gの3名。ハラスメント項目として「指導学生への就職妨害、屈辱的発言、漫画掲載、卒論指導上の資料提供の渋りと不当な要求、学生等の写真の雑誌への無断掲載、学生の裸体写真の撮影と卒論掲載、飲酒を伴い女子学生と2人だけで研究室に居るよう強要」等と羅列されている。これらの内容はDとfの調書に基づくと書かれているが、実際、Dとfの調書には書かれていない項目ばかりだ。
これらの事実から,石川らがあらかじめ話を作り上げて、学生らに証言させたと考えられる。マスコミは、eが「裸写真」の卒論でハラスメント申し立てをしたかのように報道したが、実際、eは何ら申立てをしていない。またeの事情聴取が行われたのは、ハラスメントが認定(懲戒解雇決定)された約三週間後の四月十七日である。eは宮大とDに利用されただけだが、ありもしない「裸写真」を撮られたレッテルと、裁判で偽証した事実を一生背負っていくことになる。申立者として名前のあるgの聴取日も、ハラスメント認定から約1ヶ月後だ。
申立書には、学生の直筆サインもなければ捺印もない。作成日も三月十一日でなく三月二十三日で、ハラスメント認定会議の直前に農学部事務のパソコンで作成されていることが判明している。明らかな捏造である。

(3)「無理矢理」「しつこく」「嫌がるにも関わらず」等の付加。
大学側が出してきたハラスメントに関する質問項目には、「H23年度卒業生に東京の方へ就職するようしつこく勧誘したか」「H23年度卒業生に自分の卒論指導を受けるように無理強いしたか」「H23年度卒業生に対して、卒論用の資料を渡さず、学生を困らせたか」「半裸の写真を学生が嫌がるにも関わらず卒論内に入れるよう指導したか」等である。すべて「無理矢理」「しつこく」「嫌がるにも関わらず」等が加えられている。
 就職関係の質問項目への筆者の確認に対し、辻褄合わせに大学が言ってきたのは、筆者が「東京でビルを建て会社を始めるので、そこに就職するように複数の学生をしつこく誘った」とのことだ。筆者はビルも会社も持っていない。ゼミ生は、ほぼ全員が大学院に進学し、就職を勧誘する余地がなかったのが実態だ。
 卒論指導を無理強いしたとのは、大学側の主張では「H22年の夏、eをAと共同で卒論を書くように無理に勧めた」とのことだ。eは筆者と学科が違う竹川ゼミの学生で、eを知ったのもH23年だ。大学側がハラスメントを立件するため、eの卒論を筆者と強引に関連づけようと企んでいたことがわかる。eの陳述書には「誘われたが断る理由もないので了承した」と書かれているだけで、「無理に」など、どこのも書かれていない。石川らの捏造である。ちなみに「誘われた」こと自体が虚偽だ。
 卒論用の資料を渡さないという件は、学生の調書にもこの件は全く書かれておらず、石川らの完全な捏造と言える。大学側がハラスメントを認定した後に、Dとeが大学側に口裏を合わせた証言をしているが、そもそもDとeはAの卒論ゼミは知らないと証言しており、証言の矛盾は覆いようもない。結局、最高裁判決後も具体的にどの資料が問題にされたのか全くわからないままだ。
 「裸写真」の卒論に関しても、eの調書に「嫌だった」「無理矢理」「写真を入れるよう指導を受けた」等は一切書かれていない。調書には「(eが)自分で卒論を早野研究室に持っていったが、そのままだった」と書かれているだけだ。筆者が知らないうちに勝手に研究室に置いていかれたのだから、「そのままだった」のは当たり前だ。石川らによって「嫌がるにも関わらず」「裸の写真を入れるよう指導した」が加えられて、マスコミに発表された。ちなみに「裸写真」とは、eの陳述書に「白衣をまとい、それ以外は何も身に着けていない」と書かれているが(その陳述書は宮大代理人[大迫弁護士]が書いたもの)、以下の写真の通り、裸ではない。ここからもeが大学側に利用されただけとわかる。

宮崎大学が裸体と発表した写真

(4)具体的なことを聞いたらハラスメント認定
 前記(3)で述べたように、荒唐無稽な質問項目ばかりなので、「思い当たらないので、いつ、誰に対して何をしたのか教えてください」と回答したら、「『誰が、いつ、何処で』など具体的なことを問うてくること自体極めて不自然なことであり、自ら関与していると考えられる。」(ハラスメント調査結果一二年三月二十七日付)としてハラスメント認定された。おそらくナチスドイツでも、もう少しまともな理由を付けてくると思われる。

(5)時系列を無視
 調書を取る前に、ハラスメント事項をつくる。ここまでなら悪質企業でもしそうだが、宮大ではハラスメントを認定してから、その根拠となる調書を取っている。質問項目が抽象的なのはこのためで、筆者が何か答えたら、それに合わせて捏造する予定だったことがわかる。ハラスメント申立書も、ハラスメント事項を先につくって、後付けで学生から調書をとる。ハラスメント申立書や学生調書の杜撰さは、すべて書き換える前提であったからと考えられる。おそらく証拠保全が入らなければ、日時や内容を一切変えて書類を偽造していたであろうと推測できる。
eに対するセクハラも、最初は二月中旬と言っていたが、「二月中旬は東京に出張中」と伝えると、eに確認したら 二月二十日だったと変え、「二十日は一日県庁で仕事」と伝えると、今度は、二十一日だった変える。このように、何度も日にちを変えて、筆者が証明できない日を探ってきた。飲酒を強要したと件も、筆者が出張の日ばかりだった。

(6)吹き込みと口裏合わせ
 石川作成の学生調書には、石川がどのような質問をしたかが全く書かれていない。誘導尋問を隠すために使われる手法だ。Aの自殺後、Aの状況を調べるはずの最初の調書が「早野教員についての学生からの事情聴取」(一二年二月二十九日付)となっている。最初から、筆者を陥れる前提であったことがわかる。「委員会」設置から3週間で懲戒解雇を決定するには、最初から懲戒解雇前提でないとできない。
 先ほどの就職に関して、fは「eが就職に誘われていた」と証言し、そのeは「自分は誘われていないがAが誘われていた」と証言している。言っている内容はバラバラである。石川は法廷で「自分からは質問していない。学生が勝手に言った」と証言して、すべての責任を学生に押しつけているが、誘導尋問していることは明らかだ。法廷で大学側に学生を事情聴取した際の録音の提出を求めたが、大学側は録音をとっていないと言い張った。かなり強引な誘導尋問があったと考えられる。
Dの調書には石川らと連絡を取り合って「学生たちと情報を共有」すると書かれているので、「委員会」とDが口裏を合わせていたことは間違いない。eは法廷で「Aの死後、eに話を聞いて考え方が変わった」と証言しており、fの調書でも多くがDから聞いたと書かれている。Dが中心となって学生らに嘘を吹き込んだと考えられる。吹き込んだ側のDは大学側の証人(同行)として証人尋問の日時も決まっていたが、出廷しなかった。
 一二年四月九日に、「裸写真」の撮影参加学生から連絡があった。その学生によると、石川らは「早野がAを自殺に追い込んだので許してはいけない。ぜひ協力してほしい」と話したらしい。その学生は事情聴取を受けたが誘導に負けずに「私は最後まで抵抗しました」と電話で伝えて来た。しかし、その学生の調書はない。おそらく、この時点で当事者から調書を取ると「委員会」の虚偽が明るみに出ると判断して、当事者の事情聴取を一切拒否しだろう。石川から撮影参加者らに「あなた方の調査はしない」と連絡が来たのは、その学生の事情聴取後だ。また、原田らは学生らの自宅まで行って証言をお願いしていたことが裁判資料でわかった。学生の虚偽証言だけが、大学側の頼りだったわけだ。

(7)目的・権限無視
 「亡くなった学生Aの卒論指導を調査する」はずの委員会が、Aへの卒論指導に同席していたBとCの調査を拒否しているだけで業務放棄であるが、逆に、権限のないハラスメント調査(捏造)をしだす。ハラスメントならば、学則上、ハラスメント委員会が調査しなくてはならないが、すべてのハラスメント調査の報告を特別調査委員会が行っている。この学則無視の越権行為を許したことが石川らの暴走を許すことになった。

一日で卒業できる宮崎大学
 「根拠規定や条項は存在しない」特別調査委員会が設置された段階で、すべての捏造が可能となる。今回は前記の(1)~(7)にまとめたが、それらの手法を使うと荒唐無稽な話ですらハラスメントが捏造できてしまう。国立大学法人化後の学長独裁がどれだけ危険であるか、大学人は認識しなくてはならない。
 宮大は、正式な書類でも竹川ゼミ所属のeを、筆者のゼミ生に捏造した。そのeの卒論指導に関してもとんでもない主張をしている。
eは、筆者のゼミは受けていないが打ち合わせがあったと証言している(おそらく言わされている)。その打ち合わせは、eの調書によると四回ほど「三分だけで、その後はAだけとメールでするようになった。」とある。具体的にはどの様な打ち合わせであったか不明だが、これを宮大は卒論指導だったと主張してきただ。
四×三分で合計一二分。しかも、打ち合わせ相手は筆者でなくAである。卒論は六単位なので、宮大では、学生同士で一二分打ち合わせをしたら六単位認められると主張したことになる。仮に卒業単位が一三〇単位とすると、約二六〇分(三コマ)で卒業できることになる。このことを当時の学長(菅沼龍夫)と副学長(原田・岩本)が裁判で主張したのだから驚きだ。宮大執行部に大学としてのプライドはない。
これだけ荒唐無稽な主張でも、裁判では、組織(大学)対個人となり、個人が圧倒的に不利になる。ある法学者から、個人に一〇%の非があれば、大学が勝訴すると言われたことがある。大学は組織として捏造などしないという先入観が、一般や裁判官にあることが原因だ。本誌前号では、大学組織ではインチキが日常茶飯事で起きていることを述べたが、大学社会は一般企業よりも暗黒社会なのだ。(文中・一部敬称略)

早野慎吾(はやのしんご)
都留文科大学教授(社会言語学)。宮崎大学准教授を経て現職。


2017年09月05日

「視覚障害で事務職に」准教授が不当訴え

日テレNEWS24(2017年9月4日)

 岡山短期大学の准教授が「視覚障害を理由に授業や研究を外されたのは不当」と訴え、
文部科学省に短大への是正指導を求めた。

 4日に5500人分を超す署名を文科省に手渡したのは岡山短期大学准教授の山口雪子
さんと支援者ら。山口さんは、網膜の異常から視野が狭くなる障害があり、去年、短大側
から、「授業中に飲食する学生に気付かず注意できなかった」などとして、授業や研究か
ら外され、事務職への変更を命じられたという。

 この問題では今年、岡山地方裁判所で「職務変更命令は無効」とする判決が出されたが
、短大側が控訴している。

 山口さん「私はただただ教壇に戻りたいだけ。障害のある教員が活躍できない、排除さ
れる、健常者じゃないと教員になれないという。このままでいいんですか」

 山口さんらは、「保育者を養成する教育課程として許されない状態」だとして、視覚障
害者の教員にも補助員をつけるなどして、差別のない教育推進を、と求めている。一方、
岡山短期大学は取材に対し、「担当者不在のためコメントできない」としている。

視覚障害の准教授 短大側の不当対応に是正要請

テレ朝(2017/09/04 23:29)

 岡山短期大学の視覚障害のある女性准教授らが授業や卒業研究の担当から不当に外されているとして、文部科学省に是正指導を求めました。

 5000人以上の署名を集めて文科省に要請にきたのは、岡山短大の准教授・山口雪子さんと支援者です。山口さんは視野がだんだん狭くなる障害があり、自ら補佐員を雇って授業をしていましたが、授業中に飲食していた学生を注意できなかったなどの理由で短大側から事務職になるよう命じられたということです。山口さんらは短大側を提訴し、一審では授業を外す命令は無効という判決が出ていますが、山口さんは授業に復帰できていないということです。短大側は控訴しています。文科省への要請について、短大は「事実関係が分からないのでコメントできない」としています。

2017年08月10日

常葉学園短大不当解雇事件、解雇無効「5度目」の判決

県評しずおか・復刊第100号)2017年8月10日

解雇無効「5度目」の判決

 速やかに職場復帰を常葉学園短期大学の補助金不正受給を内部告発した准教授が、懲戒解雇されたのは不当だとして、学校法人常葉大学を訴えた裁判が7月13日東京高裁であり、高裁は学園側の控訴を棄却しました。地位保全の仮処分裁判も含めると5度目となる解雇無効の判決となりました。
 准教授は、学園の補助金不正受給を上司に指摘すると、「人間のクズ」などと叱責されパワハラを受けたため理事長に助けを求めたところ、学園の危機管理職員が、暴力団との交際をほのめかし、不祥事を表ざたにしないよう働きかけてきました。
 准教授は、不正受給を公益通報し、理事長らを脅しなどで刑事告訴したところ、学園内の秩序を乱したとして、懲戒解雇処分されました。この懲戒解雇は不当だとして、地位の確認と慰謝料を求め、裁判を起こしました。
 東京高裁は13日、懲戒解雇・普通解雇は、懲戒権と解雇権の濫用であり無効として学校法人常葉大学に解雇後の給与および遅延損害金の支払いを命じました。
 常葉大学は、補助金不正にかかわった関係者を処分せず、暴力団との関係を発言した危機管理担当者に至っては昇格させています。
 「学園は、一日も早く准教授を職場復職させ、風通しの良い学園にすることを求めます」。
 東京高裁は「懲戒解雇が内部告発に対する報復であることは否定できない。解雇は相当でない」と指摘しています。常葉大学はこの命令を真摯に受け止めるべきです。しかし、常葉大学は最高裁判所への上告をしました。


2017年07月31日

同志社大学の不当解雇問題、浅野健一氏の定年延長に不正過小評価するための捏造か

人民新聞(1622号)2017/7/27

浅野健一氏の定年延長に不正過小評価するための捏造か

同志社大学の不当解雇問題

2017/7/27 1622号, 社会・文化運動

文責・編集部

 2014年、浅野健一氏は、同志社大学大学院で定年延長が拒否され、解雇されたのは不当として、教授としての地位確認などを求めて裁判を起こした。一審京都地裁判決で主張を退けられたが、始まったばかりの控訴審では、大学院の委員会が定年延長を許可しないと結論付けた際、判断材料になったとみられる浅野氏の研究業績が捏造されたものだった、との疑惑が新たに浮上した。

 きっかけは、控訴審にあたって浅野氏の代理人が、同志社大学が行った評価方法が適切だったかどうかを都留文科大学の早野慎吾教授に検証依頼したことによる。浅野氏の評価資料を作った中心は、同大学の小黒純教授。その資料には、浅野氏を過小評価するためのあり得ないほどの間違いが記載されていた。

 以下、早野教授が検証した結果である。まず、資料冒頭に、「(浅野氏に)大学院の教授の水準を満たす研究はない」と書かれている。浅野氏は、大学院担当教授として文科省が行った業績審査に合格判定されているので、明らかな間違いだ。文科省の審査に合格した教員(いわゆる○合教員)は、非常に少ない。

 「CiNii Articlesに基づく」との前置きで、「1994年4月以降、査読により本学外の学会で認められた論文は1本もない」とある。CiNii Articlesとは、国立情報学研究所が提供している学術論文検索用のデータベースサービスのことで、そもそも、CiNii Articlesに査読付か否かの検索機能はない。学術論文には、査読付とか審査付と呼ばれるものと、そうでないものがある。査読付論文とは、審査者が査読を行い合格した論文で、査読なしの論文よりも学術的価値が高いと評価される。また、雑誌の種類にもよるが、国内で発表された論文よりも海外(表記は主に英語)で発表された論文の方が、学術的価値が高いとされる。浅野氏は「Japan and America's War,” Harvard Asia Quarterly, Autumn 2001」など、海外で発表された査読付論文が5編ある。浅野氏に審査付論文が1本もないというのは、明らかな間違いである。

 さらにCiNii Articlesの検索結果として「(浅野氏が)2009年から2013年9月において発表されたのは、いずれも査読なしで、単著の論文は1本、大学院生との共著の論文2本、研究ノート2本のみ」と記されている。早野教授がCiNii Articlesで「浅野健一」「2009年~2013年」という条件を入力して検索すると、57件検出できた。筆者の目の前で検索したので、間違いない。単著53編・共著4編である。53編の単著を51編と間違える程度は起こりうるが、53編を1編(資料では1本と表現)と間違えることはあり得ない。ここまで来ると、間違いではなく「捏造」の可能性が高いと早野教授は判断している。

 さらに資料には、「研究論文の基本的作法が守られていない」「理論矛盾、私的体験の一般化」「大学院教授として品位にかける表現」など、誹謗中傷以外の何ものでもない内容が羅列されている。「浅野氏の業績を極端に過小評価させるための捏造書類を元に出された委員会決議は、すぐにでも撤回されるべきではないか。これを許すと大学自体が崩壊する」と、早野教授は警鐘を鳴らしている。

 なお、大学と小黒教授にこの原稿を送って疑惑の回答を求めたが、回答はなかった。

常葉大短大部不当解雇事件、東京高裁判決 懲戒解雇無効 2審も支持

中日新聞(2017年7月20日)

懲戒解雇無効 2審も支持
東京高裁判決 常葉学園准教授訴訟

 刑事告訴したことを理由に懲戒解雇されたのは不当解雇だとして常葉大学短大(静岡市)の男性准教授が、運営する学校法人常葉大学に対し、解雇無効などを求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であって。大段亨裁判長は解雇の無効と解雇後の給与の支払いを認めた1審判決を支持し、原告、被告双方の控訴を棄却した。判決は13日付。
 准教授は2012年、学園内の補助金不正受給問題を調査していたところ、学園側からパワハラを受けたとして、学園理事長らを強要罪で静岡地検に刑事告訴し、不正受給を内部告発した。その後理事長らは不起訴処分になり、学園は2015年に、信用を損ねたとして男性准教授を懲戒解雇した。
 今年1月の1審、静岡地裁判決は「刑事告訴は、就業規則の懲戒解雇事由に該当しない」と判断していた。控訴審判決で大段裁判長は「懲戒解雇が内部告発に対する報復であることは否定できない。解雇は相当ではない」と指摘した。解雇による精神的苦痛に対する慰謝料請求は認めなかった。
 准教授は本誌の取材に対して「学園側の反省はない。組織性を問う内部告発が委縮する」と述べた。常葉学園の担当者は「判決は非常に遺憾だ。上告するかどうか検討したい」と語った。


常葉大学パワハラ被害訴訟、学園「上告の方針」

■静岡新聞(2017年7月20日)

常葉大学パワハラ被害訴訟
学園、「上告の方針」

 パワハラ被害の告訴をしたことで懲戒解雇されたのは不当だとして、常葉大学短期大学部の40代の男性が常葉学園(静岡市葵区)を相手取り、処分の無効確認などを求めた訴訟で、同学園は19日、原告と被告双方からの控訴を棄却し、懲戒解雇の無効を認めた1審静岡地裁判決を維持した東京高裁判決を不服と判断し、最高裁に上告をする方針を固めた。学園の関係者が明らかにした。
 同学園の幹部は「判決は著しく不当なので納得できない。裁判所には「再度審理」をしてもらいたい」と話した。控訴審判決では告訴自体は懲戒の理由にはなりえると認めた一方で、解雇は重きに失するなどと判断していた。


2017年07月26日

奈良学園大学解雇事件、提訴報告

民主法律協会
 ∟●奈良学園大学事件・提訴報告

奈良学園大学事件・提訴報告

2017年05月15日

弁護士 西田 陽子

平成29年4月25日、被告学校法人奈良学園(以下、「被告法人」という。)によって同年3月31日をもって解雇・雇止めされた(以下、「本件解雇雇止め」という。)奈良学園大学教員8名が原告となり、奈良地方裁判所に提訴した。また、提訴の約2週間前である同年4月13日に、原告らは、奈良県労働委員会に対して、被告法人による不当労働行為に対する救済申立て(支配介入、不利益取扱い)を行った。

本件は、被告法人が過去に起こした不祥事等により、奈良学園大学ビジネス学部・情報学部の後継学部として設置する予定であった現代社会学部の設置申請を取り下げざるを得なくなり、現代社会学部の設置が不能の場合にはビジネス学部・情報学部の募集を継続するとしていた付帯決議を削除し、両学部教員を整理解雇する方針に急遽転換したという事案である。

原告らは、奈良学園大学教職員組合を結成し同法人と団交を続けていたが、議論は平行線であった。その後、奈良学園大学教職員組合の組合員は、奈労連・一般労働組合に個人加入し、労働委員会におけるあっせん及び団体交渉を続けた。しかし、被告法人は、労使双方が受諾した「労使双方は、今後の団体交渉において、組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する」というあっせん合意に反し、「事務職員への配置転換の募集に対するお知らせ」と題する書面を配布したり、本件解雇雇止めの通知を一方的に送付したりした。

本件のもう一つの特徴は、被告法人が、現代社会学部設置の計画が頓挫した後も、社会科学系の学部である「第三の学部」の設置を模索しており、これを一方的に凍結して原告らに対して本件解雇雇止めの通知を行った後、再び「第三の学部」の設置を検討し始めたということにある。この事実は、原告ら組合員を排除する目的の表れであり、また、解雇回避努力を尽くしていないことの表れでもある。

原告らの専門性を活かす場としての教育・研究センター(仮称)の設置についてまともに検討しなかったこと、他学部への配置転換を認めなかったことなども、被告法人が解雇回避努力を尽くしていないことの裏付けとなる。

さらには、被告法人は、既に本件解雇雇止めを通告されていた原告らに対して、平成29年3月下旬になって、突如非常勤講師として出講することを打診したが、その後撤回した。当該打診は、被告法人にとって原告らを解雇雇止めする必要性がないどころか、被告法人の大学運営にとって不可欠の人材であることを示している。

以上のような事実関係を前提に、訴状においては、①原告らに対する解雇及び雇止めの本質は、組合嫌悪の不当労働行為に他ならないこと、②だからこそ、整理解雇の4要件(要素)も満たしていないことを、主張した。

訴状提出後、同年4月25日午後1時より、佐藤真理弁護士、山下悠太弁護士、原告らが記者会見を行い、被告法人による不当労働行為及び整理解雇の不当性を訴えた。原告である川本正知教授は、記者会見において、被告法人が欺瞞的大学再編を推し進め、その大学再編を口実として、大量の不当整理解雇をおこなったことに対する経営責任が厳しく追及されなければならない、また、特定の教員の解雇を目的とした学部・学科廃止は絶対に許されることではない、と述べた。また、川本教授は、労働運動に対する不当きわまりない攻撃であり、労働三権の否定であって、これはまさに、憲法の保障する基本的人権の侵害であることも主張した。

杜撰な経営を行ってきた被告法人によって、被告法人の発展に寄与し、正当な組合活動を行ってきた原告らの権利が脅かされるようなことがあってはならない。組合の粘り強い団交の結果、被告法人は、ついに、原告らを非常勤講師として雇用する意向を示した。

本件は、執筆者にとって初めての本格的な労働事件である。先輩弁護士の背中から大いに学び、原告らとともに熱意をもって戦うことで、早期に事案が全面解決されることを切に望む。

(弁護団:豊川義明、佐藤真理、鎌田幸夫、中西基、西田陽子、山下悠太)


奈良学園大学教職員組合、「不当解雇撤回に向けての私たちの闘い」

奈良学園大学教職員組合
 ∟●不当解雇撤回に向けての私たちの闘い

経過(概要

不当解雇撤回に向けての私たちの闘い

2017年4月

はじめに

 学校法人奈良学園(理事長:西川彭(ちかし)、元奈良県教育長、以下奈良学園)は、幼小中高大の各種学校を持つ学校法人です。この3月末に奈良学園大学で教員の不当な大量解雇が強行されました。この暴挙について以下に概要をお伝えします。

大学再編における欺瞞と既存学部教員約40名の大量リストラ

 奈良学園は奈良産業大学の学部再編を計画した時、既存のビジネス学部と情報学部を「現代社会学部」とし、また新たに「人間教育学部」と「保健医療学部」を設置するという3学部体制を構想しました。既存学部の大学教員の所属先として「現代社会学部」を作る条件で、既存のビジネス・情報の2学部の学生募集を停止したのです。

 しかし、奈良学園は、平成25年8月、文部科学省への学部設置認可申請過程で多くの欠陥を指摘され、「現代社会学部」の設置に失敗しました。奈良学園は、約40名の新規教員を大量採用し、平成26年4月に新たに「人間教育学部」と「保健医療学部」の2学部を設置し、奈良産業大学を奈良学園大学と名称変更しました。その一方で、「現代社会学部」の設置に失敗した結果、失敗の責任を負うべき理事会によって旧奈良産業大学の時から勤務している約40名の教員の大量リストラ計画がもちだされました。

許しがたい奈良学園のやり方

 奈良学園は、「現代社会学部」ができなければビジネス学部・情報学部の2学部が存続すると約束していましたが、現代社会学部の設置に失敗するやいなや、約束を反故にして大量リストラ計画をもちだし、「警備員なら雇ってやる」と脅迫しビジネス学部・情報学部の既存教員の退職を迫ってきました。

 奈良学園の騙し討ちのような対応は法的にも、道義的にも許されず、ましてや教育機関が行うことではありません。

不当解雇は絶対許さない

 最近10年間で300億円超の設備投資を行いながらも、現時点で法人として無借金で約200億円超の流動資産を持っております。また、大学をさらに拡充させる構想をもっております。このような経営危機とはほど遠い状況で大量の教員を解雇するなど前代未聞です。

 大学では、様々な形で教員を活用することができ、現にどこの大学でもそうしています。実際、奈良学園もこれまでに解雇を行った前例はありません。

 奈良学園の現理事会は、前理事会の不祥事の結果、正常化路線を掲げつつ誕生し、学園全ての児童・生徒・学生・教職員を大切にする「人間中心主義」を理念としてとなえ続けていますが、この解雇はこの理念を自ら蹂躙する行為です。西川理事長と理事会は教育機関を運営する資格はありません。

 奈良学園は、長年にわたって奈良学園の高等教育を支えてきた教員を徹底的に排除しました。強行された不当解雇に対して、私たちは断固闘います。

闘いの現状

 私たちは、3年間にわたって理事会の経営責任を追及し、全教職員の雇用をまもるために闘ってきました。これに対して理事会は誠実に対応することはなく、組合から既存教員の所属先として提案した「教育・研究センター」設置案もまともに取り上げることもしませんでした。そのため昨年11月私たちは奈良県労働委員会に奈良学園の不当労働行為の「救済」を申し立て、審議が続いております。

 その審議中であるにもかかわらず、ついに3月末教員の不当な大量解雇が強行されました。これに対して4月25日には8名の組合員が奈良地裁に解雇の撤回をもとめて提訴しました。

 現在、私たちは裁判および労働委員会の救済の二本立てで闘っております。
 詳細は、本ホームページの「裁判」「労働委員会」のページをご覧ください。

以上

2017年07月21日

大学教員を腐敗させる教員人事システム、同志社大学では「捏造」業績評価

『紙の爆弾』2017年8月号

大学教員を腐敗させる教員人事システム、同志社大学では「捏造」業績評価

取材・文 早野慎吾

 昨年末のこと、弘中惇一郎・山縣敦彦両弁護士より、浅野健一氏の研究業績を検証してほしいとの依頼があった。
 浅野氏といえば同志社大学の名物教授で、メディア学専門の著名な学者である。メディア学が専門でない筆者も浅野氏の著作『犯罪報道の犯罪』(一九八四年、学陽書房)は知っている。それに浅野氏はすでに博士課程(博士後期課程)担当教授なので、今さら業績を調べてどうするのかと思ったが、どうも浅野氏の研究業績等に問題があるとして、社会学研究科委員会(大学院の教授会。以後、教授会)決議で定年延長を拒否されたとのことである。
 そこで第三者としての客観的な立場で、同志社大学が行なった評価方法が適切だったかどうかを検証してほしいというのである。
 数日後、浅野氏の研究業績と教授会が審査に使った「浅野教授 定年延長の件 検討事項」(以下「検討事項」)などが送られてきたが、「検討事項」には、唖然とするほど摩訶不思議なことばかりが書かれていた。
 浅野氏の業績と「検討事項」を精査していくと、浅野氏を同志社大学から追放する陰謀ともとれるカラクリが見えてきたのだ。
 単純なカラクリなのに、なぜそれがまかり通るのか。本稿では浅野氏の事例から、大学人事のシステムの問題点について考察する。

外部審査と内部審査

 「検討事項」の冒頭には、「(浅野氏に)大学院の教授の水準を満たす研究はない」と書かれている。浅野氏の正式な職名は、同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程教授。おまけに、文部科学省が行なった博士論文の指導のための業績審査で合格判定を受けているので、その「検討事項」の記述は明らかに間違いである。
 大学院で学位論文が指導できる教員になるには、文科省が行なう外部審査か、大学内で行なう内部審査で合格判定を受けなければならない。文科省が判定する外部審査のハードルは内部審査より高く、合格判定を受けた教員は○合(マルゴウ)教員と呼ばれる。大学院設置には、学位を出すために○合教員が必要となる。○合がいないと学位をだせないので大学院設置許可が下りないからである。
 大学院が設置されれば、あとは大学の内部審査(いわゆる身内審査)で判定できるので、文科省で不合格判定を受けた教員たちに合格判定をだして学位論文の指導をさせる。
 送られてきた裁判記録によると「検討事項」を作成した中心人物はA氏。浅野氏によれば、そのときA氏は修士課程担当になったばかりとのことである。大学院には修士課程と博士課程があり、修士課程修了後に、研究者を目指す学生が博士課程に進学する。博士課程のある大学院は、修士課程を「博士前期課程」、博士課程を「博士後期課程」とする場合が多いが、同志社大学も博士前期課程・後期課程としている。修士課程担当になったばかりの教員が、博士課程担当の○合教員に「大学院の教授の水準を満たす研究はない」と評価するのだから、驚きだ。
 「検討事項」には、次に「CiNii Articlesに基づく」との前置きで、「1994年4月以降、査読により本学外の学会で認められた論文は1本もない」とある。「CiNii Articles」とは、
大学共同利用機関法人国立情報学研究所が提供している学術論文検索用のデータベースサービスのことである。
 そもそも、CiNii Articlesには査読付かどうかの検索機能はないので、査読付か否かの判断はできない。それなのに査読付論文が「1本もない」とする記載は明らかな誤りである。この間違いがA氏の故意によるものであれば〝捏造〟であり、CiNii Articles機能を知らずに間違えたのならば、研究業績を審査する能力が疑われる。
 学術論文には、査読付(審査付、レフェリー付)と呼ばれるものと、そうでないものがある。査読付論文とは、審査者が査読を行ない合格した論文で、査読なしの論文よりも学術的価値が高いと評価される。また、雑誌の種類にもよるが、国内で発表された論文よりも海外(表記は主に英語)で発表された論文の方が、学術的価値が高いとされる。浅野氏は〝Japan and America's War,〟 Harvard Asia Quarterly, Autumn 2001など、海外で発表された査読付論文が5編ある。
 また、「検討事項」には「(浅野氏が)2009年から2013年9月において発表されたのは、いずれも査読なしで、単著の論文は1本、大学院生との共著の論文2本、研究ノート2本のみ」と記されている。これは「CiNii Articlesに基づく」とあるが、筆者がCiNii Articlesで「浅野健一」「2009年?2013年」という条件を入力して検索をかけると五七件がヒットした。単著五三編・共著四編である。五三編の単著を五一編と間違える程度は起こりうるが、五三編を一編(「検討事項」では1本と表記)と間違えることはあり得ない。ここまで来ると、間違いでなく「捏造」の可能性が高い。

大学人事における「研究業績」とは

 さらに「検討事項」には、「論文の内容には、客観的根拠がない推測による記述が多く含まれ、学術論文として不相応」と記されている。このA氏の「検討事項」こそ「客観的根拠がない推測」(もしくは捏造)と思うのだが、具体的に何を根拠に「推測による記述が多く含まれる」としたのか不明である。「研究論文の基本的作法が守られていない」「理論矛盾、私的体験の一般化」「大学院教授として品位にかける表現」なども書かれているが、ここまで来ると難癖以外の何ものでもない。「月刊誌、週刊誌等に掲載された記事は学術論文ではなくエッセイ」など、研究者とは思えない記述もある。月刊誌か週刊誌かなどは、刊行間隔の違いにすぎず、学術論文か否かと関係ない。有名な総合科学雑誌Nature(505,641647)に掲載された小保方晴子他のSTAP細胞の論文も、Natureが週刊誌なのでエッセイとなってしまう。もちろん、エッセイならあれほどの大問題にはなっていない。
 とにかく、浅野氏の業績を極端に過小評価させるための間違った書類を元に出された教授会決議はすぐにでも撤回されるべきである。
 大学の教員人事には審査基準内規があり、筆者が知る某国立大学の審査内規では、主たる審査項目を「研究上の業績」として、諸活動(「学会における活動」「教育的活動」「社会における活動」)を考慮することになっている。鹿児島大学大学院連合農学研究科ではウェブに大学院の教員資格審査の基準が公表されており、研究業績(副指導教員で審査付き論文一二編以上等)が判定基準となっている。研究業績以外で判定される場合もあるが(後述)、一般的には研究業績が最大の判定基準となる。
 当初、「検討事項」は、恣意的な間違いでない可能性もあると思っていたが、A氏が法廷でも間違いでないと証言したので、その可能性は否定された。
 浅野氏の例は、教員人事で最も重要な研究業績を間違った内容で極端に過小評価させ、さらに「品位に欠ける」などの難癖までつけている。そのような報告をもとに決議した教授会決定は、あまりに瑕疵が大きい。そのような理不尽が通ってしまうシステムが教授会にはある。

「教授ころがし」と「当て馬公募」

 一般の感覚では、大学の人事で捏造が通るはずなどないと思われるかもしれないが、そうでもない。さすがに捏造は少ないが、インチキは日常茶飯事で起きる。
 大学の教員採用人事は、まず学科とか講座とよばれる少人数の組織で行なわれる。近年は公募することも多いが、公募でもインチキは行なわれる。
 選考者(採用審査をする者)がある知り合いを採用したい場合、その人に応募させる。ここまでは、不正でも何でもない。しかし、明らかにほかの応募者の研究業績が優れている場合、「担当授業と専門が合わない」との魔法のことばを使って業績の多い応募者を外す。教授会には、論文数や年齢だけが報告されるので、「専門が合わない」と言われれば、他人は口を挟むことはできない。
 筆者の知る某国立大学では、そのような人事の結果、単著の論文が一編もなければ共著でファーストオーサー(代表者)すらない応募者が、多くの応募者の中から准教授として採用されたケースがある。なんと応募者の業績の半数に、選考者が共著者として名前を連ねている。選考者は自分でまとめた論文を自分で審査して、名前だけ共著者に連ねている応募者を採用したのだから、インチキそのものである。
 そのような手法で、ある教員グループは、それぞれの大学の教授ポストを回すので、筆者は「教授ころがし」と呼んでいる。たとえば、某国立大学の理科教育の歴代教員の経歴を確認すると、みんなH大学大学院出身で、さらに元H大学附属学校の元教諭(つまり小中高の教員)たちである。
 一般に教授会では、他学科(他講座)の人事には口出ししないという暗黙のルールがある。他学科の人事に干渉すると、自学科の人事で干渉されることになるから黙っているのである。結局、人事担当の学科決定が教授会でそのまま可決される。密室での決定が、ほとんど審議されることなく、そのまま決定・承認されるシステムである。
 浅野氏のケースは、このシステムが悪用された例と言える。捏造資料をもとに業績不足と報告されたとしても、あえてそのことに異議を唱える教員などいない。そこに書かれたことが捏造であるかどうかなどは関係なく、教授会で報告されたがどうかが全てである。A氏が作成した「検討事項」に学科全体が加担しているかどうかはわからないが、そのようなシステムの教授会では、学科で定年延長拒否が決定した時点で、浅野氏の定年延長はなくなったといえる。
 筆者が聞いたある私立大学では、公募で純粋に選考した人事に、他学科がクレームを付けて潰すこともあるという。それが嫌でお互い干渉しない暗黙のルールを作るのだが、すると自分たちのご都合主義が横行する。浅野氏の話によると、浅野氏が属していた学科(専攻科)では、優れた業績の応募者をことごとく外し、ある教員の関係者ばかりを採用していたとのことである。
 公募はその名の通り、公に募集をかけることを指す。しかし、公募したとの名目を得るために行なわれる「当て馬公募」と呼ばれるものがある。前出の某国立大学では、准教授から教授に昇進させるために公募が行なわれた。教授職を公募して、その准教授に応募させて教授として採用する。もちろんその公募で外部からの応募者が採用されることはない。そのことを情報公開していれば問題ないが、そうはしない。一般社会からすると信じ難い行為であり、どうして、そこまでして公募採用の形式が欲しいのか理解に苦しむところであるが、得てしてインチキを行なう者は形式だけは保とうとする。
 大学教員の公募は、国立研究開発法人科学技術振興機構が提供している研究者人材データベースJREC-INに公開される。研究者を目指す人はそこで公募情報を知る。某国立大学は、やたら厳しい条件を加え、募集期間を短く切って、JREC-INで公募をかける。そのような状況なので応募者は少ないが、真剣に大学教員を目指している人にとっては、非常に迷惑な話である。
 厳しい条件に、募集期間が短い公募は、「当て馬公募」を疑うべきだ。逆に極めて曖昧な条件の場合も、審査過程で恣意的に処理される可能性が高い。

資格審査の抜け道

 先ほど、大学教員には研究業績が重要と述べた。それでは研究業績のない元官僚やスポーツ選手が大学教授になれるのはなぜか。
 それは、文科省大学設置基準「教授の資格」第十四条に「五.芸術、体育については、特殊な技能に秀でていると認められる者。六.専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者」の項目があるからだ。この項目は、オリンピックのメダリストのように技能に秀でているものの、研究業績のない人材を教員採用するのに必要な項目であるが、官僚の天下りを容易にしてしまう。
 前出の某国立大学では新学部設置の際、経済産業省からの役人を学部長に採用している。天下りは文科省だけの話ではない。人事をスムーズにするルールは、エゴが働けばご都合主義の人事を許すことになる。すべて、諸刃の剣といえる。
 このようなご都合主義の教員人事がまかり通っている状況では、必死に研究業績を積んだ人材に職場が与えられず、選考者に都合のよい人ばかりが採用されることになる。また、浅野氏のように優れた研究業績をもつ研究者が、人間関係から職場を追われることもある。
 この教員人事システムが、優秀だが選考者には都合の悪い人材を排除するのに利用されているのは明らかで、これが大学教育の腐敗に繋がる。大学教員人事に、干渉ではなく検証するシステムを導入する必要がある。検証システムがあれば、浅野氏の例は防げたと考えられる。このことを話したら、某国立大学名誉教授のC氏は、「自分たちのインチキを通したいから、誰も検証システムをつくらないのですよ」と答えた。

編集部より
 浅野氏の「地位保全裁判」について、編集部が同志社大学に対し、「検討事項」の内容に〝捏造〟がみられることをどう考えるか、浅野氏の業績評価を見直すつもりはあるか、などについて質問したが、大学からは回答を得られなかった。なお、浅野氏の定年延長拒否の判断が下された当時の同志社大学学長は村田晃嗣氏で、安保法案に支持を表明、一五年七月の衆院特別委で、法案に肯定的な意見陳述を行なった人物。現在は松岡敬学長。
 ちなみに「検討事項」には、浅野氏が職場にいたことによるストレスで、「帯状疱疹」「突発性難聴」に罹った教員がいる、とも書かれていた。帯状疱疹はウイルスを原因とする疾患であり、ここにも「客観的根拠がない推測」が見られる。

早野慎吾 (はやのしんご)
都留文科大学教授(社会言語学)。宮崎大学准教授を経て現職。自らも大学によるでっち上げ事件の被害にあったが、最高裁で無実が証明された。


2017年07月20日

同志社大学を「追放」された浅野健一氏の裁判闘争は大阪高裁へ

進歩と改革(2017年5月号)

同志社大学解雇事件について,フリー・ジャーナリスト田中圭太郎氏が,『進歩と改革』2017年5月号に当該裁判の状況に関する論文を掲載した。

「同志社大学を「追放」された浅野健一氏の裁判闘争は大阪高裁へ
一審の京都地裁は手続きの瑕疵は「判断せず」,浅野氏の訴えを棄却-」
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20170500%20shinpo%20to%20kaikaku.pdf

2017年07月17日

常葉大短大部不当解雇事件控訴裁判・勝訴、労働組合法人全国大学人ユニオン「声明」

声明「静岡地裁に続いて東京高裁でも「不当解雇」が認定された学校法人常葉学園は、巻口勇一郎先生をただちに職場に復帰させるとともに、学園の民主的運営を図れ」

静岡地裁に続いて東京高裁でも「不当解雇」が認定された学校法人常葉学園は、
巻口勇一郎先生をただちに職場に復帰させるとともに、学園の民主的運営を図れ

2017年7月16日 大学オンブズマン・巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会
労働組合法人全国大学人ユニオン執行委員会
      

 東京高等裁判所は2017年7月13日、常葉大学短期大学部・巻口勇一郎准教授が学校法人常葉学園(以下、当局)に対し、「労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する」などとする判決を出した。巻口先生と当局の控訴はいずれも棄却されたが、静岡地裁で認められた巻口先生の基本的な主張は維持されている。

 当局は昨年10月に巻口先生を「普通解雇」するという不当な行為を行い、賃金と研究費の支払いを停止しているが、高裁判決にしたがって巻口先生をただちに職場に復帰させるとともに、学園と設置する学校の運営を民主化するよう求める。言うまでもなく大学、そして学校法人は極めて高い公共性を有している。法令順守は当然のこと、倫理性においても高い見識が求められるからである。

 当局は「不当解雇」を行ったうえ、裁判費用を学園財政から支出することは二重の意味において許されない。私立大学の財政は学生の学費に依存するだけでなく、国庫助成(私学助成)も投入されている。本来、自らの非を認めさえすれば簡単に済む話であった。地裁、高裁の裁判に多額の費用を支出したことは、決して社会的な支持を得られることはないであろう。

 巻口先生の支援の輪は静岡県内の大学や労働組合などにも広がっている。それは、当局の対応がいかに不当であるかの証左である。当局が今後も不当なことを繰り返すのであれば、社会的な信頼をさらにいっそう失ってしまうことを懸念する。

 巻口先生の裁判は、表面上では一人の大学教員の身分(雇用)を争うものであるが、本質的には大学の公共性を厳しく問うものである。この点を最後に指摘するとともに、われわれは、学校法人常葉学園の経営を今後も厳しく問うていく決意を表明する。


2017年06月21日

宮崎大学解雇事件、パワハラ捏造に関して被害者早野慎吾氏による「宮崎大学学長宛公開質問状」

宮崎大学への質問状

2017年6月15日

国立大学法人宮崎大学学長池ノ上克先生

若葉青葉の候、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 この度、文部科学省国立大学支援課より連絡を頂き、貴学に検証委員会が設置することを知りました。2016年10月の最高裁の判決で、私が貴学から不法行為を受けた被害者であることが確定しましたが、当時の貴学の対応で、いまだに理解できないことが多々あります。以下、質問状としてまとめましたのでお答えくださるよう、よろしくお願いいたします。

早野慎吾(都留文科大学教授)


宮崎大学への質問状

 宮崎大学が2012年6月、私が女子学生の半裸を卒業論文に掲載させていたなどにより退職金不支給を決定し、さらには原田宏、兒玉修(敬称略)らが記者会見で公表した事件について、2016年10月、最高裁において私の勝訴が確定し、私の無実が証明されました。判決では、退職金だけでなく、慰謝料や弁護士費用までが認められる内容となっています。

 2017年3月7日、文部科学省国立大学法人支援課より、「宮崎大学からは、今回の件についての検証委員会(第三者委員会)を設置することを決定したとの連絡がありました。」とのメールをもらいました、また、検証委員会設置の件で宮崎大学を取材した西日本新聞、朝日新聞、共同通信社の各記者から、検証委員会では手続きと調査過程の問題点を検証すると聞きました。

 私は宮崎大学から不法行為を受けた被害者として、宮崎大学に対して質問いたします。検証委員会の方には、以下の質問に対して調査し、回答をお願いいたします。また、必要な資料の提供や宮崎大学に出向いてお話しすることもやぶさかではありません。できる限りの協力を致します。

(写真-略)「特別調査委員会の設置について」原田宏

1.今回の件は、原田宏・岩本俊孝・石川千佳子ら3名による「特別調査委員会」の杜撰な調査により起きた事件です。「特別調査委員会」とは2012年3月19日付の原田からの通知(上記資料)によると、平成24年2月24日に自殺した学生の「卒論指導上、教員として適切な指導が行われたのか」を調査するために3月8日に設置されたと明記されています。

(1) 「特別調査委員会」の人選はどのように行われていたのですか。裁判でも証言しましたが、私と石川、岩本はもともと関係が良好ではありません。元同僚の松井洋子(元宮崎大学講師)もそのことを陳述書で述べています。私が予約していた公用車を、後から割り込んで岩本が使用してしまう等の嫌がらせも受けていました。そもそも、岩本と石川を選定した段階で今回の捏造事件は始まっていたと考えています。

(2) 「特別調査委員会」は、自殺した学生(以降学生B)のことを調査する目的で設置されたのに、石川千佳子(以後石川)は学生Bの自殺の要因などは調査していないと証人尋問(法廷で)証言しています。学生Bの自殺の要因を全く調べなかったのはなぜですか。私は文科省に学生Bの死因調査を依頼しています。(文科省からは、保護者でないと受けられないと拒否された。)

(3) 「特別調査委員会」は、学生Bの卒論指導について調査をする目的なのに、学生Bの卒論指導については全く調査せず、他学科で竹川昭男准教授のゼミ生である学生Yの卒論や、学生Bとは関係ないハラスメント項目を多数報告しています。設置目的の学生Bの卒論指導および卒論を全く調査していないのはなぜですか(石川らが調査した学生Kらは、そもそも学生Bの卒論指導は知らないと調書に書かれていますので、卒論指導の調査ではありません)。また、どのような権限で学生Bの卒論指導以外の調査したのですか。証拠保全資料や裏付けを全く取らずに数週間で懲戒解雇を決定している状況から考えると、調査の開始直後に、原因の解明ではなく、私を懲戒解雇処分にする理由が見つかれば何でもいいという、懲罰ありきの方針に転換したと考えられます。

(4) 裁判所が採取してきた「証拠保全検証調書」には、学生K、学生A、学生Mから、ハラスメント調査を行った書類が多く存在しています。石川は自らが中心となって調査したと法廷で証言していますが、ハラスメント行為ならば、ハラスメント委員会が調査を行う必要があります。なぜ、ハラスメント委員ではなく権限のない石川がハラスメントの調査をしたのですか。石川の行為は、学則違反ではないのですか。

(5) 石川が行った調査において、学生に対して質問はしておらず、学生Kらが言ったことだけを記録したと石川は法廷で証言していますが、学生らの調書を取っているのに何も質問をしていないなどあり得ません。「特別調査委員会」が作成した調書には、質問事項が一切書かれていないのはなぜですか。このような調書は調書としての機能を果たしておらず、誘導を隠すための行為とも考えられ、恣意的な解釈、誤解への歯止めが一切ききません。学生らの調書をとる際、録音をとっていないと石川は法廷で証言していますが、それも考えにくいことです。本当に録音をと調書をとらずに調書をとったのですか。学生Kは、石川作成の調書に対して、多くの項目に「言った覚えはない」と陳述書を提出しています。本当に学生らは証言したのですか。私は多くが石川・原田・学生Kらが誘導したか、証言していない可能性が高いと考えています。

(6) 私は、学生Bが精神疾患に気づいた際、速やかに宮崎大学安全衛生保健センター(以降センター)秋坂医師のもとに学生Bを連れていき、診察をさせました。その後、私はセンター医師とセンター紹介のタヅメクリニック医師の指示で行動しています。それは、2012年2月24日、石川の報告からもわかります。それなのに、石川はセンターには連絡すらとっていないと法廷で証言しています。学生Bに対する卒論指導を調べる目的の「特別調査委員会」が、学生Bの対応で最も重要なはずのセンターに状況を確認しなかったのはなぜですか。目的を逸脱した行為は盛んに行われているのですが、原田、岩本が、石川らの恣意的関心で動いたものですか。

(7) 宮崎大学が私の研究室から回収したとされている冊子は、学生Bの卒論ではなく、他学科の学生Yの卒論です。私は回収の際、「それは学生Bの卒論ではない」と当時学部長の兒玉修らに伝えています。さらに、学生Yが私のゼミ生でないことは、指導教員届けを確認すればすぐわかることで、実際、石川は指導教員一覧(乙43号証)で、学生Yが私の指導学生ではないことも確認しています。また、学生Bの卒論成績は2012年2月7日に提出済みの記録があり(証拠保全資料)、学生Yが2月23日に提出したと証言している卒論でないことは、成績入力記録を見れば一目瞭然です。正式な記録で学生Yは竹川昭男教員のゼミ生であり、正式な成績記録からも自殺した学生Bの卒論でないことが明白な学生Yの卒論を学生Bの卒論と偽ったのはなぜですか。

(8) 今回、中心になったのは学生Kですが、学生Kは「学生Bから会いたくないと言われた」「学生Bと連絡を取らなかった」「学生Bは自分たちのゼミには来ていなかった。学生Bのゼミは知らない」と自ら述べています。学生Bは学生Kからストーカーされたと認識しており(メールあり)、私も相談を受け、学生Kを学生Bに接触させないよう対処してきました。学生Bは自殺直前、学生Kについてセンシティブな内容のメモを書き残しています(必要ならお見せします)。調書でも学生Bから避けられていたことを自認している学生Kが学生Bについて証言したものを信頼できるとし、その証言の裏付けすら確認しなかったのはなぜですか。また、学生Kは虚言癖や盗癖があることを、学生Kをよく知る学生らが複数証言しているのも関わらず、学生Kの証言をそのまま利用したのはなぜですか。
 私は学生Bから、数人にいじめられていたと相談されていましたが、その中に、学生K、学生A、学生M、学生Yが含まれています。その学生らのいじめが事実か否かはわかりませんが、そのような学生らの言い分を一方的に採用するような宮崎大学の体質が問題であったとは思わないのですか。

(9) 学生Bの卒論指導においては、常にゼミ生Tが同席し、ゼミ生Iも時々同席していました。そのことは、ゼミ生Tが2012年5月(懲戒解雇相当と発表する前)に宮崎大学に提出した陳述書に明記されています。早野ゼミのゼミ生Tとゼミ生Iは、特別調査委員会の調査は受けると懲戒処分決定前に申し出ています。特にゼミ生Iは、そのとき在学中で、いつでも調査できる状況にありました。学生Bの卒論指導を全く知らない学生N、学生M、学生Yの3名には、2012年4月に調書を取っています。学生Bの卒論指導を調査する目的の特別調査委員会が、学生Bの卒論指導を全く知らない学生K、学生A、学生N、学生M、学生Yを調査して、学生Bの卒論ゼミを目の前で見ていたゼミ生T、ゼミ生Iを調査しなかったのはなぜですか。もし調査しないのなら、懲戒処分を決定すべきではありません。

(10) 私の懲戒処分を決めた最大の理由が学生Yの卒論となっています。しかし、特別調査委員会が学生Yからはじめて卒論の話を聞いたのは、私を懲戒解雇するとの書面が送られてきた(3月29日決定)約3週間後の4月17日(学生Yの調書)となっています。つまり、懲戒処分を先に決め、後から処分の理由を決めたことになります。学生Yから卒論の調査を全く行わず、調査もしていない学生Yの卒論を根拠に懲戒解雇を決めたのはなぜですか。学生Yの卒論のことを学生Y本人に聞かずに事実と認めるのは捏造です。もし、捏造でないと言うのなら、その根拠を明示してください。

(11) 大学側が問題にした写真撮影は、卒論とは全く関係ない学部重点研究での企画によるものです。その撮影には、学生Yの他、ゼミ生I(企画代表者)、学生B、学生O、学生H、院生Mが参加しています。学生I、院生M、学生Oは特別調査委員会の調査を応じると言っていました(学生Oは保護者同伴との条件)。学生Hは、「3月中旬、特別調査委員会に呼び出されて「真っ黒で何がわからないコピーを見せられて、これは早野が撮ったのかと聞かれたが、私は、早野先生は関係ないと答えた。」と2012年4月9日に電話で私に伝えてくれました(記録あり)。しかし、学生Hの調書は証拠保全でもありませんでした。写真撮影を問題にしておきながら、学生Yのみを調査対象者にして、調査に応じると答えた他の参加者(ゼミ生I、学生O、院生Mら)を調査しなかったのはなぜですか。

(12) マスコミ報道では、撮影参加者全員が被害者の如くなされています。しかし、裁判で虚偽の証言を繰り返した学生Yをはじめ撮影参加者6名の誰もハラスメント申立をしていません。ある撮影参加者は、「自分らは自信を持って企画を進めたのに、嘘の報道をされて非常に迷惑でした。私たちは被害者ではないが、加害者がいるとすれば嘘を発表した宮崎大学と学生Yです。できれば、原田宏と兒玉修をパワハラで訴えたい。学生Yは許せない。」とまで言っています。ハラスメント申立もしておらず、調査もしていない、逆に学生Yの証言は嘘だと証言する撮影参加者が複数いるのに、撮影参加者全員を私の被害者としてマスコミに嘘を発表したのはなぜですか。高裁判決文には不法行為と明確に書かれています。

(13) 学生Yは卒論ゼミはやっていないが研究打ち合わせはあったと主張しましたが、それは4回「3分だけで、学生Bとメールだけで打ち合わせするようになった」と学生Yの調書(3頁)に書かれています。4回×3分(計12分)だけで学生Yと学生Bがメールでした(つまり教員は打ち合わせに関わっていない)打ち合わせを、大学として卒論指導だったと主張したのはなぜですか。宮崎大学では、教員が関わらずに学生同士が12分打ち合わせしたら、6単位(卒論単位)は認められるのですか。(宮崎大学が12分で6単位認めるならば、260分の受講で卒業単位が取れてしまう)。

(14) 原田宏、兒玉修は記者会見で事実無根のハラスメントを発表しましたが、それは裁判で不法行為と認定されました。また、石川は権限のないハラスメント調査をして、虚偽の報告書を多数あげています。原田や兒玉が発表した内容が虚偽であった以上、明らかに宮崎大学の名誉を傷つけています。西日本新聞の記事をヤフーニュースで『「でっち上げ」敗訴の宮崎大学検証へ』と報道されています。特別調査委員会の原田、岩本、石川と虚偽を発表した兒玉らは、宮崎大学の名誉を傷つけたのは明らかなのに処分しないのですか。

(15) 石川らは、2012年3月13日(証拠保全200頁)、学生Bの両親に対して、学生Bと私が男女関係であったなどの虚偽をなぜ伝えたのですか。仮に学生Kと学生Aが言っていたとしても、事実確認をする前に伝えるのは余りに不適切な行為です。私は、学生Bの父親から殺人予告を受けましたが、もし事件になっていれば、石川らの行為は殺人教唆(刑法61条1項)にあたると私の代理人は判断しております。また、日野弁護士(理事)は、学生Bの両親に、私や大学を民事的に訴えることができ、「連絡頂ければ相談に乗る」と言ったと記録されていますが、この発言は大学にとっての背任行為ではないですか。この発言が事実なら、私にとっても、調査する以前から私を犯人視する行為で、弁護士としてあまりに軽率と言わざるを得ません(弁護士がこのような発言をするとは、とても信じられませんが)。この書類に書かれている、犯罪に繋がる発言をした人物たち(岩本、兒玉、石川ら)の処分はしないのですか。さらに、最高裁判決後、大学が伝えたことは、間違いであったことが判明したと、学生Bの両親に伝えたのでしょうか。文科省国立大学支援課係長は、必ず伝えるべきとおっゃっています。

2.証拠保全の資料を見ると、宮崎大学はハラスメント認定の過程で様々な捏造を行っております。ハラスメント認定過程での不正と思われる点を質問します。

(1) 3月11日のハラスメント申立書には「3月9および11日大学で事情聴取にて話したとおりです。」と書かれていますが、3月9日学生A、3月11日学生Kの調書はありますが、卒論指導上のことや学生への裸体撮影など、ハラスメント項目の大半がそれらの調書には書かれていません。また学生Kと学生Aは、それらを全く知る立場にもありません。調書に書かれていないことを書いているのですから、これは捏造であり、公文書偽造にあたると考えられます。また、申立者は学生K、学生A、学生Mの3名となっていますが、学生Mの調書はありません(学生Mの調書は4月25日)。3月11日の申立書に調査のない学生Mの名前が出ているのはなぜですか。ハラスメント申立書が農学部会計係のパソコンで作成されており、作成日が3月23日となっているのはなぜですか。「学生A・例」のように複数のハラスメント申立書が作られているのはなぜですか。申立者に学生Kの名前しかなく(学生A、学生Mはない)、直筆でもなく印鑑も押されていないのはなぜですか。なぜ、このような捏造書類がなぜ作られたのですか。

(2) 2012年3月27日、学生K・学生A・学生Mによる「ハラスメント申立書に関する調査結果について」では、石川の調査報告がそのままハラスメント認定で使われています。そして「事情聴取した殆どの学生等から具体的な証言を得ている」「(早野が)一切否定しておきながら『誰が、いつ、どこで』など具体的なことを問うてくること自体極めて不自然なことであり、このことからも、自ら関与をしめしていると考えられる。」とハラスメント行為が認定されています。根拠となる学生K、学生Aの調書に全く記載のない多くのハラスメント項目が「学生等から具体的証言を得ている」とされたのはなぜですか。これは明らかな捏造です。また、「誰が、いつ、どこで」と聞くことが極めて不自然で、自ら関与を示しているとの理由付けこそ、社会通念上極めて不自然です。そのような理由付けが宮崎大学では通用するのですか。

(3) 宮崎大学が私の解雇相当処分を決定するに当たって、「国立大学法人宮崎大学ハラスメント等の防止・対策に関する規程」に定められた、「ハラスメント申立」と「ハラスメント防止・対策委員会の対処」の手順が一切無視されています。それにも関わらず、記者会見ではいかにも大学として学則で規定した、セクハラ、パワハラの事実を確認したかのような発表をしています。解雇相当処分を急ぐために、特別調査委員及び大学執行部が学則を飛ばして、一方的にハラスメントを認定したのではないですか。

(4) 学生Kの調書・学生Aの調書の証言の多くは伝聞になっています。特に学生Aは自身がハラスメントを受けたとは言っておらず、調書でも、すべて伝聞や、伝聞の伝聞と記録されています。学生Kは、学生Bが無理矢理方言調査に連れて行かれたなど悪質な虚偽を繰り返していますが、方言調査に参加した山本友美講師、院生Mやゼミで話を聞いていたゼミ生Tらは学生Kの証言が悪質な虚偽であると大学の懲戒処分決定前に陳述書を提出しています。実際にその場にいた人たちが違うと証言しているのに、伝聞に過ぎない学生Kと学生Aの証言でハラスメント認定したのはなぜですか。

(5) 学生Kは、学生K以外の学生に私がハラスメント行為をしていたと証言しています。しかし、宮崎大学は大学関係者がハラスメントを受けたとされた人物に直接確認を取ることもなく、学生Kに確認させていたのはなぜですか。学生Kの証言はほとんどが虚偽だと、ゼミ生Tが宮崎大学に伝えていました。ハラスメント行為の確認をハラスメント委員会でもない学生(しかも申立者)にさせることは、大学として許される行為なのですか。しかも学生Kに確認させたことを根拠に懲戒解雇処分を下すなどあり得ない行為です。

(6) 本件の裁判費用や賠償金は、国民の血税もしくは学生から徴収した授業料で支払われています。原田、岩本、石川、兒玉らの行った不法行為の代償を税金や授業料で支払っておきながら、国民に対して何の説明もなく、被害者の私に対して謝罪すらないのは、税金で運営している国立大学法人として許されるのですか。

(7) 今回の検証に関しても、国民の血税もしくは学生から徴収した授業料で行われています。税金や授業料で行われる以上、検証結果を学内に周知する必要がありますが、学内に周知するのですか。また、税金が使われている以上、結果を国民に公表しないと納税者に対しての責任を果たせません。2017年5月10日の朝日新聞には「結果は公表しない」と書かれていますが、それはどうしてですか。

以上のことにお答えください。

※本質問状は、学生名のみ匿名にしております。文部科学省と大学および、各新聞社に送ったものは、全て実名を記載しています。


宮崎大、パワハラを捏造し解雇 メディアも攻撃加担

人権と報道連絡会ニュース(2017年6月10日)第325号

パワハラを捏造し、解雇-宮崎大、メディアも攻撃加担

 早野さんの事件については、ジャーナリストの田中圭太郎さんが「ルポ・大学解雇②/国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白」として、ネットに詳細なレポートを発表している。例会で早野さんはこれをもとに、パワハラ捏造・報道被害体験を詳しく話した。(以下、山口が要約)

◆ある日突然、懲戒解雇に

 私は2012年4月に約8年間勤めた宮崎大学を退職し、山梨県の都留文科大学教授に就任することが決まっていました。ところが、退職直前の3月12日、宮崎大学から「特別調査委員会に出席するように」との通知が来たのです。嫌な予感がし、私は弁護士を通じ、「なぜ調査委に出席しなければならないのか」質問しました。すると大学から私が指導した女子学生の卒業論文に、女子学生の半裸写真が載っているので調査すると文書で回答がありました。

 「ハラスメント質問事項」という文書がその後に届き、14項目にわたる質問が書かれていました。たとえば「あなたの研究室の女子学生に、遅い時間帯、二人だけで研究室にいるよう勧めたことはあるか」など、どれも思い当たる節がないものばかりでした。女子学生のゼミに常に同席していた学生に連絡したら、その学生も意味がわからないと言う。私は質問に対して「一切ありません。内容が抽象的で分からないので具体的に教えてほしい」と文書で回答しました。

 予定通り宮崎大学を退職し、都留文科大学に赴任した直後、宮崎大学の菅沼龍夫学長名で「懲戒解雇する」との文書が送られてきました。退職後にもかかわらず、懲戒解雇するというのです。6月には「退職金は支払わない」との通知も送られてきました。宮崎大学の内部でいったい何が起きているのか、私には理解できませんでした。

◆メディアが一斉に報道

 宮崎大学は6月、私に対する処分を記者会見して公表しました。メディアはこれを大々的に報道しました。(《学生の半裸写真卒論に/元準教授を「懲戒解雇」/宮崎大》=6月29日『宮崎日日新聞』、《下着の学生撮影/卒論に複数掲載/宮崎大元準教授》=同『朝日新聞』西部本社版、《卒論に裸写真掲載させる/宮崎大元準教授、女子学生に》=同『読売新聞』、《学内誌にも女学生写真/浴衣姿など09年に掲載/宮崎大元準教授》=7月19日『西日本新聞』など)。

 私の代理人に事実関係を確認する取材が来たとのことで、代理人は会見を開き「全く身に覚えがない、事実誤認の決めつけ」と答えたのですが、大学側の言い分が大きく報道されました。後に東京高裁の岡口基一裁判官は「マスコミが大学当局からいいように利用された例」とツイッターでコメントしています。この報道後、私は都留文科大学の理事から呼び出され、「私は何もしていない」と説明したのに、一方的に解雇されました。

 私は12月、解雇無効を求めて宮崎地裁に提訴しますが、提訴の前に宮崎地裁に申し立てた証拠保全が通り、宮崎大学から証拠資料を押収しました。この証拠資料で、宮崎大学がなぜ私を懲戒解雇に追い込んだのか、わかってきました。

◆ハラスメントの訴え捏造

 実は私が退職する前の2月、私がゼミで指導していた4年生の女子学生が自殺する痛ましい事件が起きました。彼女は重度の精神疾患に罹患しており、私は彼女の精神科への通院もサポートしていました。自殺の前日、彼女は私の机に学生間でトラブルがあったことなどを書いたメモを残していました。

 証拠保全した資料で、そのメモに名前のあった学生が彼女の自殺の5日後、大学側に「早野は、自殺した女子学生には性的関係があった」と報告していたことがわかりました。大学は私の言い分も聞かず、この学生の言葉に沿って動き、自殺した女子学生の家族にも私が原因だったかのように告げました。

 大学は私を解雇した後「複数の学生から『早野からハラスメントを受けた』という申し立てがあった」とマスコミ発表しました。ところが、この申立書は学生自身が書いたものではなく、大学内で捏造されたものでした。

 大学が私の懲戒処分を決めた最大の理由が半裸写真の卒論ですが、この卒論を書いたのは私のゼミ生ではなく、別の教員のゼミに所属する女子学生です。

 大学は3月27日に開かれた処分を検討する会議で、この卒論を「自殺した学生のもの」と捏造して、「早野がこの卒論を指導し、半裸写真の撮影をした」と認定しました。それらの経過が、証拠保全で押収された資料から明らかになったのです。

◆二審で逆転勝訴、確定

 ところが、裁判では大学側は「ハラスメントは事実だ」と主張し、一審の宮崎地裁は14年11月、大学側の主張をなぞり、請求を棄却しました。

 しかし二審の福岡高裁宮崎支部15年10月、私の主張を聞き入れ、大学側による「ハラスメント捏造」を認定しました。判決は「半裸状態の女子学生の写真撮影をし、卒業論文に掲載させたりしたことを認めるべき証拠はない」と、私の主張をほぼ全面的に認め、大学側に慰謝料と退職手当、合わせて約313万円の支払いを命じました。

 大学側が主張したセクハラ・パワハラなどもすべて事実無根と認定され、判決は16年10月、最高裁で確定しました。

 都留文科大学の解雇処分も無効になり、私は都留文科大学教授に復帰しました。現在、処遇について話し合いをしています。

 最高裁の判決が出た後、ネットでは宮崎大学への批判、ツイートが一気に広がりました。それでも大学側は、「捏造」関係者に対して何の処分もしていません。しかし、文科省は今年3月、大学側に一連の解雇手続き、事実認定などの問題点を検証するよう、指導しました。詳しくはウェブ「全国国公私立大学の事件情報」を参照してください。

◆宮崎大学に公開質問状も

 最高裁で勝訴が確定しても、そのことは最近まで、報道されませんでした。今年3月7日になってやっと『宮崎日日』が、《宮大の敗訴確定/最高裁決定/元準教授へ退職金》と報道したぐらいです。ただ、文科省が「再発防止」に向けた第三者の検証を求めたことで、『西日本』は5月3日、《元准教授へのセクハラ処分敗訴の宮大検証へ》という記事を載せました。『朝日』も5月10日の宮崎県版に《宮大、「処分」第三者検証へ/退職めぐる訴訟、逆転敗訴受け》という記事を掲載しています。

 しかし、この記事では「結果は公表しない」となっています。

 私は、なぜこんな捏造事件が起きたのか、大学に対して公開質問状を出すつもりです。私を「セクハラ教員」に仕立てた大学の特別調査委員会の「調査」経過、ハラスメント認定過程で捏造されたさまざまな文書の作成経過など、裁判で明らかになった事実をもとに詳細な質問をぶつけ、その結果を公表したいと思っています。今後の大学改善と私の名誉回復のためです。


2017年06月20日

サイト紹介、山口雪子さんを支える会-視覚障害者に対する不当配転事件

山口雪子さんを支える会

今までの経緯

山口さんへインタビューする形でまとめました。

1、短大側から今回の通告を受けたのはいつ?

授業外しは、2016年2月5日の学科会議においてです。
次年度分掌を学長が説明する中で、出席者全員に告知する形で「28年度、山口先生に授業はありません」と、言われました。

研究室明け渡しについては、次年度より学科主任教授となる方からのメールで「学長指示」として通告されました。ただし学長側は、「単なる研究室移動であって退去ではない」と言っています。
でも、移動先は旧事務室で、しかも使用できるスペースが限られています。研究に必要な資料などを置いておくスペースはありません。

学長から「私物を撤去してもらう」と言われているので、机やロッカー以外、スクリーンリーダー(文章を元読み上げるソフト)の入ったパソコンも私物となってしまいます。つまり、私の研究活動そのものをできなくする処置だと感じています。

2、短大側の理由は?

① 授業中に飲食したり、無断で出て行ったりする学生を注意できなかった
② 筆記試験を採点する際に学生の答案を第三者に読み上げてもらった 等です。

実は、2年前に、ほぼ同様の理由で退職勧奨を既に受けています。
特に2年前の時は学生課題を第三者に読んでもらっていたことが「個人情報漏洩」と叱責されました。
「視力がない教員は職業能力がない」と言われ、続けるのは難しいかとも思いました。

しかし、2年前は「補佐員を私費で雇用する」ことで退職を免れ、授業を続けてきました。
補佐員は週2日で授業の中では出席簿への記入などを手伝っていただいています。
ただし、短大との制約の中に「補佐員は学生と直接関わってはならない」とあるため、飲食や居眠りなどをみつけたとしても学生に注意を促すことはできません。
そのような中で学生から飲食している者への指導をしないとクレームが出ている…と言われ、2月5日の告知を受けました。

3、裁判で訴えていることは?

2件の仮処分申請 と 本案提訴 をしています。

まず、3月2日に研究室退去を無効にするための仮処分申請をしました。
3月14日が引き渡し期限となっていたためです。
15日以降に研究室に入れない・勝手に部屋の荷物を移動される等の危惧がありました。
そのため、研究室退去について先に申請しました。

そして、3月23日に授業外しを撤回するよう求めた仮処分申請と、研究室退去・授業外しを不服とする地位確認の提訴を行いました。

全て岡山地裁倉敷支部に提出していますが、岡山地裁本庁での取り扱いとなるそうです。

4、通告から提訴まで

2年前、「話し合いで穏便に何とか解決したい」と願いました。
母校の悪い評判は学生や卒業生が心を痛めるだろうと思ったからです。
今回、2月5日に告知された時も、「まだ何とか穏便に…」との思いが強くありました。
そこで、代理人弁護士から話し合いをしていただくことで何とかならないかと考えました。

2月9日に代理人就任挨拶と面談申し入れを弁護士の先生がしてくださいました。
しかし、なかなか面談の期日について回答はありませんでした。

2月22日に大学側代理人弁護士からの挨拶があり、ようやく3月1日に話し合いの場がもたれました。
短大側は、学長と主任教授以外に学科教員6名を同席。
私のできないこと(飲食・居眠りが注意できない等々)をA4用紙にまとめさせて読み上げさせたそうです。
そして、研究室の明け渡しについても、授業外しについても通告に変更はないとのことだったそうです。

致し方なく期限の迫っていた研究室退去について先に仮処分申請をしました。
ここでの審尋は非公開ですから、学生や卒業生に知れることなく解決する希望を持っておりました。

しかし、3月15日審尋でも変更・撤回はないとの姿勢は堅いものでした。
新年度に入ってから授業外しのことを不服申し立てしても遅すぎます。
そのため、せめて年度内にできることを…と考え、3月23日の提訴となりました。

5、大学での授業は?

現在(H28.4月)、時間割に私の名前はありません。授業はできない状況です。
待遇として「准教授の役職変更はない」とのことですが、会議席は学科教員から外れた末席にされており、教員としての処遇がどうなているのか疑問には感じています。
ただ私のほうで確認する術もなく、今後どうなるのかは私自身がわからない…というのが本音です。

6、研究室の明け渡しは?

保留となっています。
第1回審尋が上述のように3月15日でした。そのため代理人弁護士の方から「仮処分が結審するまでは研究室については現状維持」とするようにとの求めを仮処分申請後に大学側代理人弁護士にしてくださり、結果として大学側は保留を了承しています。

7、どのような場所に働きかけを?

文部科学省を含め様々なところへの働きかけを模索しています。

文科省に今回の問題について仮処分申請などをする前に何か救済してもらえるところがないかと問い合わせをしたことがあります。
でも文科省の答えは「学校と教員の問題は労使の問題だから厚労省に…」とのことでした。

厚労省には、4月から障害者差別解消法が施行されることもあり、障害者雇用対策課を頼って要請させていただく経緯となりました。でも労使問題、障害者の雇用問題だけではないと思っています。

「共生社会を目指す教育」 を子ども達にするよう求めている教育現場。

人権を無視したことをしていて真の教育ができるのでしょうか?
より良い教育現場であるように指導する責任は文科省にはないのでしょうか?
そのことに気づいていただきたい…
文科省としても考えていただきたい…

そんな強い希望もあり、署名の提出先の筆頭は文部科学大臣にさせていただいております。


障害で配置転換無効判決に不服 岡山短大運営の学園が控訴

山陽新聞(2017/04/04)

 視覚障害を理由に、事務職への配置転換と研究室からの退去を命じたのは不当な差別だとして、岡山短大(倉敷市有城)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園(同所)に配置転換の無効などを求めた訴訟で、学園側は3日、准教授側の主張をほぼ認めた一審岡山地裁判決を不服として控訴した。 一審判決は、配置転換を「権利の乱用」と指摘して無効と認定。精神的苦痛を受けた慰謝料などとして110万円の支払いも命じた。 学園側は同日、配置転換の業務命令の効力仮停止を決定した地裁の仮処分についても、地裁に保全異議を申し立てた。

岡山短大が控訴、一審判決に不服 広島高裁

毎日新聞(2017年4月30日)

 視覚障害を理由に授業の担当から外されたとして、岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園を相手取って職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟で、同学園は3日、職務変更命令の取り消しと慰謝料など計110万円の支払いを命じた岡山地裁の一審判決(3月28日)を不服として広島高裁岡山支部に控訴した。控訴について学園側は「裁判所の認識や判断には間違った部分がある」と主張している。

 この裁判は、山口准教授が授業中に飲食や無断退室する学生を見つけられなかったとして、昨年から授業の担当を外されたことを視覚障害者に対する不当な差別だとして起こした。岡山地裁は判決で「介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できる」として、授業の担当から外した短大側の命令は無効だとした。控訴について山口准教授は「あきらめずに主張を続けていきます」と話している。


視覚障害理由の配転命令「無効」 岡山短大に賠償命令

朝日新聞(2017年3月29日00時28分)

 岡山短期大(岡山県倉敷市)の女性准教授が「視覚障害があることを理由に授業を外され、事務職への変更を命じられたのは不当」として、短大を運営する学校法人を相手取り、配転命令の撤回などを求めた訴訟の判決が28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は、配転と研究室の明け渡し命令は無効とし、短大側に慰謝料など110万円の支払いを命じた。

 訴えていたのは、倉敷市の山口雪子さん(52)。判決によると、山口さんは1999年に岡山短大の教員となり、幼児教育学科の准教授として勤務してきた。網膜異常で視野が狭くなる「網膜色素変性症」を患い、次第に視力が低下。14年に退職勧奨を受け、私費で視覚補助の補佐員を雇って授業を続けていたが、昨年3月、事務職への変更を命じられたことなどを不服として提訴した。

 裁判で、短大側は「授業中、ラーメンやお菓子を食べている生徒を注意できなかったり、無断退出が横行したりしている」などと主張。これに対し、判決は「適切な視覚補助のあり方に改善すれば、学生の問題行動については対応可能」と指摘。「職務の変更の必要性は十分とは言えず、権利の乱用だ」と退けた。


山口准教授が勝訴 障害理由の授業外しは無効 岡山短大、権利乱用認める 慰謝料など110万円 地裁

毎日新聞(2017年4月16日)

 岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、視覚障害を理由に授業の担当から外されたのは不当な差別だとして、短大を運営する学校法人原田学園(同市)に事務職への職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟の判決が3月28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は職務変更命令は無効と判断し、短大側に慰謝料など計110万円の支払いを命じた。【平井俊行】

 判決によると、山口准教授は昨年2月、授業中に飲食や無断退室をする学生を見つけられなかったとして、次年度から授業の担当を外され、学科事務を行ない、更に研究室を立ち退くよう短大側に命じられた。山口准教授は網膜色素変性症で視力が低下し、文字の判読が困難な状態だった。

 判決で善元裁判長は、山口准教授の介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できると判断。「職務変更命令は山口准教授が教員として授業を行なう機会や研究発表の自由を完全に奪うものであり、短大側の権利乱用だ」と指摘した。更に「視覚補助のあり方を全体で検討し、模索することこそ、障害者に対する合理的配慮の観点からも望ましい」と述べた。また研究室からの立ち退きについては「立ち退きを命じた経緯が不当な職務変更を前提としており無効」と説明した。

原告代理人弁護士「画期的な判決」

 判決後の記者会見で山口准教授は判決内容を喜び、「1年間、授業の担当から外されて、学生を教えることは私が人生を全うするうえでかけがえのないものだと改めて感じた。教員としての本分である授業に戻れるよう頑張ります」と語った。原告代理人の水谷賢弁護士は「障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法(ともに昨年4月施行)に定められた合理的配慮のあり方を短大側に投げかけた点で画期的な判決だ」と話した。

 短大側は同29日の点字毎日の取材に対し「(控訴するかどうか)今の段階で答えられることは何もありません」と答えた。


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