国立大学法人法・意見広告の会から衆議院選挙 各党への要請と回答

「意見広告の会」ニュース297,304より

要請文

 

私どもは、「国立大学法人法・意見広告の会」と申します。

このメールは、各政党とともに、文科関係の前職・現職の国会議員の方々にお送りしております。

 私どもは本年2月3日、多くの方々の支援・賛同金によって、「読売新聞」「毎日新聞」の全国版に「国立大学の授業料値上げに反対する」意見広告を掲載いたしました。

 ご存知の通り、多くの国立大学法人は本年4月からの授業料を、年額52万800円から53万5千800円に、1万5千円値上げしました。文部科学省令により「授業料 標準額」が1万5千円値上げされたことに基づくものです。

 「授業料標準額」に関わる本年度の予算審議の過程で、衆参両院の予算委員会や文科・文教委員会では、議員の方々、政府関係者が「国立大学の授業料は既にこれほど高くなっていたのか」「自分たちの学生時代には年額1万2千円だった、3万6千円だった」等の驚きの声をあげました。我が国の大学進学のための家計負担は、先進諸外国と比べても恐るべき高額に達しております。

 少子化の流れは、現在の日本社会がかかえる重大な問題です。その少子化の原因の一つに、日本の教育費の高騰があげられていること、多くの識者の共通の認識でありましょう。その教育費負担の高額化は、いま現在の小さなお子さんにかかる教育費だけの問題ではありません。高等教育に関わる負担には、各家庭の将来への希望ないし不安が関わっていると思います。能力ややる気があっても、大学や大学院を卒業するのに負担が大きすぎる、そんな社会では出産・子育てに躊躇する人々が増大するのも当然です。

 貴党を含め多くの政党が、政策マニフェストの中に「少子化対策」「子育て支援」をうたいあげておられます。私どもは、少子化対策は現在の子育て支援だけでは不十分で、将来の希望につながるものでなければ有効ではないと考えます。能力とやる気があれば誰でも高等教育を受けられるのだ、経済的理由によって進学を断念する必要はないのだ。このような「希望」は、直接の利益者のみならず国民に普遍的に分配されます。それは、将来社会全体の明るさに関わるものであるからです。

 どうぞ貴党のマニフェストに、私学を含めた大学の授業料の値下げ、家計負担の軽減化をお加え下さい。貸与型の奨学金は学生や家計負担者にとって魅力のあるものではありません。やる気と能力のある若者に高等教育の機会が均等に与えられる、そんな希望のある社会が日本を活性化します。

 幸いに、大学の学費負担の軽減化のための国家的な経費は、さほど膨大なものではありません。もちろん軽減化の規模にもよりますが、仮に些少なものであっても、それはこのような時代にあって国民に希望を与えます。希望の効果は多少の費用に換えられるものではありません。

 繰り返しますが、日本の高等教育にかかる家計負担は、世界標準から言っても異常なほどに高額です。貴党が高等教育への家計負担の軽減化のための政策をマニフェストとして宣言して下さることを、願ってやみません。

 なお当会は、全国の国立大学関係者を中心に、電子メールによる「意見広告の会ニュース」を発行しております。貴党からの何らかの形でのご回答は、当会のニュースに掲載させて頂きたく存じます。

8月29日
「意見広告の会」事務局

 

返信 共産党

貴団体が国立大学の授業料値上げに反対する活動をすすめておられることに心から敬意 を表します。

 ご指摘のように、高等教育への家計負担の軽減化をはかることは、「少子化」問題の克服を含め、日本の現状と未来を考えるとき、きわめて重要な課題だと思います。
 日本共産党は、8月11日、「総選挙にあたっての訴えと7つの重点公約」とともに、「衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策」(分野別政策)を発表しました。
これらの日本共産党の政策・公約は、いわゆる政権公約ではなく、国民の運動と力をあわせて政治を動かすために奮闘する立場から「野党としての公約」という形でまとめたものです。
このなかでは、子どもに生きる希望をはぐくみ、若い世代が自立して人間らしく成長できる社会をつくるうえでも、国民の立場にたった大学をめざすうえでも、学費負担の軽減が切実な問題であると考え、この課題をいくつかの「分野別政策」でとりあげています。その具体的な内容は、以下のとおりです。

11、教育基本法の改悪に反対し、子どもに生きる希望をはぐくむ教育の実現をめざす30人学級、学費無償化へ 国際的に遅れている教育条件を改善する
 学費負担の軽減……「学費の無償化」の国際人権規約を批准し、大学と高校の学費無償化と給付制奨学金の導入にふみだします。教育扶助・就学援助の拡充をすすめます。

14、若い世代が自立し、人間らしく成長できる社会に学費負担を軽減し、奨学金制度を拡充する
 国際人権規約は「高等教育の漸進的な無償化」をうたい、ドイツやフランスでは学費は基本的に無償です。奨学金制度でも、欧米は返済不要な給付制を柱にすえています。
 ところが日本では、初年度納付金(入学金・授業料など)が国公立大学で80万円、私立大学では平均130万円をこえました。公的奨学金も返済が必要な貸与制しかありません。「お金がなくて進学をあきらめた」という声が出るほど、“教育の機会均等”がふみにじられています。
 この原因は、大学予算の水準が、欧米の半分以下とあまりに低いことにあります。05年度予算でも、国立大運営費交付金が98億円削減され、授業料標準額は1万5千円も値上げされました。私立大学の経常費にたいする国の助成金の割合も、1980年の29・5%をピークに現在12%前後にまで落ち込んでいます。
 「高等教育の漸進的無償化」条項を批准していない国は、条約加盟151カ国のうち、日本、マダガスカル、ルワンダの三ヶ国だけです。国連人権委員会は、日本政府に同条項の批准を勧告しました。来年の六月が回答期限であり、日本の対応が問われています。
 日本共産党は、「高等教育の漸進的無償化」条項の保留を撤回させ、学費負担の軽減をめざします。当面、国立大運営費交付金をふやして国立大学費の引き下げや学費減免制度の拡充、私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成制度の創設などにより私立大学生の負担軽減、希望者全員にたいする無利子奨学金支給、給付制奨学金の導入をめざします。

16、学術・文化・スポーツの自由で豊かな発展のために「学問の自由」を守り、国民の立場にたった大学改革をすすめる

大学予算を大幅にふやし、学費負担の軽減、教育研究条件の抜本的整備をはかる……

欧米諸国の半分に満たない高等教育予算を大幅に増額し、国立大学の狭く老朽な施設の改善をはじめ、大学の教育研究条件を抜本的に整備します。国会で決議されている、私立大学の経常費2分の1国庫補助を実現します。私学助成のあり方として、「ひも付き」ではない一般補助を充実させます。
 すべての国民に高等教育の機会を保障するため、国際人権規約(社会権規約)の「高等教育の漸進的な無償化」条項(13条2項C)の留保を撤回し、国民の学費負担の軽減をめざします。
 国公立大学の法人化を契機にした予算の一律削減を中止し、運営費交付金の増額をすすめ、学費の引き下げと教育研究の基盤的経費の充実をはかります。私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成制度をつくります。
 なお、以上の内容を含む「分野別政策」の全文は、日本共産党中央委員会ホームページ( http://www.jcp.or.jp/seisaku/2005/05syuuin_kaku_bunya.html)で公表しています。

2005年8月30日  日本共産党中央委員会 学術・文化委員会

 

 

 返信 社民党

2005年9月5日
国立大学法人法・意見広告の会事務局
社会民主党政策審議会

「貴党・マニフェスト」について

 8月29日にご質問ありました、「どうぞ貴党のマニフェストに、私学を含めた大学の授業料の値下げ、家計負担の軽減化をお加え下さい。貸与型の奨学金は学生や家計負担者にとって魅力のあるものではありません。やる気と能力のある若者に高等教育の機会が均等に与えられる、そんな希望のある社会が日本を活性化します。」との件につきまして、以下の通り回答させていただきます。皆様方のご提案の趣旨を党の政策に活かしていく所存ですので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

1.「我が国の大学進学のための家計負担は、先進諸外国と比べても恐るべき高額に達 しております
」、「少子化の原因の一つに、日本の教育費の高騰があげられている」という認識は私 たちも共通のものと考えています。マニフェストでは、「5.質の高い教育を保障します」として、「教育予算の対GDP比5%達成で20人学級と教職員の30万人増を実 現します。奨学金・育英制度を拡充するとともに、私学助成を充実します。」ということを盛りこんでいます。

2.マニフェストは8月30日の公示日には全国に届けなければならないものですが、総務省届出パンフレットの扱いですので、その前の週に行われる総務省の事前審査に完成原稿に出さなければなりません。したがって、事実上今回の場合25日頃が最終締め切りでした。したがって、せっかくの貴重なご提案であると思いますが、すでに事前審査、記者発表、印刷・製本、ホームページへの掲載が終わった段階ですので、残念ながらご要望にはお応えできなかったと率直に申し上げさせていただきます 。
3.そのうえで、マニフェストとは別に、マニフェストに掲載できなかったものについて、「社民党総合政策ガイド2005」という形で作成をしホームページに掲載いたし
ております。そこでは、教育政策の中で、次のような主張を盛りこんでいます。基本的に皆様方の趣旨は活かされているのではないかと思います。

●「社民党総合政策ガイド2005」(抜粋)
(2)高等教育の無償化に向け、国際人権規約(社会権13条)の留保を撤回します
 国際人権規約(社会権)第13条は、高等教育について「無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」こと
を定めています。日本はこの高等教育無償化条項を「留保」していますが、これは同規約締約国151ヵ国(05年4月現在)中、日本、マダガスカル、ルワンダの3国のみであり、日本も早期に留保の撤回を表明し、無償化を目指します。

(3)高等教育の質の充実のためにGDP1%水準の達成を目指します
 例えばアメリカの高等教育への財政支出はGDP0・9%程度であるのに対して、日本は0・5%にすぎません。高等教育の基礎研究の立ち遅れを改善するため、当面
GDP1%水準の達成を目指します。)
(4)多様な教育を育むため私学助成の拡充強化に努めます
 私立学校と公立学校は、公教育を担う車の両輪です。しかし、両者の教育条件にはいぜん容認しがたい格差が存在し、格差の是正を急がなくてはなりません。長びく不況の中で私学に通う子を持つ保護者の経済的負担も限界に来ており、私学助成制度の拡充強化を行ないます。
@授業料減免制度の抜本拡充
A30人以下学級実現のための補助
Bバリアフリー化のための特別助成
C私大等の教育・研究の充実へ経常経費に対する2分の1助成
(5)機会均等を保障できる奨学金・育英制度を充実させます。
 奨学金制度の抜本的な充実は、教育の機会均等を保障するための不可欠の前提です。奨学金・育英制度を充実させます。無利子奨学金の拡充を図るとともに、選考基準については経済的条件のみとする改善も行います。同時に、返還義務のない給費奨学金制度、国が債務保証をする学費・生活費の無利子ローン制度を創設します。また、アジアを中心に留学生30万人の奨学制度を設立します。

(連絡先)
〒100-8981千代田区永田町2−2−1衆議院第一議員会館地下2階
社会民主党政策審議会事務局長 横 田 昌 三
TEL:03-3592-8345 FAX:03-3580-8068 メール:yokota@sdp.or.jp

 

以下は,「意見広告の会」ニュース304(2005年10月19日)より掲載

公明党 斎藤鉄夫・衆議院文部科学委員長からの返信

8月末メールを頂いておりましたのに、お返事が大変遅くなり申し訳ございませんでした。

全く、同感です。
我が党(公明党)は、これまで奨学金の拡充に力を注いできました。
渡し切り型、そしてその次に無利子貸与の拡充を訴えてきましたが、力足らず、有利子貸与を大幅に増やすという形でしか、まだ、実現できていませんが、これからも頑張っていくつもりです。
そして、大学授業料の問題、「意見広告の会・事務局」さんのおっしゃる通りと思います。
我が国の国家予算の中にしめる、教育関係費、特に高等教育関係費の率の低さは、先進国とは呼ぶのも恥ずかしくなるようなものです。
少子化対策という視点からも、今後も頑張って参ります。

衆議院文部科学委員長 斉藤 鉄夫
衆議院議員 斉藤 鉄夫事務所
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