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2008年4月24日

鹿児島国際大学事件をどう受け止めるか

京滋私大教連
 ∟●機関紙No132(2008.4.25号)

鹿児島国際大学事件をどう受け止めるか

細川孝(龍谷大学)

 6年前の2002年3月、鹿児島国際大学で3人の教員が不当に解雇される事件が起こりました。解雇の理由とされたのは、教員採用人事における業績審査と審議過程に疑義があるということです。鹿児島国際大学を経営する学校法人津曲学園の理事会は、理事会のもとに「大学問題調査委員会」を設置し、懲戒処分を決定しました。

 この事件の特異性は、教授会における採用審査をめぐって教員を解雇するというものであり、「学問の自由」や「大学の自治」に全く反する暴挙でありました。3人の教員のたたかいを支援する支援組織である「鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会」に600人近い大学教員が支援者として参加したのも、この解雇事件がいかに不当であるかを示しているように思います。

 最高裁判所は2008年3月21日付で、津曲学園からの上告を棄却し、上告受理申立を不受理にするという決定を下しました。2002年4月5日の地位保全等仮処分申立(同年9月30日、地位保全等の仮処分決定)以降続いた裁判は終了し、法的な決着は完全についたこととなりました。

 しかし、不思議なことに、津曲学園理事会は、3人の教員を職場に戻してはいません。法治国家において、法的に完全に決着がついた問題に関して、理性の府である大学において、なぜこのようなことが存在するのか理解に苦しむところです。USR(大学の社会的責任)からすれば、コンプライアンス(法令遵守)は大前提なはずです。

 さて、鹿児島国際大学事件は、わたしたちにとって、どのような意味を持つのでしょうか。近年における「大学改革」の流れの中で、トップへの権限集中がすすみ、教授会が人事権を失っていく事例を耳にすることが増えています。そのような点からすれば、鹿児島国際大学事件は、決して他人事ではありません。

 「学問の自由」を制度化したものが「大学の自治」であると言われます。その点で、自治の担い手としての深い自覚と高い見識が求められることは言うまでもありません。いま日本の大学ですすんでいる「学問の自由」や「大学の自治」を破壊する動きに対して、これを許さないたたかいが切実に求められていると考えるものです。


2008年4月 1日

鹿児島国際大学不当解雇事件、最高裁決定に対する鹿国大組合・守る会・九州私大教連の声明

チビログ
 ∟●守る会、組合ほか連名声明文

声  明

2008年3月24日

 2008年3月21日に最高裁判所は、鹿児島国際大学経済学部の三人の教授に対する懲戒解雇処分に関し、津曲学園理事会からの上告を棄却し、同時に上告受理申立を不受理とする決定を下しました。2002年3月31日の懲戒解雇以来、三教授の「不当解雇であり無効である」との主張は、鹿児島地裁と福岡高裁において全面的に認められてきましたが、最高裁もこれを認めたのです。

この決定により解雇無効が確定し、学園理事会の主張した様々な懲戒理由は根本的に否定され、不当解雇であったことが完全に明らかになりました。

この勝利を踏まえて、私たちは津曲学園理事会に以下のことを要求します。

一、 最高裁判所の決定に従い、三教授を直ちに原職に復帰させること。

私たちは、大きな苦痛と負担を強いられながらこれまで奮闘を続けられてこられた三教授に敬意を表すと同時に、この裁判を一貫して支援し続けた皆様方と共に、この勝利を心から喜びたいと思います。
私たちは、上記の要求の実現のために、引き続き三教授を支援していきます。
今後とも、皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。
・・・・・鹿児島国際大教職員の身分を守る会
・・・・・・・・・鹿児島国際大学教職員組合
 ・・・・・・・・九州私立大学教職員組合連合


2008年3月26日

鹿児島国際大学不当解雇事件、最高裁決定を報じるマスコミ報道一覧

3教授「誠意ある対応を」 鹿国大解雇無効確定で会見

南日本新聞(3月25日)

 教員選考をめぐる懲戒処分は不当として鹿児島国際大学の三教授が地位確認などを求めた訴訟で,大学を運営する津曲学園の上告を最高裁が棄却した件で,三教授が24日,鹿児島市の県庁で会見を開いた。棄却により,同学園に対し,教授の地位確認と給与支払いを命じた1,2審判決が確定する。教授らは完全復帰や謝罪など「誠意ある対応」を学園に強く求めた。
 会見には,田尻利(72),馬頭忠治(55),八尾信光(60)の三教授と,支援団体関係者が出席。田尻さんは「教員としてシャットアウトされた時間を返してほしい」と再雇用を求めた。馬頭さんは「家族へ与えた不安も大きく,償ってほしい。不誠実なら損害賠償請求なども考える」として,謝罪と名誉回復措置を求めた。八尾さんも「この6年間に受けた苦痛と損害は大きいが,さしあたって学園当局の誠意を見たい」などと語った。
 控訴審判決などによると,同学園は1999年に同大経済学部の教員選考で不当な審査を行ったなどとして,2002年に3人を懲戒解雇した。学園側は「理事長が不在で,決定の通知の中身を確認できていないので,コメントできない」としている。

鹿児島国際大・地位確認訴訟:津曲学園の上告棄却-最高裁

毎日新聞(3月25日)

 教員選考に不正があったとして懲戒解雇された鹿児島国際大学(鹿児島市)の経済学部の3教授が雇用契約上の地位確認などを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は21日付で同大を経営する津曲学園の上告を棄却した。地位確認と賃金支払いなど原告側の主張を全面的に認める判決が確定する。
 判決などによると、99年度の経済学部教員公募で、馬頭忠治(55)、田尻利(72)両教授が選考委員として候補者を1人に絞り、八尾信光教授(60)が議長だった教授会で承認した。これに対し、大学・学園側が「科目に不適合な候補を選んだ」などと主張し、02年3月、3教授を懲戒解雇した。
 3教授らは24日、記者会見し、津曲学園理事会に「最高裁決定に従い、職場に復帰させる」よう求める声明を発表。「(解雇後)6年間の苦痛と損害は大変なものだった」などとし、謝罪と名誉回復など「誠意ある対応」を求めた。
 津曲学園側は「最高裁決定は把握したが、詳細は分からず、現時点ではコメントのしようがない。対応は今後、協議したい」としている。

鹿児島国際大訴訟 学園側の上告棄却 3教授の解雇無効、確定へ

西日本新聞(3月25日)

 教員選考で不正をしたとして、鹿児島国際大(鹿児島市)を懲戒解雇された田尻利さん(72)と八尾信光さん(60)、馬頭忠治さん(55)の同大経済学部の3教授が、大学を運営する津曲学園(永田治雄理事長)に解雇の無効確認などを求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は24日までに、学園側の上告を棄却する決定をした。

 解雇の無効を認め、学園側に解雇とされた期間中の賃金支払いを命じた1、2審判決が確定する。決定は21日付。学園側は「決定書を見ておらず、理事長も不在でコメントできない」としている。

 3教授は24日、記者会見し、「学園側には職場復帰と謝罪、名誉回復を求めたい」「不誠実な対応をするなら損害賠償請求も検討したい」と話した。

 2審判決などによると、同大学は、99年度教員選考にかかわった3教授が、募集科目と合致しない候補者を不正に採用しようとしたとして、2002年3月に懲戒解雇。

 1審鹿児島地裁判決は「3人の行為に権限の逸脱や権利の乱用は認められず懲戒理由がない」と判断、2審も支持した。

解雇の無効 最高裁支持 鹿児島国際大学訴訟

朝日新聞(2008年03月25日)

 鹿児島市の鹿児島国際大学に懲戒解雇とされた教授3人が「処分は不当」と主張し,大学を運営する津曲学園に地位確認などを求めた訴訟で,最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は解雇無効と判断して地位確認と給与の支払いを命じた1,2審判決を支持し,学園側の上告を棄却した。決定は21日付。
 原告は経済学部の田尻利(72),八尾信光(60),馬頭忠治(55)の3氏。県庁で24日に会見した3人は「学園側に名誉回復を求めたい」と話した。控訴審判決などによると,学園側は02年3月,「教員選考で不正をした」として3人を懲戒解雇にした。3人はほかの研究者らの協力で研究を続けてきたが,学園側の処分を「教育者,研究者として致命傷になる言いがかり」と批判し,復職を求めてきた。

3教授解雇無効確定へ 最高裁 学園側の上告棄却

南日本新聞(2008年03月24日)

 鹿児島国際大学の三教授が,教員選考をめぐる懲戒解雇処分は不当として,地位確認などを求めた訴訟で,最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は「上告の理由がない」として,大学を運営する津曲学園の上告を棄却する決定をした。解雇を無効とし,同学園に教授の地位確認と給与支払いを命じた一,二審判決が確定する。決定は21日付け。
 控訴審判決などによると,同学園は1999年の同大経済学部教員選考で,選考委員や教授会議長だった田尻利(72),馬頭忠治(55),八尾信光(60)の三教授が,科目が不適当な人物を推薦したなどとして,2002年3月に懲戒解雇した。教授側は同年4月に地位保全と学内立ち入り妨害禁止を求める仮処分を申請し,認められたが,学園側が懲戒処分撤回の姿勢を見せないとして同年11月に提訴した。
 上告棄却を受けて,原告代理人は「妥当で当然の判決だ。判決に従い,学園側は早期復職など三人の救済を図ってほしい」と話した。
 懲戒解雇処分から約6年が経過。県内の大学教職員らでつくる支援組織によると,田尻教授は定年に達し,昨年8月に研究室を出ているという。

国際大教授裁判、解雇無効確定へ

KTS鹿児島テレビ(2008年03月24日)

 鹿児島国際大学の3人の教授が懲戒解雇の無効を求めていた裁判で最高裁判所は大学側の上告を棄却しました。これで「解雇は不当」とした高裁判決が確定しました。
 この裁判は鹿児島国際大学の教員採用をめぐって不正を行ったなどとして懲戒解雇処分となった3人の教授が処分は不当であるとして地位の保全を求めていたものです。
 一審と二審は教授側の訴えを認めていて最高裁も今月21日付けで大学側の上告を棄却する決定をしました。
 教授たちを支援する団体によりますと教授らは「名誉が回復された。すぐ復職させてほしい」と話しているということです。

懲戒解雇の3教授勝訴確定

MBC南日本放送(2008年03月24日)

 教員選考をめぐって不当に懲戒解雇されたとして、鹿児島国際大学の教授3人が、大学を運営する津曲学園を訴えていた裁判で、解雇を「無効」とした高裁判決が確定しました。教授らはきょう記者会見し、復職と謝罪を求めました。この問題は、今から6年前、鹿児島国際大学の教員選考に絡み、当時の経済学部長だった八尾信光教授ら3人の教授が、選考で不正をしたとして懲戒解雇されたものです。裁判では、一審、二審とも解雇は無効で判決確定までの賃金を支払うよう命じる判決を言い渡し、最高裁も今月21日付で学園側の上告を棄却。この判決が確定しました。記者会見した3人の教授は、一刻も早い復職と謝罪を学園側に強く求めたいとしており、誠意が感じられなければ、損害賠償訴訟も辞さないと話しました。津曲学園では「今後のことは理事会で協議したい」とコメントしています。

"懲戒解雇は無効"教授解雇で最高裁判決

KKB鹿児島放送(2008年03月24日)

 鹿児島国際大学の教授3人が大学の懲戒解雇処分の無効確認などを求めた裁判で最高裁は、大学側の上告を棄却する決定をしました。3人は職場への完全復帰や名誉回復のための謝罪を学園に求めています訴えていたのは鹿児島国際大学経済学部の八尾信光教授ら3人です。八尾教授らは、経済学部の教職員の採用をめぐって「科目にふさわしくない人物を推薦した」などとして2002年に懲戒解雇され、大学を運営する津曲学園に対して解雇無効の確認などを求めていました。

国際大懲戒解雇 3教授の勝訴確定

KYT鹿児島読売テレビ (2008年03月24日)

 鹿児島国際大学の教授3人が、教員選考をめぐる懲戒解雇は無効などとして、地位確認などを求めた裁判で、最高裁は大学を経営する津曲学園の上告を棄却、教授3人の全面勝訴が確定した。今後について3人は、学園側に誠意ある対応を求めたいとしている。


2008年3月25日

鹿児島国際大学不当解雇事件、原告教授の声明 大学の歴史に汚点を残す愚行

 下記は,鹿児島国際大学不当解雇事件で,6年間の裁判を闘った馬頭忠治氏が,3月24日,記者会見において発表した声明です。

 津曲学園による私たちに対する懲戒解雇が誤りであり違法であったことがはっきりとしました。人事に不正などなかったです。教員選考の委員であった私たちと経済学部教授会の判断は正しかったことが証明されました。この上なく嬉しい完全勝訴です。

 津曲理事会は、私たちに謝罪するとともに名誉回復の措置を直ちに講ずべきです。また既に確定している原職復帰に対する一切の妨害は止めるべきです。さらには、率直に言って、この6年を返していただきたい。家族に対しても償っていただきたい。強く、そう思っております。

 また、理事会は、この教員選考の委員を務めた私たち以外のお二人に対する6ヶ月と12ヶ月の減俸という懲戒処分を撤回し、お二人にも謝罪すべきです。もちろん、学長に上申書を出して、この事件のきっかけを作った7人の責任も厳しく問われるはずです。

 さらに、この懲戒解雇の不当性を自らのHPに訴えた市民(鹿児島在住)に対して、故菱山前学長は、謝罪広告を新聞紙面に載せないと名誉毀損で訴えるなどと信じられない暴挙に出ました。理事会は、これも不問に付すことはできないはずです。

 そればかりではありません。これまで裁判所に提出した理事会の証拠は、2002年の地位保全裁判のものとほとんど変わっていません。理事会は、同じ資料で最高裁まで長引かせ、鹿児島地裁と福岡高裁の判決を尊重することなく、裁判をいたずらに引き伸ばしてきたのです。これは明らかに人権侵害です。長引けば、裁判費用も嵩みます。私たちの負担も大変なものです。この事件の責任者は、これらの費用を私弁すべきです。

 さらに、津曲学園理事会は、高等教育を預かるものとして、事件に関わる一切の事実を明らかにし、その責任を取るのは当然ですが、とりわけ、京都大学名誉教授でもある伊東光晴理事の責任は極めて大きいはずです。懲戒解雇理由書にもとづく弁明聴聞を主管し、懲罰委員会の委員を務め、理事会で懲戒解雇と決定するまで一貫してこの事件に関わってきたのは、菱山全理事長はすでに昨年2月に死去されたので、もはや伊東光晴理事だけです。また、私は、この事件のきっかけをつくったH教授の研究業績には、剽窃の疑義さえあることを鹿児島地裁に資料で示しましたが、その同じものを学術担当理事でもあるこの伊東光晴氏に郵送しております。このように伊東理事の責任は看過できるものではありません。

 この懲戒解雇事件は、大学の名を著しく傷つけた事件でもあります。理事会が教員の研究上の判断を問題にし、かつ虚偽記載だとでっち上げて懲戒解雇したことは、大学の歴史に汚点を残す愚行でしかありません。教授会の自治も否定されました。今後、私たちは、一丸となって鹿児島国際大学の名誉と信頼を取り戻していかなくてはなりません。最後となりましたが、6年間という長い間にわたって、支援し続けていただいた鹿児島の守る会の皆様、全国の大学教員の皆様、組合の皆様、また嘆願書を学長や同窓会長に出してくれた卒業生の皆様、さらには私の家族に心よりお礼を申し上げます。有難うございました。

鹿児島国際大学経済学部教授 馬頭忠治        2008年3月24日


鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会、声明

 3月24日,鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会は,津曲学園の上告を棄却した最高裁の決定を受けて,以下の「声明」を発表した。
 この声明は,同日13時より開催された鹿児島・県政記者クラブでの三教授記者会見の場においても配布された。

声 明 文

2008年3月24日

鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会
代表 篠原三郎

 
 最高裁判所第二小法廷は、裁判官全員の一致で津曲学園理事会(菱山泉理事長<上告当時>)側の上告を棄却するとの決定を2008年3月21日に行い、その結果を3月23日に三教授に通知しました。この決定をもって三教授の全面勝訴は確定いたしました。
 2006年10月27日の福岡高等裁判所(宮崎支部)の判決(三教授の全面勝訴)を不服とした津曲学園理事会は最高裁判所に上告しましたが、地裁、高裁判決に続き、2002年3月の学園理事会の懲戒解雇処分が不当であるとする三教授の主張が全面的に認められました。
 本件は、鹿児島国際大学経済学部の採用人事をめぐる選考過程、教授会審議、運営等が不当であったとして、学園理事会が三教授を一方的に解雇したことにはじまるものでしたが、この棄却は、最高裁においても当初より私たちが主張してきたように学園理事会側の処分の不当性を認めるものであります。
 この結果を受け、私たち鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会は、学園理事会に対して、以下のように要請し、すみやかに事態の解決をはかることを強く求めます。

<要請事項>
1.三教授をただちに完全復帰させることを求める。
2.三教授の名誉を回復する具体的な措置を講ずることを求める。
3.誤った処分を行った理事会メンバーは三教授に対して謝罪することを求める。
4.理事会はじめ大学当局は、この6年間にわたって大学運営を混乱させ、また大学の名誉を著しく傷つけたことの責任を明確にし、その責任の内容を学内外に明らかにすることを求める。
5.この間の裁判過程において大学財政に不要な巨額の支出を強いたことの経営責任は重大であり、大学経営者たる理事は私財をもって償うことを求める。
6.理事会はじめ大学当局は、三教授およびご家族の6年間の苦痛およびさまざまな不利益を償うための具体的な措置を講ずること求める。
以上 


2008年3月24日

鹿児島国際大学不当解雇事件,最高裁が学園の上告を棄却 三教授側勝訴が最終確定

 鹿児島国際大学不当解雇事件に関わり,3月21日,最高裁第二小法廷(裁判長裁判官・古田佑紀)は,下記の通り学園側の上告および上告受理申立の棄却を決定した。これで2002年3月末に同事件が発生してからまる6年かけて全ての裁判は終わった。その間,下記「鹿児島国際大学での三教授懲戒解雇処分に関する裁判経過」に記載したように,この事件に関わり,12の裁判が闘われたが,全て3教授側の勝訴,学園側の完全な敗北に終わった。

 この解雇事件が紛れもない不当解雇事件であったことは,すべての裁判において立証され尽くした。こうした不当解雇事件を引き起こし,いたずらに6年もの間,引き延ばし続けた津曲学園理事会,特にその中心的役割を果たした当時の学長菱山泉(2007年2月17日死亡,死亡時は理事長),および理事の伊東光晴(京都大学名誉教授,福井県立大学名誉教授),その他関係理事の責任は重大である。6年間教育と研究を奪われ,多大な苦痛を負わした三教授に対して心から謝罪するとともに,自らの非を社会的に公にして辞任すべきである。そして,今回の最高裁決定を踏まえ教授らの職場復帰を即時実現すべきである。

 さらに,事件の発端となった経済学部教員選考委員会と当該教授会審議を巡り,理事会に上申書を提出するなどこの解雇事件を導き,かつ未だ自ら作成したHP「坂の上通信」鹿児島国際大学教員有志)において三教授への名誉毀損行為を執拗に繰り返している当該大学の教員7名についても,三教授に謝罪し,その責任を取って当該大学を辞職すべきである。なお,HP上での名誉毀損行為は,当該大学の公式HPも同様である(未だにHPを掲載し続けている)。

最高裁決定(2008年3月21日)書面全文

当該解雇事件の経緯の全体像については,以下を参照のこと。
鹿国大解雇事件はこのようにして起こった!
鹿児島国際大学懲戒解雇事件の事実経過と解雇の不当性
以下に鹿児島国際大学解雇事件に関して当サイトが扱った全記録を掲載する。
鹿児島国際大学解雇事件(その1)
鹿児島国際大学解雇事件(その2)
鹿児島国際大学解雇事件(その3)

平成19年(オ)第207号
平成19年(受)第240号

決定

鹿児島市城西3丁目8番9号
上告人兼申立人    学校法人津曲学園
同代表理事長     菱山  泉
同訴訟代理人弁護士  金井塚 修
           金井塚康弘
           畠田 健治

鹿児島市○○
  被上告人兼相手方   田尻 利
鹿児島市○○
  被上告人兼相手方   馬頭忠治
鹿児島市○○
  被上告人兼相手方   八尾信光

 上記当事者間の福岡高等裁判所宮崎支部平成17年(ネ)第165号、第206号解雇無効、地位確認等請求控訴、同付帯控訴事件について、同裁判所が平成18年10月27日に言い渡した判決に対し、上告人兼申立人から上告及び上告受理の申立てがあった。よって、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文


 本件上告を棄却する。
 本件を上告審として受理しない。
 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

理由

1 上告について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
2 上告受理申立てについて
 本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

平成20年3月21日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官  古田佑紀
    裁判官   津野 修
    裁判官   今井 功
    裁判官   中川了滋

鹿児島国際大学での三教授懲戒解雇処分に関する裁判経過

 平成14年3月29日、鹿児島国際大学を経営する津曲学園理事会が、経済学部の三名の教授を3月31日付で懲戒解雇処分とする決定を行った。(他に1名の教授を減給処分とし、もう1名の教授も後に減給処分とした)。主な処分理由は平成11年度に経済学部が行った教員公募での採用候補者の審査と決定が不当であったというものである。経済学部教員選考委員会での選考と教授会での決定に基づいて推薦された採用候補者を当時の学長の判断で不採用とした上、学園理事長の下に調査委員会や懲罰委員会を設け、教員選考委員会メンバーと経済学部長を処分した。

 なお、理事長の下に設置された二つの委員会は、教授会や大学評議会での審議や承認を経ることもなしに設けられた。調査委員会の委員長には学長自身が就き、懲戒処分案の理事会への提案も学長自身が行った。学長は選考委員会が選定した採用候補者は「科目不適合」であったと喧伝したが、同候補が抜群の業績を有する優れた研究者であったことは後に学長側も認めており、その科目適合性については当該分野屈指の代表的学者たちが裁判所に提出した「意見書」で幾重にも証言している。
 この懲戒解雇処分をめぐって以下の裁判が行われた。

(1)地位保全等仮処分申立事件〔平成14年(ヨ)84号〕
 平成14年4月5日に三教授側が、鹿児島地裁に提訴、同年9月30日に地位保全等の仮処分決定。担当:平田豊裁判官
(2)地位保全等仮処分異議申立事件〔平成14年(モ)1538号〕
 平成14年12月25日に学園当局側が鹿児島地裁に提訴、これについての審尋は後述する本訴口頭弁論の中で行われ、平成16年年3月31日に上記仮処分認可を決定。「決定」の中では「学問的立場の違いを理由に懲戒処分」すべきではないことが説示されている。担当:(池谷泉裁判長、審尋終了後退職)・山本善彦・平井健一郎裁判官
(3)保全抗告申立事件〔平成16年(ラ)43号〕
 上記決定を不服として平成16年4月17日に学園側が高裁に抗告。大量の書面を提出したあと9月13日に学園側が提訴取下げ。
(4)損害賠償等請求事件〔平成15年(ワ)357号〕
 本件処分と地位保全等仮処分決定に関する南日本新聞の報道内容と、地位保全決定後同紙に掲載された八尾論稿での肩書記載が学園に対する名誉毀損に当たるとして、平成15年4月22日に学園側が鹿児島地裁に提訴。平成16年1月14日に学園側全面敗訴の判決。 担当:池谷泉裁判官
(5)賃金仮払い仮処分命令申立事件〔平成15年(ヨ)161号〕
 平成15年10月以降の賃金仮払いを求めて平成15年10月15日に三教授側が鹿児島地裁に提訴。平成16年8月27日、地裁は平成16年6月から本訴第1審判決言い渡し月までの賃金仮払いを命じた。 担当:平田豊裁判官
(6)解雇無効・地位確認等請求事件〔平成14年(ワ)1028号=本訴第1審〕
 平成14年11月19日、三教授側が鹿児島地裁に提訴。被告学園側の外薗、韓、原口、衣川氏ら四証人と被告代表菱山泉理事長(前学長)本人への尋問、原告側の亀丸証人と三教授本人への尋問などを含む15回の口頭弁論(他に3回の円卓協議)を経て、平成17年8月30日に三教授側全面勝訴の判決。判決は「原告らにはいずれも懲戒事由に該当する事実が認められない」から「懲戒解雇」も「普通解雇」も「無効である」として、雇用契約上の地位を確認するとともに解雇処分後の給与と賞与の全額を支払うよう命じた。担当:池谷泉裁判長、市原義孝・平井健一郎裁判官、佐藤武彦裁判長らによる審理を経て、高野裕裁判長・山本善彦・大島広規裁判官が担当し判決を言い渡した。
(7)解雇無効・地位確認等控訴事件〔平成17年(ネ)165号=本訴第2審〕
 平成17年9月8日に学園側が控訴。2回の口頭弁論(と3回の電話協議)を経て平成18年10月27日に三教授側全面勝訴の判決。高裁判決は、事実と争点について地裁判決よりもさらに踏み込んだ判断を示し上、地裁判決と同旨の判決を言い渡した。判決理由の中では、大学の将来について教職員や学部長が意見や要望を述べることは「何ら問題とされるべきものではなく」「被控訴人八尾の経営介入行為なるものは同被控訴人に対する本件懲戒解雇の口実にすぎない」とした。 担当:横山秀憲裁判長、浅井憲・林潤裁判官
(8)強制執行停止申立事件〔平成17年(モ)588号〕
 平成17年年9月16日、学園側が控訴を理由として地裁判決に基づく強制執行の停止を申立てた。地裁は三教授らへの未払い賃金の総額を超える巨額の担保を学園側に供託させた上でこれを認めた。 担当:高野裕裁判長、松本圭史・大島広規裁判官
(9)賃金仮払い申立事件〔平成17年(ウ)58号〕
 地裁判決に基づく賃金支払いに学園側が応じなかったため、平成17年10月7日、三教授側が賃金の仮払いを申立てた。高裁の斡旋で同年12月分から賃金仮払いが再開された。 担当:浅井憲裁判官
(10)事情変更による保全取消申立事件〔平成18年(モ)第370号〕
 平成18年6月28日、学園側が新しい定年規定を理由に田尻教授の研究室退去を求めて研究室利用妨害禁止命令の取り消しを鹿児島地裁に申し立てた。地裁は同年10月26日に学園側の申立を却下した。 担当:山本善彦裁判官
(11)保全抗告事件〔平成18年(ラ)第62号〕
 上記決定を不服として学園側が平成18年12月13日に高裁に保全抗告。平成19年2月9日、浅井憲裁判官の斡旋で既に新規程が定める定年を1年以上過ぎていた田尻教授に同年7月31日まで研究室利用を認めることとした。 受命裁判官:林潤裁判官
(12)解雇無効・地位確認等上告提起事件〔平成19年(オ)207号=本訴上告審〕平成19年(受)240号=本訴上告受理申立事件〕
 本訴控訴審判決を不服として平成18年11月10日付で学園側が高裁を通して最高裁に上告。平成19年2月9日、最高裁第二小法廷に「事件記録」が到着し、その後「事件記録」について審理が開始された。

 以上のように、この懲戒解雇事件をめぐる裁判では三教授側の勝訴が続いた。特に重要な4つの裁判〔(1)、(2)、(6)、(7)〕については地裁と高裁で延べ14名の裁判官が担当。それらの全てで、三教授らには懲戒事由に該当する事実が認められないから解雇は無効であり、三教授らの地位を保全し確認するという三教授側全面勝訴の判断が示されている。


2007年11月15日

鹿国大三教授を支援する全国連絡会、福井県立大学理事長・学長はじめセレモニーの実施を決定した関係者の見識を問う!

鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会
鹿児島国際大学解雇事件の裁判と資料

福井県立大学
 ∟●菱山泉名誉教授寄贈図書の公開と講演会の開催について

福井県立大学主催「菱山泉名誉教授寄贈図書の公開と講演会の開催について」の報に接して

2007年11月15日
鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会事務局

 福井県立大学は、2007年11月12日付けで、同ホームページにて「菱山泉名誉教授寄贈図書の公開と講演会の開催について」と題するセレモニーの案内を行った。この案内は県民向けの公開案内でもある(開催日、11月20日)。また、同セレモニーでの講演会には、よりによって伊東光晴鹿児島国際大学理事が講演者となっている。鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会事務局は、このセレモニーの実施に驚愕の念をいだいている。福井県立大学理事長、学長はじめこのセレモニーの実施を決定した関係者の見識を問いたい。不当に処分され人権を著しく侵害された三教授の主張は、鹿児島地裁、福岡高裁(宮崎支部)において全面的に認められ勝訴した。これに対して全面敗訴となった伊東光晴鹿児島国際大学理事らは上告したが、間もなく最高裁判決が出されようとしている。そのような中、このセレモニーは実施される。最高裁判決の後、鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会は、この福井県立大学での件を含め声明を発表する予定でいる。

 以下の福井県立大学ホームページを参照されたい。
http://www.fpu.ac.jp/index.html

2007年4月25日

鹿児島国際大学不当解雇事件、3教授勝訴の朗報はまだですか?

チビログ
 ∟●3教授勝訴の朗報はまだですか?

3教授勝訴の朗報はまだですか?

 鹿児島国際大学三教授事件は、今のところ最高裁の判決待ちであり、「朗報」はもう少し先のようです。
 ブログにしては間が空きすぎたので埋め草として少しばかり「雑報」を書き込むことにします。
 地裁および高裁判決で三教授に対する懲戒解雇の違法性が明らかになったあと、それでも津曲学園側は最高裁に上告して万に一つの勝ち目もない争いをつづけています。
 この間、不当かつ違法な3教授の懲戒解雇と2教授の減給処分を命じた津曲貞春前学園理事長と、その処分を学園に要求した「A級戦犯」とも言うべき菱山泉前学長が相次いで死去しました。
 違法な懲戒事件を引き起こした二人が、敗戦ならぬ敗訴責任を果たすことなくこの世を去ったことは返す返すも残念であり、真相の解明と3教授の名誉回復に支障が生じないことを祈るばかりです。
 こうなれば、陰で糸を引いていた高名な経済学者であり岩波文化人である(笑)伊東光晴理事に暴走の責任をとってもらうしかありませんね。
 とりあえずその後の経過を簡単に報告します。
1.2006年10月24日、津曲貞春学園長(第3代理事長)が86歳で死去。
2.2006年10月27日、福岡高裁宮崎支部で3教授全面勝利の控訴審判決が言い渡される。
3.学園側は、2006年11月11日付で福岡高裁宮崎支部に上告及び上告受理申立書を提出。
4.2006年11月27日、津曲貞春氏のお別れ会が鹿児島高校で行われる。
5.学園側は、2007年1月7日付で上告理由書と上告受理申立理由書を福岡高裁宮崎支部に提出。
6.2007年2月7日付で最高裁(第二小法廷)から学園側の上告に関する「記録到着通知書」が送達される。
7.2007年2月17日、菱山泉第4代理事長(前鹿児島国際大学学長)が83歳で死去。
8.2006年3月17日、菱山泉氏のお別れ会が鹿児島市内のホテルで行われる。
9.2007年3月17日の理事会で、津曲貞男第2代理事長の子息、津曲貞利氏(50歳)が理事に選任される。
10.2007年3月27日の理事会において、新理事長に学園事務局長の永田治雄常務理事(68歳)が選任される(事務局長兼任)。
 以上、南日本新聞の報道および3教授側からの情報発信にもとづいてまとめてみました。