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 カテゴリー イラク戦争

2008年4月25日

空自イラク派遣に違憲判断―「そんなの関係ねぇ」?

水島朝穂のホームページ
 ∟●空自イラク派遣に違憲判断――「そんなの関係ねぇ」?

 耳を疑った。「そんなの関係ねぇ」。最近テレビはあまりみないので、お笑い芸人の名前を知らない。パンツ一枚でこう叫ぶ男性芸人。なぜ人気があるのか疑問に思っていたのだが、その言葉を、何と航空自衛隊トップの田母神俊雄航空幕僚長が使ったから驚いた。「私が〔隊員の〕心境を代弁すれば『そんなの関係ねぇ』という状況だ」と。空幕長が憮然としたのは、イラクにおける空自の輸送活動を憲法違反とする判決が出たからである。・・・・

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2008年4月23日

日弁連、名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

日弁連
 ∟●名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

 昨日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟判決において、航空自衛隊がアメリカからの要請によりクウェートからイラクのバグダッドへ武装した多国籍軍の兵員輸送を行っていることについて、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、この兵員輸送は他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であると判断した。そして、憲法9条についての政府解釈を前提とし、イラク特措法を合憲とした場合であっても、この兵員輸送は、武力行使を禁じたイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同法同条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反するとの判断を示した。

 そのうえで判決は、原告個人が訴えの根拠とした憲法前文の平和的生存権は、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではなく、憲法上の法的な権利として、その侵害に対しては裁判所に対して救済を求めることができる場合がある具体的な権利であると判断した。

 当連合会は、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法について、これが国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であることを明らかにしてきた。そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきた。

 当連合会は、このたびの名古屋高等裁判所の判決について、当連合会のかねてからの主張の正しさを裏付けるものであるとともに、憲法前文の平和的生存権について具体的権利性を認めた画期的な判決として高く評価するものである。ここにあらためて政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求めるものである。

2008(平成20)年4月18日

日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠

2008年4月21日

自衛隊イラク派兵差止訴訟の会、声明

自衛隊イラク派兵差止訴訟の会

声明

第1 画期的な違憲判決である
 2008年4月17日、名古屋高等裁判所民事第3部(青山邦夫裁判長、坪井宣幸裁判官、 上杉英司裁判官)は、自衛隊のイラクへの派兵差し止めを求めた事件(名古屋高裁平成18年(ネ)第499号他)の判決において、「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国による武力行使と一体化したものであり。イラク特措法2条2項、同3項、かつ憲法9条1項に違反する」との判断を下した。
 加えて、判決では、平和的生存権は全ての基本的人権の基礎にあってその享受を可能ならしめる基底的権利であるとし、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではないとし、平和的生存権の具体的権利性を正面から認めた。
 判決は、理由中の判断で、自衛隊がイラクへ派兵された後の4年にわたって控訴人らが主張してきたイラク戦争の実態と自衛隊がイラク戦争の中でどのような役割を果たしているかを証拠を踏まえて詳細な認定を行い、委託特措法及び憲法9条との適合性を検討した。その結果、正面から自衛隊のイラクでの活動が違憲であるとの司法判断を下したものである。
 この違憲判決は、日本国憲法制定以来、日本国憲法の根本原理である平和主義の意味を正確に捉え、それを政府の行為に適用したもので、憲政史上最も優れた、画期的な判決であると評価できる。判決は、結論として控訴人の請求を退けたものの、原告らを始め日本国憲法の平和主義及び憲法9条の価値を信じ、司法に違憲の政府の行為の統制を求めた全ての人々にとって、極めて価値の高い実質的な勝訴判決と評価できるものである。・・・・


2008年4月18日

名古屋高裁、イラク派遣初の違憲判断 空自活動「9条に違反」

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/87814.html

 自衛隊のイラク派遣は憲法違反として、約1100人が、派遣の差し止めや慰謝料を国に求めた訴訟の控訴審判決で名古屋高裁は17日、「航空自衛隊の空輸活動は憲法9条に違反する。・・・・

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2008年1月11日

イラク戦争の民間人死者数、3年間で15万人超

http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/2008-01-10T152510Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-296981-1.html

 世界保健機構(WHO)が9日に発表した調査結果によると、イラク戦争開戦後の3年間に攻撃などで死亡したイラクの民間人の数は約15万1000人となった。・・・・

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イラク人死者、開戦後3年間で15万人超 米医学誌

2007年11月20日

イラク派遣訴訟で原告敗訴

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071119/trl0711191359003-n1.htm

 自衛隊のイラク派遣は違憲で、国民の平和的生存権を侵害するとして、元自民党衆院議員で防衛政務次官や郵政相も務めた故箕輪登さん(昨年死亡、遺族が訴訟継承)ら北海道内の33人が、国に派遣差し止めと1人1万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で、札幌地裁(竹田光広裁判長)は19日、請求をいずれも退けた。・・・・

[同ニュース]
イラク派遣訴訟で原告敗訴 故箕輪登さんら、札幌地裁

2007年9月21日

イラク戦争と統計─推定死者数122万人

■[TUP-Bulletin] 速報725号より

イラク戦争と統計─推定死者数122万人

安濃一樹

 2004年10月29日、レス・ロバーツ博士の研究グループが、アメリカによる侵略と占領の犠牲となったイラク市民の死亡者数を推定するレポートを、イギリスの科学誌ランセットのオンライン版で公開しました。レポートは、ロバーツ博士が所属する米ジョンズ・ホプキンス大学と米コロンビア大学とバグダッドのアル・ムスタンシリア大学が合同して現地調査した結果を分析したものです。

 研究グループは、04年7月の時点でイラク市民の死亡率が侵略前の通常値と比べて2・5倍になり、侵略と占領の犠牲となった死者数は9万8000人に及んでいる可能性が高いと推定しています。死者の過半数がアメリカが率いる連合軍による攻撃の犠牲者であり、ほとんどが女性と子どもたちでした。

Iraqi Civilian Deaths Increase Dramatically After Invasion
http://www.jhsph.edu/publichealthnews/press_releases/PR_2004/Burnham_Iraq.html

 現地調査で集めた情報を集計して統計グラフをつくると放物線を描きます。放物線の頂点の値がおよそ9万8000人です。統計で数値を推定するとき、実際の死者数は95%の確実性でこの範囲に収まるという信頼区間を、グラフの頂点の左右に幅を取って示します。最低値は8000人、最高値19万4000人になります。これが、イラク戦争の死者数は推定で10万人と報道されました。上下の幅が大きいと感じるかも知れませんが、このレポート以上に科学的で確実性の高い数値は他になかったでしょう。

 2006年10月11日、引き続き調査を行った研究グループは、その結果を前回と同じ英ランセット誌オンライン版で発表します。新しい報告によると、03年3月に侵略が始まってから06年7月までに、通常の死亡率を超える過剰な死者数は、65万4965人(95%信頼区間=最低39万2979人~最高94万2636人)だと推定されました。そのうち60万1027人(42万6369~79万3663)が戦争の暴力行為によって殺害されたと考えられます。もっとも多い死因は銃撃による被弾です。

Mortality after the 2003 invasion of Iraq: a cross-sectional clustersample survey
http://web.mit.edu/CIS/lancet-study-101106.pdf

 ロバーツ博士グループによる第3の報告はまだありませんが、侵略から1年7カ月で10万人、3年4カ月で65万人が犠牲になったとすると、被害は占領が長期化するにつれて加速しながら増大していることになる。06年10月のレポートをもとに、イラクの激化する状況を考慮して、07年現在までの死者数を(科学的とは言えないが)概算すると死者はすでに100万人を越えている可能性があると訴える活動グループもあります。

Just Foreign Policy
http://www.justforeignpolicy.org/iraq/iraqdeaths.html

 先日、死者100万という怒りと不安に満ちた数字を裏打ちするような調査報告がイギリスの世論調査エイジェンシーから公開されました。イギリスのORB(世論調査ビジネス)はイラクの成人(18才以上)1461人に聞き取り調査を行い、イラク戦争が原因で、それぞれの家庭(同じ屋根の下に住む親族)から何人の死者を出したかと質問しています。回答の割合は、
0人    78%
1人    16%
2人    5%
3人    1%
4人以上 0・002%

 この結果をイラクの家庭総数405万0597(05年の人口統計)に当てはめると、122万0580人が犠牲となったと推定できます。ロバーツ博士の研究グループは、ファルージャなど米軍による壊滅作戦が行われた市街地をあえて調査の対象としませんでした。あまりに被害が大きいために、統計の数値が跳ね上がってしまうからです。ORBも、担当官が踏み込めないほど危険な地域では調査をあきらめています。

September 2007 - More than 1,000,000 Iraqis murdered
http://www.opinion.co.uk/Newsroom_details.aspx?NewsId=78

 ORBの調査はロバーツ博士グループのレポートほど厳密なものではありません。しかし、グループの統計データをもとにして、現時点までの死亡者数の補外値を求めるなら、やはり100万人を越える数値にたどりつくと思います。ORBの調査結果を報道したのは、アメリカの主流メディアではLAタイムズ紙だけでしょうか。

Poll: Civilian toll in Iraq may top 1M
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iraq14sep14,1,3979621.story?coll=la-headlines-world&ctrack=2&cset=true

 アメリカの貧しい家庭に生まれた若者たちが、米軍に入隊しイラクへ送られました。クリントン政権による(そして日本を含む国際社会が協力した)経済制裁を生き抜いたイラク市民は、いま侵略と占領と内乱に苛まれています。国際法を踏みにじる超大国アメリカの権力によって、犠牲となった兵士と市民の名前も顔も声も祈りも、私たちは知ることができません。国家の暴力に命を失った夥しい数の人びとは、死んで名前も顔も声も祈りも奪われ、ついには統計上の数字に変わる。

 ブッシュ政権はイラクの長期占領を宣言しました。自民党政権は「テロとの戦い」に協力することを外交政策の要としています。しかし、テロリズムとは何か、その原因は何か、戦いの目的は何か、いつどのように終結するのか。こうした問いに答えようとせず、自由と民主主義と平和を守るための戦争を唱えて市民を欺くなら、「テロとの戦い」は勝利も敗北もないまま、いつまでも終わることのない永久戦争となるでしょう。

 いま命ある私たちは、市民の名の下に、互いの顔を見つめ、声を重ねて、真実をみつめながら祈りを希望に変える責任を担っています。国家によるテロリズムと戦争を止めることができるのは、いつの時でも市民の力だけです。

TUPメンバー