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 カテゴリー (私)北陸大学

2009年01月22日

北陸大学労働組合、休日労働手当 支払い逃れの口実?

北陸大学労働組合
 ∟●組合ニュース、 第282号

休日労働手当、支払い逃れの口実?

 1月13日に団交が開催された。組合が4月に提出した要求書に対する法人の姿勢が逐条口頭で述べられた。その詳細を報告すべきであるが、今号は休日労働に対する手当の問題を取り上げる。
 実に人をバカにした、不誠実な、無責任な、腹立たしい話である。1月14日に押野事務局長名で(1月10日、11日の)「新春スペシャル勉強会の参加についての御礼とお詫び」と題するメールが配信された。曰く、「今回の勉強会は、あくまで自主的に参加するものであり、振り替え休日等を伴う勤務ではありません。しかしながら1月7日付案内文に誤って勤務及び振り替え休日という表現を用い、皆様に多大な誤解と混乱を与えてしまったことに、深くお詫び・・・」と。……


2009年01月06日

北陸大学教職員組合、「スペシャル勉強会なるものの中止を要求する」

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース、第279号
 ∟●教職員組合ニュース、第280号
 

スペシャル勉強会なるものの中止を要求する。

 嘗ての北陸大学には休日の勤務の強制について、それなりの抑制がありました。しかし、いつの間にか、遵法精神が消え、教職員の生活を脅かすことへの慮りも失せ、歯止め無く、時間外勤務、休日勤務を半強制的に命ぜられる状況に陥ってしまいました。
 嘗て、グローバルアイを標榜した北陸大学ですが、世界の労働時間の短縮の趨勢に逆らい、働け働けの奴隷制を彷彿とさせる労働実態に近づいてきています。戦前の日本海軍の月月火水木金金は決して誇るべきことではありません。
 一体、本学の経営者は何を考えているのでしょうか。教職員を休ませず、疲弊させてどうしようというのでしょうか。
 法定の労働時間を超えて勤務することは褒められることではありませんが、超過勤務を命じた場合は、経営者は、当然、その勤務に対する賃金を支払わなければなりません。その賃金には割り増し額が定められています。本学ではサービス残業が当たり前のようになっていて、最近も労基局の指導が入ったといわれています。
 事務局の時間外勤務に対する手当てがどの程度、実態に即して支払われているか、現状では詳細は不明ですが、以前数千万円に及ぶ不払い賃金を組合が支払わせた経緯があります。しかし、少なくとも教員に対する時間外勤務の手当ては極めて限定的です。土曜日の教育日程・行事など、トップダウンで声高らかに実施を宣言するにもかかわらず、それに伴う法的遵守事項がなおざりにされているのです。
 違法性は36協定といわれる労働協約に関しても見られます。労基法第36条に、時間外勤務を命じることが出来る前提として、労働時間の上限等を定めた協定を労働者側と使用者側が締結しなければなりません。薬学キャンパスではこの協約はなく、基本的に時間外労働・休日勤務を命じることは出来ないのです。大学側は、時間外勤務を少なくするよう努力するので協定締結に協力するよう要求していますが、どのように時間外勤務を制限していくのか、具体的な内容は示されず、太陽が丘の勤務実態を見るにつけ、また、来春1月10-11日の勉強会のように、更なる休日勤務を強制する現状では(実態は強制。強制でないならそうである担保が必要)、とても提案を信用することが出来ません。
 250日授業や国試などで休日勤務が増加していますが、手当を含め、代償措置がまともにとられていない状況で、勉強会などで休日出勤を増やさないように、組合は強い姿勢で糺していくことにしました。12月26日に、大学に対して、休日勤務のむやみな強制を止めるよう要求書を提出しました(次ページ)。
 その昔、本学において企業のトップによる講演がありました。その中で講師は「CS(Customer's Satisfaction, 顧客の満足)はES(Employee's Satisfaction, 労働者の満足)があって初めて成り立つ」と説いていました。本学の経営者は出席していましたが、聴いていなかったのでしょうか。
 皆さんにお願いです。時間外勤務はきちんと記録を取っておいて下さい。そしてきちんと法令を遵守するよう経営者に要求しましょう。私たちの生活を守りましょう。……


2008年11月28日

北陸大学教職組、理事会の方針の誤り 無試験入学制度の導入

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース、第277号

理事会の方針の誤り:無試験入学制度の導入

教育現場軽視の昨今
 2008年9月2日(火)に薬学部で教授懇談会が開催された。次年度から開講される「実務実習事前学習」(90分×122コマ)の担当者と実施場所を捻出する"懇談"であることが出席して初めてわかった。3年前の6年制薬学部スタート時点で必要であることが指摘されていた実務実習担当教員と場所の確保に対して、「実務教員の補充はしない、新たな講義・実習室の予算措置はない」との「上からの方針」に、仕方なく担当者と場所を他実習から絞り出そうというワケである。
 10月10日(金)に教員"懇談会"が開催された。この時もいつものように事前に議題は知らされなかった。河島理事が、「12月1日に『北陸大学附属太陽が丘ほがらか薬局』を開局する。薬学部教員をそこに出向させる」との方針を示し、事実上、"懇談"ではなく通達であった。席上、多くの質問、意見、疑念、反発があったのは当然である。現在取り組んでいる学生教育、OSCEトライアルへの予算カット、実務実習事前学習へのまともでない上記の対応など、教育への配慮を欠く経営姿勢にも不満の声があがった。これに対して大屋敷学長は「薬学部の教員の数が多すぎる」と述べた(事実に相違する=組合ニュース276号参照)。また、11月14日、第11回教授会冒頭には、学長は「授業充実改善のための学生アンケート」を2回実施するように命令した。意味のない2回実施に反対の意見と、膨大な学生・教員の時間の浪費に配慮する姿勢はなく、トップの意向を頑なに下ろす伝令の役目のみが顕著であった。本学のトップには、学生の教育を強化手当して、教員の努力を支援しようとの姿勢はみえず、寧ろマイナスを来す負担増ばかりが目立つ。
 本学はここ数年、薬学部志願者の激減及び薬剤師国試の不振、未来創造学部における日本人志願者減少など、凋落方向へと加速している。これは教員の努力不足の所為であろうか。否、そのようなことでは決してない、そのことは誰もが知っている。大量学生増と無試験入学制度(全国全高校の指定校化)の導入による信用の失墜である。何れも教員の負担が増加するだけで状況の改善を害するばかりの施策である。そして、このまま推移すればどうなるか、誰もが憂えている。
 このような運営方針を独善的に決め、「従え」と命令したのは理事会である。結果、定員割れという大学の存亡に関わる事態を招来した。この重大な局面にありながら、理事会は自らの施策を検証することも、改めることも、責任をとることもしていない。それどころか、この間、理事の報酬は増額されているのである。一方で教職員の待遇はこの6年間、1度も改訂されていないばかりか、毎年、毎回、賞与が減額され、元々ワーストクラスだった水準は悲惨な状況に陥っている。多少の不満は学生のためにと自制して、過重負担に耐え献身してきた教職員の生活は貧窮の極みに堕ちつつある。そしてこの数年、理事会は国試不振・定員割れの責任を教職員に押しつけようと画策している。この事態を改善しようとする教職員組合に対して、理事会は、見せしめ的に教員の教育する権利を剥奪し、または、解雇をするという不当労働行為・支配介入、組合員差別を続けている。
 本学をこのような事態に陥らせた理事会の責任は免れえない。以下に理事会の致命的失策のひとつ、入試制度について述べ、組合はその正常化を要求する。……


2008年11月21日

北陸大学教職員組合、「賞与は賃金である」

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース276号(2008.11.18発行)

賞与は賃金である。

 2008年7月2日の第3回団交で、理事会は、夏季賞与について、「成果が出ていないので、賞としての賞与は出せない」、その上で「“特例措置”として昨年の20%減額で支給する」と通告した。団交に前後して、学長は両キャンパスの全教員に「教育目標達成のための特例措置について」説明した。教職員組合は、団交で、この支給が夏季“賞与”の暫定支給であることを理事会に認めさせ(組合ニュース274号)、賞与は「生活給」であると主張した。

 理事会の言う成果とは、入学定員確保および薬剤師国家試験とTOFEL 等の語学検定試験の合格率の目標達成である。理事会は、最近の3年余、教職員に対して意識改革と大学への貢献を求めると共に、賞与について、「特段の功績・貢献に対して称える『賞』として位置づけるもの」(平成18年12月)、「特段の成果が目に見える形で実現された時の『報奨』」(平成19年12月)、「時期がくれば当然に支給されるものではなく、権利でもなく」(同)などと、賞与廃止を実現するためのキャンペーンを展開してきた。上記はその延長線上の「賞与なし」の宣言であったが、以下、理事会の主張の不当性を糾弾する。…


2008年11月05日

北陸大学、教員の薬局配転の不条理

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース、 第275号(2008.11.4)

教員の薬局配転の不条理

 2008年10月10日に開かれた教員懇談会で、北陸大学が付属調剤薬局(「北陸大学付属太陽が丘ほがらか薬局」)を太陽が丘に開設し、そこで働く薬剤師を教員の中から選んで充てるという理事会の方針が伝えられた。
 例によって、その議題は事前に通知されておらず、しかも12月から開局することが既に決定していたのである。「懇談会」という、恰も自由な意見の交換を思わせる名称で教員を招集し、一方的な理事会の方針の通達を覆い隠すようなやり方は理事会のいつもの手で、今回も腹立たしさを抱いた教員が多かったことを確認しておくが、勿論、ここで取り上げるのはその中身である。
 先ず大屋敷学長は、「『研修の為に』薬局で働いて貰う」と述べたが、河島理事は、「6年制教育を充実させるため」と言いつつも、「研修の為ではない」ことを数度に亘って確言し、「3ヶ月や4ヶ月の」相当期間、教員としてではなく、薬剤師である人が行って薬剤師の業務をやって頂くと述べた。また、「国試や、6年制教育の課題が重要な中で、教員の負担が増えるようなこのようなこと(薬局開設・教員充当)を何故考えるのか、腹立たしい」という意見に対して、河島理事は、来年度は50%の定員割れが懸念される。地域貢献によって大学のイメージを向上させる、と答えた。
 研修と言ってはこれを否定し、6年制教育を充実させると言っては地域貢献だという。さらには、専任の薬剤師が確保できないから教員を配置すると言う一方で、処方箋が60枚に増えたら募集するとも言った。この矛盾に満ちた説明には、薬局配置によって教員の身分が変更されることへの反発を小さくしたいという子供騙しのような誤魔化しの意図が感じられるが、実際、身分の実態を曖昧にしながら主に「出向」という言葉が使われた。
 一般に、「出向」は別の企業に移籍する場合を言う。これに対して同一事業体内の異動は「配置転換」などと言われる。今回の教員の薬局配置は、薬局がどのような組織に属するのかに依るが、「北陸大学付属」が名ばかりでなければ「配置転換」の範疇に入ると想像される。配置転換に関する使用者側の裁量権は、当然その濫用は認められず、労働の質、量、場所、態様などについての労働者側との合意によって可能となるものであるとされている。職種・勤務場所は重要な労働契約の要素であるから、一方的にこれらを変更する配転命令はできない訳である。勿論、出向についても労働者側との合意が必要である。いずれにしても強引な配転はできない。
 嘗て理事会は、教員の事務局配転を提案してきたことがある。組合はこの提案を跳ね返し、確認書を取り交わした。(組合ニュース149号) 今回の提案に対しても教員は誰一人として配転に賛同する人はいない筈で、懇談会で多数出された質問・意見がそれを物語っている。具体的に指摘されたように、誰もが教員として、教育・研究を志して就いた仕事であるからである。組合は教員の身分を守る為にこの配転に対して拒否の姿勢で臨みたい。配転を命じられた場合、個々には拒否することが困難である。大学の方針に異議を感じる人は、この際是非、組合に加入していただき、共に闘っていただきたい。…


2008年10月24日

教職員の犠牲の上に成り立つ北陸大学の財政の豊かさ

北陸大学教職員組合
 ∟●教職員組合ニュース(2008/10/20)

 前回の第2回団交(7月2日)では席上、理事会側は、突如昨年度に比較して20%も減額した賞与を「特例措置」として支給することを発表しました。これに対して、私たちは資料を提示して、減額の根拠を示すよう主張しました。しかし理事会側は「目標が達成されていない」などと検証不可能な口実に終始しました。 但し、2点で合意し、次回第3回団交に協議を持ち越しました。その合意とは以下の点です。……

お知らせ

 10月10日、薬学部教員会の席上、理事会決定として以下の件がトップダウンで伝えられました。「12月1日から、北陸大学付属太陽丘ほがらか薬局が開局され、教員を『出向』させる」。次回『ニュース』では、この問題の不当性を取りあげる予定です。


2008年07月07日

北陸大学、問われるトップの資質

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース273号(2008.7.3発行)

……

問われるトップの資質

 6月に北元理事長(他に大屋敷学長、河島教育担当理事、中川専務理事が臨席)が教員をグループごとに分けて面談を行った。もっとも面談とは名ばかりで、一方的に訓辞を行う独演会であったのはいつものことであった。グループごとに少しずつ話を変えていたようではあるが、面談の主旨をなしたのは以下の主張であった。 「薬学部教員は過去に薬学ゼミナールに国家試験対策を丸投げした。これは教育放棄である。このときは経済的にも6千万円余りの損失を被った。こういう教員の意識はあるまじきことで変えなければならない。」

 最近着任した教員以外は誰もがそれを聞いてこう思ったはずである。

「事実と違うじゃないか。でも、それをここで指摘しても権力を誇示した持論で押さえつけられるだけで、後で意趣返しに遭うのが関の山。まあ黙っていよう」と。

 その教育放棄と理事長が主張している事件は事実誤認であるのだが、話は2004年(平成16年)に遡る。

 2004年度の4年次生教育に関しては、例年どおりのやり方に改善を加えた国家試験対策演習を行うという国試対策小委員会(当時は薬学部教務委員会の下部組織であった)の方針の下に、基礎薬学系学科目担当の教員(基礎薬学部会)は、 6月から行う予定であった演習の内容を検討していた。例えば、使用する教科書として、各科目の系ごとに教員達が自由に、予備校が発行している問題集・参考書を検討しており、基礎薬学部会では、 通常ならば日本医薬アカデミーの発行する 「黒本」を使用する予定であった。 「黒本」は、長期間、基礎薬学部会が使用してきた教材であり、 その間、本学教員は本書の訂正、加筆を行って育んできた実績がある。また、4年次留年生については前期に卒業試験を実施し、その合格者には後期は自分の選んだ国家試験予備校に行くか、もしくは北陸大学での演習を受講するよう指導してきたことを、その年度も踏襲することが学部内で確認されていた。演習担当の教員配置もすでに決定していた。

 しかしながら、 6月2日、河島学長(当時)から、理事長以外の常勤理事達と事務員および薬学教員が集められて薬剤師国家試験対策説明会が開かれ、それまでの国家試験対策に関する決定事項が白紙撤回されたのである(そのとき配付された資料は末尾に添付)。

 そこでは、河島学長が「トップダウンの決定事項である」と前置きし、 4年次生の国家試験対策を従来とは大きく変更して、国試対策センター(このとき河島学長が自らセンター長に就任した)がイニシャチブを執ること、教科書は予備校である薬学ゼミナール発行の「青本」を使用すること、 4年次通常生に対する前期演習は行わないこと、後期演習は薬学ゼミナール講師も担当すること(成績上位半数対象。成績下位半数は教員が担当)、4年次留年生の教育は薬学ゼミナール八王子教室に任せてそこで行うこと、などが伝えられた(配付資料の文言は明確にトップダウンであることを示している)。

 これを受けて、その直後の第4回薬学部教授会(2004年6月7日開催)では河島学長臨席の下、その実施計画が了承されるに至った。この段階で多くの教員は、前期に計画した基礎薬学系演習を削るべきではない、教材に注ぎ込んできた労力が徒労と化す、業者に学生を預けるのは適当ではない、あるいは、特定業者との癒着はよくない、と考えて難色を示していたものの、理事長の意向であろうから仕方がないとの認識を持っていた。

 ところが、2004年8月に理事会が教員を数名のグループに分けて、グループ毎に面談を行った際に疑惑が生まれたのである。北元理事長は、「私は薬学ゼミナールの利用には反対だ。だからこれは現在ペンディングにしてある。外部の業者に本学学生の教育を任せるとは、教員の怠慢・責任放棄である。これにかかる経費は当初組んだ予算を6千万円も上回る。君たち教員が望んで決めたことだろう。一体誰がこれを負担するべきか」と教員達に尋ねた。さらに、理事長は、「国家試験対策に業者を導入する費用は、教員の給与から差し引くべきだ」と主張した。

 多くの教員は、薬学ゼミナール導入の件に関しては北元理事長に事実経緯の正確な情報が伝わっていないのではないか、また特定業者と提携するにはそれなりの、あるいは公表できない理由があったのではないか、との疑念を抱いたのである。

 この国家試験対策経費に関する件は第14回薬学部教授会(2004年10月25日開催)でも報告されているが、議事録には「河島学長から、今年度の薬剤師国家試験対策等について、理事会に対し、第89回薬剤師国家試験の結果の反省、今年度薬学部分の特別研究費の辞退、不足する部分を教員が負担することなどを説明したとの報告がなされた」と記載してあった。第15回薬学部教授会で佐倉委員長がこの記載に異議を唱え、第16回薬学部教授会で「河島学長から、……不足する部分を教員が負担することなどの案を説明したとの報告がなされた」に訂正された。

 結果的には、この年および翌2005年度には、特別研究費は教員に分配されず、薬学ゼミナールに支払う教育費に転用されたのである。

 以上が事実経過なのであるが、未だに理事長は事実とは異なることを確信し、それに基づいて方針・施策決定をしているのである。組織の命運の鍵を握る人物が判断を誤り、間違った方向に向かって行くのは誠に恐ろしいことである。


2008年07月01日

北陸大学、「薬学部の苦しい教育の状況は理事会が招いた」

北陸大学教職員組合
 ∟●教職員組合ニュース271号(2008.6.11発行)

薬学部の苦しい教育の状況は、理事会が招いた

 薬剤師国家試験の合格率は大幅に低下した。今回受験の卒業生は大幅定員増によって530人もの学生を入学させた学年であったから、合格率の低下は入学時点から予想されていたことであった。したがって、低下はしたものの、寧ろ、よく踏み止まった、学生も教員もよく頑張ったと評価すべき水準ではある。

 この突然の定員増は経営側の判断であった。おそらく教員は誰一人望まなかったであろう。教員を増やさず学生のみを増やすのは教育の効果を考えれば暴挙であるからである。当時喧伝された「量的拡大をもって質的向上を目指す」などということは、こと教育の場ではあり得ないことであり、世間の失笑を買うほかない妄言だからである。縮小した文系学部の余剰定員を理系の薬学部に移すなどということは、理系の教育現場では考えられない非常識であった。それでもこの4年間、大所帯の学生の教育に誰もが必死で取り組んできた。しかし、その結果がこの合格率である。定員増で教育も混乱した。教員は疲弊しきった。今年度は560余名の4年生に加えて国試不合格者200余人の教育にも心を配らなくてはならない。これまでは本学には父兄が子弟を託すに足る実績があった。他ならぬ教職員が築き上げてきたものである。今回は世間をしてその信頼を一挙に揺るがすことになった。無茶な定員増に走った経営判断の責任は重い。

 2008年度の薬学部入学者数は215名で充足率は70%となった。この入学者減は厳しい。何故、このような志願者減となったのか。私立薬学部数の倍増と6年制化は大きな理由だろう。地方大学という側面もあるだろうが、理由はそれだけにはとどまらないだろう。

 大幅定員増と「量的拡大をもって質的向上を目指す」というキャッチフレーズに無責任で金権的な経営体質を感じ取った父兄は多かったであろう。また高校の進学指導者は国試のランキングが低いにもかかわらず更に大幅に学生を増して、さらなる国試の合格率低下が危惧される無節操な大学と受け取ったのではないか。国試の結果を見る限り、父兄や進学指導者の観測は正しかったようだ。

 2007年度から全国の全ての高校を指定校とした。実質、入試の無試験化である。これも経営側の一方的判断であった。その結果、同年の志願者倍率がほぼ1、今年度は上述のとおりである(共に薬学部)。全国の高校を指定校にしたことは、「そこまでしないと学生が集まらないのか」との印象を人々に抱かせてしまったであろう。「経営が危ないのか?」、「卒業の6年先までもつのか?」と。経営が危なかったわけではなかろうが、安易な受験生集めをしたためにこのような心証を与える愚を犯したのである。果たして、そこまでして学生を集める大学に自らの子弟を心配せずに送り込む親がいるだろうか。ダメ押しをするように、定員割れがほぼ確実となった本年3月には入学を勧誘するダイレクトメールを発送したという噂がある。これこそまさに経営不安観測を自ら誘発し、一旦入学を決めた学生にすら先行き不安で入学辞退をさせかねない行為ではなかったか。学生募集という目的に逆行することになる影響について、理事会はどれだけの議論をしたのであろうか。

 どの大学でも、優秀な学生の確保に知恵を絞っている。優秀な学生の確保は、薬学部では国家試験の合格率を上げる観点からとりわけ大切であるが、教育の効果の向上だけではなく、卒業生の社会的評価の向上にもつながる。このことは長い目で見て大学の基盤を固め、当然の帰結ながら経営の安定にもつながるのである。

 全国指定校化について、マスコミには驚いたような声が散見されたが、それは本学を選択する声ではなく、切り捨てた声でもあったであろう。間違っても、「一定の理解が得られた」などと解釈すべきではない。また、学内には「もし実施しなかったら入学者がもっと減っていたかも知れないのだから、この判断は正しかった、あるいは間違いとは言えない」と、経営判断を擁護する主張があるそうである。しかし、この論理は既に消去され検証不可能な選択肢を引き合いに出す詭弁であるだけでなく、本学を選んだ学生に失礼である。全国指定校化をしなかったら受験生はもっと気持ちよく本学を志願したかもしれない、との逆の判断もある筈である。

 さらに「秘伝のタレ」に至っては誰もがインチキなキャッチフレーズと感じるのではないか。凋落傾向の国試合格率を見れば察しはつくし、そもそも教員が考案したものでもないであろう。大学選びは真剣なのである。具体的な根拠を欠く秘伝のタレでは魅力を感じようもなく、若者の琴線に触れることはできない。そればかりか、「タレ」をかけられることになる彼らが、不快感をもつことはないか、反発から彼らの心を遠ざける結果にならないか。

 18歳人口が多かった時期の大学の経営は楽であったようだ。誤った判断をしても受験生が押し寄せた。したがって、経営の力量は問われず、貢献度がゼロでも馬脚を現さずに済んだ。この間に大学を取り巻く環境は大きく変化し、ここに来て経営の力量が強く反映されるようになった。本学では、受験生、父兄及び進学指導者を敬遠させる策を選択してきたように見える。その結果が現状であろう。本学の経営に評価すべきはあったのか、取るべき責任はないのか。正当な評価と、陋習を絶つ抜本的改革を緊急に行うべき時に来ている。

 平成19年度の賞与は、薬学部の定員割れと国試合格率の不振を反映して、合計で0.6ヶ月の減となった。毎年の連続減額の合計はこの数年間で3.0ヶ月分に達する。一方、役員報酬は理事長のみ増額されたという噂がある(組合ニュースによると団交での質問に対してその事実は否定されなかった)。国試の不振も定員割れも、根本的な原因は理事会、経営側の方針の誤りにあることは明白だ。それにもかかわらず、教員の賞与を減額したのは、責任を教員に転嫁したことなる。このような無自覚無責任無節操な経営では、この先、失地挽回のチャンスはあるまい。我々には学生と卒業生の為に大学を守る責任がある。それ故、このような経営者と心中はできない。今や生活の糧すら脅かされているが、この事態を招いた責任を追求できる主体は組合をおいて他にない。全教職員の力を結集して緊急に経営刷新に取りかかるべきである。先日、韓国起亜自動車の社長は代表権を返上した。労組の協力を得るためだそうである。起亜は起死回生に成功するであろう。「信なくば立たず」とは孔子の言葉である。