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 カテゴリー 不当労働行為

2009年03月26日

大阪大学不当労働行為再審査事件、中央労働委員会 申立てを棄却

大阪大学不当労働行為再審査事件(平成19年(不再)第56号)命令書交付について

大阪大学不当労働行為再審査事件(平成19年(不再)第56号)命令書交付について

命令のポイント

 大学において、適正に作成された非常勤就業規則を、その制定に同意していない組合のA分会長(非常勤職員)に適用し、60歳に達したことで雇止めしたことは、他の非常勤職員も同様に雇止めとなっていることに照らせば、A分会長のみを不利益に取り扱ったものとはいえず、不当労働行為には当たらない。
 中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成21年3月11日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
[再審査申立人]  関西単一労働組合(以下「組合」):組合員数  約70名
[再審査被申立人]大阪大学(以下「阪大」):職員数 約7400名

II  事案の概要
1  本件は、阪大が、(1)非常勤就業規則を制定に同意していない組合の組合員に適用したこと、(2)同就業規則の非常勤短時間職員は満60歳を超えて労働契約を更新しない旨の規定を適用してA分会長を雇止め(本件雇止め)したこと、(3)同就業規則及び本件雇止めに関する団交において誠実な対応をしなかったこと、(4)組合事務所・掲示板の貸与、就業時間中の組合活動の容認等(本件便宜供与)を拒否していること、(5)組合らが設置した立看板等を撤去したこと、(6)本件便宜供与拒否及び立看板等撤去に関する団交において誠実な対応をしなかったこと、(7)16年度夏季休暇、17年度新給与制度及び同年夏季休暇を団体交渉中に一方的に実施したこと、(8)上記夏季休暇、新賃金制度に関する団交において誠実な対応をしなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2  初審大阪府労委は、19年9月28日、16年度夏季休暇に関する申立てを却下しその余の救済申立てを棄却した。組合はこれを不服として再審査を申し立てた。

III  命令の概要
1  命令主文
本件再審査申立てを棄却する。

2  判断の要旨
(1)非常勤就業規則の組合員への適用及び本件雇止めについて
ア  非常勤就業規則の制定に同意していないとしても、その作成手続に瑕疵があったとは認められないこと、阪大は組合とも団交を行い必要な説明を行っておりその対応に特段不当なところは認められないこと、同規則を適用することは労働条件の統一の観点からのものであることから、組合員に対する同規則の適用は、労組法7条1号には該当しない。
イ  A分会長は分会の責任者として活発な活動等を行っていたが、同分会長と同様60歳に達した他の非常勤短時間職員も労働契約が終了となっており、同分会長のみを殊更不利益に取り扱ったとは認められないから、本件雇止めは労組法7条1・3号には該当しない。
ウ  阪大と組合は同規則問題に関し基本的考え方において対立しており、18年1月の段階では交渉は既に膠着状態に陥っていたこと、組合からこれを打開し交渉を進展させるような新たな申し出が行われるようなことはなかったこと等からすれば、阪大が団交の打切りを通告し以後同問題の交渉に応じなかったことは、労組法7条2・3号には該当しない。また、本件雇止めに関する団交は、実質的には同規則問題の交渉の継続を求めるものであり、上記状況の下で組合が新たな申し出を行った上で開催を求めたものではないことからすると、阪大が同交渉に応じなかったことも労組法7条2・3号には該当しない。

(2)本件便宜供与拒否について
ア  組合事務所不貸与については、貸与を受けている労働組合と組合の組合員数には大きな開きがあること、組合掲示板不貸与については、共用掲示板を設けその使用を認めていること等から阪大が組合のこれら貸与要求に応えなかったとしても合理的な理由があり、労組法7条1・3号には該当しない。
イ  就業時間内の組合活動を認めるかどうかは使用者に委ねられており、合理的な理由無く他の労働組合と差別的に扱う等の特段の事情がある場合でなければ、就業時間内の組合活動の容認を求める要求を拒否しても不当労働行為の問題は生じないといえる。そして、他の3つの労働組合とは年1回1時間程度就業時間内に統一交渉を行っているが、これをもって直ちに組合を差別的に扱っているとまではいえないから、阪大の当該要求の拒否は労組法7条1・3号には該当しない。
ウ  許可を取らずに設置等を行ったことが推認できる立看板等の撤去については、阪大が、学内での文書掲示等について許可制としていることには合理性があること、撤去を求めたのは大学の秩序運営上の観点からのものであるといえることからすると、組合に事前に通告する等の手続を経た上で立看板等を撤去したことは、労組法7条3号には該当しない。
エ  上記本件便宜供与拒否について理由があり、これが不当労働行為には当たらないこと、団交において阪大は検討の経過を説明し組合の理解を求めようとしていたのに、組合に譲歩しようとする姿勢が見られないこと等からすると組合と阪大の本件便宜供与に関する団交は行き詰まっていたとみるのが相当であり、阪大が18年1月25日以降の団交に応じなかったことは労組法7条2・3号には該当しない。

(3)夏季休暇付与、新給与制度導入について
ア  16年度夏季休暇付与については、申立期間を超えてなされたものとして却下する。
イ  17年新給与制度導入について、A分会長に不利益は生じておらず、その他組合員に不利益が生じるといった組合の主張・立証はないから、阪大の同制度の導入は労組法7条1号に該当しない。阪大は17年3月10日以降組合との交渉を打ち切り4月から同制度を実施したが、下記エのとおり、阪大の交渉態度が不当労働行為とはいえないこと、また、常勤職員と非常勤職員との賃金制度、賃金体系に差異があることをもって直ちに不当とはいえないこと等から、阪大の同制度の実施は労組法7条3号にも該当しない。
ウ  17年夏季休暇付与について、A分会長に不利益は生じておらず、その他組合員に不利益が生じるといった組合の主張・立証はないから、阪大の同付与は労組法7条1号に該当しない。阪大は17年6月3日の交渉を最後に組合との交渉を打ち切り同付与を実施したが、下記エのとおり、阪大の交渉態度が不当労働行為とはいえないこと、また、常勤職員と非常勤職員とは就労日数、勤務時間等が異なるものであるから、夏季休暇付与の日数に差異があることをもって直ちに不当とはいえないこと等から、阪大の同付与は労組法7条3号にも該当しない。
エ  阪大は、17年度夏季休暇付与、新給与制度導入について組合の要求に応じて具体的に説明を行っており、また、同夏季休暇については前年度に比し一定の改善を加え、同給与制度についても継続雇用者については従前に比べて不利とならないような配慮を行う等の措置を講じている。一方、組合は、国立大学法人化前から一貫して常勤職員と非常勤職員の均等待遇を求めることを方針とし、自らの方針から一歩も出ることなくおよそ歩み寄ろうという姿勢を見せていなかったことがうかがえることからすれば、阪大が組合の更なる交渉要求に応じずこれら措置を実施したことは労組法7条2・3号に該当しない。

【参考】本件審査の経過 
初審救済申立日  平成18年 2月 7日(大阪府労委平成18年(不)第7号事件)
初審命令交付日  平成19年 9月28日
再審査申立日   平成19年10月12日(平成19年(不再)56号)

2008年10月24日

富山国際大学教職員組合、労働委員会でのあっせん 調整「不調」に終わる!

富山国際大学教職員組合
 ∟●組合ニュース第13号

 ……使用者側は、4月以降の団体交渉においても、当該行為の過ちを具体的理由を示さないまま認めようとしないという態度に終始しておりました。当組合としては、この労組法違反の問題を不問に付したままでは、組合の持つ団体交渉権が侵されたという事実を放置することになり、今後の誠実な団体交渉が期待できない、つまり同様の行為が繰り返される恐れがあることになり、そのつどの団体交渉で積み重ねてきたことを一方的に使用者側によって覆されることになりかねないと判断せざるを得ませんでした。そこで、これに対する“救済”を求める手段として、労働委員会での「あっせん」を申請したわけです。……