全国
 カテゴリー 高等教育予算

2010年03月16日

大学大競争、国立大法人化の功罪 広がる研究費格差

(その1)
(その2止) 

 ◇衣装ケースで水槽 メス手作り
 「さあ、明日の実験の準備をするか」

 東日本の地方国立大で生物学を専攻する50代の男性教授は、近くのホームセンターで1本50円で買った細長い木の棒を取り出した。長さ20センチほどに切り、先端に切れ込みを入れる。カッターナイフの刃1枚を差し込み、固定する。実験動物の解剖などに使う手作りメスの完成だ。実験機器のカタログで買うより1本あたり数百円安く、「実験のたびに新しいメスを作るから、切れ味は案外いいんですよ」と、自嘲(じちょう)気味に笑う。……


2010年03月04日

研究の無駄削減、若手が提言

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2010030202000126.html

 行政刷新会議の事業仕分けで厳しい視線が注がれた科学技術予算。若手研究者らグループが、現在の研究体制には無駄を生む構造があると認めた上で「より効率的で合理的な研究システムをつくろう」との提言をまとめた。反省を踏まえて無駄削減の具体策を盛り込んだ内容で、総合科学技術会議の専門調査会でも取り上げられるなど反響を呼んでいる。……

2010年03月01日

私大補助金3217億円 09年度、3年連続の減少

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/217742.html

 日本私立学校振興・共済事業団は26日、私立の大学や短大、高等専門学校(高専)に交付した2009年度の経常費補助金の総額が前年度比約31億円減の約3217億8200万円と発表した。補助金の前年度比1%減額を盛り込んだ政府の「骨太の方針」に基づき、3年連続で減少した。 ……

2010年02月23日

数学分野、研究費の格差広がる 中規模大学で大幅減

http://mainichi.jp/select/science/news/20100222k0000e040068000c.html

 数学分野の研究費が大学間で格差が広がっていることが日本数学会(坪井俊理事長)の調査で分かった。数学研究者20人以下の中規模大学で減少率が大きく、若手の人材育成に欠かせない他分野との連携も難しくなっている。22日午後、東京都目黒区の東京大駒場キャンパスで開かれるシンポジウム「拡(ひろ)がっていく数学-社会からの期待」で発表し、今後の対応を議論する。……

2010年01月28日

大学予算減、将来像見えず

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100127-OYT8T00281.htm

高校無償化でしわ寄せ

 2010年度の政府予算案で文部科学省の予算額が過去30年で最高の伸び率となるなか、大学関係の主要事業は減額となった。

 政権公約の高校無償化実現に向けた財源捻出(ねんしゅつ)のためにしわ寄せを受けた予算案から、大学の教育・研究機能の将来像は見えてこない。

 国立大学の人件費や設備の維持費などの必要経費として、同省が各大学に配分している「運営費交付金」。国立大が法人化された04年度の翌年度から、業務の効率化のため削減され、06年度には毎年1%減という数値目標が掲げられた。民主党の政策集では「交付金の削減方針を見直す」と明記されているが、10年度予算案では1兆1585億円(前年度比0・94%減)と、ほぼ前年並みの削減となった。……


2010年01月13日

教育の予算案、大幅に伸びたけど… 明暗わかれた大学事業

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201001120194.html
  

 大学病院を強化する予算や奨学金は増えたが、留学生の受け入れや大学の補助事業は大幅減に――。18日召集予定の通常国会に提出される2010年度の政府予算案で、教育予算全体の金額は大幅に伸びたものの、大学関連予算は事業によって明暗が分かれた。……

2009年12月21日

事業仕分け、三重大、研究費など3億円減 影響を試算「再検討強く要望」

http://mainichi.jp/area/mie/news/20091219ddlk24010242000c.html

 三重大は18日、国の事業仕分けの結果通りに国立大学の運営費や研究関係の事業費を削減、廃止された場合、同大では3億4700万円減るとの試算を公表した。内田淳正学長は「大学の運営が困難になり、人材育成や地域貢献の役割を果たせなくなる」と危機感を表した。……

[関連ニュース]
三重大の来年度予算 3億4740万削減見込み

2009年12月18日

国立大運営費、教員ら増額要請 財務相らに

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091218k0000m010086000c.html

 国立大学法人化以降、国が支出する国立大の基盤的な経費「運営費交付金」が削減されている問題で、日本教職員組合、全国大学高専教職員組合に所属する大学教員らが17日、藤井裕久財務相、川端達夫文部科学相と与党国会議員に、10年度予算での運営費交付金の増額などを求める要請書を提出した。……

[同ニュース]
国立大教職員 予算充実を訴え

事業仕分け、「学生育成に支障」 広大学長が初の定例会見

http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20091217ddlk34010466000c.html

 広島大学は16日、初めて学長定例記者会見を開いた。広報活動の一環として今後毎月開催する。初回のこの日は、政府の事業仕分けで、大学関係の基盤的経費や学術・科学技術関係予算などの削減や見直しが提案されていることに、浅原利正学長は「基礎研究に予算を取れなくなる。学生育成に支障が出る」などと懸念を示した。……

事業仕分け、学費値上げ反対 名大文化サークル連、「交付金見直し」受け

http://mainichi.jp/area/aichi/news/20091217ddlk23010250000c.html

 政府の行政刷新会議の事業仕分けで国立大学法人運営費交付金に「見直し」の判定が出たことを受け、名古屋大学文化サークル連盟は16日、「交付金削減は結果的に学費値上げにつながる」として、学費値上げ反対を名大に申し入れた。……

2009年12月17日

長崎大学長、緊急アピール「国立大学と科学技術予算に対するご理解をお願いします」

長崎大
 ∟●国立大学と科学技術予算に対するご理解をお願いします(緊急アピール)

国立大学と科学技術予算に対するご理解をお願いします(緊急アピール)

 行政刷新会議による事業仕分けは,税金の使いみちをガラス張りの中で議論するという画期的な試みでしたが,同時に大きな議論を呼びました。画期的であるからこそ,仕分けの在り方については今後厳密に検証し,改善してゆく必要があると思います。
 今回の事業仕分けの中で,学術・科学技術関連予算が大変に苦戦しました。中には問題の多い事業もありましょうし,一部には重複や無駄もあることでしょう。しかしながら,事業の短期的成果や効率の観点のみからの短時間の質疑に基づき,問答無用の大ナタを振るう手法には,教育研究の現場に身を置く者として違和感と戸惑いを禁じえませんでした。学術研究は本来短期的効率論のみでは推し量れない価値を多く有すると思うからです。さらにその大ナタが,国立大学の経常的経費である運営費交付金にまで及ぶに至っては,違和感どころではありません。仕分けどおりの予算が執行されれば,もはや大学=「学術の府」の存亡の危機です。
 国立大学は,国民,とくに地域の皆様のご理解,ご支援に基づき,これまで学術研究や人材育成,社会貢献など大学に本来課せられた役割を果たしてくることができました。とくに長崎大学の基盤はここ長崎にあり,長崎の医療,教育,行政,産業,そして経済の基盤を支える多くの人材を輩出してきました。来年度予算編成作業が大詰めを迎えているこの時機をとらえ,地域の皆様に大学と科学技術予算に対する更なるご理解をお願いすべく,長崎大学長として緊急アピールを発信させていただくことといたしました。……


[新聞ニュース]
事業仕分け、長崎大「存亡の危機」 予算理解求め、緊急アピール
事業仕分けで長崎大緊急アピール 予算削減「厳しい現状理解を」

山大工学部、仕分け「廃止」5事業の継続求めアピール

http://yamagata-np.jp/news/200912/16/kj_2009121600286.php

 山形大工学部関連の5事業が政府の事業仕分けで「廃止」と判定されたことを受け、大場好弘学部長は15日、同学部で記者会見を開き、「廃止されれば研究は立ち行かず、県民が被害を受ける。地域に貢献している地方大学の現状を理解してほしい」と、事業継続を求める緊急アピールを行った。……

[関連ニュース]
事業仕分けに反論 結城・山形大学長が有機EL事業継続を文科相に要望

2009年12月16日

事業仕分け「待った!」 日本史研究会

http://www.kyoto-minpo.net/archives/2009/12/15/post_6387.php

 行政刷新会議の「事業仕分け」で、若手研究者養成のために日本学術振興会が行う「科学研究費」「特別研究員事業」への補助金予算が縮減されたことに対し、「日本史研究会」(代表委員、高橋昌明神戸大学名誉教授)が14日、見直しを求める要望書を鳩山由紀夫内閣府行政刷新会議議長らに提出しました。……

2009年12月15日

事業仕分けで東大生の進路に影響、研究者育成資金縮減受け

http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121401000497.html

 行政刷新会議の事業仕分けで若手研究者育成資金が縮減と判定されたことを受け、東京大の学生が14日までに理系研究者を志望する東大の学生にアンケートを実施したところ、縮減が実施された場合、8割超が研究者になることをあきらめるか、海外に行くなど進路に影響があると回答した。……

公費助成の増額を、関西私大シンポで訴え

http://www.kyoto-minpo.net/archives/2009/12/14/post_6381.php

 私立大学への公費助成の増額を求める意義を社会にアピールしようと、シンポジウム「今後の教育費負担のあり方を考える」(私立大学教授会関西中四国連絡協議会、全国私立大学中央連絡会近畿ブロック主催)が12日、京都市下京区の池坊学園で行われ、約70人が参加しました。……

2009年12月14日

「人材育成できない」 予算大幅削減、広大学長ら危機感

http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20091210ddlk34010503000c.html

 「民主党のマニフェストでは、先進国並みの教育費にするといったのに、これでは逆行だ」--。事業仕分けで大幅な予算削減という評価が下ったことに憂慮する声明を発表した中国地方5国立大の代表は9日、南区のホテルで開かれた会見で、危機感を表明した。……

2009年12月11日

北海道地区7国立大学長、共同声明「大学界との「対話」と大学予算の「充実」を」

北大
 ∟●平成22年度予算編成に関する、道内7国立大学学長による共同声明

平成21年12月2日

大学界との「対話」と大学予算の「充実」を
-平成22年度予算編成に関する緊急アピール-

国立大学法人北海道大学総長 佐 伯 浩
国立大学法人北海道教育大学長 本 間 謙 二
国立大学法人室蘭工業大学長 佐 藤 一 彦
国立大学法人小樽商科大学長 山 本 眞樹夫
国立大学法人帯広畜産大学長 長 澤 秀 行
国立大学法人旭川医科大学長 吉 田 晃 敏
国立大学法人北見工業大学長 鮎 田 耕 一

 平成2 2 年度の予算について、これまでに行われた事業仕分けの結果やこれを受けての行政刷新会議の議論に接し、今後行われる予算の編成に向けて、道内の7国立大学は下記の点について緊急のアピールを行います。

1 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。

 わが国の高等教育への公財政支出の対G D P 比、政府支出に占める投資額の割合などの指標は、先進諸国中最低レベルの水準です。総理は、所信表明演説の中で、「コンクリートから人へ」の投資の転換を強調されました。資源小国であるわが国にとって国力の基盤は何よりも「知」と「技」にありますから、今後の国づくりは、国家の知的基盤である大学の教育研究の振興を抜きには考えられません。
 大学に対する公的投資の拡充に向け、政治のリーダーシップを強く発揮されることを切に望みます。

2 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いて下さい。

 道内7国立大学における運営費交付金は、5年間で7 3 億円の減少、道内単科大学の2校分の消失に相当します。選挙時の民主党の政策文書には、「世界的にも低い高等教育予算の水準見直しは不可欠」、「国立大学法人に対する運営費交付金の削減方針を見直し」等の記述があります。
 日本の教育研究の水準の維持・向上、教育の機会均等の確保に関わる国立大学の存在意義に照らして、「見直し」の原点に立ち返ったご対応(削減方針の撤廃、国立大学への投資の充実)を願う次第です。

3 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

 大学は、公共的な使命を果たし、社会に貢献し得る存在です。他の分野にも増して、大学に関わる政策形成過程は、透明で開かれたものであるべきであり、それには政府と大学界との緊密な「対話」が必須不可欠であると考えられます。
 今後、国立大学政策に関して政府と大学界は、新たな国づくりに向けた対話を深めることが最も大切です。

終わりに

 北海道の国立大学は、それぞれの地域に根ざし、地域と一体となって、教育・文化の振興、地域を支える人材の育成、産業の発展、地域医療の充実などに取り組んでいます。今後とも北海道の国立大学が「知の拠点」として、重要な役割を果たしていくためには、若手研究者育成、先導的な教育研究等を推進するための各種競争的資金、地域科学技術振興予算、運営費交付金等の確保・充実が必須であり、平成2 2 年度予算においても、必要な予算が確保されるよう、ご理解とご支援を切にお願いいたします。


北東北国立3大学連携推進会議、声明「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

弘前大学
 ∟●「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

声 明 文

「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

 全ての国立大学法人を会員とする国立大学協会は、さる11月26日「大学界との『対話』と大学予算の『充実』を」と題した、平成22年度予算編成に関する緊急アピールを発表しました。これは、これまでの概算要求の内容や予算編成の動向、さらに行政刷新会議の下で行われたこれまでの仕分け結果に対し、以下の三点について意見表明したものです。

1. 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。
2. 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いてください。
3. 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

 北東北に位置する国立三大学は、各地域における知の拠点として、地域の振興に重要な役割を果たしてきました。人口減少と高齢化が進み、産業活動の展開が不十分で、高等教育機関への進学率が全国平均を下回るこの地域にあって、人材育成を通じた地域への貢献、産学官連携に基づく地域の振興は重要な課題となっております。またこのことは地方の国立大学が主体的に担う大きな使命と考えています。
 しかしながら、先の行政刷新会議における事業仕分けにおいて、「地域科学技術振興・産学官連携」関連事業が廃止となり、「競争的資金(先端研究)」や「国立大学運営費交付金(特別教育研究経費)」が予算縮減となったことは、地方国立大学が地域において築いてきた知的基盤を脅かすものであり、事態を深く憂慮せざるをえません。
 これらの事業の廃止・削減により、地域から大学に寄せる負託に十分応えることが出来なくなり、ひいては地域の知的創造サイクルに重大な影響を与えることと懸念されます。国立大学の地域における存在意義に照らして、今回の事業仕分け結果の再考を強く願うものです。

平成21年12月3日
北東北国立3大学連携推進会議
弘前大学長 遠藤 正彦
岩手大学長 藤井 克己
秋田大学長 吉村 昇

東北地区7国立大学長、声明「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

弘前大学
 ∟●「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

声 明 文

「大学予算の充実で地域の知的基盤の強化を」

 全ての国立大学法人を会員とする国立大学協会は、さる11月26日「大学界との『対話』と大学予算の『充実』を」とした、平成22年度予算編成に関する緊急アピールを発表しました。これは、これまでの概算要求の内容や予算編成の動向、さらに行政刷新会議の下で行われた事業仕分け結果に対し、以下の三点について意見表明したものです。

1. 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。
2. 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いてください。
3. 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

 東北地方の国立大学は、各地域における知の拠点として、これまで地域の振興に重要な役割を果たしてきました。一方、この地域は人口減少と高齢化が進み、産業活動の展開が不十分であるとともに、高等教育機関への進学率が全国平均を下回っており、人材育成を通じた地域への貢献、産学官連携に基づく地域の振興は喫緊かつ重要な課題となっております。我々、地方における国立大学はこのような課題に対し、今後も主体的に取り組む大きな使命があると考えています。
 しかしながら、先の行政刷新会議における事業仕分けにおいて、「地域科学技術振興・産学官連携」関連事業が廃止となり、「競争的資金(先端研究)」や「国立大学運営費交付金(特別教育研究経費)」が予算縮減となったことは、地方国立大学が地域において築いてきた知的基盤を脅かすものであり、事態を深く憂慮するものです。
 これらの事業の廃止・削減により、地域から大学に寄せる負託に十分応えることが出来なくなり、ひいては地域の知的創造サイクルに重大な影響を与えることが懸念されます。関係者の方々には、上記の点をご賢察の上、地方における国立大学の存在意義に照らして、関係事業の継続及び関係予算の確保・充実を図るなど、地域の高等教育及び科学技術の振興に係る各施策の推進について、積極的なお取組みをいただくことを切に願うものであります。

平成21年12月8日
弘 前 大 学 長 遠藤 正彦
岩 手 大 学 長 藤井 克己
東北大学総長 井上 明久
宮城教育大学長 高橋 孝助
秋 田 大 学 長 吉村 昇
山 形 大 学 長 結城 章夫
福 島 大 学 長 今野 順夫

茨城大等7国立大学長、共同声明「国立大学法人等運営費交付金」に関する行政刷新会議「事業仕分け」について」

茨城大学
 ∟●「国立大学法人等運営費交付金」に関する行政刷新会議「事業仕分け」について(共同声明)

「国立大学法人等運営費交付金」に関する行政刷新会議
「事業仕分け」について(共同声明)

茨城大学長 池田幸雄 筑波大学長 山田信博
筑波技術大学長 村上芳則 宇都宮大学長 進村武男
群馬大学長 高田邦昭 埼玉大学長 上井喜彦
千葉大学長 齋藤 康 横浜国立大学長 鈴木邦雄
新潟大学長 下條文武 長岡技術科学大学長 新原晧一
上越教育大学長 若井彌一 山梨大学長 前田秀一郎
信州大学長 山沢清人 総合研究大学院大学長 高畑尚之
高エネルギー加速器研究機構長 鈴木厚人

○過日、国立大学法人等運営費交付金に関する事業仕分けの議論が行われ、運営費交付金自体については「見直し」、特別教育研究経費については「縮減」ということになりました。

○国立大学法人等がそれぞれの特徴を出して、教育の質を保証し、また独創的かつ先導的な研究活動を進め、学術の発展に貢献していくためには、基盤的活動を支え、大学の個性を伸長させる「運営費交付金(特別経費を含む。)」は不可欠なものであり、その見直し・縮減は、自律的な教育活動や先端研究活動の維持に大変大きなダメージを与えることになります。教育研究分野において一旦与えられたダメージは、よい人材を受け入れ・創出していく大学等にとって取り返しのつかない大きなダメージになってしまいます。

○国立大学等は、法人化以降、極力経費の効果的効率的活用に努めてきているところであり、今後一層その努力を継続していくことは言うまでもないことでありますが、先般の競争的資金の削減に加えて、これ以上の運営費交付金の削減は、経営に責任を持つ長として、その責任を全うできるかどうか極めて深刻な状況にあります。

○高等教育及び科学技術の振興は、未来への投資であり、短期的な成果や費用対効果のみによってその適否を判断することは適当ではありません。今回の議論は、大学等の状況について広く関心を呼んだことは一つの効果ではありましょうが、今後高等教育を受けようとする若い人材、あるいは教育研究を支えようとしている優れた人材のやる気やエネルギーを大きく減退させてしまうのではないかと心配します。

○資源の少ない我が国にとって、人材は国の力であり、我が国が国際的に存在感があり信頼される国として発展していくためには、国立大学法人等の責任は大変重いと考えており、これを支える運営費交付金の見直し・縮減、科研費等の競争的資金や国際化を推進するための経費の縮減が回避されることを強く要望する次第であります。


東海・北陸地区国立大学長、共同声明「地域を支える人材育成と研究開発」

三重大学
 ∟●「地域を支える人材育成と研究開発」

「地域を支える人材育成と研究開発」-東海・北陸地区国立大学長による共同声明-

平成21年11月27日

地域を支える人材育成と研究開発(共同声明)
-最先端技術を支える国立大学の基礎研究力を次世代へ-

  富山大学長   西頭 德三    名古屋大学総長   濵口 道成
  金沢大学長   中村 信一    愛知教育大学長   松田 正久
  福井大学長   福田  優    名古屋工業大学長  松井 信行
  岐阜大学長   森  秀樹    豊橋技術科学大学長 榊  佳之
  静岡大学長   興  直孝    三重大学長     内田 淳正
  浜松医科大学長 寺尾 俊彦   北陸先端科学技術大学院大学長 片山 卓也

 現在、平成22年度の概算要求総額95兆円を削減するために、行政刷新会議による「事業仕分け」作業が行われました。そこでは、可能な限り無駄な支出を排除するために、様々な角度から予算案の見直しが検討されています。こうした作業などは、国の予算配分にあたって、国民に対して透明性を高めるという観点から意義のあるプロセスであると考えられます。しかしながら、資源の乏しい我が国が、国家の将来を託すために行っている政策的投資、例えば、人材育成、学術の推進、研究開発、国際化などが、当面する予算削減の視点と即効性の観点から議論されることに、われわれ東海・北陸地域において教育・学術研究を担う大学人として大きな危惧の念を抱いております。

【人材育成】 国立大学は、教育の機会均等を担う公共的性格の下で、優れた教育を提供し、人材の育成に寄与しています。地域になくてはならない優れた資質を有する医師や教員の養成もその大事な役割です。特に、この東海・北陸地域は、自動車産業を初めとして材料、エレクトロニクスなどの最先端技術開発を必要とする様々な基幹産業のみならず、農業、水産、製薬などの地場産業に及ぶ幅広い分野で日本の発展を支えています。そこで中心となって働いている人々の多くは、地域の要請に応え、我々が育ててきた人材であると自負しており、地域に根ざした大学の存在を無視して語ることは出来ません。

【基礎研究の重要性】 昨年は、名古屋大学関係者がノーベル賞を同時に受賞するというビッグニュースが日本中を駆け巡りましたが、こうした研究の成果も、一朝一夕に可能になるものではなく、十数年から、時には数十年にわたる地道な研究活動があって初めて達成された快挙です。また近年、省エネルギー・CO2排出量の削減は、国家的な重要課題となっていますが、例えば、LEDによる照明は、まさに省エネルギー・CO2排出量の削減に大きな役割を果たしています。これは、本年京都賞を受賞された赤﨑勇博士(名古屋大学特別教授)の二十数年にわたる息の長い研究の成果が「青色発光ダイオード」の発見に繋がり、その後、幾多の研究者の努力によって初めて実現したものであります。(各大学の一例は別紙のとおり)

【大学の地域貢献】 各大学は、地元産業界との共同研究などにより優秀な人材の育成や再教育を行うとともに、研究成果の還元により様々な機能を支え地域の発展・活性化に貢献しています。例えば、福井大学では福井県内を中心に企業215社と連携、産学官連携プロジェクト・共同研究プロジェクトを推進し地域産業の活性化に資するとともに、福井県の教員数の4割、医師数の3割、エンジニア・科学研究者の3割を大学の卒業生が占めています。(各大学の一例は別紙のとおり)

【憂慮すべき事態】 ここで挙げた例は、大学が日本を支える産業、技術革新、学術研究で果たしてきた役割のほんの一部でしかありません。そして、それは日々の継続的、かつ地道な努力によって積み上げられてきたものばかりなのです。万に一つでも、目前の予算的都合からその価値を忘れ、ないがしろにするようなことが始まるとすれば、それは、今後数十年の長期にわたって、日本経済や産業、特に先端技術開発に大きなダメージを与え続ける事が危惧されます。
 法人化以降、毎年運営費交付金が1%減額され、今年度の運営費交付金は、法人化初年度と比較して720億円が削減となっています。各大学では、様々な経費節減努力を行ってきましたが、限界に達しています。この状況が続くと地域の教育・研究・医療の拠点としての機能が弱体化し、地域の発展を阻害しかねない状況となります。
 日本の高等教育への公財政支出(対GDP比)は、OECD加盟国中最下位であり、高等教育費の伸び率は、OECD加盟国中、日本が唯一のマイナス(△2.6%)とのことであります。一方で、欧米や中国などを中心に各国は、現在の経済危機を乗り越え、さらに国家の持続的発展のための戦略に基づいて大学予算を含む教育研究・学術関連予算の大幅な引き上げを行っています。資源の乏しい日本が生き残るには、技術発展を生み出す「人」への投資が不可欠です。このような中、知識創造の源である高等教育機関への投資をひとり日本のみが減らし続ければ、世界の中で日本は着実に落伍していきます。

【まとめ】 こうした状況に危機感を抱いた東海・北陸地域の国立大学の学長が、本日、一堂に会し、共同声明を発表することになりました。政策決定過程の透明性を高める試みの意義は否定しませんし、また、私たちは各種業務の効率化や経費節減などの改革努力を今後も惜しまず実行してまいります。
 政府におかれましては、われわれの声や幅広い国民の声に耳を傾けていただき、大学界との密接な対話などにより我が国の持続的発展と国際社会における役割を再度確認され、日本が進むべき方向とその将来像を明確にした上で、教育研究・学術予算を吟味されることを強くお願いするものであります。


滋賀県2国立大学長、緊急共同声明「国の知的基盤である大学の教育研究の振興と大学予算の確保・充実に向けて」

滋賀大学
 ∟●国の知的基盤である大学の教育研究の振興と大学予算の確保・充実に向けて

平成21年12月7日

国の知的基盤である大学の教育研究の振興と大学予算の確保・充実に向けて
-県内2国立大学法人学長の緊急アピール-

国立大学法人滋賀大学学長 成瀬 龍夫
国立大学法人滋賀医科大学学長 馬場 忠雄

 現在我が国は、極めて深刻な社会経済状況下に置かれており、このような時に「国家百年の大計」の根幹をなす教育、特に高等教育・研究の果たす役割はますます重要になっています。
 高等教育機関として、国立大学は我が国の知の創造の拠点として、また、専門的高度人材育成の拠点として、今後もさらに強化・充実していくことが不可欠であると考えています。
 しかし、国立大学の基盤を支える運営費交付金は、毎年対前年度比1%の削減が続けられ、過去5年間で720億円の削減が行われましたが、その額は、滋賀大学規模の大学で23校分の消失に相当します。
 資源の少ない我が国にとって、優れた高等教育を受け、将来を担う人材を育成することは、国力の源泉であり、それに対する投資の削減を続ける事は、今後国際的な競争に打ち勝つことが困難となるばかりか、日本の国力が衰微していく懸念を強く感じる所であります。
 先般、政府の行政刷新会議におけるワーキンググループによる「事業仕分け」が行われ、「国立大学運営費交付金については国立大学在り方を含めて見直し、特別教育研究経費については縮減」との評価結果が出されました。11月26日、社団法人国立大学協会からは、川端文部科学大臣に対して『大学界との「対話」と大学予算の「充実」を』の緊急アピールがなされたところです。
 我々、滋賀県にある国立大学法人は、それぞれの特色を生かしながら、専門的職業人の養成や質の高い教育者の育成、また、地域医療の最後の砦としての機能に力を注いできております。
 大学等への公財政支出が、対GDP比でOECD加盟国中、最下位であることは周知の事実になっておりますが、日本の教育研究の水準の維持・向上、教育の機会均等の確保に関する国立大学の役割を一層高めるために、大学予算の確保充実に向けた滋賀県民のみな様のご理解とご支援をお願いする次第であります。


[新聞ニュース]
「国力が衰微する」 事業仕分けで運営交付金見直し判定 滋賀

奈良県3国立大学長、共同声明「高等教育政策の基本方針の確立と大学予算の充実を」

奈良教育大
 ∟●高等教育政策の基本方針の確立と大学予算の充実を

平成21年11月28日

高等教育政策の基本方針の確立と大学予算の充実を
― 未来を担う人材の育成のために ―

奈良女子大学学長 野口 誠之
奈良先端科学技術大学院大学学長 磯貝  彰
奈良教育大学学長 長友 恒人

 高等教育機関としての大学・大学院は、様々な文化や現代科学技術の再生産と創造の場であると同時に、専門的技能と理論の継承発展を担う専門的職業人の養成、並びに教養教育を通じての国民の教養と市民性の育成に責を負っています。我が国の教育が今日の繁栄・発展に導く上で,全体として大きな成功を収めてきたことは大方の認めるところであります。知的基盤社会といわれる21世紀において、グローバルな視点から文化的・経済的に調和のとれた社会を実現しつつ、我が国の国際競争力を確保するうえで、大学における人材育成はますます重要性を増しています。

 11月26日、社団法人国立大学協会は文部科学大臣宛の緊急アピール、「大学会との『対話』と大学予算の『充実』を -平成22年度予算編成に関する緊急アピール-」を発表しました。その内容は以下の通りです。

1 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。
2 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いてください。
3 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

 我々、奈良県にある国立大学法人はそれぞれの特色を活かし、先端科学技術の研究と後継者養成、男女共同参画社会の推進と女性の研究教育者の育成、高度専門職業人としての質の高い教育者の育成などの分野で、グローバルな視点で人材育成に力を注いでおり、それぞれ成果を上げてきています。また、国立大学法人化後、運営費交付金の継続的な削減にも関わらず、我々は大学における教育の質を向上させる工夫を行うとともに、奈良県の企業、地方自治体、教育関係機関等、地域との連携協同を強化してきました。

 現在、各大学は第1期中期目標・計画(平成16~21年度)において実行してきた教育研究を発展させるべく、第2期中期目標・計画(平成22~27年度)を策定中です。しかしながら、国立大学の基盤的経費である運営費交付金が削減されていく事態が続くならば、第2期中期計画の実行にも支障が生じかねず、大学の将来計画等は萎縮の一途を辿る恐れがあります。一方、競争的経費は各大学における研究費及び教育改革費の中で大きな割合を占めており、活性化の源ともなっています。

 我が国の高等教育機関への公財政支出(対GDP比)は、OECD加盟国平均の最下位であり、学生一人当たりの高等教育費の伸び率(1999~2004年)がOECD加盟国で唯一のマイナスであるという現状があります。未来の我が国を支える人材育成の観点から、長期的な高等教育の基本政策の確立を政府に期待するとともに、三大学が立地する奈良県及び近隣の皆様方に、地方国立大学としての活動と現状をご理解いただき、一層のご支援をお願いする次第であります。


中国地区5国立大学長、共同声明「国家百年の計における国立大学再生を」

鳥取大
 ∟●国家百年の計における国立大学再生を~(中国5大学長による共同声明)

平成21年12月9日

国家百年の計における国立大学再生を
(共 同 声 明)

中国地区国立大学長会議
鳥取大学長 能 勢  隆 之
島根大学長 山 本  廣 基
岡山大学長 千 葉  喬 三
広島大学長 浅 原  利 正
山口大学長 丸 本  卓 哉

 財政状況が厳しい我が国において,平成22年度予算の編成に向けて,新たな手法である行政刷新会議による「事業仕分け」は,国民に対して透明性を高めるという観点から意義のあるプロセスであると認識しております。
 しかしながら,行政刷新会議ワーキンググループの事業仕分け評価結果では,大学関係の基盤的経費,学術・科学技術振興予算など高等教育機関としての大学が果たすべき役割・機能が衰退するような根幹に係る予算の削減や見直し等が提案されております。今回の事業仕分けについては,当面する予算削減の視点と即効性の観点から議論され,また,国立大学への事実誤認もあります。地方において未来社会を担う人材育成と人類の発展に資する科学研究を推進し地域貢献を使命とする高等教育機関の責任者として,資源の乏しい我が国においては,「人材」が国の基盤をなし,その人材育成を支えているのは国立大学です。明治期以来の我が国の高等教育施策の根幹をなし,国の発展の原動力となっているのは周知の事実です。
 このままでは,とりわけ地方国立大学の衰退が危惧されます。そこで,以下の要望について,政府責任者として国家百年を見据えた長期的な視点に立ち,国立大学のこれまで果たしてきた役割・実績や重要性をご認識いただき,内閣として政治主導のご判断をいただきますよう強く要望いたします。

【人材育成の確保】
 国立大学は,教育の機会均等を担う公共的性格の下で,優れた教育を提供し人材の育成に寄与しています。地域になくてはならない優れた資質を有する教員,医師,法曹人の養成も大事な役割であります。特に地方国立大学においては,比較的低所得者層の子弟を多く受け入れて教育の機会均等に大きく寄与しており,昨今の経済不況の中にあって,その役割とともに地域社会からの期待も一層増しています。
 ワーキンググループの評価結果に基づく事業仕分けにより施策が行われると,各国立大学の教育研究水準の低下や優秀な学生の確保・育成・輩出が損なわれ,地域における高度人材育成の中核拠点が崩壊しかねません。このことは,地域が期待する教員・行政・企業・医療現場などで活躍する優秀な人材育成,高度で先進的な医療の提供,地域企業等への研究成果の還元にも大きな影響を与えることとなります。

【基盤研究の推進】
 国立大学は,高度な学術研究や科学技術の振興を担い,国力の源泉としての役割を担ってきました。特に地方国立大学は,地域へ安定的かつ持続的に大きな経済効果を発揮しており,大学の研究による「新しい産業の創出と地域産業・地域文化の活性化」という地域の未来に繋がる経済基盤の創出や安心安全社会の実現という重要な役割を果たしています。
 第3期科学技術基本計画の中で科学技術の戦略的重点化として,基礎研究の推進の重要性が謳われています。第4期においても,引き続き基礎研究の充実・拡充の方向で議論がなされていると承知しております。人類の英知を生み知の源泉となる基礎研究は,その研究成果が人類社会の課題解決に資するとともに,長年にわたる地道な研究活動の成果により日本人研究者がノーベル賞を受賞されたことは周知の事実です。
 ワーキンググループの評価結果に基づく事業仕分けにより施策が行われると,学問分野を問わず,基礎研究や萌芽的な研究の芽を潰すなど,これまで積み上げてきた我が国の国立大学の研究基盤が歪みを生じ,やがては根底から崩壊することが危惧されます。その結果,地域や国全体の経済成長の衰退,さらに国際競争力の低下に繋がり科学技術創造立国としての価値がなくなることとなります。

 以上のように,中国地方の各国立大学では,世界水準の教育研究活動を推進するとともに,地域の特色を活かした教育研究や地域のニーズに応えるための様々な取り組みを積極的に展開しています。これらの取り組みの基盤的経費である国立大学運営費交付金の毎年度の減額に対して,各大学では教育研究経費の削減,人員の効率化を図りながら懸命な経営努力に邁進しているところであります。
 選挙時の民主党の政策文書には「世界的にも低い高等教育予算」や「国立大学法人に対する運営費交付金の削減方針」の「見直し」との記述があり,また,これまでの国会審議においてもこの方針に沿った対応がなされたものと承知しております。
 国立大学法人の果たしてきた役割や重要性をご理解いただくとともに,内容について再度精査いただき,教育研究基盤確立のため,内閣として政治主導の判断をいただきますよう強く求めます。


[新聞ニュース]
国立5学長「評価再精査を」

四国地区5国立大学長、共同声明「四国地域の国立大学における教育研究水準の維持・向上等について」

徳島大学
 ∟●四国地域の国立大学における教育研究水準の維持・向上等について(共同声明)

平成21年11月30日

四国地域の国立大学における教育研究水準の維持・向上等について
(共同声明)

徳島大学長 青野 敏博
鳴門教育大学長 高橋 啓
香川大学長 一井 眞比古
愛媛大学長 柳澤 康信
高知大学長 相良 輔

 四国地域の各国立大学では、世界水準の教育研究活動の推進とともに、地域の特色を活かした教育研究や地域の企業・住民等のニーズに応えるための取組を積極的に行っております。
 さて、先般の行政刷新会議WG「事業仕分け」では、科学技術の振興事業、大学の教育研究にかかる各種経費、事業について「廃止」、「予算要求縮減」等が結論づけられております。
 各大学では、これまでに国立大学の基盤的経費である運営費交付金の毎年度1%の削減により、教育、研究、診療に多大な影響が及んでいるところですが、今回の「事業仕分け」で俎上にあがった各種経費、事業は、教育研究水準の維持・向上、特色ある教育研究活動の推進及び地域貢献に不可欠なものであり、それらの廃止、縮減等は、特に教育研究基盤が脆弱な四国地域の各国立大学の教育研究水準の低下、教育研究基盤の崩壊をひきおこし、地方における優れた高等教育を受ける機会を失わせることになります。さらには大学の機能低下による地域への貢献の減退、ひいては地域経済の浮揚や県民生活の向上に悪影響をもたらします。
 四国地域での優れた高等教育機会の確保、教育研究水準の維持・向上、特色ある教育研究の萌芽を育て、振興するために、下記のように平成22年度予算における大学に対する公的投資の確保・拡充を強く要望します。

①大学予算の縮減は四国地域における高等教育機関、四国発の特色ある教育研究、地域の発展の礎を崩壊させます
 四国地域の各国立大学は、優れた高等教育機会の確保、特色ある教育研究推進、地域医療の充実、地域の企業等との共同研究推進など、多様な分野における世界的な教育研究活動とともに地域の発展の礎としての機能を果たすべく腐心してまいりました。
 これらの取組の基盤的経費である国立大学法人運営費交付金の毎年度の減額に対して、各大学では経営努力により教育研究経費の削減、人員の効率化を図ってまいりましたが、この削減方針が続く場合には大学の運営基盤が崩れ、各分野にわたる教育研究水準や学生支援の低下をもたらすものと思われます。これは、地域が期待する力量のある教員、行政・企業・医療現場等で活躍する優秀な人材の育成・確保、地域住民への高度で先進的な医療の提供、地域企業への研究成果の還元等にも大きな影響を与えることとなります。
 各国立大学が、先端的、個性的、魅力的な教育研究環境づくりに取り組むことができるよう、教育研究活動及び経営基盤である国立大学法人運営費交付金について、従来の削減方針の撤廃、予算の拡充を強く要望します。

②競争的資金(科学研究費補助金、グローバルCOE、GP事業等)の拡充が必要です
 科学研究費補助金、グローバルCOE、GP事業、学術国際交流事業その他競争的資金は、運営費交付金とならんで国立大学が先端的、個性的な取組を進めるための教育研究資源の重要な柱となっています。
 先日の「事業仕分け」では、各種制度の統合・合理化、予算要求の縮減等の評価結果とされていますが、この結果は、特に地方国立大学にとっては、
・競争的資金獲得競争でのスタートラインからの脱落
・特色ある教育研究の推進の停滞
・GP経費を活用した先導的かつ当該大学で不可欠な教育改革の取組の衰退
・現在進行中の個性的な大学教育・学生支援事業にあっては、今まで構築されてきたシステム、軌道に乗りつつある組織的な取組の継続が困難
・若手研究者をはじめとした各研究者の教育研究活動の減退、教育研究環境の魅力の減少による優秀な研究者の確保が困難
・大学のみならず地域全体の国際化の停滞
・企業との共同研究を行う際にも、基幹となる研究成果が必須であり、仮に国からの競争的資金が大幅に減少されれば、教員の研究のみならず、研究を通じた学生の教育、共同研究、受託研究にも影響を与え、地域への人材供給、成果の還元も困難をもたらします。
 このため、各種競争的資金制度を柔軟なものとする方向での調整にご尽力頂くとともに、関係予算の拡充を要望します。

③地域科学技術振興・産学官連携関係事業の廃止は地域における産学官連携を崩壊させます
 「事業仕分け」評価結果では関係事業が全て廃止とされていますが、対象となる「知的クラスター創成事業」、「都市エリア産学官連携促進事業」、「地域イノベーション創出総合支援事業」は大学と県内企業の研究者と共に共同研究を推進し、大学の基礎研究成果を地域へ還元する取組です。地域に立脚する四国の大学として当該事業が廃止されることは、地域との連携のツールを失うことであり、地域経済の活性化に対しても極めて憂慮すべきことと考えております。
 また、「産学官連携戦略展開事業」は、地域における産学官連携コーディネータの配置等により、民間での経験と高い識見を持つ者を大学として活用するプログラムでありますが、これらの事業が中止されることは各地域で整い始めた産学官連携体制を後戻りさせることとなります。
 このように一定期間内に計画を立てて進めている研究や各種事業について、人件費に関わる部分など最低限必要な経費は継続いただくよう強く要望します。


国立大学53工学系学部長会議、「日本の学術および科学技術に関する緊急宣言」

東京農工大
 ∟●日本の学術および科学技術に関する緊急宣言

日本の学術および科学技術に関する緊急宣言
―グローバル社会における日本の科学技術水準の衰退を憂える―

国立大学53工学系学部長会議

 国立大学53工学系学部長で構成する当会議では、科学技術の発展を支える工学教育の在り方について論議を重ねると共に、平成20年9月には、自然と共存していく科学技術の発展と持続可能社会の実現に向けた「科学技術環境行動宣言」を行うなど、科学技術の果たした業績と将来に向けたその在り方や使命に関し、国民へ広く情報発信を行ってきた。
 今回の「事業仕分け」における科学技術政策に関する決定経過およびその結果は、「科学技術で世界をリードする国」たらんとする日本の将来を考えると、深く憂慮されるものであり、看過できない。そこで国立大学53工学系学部長会議構成員の総意のもと、ここに緊急宣言を発表する。

宣 言

 先日行われた行政刷新会議による「事業仕分け」がインターネットで同時配信されるなどして、国民が予算配分に関する議論の内容と経過とその結果とを目の当たりにできたのは、審議に関する透明性の観点で大きな前進と評価できる。逼迫した我が国の財政状況において、予算に関わる無駄が排除されるのは当然のことであり、国家予算に対する国民の関心が高まったこともまた大きな成果である。
 しかしながら、一部の事業項目、とりわけ学術や科学技術関連事業予算、高等教育関連事業予算の取り扱いについては疑問があり、先日、ノーベル賞受賞者を始め、複数の団体が緊急声明を発表したように、その評定については深く憂慮せざるを得ない。

 そもそも我が国は、原油、レアメタル、ウランなどの資源を持たず、大半の食料をも輸入に頼っている少資源国であり、工業製品やその生産技術の輸出によって経済社会が支えられていること、したがって科学技術の深化と発展こそが我が国の経済社会の原動力となっていることは言を俟たない。
 世界の産業と、その基盤となる科学技術開発が世界的大競争時代に突入した今日、我が国が今後とも世界の人々から尊敬され、また国民が将来に夢と希望を持って生き続けていくためには、独創的・先験的な研究開発成果を生みだし、産業化して世界の科学技術を牽引できる、「科学技術で世界をリードする国」となることが、我が国の使命であり、生命線でもある。国立大学は、これまで基礎研究や先端的な研究の推進と、それを担う人材を育成し社会に輩出することを以て、その責任の一端を担ってきたものと自負しているが、国際競争が激化する状況下で、我が国の大学や研究機関がその使命を果たしていくためには、教育力や研究力の一層の引き上げに向けた、継続的環境整備が不可欠である。

 一方、教育GP やグローバルCOE を始めとする多くの競争的資金配分の仕組みについても同様である。それらが取り入れられた後、大学の教育研究現場では教育力・研究力の高度化に向けて多くの改革がなされてきた。しかしそれらはまだ道半ばであり、それらを突然に中止することは学生教育への影響に止まらず一部留学生の生活そのものを危うくするものである。
 また、留学生30万人計画についても、グローバル30に採択された大学のみならず、その他の大学においてもその実現に向けて議論し施策を講じてきた。我が国のように少資源国家が国際社会において競争力を維持し、「科学技術で世界をリードする国」を将来においても堅持するためには、諸外国取り分けアジア諸国との密接な人的ネットワークを形成することが重要である。それには優秀な留学生を獲得し、育成して諸外国に送り出さなければならない。そのための予算は、国際競争力があり、かつ夢と希望のある将来の日本を担保するために必要不可欠である。

 それにもかかわらず、今回の事業仕分けにおいて、多くの科学技術関連予算を始め、産学連携事業予算、大学の教育研究高度化予算、留学生支援のための関連予算、さらには国立大学の基盤的経費である運営費交付金までもが、廃止、削減あるいは見直しとなったことは、「科学技術で世界をリードする国」たらんとする我が国の将来にとって深く憂慮せざるを得ない。
 我が国はこれまでも幾多の経済危機に直面して来た。そうした苦しい財政事情の時にも、国は科学研究費補助金や各種の教育研究高度化予算、産学連携事業予算などを手当てし、大学の学術や科学技術の水準保持に配慮してきた。そうした努力が、我が国からもノーベル賞受賞者を生み、国民の負託に応えた先導的な科学技術の発展と、我が国産業の国際競争力維持、地域の産業や文化の発展、さらにはそれらを支える人材育成に大きく貢献してきた。
 国立大学においても、その教育研究の高度化と効率的かつ効果的な運営を目指して、平成16 年に国立大学法人化するとともに、運営費交付金の毎年1%削減等の措置を受け入れ、大学運営の改善拡充と教育研究の高度化に取り組んできた。この5 年間に及ぶ毎年連続1%の経費削減は国立大学運営にとって非常に厳しく、一部の大学においてはその存立基盤すら危うくなってきている。

 しかるに、今回の事業仕分けにおいて公表されたような結果となったことは、国立大学はもとより、多くの公立、私立大学の教育研究を大きく後退させ、ひいては我が国の存立基盤を脅かすものであり、「大学や研究機関の教育力・研究力を世界トップレベルまで引き上げる」とした、民主党の政権政策マニフェストにも反する。来年度以降の学術や科学技術関連事業、高等教育関連事業に対する予算編成を進めるにあたっては、今回の「事業仕分け」の結論をそのまま引き継ぐことなく、学術や科学技術の専門家を始め、高等教育機関や産業界の意見に耳を傾け、国民生活の維持向上のため、我が国が今後も「科学技術で世界をリードする国」としての存在感を増大できるよう、長期的視点に立った配慮を強く望むものである。

平成21年12 月3日
署名人一同

茨城大学学長、声明「国立大学運営費交付金等の事業仕分けについて」

茨城大学
 ∟●国立大学運営費交付金等の事業仕分けについて(学長声明)

国立大学運営費交付金等の事業仕分けについて(学長声明)

(1)大学運営の基盤となる予算や教育研究のための補助金等が見直し又は縮減と判定され、産学官連携の事業は廃止と判定されました。教育研究予算は成果主義の観点での見直しには馴染みません。
(2)大学の収入は、運営費交付金、授業料及び申請によって獲得する補助金等によって支えられています。茨城大学の運営費交付金は5年間で3億5千万円も削減されました。経費節減や教職員の人件費削減等で経営努力していますが、もはや限界です。
(3)補助金等が削減されれば、自由な発想や可能性の芽を摘んでしまいます。産学官連携の推進にも急ブレーキがかかり、地域振興等が不十分になります。
(4)我が国の教育投資は、OECD加盟国中最下位です。国際的な競争力が必要とされる時に削減を続けていては日本の衰退は免れません。
(5)60年間で6万8 千人が卒業又は修了し社会で活躍しています。茨城大学の伝統を守り、地域とともに発展する大学でありたいと思います。茨城大学は、未来を拓く学生の学びの場を明るく有意義なものにしていきたいと考えています。

≪事業仕分けの結果は衝撃です≫

 政府の行政刷新会議が行った事業仕分けにおいて、国立大学運営費交付金の見直し及び特別教育研究経費の縮減の判定がなされました。また、運営費交付金以外にも公私立大学も対象の競争的資金による先端研究、若手研究者育成及び大学の先端的取組支援等の事業は縮減、国立大学の地域科学技術振興・産学官連携事業については廃止と判定されたところです。
 成果や効率化による事業の評価は必要ですが、教育関係予算について“短期的成果主義”の観点から拙速な判断がなされることを危惧します。

≪予算削減の状況は深刻です≫

 運営費交付金は学生数等によって配分される大学運営の基盤的経費であり、茨城大学の収入財源の約50%を占めています。そもそも基盤となる予算の確保は不可欠ですが、本学の運営費交付金は、政府の方針で平成16年度の法人化以降、毎年約1%減少しています。これまで約3億5千万円も削減され、大学の本来の機能を維持しかねる深刻な影響を与えつつあり、その対応は既に限界に達しています。
 本学は、管理的経費の削減はもちろんのこと、教職員の人件費を削減する一方で、自己収入の増加を図るなど競争的資金や外部資金等の確保により、経営改善に努めているところでありますが、教育研究の質の低下や研究成果創出の低迷を危惧しています。
 平成22年度の全国立大学の運営費交付金の概算要求額は前年度とほぼ同額ですが、附属病院の運営、医師不足等に対応した予算を充実させる内容となっています。要求どおり全額が認められたとしても病院を持たない地方国立大学にとっては、実質的な削減が継続されるものと憂慮しています。
 さらにこれまで以上に運営費交付金等の実質的削減が続くことになれば、教育研究活動の足元が崩壊しかねません。

≪事業仕分けの影響は私たちの将来への夢を脅かすものです≫

 科学研究費補助金等の競争的資金は、研究者の自由な発想や大学の先端的取組による申請に対し、厳正な審査に基づいて配分されるもので、本学の効果的な教育への取組や科学技術・学術研究の進展に多大な貢献をしてきました。その縮減は、育てるべき、無限の可能性を秘めた着想の芽を摘んでしまうことになりかねません。
 ことに、廃止と判定された地域科学技術振興・産学官連携事業については、本学の産学官連携を戦略的に展開するための事業として平成20年度に採択され、産学官連携コーディネータの2名を5年契約で雇用し、大学が生み出した知的財産の民間企業等への移転を進めて地域経済の活性化を図るべく活動をしているところですが、打ち切りに追い込まれてしまいます。地域振興、活性化の推進体制の弱体化は免れません。

≪教育投資はそもそも不十分なのです≫

 こうした経費は、本学に求められている優れた人材の輩出、地域や社会に活かされる研究成果の創出、知的で文化的な社会の構築により、地域とともに安定的に発展する礎を支えるものです。近い将来の国の知的基盤の弱体化につながることになる削減・廃止は誠に遺憾であります。
 資源の少ない我が国にとって、優れた高等教育を受けた将来を担う人材は、国力の源泉です。諸外国が大学等に重点投資を行い、優秀な人材を惹きつけ、育成しようとしている中で、ひとり我が国だけが投資の削減を続けていては、国際的な競争に打ち勝つことは困難であるのみならず、将来にわたって日本の国力が衰えていく懸念を強く持つところです。現在でも大学等への公財政支出が対GDP比で先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)加盟国中最下位なのです。

≪皆さんと共にある茨城大学の伝統を絶やすことはできません≫

 本学の学生たちは厳しい社会状況の中で知的刺激を受けて目を輝かせて成長しています。本学を巣立つ有為な人材を社会が待っています。共に研究・連携し地域の活性化に期待を寄せる多くの人がいます。そして何よりもこれからの社会を担う将来ある子供たちのために、活力があり、健康的、文化的で持続可能な社会を残していかなければなりません。
 私たちは、その熱意、要請及び責務に応えようと懸命に努力を続けています。本学には約9,700人の学生(含大学院生)等が学び、約1,000人の教職員がその支援に当たっています。毎年2,100人が卒業又は修了し、これまでに合計68,000人が巣立ちました。卒業・修了生は茨城県を中心に活躍し、地域・社会の発展、振興に力を発揮しています。
 関係の皆様方のご理解をいただくとともに、高等教育、学術研究振興関連予算の確保を切に望むものであります。

平成21年11月30日

国立大学法人茨城大学長
池 田 幸 雄

全グローバルCOE拠点リーダー、行政刷新会議「事業仕分け」第3WGによる グローバルCOEプログラム評価に対する声明

信州大学
 ∟●行政刷新会議「事業仕分け」第3WGによる グローバルCOEプログラム評価に対する声明

09年12月03日

行政刷新会議「事業仕分け」第3WGによる
グローバルCOEプログラム評価に対する声明

全グローバルCOE拠点リーダー
平成21年12月3日

【はじめに】 平成22年度の概算要求総額95兆円を削減するため、行政刷新会議による「事業仕分け」作業が行われ、先週末に終了しました。この作業の第3WGによる「グローバルCOEプログラムに対する評価」では、本プログラムおよび博士研究員(ポスドク)が我が国の学術研究分野で果たしている役割に対して、実状からかけ離れた誤解、認識不足に基づく評価コメントが出されており、驚いています。グローバルCOEプログラムでは、大学院の教育研究機能を強化し、世界をリードする人材を育成し、国際的に卓越した教育研究拠点を形成することを目的にして努力しています。その中でポスドクも大きな役割を果たしています。そこで、プログラム拠点リーダー有志で相談し、実状を説明し、我々の率直な意見を公にすることにしました。

【貧弱な高等教育予算】 資源の乏しい我が国が発展していくためには、学術研究に対して充分な投資を継続的に行うことが不可欠であることは、言うまでもありません。すでにノーベル賞受賞者の方々も指摘されているように、科学・文明の振興は継続性が重要で、ひとたび大きな中断があると、回復不能の後遺症を伴います。現在、我が国の高等教育機関に対する財政支出の対GDP比率はOECD(経済協力開発機構)加盟国中最下位であり、各国平均値の半分というのが実情です。国民負担率や人口に占める大学進学率等で補正しても、その低さは際だっています。また、国立大学に対する運営費交付金が毎年1%ずつ、公立大学ではそれを上回って削減され続けている状況のもとで、日本の国公私立大学ではグローバルCOEプログラムをはじめとする教育研究活動を必死の思いで進めています。

【実績検証の一例】 21世紀COEおよびグローバルCOEプログラムの取組の成果として、我が国の大学に対する国際的な評価が大きく変わったことが各種統計データで明確に示されています。一例をあげれば、英国タイムズ社のランキングが開始された2004年には、世界ランキング100位および200位以内の日本の大学は、それぞれ4大学、6大学でしたが、2009年には6大学、11大学へと増加し、各大学とも着実にランクを上げ続けています。非英語圏の大学は不利と言われるこのランキングで、100位以内にドイツは4大学、フランスは2大学のみが選ばれていることを考えると、我が国が世界全体で4位という結果は、十分に評価されるべき数字と考えます。この間、科学技術振興に膨大な投資を行った中国、韓国の大学も、複数の大学がランキング入りを果たしています。このような東アジアの科学技術躍進の鍵となった大学院教育改革への意欲的な投資は、研究基盤と大学院教育の質の引き上げを通して、主要分野の核心的人材を養成するものとして欧米でも非常に高く評価されています。

【グローバルCOEとポスドクの重要性】 大学における研究活動は、大学院生と博士研究員(ポスドク)が中心的な担い手となっています。世界最先端の分野で現在活躍する研究者や大学教員の多くも、ポスドクを経験することで鍛えられ、広い視野で研究を進める力を磨いてきたのです。こうした仕組みは、最先端の研究を担う世界中の大学や研究機関では当然のこととされています。国際的な標準では、博士課程の学生は研究資金によりリサーチ・アシスタント(RA)として雇用され、その給与で生活が可能です。これに対して我が国では、大学予算や科学研究費補助金のうち、「ポスドクやRAを採用」するための予算は微々たる現状が続いています。こうした現状を打開するために、世界を相手に最先端研究で競っている研究組織の中からグローバルCOE拠点が選考され、国際的な最先端研究の舞台で活躍できる研究者を輩出することを目標に、「大学院生やポスドクを含む若手研究者の育成事業と最先端研究を行う現場とが有機的に連携」して、人材育成と教育研究活動を推進しています。また、人材育成は決して短期間でできるものではなく、5年、10年と継続して初めてその結果が目に見えてくるものです。この点に関する指摘として寄せられた、「グローバルCOEは研究ではなく、教育であるなら大学が当然やるべきこと」、「グローバルCOEの成果評価に博士取得者の就職率向上を重点に置くべきである」、あるいは若手支援に対して「ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸」等のコメントは、ことの本質を理解していない認識の表れと言わざるをえず、まことに残念なことです。

【厳しい拠点審査による拠点の絞り込み】 本事業は、平成21年度を例に取れば、145件の申請のうちわずか9件しか採択されないなど、厳しい審査を経て、絞りに絞った教育研究組織が選ばれています。「140拠点は多くないか」との指摘は、全く的外れです。むしろ、多数の大学の中から各分野で十数件のみの採択は、あまりにも少なすぎます。
このように、21世紀COEとそれを引き継ぐ形で進むグローバルCOEプログラムは、これまで日本の大学院教育改革をリードしてきました。特に、日本の将来を担うことになる大学院学生への支援に非常に大きな役割を果たしています。大学院学生への経済的な支援は、他の先進国では当然のこととされています。世界的に競争の厳しい科学技術分野では、一度遅れを取ったら、もう取り返しがつかないことになります。日本は「科学技術創造立国」とよく言われますが、それを支えているのはグローバルCOEに代表される大学院の高度な教育研究活動であることを忘れないでほしいと思います。経済状況が厳しい今こそ、国家として将来を担う人材への投資を怠ることがあってはならないと考えます。もちろん、大学院教育研究現場の一層の改革努力が求められるのは言うまでもない事であり、関係者一同、これまで以上に奮起することは当然のことと考えます。


主要20学会声明、「我が国の将来に責任を持つ科学技術研究と若手人材育成・教育の強化」

日本数学会
 ∟●「我が国の将来に責任を持つ科学技術研究と若手人材育成・教育の強化」

主要20学会声明

行政刷新会議事業仕分け判定を受けて
「我が国の将来に責任を持つ科学技術研究と若手人材育成・教育の強化」
今後我々はどう考え行動しなければならないか

平成21年12月4日

社団法人応用物理学会会長 東京工業大学教授 石原 宏
社団法人日本化学会会長 三井化学株式会社相談役 中西宏幸
社団法人日本化学会次期会長 日本学術会議第三部部長 岩澤康裕
社団法人日本機械学会会長 株式会社東芝顧問 有信睦弘 
社団法人日本機械学会筆頭副会長 東京大学副学長 松本洋一郎
社団法人日本金属学会会長 東京工業大学教授 加藤雅治
日本結晶学会会長 いわき明星大学教授 竹中章郎
社団法人高分子学会会長 京都大学教授 澤本光男
社団法人日本数学会理事長 東京大学教授 坪井 俊
社団法人日本生化学会会長 東京大学教授 北 潔
社団法人日本地球惑星科学連合会長 東京大学教授 木村 学
社団法人日本天文学会理事長 名古屋大学教授 國枝秀世
社団法人電気化学会 横浜国立大学教授 太田健一郎
社団法人電子情報通信学会会長 慶応大学教授 青山友紀
社団法人土木学会会長 株式会社東北電力顧問 近藤 徹
社団法人日本農芸化学会会長 東レ株式会社先端総合研究所長 清水 昌
社団法人日本物理学会会長 大阪大学教授 大貫惇睦
社団法人プラズマ・核融合学会会長 未来エネルギー研究協会会長 本島 修
社団法人日本分析化学会会長 東京理科大学教授 中村 洋
日本放射光学会会長 東京大学教授 尾嶋正治
社団法人日本薬学会会頭 東京大学教授 松木則夫
社団法人有機合成化学協会会長 東京大学教授 福山 透

 私たち学会関係者は、今般の行政刷新会議事業仕分けの判定に対し,特に科学技術分野に関する審議状況と判定結果に関して深く憂慮し、我が国の今後の科学技術の発展と人材育成及び教育に大変な危機感を抱いております。我が国の約33万人の科学技術関連研究者をメンバーに含む主要20学会が、学会、大学・研究機関、研究分野、地域を超えて、政府関係者への以下の要望と共に、意見を表出いたします。

 無駄を省いてより良い国家予算を作るため一つの方策として行われた行政刷新会議の事業仕分けは、事業判定に多くの国民が納得する一方で、我が国の国家百年の計を破壊しかねない判定もなされています。特に、長年積み重ねてきた研究者・教育者の努力と議論を科学的評価・検証もなく、国際貢献・評価も考慮せず、また、若手人材育成の展望も示さず、一握りの仕分け作業人と制限された説明者との短時間のやり取りにより大幅な予算削減や見直しを決定してしまうことに対して大きな危機感を抱かざるを得ません。世界的な科学技術と人材獲得の大競争時代において、我が国の将来の運命を決める極めて重要な科学技術と教育・若手人材育成への投資は、将来展望・国益・国際貢献を論じない事業仕分け作業には全く馴染まない国の中心的戦略政策であります。我が国の将来に禍根を残すことの無いように政策・施策を推進することをお願い申し上げます。

 現在、我が国が抱える解決すべき国家課題は、持続可能社会の実現・健康、安全・環境とエネルギー・枯渇資源代替・情報通信システム・共生できる社会基盤・産業、経済、労働と雇用政策・人材確保・自然の再生・国土と地域の再生・生活可能空間拡大など、解決が困難で深刻なものが多く、これらの解決には多角的視点からの多様な先進的研究が必要です。科学技術の発展の歴史と源泉を理解せずに見掛け上類似というだけで研究予算の整理統合を行うと、科学技術の発展を根底から崩壊させてしまう恐れが高いといえます。仕分け作業のように余りにも短期的収益・成果にこだわるあまり、国際社会の中で我が国の科学技術全体の中・長期的展望が見えなくなり、気がついた時には日本の科学技術が壊滅的な打撃から立ち上がれなくなっていたでは取り返しがつきません。

 科学技術研究は、中・長期的国家戦略的な政策・施策のもとに進めるべき知的文化的事業であり、収益=効率・成果という財政的視点のみからの仕分け作業からは切り離すべきものです。資源・エネルギーに乏しい我が国が先進国の中でプレゼンスを高め国際貢献を果たすことができるのは、世界を先導する科学技術のお陰といえます。こうした観点から、とりわけ以下の7点の指摘と喚起をおこない、関係方面に適切なる対応をお願いいたします。

1.運営費交付金等による大学・研究機関の基盤強化は、GDP比でOECD加盟国の平均の半分でしかない高等教育予算を少しでも改善し、若手人材育成と高等教育の活性化に必要であり、創造的な科学・技術を生み出す源泉でもあります。
2.スーパーコンピュータやSPring-8の放射光等は、物質科学、生命科学、環境科学、エネルギー科学など非常に多くの研究分野の先端的な科学技術研究に必須です。特に大型放射光施設(SPring-8等)は、主要20学会の会員を含め大学や公的研究機関のみならず、国際共同研究や産業界の研究開発部門の利用も多く、公正で厳格な運営のもとに、真の公共的共用大型施設として多大の実績を挙げております。これら大型施設は、技術開発と進歩の持続性に加え、人材育成にも非常に貢献しています。
3.競争的資金制度については、見直すことは必要ですが、基礎研究は多様な人材が多様な価値観・多角的視点と自由な発想により行ってこそ成果が挙がる性格のものです。トップダウンでファンディングを一元化したり、若手研究者や女性研究者に対する競争的資金を整理統合したりするようなことは、創造的活動の可能性を狭め、将来を見据えた国家戦略としては極めてリスクが大きいと思います。
4.ポスドクは、世界最先端にある我が国の科学技術研究の現場を支える重要な基盤的人材であり、ポスドクの雇用は、決して博士課程修了者への生活保護でもセーフテイネットでもありません。また、高等教育を受けた有能な女性を人材として活用することは、国の基盤を強化する上で必要不可欠です。我が国の科学研究の将来を担う若手研究者や女性研究者の成長を支え、夢を与える施策に安定的な予算配分を確実に手当てするようお願いいたします。
5.厳しい国際競争の中、独自の研究成果から絶えざるイノベーションを創出していかねばならない我が国にとって、産学官連携は、その実現のための重要な手段であり、持続的・発展的な産学官連携システムを構築する必要があります。
6.環境問題、資源・エネルギー問題、新興・再興感染症の問題など、人類は予測できない困難な問題に直面しております。その状況を改善し人類の危機を解決するには先進的科学技術が必須であり、先進国にふさわしい国際貢献と人類社会への貢献は国際的プレゼンスに繋がり、それは我が国の国益でもあります。
7.資源・エネルギーに乏しい我が国では、科学技術が国の運命を決めると言って過言ではありません。科学技術の中・長期的展望と科学的評価検証を行い政府に科学技術政策の羅針盤と的確な情報を提供できる仕組みが必要です(例えば、日本学術会議の機能強化)。我々研究者コミュニティは、常に世界を先導する科学技術と若手人材育成・教育の強化を行い、我が国の持続可能な文化的社会構築に向け、最大限の努力と責務を共有したいと思います。

 鳩山内閣が、我が国の中・長期的国家戦略としての科学技術強化とそのための若手人材育成強化などの将来への投資の展望に立った予算の策定を実施されることを強く要望し、我が国および人類社会の将来への貢献と責任を持つ英断を切に望みます。