全国
 カテゴリー 最近の労働政策

2010年03月08日

日弁連、労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

日弁連
 ∟●労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

2010年(平成22年)2月19日
日本弁護士連合会

はじめに
 一昨年秋から始まった経済不況に端を発した派遣切り・雇止めによる労働者の失業と困窮は社会問題となり,派遣労働者の保護が喫緊の政治課題となっている。年末年始に東京都等の自治体が実施した「公設派遣村」にも,派遣切りにあって職と住居を喪失した多くの派遣労働者が身を寄せた。
 派遣労働者は,使用者が派遣先と派遣元に分化している間接雇用の構造のもとで,他の労働者と分断され,労働条件,雇用の安定の交渉,労働組合加入等が著しく困難な状況に置かれている。
 労働者派遣法改正については,昨年の通常国会において与野党から改正法案が提出されたが,衆議院の解散に伴いいずれも廃案となった。厚生労働大臣は,昨年10月7日,労働政策審議会に「今後の労働者派遣制度の在り方について」の諮問をし,同審議会は同年12月28日に「答申」を出し,厚生労働省は2010年2月17日,「答申」に沿った法案要綱を策定した。今後,法案策定,国会への上程,審議と手続が進められる。
 答申・法案要綱の内容は,法律の名称・目的に労働者保護を明記すること,登録型派遣や製造業派遣の原則禁止,違法な派遣についての直接雇用申込みのみなし規定を創設することなど,労働者保護の観点から規制強化に踏み込む内容となっている。しかしながら,答申・法案要綱は,派遣労働者の低賃金・不安定雇用を解消するにはなお不十分であるうえ,2008年の法案に盛り込まれていた事前面接の解禁等がそのまま持ち越されており,問題が大きい。
 連合会は「労働者派遣法の抜本改正を求める意見書」(2008年12月19日。以下「2008年意見書」という。)を発表し,労働者派遣法の抜本改正に必要な8項目(派遣対象業務の限定,登録型派遣の禁止,日雇い派遣の全面禁止,直接雇用のみなし規定の創設,均等待遇義務付け,マージン率上限規制,グループ内派遣原則禁止,派遣先特定行為の禁止)を示し,この間,政府や国会に対して,2008年意見書の趣旨に沿った早期抜本改正を強く求めてきたところである。
 当連合会は,改正法案作成と国会での審議に先立ち,2008年意見書の内容を前提に,答申・法案要綱の問題点を指摘したうえ,あるべき改正の方向性について意見を述べる。

意見の趣旨
1 派遣対象業務は専門的なものに限定すべきであり,「現行専門26業務」については厳格な見直しをすべきである。
2 登録型派遣の原則禁止にあたって,答申・法案要綱において例外とされている「専門26業務」については,その範囲を厳格に見直すべきである。また,常用雇用についての労働者派遣を当面認めるにしても,その定義規定を置き,期間の定めのない雇用契約に限定すべきである。
3 製造業務派遣については,本来,全面禁止されるべきである。常用雇用に限定して認める場合であっても,その定義規定を置き,期間の定めのない雇用契約に限定すべきである。
4 日雇い派遣について例外を許容することは適当ではなく,全面禁止とすべきである。
5 均等待遇にあたっては,単に均衡を考慮する旨の配慮規定を置くだけでは不十分であり,均等待遇を義務付ける具体的な立法をすべきである。
6 マージン率については,上限を規制すべきであり,情報公開及び労働者への明示を義務付けるだけでは不十分である。
7 違法派遣の場合における直接雇用のみなし規定について
(1) みなし規定適用に当たって,違法であることについての派遣先の認識を要件とすべきではない。
(2) みなし規定の対象となる違法派遣は,答申・法案要綱が列挙しているものに限定せず,多重派遣等の重大な違法派遣の場合すべてに適用すべきである。
(3) 期間制限に違反した場合の派遣先による直接雇用後の雇用契約の期間は,期間の定めのないものとすべきである。
(4) 直接雇用後の労働条件の均等確保の規定を入れるべきである。
8 グループ内派遣は原則として禁止すべきである。
9 派遣先の特定行為は禁止すべきである。
10 派遣先の団体交渉応諾義務について規定すべきである。
11 施行期日については,長期間にわたる施行期日の設定,暫定措置を設けるべきではなく,できるだけ速やかに,改正法公布の日から6か月以内の政令で定める日とすべきである。

……


2010年02月04日

「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定

「雇用保険法等の一部を改正する法律案」について

メールマガジン労働情報/No.597より

 政府は1月29日、雇用保険法等の一部を改正する法律案を閣議決定した。
 非正規労働者に対するセーフティネット機能の強化として、雇用保険の適用範囲を週所定労働時間20時間以上で31日以上雇用見込みの者に拡大するほか、事業主の責により雇用保険未加入とされた人に対して2年(現行)を超えて遡及適用する。また、雇用保険二事業の財政基盤の強化として、失業等給付の積立金から借り入れる仕組みの暫定的措置や保険料率に係る弾力条項の発動停止などを盛り込んでいる。


2010年01月28日

厚生労働省政策会議、国会提出の9法案について議論

■厚生労働省
 ∟●第7回 厚生労働省政策会議 議事次第

 厚生労働省政策会議は14日、第7回会合を開き、第174通常国会に提出する9法案について議論した。このうち、「労働者派遣法等の一部を改正する法律案」には、常用雇用以外の労働者派遣や製造業務への労働者派遣の原則禁止など、労働者派遣事業に係る制度の抜本的見直しが盛り込まれている。

[関連ニュース]
雇用保険法改正案を閣議決定

2010年01月12日

全労働、労働政策審議会答申(2009.12.28)に対する意見

全労働
 ∟●労働政策審議会答申(2009.12.28)に対する意見

労働政策審議会答申(2009.12.28)に対する意見
-派遣労働者の権利保障に向けた労働者派遣改正を求める-

労働者派遣法の見直しについて審議していた労働政策審議会・労働力需給制度部会は2009年12月28日、「今後の労働者派遣制度の在り方について」と題する報告をとりまとめ、労働政策審議会(本審)はこれを答申として厚生労働大臣に提出した。これを受けて、政府・厚生労働省は、労働者派遣法改正案を早期に策定し、通常国会に提出するとしている。

答申の内容は、多くの前進面を含んでいるが、第一線の労働行政に従事し、日々、派遣労働の「現場」と向き合う立場から、派遣労働者の権利保障に向けて不十分な事項、懸念される事項等があることから、以下のとおり指摘する。

今後、政府の法案策定作業、衆参両院での審議、さらに国民的な議論を通して、次の各事項が、直接雇用の原則、常用雇用の原則等に立って相応しく解決され、実効ある労働者派遣法改正となることを切望する。……


2010年01月08日

労働政策審議会、今後の労働者派遣制度の在り方を答申

メールマガジン労働情報/No.589より
   

 厚生労働省・労働政策審議会は12月28日、労働者派遣法の改正に向けた報告書を長妻昭厚生労働相に答申した。
(1)登録型派遣は専門26業務などを除き原則禁止
(2)製造業務派遣は常用型に限って認める
(3)2カ月以内の期間を定める日雇い派遣の原則禁止、などがその内容。
 また、登録型派遣、製造業務派遣の原則禁止の施行は公布日から3年以内、登録型については、さらに2年の適用猶予期間を設ける。これを受け厚生労働省は、早期の法案提出に向け対応するとしている。

労働政策審議会「今後の労働者派遣制度の在り方について」の答申について
連合事務局長談話
全労連事務局長談話

2010年01月05日

全労働、「常用型と呼ばれる派遣労働者」

全労働
 ∟●常用型と呼ばれる派遣労働者

常用型と呼ばれる派遣労働者

 労働政策審議会は12月28日、労働者派遣法の改正に向けた答申を行った。

 この間の議論は多岐にわたったが、焦点の一つは、製造業務派遣の在り方であったと思う。この点、答申には、「問題が多く発生した製造業務への労働者派遣については、これを禁止することが適当」とする一方、「ただし、雇用の安定性が比較的高い常用雇用の労働者派遣については、禁止の例外とすることが適当」とある。

 おそらく、仮に派遣先の都合等で「労働者派遣契約」が解除されても、常用型の派遣労働者なら、離職することはないという発想なのだろう。

 しかし、労働行政の第一線で多くの派遣労働者の実情を見てきた私たちから見ると、常用型の派遣労働者のどこを見たら「雇用の安定性が高い」と言えるのか、まったく理解できない。

 データを示そう。

 厚生労働省自身がとりまとめた「労働者派遣契約の中途解除に係る対象労働者の雇用状況について」(平成21年5月21日発表)によると、労働者派遣契約が中途解除されたとき、常用型の派遣労働者であっても、実に87.2%が離職し、このうち87.9%が解雇されているのである(期間満了は8.6%、自己都合退職は3.5%にすぎない)。

 常用型と言っても、正に「名ばかり」で、派遣先の都合で派遣契約が解除された途端、多くの派遣労働者がいとも簡単に解雇され、泣き寝入りを強いられている(実際上、個々の派遣労働者が解雇の不当性・違法性を争うことは難しく、即日解雇の予告手当の支払いを求めるぐらいが精一杯)。

 労働者派遣は、派遣先が責任を負わず、手も汚さずに、労働者を「使い捨て」できる仕組みと言える。この矛盾を解消するには、真に権限のある者(派遣先)が、相応しい責任を負う制度へ変えていく必要がある。

 その際、製造業務の定義は幅広く、それに従事する労働者の多くは、政令で定める「26業務」のように専門性が高く、交渉力のあり、労働者保護に問題のない労働者(これも建前にすぎないのだ・・・)と言えないことに十分留意すべきだし、また、短期の有期雇用を反復する雇用形態を「常用型」と言いくるめる身勝手な解釈も、誤解を生じさせるので止めた方がいい。

 「常用雇用の原則」のみならず、「直接雇用の原則」に立ち返った、労働者派遣法の改正を望みたい。


2009年12月28日

自由法曹団、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会報告案について抜本的是正を求める意見書

自由法曹団
 ∟●労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会報告案について抜本的是正を求める意見書

2009年12月22日

労働者派遣法、「登録型」原則禁止の改正案示す…労政審

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091218k0000e010045000c.html

 労働者派遣法の改正を検討している労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は18日、仕事がある時だけ雇用する「登録型派遣」の原則禁止などを盛り込んだ改正案の原案を示した。禁止が検討されていた製造業派遣については、長期の雇用契約を結ぶ「常用型派遣」を容認するとしている。厚労省は審議会の結論を踏まえ、改正案を来年1月の通常国会に提出する方針。……

[同ニュース]
登録型派遣、原則禁止へ=厚労省審議会が制度改革案

2009年12月17日

製造業派遣、登録型禁止へ 専門職制度は見送り-厚労省審議会

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009121600971

 厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)は16日、派遣制度改正で焦点の製造業派遣について、長期の雇用契約を結ぶ「常用型」を認める一方、仕事がある時だけ雇用するため労働者の生活が不安定になりやすいとの批判が強い「登録型」を禁止する方針を固めた。審議会は労使代表と大学教授ら公益委員で構成しており、18日の会合で公益委員案として提示する。……

2009年12月15日

自由法曹団、労働者派遣法を派遣労働者保護法へ抜本改正することを要求する要請書

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法を派遣労働者保護法へ抜本改正することを要求する要請書

労働者派遣法を派遣労働者保護法へ抜本改正することを要求する要請書

2009年12月8日

労働政策審議会
会 長 諏訪 康雄 殿
労働政策審議会職業安定分科会
分科会長 大橋 勇雄 殿
労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会
部会長 清家 篤 殿

自由法曹団
団 長 菊池 紘

1 3党政策合意と労働政策審議会への諮問
 民主・社民・国民の3党は連立政権の成立にあたって9月10日に3党政策合意を確認したが、同合意では、「6、雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―」として、「『日雇い派遣』『スポット派遣』の禁止のみならず、『登録型派遣』は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則禁止する。違法派遣の場合の『直接雇用みなし制度』の創設、マージン率の情報公開など、『派遣業法』から『派遣労働者保護法』にあらためる。」、「男・女・正規・非正規間の均等待遇の実現を図る。」と合意している。この3党政策合意は、「製造業派遣を全面禁止しない」、「マージン率の上限規制をしない」などの不十分さを有しているが、労働者派遣法の抜本改正に向けて大きな意義を有するものである。
 3党政策合意を受けて、長妻昭厚生労働大臣は、10月7日、労働政策審議会に対して、「今後の労働者派遣制度の在り方について(諮問)」を諮問した。この諮問では、「上記の法律案(自公政府法律案)において措置することとしていた事項のほか、製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律案を提出する必要が生じている。」と、諮問の意義を明らかにしている。……


2009年11月05日

日本労働弁護団、「有期労働契約」「労働者派遣法」の規制強化提言

 日本労働弁護団はこのほど、有期労働契約法制に向けた具体的試案である「有期労働契約法制立法提言」と「労働者派遣法規制強化反対論に対する意見」をそれぞれ公表した。このうち「立法提言」では、有期労働契約への包括的な規制として、締結事由の厳格化や契約期間の上限(3年)などを盛り込んだ。また「反対論に対する意見」では、「派遣法の規制強化が就労機会の減少につながり失業をもたらす」などとする反対論に対して、労働者派遣制度が「間接雇用」「有期雇用」という二重の不安を抱える点で極めて問題があるとして、法規制強化の早期実現を要請した。

(有期労働契約法制立法提言)
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028c.html
(労働者派遣法規制強化反対論に対する意見)
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028a.html
(労働者派遣法規制強化反対論に対する意見(要旨))
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028b.html

2009年10月08日

派遣制度見直しを諮問、労政審を開催

http://www.zaikei.co.jp/article/biznews/091007/40644.html

 長妻昭厚生労働相は7日、労働行政を審議する労働政策審議会(諏訪康雄会長)に、労働者派遣法の改正を検討するよう諮問した。労働組合や経営者団体の代表らが意見を交わした。

 民主党、社民党、国民新党の与党3党が、製造業への派遣で登録型の派遣を原則禁止して、非正規労働者の雇用安定を図ることで合意をしていた。厚労相は製造業務への派遣禁止などより規制を強化した検討を求めており、雇用情勢の悪化で派遣労働者の雇い止めなどが多くなり、雇用環境が大きく変化したとの認識を示した。……


[関連ニュース]
労働者派遣法改正 協議始まる

2009年09月03日

地方最賃審答申状況、最賃平均713円に、前年度比10円上昇

■厚労省
 ∟●平成21年度の地域別最低賃金改正の答申状況について

 厚生労働省は1日、2009年度の地域別最低賃金改正の答申状況を発表した。各地方最低賃金審議会の答申によれば、45都道府県で時間額1~25円の引き上げ、2県(新潟・岐阜)は現行どおりとなり、全国加重平均は前年度比10円上昇の713円。最高額は東京の791円、最低額は佐賀、長崎、宮崎、沖縄の629円。今後、各都道府県で労使からの異議申出に関する手続きを経て、改訂を決定する予定。……

■(2009年度の地域別最低賃金額改定の目安/中央最低賃金審議会答申)
http://www.mhlw.go.jp/za/0828/a02/a02.html

2009年07月06日

労働者派遣法・3野党改正案について

全労連
 ∟●【見解】労働者派遣法・3野党改正案について

労働者派遣法・3野党改正案について

2009年6月24日
全労連幹事会

(1)6月22日、民主党、社民党と国民新党の野党3党は、労働者派遣法改正案の要綱で一致し、開会中の通常国会に改正法案を提出することで合意した。
 この間、全労連は「派遣切り」にあった労働者とともに、偽装請負や違法派遣が繰り返され、「生産調整」目的での雇止めが常態化した派遣労働の深刻な実態を告発し、派遣先・派遣元企業の雇用責任を追及するとともに、労働者派遣法の抜本改正を強く求めてきた。
 とりわけ、2008年秋以降のたたかいでは、製造業大企業で雇止めされた多くの労働者を全労連の組合員として迎え入れ、裁判や労働局申告、団体交渉や労働委員会申し立て、宣伝行動や要請行動など、現行法を最大限に利用した雇用確保のとりくみに全力をあげてきた。
 同時に、政府がきわめて不十分な労働者派遣法「改正」法案を昨秋、国会に提出したもとで、労働者派遣法の抜本改正の一点で、さまざまな労働組合や諸団体との共同したとりくみを強めるとともに、早期の抜本改正をめざし、すべての政党・国会議員への働きかけと意見一致に向けて努力してきた。


(2)そうした経過に照らせば、通常国会の会期末まで残り1ヶ月余の現時点でも野党共同の抜本改正案が国会に提出されていないこと、今回の合意が民主党、社民党、国民新党の3党のみの協議によるとりまとめとなったことには、不満を表明せざるを得ない。
 今後の全野党による協議や法案の取りまとめ作業、さらには国会審議を通じて、派遣労働者の無権利、低賃金、不安定な雇用の実態と、そこから生じている貧困や格差の解消などが期待できる、よりよい内容での労働者派遣法の抜本改正が今国会で実現されるよう強く求める。
 なお、すでに全労連は、2009年5月21日付の幹事会アピールで、抜本改正のためには「製造業への労働者派遣の禁止」、「登録型派遣の原則禁止」、「直接雇用みなし規定の創設」、「派遣先企業の労働者との均等待遇原則の明記」の4点が盛り込まれる必要があることを主張している。あらためて、その点を強調しておきたい。

(3)3野党案の内容は、(1)法案の目的に「派遣労働者の保護」を明記していること、(2)「直接雇用みなし規程」を創設していること、(3)情報公開や派遣先責任の強化、派遣先に対する罰則の導入など規制強化の方向にあること、(4)雇用保険の加入期間を現行より短縮していることなどの点は、政府提出法案の不十分さを補うものであり、全労連の求めているものにより近づいた内容として評価できる。

(4)しかし、なお、以下の点で、いっそう踏み込んだ検討が必要だと考える。


○ 一つは、製造業派遣に関してである。専門業務を除き製造業派遣を禁止するとしているが、ここにいう「専門業務」の内容は定かではない。このままでは、政令で「専門業務」を広範に認め、製造業派遣の禁止に大きな抜け穴ができはしないか、疑念を抱かざるを得ない。また、現行の26業務に加えて、製造業のみに独自の専門業務が追加されることになれば、現行26業務には派遣期間の制限がないので、条件付とはいえ、製造業派遣の期間制限をはずす結果になるのではないか、現在でも多くの問題が指摘される専門業務の範囲をさらに拡大することにつながりはしないか、ということが懸念される。社会問題となっている製造業派遣の禁止が担保される必要がある。
○ 二つは、日雇い派遣に関してである。派遣元との2ヶ月以下の雇用契約を禁止することで、日雇い派遣を禁止するという内容となっている。しかし、派遣元との関係のみでは、日雇い派遣の規制は不十分ではないのか。例えば、2ヶ月と1日の雇用契約を結べば、政府案と同様に、日々派遣・スポット派遣等も可能と考えられる。日雇い派遣や登録型派遣の原則禁止が担保される必要がある。
○ 三つに、一般派遣事業について、専門26業務以外は派遣元が常用雇用する労働者に限定することとされていることに関してである。現行法にいう「常時雇用」の概念も曖昧といわざるを得ないが、言葉の定義を明確化して、日々派遣先が変わるような不安定な就労形態を規制し、雇用の安定を確保する内容とすべきである。
○ 四つに、均等待遇原則についてである。派遣元、派遣先の努力義務の規程となっているが、現状の派遣労働の実態を踏まえれば、不十分ではないのか。義務規程として、実効性を担保すべきである。

(5)今後の協議・検討を通じて、派遣労働者の置かれた劣悪な実態を改善できる改正案が取りまとめられ、労働者派遣法の抜本改正が今国会で実現されねばならない。全労連はあらためて、すべての政党・国会議員に、いっそうの尽力を強く要請するものである。

以上


2009年05月27日

厚労省分割、唐突な首相指示への反発や批判も

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090527k0000m010079000c.html?link_id=RSH04

 麻生太郎首相が指示した厚生労働省の分割・再編を巡る調整が本格化し、26日には関係6閣僚が再編のあり方などを協議した。首相は6月にまとめる「骨太の方針」や与党マニフェストに盛り込む意向で、29日の経済財政諮問会議に提示することを目指しているが、政府・与党内には唐突な首相指示への反発や分割案への批判が強まっている。……

[関連ニュース]
厚労省分割に舛添氏異論 難航も、28日再協議
与党、官邸「独走」に募る不満=厚労省分割、先行き不透明
政府、厚労省分割で協議=舛添氏「拙速回避を」
厚労省分割再編めぐる取りまとめ案検討 舛添厚労相「拙速にやるべきではない」

2009年05月26日

厚労省の分割、週内に素案取りまとめへ

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090525-OYT1T00372.htm?from=navr

 河村官房長官、与謝野財務・金融・経済財政相、甘利行政改革相は25日午前、麻生首相が指示した厚生労働省の分割などについて首相官邸で協議し、舛添厚生労働相や小渕少子化相ら関係閣僚とも調整した上で、週内にも素案をまとめることで一致した。……

[関連ニュース]
厚労省分割案、25日から調整本格化 水面下で駆け引きも

2009年04月02日

厚労省、労働者派遣法 派遣元・先指針の改正について

厚労省、派遣元・先指針の改正について(平成21年3月31日(火))

派遣元・先指針の改正について

 労働者派遣契約(以下「派遣契約」という。)の中途解除に伴う派遣労働者の解雇、雇止め等に適切に対処するため、昨日の労働政策審議会の答申を踏まえ、派遣元・先指針を改正することとし、本日、改正指針が公布され、適用されたところである(注)。
 改正の内容は、
(1) 派遣契約の中途解除に当たって、派遣元事業主は、まず休業等により雇用を維持するとともに、休業手当の支払い等の責任を果たすこと
(2) 派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約を中途解除する場合は、休業等により生じた派遣元事業主の損害を賠償しなければならないこと
(3) 派遣契約の締結時に、派遣契約に(2)の事項を定めること
等である。
 厚生労働省としては、今後、派遣元事業主及び派遣先が派遣契約の中途解除に際し適切に対処することとなるよう、改正指針に基づく周知啓発や的確な指導監督を進めることとしている。

(注)「派遣元・先指針」とは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)第47条の3に基づく、次の2本の指針のこと。
・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)
・派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)

~資料~
別添1 改正指針の要綱
別添2 派遣会社の事業所の皆様へ(リーフレット)
別添3 派遣先の事業所の皆様へ(リーフレット)

労働者派遣法の抜本改正を先送りしてはならない
-派遣契約の中途解除に係る指針の改定にあたっての談話-

 厚生労働省は、3月31日付けで、「労働者派遣法」にもとづく派遣先及び派遣元が講ずべき指針に関して、派遣契約の中途解除に係る部分の改定を明らかにした。この改定は「派遣切り」が相次ぐもとで明らかになってきた問題の一部に対処するものではあるが、とても抜本的、根本的な問題解決策となってはいない。そればかりか、損害を賠償すれば「派遣切り」は自由という風潮を助長しかねないことさえ懸念される。改めて、労働者派遣法を抜本改正し、労働者保護の法制度に改正するよう強く求める。

 指針改定の具体的内容は、派遣契約の中途解除に際し、派遣先企業と派遣元企業に求める雇用維持等についての指導基準をしめしたものである。中途解約を行う場合の派遣先企業の責任として、「新たな就業先の確保」ないし「休業手当、解雇予告手当等の額の倍以上の損害の賠償」を派遣契約の段階から盛り込み、中途解約時の履行を求めている。また、派遣元に対しては前記内容での契約を派遣先に求めるとともに、「他の派遣先のあっせん」ないし「休業手当の支払い責任の履行、労働契約法の遵守、解雇予告手当ての支払い」を求めている。

 厚生労働省が3月31日に発表した「労働者派遣契約の中途解除に係る対象労働者の雇用状況について」では、中途解除後、派遣先もしくは派遣元企業のあっせん等で雇用が継続できた労働者は、調査対象の1割でしかない。しかも、契約解除から派遣期間終了日までの残期間が3ヶ月以上あるものが5割をこえている。
 同日発表された「非正規労働者の雇止め等の状況について(3月報告:速報)」では、派遣労働者の46%が中途解除されており、批判が高まっているにもかかわらず、派遣労働者を「雇用の調整弁」として使い捨てにする企業の経営姿勢はほとんど改まっていない。

 昨秋以降の製造業大企業での「派遣切り」で明らかになったのは、事業法としての「労働者派遣法」の構造的欠陥であり、労働者を部品のように扱う企業の理不尽さであった。
 この間、そのような実態にも目を向けて、政府部内からも製造業派遣禁止を求める声も上がってきている。そのこともふまえれば、労働者派遣法の抜本改正は政治の緊急の役割になっている。
 小手先の指針改正にとどめず、労働者派遣法改正に向けた与野党の努力と、今国会中の抜本改正実現を強く求める。

2009年3月31日

全国労働組合総連合
事務局長  小田川 義和