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 カテゴリー 2013年07月

2013年07月31日

サイト紹介、野中教授「名誉棄損」不当提訴事件-学問研究と表現の自由を守る会のブログ-

学問研究と表現の自由を守る会のブログ

APFファンド・昭和HD経営者による 学問の自由の侵害・恫喝訴訟を許すな!
野中教授「名誉棄損」不当提訴事件への支援をお願いします


 2012年7月、APFファンドによって支配された昭和ホールディングス(昭和HD)の経営者3名が、野中郁江明治大学教授を、論文「不公正ファイナンスと昭和ゴム事件問われる証券市場規制の機能まひ」(雑誌『経済』189号)および昭和ゴム労働組合からの依頼を受けて執筆し東京都労働委員会に提出した鑑定意見書の記述をとりあげ、名誉を毀損されたとして東京地裁に提訴するという事件が起こりました。5500万円という巨額な損害賠償と掲載雑誌への謝罪掲載を求めています。
 問題とする箇所について根拠を示して反論を行うという手続きもふまず、編集権をもつ出版社を訴訟の相手ともせずに、突然に研究者個人に対して多額の賠償金を求める裁判を起こすこと自体、表現の自由、学問の自由を侵害し、民主主義社会を脅かす暴挙です。
 私たちは、APFファンド・昭和HD経営者の不当な提訴を断固として退け、野中教授の研究活動を支え、学術研究と表現の自由を守るために、力を寄せ合うことを呼びかけます。

ファンドの狙いは昭和ゴムの財産?!
ゴム事業に関心なく、不当労働行為を繰り返す


昭和ゴム事件とは
 昭和ゴム㈱は創業1932年、東証2部上場の企業であり、かつては明治製菓グループ傘下の名門企業でした。ところが、2000年以来いくつかのファンドが昭和ゴムを支配し、会社の財産と信用力が失われてきました。
 アジア各国に展開する投資グループAPFは、2008年6月子会社名義で昭和ゴムの第三者割当増資12億4500万円を引受けて、昭和ゴム(その後子会社に分割して昭和HDとなる)の支配権を得ました。
 7~10月の4か月間に、タイにあるAPFの関連子会社2社のPN(プロミサリーノート)27億円を購入するとして資金を流出させました。このPNは譲渡不能であり、貸付の念書のようなものです。
 2010年6月証券取引等監視委員会は、昭和HDに対して架空増資、偽計取引嫌疑により強制調査を行いました。
 その後、APFの関連子会社からは、一定額の返済はなされますが、ほどなく原告の保有株式を購入させられるなど、現金で返済された金額は27億円のうち5億数千万円にすぎません。依然として、事業部門で働く労働者の生活と雇用の不安は続いています。

研究者個人への恫喝による
言論封殺が裁判の目的

 本提訴は、原告の側に提訴の根拠自体が存在せず、言論封殺それ自体が目的であるスラップ(SLAPP)訴訟です。
 スラップ訴訟とは、企業などが自らの不法行為を取り上げ取材活動しているジャーナリストや弁護士、公共団体等に対し名誉毀損で巨額の賠償金を請求する裁判のことです。言論封殺を目的に恫喝・威圧的裁判として行われるためアメリカでは禁止する州もあります。日本では武富士、幸福の科学、読売新聞事件などが有名ですが、論文を掲載した出版社でなく研究者個人を標的にしたものはこれが初めてといえます。

雑誌に発表した学術論文への
不当な攻撃

 野中教授は会社が公表したIR資料、有価証券報告書などの客観的資料に基づき、複雑なファンドの経営実態を解明、「不公正ファイナンスとは何か」、「APFが昭和ゴムを支配し資金を流出させた経緯」を詳細に論述しています。論文は違法状態を排除するための制度の枠組みの現状と課題を取り上げたもので、名誉棄損と指摘する表現行為部分をも含めて、「公共の利害に関する事実」について「専ら公益を図る目的」で発表されたものであり、まったく訴えられるような内容ではありません。

不当労働行為を隠ぺいするために
都労委「鑑定書」を攻撃

 APFファンドによる企業支配に苦しんでいた昭和ゴム労働組合等は、東京都労働委員会に申立てていた不当労働行為救済申立事件の本質と全容を明らかにするため、野中教授に都労委へ鑑定書を依頼。2011年11月16日付鑑定書「アジア・パートナーシップ・ファンド(APF)がもたらした昭和ゴムの経営困難について」は、会計・経営分析の専門家の立場から、昭和ゴム労働組合が抱いている生活や雇用への不安が、APF経営者のもとで行われた巨額な資金流出や虚偽の情報開示にその根拠があることを明らかにしたものでした。

焦点は念書にすぎないプロミサリーノートを
原告は社債と主張していること

 昭和HDの有価証券報告書において原告は「27億円のプロミサリーノートを購入した」と開示してきました。ところが裁判ではこれを「社債であり、正当な投資である」と主張しています。しかし社債の英語はボンドであり、プロミサリーノートではありません。追い詰められた原告は、社債の証拠提出を求められて拒否する始末。原告の主張には全く根拠がないことが明らかになっています。

 野中弁護団は、論文と鑑定書で指摘されている記述がいずれも「真実にもとづく事実」と、「真実にもとづく前提事実にもとづく意見」であり、名誉毀損は根拠のないいいがかりであることを立証した準備書面を提出し、全面対決する方針で闘っています。

APFファンド・昭和HD経営者による不当提訴を許さず、
学問研究と表現の自由を守る会

[連絡先]全労連・全国一般東京地本 TEL:03-3668-5542FAX:03-3668-5544
人形町書記局センター〒103-0033東京都中央区日本橋人形町3-7-13-103
TEL:03-5847-0241FAX:03-5847-0240

2013年07月29日

常葉学園、不正受給を認める 今月中文科省に正式報告へ

■東京新聞(2013年7月29日)

 常葉大短期大学部(静岡市葵区)が国の補助金を不正受給したとして同学部の男性准教授が内部告発した問題で、大学を運営する常葉学園本部が文部科学省に不正受給を認めたことが、文科省などへの取材で分かった。学園本部は七月中にも、事実関係や再発防止策を公表する。
 告発によると、同学部は常葉学園短大だった二〇〇二~〇四年、週七回のコンピュータ一関連の授業をしたのは助手だったのに元教授が行っていたと偽って文科省に申請。三年間で少なくとも三百六十万円の補助金を受け取ったとされる。学園本部は今年二月に外部識者らで構成する調査委員会を設け、五月十七日に事実関係をまとめた報告書を理事長に提出した。
 文科省や大学関係者によると、報告書の提出後、学園本部の担当者が同省を訪れ「教授は授業をやっていなかった。補助金の不正受給があった」と認めた。ただ正式な文書での報告はしていないため、学園本部は今月中告するとみられる。
 助手は二月の調査委で、元教授は初回の授業に顔を出しただけで自らが授業を担当したと説明。元教授も授業をしていないことを認めたが、助手から報告を受けていたので問題とないとの認識を示していた。
 学園本部の担当者は本紙に「記者会見で事実関係をすべてお話しする」と話している。

天使大学不当労働行為事件、地労委命令 救済とポストノーチスを求める

北海道
 ∟●北海道労働委員会・最近の命令

■ 平成25年に交付した命令

 ○ 天使大学事件(平成23年道委不第31号) 新規

 組合は法人に対し、組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規定等の改定を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、法人は団体交渉事項に該当しないなどとして、団体交渉を拒否した。また、法人は組合の空き室利用について、その使用許可を理事長決裁として、他の団体に対するよりも重い要件を課した。
  これらが不当労働行為であるとして申立てがあった。
  さらに、学長が教授会の意見を聞いて組合代表者を法人が設置する天使大学の教務部長に推薦したにもかかわらず、法人は、同人が組合の代表であることを理由として、教務部長に任命することを拒否したことが、不当労働行為であるとして追加申立てがあった。
 当委員会は、これら申立ての一部について救済を命じました。

※ 参考 本件審査の状況
    救済申立日
当初申立て 平成23年12月26日
     追加申立て 平成24年 4月 6日
    命令交付日  平成25年 7月24日

  PDFアイコン 命令書概要版(PDF形式 145KB
  PDFアイコン 命令書全文・記号版(PDF形式 304KB) 

平成23年道委不第31号天使学園不当労働行為事件命令書(概要)

1 当事者
 (1)申立人  天使大学教職員組合(以下「組合」という。)
 (2)被申立人  学校法人天使学園(以下「法人」という。)

2 事案の概要
(1)組合は、法人に対し、組合員に対するハラスメント事案に関して、配置転換など労  働環境調整義務の履行を求めて団体交渉の申入れを行ったが、法人は「団体交渉事項には該当しない」としてこれを拒否し、その後開催された団体交渉においても、法人は、同様の主張をするほか、「守秘義務の関係で団体交渉には応じられない」などとして、団体交渉を拒否した。
 また、組合は、法人に対し、懲戒委員会規程などの改定について、その再改正を求めて団体交渉の申入れを行ったが、法人は、団体交渉において、「各規程改定については経営権の問題なので団体交渉事項には当たらない」などとして、団体交渉を拒否した。
 法人は、組合の空き室使用について、その使用許可を理事長決裁として、他の団体に対するよりも重い要件を課して、組合の運営事項に対する支配介入をした。
 これらの法人の行為は、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして申立てがなされた。

(2)教授会の承認を得た上で、学長が組合の代表者を教務部長とする推薦を理事会に行 ったところ、理事会は、役員選任を投票により決めることとし、組合代表者について、賛成4票、反対2票、白票3票という結果等により、法人は、同人が組合の代表であることを理由として、教務部長に任命することを拒否した(以下「本件任命拒否」という。)。
 この法人の行為が、組合員に対する不利益取扱いであり、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとして追加申立てがなされた。
(3)以上のほか、法人は、組合は、組合員に人事権を持ち経営上の機密に触れる教授を構成員としており、労組法上の労働組合に該当しない旨主張した。

3 主文要旨
 (1)法人は、組合が申し入れた組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規程等の改定を交渉事項とする団体交渉において、それらが団体交渉の対象にはならないとするなど自らの主張に固執することなく、要求事項に対して自らの見解の内容や根拠を具体的かつ明確に示して組合の納得を得るよう努力して、団体交渉に誠実に応じなければならない。

 (2)法人は、上記(1)の行為が不当労働行為であると認定されたので今後繰り返さないようにする趣旨の文を縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載して、法人の学内公用掲示板に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。

4 判断要旨
(1)組合は、労組法上の救済適格を有するか否か。(争点5)
 ア 法人は、組合が労組法第2条ただし書第1号に該当して自主性要件を欠くから、労組法の労働組合ではないと主張するので、まず、この点について検討する。
 同号の趣旨は、労働組合の自主性確保の見地から、使用者の利益代表者を参加させてはならないとするものであり、その解釈に当たっては、当該労働組合の自主性が確保されるか否かとの見地から実質的に判断されるべきである。
 イ 法人は、天使大学(以下「大学」という。)の教授は、「雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」(労組法第2条ただし書第1号)に該当すると主張する。ここで「直接の権限を持つ」者とは、労働者の地位身分を決定変更する事項について、直接決定する権限をもつ者のことであり、人事権限を有するとしても、それが間接的なものにとどまる者は「直接の権限を持つ者」とは言えず、これに該当しない。
 大学の教授は教員の採用及び昇任手続に関して、特別教授会の構成員として、その特別教授会の議に参加する立場にあるが、それは理事会の議決に当たりその意見形成に間接的に関与するものにとどまるのであって、かかる特別教授会の構成員であることをもって、上記の「直接の権限を持つ」者とは認めることができない。
 また法人は、大学の教授は、「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者」(労組法第2条ただし書第1号)に該当すると主張する。しかし、大学の教授が、教員の採用及び昇任手続において候補者の評価、教員の勤務評定等に関する機密の事項に接し、また特別教授会の構成員として、その特別教授会の議に参加するとしても、各教授自身が、法人の人事管理、労務管理の計画と方針の決定に関与する機会を有するものではなく、このような教授会の職務権限からは、その職務上の義務と責任が組合員としての誠意と責任とに直接抵触する者に当たると認めることはできない。
 法人は、教授として自らの専門領域の准教授その他の教職員の監督的地位にあることはいうまでもないとも主張するが、それは労働者としての教職員に対する法人の業務遂行上及び労務管理上も当然に監督的地位にあることを意味しない。
 以上のとおりであるから、争点5に関する法人の主張は認められない。

(2)組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行要求につき、これを団体交渉事項ではないなどとした法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか否か。(争点1)
 ア 一般的に、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係  の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものについては、義務的団交事項であるということができる。組合員である労働者の労働の環境等も原則として労働条件に該当するということができることから、本件団交申入れの議題である労働環境調整義務の履行については、義務的団交事項であると認めることができる。
 法人は、個別具体的な労働者の問題について、個別の苦情処理手続が設置されている場合には同手続によって処理されるべきであり、法人にはハラスメント調査・解決のための手続が存在しているのであるから、団体交渉において個別的な権利主張を取り上げる必要はないと主張する。
 個別的労働条件に関する事項について、労働協約に基づき労働組合の関与する苦情処理等の別段の手続に委ねることとし、当該事項を団体交渉事項から除外している場合には、そのような取扱いは、団体交渉権保障の趣旨に反しない限りは、許容されるということができる。
 しかし、本件においては上記のような労使協議もなされておらず、法人のバラスメント調査・解決のための手続は、団体交渉の代わりとなる手続と認めることはできないといわざるを得ないことから、同手続があること自体をもって団体交渉を拒否する正当理由にはならない。したがって、法人の上記主張は認められない。

イ 使用者は、団体交渉において、合意達成や譲歩を義務付けられるものではないが、団体交渉を実効的なものにするため、誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務がある。すなわち、使用者は、合意を達成するよう自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならない。具体的には、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務がある。このような義務を果たすことなく、使用者が自己の主張に固執することは、誠意ある交渉態度とはいえず、実質的に団体交渉を拒否したものというべきである。
 法人としては、プライバシー保護に配慮しつつも、X1が主張する職場環境の悪化の具体的な内容を確認するとともに、研究室の移動や配置転換など何らかの対応が必要なのかどうか、何らかの対応や提案が検討できないかどうかなどについて組合と団体交渉において協議し、自己の主張を組合に納得してもらうための努力が必要であったと認められるが、法人は、労働問題と認めないとの主張に固執した態度に終始したといわざるを得ない。また、X2に関する事案についても、解決案が示されてから2か月が経過しており、ハラスメント事案の性質やハラスメント規程においても調査報告の期間も設けられていることからすると、早期の解決案の実施が求められていたということができることから、法人としては解決案の早期実施ができない事情を十分に説明し、その実施目途を含めて、組合の理解を得るための努力が必要であったと認められるが、それが行われず、かえって人事のことも含み経営権にかかわる問題で団体交渉の対象にはならないと回答した。以上のような法人の交渉態度は誠意あるものとは認められないことから、上記のとおり、実質的に団体交渉を拒否したものといわざるを得ない。
 したがって、争点1に係る法人の対応は、法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(3)新ハラスメント規程及び新懲戒委員会規程の改定要求につき、規約改定については経営事項であることなどを理由に、団体交渉事項ではないとした法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか否か。(争点2)
 ア 法人は、旧ハラスメント規程及び旧懲戒委員会規程の改定について、私立学校法改正の趣旨に沿って権限と責任の所在を統一し、懲戒委員会の構成、委員長の選任方法を変更したものに過ぎず、組合員の人事の基準(理由ないし要件)や手続(組合との協議、同意など)を変更したものではなく、労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項には該当しないから、ハラスメント規程及び懲戒委員会規程の改定は義務的団交事項に当たらないと主張する。
 就業規則は、懲戒に関する取扱いについては、懲戒委員会その他の必要事項を別に定めると規定し、これを受けて設けられたのが懲戒委員会規程である。懲戒委員会規程は、懲戒の手続、委員会の構成及び選出区分、委員会の成立・議決などの重要事項を規定しており、懲戒委員会規程は労働条件その他の待遇に関する事項を規定しているということができ、また、ハラスメント規程についても同様であると認められることから、両規程の改定問題は義務的団交事項に該当すると認められる。

 イ 法人は、2回の団体交渉において、懲戒委員会規程の改正の経過等について、一応の説明を行っていることが認められる。 しかし、組合側に説明のないままに改定されているとの指摘や、規程の見直しを求める組合の要求に対しては、団体交渉の対象にはならないとしてそれ以上の協議に応じず、組合に対して規程改正に関する説明等を行う手続を取らなかった理由、懲戒委員会の委員における理事の人数などについて法人が検討したとする内容の詳細、理事会における議論の内容、理事会が事案ごとに適切に選ぶとしている委員の人選の基準を説明したり、組合の要求に応じられない具体的理由を示すなど、その理解を得るための努力がなされているとは認められない。このような法人の交渉態度は誠実なものとは認められず、争点2に係る法人の対応は、実質的な団体交渉拒否に該当し、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(4)組合の空き室利用につき、法人がその利用許可を理事長決裁として、他団体より重い要件を課したことが、組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。(争点3)
 組合は、空き室利用許可申請の決裁が、外部団体を含む他団体に対しては事務局長決裁としながら、組合に対してのみ理事長決裁を要するとする法人の対応は、他団体に比して不利益に扱うことになるので、組合の運営に対する支配介入に当たると主張する。
 しかし、法人の具体的な施設管理権の行使の事実が認められない状況のもとで、許可申請書の決裁権者が事務局長か、理事長とされているかという事実だけでは、使用者の組合運営に対する干渉又は弱体化行為であるとまでは評価することができないというべきである。
 したがって、争点3に関する組合の主張は認められず、その請求を棄却するのが相当である。

(5)教授会の承認を得た上で、学長が組合代表者を教務部長とする推薦を理事会に行ったにもかかわらず、理事長が白票の扱いを恣意的に運用するなどして理事会が本件任命拒否をしたことが、組合員への不利益取扱いに該当するか否か。(争点4)
 ア 本件において、組合代表者が組合活動の中心にいたことに争いはなく、教務部長という特定の職制に選考しないということは人事上の不利益取扱いであるということができる。
 そこで以下において、組合が主張する本件任命拒否が、組合代表者が組合員であることないし組合活動を理由として行われたと認められるかどうかを検討する。
イ 組合は、旧選考規程当時、学長が上申した選考結果を理事長が任命拒否した事実がないこと、新年度職制の選考に当たり過去に行われたことのない投票が行われたことなどを指摘し、あたかも投票で否決されたかのように振る舞う理事長の態度からは、恣意的に組合代表者を排除しようとする意図が推認できると主張する。
 新年度職制の選考手続に当たっては、学長の推薦手続及び教授会等の意見聴取手続が、新選考規程に従ってなされていることは明らかである。そして、新選考規程によれば、新年度職制の選考議案は、理事会の審議事項であるとされている。
 新選考規程が「理事長は理事会の議に基づき任命する。」と規定する趣旨は、合議体である理事会の審議に付すことを意味すると解するのが相当であり、したがって、合議体の審議の結果には拘束力があることになる。
 したがって、規定上は理事会の議決がなされることが予定されているということができ、職制の選考に当たり投票を行うことにより理事会の議決を行うことも認められているといわざるを得ない。旧選考規程では、教務部長は学長が指名し学部教授会で選考するとしていたことから、理事会はその選考に関与しておらず、学長が選考による結果に基づく上申を理事長に行った際に、理事長がこれを拒否した事例がないことも、投票を否定する理由とはならない。そして、組合は職制の選考に当たって投票によったことはないと主張するが、新年度職制の選考は新選考規程での最初の選考手続であり、これまで投票がなされていなかったことをもって、投票によったことを問題とすることはできない。
 また、理事会において理事の意見交換もなされる一方、組合代表者が教務部長としては不適切であるとか、組合員であるなどといった発言は、理事会において一切なされていない。
 組合は、白票は保留であり、保留票とは「意思決定を賛否明らかな投票結果に委ねる」という趣旨であると主張するが、証拠上、理事会においてそのような理事の意見が出されたとか、白票をそのように取り扱うと理事会で決めたという事実は認められない。寄附行為の条項からは、表決の際に議場に在って表決権を有する者の数を基礎に、その過半数を要すると解するのが相当であり、組合の主張は証拠上はもとより、寄附行為の条項の解釈としても認め難いものといわざるを得ない。
 以上によると、教務部長として推薦された組合代表者、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)の各候補者は、投票の結果、出席した理事の過半数の賛成を得ることはできなかったと認めるのが相当であり、組合が主張するような恣意的に組合代表者を排除する意図を推認することはできない。

ウ 監事及び理事からの発言を受けて、理事会で議論がなされた結果、投票によって決まらなかった教務部長、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)については、学長と理事長との協議の結果に一任し、その結果を理事会に報告することになったが、この点に関して、組合は、協議の意味について、組合代表者については否決されて、それ以外の者から誰を人選するのかを協議するという意味ではあり得ないと主張する。 しかし、証拠上、白票が反対ではなく保留としてその意思決定を賛否明らかな投票結果に委ねた趣旨であると理事会で決めたと認めることはできない。教務部長を除く2職制については、賛成1票、反対4票、白票4票であったのであるから明らかに理事会において否決されたと認めざるを得ず、教務部長候補の組合代表者も理事会において否決されたと認定するのが相当である。その上で、前記監事と理事の発言も受けて、この3職制について、教学と経営側で十分協議を行うのが望ましいとの理事会の意向から、理事長と学長の協議に委ねられたと認定するのが相当である。
 組合は、上記主張を前提に、「理事長は協議となった意味を全く無視して、その3名については既に否決されているとして、3名以外の者からの人選に固執して、結局それを押し通した」と主張する。そして、「協議となった経緯を全く無視し、協議で検討すべきとされた人選を無視した人選を行った理事長の態度からは、明らかに恣意的に組合代表者を排除しようとする意図が推認できる」と主張する。
 しかし、上記のとおり、組合の主張の前提となる事実が証拠上認め難く、理事会において上記3候補者が否決されたと認めるのが相当であることからすると、組合のこの主張は前提を欠き、理事長が恣意的に組合代表者を排除しようとする意図を有していたと推認することはできない。
 理事長が上記意図を有していたことや、教務部長候補者として学長が推薦した組合代表者を支持することなく、理事長が他の候補者を推した行為が、組合代表者が組合員であること、若しくは労働組合の正当な行為をしたことを理由とするものであることが立証されたとは認め難い。
 また、理事会は、保留とされた教務部長、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)について、理事長と学長間の協議に委ね、最終的に理事長案が理事会に報告されてこれを承認しているが、上記判断からすると合議体である理事会の当該判断についても不当労働行為としての不利益取扱いであるとは証拠上認め難い。
 したがって、本件任命拒否をもって、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するということはできない。

5 審査の経過(調査9回、審問2回)
 (1)申立年月日   平成23年12月26日
  追加申立て   平成24年4月6日
 (2)合議年月日   平成25年6月17日、平成25年6月28日、平成25年7月12日
 (3)命令書(写し)交付年月日  平成25年7月24日


上位10大学に100億円補助か…世界大学ランキング国内大学の順位

リセマム(2013年7月29日)

 文部科学省は4月にまとめた「人材力強化のための教育改革プラン」の「産業競争力強化のための国立大学改革」において、秋入学や外国人積極採用、英語による授業などを進め「世界大学ランキングトップ100に10校、国際的存在感を増大」するとしている。

 また自民党は参議院選挙公約において、今後10年間で世界大学ランキングトップ100に日本の大学が10校以上入ることを目指し、大学のガバナンス改革、大学経営基盤の強化、教育・研究の高度化、外国人教師の増強を推進することを掲げている。

 7月29日には、文部科学省が世界ランク入りを支援するために、10大学に対して100億円補助することを2014年度予算の概算要求に盛り込むとの報道もあり、Twitterなどで話題になっている。

 これに対して文部科学省では、「概算要求に盛り込もうと、現在、教育再生実行会議で提言に盛り込んでいる段階で、まだ来年度の概算要求に入れたわけではない」としており、100億円という金額についても決まっていないとしている。

 文科省は、これまでも外国人教員の積極採用や、海外大学との連携、英語による授業のみで卒業可能な学位課程の拡充など、国際化を断行する「スーパーグローバル大学」(仮称)を重点的に支援するとしており、今回の100億円補助もその動きの一つと考えられるだろう。

 ではこの世界大学ランキングとはどのようなものなのか、また国内大学のランキングはどうなっているのだろうか。

 世界大学ランキングは、世界中の高等教育機関をさまざまな指標により評価し、ランキングとして定期定期に発表されているもの。英クアクアレリ・シモンズ社の「QS世界大学ランキング(QS)」、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング(THE)」、上海交通大学の「世界大学学術ランキング(ARWU)」が主要3ランキングとされている。

 最新の、国内上位大学のランキングは以下のようになっている。

◆THE世界大学ランキング(THE)2012-13
27位 東京大学
54位 京都大学
128位 東京工業大学
137位 東北大学
147位 大阪大学

◆世界大学学術ランキング(ARWU)2012
20位 東京大学
26位 京都大学
83位 大阪大学
96位 名古屋大学
101-150位 北海道大学

◆QS世界大学ランキング(QS)2012
30位 東京大学
35位 京都大学
50位 大阪大学
65位 東京工業大学
75位 東北大学

 なお、国内大学が数多くランキング上位に入っている「QSアジア大学ランキング2013」の国内上位10大学は、下記の結果となっている。

◆QSアジア大学ランキング2013
(1)9位 東京大学
(2)10位 京都大学
(3)13位 東京工業大学
(4)15位 大阪大学
(5)17位 東北大学
(6)18位 名古屋大学
(7)20位 九州大学
(8)24位 北海道大学
(9)32位 慶應義塾大学
(10)34位 筑波大学


[同ニュース]
大学世界ランク入り支援、10校100億円補助

2013年07月25日

北海道教育大学釧路校教授会、本間学長の辞任を求める

釧路新聞(2013年07月24日)
 ∟●学長の辞任求める/道教育大教授会

学長の辞任求める/道教育大教授会

  道教育大学釧路校(今泉博副学長)は、19日に教授会を開き、本間謙二学長が、今年3月に各校で開催した学位記等授与式式辞の内容の出典先を明らかにせず、テレビ番組の内容をまねた疑いがあることを問題視し、学長辞任を求める決議を採択した。同教授会は22日に決議文を同大学本部などに送付した。

道教大釧路校:学長辞任求め、教授会が決議

毎日新聞 7月24日(水)11時40分配信

 北海道教育大釧路校は23日、教授会で本間謙二学長の辞任を求める決議を可決したと発表した。

 同校の今泉博副学長によると、本間学長は今年3月、卒業式の式辞で、テレビ番組の内容を自分の意見のように話し、「剽窃(ひょうせつ)(盗用)の疑いがある」という。教授会は調査委員会の設置も求めている。

 19日に開かれた同校教授会には、40人余りが出席。反対意見も出たが、多数決で決議した。今年6月の学長選考会議で同校教授会は本間学長の再々任に反対していた。

 今泉副学長は「教授会の決議は重い。学術倫理規範を維持するためにも(盗用は)あってはならないこと」と話している。【近藤卓資】

【関連ニュース】

現学長の再任反対/道教育大釧路校教授会

釧路新聞(2013年06月04日)

  北海道教育大(本間謙二学長)の再編計画で、釧路校の地域教育開発専攻の廃止などを打ち出している現学長の再任ついて、同大釧路校の教授会は3日、臨時教授会で反対を全会一致で決議した。この専攻課程は地域特性を生かした教員を養成する釧路校の目玉だが、今後の再編で廃止される可能性が出ている。将来的に釧路校の規模縮小にもつながる恐れもあることから、同校は今後、地域と連携して存続を強く訴えていく考え。


2013年07月24日

名古屋女子大学、気にくわない先生たちを隔離しておく「追い出し部屋」

森本毅郎・スタンバイ!
 ∟●企業だけじゃない! 先生たちの追い出し部屋(2013年07月23日)

企業だけじゃない! 先生たちの追い出し部屋

担当:岡島知世

選挙でアベノミクスが認められたという政治家もいますが、
一方で雇用問題は改善していません。
これから雇用は改善されるのかという声も出ていますが、
実際「ブラック企業」や「追い出し部屋」といった企業で働く人の
労働問題は依然あります。
きょうはその「追い出し部屋」のお話。
「追い出し部屋」といえば、会社が辞めて欲しい社員を自己都合にみせかけて
退職に追い込むために隔離する部屋。
これまでは、大企業で行われていた追い出し部屋の問題が騒がれていましたが、
実は企業ではなく、学校にも企業と同じような先生を追い出すための部屋があると、
7月に入って一部でニュースにもなりました。
全国の小中高校の私立の先生からなる教職員組合の永島民男さんのお話。

   企業では最近追い出し部屋の話がマスコミで色々と言われていますけど、
   学校、特に私立大学や私立高校の中で、追い出し部屋に相当するような
   隔離部屋がある。
   職員室のひとつなんですけども、皆さんの集まっている職員室とは別に
   小さな職員室を与えて、そこに気にくわない先生とか色々と意見を言う先生を
   入れておくというか、まさに隔離しておくような隔離部屋が
   色々と問題になってきています。

なかでも「私立の高校」「理事会が強い学校」に、
こうした追い出し部屋の問題が多いということ。
学校は、現場で「子どものためにはこっちが良い」という意見を言う現場主義の先生は煙たい。
でも、学校側はそれを理由に先生をリストラすれば、裁判沙汰にもなりうるのでクビにし辛い。
だから、物言う先生を隔離して意見を言わせない状況にして、最終的に追い出す狙いがあるのです。
実際に、こうした追い出し部屋に入れられ、職を追われた元大学教授にお話を伺いました。

   私の場合、理事会の方が大学の資産運用をどうも失敗しているらしい
   というようなことを組合で追求していました。
   そうしましたところ、事実上、追い出し部屋「教職員研修室」への
   異動が命じられ、あまり教員にとって意味があるとは思えない
   仕事ばかりさせられてきました。
   朝出勤しますと何時に会議室に来いっていうような命令書が
   突然メールボックスに入っていて、
   今からこれを解けって言われたのが、漢検の問題だったりしたんです。
   そういった呼び出しを食らう度に、おなかの調子が悪くなり、それが嫌でした。

「教職員研修室」というのが、事実上の追い出し部屋でした。
この方は日本語の授業を教えていた教授でしたので、漢字検定の問題を解いたり、
他の教授の授業を見てレポートを書いたり、
さらに「パワハラはダメ」という校内用の書類作成等をさせられていたわけです。

追い出し部屋に異動になった理由について、
大学からは生徒の授業評価アンケートが悪いからとされましたが、
元教授は組合活動が原因と考えています。

この方は20年大学に勤めていましたが、ある日追い出し部屋に異動、
その後、解雇になっています。
では追い出し部屋、いったいどんな環境だったのか、再び元大学教授のお話です。

   私が入れられていた教職員研修室といっても、部屋ではありませんで、
   事務室の一角に机が設けられていまして、
   そこが「教職員研修室」って言われていました。
   そこの横のところがトイレに行く通路ですので、
   そこを通る人は、事務の人、あるいは外から出入りする工事の人も
   簡単に私が何をしているのかというようなことが見えるわけです。
   完全なさらし者にされていた、と言って良いかと思います。
   私自身はその攻撃が始まったときが学園に勤めはじめて
   20年経ったときだったのですけど、
   20年間のいままでの貢献に対する答えがこれなのか、
   と非常に悔しい気持ちになりました。


追い出し部屋への異動や解雇の理由について、
元教授が勤めていた大学に取材を申し入れたのですが、
「そういったたぐいのことは一切受けられない」として取材を受けてもらえませんでした。
こうして企業や学校でも広がる追い出し部屋ですが、
働く人たちは、この追い出し部屋をどう思うのか、街頭で伺いました。

   (女性)それは会社だったり、組織の体質でしょうから、
       そういうところにいても先はない気がしますよね。
       日本って解雇しにくいじゃないですか。
       だから辞めさせる方向に持っていくっていう方向に
       行かざるを得ない局面もあるのかなっていう風に思います。
   (男性)一般的な会社員でも、大学の先生でも、学校関係者でも、
       そこは一緒ですから、やり方としてはよくないんじゃないですか。
       そういうとこに行って辞めるに辞めれない人、再就職が厳しい人、
       いざるを得ない人が多いんでしょうし、
       いざ自分の身になるとちょっと怖いですよね。

組織の問題、自分の身に起こったら怖いとありましたが、
もし当事者になってしまったら、どう対応すればいいのか。
労働問題に詳しい板倉由美弁護士のお話です。

   なかなかひとりで問題解決するっていうのは難しいですよね。組織に対して。
   第3者に相談した方が良いと思うのですが、相談にあたって証拠を残しておくっていうのが
   必要ですので、嫌がらせの内容をメモで取っておくとか、あるいは会話を録音しておく、
   メールなんかを残しておくということも必要かなと思います。

追い出し部屋は「対組織」の問題。それだけにひとりで解決するのはなかなか難しいです。
いまやこの問題は会社だけでなく教育現場にまで波及しています。

「なくそう、貧困と格差!最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」に賛同していただけませんか

2013年7月

「なくそう、貧困と格差!
最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」に
賛同していただけませんか

拝啓
 このたびは突然のお願いごとで恐縮ですが、法定最低賃金の引き上げを求める有識者アピールへのご賛同を、呼びかけさせていただきます。
 この間に進んだ円安と株価の上昇は、輸出産業の一部企業や投機筋には利益をもたらす一方、内需型産業や中小零細企業、国民の暮らしには重い負担となっています。
 賃金はいっこうに改善されないのに、政府は物価上昇政策を打ち出し、消費税増税も実施しようとしています。このままでは、貧困と格差はさらに拡大し、日本経済はデフレ不況からインフレ下の不況へと転落しかねません。
 課題は多々ありますが、特に是正が急がれるのは、フルタイムで就労しても、貧困から逃れられない劣悪な労働条件が広がっている問題です。その主な原因のひとつに、低額すぎる法定最低賃金の問題があります。最高額の東京でも時間額850円、最低の島根と高知は652円で、いまだに600円台の地方が29県もあります。
 安倍政権は参院選を前に、今期の最低賃金については引き上げが必要とのメッセージを出しています。しかし、その一方で、2010年に政府が財界と労働団体代表に呼びかけて合意に至った「雇用戦略対話合意」(できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均1000円を目指す)については、使用者側の意向をふまえて捨て去ろうとしています。
 ついては、この夏、法定最低賃金の金額改定の審議が行われるタイミングに合わせ、最低賃金を積極的に引き上げ、できるだけ早く、一定の生計費を保障しうるレベルにする必要があることを、広くアピールしたいと考えます。
 そこで、先生のお力添えもいただきながら、各界・各方面に、最低賃金の引き上げへの賛同を呼びかけたいと考える次第です。
 なにとぞ、よろしくお願いいたします。

<最低賃金大幅引き上げアピール 呼びかけ人>
雨宮 処凛 (作家・活動家)        井上 英夫 (金沢大学名誉教授)
宇都宮 健児(反貧困ネットワーク代表)    小越 洋之助(國學院大学名誉教授)
竹信 三恵子(ジャーナリスト・和光大学教授) 浜岡 政好 (佛教大学名誉教授)
藤田 実 (桜美林大学教授)        牧野 富夫 (日本大学名誉教授)

※最低賃金大幅引き上げアピール運動事務局 伊藤
〒113-8462 東京都文京区湯島2-4-4全労連会館4F 電話5842-5611

「なくそう、貧困と格差 
最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」運動について

1.賛同の呼びかけ
別紙の「アピール」文書に賛同していただける方々を募っています。
最低賃金の金額改定審議が、中央および地方の審議会で行われる8月末か9月初旬まで実施します。他の先生にもお声かけいただき、広げていただければ幸いです。

2.公表・記者発表
  呼びかけ人・賛同人の一覧をまとめ、呼びかけ人の方々には、できるだけご出席いただいて、目安答申の直前と見込まれる7月末か8月第一週に、厚生労働省記者クラブで会見を行う予定です。最低賃金の大幅引き上げにかかわる考えや、最低賃金と整合性をはかることとされている生活保護の改悪問題について、お考えをご披露いただきたく、お願いいたします。
なお、中央最低賃金審議会の目安答申の日程はまだ固まっていない模様ですが、7月末から8月上旬となりそうです。それを受けた地方の審議会の結論は8月末から9月初旬までかかる見通しですので、その間も、賛同を増やし、アピールによって最低賃金審議会を激励したいと考えています。

3.財政について
呼びかけ人・賛同人の方々に、費用のご負担をお願いすることはいたしません。記者会見等の際の交通費は、「アピール運動」の負担とさせていただきます。

4.事務局について
最低賃金大幅引き上げアピール運動 事務局 伊藤圭一
〒113-8462  東京都文京区湯島2-4-4全労連会館4F
Tel 03-5842-5611, Fax 03-5842-5620,
E-メール minwageup@yahoo.co.jp

日弁連、「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

日弁連
 ∟●「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書


2013年(平成25年)7月18日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨

 政府は,本年6月14日,「日本再興戦略」とそれを受けた「規制改革実施計画」を閣議決定した。「日本再興戦略」においては,産業競争力会議や規制改革会議等の答申を基に,我が国の経済を再生するに当たっての阻害要因を除去し,民需主導の経済成長を実現していくために不可欠であるとして,様々な規制改革・規制緩和が提言されている。経済を新たな成長軌道に乗せるためには,人材こそが我が国の最大の資源であると言いつつ,「多様な働き方の実現」のためとして,多様な正社員モデルの普及,労働時間法制の見直し,労働者派遣制度の見直し等が検討対象とされている(日本再興戦略第Ⅱ一2③)。規制改革実施計画においても,人口減少が進む中での経済再生と成長力強化のため,「人が動く」ように雇用の多様性,柔軟性を高めるものとして,ジョブ型正社員・限定正社員(ジョブ型正社員と限定正社員はほぼ同じ意味で用いられている。以下,両者を併せて「ジョブ型正社員」と記載する。)の雇用ルールの整備,企画業務型裁量労働制等の見直し,有料職業紹介事業の規制改革,労働者派遣制度の見直しが個別措置事項とされている(規制改革実施計画Ⅱ4)。その内容は,現段階ナは抽象的な記載にとどまるが,それらの議論の経過において解雇の金銭決消制度が具体的に検討されたように,労働者の地位を不安定にしかねない制度となる可能性も残っており,参議院選挙後に予定されている具体的な検討において,経済成長の手段として雇用規制の緩和を利用しようする議論が展開されるおそれがある。しかし,日本の労働者の現状は,非正規労働やワーキングプア問題の拡大に代表されるように,窮乏を極めており,雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない。

 そこで,当連合会は,国に対し,具体的な制度改革の実現に当たって,以下の諸点について十分に留意するよう強く求めるものである。
1 全ての労働者について,同一価値労働同一賃金原則を実現し,解雇に関する現行のルールを堅持すべきこと。2 労働時間法制に関しては,労働者の生活と健康を維持するため,安易な規制緩和を行わないこと。
3 有料職業紹介所の民間委託制度を設ける場合には,求職者からの職業紹介手数料の徴収,及び,民間職業紹介事業の許可制の廃止をすべきではなく,労働者供給事業類似の制度に陥らないよう,中間搾取の弊害について,十分に検討,配慮すること。
4 労働者派遣法の改正においては,常用代替防止という労働者派遣法の趣旨を堅持し,派遣労働者の労働条件の切下げや地位のさらなる不安定化につながらないよう十分に配慮すること。


第2 意見の理由

……以下,略……

2013年07月23日

私大連合は私大有期労働者の適用除外要望(文科大臣宛 6 月 26 日)を取り下げよ

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●第4号ビラ(早稲田大学は脱法行為・クーリング意向調査を中止すべきです) (2013.07.19)

私大連合は私大有期労働者の適用除外要望(文科大臣宛 6 月 26 日)を取り下げるべきです
早稲田大学は脱法行為(クーリング意向調査)を中止すべきです

早稲田大学法学部が実施したクーリング意向調査(7/3)は、違法・脱法行為です。

早稲田大学法学部は、7月3日、英語科目の担当講師を招集した会合で、「今後の授業計画に関するアンケート」を配布しました。最近の法改正に伴い「早稲田大学では勤続5年をもって非常勤講師との契約を更新しない方針を発表しました。ただし、一旦6か月の休職期間を置いたのち再契約を結ぶという方針が示されています。」と明記し、「上述の『5年』の限度について、どの学期においてカウントをリセットするための休職期間をお取りになりたいと思いますか」と尋ねています。クーリング期間経過後の再雇用を約束して、クーリング期間を申請させるこのようなやり方は、「雇止めを恐れる労働者に、労働契約法の無期転換申し込み権の放棄を強要する状況を招き」かねない行為であり、「法第18条の趣旨を没却するもので、…公序良俗に反し、無効と解されます」(労働契約法改正時の労働基準局長通達 基発0810第2号)。また、このアンケートは、クーリング期間の設定により、これまで継続してきた契約が終了し、期待権などの既得権が消失することを隠し、不利益変更を受忍させようとする悪質なものです。早稲田大学理事会は、「5年以内で半年間の空白期間を設けてローテーションを組んでいきたい。どういう順番で6か月の空白期間を作るか、教務主任会等で話し合いながら進めている」としており(早稲田大学教員組合広報紙 №.1377)、この脱法行為の責任は理事会にあります。早稲田大学は、クーリング意向調査を直ちに中止するとともに、改正労働契約法の趣旨に反するすべての行為を断念するべきです。

私大連合が、労働契約法適用除外=法の潜脱の合法化を要望(文部科学大臣宛6月26日文書)

日本私立大学団体連合会(私大連合)は、6月26日、文部科学大臣に対して、「私立大学における有期契約労働者については、無期労働契約への転換ルールの適用から除外するなど、弾力的な運用が可能となるよう強く要望する」文書を提出しました(「『労働契約法の一部を改訂する法律』に関する要望について」)。無期契約転換ルールの適用除外(労働契約法18条)以外を含む弾力的な運用を要望しており、19条、20条を含む適用除外に繋がりかねません。この要望は、早稲田大学などの私大経営者が、改正労働契約法の潜脱行為が社会的非難を浴びる中で、政府に法潜脱を認めさせようとしているものです。有期契約労働者の雇用安定化は、教育労働者にこそ必要とされています。労働契約法は、非常勤講師にも完全に適用されるべきです。


全大教第45回定期大会特別決議、「高等教育漸進的無償化条項の具体化と奨学金の給付制への移行と充実を」

全大教
 ∟●全大教第45回定期大会特別決議

全大教第45回定期大会特別決議
高等教育漸進的無償化条項の具体化と、奨学金の給付制への移行と充実を

 子どもの貧困率は 15.7%(20 歳未満;2009 年)、ひとり親世帯等の貧困率は 50.8%(同年)であり、こうした状況からおこる貧困の連鎖を断ち切ることが、社会にとっての大きな課題です。子どもの貧困対策法が 6 月 19 日、国会で成立しました。同法では、学習機会に関する指標を毎年調査・公表し、教育および教育費に関する支援を行なっていくという基本的施策が盛り込まれています。
 日本の、教育費の公財政支出の対 GDP 割合は OECD 加盟国のなかで、最低レベルの 3.6%です(2010 年)。2010 年からようやく始まった高校授業料実質無償化は、政権交代によって所得制限の導入の議論が蒸し返されている状況です。
 高等教育についての無償化の議論は立ち遅れていましたが、2012年 9 月、政府はようやく国際人権規約 A 規約 13 条(b)(c)項の留保撤回を表明し、国連に通告をしました。私たちの長年の要望が実現した、非常に大きな前進です。今後は、この条項の実質化の実現が必要です。
 そもそも、国民が高等教育を含む教育を受ける権利を等しく有しているのは、教育が公共的な営みであり、国民に広く教育を行き渡らせることが公益にかなうものであるという考えに基づいています。しかるに近年、新自由主義の高まりとともに、高等教育の受益者負担論が広がり、学習者の利益追求が教育の目的であるかの如き言説と、それにもとづく施策が展開されてきています。こうした考え、施策は、社会の構成員の相互扶助の観念の衰退、社会秩序の崩壊を招きかねないものです。教育をあくまで公的なものとして位置づけた上で、それにふさわしい規模の公財政支出と、公正な配分がなされなければなりません。
 現在、学生数の 7割が学ぶ私立大学や、公立大学を含むすべての大学において無償化が実現していくための施策を求めます。その中にあって、国立大学の授業料は、「私立大学と比較して低い」ことを理由に、長年にわたって引き上げられてきました。現在は、現行の授業料学を前提とした運営費交付金の措置の下、授業料を低く設定することは困難な状況です。高等教育の漸進的無償化の考えに立ち、授業料不徴収が可能となるよう、運営費交付金の引き上げを国に求めます。
 大学・高等教育機関で学ぶ学生は、18歳超の年齢に達しています。社会の中で自立して生活をしていく年齢期を学習に充てることによって、そこでのさらなる学習成果が社会に還元されるべく努力をしています。その意味で、授業料の不徴収とはべつに、奨学金の充実が欠かせない課題です。公的奨学金に給付制が導入されず、また「教育ローン」ともいうべき有利子の奨学金の比率が増え続けているのが現状です。学ぶ意志をもったすべての国民が教育を受けることができるよう、公的奨学金のすべてを給付制とすることを求めます。

 私たちは、大学・高等教育機関が、公的な責務をもつ社会の中で重要な機関であることをあらためて認識し、そこで学び卒業する若者とすべての国民が、その成果を社会に還元していけるよう、日々の大学運営、教育・研究活動を行なっていきます。

以上、決議します。

2013 年 7月 14日
全国大学高専教職員組合第 45回定期大会

2013年07月21日

バイオラボ破たん 兼業教授処分取り消し訴訟 長崎県立大側の敗訴確定 最高裁、上告を棄却

毎日新聞(2013年07月20日地方版)

 兼業していたベンチャー企業「バイオラボ」の業務で無断欠勤したとして、停職6月の懲戒処分を受けた県立大の久木野憲司教授(54)が県公立大学法人を相手に処分取り消しなどを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は19日までに法人側の上告を棄却。処分を無効とした1、2審判決が確定した。判決は16日付。

 久木野教授は2003年10月、遺伝子情報で薬を作る「ゲノム創薬」を研究する同社を設立し、「兼業従事許可」を受けたうえで社長を務めたが、09年9月、同法人から約380日間、無断欠勤したとして処分された。

 長崎地裁判決は「原告の勤務時間中の兼業従事を知りながら注意、警告しなかった。処分は社会通念上是認できない」として、処分無効と未払い賃金など約820万円の支払いを命じた。控訴審もこれを支持した。

 久木野教授は19日に長崎市で記者会見を開き「違法な懲戒処分を実施し、6回も敗訴を重ねた法人側は、再発防止策を策定し、事実経過を検証する第三者委員会を設置すべき」と、訴えた。【梅田啓祐】


2013年07月20日

京大職組、「国の違法・不当は認められない」 未払い賃金1183万円の支払を求める訴訟

全大教
 ∟●【京大職組】未払賃金請求訴訟・高山副委員長インタビュー

国の違法・不当は認められない

京都大学職員組合中央執行副委員長 高山佳奈子

 京都大学の教職員96人は先月11日、国立大学法人・京都大学(松本紘総長)による一方的賃下げは違法であるとして、未払い賃金計1183万円の支払いを求める訴訟を京都地裁に起こしました。原告で京大職組中央執行副委員長の高山佳奈子・同大法科大学院教授に裁判の意義について聞きました。

 労働のルールに従わない賃下げ

 私たちの基本的な主張というのは合理的根拠のない賃下げは許せないという当たり前のことです。
 国立大学の教職員は、2004年に大学が法人化されたことによって、従来の国家公務員法制ではなく民間のの労働法制が適用されることになりました。賃金労働条件は労使の交渉によって決定することになりました。ところが、京都大学は、国の「要請」を理由として、教職員組合や職員となんら合意することもなく、京大病院の看護師さんなど一部の職を除いて常勤教職員の賃下げを昨年8月1日から実施してきたのです。国は国立大学法人の労働条件・労使関係に介入することは許されません。大学としても国の「要請」はあくまでも「お願い」であり、義務でないため、拒否することは可能でした。労働者の最も基本的な労働のルールに従わない形の賃下げは、大学においても認めるわけにはいきません。

 景気回復に逆行するもの

 国による賃下げ「要請」は国家公務員の賃下げ強行を契機としたものですが、この国家公務員の賃下げ強行そのものが違法・不当であり、景気回復に逆行する措置であり、容認できません。
 国は昨年2月、東日本大震災復興を口実」として国家公務員の給与を引き下げる「臨時特例法」を成立させ、同年4月から賃下げを強行しました。人事院総裁から「遺憾の意」が表明されるほど大幅な削減率でした。人事院勧告にもとづかない賃下げは労働者の団体交渉権などを定めた憲法28条や国家公務員法にも違反しています。
 景気の問題で言えば、国家公務員をはじめ公務員や国立大学職員の数は多いですし、賃金を下げれば経済全体でみると負のインパクトになると思います。政府は景気を高揚させようと言っているのに自ら足を引っ張ることになります。景気回復に向けてがんばつている民間の人たちの努力を無にする政策です。
 昔は公務員部門をたたけば人気が上がるという政治家がいましたが、国民の反発も少しずつ生まれています。国家公務員の賃下げ反対裁判をたたかっている人が路上で演説をすると街頭の反応がだんだん良くなっていると聞きました。

 国立大学の役割を守る

 今回の国の措置は、「裕福ではないけれど意欲と能力がある人が本当に好きな勉強が出来る」という国立大学の本来のあり方を変えてしまうものである、という点を強調したいと思います。
 国による賃下げ「要請」の狙いは、「国家公務員の給与削減か同等の給与削減相当額を算定し、運営交付金等から減額をされたい」との安住前財務大臣の発言(昨年5月)にあるように国が国立大学法人に拠出している基礎的基盤的経費である運営交付金を削減することにありました。
 そもそも運営交付金は、国立大学法人の自主的、自立運営に差し障りのないよう、国が公費にかえて大学法人に支出するもので、法人化の際の国会審議でT運営交付金等の算定にあたっては、…法人化前の公費投入額を十分確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること」と衆参の付帯決議がつけられるなど、国の一時的な政策による安易な減額は戒められていました。今回の運営費交付金の削減は国の責務を放棄したものです。
 これによって大学はますます学費値上げをせざるを得なくなります。
 そもそも、欧米では授業料が無料であるところが多い。ところが日本の現状は、OECD加盟国の中で国内総生産に占める高等教育予算の割合は非常に低く、最低ランクです。さらに削減していこうというのが今回の措置です。客観的には「国立大学つぶし」に近いことが行われています。アジアの国々が教育に力を入れて人材を育成しているときに日本は先細りになってしまう。将来の国を支える人々が育てられるのかという危機が迫っています。亡国の施策と言わざるを得ません。

 100%真理はわれわれに

 全国の109の国公立大学・国立研究機関、国立高専の教職員組合で構成する全大協(全国大学高専教職員組合)は昨年フ月、史上初めて全国的な裁判闘争を行うことを決定しました。現在、京都大学をはじめ、全国7組合が提訴しています。検討しているところも含めると今後10組合で訴訟が展開されることになります。
 京都大学では7月末に原告をさらに追加し、100人以上を組織することにしています。提訴の記者会見以後、様々な労働組合から激励のメッセージをいただきました。提訴するだけでこれほどの反応があるのかと驚いています。
 真理は100%私たちの側にあり、絶対負けません。全国の大学、民間の労働者、そして国民と共同してたたかっていきたいと思います。


資料紹介、[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟

労働法律旬報,No.1795 7月上旬号(発行日 2013年7月10日)

[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟

=小部正治/鮎川泰輔/今泉義竜/吉村真吾/岩橋多恵/田中暁/坂林加奈子/中村周而/平和元/齊藤園生
主な目次

[巻頭]グローバリズムのなかの一挿話?=武井寛・・・04

[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟
国立大学法人の賃下げ訴訟について=小部正治・・・06
高エネルギー加速器研究機構=鮎川泰輔・・・12
高専賃金減額事件のあらまし=今泉義竜・・・14
福岡教育大学教職員組合の賃下げ裁判=吉村真吾・・・16
京大訴訟の特徴=岩橋多恵・・・18
山形大学賃金減額訴訟について=田中暁・・・20
国立大学法人富山大学の賃下げ回復訴訟について=坂林加奈子・・・22
新潟大学「賃下げ訴訟」について=中村周而・・・24
国立大学法人電気通信大学=平和元・・・26
東京学芸大学の賃金切り下げ分返還訴訟=齊藤園生・・・28

[紹介]弁護士短信―労働事件簿102長崎島原中国人技能実習生事件/中国の派遣会社代理店の不法行為責任を認めた画期的判決=小野寺信勝・・・30
[紹介]ユニオンネット―現場からの報告23マツダ派遣切りのたたかい=高根孝昭・・・32
労働判例/マツダ(派遣切り)事件・山口地裁判決(平25.3.13)・・・51
[紹介]港湾における石綿問題と国の責任=伊藤彰信・・・37

2013年07月19日

「地方自治」による「大学の自治」の圧殺 ―東京都立大学の解体―

首大非就任者の会
 ∟●「地方自治」による「大学の自治」の圧殺 ―東京都立大学の解体―

「地方自治」による「大学の自治」の圧殺 ―東京都立大学の解体―

立教大学法務研究科 人見 剛
2013.5.19


(経済科学通信131号(2013年4月号)40頁~46頁【掲載特別許可取得済】)

はじめに

 2012年9月、大都市地域における特別区の設置に関する法律*1が成立し、橋下徹大阪市長肝いりの大阪都構想を実現する法制度の基盤が整えられるに至った*2。もっとも、「大阪から日本を変える」と謳って大阪府民・大阪市民の支持を集めた橋下氏であるが、衆議院に54議席を持つ国政政党たる日本維新の会の共同代表となった今や、これまでの言動を維持して自治体の首長に留まるかは大いに疑問符が付こう。「2万パーセントない」と言っていた知事選に出馬をし、また知事就任後、議会対策に手を焼いたためなのか、地方議員の執行機関の幹部職員への登用という自治体統治システムにおける議院内閣制的要素の強化という重大な問題提起をしていたにも拘わらず、自身の議会基盤が整うとその後は、この点に全く黙するようになっているのであるから、大阪「都」構想も同じように雲散霧消しないとも限らない。

 さて、この点は措き、本稿が主題とする公立大学改革について、大阪府知事時代に橋下氏が著した著作『体制維新―大阪都』をみてみたい*3。

 まず、大阪「都」構想の主要な根拠の一つとされている大阪府と大阪市の二重行政の解消の一例として大学が挙げられている。「都道府県立並の体育館も図書館も大学も浄水場も、狭い大阪府域内に、府立と市立の両方があり非効率な形態になっています*4。」

 そして、その大阪の公立2大学(大阪府立大学と大阪市立大学)を、都立4大学(東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立保健科学大学、東京都立短期大学)を押し潰して設立された首都大学東京と比べて次のように述べている。「全国で二番目に狭い大阪府域内に、普通なら都道府県に一つしかないような大規模施設が、二つあることが問題なのです。公立の総合大学も府立、市立の二つ。大阪より巨大な都市である東京都でも首都大学東京の一つです。首都大学東京一つにかかっている東京都の財政負担は年間約120億円。一方府立大学への大阪府の財政負担は約100億円、市立大学への大阪市の財政負担は約108億円(全て10年度)です。合わせると合計208億円にもなり、大阪全体としては公立総合大学に東京都以上に税金を投入していることになるのです。東京ですら約120億円なのに。大阪府庁も、大阪市役所も大阪全体のことなど気にしていない。自分の所管する大学のことだけを意識しているのです*5。」

 かくして、大阪の公立2大学の統合が唱えられることになる。「府立大学・市立大学も経営統合し、公立総合大学では日本でナンバー1となります。投じられている税金は、現在でも大阪府・市合わせて年約200億円。首都大学東京の2倍近くです。これだけのお金を集中して効率よく使えば、統合した公立大阪大学は、アジアの大学競争の中で確実に勝ち残ることができます*6。」

 さて、問題は、こうした大学の統合それ自体ではない。統合して成る新たな大学が如何なる大学になるのか、そして、それに大学人の意思がどのように反映されるのか、という大学の自治の問題である。本稿は、橋下氏と政治的タッグを組んでいる石原慎太郎氏*7と大阪市特別顧問であった中田宏氏が、それぞれ東京都知事、横浜市長として10年ほど前に行った大学「改革」を振り返ってみることも何らかの参考になると考え、筆者が実際に経験した都立大学破壊のプロセスの一端を紹介するものである*8。横浜市立大学の事態については、吉岡直人『さらば、公立大学法人横浜市立大学―「改革」という名の大学破壊』(下田出版、2009年)という詳細で貴重な書籍があるので、是非これを参照願いたい。

……以下,略……


TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会、第3次TPP影響試算の結果発表

TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
 ∟●7月17日 第3次TPP影響試算の結果発表 記者会見
 ∟●Ustream録画再配信(17:29~ 1時間44分)IWJ

7月17日 第3次TPP影響試算の結果発表 記者会見

2013/07/17 「TPPによる農業生産額の減少は都市部にも甚大な影響を与える」 東京都1兆907億円、神奈川県2972億円、大阪府3729億円の損失 ~大学教員の会が第3次影響試算を発表(IWJ)
発表資料
●産業連関表を用いた都道府県別試算の結果の総括表
TPP 第3回記者発表資料(土居英二@静岡大学).PDF
●三好ゆう氏発表資料
畑作ワークシート都府県(関税撤廃前).PDF
畑作ワークシート都府県(関税撤廃後).PDF
畑作ワークシート都府県(関税撤廃後の家計収支).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃前).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃後).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃後の家計収支).PDF
●醍醐 聰氏発表資料
酪農 表1 北海道(関税撤廃前).PDF
酪農 表2 北海道(関税撤廃後)生乳のみ.PDF
酪農 表3 北海道(関税撤廃後)生乳のみ.PDF
水田作 北陸 表(関税撤廃後).PDF


2013年07月18日

日弁連、奨学金制度の充実を求める意見書

日弁連
 ∟●奨学金制度の充実を求める意見書

奨学金制度の充実を求める意見書

2013年(平成25年)6月20日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨
 当連合会は,子どものおかれた経済状況にかかわらず,全ての子どもに等しく教育を受ける権利を保障するため,高等教育の無償化を求めつつ,国及び独立行政法人日本学生支援機構に対し,奨学金制度の充実を求めるべく,以下のとおり意見を述べる。
1 国は,高等教育に対する給付型奨学金制度を速やかに導入し,かつ拡充すべきである。
2 国は,全ての貸与型奨学金につき,利息及び延滞金の付加をやめるべきである。
3 国は,全ての貸与型奨学金につき,個人保証の徴求をやめるべきである。
4 国は,返還期限の猶予,返還免除等,返済困難な者に対する救済制度の拡充を図るべきである。
5 独立行政法人日本学生支援機構は,返済困難な者を救済するために返還期限の猶予,返還免除等各種制度の柔軟な運用をすべきである。

第2 意見の理由
1 奨学金返済の問題
 近時,大学の学費高騰と雇用環境の悪化による家計収入の低下により,奨学金制度利用者は年々増加している。
 現在,大学学部生(昼間)の約50%が何らかの奨学金制度を利用しており,約3人に1人が独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金を利用しているが,奨学金制度利用者が増加する一方で,返済金の延滞者の増加も問題となっている。
 機構のデータによると,機構の貸与型奨学金の2011年度末での延滞額は876億円,延滞者数は33万人にのぼり,3か月以上延滞している者のうち,46%は非正規労働者ないし職のない者であり,年収300万円未満の者が83.4%にものぼっている。他方,機構は,増加する延滞者に対し,支払督促申立ての増加,債権回収業者への回収業務委託,信用情報機関への延滞者の登2 録など,返済金の回収強化を図っている。
 学費の高騰に伴う借入額の増加と雇用環境の悪化等により奨学金を返したくても返せない人たちが増加している一方で,機構による返済金回収強化策が進められている結果,自分の力ではどうすることもできず奨学金返済に苦しむ人が増加している。
 当連合会が本年2月に実施した,「全国一斉奨学金返済問題ホットライン」でも,非正規雇用のため収入が減って奨学金の返済が苦しい,延滞金が高すぎるため返済が困難である,就職が決まらず返済できそうにない,就職は決まったが将来返済できるか不安である,といった相談が寄せられた。
 また,機構からの奨学金の借入れには,親族の個人保証または機関保証が必要であるところ,個人保証の場合には,連帯保証人である親などが返済を負担せざるを得ないことも多く,高齢になった親が限られた年金から奨学金を返済していることもある。主債務者が支払不能の状態にあっても,保証人への影響を考えて債務整理を躊躇する者もあり,必要な救済を拒む要因ともなっている。
 奨学金は本来,若者の人生の可能性を広げるためのものであるが,現在の奨学金返済を巡る問題は,逆に若者の人生にハンディを負わせる結果となっており,さらに,これから奨学金を借りようとする学生にとっても,上記のような問題を目の当たりにして,自分も返せないかもしれないという将来に対する不安となり,奨学金制度を利用することを躊躇し,進学自体を諦める事態をも招いている。

2 奨学金制度の理念
 生まれ育った環境にかかわらず,子どもが成長し,発達する権利を実現するには,子どもの成長・発達は社会全体で支えるべきである。子どもの教育にかかる費用を家庭,個人の負担としてしまうと,親の経済力という子ども自身の意思や能力と関係のない要素によって子どもの教育機会が左右される不条理な結果を生む。
 子どもの教育にかかる費用は,子どもの教育を受ける権利(憲法第26条),親の経済力により教育機会を差別されない平等原則(憲法第14条),教育への権利(子どもの権利条約第28条)の観点から,個人ではなく社会全体で負担するという理念に基づき,諸制度を構築する必要がある。
 また,子どもの教育には,社会の担い手を育てるという意義もあり,子どもの教育にかかる費用は,社会を維持発展させるための必要な費用という点からも社会全体が負担すべきである。

3 現行の奨学金制度
 我が国の奨学金制度のほとんどが貸与型であり,その中でも最も大きな割合を占めている機構の奨学金は全てが貸与型であり,しかもその約70%が有利子であって,利子及び延滞金の負担が利用者に重くのしかかっている。
 ともと機構の有利子奨学金は,補完的な措置であり,財政が好転した場合には廃止を含めて検討することとされていたが,財源の多くを民間資金に頼る有利子奨学金はその後拡大を続け,現在では,無利子と有利子の事業予算の割合は1:3になっている。延滞金自体の利率も大きく,年10%の延滞金が発生するため,返しても返しても元金が減らず,逆に延滞金が膨らみ続けるケースも少なくない。
 奨学金制度利用時には,利用者の将来の仕事や収入は分からないから,貸与型の奨学金においては,返済困難に陥るリスクはもともと制度に内在するものである。加えて,非正規労働等の不安定・低賃金労働の拡大は,卒業しても奨学金を返済できなくなるリスクを拡大させている。この点,機構の奨学金制度にも,返還期限の猶予,返還免除等,返済困難者に対する救済制度が一応は存する。
 しかし,それらの利用条件等は極めて厳しく,運用上も様々な制限があるため,実際には実効性がない。例えば,収入が少ないことによる返還期限の猶予は最長5年までしか認められない。
 また,返還期限の猶予,返還免除等を利用するには,運用上,既に発生している延滞金を解消することが必要であり,そのような運用は,非公表の「内規」と呼ばれる基準によってなされている。
 制度上,本人が死亡した場合や精神若しくは身体の障害により,労働能力を喪失又は労働能力に高度の制限を有し返済ができなくなったときには,願出により返済を免除できることとなっているが,精神の障害により免除されるのが具体的にどのような場合かといった運用基準があいまいで不明確であるなど,実態に即した適切な運用がされているかは疑問である。
 そもそも各救済制度の周知が不十分であり,返済が困難になった人に,必要な救済制度の情報が行き届かない問題もある。
 このように,機構の奨学金は,返済の負担が大きくなっているばかりか,返済困難に陥った者に対する救済手段は,制度内容と共にその運用面においても十分に機能しているとは言い難く,その結果,返したくても返せない返済困難者が,長年にわたり無理な返済を強いられる事態を招いており,回収の強化が,それに更に追い打ちをかけている。本来,子どもの未来の可能性のために存在すべき奨学金制度が,逆に利用者の人生の大きな負担となっている。
 奨学金制度が本来の機能を果たし,親の経済的条件に左右されず子どもに教育機会の平等を確保するためには,奨学金制度の抜本的見直しと救済制度の早急な充実が必要である。

4 あるべき奨学金制度
(1) 高等教育の無償化
 教育費用は社会全体で負担すべきとの理念に照らせば,そもそも高等教育は無償化すべきである。
 政府も,2012年9月11日,国際人権社会権規約13条2の(b)(c)項「中等教育および高等教育の漸進的無償化」条項の留保を撤回しており,高等教育無償化は,国際社会に対する我が国の責務でもある。
(2) 給付型奨学金の創設
 先述のように,我が国の奨学金制度はほとんどが貸与型であり,機構の奨学金は全てが貸与型であり,利用者は将来の返済困難という予想困難なリスクを引き受けなければ,これを利用することができない。
 この返済義務が上記のような返済に伴う諸問題を発生させ,奨学金制度利用者を苦しめると共に,利用を考えている者に対する萎縮効果をも生じさせている。
 また,将来自己の負担で借りた奨学金を返済するということは,結局教育費を自己負担することに帰し,教育費を社会全体で負担すべきとの上記理念にも反することとなる。よって,奨学金制度は返済義務のない給付型を原則とすべきである。
 OECD加盟国中,大学の学費が有償であるにもかかわらずほとんどを貸与型奨学金に頼っているのは,日本だけである。これは,我が国の奨学金制度の最も根本的な問題であり,給付型奨学金の創設と拡充は喫緊の課題である。なお,近時,給付型奨学金制度の導入が政府で検討されているが,高校無償化に所得制限を導入することで浮いた予算を給付型奨学金の財源に充てようとするなど,教育予算内での配分の問題の域を出ていない。
 我が国の高等教育への公財政支出の対GDP比は,OECD加盟国中最下位であり,OECD平均の半分以下である。しっかりとした予算の裏付けのる給付型奨学金制度の導入を目指すべきである。
(3) 貸与型奨学金の無利子化と延滞金の廃止
 もっとも,大学の学費が高騰している昨今,学費の全てを給付型奨学金で賄うには多くの財源が必要となるため,即時全面的に給付型奨学金のみに移行するのは事実上困難であるかもしれない。給付型奨学金制度を充実させた上で,それでも不足する学費を補うために貸与型の奨学金制度が必要な場合には,あくまで給付型奨学金を補完するものとして位置付け,利用者の負担をできる限り少なくすべきである。
 現在我が国では,貸与型の中でも有利子のものが大きな割合を占めているが,返済期間が長期に及ぶこととも相まって,利子は奨学金制度利用者の大きな負担となっている。また,理念的にも,利子までを自己負担とすることは教育費の社会負担という奨学金制度の理念と相容れない。
 よって,貸与型奨学金は無利子とすべきである。
 同様の趣旨から,利用者の過大な負担となっている延滞金も付加すべきではない。この点,文部科学省は,早ければ2014年度から延滞金利を最高年5%程度に引き下げる方針を固めた。
 しかし,そもそも貸与型奨学金は,債務者の返済能力に応じた与信によって貸し付けるものではなく,ペナルティとして延滞金を課すこと自体に根拠がない。
 よって,延滞金利を引き下げるといった表面的な対策ではなく,そもそも延滞金の付加自体をやめるべきである。
(4) 個人保証の禁止
 当連合会は,個人保証による被害が深刻なことから,民法改正作業において個人保証を禁止すべきとの意見書を出しており(2012年1月20日付け「保証制度の抜本的改正を求める意見書」),その趣旨は,貸与型奨学金にも及ぶものである。殊に,与信がない貸付という奨学金制度の性格に照らすと,本来借主の経済的信用を補完すべき個人保証を徴求することは矛盾である。
 さらに保証人自体にも与信があるわけではなく,資力に乏しくても保証人になった親が高齢になるまで長期にわたり保証債務の負担を負うという現状は,奨学金制度の理念からかけ離れたものである。奨学金制度の利用には所得制限があり,制度利用者本人の将来の仕事や収入が分からない状態で貸与を受けること,返済期間も長期にわたることからすれば,利用者が返済困難に陥る危険は相当のものであり,貸与型の奨学金に個人保証を付すことは,通常の保証以上に保証人に大きな負担を課すものである。
 よって,全ての貸与型奨学金につき,個人保証の徴求をやめるべきである。
(5) 返済困難者の救済制度の充実と柔軟な運用
 貸与型奨学金については,その後の返済についても適切な救済制度の確立が不可欠である。貸与型奨学金は,債務者の返済能力ではなく,学びたいという希望に応じて貸し付ける点で,一般金融ローンとは大きく異なる。
 すなわち,債務者への与信によって貸し付けるものではない。 奨学金を借りる者は,将来どのような職に就き,どの程度の収入を得ることになるか分からない進学時に借りるのであり,将来返済困難に陥る危険は,もともと制度内に内在している。
 したがって,返済が苦しくなった者に対しては,自己責任として返済を強要するのではなく,返済能力に応じた返済ができるようにするなど,柔軟な救済制度を設け,実施すべきである。
 そのためには,返済が困難な者に対して,返還期限の猶予,返還免除等を幅広く認めることができるよう,適用要件を緩和するとともに明確化し,必要な者は誰でも容易かつ簡潔に救済制度が利用できるような制度設計,運用が必要である。さらには,そもそも延滞という事態が発生しないよう,返済者の所得に応じて返済額を設定する所得連動型の返済プランの導入等も検討されるべきである。
 なお,これらの救済制度は,今後,貸与型の奨学金を利用する者に対してだけでなく,既に貸与を受けている者についても遡って適用すべきである。

5 まとめ
 以上のように,奨学金は親の経済力に左右されず,学びたい子ども全てに教育を受ける機会を保障するための重要な制度であり,貧困の格差拡大が問題となっている昨今では,貧困家庭の子どもが将来貧困層に陥るという貧困の連鎖を断ち切るためにも,その重要性はますます増している。
 それにもかかわらず,我が国の奨学金制度は現状に十分対応できておらず,子どもの教育を受ける権利は危機に瀕している。
 よって,奨学金制度の本来の理念を守り,その機能が十分に発揮できるよう,上記のような奨学金制度の充実を望むものである。


2013年07月16日

北海道大、教授ら5人をセクハラやアカハラで処分 公表せず

北海道新聞(2013/7/15)

 北海道大がセクハラやアカデミックハラスメントに当たる言動があったとして2010~12年、教授ら5人を停職や戒告の懲戒処分にしていたことが15日、情報公開請求や大学への取材で分かった。いずれも被害者保護を理由に公表していなかった。

 北大はハラスメントが刑事事件になった場合は、学内での処分を明らかにすることもあるが、原則公表しないとしている。識者からは「再発防止のため広く開示するべきだ」との声が出ている。

 公開された文書は、処分の種類や期間、発令日などしか出ておらず、発言や行為の具体的な内容は、ほとんど黒塗りにされていた。


2013年07月15日

国連社会権規約委員会「日本に対する第3回総括所見」、改正労働契約法5年雇い止め問題に懸念と勧告

社会権規約委員会:日本に対する第 3 回総括所見
関西圏大学非常勤講師組合、『非常勤の声』2013.7.6 第36号

Committee on Economic, Social and Cultural Rights E/C.12/JPN/CO/3
Concluding observations on the third periodic report of Japan, adopted by the Committee at its fiftieth session (29 April-17 May 2013)

16. The Committee is concerned at abuse of fixed-term contracts by employers as well as at the vulnerability of workers with such contracts to unfavourable conditions of work, in spite of the incentives offered by the State party encouraging employers to use the same system evaluation and qualification for all employees irrespective of the nature of their contracts. The Committee is also concerned at cases where employers avoid the conversion of fixed-term contracts into open-ended contracts, as introduced under the revised Labour Contract Act, by not renewing them. (arts. 6, 7)

The Committee recommends that the State party take measures to prevent the abuse of fixed-term contracts, including by establishing clear criteria applicable to them. Referring to the State party’s obligation to ensure equal remuneration for work of equal value, the Committee also recommends that the State party monitor whether the system of financial incentives achieves the objective of preventing unequal treatment of workers with fixed-term contracts. Furthermore, the Committee calls on the State party to strengthen and monitor the enforcement of the Labour Contract Act so as to prevent that contracts of fixed-term workers are unfairly not renewed.

16.委員会は、契約の性質に関係なくすべての被用者について同一の評価・能力認定制度を活用するよう促す奨励策を締約国がとっているにも関わらず、使用者によって有期契約が濫用されており、かつ、有期契約労働者が不利な労働条件を課されやすい状態に置かれていることを懸念する。委員会はまた、使用者が、有期契約を更新しないことにより、改正労働契約法で導入された有期契約から無期契約への転換を回避していることを懸念する。(第 6 条、第 7 条)

委員会は、締約国が、有期契約に適用される明確な基準を定める等の手段により、有期契約の濫用を防止するための措置をとるよう勧告する。同一価値労働について平等な報酬を確保する締約国の義務を参照しながら、委員会はまた、締約国が、有期契約労働者の不平等な待遇を防止するという目的が奨励金制度によって達成されているか否かを監視するよう勧告する。さらに、委員会は、有期契約労働者の契約が不公正に更新されないことを防止するため、労働契約法の執行を強化しかつ監視するよう、締約国に対して求める。


2013年07月12日

早大が労契法を脱法、非常勤講師の無期化回避狙う 労組が記者会見

しんぶん赤旗(2013年7月11日)

 早稲田大学が、非常勤講師に対して5年の契約更新による無期雇用転換を回避するため、半年間休職させて契約期間をリセットする「クーリング期間」偽装の脱法行為を計画していることが分かりました。10日、首都圏大学非常勤講師組合が東京都内の記者会見で明らかにしました。

 同大学法学部の非常勤講師に、「今後の授業計画に関するアンケート」が配布され、「5年間継続して勤められたならば、1学期の間お休みしていただく」として、2014年度~18年度の前後期で授業担当の希望を聞き、休職へ誘導しています。

 改定労働契約法では、5年間契約を継続すると有期雇用から無期雇用へ転換できる、という規定が導入されました。厚労省発行の『労働契約法改正のあらまし』は、「あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません」としています。

 非常勤講師組合は、早大の行為が雇用安定という法の趣旨に反すると批判。非常勤講師に対して、アンケートにはすべての期間で「授業担当を強く希望する」と回答するよう呼びかけています。

 早大は、さまざまな無期転換回避策をこころみており、4月には就業規則改定を強行して、契約期間5年上限で雇い止めにすると決めました。非常勤講師と組合から労働基準法違反で刑事告訴・告発をうけています。


北大、2012年度の1.6倍も賃金減額 山口学長、早くも選挙公約を棚上げ!!

北大職組
 ∟●臨時特例の2013年度賃金減額問題 ビラ №3

2012年度の1.6倍も賃金減額!! 山口学長、早くも選挙公約を棚上げ!!

2013 年度臨時特例の賃金減額交渉、決裂

 臨時特例の2013年度賃金減額問題に関する団体交渉は第1回5月 24 日、第2回6月4日、第3回6月 21 日、第4回7月2日と回を重ね、最後の第4回で決裂しました。団交の結果、当初の7月1日実施から8月1日実施へと、減額開始が1ヵ月遅れることになりました。

教職員の負担、2012 年度の 1.6 倍!!

 第1表を見てください。北大の説明では、2012 年度も2013 年度も文科省による運営費交付金の減額は 19.6 億円だそうです。その減額分に対処するため、両年度とも北大の負担分を「学長室等事業推進経費」と「中期目標達成強化経費」(この二つを合わせて学長裁量経費と理解して良いとのこと)から捻出するとしました。
 2012 年度は年度末に至り、結果的に北大の負担が13.9億円、教職員の負担が 5.7 億円になりました。2013 年度は当初、北大の負担が8.6 億円、教職員の負担が11.0 億円でしたが、団交を重ねて組合が要求を繰り返したところ、北大負担10.43 億円、教職員負担9.17 億円になりました。教職員負担が1.83 億円減りましたが、これは団交の成果です。しかし、教職員の負担つまり賃金減額分は2012 年度より1.6 倍も多くなっています。……


横浜市大謝礼金問題、元副学長の処分無効の訴えを地裁が却下

神奈川新聞(2013年7月11日)

 横浜市立大学医学部の学位取得をめぐる謝礼金問題で、2008年に停職4カ月の懲戒処分を受けた元副学長の男性が同大学に処分無効の確認などを求めた訴訟の判決で、横浜地裁(阿部正幸裁判長)は11日、原告の訴えを却下した。

 同問題は、同医学部の教授、准教授が、学位取得者から金銭を受け取っていたとして、08年7月、元副学長と元医学部長が停職処分を受けた。

 阿部裁判長は、元副学長は処分を受けた日に、自ら退職届を提出していることから、雇用関係は消滅しており処分無効の確認自体に利益がないとして、訴えを却下した。

 また、当時の処分に関しても「大学側に裁量権の逸脱乱用があったとはいえない」として、慰謝料の請求についても棄却した。


2013年07月10日

名古屋女子大学、解雇したい人追い詰める「追い出し部屋」

AERA(2013年7月8日号)

解雇したい人追い詰める 大学の「追い出し部屋」の実態

 解雇したい人間を押し込め、じわじわと追いつめる「追い出し部屋」。これは、民間企業だけではなく、公的機関である「大学」にも存在する。

 その場所は、「教職員研修室」の名で呼ばれていた。名古屋女子大学文学部教授として教鞭をとっていた谷口富士夫(たにぐちふじお)さん(55)は昨夏まで、この「部屋」で、日本漢字能力検定の過去問を解かされ、何度もリポートを書かされ、文章作成などの業務を行っていた。当時を振り返って谷口さんはこう言う。

「いつ何をさせられ、今後どうなるかわからない状態…。心理的に追いつめられていました。まさに追い出し部屋です」

 学園の法人本部から突然呼び出しを受けたのは一昨年6月。指示通り、本部がある汐路(しおじ)学舎の会議室に行くと、事務方の中間管理職の男性からこう告げられた。

「漢字能力検定の1級と2級の過去問題を解くように」

 学生による授業評価アンケートの結果が低かったため、日本語関係の授業を教える能力があるかどうかを見極めるための「学長特命プログラム」、と説明されたという。

 こうして、事務方中間管理職立ち会いの下、漢検の過去問に取り組む日々が始まった。一日約3時間。途中、1時間置きに5分のトイレ休憩があるだけ。10月までの計13回、漢検の過去問を解き続けた。この間、他にも、日本語教育能力検定の過去問にも取り組まされた。

 谷口さんへの「指導」は9月に入るとさらに激しさを増す。プログラムを続けるため、すべての授業が休講になり、研究室の移動を命じられると、学内LANにつながったパソコンを取り上げられた。専門分野と関係のない授業の「見学」も指示され、毎回リポートが義務づけられた。10分単位で授業がどのような展開になっているか記録し、授業の感想を書き、その授業の良い点を3点列記するよう指導された。すでに授業停止になっていたにもかかわらず、自らの授業に取り入れたい内容も書くよう言われた。授業見学は翌2012年1月まで延べ120回近く。ことあるごとに反省文も書かされ、リポートと反省文の多くは手書きを強いられたという。

 名古屋女子大学は、学校法人「越原(こしはら)学園」が運営する創立98年の私学だ。07年に中学・高校を吸収合併し、法人名を「越原学園」に変更。関係者らの話を総合すると、この頃から、学園方針のほとんどの決定は、理事長、副理事長、常務理事の3人から成る常務委員会でなされるようになったという。理事長は越原一郎氏、副理事長は理事長の娘婿の越原洋二郎氏だ。こうした手法に反発した教職員らが同年4月、「名古屋女子大学教職員組合」を結成すると、組合員を対象にした、大学側からの「指導」が始まったという。谷口さんは組合結成当初から、組合副委員長を務めている。

 こうした状況のなか12年4月、谷口さんは「教授」から「助手」に降任。そして同年7月下旬、谷口さんがネット上で書いていた「名古屋某女子大学マンガチック」と表記したブログが名誉棄損等にあたるとして学園から解雇を言い渡された。学園は谷口さんに対し、名誉棄損による約1千万円の賠償請求訴訟を起こし、谷口さんも同年9月に解雇無効等の裁判を起こした。二つの裁判は現在、名古屋地裁で審理が続いている。

 アエラの取材に学園本部の総務課長は、電話口で、「(教職員研修室のことを)よくご存じですね。しかし、企業秘密であり、非常に敏感な部分でもあるので、一切お答えすることはできない」とだけ回答した。

AERA ※2013年7月8日号

2013年07月05日

「研究環境抜群」東北大はブラック企業、「大賞投票」でワタミに次ぎ現在2位

Jcastニュース(2013/7/ 4)

えっ、あの東北大学が「ブラック企業」? そう意外がる声が各所から上がっている。
 東北大学といえば「研究第一」を掲げる名門校だ。ところがよりにもよってその研究環境が問題視され、「ブラック企業大賞」の候補にノミネートされてしまった。

ベネッセ、東急ハンズなどと並びノミネート
 「競争力の高い研究者が、抜群の研究環境で指導します」
 「一人一人の研究者が競争力の高い研究に取り組んでいるため、国の研究費補助も大きくなり、研究環境が整備され、研究はさらに進展するという好循環になっています」
 そんな華やかなうたい文句を載せるのは、東北大学が新入生向けに配布しているパンフレットだ。
 東北大学は旧帝大時代から「研究第一」を学風とし、中でも理系分野ではノーベル化学賞学者・田中耕一さんらを輩出するなど、国際的にも名声が高い。
ところが2013年6月27日発表された「第2回ブラック企業大賞」では、東北大学は教育機関、しかも国立大学としては唯一、「ブラック企業」としてノミネートされてしまった。
ブラック企業大賞は弁護士、ジャーナリストなどからなる実行委が開催しているもので、今回が第2回目となる。企業をすべて実名で「名指し」してノミネートし、「賞状」を贈って労働環境の改善を迫るというもので、今回は2年連続登場のワタミフードサービスを始め、ベネッセコーポレーション、西濃運輸、東急ハンズなど8社が候補に入っている。
東北大学に対しては、これまでそれほど「ブラック」との評判があったわけではない。いったいなぜ、東北大学にこの汚名が降ってきたのか。

「新しい駒を探してください」と自殺
実行委員会ではその理由として、2つの事例を挙げた。
1つは2007年12月、同大大学院薬学研究科で助手を務めていた男性(当時24)が自殺した例だ。遺族の主張によれば、男性は自分の研究を優先できるとの約束で同年4月に助手になったものの、実際には仕事に忙殺され月100時間以上の時間外勤務、また生殖機能異常などの副作用を伴う抗がん剤の実験にも一人っきりで駆り出され、「もう子どもができない」と嘆いていたという。さらに指導教授からは「仕事が遅い。他の子を採用すればよかった」との叱責もあったともされ、結局男性は助手就任から8か月後、自らの所属研究室から投身自殺、遺書にはこう書かれていたという。

 「新しい駒を探してください」
宮城労働局は12年3月、心理的負担の大きさを理由に労災と認めた。また遺族は大学を相手取り、約1億円の損害賠償を求め現在争っている。
男性准教授(当時48)が12年1月末に自殺した問題も、同実行委のサイトでは挙げられている。准教授は工学研究科の気鋭研究者だったが、大震災で研究室が全壊、その対応に日夜追われることに。さらにようやく研究再開のメドが立った直後、大学側は突如、研究室の閉鎖を告げた。准教授は直後に自殺した(12年10月に労災認定)。
なお同大をめぐっては過去にも、2008年に自殺した大学院生(当時29)の遺族が、自殺の原因が教員の「アカハラ」によるものだと大学を提訴したことがある。「研究第一」の大学としては、いささか不名誉な状況だ。
「ブラック企業大賞」のページではノミネート企業を対象としたウェブ投票を行っているが、3日午後現在、東北大学はワタミに続く2位にランクインしている。この問題につき、同大学に取材を試みたが、担当者不在を理由にコメントは得られなかった。


2013年07月04日

新潟大学職員組合、減額分の賃金支払いなどを求め新潟地裁に提訴

新潟日報(7月3日)

新大職員組合が賃金支払い求め提訴

 国家公務員の給与改定にならった給与や退職金の減額は無効だとして、新潟大職員組合と教職員16人(退職者2人を含む)が3日、新大と国に減額分の賃金支払いなど計約2200万円を求める訴訟を新潟地裁に起こした。

 原告団や訴状によると、新大は昨年6月以降、文部科学省からの要請を受けて、昨年2月に成立した国家公務員の給与を削減する臨時特例法にならい給与や退職金を減額した。減額幅は給与が1・77~6・77%、賞与は一律9・77%、退職金は時期に応じて変わり、3年後以降の退職者は約400万円。同組合はいずれの減額にも反対し、新大と交渉したが、大学側が一方的に交渉を打ち切ったとしている。

 原告団は提訴後に記者会見し、職員組合委員長が「減額は人材流出を招き、教育の質にも影響する」と主張。国も相手取ったことについて「新潟大は(国立から)独立行政法人になったが、国からの介入が強くなった。強制力のない要請でも国に法的責任はある」と訴えた。

 新潟大は「訴状を確認していないのでコメントできない」としている。

 原告団によると昨年以降、山形大、京都大などの教職員組合も同様の訴訟を起こしている。

「給与削減は不当」と提訴-新潟大教授ら16人

北国新聞(7/3)

 国家公務員の賃下げに合わせて給与を削減されたのは不当だとして、全国大学高専教職員組合に加盟する新潟大学職員組合の教授や准教授ら計16人が3日、国と新潟大に未払い賃金など計約2200万円の支払いを求めて新潟地裁に提訴した。

 訴状によると、昨年2月に成立した国家公務員の給与を最大で9・77%削減する臨時特例法に合わせ、新潟大は昨年6月から教職員の給与を1・77~6・77%、賞与を9・77%削減。退職金も減額された。

 提訴後に記者会見した世取山洋介原告団長は「不意打ちでの減額は生活に大きな打撃を与える。人材流出を招き、教育の質にも影響する」と主張。


千歳科学技術大学不当解雇事件の第2回目口頭弁論、専修大学短大前学長諭旨免職事件の口頭弁論が開催される(4日,5日)

道私教組
 ∟●【連絡】今週、2事件の口頭弁論が行われます

【連絡】今週、2事件の口頭弁論が行われます

 今週4日(木)と5日(金)、千歳科学技術大学の不当解雇事件の本訴裁判で第2回目の口頭弁論と、専修大学北海道短大で起こっている2つ目の裁判(前学長を不当に諭旨免職処分)の口頭弁論がそれぞれ行われます。
 いずれの事件とも、大学現場で起こっているとはとても信じられないような事件として社会的耳目を集めているものです。長いたたかいが見込まれますが、引き続き傍聴支援などご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。

◆千歳科学技術大学事件
 不当解雇事件。大学の教育改革等の問題をめぐって被解雇准教授が学長らに宛てて送ったメールの内容が発端となり人格攻撃・解雇へと発展。正当な学内手続すらなく不当に解雇された事件の口頭弁論期日です。

 7月3日(木)10:15~ 札幌地裁7回法廷
…前回、法人側は誰1人法廷へと姿を現さず代理人弁護士丸投げの中で審理開始。

◆専修大学道短大の前学長諭旨免職事件
 道短大では既に8名の大量整理解雇が事件化していますが、今回から、前学長に対する言いがかり・嫌がらせ的な免職事件が新規訴訟として始まります。法廷は札幌地裁岩見沢支部です。

 7月4日(金)15:30~ 札幌地裁岩見沢支部(場所にご注意ください。)
…今回、原告本人の意見陳述が予定されています。

裁判は公開が原則です。法廷はどなたでも自由に出入りできます。
いずれの口頭弁論とも、終了後に付近で短時間の支援者集会を行いますので是非応援してください。

以上、よろしくお願いします。


京大職組、提訴にあたっての声明

京都大学職員組合
 ∟●職員組合ニュース2012年度第11号

提訴にあたっての声明

2013年6月17日
京都大学職員組合 中央執行委員会

○ご協力に御礼申し上げます
 京都大学職員組合の組合員計 96 名は、6 月 11 日 15 時半に、国立大学法人京都大学に対し、未払い賃金約 1,200 万円を請求する訴訟を京都地裁に提起しました。第 1 次原告団にご参加くださった組合員のみなさま、支部での運動を率先して進めてくださった組合員のみなさまに心から御礼申し上げます。
○労働法が認めていない高度の必要性の無い賃下げ
 国立大学法人の教職員は公務員ではなく、民間と同じ労働法の適用を受けます。公務員の賃下げが行われたとしても、それと同じ措置を受ける法律の根拠はありません。労働法の基本原則によれば、高度の必要性がない限り、賃下げは許されません。
 京都大学では、外部資金を多く獲得できているため、収入のうち、国からの交付金に依存する率は半分以下になっています。交付金が削減されても、教職員の給料を支払う財政的能力のあることを、法人側は団体交渉で認めています。財政的余裕があるのに賃下げを行うことは、法律に反するのです。
○不明瞭な賃金削減額の使途
 また、法人側は、復興財源確保を賃下げの理由としていますが、実際には、賃下げ分の金額がどこに行ったのかは不明です。しかも、2012 年度と 2013 年度では、国からの交付金の削減額は同じなのに、2013 年度の賃下げ額は 2012 年度の 1.5 倍になりました。このような不合理な措置が許されるはずがありません。
○社会的にも疑問の声が高まる賃金引き下げ
 OECD の調査によれば、日本は GDP に占める高等教育予算の割合が、主要国の中で最低ランクに位置しています。学生の経済的負担も多大なものとなっています。さらに、京都大学を含む国立大学では、私立大学よりはるかに低い賃金で働いている教職員が少なくありません。政府の進める景気浮揚策から考えても、公務員や国立大学の賃下げにはその足を引っ張る効果しかなく、社会的にも疑問の声が高まってきています。
○学生、教職員にとってより良い京都大学を作るために
 法人化によって政府から切り離された国立大学は、毎年考えられないほどの規模で国からの交付金の削減を受け続けています。存続するため、運営における独自の切り詰めを余儀なくされています。国立大学がこのまま政府の要請に唯々諾々と従い続ければ、日本の産業を支え、将来の人材を育成するべき教育・研究機関としての国立大学という制度自体が消滅するでしょう。私たちはこの訴訟を通じて、国立大学のあり方について社会に問題を提起したいと考えます。
 良質な教育環境、高水準の研究、安全な医療を提供するためには、人材の流出しない勤務条件を保障し、大学運営を支える教職員が安心して働けるよう、賃金水準を維持・改善することが大学法人の不可欠の責務です。今回の訴訟提起は、より良い京都大学を作っていく取組みです。また、教職員の賃金引き上げをはじめとする労働条件改善は、団体交渉で実現を迫ります。
 私たちの生活と、労働法の基本原則、そして、国立大学の将来を守るために、1 人でも多くの方々が訴訟に参加してくださるよう、心から呼びかけます。


金沢医科大 「教授選考無効」と提訴

中国新聞(2013年7月3日)

金沢医科大 「教授選考無効」と提訴

2教授 過半数同意ないと

 金沢医科大(石川県内灘町)で今年行われた消化器内視鏡学講座の主任教授選考が規定に沿って行われなかったとして、同大の教授二人が大学を相手取り、教授選考が無効であることの確認を求める訴訟を金沢地裁に起こしたことが分かった。
 訴状によると、同講座の教授選考で候補者が一人に絞り込まれ、三月二十八日に行われた医学部教授会の投票では、賛成が反対を上回ったものの白票があったため、教授会での決定に必要な過半数の同意は得られなかったとされる。
 だが、五月九日の教授会で勝田省吾学長は、白票を除いた投票結果で賛否を決する考え方もあり得、可否どちらとも決められない状況にあるとの認識を示した上で、学長としてこの候補を推薦すると発言。反対が相次いで継続審議になったものの、同二十三日の教授会で学長は「教授会では候補を決定できなかったので理事会に委ねる」と議論を打ち切ったという。理事会は六月一日付でこの候補を講座の主任教授に任命した。
 原告側は、大学の学則や教育職員選考規定で、教授の人事は教授会が審議すると決められ、最終候補者を決定する場合は出席教授の過半数の同意が必要とあることなどを理由に、今回の任命は無効だと主張している。
 原告の教授の一人は「提訴したのは事実だが、詳細は法廷で明らかにしたい」と述べた。一方、同大経営企画室は「提訴されたことは初めて聞いたので、コメントできない」と話している。


「孫を採用しろ」脅迫で大阪産業大学の元理事を逮捕

テレ朝(07/03)

 孫を採用するよう脅迫したということです。大阪産業大学の元理事の男が逮捕されました。

 孫を大学職員として採用するよう脅迫したとして、大阪産業大学の元理事(83)が逮捕されました。去年11月、大学幹部の男性に電話をかけ、契約事務員として勤務していた孫を正規職員として採用しなければ危害を加えるなどと脅迫した疑いが持たれています。被害者の男性が通話内容を録音し、警察に提出したことが逮捕につながりました。警察の調べに対し、北山容疑者は「事実におおむね間違いありません」と話しているということです。


2013年07月02日

27歳で返済1000万円、膨らむ奨学金 貧困の連鎖

毎日新聞(2013年06月20日北海道朝刊)

「高支持率」のウラで:検証・安倍政権/5 27歳で返済1000万円

 ◇膨らむ奨学金、貧困の連鎖

 「このままでは返済額が金利を含めて1000万円を超す。月五、六万円返して20年かかる」。北海道内の私立大から北海道大大学院に2011年春に進学した修士課程2年の男子学生(27)は、膨らんだ奨学金に肩を落とした。大学で月10万円、大学院で18万円借りた。将来を考えると気持ちがふさぎ、ここ数年は体調がすぐれず慢性胃炎を患っている。

 母子家庭のため、家計に余裕がないのは分かっていた。母には頼れず、アルバイトをして生活費を稼いできた。「私がいくら努力しても解決できる問題ではない」と声を落とした。

 大学院で専攻する社会学の研究テーマは「奨学金返済者の生活について」。奨学金を借りた学生がどう返済しているのか生活実態を探るのが狙いだ。だが、半年間の休学を含めて大学院在学3年目となり、2年間の奨学金は秋からもらえなくなる。取りあえず返済を猶予してもらうため再度休学し、将来のことをじっくり考え直すしかない。

 学生らが利用する日本学生支援機構の奨学金の貸与総額は年々増えて1兆円を超す。比例して返済の滞納も増え、裁判所への支払い督促申し立ては11年度に1万件を突破した。就職できても非正規雇用で、しかも低賃金の現実が返済の厳しさに拍車をかけている。経済的な理由で進学を諦める若者も多い。

 国に子どもの貧困対策を求め、若者たちが5月18日に東京都渋谷区の代々木公園に集まった。あしなが育英会などが呼びかけたもので、デモ行進しながら「子どもの貧困をなくせ」と叫んだ。

 札幌大2年の上口赳司(たけし)さん(19)も初めてデモに参加した。小学1年で母親を病気で亡くし、中学3年で父親の会社が倒産。父は幸い再就職先が見つかったが、上口さんは高校時代から奨学金の世話になり、今はあしなが育英会と学生支援機構合わせて月12万円を借りている。

 与野党の国会議員は貧困家庭の子どもも健やかに育つ環境を整え、教育の機会均等と就労支援を図るため、子どもの貧困対策法案を今国会に提出し、19日成立した。

 上口さんには、昨年あったあしなが育英会の集いで高校2年の女子高生が「ゲームクリエーターになりたい。卒業後は専門学校で勉強したい」と夢あふれる表情で語ったのが忘れられない。しかし、専門学校の学費が払えるだろうか。自分と同じように、高校3年になると進学すべきか悩むだろう。そのつらさが痛いほど分かる。

 上口さんは7月2日の誕生日で20歳になり、選挙権を持つ。貧困対策を進める法案が成立したが、若者の苦しい境遇はどこまで変わるか分からない。初めての1票は「子どもの貧困に国を挙げて取り組もうとする人に投票したい」と考えている。【千々部一好】

■ことば
 ◇日本の奨学金

 日本学生支援機構の奨学金利用者は2011年度時点で129万人いる。現在の奨学金は無利子の「第1種」と年利が最高3%の「第2種」があり、第2種が全体の7割を超す。滞納者は全体の約1割で、3カ月滞納すれば延滞料10%が加算され、クレジットカードなどが利用できなくなる。大学の学費が安い欧州や、給付型奨学金が充実している米国と異なり、日本は私費負担が原則だ。


「政治活動はしません」、映画大学が教授に求めた誓約書 「表現の自由」はどうなる?

弁護士ドットコム(7月2日)

国内初の映画単科大学である日本映画大学(神奈川県川崎市)が、「(学内において)一切の政治活動を行わない」とする誓約書への署名を教授たちに求めていたことが、このほど発覚した。映画関係者などからは、「表現規制ではないか」と疑問の声が上がっている。

同大学は2011年設立だが、報道によると、誓約書は前身である日本映画学校時代から存在していたという。しかし今回、教授に就任予定だった講師が誓約書を拒んで学校を去り、公開質問状を大学に提出したことで問題が表面化、大きな騒動となった。

神奈川新聞によると、大学側は「政治活動とは、特定の政治団体や宗教団体の考え方を学内に持ち込まないとの趣旨。教育現場の表現の自由を妨げるものではない」と主張している。しかし、映画関係者や他の芸術大学関係者たちは「表現の自由を捨てる自主規制だ」など、厳しいコメントを寄せている。

大学側は今後も誓約書を求め続けるかどうか検討中だというが、大学がこのような「誓約書」を教授に求めることは、どのような問題があるといえるのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

●今回の誓約書は「大学のあり方」と根本的に矛盾する

「『(学内において)一切の政治活動を行わない』という誓約書を、教員になる者に対して求めることは明らかに、憲法で保障されている表現の自由や学問の自由との関係で問題があるといえます」

猪野弁護士はこのように明言する。

「映画大学という大学で、研究教員に対してそのような制約を科すこと自体が、大学のあり方と根本的に矛盾するのです」

なぜ、そのように言えるのか。猪野弁護士は次のように説明する。

「大学の研究者には『学問の自由』が保障され、それには、どのように学生に教授するのかという自由も含まれます。そもそも、『表現の自由』によって当然に保障されている『学問の自由』があえて憲法で規定されているのは、学問研究が政治的対立を生む関係にあるからです。

それを大学が自ら否定して、教員に政治活動を行わない誓約書を求めるなどは言語道断です。表現の自由、学問の自由をあからさまに侵害するものです」

今回は、日本映画大学という私立大学で起きている騒動だが、私立の学校でも、憲法で保障された人権が問題になるのだろうか。

「このことは映画大学が私立であっても、結論が異なるものではありません。その私学の校風自体は尊重されるべきであったとしても、一律に政治活動を禁止することは、学問の自由や表現の自由を侵害するもので、明らかに公序に反するといえます。大学側がこのような規制をかけることは不当で、私学助成金を受けている立場とも相容れません」

●誓約書に署名させられた教員には「萎縮効果」が生じる

このように猪野弁護士は述べながら、次のように続ける。

「今回の誓約書で規制している『政治活動』とは、特定の政党や宗教団体のビラを学内で配布することだけを想定しているとはいえません。そのような誓約書ではないからです。そうなると、実際には、社会の矛盾を指摘するだけで政治活動と言われかねず、講義する内容の1つ1つに神経をとがらせることにならざるを得ません。

そもそも映画は、それ自体に社会的な問題意識が反映されたものです。ノンポリ映画だけが存在しているわけではありません。このような政治活動の禁止を求める誓約書というものは、署名させられた人に大きな萎縮効果を生み出すでしょう」

なぜ、萎縮効果が生まれるのだろうか。

「大学当局による教員に対する不利益処分は、些細なことを口実に使われる場合もあります。このような誓約書があるときは、そのような不利益処分を恐れて、萎縮してしまうのです」

最後に、猪野弁護士は大学がとるべき姿勢について、次のように述べている。

「内容がおかしければ、それは禁止という方法で対処するのではなく、批判によって対処するべきです。それが、表現の自由のあるべき姿です。映画という表現活動そのものを教育しようとする大学であれば、なおさら、そういえるのではないでしょうか」


2013年07月01日

大学にもある「追い出し部屋」-漢検の過去問解き、反省文、当事者が証言

AERA(2013/07/08)

大学にもある「追い出し部屋」-漢検の過去問解き、反省文、当事者が証言
◆名古屋女子大学文学部教授、日本漢字能力検定

解雇に脅える中国人非常勤講師たち、改正労働契約法の悪用

Record China 6月29日

 2013年6月27日、日本華字紙・中文導報によると、今年4月1日から施行された改正労働契約法により、日本の大学で働く中国人非常勤講師たちは大量解雇の危機に直面している。

 改正労働契約法によると、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、期間が契約で決まっている「有期雇用」の労働者が同じ職場で5年を超えて働くと、希望すれば期間の定めがない「無期雇用」に転換が可能に。これに対抗する形で、日本の多くの大学が非常勤講師の雇用期間を「上限5年」に定めた。

 非常勤講師の雇用契約期間を「通算5年まで」とする就業規則を制定しようとした早稲田大学は、首都圏大学非常勤講師組合から告訴されている。早大には2012年の時点で、約4300人の非常勤の教員が存在。そのうち約3800人が非常勤講師だった。これに対して、教授、准教授などの専任は約2200人。つまり教員の3分の2が非常勤であり、就業規則の制定は大きな影響をもたらす。

 非常勤講師のいわゆる「5年切り」は、早稲田大学だけでなく、その他の国公私立大学にも拡大。このため、首都圏や各都市の大学非常勤講師組合、学識者、大学関係者などを集めて、改正労働契約法の悪用を阻止する動きも活発化している。日本の大学で働く非常勤講師のなかには中国人も多い。専門家の試算によると、日本全国にある大学740校のうち1校あたり平均で10人の中国人講師が存在することから、全体で7400人ほどの人数になるという。そのうちの半数以上が非常勤講師である場合、少なくとも4000人の中国人講師が「5年切り」の陰に脅えて生活しており、事態は深刻だ。(翻訳・編集/本郷)