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 カテゴリー 2013年08月

2013年08月19日

未払い賃金請求訴訟、公正判決を求める署名に全力をあげよう!!

熊本大学教職員組合
 ∟●公正判決を求める署名,支援募金活動に全力をあげよう!!「赤煉瓦」第6号(8/8)

公正判決を求める署名,支援募金活動に全力をあげよう!!
--組合員は 1 人が最低でも 5 筆集めよう!!--

全国で8 単組,約500 名の組合員が提訴!!

 『赤煉瓦』№4(2013.8.5)でお伝えしたように,7 月4 日に新潟大学職員組合の16 名,7 月26 日に高知大学教職員組合の18 名が提訴したことによって,「臨時特例」に対応した給与減額と退職金減額問題で提訴した単組・原告は全国で 8 単組・約 500 名にのぼっています(2013 年7 月末時点)。これまでに提訴した単組・原告の内訳は次のとおりです。

2012 年11 月27 日提訴 福岡教育大       原告:4 名
           高専協議会           原告:281 名
           高エネルギー加速器研究機構 原告:6 名
2013 年 3 月26 日提訴 山形大           原告:7 名
     5 月24 日提訴 富山大           原告:55 名
     6 月11 日提訴 京都大           原告:109 名
     7 月 4 日提訴 新潟大           原告:16 名
     7 月26 日提訴 高知大           原告:18 名

 さらに東京学芸大学教職員組合,電気通信大学教職員組合,福島大学教職員組合が提訴の準備を進めています。

全大教が公正判決を求める署名,支援募金活動を提起!!

 福岡教育大教職員組合と全大教高専協議会の裁判は,年度内に結審を迎すえる可能性があります。そのため,全大教は7 月4 日に福岡教育大,高専協議会,高エネ研の組合員の裁判について公正判決を求める署名,支援募金活動を提起しました。今年 8 月から 11 月の間に全国で福岡教育大,高専協議会,高エネ研の裁判について,それぞれ50,000 筆の署名を集めて,裁判長宛てに提出するものです。
 
……以下,略……

日本の異常 大学教育

しんぶん赤旗(2013年8月19日)

日本の異常 大学教育

日本再生の柱(安倍政権)と言いながら
毎年、予算削減の怪


 安倍晋三政権が「世界の中で競争力を高め、輝きを取り戻す『日本再生』のための大きな柱」(教育再生実行会議提言)と位置づけるのが、大学教育です。ところが大学教育予算は10年連続で減らされ、増額される気配はありません。(浜島のぞみ)

各国と比較最低の水準

グラフ:国立大学法人運営費交付金の推移
 高等教育(大学や高等専門学校)の予算を国際比較すると、日本のお粗末さは一目瞭然です。

 経済協力開発機構(OECD)諸国のなかで、国内総生産(GDP)に対する高等教育機関への公財政支出は平均1・4%。これに対し、日本は0・7%と最低水準です。(図)

 さらに、高等教育機関への公財政支出の伸び率をみると、この10年で各国が支出を増やし、なかでも韓国は1・8倍に達しています。それなのに、日本はほぼ横ばいのままです。教育に対する姿勢の違いは明らかです。

 日本では、2004年の国立大学法人化を起点に、大学側の裁量で使える運営費交付金が、毎年、およそ1%ずつ減らされつづけています(図)。運営費交付金の8割程度を占めるのは「基盤的経費」。最低限の研究費、人件費、水光熱費、事務費など、大学運営に必要不可分な予算です。

東大と京大廃止に匹敵

 文部科学省国立大学法人支援課の担当者は「大学サイドから『予算が厳しい』という声が聞こえてくる。運営に支障をきたさないよう、削減に歯止めをかけ、予算を獲得していきたい」と話します。

 ところが安倍内閣は、概算要求でシーリング(上限)のしばりをかけ、運営費交付金を1%ずつ減額しつづける方針を変えていません。予算総額を減らし、特定の研究に重点配分する“アメとムチ”を続ける姿勢です。

 大学法人化以降、政府は、新しい学部開設やプロジェクトなどに対して審査のうえで交付する「競争的資金」を推進。基盤的経費とは別建てで、短期間で成果をあげる研究を優遇しています。

 国立・私立・大学で構成する「学術研究懇談会」は5月に提言を発表し、「(国は運営費交付金を)わずか10年間で1600億円も削減した。これは東大と京大の廃止に匹敵する額だ」と告発。「基盤的経費を削る方向性は研究者や大学を養わないことと同じ。国際競争力を確実に低下させる」と危機感をあらわにしています。

研究費少なく科学的検証できません

 大学キャンパス内の学生食堂や付属病院の廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製する循環システムの研究をしている山梨大学大学院の竹内智教授(工学博士)を訪ねました。

 実験室には大型の廃油回収タンクや精製装置が並びます。

 竹内教授は「教育・研究のためには科学的な測定に基づいて検証することが必要です。しかし、研究費がわずかなために計測機器を買えず、検証できない」と嘆きます。

 燃料へ精製する機械自体が高額であることに加え、成分分析器は1台で数百万円。十数項目の成分分析にそれぞれ1台ずつ必要です。

 バイオディーゼル燃料に関心が高まるなか、竹内教授の研究室では市民公開講座を開催してきました。「市民が持ち込む廃食用油が実用に適するかどうか調べたくても、測定機器が備わっていないためにできません」。研究を地域社会に還元できない歯がゆさを訴えます。

 資金を競争で獲得させるやり方では、すぐ息切れしてしまい、共同研究も進みません。

 「教育費・研究費がしわよせを受け、学生の基礎学力の低下にもつながるのが教育予算削減の問題です。全体的な底上げこそが必要です」


2013年08月14日

懲戒処分の元教授が北海道・旭川医大提訴 検体提供の正当性主張

北海道新聞(2013年8月14日)

 患者の血液などの検体を無断で製薬会社に提供したとして、旭川医大から2008年、停職1年の懲戒処分を受けた同大元教授=東京都在住=が、同大を相手取り処分の取り消しや、停職期間中の未払い賃金1018万円の支払いなどを求める訴訟を旭川地裁に起こしていたことが13日、分かった。

 訴状によると、元教授側は当時、学内には検体提供について、倫理委員会への届け出義務などを定めた手続き規定はなかったと指摘。日本臨床検査医学会の見解に基づいた教育目的の提供であり、「不当視されるものではない」としている。

 旭川医大は「弁護士に一任しているので、内容については申し上げられない」と話している。


2013年08月12日

「ブラック企業大賞 2013」授賞式、特別賞に東北大学

ビジネスジャーナル(2013年08月12日)

ブラック企業大賞で露呈、恐ろしい過労死の実態~ワタミ、東急ハンズ、人気アパレル…

 労働問題に取り組む弁護士や大学教授、労働組合(労組)関係者らが主催し、日本におけるブラック企業の“頂点”を決める「ブラック企業大賞 2013」。昨年に続いて第2回の開催となった同賞の授賞式が8月11日に開催され、ワタミフードサービスが大賞と一般投票賞を受賞した。
 主催者発表によれば、投票総数はウェブ投票と会場投票を会わせて3万501票。ワタミフードサービスがこのうちの72%を占める2万1921票を獲得した。同社代表者は授賞式に姿を見せず、賞状とトロフィー、副賞の労働六法は、主催者の一人が“代理”で受け取った。

<受賞結果>
大賞:ワタミフードサービス
特別賞:東北大学
業界賞:クロスカンパニー(アパレル)
教育的指導賞:ベネッセコーポレーション
一般投票賞:ワタミフードサービス

 今回ノミネートされた国立大学法人・東北大学を含む8社では、計7人が主に長時間の過重労働によって死亡している。主催者の配布資料やこれまでの報道によれば、それぞれ以下のような状況だった。
 大賞を受賞したワタミフードサービスでは2008年6月、入社2カ月の女性社員(当時26歳)が精神疾患を発症し過労自殺した。手帳には「どうか助けてください。誰か助けてください」などと書かれていた。
 特別賞の東北大学では2人が死亡。ノミネート理由になった1人目の死者は薬学部の助手(当時24歳)で、07年12月に「新しい駒を探してください」との遺書を残して自殺した。
 同大学の2人目の死者は工学部の准教授(当時48歳)で、東日本大震災で研究室が全壊、再開を目指して奔走したが、大学から2年以内の閉鎖を告げられて半月後に自殺。
 業界賞となったのは若い女性に人気の高いアパレル企業・クロスカンパニー。大学を卒業した年の09年4月に就職した女性社員が10月に死亡した。「売上未達成なのによく帰れるわよねえ」というマネージャーの発言もあった。
 受賞にはいたらなかったが、運送会社の西濃運輸では、入社4年目の事務職男性(当時23歳)が鬱病を発症して、10年12月に過労自殺。退職届けを3度出したが、受理されなかった末に死亡した。
 飲食チェーン・ステーキのくいしんぼを展開するサン・チャレンジでも、死亡した西濃運輸の事務社員と同年代の男性店長(当時24歳)が10年11月、90日目の連続勤務が終わった直後に過労自殺。
 大手量販店の東急ハンズでも、店舗勤務の男性(当時30歳)が04年3月、帰宅して家族に「しんどい。もう限界や」と話した後、就寝中に心臓に異常をきたして過労死した。
 ノミネート8社のうち、過労死者が出ていないのは、「餃子の王将」で知られる王将フードサービスで働き、過労死基準を超える長時間労働から鬱病を発症した男性(今年2月の提訴時に27歳)と、「進研ゼミ」などを展開する教育大手ベネッセコーポレーションで、いわゆる「追い出し部屋」に異動になった女性社員だけだ。
 ベネッセ以外の8人は労働基準監督署から労災認定されており、ベネッセのケースも昨年8月、東京地裁立川支部が「(追い出し部屋は)違法な制度」で「人事権の裁量の範囲を逸脱したもの」との判決を出している。
 このほか東北大学では08年に、2年連続して学位論文の受取を拒否された理学研究科の大学院生(当時29歳)が自殺するケースも起きているという。

●起訴されていないノミネート企業経営者
 ジャーナリストでブラック企業大賞実行委員・竹信三恵子さんは、授賞式の後半で「何をもってブラック企業とするか?」という定義の問題について、「労働者の生存権を脅かす」ことが共通しているとして、次のように説明する。
「法律または法律の趣旨に反した労務管理によって、労働者の生存権を脅かすような人権侵害をしたり、労働者の使い捨てによって利益を上げることがビジネスモデルになっているような企業」
 また、人権をペスト菌にたとえて敵視する企業もあるという。
「基本的人権、人権尊重、人権蹂躙、人権擁護。これは、1度抜けば魔剣の切れ味で相手を黙らせることができる言葉である。この魔剣を振り回す人権教の狂信者が増えている。経営やビジネスといった最も遠い領域にまで、人権というペスト菌が蔓延しはじめている」
 実行委員の1人でルポライターの古川琢也さんの説明によると、これは王将の新人研修などを手がけている企業・アイウィルの社長が、同社の会報誌に書いた内容。古川さんは「(フランス人権宣言以降の)過去300年ほどの人類の歴史を否定している」と言う。
 ワタミも、会社の方針をまとめた「理念集」というタイトルの教典で、「365日24時間死ぬまで働け」という一節を収録している。娘を過労自殺で亡くした遺族は、これを「未必の故意」「殺意」と非難している。

●刑事事件に問えないか?
 だが、違法な労働条件などにより社員が過労死しても、その企業の経営者が刑事事件で起訴されたり、有罪になったという話は聞かない。
 授賞式のあと、今回ノミネートされた企業と同じようなケースで代表者が起訴されたという報道がないかどうか、筆者が新聞記事データベースを使って調べると、1つもヒットしなかった。
 従業員を過労死させたというだけでは、違法にならないからだ。
 労働時間には1日8時間、週40時間までという上限が労働基準法で定められているが、労使が協定を結ぶことで、これを超えて労働(残業)させることができる。ところが、残業時間には法的な上限がないため、過労死基準を超える協定を締結すれば、従業員を過労死させただけでは罪に問えない。
「ブラック企業大賞」実行委員会の佐々木亮弁護士は、会場から「過労死を出したノミネート企業の経営者を、業務上過失致死など刑事事件に問えないのか?」との質問に、次のように答えている。
「『刑事責任の問うほどの過失があったとするのは難しい』と検察官が判断することもあり得る。仮に告訴・告発しても、不起訴になる可能性は高いと思う。(起訴されても)無罪になり、(経営者は)悪くなかったと考えられてしまう懸念もある」
 ではブラック企業に入社してしまったら、どうすればよいのか?
 授賞式の最後で、実行委員の1人で東京東部労組の須田光照書記長は、「こうした企業経営者に対して、1ミリたりとも幻想を持ってはいけない」とした上で、とにかく横のつながりを持てと訴える。
「ブラック企業に入ってしまったらどうするかが問われている。ブラック企業の被害者は自分が悪いと思い込んでいる」
「ブラック企業で働いていても、『緩やかな紐帯』や『連帯』などいろいろな言い方があるが、団結する、つながっていくことだと思う」
「ひどい事例が先行するマスコミにはなかなか載らないが、労働条件を改善させている組合はあちこちにある。展望があると強調したい」
 もし自分がブラック企業の被害者になってしまったら、まずは社外の労働組合や支援組織などに相談することから、突破口が開けるかもしれない。
(文=佐藤裕一/回答する記者団)


[関連ニュース]
「ブラック企業大賞」選考委員が語るワタミとこの国の病根

2013年08月10日

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学は,不当労働行為事件について地労委決定と救済命令(7月24日)に従わず,8月8日,中央労働委員会へ再審査を申し立てた。

 (参考資料)
 ■北海道労働委員会 天使学園事件(平成23年道委不第31号)
  ∟●命令書概要版(PDF形式 145KB)
  ∟●命令書全文・記号版(PDF形式 304KB) 

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学不当労働行為事件(平成23年道委不第31号事件)について北海道労働委員会は7月24日、救済命令を発しました。それに対して学校法人天使学園(近藤潤子理事長)は、8月8日に中央労働委員会へ再審査申し立てを行いました。
 一連の動きに関して、教職員組合としての見解を表明します。

天使大学教職員組合
北海道私立大学教職員組合

〔1〕救済命令に至る経過
 天使大学教職員組合(以下、組合)は、2011年12月末、北海道労働委員会(以下、道労委)に救済を申立てた。「天使大学不当労働行為事件」は1年7ヵ月余の審査を経て、7月24日に救済命令が交付された。同申立ては、①ハラスメント事案に関わる配置転換等の労働環境調整の団交拒否,②就業規則に関わる懲戒委員会規程及びハラスメント規程改定に関する団交拒否,③組合による学内の空室利用について、その決裁要件を他の団体等より重くしたことへの組合に対する支配介入,④教授会が承認した教務部長人事について慣例を破り、理事会で投票により組合代表であった教務部長人事を否決したことは組合員への不利益扱いという4点について救済を求めたものである。命令では①②について救済を認め、法人に対してポストノーティスによる謝罪を命じた。 一方で③④については、組合の申立てを棄却した。

〔2〕命令に対する組合の見解
 2009年11月の学長選挙において前学長(現理事長)が退き、2010年4月より現学長体制がスタートしたが、学長公選制撤廃、学内諸規程の矢継ぎ早で一方的改悪や教学自治への介入が続き、これに危機感を覚えた教職員は2011年2月に組合を結成するに至った。過半数組合として理事会と向き合う組合に対し、理事会は当初より徹底した組合敵視策を取り続けてきた。
 組合としては、申立て事項の全てが救済されなかったことは極めて遺憾であり、特に上記④は、従来の教学人事の任用の慣例を破り投票に持ち込み、保留票も多い中で組合代表であった教務部長を否決したことは、この人事に先立つ関連規程の改定等などからも恣意的な行為を疑わざるを得ないと考えている。しかし、理事会が「組合員である」と言葉に出していないが故に立証ができないとして棄却されたことは、甚だ残念である。とは言え、①②の団交拒否については厳しく命令書にて断罪したこと。同時に、審査段階での法人側の「組合は、組合員の一部に人事権を持ち経営上の機密に触れる教授を構成員としており労組法上の労働組合にあたらない」という組合そのものを否定する稚拙な主張に対しては、これを却下したこと。さらにポストノーティスを認めたことは十分に評価すべき命令であったと考えている。

〔3〕法人理事会の中労委再審査申立てと、法人としての資質
 組合としては、一部不満の残る救済であったとはいえ、本命令を甘受し学内の混乱を早期に収拾して、より良い教育研究環境を取り戻すために労使関係の改善に着手すべく対応を協議していたところである。その矢先、法人は7月31日に「中央労働委員会への再審査申立て予定」を組合側へ文書にて通知してきた。同命令の再審査申立てにあっても、その履行義務は免れるものではない。法人は命令の真意をくみ取り、教学への支配介入に固執してきたこれまでを顧み、その反省の上に、命令の履行と労使関係改善のために努力する姿勢を社会的に示すべきときである。
 組合は、労使関係の早期正常化のため、早々に団体交渉を通じて共に課題検討が行えるよう準備を進めてきた。しかし、法人側は、団交拒否について命令書で指摘されたようにまたもや自己の主張に固執し、さらにこの事態を長期化させようとしている。学校法人という公的機関としての責任やステークホルダーである学生等の利益を考慮しているとは思えない。この度の理事会の判断には、学校法人の責任者としての適性についても疑いを持たざるを得ない事態である。理事会が、このまま道労委による命令を履行せず平然とし続けるならば、その姿勢は断罪されなければならず、組合としては理をもって堂々と権利を行使し、その対応にあたっていく決意であることを抗議とともに表明する。

〔4〕法人理事会の民主化を
 法人理事会は、現学長を含め2名の教学理事を除き、理事長以下全員が80代前後であり、学校法人経営を担う力量には甚だ疑問が残る。そのような中で私学法改正、寄附行為を金科玉条のごとく振りかざし、理事長をはじめ一部の理事らによる専断的行為により教学組織に混乱をもたらす結果となっている。また、評議員会、監事らも理事会のみが選任するものとなり、また理事長アドバイザーが常任監事となるなど自浄作用が働く仕組みは皆無に近い。教育の質を担保する教職員の欠員状態解消より、次々と法人側の労務対策役員を補充するなどしていることがその証である。また、顧問弁護士も理事者の縁戚にあたる者を採用し、組合対策費など係争事件ごとに多額の報酬が支払われている可能性が高く、理事長や一部理事による大学の私物化の様相が垣間見える。この度の命令不履行と中労委再審査申立ての一連の行動も、学校法人を預かる理事者の立ち振る舞いとは思えず、自らの主張に固執し大学全体を混乱に貶める行為と言えるのではなかろうか。
 私たちは法人理事会が教学との対立関係を解消し、正常な労使関係構築と大学運営において力を合わせることを切望するが、そのためには現理事会体制の刷新が必須であると言わねばならない。救済申立てから一年半に亘る調査、審問を経て、多くの教職員が理事会の刷新こそが問題解決の第一歩であると認識できたことが今回の教訓であることをこの機会に付言する。

〔5〕冷静な対話を
 現理事会を先導する一部理事の方々へ申しあげたいのは、組合および大学教学への対立的感情を捨て、本学の理念である内省性を高め、この事態に終止符を打つべき時期であることを悟られ、出処進退を明確にされたいということである。道労委の命令に服し、大学人に相応しい姿勢を呼び覚まし、労使が対等にして公平な話し合いのテーブルに就くことを、最後に重ねて呼びかけるものである。

以 上

橋本徹、大阪市立大の学長選 廃止の意向表明

毎日新聞(2013年08月09日)

橋下大阪市長、市立大の学長選、廃止の意向表明

 橋下徹大阪市長は9日、大阪市立大の学長を教職員らの投票などで選ぶ制度を廃止する意向を表明した。今後は橋下市長の意向を反映させた選考会議で選定する方針。市役所で記者団に明らかにした。

 橋下市長は「僕の意見を反映させる。何の責任もないメンバーが1票を投じるなんてまかりならない。選挙で選ばれた市長が任命するのが民主主義だ」と話した。

 市立大によると、現在は、全教職員が学長候補者を投票し、辞退者を除く候補者から、常勤教員らが2次投票。その結果を考慮し、大学幹部や有識者でつくる理事長選考会議が決定する。

 市立大は「大学の自治を重視し、教職員の意向を反映できる仕組みにしている」と話し、国立大の多くが同様の制度を導入しているという。現在の西沢良記学長の任期は今年度末までで、9月ごろから投票が行われる予定だったが、見直しを検討している。


[関連ニュース]
橋下氏、大阪市立大学長人事での教職員投票を否定
橋下大阪市長、市立大学長選認めず 「選ぶのは市長」

2013年08月09日

早稲田大学が今度は無期転換回避で迷走中? さらに私大連合会がアパルトヘイト化を要請

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●『控室』(2013年7月24日)

早稲田大学が今度は無期転換回避で迷走中?
さらに私大連合会がアパルトヘイト化を要請

 早稲田大学は今春、突然非常勤講師の就業規則を制定し5年の更新上限をつけたため、労基法90条違反として4/8に当組合委員長・松村比奈子と早稲田大学名誉教授・佐藤昭夫両氏に刑事告発され、6/21に非常勤講師ら15名に刑事告訴されました(なお東京検察庁は6/4に告発を正式受理)。すると早稲田大学は、今度はクーリング(期間)を入れることを非常勤講師らに強要し始めています。また日本私立大学団体連合会は6/26、文科大臣に対し、私立大学の全有期契約労働者について労働契約法の適用除外を要請しました。 7/10、当組合はこれらを厚労省にて記者会見で公表しました。

(1)事実の概要
 具体的には、法学部で「今後の授業計画に関するアンケート」と称して、6ヶ月の空白期間を空ければ再契約すると誘導し、どの時期に空けるかを申告させようとしています。しかもそれは「労働基準法(ママ)の改訂」のためであり、英文版の説明メールでは、労働法令を守るためとも説明しています。また日本私立大学団体連合会は6/26、文部科学大臣に対し大学の特殊性を訴え、私立大学の「有期契約労働者」の労働契約法からの適用除外を要望しました。これは大学におけるアパルトヘイト体制の要求に他なりません。

(2)クーリング期間強要の背景
 有期雇用労働者の契約更新が5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期雇用に転換できるという5年ルールが新たに導入された改正労働契約法が4/1から施行されました。ただし6ヶ月以上の「クーリング」期間があれば、通算契約期間に含まれないとされています。この法改正で、複数の大学で非常勤の契約に新たに上限を設ける動きがあります。

(3)「今後の授業計画に関するアンケート」
 7月初め、早稲田大学・法学部の語学関係の非常勤講師たちに対し、「今後の授業計画に関するアンケート」が配布されました。そこには「労働基準法(ママ)の改訂」のためと称して、5年更新で契約を打ち切るが「一且六ヶ月の休職期間を置いたのちに再契約を結ぶという方針」が示されたとしています(しかしそのような方針は今まで公表されたことはありません)。しかも「5年継続して勤められたならば、1学期の間お休みしていただくということになります」とし、非常勤講師たちに、更新してもらいたければ、いわゆる「クーリング(期間)」を置けと要求しています。
 さらに文中では「カウントをリセットするための休職期間」として、複数の学期を選択するよう指示しています。これでは、無期転換を避けるための方策だと公言しているようなものです。つまり厚労省サイトにある「労働契約法改正のあらまし」5ページに記載の「無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換権を放棄させることはできません(法の趣旨から、そのような意思表示は無効と解されます)」に限りなく近い対応です。

 (4)なぜクーリングの強要なのか?
 まず、大学は非常勤講師を必要としており、しかも可能な限り長く働いてもらわなければ困るという事情があります。しかし一方で、有期雇用のままにしておきたいと考えています。そこで早稲田大学は当初、非常勤講師の無期転換を回避するために違法な手続きで就業規則を作り、更新5年上限をかけようとしましたが、これに対し刑事告発・刑事告訴がされました。仮にその就業規則が有効だとしても、4000人の非常勤講師に対して、5年上限を導入するのは非現実的です。2018年に4000人を総入れ替えして大学の質の保証さるとも思えません。また非常勤講師の多くは、すでに何年も契約更新を重ねてきています。その状態で一方的に更新上限を通知しても、労契法19条の期待権が否定されるわけではありません。
 そのため、5年上限以外の方策で無期転換を回避する必要が大学に生じました。それが、今回のクーリングの強要です。

 (5)クーリング強要の矛盾点
 大学は非常勤講師に対して、5年上限の理由を労契法対策ではなく、「Waeda Vision 150」構想により教育研究者の流動性が必要であるからと説明しています。しかし6ヶ月のクーリング後の再契約はその流動性を否定するものです。アンケ-トに添付された英文メールでは、労働法令を守るために行わざるを得ないという趣旨の説明もしています。
 結局、大学の一連の対策の目的は無期転換阻止のみであり、法の趣旨である雇用の安定を否定し、不安定雇用を固定化するためだけに行われています。
 マツダの「派遣切り」地裁判決(2013年3月13日)は、「単にクーリング期間を満たすためだけの方便として導入されたのは明らか」として、雇用身分の変更制度を違法と判示しました。この早稲田大学の件もこれに該当することは明らかです。

 (5)私立大学全体の問題
 しかしこのような異常なまでの無期転換阻止の動きは、私立大学全体に波及しつつあります。日本私立大学団体連合会は6/26、文部科学大臣に対し大学の特殊性を訴え、私立大学の「有期契約労働者」の労契法からの適用除外を求める要望書を提出しました。5年上限・クーリングの強要ができなければ、残るのは法の適用除外です。この要望書では、大学における研究者の流動性・若手研究者の人材育成を根拠にしながら、なぜかこれらとは関係の薄い非常勤講師や非常勤職員を含めた「有期契約労働者」全体の労契法からの適用除外を要望しています。これはまさに期間の定めがあることを理由にした不合理な労働条件の要求(労契法20条違反)であり、かつ大学におけるアパルトヘイト体制の要求に他なりません。
 このような「法の下の平等・社会的身分による差別の禁止」を定めた憲法14条を平気で踏みにじる高等教育機関の要求に対して、組合は今後も徹底抗戦していくつもりです。


私大4割が定員割れ 地元志向、資格系が人気―私学事業団

時事通信社(2013年8月8日)

 今春の入学者数が定員割れした4年制私立大学の割合が前年度比5.5ポイント減の40.3%だったことが8日、日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)の調査で分かった。昨年より18歳人口が増加したことが主な要因だが、都市部よりも地方での入学者数の増加率が高く、近年の地元志向が改めて浮き彫りとなった。

 調査によると、募集停止などを除いた全国576校のうち、定員割れしたのは前年度より32校少ない232校。定員に占める入学者の割合を示す「定員充足率」が50%未満だった私大は1校減って17校だった。

 
[同ニュース]
入学者定員割れの私大、昨年度より32校減
私大の40%が定員割れ、今春 18歳人口増で一時改善
私立大学定員割れ40.3%、昨年度より改善

2013年08月08日

新潟大学究極のピンチ、総額百億円の医療装置導入に関する不正契約の真相

新潟大学職員組合
 ∟●新潟大学問題特集 No. 2(新潟大学究極のピンチ 総額百億円の医療装置導入に関わる不正契約の真相 (その1))
 ∟●新潟大学問題特集 No. 4(不正契約問題 事件の核心に迫る 真相 (その2))

追手門学院大、教授会を学長諮問機関に

全国私塾情報センター
 ∟●追手門学院大、教授会を学長諮問機関に(2013年8月7日)

 追手門学院大学は8月5日、これまで大学運営で意思決定に関わっていた教授会を学長の諮問機関に位置付け、学長の権限を強化したと発表した。学校教育法は教授会について「重要な事項を審議する」と定めており、多くの大学で意思決定に関わっているのが現状。追手門学院大は2012年から機構改革に本格的に着手。昨年4月には選挙による学部長の選考を廃止し、学校法人の理事会が候補者を選考・任命するようにした。教授会については、6月に文科省に届け出る学則を改正、7月に学内の規定を改め、学長の諮問機関に位置付けた。

文科省、研究力に応じて22大学等に計64億円配分

リセマム(2013年8月7日)

 文部科学省は8月6日、2013年度「研究大学強化促進事業」の支援対象機関と配分額を発表した。22の大学と研究機関に計64億円支給する。

 同省では、世界水準の優れた研究活動を行う大学や研究機関の増強を目指し、2013年度より研究大学強化促進事業を開始。指標に基づく評点とヒアリング審査に基づく評点に基づき合議審査を行い、支援対象機関と配分額を決定した。

 配分額は、4億円が東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学の4大学。

 3億円が筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学、電気通信大学、大阪大学、広島大学、九州大学、奈良先端科学技術大学院大学、早稲田大学の9大学と自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構、情報・システム研究機構の3機関。

 2億円が北海道大学、豊橋技術科学大学、神戸大学、岡山大学、熊本大学、慶應義塾大学の6大学。

 支援期間は10年で、5年後に見直し・入替えも検討するという。


今春卒業の学生 2割が安定した職に就けず

NHK

 この春、大学を卒業した人の就職率は2年連続で改善しましたが、文部科学省がすべての大学生の進路を詳しく調べた結果、5人に1人は安定した職に就いていないことが分かりました。文部科学省は大学とハローワークの連携を進め就職支援を強化したいとしています。

 文部科学省は、毎年、5月1日現在で、すべての大学生の卒業後の進路を調べています。それによりますと、この春、4年制大学を卒業した55万8853人のうち、正社員や自営業など雇用期間に制限のない職に就いた人は35万3173人で全体の63.2%でした。
 一方で、契約社員や派遣社員などが4.1%に当たる2万2786人、アルバイトなど一時的な仕事に就いた人が3%に当たる1万6850人、そして進学も就職もしていない人は7万5928人と13.6%を占めています。
 文部科学省などは、毎年、大学生数千人を抽出して就職状況を調べていて、ことしの春に卒業した人の就職率は93.9%と、去年をわずかに上回って2年連続で改善しましたが、詳しく調べると5人に1人は安定した職に就いていないことが分かりました。
 文部科学省学生・留学生課の辻直人課長補佐は「正規雇用を希望しながら望まない形で社会に出ていかざるをえない学生がいる。職業教育を充実させるほか、大学とハローワークの連携を進め就職支援を強化していきたい」と話しています。


2013年08月06日

早稲田大学を刑事告発、首都圏非常勤講師組合 松村比奈子委員長インタビュー

▼早稲田大学を刑事告発!非常勤講師と驚愕の「偽装選挙」:松村比奈子インタビュー①

▼平均年収306万円!非常勤講師の耐えられない格差:松村比奈子インタビュー②

▼非常勤講師問題から見えるもの 自立した国民をつくる教育とは:松村比奈子インタビュー③

首都圏大学非常勤講師組合、ブラック早稲田大学を刑事告発

BLOGOS
 ∟●ブラック早稲田大学を刑事告発-教員の6割占める非常勤講師4千人を捏造規則で雇い止め|松村比奈子氏(2013年07月29日)

ブラック早稲田大学を刑事告発、教員の6割占める非常勤講師4千人を捏造規則で雇い止め

 非常勤講師の5年雇い止めをめぐる問題で、早稲田大学を刑事告発した首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長 にインタビューしました。その要旨を紹介します。(※本文中のゴシック体はインタビューの設問です。byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

教員の6割占める非常勤講師4千人をねつ造した就業規則で5年雇い止め

――ブラック早稲田大学を刑事告発
 首都圏大学非常勤講師組合 松村比奈子委員長 インタビュー

労働契約法改正で非常勤講師が5年経過し
無期転換しても専任の教員になれるわけではない

 ――今回の早稲田大学における非常勤講師雇い止めの背景にあるのが労働契約法改正問題ですが、そもそも非常勤講師は5年経過して無期雇用に転換されたとしても専任の教員になれるわけではありませんよね?

 そうです。今年4月から施行された労働契約法改正は、すべての有期雇用労働者が5年を超えて更新していく場合は、6年目に労働者の申し入れにより無期雇用に転換できるという画期的なルールが導入されたと言われているので、私たちも無期雇用とはすばらしいなと最初は思いました。

 ところが、いろいろ考えていくとそうではない。たとえば大学の非常勤講師は細切れパート労働なんですね。極端な場合は週1回、大学で1コマ90分だけの授業をやることもあります。その場合に、それが無期雇用に転換されるというのがどういうことかというと、お互いに辞めたいと言い出さない限り、週1回1コマの授業がずっと続くというだけのことです。労働条件は直近のものでかまわないと法律の中にも書いてあるので、賃金が上がるわけでもありません。ただ単に、カリキュラムの変更などがない限り働き続けられるというだけです。それは今回の労働契約法改正以前からそうでした。授業が存在していればずっと雇用が継続されて、10年も20年も働き続けている非常勤講師は多かった。だから事実上、私たちは無期雇用されていたので、「無期雇用に転換されました」という言葉ですごく評価されたような気がするけれど実はまったく現状は変わらないわけです。

「任期付き教員の無期雇用」への波及を恐れた?
 ――それを早大当局は誤解して、5年雇い止めを強行してきたということでしょうか?

 早大は労働法学者の先生が2人も理事会に入っているので、この法律の趣旨を知らないはずはありません。一般企業や他の大学のような誤解や勘違いというレベルではないと思います。

 私たちが考えている理由は2つあります。1つは、有期雇用の研究員や任期付き教員が無期転換されると、立場的には専任教員になるので、その場合は財政負担が出て来ますので大学当局は非常に困るわけですね。そういう流れに非常勤講師の無期転換がつながる危険性があると早稲田大学は考えたのではないでしょうか。

 もう1つは、労働契約法改正で非常勤講師を無期転換した場合、将来的に雇い止めする事態になっても労働者側がおそらく反発してくるのではないかと考えたのだと思います。今は雇い止めしやすいが、将来的には雇い止めが困難になることを恐れたのではないでしょうか。

 ――5年雇い止めの就業規則をつくるために、大学側はいろいろ不当なことをやっていますね。

 早稲田の中で非常勤講師の就業規則がつくられているらしいということに私たちが気づいたのは、去年の12月です。それでいろいろと資料などを調べてみたら、どうやらかなり早い段階で早稲田はこの件について対策を考えていたということが分かりました。少なくとも私たちが把握している範囲では、遅くとも昨年11月には労働契約法改正に向けて早稲田内の任期付き教職員を何とかしなければいけないと話し合っていました。どこの大学でも、雇用管理は非常にルーズなところがあったので、労働者側はこの法律が出てきて期待をするのではないか。だからそれに対抗する必要があると考えたのだろうと思います。

 労働契約法の今回の問題では6年目に入る前に18条で規定された無期転換を阻止する必要があるから5年上限を就業規則でかけてしまえばいい。ただ単純に5年上限をかけると、労働契約法の趣旨に反するということで裁判などの問題が起きるかもしれない。そういうことを昨年11月の時点で予測しているんですね。

 その後、今年1月にもいろいろ議論されているようなんですが、非常勤講師の方にいきなり送りつけてきた就業規則には、「早稲田ビジョン150」という早稲田の将来計画を推進するために、このような対応を取らせていただきますという文書が来ています。要するに、昨年11月時点での早稲田の考え方によれば、単に5年上限にすれば労働契約法の趣旨に反することが明白になってしまうので、何か別の理由が必要だろうと考えて、「早稲田ビジョン150」に基づいて「教員を流動的に雇用する」というのがいい。これを使おうということになったのではないかと思われます。

 実際に私たちは、早稲田の職員が持っている「非常勤講師から就業規則に関する質問が来たらどう対応するか?」というマニュアルを入手しました。そのマニュアルには徹頭徹尾「早稲田ビジョン150」を根拠に、「5年上限や4コマ上限について説明してください」ということが書かれています。明らかに労働契約法改正18条に対する対策が、早くから検討されていたということが分かります。

 それから、20条の対策もあります。20条というのは、有期のみを理由とした差別の禁止です。少なくとも非常勤講師は、授業を行っている段階においては専任教員と全く責任は異なりません。ですが、専任教員と非常勤講師との間には説明の付かない賃金格差がありますので、何かそこに職務内容の格差を設けないと、説明がつかないということで法に引っかかる可能性がある。これは早稲田だけの問題ではありませんが、そういう理由で4コマ上限を設け、一方で専任教員にはもっとたくさんコマ数を持てと言って、専任教員と非常勤講師ではもともと職務内容が違うんだという形を取ろうとしている。そうした動きがあったことが今年1月までの大学側の資料等を調べると分かってくるんですね。

“幻の信任投票用紙”
 ――実際に新しい就業規則をつくる際には、労働基準法では労働者の過半数代表から意見を聞く義務がありますが、この点についての経緯はどうだったのでしょうか?

 そうしたことは、労働法の先生が理事ですから知らないわけはありません。ですから早大当局は実際に非常勤講師の教員ボックスに労働者代表を選ぶ信任投票用紙を配布したと言っています。しかし、大学当局が配ったと称する春休み期間に非常勤講師の中で見た人が誰もいないのです。ですから、私たちはこれを“幻の信任投票用紙”と呼んでいます。

 ――非常勤講師の皆さんが春休みで見る機会がない時に用紙が配られたということですか?

 そういうことですね。たとえば法学部では2月6日からはロックアウトされてしまう。閉室されて大学に入ることができなくなるので、その期間に非常勤講師が来ることはありません。大学のホームページによると、ロックアウトは2月6日から2月23日までと書かれています。大学に入ることもできない時期に、大学側は配布したと言っている。

 また、その幻の信任投票用紙には、すでに立候補者名が書かれていました。早稲田大学には7つの事業所があるようなのですが、それぞれの事業所の代表の氏名が書かれていて、それを信任してくれということなんです。そして不信任の場合のみ郵送で投票用紙を送れとあり、しかもその郵送先は選挙管理委員会ではなく、専任の教員組合内です。しかも不信任にする場合は、その事業所名と代表候補者名を書き、自分の所属と自分の氏名を書いて判子まで押さなければならない記名投票なんですね。非常勤講師にとって専任教員というのは、自分の授業の雇い止めに関係してくる人達です。決めるのは教授会ですが、専任教員に自分の名前が知られるということは自分のクビが危うくなる危険性がある。とてもそんなことはできるはずがありません。しかも投票期間は2月14日から28日までの2週間で、すでに候補者は決まっている。そうした状況からして、非常勤講師が投票できる可能性はほとんどありません。

「幻のポータルサイト」と「誰も見ない教員ボックス」
 ――大学側はサイトに掲示したと言っていますね。

 そうです。早稲田大学には教員が見られるポータルサイトがあるのですが、大学側はそこに掲載したと言っています。ですが、そもそもポータルサイトを見る義務は非常勤講師にはありませんでした。しかも年度の授業は1月で終わっています。次の契約更新で授業が始まるのは4月ですが、普通、大学というのは次年度の授業に関してはすべて郵送で文書を送ってきますから、そういう時期に掲載しても、ポータルサイトを見る人はいないでしょう。ですから周知したことにはならないのです。

 それから、政経学部では、1月頃に非常勤講師の控え室に「閉室する前に教員ボックスの中身を整理してください」というお知らせが出るそうです。それは教員ボックスも移動したりするので、来年度の仕事をされない先生がいると教員ボックスの位置が変わってくるわけです。だからロックアウトまでに教員ボックスを空にしろという趣旨の掲示が貼られるのです。そうすると、もう授業が終わって来年度を待つばかりの時期に、そもそも教員ボックスにお知らせが入るわけもありませんし、非常勤講師の方も大学の教員ボックスを見るということは考えられないわけです。大学当局自身が教員ボックスを空にして掃除しろと言っているわけですからどう考えてもおかしな話なので、「本当は入れてないんじゃないか?」と疑う非常勤講師の方もいるほどです。そしてポータルサイトの方も掲載されていたかもしれないけれど、義務はないし実際に見た人も誰もいないので、これも実際は分からないのです。

「手続き通りの就業規則の制定は事実上できない」と発言
 ――1回目の団交はどういう状況だったのでしょうか?

 1回目の団体交渉は、3月19日の7時から10時まで3時間に及びました。その意味では大学当局は誠実な対応だったとは思います。ただ、冒頭に「通常は参加しないが、今回は特別」と触れ込みが付いて、人事常任担当理事が出席しました。その理事が冒頭に延々と「早稲田ビジョン150」の説明をして、そこから団体交渉が始まったんですが、私たちはその時はまだ投票が行われていたことは知りませんでした。ただ就業規則をつくる予定だと聞いていたので、その件について団体交渉に臨んでいました。ところが理事側が言うには、就業規則はもう出来ているというわけです。就業規則は今までになかったものですから、それを制定するには過半数代表の労働者の意見が必要でその手続きはどうしたのか?と聞いたら、すでに意見は聴取していると言う。非常勤講師も労働者ですから、少なくとも何らかの関与がなければいけません。非常勤講師は何も聞かされていないが、どうやったのか?と聞いたところ、過半数代表選挙をやったと言うわけです。そこで出てきたのが、“幻の信任投票用紙”でした。私たちはそこで初めて投票用紙を見たのです。団交の場には早大の非常勤講師の当事者も参加していたのですが、その方も「この投票用紙を私は初めて見ました」と言っていました。

 それをどうやって非常勤講師に配ったのか聞いたところ、3,799枚を各事業所に配布するよう通知し、教員ボックスに配布したという説明だったのです。その文書の日付を見ますと、信任投票用紙の告示日が2月14日で投票日は2月28日までとなっていたので、「この期間はすでに大学の授業は終わっていませんか?」と聞きました。参加していた当事者である早大の非常勤講師の方も「これ間違いじゃないですか?」「2月14日なんて誰も大学に来てないですよ。ロックアウトされているじゃないですか」と指摘しました。

 早稲田は事業所が多いので、学部ごとに異なる可能性があって一概にすべてがそうだとは決めつけられないのですが、少なくとも本部キャンパスや西早稲田キャンパスは「間違いなくこの時期の選挙は変だ」と非常勤講師の方から問題提起されたわけです。そこからやりとりが始まっていったんです。しかし大学側はとにかく教員ボックスに入れたし、ポータルサイトでもお知らせしたんだから知ってるはずだと言い張る。いろいろ議論した結果、理事が「非常勤講師の就業規則を制定するのに、手続き通りやろうとした時、これは事実上できません」と言ったのです。これは団交の時に双方が録音していますので、向こうももちろん分かっているのですが、この言葉が出た時、私たちは本当に驚きました。手続き通りやろうとした時できないというのは、明らかに違法であることを認識してやっていると言わざるを得ません。

 理事が「手続き通りやったらできない」と言ったことに対して私たちは驚いたけれど、そうであればなおのこと、つまり理事が違法性を認識しているのであるから、これは問題だということで、もう一度過半数代表選挙をやり直したらどうか?と私たちは提案しました。確かに就業規則をつくる権限は大学側にありますが、過半数代表選挙に問題があるのならば、それをやり直せばいい話です。やり直すこと自体はそんなに難しいことでも何でもないはずです。それでやり直しを提案したのですが、「お話は伺っておく」と理事は答えるだけで、団交は打ち切られ、その後、3月25日に「やはり就業規則は予定通り施行する」と言ってきたわけです。

 ――それで3月28日に緊急院内集会を開催して、対応を検討して4月8日に刑事告発をしたわけですね

 集会は、早稲田のためではなく予防策でしたが、結果としてそうなりました。

労働者の過半数代表選挙のねつ造
 ――労基法90条違反ということですが、その中身を説明していただけますか?

 その時点で知り得た情報の中で、明らかに労働基準法違反だろうと思ったことはいくつかあります。

 ひとつは、労働者の過半数代表選挙です。就業規則そのものが違法ということではなく、それを制定する際に伴う手続きに瑕疵があると私たちは主張しているわけですが、その理由の1つは、先ほどの理事が言ったような、手続き通りにやろうとした時にそれはできないと違法性を認識しているということです。つまり、故意です。また、幻の信任投票用紙には「労働基準法90条の規定に則って代表選挙をやる」と書かれていますから、過半数代表選挙をやると言っていて、かつ手続き通りにやろうとした時にできないのであれば、偽装したことになりますよね。

 大学というのは研究機関でもあるわけです。今、研究者の論文や実験のねつ造が非常に問題視されている中で、やはり早稲田大学は日本でも一流の大学ですから、教育機関でもあり研究機関でもあるところが事実をねつ造するというのはあってはならない。企業が違反するのとは別の意味で、大学だからこそ、そういったねつ造はやめるべきだということを、私は学者として強く思います。ねつ造、すなわち悪質であることが刑事告発の2つめの理由です。

 3つめの理由は、この違法行為は何度も繰り返される恐れがあり、これを放置していると「これでいいんだ」ということで反復される恐れがある。現時点でもいくつか反復の跡が見られます。たとえば職員の36協定に関しても、非常にいい加減な過半数選挙をやろうとしているといった経緯を見ると、やはり反復性がある。故意性・悪質性・反復性の3点が揃えば、当然犯罪として処罰されるべきだと私たち法学者は考えます。

国際的に見ても許されない行為
 ――国際的に見てもユネスコから高等教育教員の地位の安定について勧告が出ていますね。

 これは大学の内部でほとんど顧みられていないのかもしれませんが、ユネスコでは1966年の段階で「教員の地位に関する勧告」を出しています。そこでは、「教職における雇用の安定と身分保障が、単に教員の利益にとってだけでなく、教育の利益にとっても不可欠である」と指摘しているんですね。つまり教員が安定して教育できることが、結局、教育業界全体の利益になるんだということです。さらに1974年には「科学研究者の地位に関する勧告」も出しています。この場合の科学は、いわゆるサイエンスだけでなく社会科学や文学もサイエンスに入るので、ここで言っているのは大学教員と実質的には同じと考えていいと思います。

 この勧告には、「国の科学および技術関係要員の不断の十分な再生産を維持するため、高度の才能を有する若い人々が科学研究者としての職業に十分な魅力を感じ、かつ科学研究および実験的開発が適度な将来性とかなりの安定性ある職業であるという十分な確信を得ることを確保すること」と明記されています。

 これがユネスコが締約国に対して要求していることです。国際的な視点からも、安定した地位が科学研究や教育に欠かせないということが、繰り返し言われているということです。

 また、1966年の勧告は小中高の教員もすべて含めていますが、1997年には同じユネスコで「高等教育教員の地位に関する勧告」というのも出ています。これがまさに大学教員の地位に対する勧告で、「高等教育教員の勤務条件は、効果的な教授、学問、研究および地域社会における活動を最大限に促進し、ならびに高等教育教員がその職務を遂行できる最善のものであるべきである」と最初に前置きした上で、さらに46項で「雇用の保障(中略)は、高等教育および高等教育教員の利益に欠くことのできないものであり、確保されるべきである」とダイレクトに大学教員の雇用の保障が謳われているんですね。さらに53項にも「高等教育教員の給与、勤務条件および雇用条件に関する全ての実行は、高等教育教員を代表する組織と高等教育教員の雇用者との間の任意の交渉の過程を通じて決定されるべきである」としています。

 つまり話し合いと合意に基づいて、高等教育教員の労働条件を決定すべきだと指摘しているわけですね。もちろん話し合いと合意というのは民主主義におけるすべての基本です。それを改めてここで言っている。これに対して早稲田のやっていることは、話し合いと合意と言えるのか?ということです。今後、早稲田大学が国際的な地位を確保していきたいのであれば、ユネスコが勧告していることを真摯に考え、自分たちのやってきたことをきちんと検証すべきだと思います。

話し合いと合意は人権尊重の根本

 それと、私は憲法学が専門ですが、話し合いと合意というのは単に民主主義だけでなく、憲法の人権尊重の根本だと思うのです。日本国憲法の条文の中で、いちばん重要な条文はどこか? と聞かれたら、それは憲法13条だと私は答えます。そこには「すべて国民は個人として尊重される」と書かれています。つまり私たちは集団の一部ではなく個人なんだと書かれています。個人として尊重されるというのは具体的にどういうことか。たとえば目の前にいる人に対して「あなたを大事に思っていますよ」というイメージを伝えたい時にどうするか。その場合、たとえば相手が何か言いたいことがある、あるいは相手が一生懸命自分に向かってしゃべっている時に、その人の目を見て答えたり聞いてあげたりすることです。話を聞くというのは、個人の尊重のいちばん分かりやすい基本的な姿勢なんです。もちろん就業規則については労働者の就業規則ですから、労働者の話を聞くということが法律で要求されています。しかし別に法律で要求しなくても、人権を尊重するならば、まずその人の話を聞くことが重要です。これは最低限の国民としての義務だと思うんですね。あるいは社会人としての義務です。その上で、「しかしあなたの言い分は受け入れられません」という場合もあるでしょう。ですから就業規則というのは、意見書を添付して労働基準監督署に出せば有効になるわけです。意見を聞いたということですから。つまりその意見書は必ずしも就業規則に賛同していなくてもいいのです。

 だから、法律で強要されているかどうかという以前に、その人に関することはその人に聞くということが人権として要請されている。しかも大学というのは、社会人を教育する、社会人を生産する機関ですよね。そういった教養ある人を生産するところが、人権の尊重に反するような行為をやるというのは許せない。この点が今回、早稲田大学を刑事告発する根本にあるといえます。

2回目の団交で矛盾深める早大当局
 ――2回目の団交の状況はどうでしたか?

 6月6日に行った2回目の団交も午後7時から11時くらいまで4時間に及んだのですが、中身は1回目の団交よりも後退して、進展がほとんどありませんでした。原因は理事が今回出て来ず、代わりに代理人と称する弁護士が出てきて、しかもその弁護士が前回の理事とは違うことを言い始めたからです。そうすると、話が矛盾しているので結局そこで止まってしまうのですね。前はこう言っていたのに、「いや違う、そんなことは言っていない」という会話に終始してしまい、それより前に進まない。そうしたことの応酬で終わってしまったというのが2回目の団交です。

 ただ、2回目の団交で分かったことは、1回目と矛盾することでもあるんですが、教員ボックスにも入れたがメインとなる周知はポータルサイトであると言う。教員ボックスはおまけで、ポータルサイトに掲載したことが重要なんだと今度は言い始めた。だけどそこに対する閲覧の義務が非常勤講師にはないわけですので、ますます迷路に入っていくような感じです。ポータルサイトで周知したと強調することの意味は、ポータルサイトは非常勤講師だけではなく、専任教員も見ることができるからです。

 つまり、大学側は当初は非常勤講師に3,799枚の信任投票用紙を配ったと1回目の団交で主張していたのですが、今度はポータルサイトに置いたから専任の教員も信任投票の対象であったと主張しているんですね。大学内の全労働者のうち、専任教員と非常勤講師が過半数代表選挙に参加しているというのです。しかし一方で職員の方にはどうも周知していないようなので、結局過半数代表選挙ではないんですけどね。多少は人数が広がったといいますか、そこで違法性を薄めたいというのが大学側の目論見かもしれません。大学側の主張が変わってきていますが、それ以外の進展はありませんでした。

早稲田大学の非常勤講師15人が集団で刑事告訴
 ――そういう中で昨日、当事者が刑事告訴しましたね。

 6月21日に、東京労働局へ早稲田大学の非常勤講師15人が集団で刑事告訴しました。ただ、持っていった先は東京労働局で、告訴の名宛人は新宿の労働基準監督署長になっています。なぜ労働基準監督署長宛の告訴状を東京労働局に持っていったかといいますと、私たちが4月8日に刑事告発をした時は検察庁に持っていったんですね。検察庁から捜査をいつするかということははっきり私たちに伝えられていないのですが、その後東京労働局から電話があり、この件について話を聞きたいということでした。それで私たちが伺ったところ、検察庁の指揮下で事情を伺いたいということでした。ということは事情聴取が始まったということで、今後は東京労働局が中心になって、この問題を捜査していく可能性がある。それならこの告訴状もそちらに持っていった方が手っ取り早いだろうということで、告訴状自体は東京労働局に持っていったということなんです。そして、告発状は6月4日に正式に受理されました。

早大でまかり通れば全国の大学や企業に波及してしまう

 ――この問題について、首都圏大学非常勤講師組合は今後どんな展望を持っていますか?

 この問題からは絶対に手を引きません。こんなことが許されていいとは思わない。話し合いと合意というのは、労働者だけではなく民主主義社会の基本です。そういう意味でも話し合いと合意を否定するような行為は、しかも今回の場合、特に法律に反しているわけですから、これは徹底的に追及していきます。これを認めれば全国の大学で同じようなことが行われることにもつながっていきますし、ましてや企業は当然、利益追求のために喜んで真似をするでしょうから、ここは私たちとしても引くことはできません。

3万人の講師が失職の恐れ 法改正で揺れる大学の危機

ダイヤモンド・オンライン
 ∟●3万人の講師が失職の恐れ 法改正で揺れる大学の危機(2013年8月1日)

改正労働契約法の施行で、今後、契約期間が5年を超える非常勤講師は無期雇用に転換が可能となった。だが大学側は無期雇用の回避に躍起だ。大量の雇い止めによって現場が混乱に陥る恐れがある。

 「明らかに確信犯であり、許し難い行為だ」。早稲田大学の非常勤講師15人は、6月21日、就業規則作成をめぐる手続きで大学に不正があったとして、鎌田薫総長と常任理事ら計18人を、労働基準法違反で刑事告訴した。

 非常勤講師らが怒る理由は大きく二つある。

 一つ目は今年4月から実施された就業規則の中身だ。早大は非常勤講師を5年で雇い止めにすると決めたため、規則に従えば、2018年3月で職を失うことになる。

 二つ目は就業規則を決める手続きである。労基法では事業者に対し、就業規則を作成する場合は事業場(キャンパス等)の労働者の過半数代表などから意見を聞くことを定めている。だが、後述するように、早大は姑息とも思える手段によって、非常勤講師の知らないうちに就業規則を作成した。

 今回の刑事告訴に先立つ4月上旬には、各大学の非常勤講師から成る首都圏大学非常勤講師組合(以下、非常勤講師組合)の松村比奈子委員長および佐藤昭夫・早大名誉教授(専門は労働法)が、鎌田総長と常任理事ら計18人を労基法違反で東京地方検察庁に刑事告発。

 松村委員長は「早大が非常勤講師に対して行っている不正行為は他にもある。今後、第2、第3の刑事告発を予定している」と全面対決の構えだ。

非常勤講師がいない
春休み期間に
過半数代表を選出

 非常勤講師とは、教授や准教授などの専任教員とは異なり、授業科目ごとに大学と契約する有期契約教員のことである。

 早大の専任教員が約1800人なのに対し、非常勤講師は約2900人に上っており、授業の多くは非常勤講師によって支えられている。

 その非常勤講師が大学側と対立する発端は3月中旬のことだった。

 非常勤講師組合の要請で実現した団体交渉において、大学側は就業規則を初めて公表。さらに過半数代表を選出して意見を聞いており、就業規則作成に必要な手続きは行ったと説明した。

 しかし、実際には非常勤講師が大学に来ない春休み期間中に、学内の連絡用ポストに公示文を投函。各事業場で過半数代表者に立候補した専任教員7人に不信任の場合のみ連絡するよう求めた。当然、非常勤講師たちは選出手続きの事実を知る由もなく、不信任票はゼロだった。

 こうした大学側の不誠実な対応に対し、非常勤講師組合は過半数代表選出のやり直しと就業規則の導入延期を要請したが、大学側は拒否した。

 そもそも非常勤講師の収入は低く、いわゆる高学歴ワーキングプアが多い。早大に限らず、多くの大学では非常勤講師の月収は1コマで約3万円。非常勤講師組合などが10年に行った調査によれば、平均年収は約300万円で、全体の4割の人たちが年収250万円以下だった。

 一方、早大の専任教員の年収は「おおむね1500万円」(団交時の清水敏・常任理事の発言)とみられる。

 専任教員は非常勤講師と異なり、研究や会議、入試準備などの業務も受け持つとはいえ、その差はあまりに大きい。

 とにもかくにも、非常勤講師は、人件費は安く、多くは1年契約の更新故、大学からすれば都合のよい人材だった。

 にもかかわらず、今回、早大が5年雇い止めを強行した最大の理由、それは今年4月から施行された改正労働契約法にある。

 同法によって、今年4月以降に雇用期間が5年を超えた場合、労働者が希望すれば無期雇用に転換できるようになった。

 しかし、大学からすれば、「授業科目がなくなることもあるため、すべての非常勤講師を定年の70歳まで雇用するのは難しい」(早大人事部)。

 もともと労契法が改正された目的は、有期契約から無期契約への切り替えを進めることで雇用の安定を図ることにある。ところが、事実上の無期雇用だった非常勤講師は、法改正によって雇い止めを迫られるという、法改正の趣旨とは逆行する状況に陥っている。

私大がタッグで
適用除外まで要請し
無期雇用回避に躍起

 1991年以降、国が大学院生を増やす政策を採ってきたこともあり(上グラフ参照)、その受け皿として非常勤講師の数は年々増加してきた。

 現在、非常勤講師を専業で行っている人の数は延べ8万2800人(下グラフ参照)。1人で平均3校の授業をかけ持ちしているといわれることから、実際の人数は約2万8000人に上ると推測される。

 だが、労契法改正を機に、非常勤講師の雇い止めの動きは早大以外でも広がっている。

 大阪大学、神戸大学、法政大学はすでに5年雇い止めの就業規則を作成している。

 こうした中、早大で刑事告訴にまで至ったことで、法政大学は「これから過半数代表を選出し、今秋以降に就業規則の是非をあらためて判断する」と実施を見合わせた。神戸大学も「大学が必要と判断した人は5年を過ぎても雇用を継続する」と、一部の非常勤講師は無期雇用に転換する方針だ。

 一方、大阪大学は実施を強行し、非常勤講師組合と対立している。

 昨年11月、「非常勤講師との契約は労働契約ではなく、民法に基づく準委任契約なので労働者ではない」として、過半数代表からの意見を聞かずに規定変更を行った。

 これに対し、大阪大学の非常勤講師である新屋敷健・関西圏大学非常勤講師組合執行委員長は、「非常勤講師が労働者でないと主張するなら、労契法に基づく5年雇い止めの規定は不要のはず。大学の言い分は矛盾しており全く理解できない」として、労基法違反で8月にも大阪地検に刑事告訴する予定だ。

 私立大学関連の3団体計500校以上が加入する日本私立大学団体連合会(私大連合会)によれば、非常勤講師の5年雇い止め規則の導入について「ほとんどの大学が検討中」としており、今後、多くの大学で雇い止めの規定が導入される可能性がある。

 実際、ある大学関係者は「全国の大学が早大の行方に注目している。5年雇い止めが認められれば、多くの大学が追随するだろう」と語る。

 また、雇い止めの動きの一方で、多くの大学から労契法の適用除外を求める声も高まっている。私大連合会の清家篤会長(慶應義塾大学塾長)は6月26日、下村博文・文部科学大臣へ要望書を提出し、私立大学の有期契約労働者については無期労働契約への転換ルールの適用除外とするよう要望した。

 いずれにせよ、現状を放置すれば5年後に大量の非常勤講師が雇い止めになる可能性が高く、教育現場が混乱するのは必至だ。また、ベテラン講師がいなくなる上、「いずれ雇い止めになると知っていたら、授業への熱意を維持できない」と、教育の質低下を懸念する声も上がる。

 非常勤講師の雇用のあり方について、早急に議論する必要がある。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

2013年08月05日

高知大学教職員組合、未払い賃金請求訴訟を提起

全大教
 ∟●高知大学教職員組合、未払い賃金請求訴訟を提起

 2013年7月26日13時半、高知地方裁判所民事部に原告団18人(原告団長:高知大教職員組合中央執行委員長原崎道彦)で提訴しました。その後、14時から高知弁護士会にて会見を開きました。

【新聞掲載記事】
高知新聞 2013年07月27日
 http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=305599&nwIW=1&nwVt=knd
毎日新聞 2013年07月27日 地方版
 http://mainichi.jp/area/kochi/news/20130727ddlk39040571000c.html


サイト紹介、名城大学・金城学院大学 非常勤講師裁判

名城大学・金城学院大学 非常勤講師裁判
 ∟●裁判について

裁判について

加藤治子さんの訴え

 名城大学非常勤講師の加藤治子と申します。現在、非常勤講師の待遇の改善を求めて、名城大学を相手に法廷闘争を行っています。2008年度から名城大学で英語を教え始め、2010年度には週あたり10コマ(90分授業×10)を担当していました。ところが、同年12月に突然、次年度は4コマに減らすと大学側から一方的な通告を受けました。その後、労働組合を通じた団体交渉の結果、6コマまで回復しましたが、それでも前年度と比べて4割の減収を余儀なくされました。
 団体交渉の場で名城大学は、私の担当コマ数を削減した理由の一つとして、「1人の教師が4コマ以上教えると教育の質が低くなる可能性がある」と説明しました。しかし、名城大学では、非常勤講師であれ専任教員であれ、ほとんどの教員は4コマ以上教えていますので、その主張には自己矛盾が見られます。また、私が質の高い授業をするために最大限の努力を惜しまない教師であることは、同僚と学生達が証言してくれます。
 名城大学全学共通プログラム英語科目を担当する教師のうち、専任教員は極少数、6割以上が非常勤講師です。このように非常勤講師は大学教育の重要な担い手です。それにも関わらず、非常勤講師に対する低い待遇、雇用の不安定さは直ちに改善されるべきだと考えます。
 本件は、強大な権力を乱用する専任教員と極めて立場の弱い非常勤講師との格差を象徴的に表しています。この裁判に勝利し、非常勤講師の低待遇を改善することが、名城大学に限らず、広く大学教育を健全化するための大きな一歩となると信じています。労働者の地位向上のために、皆様と連帯することが重要です。今後ともご支援いただけますようお願い致します。

齊藤直美さんの裁判について

 齊藤直美さんは、2005年から2011年までの6年間、金城学院大学英語英米文化学科の非常勤講師として、スペシャリストプログラムという通訳、翻訳を専攻するゼミ科目で、3,4年生の選抜された学生に「翻訳演習」を教えてきました。しかし、2010年7月20日に学科担当の専任教授と学科主任の専任教授に突然呼び出され、「来年度からの翻訳演習の担当する契約は更新しない。」と通告されました。その理由は、「シラバス(年間授業計画)の変更と、翻訳理論や文法を教えられるよりふさわしい人を雇いたい。」ということだったので、採用されたときに、翻訳理論や文法は1,2年生の時にすでにやっているので、3,4年生には社会に出て役立つ実践的な翻訳の演習を教えて欲しいと指示されたことを述べた上で、それでも実際の授業では、翻訳理論に基づき、必要に応じて翻訳文法も教えていると説明しました。また、「勿論翻訳理論や翻訳文法を教えることは出来ます」と答えました。更に、「シラバスの変更によって、翻訳演習の授業がなくなるとか授業時間数が減るのか」と問うと、「それは現行のままである」との返事であったため、「その理由では納得できないので、納得できる正当な理由を文書にて提示して欲しい」と言うと、「非常勤講師にその必要はない、非常勤講師を雇うのも辞めさせるのも専任の一存で決められる」と言われ、結局雇い止めにされました。
 そのため、東海圏大学非常勤講師組合に相談し、大学側に対して「雇い止め理由書」を請求したところ、大学側は、非常勤講師に雇止め理由書を提示する必要はないと述べた上で、あえて雇止めの理由をあげるならば、1.シラバスの変更、2、学生アンケート、3、出席簿の管理という3つの理由を後付け的に提示してきました。
 しかし、この3点は以下の点で合理的な理由とは言えません。
1.シラバスについては、「翻訳演習」に実質的な変更はなく現行通りに授業はあること。
2.学生アンケートについては、「翻訳演習」はゼミ科目であり、セミ科目では通常科目のように学生アンケートは実施されていない。では、この学生アンケートは、どういう目的、意図のもとに実施されたのかという疑問が残る。
3.出席簿の管理については、すでに決着済みとされた2009年度後期の学生の成績評価変更の際、問題にされた出席簿(出欠日数確認のため)が保管期間の4月末以前に破棄されたと決めつけて、不当なこじつけの理由としたものである。
 それゆえ、2回の団体交渉でこの3つの理由の正当性を追及し、説明を求めるも、大学側はあくまで3つの理由を執拗に強調するのみで、何らの話し合いにもならずに団体交渉は決裂しました。そのため、齊藤直美さんと組合は、金城学院大学を2011年10月21日に提訴しました。


2013年08月04日

常葉学園を准教授が告発へ

中日新聞(2013年8月3日)

常葉学園を准教授が告発へ

◆「懲戒新規程手続き違法」

 教職員の同意を得ずに懲戒処分規程などを制定したのは労働基準法に違反するとして、常葉大短期大学部(静岡市葵区)の男性准教授(40)が近く、大学を運営する常葉学園(同)を静岡労働基準監督署に告発する。准教授と市民団体が二日、県庁で記者会見を開き明らかにした。
 准教授や市民団体「大学オンブズマン」(京都市)によると、学園は新たな懲戒処分の運用規程や労使協定を制定する際、過半数の教職員から信任される代表者を選出して意見を聞かなければならなかったのに、一部の教職員のみの信任で手続きを行ったとされる。
 新規程は七月三日に制定され、処分の際には理事長の下に懲戒委員会を設置し、委員は理事長が任命するとした。施行は今月三日。
 准教授は今年四月、同学部が常葉学園短大だった二〇〇二~〇四年に、国の補助金を不正受給した疑いがあるとして内部告発した。会見で准教授は「理事長主導で委員の人選が行われるため、告発した自分に不利益な処分がなされる可能性がある」と話した。


大分大学を不当労働行為で訴えました!

大分大学教職員組合
 ∟●組合ニュース 第 2号(2013年 7月17日)

大分大学を不当労働行為で訴えました!

 組合はこの間の大学の組合への対応を不当労働行為として、今年1月に大分県労働委員会に救済を申し立てました。そして、8月からは審問が始まり、本格化します。不当労働行為と考える具体的内容および経緯は以下の通りです。

組合室復帰問題
-未だに仮組合室へ据え置かれたまま-

 本来の組合室への復帰に関しては、最初の約束(教養教育棟の耐震改修終了時=2009年秋または2010年春に復帰)から3年半以上が経過し、二度目の約束(2012年3月末に復帰)からも1年以上が経過しています。にもかかわらず、法人が復帰協約を無視して新たな条件の受諾を組合に強要しているために、未だに本来の組合室への復帰が実現しておらず、仮組合室に据え置かれたままとなっています。
 このため組合は2013年1月、県労委に救済申し立てを行いました。この申し立てでは、復帰協約の履行と新協約締結問題はまったく別の事柄であるのに、大学側が両者を牽連させて本組合室への復帰を拒否していることは不当労働行為にあたると主張しています。

組合活動を制限する内容を強要
-復帰協約無視、新たな条件受諾強要-

 大学が組合に強要しているのは、①光熱水費の組合負担、②掲示板の掲示内容規制、③組合事務所の一方的な使用不承認、④組合事務所の使用期限の限定を内容とする新協約の締結です。これらは本来牽連性がないのに、本組合室への復帰と牽連させ、大学と組合が締結した無条件即時復帰合意を無視して、協約を締結しない限り本組合室への復帰を認めない態度を取っているのです。このことは、組合運営に影響を及ぼす行為であって、団結権等を侵害する行為としての支配介入にあたります。
 申し立て以来これまでに、法人の答弁書、法人の認否書の提出、県労委事務局の調査(組合に来訪しての聞き取り調査)、県労委委員調査(県労委において委員による調査・打合せ)、組合側の反論の提出(第一次)などが行われています。

平気でこれまでと異なる主張
-団交の主張を県労委では言えない法人-

 法人は県労委において、団体交渉時とは異なる主張をしています。例えば、「大学の管理運営上必要な時」には組合室の使用中止を求めるとしてきたのに、これは大規模な自然災害の場合のことを指しているとすり替えています。また、その場合には法人が代替施設を用意するのは当然のことであると言うなど、法人が一言も言ったことも書いたこともないことを平然と述べています。
 さらに、光熱水費の法人負担は不当労働行為であるというこれまで行ってきた主張については、県労委の場では主張しないと顧問弁護士が述べました(5/23県労委委員調査)。岩切理事は顧問弁護士の横に座っていましたが、この発言にまったく異議を唱えなませんでした。実に驚くべきことです。つまり法人が団体交渉において執拗に繰り返してきたことを、県労委の場では主張できないのです。これだけを見ても、法人が如何に不誠実な団体交渉を繰り返してきたかは明白です。

8月か1日に第1回審問

 8月1日には、県労働委員会室で第1回の審問が行われ、組合役員の証言があります。そこでは、法人の不誠実交渉や組合に対する支配介入の事実を分かりやすく説明していきたいと考えています。救済命令を勝ち取るために力を合わせましょう。


2013年08月02日

常葉学園、懲戒処分規定制定 「労基法違反」准教授らが告発へ

■静岡新聞(2013年8月02日)

 学校法人常葉学園が教職員の意見を十分に聞かず懲戒処分の運用規定を設けたとして、常葉大短期大学部(静岡市葵区)の准教授と市民団体「大学オンブズマン」(京郡市)が2日、県庁で記者会し、同法人の木宮健二理事長らを労働基準法違反の疑いで静岡労働基準監督署に同日付で告発することを明らかにした。

 会見したのは同学部日本語日本文学科の巻口勇一郎准教授(40)。今年4月、常葉学園短期大だった2002~04年度に当時50代の男性教授=定年退職=が授業を助手に任せていたにもかかわらず、大学は教授が授業を担当していたと文部科学省に申請し、補助金を不正に受けていたと内部告発した。

 巻口准教授らは、規定の制定が「自分への処分を意図して設けられた疑いが強い」とし、規定施行の3日前に会見を開いた。

 巻口准教授らは、規定の制定が就業規則などの作成にあたって「労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」とする労働基準法に違反していると主張している。


懲戒解雇処分の元准教授 富山大学に再審査請求

チューリップテレビ(2013年08月02日)

 今年6月、富山大学の人事選考の書類に架空の業績を記載するなど不正な行為を繰り返したとして、大学から懲戒解雇処分を受けた元准教授の男性が、処分は不当であるとして大学に再審査を請求しました。

 富山大学は今年6月、人文学部の元准教授の男性が、人事選考の際に提出した報告書や研究助成金関係の申請書類に研究業績として架空の研究雑誌を記載するなど、不正行為を繰り返したとして懲戒解雇処分としました。

 元准教授によりますと、架空とされる研究雑誌は実際に刊行されているほか、単なる記載ミスを虚偽としている点など、大学側の指摘には多くの事実誤認があり、処分は不当で大学に再審査を請求したということです。

 これに対し、富山大学は「個別の案件には答えられない」とコメントしています。


大学不正行為で検討会議設置へ

NHK(8月2日)

 下村文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、東京大学の教授が研究費をだまし取ったとして逮捕されるなど、大学での研究を巡る不正行為が相次いでいることを受けて、省内に検討会議を設置して対策をまとめる考えを明らかにしました。

 大学での研究を巡っては、先月、東京大学の教授が大学などから研究費2100万円余りをだまし取ったとして逮捕されたほか、東京大学の元教授のグループが発表した論文に多数の改ざんが見つかるなど、不正行為が相次いでいます。これについて下村文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「科学技術に対する国民の信頼を揺るがす、ゆゆしき事態だ。不正を行わせないため、事前のチェック機能などを図っていく必要がある」と述べ、福井副大臣を座長とする検討会議を設置して対策をまとめる考えを明らかにしました。
 会議では、これまでに明らかになった研究費の不正使用や論文の改ざんの事例を検証したうえで、秋ごろまでに、不正防止のための具体的な対応策を取りまとめる方針です。


大分大教職員組合、不当労働行為申し立て 県労委が第1回審問

毎日新聞(2013年08月02日)地方版

 大分大学(北野正剛学長)が組合活動に制約を加えるなど不当労働行為があったとする同大教職員組合の申し立てを受け、県労働委員会は1日、第1回審問を行い、組合側から事情を聴いた。申し立ては今年1月。

 申立書などによると、2009年3月、施設の耐震改修工事のため、大学と組合が組合事務所の一時移転や完成後に元の場所に戻ることなどに関する協約を結んだ。だが、工事終了後に元に戻れなくなり、大学側が謝罪し、大学敷地内の別の場所に事務所を設置することで合意した。

 ところが、大学は事務所完成間近の12年、事務所の使用条件として光熱水費の支払いや掲示板の内容の規制などを求めてきた。組合側は「大学側は団体交渉には応じるものの、組合活動に制約を加えることに関し、合理的理由を示さず、不誠実」としている。

 大学側は毎日新聞の取材に「係争中なのでコメントのしようがない」と述べた。【田中理知】