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 カテゴリー 2013年12月

2013年12月29日

首都圏非常勤講師組合、早稲田大学を偽装請負容疑で東京労働局に追加申立

首都圏非常勤講師組合
 ∟●早稲田大学の偽装請負疑惑に関する追加の申し立て

「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし職業安定法違反)についての調査および是正勧告に関する申立書(2013年(平成25年)10月23日付)にかかわる追加の立証資料提出の件


2013年(平成25年)11月27日


厚生労働大臣
田村 憲久 殿

東京労働局長
伊岐 典子 殿


〒170-0005 東京都豊島区南大塚2-33-10 東京労働会館5階
申告者 首都圏大学非常勤講師組合
執行委員長 松村比奈子
同 早稲田ユニオン分会
分会長 大野 英士


〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1 丁目 104
被申告者 学校法人 早稲田大学
代表者理事長 鎌田 薫


〒162-0045 東京都新宿区馬場下町5 番地 早稲田駅前ビル 3F
被申告者 株式会社早稲田総研インターナショナル
代表者代表取締役社長 天野 紀明

第1 追加の立証資料提出の趣旨
1 被申告者らが学校法人早稲田大学との間で業務委託契約(請負)の下でおこなっているチュートリアル・イングリッシュの実態が「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし労働者供給事業の禁止)に該当することを具体的に立証する資料を提出し、貴労働局によるさらなる厳密な調査を求める。

2 被申告者らに対して、チュートリアル・イングリッシュ担当講師の「偽装請負」が確認された場合には、それを是正するように、指導、助言、勧告することを求める。

第2 申告の理由
1 当事者
①被申告者学校法人早稲田大学(以下「早稲田大学」という。)は、東京都新宿区戸塚町に本部を置く学校法人である。

②被申告者株式会社早稲田総研インターナショナル(以下「早稲田総研」という。)は、東京都新宿区馬場下町に本社を置く株式会社である。

2 契約形態
業務委託契約である。
早稲田大学は、2002 年(平成 14 年)から同大学での英語授業について、チュートリアル・イングリッシュと称する英語の授業を正規のカリキュラムに組み入れた。
当初は、早稲田大学に属する早稲田大学オープン教育センターが早稲田大学インターナショナル社(2000年10月設立、早稲田大学が51%出資)に語学教育を委託した。同社の派遣する「教員」(チューターと呼ばれる)
は早稲田大学の担当教授(コーディネーター)の下で講義を行っていた。
現在は、早稲田大学と早稲田総研(2004 年 8 月 2 日設立)との間で業務委託契約が締結され、その下で同授業が行われている。早稲田大学の説明によれば、現在「チュートリアル・イングリッシュの科目総数は 4 学期で 410 科目クラス、受講生総数は春学期・夏季集中でのべ 3,385 名、本学の担当教員は 4 学期でのべ 12 名」であり、「秋学期・春季集中の受講生は」現在集計中とされている。
外部講師(チューター)と早稲田総研との間の契約は有期雇用契約である。

3 「大学が当該大学以外の教育施設等と連携協力して授業を実施すること」にかかわる文部科学省管轄の法律および行政指導
この点に関しては、学校教育法をはじめ諸法律および以下に示す二つの行政指導に関する文書によって、早稲田総研が実施する本件チュートリアル・イングリッシュについても基本的には学校法人早稲田大学の関与が義務付けられている。
とくに、「LEC東京リーガルマインド大学」(東京・千代田区)の問題がきっかけとなり、いわゆる「丸投げ」について一定の歯止めをかける必要から大学設置基準の一部改正(Bの「通知」)が行われた経緯がある。
(証拠資料 ①から⑤まで )

A)「大学において請負契約等に基づいて授業を行うことについて
文部科学省 大振―8 平成 18 年 1 月」(証拠資料 ⑥)
学校教育法の規定上、「大学の『教員』にも、学長の権限と責任の下に授業を行うことが求められている。」
「近時、大学と企業が『請負契約』を締結し、企業に雇用されている者が、当該契約に基づき『外部講師』として大学において授業を行う(単独で/授業を行う教員の補助者として)ような構想が散見されるが、この場合では、以下の諸点に留意すべきであるので、その具体的な取扱については、文部科学省及び地方労働局等の確認を得ることが望ましい。」
以下の点とは、1)大学教員の位置づけ 2)請負契約の性質、である。
「一般的には、請負契約による講師は、学長の権限と責任の下において、自ら授業を行うことが困難であり、その役割は、授業を行う教員を補助する業務に限定される可能性が高い。」
B)「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知)19文科高第 281 号 平成 19 年 7 月 31 日」 (証拠資料 ⑦)
① 授業の内容、方法、実施計画、成績評価基準及び当該教育施設等との役割分担等の必要な事項を協定書に定めている。
② 大学の授業担当教員の各授業時間ごとの指導計画の下に実施されている。
③ 大学の授業担当教員が当該授業の実施状況を十分に把握している。
④ 大学の授業担当教員による成績評価が行われる。
など、当該大学が主体性と責任を持って、当該大学の授業として適切に位置づけて行われることが必要であることに留意すること。

4 本件チュートリアル・イングリッシュの実態
1)「チュートリアル・イングリッシュの概要」によれば、テキストは早稲田総研発行の独自テキスト「リーチ・アウト」を使用する。
(証拠資料 ⑧ )
チューターの仕事は「学生の成績をつけなければ」ならないことであり、4人分の評価と1件のコメントを書かなければならないことである。とくに成績評価の基準は、「できること」、出席、予習、授業への参加、チューターのコメントへの返答ということである。
(証拠資料 ⑨ 、英語版は資料 ⑩ )
2)チューターの労務管理(指揮命令)は実際だれがやっているのか
実際の労務管理(指揮命令)は、早稲田大学専任教員である中野美知子 (チュートリアルコーディネーター)である。(証拠資料 ⑪ ⑫ ) 実際半期に一回、オブザベーション(授業風景をビデオ撮影し、シニア チューターが授業を評価。)がある。当然、その場合、シニアチュータ ーは、専任教員である中野美知子(チュートリアルコーディネーター) の管理(指揮命令)下にあることになり、指揮命令系統に組み込まれ、 かつ日常的に労務管理されていることは明らかである。
(証拠資料 ⑬ )
3)チューターとは実際インストラクター(教員)である。
早稲田大学では、通常、「インストラクター」の職務内容は「『統括するセンター常勤教員(以下『コーディネーター』という。)の指示に従い』とされている。
(証拠資料 ⑭ ⑮ ) インストラクターの面接も管理者がおこなう。(証拠資料 ⑯ )
4)学生に対するオリエンテーション 担当教員すなわち、専任教員である中野美知子(チュートリアルコーディネーター)によるオリエンテーションビデオを視聴することになっている。(証拠資料 ⑰ )
5)成績発表
成績発表は所属学部がおこなうこととされている。 (証拠資料 ⑱ )

6 問題点の整理
 上記の事実の通り、早稲田大学は、早稲田総研との間の業務委託契約(請負)により、外部講師に大学の正規の必修科目であって、しかも有料(43000円を受講生が負担する)の形態で、さらに文部科学省も想定していない授業担当のしかた、すなわち 1 学期あたり 100 科目クラス以上を 3 人の教員が単位認定するなど教育の最終責任を負うかたちで、英語(英会話)教育を行っている。実際には、他の非常勤講師と同様に日常的に雇用管理といえる状態で労務管理がなされている。
他方、学校法人が独自におこなっているのは、オリエンテーションと成績発表しかないのではないかという疑いを持たざるを得ない。 業務請負という名目ではあるが、その実態は早稲田大学からの「在籍出向」、「兼業」あるいは早稲田大学の業務を遂行する専任教員らが外部講師に指揮命令等を行っており、業務委託契約(請負)には該当せず、いわゆる「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし職業安定法違反)である。
 なお、早稲田大学は、申告者組合との団交の場において「チュートリアル・イングリッシュに関しては、文部科学省の指導により契約を結んでいるので偽装請負(派遣法違反)ではない」と回答した。
 前回の団交(2013 年 10 月29 日)では、早稲田大学は貴労働局に出向いて説明をしたと回答したが、なぜかそれがいつのことなのか日時については回答を拒否した。

 結論をいえば、チュートリアル・イングリッシュは形式的には請負契約に基づいておこなわれているが、実質的には日常的に学校法人早稲田大学の専任教員による指揮命令下で業務遂行されている。

第3 結論
 上記のとおり指摘してきたように、申告者は、早稲田大学が早稲田総研との間で締結した業務委託契約は実態においていわゆる「偽装請負契約」であり、労働者派遣法違反ないし職業安定法違反(労働者供給事業の禁止に該当する)のものであり、これらの事実について貴労働局が厳密なる調査を行った上で、必要な是正措置を至急執ることを求めて申告をするものである。

以上


早大が不当労働行為、非常勤講師組合 救済申し立て 都労委に

しんぶん赤旗(2013年12月29日)

 首都圏大学非常勤講師組合(東京公務公共一般労働組合加盟)と同組合早稲田ユニオンは26日、早稲田大学が団体交渉の進展を妨害し、組合差別を行ったとして、東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。

 早大は、有期雇用労働者が5年以上継続して働けば無期雇用に転換できるとした改定労働契約法の規定を回避するため、非常勤講師らを5年上限で雇い止めにする就業規則制定を強行しました。

 組合側は、就業規則制定の手続きに、当事者の意見を聞かない重大な問題があると主張。第1回団交(3月19日)では、早大側の人事担当常任理事が自らの問題を認めました。ところが、次の団交からこの人事責任者が欠席し、弁護士が代理人となって「問題なかった」とこれまでの話し合いをくつがえしました。

 組合側は、団交申し入れに対しても早大が回答を遅延し、早期開催の求めに応じないなど不誠実だとしています。

 組合員100人を超えた早稲田ユニオンが組合室確保を求めたところ、専任教員の組合には要求したことのない名簿提出を要求してきました。組合側は非正規雇用に対する差別待遇だと批判しています。


研究費詐欺・論文改変…東大、不正相次ぎ実効策

読売新聞(2013年12月29日)

 東京大学は、研究倫理行動計画案をまとめ、研究不正の監視・調査を行う「研究倫理室(仮称)」の設置や、論文を比較して盗用を見つけ出すコンピューターソフトの導入などを盛り込んだ。

 不正防止をうたった学内の行動規範が守られず、研究費の詐欺容疑による教授の逮捕や多数の論文の改変などが相次いだため、実効策を打ち出した。来月20日まで学内の意見を聞いたうえで公表する方針だ。

 計画案によると、研究倫理室は大学本部に設け、不正の監視や調査、防止の啓発活動などを行う。各学部・研究科などには研究倫理責任者を配置し、研究記録の保存や実験材料の保管などのルールをそれぞれ定め、データの改変や捏造ねつぞうを防ぐ。教職員の採用時に倫理研修を行い、学生にも倫理教育を徹底する。不正の通報があった場合は、証拠隠しの防止策を講じたうえで調査を急ぎ、結果を公表する。


2013年12月25日

京大の自治が死ぬ!総長選挙の教職員投票廃止か ~京都大学教職員緊急集会

IWJ Independent Web Journal

 京都大学の総長選挙において、学内教職員による意向投票を廃止して、京都大学総長選考会議(学内6名・学外6名で構成)だけで総長を選出し、またその任期を、現在の6年からさらに再任できるようにするという議題が、総長選考会議で検討されていると判明した。これを受け、12月24日(火)、「教職員意向投票廃止に反対する京都大学教職員緊急集会」が、京大時計台前広場で行われた。

早大総長ら、不起訴に 非常勤講師の就業規則めぐり

毎日新聞(2013年12月24日)

 東京地検は24日までに、労働基準法違反の疑いで告訴・告発されていた早稲田大学と、鎌田薫総長ら理事計18人について、不起訴処分(嫌疑なし)とし、発表した。処分は20日付。

 告訴・告発内容は、非常勤講師の就業規則を制定する際、早大側は労働者の過半数を代表する者の意見を聞く必要があると同法で定められているのに、意見を聞かずに今年4月施行の就業規則を制定したとするもの。地検は「故意は認められず、犯罪の嫌疑がない」と判断した。


論文盗用否定、「出勤停止不当」 教授が金沢大提訴

中日新聞(2013年12月24日)

 指導する大学院生の論文を盗用したとして出勤停止一年の懲戒処分を受けたのは不当として、金沢大(金沢市)の男性教授が大学を相手取り、処分の無効と、出勤停止の期間に受け取るべき給与や慰謝料など総額約千五百万円の支払いを求める訴訟を金沢地裁に起こしたことが分かった。
 訴えによると、院生は北陸地方の高等専門学校に勤める男性准教授。教授は二〇〇九年四月に指導教員となり、論文の作成を提案した。
 しかし院生は同年七月、うつ病を理由に入院。教授は他の研究者の協力を得ながら、加筆修正を重ねた。論文は同年九月に完成。院生は勤め先の高専を病気で休み、大学も休学していたが、教授は復職と復学を見込んで院生の名前を著者に加え、論文を国際誌に投稿した。
 論文は一〇年十月に採択されたが、院生の体調は回復していなかった。入院した〇九年七月以降、一度も大学に登校できず、論文作成に関われなかった。
 教授は院生をはじめ、高専の上司や他の研究者らに相談。「長期にわたって休職・休学しているにもかかわらず、研究が継続し、論文を投稿する行為は説明がつかない」と判断し、それぞれの同意を得た上で、採択後の校正段階で著者から外した。
 教授の代理人弁護士によると、懲戒処分は今年九月二十日付。「院生が独自で作成した未発表論文」と位置付けた上で「本人の同意はなく、盗用にあたる」と判断している。
 代理人は「院生独自の論文ではない」と反論。採択後の最終段階で著者から外した行為に「院生の体調、勤め先でのす立場を考慮した」と訴える。
 大学は教授の懲戒処分を公表していない。担当者は本紙の取材に「個別の案件についてはコメントを差し控えます」と回答。教授の提訴については「訴状が届いているか、届いていないのかも含め、現時点ではお答えできません」と話した。

2013年12月24日

全大教、(声明)文部科学省の「国立大学改革プラン」の撤回を求める

全大教
 ∟●(声明)文部科学省の「国立大学改革プラン」の撤回を求める

(声明)文部科学省の「国立大学改革プラン」の撤回を求める

2013年12月23日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会 声明

 文部科学省は、11月26日に「国立大学改革プラン」を発表した。
 このプランは、「ミッションの再定義」による各国立大学の強引な特徴付けと、「機能強化の方向性」として国立大学を事実上ランク付けするとともに、種々の財政誘導策によって、文部科学省が考える方向へ一方的に「大学改革」を進めさせようとするものである。政府が、大学を産業政策の中に組み込み、産業競争力強化の観点だけに立った「大学改革」を行わせようとするものである。
 大学は時の権力から独立し、学問の自由が保障されるもとで、社会全体に奉仕する責務を負っている。大学の自治という組織原理がそのことを支えている。大学が社会と関係しつつ、大学が自主的な判断で社会に貢献していくということが大切なのであって、国が方向性を決め強引に強要していくものではない。こうした施策が実施されていけば、大学の活力、批判力をなくし、結果として社会の活力が低下し、また権力の暴走を抑止する力が弱まるといった、歴史的にも重大な事態が危惧される。

 2004年に国立大学法人制度がスタートし、10年が過ぎようとしている。このプランは、国立大学法人法にもとづくものではない。法人法に定められている中期目標という制度とは無関係に、文部科学省という「官」が、国会と大学を無視して、国民の監視の届かないところで勝手に定め、実行しようとしているものである。国立大学は文部科学省のものではなく、国民のものである。教育を行政に従属させるやり方は、第2次大戦の反省に立ち、政府から独立した立場から教育を担ってきた大学の位置づけに反するものである。
 国立大学法人化以降、国立大学は運営費交付金削減による財政難と制度の不備とで苦しめられ続けてきた。そのなかで教職員は必死の思いで教育と研究にたずさわってきたが、産出できる論文数は減少し、丁寧な学生への教育も困難になってきた。文部科学省は法人化の負の側面、政策の失敗を認めようとせず、そのつけを大学と国民に押し付けようとしている。
 このプランは、グローバル化の中での国家戦略に偏向し、成熟社会の中での国民の福祉という視点が全く欠落している。「国際化」「理工系の充実」は重要であるが、限られた資源の中でそうした方向ばかりを重視し、他を切り捨てる姿勢は、学生、国民のニーズにも背くものである。
 このプランには学生の姿は全く出てこない。このプランを描く文部科学省の目には学生の姿は目に入っていない。あるのは、国が国際競争の中で勝ち抜いていくためのコマとしての「人材」を、大学がどう効率的に養成するかという観点のみであって、学生が学び、成長し、それぞれの力で社会に貢献するという、そういう人生に対し、大学がどのように役に立つようになっていくか、という観点が全く欠落したものである。
 このプランの中には、国立大学を3つの方向性で種別化していく考えかたが示されている。全国に86ある国立大学は、それぞれの地域において、総合的に知と文化を担うべき立場として地域の期待をうけ、地域に貢献してきている。子どもたちを都会に出さずとも、身近にある国立大学で教育を受けさせることができる地方大学の存在は、地域にとってかけがえの無いものである。その大学が、国立大学の中にあって限定的な「方向性」を規定されることは、教育の機会均等を侵し、地域の発展にとってマイナスとなるものである。それぞれの大学が、文部科学省が決めた「ミッション」に特化していくことは、それぞれの大学中にある分野の多様性を失わせ、そのことは国全体の学術の活力を失わせることにつながる。大学を文部科学省が決める方向性で縛り付ける発想は、大学というものの普遍性、大学が有する普遍的価値に対する理解が欠落していると言わざるを得ない。
 さらにこのプランでは、「人事・給与システムの弾力化」として、法人の教職員の人事の仕組みに文部科学省が介入する姿勢を明確に打ち出している。こうしたやり方と、描かれている中身は、大学に混乱をもたらし、教職員の中に過度の格差をうみだし、今後大学で教育と研究に真剣に携わっていこうとしている若手のためにならないばかりか、その将来に不安を与えるものである。シニア層の教員を若手・外国人に振り替えるとして、シニア層を狙い撃ちにしている。大学という知と文化を支える組織においては特に、この年齢層の教員の重要性が高い。この面でも、このプランは不適切なものである。
 このプランは、「ミッションの再定義」、運営費交付金の配分、大学評価、第三期目標をてことして、文部科学省が考える方向への「改革」を強要するものに他ならず、行政の暴走であるとともに、大学の自治を破壊し、国立大学の責任と自主性を蔑ろにするものである。
 中央教育審議会大学分科会がまとめようとしている「ガバナンス機能強化」とあいまって、このプランは、国立大学という国民共有の財産を、取り返しのつかないまでに毀損するものである。

 全大教は、これに反対し、文部科学省が「国立大学改革プラン」を撤回したうえで、大学の自治にもとづく、自発的な改革を見守り、支援することを強く求めるものである。


日本経団連、「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」

日本経団連
 ∟●本文「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について(2013年12月17日)」

イノベーション創出に向けた国立大学の改革について


2013 年 12 月 17 日
一般社団法人 日本経済団体連合会


 激化するグローバル競争を勝ち抜くにあたり、既存の製品や生産方法の改良による「プロセス・イノベーション」に加え、革新的な製品・サービスによって他社と差別化する「プロダクト・イノベーション」が企業にとって極めて重要となっている。こうしたイノベーションを実現するためには、先端的な基礎研究や自由な発想と、これを支え更には産業化に結び付ける世界レベルの優秀な人材の育成が不可欠である。産業界は、こうした役割を大学が担うことを強く期待している。

 諸外国では、イノベーション創出における大学の重要性を認識し、国際競争力の強化に積極的に取り組んでいる。他方、わが国については、これまで経団連でも大学の教育・研究・産学連携等に関する多くの提言を行ってきたが、依然として改革すべき多くの課題が残されている。 こうしたなか、安倍政権は、「日本再興戦略」において、大学改革や人材力の強化を成長戦略の文脈で捉えて積極的に取り組む旨を表明するとともに、産業競争力会議において具体的な議論を進めてきた。これを踏まえ、文部科学省は、「国立大学改革プラン」(以下「プラン」)を、11 月 26 日に公表した。

 国立大学は、2004 年の法人化から来年で 10 年を迎える。今こそ真に国際競争力のある大学に改革することで、イノベーションの創出に貢献していくことが求められる。こうした観点から、今回の「プラン」で示された方向性は評価できるが、産業界から見て、踏み込み不足の面も多々存在する。そこで、国立大学の実効ある改革を実現するための方策について、本年3月の「英国高等教育調査ミッション」の成果等も活用しつつ、以下の通り提言する。

…以下,略… 


京大職組、民主的な総長選挙の存続を求める緊急アピール

京大職組
 ∟●民主的な総長選挙の存続を求める緊急アピール

2013年12月20日
京都大学職員組合中央執行委員会

民主的な総長選挙の存続を求める緊急アピール

 京都大学職員組合が京都大学総長選考会議(学内委員6名、学外委員6名によって構成)の学内委員複数名から確認したところによると、先日開催された総長選考会議において総長選における学内教職員による意向投票を今後廃止し、総長選考会議のみの議決によって京都大学総長を選出すること及び総長の任期を現在の6年からさらに再任できるようにするという議題が提出されたということである。そして、なんと来週12月25日(水)13:00~15:00に開かれる次回総長選考会議においてこの議題についての採決を強行しようとしていることが判明した。この新選出方法によって現総長の松本紘氏がさらに再任され総長を続けることも可能になるという。

 言うまでもなくこれらのことは学内の他のどんな会議にも、部局長会議にも、教育研究評議会にも、各教授会にも、一切議題として出たことはない。すなわち学外委員6名、学内委員6名のわずか12人の総長指名委員が京都大学の5千名を超える教職員の自ら京都大学の代表を選出する権利をひそかに一挙に奪ってしまおうとしているのである。

 これは京都大学全教職員を愚弄するものである。もしこのようなことが決定されるならばわたくしたちがその胸に抱いているような京都大学はその後はもはや存在しなくなるだろう。京都大学の自治、民主主義のないところに京都大学の自主性すなわち創造力の源泉は存在しなくなるだろう。京都大学総長選考会議が総長選挙における教職員の投票権剥奪の暴挙に出ることをわたくしたちは絶対に容認しない。松本 紘 総長は、「産業競争力会議」、文部科学省の中央教育審議会による虚構の「学長のリーダーシップ」キャンペーンからいい加減に目を覚ますべきだ! それは制度としての大学をなくしてしまう暴挙以外の何ものでもない。

 職員組合(※署名では「私たち」となります)は、12月25日の総長選考会議において
(1) 総長選挙の教職員意向投票廃止を強行しないこと、
(2) 総長選考会議が直ちにその議事経過を公開すること、
(3) 京都大学全教職員に対し意見を聞く場を設定する

ことを求める。

京大、総長選考の教職員投票廃止検討 「学風に反する」声も印刷用画面を開く

京都新聞(2013年12月21日)

 京都大の総長を決めるのに最も重要な判断材料となる教職員による投票の廃止を、学内外の委員でつくる「総長選考会議」が検討していることが20日分かった。学内からは「『自由の学風』に反する」と反対する声が上がっている。

 国立大は2004年の法人化以降、学内の教員や学外の有識者の委員でつくる選考会議が学長(総長)を選んでいる。京大などほとんどの大学は法人化前のやり方を踏襲し、教職員による投票結果を参考に選出しているが、東北大など一部は投票を廃止している。

 大学関係者によると、11月に開かれた京大の総長選考会議で教職員による投票の廃止が提案された。学外委員の賛同を集めており、早ければ年内に開かれる会議で廃止が決定される可能性があるという。京大の松本紘総長の任期は来年9月末で、それまでに次期総長が決まる。

 京都大職員組合はこの動きに反発し、24日に学内で反対集会を開く。執行委員長を務める西牟田祐二・経済学研究科教授は「教職員による投票がなければ、京大に民主主義は存在し得ない」と話す。

 教職員による投票をめぐっては、「大学運営に能力のある人が選ばれる保証がない」などとして廃止すべきとの意見がある一方、大学自治の観点から残すべきとの声も根強い。大阪市立大は、橋下徹大阪市長の意向を受けて廃止を決めた。

[関連記事](京都新聞(2013年09月22日)

39公立大が教員投票制廃止
学長選考、制度維持で賛否印刷用画面を開く

 地方自治体が設立した公立大のうち法人運営に移行した65校の過半数に当たる39校が、教員らの投票を経て学長を決める「意向投票」制度を廃止していることが21日、公立大学協会のアンケートで分かった。

 国立大の大半が学内自治を尊重して投票制を維持しているのとは対照的。投票廃止で学長を柔軟に選べるメリットがある一方、大学の民主的伝統として残すべきだとの声もあり、賛否は分かれている。

 アンケートは8月、公立大83校のうち法人化した65校を対象に行った。学長選考で意向投票を実施しているのは京都府立大など24校で、39校が実施していない。2校は「検討中」などとした。(共同通信)


京滋私大教連、【大会特別決議】「高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議」

京滋私大教連
 ∟●高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議

【第 57 回定期大会特別決議】
高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議


 文部科学省中教育審議会大学分科会組織運営部会(以下「部会」)では、安倍内閣の下に設置された教育再生実行会議の「第 3 次提言」で、大学における「ガバナンスの改革」の必要性に言及していることを踏まえ、今年 6 月から 7 回にわたって大学における「ガバナンス改革」をめぐる審議が行なわれてきました。今回、「部会」で取りまとめられた「審議まとめ」では、「学長のリーダーシップの強化」を軸にした「ガバナンス改革」が強調されていますが、大学の「ガバナンス」について明確な定義がされておらず、「ガバナンス改革」「ガバナンス機能」「ガバナンス体制」「ガバナンスの仕組み」など、用例に幅があり意味合いも明瞭でないため、「ガバナンス」の定義が極めて曖昧になっています。その主たる原因は、これまで「大学の自治」の中心的な役割を果たしてきた「教授会」ないし「教員組織」に対する一方的な認識にあります。「審議まとめ」によれば、教授会の役割は今後「教育課程の編成」「学生の身分に関する審査」「学位授与」「教員の研究業績等の審査」等に限定されるのみならず、それを学長の考慮事項にとどめようとしています。

 学長が責任ある決定を下すことが重大な責務であることは言うまでもありませんが、学校教育法第92 条 3 項で「学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する」と規定していることをもって、学長が「特に高い立場から教職員を指揮監督することを示すものと解されている」と断定するのは、あまりに一面的な解釈と言わざるをえません。

 大学において重要なことは、真に優れた人物を学長に選任する仕組みを確立することであり、選任された学長がリーダーに相応しい能力を発揮できるかどうかが重要になってきます。今回の「審議まとめ」では、学長個人の力量を過信せず、「学長補佐体制の強化」にも言及していますが、学長の個人的な関係の範囲で補佐するメンバーを任命するようなことになれば、真に責任ある判断を下す保証にはなりえません。

 大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。その中心に教職員の働きがあったことを忘れてはなりません。

 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や文化・スポーツ活動の展開による学生の成長と、それを支える教職員の真摯な取り組みであり、そうした取り組みがあったからこそ、高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な学生を輩出してきました。

 今日の企業社会における行き過ぎたトップダウンと利潤追求の姿勢は、食品表示の偽装問題や、公共性の高い分野における安全管理の検査データの改ざん問題など、国民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学では理事会の誤った組織運営によって、学園の解散命令を受ける深刻な事態に陥る大学さえあります。

 今、必要なことは、トップが組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、その運営方針を練り上げるという基本的な方向性を確立することです。今回の「審議まとめ」は、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。

 学校法人の公共性を担保し、高等教育の真の発展に資する包括的な「ガバナンス」のあり方については、教育・研究の現場を支える教職員をはじめとした大学各層の意見を広く集約して検討を進めるとともに、大学の特性を踏まえた民主的な組織運営の確立を求めます。

2013 年 12 月 14 日
京滋地区私立大学教職員組合連合第 57 回定期大会

沖大奨学生制度、大胆な公的支援が必要だ

琉球新報(2013年12月20日 )

 沖縄大学が県内大学として初めて創設した、児童養護施設や里親家庭の高校生を対象にした奨学生制度で、第1号となる5人の合格者が決まった。年間72万円の授業料を4年間全額免除する。
 虐待などさまざまな事情で児童養護施設などで過ごす子どもたちは全国で約3万人、県内でも500人余に上る。児童福祉法に基づく制度上、18歳になると自立とみなされ、原則として高校卒業時に児童養護施設を退所しなければならず、里親委託も解除される。子どもたちが大学進学を希望しても、経済的な理由で断念する場合が多いという。
 沖大の奨学生制度は、社会的養護が必要な子どもたちに夢と希望を与えるだけでなく、子どもたちの厳しい境遇に社会の関心を向けるきっかけともなり意義は大きい。あらためて敬意を表するとともに、県内の他の大学などにも波及することを期待したい。
 一方でそれは行政が担うべき役割でもある。高等教育の付与はいわば人材への投資であり、最大の振興策であるはずだ。未来への投資として、希望する生徒全てが進学できるよう大胆に予算を配分してしかるべきだ。
 国の支援制度では、18歳の施設退所時に、「大学進学等自立生活支度費」として7万9千円が支給される。親の経済的援助が見込めない場合は特別基準が加算されるが、家賃や生活費を工面しながら多額の授業料を自力で賄うには、限界があるのは明らかだ。
 3年前のクリスマスに児童養護施設にランドセルが寄付されたことをきっかけに、全国に「タイガーマスク現象」が波及したことは記憶に新しい。裏を返せば、施設で暮らす子どもたちへの公的支援が十分ではなく、個人の寄付や民間の支援団体の善意に支えられている実態を示していよう。
 厚生労働省の調べでは、児童養護施設で暮らす生徒の大学などへの進学率は約1割にとどまり、過半数が進学する一般家庭とは大きな格差がある。
 貧困と低学力には因果関係があることが学力テストから立証されている。とりわけ沖縄の貧困率は全国最悪との調査結果もある。社会的養護が必要な子どもたちの境遇は推して知るべしだ。貧困の連鎖を絶ち切るためにも、国、県を中心に、社会全体で子どもたちの未来を閉ざさない仕組みを早急に構築する必要がある。

2013年12月23日

自由法曹団、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

自由法曹団
 ∟●派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する
労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明


1 2013年12月12日に開催された労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、公益委員は、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案(公益委員案))」を提示した。労働政策審議会は、年内にも骨子案にそった答申をまとめ、安倍内閣は、年明けの通常国会に労働者派遣法の「改正」案を提出する予定と伝えられている。

2 骨子案は、「専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃し、有期雇用の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課等)における派遣受入可能期間は、最長3年とする。この場合、派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないものとするが、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴取すれば、引き続き派遣労働者を使用できる。」、「無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、有期プロジェクト業務等への派遣には、派遣期間制限を一切設けない。」としている。
上記のとおり、骨子案では、有期雇用の派遣労働者の場合でも、派遣先は、3年ごとに派遣受入の組織単位(課等)を換えれば、同一の派遣労働者を使用し続けることができる。また、同一の組織単位(課等)への派遣でも、派遣労働者を入れ換えれば永続的に派遣労働者を使用できる。派遣先の事業所単位の期間制限にとって、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取は、何らの
歯止めにならない。

3 骨子案の提示する制度の下では、有期雇用の派遣労働者は、3年ごとに組織単位(課等)を換えて派遣使用されるか、あるいは3年ごとに派遣切りされるか、いずれかの取扱いを受けることになる。無期雇用の派遣労働者は、何らの制限なく、永続的に派遣使用されることになる。骨子案の提示する制度の下では、派遣先は、派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できることになる。このような制度の下では、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、直接雇用される契機や機会はまったくなくなり、一生派遣労働者のままの地位に置かれることになる。
骨子案は、「派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。」、「派遣労働者の派遣先での正社員化を推進するための措置を講ずる。」と言っている。しかし、骨子案の提示する制度の下では、労働者派遣における常用代替防止原則はないがしろにされ、派遣先は、派遣労働者を正社員化する動機や契機がなく、派遣労働者のまま使用し続けることになる。低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が増大、蔓延し、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を永久に閉ざされてしまうことになる。

4 骨子案は、「派遣元は、3年の上限に達する有期雇用の派遣労働者に対し、①派遣先への直接雇用の依頼 ②新たな就業機会(派遣先)の提供 ③派遣元における無期雇用 ④その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかの雇用安定措置を講ずるものとする。」としている。しかし、これらの雇用安定措置は、従来ほとんど実行されておらず、その実効性を期待することはできない。
 骨子案は、派遣労働者の処遇について、均等待遇原則を採用せず、「派遣労働者の賃金について、均衡が図られたものとなるために派遣元及び派遣先が行うことが望ましい事項を指針に規定する。」などと均衡待遇原則を求めるにとどまっている。これでは、派遣労働者に対する待遇格差は継続し、低賃金・不安定雇用の労働者派遣はますます増大することになる。

5 骨子案は、「登録型派遣・製造業務派遣」について、「経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。」としている。企業の経済活動の便宜のため労働者の雇用の安定を犠牲にする提言であり、とうてい容認できない。
 さらに重大なことに、骨子案は、「無期雇用派遣労働者に対する特定目的行為を可能とする。」と、派遣労働者に対する事前面接等を容認している。しかし、事前面接等の特定目的行為の下での労働者派遣は、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業そのものであり、とうてい許されない。

6 自由法曹団は、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対し、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、業務単位での派遣期間制限の厳格化、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求するものである。

2013年12月18日
自由法曹団
団長 篠原 義仁

2013年12月20日

京大職組、総長選挙にかかる緊急アピール 「京大法人、総長選挙廃止を強行か!? 京大の自治・民主主義破壊を許さない」

京大職組
 ∟●総長選挙にかかる緊急アピール

総長選挙にかかる緊急アピール

京大法人、総長選考会議(12/25)で総長選挙廃止を強行か!?
京大の自治・民主主義破壊を許さない
教職員の力でSTOPを!

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1.総長選考会議は総長選挙廃止を強行するな!
2.総長選考会議は直ちに議事経過を公開すること!
3.京大全教職員の意見を聞く場を設定すること!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

緊急アピール

2013年12月19日

京都大学職員組合中央執行委員会

〇教職員の陰に隠れて少数で総長選挙廃止強行を狙う
 京都大学職員組合が京都大学総長選考会議(学内委員6名、学外委員6名によって構成)の学内委員複数名から確認したところによると、先日開催された総長選考会議において総長選における学内教職員による意向投票を今後廃止し、総長選考会議のみの議決によって京都大学総長を選出すること及び総長の任期を現在の6年からさらに延長するという議題が提出されたということである。そしてさらに来週12月25日(水)13:00~15:00に開かれる次回総長選考会議においてこの議題についての採決を強行しようとしていることが判明した。この新選出方法によって現総長の松本紘氏がさらに任期を延長して総長を続けることも可能になるという。

〇部局長会議や教授会等学内の他の会議に一切諮られていない
―選挙権を有する教職員5千名以上の権利を密かに一挙に奪うもの―
 言うまでもなくこれらのことは学内の他のどんな会議にも、部局長会議にも、教育研究評議会にも、各教授会にも、一切議題として出たことはない。すなわち学外委員6名、学内委員6名のわずか12人の総長指名委員が京都大学の5千名を超える教職員の自ら京都大学の代表を選出する権利をひそかに一挙に奪ってしまおうとしているのである。

〇大学の自治、民主主義破壊の暴挙
―京大法人は総長選挙廃止を強行してはならない―
 これは京都大学全教職員を愚弄するものである。もしこのようなことが決定されるならばわたくしたちがその胸に抱いているような京都大学はその後はもはや存在しなくなるだろう。京都大学の自治、民主主義のないところに京都大学の自主性すなわち創造力の源泉は存在しなくなるだろう。京都大学総長選考会議が総長選挙廃止の暴挙に出ることをわたくしたちは絶対に容認しない。松本紘総長は、「産業競争力会議」、文部科学省の中央教育審議会による虚構の「学長のリーダーシップ」キャンペーンからいい加減に目を覚まさなければならない。それは制度としての大学をなくしてしまう暴挙以外の何ものでもない。

〇総長選考会議議事の公開、全教職員意見聴取の場の設定を要求する
 京都大学職員組合は、12月25日総長選考会議で少数者による総長選挙廃止を強行しないこと、総長選考会議が直ちにその議事経過を公開すること、京都大学全教職員に対し意見を聞く場を設定することを求める。

〇京大法人に総長選挙廃止をするなと要求しよう!
―12月24日京大職組昼休み緊急集会(時計台前)に参加を―
 京都大学の全教職員のみなさん、京大法人、京都大学総長に、総長選考会議に総長選挙廃止強行をやめるよう要求しましょう。部局長会議、教授会、さらに全学で議論を行いましょう。これを要求するために来る12月24日(火)昼(12:00-13:00)に時計台前広場で京都大学教職員の緊急集会を開催します。京都大学職員組合の組合員の皆様だけでなく、広くこの問題に関心を持つあらゆる京都大学構成員の皆様にお集まりを呼びかけます。


高知大学教職員組合、未払い賃金請求訴訟第2回口頭弁論の報告

高知大学教職員組合
 ∟●「こぶし」第7号、2013年12月12日

第 2 回口頭弁論(11 月 22 日)の報告

傍聴席があふれました。

原崎道彦(中執委員長・原告団長)


 11月22日の13時30分から、高知地裁で第2回口頭弁論がありました。第1回口頭弁論(9月20日)に続き、たくさんのかたに傍聴に来ていただくことができました。原告のほか、全大教や県労連、高知県立大学、高知大学生など合わせて44名。傍聴席にすわりきることができず、原告は柵の向こう側にすわることになりました。私がすわったのは、弁護団のうしろの、判事席よりのイス。いつもとはちがうリアルさにテンションがあがりましたが、裁判そのものは今回もあっというまの12分でした。
 18名でスタートした原告団にあらたに2名が加わりましたが、いっしょに裁判をすすめてゆくことの確認に、まず2分。
 第1回の口頭弁論では、私たち原告からの訴状と、それにたいする被告(高知大学)からの反論である答弁書が提出されましたが、その反論にたいして再反論する準備書面の提出が、今回の口頭弁論のメイン。2回の原告団会議での検討をもとに、弁護団と相談して作成したものです。原告の弁護士から、書面の提出と同時に、そのポイントの口頭説明がありました。一言でいえば「賃金の削減幅を小さくするためのどのような具体的な努力を大学側がおこなったかが、大学から提出された答弁書には、何も記されていない。その説明をあらためて求める」ということです。これに5分。
 残りの5分は、次回の第3回口頭弁論の日程調整。大学側からの書面の提出期限が 1 月下旬となったので、そのころにおこなうはずだったのですが、弁護士の都合がなかなかあわず、ずるずると後にずれて、次回は2月18日(火曜日)の13時30分からとなりました。なお、傍聴者の多さから裁判長は今後も口頭弁論の形式を採ることを提案しました。次回も傍聴をよろしくお願いします。
 次回の口頭弁論では、大学側からの再反論が提出されます。大学側は、賃金の削減幅を小さくするために大学がおこなった具体的な努力について説明しなければなりません。大学は実際は何もしていません。そこを、何かをしたかのようにとりつくろおうとするのが、大学側からの再反論となると予想されます。何かをしたフリはせずに、何もしなかったことをあっさり認めて欲しいと思います。
 口頭弁論の後、高知弁護士会館で報告集会をもちました。高知大学のずさんな対応についてあらためて説明するとともに、参加者間での活発な情報・意見交換をおこないました。
 いっぱいの傍聴席にはとてもはげまされます。今後も傍聴支援を含め引き続き支援をよろしくお願いします。

2013年12月19日

金城学院大学雇止め裁判、12月13日最終弁論

名城大学・金城学院大学 非常勤講師裁判 HP
 ∟●金城学院大学雇止め裁判・最終弁論

金城学院大学雇止め裁判・最終弁論

本日12月13日13:15より金城学院大学雇止め裁判の最終弁論が504号法定でありました。

寒い中、私の大阪からの友達を含め、争議団関連、国民救援会、栄総行動、年金者組合緑支部などから20人の方々が傍聴に来てくださいました。ありがとうございました。
おかげさまで、私の最終意見陳述をなんとかやり終えることができました。

これもたくさんの傍聴人の方々がいらしてくださっていたおかげかと思います。重ね重ね応援ありがとうございました。
また本日、10月4日の証人尋問以降集めた団体署名15筆、個人署名1018筆を裁判所に提出できました。
ご協力をありがとうございました。3回の署名を提出して総計で5000筆になりました。

3年にわたった金城学院大学雇止め裁判もようやく年明けの2月14日13:10に判決となります。
この最後の判決まで引き続き皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

2013年12月18日

中教審、第88回(12月13日)議事 「ガバナンスに関する審議の状況について」

■中教審
 ∟●第88回【開催日時:平成25年12月13日(金曜日)】審議資料

ガバナンスに関する審議の状況 (PDF:80KB)
【検討スケジュール】
6月26日 第一回 教育再生実行会議の提言等を紹介しつつ、全ての委員がガバナンスに関する意見を発表
8月6日 第二回 「学長の権限」や「学長の選考方法」などの論点について審議
9月9日 第三回 「教授会」や「理事会」「監事」「情報公開」などの論点について審議
10月2日 第四回 学長ヒアリング①(京大・阪大)、「内部規則」や「学長の選考方法」などの論点について審議
10月29日 第五回 学長ヒアリング②(長崎大学・広島修道大学)、審議まとめ(骨子案)を審議
11月19日 第六回 審議まとめ(素案)を審議
12月5日 第七回 審議まとめ(案)を審議、確定
12月24日 大学分科会に審議まとめを報告予定
→「審議まとめ」に基づいて、所要の制度改正等を行う。

大学のガバナンス改革の推進について(概要)(案)
大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)(案)(その1)
大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)(案)(その2)
大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)(案)(その3)

大学学長に権限集中、中教審まとめ案 民主的運営破壊狙う

しんぶん赤旗(2013年12月16日)

 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は13日、大学の学長に権限を集中・強化し、教授会をはじめ民主的な大学運営の破壊につながるとりまとめ案「大学ガバナンス改革」を示しました。安倍晋三首相が設置した教育再生実行会議の提言(5月)に基づき審議されていたもの。

 まとめ案は、「経済再生」などに貢献するため、「学長がリーダーシップを発揮して機能的な大学改革を進めていくことが期待されている」と強調。「トップの手腕が問われるのは株式会社と同じ」として、学長の下に統括副学長を設置するなど人事や予算、組織再編などの権限を集中し、強力に「改革」を進めていくことを打ち出しています。

 一方、教授会は「学長のリーダーシップを阻害している」として、学長選挙に関与させないなど、役割を後退させます。教職員に対しては、業績評価にもとづく年俸制の導入など、大学教育をゆがめる競争主義の強化を求めています。

 国として学長権限を強化するための法改正や、「改革」をすすめる大学への重点的支援などを打ち出しています。

 北城恪太郎(きたしろかくたろう)・経済同友会終身幹事は「教授会を意思決定機関とすることをやめるべきだ」と賛同。下村博文文科相は「法律改正がメッセージになる。教授会にしっかり示す必要がある」と話しました。


国大協、科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)

国大協
 ∟●科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)

科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)


平成25年11月29日
一般社団法人国立大学協会
会長 松本 紘


 科学研究費補助金は、我が国の人文・社会科学及び自然科学分野の多様な学術研究分野を支え、研究者の自由な発想と連携を活かす真に競争的な基礎的研究資金として定着し、国際的にも高く信頼されている。科学研究費補助金は、萌芽的研究から世界最高水準の研究までをシームレスに支援し、科学技術立国を目指す我が国の次代の研究者の育成にも極めて大きな役割を果たしている。

 ノーベル賞をはじめとする国際的科学賞や社会経済に大きなインパクトを与える技術革新も、その多くは長年にわたる科学研究費補助金の支援を受けた研究が実を結んだものであり、こうした基礎研究こそ我が国の成長にとっての最大の資本であると言って過言ではない。

 我が国の経済成長を確実に実現していくために示された「日本再興戦略」においても、世界の先を行く基礎研究の成果を一気に実用化レベルに引き上げるための革新的な研究を徹底的に支援し、また競争性を有する研究資金の制度において、間接経費 30%の確保に努める旨の方針が盛り込まれており、我が国の礎研究の国際的優位性を維持発展させることはその大前提と考えられる。

 平成26年度予算の編成に当たっては、科学研究費補助金予算について、新たなシーズを生み出す新規の研究課題が採択されず基礎科学研究の国際的競争力の低下を生ずるというような事態が万が一にも生ずることのないよう、ぜひとも助成額を維持・増額されることを要望する。さらに、政府におかれては、財政健全化との整合性を図る中で、追加投資なく研究成果の最大化を可能とする「科学研究費の全種目基金化」を早急に実現されるよう要請するものである。


2013年12月17日

福教大学長選考で混乱 学内外委員、投票覆す

西日本新聞(2013年12月16日)

 11月に行われた福岡教育大(福岡県宗像市)の学長選考で、学内外の委員でつくる「学長選考会議」が教職員投票で得票1位となった教授を選ばず、現職を再任したことについて、教授会が「大学自治を踏みにじる」などと反発し、再審議を求める異例の事態となっていることが分かった。
 福教大によると、学長選考には現職と、新人の教育学部長の2氏が立候補。11月26日、教授や事務職員など224人による投票で、教育学部長が現職を35票上回る123票を獲得した。投票率は87・15%。しかし投票後、非公開で行われた学長選考会議で、現職の再任が決定したという。
 選考会議は学内代表5人と、宗像市長など外部の有識者5人で構成。同大の内規では、選考会議は教職員投票結果を「参考にする」と定めており、最終決定権は同会議が持つ。議長を務める前日本赤十字九州国際看護大学長の喜多悦子氏は「全委員で無記名投票し、現職が圧倒的多数で選ばれた」と説明。「選考過程に問題はない」として逆転選考の理由は明らかにしていないが、ある委員は取材に「現職の経営感覚を評価した」と語った。
 これに対し、約200人が所属する教授会は同29日、再審議などを求める決議文を選考会議に提出。少なくとも過去約40年、学内投票の結果が覆されたことはなく「教職員の意向と違う結果を出すなら、きちんとした説明が必要」「選考会議の学外委員は再任された学長が任命しており、公正さが疑われる」などの意見が出ている。2日には教職員組合が抗議声明を出し、異議を訴えるビラを学生などに配布した。

 ◇逆転選考、全国で10件超 訴訟も相次ぐ
 福教大のような「逆転選考」は国立大学が法人化された2004年以降、全国で10件超に上る。一部では国を相手取った訴訟になっており、識者は「制度の見直しが必要」と指摘する。
 文部科学省によると、学長選考会議は法人化に伴って新設された。競争力や経営感覚を、外部の視点で厳正に審査するのが目的だ。
 最終決定権は選考会議が有しており、学内投票の結果は「参考」と規定している大学が多い。
 滋賀医科、新潟、高知、北海道教育の4大学では、学長に選ばれなかった最多得票者らが学長の任命取り消しなどを求める訴訟を起こしたが、係争中を除く三つの訴訟で「違法性は認められない」などとして原告敗訴が確定している。
 中央教育審議会の部会は「大学経営は厳しさを増しており、学長には一層のリーダーシップが求められる。過度に学内の意見に偏るのは適切でない」として学内投票がそのまま反映される選考には否定的だ。
 一方、大学自治を研究する岡山大法学部の中富公一教授(憲法)は「選考会議の委員は多くが現職学長と利害関係があり公正な判断を担保できない。学内投票を尊重しなければ、教職員のやる気が損なわれかねない」としている。


高校・大学でかかる費用は1,055万円…国の教育ローン利用者

リセマム(2013年12月16日)

 日本政策金融公庫は12月13日、国の教育ローン利用者世帯を対象とした教育費用負担の実態調査結果を発表した。高校入学から大学卒業までに必要な費用は、子ども1人当たり前年比24.1万円増の1,055万円であることが明らかになった。

 同調査は、平成25年2月~3月に「国の教育ローン」を利用した21,892世帯を対象に、郵送にて無記名回答による調査を行い、勤労者世帯4,942世帯の回答を得た。調査時点は平成25年7月。

 教育費について、高校入学から大学卒業までに必要な費用は、子ども1人当たり1,055万円となり、前年調査の1031.7万円と比べ24.1万円増加した。過去5年間でみると、1,000万円を越える高止まり状態が続いている。

 高校卒業後の入学先別にみると、私立大学に入学した場合は、理系で1,156.9万円、文系で1,035.2万円であるのに対し、国公立大学では863万円となっている。

 自宅外通学者のいる世帯の割合は41.9%で、仕送り額は年間平均92.1万円(月額7.6万円)となっている。

 教育費の負担について、世帯年収(平均552.6万円)に占める在学費用の割合(子ども2人世帯)は、平均40.1%となり、(現行の集計基準で比較可能な)過去7年間で最高となった。年収階層別にみると、年収が低い世帯ほど在学費用の負担は重くなる。特に、「200万円以上400万円未満」の層では平均負担割合が58.2%となり、年収の6割近くを占めている。

 教育費の捻出方法は、「奨学金を受けている」が59.9%ともっとも多く、次いで「教育費以外の支出を削っている(節約)」56.3%、「子ども(在学者本人)がアルバイトをしている」40.7%、「預貯金や保険などを取り崩している」22.5%、「残業時間やパートで働く時間を増やした」21.0%と続く。
《工藤 めぐみ》


2013年12月16日

私大、14年春学費値上げ 早大・明大・日大など

日本経済新聞(2013/12/14)

 早稲田大学や明治大学、日本大学など有力私立大学が来春、学費を値上げする。値上げ分は学生の留学支援や校舎の建て替えなど教育環境の整備に充てるところが多い。授業料は非課税だが、消費増税で教材費、資材費などの負担が増える分を補う面もある。大学生を抱える家計の負担は一段と重くなりそうだ。

 日大は6年ぶりに学費を値上げする。来春、理工学部など6学部に入学する新入生が対象で、年5万~20万円の負担増となる。…


2013年12月13日

京滋私大教連、特定秘密保護法強行採決に対する抗議声明

京滋私大教連
 ∟●特定秘密保護法の強行採決に強く抗議するとともに、日本社会の民主主義を守るために 幅広い市民・団体との共同の取り組みを進めることを呼びかけます!(談話)

特定秘密保護法の強行採決に強く抗議するとともに、日本社会の民主主義を守るために
幅広い市民・団体との共同の取り組みを進めることを呼びかけます!(談話)


2013 年 12 月 9 日
京滋地区私立大学教職員組合連合
書記長 佐々江洋志


 12 月 6 日の深夜、参議院本会議において特定秘密保護法が強行採決され、可決・成立しました。日本の民主主義の根幹にかかわる重大な法案に対して、国民の中でも反対もしくは慎重審議を求める声が圧倒的多数を占めるとともに、国際社会からも同法案への批判が相次いでいるにもかかわらず、理不尽な議事運営を繰り返した末、同法を強行に成立させた政府与党の姿勢に強く抗議します。

 政府与党の前代未聞の強硬な姿勢は、まともな審議に応えられないことの裏返しでもあり、国民の中での反対世論の高まりを恐れたからに他なりません。全国各地で起こった同法の成立に反対する世論と運動は、かつてない勢いで急速に広がり、政府与党の各議員に大きな動揺を与えたことは間違いありません。このことは、日本社会の多くの人々の中に息づく「主権者としての力」が、確かなものであることを改めて強く感じさせるものでした。

 今回、同法は強行採決されましたが、私たちが起こすことのできる行動はたくさんあります。同法の廃止法や施行を延期する法律を制定するよう国会への請願や議員に要請することをはじめ、同法の効力を失わせるために、情報公開を強化する法律や、国会、裁判所などの監視監督権限を強化する法律の制定を求めることもできます。また、安全保障と情報公開について定めた国際原則(「ツワネ原則」など)にもとづいて、国際標準に合わせた法改正を求めることもできます。
 さらに、市町村議会や都道府県議会に国会への働きかけを行なうよう要請することや、積極的な情報公開請求を行ない、特定秘密を理由に情報の非開示がなされた場合は、その公開を求める裁判を提訴し、同法の違憲性を主張するような取り組みもできます。

 今、大切なことはあきらめずに何ができるのか一人ひとりが考え、行動することです。多くの主権者の気持ちを汲むことなく自らの頑迷な主張に固執し、同法を強行採決した政府与党への憤りや怒りの結集が、政府与党を確実に動揺させたことを忘れず、一人ひとりが行動を起こし続けることが、この国で誇りを持った人間として、生き続ける上で何よりも大切なことです。

 大学で働く教職員の営みの本質は、次代を担う若者たちに平和で自由な社会の建設を託すことであり、若者の未来を案じる気持ちを、今回の強行採決に対する怒りや悔しさを、自らが行動する力や共同する力へ変えていただきたいと考えます。 京滋私大教連は、民主主義と相容れない特定秘密保護法に強く反対し、民主主義国家にあるまじき強行採決に強く抗議するとともに、幅広い市民・団体との共同し、日本社会の民主主義を守るために全力を尽くす決意です。

秘密保護法、私大教職員組合連合「研究も対象」と反対声明

毎日新聞(2013年12月12日)

 私立大の教職員組合の全国組織「日本私立大学教職員組合連合」(委員長=丸谷肇・鹿児島国際大教授)は12日、特定秘密保護法に対し「研究者の調査活動や研究成果の公表も抑止の対象となる。学問の自由は萎縮させられ真理への道が閉ざされ、大学が使命を果たすことが困難になる」と反対する声明を発表した。同連合は全国約230大学の教職員約2万人が加入している。【山田奈緒】

2013年12月12日

東京大学職員組合、特定秘密保護法の強行可決に抗議する声明

東京大学職員組合
 ∟●特定秘密保護法の強行可決に抗議する声明(2013年12月11日)

特定秘密保護法の強行可決に抗議する声明


 多くの国民の強い危惧と反対が示される中、12 月 6 日の参議院本会議で特定秘密保護法案が強行的に可決・成立しました。
 東京大学職員組合では、法案の内容に反対する立場から、すでに、法案の廃案を求める委員長名の緊急声明を発表しています。この緊急声明でも指摘した通り、今回成立した特定秘密保護法には多くの問題があります。
 第 1 に、同法は、国民の知る権利と報道の自由に対して重大な制約をもたらす危険があります。同法の「特定秘密」の概念は曖昧、不明確であり、その範囲は広範囲に及びます。その結果、処罰範囲が曖昧、不明確かつ広範囲となる危険があり、国民の知る権利と報道の自由に対して重大な脅威をもたらすものとなっています。
 第 2 に、同法は、学問の自由に対しても重大な危機をもたらすものです。学術研究の基礎にあるのは、自由な情報の取得・開示と自由な学術的交流です。曖昧、不明確かつ広範囲の情報秘匿とそれに結びつけられた刑事罰の威嚇は、大学の最も根幹的な理念である学問の自由と相いれないものです。とりわけ本学の教員は、学術的な研究成果を社会に還元する活動の一環として、政府の審議会等に参加する場合も少なくなく、そのような場面で、本学の教員の本質的に学術的な性格を持つ活動や意見表明が制約され、あるいは、適性評価の対象となって各種のプライバシーが侵害される危険性には強い危惧を覚えます。
 さらに、同法は、広く国民主権に基づく民主主義にとっても重大な危機をもたらすものです。民主主義は、主権者である国民が政府の活動に関する情報を広く取得し、それをめぐり自由な監視・討議を行うことのうえに成り立っています。広範囲にわたる「特定秘密」の「保護」は、政府の活動に関する情報を国民から覆い隠し、国民の監視と批判、国民のあいだの闊達な民主的討議の機会を奪うものです。同法の成立に至る政府・与党の強引な国会運営は、このような危惧をすでに現実化しているといえます。
 私たちは、学術機関である東京大学でさまざまな活動・業務を行う者として、国民の基本的人権を侵害し、学問の自由や民主主義に対しても重大な危機をもたらす特定秘密保護法の強行可決に強く抗議し、同法の速やかな廃止を求めます。

2013年12月11日
東京大学職員組合

京都大学職組、賃金請求訴訟 第2回口頭弁論

京都大学職員組合
 ∟●職員組合ニュース2013年度第19号

賃下げには一片の道理もない
賃金請求訴訟 第2回口頭弁論  11/19 京都地裁101 号法廷

 京大法人による昨年8月からの賃下げについて、その無効を確認し未払い賃金を請求する裁判の第2回口頭弁論は、11月19日(火)午後2時から京都地裁で行われました。

○支払能力に口をつむぐ責任放棄の京大法人
 法人は提訴に対し、反対しているのは高山原告団長だけであるとし、他の原告らを含む教職員全ては異議を申し立てなかったので賃下げに同意している(「黙示の同意」)という驚くべき主張を、11月12日提出の第1準備書面においても述べています。賃下げの理由についても、東日本大震災復興に必要、運営費交付金減額という主要2点の強調であり、支払い能力については一言も述べないという責任放棄の態度をとっています。

○賃下げではなく「物件費の配分見直し」を検討していた
 口頭弁論は、原告の高山副委員長と西牟田委員長が陳述を行い、弁護団が京大法人に求釈明書への回答を求めたもの。傍聴には約60人が参加しました。
 高山原告団長は要旨、賃下げによる減収は教授層で50万円にも達していること、法人は当初、昨年8月以降についても賃下げでなく「物件費の配分見直し」を検討していたこと、賃下げを決定した7月24日の経営協議会はメール持ち回り審議であったこと、会計検査院の報告書(10月31日)によって復興予算の被災地以外への支出が公に明らかになったこと、法人が8回に及ぶ京大職組との団体交渉でも十分な説明や一枚の資料の提示もなく不誠実に終始したこと等を述べて、賃下げに一片の道理もないことを明らかにし、法人に対し労働法の遵守と教職員への誠実を強く求めました。

○京大法人には膨大な利益剰余金がある
 西牟田委員長も、「黙示の同意」論は教職員を愚弄するものだとして厳しく糾弾しました。また、京大の財源についても、平成24年度末で膨大な利益剰余金の残高があることを指摘し、財源問題での徹底した審理を裁判所に求めました。

○「傍聴者が多いから具体的な事は言えない」
 法廷において法人側は、「傍聴者が多い中では具体的なことは言えない」と信じられない答弁をし、「答弁書と準備書面記載のとおりなので、意見があれば次回に答える」との 返答のみでした。

 次回口頭弁論は1月14日(火)午後4時、京都地裁101号法廷での開催です。


新刊紹介、「危機に著面している日本の大学-新自由主義と大学ガバナンス」

日本科学者会議

合同ブックレット『危機に著面している日本の大学-新自由主義と大学ガバナンス』(日本科学者会議大学問題委員会編、合同出版発行)12月上旬

2013年12月11日

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明ブログ

お礼とご報告

声明にご賛同下さったみなさまへ

このたびは「吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明」にご賛同いただき、まことに有り難うございました。短期間のうちに多数のご賛同を賜り、呼びかけ人一同心よりお礼申し上げます。

結果のご報告に先立ち、お詫びと訂正がございます。声明文冒頭の提訴の日付が間違っていました。まことに申し訳ありません。

  〔誤〕さる7月29日→〔正〕さる7月26日

またご賛同いただいた方々には、吉見裁判関連の情報を折に触れて送信申し上げたいと存じますが、以後の連絡は不要という方は、お手数ですが、下記までご連絡下さい。一方で、ご報告のメールを差し上げたところ、アドレスのエラーで戻ってきたメールが20通弱ございました。お心当たりのある方で、以後、連絡が必要な場合も下記までご連絡下さい。

  y-support@freeml.com

以下、集約の結果等についてご報告申し上げます。

(1)声明賛同者として11月25日18時までに844筆の署名が寄せられ、呼びかけ人22名と合わせて、合計866名の賛同が得られました。韓国ほか海外からも50名程度の賛同がありました。

(2)声明発表の記者会見は11月29日(金)11時より約25分間、大阪市役所市政記者クラブで行いました。呼びかけ人からは、志水紀代子、庵逧由香、藤永壯が出席し、その他、方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク共同代表)、梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)も同席されました。報道関係からは5社が参加しました。

(3)記者会見終了後、マスコミ、政党、政府機関などに、声明文と呼びかけ人・賛同人名簿(あるいは記者会見用資料)を送付しました。確認できた範囲では、朝鮮新報が記事を掲載しています。

  http://chosonsinbo.com/jp/2013/12/1203riyo/

(4)12月1日(日)13時30分より、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの主催でシンポジウム「維新・橋下市長の歴史認識を問い辞任を求める~吉見義明さんは、なぜ桜内文城衆院議員を訴えたか~」が大阪・PLP会館にて開催されました。参加者は190名ほどで、吉見義明さん、梁澄子さん、大森典子弁護士がお話をされました。集会の終わりに、声明について呼びかけ人より藤永がアピールをさせていただきました。

声明賛同募集は今回の集約と発表をもって、一段落いたしましたが、吉見裁判はいま、まさに始まったばかりです。ぜひともご協力、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

今後の裁判関係の日程は、以下のようになっております。

《第2回口頭弁論》

 2013年12月11日(水)15:00~ 東京地裁103号大法廷
  17:00~ 弁護士会館1008号室(東京地方裁判所隣)にて報告集会
  http://www.courts.go.jp/tokyo/about/syozai/tokyotisai/index.html

《"YOSHIMI裁判いっしょにアクション"発足集会》

 2014年1月11日(土)14:00~16:30(開場13:30)
  在日本韓国YMCA アジア青少年センター
  http://www.ymcajapan.org/ayc/jp/

ではみなさま、今後ともよろしくお願い申し上げます。

声明呼びかけ人一同

  ブログ: http://y-support.hatenablog.com/
  e-mail: y-support@freeml.com


大分大学教職員組合、不当労働行為救済申し立て第4回審問の報告

大分大学教職員組合
 ∟●組合ニュース11号(2013年12月10日)


岩切理事、尋問を受ける
 
 11月28日、県労働委員会において第4回審問が行われ、岩切理事が証言しました。通常主尋問の持ち時間は60分取れますが、法人側は40分を申請、実際はわずか14分で終了しました。岩切氏の発言内容を中心に報告します。

以下,略……当該ホームページで。

2013年12月10日

島根大学職員組合、「年俸制+任期制(+評価制度)について考える緊急集会」

島根大学職員組合
 ∟●組合ニュース、 12月6日
 ∟●要求書「年俸制についての性急な方針決定の停止を要求します」

「年俸制+任期制(+評価制度)について考える緊急集会」開催される

 11 月教授会において、評議会から「平成 27 年度より全学部で新規採用の准教授以下は全員、任期制(5 年)と年俸制を適用する(センターにおいては教授も含む)」という提案がなされたとの学部長報告があり、メールでの意見提出を求められたが、学部構成員より評議会提案への異論が噴出しました。その後、「55 歳以上の現構成員には全員年俸制を適用する」との追加提案を、企画・総務担当理事が各学部を訪問し説明されたとの情報が伝わりました。

 これを受け、島根大学職員組合(以下,組合)では 12 月 4 日、緊急集会を開催しました。昼休みという時間にもかかわらず、全学より 70 名を超える参加があり、以下のような議論がありました。
・ 年俸制を導入することで本当に教育・研究は活性化するのか。生涯所得の低下は著しく職員のモチベーションを下げることになり、かえって教育・研究の質の低下につながる。
・ 評価基準や評価方法などが不明確で、果たしてどこまで公正な評価が可能なのか。
・ 収入が下がる上に任期制が導入されれば、優秀な人材の確保などかえって難しくなり、競争力の低下につながる。
・ 人材の流動化は本学が進める「地域とともに」という理念や、COC プログラムを進める上でもマイナスに作用するのではないか。
・ 日頃、人事院勧告準拠を主張する理事から年俸制提案が出るのは自己矛盾ではないか。

 これ以外にも、構成員の意思を無視したような理事側からの提案に対する異論が数多く出されました。
 どの意見も島根大学の将来を憂い、現状を少しでも良いものにして次にバトンタッチしたいという願いが込められているものでした。 こうした議論の結果、組合から大学当局に対し、以下の要求をすることとしました。
1.構成員との間における十分な議論のプロセスを経ずに方針決定をしないこと。
2.組合に対しても、今回の提案に至った経緯を含め、必要な情報提供を行うこと。
 なお、仮に拙速かつ一方的に提案を押し通すことがあれば、組合としても対抗措置を取らざるを得ないこと。

 集会当日、「任期制を取り下げる」との修正提案が理事側からあったという情報が伝えられるという事態も発生し、目まぐるしく提案内容を変更する学長をはじめ担当理事の大学運営方法を問題視する意見
も多数出されました。 (法文:飯野公央)

東京私大教連、秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

東京私大教連
 ∟●秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

1.12 月 6日深夜、政府・与党は野党の反対を押し切り、参議院本会議において秘密保護法案を強行採決して可決成立させました。国民の知る権利を大きく制限して軍事国家化への途をひらく同法案に対しては、国内外を問わず各界各層の反対の世論が日増しに沸騰してました。国会ではすべての参考人が反対・慎重意見を述べたにもかかわらず、それを一顧だにせず採決を強行した政府・与党に対し、私たちは大きな怒りをもって抗議します。

2.国会での審議は、衆参両院ともに拙速かつ強権的に行われ、アリバイづくりにひとしい地方公聴会開催をその前夜に一方的に強行議決するなど、数の驕りとしかいいようがない横暴な国会運営に終始しました。原発や食品の安全に関する情報も特定秘密に指定される可能性があること、第三者に伝えないことを条件に外国からもたらされた情報は国会から求められても提出できないこと、さらに「不正取得罪」をめぐっては、記者や市民が明確に特定秘密と認識していなくても、取得するかもしれないという「未必の故意」が成立すれば罪に問われる可能性がある等、次々と新たな問題が審議を通じて明らかになりました。
 こうしたなか、法案の全容が国民に知られる前に採決を急ぐために、安倍首相は 12月4日に「保全監視委員会」「情報保全諮問会議」「独立公文書管理監」を政府内に置くと表明し、翌5日には内閣府にも「情報保全監察組織」を新設するなどと述べましたが、いずれも法には明記せず、客観性・独立性が極めて疑わしい泥縄式の対応としか言いようがありません。安倍内閣は6日の閣議で民主党の質問趣意書に答え、特定秘密の廃棄について「秘密の保全上やむを得ない場合、政令などで公文書管理法に基づく保存期間前の廃棄を定めることは否定されない」とする答弁書を決定しています。重要な公文書が、政権の思惑ひとつで廃棄され永遠に闇に葬られる危険性があります。

3.今回成立した秘密保護法は、私たち大学教職員にとっては、「知る権利」に立脚した「学問の自由」を根底から脅かす法律でもあります。罰を怖れて外交や安全保障等にかかわる情報収集・調査活動を躊躇するような風潮が生まれ、学問研究に大きな支障をきたすことが懸念されます。秘密保護法は、大学の社会的責任を十全に果たすことを阻害する法律であり、大学と学問が国策に服従させられた戦前の軍国主義国家体制の再来をもたらす稀代の悪法だと言わざるを得ません。

4.さらに、市民のデモ活動をテロと同視した石破自民党幹事長の暴言は、「テロの防止」を名目に特定秘密の範囲を際限なく広げ、平和的な市民・労働組合の運動さえ監視・抑圧し、国民の思想・信条にまで介入しようとするこの法律の本質を露呈させるものです。秘密保護法案は成立しましたが、研究と教育を日常的に担う大学教職員としての良心にもとづき、私たちは今後とも同法の廃止を求めて運動をすすめる決意です。

2013 年12月7日

東京私大教連中央執行委員会

京滋私大教連、中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

京滋私大教連
 ∟●中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見


2013年11月29日
京滋地区私立大学教職員組合連合


 今回の「審議まとめ」(素案)の冒頭、「大学へのメッセージ」として「ガバナンス改革は、大学が自主的・自律的に行うべきもの。学長のリーダーシップの下で、大学自らがガバナンス改革を」との文言が付されています。しかし、大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。

 大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。

 それは決して独善的な取り組みではなく、70 年代以降、大学の「ユニバーサル化」が進む中で、「社会に開かれ、社会に支えられた大学づくり」に向けて、不断の努力で営まれてきたものです。特に、日本の私立大学は大学全体の 80%を占めており、70 年代に「私学の公共性」を確保する目的で私立学校振興助成法が成立し、経常費補助が行なわれるようになる中、個別私学の視野をこえて、全社会的な枠組みで社会と学生実態の変化に応じた「大学改革」が行なわれてきました。
 
 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や、文化・スポーツ活動の展開による学生の成長であり、それを支える教職員の真摯な取り組みがあったからこそ、他の先進諸国に比肩する高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な人材を輩出してきました。

 他方、今日の日本社会は、行き過ぎたトップダウンと利潤追求の結果、食品表示の「誤表示」や、公共性の高い分野における安全管理の検査データ改ざんなど、市民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学においても理事会の誤った運営によって、学園の解散命令を受けるような深刻な事態に陥るところもあり、大学における「ガバナンス」のあり方は、慎重な検討を要する問題であると考えます。

 いま必要なことは、トップが示す運営方針に対して、単にその実行を請け負うだけでなく、トップが示す運営方針の客観性を検証するために、組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、運営方針を練り上げることに、組織のトップに立つべき人物は尽力すべきです。そして、そのような取り組みを通じてこそ、組織の構成員にもトップの意図が十分に行きわたることになると考えます。

 今回の「審議まとめ(素案)」では、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の組織特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。しかも、今後の大学の組織運営に重大な影響を及ぼす問題であるにもかかわらず、今回のパブリックコメントの募集期間がわずか 10 日余りと非常に短期間であることも問題です。

 日常的に学生への対応をおこない、教育・研究の現場を支える関係者の意見を広く集約する中で、大学の特性を踏まえた組織運営のあり方を慎重に検討していただくことを強く要望します。


市大考える会、「市大・府大の統合問題を考える」学習会を開催

大阪 開業支援室

「市大・府大の統合問題を考える」学習会を開催

12月6日、市大・府大の統合問題を考える学習会が市大近くの集会所で開かれ、会場いっぱいの約30人の参加者を迎えました。今後も、統合問題の真相を大学内外に知らせるために、学習会などの取り組みを広げることを申し合わせました。

市民資産としての大学を守ろう  森裕之・立命館大学教授(市大商学部卒)講演

「大阪は貧しい」と恐怖で統治する方法をとった大阪維新の会は、都構想が看板だった。しかし、相次ぐ失点や住民投票などに至るまでに相当な準備期間がいるために、「政治は実行力」を掲げる維新にとっては何か成果が必要になる。その成果を示しやすいのが大学統合だ。表立った反対の声がないことや、外堀を埋められてきたことがある。
「新大学ビジョン」は規模が拡大すれば世界的な競争で勝負できるという単純な物量主義だ。大学改革のとりまとめをするのが経済戦略局とは、経産省が国立大学を所管しているというほどにおかしなこと。
苦しい教育環境を解決するには予算を増やすことしかない。大きな大学になることで「水ぶくれ」を期待するむきもあるが、首都大学東京を見ても、教員はすべて契約制・毎年更新という、恐怖のなかで仕事をせざるを得ない状況がある。
市大は法律を変えてまで設立しようとした関一らの努力の賜物だ。関の精神を将来につなげ、担うものとして市大の設立が考えられた。今言われている改革は、実践や声の積み上げがない机上主義だ。他の公立大学の統合でうまくいったという例はない。


2013年12月09日

安倍暴走政権、「研究開発力強化法改定案」も可決

 安倍暴走政権は,いわゆる「研究開発力強化法」を,5日の参議院本会議に持ち出し自民・公明,日本維新の会などの賛成多数で可決・成立させた。
 正式な法律名は「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案」
 以下,関連情報。

提出法律案はこちら。
インターネット審議中継(ビデオライブラリー)
議案情報

議案要旨

(文教科学委員会)
研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(衆第二二号)(衆議院提出)要旨
本法律案の主な内容は次のとおりである。
一、大学等及び研究開発法人の教員等、研究者、技術者、リサーチアドミニストレーターについて、無期労働契約に転換する期間を五年から十年に延長する。
二、出資等を行うことができる法人として、科学技術振興機構、産業技術総合研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構の三法人を別表に規定する。
三、独立行政法人制度全体の制度・組織の見直しを踏まえつつ、研究開発の特性を踏まえた世界最高水準の法人運営を可能とする新たな研究開発法人制度を創設するため、必要な措置を速やかに講じる。
四、我が国及び国民の安全に係る研究開発やハイリスク研究の重要性に鑑み、必要な資源配分を行う。
五、国際的な水準、新規性の程度、革新性の程度等を踏まえ、研究開発等の適切な評価を行う。
六、研究開発の特性を踏まえた迅速かつ効果的な調達を研究開発法人等が行えるよう、必要な措置を講じる。
七、イノベーションの創出に必要な能力を有する人材育成を支援するため、必要な施策を講じる。
八、リサーチアドミニストレーター制度の確立のため、必要な措置を講じる。
九、研究開発等の評価に関する高度な能力を有する人材確保のため、必要な施策を講じる。
十、本法律案は、一部を除き、公布の日から施行する。

以下,法律の一部を抜粋

(労働契約法の特例)

 第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 一 科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第三号において同じ。)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの
 二 科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの
 三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技pに関する研究者又は技術者であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

2 前項第一号及び第二号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第一号及び第二号の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

(大学の教員等の任期に関する法律の一部改正)

第二条 大学の教員等の任期に関する法律(平成九年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。
第二条第三号中「及び第六条」を「、第六条及び第七条第二項」に改める。
第七条を第八条とし、第六条の次に次の一条を加える。

(労働契約法の特例)
第七条 第五条第一項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 2 前項の教員等のうち大学に在学している間に国立大学法人、公立大学法人若しくは学校法人又は大学共同利用機関法人等との間で期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

以下の声明が同改正法律の問題点を簡潔に指摘して分かりやすい。

労働契約法の特例を設け、不安定雇用を温存、拡大する
研究開発力強化法等の改定案に反対し、廃案を求める声明

 自民党、公明党、民主党、日本維新の会、生活の党は、2013年11月29日、衆議院文部科学委員会で、自民・公明両党の議員提案による、労働契約法18条の特例を定める「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(以下「研究開発力強化法」という。)」及び「大学の教員等の任期に関する法律」の改定案を強行可決した。

 2012年8月3日成立、2013年4月1日施行の労働契約法18条は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的に、同一の使用者との間で有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールを定めている。

 ところが、研究開発力強化法等の改定案は、大学や研究機関で教育・研究に携わる有期労働契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師について、労働者が無期転換権を行使できるようになる期間を「5年超」から「10年超」に延長する労働契約法18条の特例を設けている。そして、特例を設ける理由として、「5年超」で無期転換権の行使を認める労働契約法18条のもとでは、予め更新上限を定める方法などにより、「5年超」になる前の雇止めが頻発し、5年を超える研究プロジェクト等ができなくなることがあげられている。

 しかし、予め更新上限を定めるなどして、労働契約法18条を潜脱しようとする行為は、厳しく規制されるべきである。労働契約法18条を潜脱しようとする行為が予想されることを理由に、その行為を容認し、無期転換権の行使ができるようになる期間を「10年超」に延長するなど、本末転倒もはなはだしい改悪である。このようなことでは、大学や研究機関の有期契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師は、長期にわたり不安定雇用のままに置かれ、さらには「10年超」になる前の雇止めも頻発しかねない。このような、何時雇止めになるかもしれない不安定雇用のもとでは、必要な人材は集まらず、教育・研究への集中も阻害され、大学や研究機関における教育・研究は、停滞し、劣化するであろう。

 労働契約法附則3項は、「施行後8年を経過後、労働契約法18条について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と定めている。施行後1年もたたず、いまだ無期転換権を行使できる労働者も現れないうちに、雇用の安定を図ることを目的に定められた労働契約法18条の趣旨を骨抜きにするような特例を設けることは、およそ許されない。

 さらに、労働法制に関する政策決定は、公労使の3者構成主義に則って行われるべきである。ところが、研究開発力強化法等の改定案は、労使公益の3者からなる労働政策審議会の審議を一切経ることなく策定されたものである。このように、改定案は、踏むべき手続をまったく無視しており、この点からもとうてい容認できない。自由法曹団は、労働契約法18条の潜脱行為を容認し、大学や研究機関の有期契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師の不安定雇用を温存、拡大する研究開発力強化法等の改定案に反対し、その廃案を強く求めるものである。

2013年12月2日
自由法曹団
団長 篠原義仁

[関連ニュース]
改正研究開発力強化法が成立

2013年12月07日

大阪市立大、学長選を廃止…幹部と市長ブレーンが選出へ

毎日新聞(2013年12月05日)

 大阪市立大が、教職員による学長選の廃止を決めたことが4日、わかった。大学自治の理念から約60年間続けてきたが、橋下徹大阪市長が「選挙で選ばれた市長が任命するのが民主主義だ」と見直しを求めていた。今後、学長は、大学幹部と市長ブレーンの市特別参与による選考会議が決めることになり、行政の介入が強まることに、学内から懸念の声も挙がっている。

 大阪市立大は学長選を1954年から実施し、全教職員が投票するシステムだった。これまでも大学幹部と有識者で構成する選考会議が存在し、投票結果を尊重していたが、橋下市長就任に伴い、市特別参与が参加するようになった。現学長が今年度末に任期切れになることから、橋下市長の意向を受けて対応を検討していた。

 選考会議(議長・柏木孝副理事長)では「民主的に選ぶ方法として投票が定着している」と慎重意見もあったが、「ガバナンス(学内統治)改革の中で適切ではない」として11月27日、廃止でまとまった。今後は、教職員10人以上の推薦がある教職員を候補者とし、選考会議が書類と面接で選出、市長が任命する。

 大阪市立大の学長選を巡っては名誉教授らが10月、「学問の自由と大学自治の伝統が脅かされている」との声明を発表した。ある教授は「橋下市政の介入が露骨になるとの不安がある。自由な雰囲気と伝統が失われないか心配だ」と話した。【熊谷豪】


日本学術会議公開シンポジウム、「大学で学ぶ経済学とは--学士課程教育における参照基準を考える」

12月4日 日本学術会議公開シンポジウム「大学で学ぶ経済学とは
--学士課程教育における参照基準を考える」の議事メモ

文責:八木紀一郎・大西広

北原和夫氏(大学教育の分野別質保証委員会企画連絡分科会委員長)の基調報告
・学術会議が「分野別参照基準」の策定に関与した経緯
・参照基準の主な構成要素
・「わが国の科学者の内外に対する代表機関」としての位置づけをもつ日本学術会議が、各分野の学士課程教育の「あるべき姿」を述べた文書。
・誰でも利用できる公共財としての活用
・学習成果の明確化を通じた教育の質保証のための活用

岩本康志氏(経済学分野の参照基準検討分科会分科会委員長)による分科会報告
・「参照基準」は「学習成果」に注目するので、経済学分野での「基本的素養」の同定作業に取り組んだが、独自の研究・調査をする余裕もなかったので、OECD-AHELOとO'Dohey, Street and Weber (2007)に依拠した。
・「経済学の定義」においてはマーシャルの定義を意識して規定し、それに「希少な手段の選択」(ロビンズ)と「ゲーム的状況のもとでの行動」を付加した。
・「経済学に固有な特性」には、「経済学を学んだ学生ならこれを学んでいるはずのもの」に限定し、大学によって「選択の余地があるもの」は書き込まない方針をとった。
⇒「ミクロ」「マクロ」は前者だから書き込むが、「政治経済学」は後者だから書かない。
・163大学(国公立大学54,私立大学109)のうち,Webで不明の31大学を除く132大学を調べたが「政治経済学」がコア科目としてあるのはマイノリティー。「世界のトップ50」では一部大学が調べられなかったが、「政治経済学」をやっているのは東大・京大のみ
・他学問分野では複数の専門分野に分類整理(漏れなく,隈なく)することができるものがあるが,経済学では無理。ので、代表的と思われるものを列挙。あくまでも例示。
・「政治経済学」や「経済史」を排除するかのように捉えられると問題。何も触れないとそう捉えられかねないという危惧もあり、我々は大いに悩んだ。
・分科会原案は「国際的に通用しているものを採り、日本の状況とは距離を置くという立場」。「標準的アプローチ」という言葉も誤解を招きかねないが、他に適当な言葉がない。あれば提案いただきたい。
・「参照基準」は個々の授業科目の直接的な開設指針として供するものではないので、そのような誤解を生む恐れのある具体的叙述は削除したい。

パネリストの発言
本多佑三氏(関西大学)の主張
・「標準的アプローチ」の経済学は役に立っている。このおかげで1929年恐慌のようなひどい状況は避けられるようになった。
・「標準的アプローチ」の経済学は経済学として確立している。
・経済学には学ぶ順序がある。「政治経済学」も重要だが、ミクロ、マクロの後で良い。

八木紀一郎氏(摂南大学)の主張
・原案は「経済学の定義」からして間違っている。早稲田大学経済教育総合研究所/(財)消費者教育支援センターは「第4回生活経済テスト」で「どのような経済システムにおいても、人々が選択しなければならない問題は、」として次の4択問題を出し
①社会の欲求のすべてを満たす方法である。
②希少資源を最適に利用する方法である。
③平等な所得分配を生み出す方法である。
④国の債務を減らすために貯蓄をする方法である。

②を選ばそうとしているが、京大で試験をしたら、他大学におけるより「正答率」が低かった。しかし、何が本当に正しいか。
・我々の要望は以下の点である。
1.自主性・多様性を尊重し、画一化・標準化の促進を避けること
2.ミクロ、マクロ的視角とともに、政治経済学的な視角を経済学教育のなかに位置づけること
3.総合的視野の重要性と経済分析に対する自省
・原案が参照するイギリスのAHELOの文章も「標準的」という言葉は使っておらず、それ以外の考え方の尊重を謳っている。
・岩本報告は、政治経済学をコア科目としている大学は極くわずかというがそんなことはない。国立の経済学部では少なく見積もって8割以上で教えられている。「政治経済学」はAHELOがあげているOutcomesに何ら背反しない。
・学術会議は学者のコミュニティであるはずだが、本原案はそれを代表し得ていない。
・このままでは「廃案」を求めざるを得ない。

多和田真(経済学分野の参照基準検討分科会委員)の主張
・エリート大学でなく、中級以下の大学での教育となった場合、多くを教えられない。ひとつの科目を時間をかけて教えるべきだ。

池尾和人氏(経済学分野の参照基準検討分科会委員)の主張
・何を研究するかは研究者は勝手に決められる。しかし、何を教えるかは基準があってしかるべき
・自分は学生時代に学んだものが役に立たなかった。一時、その母校(京大のこと)に勤めたが、その際も旧態依然たるものあった。
・何でも良いが、学生にはひとつのディシプリンを教えるのが必要
・その際、経済学ではすでに「ミクロ、マクロ」がデファクト・スタンダードとなっているので、それだけを教えればよい。
・「ミクロ」でもギンタスのように政治経済学を扱えるではないか。
・八木氏が紹介した早稲田のテストの正解が②というのはおかしい。

前原金一氏(経済同友会専務理事)の主張
・学生時代に東大で宇野経済学などマルクス経済学を教わったが役に立たなかった。マルクス経済学は過去のものとして学説史・経済史で学べばよい。ソ連・東欧に行って共産圏の実態に触れた。中国もひどい国だ。共産主義が望ましいなどと今では誰も思わない。これらを現在のマルクス経済学者はどう考えているか教えて欲しい。

奥野正寛氏(経済学分野の参照基準検討分科会副委員長)の主張
・八木氏が主張する「政治経済学」の内容は「標準的経済学」でも議論されている。独自のものではない。
・いまの経済学にはゲーム理論もあるので、八木氏の標準的アプローチの理解は狭すぎる。

声明を発表した諸学会代表からの発言
有賀裕二氏(進化経済学会)
・「標準的アプローチ」には問題が多い。今のマーケットでは高頻度取引がアルゴリズムで動いている。 
・個人合理性を基礎にしたミクロ経済学は役立たない。

大西広氏(基礎経済科学研究所)
・誰をパネルに選ぶかで議論が左右されている。経済団体は来ても労働団体は来ていない。
・教育と研究が違うというなら経済教育学会の意見を聞くべきだ。学術団体が何を考え、研究しているかを伝えるのが大学ではないか。「政治経済学者に聞きたい」と前原氏が言ってる内容を授業で伝えようとしている。

水野勝之氏(経済教育学会)
・声明の内容を説明

堂目卓生氏(経済学史学会)
・要望書の内容を説明

その他、フロアーから、西牟田氏(京大)、米田氏(中央大)、前畑氏(桜美林大)、鈴村氏(元学術会議副会長)、橋本氏(富山大)、山本氏(元大東文化大学)からの発言があった。

参考資料
経済学分野の参照基準検討分科会が作成した参照基準原案http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/keizai/pdf/teian_sanshoukijun_220701.pdf


2013年12月06日

大学評価学会、「大学における教育・研究および評価に関連する声明」

大学評価学会
 ∟●大学における教育・研究および評価に関連する声明

大学における教育・研究および評価に関連する声明

2013 年 12 月 4 日 大学評価学会理事会


 大学評価学会は、日本における大学等(大学を含む高等教育機関)の発展を願って、学術団体としての立場から、以下の通り理事会声明を発表します。なお、1.については文部科学大臣宛てに抗議文を、2.については参議院議長および特別委員会宛てに要望書を、3.については関係の委員会宛に反対声明を、送付します。

1.「高校無償化廃止法案」の成立に対する抗議
 11 月 27 日の参議院本会議において、2014 年度から高校授業料の無償制を止め、所得制限を設けるという「高校無償化廃止法案」が可決されました。2010 年度から実現した高校授業料の実質無償化は、わずか 3 年で廃止されることとなりました。
 この「高校無償化廃止法案」のもつ問題点は少なくありませんが、見過ごすことができないのは、2012 年 9 月に日本政府が行った、国際人権規約 A(社会権)規約第 13 条に定める中等教育および高等教育における「無償教育の漸進的導入」に関する「留保」の撤回に逆行するということです。
 大学評価学会は 2004 年 3 月の設立以来、2006 年問題特別委員会(現在の国際人権 A 規約第 13 条特別委員会)を中心にして「無償教育の漸進的導入」を求める学問的探究と社会的なネットワークの構築に力を尽くしてきました。高校授業料の実質無償化に続いて、大学等における「無償教育の漸進的導入」が課題と認識し、学問的営みを続けてきました。
 高等学校等に学ぶ生徒たちに豊かな学びと、大学等へのスムーズな移行を保障していくことは、若者の発達にとって不可欠な課題です。中等教育、高等教育における教育条件を改善し、若者がこれからの社会の中心的な担い手として成長できるような大学づくりをめざす観点から、大学評価学会理事会は、「高校無償化廃止法案」の成立に抗議します。

2.「特定秘密保護法案」の廃案を求める要望
 11 月 26 日の衆議院本会議において、多くの問題点を有する「特定秘密保護法案」が可決されました。与党と幾つかの野党の「修正」を経て、本会議に上程されましたが、この「法案」に関しては、世論調査をみても「反対」が「賛成」を大きく上回っており、国民の民意とかけ離れたものとなっています。マスコミやジャーナリスト、弁護士、研究者などの反対の意見表明も相次いでいます。
 「法案」のもつ問題点は、大学等の評価の在り方とも無関係ではありません。真に意味のある評価には、「特定秘密」などない情報の公開・開示が不可欠です。また、研究分野や研究対象によっては、研究者本人の知らないうちに「処罰」の対象となりかねません。「処罰」の対象は、研究者本人にとどまらず、それを知りうるあらゆる人々、例えば、研究者の家族、研究室に所属する学生や卒業生、大学の情報処理関連の職員、研究機器・備品を納入する業者など、非常に多岐にわたる可能性があります。自律的な改善を図るための評価活動においてさえ特定秘密に該当する研究活動を取り上げることができず、同僚研究者による評価にさらされることさえありません。対象となる研究費を受け入れた場合には秘密裏に処理されることになり、学外から選任された監事や公認会計士の目に触れないようにせざるをえません。
 このように、「特定秘密保護法案」は学術の民主的な発展にとっても阻害要因となるものです。
 大学評価学会は、自主的・主体的な大学評価を通じて、日本の学術を発展せることを願って大学評価の研究を行っています。このような立場からして、大学評価学会理事会は、衆議院で可決された「特定秘密保護法案」はいったん廃案にし、改めて審議しなおすことを求めます。

3.大学における不安定雇用化をいっそう進める「研究開発力強化法改定案」に反対する
 11 月 27 日、衆議院文部科学委員会に「研究開発力強化法改定案」が提出されました。この「法案」は、有期雇用(期間の定めのある)研究者や教員などの雇用を無期雇用に転換する期間を、5 年から 10 年に延長しようとするものです。
 今年 4 月に施行された労働契約法の改定によって、有期雇用を 5 年間継続すれば無期雇用に転換できるルールがつくられました。実際には(企業だけでなく)いくつかの大学でもみられるように法の趣旨を逸脱した動きや脱法的な動きが広がっていますが、労働契約法の改定は積極的な意義をもっています。
 「研究開発力強化法改定案」は、この無期転換ルールを特例条項によって 10 年に延長しようとするものです。「高学歴ワーキングプア」の存在が広く知られるようになっているように、日本の大学や研究機関には、不安定雇用が増大しています。不安定雇用におかれた研究者は賃金等の労働条件が劣悪なだけでなく、さまざまなハラスメントの被害にあったり、短期の任期内で研究業績を量産することを目的とした「ゆがんだ」研究を強いられたりする深刻な問題が生じています。
 いま求められているのは、安定した雇用のもとで研究・教育に専念できる環境の整備です。そのことが日本の学術の発展につながり、ひいては真の意味で国際社会の発展にも寄与できると考えるものです。この点で、「研究開発力強化法改定案」は時代の要請に逆行するものでしかありません。
 大学においてだけでなく、社会的にも不安定雇用の問題は、若者の未来の希望を奪っており、日本社会の今後にとっても喫緊の課題です。「国際競争力強化」の名のもとに、不安定雇用を増大させていくことは、日本社会が直面する困難を増大させるだけです。豊かな教育環境のもとで学生たちが学び、人間らしく働くことのできる社会を実現していくことは、大学関係者の重要な社会的責任の一つです。その一環として、学生たちの教育に携わる者の雇用条件を充実させることは重要な課題です。
 以上のことから、大学評価学会理事会は、研究者や教員などの不安定雇用化をいっそう進める「研究開発力強化法改定案」に反対する立場を表明します。


福井大学末払い賃金等請求訴訟、11月11日福井地裁に提訴 「大学の自治や学問の自由を掲げた闘いでもある」

全大教
 ∟●全大教新聞、294号(12月)

 11月11日(月)福井大学教職員組合員である「未払い賃金等請求訴訟団」(13人)は福井地方裁判所に提訴致しました。11時に提訴した後、11時15分から12時まで弁護士会館で記者会見を行ない、報道機関8社が取材に来ました。
 記者会見は茂呂信吾弁護士の司会のもと、1原告団長の山根清志氏(福井大学教授)による提訴の趣旨説明、2副副団長の月原敏博氏(同教授)による闘いの経過報告、3弁護団長の島田広弁護士による訴状説明、4全大教の中嶋哲彦氏(中央執行委員長)と長山泰秀氏(書記長)による全国の闘いの現状についての報告、が約30分程度行なわれました。その後記者からの質問としては、1提訴主体は組合なのか、原告団なのか(回答は原告団)、2附属教員の下げ率を踏まえると下げ率は4・35%からか(回答はその通り)、3請求額の合計数値は(回答は13″142。808円)、4大学当局との団体交渉は妥結したのかどうか (回答は妥結せず一方的な賃下げの強色、5原告団13人の職種について(回答は教授7、准教授3、特命教授1、助教I、教諭I、以上でした。
 最後に海道宏実弁護士から、今回の訴訟は未払い賃金を取り戻すという経済的な要求だけではなく、大学の自治や学問の自由を掲げた闘いでもあるということが強調されました。(副原告団長 森透)

全大教、「ミッション再定義」による文部科学省の大学自治への介入に抗議

全大教
 ∟●全大教新聞、294号(12月)

 2012年6月に文部科学省が発表した 「大学改革実行プラン」の中に位置づけられていた「ミッションの再義」は、先行する教員養成と医学、工学の3分野の作業が終了し、その概要が「国立大学改革プラン」言月26□)に含まれました。
 当初、「国立大学が自主的・自律的に自らの機能の再構築により機能強化を図る」とされていましたが、特に教員養成分野においては、文部科学省が求める「項目立て」と「数値目標」を強制的に書き入れさせるという介入を行ってきました。全国の教育学部へ教職大学院を一律に設置させるという強制や各大学の自主性を無視し。「強み」や「特色」「社会的役割」を踏まえない改革や数値目標の強制は、国民への不利益を招きかねない事態になると考えられます。法定手続きを経ることなく行政の判断のみで事を進める文部科学省に、大学自治および大学の自主性・自律性を尊重する姿勢を強く求めます。

運営費交付金、補助金を通した誘導の教化すすむ

 2013年3月1日に文部科学省が発表した、「国立大学改革強化推進補助金」(2012年度)の選定結果では、国際的な知の競争が激化する中で、大学の枠を超えた連携の推進や個性・特色の明確化等を通じた国立大学の改革を推進するとしています。
 なかでも秋田大学では、「国際的資源の世界的教育拠点形成及び次世代型学部運営の体現」として、国際資源学部の新設を機に、「次世代型運営スタイル」が採用されるとされています。教授会の役割を、学生の入学・卒業・試験・厚生補導に限り、教員採用・昇任・予算等の重要事項は、学外の関係者(民間企業の専門家・研究者)も含む「連携運営パネル」で行うこととするなど、これまでの教授会自治を蔑ろにした学部運営のスタイルがとられることになっています。
 また、京都大学では、「グローバル化に対応した教学マネジメントの組織改革」の一環として、国際高等教育院の設置が進められています。そこにはいくつもの重大な問題を含んでいます。これまで行われてきた教養教育改革の議論とは関係なしに、教養教育とグローバル化を推進する「教育院」の設置が突然に提案され、従来教養教育を担ってきた部局の教授会の反対を押し切って設置が決定されたこと、また、新規に外国人教員IOO人を採用するとしており、そのための文科省からの補助金による人件費支給は一年目だけで、二年目以降は各部局の定員ポストを供出させて雇用継続するとしていること、さらに、社会的な要請に対応するとして、従来の部局を学長の決定権のもとで教員人事を行う教員組織と教育研究組織に分離するという全学組織改革を提案してきていることなどです。

 11月26日(火)、文部科学省は「国立大学改革プラン」を公表しました。第3期中期目標期間に目指す国立大学の在り方として、各大学の機能強化のためとして、◆教育研究組織再編のための資源配分の見直し、◆スパーグローバル大学の創設、◆留学生支援、◆ベンチャー支援・理工系人材育成、◆人事・給与システムの弾力化、◆ガバナンス改革(学長リーダーシップの強化)を掲げています。


東京私大教連、「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

東京私大教連
 ∟●中教審大学分科会組織運営部会「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

中教審大学分科会組織運営部会「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見


2013年12月1日
東京私大教連中央執行委員会


◆私立大学の現状に対する無理解について

 素案は、私立大学の現状に対してあまりにも無理解であると言わざるを得ない。財界による一面的な主張を前提にしており、客観的な現状分析を著しく欠いている。教職員組合をはじめとする大学関係者による開かれた議論を行うべきである。
 「はじめに」において、「権限と責任の所在が不明確ではないか、大学として意思決定するまでに時間がかかり過ぎるのではないか、といった疑問となって、近年、経済界等から大学のガバナンス改革の必要性について問題提起されるようになっている」と述べ、経済同友会の「私立大学におけるガバナンス改革-高等教育の質の向上を目指して-」を出典として挙げている。経済同友会の同提言に対しては、理事長の権限の無条件の拡大を要求する暴論であり、様々な批判が提示されている。財界の主張を検証なく前提とすることはやめるべきである。

 素案は随所で、「…指摘がある」として実証的な現状把握もなしに、大学を経済活動に従属させようとする財界の声高な主張の受け売りに基づいて、拙速な「ガバナンス改革」を実施しようとしていることは重大な問題である。

 私立大学を設置する学校法人のなかには、創立者一族が学園経営・大学運営の実権を握り続けている「一族支配」の学校法人や、理事長の「ワンマン支配」による私物化と専断的な学園経営・大学運営が行われている学校法人が存在する。こうした学校法人においては、教授会は教学事項に関しても審議権・決定権を奪われ、学長は理事長が任命するか、もしくは理事長が兼任するなど、非民主的な管理運営がなされている。不祥事の多くはこうした大学において発生している。
 素案が提起する「ガバナンス改革」は、「高等教育の質の向上」につながるどころか、一部私立大学の専断的経営をいっそう助長し、私立大学の不祥事をいっそう多発させる事態を招くものである。

……以下,略……


2013年12月05日

国大協、「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

国大協
 ∟●「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見


平成25年11月29日
一般社団法人国立大学協会


1.国立大学におけるガバナンス改革の現状

○大学のガバナンスについては、社会の急激な変化の中で、大学が新たなニーズに機敏に対応し、その機能を強化していくことが、我が国の現在及び将来にとって極めて重要であるとの観点から、改革の必要性が指摘されている。

○国立大学協会としても、こうした国民や社会の強い期待に応え、各国立大学がそれぞれの強みや特色を活かして機能強化を図っていくことを国立大学の総意として取りまとめ、平成 23年 6月には「国立大学の機能強化-国民への約束」、平成 25年 5月には「国立大学改革の基本的考え方について-国立大学の自主的・自律的な機能改革を目指して」を公表した。

○現在、各国立大学においては、教育、研究、地域貢献、国際貢献、大学間の有機的連携等の各般にわたり、学長のリーダーシップの下に迅速かつ適切な改革を実行するため、それを支えるガバナンス体制を整備しつつ、様々な取組を推進している。

○既にほとんどの国立大学においては、学長のリーダーシップに基づく意思決定過程を明確化し、全学的に次のようなガバナンス改革を進めている。
・学長による中長期ビジョンの提示と全教職員による共有
・副学長、学長特別補佐などの任命とそれらを構成員とする学長直属の会議の設置による執行部体制の強化
・教職員定員、予算、施設等についての学長裁量枠の設定による戦略的な資源配分
・IR室等の設置による学内情報の集約と活用

○さらに、多くの国立大学が、それぞれのビジョンに基づいて、次のような切り口でさらなる学長によるガバナンスの発揮に取り組んでいる。
・全学的な教養教育の再構築やグローバル化対応を推進するための学長直属の新たな全学組織の設置
・革新的な運営体制を有する新しい学部等の設置と、その運営体制の全学的波及
・グローバル化や産学連携の推進に資する多様で優れた人材を戦略的に確保するための柔軟な人事システムの構築
・地域の複数大学の資源を効果的に共同活用して教育、研究、社会貢献等の機能の強化を図るための学長のリーダーシップによる大学間連携

2.このたびの素案について

○このたび、第7期中央教育審議会大学分科会組織運営部会の素案において示された方向性は、国立大学において既に取り組んでいる上述のガバナンス改革と軌を一にしており、賛同するものである。

○しかしながら、大学のガバナンスについては、素案においても随所に記述されている通り、一般の企業とは異なる様々な特性が存在する。とりわけ大学は、普遍的な価値を追求する高度な教育研究機関として、我が国の憲法・教育基本法においても、また国際的にも、その自主性・自律性の尊重が基本とされている。今後、国において具体的な制度設計を行うに当たっては、このことを前提としつつ、次のような大学の特性に十分に留意されることを要請する。
・大学運営に当たっては、中長期的な視点が不可欠(教育研究の成果は短期間では現れず、定量的な成果測定が困難)
・優れた教育研究のためには教職員の自由で多様な発想を引き出すことが極めて重要
・教育研究の基本は優れた人材の確保(流動性を高めつつ多様で優れた人材を安定的に確保することが必要)
・各大学の多様な実態に即した改革が必要(総合大学と単科大学、保有学部の分野附属病院の有無、所在する地域などにより、組織、財務、人事等の実態は極めて多様)

○また、国立大学については、「日本再興」の原動力として政府、産業界をはじめ各方面からますます大きな期待が寄せられている一方で、その基盤的経費である運営費交付金は毎年減額されている。もちろん競争的資金等による重点的支援も重要であるが、前述したように大学運営には中長期的視点が不可欠であり、多様で優れた人材を安定的に確保することが極めて重要であって、ガバナンスをはじめとする各種の改革を推進するためにも、一定の安定した財政的基盤を確保することが必要である。このことについては、これまでも様々な場において、国際比較をまじえながら述べてきたところであるが、この機会に改めて要請するものである。

2013年12月04日

大阪市立大学、学長選考で意向投票を廃止 外部委員が主導

大阪 開業支援室
 ∟●大阪市立大学の統合問題を考える会

学長選考で意向投票を廃止 外部委員が主導

 大阪市大の理事長(兼学長)選考が告示されました。
 今回の理事長(学長)選考では、定款の変更ができなかったため、理事長・学長の分離はできませんが、外部委員の増員という点では、さしあたって理事長選考会議委員に外部委員を優先し、内実は先取りして、外部の意向できめられるやり方に変えるというものです。
 大阪市大の理事長(兼学長)選考会議は、22日の大阪市議会都市経済委員会で、橋下市長提案の統合にむけた市大の定款と中期目標の変更案が否決される前日21日に、その選任と議事が行われていました。なお、二つの変更議案は、29日の市議会本会議でも、維新以外の全会派の反対で否決されました。
 市議会は市民の意向を反映する面があります。今回の審議では「統合先にありき」「学内、卒業生の意向をちゃんと聞いてほしい」という疑問点が共通して出されましたが、そういう意見にはとらわれないという姿勢が見えます。
 こういう学内および市議会の意向をふまえないやり方は許されるのでしょうか。
 また、学内で、こういうやり方に異を唱える声があがるでしょうか。(T)

(以下、参考まで関連資料を紹介します)

●21日の市大経営審議会議録から
11 月21 日(木)午後1時~1時20分  議長は西澤理事長(学長)
理事長選考会議委員に野村委員、吉川委員、柏木委員を選出。
(外部委員)地元の財界人でもあるので、理事長選考会議にそういう意見をきっちりと反映させるという趣旨から、野村委員を推薦したい。
(議長)在阪の財界人ということで野村委員が推薦されたが、いかがか。
(一同)異議なし。
(外部委員)法制度に詳しい、吉川委員を推薦したい。
(議長)吉川委員に参画してほしいという意見であるが、いかがか。
(一同)異議なし。
(議長)外部委員ということで野村委員、吉川委員の2人が決まった。それでは、定款第10条第6項に基づき、副理事長及び理事のなかから残り1名を選出することになるが、これについては意見はないか。
(内部委員)前回、前々回の理事長選考会議においても、副理事長職が委員に就任しており、今回についても、ガバナンス改革についても詳しく、内容についても理解されている副理事長の柏木委員を推薦したい。
(議長)これまでの事例からも柏木委員が良いのではないかという意見であるが、いかがか。
(一同)異議なし。
(議長)それでは、経営審議会からの委員選出については、野村委員、吉川委員、柏木委員の3名で決定とする。これで経営審議会からの選出者は、全員外部人材ということになる。教育研究評議会から選出された石河委員、鈴木委員、日野委員は内部人材ということになるので、半数は外部人材で占めることになる。これは、ガバナンス改革の提言を先取りした形になろうかと思う。

●第一回理事長選考会議録から
11月21日(木)午後1時30分~3時20分
互選で、柏木孝議長、野村正朗議長職務代理者を選任。  (いずれも外部人材)
理事長選考方法について、従来の手法にとらわれることなく、大阪府市新大学構想会議による「ガバナンス改革について」の提言の趣旨を踏まえ、推薦を受けた候補者から理事長を選考する方針を決定。後日メール会議にて第2回理事長選考会議を速やかに開催し、承認することとした。
(これまでの理事長選考規程は、 その趣旨で“市大定款に基づき理事長選考会議が行う市大の理事長の選考に関し必要な事項を定めるものとする”とさだめ、本文は「(意向投票の実施)第5条 理事長選考会議は、理事長の選考に当たり、法人内の意向を調査するため、意向投票を行う」というように、記述の大半を意向投票の方法にあてていました)。
今回は、橋下市長の意向をうけて学内の意向投票を廃止し、選考会議が被推薦者を選考して、理事長候補一人にしぼり、その者を「法人の申し出に基づき」市長が任命するというものです。

会議録では興味をひく議論もあります。
・意向投票廃止は、「学内でのしこりを残さない」からと理由づけしています。さすがに橋下市長が、教授の意見など聞く必要がないと公言していることはあげづらかったでしょう。
・一方で、「選考会議が落とした人に、どう理由を説明したらいいだろうか。これまでは投票数できまっていたからそれでよかったが」との意見も。
・関係者の共感をえられるかどうかは心配になるようです。
「意向投票が大学自治のなかで続けられてきた。今回、教員に理解してもらえるだろうか」。
・「今回、異例な人が推薦される可能性はある」「ちゃぶ台をひっくりかえしてしまうとか」「大学は統合する必要がないという候補が出るかもしれない。所信表明は、こちらの設問に答える形にしてはまずいか」。
・露骨ないい方も。「今回は、ガバナンスの先取りだ」。
・定款はどうなるのか。
・継続審議にでもなれば、またややこしい。(……否決されましたけど)


特定秘密保護法案に反対する学者の会、廃案を求める声明とネット署名

特定秘密保護法案に反対する学者の会(ネット署名サイト)

特定秘密保護法案の衆議院強行採決に抗議し、ただちに廃案にすることを求めます

 国会で審議中の特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法であり、ただちに廃案とすべきです。
 特定秘密保護法は、指定される「特定秘密」の範囲が政府の裁量で際限なく広がる危険性を残しており、指定された秘密情報を提供した者にも取得した者にも過度の重罰を科すことを規定しています。この法律が成立すれば、市民の知る権利は大幅に制限され、国会の国政調査権が制約され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が著しく侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシーの侵害をひきおこしかねません。
 民主政治は市民の厳粛な信託によるものであり、情報の開示は、民主的な意思決定の前提です。特定秘密保護法案は、この民主主義原則に反するものであり、市民の目と耳をふさぎ秘密に覆われた国、「秘密国家」への道を開くものと言わざるをえません。さまざまな政党や政治勢力、内外の報道機関、そして広く市民の間に批判が広がっているにもかかわらず、何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます。
 さらに、特定秘密保護法は国の統一的な文書管理原則に打撃を与えるおそれがあります。公文書管理の基本ルールを定めた公文書管理法が2011年に施行され、現在では行政機関における文書作成義務が明確にされ、行政文書ファイル管理簿への記載も義務づけられて、国が行った政策決定の是非を現在および将来の市民が検証できるようになりました。特定秘密保護法はこのような動きに逆行するものです。
 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があるのか、安倍首相は説得力ある説明を行っていません。外交・安全保障等にかんして、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちも必ずしも否定しません。しかし、それは恣意的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上のことです。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要です。困難な時代であればこそ、報道の自由と思想表現の自由、学問研究の自由を守ることが必須であることを訴えたいと思います。そして私たちは学問と良識の名において、「秘密国家」・「軍事国家」への道を開く特定秘密保護法案に反対し、衆議院での強行採決に抗議するとともに、ただちに廃案にすることを求めます。

2013年11月28日

特定秘密保護法案に反対する学者の会

浅倉 むつ子(早稲田大学教授、法学)
池内 了  (総合研究大学院大学教授・理事、天文学)
伊藤 誠  (東京大学名誉教授、経済学)
上田 誠也 (東京大学名誉教授、地震学)
上野 千鶴子(立命館大学特別招聘教授、社会学)
内田 樹  (神戸女学院大学名誉教授、哲学)
内海 愛子 (大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター特任教授、歴史社会学)
宇野 重規 (東京大学教授、政治学)
大沢 真理 (東京大学教授、社会政策)
小熊 英二 (慶応義塾大学教授、社会学)
小沢 弘明 (千葉大学教授、歴史学)
加藤 節  (成蹊大学名誉教授、政治学)
加藤 陽子 (東京大学教授、歴史学)
金子 勝  (慶応大学教授、経済学)
姜 尚中  (聖学院大学全学教授、政治学)
久保 亨  (信州大学教授、歴史学)
栗原 彬  (立教大学名誉教授、政治社会学)
小森 陽一 (東京大学教授、文学)
佐藤 学  (学習院大学教授、教育学)
佐和 隆光 (京都大学名誉教授、経済学)
白川 英樹 (科学者・市民)
杉田 敦  (法政大学教授、政治学)
高橋 哲哉 (東京大学教授、哲学)
野田 正彰 (元関西学院大学教授、精神医学)
樋口 陽一 (東北大学名誉教授、憲法学)
廣渡 清吾 (専修大学教授、法学)
益川 敏英 (京都大学名誉教授、物理学)
宮本 憲一 (大阪市立大学・滋賀大学名誉教授、経済学)
鷲田 清一 (大谷大学教授、哲学)
鷲谷 いづみ(東京大学教授、生態学)
和田 春樹 (東京大学名誉教授、歴史学)

NHKニュース(12月3日)

研究者ら2000人超が秘密法案廃案賛同

特定秘密保護法案を廃案にするよう求めているノーベル賞受賞者などさまざまな研究者で作るグループは、これまでに国内外の2000人以上の研究者から賛同が寄せられたことを明らかにし、「戦後最大の民主主義の危機だ」として改めて廃案を訴えました。

ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏やノーベル化学賞受賞者の白川英樹氏など、さまざまな分野の研究者で作るグループは、先月、特定秘密保護法案を廃案にするよう求める声明を発表しています。
グループは3日夕方、東京・千代田区で記者会見を行い、これまでに声明に賛同した研究者が国内外の大学教授ら2006人に上っていることを明らかにしました。
会見に出席した呼びかけ人の1人で、学習院大学の佐藤学教授は「われわれはこの法案が戦後最大の民主主義の危機だという認識で一致している。短期間でこれだけ多くの声が集まっていることを政府は重く受け止めてもらいたい」と訴えました。
また、同じく呼びかけ人で、専修大学の廣渡清吾教授は「法案は秘密の範囲が際限なく拡大するおそれがあり、政府の活動を研究できなくなることが、研究者として最も恐ろしいことだ」と話していました。
グループは今後も声明への賛同者を集め、法案が廃案になるよう働きかけを強めたいとしています。


全大教、声明「特定秘密保護法の制定に反対する」

全大教
 ∟●特定秘密保護法の制定に反対する

特定秘密保護法の制定に反対する

2013年11月28日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会  声明

 政府・与党は今国会に「特定秘密の保護に関する法律案」を上程し、会期中に可決成立させようとしています。多くの国民、有識者、団体が反対の声を上げ、福島県議会も全会一致で「慎重な対応を求める」決議しているにもかかわらず、さる11月26日には衆議院の委員会で強行採決の上、同日夜の本会議に緊急上程されて衆議院を通過するなど、今国会で成立する危険性が高まっています。
 この法案は、①政府が防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止などに関する情報であるとして「特定秘密」に指定した情報は、政府の判断で30年間または60年間にわたって主権者である国民にも秘密にし、②その情報を漏らした者や知ろうとした者を厳罰に処するというものです。しかも、何が「特定秘密」に指定されているかさえ、国民には知らされません。さらに、③「特定秘密」を扱う人やその周辺の人々を、政府が調査・管理する「適性評価制度」を導入するとしています。
 これにより、「特定秘密」を取り扱う公務員やその周辺の人々が調査・管理されてプライバシーが侵害されたり、国民に真実を解明し報道しようとする人々が取り締まりの対象とされその活動が萎縮させられたりするおそれがあります。また、自衛隊の海外派遣、米軍基地、原発の安全性や被爆、外交交渉の進捗状況などの重大な事柄ほど「特定秘密」に指定される可能性が高いため、国民の知る権利や主権者としてこの国の将来を選択する権利が侵害されるおそれがあります。また、国会議員の国政調査活動さえ制約され、国民主権の有名無実化が懸念されます。
 この法案にはジャーナリストや言論人が早くから反対の声を上げていますが、実際には大学や研究所で学問研究に従事する私たちもまた、真っ先に管理や取り締まりの対象にされる可能性があります。
 「特定秘密」の指定は政府の判断に任されますから、大学や研究所の研究者は、自分の研究内容や調査対象が「特定秘密」に指定された場合、秘密を扱う者として「適性評価制度」の対象にされかねません。また、「特定秘密」を漏らしたり知ろうとしたりした者として処罰されることにもなりかねません。しかも、何が「特定秘密」に指定されているかさえ分かりませんから、「特定秘密」に指定されていそうな事柄の研究には自己規制を強いられることになりかねません。さらに、仮に刑事告訴されても、「特定秘密」の指定そのものの妥当性を問うこともできないし、弁護士の弁護活動さえ「特定秘密」を知ろうとする行為として処罰されかねません。
 全大教中央執行委員会は、特定秘密保護法案が国民の知る権利・学問の自由を侵害し、国民主権の否定につながるものとして、その制定に強く反対し、廃案を求めます。


2013年12月03日

専修大道短大不当整理解雇事件、札幌地裁  原告8教員の訴えを全く無視した不当判決

 専修大道短大不当整理解雇事件について,12月2日午後1時10分より,札幌地裁701号法廷にて判決の言い渡しがあった。同地裁(裁判長・千葉和則)は整理解雇された8名の原告教員の訴えを全く無視し,解雇を容認する不当判決を出した。
 以下,原告団,同弁護士団,専修短大労組,北海道私大教連が発表した声明文を掲載する。今回の判決内容の不当性については,追って発表されると思われる。

2013年12月2日

札幌地裁の不当判決に対する声明

(1)札幌地方裁判所民事第一部合議係は、本日、専修大学北海道短期大学8教員の解雇無効等請求事件(平成24年(ワ)第854号)に対し、学校法人専修大学の行った解雇を容認する不当判決を下した。われわれは直ちに控訴する決意である。

(2)この事件は、専修大学北海道短大への入学者の減少を理由とする募集停止決定以前に、法人が教具の配置転換等を全く行うことなく、突然募集停止を決定し、希望退職に応じなかった8教員を解雇したことを不当として提訴したものである。

(3)本日の札幌地裁判決は、原告らの提出した、学生募集停止の不当性、解雇の不合理性を示す数々の証拠はほとんど無視し、被告学校法人専修大学の主張をそっくり鵜呑みにした事実認定のうえに立って、8教員の解雇を容認したもので、不当な解雇や雇い止め派遣切りなどが多発する現状を容認し、さらに助長・促進するものだと言える。

(4)また、判決が、被告学校法人専修大学が経営者として当裁なすべき解雇回避努力をほとんど何もしていないにもかかわらず、整理解雇を有効とを認めたことは、長年裁判所が整理解雇の有効性の判断の拠りどころとしてきた判例法理を実質的に覆すものであり、極めて不当な判断であると言わざるをえない。

(5)学校法人専修大学の経営状態は他の学校法人と比較しても良好であり、経営悪化が専修大学北海道短大を閉学する理由とはなりえない。それどころか東京の大学本部がある神田校舎周辺の土地を買収し続け、巨額の財政支出を行うほどの余裕がある。法人は直ちに8教員に謝罪し、解雇後の未払い賃金を支払い、配置転換を実施すべきである。

(6)われわれは、本日の地裁判決に屈せず、一刻も早く学校法人専修大学の理不尽な「解雇」を撤回させ、全教員の専修大学、およぴ、石巻専修大学への配置転換の実施による全面解決を実現するために全力で奮闘する決意である。これまで、長期間にわたって支援をしていただいた多くの団体、個人の方々に心から感謝の意を表するとともに、引き続きご支援ご協力をお願いするものである。

専修大学北海道短期大学8教員不当解雇事件原告団
専修大学北海道短期大学8教員不当解雇事件弁護団
専修大学北海道短期大学教員観合
北海道私立大学教職員組合連合

進化経済学会理事会、参照基準改定版素案に対する意見書

進化経済学会
 ∟●参照基準改定版素案に対する意見書(2013年11月5日公開)

参照基準改定版素案に対する意見書

日本学術会議経済学委員会 
樋口美雄委員長 殿
経済学委員会経済学分野の参照基準検討分科会
岩本康志委員長 殿

進化経済学会は、日本学術会議経済学委員会分科会で策定の作業を進められておられます「経済学分野の参照基準」の第三次素案修正案を拝見し、我が国の経済学の将来に関して少なからぬ危惧を抱いております。

まず、参照基準の基調をなす第二節「経済学分野の定義」において、以前の素案にあったL.ロビンズによる定義は外されこそしましたが、希少な資源を代替的な用途に合理的に配分する人間像を土台とした経済学を構築することは、経済学として自明なこととされている点は変わりがありません。もしも参照基準に求められることが、新古典派経済学を教えるためのカリキュラムのもとを作ることならば、それでも問題はないかもしれません。しかし、求められているのは、我が国の経済学の将来を担う層を育てるための経済学教育の参照基準であります。経済学の未来の可能性を、いかに現在有力とはいえ1つのフレームワーク内に閉じ込めてしまい、多様性の芽を摘み取ってしまえば、与えられた練習問題を器用に解く世代を生み出しても、フレームワークそのものを含めて新しい経済科学の大地を耕すような世代を生み出すことはなくなります。

それに続く第三節「経済学に固有の特性」におきましても、いくつかの違和感を禁じえません。「(1)経済学の方法」では、経済学が「実際のデータに基づいて当初の仮説の適否を論理的・統計的に検証するという、反証可能性に基づいた科学的手法」を用いていると書かれていますが、これは科学哲学から見ればきわめて古風な無理解としか思えません。この点は第四節(2)で、演繹・帰納と並べて論じられている部分で再び強調されています。第一節(3)で「人間の経済的な選択を予測する場合、人間は経済的なインセンティブに反応することが基本的な原理」と言い切り、それ以上は基本をふまえた拡張としてのみ理解しようという論調、さらに「市場メカニズムの有用性が世界の共通認識」であるから「経済学のこの特性は重要」という正当化は前節の論調をさらに際立たせています。社会のあるべき姿はパレート基準で測ることができると、経済学は本当に合意しているのでしょうか。「(2)経済学の体系」では、さらにはっきりと経済学の基礎理論としてミクロ経済学とマクロ経済学をおき、それ以上は応用と位置づけており、続く「(3)経済学の固有の問題点」では、制度分析や歴史分析には「標準的な理論的アプローチ」を軽視していることが問題として、それらをミクロ経済学・マクロ経済学の基礎の上にいかに統合するかを課題とし、経済統計やゲーム理論の適用によって統合する例が紹介されています。ここまでくると、経済学の歴史を、まるで経済学が従前の理論を包括的に取り込み、修正し、精緻化して進んでいく単線的な進化過程と見なしておられるのではないかと不安を覚えます。制度分析、歴史分析に数量分析が不足しているならば、それぞれの目的にとって適切な数量分析が開発されればよいはずで、それがミクロ・マクロ経済学の応用である論理的必然性などはありません。現在主流となっている経済学の土台を含めて、様々な経済学を俯瞰したところに立つメタ学問としての性質を持つ経済学説史が、1学派の応用分野になり下がったとき、はたしてその経済学説史に学問としての生命力は残されているのでしょうか。

続く第四節「経済学を学ぶすべての学生が身に付けることを目指すべき基本的な素養」の(1)ではこれまでの主張がさらに強められ、「社会人」の常識として「利己的・機会主義的経済主体を前提として、経済システム、特に資本主義的市場経済システムを経済合理的観点から論理的に分析する」ことを求めています。理解できない場合には「日常生活を営むにあたってさまざまな不利益を受ける危険がある」とまで述べておられます。そして「一般職業人」の日常生活や意思決定に役立つものとして、ミクロ経済学の練習問題として頻出するトピックを具体的に挙げておられます。経済学の内部からみてさえ特殊なアプローチが社会人の実践的常識であると言い切ることへの違和感を禁じえません。この節の(2)ではコミュニケーション能力に言及し、末尾には「さまざまな経済事情や異文化理解し、異なる価値観を受け入れ、世界全体の発展のために市民として果たす役割」にも言及されていますが、様々な問題を「経済学の多くが解いている制約条件付最適化問題」と理解してしまうことの狭隘さが、コミュニケーションや異文化理解の妨げになるとはお考えにならないのでしょうか。

第六節の最後にこの参照基準が「経済学を専攻せずに教養として経済学を学ぶ学生が獲得すべき経済学の基本的な知識と理解ともなるべきもの」と明言されているのに対し、上のような内容は、極めて進路限定的ではないでしょうか。

環境とその変化のありかたを見渡すことができない人間にとって、また人類の学問にとって、多様性こそ新たな適応と進化の源泉であります。我が国の経済学をめぐる環境は、幸いなことにこれまで多様性の土壌を維持してきたように思います。ただでさえ様々な面で厳しくなっている学問追求の環境を、自分たちの手で悪化させる愚は避けるべきです。どうかすでに枯れかけた他国の基準を参照して我が国の大学教育の豊かな土壌を損なうことのないよう、慎重なご配慮をお願いいたします。
経済学を行き止まりの学問にしてはなりません。

2013年11月5日公開

進化経済学会理事会

経済教育学会、日本学術会議経済学分野の参照基準への意見書

経済教育学会
 ∟●日本学術会議経済学分野の参照基準への意見書

日本学術会議経済学分野の参照基準への意見書

経済学分野の参照基準について、理事会で検討委員会を組織し、その議論を経て、理事会の承認のもとに、下記の意見書を日本学術会議会長大西隆氏宛に、11月27日付けで郵送いたしました。(事務局)

経済学分野の参照基準(原案)に対する意見表明

日本学術会議経済学委員会           樋口美雄委員長 殿
経済学委員会経済学分野の参照基準検討分科会  岩本康志委員長 殿

経済教育学会理事会は、日本学術会議経済学委員会が分科会においてとりまとめた、教育の質保証にかかわる「経済学分野の参照基準(原案)」について、次のような意見をまとめることといたしました。参照基準が社会科学としての経済学教育ないしは経済教育の枠組みを今後規定するとすれば、「原案」は経済教育の発展に少なくないマイナスの作用を及ぼすと懸念したからです。本学会は30年にわたって経済教育に対する理念、方法、実践について、小・中・高・大学を繋いで、また市民生活レベルにおいて、多角的な検討を加えてまいりました。そうした研究、実践の積み上げの成果も踏まえて、今後の参照基準の確定作業に対して、学会理事会としての意見を示すことといたしました。

1.経済学は人間の社会的活動を対象とする学問であり、歴史的発展と共にさまざまなパラダイムにおいて研鑽され、展開されてきている。したがって、学問として、思想として経済社会を分析する体系はさまざまに展開される。また、分析体系を基礎に政策形成や政策評価をする場合も、さまざまなパラダイムからの評価があり得る。こうした社会科学としての経済学の特徴を理解し、自主的、自立的に思考できること、そしてそれらができる人材の育成に役立つことこそ、経済学教育の質保証のための基本的な参照基準であるべきであろう。すべての職種が高度化し、多様化が進んでいる現在、ある種の要領を画一的に示し、型にはめることだけでは、複合化し深刻化する社会問題の解決が図れる経済人育成につながらない。

2.経済学は、近代の成立と同時に政治経済学から出発した。その後、いくつかの学派が展開し、その基本的な概念から異なる経済学体系が成立している。その延長線上に現在のミクロ経済学やマクロ経済学があるのであり、同時に、それとは異なる基本概念を持つ政治経済学(ないしは社会経済学)も発展してきた。さらに、進化経済学や行動経済学などの新たな試みが展開されてきている。多種多様な政治経済形態が混在する国際社会に対応しうるグローバル人材の育成のためには、基本的に学ぶべき学問体系を市場体系の分析に関わるミクロ経済学およびマクロ経済学に止めることなく、市場を支える法的、政治的、社会的、文化的枠組みを重視する政治経済学(ないしは社会経済学)に基づく基本的な経済学体系も、教育すべき学門体系として位置づける必要があろう。さらには、いくつかの学問体系が広く展開していることもカリキュラムにおいて考慮されるべきである。

3.経済学は、人間社会の実践的な活動の一つである経済活動を窓口にして、社会全体の動態を分析する学問である。したがって、制度的、歴史的、文化的、自然科学的な面から経済現象を分析するアプローチが必要であり、極めて有効である。単に、経済学の標準化モデルないしはツールのみで経済現象にアプローチすると、グローバル化した世界経済で柔軟に対応し、活躍する人材育成がかなわず、日本の将来の経済が海外諸国にますます後れを取る可能性が高くなる。多角的なアプローチが許される、またそれを特徴とする学問体系が、日本における経済学の伝統でもあることを意識した参照基準であるべきである。

以上をまとめますと、経済そのもの、したがって経済システムは多種多様であります。単一のモデルを目指して分析することの限界は、長い歴史の中で、様々な社会の中で、そして現代の経済学の中においても検証されていることであります。また「国際標準」とされる経済教育がなされ、それにもとづく政策が展開されてきたアメリカの現状を見るにつけて、「参照基準(原案)」の限界は今や明らかであると言わざるを得ません。経済学は様々な政策理念の摺合せのなかで、多様な理論体系や学派の論争のなかで発展してきました。さらに経済学の教育は、日本経済を発展に導き、現在を支えるジェネラリストとしてのホワイトカラー層を輩出する役割を、学部を越えて広く大学教育の中で果たしてきました。こうした視点も踏まえて、今後の経済の展開にも十分に対応できる、柔軟な参照基準というものが重視されなければならないと考えます。

2013年11月25日
経済教育学会理事会

社会経済史学会、「経済学分野の参照基準(原案)」(提案1)に関する意見書

社会経済史学会
 ∟●「経済学分野の参照基準(原案)」(提案1)に関する意見書

「経済学分野の参照基準(原案)」(提案1)に関する意見書


 日本学術会議において、現在議論されている「大学教育の分野別質保証」のための「経済学分野の参照基準」の内容に関して、社会経済史学会常任理事会は、経済学教育が危機に直面していると認識し、常任理事会として意見を表明することにいたりました。

(1)経済学こそ相対化される必要がある
 本参照基準は、学士課程教育における経済学の質保証のためのものであるが、「学力に関する最低水準や平均水準を設定するものでもなく、また、カリキュラムの外形的な標準化を求めるコアカリキュラムでもない」とした上で、「各大学が、各分野の教育課程(学部・学科等)の具体的な学習目標を同定する際に、参考として供するものである」(1頁)という日本学術会議の回答(参考文献[2])にそって作成されている。
 しかし、本提案の趣旨は、こうした指針とは逆に、「今後の学士課程教育は、一方で、わが国の伝統である経済学に対するアプローチの多様性を尊重しつつ、他方で……国際通用性を持つ質の高い教育が行われることが期待される」(1?2頁)としながらも、結果として、「わが国特有の方法で行われてきた『多様なアプローチに基づく経済学教育』からは距離をおいた報告」(1頁)になっている。
 その原因は、社会科学の一環として有効性を持ちうるはずの経済学の体系を、「国際的に共通したアプローチ」「標準的アプローチ」としてミクロ経済学・マクロ経済学(および統計学)の特定科目を基礎科目と位置づけることにより、経済学の対象を自ら狭隘化させていることから生じていると思われる。
 本提案は、参考文献[4]の”Nature and context of economics”(p.1)や OECDの報告書[5]を基礎に作成されているが、これらの報告書においては、ミクロ・マクロのレベルと静学・動学のレベル、国際的な文脈や社会経済的な文脈での理解の必要性など世界的視野で経済事象を理解するうえで重要と思われる論点が指摘されているものの、本提案に十分に反映されているとは言い難い。
 とくに、本提案では、経済学の特性として、「学問用語の定義と意味が世界的に標準化」されていることや「経済学を習得した者の間での国際的なコミュニケーションが容易である」ことが強調され、「文化や社会の多様性が認められるべきだという相対主義が強い学問分野とは対照的である」(6 頁)と指摘されていることからすると、本提案でいう経済学は絶対主義の強い学問分野であるとみなすことができる。しかし、本提案でも指摘されているように、「経済学は発展途上の学問」(7 頁)、「新しく若い学問」(17 頁)であって、「成熟した学問分野」ではない(7頁)とすれば、むしろ逆にこうした「標準的アプローチ」は絶対化されるべきではなく、相対化されるべきものであると考えられる。経済学が学問として自らを相対化し得ないとすれば、学生に
「標準的なアプローチの有効性とその限界」(8 頁)や「経済学の社会的意義とその限界」(19頁)について認識させることは難しいであろう。

(2)多様な世界を知るためには多様なアプローチが必要である
 本提案における経済学の定義と経済学の専門分野との関係はかならずしも明確でないが、「経済学の体系」に関して「ミクロ経済学、マクロ経済学が……共通した経済学的アプローチを提供している」(6頁)という記述からすると、主に経済理論に基礎をおく経済学を意味していると考えられる。しかし、現状のミクロ経済学・マクロ経済学が、経済事象を分析するための十分なモデルを提供できていないところに問題があることは明らかで、そのために「経済学者間で意見を異にする」(7頁)、あるいは「多くの理論的説明が併存」(8頁)し、「その主要な原因は、理論の妥当性を検証する実証分析の検定力が弱いことにある」(8頁)が故に、「不正確な教育」(17頁)になる可能性も多分にでてくる。
 たしかに、人間を豊かにする「手段は多様」であるが故に選択が重要であり(3頁)、「現代社会には多様で膨大な数の社会問題が存在する。これらの諸問題の全体像を知り、それに対処する仕方を考えておくことが、社会で生きていくうえで必要不可欠であるものの、経済学の専門教育だけでそれを十分に習得することはできない」(19頁)ことは提案でも指摘されているものの、各国・各地域の経済主体の行動は、自然資源の賦存状態や地政学的環境により歴史的に規定されていることは言をまたない。しかし、経済学が「市場のメカニズムや市場の取引に参加する経済主体の行動」(3頁)や「市場経済に基づいた先進国経済を前提」(7頁)としているのであれば、世界人口の多数をしめる新興国や途上国の貧困や医療・教育の格差など「複雑な仕組み」(8頁)に基づく世界の種々の経済的諸問題の解決のためには、自ずからその限界は明らかである。
 日本の経済学教育について、本提案では、「わが国では、制度や歴史を通じた理解には理論的・数量的な分析を必ずしも必要としないこともあり……標準的なアプローチを軽視し、制度的アプローチや歴史的アプローチを強調することが多い」(7?8頁)と指摘されているが、こうした歴史的・制度的アプローチは日本に特有なことではなく、世界各国に共通してみられることである。「経済史や経済制度に関する教育自体も、できるだけミクロ経済学、マクロ経済学と関連づけて行われることが望ましい」(8 頁)という記述は、「ミクロ経済学、マクロ経済学に関する教育自体も、できるだけ経済史や経済制度と関連づけて行われることが望ましい」と書き換えられるべきであろう。
 「歴史的アプローチや制度的アプローチ」が必要なのは、「市場経済を中心とする現代の経済制度を本質的かつ歴史的に理解するため」や「標準的なアプローチと補完的に使用する」(7頁)ためだけではなく、現実の世界には、ミクロ経済学やマクロ経済学の既存の理論的な設定では視野に入ってこない数多くの経済事象があり、こうした問題を発見し、分析することが経済学にとってひとつの重要な課題であるからに
ほかならない。

(3)「演繹的思考」と「帰納的思考」の重要性について
 本提案では「経済学に固有な能力」として「演繹的思考」と「帰納的思考」があげられている。経済学教育において演繹的思考と帰納的思考の双方を学習することが重要であることはいうまでもない。この部分は参考文献[4][5]での指摘を反映したものと思われるが、これらの文献ではミクロ経済学・マクロ経済学に特化した記述ではないので違和感はないものの、本提案での演繹的方法と帰納的方法との関係について
は疑問をもたざるを得ない。
 3-1「経済学の方法」では、モデルの構築・分析と「現実経済との整合性のチェック」の重要性が指摘され、これが「演繹的思考」と「帰納的思考」に対応するものとなっている。「演繹的思考」は「一定の仮定に基づいた理論モデル」の構築(12 頁)とされているのに対して、「帰納的思考」は「現実の経済データや個別の事例から一般的な法則を導き出し、理論モデル自体やそこで採用されている仮定の妥当性を検証するという作業」と定義されている。しかし、ここでいう「帰納的思考」とは「演繹的思考」の可否の判断にともなって当然行われるべきプロセスであって、「帰納的思考」とは本質的に異なるものである。「標準的アプローチ」における「帰納的思考」がその程度のものでしかないのであれば、多分に再検討の余地がある。
 統計学的知識を身につけ、収集した経済データを分析・解明するスキルを学習することで「数量データの本質を見抜く洞察力を獲得する」(12 頁)ことが重要であることは言うまでもないが、経済現象のすべてが定量化できるわけではなく、定量化できない多くの記述資料や視聴覚資料も存在することはいうまでもない。こうした定量化可能な資料と定量化できない資料とを史料批判をふまえた上で総合的に思考し、判断する能力を経済学的アプローチによって習得することが、社会性を持つ市民としての学生の教育にとって重要なことと考えられる。このことは、学生が「標準的アプローチ」による経済学を学習する際の「機会費用」(10 頁)についても考察する必要があることを示している。

 経済学教育にとってミクロ経済学、マクロ経済学、統計学などの基礎理論についての学習が必要であることは否定しないが、経済社会は制度もふくめて歴史的に形成されたものである以上、多様性を重視せずに、理論による単一の解の可能性だけを求める思考方法は、多様な社会現象を対象とする社会科学としての経済学の意義を逆に損なうものであると言わざるをえない。経済学が「現在」の状況を相対化し、客観的・科学的に把握できないかぎり、経済学によって未来を語る選択肢はとざされてしまうことを、われわれは危惧している。

2013 年 11 月 27 日
社会経済史学会代表理事
杉山伸也

経済学史学会、経済学分野の参照基準原案への要望書

経済学史学会
 ∟●経済学分野の参照基準原案への要望書

要望書

日本学術会議経済学委員会
委員長 樋口美雄 様

経済学委員会 経済学分野の参照基準検討分科会
委員長 岩本康志 様

 日本学術会議協力学術研究団体である経済学史学会の幹事会は、「経済学分野の参照基準原案(2013年11月11日付文書)」(以下「原案」と呼ぶ)を検討した結果、貴委員会に対し、以下のような要望を行うことにしました。
 学士課程教育の最終目的は――特に「創造的な人材の育成」(原案1頁)が求められている場合――真実とされていることを学生に真実と考えさせ、正しいとされていることを正しいと考えさせることにあるのではなく、何が真実であり、何が正しいのかを自分で判断する力を身につけさせることにあります。したがって、当該分野で確立された専門知識の内容そのもの以上に、知識がつくり出される精神と過程を学ばせなくてはなりません。
 このような立場に立って原案を読むと、全体として、確立された専門知識の習得に力点が置かれ、知識を作り出す精神・能力の涵養という視点が弱いように思われます。私たち経済学史学会幹事会は、経済学(および経済思想)の歴史を教えることが、後者の目的を達成するための有益な方法だと考えます。ミクロ経済学やマクロ経済学を基礎とする「標準的アプローチ」を採る場合にも、「発展途上の学問」(原案7頁)である経済学が、どのような経済社会や思想にもとづいて、またどのような学問的経緯をたどって形成されたかを教えることや、「標準的アプローチ」に収斂しない他の経済学説があることを教えることは、学生に、経済学を学ぶことの意義を悟らせ、それを使うときの限界をわきまえさせる上で不可欠だと言えます。原案が参考としている英国の分野別参照基準(Subject Benchmark Standard, p. 3)にも、学生が身につけるべき能力のひとつとして、”appreciation of the history and development of economic ideas and the differing methods of analysis that have been and are used by economists”と記載されています。
 経済学の歴史を通じて多様な経済学的思考法を学ぶことは、社会人、一般職業人の常識としての基本知識であるだけでなく、専門職や研究者を目指す者が視野狭窄に陥ることを防ぎ、問題設定能力、コミュニケーション能力、グローバルな市民性を高めることに貢献すると思われます。
 以上の点を考慮いただき、経済学史(経済思想史)を学士課程教育に不可欠な基礎として位置づけ、その旨を記載していただきますよう、強く要望します。

2013年12月1日
経済学史学会幹事会

基礎経済科学研究所、「経済学分野の参照基準(原案)に対する意見表明

基礎経済科学研究所
 ∟●「経済学分野の参照基準(原案)に対する意見表明

「経済学分野の参照基準(原案)に対する意見表明

日本学術会議経済学委員会 樋口美雄委員長 殿
経済学委員会経済学分野の参照基準検討分科会 岩本康志委員長 殿

基礎経済科学研究所は、創設(1968年)以来約半世紀にわたって、「勤労者とともに勤労者のための経済学を創造」すること、また「働きつつ学ぶ権利を担う経済科学の総合」をめざして、自主的な学術研究団体(学会)として活動してきました。日本学術会議に登録され、また、かつて学術会議内に設置されていた「経済理論研究連絡会」にオブザーバーとして参加していました。多数の社会人研究者、労働者研究者を輩出するとともに、『人間発達の経済学』、『日本型企業社会の構造』など30冊以上の書物を出版し、人間の成長と公平な社会の実現、地球環境が大切にされる公正な日本経済づくりのために尽力しています。

そのため、現在貴委員会が作成をされています「経済学分野の参照基準」には重大な関心を持って見守ってきました。「原案」をもとに公開シンポジウムが開催されるに当たり、また「広く意見」が求められていることに鑑み、私たちの意見を表明することといたしました。「原案」の内容には大きな問題があり、将来の日本の経済学の発展を阻み、経済学を国民から遊離されたものにする極めて危険な試みであるという意見です。この点に関しては、数百名の賛同を得て集められています「経済学分野の教育『参照基準』の是正を求める全国教員署名」や経済理論学会、進化経済学会の各要望書もまったく同じ趣旨から危惧が表明されていると思われますが、基礎経済科学研究所としては、市民フレンドリーな「市民の経済学」をめざしてこの半世紀活動してきた経緯を踏まえて、仕事や労働、生活や人生などの現場から、経済学の古典や社会思想の学説を援用して考える経済学の教育と研究の重要性を強調したいと思います。少なくともこうした経済学の学習に道を拓き、連結する参照基準でなければならないと考えます。

現在、恐慌・失業・貧困・犯罪、家庭・地域・環境の破壊、さらには震災復興などのさまざまな社会問題に苦しむ国民からみた時、「参照基準(原案)」の想定する経済学は大きな反省を迫られると言わざるを得ません。「国際基準」とされているアメリカ中心の経済学教育の定着と、それに基づく経済政策の展開が、恐慌・失業・貧困・犯罪、家庭・地域・環境の破壊などのさまざまな社会問題を生み出していると、アメリカ国民だけでなく世界の人々の多くが感じています。そして、こうした課題の解決には、そうした経済学に代わる「新しい」経済学が求められており、その発展には「マルクス経済学」を含む「政治経済学(ポリティカル・エコノミー)」ないし「社会経済学」の教育・研究は不可欠であります。こうした時に、このような「参照基準(原案)」が出されることは、国民・市民の経済学者コミュニティーへの大きな不信を招くことにしかならないでしょう。

日本学術会議のホームページには「日本学術会議は、わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です」と書かれています。この趣旨から今回の「参照基準」も、真に多様な経済学者の意見をまとめるものでなければなりません。1つの固定的な枠組みを強調する具体的な「カリキュラム」やキーワードの提示を含む「参照基準」には反対せざるを得ません。数多くの経済学関連研究者、いくつかの学会が表明する危惧を払拭できない現在の「原案」は根本的に書き換えられる必要があると考えます。
日本学術会議も、また研究者や学者が国民から遊離した存在であってはなりません。多くの意見に耳を傾けて、私たちの声が反映される基準の作成に向けて、要望意見を表明させていただきました。

2013年11月28日
基礎経済科学研究所常任理事会