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 カテゴリー 2014年05月

2014年05月31日

大学人ユニオン「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

労働組合法人大学人ユニオン,「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

2014年5月30日 労働組合法人全国大学人ユニオン執行委員会

 現在、衆議院で「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議が行われている。法律案は、「大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進するため、副学長・教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るための措置を講ずる」ことを趣旨としている。

 しかし、「副学長・教授会等の職や組織の規定」の見直しや「国立大学法人の学長選考の透明化」を通じた「ガバナンス改革」は、危機に瀕した日本の大学を死に至らしめる「劇薬」の作用をもつものである。大学は国公私立の設置形態を問わず高い公共性を有しており、そこで働く教職員は国民の教育権(学習権)に対して直接的な責任を負っている。

 したがって、大学には私企業の原理とは全く異なった経営の原理が貫かれなければならない。学生を含め全構成員による「自治」が大学を大学たらしめているのであり、その中核的な役割を果たすのが教授会に他ならない。しかるに、「法律案」は、教授会の審議権をはく奪し、ごく限られた事項に限って学長に対して「意見を述べる」だけの機関にしようとしている。また国立大学の学長を学内構成員(教職員)の意思によって、民主的な手続きを通じて選考することができなくしようとしている。

 ユネスコの「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」では、「自治とは学問の自由が制度という形をとったものであり、高等教育の教育職員及び機関に委ねられた機能の適切な遂行を保障する前提条件である」「加盟国は、いかなる筋による自治への脅威からも、高等教育機関を保護する義務を負う」と規定されている。このような点で、法律案は学問の自由、大学の自治に対する重大な侵害である。

 また、日本国憲法は第23条において「学問の自由は、これを保障する」と規定する。 国公私立の設置形態を問わず適用される学校教育法第93条の規定は、この「学問の自由」を大学という機関において保障するために設けられたものである。日本の大学がさまざまな問題点を抱えていることは事実であるが、その改革は、市民社会とともに大学人自身が主体的に取り組むべきものであり、国家によって強制されるべき筋合いのものではない。

 安倍内閣は「世界で最も企業が活躍しやすい国」をめざすとし、その一環として産業界に奉仕する大学づくりを狙っている。また、東アジアと世界の平和に逆行する「積極的平和主義」を主張するとともに、立憲主義を否定する暴走を進めようとしている。「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」は、そのような新自由主義・新保守主義の動きのなかに位置づけられていることも想起しなければならない。

 以上のようなことから、労働組合法人全国大学人ユニオン執行委員会は、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求め声明する。あわせて、大学関係者ならびに市民社会と連携し、「法律案」の廃案を求めて取り組む決意を表明する。


自民党文部科学部会、日本経済再生本部大学のガバナンス改革で勉強会

全私学新聞(2014年3月23日号二ュース)

自民党文部科学部会・日本経済再生本部大学のガバナンス改革で勉強会
3氏が意見表明

佐藤桜美林学園理事長「私学の多様性認めて」
学長選考方法や学長補佐体制などが焦点に

 自由民主党の文部科学部会(丹羽秀樹部会長=衆議院議員)と日本経済再生本部(高市早苗本部長=衆議院議員)は、3月14日、東京・永田町の党本部内で、大学のガバナンス改革に関する合同勉強会を開いた。

 この日は、冒頭、塩崎恭久・日本経済再生本部長代行と丹羽部会長があいさつした後、平野俊夫・大阪大学総長、佐藤東洋士・桜美林学園理事長・桜美林大学総長、北城恪太郎・国際基督教大学理事長(日本アイ・ビー・エム株式会社相談役、経済同友会終身幹事)の3氏から、大学のガバナンス改革に関する意見を聴取した。

 この中で平野大阪大学総長は、「研究型大学のガバナンス改革に係る大阪大学の取り組み」と題して、〝世界トップ10〟に向けた同大学の取り組みを紹介。

 その上で世界の大学と競争するためには、学長選考会議で選考と解任の理由を明確化し、学長の業績評価の義務化、運営交付金等の一部を学長に配分、ポストの配置権を学長に与えること、学長を支援する専門組織の充実、各国立大学が策定する中期計画期間(現行6年)の延長(10~12年)等を提案した。

 佐藤桜美林学園理事長は、私立大学は建学の精神を有し、大学のガバナンスについても多様な方策・工夫を講じてきており、私立大学におけるガバナンスを国立大学法人と同様に一律に論じることは必ずしも適切ではないものと考えている、とし理解を求めた。

 桜美林大学においては、教員採用等の人事に関しては、学科単位で実質的に進められ、大学を総括すべき立場の学長の意向が全く反映されない状況にあったことから、学長のリーダーシップの下に全学人事委員会を設置し、大学全体を見渡した計画的採用および人事ができるように改善したこと、教授会の審議事項に関しては、教学、すなわち教育活動、研究活動に限ったこととし、大学経営は理事会とするよう整理したことを報告。その上で文部科学省が検討を進めている学校教育法第93条の改正については賛成の意向だと語った。

 北城国際基督教大学理事長は、大学のガバナンス改革について、1月28日、自由民主党の日本経済再生本部・教育再生実行本部合同会議に次ぐ2度目の意見表明となった。その中で北城理事長は、本来、学長や理事会に最終決定権がある事項について直接責任を負う立場にない教授会が意思決定機関として運営されている大学が多く、学長のリーダーシップによる迅速な大学改革を阻害している、と指摘。学校教育法第93条に関しては、「大学には、教育及び研究に関する学長の諮問機関として教授会を置く」と改めるよう提案。国立大学の学長選考に関しては、学外の意向が反映するよう国立大学法人法第12条を改正し、「学長選考会議の委員の数は、経営協議会に所属する学外委員を過半数とする」とし、「学長選考においては、原則として教職員による意向投票は行わないものとする」との方針を文部科学省令で示すよう求めた。

 また、私立大学の学長の選考に関しては、私立大学も国民の税金によって支援されている社会的存在であることから、私立学校法で、ガバナンスの中心である学長の選考方法を定めることについて検討すべきだ、と語った。

 こうした意見表明に対して、出席の議員からは、「外部が正しく、内部が正しくない、という硬直した話ではないだろう。外部の価値観を取り入れることについてはどういうことがいいのか」といった質問が北城理事長に出された。北城理事長は、「外部の人は、社会の変化を大学に伝えるという点で意味がある。学内を変える時に学外の人をてこに使っている例もある」と回答。

 また別の議員からは、「私学には建学の精神があると言われるが、社会的な役割は大きい。何もやらなくていいとは言っていない。私学は、我々にもわかりやすい具体的な(改革)案を出してほしい」との意見も出された。

 さらに平野大阪大学総長は、「学長には人事権がなく、仮に学長の意向を押し切ってやったとしても今の選挙方法ではその学長は消されてしまう。また学長の権限をバックアップする体制も必要。意向投票については、してもしなくてもいい。一つの要因にすぎない」と語った。

 また、佐藤桜美林学園理事長は、「学外の人を入れるとうまくできるかというと、そうではない。多様性を認めてほしい。(私立大学の)活力をなくさないようにしてほしい」と訴えた。

 自民党の文部科学部会と日本経済再生本部は3月19日にも大学のガバナンス改革に関して3人の有識者からヒアリングを行っており、納谷廣美・明治大学学事顧問らが意見表明している。

 両組織では合同でさらにヒアリングを続け、国公私立大学のガバナンスの在り方を検討することにしている。


京都の私大下宿生、初年度費用は「親の年収3分の1」

京都新聞(2014年05月30日)

 京都の7私立大・短期大に入学した下宿生で最初の年にかかる費用の平均は親の年収の3分の1を占めるとする調査結果を、京都私立大学教職員組合(京都市上京区)がまとめた。新入生への仕送り額も減少しており、組合は「家計負担を軽減するためにも国の支援が必要だ」と訴えている。

 同志社や立命館、京都産業、龍谷大などの学生の父母に昨年5~7月にアンケートを実施。7471人から回答を得た。

 下宿した場合の入学年の平均費用には、受験費用27万1523円や住居費44万7672円、大学への初年度納付金131万2526円、4~12月の仕送り74万8544円があり、総額278万265円だった。

 これに対して保護者の平均年収は843万330円で、入学年の費用が占める割合は33%に上った。実際は年収から所得税などの税金や社会保険料が差し引かれるため、「手取りの所得に占める割合は半分近いはずだ」(同組合)という。

 新入生への5月の仕送り額は8万6362円で、前年同月に比べて1239円(1・4%)減少した。2006年の10万5585円に比べると1万9223円(18・2%)減っている。

 組合の佐々江洋志書記長は「家庭の負担が重すぎる。国は私立大の助成を増やして授業料の減免に結び付けたり、奨学金を拡充したりして支援すべきだ」と話している。


2014年05月29日

学校教育法改正・国会審議情勢、5月23日衆議院文部科学委員会の速記録

5月23日衆議院文部科学委員会の速記録
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20140523monbukagakuiinkaisokkiroku.pdf

この議事速報は、正規の会議録が発行されるまでの間、審議の参考に供するための未定稿版で、一般への公開用ではありません。 後刻速記録を調査して処置することとされた発言、理事会で協議することとされた発言等は、原発言のまま掲載しています。

学校教育法改正・5月23日衆議院文部科学委員会情勢、「法案成立すれば改正趣旨に合致しない教授会規程は変えていただく」

■日本私大教連、学校教育法改悪反対メールニュース11

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★「学校教育法改正に反対するアピール署名」を大きく広げてください!

◎「アピール署名をすすめる会」HP http://hp47.webnode.jp/

※5月26日18時00分現在、署名数は5226名(非公表含む)です。多くのメッセージも寄せられています。ぜひご覧ください。

*引き続きメールの転送やツイッターなどで多くの大学教職員、学生、関係者、市民のみなさんにお知らせください!

*日本私大教連HPには署名用紙、リーフレット、声明等を掲載しています。ご活用ください。http://www.jfpu.org/no%20governance%20reform/gakkyohokaiseihanntai.html

★6月4日、6日の委員会審議は最大限の傍聴参加をお願いします!(詳細末尾)

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▼ 衆議院文部科学委員会速報
  ―「法案成立すれば改正趣旨に合致しない教授会規程は変えていただく」

○5月23日(金)13時~16時にかけて学校教育法及び国立大学法人法改正案の委員会審議が行われ、与野党7党の議員が質問を行いました。在京の組合員中心に日本私大教連から11名、全大教から6名が傍聴しました。

○民主・吉田泉議員、結い・井出庸生議員、共産・宮本岳志議員は、私たちの要請を踏まえて、法案の問題性を厳しく追及しました。早くも法案の問題性が浮き彫りにされつつあります。主な質疑の概要を紹介します。

【吉田議員】

・私たちが取り組んでいる「アピール署名」で元総長など錚々たるメンバーが呼びかけ人なっていることを取り上げ、現場の教職員が法改正に大きな懸念を抱いていると紹介。

Q1.法案が中教審「審議まとめ」よりも教授会の役割・権限が大きく後退しているのはなぜか。

A1.「学生の入学・卒業・課程の修了、学位の授与」以外を「意見を聴く」事項から外したのは、大学によって扱いが多様だから。教授会の役割・権限を縮小するものではない。

Q2.「審議まとめ」では「教授会の審議を十分考慮して学長が決定」とあるのを法案では規定していない。

A2.現在も法の拡大解釈により教授会の決定が経営事項にまで及んでいるので、役割を明確化した。

Q3.いちばんの論点は、教授会審議が尊重されず、学長判断の一材料となるのではないかということ。例えば私大の中でもっとも成功している明治大学の教授会規程は11項目について「議決する」と規定している。法改正がされたらこの規定は変更しなければならないのか。

A3.法改正の趣旨を踏まえた規程でなければ違法となる。見直しを期待したい。

Q4.法改正によって国立大学の意向投票の実施の可否はどうなるのか。

A4.意向投票はあくまで参考としてはあり得るが、過度に学内の意見に偏ることは認められない。

【井出議員】

Q1.学長選考過程で意向投票を行うことを否定するのか?

A1.学長選考会議が主体的に選考していないという指摘がある。投票が人気投票になり、改革しようとする学長が落とされる。意向投票で決まるなら、学長選考会議の否定だ。

Q2.選考会議が意向投票の結果を踏まえて決めるとすればよいのか。意向投票を否定することは大学の自主性・自律性の侵害だ。

A2.否定はしない。投票はあくまで参考であるべき。投票結果を追認するのは主体的とは言えない。

Q3.学長のリーダーシップは、学長と教職員が一致して改革を進めるためのリーダーシップであるべきではないか。

A4.それは理想だが、痛みを伴う改革、教授会の利益にならない改革は進まない。推し進めれば次の選挙で落とされるようでは、改革は進まない。

【宮本議員】

・学校教育法制定から、大学の自治が教授会に委ねられてきた経緯を説明させる。

Q1.学校教育法施行規則144条の「学生の退学、転学、留学、休学」を「教授会の意見を聴く」事項から除外したのはなぜか。学長が教授会の意見も聞かずに学生を退学させられるのか。

A1.(高等教育局長は明確な答弁ができず)

Q2.国大法人法案の国会審議の際の政府答弁(教授会が予算や組織など経営的事項も審議)とも改正案は矛盾しているではないか。

A2.教授会の決定権が経営事項に及ぶのは問題だ。

Q3.文科省が中教審に提出した諸外国のガバナンスの資料をみれば、改正案は世界に逆行しているではないか。

A3.都合の良いところばかり取り上げられても…そうではない大学もたくさんある。

※「議事速記録」は明日にも入手できる予定です。すぐに配信しますのでぜひご覧ください。

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▼ 日本私大教連と全大教は26日、公明党のヒアリングを受けました。

○日本私大教連と全大教がこの間、公明党に繰り返し申し入れを行ってきたことにより、公明党の文部科学部会としてのヒアリングが行われました。同部会長の山本香苗参議院議員、戸倉克夫参議院議員が対応、中野洋昌衆議院議員秘書、新妻秀樹参議院議員秘書が同席しました。

○日本私大教連と全大教はそれぞれ、学校教育法改正案、国立大学法人改正案の問題点について見解を述べ、国会での徹底審議と、法改正による現場の混乱を最小限にするよう尽力することをもとめました。

○私たちの要請に対して山本香苗議員は、与党として法案を了承した立場だが最大限の努力をしたいと応え、昨年12月から今年2月にかけて法案検討の過程ですさまじい攻防があったこと、結果として苦肉の策という側面がありつつも相当引き戻したことを説明、改正案が成立した際には施行規則や通知で一定の歯止めをかけるよう引き続き努力することを約束しました。

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▼ 今後の審議日程(現段階で決まっている予定)

○6月4日(水)9時~12時 参考人質疑(関係者から10分意見聴取、各党15分質疑)

 *現段階では、大阪大学・平野総長、「アピール署名」呼びかけ人のお一人である池内了さん(名古屋大学名誉教授)が確定、もう1名が未確定とのことです。

○6月4日(水)13時~3時間程度の質疑

○6月6日(金)9時~3時間程度の質疑ののち、審議打ち切り・採決の可能性

  (参議院の審議時間を確保するとすれば、この日がタイムリミットになる。)

※※※4日、6日は最大の傍聴をお願いします!※※※

電通大教職組、都労委和解勧告受け入れました

全大教
 ∟●電通大教職組、都労委和解勧告受け入れました

電通大教職組、都労委和解勧告受け入れました

 電気通信大学教職員組合は、大学の誠実交渉を求め、昨年4月24日東京都労働委員会に救済申立てを行い、この間協議をしてきましたが、このたび5月26日(月)に行われた調査期日において、和解勧告を受け入れましたので、お知らせします。

●労働委員会の和解勧告を受け入れるに至った経緯・理由:
・団体交渉における誠実交渉の実施について、労働委員会から大学に対し改善指導がされたこと。
・これを受け、直近の大学との交渉において、一定の改善がみられたこと。
・大学が和解勧告の受け入れを表明したこと。
・今後の対応として、事件調査調書に労働委員会要望が追記されたこと。
・本事件では、救済命令が出されることは想定されるものの、労働委員会、弁護団からの、和解の趣旨に則り団体交渉で実をとることがより現実的である、との助言があったこと。

 以上により、救済申し立てから1年1ヶ月におよぶ9回の調査期日、弁護団との協議、学習会、ビラ配布行動等の取り組みを終了します。今後は、より団体交渉に重点をおいた取り組みを行うことになります。この間のご支援、ご協力、ありがとうございました。

 なお、今年2月17日に提訴した未払い賃金等請求事件訴訟については、引き続き原告団を支え、賃金支払いを求めるなど、教職員の働く環境の改善のために取り組んで行きます。
 今後ともご支援ご協力のほど、宜しくお願い致します。

電気通信大学教職員組合執行委員会

2014年05月28日

日本科学者会議広島支部、『産経新聞』報道を契機とする言論への圧力を許さず,学問の自由を守ろう

日本科学者会議
 ∟●『産経新聞』報道を契機とする言論への圧力を許さず,学問の自由を守ろう

『産経新聞』報道を契機とする言論への圧力を許さず,学問の自由を守ろう


 5月21日付『産経新聞』は,広島大学に勤務する韓国籍の准教授の授業で,従軍慰安婦の問題が取り上げられたことを批判する記事を第1面に掲載した。当該准教授は「演劇と映画」と題するオムニバス形式の授業の自分の担当回で,もと従軍慰安婦が証言を行っているシーンを含む「終わらない戦争」という映画(金 東元監督.2008年製.韓国語/日本語字幕60分)を上映し,それに自身のコメントを附すかたちで授業をおこなった。もちろん,この授業は「韓国の政治的主張」と は何ら関係がない。映画の上映は「演劇と映画」を論じるこの授業の素材として妥当であり,それをどう判断するかは学生にまかせるべきである。仮に学生が異 論を唱えたとしても,それは学生と教員との間の相互理解にゆだねるのが正当な対処であって,外部の報道機関が介入するべきではない。

 しかし,今回,聴講していた学生のひとりがこの授業内容を不快に思い,『産経新聞』に投書したことを契機に,『産経新聞』は,同じ授業を聴講していた他の 学生への取材や,当該准教授にたいする充分な取材をおこなうことなく,当該准教授へは電話での質問だけで,この記事をつくりあげた。当該記事では,「いつから日本の大学は韓国の政治的主張の発信基地に成り下がったのか」との投書をおこなった学生の言い分を根拠に,当該准教授が,『産経新聞』の指摘する「河野談話」の問題点を説明せず,学生に議論の余地を与えることなく,一方的な主張を押しつけたとした。この記事が出されて以降,広島大学 には"抗議"の電話等が殺到している。多くが,「国民の税金で運営されている国立大学でこのような反日的教育がおこなわれているのはけしからん」という内容である。

 かつてドイツでは,政権獲得前のナチス党が,その青年組織に告発させる形で意に沿わない学説をもつ大学教授をつるし上げさせ,言論を萎縮させていった歴史がある。その忌まわしい歴史を彷彿とさせる本件にたいして,われわれが拱手傍観しているようなことがあれば,特定の政治的主張をもつ報道機関がその意に沿わない講義のひとつひとつを論評し,特定の政治的主張をもつ外部のものが大学教育に介入してくるきっかけを与えることになる。

 そもそも,学問の自由は日本国憲法が保障する基本的人権のひとつであり,大学の授業で教員は,自身の学問的信念に基づいて教育研究を行う自由をもつ。もちろん,その教育研究に対して学生が異議を唱えることも当然の権利であり,教員はその異議を受け止め,相互理解を深めることによって,学問の府である大学の教育研究が深化する。よしんば,学生が大学の講義内容への告発を報道機関に行った場合でも,当該報道機関はそれを大学内部における教員と学生の対話によって解決するように対処するべきであり,充分な裏付けも取らずに扇情的な記事に仕立てることは,大学における言論のあり方を否定し,教員と学生の信頼を壊すものである。また,公正な報道を もって社会の木鐸の機能を果たすべき新聞が,学生の 1通の投書をもとに、特定の教員の講義内容を攻撃することは、学問の自由への侵害であるとともに,著しく公正を欠くものである。

 日本科学者会議広島支部は,広島大学当局に学問の自由を守るために毅然とした姿勢をもとめるとともに,広島大学内外のすべての大学人にたいして,今回の事態に際し,特定報道機関その他からの言論への圧力を許さず,ともに学問の自由を守る行動をとるように訴えるものである。

2014年5月23日
日本科学者会議広島支部幹事会

「ポスドク」就業、国が支援…研究ポストを拡大

読売新聞(2014年05月27日)

 政府は、博士号取得後も助教などのポストに就けず研究をしている「ポストドクター(ポスドク)」が、正規の職に就けるよう国立大に促す方針だ。

 安定した職を得られない研究者が増えれば、研究開発の基盤が揺らぎかねないためだ。「ポスドク対策」の実績に応じ、大学に配る予算(運営費交付金)に差をつけ、対策の効果を高める考えだ。

 財務省と文部科学省が調整し、6月下旬にまとめる政府の「骨太の方針(経済財政運営の基本方針)」に反映させ、2015年度にも実施したい意向だ。ポスドクが学内外で正規の研究職に就けるようにするため、国立大に〈1〉学内で若手向けのポストを増やす〈2〉産学連携を強化し、企業も含め安定した職に就けるようにする――ことなどを求める。国立大の運営費交付金(約1・1兆円)の配分が硬直化しているとの声もあり、「対策」の成果を踏まえ配分を見直す方向だ。

 大学院生は1991年度の9万8650人が13年度に25万5386人に増えたが、研究者採用は広がらず、ポスドクは96年の6274人が09年に1万7116人に増えている。


2014年05月26日

大学オンブズマン申し入れ、常葉大学当局は公益通報者(内部告発者)を懲戒処分するな!

大学オンブズマン
 ∟●学校法人常葉学園理事長あての「申し入れ」(2014年5月24日)

学校法人常葉学園理事長あての「申し入れ」

大学オンブズマン理事会は、2014年5月24日付で以下のような「申し入れを」を行った。
なお、本書面の公表(ウェブサイトへのアップ)に際して、プライバシー保護のため一部、記述を変更している。

2014年5月24日

学校法人 常葉学園
理事長 木宮 健二 殿
大学オンブズマン 理事会

学校法人常葉学園が設置した懲戒委員会に関して(申し入れ)

 2014年5月9日付で、常葉学園本部常葉学園懲戒委員会は委員長名で、巻口勇一郎氏宛てに「常葉学園懲戒委員会による審査について(通知)」なる書面を送付してきた。それによると同年4月23日付で懲戒委員会が設置され、懲戒委員会による審査を開始するとのことである。委員会が審査の対象とするのは、巻口氏が「……静岡地方検察庁に告訴(結果は不起訴処分)した行為」とされている。
 当オンブズマンとしては、以下の点で懲戒委員会には重大な問題点があると考える。貴法人が適切な是正措置を取ることを強く求める。

1.書面を見る限りでは「告訴」そのものを処分の対象としているとしか理解できない。そもそも告訴は結果として「不起訴処分」となったとしても市民的権利の正当な行使であり、告訴の行為そのものを処分の対象とすることは明らかな人権侵害である。したがって、何が懲戒処分の審査の対象とされているのかが明確にされる必要がある。

2.貴法人が制定したとする「教職員の懲戒処分の手続きに関する規程」によれば、第3条において「調査」について規定している。しかし、巻口氏に対する「調査」はいっさい行われないまま「審査」が行われようとしている。また、「調査」結果の内容はいっさい開示されていない。このように極めてずさんな手続きは巻口氏の人権を著しく侵害している。「調査」内容の開示を求める。

3.静岡地方検察庁による不起訴処分は事実であるが、現時点で巻口氏を懲戒の審査の対象とすること自体、「常葉学園短大における私学経常費補助金の不正受給」を内部告発した同氏に対する報復であると見做さざるを得ない。巻口氏の内部告発(告訴)は公益通報者保護制度によって保護されるべきものである。

4.懲戒を目的としたこのような委員会の場に、「審査」と称して、合法的な公益通報者である巻口氏の出席を強要しているこの事態は、学校法人常葉学園本部の社会に対する背信行為であり極めて重大である。それは教育・研究機関としての大学の自殺行為であり、「大学の社会的責任」(USR)の放棄と言わざるをえない。

付記:学校法人常葉学園(木宮健二 理事長)は、巻口氏が告訴・告発した内容に対して一片の反省も示さないばかりか、今回、このような内部告発者(公益通報者)への報復的な措置を行おうとしている。全く常軌を逸していると言わざるを得ない。懲戒されるべきは理事長はじめとした学園本部役員である。大学オンブズマンは、こうした事態を広く社会および世論に訴えていく活動を一層進めていく。

以上

<連絡先>
大学オンブズマン 事務所
〒600-8458 京都市下京区油小路通り松原下る樋口町308 京都社会文化センター内
電話:075(741)6051
e-mail:uniomb@yahoo.co.jp


2014年05月25日

岐阜大学地域科学部教授会声明「学校教育法の改正案及び国立大学法人法の改正案の廃案を要求します」

岐阜大学地域科学部教授会声明

岐阜大学地域科学部教授会声明
学校教育法の改正案及び国立大学法人法の改正案の廃案を要求します


政府・文部科学省は、学問の自由を侵害し教授会(学部教授会)を基盤とした大学自治を破壊する学校教育法改正と国立大学法人法改正を、今国会で強行しようとしています。我々、岐阜大学地域科学部教授会は、こうした法改正に断固反対し、法改正案の廃案を強く要求します。

(1) 現在の学校教育法第93条は、「大学には」、人事権や予算権を含む「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と明確に定めています。しかし、今回の学校教育法改正案は、この条文を廃止し、教授会の権限を「1、学生の入学、卒業及び課程の修了 2、学位の授与 3、前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」に縮小・制限し、大学自治の重要な一環である教授会自治―――大学の全構成員自治という観点からすれば不十分ですが―――を根幹から否定しています。しかも、教授会が審議する教育研究に関する事項ですら、学長の意見聴取の対象でしかないとしています。こうした法改正は、学科・コースの改廃や教育課程(カリキュラム)の編成の権限、学部予算に関する権限、学部長選考や教員採用・昇任などの人事の権限を教授会から完全に剥奪し、東大ポポロ事件最高裁判決ですらその伝統的な自治を認めた教授会を、学長のたんなる諮問機関とするものです。
なお、今回の法改正の基本を決めた中教審大学分科会の「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」(平成 25 年 2 月 12 日)は、教育公務員特例法全体が国立大学法人法の下では適用除外になると明言しており、とくに教特法第3条第3項や第5項で「当該学部の教授会の議に基づき、学長が行う」とした学部の総意を踏まえた学部長選考や教員採用・昇任を廃止する点が、今回の学校教育法改正の主眼となっていることは明白です。

(2) そもそも、自由で民主的な市民(学生)を育成することを使命とする大学に不可欠の学問の自由は、たんなる理念に留まることを許すものではなく、制度的組織的保障があってこそ維持され発展し得るものです。つまり、大学を構成する各学部がどのような教育・研究を組織し、どのような教育者・研究者がどのような運営の下で教育・研究に従事し得るか、といった大学の日常実態の中で、この日常が自由に営まれてこそ実現しうるはずです。そのためには、大学自治の重要な一環をなす教授会自治として、学部組織や学部の予算・人事などの重要事項を審議する権限が教授会になくてはなりません。ですから、学部教授会を学長のたんなる諮問機関にしようとする今回の学校教育法改正は、大学における学問の自由を、ひいてはより善き教育を根幹から破壊するものと言わざるをえません。

(3) また、今回の国立大学法人法改正案では、学長選考に関する第12条第7号に、「学長選考会議が定める基準により」という文言を付加して、学長選考の際に大学構成員の意向を確かめる意向投票制度―――現在、国立大学法人が行っている意向投票制度も、学長選考のための正式の選挙制度の廃止に伴う激変緩和的措置でしかありませんが―――すら廃止し、ごく少数の大学の役職者や学外者からなる学長選考会議に学長決定権の全てを与えて、大学構成員の総意を生かしてこそ可能になる大学の自治を、やはり根底から破壊しようとしています。
 さらには、国立大学法人法の第20条第3号を改正して、「経営協議会の委員の過半数は、前項第3号の委員でなければならない」とし―――これまでの規定は「二分の一以上でなくてはならない」―――、「国立大学法人の経営に関する重要事項を審議する機関」たる経営協議会を、学外者(前項第3号の委員)主導の下におこうとしています。この法改正は、財界や権力に近い学外者に「経営に関する重要事項」の帰趨を委ねて、事実上、大学運営の基盤たる経営権を大学から奪い、これまた大学自治の根幹を侵害しようとしており、他方で学校教育法改正や中教審の「審議まとめ」が意図している、学長のリーダーシップ強化にすら相反します。

(4) もとより、今回の学校教育法改正による教授会権限の縮小・制限論が狙っている学長のリーダーシップの強化の目論見も、学長のリーダーシップ強化を上意下達や単純な指揮・命令系統の拡大と見誤っています。学長に限らず、職階上位の者のリーダーシップを真に発揮する上では、大学現場の個々の大学人の声を踏まえ現場の総意を汲むことが必須で、そのためには大学構成員の自治を重視せねばならないはずです。しかし、この点を忘れた今回の教授会権限の縮小・制限論は、また、ガバナンスには<強制>のみならず<同意>という契機が伴わねばならないことを看過しており、管理やさらには<支配>に関する一般論としても誤っているため、真の学長のリーダーシップの確立に至るものではありません。

(5) 戦前の京大滝川事件や東大平賀粛学(*)などに見られた、大学自治・大学人事への国家権力の介入による学問研究の自由の弾圧や治安維持法による思想の自由全般への抑圧と、その間の日中戦争開始から国家総動員法施行などを併せて想起すれば、学問研究の自由の剥奪が如何に恐ろしく悲惨な事態と繋がっているかは明白です。大学における学問の自由と教授会自治を破壊する今回の法改正は、学問の自由全般の否定に直結しており、ひいては思想・信条の自由の剥奪や国民全体の日常への抑圧にすら至りかねません。付言すれば、このように危険な今回の学校教育法及び国立大学法人法の改正案は、教育長の任命権を時々の首長に与えて教育の政治的中立性の否定を目論む法改正の動きなどと同根でして、これらは、大学教育のみならず日本の教育全体を危うくする反動的な政治動向の現われであり、憲法23条に違反し戦後民主主義の善き伝統を破壊するものです。

* 京大滝川事件は、1932~3 年にかけて、京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授について、その講演や著書が無政府主義的等々として、時の文部大臣鳩山一郎が小西京大総長に滝川教授の罷免要求をしたことに端を発し、この事態に抗議して辞表を提出した京大法学部全教員の内、滝川教授を含む 6 名が免官とされ、小西総長も辞職に追い込まれた事件。
* 東大平賀粛学は、東京帝国大学経済学部で、国家主義派の土方成美教授と自由主義派でその著書が発禁処分となり文部省から処分を迫られていた河合栄次郎教授との対立に関わって、1939 年に、平賀東大総長が経済学部教授会に諮ることなく独断で、文部大臣荒木貞夫に両教授の休職を喧嘩両成敗の名目で具申し、両派の教授らも辞表を提出した事件。

我々、岐阜大学地域科学部教授会は、このような危険性のある今回の学校教育法及び国立大学法人法の改正案の廃案を強く要求すると共に、全ての大学人のみならず、多くの人々がこの廃案要求に賛同されんことを、強く訴えます。

2014 年 5 月 21 日
第251回 岐阜大学地域科学部教授会

「若手」大学関係者有志による「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める緊急アピール

「若手」大学関係者有志による「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める緊急アピール
同上、署名サイト

「若手」大学関係者有志による「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める緊急アピール

 さきの4月25日、政府は「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。わたしたちは、本改正案は大学における学問・研究の自由を脅かすものであり、さらに若手研究者の将来を破壊しかねないものと考え、廃案を求めます。

 現行の学校教育法第93条は、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と定めています。これは、教育並びに研究という教学面のみならず人事や予算など経営面も含んだ大学における意思決定の重要な機関として教授会を位置づけるものと解釈されてきました。ところが本改正案では教授会は「一、学生の入学、卒業及び課程の修了、二、学位の授与、三、前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」について「意見を述べるものとする」とされ、教授会の大学経営に関する権限は奪われ、教学に関わるものについても意見を述べることができるのみで、学長が最終的決定をおこなうものとされています。このように本改正案は教学・経営を問わず大学における意思決定の権限をすべて学長に集中させ、人事、組織改革、教育課程編成など、これまで多くの大学で教授会において審議されてきた事項について、学長が独断で決定することを可能とするものです。
 また、国立大学法人法改正案では、第12条において学長選考会議に学長選考の基準を定める権限を与え、現在国立大学で行われている学長選考意向投票制度をさらに骨抜きにしようとしています。こうした法改正は大学における民主的な意思決定を破壊するものといわざるを得ません。
 さらに、本改正案では同じく国立大学法人法第20条でこれまで「2分の1以上」とされてきた経営協議会の外部委員を「過半数」とするとされていますが、これは結果的に大学の運営を財界人や官僚の意向に従属させることになり、改革の目的とされているはずの学長のリーダーシップさえも損なうものとなりかねません。
 安倍晋三首相はこの5月6日、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の基調演説で、経済発展とイノベーションのために高等教育改革を行うという立場を明確にしています。さらにそこで安倍首相は「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」と、大学をはじめとする高等教育研究機関における学術研究を否定するとも受け取れる発言をしています。高等教育の「新たな枠組み」を要請する「社会のニーズ」なるものも、「実践的な、職業教育」を求めるような経済的国際競争力というきわめて狭いニーズでしかありません。しかし高等教育は時の政権による経済政策の道具とされるべきものではありません。
 教育基本法は、日本国憲法23条に定められた学問の自由の理念にのっとり、大学について「学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」とし、「自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています(第7条)。しかし今回の法改正が実現し、政府の進める大学改革が進められるならば、大学はもはや真理探求の場ではなくなってしまうでしょう。このような改革が高等教育の質的向上をもたらすものとは考えられず、これまで大学が提供してきた、より広い「教養と専門能力を培う機会」が学生から奪われてしまうことになりかねません。
 加えてわたしたちは、本改正案、ならびにその背後にある大学改革の方向性が、日本の若手研究者の将来に深刻な影響を与えると考えています。
 文部科学省は昨年11月に発表した「国立大学改革プラン」において、「シニア教員から若手・外国人へのポスト振替等を進める」としています。しかし、この「プラン」の重点が、大学ランキングの順位を上げるための形式的な「国際化」にあることは明らかであり、研究者としての能力にかかわらず外国人研究者を雇うことが優先されようとしています。このような改革が若手のチャンスを拡大するとはとうてい思えません。
 また、いわゆるポスドクや非常勤講師など、定職に就いていない、あるいは任期付きといった不安定なポジションにある若手研究者は、これまでの大学改革の結果として、将来への大変な不安と競争のプレッシャーにさらされつづけています。そのようななか、十分な訓練を受けられないまま、研究倫理にも欠けた研究者が生み出されつつあるのではないかともいわれています。現在政府が本法改正を通じて進めようとしている大学改革は、国立大学はもとより、日本の高等教育に関わるすべての若手研究者に将来安定したポジションで多様な研究を行うという希望を奪うものであり、日本における次世代の研究・教育者育成に深刻な影響を与えかねません。

 以上の理由により、わたしたちは現在国会に提出されている学校教育法並びに国立大学法人法改正案を廃案とすることを求めます。

2014年5月16日
呼びかけ人(50音順)

安部浩(京都大学・大学院人間・環境学研究科・准教授)
植上一希(福岡大学・人文学部・准教授)
大倉得史(京都大学・大学院人間・環境学研究科・准教授)
大河内泰樹(一橋大学・大学院社会学研究科・准教授)
大屋定晴(北海学園大学・経済学部・准教授)
小椋宗一郎(東海学院大学・人間関係学部・准教授)
小野文生(同志社大学・グローバル地域文化学部・准教授)
菊池恵介(同志社大学・グローバルスタディーズ研究科・准教授)
北村毅(早稲田大学・琉球・沖縄研究所・客員准教授)
神代健彦(京都教育大学・教育学部・講師)
河野真太郎(一橋大学・大学院商学研究科・准教授)
小谷英生(群馬大学・教育学部・講師)
児玉聡(京都大学・大学院文学研究科・准教授)
斉藤渉(東京大学・大学院総合文化研究科・准教授)
澤佳成(東京農工大学・大学院農学研究院・講師)
清水池義治(名寄市立大学・保健福祉学部・講師)
白井聡(文化学園大学・服装学部・助教)
高宮幸一(京都大学・原子炉実験所・准教授)
高山智樹(北九州市立大学・文学部・准教授)
田中真介(京都大学・国際高等教育院・准教授)
多羅尾光徳(東京農工大学・大学院農学研究院・准教授)
中嶋英理(首都大学東京・大学院人文科学研究科・大学院生)
西山雄二(首都大学東京・人文科学研究科・准教授)
平野研(北海学園大学・経済学部・准教授)
藤田尚志(九州産業大学・国際文化学部・准教授)
南出吉祥(岐阜大学・地域科学部・助教)
宮入隆(北海学園大学・経済学部・准教授)
宮﨑裕助(新潟大学・人文学部・准教授)
宮本真也(明治大学・情報コミュニケーション学部・准教授)
森千香子(一橋大学・大学院法学研究科・准教授)
山口裕之(徳島大学・総合科学部・准教授)

東北大前総長・研究不正疑惑 元教授ら、大学に監査請求

河北新報(2014年05月24日)

 井上明久東北大前総長の研究不正疑惑で、「実験の再現性を確認し、不正はなかった」と結論付けた大学の報告書に画像データを改変した跡が見つかったとして、同大の元教授らが23日、事実確認や報告書の撤回を求める監査を大学に請求した。
 監査請求したのは、同大名誉教授の斎藤文良氏、矢野雅文氏ら4人。県庁で記者会見した斎藤氏らは「再現性の論拠とされた画像の改ざんは明らか。不正はないとした結論は破綻している」と訴えた。
 東北大は2007年、井上氏の研究に不正があるとの告発を受け、対応委員会が検証し、報告書をまとめた。
 報告書は、直径30ミリの円柱金属ガラスを作製したとする井上氏の1996年論文について「実験の再現は可能」と結論。その論拠に、井上氏の共同研究者が07年に実験した30ミリ金属ガラスの作製手法を挙げ、その仕組み図を96年論文と「同じ原理の作製法」として添付した。
 しかし、この図は共同研究者の許可なく一部が加工されており、斎藤氏らは「再現性を認めるための意図的な改ざんだ」と批判。科学的にも96年論文と同じ原理の実験とはいえないと指摘する。
 加えて共同研究者は、07年の研究論文そのものを後に取り下げている。
 「30ミリ金属ガラスの作製を再現」と題して報告書に掲載された写真についても、共同研究者が旋盤で加工した試料であり、金属ガラスとは断定し難いと指摘している。
 図の改変は、4月に結審した井上氏の研究不正をめぐる損害賠償訴訟の控訴審で、共同研究者が認めている。
 東北大は「監査請求の文書は預かったが、監事が不在で内容を確認していない」と話した。

2014年05月24日

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案、衆議院本会議の審議状況

衆議院TVインターネット審議中継

<下村文科大臣 法律案の趣旨説明[18:34]>

・学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案の趣旨について

 大学は国力の源泉であり、各大学が人材育成、イノベーションの拠点として、教育研究機能を最大限に発揮していくには、学長のリーダーシップのもとで戦略的に大学を運営できるガバナンス体制の構築が不可欠であり、学長を補佐する体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選考の透明化等の改革を行っていくことが重要であります。この法律案は、このような観点から大学の組織および運営体制を整備するため、副学長の職務内容を改めるとともに、教授会の役割を明確化するほか、国立大学法人の学長の選考にかかる規定の整備を行うなどの必要な措置を講ずるものであります。

・法律案の概要の説明

<民主党・細野豪志議員[21:45]>

・安倍政権の基本的性格についての発言
 総理に賛同する人をあつめて押し通す傾向、安保法制懇、NHKなど、
 与野党の協議を経たうえで法案を通すべき

・法案の質問について[25:04]
1.国立大学法人法の付帯決議(衆議院10項目、参議院23項目)の各項目についてついて政府はどのような措置を講じてきたのか、今回の改正案は、この附帯決議をどのように踏まえているのか。

2.今回改正案を提出するにいたった立法事実について明らかにしていただきたい。現在、大学でどのような問題が起こっており、なぜ今改正が必要なのか。例をあげて具体的にお答えいただきたい。

3.学長の権限について。改正案が成立すると学長の権限が大幅に強化されます。仮に学長が暴走したときに歯止めをかける仕組みをどのように規定しているのでしょうか。

4.学長の権限が強化されることを考えると、その人選は極めて重要です。安倍総理のおともだちの学長が増えるのではないか、文科省の甘くだりの官僚が増えるのではないかとの指摘があります。文科大臣から否定していただきたい。

5.教授会の在り方について。改正案では、教授会が意見を述べることができるのは、学生の入学・卒業および課程の修了、学位の授与役割について限定されました。それ以外の教育研究に関する重要な事項は、学長が求めた場合のみ、意見を述べることができるとされているため、学長の運営方針によっては、教授会の形骸化が懸念されます。大学の自治、自主的・自律的な運営の観点からすれば、大学によって教授会の在り方は多様にあって良いと考えます。教授会で多様な意見が出た場合には、時間をかけて合意を形成する努力ことも重要です。必要なのは現場で運用しやすいしくみづくりだと考えます。文科大臣の見解をお伺いします。

6.…安倍政権は教育に関する国の関与を強めています。…省略…今回の学校教育法改正においては、大学に関する国の関与が強まり、大学の自治が脅かされるのではとの懸念の声も上がっています。憲法で保障されている学問の自由を守るため、大学は自治を確立してきました。改正案においては、大学の自治はどのように守られるのでしょうか。

7.奨学金制度の充実について。…省略…児童養護施設だけでなく、生活困窮者家庭や1人親家庭への支援を充実させる必要があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

質問終[32:20]

<下村文科大臣 答弁[32:55]>

1.これまでも附帯決議の趣旨を十分に踏まえているとおもう。国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、自主的・自律的な運営を確保すること、国立大学法人運営費交付金について、各大学が発展しうるよう必要額を毎年度措置することに努めている。
 今回の法律案については、学長選考会議、経営協議会および教育研究評議会といった国立大学の教育研究を特性を踏まえた制度は維持しつつ、それぞれの機関が役割をより一層適切に発揮できるよう必要な改正事項を盛り込んだものであります。
 さらに教授会についても専門的な観点から、重要な役割を果たすことが求められていることを鑑み、その役割の明確化を図ることとしたものであります。

2.急速な少子化、グローバル化の進展による国際的な大学間の競争に各大学が適切に対応していくためには、予算や定員の再配分や学部再編、組織の見直し等を学長のリーダーシップのもとで進めることが求められます。大学のガバナンスについては、キャンパス移転や、予算の配分等の経営に関する事項まで教授会が関与するなど、権限と責任の在り方が明確でない。教育課程や組織の見直しを行う際に意思決定に時間を要し、迅速な決定ができない。学内の都合が先行し、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘されています。このため、今回の法律改正により、学長補佐体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選挙の透明化等の改革を行うことにより学長がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備を目指すものであります。

3.今回の法律改正は、教授会をはじめとした学内の組織の役割を明確化するものであり、学長に新たに権限を付与するものではないことから、学長の暴走を助長させるものではありません。学長には優れた人物が求められる一方、そのチェックのしくみとして、監事による監査や自己点検評価、認証評価等の評価、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価等が、可能となっています。このような仕組みを通じて大学が自主的・民主的な運営を確保することが、可能であると考えております。

4.学長の選考については、法律上、国立大学法人や公立大学法人では、学長選考会議が、私立大学の場合は、学校法人の最高意思決定機関である理事会が、それぞれの権限と責任に基づき責任者を選ぶしくみになっております。今回の改正は、教授会の役割の明確化や国立大学法人の学長選考会議による主体的な選考の促進など、学長がリーダーシップを発揮できるしくみ大学のガバナンス体制の整備を行うものであり、国によって恣意的な学長選任が行われるようになるとのご指摘は当たらないものと考えます。

5.今回の改正案では、教授会が教育研究に関する事項について審議する機関であるということ、決定権者である学長に意見を述べる関係にあること、法律上明確に規定したものであります。学内で合意形成を図り、自主的・自律的な大学運営を行っていくためには、専門的な観点からの教授会からの意見を聴取することは、重要であり、教授会の在り方については、法律の趣旨を踏まえて、学長の判断において、各大学の事情に適した仕組みを採用していただきたいと考えております。

6.大学における学問の自由は、大学における教授その他の研究者の研究と教授の授業を内容とするものであり、この学問の自由を保障するため、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行として大学の自治を尊重していく必要があります。今回の改正は、学長や教授会等の学内の組織について、適切な役割分担の下で責任ある運営を行っていく体制を整備するものであり、大学に対する国の関与を強化するものではなく、また大学の自治が脅かされることもないと考えております。

7.経済的理由により学生が進学を断念することがないよう経済的支援を充実することは重要な課題と認識しております。このため平成26年度予算においては、授業料減免の充実や無利子奨学金の貸与人員の増員を行う等、授業料だけでなく、家賃や生活費についても支援し、安心して大学等に進学できるよう整備をしております。また将来の収入に応じて、所得連動型返還奨学金をはじめ、より効果的な経済的支援の在り方について検討しているところであります。児童養護出身者であれ、生活困窮者であれ、1人親家庭の学生等であれ、経済的に困難な学生が進学を断念することがないよう今後とも学生の経済的支援の一層の充実に努めてまいります。

<維新・鈴木望議員[41:05]>

 大学の実態はどうか。若者のレジャーランドといわれている。勉強をしたい若者は大学に籍を置く傍ら、専門学校や資格の勉強をしている。大学院段階では、欧米に後れをとっている。

1.現在の日本の大学が世界の大学の中でおかれている位置に関連して、大臣の認識をおたずねします。大学において改革が進まない原因は、既得権を享受している人々、具体的には、教授会が決定権限を握っているから。

2.今までの大学のガバナンスの実態はどうであったか。改正で大学のガバナンスはどう変わるのか。学長と教授会の関係は、学長は教授会の中から選ばれ、教授会という意思決定機関の議長のような役割だと認識しておりますが、今回の改正で、どうかわるのでしょうか。

3.学長が執行機関となれば、1人で大学経営全般を自らすることは無理ですから、誰かに権限を委譲しなければならない。その意味で今後は、副学長の役割が飛躍的に重要になると思いますが、副学長は具体的にどうかわるのか。

4.副学長も大学の構成員である教授会や各教授の助けを借りなければいけないと思いますが、その意味で、副学長と教授会や各教授との関係はどうかわるのかお尋ねします。

5.そもそも教授会の役割とはなにか。…省略…大学の役割は、教育と研究です。教授会の自治が歴史的に大きな役割を果たしてきたことも事実です。良き伝統は守らなければならない。一方で、現在の教授会は、…省略…既得権のかたまり。教授会の本来の役割とは何か。今回の改正でどのようにしているのか。教授会は大学の意思決定機関ではないのか。

6.学長の在り方について。学長は民間の会社で言えば社長に相当し、自ら大学を運営していかなければなりません。現在のように大学が増えた状況では、…省略…大学の果たすべき、これから生きていく道筋も千差万別です。割はさまざま。学長には、自分の大学の特徴を認識してもらうため、従来よりも学長の質が問われます。学長はどのように選考されるのか。学長選考会議では、学長選考の基準を定めるとしているが、具体的にどのような基準が定められるのかお尋ねします。

7.経営協議会について。経営協議会を設置することとした当初の目的がどのような理由で達成できなかったのか。そして、なにゆえに今回の改正が必要になったのかをお尋ねします。

8.大学の自治、教授会の自治について。自主的に守ることで学術が進歩してきたことは評価すべき。その上で、懸念事項について質問いたします。 
 ・学長のリーダーシップ、学長の暴走をとめる手立てはあるのか。
 ・若手研究者の身分の不安定、若手や女性研究の活用についてどう考えるか。(森大臣への質問)
 ・教授職を欧米と同じように任期制にしてどんどん入れ替えるべき。そうすることによって教授会は活性化し、結果として大学改革もすすむと考えますが、どうお考えでしょうか。

9.附則第2条の検討規定では何を想定し、何を検討しようとしているのか。

質問終[54:25]

<下村文科大臣 答弁[55:00]>

1.日本の大学の認識について
 鈴木議員と全く同じ認識→教育研究の質を高め、国際競争力を強化していくことができるよう迅速な意思決定を可能にするガバナンス改革に取り組むため本法案を提出した。

2.大学のガバナンスの実態と改革でどうかわるのかについて
 大学のガバナンスについては、権限と責任の在り方が明確でない、意思決定に時間を要し、迅速な意思決定ができていない、学内の都合が優先し、地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘されています。今回の改正によって、学長と教授会の関係について、学長が決定権を有し、教授会は意見を述べる立場にある、副学長の権限が拡充され学長の補佐体制が強化される、学長選考の基準等の公表が義務付けられることにより、その手続きがより明確になる等により、学長のリーダーシップによりまして、社会の多様なニーズを踏まえた適切な大学運営が行われることが期待されます。

3.副学長の役割について
 現行法第92条第4項では、副学長は学長の職務を助けるのみの規定とされており、権限は学長を補佐することにとどまっている。今回の改正によって、学長の命を受けて公務を処理することが可能となり、また副学長と教授会や各教授との関係においても学長の指示のもとで、学長に代わって教授会に意見を聴くことができるようになります。

4、教授会の本来の役割について
 教授会は本来教育研究に関する事項について検討行うことが想定されており、また法律上は、決定権を有しない審議機関として位置づけられています。学校教育法第93条では、教授会は重要な事項を審議するとのみの規定であり、その内容は必ずしも明確ではありません。そのため、教授会において予算の配分など経営に関する事項まで広範に審議されている場合や、本来審議機関であるにもかかわらず、自主的に決定機関として運用されている場合があるなど、学長のリーダーシップを阻害しているとの指摘もされています。今回の改正では、教授会の本来果たす役割を明らかにするため、教授会が教育研究に関する事項について審議する機関であること、教授会が決定権者である学長に対して意見を述べる立場にあること等、教授会の役割を法律上、明確に規定したところであります。

5.学長の選考基準について
 各大学がミッションを見通したうえで、主体的に判断しつつ、決定するものでありますが、学長に求められる資質能力、また学長選考の具体的手続き方法等が盛り込まれることを想定しています。

6.経営協議会についての現状と今回の改正の必要性について
 国立大学を取り巻く学外委員を過半数とする自発的な取り組みも進んでいますが、すべての国立大学が社会のニーズを反映する必要性をこれまで以上に認識し、こうした変化に積極的に対応できるよう経営協議会の役割をより一層発揮する観点から、学外委員を過半数とすることが必要だと考えております。

7.学長の暴走をとめる手立てについて
 今回の改正は、学内の組織の役割を明確化するものであり、学長に新たな権限を付与するものではないことから、学長の暴走を助長するものではありません。学長をチェックするしくみとして監事による監査や自己点検評価、認証評価等の評価、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価等が可能となっております。大学が自主的、自律的に適切な運営を行うことが可能であると考えます。

8.教授の入れかえ、若手研究者の活躍促進について
 文部科学省においては、大学教員の任期制の導入や公募制の推進を通じて、教員の流動性を高めるとともに、若手研究者の活躍を促進するための取り組みを進めてきたところであります。またとくに国立大学については、年俸制の導入を促進するなど、人事給与システムの一層の弾力化を支援することとしています。

9.附則の検討規定の具体的内容について
 今回の法改正により大学のガバナンスは相当程度改善するものと認識をしております。しかし国立大学については、時代の変化の中で改正で組織運営について制度改革が強く求められてきた経緯があります。今後の社会経済情勢の変化をさらなる考慮、今回のガバナンス改革が一段落するものではなく、制度改正の実施状況も踏まえ、今後一層の検討が必要だと考えております。今後制度改正の実施状況を検討し、国立大学法人の組織および運営の在り方にかかる幅広い検討を行っていくものと考えます。

<共産党・宮本岳志[01:05:50]>

・大学自治破壊法案である。
1.教授会の審議できる事項を入学、卒業、課程の修了と学位の授与に限定して、その他は学長が意見を求める場合に限るなど、教授会の審議権を大きく制約している。学問の自由を脅かすものではないでしょうか。

2.教育研究費の配分、教員の業績評価、教員採用等の人事、学部長の選任、カリキュラムの編成、学部・学科の設置廃止等、教育研究の重要な事項を教員の意見も聞かずに学長が独断で決めることになるのではないでしょうか。

3.私立大学では理事長の暴走が問題となってきました。文科省から解散命令を受けた堀越学園は、教授会による内部チェックが働かず、理事長の放漫によって経営破たんを引き起こしました。このようなワンマン経営をむしろ助長することになるのではないでしょうか。

4.わが国には学長は教職員の選挙で選ぶという民主主義的な制度が根付いてきました。国立大学では、選挙の結果学長を選んでいます。法案は、大学のミッションに沿った学長像など基準を定めて選考するとしています。……ミッションとは文科省の方針にそったということで、文科省の方針に沿った人しか学長にさせないということではありませんか。

5.大学に企業の論理を導入することについて

6.教育研究予算の拡充

質問終[01:11:02]

<下村大臣 答弁[01:11:20]>

1.教授会の審議権について
 現行の第93条第1項は、教授会は重要な事項を審議するとされているが、その内容があいまいなため、本来その審議事項として想定されていない経営に関する事項まで審議されいる場合もあるとの指摘もあります。改正案の93条第3項では、教授会が本来審議すべき内容を教育研究に関する事項と明確化したことろであり、大学の自治や学問の自由を脅かすというご指摘はあたらないものです。

2.学長が重要な事項を独断で決めてしまう懸念について
 今回の改正では、学長が決定を行うにあたって教授会が意見を述べるべき事項として、教育研究に関する専門的観点から教授会が果たすべき役割を例示したものであります。これ以外の事項についても専門性を必要とする事項について、教員組織の意見を適切に聞いていくことは必要と考えております。法律上、学長はすべての公務に関する最終的な意思決定権を有しておりますが、大学全体として、教授会等の協力を得ながら、運営することが望ましいと考えております。

3.理事長の暴走を助長するものではないか
 今回の改正は、学校法人の理事長に新たな権限を付与するものではないことから、ワンマン経営を助長するとのご指摘はあたりません。学校法人の理事長の職務執行については、理事会による監督がなされるとともに、監事による監査が行われることとなっております。また仮に学校法人において法令に違反するような事態が生じており、自主的に改善が望めない場合は、先般の私立学校法の改正規定も含め、関係規定に基づき所轄庁において必要な措置をすることができることとされています。

4.学長の選考について
 …国立大学においては、ミッションは各大学が主体的に定めるもので、文部科学省が定めるものではありません。教職員へのビジョンの提示やコミュニケーションを図るなど、教職員の意欲と能力を図ることが重要と考えます。

5.企業経営の論理を大学に導入することについて
 大学が産業界を含めた様々なステークホルダーの意見を踏まえつつ、多様なニーズに応えていくためには、主体性をもって教育研究に取り組むことが肝要だと思います。また大学のガバナンスは営利目的を追求する企業経営とは本質的に異なることもありますが、権限と責任の明確化などコーポレートガバナンスの考え方が参考となる点もあると考えております。

6.国立大学の授業料について
 教育の機会均等の観点から、適切な水準を確保することが必要であり、文部科学省としては、ひきつづき学生の経済的負担の軽減を図るとともに、必要な大学への予算措置や奨学金の充実を図っていきたいと考えております。

7.大学予算の充実
 教育研究への投資は社会の発展の礎となる未来への投資。大学予算の充実に力を注いでまいります。

< 散 会 >


2014年05月23日

大義も道理もない大阪府大・大阪市大統合問題、講演会に90人、署名が8000超える

大阪 開業支援室
 ∟●大義も道理もない大学統合―講演会に90人、署名が8000超える

大義も道理もない大学統合―講演会に90人、署名が8000超える

2014.5.18統合問題講演会.jpg

 市大と府大の両「考える会」が共催した講演会は、会場いっぱいの90人が参加して、橋下維新が進める「大学統合」が断念されるまで、署名をはじめとする取り組みを強めることを確認しました。

(講演の要旨)

森裕之教授
 橋下維新が目標としているのは関西州を作るということ。「都」はきえてしまう。都構想は大阪市をつぶすことが目的だ。橋下市長の実行力を世間に知らしめることが目的。そんなことのために市をつぶしていいのか。橋下改革の特徴は「統治機構の改革」・「上意下達の組織改革」だが、この二つが大学統合に収れんしている。
 橋下市長は、「大学の存在感がない」というが、大学に存在感が無くて当たり前。彼の単に面白いだけの話だ。大学の先生は「税金で食っている役に立たない集団」、とくに文系の教授、そこで学ぶ学生は「役に立たない」という。上意下達が機能しない大学がゆるせない、という感覚。
 しかし、公募区長や文楽・慰安婦問題などで彼らに失点がつづいた。さらに水道の民営化や堺市長選の敗北、法定協などで「改革」がとん挫しそうだ、なにか成果を見せたい、その道具として大学統合をすすめようとしている。
 新大学構想会議の視点は、「強い大阪」を実現する成長戦略と「でかくなる方がよい」というものだ。その<提言>を見ても市の「ビジョン」を読んでも「改革」は必要ない、と思える。大学のガバナンス改革というが、本質的に上意下達の大学というものは、その組織は劣化するものだ。大学の統廃合の問題は、大学「改革」についてわかりやすい切り口になっている。
「大阪市立大学・府立大学の統合問題と大学改革」レジメは→こちら

小林宏至名誉教授
 大阪の二大学は、東京の役4分の一の純経費で1・9倍の学生に大学教育の機会を提供している。橋下市長の言う財政難は政策的なもので、大学をくっつけたら何か解決するのか。統合によって財政難が打開されるものでは全くない。
「橋下徹市長による府・市二大学『二重行政』論の的はずれな攻撃」レジメは→こちら

参加者の発言
◆学費の心配なく、きちんとした大学を残さなければならない。
◆大学には多様性をつぶしてはならない。乱暴な議論が許されていいわけがない。
◆高校でも学区が撤廃され、進学校には遠くから通っている。補助金をエサに競争させている。安上がりの教育になっている。
◆市大の研究環境が悪化している。15年で教員は3分の2になり、学生数は1.5倍になった。研究費は2分の1から3分の1になった。それも競争的な資金を獲得しなければならない。被害者は学生だ。
◆市大の初代学長・恒藤恭は「死して生きる途」といったが、財政で締め上げて若手が声をあげ辛くなっている。学内にも流動化する空気があり、ここに市民運動の反映があるのでは。大学統合が市民にとって有害なプランであることが知られてきた。「じり貧」論をどのように崩していくか。
◆学外理事を増やすというのはくせ者。京大の例を見ても、政治家と財界が大学を支配しようとしている。
◆藤本統紀子さん(女子大OG)は「もっと愛校心を持とう」「なにをするべきか。強く行動しよう」というメッセージを残された。
 署名の到達点は、8000を超えたことが報告され、さらに伸ばすことが拍手で確認されました。会場で52000円余りのカンパが集められました。


2014年05月22日

学校教育法改定案、国会の審議日程 反対の声を国会議員に!

■日本私大教連、学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.8

▼学校教育法等の改正案の審議日程

○5月22日(木)13時~  衆議院本会議で趣旨説明と質疑

 下村文科大臣の趣旨説明ののち、民主党・細野豪志議員、共産党・宮本岳志議員、維新の会(質問者不明)が質問。

 →衆議院HPで中継されます。http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php 

○5月23日(金)13時~16時ごろ 衆議院文部科学委員会で質疑

 *この日の委員会では与党のみの質問となります。

※委員会の傍聴をお願いします!

 傍聴者が多ければ議員の態度も変わります。傍聴は途中入退場が可能です。部分参加でもけっこうですので多くのみなさんのご参加をお願いします。

 傍聴は事前の登録が必要ですので、傍聴可能な方は22日(木)18時までに日本私大教連書記局にメールでお名前と職業をお知らせください。

○来週は文部科学委員会開催されず

 *来週の衆議院文部科学委員会は、予算委員会で集団的自衛権の問題での集中審議が行われることや、「自民党の都合」により開催されないとのことです。

 *このため、本格的な審議は6月4日(水)、6日(木)にずれ込む見込みです。

▼現場の声を今こそ国会議員へ!

○この間お伝えしているように、自民党議員は今回の法改正に「前のめり」ではありません。審議日程も会期末(実質6月20日)を目前にして後ろにずれ込んでいます。与党が短時間の審議で採決強行しなければ、廃案、少なくとも秋の臨時国会で継続審議となる可能性が強まってきました。

○今月中に、各組合として、または教授会や有志として、法改正に反対する声を国会議員に届ける取り組みをお願いします。 

*意見・要望を出す単位は、個人、有志、教授会、組合などいずれでもかまいません。
*意見・要望を議員に届けるには…

  ・日本私大教連にメール添付で送付いただければ、全議員に一斉送信します。
  ・大学所在地選出の議員に直接送付することも効果的です。
   (地元事務所や国会議員会館の議員室へ郵送またはファックス送付)


野中先生勝訴! 「スラップ訴訟」退けた

新日本出版ブログ
 ∟●野中先生勝訴!「スラップ訴訟」退けた

野中先生勝訴!「スラップ訴訟」退けた

5月19日、東京地裁・判決出る
「学問研究と表現の自由を守った」

本誌論文(2011年6月号・掲載)をめぐって、ファンド会社・APFが、筆者の野中郁江・明治大学教授を、名誉棄損(損害賠償金5500万円)で訴えていた裁判は、5月19日、午前11時45分、東京地裁530号法廷で、判決が言い渡されました。

開廷一番、村上正敏裁判長は、「原告らの請求及び被告の請求をいずれも棄却する」「訴訟費用は…」と主文を読み上げました。その間、1分たらずで閉廷。
その判決文は全体として、不当な名誉毀損の訴えを退け、野中先生の主張を認めたもの。「勝利判決と言ってよいものだ」(徳住弁護士)、「この判決は、学問研究と表現の自由を守った大きな成果だ」(上条弁護団長)といえるものです。
傍聴につめかけた支援者は、1年9カ月におよぶ裁判、支援運動を取り組んできてよかったという感動に包まれました。

野中論文は「公益を図る目的で執筆」、
「重要な部分について真実である」と認定

12時半から、会場を移して開かれた「勝利判決報告集会」は、部屋いっぱい(80名ほど)の参加者でうまりました(写真)。
冒頭、徳住弁護士が判決文の概要を紹介。

(★判決文の全文は、こちらからダウンロードできます。PDFファイル、1.7MB)
https://www.dropbox.com/s/rwvm2bpe1erajku/nonaka_hanketsu%2820140519%29.pdf

(『経済』野中論文が)「公共の利害に関する事実に係るものであることは当事者間に争いがない」(★15ページ=判決文のページ数)。
「本件論文は、専ら公益を図る目的で執筆されたものというべきである」(★15ページ)。
(野中論文は)「その表明する意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったということができる」(★19ページ)。
(論文には、原告の求める名誉毀損の)「免責事由があると認められるから、不当行為が成立するとはいえない」(★19ページ)。

徳住弁護士は、このように被告側の主張点を、ほぼ全て認めたことは、重要な勝利判決であると評価しました。

一方、野中先生の反訴=「本訴の提起が不法行為に当たる」についての判定。
裁判所の判断は、「訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められたときに限られると解するのが相当」という最高裁判決を引いて、「著しく相当性を欠くと認めることはできない」(★20ページ)と棄却しています。
本件が「スラップ訴訟」であるとの判断には踏み込まず、入り口のところで棄却した形になりました。

弁護団、参加者、『経済』編集部の発言から

集会の中では、弁護団の先生方から、こもごも発言がありました。
上条弁護団長からは、「学問研究と表現の自由に指一本触れさせなかった画期的な判決」であり、あわせて原告側の主任弁護士が本日の判決言い渡しの裁判を欠席したことを批判されました。
その後、本裁判の「学問と研究の自由を守る会」、私大教連、日本科学者会議、昭和ゴム労組、昭和ゴム労組支援共闘会議の代表などから、これまでの争議、裁判をふりかえり、野中先生への感謝と今後への決意の発言が続きました。
『経済』編集部からは、次のような挨拶をさせていただきました。
「論文の目的の公益性を認め、論文の前提となる事実の真実性を認めたことは画期的な判決といえるのではないか。悪徳ファンドがこの判決を認めるか控訴をしてくるか分からないが、さいごまで野中先生と心一つにしてがんばりましょう」。

スラップ訴訟の完全勝利をめざし
6・17大集会へ

地裁判決が出て、2週間以内に控訴がないと、判決が確定します。悪徳ファンド側がどう出るのか、予断を許しません。一方、反訴が棄却されたので、それへどう対応するかは、今後相談することになっています。
いずれにしても、悪徳ファンドのスラップ(恫喝)訴訟を許さず、学問研究と表現の自由を守るたたかいは、引き続き気をゆるめることはできません。

6月17日、裁判・完全勝利、APFファンドを追い詰める大集会を開催します。
(午後6時半~、明治大学リバティホール=東京・御茶ノ水)
多くの参加者で、社会的にアピールし、裁判勝利を確実にしましょう。


学生支援機構、奨学金返済の訴え取り下げ 札幌の女性、猶予手続き

北海道新聞(2014/05/21 06:00)

 日本学生支援機構(旧日本育英会、横浜市)は、奨学金の返済が滞った札幌市の20代女性に返済を求め、札幌地裁に訴訟を起こしたが、20日の口頭弁論で訴えを取り下げた。女性が訴訟を機に、経済的困窮を理由とした返済猶予制度の手続きを行い、認められたため。女性は代理人を通じて「(訴える前に)機構は、滞納の理由を聞いたり、返済方法の話し合いに応じたりしてほしかった」とコメントした。

 訴状などによると、機構は2003年7月から07年3月にかけ、この女性に月額5万3千円を貸与した。女性は07年10月に返済を開始したが、12年10月から滞納したため、機構は返済期限がきていない分も含めた貸与残額約170万円を一括返済するよう、札幌簡裁に督促を申し立てた。今年2月に通常の訴訟に移行した。

 女性の代理人である北海道奨学金問題対策弁護団によると、機構には奨学生が災害や傷病で経済的に困窮した場合などに、過去にさかのぼって返済を猶予する規定がある。この女性は一度、出産退職などによる経済困難を理由に返済を猶予された後、その更新手続きをしなかったところ、機構から返済の確認などがないまま訴えられた。その後、女性があらためて返済猶予を申請したところ、12年10月から今年9月までの貸与額の返済猶予が認められたという。


2014年05月21日

スラップ訴訟、「名誉毀損」不当提訴事件 野中教授が勝訴!

■しんぶん赤旗(2014年5月20日)

祝! 勝訴!

野中教授の論文は真実、東京地裁 経営者側の請求棄却

 明治大学の野中郁江教授が発表した学術論文どに対して、昭和ホ-ルディングス(HD)と同HDを事実上支配する経営者らが、「名誉毀損(きそん)」だとして5500万円の賠償金を請求していた裁判で19日、東京地裁(村上正敏裁判長)は、経営者側の請求を棄却する判決を出しました。提訴そのものが不法行為にあたるとした野中教授の反訴については棄却しました。
 判決は、野中教授が発表した雑誌『経済』の論文は、重要な部分について真実だと認定。野中教授が東京都労働委員会に提出した鑑定意見書も、多数の人が閲覧することは可能ではなかったとして、不法行為は成立しないとしています。
 判決後の集会で徳住堅治弁護士は「裁判所が論文について、ここまで明確に事実だとはなかなか書きません。反訴については不満がありますが、不当提訴をはね返したという点については勝利判決といってよいと思います」と語りました。

 判決を受けて野中教授は、企業が高額な損害賠償を個人に対して提訴することを、裁判所が問題にしなったのは疑問があると指摘しつつ、「裁判所が論文などの大部分を真実と認めてくれたのはうれしいです。ご支援ありがとうございました」と語りました。

野中教授「名誉棄損」不当提訴事件(スラップ訴訟)とは何か。以下を参照のこと。
http://university.main.jp/blog8/archives/2013/07/post_195.html

大阪府・市大統合考える 講演会中止まで運動強めよう

■しんぶん赤旗(2014年5月20日)

 橋下徹大阪市長らが進めている大阪府立大学(堺市)と大阪市立大学(大阪市)の統合問題を考える講演会が18日、大阪市内で開かれ、講師らが、両大学を「無駄な二重行政」とする「維新の会」の決めつけは的外れだと批判しました。
 会場には、両大学の卒業生ら約90人が集い、市立大卒業生の森裕之丘命館大学教授と小林宏警府立大名善教授が清濁しました。
 森氏は、今回の2大学統合には、組織の統廃合と上意下達型の組織への変質という二つの面があるが、それは大学の関係者の内発的な思いから出たものではなく上から一方的に言われてきたものだと指摘。「つぶすことだけが目的の政治によって日本が誇るべき公立大学をつぶさせていいのか」と訴えました。
 小林氏は、国の助成・交付システムを活用して運営してきた大阪府・市の大学運営は、2008年度の数値を事例に分析すると、東京の約4分の1の純経費で1.9倍の学生に大学教育の機会を提供していると指摘。地域貢献などでも立派に公立大学の役割を果たしており、橋下氏のいう「二重行政」とは正反対だと話しました。
 共催した両大学の「考える会」の関係者は、世論と運動の力で、2016年度の統合が延期されたことを確信に統合中止まで運動を進めていこうと署名活動の強化を呼びかけました。

東京地裁、維新議員は発言甘正を 「慰安婦」著書吉見教授が要求

■しんぶん赤旗(2014年5月20日)

 旧日本軍「慰安婦」問題の第一人者、吉見義明・中央大学教授が、自身の研究をまとめた著書を「ねつ造」と発言した、日本維新の会の桜内文城衆院議員を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判の第4回口頭弁論が19日、東京地裁(小林久起裁判長)でありました。
 桜内氏は2013年5月28日、外国特派員協会での記者会見で、司会者が引用した吉見教授の本について「これはすでにねつ造であるということが、いろんな証拠によって明らかにされている」と発言しました。
 桜内氏側は、「これ」が吉見教授の本を特定しているのではなく、「『慰安婦』が性奴隷という説をねつ造と発言したものであり、吉見氏の名誉は傷つけていない」と主張しました。
 吉見教授側は、「一般の感覚では吉見氏の本と解釈できる」と反諭。「ねつ造した本を出版しているという印象を受けることは、研究者としての社会的評価を低下させる」とのべました。
 桜内氏側は「学問・学者の世界では学説の批判を受けるのは当然だ」と論点をすり替えました。また、裁判所から「慰安婦」が性奴隷でなかったという根拠を求められると、「証拠を出します」「いくらでも出せる」などと発言しました。
 吉見教授は桜内氏に対し、1200万円の賠償と謝罪広告、発言の訂正を求めています。

総長選挙廃止問題と安倍内閣大学改革④

京都大学職員組合
 ∟●職員組合ニュース、第29号(2014年5月20日)

総長選挙廃止問題と安倍内閣大学改革④

民主的総長選挙の存続守った京都大学教職員の良識

 昨年 12 月、総長選考会議の一部学外委員による総長選挙廃止の動きを察知して機敏に立ち上がった京大職組の民主的総長選挙の存続求める運動は、学内外の世論の支持・賛同の大きな広がりをみせました。この運動は京大の教育研究評議会教員、総長選考会議学内委員の良識の発揮と結びつき、4/23( 水 ) の総長選考会議が全会一致で従来どおり総長選挙の実施を決定する状況に結実しました。次期総長選出について総長選考会議は 5/12( 月 )、予備投票を 6/2( 月 )<8:30~12:00>に、意向投票を 7/3( 木 ) に行うことを公示。投票権を行使して政府言いなりの上からの「リーダーシップ」でなく大学自治に基づくボトムアップの自主性発揮する総長の選出が求められます。

大学自治破壊の学校教育法・国立大学法人法改悪案が国会上程

 総長選挙は存続させましたが、今度は政府が大学自治破壊・学問の自由侵害の法案を国会に上程 (4/25)。学校教育法と国立大学法人法の改悪案です。また、両法案の陰に隠れていますが、既に上程された独立行政法人通則法改正に伴う国立大学法人法改正案も大学自治破壊の改悪案です。

教授会の審議権奪う学校教育法改悪案

 現行の学校教育法は 93 条1項で「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」とし、大学の基本的権限を教授会に委ねています。京大でも「組織に関する規程」で「研究科に、学校教育法第 93 条第 1 項に定める教授会を置く」( 第 17 条 ) とし、教授会の審議事項として、“(1) 教育課程編成、(2) 学生の入学、課程修了その他学生の在籍及び学位授与、(3) 研究科長の選考・解任、(4) 教授、准教授、講師及び助教並びに助手の採用、昇任及び懲戒処分その他教員就業特例規則によりその権限に属するもの、(5) その他教育又は研究に関する重要事項” ( 要旨 )と明確に規定しています ( 第 18 条 )。ところが政府案は同項を「大学に、教授会を置く」のみに改変。教授会は置かれるだけの存在に。完全な審議権、権限の剥奪です。(次号に続く)


大学自治破壊法案に反対、阻止へ共同 宮本氏 全大教と懇談

しんぶん赤旗(2014年5月20日)

 日本共産党の宮本岳志衆院議員らは19日、全国大学高専教職員組合(全大教)を訪れ、竹内智副委員長や長山泰秀書記長らに党が発表したアピール「『学問の自由』を脅かす大学自治破壊法案を許さない共同をよびかけます」を手渡し、懇談しました。

 安倍内閣は、今国会に提出した学校教育法・国立大学法人法の改悪案を、今週にも審議入りさせる構えです。同案は教授会から審議権をとりあげ、学長選挙を形骸化するなど重大な問題をはらんでいます。

 宮本氏は、教育委員会制度改悪案などの流れとあわせて、「安倍政権の『教育再生』と反動化路線に逆らう障害を次々と取っ払おうというものだ」と指摘。「上から下へ自分たちの思惑を通すことができるしくみになる」として、廃案に追い込むために力を尽くす決意をのべました。

 長山書記長は、改悪に反対する緊急アピールへの賛同者は約4300人を超え、大学の教職員組合や教授会などが次々と反対声明を発表するなど運動が広がっていると紹介。竹内副委員長は「学生あっての大学なのに、『改革』案の中身には学生の顔が見えない。このままでは大企業の奉仕する学生を育てる大学となり、学問の多様性が失われる」とのべ、反対の世論を広げたいと語りました。


「教え子の論文盗用」教授を処分 本人は反論し提訴

朝日新聞(2014年5月20日)

 金沢大学は20日、人間社会研究域に所属する60代の男性教授が論文を盗用したとして1年間出勤停止の懲戒処分にしたと発表した。教授側は「盗用にはあたらない」と反論している。

 大学によると、教授は、指導している大学院生の未発表論文を修正した論文を、ほかの研究者らとともに共著者として2010年に国際誌に投稿した。大学院生は当初、筆頭著者だったが、校正段階で著者から外されて、教授が筆頭著者になったという。

 大学院生の訴えを受けて学内に設置した審査委員会が調査して盗用と判断し、昨年9月に処分を決めた。教授の不服申し立てを受けて再審査したが、決定は変わらなかった。

 教授側は、大学院生の未発表論文には作成段階から深く関与していたほか、修正論文の執筆時には大学院生が体調を崩して入院するなどして通学していなかったと主張。昨年12月、大学を相手取り、処分の無効確認や慰謝料を求める訴訟を金沢地裁に起こした。

 大学は、19日で再不服申し立ての期限が切れたとして、20日に発表した。福森義宏副学長は「係争中なので詳細なコメントは避けるが、本人の了解を得ずに著者から大学院生を外したことは重大な問題だ」と指摘した。

 発表の時期が処分決定から7カ月以上過ぎたことについては「重大な案件なので慎重を期した。今後は早期に発表できるように検討したい」と話した。(樋口大二)

[同ニュース]
■金沢大教授、指導院生の論文盗用
http://www.daily.co.jp/society/national/2014/05/20/0006976701.shtml
■教え子の論文盗用=教授処分、本人は否定-金沢大
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014052000813
■金沢大教授、指導院生の論文盗用 出勤停止の懲戒処分
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014052001001970.html
■教え子の論文“盗用”で教授を懲戒処分 金沢大学
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000027251.html

2014年05月19日

名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、弁論準備が終結し、次回は本人尋問

■谷口教授を支援する会ニュース、第21号(2014年5月17日)

弁論準備が終結し、次回|渉本人尋問

 さる4月10日(木)n時30分より名古屋地方裁判所にて、第12回裁判期日がありました。当日は鈴鹿医療科学大学、名古屋女子大学、東海私大教連の関係者6名から応援傍聴をいただきました。ありがとうございます。
 期日では、先に提訴の行われた名誉毀損裁判(2012年7月)に、遅れて提訴した解雇裁判(2012年9月)の併合されることが確認されました。また、谷口教授側から提出された大部の本人陳述書を含めた6点以外に、新たな書証申請のないことが確認されました。谷口教授側からの提出書証は全部で141点に及びます。
 焦点の人証尋問ですが、解雇にいたるまでの無形の損害(精神的苦痛)について、谷口教授本人に対する主尋問が60分、学園側代理人による反対尋問が30分、行われる予定です。
 これまで11回に及んだ弁論準備が、この4月10日で終結しました。
 次回の裁判日程(口頭弁論)は6月26日(木)午後2時から4時まで、名古屋地方裁判所1103法廷で行われます。口頭弁論は原則として法廷内の出入りが自由ですので、開始時刻に間に合わない方、あるいは途中までしかいられない方でも傍聴が可能です。多くの方の傍聴ご支援をお願い申し上げます。


2014年05月16日

学校教育法改悪反対の国会行動

エルムの森だより
 ∟●学校教育法改悪反対の国会行動

大学自治を否定する学教法改正反対」
院内集会・国会要請行動を行いました!!(5月13日)】

============================================================

★5月13日、学校教育法改正に反対するアピール賛同署名をすすめる会主催の、5.13 学校教育法・国立大学法人法の改正に反対する緊急院内集会・議員要請行動を実施し、全大教として参加しました。全大教からは8大学18人、集会全体では61人の参加がありました。

◆熱気に包まれた緊急院内集会・議員要請行動

 14時から衆議院第二議員会館第4会議室で院内集会を行いました。ともに事務局団体を務める日本私大教連の丸谷委員長が開会挨拶を、また全大教の長山書記長がこの間の取り組みと国会情勢に関わる報告を行いました。日教組から小西副委員長、全教から中村副委員長がそれぞれ連帯のあいさつをされました。宮本たけし衆議院議員(日本共産党)、吉川元衆議院議員(社会民主党)、田村智子参議院議員(日本共産党)がそれぞれ議員本人が集会に駆けつけ、大学自治を破壊する改正法案の問題点を挙げながら反対の意志を明確に話されました。また、多数の議員代理の秘書が来られました。

 15時半から議員要請行動に移り、衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会のすべての委員60人の議員事務所を、8班にわかれた参加者で訪問し、与党議員には慎重審議を、野党議員には明確な反対と慎重審議、廃案を求める要請書、アピール、メッセージ欄をすべてつけた署名簿(5月12日現在、公表可の方3,455人分)などを手渡しながら、法案への反対の意見と、それに対して賛同が広がっていること、法案が通ってしまえば大学現場がどんなひどいことになるかという現場からの声を届けました。議員本人の対応3人、政策秘書15人など、議論の中身をしっかり聞き届ける姿勢も見られました。

 16時半からの集会で、各班からの報告、そして森戸全大教副委員長の閉会挨拶があり、今後の取り組みを強化することを誓い合って、半日の集会・行動を終わりました。

◆数の論理だけではない国会の状況

 法案は4月25日に閣議決定され、28日に国会に提出されています。5月19日からの週に衆議院から審議入りと見られています。6月22日の会期末をにらみながらの審議となる公算です。 今の段階では、野党はいずれも法案に対する態度を決めておらず、民主党は来週、党としてのヒアリングを行うという情報を得ています。与党議員でさえも、「賛否両論のある法案ですね」という認識が広まっています。こうした情勢だからこそ、それぞれの大学の現場で、この法案の持つ問題点を広く共有し、それを様々な形で国会議員にとどけることに意味があります。

 衆参両院の文部科学関連委員会の委員全員の名簿を、全大教ホームページの資料ルームに掲載しました。FAX 番号が入っていますのでご活用下さい。
http://zendaikyo.or.jp/?action=cabinet_action_main_download&block_id=910&room_id=32&cabinet_id=20&file_id=2765&upload_id=7601

◆さらなる賛同の輪を

 集会時点で、3,787人(公表の可否不明の方、紙で賛同を示されてまだリストに含まれていない人を含む)の賛同が得られています。ネットでの賛同者の多くがメッセージも残され、大学と社会の行方について真剣に憂慮する言葉が記されています。
 しかし、現状の賛同数は、事務局団体の全大教の組合員数にもはるかに及ばない数です。法案が提出され、今国会で審議され可決の可能性もあるということ、この法案が重大な問題をもったものであるということが、大学人にさえ十分知られていないのが現状です。
 引き続き、各単組、そして各組合員のこの問題への認識を深めていただき、その認識を同僚と共有いただくようお願いします。そしてそれをアピール賛同署名につなげるよう、周知と働きかけをお願いします。
   
(1) ネット署名にご協力ください。URLは下記のとおりです。
https://business.form-mailer.jp/fms/dc0ab1ea31301
(緊急アピール内容も↑こちらからご覧いただけます)


首都圏大学非常勤講師組合、学校教育法改正案反対緊急声明

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●学校教育法改正案反対緊急声明

首都圏大学非常勤講師組合
学校教育法改正案反対緊急声明

学校教育法改悪は断固阻止!!
~新しい大学自治の創設のために~


2014 年 5 月 13 日
首都圏大学非常勤講師組合委員長
松村比奈子


 安倍内閣は 4 月 25 日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。この法案の問題点は、現行学校教育法 93 条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させるということです(全国大学高専教職員組合中央執行委員会・日本私大教連中央執行委員会の各反対声明より)。

 教授会は、憲法第 23 条が定める「学問の自由」から導き出される「大学の自治」を担う機関として、これまで教育・研究に関する重要な事項についての審議・決定権を有してきました。しかし法案は、教授会を実質的な諮問機関とし、学長によるトップダウンの大学運営を確立しようとしています。また経営協議会の学外委員を「二分の一以上」から「過半数」とし、学内の意向を軽視した大学運営を行おうとしているようです。

 非常勤講師は同じ大学教員でありながら、学問の自由や大学の自治からは遠い存在でした。大学職員も近年はこの傾向が強まっています。また大学内に任期制が導入されて非常勤講師のみならず教員の多くが大学の運営から排除され、この傾向は急速に拡大しました。その悪しき集大成が今回の学校教育法改正案と推測されます。この法案が成立すれば、大学の教育・研究に関する意思決定から、ほぼすべての実質的大学関係者が締め出されるという、異常な状況が政府によって強制されるのです。これは、非常勤講師としても見逃すことのできない憂慮すべき事態です。

 1997 年、第 29 回ユネスコ総会において「高等教育教員の地位に関する勧告」が採択されましたが、そのⅢ基本原則の 8 において「高等教育教員を代表する組織は、教育の発展に大いに貢献することができる力並びに第三者及び他の利害関係を有する者と共に高等教育政策の決定に関与すべき力としてみなされ及び認められるべきである」と明記されています。しかし日本では、非常勤講師を代表する者どころか、ほとんどの利害関係者がこの改正によって学内行政から実質的に排除されるのです。

 首都圏大学非常勤講師組合は、この法案に断固反対いたします。ユネスコの勧告にあるように、高等教育教員を代表する組織は、高等教育政策の決定に関与すべき力として認められなければなりません。そのためには単に現在の教授会を守るというだけではなく、新しい、あるべき大学の自治に向けて多様な利害関係者の声を聴く仕組みを構築しようではありませんか。その第一歩として、我々は、この法改正をあらゆる手段において全力で阻止することを、ここに表明いたします。


東大の軍事研究禁止、職員労組と秘密合意 昭和44年、産学協同にも「資本への奉仕は否定」

産経新聞(2014.5.15)

 東京大学と同大職員組合が昭和44年に軍事研究と軍からの研究援助を禁止する労使合意を結んでいたことが14日、分かった。東大紛争時に労組の要求に応じ確認書を作成したとみられる。東大は現在も全学部で軍事研究を禁じており、憲法に規定される「学問の自由」を縛りかねない軍事忌避の対応が、労使協調路線のもとで定着していった実態が浮き彫りになった。

 労組関係者が明らかにした。確認書は昭和44年3月、当時の同大総長代行の加藤一郎、職員組合執行委員長の山口啓二の両氏が策定。確認書では軍学協同のあり方について「軍事研究は行わない。軍からの研究援助は受けない」とし、大学と軍の協力関係について「基本的姿勢として持たない」と明記した。

 産学協同についても「資本の利益に奉仕することがあれば否定すべきだ」との考えで一致し、そのことが文書に盛り込まれている。

 同大本部広報課は産経新聞の取材に「確認書は現存していない。当時、取り交わしがなされたかどうか分からない」とし、確認書に実効性があるかどうかについても明らかにしなかった。だが、職員組合は「確認書は成文化している。大学側から廃棄の通知はないので今でも有効だ」としている。

 政府は昨年に閣議決定した国家安全保障戦略で、産学官による研究成果を安保分野で積極活用する方針を明記しており、東大をはじめ軍事研究を禁じている大学側の姿勢が問われる局面となっている。

 東大の軍事研究禁止 東大は昭和34年、42年の評議会で「軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われるものも行わない」方針を確認。全学部で軍事研究を禁じているが、複数の教授らが平成17年以降、米空軍傘下の団体から研究費名目などで現金を受け取っていたことが判明している。

 【合意文書骨子】

 ・大学当局は「軍事研究は行わない。軍からの研究援助は受けない」との大学の慣行を堅持し、基本的姿勢として軍との協力関係を持たないことを確認する。

 ・大学当局は、大学の研究が自主性を失って資本の利益に奉仕することがあれば、そのような意味では産学協同を否定すべきであることを確認する。


破産免責でも構わず延滞金つけて猛烈回収する日本学生支援機構、内部記録に不実記載の疑い

My News Japan

破産免責でも構わず延滞金つけて猛烈回収する日本学生支援機構、内部記録に不実記載の疑い

三宅勝久(05/15 2014)

 官製学生ローン「日本学生支援機構」による非道な回収がまた発覚した。多重債務に陥り自己破産・免責決定を受けた北海道の女性に対し、多額の延滞金をつけて「一括で払え」と裁判を起こしてきた。女性は「奨学金」を借りているとは知らず、破産の債権者リストにも載せていなかった。後に知ったところでは、自分が高校生のときに、子(自分)の名義で親が借りており、途中で返済に行き詰まっていた。民法の規定によれば、こういう場合、通常は免責になる。しかし学生支援機構は裁判の中で「意図的に債権者届けをしなかった。免責にならない」と頑強に主張。はたして判決は、女性の全面勝訴となった。そして機構が証拠提出した内部記録に、事実無根の記載がされている疑いが濃厚となった。カネの亡者と化した日本学生支援機構の手口をお知らせする。(判決文はPDFダウンロード可)

【Digest】
◇雪の日にやってきた債権回収会社
◇延滞金にこだわる日本学生支援機構
◇自力ではじめた裁判
◇手書きの準備書面
◇破産法253条1項
◇奨学金業務システムに疑問
◇自力で裁判やって全面勝訴の快挙
◇雪の日にやってきた債権回収会社

 北海道在住の女性Aさん(30歳代)の自宅に突然見知らぬ男が訪ねてきたのは2010年2月、雪の降る寒い日のことだった。コートを羽織った男は債権回収会社の社員だった。

 A子さんが高校在学中に借りた日本育英会(日本学生支援機構)の「奨学金」が返済できていない。延滞金と併せて払ってほしい――男はそういう趣旨のことを言った。

 元金26万円に延滞金10数万円。併せて40万円近くの借金があるという。寝耳に水の話だったので、A子さんは正直に言った。

 「奨学金のことは知りませんでした」

 親に確かめて事情が判明した。15年前、A子さんが高校に入学したとき、子どもの名義を使って、親が「奨学金」を借りていた。通学の交通費にあてるためである。借りた金額は3年間で48万円。返済は月々4000円あまりを9年かけて返す計画で、これも親がやるつもりだった。だが4年ほど払った後、2004年9月以降、払えなくなってしまった。後述するとおり、家庭内の問題や多額の借金に追われるうちに「奨学金」どころではなくなり、すっかり忘れられていた。

 その払い残しが、時間を置いて延滞金とともにA子さんに回ってきたのだ。

 債権回収会社の男に対してA子さんは、「知らなかった」という事実とともに、こうも伝えた。

 「2007年に自己破産しているんです」

 自己破産――A子さんにとっては辛い過去だった。父母は幼いときに離婚し、母親に引き取られた。やがて再婚したが、養父となった男はギャンブルにのめり込み、多額の借金をつくって家族を不安に陥れた。母親とともに、A子さんは借金の肩代わりをさせられた。

 高校を卒業すると母親は離婚し、A子さんも養父と離縁した。肩代わりした借金は、消費者金融などに500万円以上。A子さんは働き始めた..


2014年05月15日

「学問の自由」を脅かす大学自治破壊法案を許さない共同をよびかけます

しんぶん赤旗(2014年5月14日)

「学問の自由」を脅かす大学自治破壊法案を許さない共同をよびかけます

2014年5月13日 日本共産党

 わが国の大学は、その存立を揺るがす危機に直面しています。安倍内閣が「大学の自治」を破壊する法律案(学校教育法・国立大学法人法の改悪案)を国会に提出しました。

 大学は、国からの干渉をうけずに自由な教育・研究を行うために、「大学の自治」が保障されています。その土台をなすのが、学問研究と学生の教育にあたる教員が自ら大学運営に参加する制度です。法案は、この制度を骨抜きにし、トップにたつ学長が独断で運営するしくみを確立するものです。憲法第23条の「学問の自由」を脅かす悪法であり、断じて認めることはできません。

 大学教員からは、「大学が大学でなくなる」「良心に従った研究・教育を不可能にする」「学長の独裁になり民主主義がなくなる」など、法案への強い危惧と反対の声があがっています。元学長など大学関係者11氏がよびかけた「学校教育法改正に反対する緊急アピール」には、国公私立を問わず様々な専門分野の大学教員、研究者の賛同が急速にひろがっています。

 日本共産党は、大学関係者、国民のみなさんと共同し、この悪法の強行を阻止するために全力をつくします。

学校教育法改悪案は教授会から審議権をとりあげる重大な改悪です

 学校教育法は、「大学の自治」を保障するため、国公私立のすべての大学に「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」(第93条)とし、教授会の審議権を定めています。

 改悪案は、この規定を「教授会は学長が必要と認めるものについて意見をのべる」と変更します。教授会が審議している教育研究費の配分、教員の業績評価、教員採用などの人事、学部長の選任、カリキュラムの編成や学部・学科の設置廃止、学生の身分など、教育研究のあり方を左右する重要な事項を、教員の意見も聞かずに学長が独断で決められることになります。

 教授会から大学の重要事項を審議する権限をとりあげ、「学長のための諮問機関」に変質させる重大な改悪です。その一方で法案は、副学長も「学長の命をうけて校務をつかさどる」として権限を強化し、学長中心の執行体制を強めます。

 これでは、どの分野に研究費を投入するか、学部長を誰にするか、どんな人を教員にするかなどは、学長の思いのままです。「学長の気に入らない研究には予算をつけない」「国の政策に批判的な立場の研究者は採用しない」ということがおこり、学長の顔色をうかがう風潮が学内にはびこっていくでしょう。大学改革や教育研究への教職員の主体性や活力はおしつぶされ、大学から教育研究の自由や多様性が失われます。

国立大学法人法改悪案は各大学の学長選挙を形骸化します

 わが国の大学では、「大学の自治」を形成するなかで、学長は選挙で選ぶという民主主義の制度が根づいてきました。国立大学では、大学の評議会(学長、学部長などで構成)が選挙結果にもとづいて学長を選んでいたのを、2004年の法人化によって、学外者が参加する各大学の学長選考会議が学長を選ぶしくみにされました。そのもとでも多くの大学では選挙で1位の人を学長に選んでいます。

 今回の国立大学法人法改悪案は、学長選考会議が「各大学のミッション(使命・任務)にそった学長像」などの“基準″を定めて選考するとしています。教職員の選挙で支持をえたか否かよりも、この“基準″に合うかどうかで学長を決めることになります。これは学長選挙を形骸化し、無力化するものです。教職員が学長になってほしい人は学長になれず、なってほしくない人が学長になる、民主主義のない大学になります。

 しかも、「各大学のミッション」とは、文科省が決めた大学ごとの改革ビジョンです。文科省の方針にそって大学を運営する人しか学長になれないのです。

学長のリーダーシップどころか「学長独裁」の大学になります

 政府は、法案提出の理由を、学長のリーダーシップを確立し大学改革を推進するためといいます。しかし、学長選挙を形骸化し、学内で支持されない人物が学長になっても、リーダーシップを発揮できるわけがありません。そんな学長にまかせれば、上意下達で強権的に改革を断行することになるだけです。

 大学は多様な見識や価値観が存在するからこそ「学問の府」といわれます。そうした多様な立場からの意見のなかで、全学的な合意を形成する能力・資質こそが、学長に求められるリーダーシップです。教授会の審議権を尊重し、教育研究や大学改革を現場で担っている一人ひとりの教職員の意見を大切にしなければ、改革を実らせることはできません。

 法案が求めるのは、学長のリーダーシップどころか「学長独裁」を確立し、上意下達の運営を強めることです。その結果、日本の大学は教育研究の質が劣化していくことは避けられません。

 私立大学では、学園理事長のワンマン経営を助長することにもなります。文科省から解散命令をうけた堀越学園(創造学園大学)は、教授会などによる内部チェックが働かず、理事長の放漫、乱脈によって経営破たんをひきおこしたのです。

大学を政府・財界いいなりの機関に変えることがねらいです

 安倍内閣が大学自治破壊をおしすすめるのは、財界の強い要望があるからです。

 日本経団連は、「教授会で議論する『重要事項』の範囲を学校教育法第93条に限定的なかたちで明記する」とし(2013年12月の提言)、経済同友会は「教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする」ことを求めています(2012年3月の提言)。政府が今回の法案を提出したのは、これをうけたものです。

 これらの提言のなかで財界は、大学が産業界の競争力強化に貢献するような「優秀な人材」をうみだすべきだと唱えています。財界の目先の利益につながる教育や研究を担うような大学につくりかえるというわけです。そのために、政府は大学を再編・統合せよ、学費も高くせよ、大学は企業経営に学んで「ガバナンス改革」をせよとのべています。

 安倍内閣は、すでに国立大学の再編・統合を視野に入れた「国立大学の機能別分化」を各大学に押しつけています。さらに国公私立にわたって財界の要望に全面的にこたえた大学再編をすすめ、大学を政府・財界のいいなりの機関に変えることが、大学自治破壊法案の狙いです。

 政府・財界は、「グローバルに活躍する人材」「イノベーションをつくりだす人材」が必要だといいながら、大学予算を削減しつづけ、非正規の教員、研究者を増やす一方で、業績競争だけは大学に強いてきました。その結果、大学では基礎研究が存続できない深刻な危機に直面しています。世界で最先端の研究をになう京都大学のiPS細胞研究所でも9割が非正規など、若手研究者や研究支援者の雇用はきわめて不安定です。

 こうした流れこそ断ち切るべきです。

大学自治破壊法案を許さない国民的な共同を

 学問研究と教育は、社会の未来をささえる大切な営みであり、大学は、教育研究を通じて社会の進歩に貢献すべき国民共有の財産です。政府・財界のいいなりではなく、憲法にもとづき国民のための教育研究を行う機関でなければなりません。国がなすべきは、大学自治破壊ではなく、「学問の自由」を保障し、大学の多様な発展に必要な条件整備を行うことです。そのために世界で最低水準の大学予算を抜本的に増やすことこそ急務です。

 「学問の自由」と大学の発展を願うすべての人々が立場の違いをこえて力をあわせ、「大学自治の破壊を許すな」の一点で共同を広げることを心からよびかけます。日本共産党は、安倍内閣の大学自治破壊と正面から対決し、悪法を廃案に追い込むために、みなさんとともに全力をつくします。


富山国際大 元教授の論文盗用認定

読売新聞(2014年05月14日)

 富山国際大(富山市)の元教授(82)(資源工学)が同大地域学部教授だった2001年、大学が発行する紀要に掲載した論文の中で、他の研究者の著書を盗用していたことが13日、わかった。著者から指摘を受けた大学当局は先月、盗用を認めて著者に謝罪し、紀要から論文を削除するとともに、元教授の名誉教授称号を剥奪した。

 同大などによると、盗用が指摘されたのは2001年3月発行の「富山国際大学地域学部紀要」創刊号に掲載された元教授の論文「資源・環境・リサイクル―循環型社会をめざして―」。

 43ページの論文のうち15ページ分が、循環資源研究所(東京)の村田徳治所長(79)の著書「最新リサイクル技術の実際」(1993年、オーム社刊)の記述とほぼ一致していた。章の順序を入れ替えた以外は、章・節の題や図表もそのまま使用し、引用文献の記載もなかった。

 村田所長が今年3月、大学のホームページ(HP)で公開されている論文を見つけ、大学に盗用を指摘。同大は学内規定に基づき、中島恭一学長ら5人で構成する調査委員会を設置し、元教授への事情聴取などから盗用を確認した。

 元教授と大学側は4月に村田所長を訪問し、謝罪した。中島学長によると、元教授は「引用文献を示したつもりだった。軽率だったと痛感している」などと反省しているという。元教授は04年3月に退職しているため、懲戒処分の対象にはならない。

 同大は4月23日、HP上からこの論文を削除し、「大学の教育・研究者としてあるまじき行為。不正に気付くことなく、紀要を公開し続けたことを深くおわび申し上げる」とする謝罪文を掲載。紀要を送付した約200の大学などに紀要の破棄を求めた。

 中島学長は取材に対し、「著者と出版社にご迷惑をおかけした。再発防止に全力を挙げたい」と話した。教職員に倫理綱領の順守を徹底させ、今後は紀要の投稿者に対し、盗用などがないことを確認するチェックリストに記入させるなど再発防止策を講じるという。

 村田所長は「引用したなら参考文献として載せるのは常識。丸写しして自分の主張のように書いているのは、今の時代にあり得ないことだ」と憤っている。


アイヌの大学進学率、なお低く 北海道が生活実態調査公表

共同通信(2014/05/13)

 北海道は13日、昨年に実施した「アイヌ生活実態調査」の結果を道議会に報告した。前回2006年の調査に比べて大学への進学率は上昇したものの、居住する市町村の率を下回る実態が明らかになった。

 調査は北海道内で7年ごとに実施している。今回は協力を了承した6880世帯、1万6786人を対象にした。

 道によると、大学進学率は、前回比8・4ポイント増加の25・8%で、居住市町村の43・0%を大幅に下回った。また、今後、充実を期待する対策を複数挙げてもらうと「教育の充実」が前回比10・7ポイント減ながら67・9%で最も高かった。


2014年05月12日

5・13 緊急の院内集会について

北海道私大教連
 ∟●5・13 緊急の院内集会について

5・13 緊急の院内集会について

呼びかけ人や日本私大教連などで構成する「アピール署名をすすめる会」は学校教育法改悪の動きに対する集会を次の要領で開催します。

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議入り目前に、緊急院内集会・議員要請行動を実施します。
 関係議員等に対して私たちの反対の声を示し、国会での徹底審議の実現、徹底審議を踏まえた廃案をめざして、重要な取り組みとなります。
最大限のご参加をお願いします。

○名称 学校教育法・国立大学法人法の「改正」に反対する緊急院内集会・議員要請行動

○主催 学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会

○日時 5月13日(火)14時~17時

○会場 衆議院第2議員会館第4会議室
      *東京メトロ丸の内線・千代田線「国会議事堂前」、有楽町線「永田町」から徒歩5分。

<当日のおおまかなスケジュール>
14:00~15:30 院内集会
  (これまでの取り組み報告、呼びかけ人からの発言、各団体からの挨拶、国会議員からの挨拶など)
15:30~16:30 議員要請行動
16:30~17:00 まとめの集会

吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明
 ∟●吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

■ 第4回口頭弁論

日時:2014年5月19日(月)15時?
場所:東京地方裁判所103号大法廷
■ 夜のyoいっション(第4回口頭弁論拡大報告集会)

日時:2014年5月19日(月)18時?
場所:豊島区民センター第3・4会議室(4F)
JR・東京メトロ・西武池袋線・東武東上線「池袋駅」東口より徒歩5分
プログラム:
吉見義明さん、大森典子さん(弁護団長)による裁判報告
中西新太郎さん(横浜市立大学)による講演
「排外主義・レイシズムとネット社会 「慰安婦」問題を題材に」

2014年05月10日

日本私大教連、「学校教育法改正に反対するアピール署名」を大きく広げてください!

■学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.4)2014年5月9日)

学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.4

2014.4.18 発行・日本私大教連書記局

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「学校教育法改正に反対するアピール署名」を大きく広げてください!

◎「アピール署名をすすめる会」HP http://hp47.webnode.jp/

※5月8日18時現在、署名数は3370名です。
※引き続きメールの転送やツイッターなどで多くの大学関係者、市民にお知らせください!
※日本私大教連HPには署名用紙、リーフレットを掲載しています。ご活用ください。
http://www.jfpu.org/no%20governance%20reform/gakkyohokaiseihanntai.html

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▼日本私大教連は「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」に対する声明「教授会を諮問機関化し学長専断体制の確立を狙う学校教育法改正案を廃案とするよう求めます」を5月7日付で発表しました。

○Wordファイルを添付します。賛同署名の呼びかけとともに多くのみなさんにお知らせください。

▼国会院内集会のご案内

○以下の通り院内集会を開催します。法案審議入りを目前にし、関係議員やマスコミに法案に対する反対の声を示す重要な機会となります。最大のご参加をお願いします。

 名称 学校教育法・国立大学法人法の「改正」に反対する緊急院内集会・議員要請行動
 主催 学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会
     (事務局団体=日本私大教連、全大教)

 日時 5月13日(火)14時~17時
     *部分参加も可能です。

 会場 衆議院第2議員会館第4会議室
     *東京メトロ丸の内線・千代田線「国会議事堂前」、有楽町線「永田町」から徒歩5分。
     *おおむね13時半から会館入口で会議室への通行証を配布します。
     *遅れてご参加の方は受付で第4会議室に連絡を入れてもらってください。

<当日のおおまかなスケジュール>

14:00~15:30 院内集会(これまでの取り組み報告、呼びかけ人からの発言、各団体からの挨拶、国会議員からの挨拶など)
15:30~16:30 議員要請行動
16:30~17:00 まとめの集会

◆東京私大教連は4月30日、独自に取り組んでいる団体署名を携え国会議員要請を行いました。また日本私大教連と全大教はここ数日、衆議院の中心的な議員に要請行動を行っています。

 その中で自民党の議員や政策秘書からも、「党内でもさまざまな意見が出ている」「経済再生本部の主張に引っ張られた感は否めない」「慎重に審議する必要は感じている」などの声が聞かれました。

 民主党のある議員からは、「この法案のままでは認められない。修正案の提出も検討したい」との応答がありました。共産党、社民党の議員からは法案に反対するとの表明がありました。

 国会議員の中に、法案の問題性に対する認識が広がりつつあります。

 ぜひ、各大学の実情を踏まえた反対の声、批判の声をお寄せください。


佐賀大学退職金引下げ無効訴訟、被告大学側準備書面2

ペガサス・ブログ版
 ∟●退職金裁判,被告の準備書面その2

二つ前の記事「退職金裁判,被告の準備書面」で,公判日前に提出が求められていた被告の2番目の準備書面(完結編)が未だに出されていないと書きましたが,結局公判当日にも間にあわず.先月25日にようやく提出されました.以下にこれを公開します.応援のクリック歓迎
ネット上の公開に際しては,本旨に直接関係ない部分に一部モザイク加工をしています.

準備書面2 1~30ページ
http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/taishokukinsaiban/hikokushomen21c.pdf

準備書面2 31ページ?最後まで
http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/taishokukinsaiban/hikokushomen22c.pdf

証拠リストと説明
http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/taishokukinsaiban/otsu-list-of-evidences.pdf

ざっと一読したところ,ひとことで言うと,「国のやることが法である」と見ているようにしか思えません.また,賃金制度に関しては「公務員である」としているかのよう.

2014年05月09日

日本私大教連、声明「教授会を諮問機関化し学長専断体制の確立をねらう学校教育法改正法案を廃案とするよう求めます」

東京私大教連
 ∟●〈声明〉教授会を諮問機関化し学長専断体制の確立をねらう学校教育法改正法案を廃案とするよう求めます

〈声明〉教授会を諮問機関化し学長専断体制の確立をねらう学校教育法改正法案を廃案とするよう求めます

2014年5月7日
日本私大教連中央執行委員会


1 安倍内閣は 4月 25 日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。法案は、現行学校教育法 93 条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させるものです。しかも、「意見を述べる事項」を「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」に限定し、その他については「教育研究に関する重要事項で、学長が教授会の意見を聴く必要があると認めるもの」として学長の裁量に一切を委ね、大学の教育・研究活動における教授会の役割を根底から覆そうとしています。法案はまた、現行法が「学長の職務を助ける」と定める副学長についても「学長を助け、命を受けて校務をつかさどる」(第 92条 4項)として学長権限を強化しようとしています。

2 教授会は、憲法第 23 条が定める「学問の自由」を保障する「大学の自治」の根幹を担う機関として、教育課程の編成、予算、採用・昇任等の教員人事、学部長の選考、学生の身分等の教育・研究に関する重要な事項について実質的な審議・決定権を有してきました。これに対し法案は、教授会を諮問機関とし、教育・研究活動における主体的な参加の権限と責任を奪うことによって、学長による上意下達の強権的な大学運営を確立しようとするものです。それは教員集団の専門性と民主性を尊重し、真理の探究と社会の発展に寄与すべき大学の本来的なあり方を否定するものです。 教授会の諮問機関化や学長・学部長選挙の廃止を強硬に主張してきたのは、経済同友会をはじめとする財界です。今回の学校教育法改正法案は、こうした財界の意向に追随してコーポレート・ガバナンス(企業統治)の手法を大学に持ち込み、教職員不在、学生不在、国民不在の「大学改革」を学長のトップダウンによって「迅速に」実行させるものにほかなりません。

3 私立大学・国立大学・公立大学の学長・総長経験者など 11氏が 4月 7日に「大学の自治を否定する学校教育法改正に反対する緊急アピール・賛同署名」を呼びかけました。このアピールには、大学関係者をはじめ多くの市民から続々と賛同の署名が寄せられています。 私たちは、政府が、こうした大学関係者・市民の声に耳を傾け、国会において徹底した審議を行い、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を廃案とするよう強く求めるものです。

以上


安倍流の「大学改革」、学問の自由あぶない!

しんぶん赤旗(2014年5月8日)

 安倍政権は、「大学の自治」の要をなす教授会の権限をなくし、学長の権限を強化する学校教育法・国立大学法人法改定案を国会に提出しました。5月中旬にも審議入りする構えです。「日本の大学と民主主義は重大な危機にある」と大学関係者から激しい反対の声が上がっています。

 (土井誠 党学術・文化委員会事務局次長)

大学自治壊す
教授会が審議機関から学長“諮問機関”に変質

 大学は13世紀に欧州で生まれ、世界各国で高等教育機関として発展しました。その歴史の中で、国家権力の干渉から学問研究と教育の自由を守るために「大学の自治」を形成してきました。これは世界共通の原則です。

 日本では、憲法第23条に「学問の自由は、これを保障する」と定められ、「大学の自治」の法的根拠となっています。

 学校教育法は、これを具体化し、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」(第93条)と定めています。

■  □

 「大学のあり方を根底から変えてしまう。もう大学ではなくなってしまう」。4月24日、日本私立大学教職員組合連合中央執行委員長の丸谷肇鹿児島国際大学教授は、学校教育法改定に反対するアピール署名の記者会見で力を込めて訴えました。署名は、この1カ月で大学教職員、学生など3000人を超えて広がっています。

 学校教育法改定案は、93条を根本的に改変して、教授会を大学運営の審議機関から、「学長が必要と認める場合にだけ意見を述べる」機関にかえます。つまり、諮問機関への変質です。

 教授会は現在、カリキュラムの編成をはじめ教員の業績評価・採用、学部長の選任、学部の廃止・改組などを審議しています。

 丸谷氏は「学長が決定する際に教授会が意見を述べるものとして法案が例示したのは『学生の入学、卒業および課程の修了』と『学位の授与』だけ。つまり、大学の入り口と出口だけ。肝心の大学の4年間については、学長が意見を聞く必要がないと判断すれば、教授会は意見も言えない」と指摘します。「学生に直接教える教員が、カリキュラムの編成すら、ものが言えないのなら、学生を4年間で一人前の社会人に育てることなんてできない」と憤ります。

 24日の記者会見では、東京大学元副学長の広渡清吾専修大学教授が「大学は主体的に取り組むところ。人に言われてやるところではない」と発言。「教員が教授会で議論しても、意見を聞かれるだけで、大学運営に主体的にかかわれない。教師が主体的でなくて、いったい主体的な学生が育つのか」と法案を批判しました。

「学長独裁」に
“政府いいなり増える” 選挙自体廃止の動きも

 国立大学法人法改定案では、各国立大学で学長を選ぶ機関(学長選考会議)が選考の基準を決めて公表するとしています。文科省は、「大学のミッション(使命)の実現にむけて大学を委ねられる」学長像を明確に示した選考基準になると説明しています。この基準にあわないと、教職員の投票(学長選挙)で1位でも学長になれなくなります。

 学長選考会議が、学長選挙で1位になれなかった候補者を学長に選出する大学が増えていることが問題になっています。山形大学もその一つで、7年前に結城章夫文部科学事務次官が学長に選出されました。結城学長は昨年、情報漏えいで原子力規制庁審議官を更迭された人物を独断で教員に採用する「事件」をおこしています。

 当時、同大地域教育文化学部長だった那須稔雄氏によると、教授会が人事に反対する決議をあげましたが学長はゴリ押ししました。

 那須氏は「昨年、ミッションの再定義という書類をつくったが、文科省から何度も書き直しを命じられた。このミッションにそった学長を選ぶとなれば政府いいなりの学長が増える」と指摘します。

 法案を先取りして、学長選挙そのものをなくす動きもあります。京都大学では、総長(学長)選考会議の学外委員による総長選挙廃止の動きがありましたが、職員組合などの運動で、先月23日に総長選挙の存続が決まりました。(下の図)

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 政府は法案提出の理由を、学長のリーダーシップを確立し、大学改革を推進するためと説明しています。

 これに対し広渡氏は「教授会で議論が進まず、改革しようとしても一歩も踏み出せないというのは、みんながまだ納得していないから。学長のリーダーシップが大事ならば、学長がみんなを納得させる案を出して十分議論して、合意形成をして、大学を改革するのが真のリーダーシップだ」と批判しています。

 教職員が支持しない人が学長になり、その学長が決める方針に教授会は従うしかないというのでは、「学長独裁」と言わざるをえません。しかも、その学長に政府いいなりの人物が就くとなると、もはや大学とは言えないものになります。

 国の政策に批判的な教員が排除される危険もあります。京都大学の西牟田祐二教授は、「経済学分野では、マルクス経済学の影響を弱める動きがある。教育課程の編成を学長が教授会の意見を聞かずにできるようになれば、マルクス経済学の排除もおこりかねない。あるシンポジウムで経済同友会副代表幹事が『マルクス経済学を学んだが役に立たなかった』などと暴言を吐いた。こういう考えの人物が学長になったら大変なことになる」と危惧しています。

 私立大学では、理事長の暴走を助長する危険もあります。創造学園大学では、教授会などの内部チェックが働かず、専断的で放漫な理事長の経営の結果、債務超過に陥り、設置者の堀越学園は文科省から解散命令を受けました。丸谷氏は「法案で教授会のチェック機能が外されると、こうした事例はますます増える」と危惧します。

■  □

 安倍内閣による、「大学の自治」破壊への暴走は、財界の強い要望を受けてのものです。財界は、「グローバルに活躍する人材」「イノベーション(技術革新)をつくりだす人材」が必要だとして、大学の再編・統合や学費値上げを求めています。こうした大学をつくるために、日本経団連は教授会の審議事項を狭めるための法改定を求め(13年12月)、経済同友会は教授会の諮問機関化を提言(12年3月)しています。

 私大教連の丸谷氏は「法案は、財界が求める大学のスクラップ&ビルドをねらってのもの。なんとしても廃案に追い込みたい」と、署名への賛同を呼びかけます。

 署名は、全国大学高専教職員組合や日本私大教連のホームページで受け付けています。


法科大学院、定員割れ91%の61校 弁護士就職難背景に

毎日新聞(2014年05月08日)

 今春学生を募集した法科大学院67校のうち定員割れは91%の61校に上り、2年連続で9割を超えたことが文部科学省の調べで分かった。司法試験合格率の低迷や弁護士の就職難が背景にあるとみられる。

 同省によると、67校の入学者は定員(3809人)に対し2272人で、初めて6割を割り込んだ。入学者10人未満は28校あり、うち10校は3人以下だった。10校のうち新潟大、鹿児島大など5校は来年度の募集を停止する。定員以上の入学者を受け入れたのは筑波大、千葉大、一橋大、京都大、大阪大、首都大学東京の6校。この6校のうち筑波大を除く5校は、昨年の平均合格率(25.8%)を大きく上回っている。

 67校への入学志願者総数は1万1450人。過去最低だった昨年度より2474人減った。法科大学院は当初74校あったが、16校が募集を停止。定員は2007年度のピーク時(5825人)の6割近くまで減ったが、文科省はさらに削減が必要として、15年度から見直しを強化。司法試験合格率▽社会人入学者の割合▽地域配置??などの指標を基に点数化し、5段階に分けて補助金の額に差をつけると同時に、他校と連合すれば加算するなどの制度を導入し、統廃合を促す方針だ。【三木陽介】

 ◇2014年度入学者が3人以下だった法科大学院

    入学者数 定員 13年の司法試験合格率(%)

 ※新潟大 1  20  18.9

 ※東海大 1  30  0

 神奈川大 2  25  14.0

 愛知学院大2  20  7.7

 ※久留米大2  15  4.8

 香川大  3  20  18.5

 ※島根大 3  20  16.7

 北海学園大3  25  10.7

 静岡大  3  20  3.4

 ※鹿児島大3  15  2.9

 (文部科学省調べ。※は来年度募集停止)

[同ニュース]
■法科大学院の定員充足率、初めて6割下回る
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140508-OYT1T50100.html
■定員割れ2年連続9割超、法科大学院離れ鮮明に 文科省集計
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140508/trl14050811380001-n1.htm

2014年05月08日

恥ずかしい国大協会長コメント、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について」

国大協
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について
【会長コメント】


平成26年5月7日
一般社団法人 国立大学協会
松 本 紘


○現在、国立大学は、社会から求められている教育、研究、社会貢献、国際貢献の機能強化を目指し、学長のリーダーシップの下に各大学の強みや特色を生かした迅速かつ適切な改革を自主的・自律的に推進している。また、法改正を待つまでもなく、全学的なガバナンス体制についても、学長による中長期ビジョンの提示、執行部体制の強化、戦略的な資源配分の拡充などの改革を進めているところである。

○このたび、政府において閣議決定された学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案は、先般の中央教育審議会の「大学のガバナンス改革の推進について」の「審議のまとめ」を踏まえ、学長補佐体制の強化、教授会の役割の明確化、学長選考会議による責任ある主体的な候補者選考の確保などを通じて、このような国立大学を含むガバナンス改革の取組を一層促進することを目的としていると受け止めており、大学改革を進める上で評価できる一歩と考えている。

○もとより、大学は、普遍的な価値を追求する高度な教育研究機関として、そのガバナンスにおいて自主性・自律性が尊重されることが基本的に重要であると考えており、我々国立大学としても、法改正を踏まえつつ、今後とも、ガバナンス改革に鋭意取り組んでいく所存である。

○また、国立大学に対しては、「日本再興」の原動力として各方面からますます大きな期待が寄せられている。我々国立大学はこの期待に応え、ガバナンス改革を一層推進しつつ、我が国の将来を先導していくとの使命を達成するため、グローバル化、イノベーション創出、有為な人材の育成などの機能強化に全力で取り組んでいく決意である。

○各方面の皆様には、国立大学のこうした取組についてご理解をいただくとともに、それを支える基盤的経費、競争的経費の両方を含む高等教育への財政措置について、我が国が世界に伍して競争・協調していくことができる水準の確保・充実に向けご支援いただくようお願いしたい。

2014年05月02日

京都大学職員組合、声明「京都大学の民主的な総長選挙制度の存続を歓迎する」

京都大学職員組合
 ∟●職員組合ニュース,第28号(2014年4月30日)

声明

2014年4月30日
京都大学職員組合中央執行委員会

 4月23 日に開催された京都大学総長選考会議は、新議長(学内委員)のもと、次期京大総長(現総長の任期は9 月30 日まで)の選出に関し、京都大学の教職員による民主的な総長選挙制度(予備投票および意向投票)を基礎とした現行方式の選出を引き続き行うことを決定しました。

 関係規程の一部修正も行い「(1) 総長選考会議は、学内意向投票の結果を基礎に、総長候補者を選考」の個所を、「総長選考会議は、意向調査の結果を基礎に、第一次総長候補者に関する事項を総合的に判断して、総長候補者を選考」に変更、(2) 現行の「総長選考規程」を「総長選考規程」、「総長選考意向調査規程」、「予備投票実施細則」及び「意向投票実施細則」に分割、(3) 「総長選考規程」で「意向調査」という表現を使用、(4) 6 人の候補者の中の学外者の人数を、「2 人まで可能」から「3 人まで可能」に変更)今後の運用に留意は必要ですが実質的な変更ではなく、教職員の予備投票・意向投票の権利は守られたものです。

 思えば、昨年11 月20 日の総長選考会議において密かに総長選挙制度の廃止が提案されてから約5ヵ月、このことが京都大学職員組合の活動、とくに12 月24 日の学内緊急集会と「総長選挙廃止反対」ネット署名、によって、全国世論の喚起も伴いつつ京都大学の学内にあまねく周知されるようになってから約4ヵ月、ついに決着がつきました。わたくしたちは京都大学の民主的な総長選挙制度を守る闘いに勝利いたしました。

 総長選考会議は、12 月25 日、1月17 日、27 日、2 月15 日、3月10 日、27 日と開かれて行きましたが、1 月17 日以後議事がやっと教育研究評議会に報告されるようになってからも、選考会議内の議論は総長選挙廃止を求める学外委員案と民主的な総長選挙制度の存続を求める学内委員案が拮抗状態を続けました。  しかしながら3 月から4 月にかけて事態は急展開致しました。  4 月16日に開かれた新年度第1 回の総長選考会議において、新しい議長(学内委員)が選出され、そのもとで基本的に総長選挙制度を存続するという提案が行われ、4月23 日の総長選考会議において、京都大学次期総長選考に関して、従来の予備投票、意向投票による学内総長選挙を実施し、それを基礎に総長選考会議が最終的な決定を行うことが全会一致で決定されました。

 こうして京都大学の教職員、学生・院生を含む圧倒的な学内世論が民主的な総長選挙を守ろうとする中にあって、総長選考会議の新旧学内委員の驚異的な粘りによって、ついにわたくしたちの、京都大学の代表を自ら選ぶ自治の制度が守り抜かれたと言えるでしょう。

 次は、それにふさわしい新しい総長を自ら選ぶ段階です。次期総長選挙は、5 月12 日に公示、6 月2 日に予備投票、そして7 月3 日に意向投票および開票の日程でおこなわれます。みなさん清き一票を!そして京都大学にふさわしい総長を自ら選出することによって京都大学の一層の発展に向かうことを願ってやみません。


2014年05月01日

大学改革法案 国会へ

UNN関西学生報道連盟
 ∟●大学改革法案 国会へ【4月30日 UNN】

大学改革法案 国会へ

学長の権限強化 反対も

 政府は、学校教育法と国立大学法人法の改正案を25日国会に提出した。学長のリーダーシップを強め、大学改革を迅速化する狙い。今国会での成立、来年4月の施行を目指す。

【4月30日 UNN】
 改正案のポイントは、教授会の権限見直しだ。現行の学校教育法では役割があいまいだった教授会を、学長の「諮問機関」として位置付けを明確化。教授会の審議事項を「学生の入学、卒業、修了、学位授与」のほか「学長が必要と認めた場合」に限定した。

 国立大学法人法の改正案では、国立大の予算編成などを審議する「経営協議会」の外部委員数を現行の「2分の1以上」から「過半数」に改める。外部委員と内部委員の数が同じ大学が多い現状を見直し、外部の意見を大学運営に反映されやすくする。また、国立大学長が学内投票や多数派工作だけで選出されないようにするため、選考基準や結果の公表も義務付ける。大学内外を問わず、優秀な人材の登用を促す狙いもある。

 改正案に対し、反発の声も上がっている。全国の大学教職員らが、改正反対の署名運動を開始。30日現在、大学教員を中心に2400を超す署名が集まっているという。関西のある大学教授は「学長に権限を与えるだけでは改革はうまくいかない。むしろ(学長の)独裁化につながるのでは」と、改正を疑問視する。「現場を知る教員の声を取り入れ、学長との連携を図ること必要」と話した。


日本の大学 失われたものは

産経(2014.4.30)

 STAP(スタップ)細胞騒動が起きる少し前、ノーベル賞を受賞した高名な先生と雑談する機会がありました。

 先生曰(いわ)く、「日本の科学者はかつてない厳しい状況下に置かれている」。「そんなことないでしょう。文系に比べてよほど恵まれているじゃないですか」と混ぜ返すと、「成果主義の悪い面が出過ぎている」と、厳しい口調で断言されました。

 国立大学や公的研究機関では、予算が年々減らされ、重点配分されるのは、企業やメディアが飛びつきそうな派手な研究ばかり。業績評価も論文数といった外形的なものに頼りすぎで、自由かつじっくりと基礎研究に没頭できる環境が日本の大学から失われつつある、といいます。山中伸弥京大教授までもが、14年前の論文の不備を謝罪する事態になりましたが、問題の根は深そうです。(編集長 乾正人)