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 カテゴリー 2014年07月

2014年07月30日

再選任期を4年に拡大 富山大学長選、意向調査の扱いも変更

北国新聞(7月29日)

 富大が現在2年としている学長の再選任期を、1期目と同じ4年とすることが28日、 富大への取材で分かった。どの候補が学長にふさわしいか教職員が投票する意向調査の扱 いも変更するほか、非公開だった学長候補適任者の推薦人の氏名も公開する。9月1~5 日に候補適任者の推薦を受け付け、11月10日に選考会議で次期学長が決まる。

 富大によると、学長の任期は2期までで、従来は1期目4年、再選2年だったが、1期 目も再選も4年となる。学長選考会議の学外委員から「2年と4年では学長としてできる 仕事が異なり、条件に差が出るため、候補者が同じ土俵で競争できない懸念がある」との 意見が出ていたという。

 前回の学長選考では、教職員対象の意向調査の結果を数値化し、選考会議内で実施した 投票と同等に扱って次期学長を決めたが、今回は意向調査と書類審査、公開討論会、面接 を同列の判断基準として扱い、選考会議で議論する。

 前々回の学長選で意向調査で最下位だった候補者が選考会議の結果、学長に選ばれ、教 職員の一部から「納得できない」との声が出たことから、前回は意向調査の結果を選考会 議内の投票と同等に扱った。今回は選考会議委員から「本来の国立大学法人法の趣旨に基 づき、学長選考会議が責任を持って決めるべきだ」との意見が出たという。

 学長候補適任者の推薦人の氏名公表は「より責任を持って推薦してほしいという趣旨」 (富大)。推薦には、富大経営協議会の学外委員複数人か、富大の教授・准教授20人以 上の署名が必要となる。

 来年3月末の任期満了に伴う富大学長選は、10月17日に学長候補適任者による公開 討論会、同31日に教職員約1200人を対象とした意向調査を経て次期学長を決定する 。


2014年07月29日

日本学術会議幹事会声明、「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

日本学術会議
 ∟●「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

日本学術会議幹事会声明
「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

 日本学術会議は、本年1月29日に理化学研究所(以下「理研」)発生・再生科学総合研究センター(以下「CDB」)から発表された STAP 細胞についての 2編の Nature 誌論文に、様々な不正が見いだされた問題に重大な関心をもち、3 月19日には会長談話「STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について」を発 表しました。その後、理研内部での自主的調査などの結果が報告され、この問題は一部の図版の不正な置き換えに止まらず、研究全体が虚構であったのではないかという疑念を禁じ得ない段階に達しています。2 編の論文は取り下げられ ましたが、STAP 研究の革新性を必要以上に強調した記者会見もあって広く社会 問題化したことに加え、指摘された研究不正の深刻さから、我が国の科学研究 全体に負のイメージを与える状況が生み出されています。

 日本学術会議は、昨今、我が国において科学研究の健全性を損なう事案が相次いだことを深く危惧し、声明「科学者の行動規範-改訂版-」1ならびに一連の提言2を発出するとともに、研究不正を防止するための研究倫理教育プログラムの開発を、文部科学省、日本学術振興会、科学技術振興機構等とともに進め ているところです。今回の STAP 細胞事案の主要な問題点を解明し、対処することができるかどうかは、今後の我が国の科学研究の在り方に大きな影響を与えるものであり、そのために役割を果たすことは研究者コミュニティの責務で あると考え、日本学術会議幹事会は以下の要望と見解を表明します。

1.本年6月12日に「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)が、理研の野依良治理事長に提出した「研究不正再発防止のための提言書」(以下「提言書」)には、今回の事案の経過と原因、さらに理研CDB の今後の在り方についての詳細な考察が述べられています。日本学術会議は、 野依理事長が同日「研究不正再発防止のための改革委員会からの提言を受けて」で述べたとおり、理研が「研究不正を抑止するために実効性あるアクシ ョンプランを策定し、早急に具体的な実行に移」すことを要望します。

2.「提言書」では、小保方氏の採用から、論文の発表と撤回にいたる経過の分析を踏まえて、「・・STAP問題の背景に、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、組織の構造的な欠陥があった」(「提言書」5頁以下)とし、さらに、「・・STAP問題が生じて以降、理研のトップ層にお いて、研究不正行為の背景及びその原因の詳細な解明に及び腰ではないか、と疑わざるを得ない対応が見られる」(「提言書」15頁)と指摘しています。本事案が一研究者の不正に止まるものではなく、防止する機会が何度もあったにもかかわらず、それらを漫然と見逃し問題を巨大化させた理研CDBの指 導層に、大きな過失責任があったという指摘は説得力のあるものです。日本 学術会議は、理研CDBの解体を求める「提言書」に対する理研の見解が早急 に示されることを要望します。

3.一方で、「提言書」で言及しているように、理研内にも問題の全容解明を目指し、自浄に向けて活動している研究者がいること、また理研CDBがこれまで若手の人材育成に貢献してきた結果として、現在も、今回の事案とは無関係に日々誠実に研究に取り組んでいる若手・中堅研究者がいることを忘れ てはなりません。理研CDBの抜本的な組織改変が行われる場合には、日本の生命科学の発展にとって極めて重要との観点から、これらの若手・中堅研究 者が、安心してその能力を発揮できる環境を整えることを要望します。

4.現在、研究不正に最も深く関わったとされる小保方氏が参加する STAP 現象の再現実験が始められ、関係者の懲戒については結論が先送りされると伝えられています。しかし、この再現実験の帰趨にかかわらず、理研は保存されている関係試料を速やかに調査し、取り下げられた2つの論文にどれだけ の不正が含まれていたかを明らかにするべきです。また、そこで認定された研究不正に応じて、関係者に対する処分を下すことは、この事案における関 係者の責任を曖昧にしないという意味で重要です。関係試料の速やかな調査による不正の解明と、関係者の責任を明確にすることを要望します。

5.「提言書」では、再現実験の監視、論文検証、及び理研による改革をモニタリング評価するために「理化学研究所調査・改革監視委員会」の設置と、その際に日本学術会議による援助・助言を得ることによって、理研改革に科学者コミュニティ及び社会の意見を反映させることを求めています。日本学術 会議は、6でも述べるように、我が国の科学研究における健全性を向上させることに責任があると認識しており、理研が健全性を回復するために行うすべての行動を支援する所存です。

6.研究不正問題に関して昨年来発生した諸事案や種々の対策に関わる提案に対応して、文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」をまとめつつあり、日本学術会議も積極的に協力しています。 このガイドライン案では、個々の研究者のみならず、所属する研究機関にも 不正防止の責任を果たすことを求めています。研究機関が、そこに所属する研究者の研究活動および研究費使用において不正が生じることのないよう、より積極的な役割を果たすことは、不正撲滅の実を上げるために極めて重要 です。日本学術会議も、我が国の科学研究における健全性を向上させることに責任を負う立場から、この考え方を支持し、研究機関等が不正防止や解明 の措置をとる際に協力を惜しみません。

2014年7月25日 日本学術会議幹事会

返済不要の奨学金「創設検討を」 文科省有識者会議が提言

日経新聞(2014/7/28)

 大学生向けの奨学金制度のあり方を議論してきた文部科学省の有識者会議(主査・小林雅之東京大教授)は28日、国としては導入していない返済不要の「給付型奨学金」について、「将来的には創設に向けての検討も進めていくべきだ」とする提言をまとめた。

 国の現行の奨学金は全て大学卒業後に返済する「貸与型」で、給付型を設けていないのは先進国では異例。経済的に困窮する世帯の子供の大学進学率が比較的低いことから、提言は「家庭の経済的状況が進路選択に大きな影響を与えている」と給付型の必要性を訴えた。

 最大の課題は財源で、試算では対象者を成績優秀で経済的に厳しい学生(約6万3千人)に限った場合で年380億円かかる。主査の小林教授は「将来的には生活保護の受給世帯減少や労働力向上などの効果が見込める。課題は多いが議論を進めるべきだ」と話した。

 一方、貸与型の奨学金を卒業後に返済できない人が約33万人いる問題を受け、より返済しやすいよう卒業後の年収に応じて毎月の返済額が変わる制度の新設も提言した。同省は2018年度からの導入を目指し、システム改修費などを15年度予算の概算要求に盛り込む。


2014年07月28日

北海道教育大学当局のこの驚くべき人権侵害、「反省がなければ大学教員としての復帰を認めない」

北海道教育大学
 ∟●平成26年度第3回教育研究評議会議事要旨

 札幌高裁が大学側の「解雇権濫用」を判示し,2014年2月20日最高裁の上告棄却により解雇無効が確定した旭川校アカハラ事案に関し,2014年6月26日,北海道教育大学教育研究評議会は,3教員が「自らの行為に対する反省がなければ、大学教員としての復帰を認めない」という驚くべき対応を「全会一致」で決めた。
 こうした人権侵害は,この大学の体質を際立たせている。反省し謝罪すべきは3教員の名誉を毀損し,何年もの間教育研究の自由の剥奪した大学当局ではないか!。 このような人権無視,非常識な大学が,北海道の教員養成を担っていてよいのか。

 同大学の教育研究評議会のメンバーはこの通り

平成26年度第3回教育研究評議会議事要旨

日 時 平成26年6月26日(木) 10時30分開会
12時07分閉会
場 所 事務局第1、2会議室
欠席者 なし

○ 議題等

……(中略)……

2 旭川校アカハラ事案の対応について

資料3-1、3-2(回収資料)に基づき、前回の教育研究評議会での意見を踏まえ、3教員の対応について、次の3点、①反省がなければ復帰を認めないこと、②反省の有無については、教育研究評議会が判断すること、③再度、懲戒処分等を検討すること、等について審議を行った。審議の結果、3教員に対する当面の方針として、次の事項を全会一致で承認した。
1.自らの行為に対する反省がなければ、大学教員としての復帰を認めない。
(1)学生及び大学に対する謝罪を求める。
(2)二度とアカデミック・ハラスメントをしないことの誓約を求める。
(3)本学職員就業規則等を遵守することの誓約を求める。
2.反省の内容及び有無については、教育研究評議会として慎重に判断する。

…以下略……

大学生・奨学金、「返済を所得に連動」導入 18年度以降

毎日新聞(2014年07月25日)

 ◇16年開始予定の「マイナンバー制度」活用

 文部科学省は、大学生向けの奨学金制度について、卒業後の年収に応じ返還月額を変える「所得連動返還型」を新たに導入する方針を決めた。豪州など海外では導入されているが日本では初。景気や雇用状況を踏まえて柔軟に対応できるのが特徴で、2016年開始予定の「マイナンバー制度」を活用し、所得状況を把握しながら運用する計画。来年度予算の概算要求で実態調査費や導入へ向けたシステム改修費を盛り込み、18年度からの導入を目指す。

 国の奨学金事業は独立行政法人「日本学生支援機構」が担っている。同機構によると、貸与型奨学金の利用学生は今年度、無利子、有利子合わせ約140万人。貸与額は月12万?3万円で年間平均額は約80万円。卒業後20年以内で完済する。

 無利子で4年間計約260万円を借りて15年間で完済する場合、返済月額は約1万5000円。現行では、年収300万円以下だと返還猶予制度があるが、300万円超だと、返還月額は固定されたまま。返還できないと年5%の延滞金がかかる。不況の影響などで返還できない人も多く、延滞額は925億円(12年度末)に上る。

 所得連動型は、年収が減れば返還月額が減る仕組みで負担軽減になる。さらに少額でも返済につなげて未返還金を減らす狙いもある。

 導入には各人の所得情報が必要になるためマイナンバー制度を活用する。国民全員に社会保障と税の共通番号を割り当てる同制度は16年から運用開始予定。これを踏まえ、新奨学金の導入は18年度を目指す。

 来年度は、返還を求める年収の下限額や年収に対応した各返還月額を検討・設定するために、奨学金利用者の実態を調査する。【三木陽介】


2014年07月25日

予算10兆円増、大学無償化 下村文科相が構想発表

朝日新聞(2014年7月22日)

聞き手・高浜行人

 2030年までに公的教育予算を10兆円増やし、高等教育も無償化――。下村博文文部科学相が近著で、そんな構想を発表した。教育予算を他の先進国並みにする「教育立国」を唱えている。思い描く未来の日本のすがたはどんなものか。財源はどうするのか。

■「GDP108兆円増」試算

 「教育立国のグランドデザイン」。16年後までの予算構想を、下村氏は6月に出した自身の半生記「9歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に」(海竜社)でそう銘打った。

 メニューは、政府の教育再生実行会議が今月3日に提言した幼児教育の無償化(8千億円)や、大学進学率7割程度を目指す大学の質・量の充実(7千億円)など。最終的には、大学などを含む全ての高等教育の無償化(3兆8千億円)も一例として示した。「大幅な変動があり得る」としている。

 新たに確保を目指す予算額は20年までに5兆円、30年までにさらに5兆円の計10兆円。現在の文科省の単年度予算(約5兆円)のほぼ2倍にあたる。

 下村氏がこだわったのは、投資に見合うだけの効果を示すことだ。昨年11月~今年3月、省幹部全員を集めた勉強会を9回開き、経済学者などの専門家を呼んで検討。教育費の家計負担が軽くなることでもたらされる利益をはじいた。

 その結果、教育費負担を理由に子どもをもうけることを断念しなくなって出生率が5%程度上昇し、年9万人が新たに大学に進学すると予想。これらによって現在490兆円ほどの国内総生産(GDP)が60年後には108兆円増加して税収が21兆円増えると試算した。

 著書で下村氏は「教育投資を増やして大卒者を増やすことは、本人にも社会にもメリットが大きい」と述べている。

■財務省は「夢物語だ」

 膨大な財源を要する計画に、政府内では実現性を疑問視する声が強い。

 国の財布を握る財務省からは、「夢物語だ」との声が上がる。赤字をこれ以上増やさないように文科省の予算を大幅に増やすには、医療費や建設費など他の支出を削るか、増税を考えなければならない。担当者は「他省庁の予算はそう簡単に削れないし、消費税も上がる中、普通に考えれば国民の合意は得にくい」

 文科省は構想に掲げた幼児教育無償化の一部を来年度の予算要求に盛り込む方針。だが現在のところ額は数百億円にとどまる。昨年閣議決定した17年度までの教育目標に、教育予算の10兆円近い上積みを意味する「経済協力開発機構(OECD)諸国並みを目指す」との表現を盛り込もうとして財務省の反発にあい、見送られた経緯もある。

 文科省幹部は「大風呂敷と言われても仕方ない」と財源確保の難しさを認める。

■合理性のある計画必要

 日本教育学会長の藤田英典・共栄大教育学部長(教育社会学)の話 大学などの高等教育を無償にし、誰もが行けるようにすることは方向性として賛同する。大きな目標を提示するのは教育を重視する雰囲気を高める狙いがあり、望ましいことだろう。ただ一方で、合理性のある計画になっているかも重要だ。少子化の解消には、子育てしやすい雇用システムや団塊世代の社会参加意識の醸成など教育以外の要素も大きい。教育費だけで10兆円分を増やすのはバランスを欠くし、そもそも不可能に見える。国民に「できっこない」と思われれば教育投資への機運もしぼみ、絵に描いた餅に終わりかねない。現実的なプランを早い段階で提示する必要がある。

     ◇

■チャンス開く国に 投資、社会保障と捉えて

 下村氏は7月初旬、朝日新聞のインタビューに応じ、「教育立国」のねらいなどについて語った。

 ――構想のねらいは。

 日本は少子高齢化で労働稼働人口も2060年には半減する。教育によって誰にでもチャンスを開く教育立国をつくっていかなければ日本の未来はない。意識改革をしなければならないのでは、という国民に対する問題提起だ。

 子供2人を私立の高校、大学に入れると、教育費だけで平均2600万円かかる。非正規雇用ではとても払えない。一方で、高卒と大卒では平均生涯獲得収入では9千万円の違いが出るとの調査もある。この差は今までは個人の努力の問題ということだったが、格差の固定化や貧困の連鎖につながりかねない。大きな方向転換に向けコンセンサスを得たい。

 ――GDPを108兆円上げる効果の実現性は。

 まだ誰も学問的に検証していないから、なかなか言えない。先日、OECDの非公式教育大臣会合があり、教育における公財政支出について議論したところ、大きな注目を浴びた。つまり、教育投資がどれぐらいの効果を生むか、数十年追跡して客観的に示している国がないということだ。

 ――予算の10兆円増額は不可能との指摘もある。

 難しくはないと思う。所得連動型奨学金の返済制度とか、祖父母世代が孫世代に対して支出する仕組みを財政的に担保するとか、あとは、できれば消費税。10%に上げた後の話だが、例えば1%を少子化対策に充てる。いろいろ組み合わせることで教育費の負担軽減を図る。

 今までのように文部科学省対財務省というレベルでやっていたら実現できないと思う。教育投資が広い意味での社会保障だと捉えることが必要だ。教育が、結果的に年金、医療、介護の負担額も軽減する。そういう合意をつくっていきたい。(聞き手・高浜行人)


2014年07月24日

早大博士論文 杜撰な審査がまかり通るのか

読売新聞(2014年07月23日)

 博士論文がお粗末なうえに、大学内の審査も杜ず撰さんだった。

 理化学研究所の小保方晴子氏が早稲田大学に提出した万能細胞に関する博士論文について、早大の調査委員会は、盗用などの不正を認定し、「内容の信ぴょう性は著しく低い」と結論づけた。

 早大側の対応についても、論文の作成指導や審査体制に重大な不備があったと批判している。

 ところが、調査委は「博士号の取り消しには該当しない」と判断した。実験結果を偽った不正ではないという理由からだ。

 解せない結論である。

 小保方氏は、3年半前に下書き段階の「草稿」を誤って大学に出してしまったと弁明し、今年5月になって、「完成版」を調査委に改めて提出した。

 草稿を出したこと自体、研究者を目指す者として、うっかりでは済まされない行為ではないか。

 論文の完成版でさえ、研究の意義をアピールする序章の大半で、米国の研究機関の文章を丸写ししていた。論文の独創性が疑問視されても仕方がない。

 他の著作物の画像流用についても、小保方氏は「何の問題意識も持っていなかった」と調査委に語ったという。本人の未熟さは言うに及ばず、研究倫理や論文作成の基本をきちんと教えなかった指導教員の責任は重い。

 指導教員は審査の責任者でありながら、博士論文を精査しなかった。論文の合否判定を担う学内の審査会に草稿が出ていることすら気づかなかったのは問題だ。

 審査の形骸化も看過できない。審査会の委員が個々の論文を閲覧する時間は数分程度にすぎなかった。これでは、論文の中身をチェックするのは不可能だろう。

 博士号を授与するかどうかの最終的な決定権は大学総長にある。調査委の報告を受け、鎌田薫・早大総長は「内容を吟味して、学内での検討に入る」と述べた。

 早大が厳正な対処を怠れば、日本の博士号に対する国際的信用も揺るがしかねない。

 小保方氏の所属した研究科では、他の学生の博士論文にも疑義が指摘されている。早大には徹底した実態解明が求められる。

 政府は、科学技術の向上を目指し、博士を大幅に増やす政策を進めてきた。博士号の取得者は1990年代初めに比べて、1・5倍に増えた。

 だが、質は伴っているのだろうか。他の大学も、学位授与の審査体制を点検すべきだ。

2014年07月23日

TPP著作権保護 期間延長で反対声明 経済的損失が上回る ウィキペディアなど35団体

日本農業新聞(2014/7/22)

 インターネット上の百科事典を運営するウィキペディア財団や米国、カナダの大学・研究機関の図書館でつくる「北米研究図書館協会」など35団体は、環太平洋連携協定(TPP)で著作権保護期間の延長に反対する国際共同声明を発表した。日本からもインターネットユーザー協会や本の未来基金など知的財産関連の4団体が参加。保護期間が終わった著作物が公共の利益に役立てられるのを妨げる一方、著作権を抱え込む少数の多国籍企業に利益をもたらすだけだとして、保護期間を延長しないよう要請している。

 声明によると、著作権保護期間が満了した著作物は「社会の全ての活動分野に社会的・経済的利益をもたらす」と明言。著作権の保護期間を現行以上に延長することで、作品を扱う産業への投資が増えるなどの効果が予想されるものの、むしろ多くの人々が作品を利用しにくくなる経済的損失の方が大きく上回るとした。

 また著作権の保護期間の延長が、作品を利用する図書館や学生、作家、アーティストらに大きな負担になるなどと指摘。「著作権保護期間の延長は費用が掛かり不必要」と主張する。

 インターネットユーザー協会など知的財産関連の3団体で構成する「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」は声明を翻訳しインターネットを通じて、声明に賛同するよう呼び掛けている。

 TPPでは知的財産も交渉分野の一つで、著作権期間の保護延長が検討されている。日本やカナダなどは現在、著作者の死後50年を保護期間としているが、米国やオーストラリアなどは死後70年としている。

 インターネットユーザー協会によると、3~12日までTPP首席交渉官による会合が行われていたカナダ・オタワで同国の非政府組織(NGO)が声明内容を交渉官に対し説明したという。

 同協会の香月啓佑事務局長は、「世界的に知名度の高い主要な国際団体が声明に賛同しておりインパクトは大きい。TPPは経済成長と言われているが、著作権分野だけでも実際、成長につながらないというのが参加団体の共通認識だ」とみる。


2014年07月22日

学問の自由と外国籍教員を守る声明

今を考える会

学問の自由と外国籍教員を守る声明

 広島大学の教養教育におけるオムニバス形式の総合科目「演劇と映画」で提供されたある講義に対し、産経新聞が執拗な批判を繰り返しています。授業で取りあげたドキュメンタリー映画が従軍慰安婦問題について偏った内容であると決めつけ、この授業の担当教員が外国籍であることを報じたため、ネット上では担当教員に対する不当な非難と中傷がエスカレートし、他方では、衆議院内閣委員会において某国会議員から当該講義を批判するような発言が行われたことで、広島大学にも多数の抗議が寄せられました。このような誹謗中傷は、担当教員の人権を著しく傷つけるものであり、決して許されるものではありません。法的手段にも訴える必要のある深刻な事態であると考えます。
 同時に、これは大学における学問の自由への重大な侵害です。学生と教職員の信頼関係の中で、多様な意見や考えを自由に出し合うことができる場を奪おうとする極めて憂慮すべき事態です。加えて、外国籍教員の排斥を呼びかけるこのようなヘイトスピーチは、「自由で平和な一つの大学」を建学の理念とし、世界に開かれた大学をめざし、国際社会で活躍できるグローバル人材の養成を果たすはずの広島大学にとって、また学問の自由を守り国際化をめざす日本の大学にとって、極めて重大な危機と言わざるを得ません。
 広島大学は未だに学外に対して公式声明を発表していません。確かに、現在進みつつある「改革」によって、大学は自治の精神を失いつつあることが懸念されますが、「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を持つ広島大学であるなら、これらの攻撃から学問の自由と外国籍教員を守ることを毅然と表明できるものとわたしたちは考えます。
 こうした事態を重く見たわたしたち「今を考える会」は、6月18日に広島大学総合科学部において緊急集会を開催し、まず、ここに声明を発表して、学問の自由と外国籍教員の同僚を守ると同時に、あらゆる差別を断じて許さないことを強く決意するものです。そして、この声明への賛同を求め、多くの方々の連帯を広く呼びかけます。

2014年6月20日


呼びかけ人(50音順)
青木利夫(広島大学大学院総合科学研究科教員)
淺野敏久(広島大学大学院総合科学研究科教員)
市川浩(広島大学大学院総合科学研究科教員)
隠岐さや香(広島大学大学院総合科学研究科教員)
河西英通(広島大学大学院文学研究科教員)
坂田省吾(広島大学大学院総合科学研究科教員)
辻学(広島大学大学院総合科学研究科教員)
西村雄郎(広島大学大学院総合科学研究科教員)
布川弘(広島大学大学院総合科学研究科教員)
平手友彦(広島大学大学院総合科学研究科教員)
カロリン・フンク(広島大学大学院総合科学研究科教員)
丸田孝志(広島大学大学院総合科学研究科教員)
水羽信男(広島大学大学院総合科学研究科教員)
Claude Levi Alvares(広島大学大学院総合科学研究科教員)

※本文冒頭の日付は声明文サイトアップロードの日付であり、声明文本体は2014年6月20日に作成されました。賛同者人数、賛同者氏名のみ随時更新します。
※現在、大学関係者を中心に賛同者の方を募っています。ご賛同頂ける方はABOUT USに記載された連絡先メールアドレスまでご連絡下さい。


2014年07月18日

東京大学職員組合、東京大学における軍事研究禁止の原則の堅持を訴える声明

東京大学職員組合
 ∟●東京大学における軍事研究禁止の原則の堅持を訴える声明

東京大学における軍事研究禁止の原則の堅持を訴える声明

 特定秘密保護法の制定や憲法第9条の趣旨を空洞化させる解釈改憲、さらに武器輸出三原則の変更などに象徴される政治の右傾化のなかで、昨今東京大学に対して、軍事研究への協力を強要する動きが高まっています。大学当局が軍事研究禁止という東京大学の原則に鑑み、現下こうした圧力を排除していることは評価に値するものながら、政官財を挙げた策動は日に日に強まっており、状況は危急の様相を呈しています。私たちは、東京大学における諸活動に関わるものとして、学知の府たる東京大学が将来にわたって軍事研究禁止の原則を堅持すべきことを強く訴えるとともに、大学当局にあってもかかる認識を更に深化させ、広く学内外にむけて東京大学の社会的責務を発信してゆくことを求めます。

 第二次世界大戦下、日本の諸科学が直接・間接に戦争遂行に協力し、結果として多大な戦禍を内外にもたらしたことは、学術に関わるものとして決して忘れてはなりません。戦後に発足した日本学術会議は、1950年4月に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明」を行い、戦時下の反省と総括から学術の再構築を図りました。新制東京大学においても、南原繁総長のもとで「軍事研究に従事しない、外国の軍隊の研究は行わない、軍の援助は受けない」という原則のもと、大学の再建が進められたところです。こうした原則は、歴代総長に受け継がれ、軍事研究との関連が問題となった1959年・1967年には、東京大学評議会においても明確にこれを禁じることを確認しています。さらに東大紛争収束から間もない1969年3月、時の総長代行加藤一郎(後に総長)は、軍事研究に関与しないこと、大学の自主性のない産学共同を廃すべきことを、職員組合に約束し、これを確認書に明記しました。かかる精神は、今日東京大学を運営するにあたっての基本原則たる東京大学憲章に反映され、「東京大学は、研究が人類の平和と福祉の発展に資するべきものであることを認識し、研究の方法および内容をたえず自省する。東京大学は、研究活動を自ら点検し、これを社会に開示するとともに、適切な第三者からの評価を受け、説明責任を果たす。」(「Ⅰ学術」「研究の理念」)と定められています。

 いうまでもなく特定秘密に固められた軍事研究は、「人類の平和と福祉の発展」とは相容れざるものであり、かつ学術活動を社会に開示してゆくという東京大学の基本姿勢になじむものではありません。私たち東京大学の構成員は、先人たちの反省とそれに発した営為を継承し、責任ある学術の姿勢を示してゆかねばなりません。いま安倍政権は、解釈改憲などを通じて、再び世界に軍事力を誇示し、武器輸出を日本経済再生の梃子とすることを目指すとともに、学校教育法の改悪により大学の自治や学問の自由を脅かし、学術的成果を上記の目的に都合よく援用することを狙っています。こうした圧力から大学本来の使命を守るため、東京大学職員組合は、東京大学が軍事研究禁止の原則を堅持し、人類の幸福に寄与する学術・研究に邁進することを強く訴えます。

2014年7月15日

東京大学職員組合

東京大学の軍事研究を行わないという基本原則・慣行に関し、産経新聞紙上に「軍事研究をさせないのは学問の自由に反する」という記事が掲載されました(2014.5/1)。
次いで同じく産経新聞に東大当局と東大職員組合間での軍事研究禁止等の確認書に関し、東大広報課では確認書は現存していないとの回答が掲載されました(5/16)。
東京大学職員組合では昭和44年(1969)3月5日、東職執行委員長と加藤一郎総長代行との間で取り交わされた確認書が現在も有効であること、引き続き軍事研究を行わない基本原則・慣行を堅持すること等、総長へ要望書を提出しました(6/18)。
要望書および確認書はこちらからご覧になれます。⇒
◎2014年6月18日2014年6月18日「軍事研究を行わない管理運営への要望書」
◎1969年3月5日1969年3月5日「東京大学当局と職員組合との確認書」

東京大学職員組合はここに改めて「東京大学における軍事研究禁止の原則の堅持を訴える声明」を公開します(2014.7/15)。


名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、2年続いた裁判が結審 判決は9月18日

■谷口教授を支援する会
 ∟●ニュース,第23号(2014年7月16日)

2年続いた裁判が結審 判決は9月18日

 さる6月26日(木)午後2時から3時半まで、名古屋地方裁判所 1103 法廷にて谷口教授の裁判期日がありました。本ニュース第21号でお知らせしたとおり、前回期日の4月10日に解雇裁判と 名誉毀損裁判が併合されることが確認され、今回が併合されてから最初の裁判期日でした。
 本人尋問に先立って、谷口教授側から 2点の書証申請がありました。名古屋女子大学教職員組合の元組合員であるT氏とU氏が「教職員研修室」において命じられた業務について述べた陳述書で す。この2点の陳述書は谷口教授の陳述書とともに、名古屋女子大学教職員組合の山井委員長の解雇裁判(谷口教授の事件とは別件)においても書証として提出され、「教職員研修室」への配転命令 が学園による不当労働行為にも該当すると裁判所が認定する根拠になったものです(1審、2審ともに解雇無効との判決。名古屋地裁 2014/02/13、名古屋高裁 2014/07/04)。
 さて尋問ですが、まずは主尋問(谷口教授側弁護士からの尋問)が 60 分ほどありました。理事会の組合敵視についての証言から始まり、2011 年 6 月から始まった「学長特命プログラム」、2012 年 3 月以降の「教職員研修室」での業務命令、2012 年 4 月 1 日付での助手への降任、3 回の懲戒処分、 ブログ、解雇それぞれについての事実確認と本人の気持ち、慰謝料請求の思いなどが証言されまし た。
 次に反対尋問(学園側弁護士からの尋問)が 30 分ほどありました。越原一族による学園支配、団 体交渉の不誠実さ、授業プレゼンテーション、「逆パワハラ」と学園から認定された文章、ブログに ついて証言がなされました。
 尋問終了後、双方ともに最終弁論を行わないことを確認した結果、結審が言い渡されました。
 判決の言い渡しは9月18日(木)13時10分からです。 当日は、愛知大学、愛知学 院大学、愛知学泉大学、愛知工業大学、至学館大学、鈴鹿 医療科学大学、中京大学、名古屋大学、名古屋女子大学、 東海私大教連の関係者23名から応援傍聴をいただきま した(写真)。この場を借りて お礼申し上げます。


2014年07月16日

北大教員の研究費不正経理、59人5億円超に

読売新聞(2014年07月15日)

 北海道大は15日、架空発注で支払った物品代金を出入り業者に管理させる「預け金」など教員による研究費の不正経理の最終報告を発表した。

 記録が残る2004年度以降、不正経理に関与した教員は59人、総額は約5億3500万円に上り、うち退職者3人を除く教員56人を停職や出勤停止などとした。山口佳三学長ら理事8人も7月分の給与の10分の1を自主返納する。

 文部科学省によると、13年11月末時点で全国47の大学や研究機関の不正経理は計約5億7500万円(154人分)に上る。

北大の不適切経理、計5億3500万円 教員59人関与

朝日新聞(2014年7月15日)

 公的研究費などの不正使用について内部調査していた北海道大学は15日、2004~11年度の不適切経理が総額5億3500万円に上ったとする最終報告を発表した。大学が関与を認定した教員は59人に上り、うち52人を停職2カ月や戒告などの懲戒処分に、4人を訓告とした。不適切経理に関わった13業者も取引停止や厳重注意処分とした。

 不適切経理の内訳は、架空の物品発注をして業者の口座に代金をプールする「預け金」が4億8600万円、実際に購入する品名とは違ううその伝票を業者に作らせた「品名替え」が4900万円。

 教員の所属は医学や農学、工学など理系の学部や研究機関で、1人あたりの不適切経理額は5705万~14万円。このうち遺伝子病制御研究所に所属していた60代の元教授1人に私的流用があったとして、北大は昨年6月、元教授と取引業者1社を詐欺容疑で北海道警に告訴した。

 北大は11年7月に札幌国税局の税務調査で指摘を受け、外部の識者を交えた調査委員会を設置して調べていた。15日に記者会見した山口佳三総長は「チェック体制が甘かった。十分に反省すべきだ」と述べ、大学は再発防止策として教員への研修実施や誓約書の提出、納品の確認の厳格化のほか、4月から電子購買システムを導入し、教員と業者が接触するのを避ける仕組みにしたと説明した。

 文部科学省は11年8月、全国約1180の研究機関に対し、公的研究費の不適切な会計処理の有無を調査して報告するよう求めたが、15日時点で東大、京大、慈恵医大、立教大など7大学が未回答。


2014年07月15日

沖縄密約文書、「3年かけこの程度か」西山さん落胆隠せず

毎日新聞(2014年07月14日)

 2011年の上告から約3年を経て示された司法の最終判断は敗訴だった。沖縄返還を巡る密約文書の開示請求訴訟で14日、文書の不開示が確定した。「司法のチェックが機能しなかった」「3年かけてこの程度の判断か」。30秒程度の読み上げに終わった最高裁判決に、原告は落胆の色を隠せなかった。

 14日夕、東京・霞が関の司法記者クラブ。記者会見した原告団は「実にひどい内容だ」などと次々に判決を非難した。

 元毎日新聞記者の西山太吉さん(82)も「(廃棄されたとみられる)文書がないことを正当化する判決だ」と批判。「情報公開の精神にのっとって(密約を)国民に伝達するのが本当の民主主義」と指摘し、「判決は、外交文書は相手が傷つくから捨ててしまうこともあると言っているが、密約文書は国民共有の財産。永久保存しなきゃいけない」と声を荒らげた。一方で「政府の隠し事をさらし出した意義はあった」とも振り返った。

 提訴は09年。民主党政権時代に訴訟と同時並行で開かれた外務省の有識者委員会は10年に「広義の密約」があったと認めた。12年には岡田克也副総理が参院予算委員会で「歴代の首相や外相が1990年ごろまで外務省から(密約が)あると報告を受けながら、存在を否定してきたことは許し難い」と発言し、西山さんに謝罪した。

 最高裁判決も密約文書については、その存在を認めた2審・東京高裁判決(11年)を支持。西山さんは会見で「政府が徹底的に否定した密約を司法が完璧に認定したことは大勝利だ」と強調した。その上で年内にも施行される特定秘密保護法について「政府に都合のいい情報だけが我々のところに届くようになると本当に危険な状態になる。情報公開は民主主義の要だと言いたい」と警鐘を鳴らした。【山本将克】

 外務省の話 国の主張を認めた高裁判決が是認された。政府としては、国民が重要な歴史事実を検証できるよう、適切な行政文書の保存・管理に努める。

 右崎正博・独協大法科大学院教授(情報法)の話 高裁判決は、行政が過去に持っていた文書は特段の事情がない限り情報公開を請求した時点でも「あった」と推認されるとしていたのに、最高裁は個別具体的に判断すべきだとした。特に外交文書について、他国との交渉が絡む場合には通常と異なる保管体制を取ってよいとまで認めた。情報を原則公開とする法の趣旨を踏み外すものだ。これでは情報公開法が形骸化してしまう。


2014年07月14日

大学の自治守ろう、学長経験者ら迎えシンポ 大阪

しんぶん赤旗(2014年7月13日)

大学の自治守ろう
学長経験者ら迎えシンポ 大阪

 大学の管理・運営制度をめぐる法改悪や拙速な統合に対し「大学の自治」や「学問の自由」を守ろうと、前京都大学総長の尾池和夫・京都造形芸術大学学長らを迎えたシンポジウムが12日、大阪市内で開かれました。実行委員会の主催。

 先の国会では、大学の教授会から人事と予算の審議権を奪い、学長のトップダウンや国による大学への介入を強める学校教育法の改悪法が成立しました。

 元滋賀大学学長の宮本憲一・大阪市立大学名誉教授は「研究・教育のコミュニティーである大学の管理・運営制度を、これまでのコミュニティー的な決め方から企業的な決め方に変質させるものだ」と批判しました。

 芦田文夫・元立命館大学副総長は、各大学で改悪法を実質化させない運動が大事であり「教授会を足場としながら、その枠組みを超えるような全学的な運動を」と呼びかけました。

 小林宏至・大阪府立大学名誉教授が大阪の府大・市大統合を批判。京都大学職員組合の竹中寛治副中央執行委員長が総長選挙の廃止に待ったを掛けたたたかいを報告しました。尾池氏は日本の大学の課題について講演。フロアから発言した日本共産党の宮本岳志衆院議員は「改悪を現場で食い止めるために頑張りたい」と語りました。


2014年07月12日

京都大学職員組合、学内世論の一致が生み出した新総長 総長選を振り返って

京都大学職員組合
 ∟●学内世論の一致が生み出した新総長 総長選を振り返って

学内世論の一致が生み出した新総長
ー 総長選を振り返って ー

京都大学職員組合 中央執行委員長 談話

 「現総長の京大運営は根本的に間違っている。」わたくしたち京都大学職員組合中央執行委員会は、未払い賃金請求裁判を闘う中で、京大法人の文部科学省への従属性、自治放擲、法を守らぬ姿勢に早くから気付いていました。しかし同時に、定員削減に苦しむ事務職員、5年雇用期限の不条理に憤る時間雇用教職員、「組織改革」に振り回される部局長・教育研究評議員、常に置いてきぼりを食らう一般教員、全ての蚊帳の外に置かれた学生たち、・・・京都大学のあらゆる諸階層が並行して、同じことを感じていたのです。その集約点にして爆発点が京大総長選挙廃止問題でした。たった3日間で1065名にのぼる12月の署名者たちが求めた民主的総長選挙の存続が決まったあの4月の瞬間、すでに今日7月初めの「みんなに支持される新総長の選出」への道筋は開かれていたのかもしれません。まさしく学内あらゆる諸階層のどれを欠いても成立しなかったに違いない世論の一致が必然的に生み出した今回の学内体制転換に、京都大学職員組合も一つの役割を果たせたと喜んでおります。

 わたくしたち京都大学職員組合は、京都大学法人との間で対等な交渉に基づくまっとうな労使関係を確立する日をめざし、これからも努力していく所存です。この運動の中で組合員が増えています。さらに多くのみなさんが京都大学職員組合に加入して、「動けば変わる!」をモットーに、わたくしたちと共に活動していただけることを切に願っております。


給付型奨学金の創設目指す 「子供の貧困」大綱案

共同通信(2014/07/11)

 経済的事情などで満足な教育や生活支援を受けられない子供のために、政府が必要な施策をまとめた「子供の貧困対策」の大綱案が11日、明らかになった。大学や専門学校で学ぶ場合に、給付型の奨学金創設を目指すと明記。学校をプラットホーム(拠点)と位置付け、福祉との連携や親の就労支援も盛り込んだ。今月下旬に閣議決定する。

 子供の貧困をめぐっては、進学や就職を諦め、大人になってからも深刻な影響が続くとの問題点が指摘されている。

 大綱案は「生まれ育った環境に左右されず、世代を超えて貧困が連鎖しないよう」に対策の必要性を強調している。


2014年07月11日

首都大学東京労働組合、大学の自治を否定する学校教育法と国立大学法人法の改悪に抗議する決議

首都大学東京労働組合
 ∟●『手から手へ』第2713号(2014年7月8日)

大学の自治を否定する学校教育法と国立大学法人法の改悪に抗議する決議


 2014 年 6月 20日、学問の自由を支えるうえで重要な役割を果たしてきた教授会の権限を大幅に縮小させて、それを学長権限のしたに組み込む学校教育法「改正」案が、参議院において自由民主党、公明党、民主党などの賛成によって成立しました(投票総数 238、賛成票 223、反対票 15)。今回の「改正」により、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」(学校教育法第 93条)と定めている現行法が、「教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする」(改正案第 93 条)と変えられてしまいました。「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」に対して意見を述べることに教授会の役割が限定され、この他については、学長が必要であると判断した事項に対してのみ意見を述べることができるという規定となりました。しかも、この強大な権限を持たされることになる学長の選考について、「学長選考会議が定める基準により、行われなければならない」ことが、国立大学法人法の「改正」案第 12 条に書き加えられました。これらの「改正」によって、法規定上の教授会権限は大幅に縮小され、また学長選考に際して焉A教職員、そして院生と学生の意見を反映させることが難しくなってしまいました。このままでは、不透明な手続きによるトップダウンの大学運営がいままで以上に拡がってしまい、学内からの合意が形成されないまま、形式上の「改革」だけが進行していく危険性が高まってしまいます。

 大学は、国家や権力を持った勢力による統制や干渉から学問の自由を守るために、多くの経験を蓄積させながら大学の自治を確立してきました。大学の自治は、自由な研究と教育、および民主的な社会を維持し発展させていくために不可欠なものです。これを否定する今回の学校教育法と国立大学法人法の「改正」は、大学の歴史とその使命に照らしてとうてい認められるものではありません。このことは、私たち公立大学法人首都大学東京が「失われた 10 年」を通して、すでに経験してきたことです。大学は、研究と教育の自由が生命線であり、いくら法制度をトップダウンで変えても、それによって創造的な研究と教育が生みだされるものでは決してありません。
こうした無謀な高等教育政策を第 2 次安倍内閣が急ピッチですすめようとしている背景には、経済界のグローバル戦略に大学を組み込むねらいがあります。第 2 次安倍内閣になって設置された教育再生実行会議の第 3次提言では、2017 年までの 5年間を「大学改革実行集中期間」と位置づけ、「世界に伍して競う大学の教育環境をつくる」「スーパーグローバル大学(仮称)を重点的に支援する」「日本人留学生を 12万人に倍増し、外国人留学生を 30 万人に増やす」ことなどが提言されました。同時に、こうした「改革」を学長がリーダーシップを発揮してすすめているところに対して重点的に大学運営費交付金を配分していくことが、露骨に提言されています。

 今回の学校教育法と国立大学法人法の「改正」は、大学の自治と、自由で創造的な研究と教育が行われる環境をこわすものでしかありません。私たちは、今回の改悪に強く抗議し、今後とも、研究と教育の自由、大学自治を守り実現するために力を尽くします。
以上、決議します。

2014年6月28日

公立大学法人首都大学東京労働組合
第 9 9 回 定 期 大 会

神戸大学教職員組合、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告

神戸大学教職員組合
 ∟●月刊しょききょく7月号(2014.07.07)

6/17「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告

藤田裕嗣 前副委員長(文学部支部)

 全大教・日本私大教連の主催による 6 月 13 日の「学校教育法・国立大学法人法の『改正』に反対する緊急院内集会・議員要請行動」に続き、17 日の参議院文教科学委員会の傍聴行動にも参加したので、ご報告します。
 「大学自治を否定する学校教育法・国立大学法人法の改正法案」は、6 月 10 日の衆議院本会議で採決され、参議院に送付されています。参議院文教科学委員会での質問等は、6 月 17 日(火)と 19 日(木)に予定されており、「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」のアピールへの賛同が広がっている情勢を受けた行動でした。
 具体的には 13 時前に参議院面会所に集合し、チェックを受けた後、午後からの文教科学委員会での質問と答弁の有様を傍聴しました。6 会派からそれぞれ 1 名の委員が質疑を行い、政府側は下村博文文部科学大臣、西川京子文部科学副大臣、吉田大輔高等教育局長が答弁を行いました。その他、衆議院における修正法案の提案者として、笠浩史衆議院議員も冒頭で説明を求められました。
 学長一人で何もかも判断できる筈もなく、「委譲」が問題になり、19 日に持ち越しとなりました。大臣と局長による答弁を肉声で聞くと、大学ランキングに日本の大学があまり入っていないことを何度も強調していました。昨今の事情に鑑み、大学改革の必要性は判りますが、「学長のガバナンス」を高める一方で、教授会の権限は蔑ろにしようと画策しています。日本の大学は、せいぜい百年を超える程度の歴史を有するに過ぎないにしても、明治以来、培ってきた学問の自由、学部自治の伝統があります。それを蔑ろにして、学長中心の改革で、世界に冠たる大学に本当になれるのでしょうか?論理が逆転しており、大いに疑問に思われます。
 前回 13 日の議員要請行動で報告者が担当した2議員も質問に立ち、若手研究者が教員になれても、ポストは任期付きゆえ不安定で、四苦八苦している現状を救うには、教授会によるチェックが必要、と訴えるなど、少しは役立ったかも、と感じられました。 前回、衆議院における委員会審議の傍聴では参加者が多く、報道席にまではみ出した由でしたが、それに比べれば少なかった訳で、報道陣も、一人気付いた程度でした。マスコミを賑わしている「集団的自衛権」の閣議決定を巡る議論と抱き合わせにしているのは、内閣の思惑以外の何物でもないでしょう。
 次の委員会は 19 日午前中から、本会議は午後にも予想され、目指す継続審議、廃案にするには、ギリギリの情勢であること、ご報告します。
○―――――――――――――――――――――○○―――――――――――――――――――○
6/19「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告(続)

庄司浩一 前副委員長(農学研究科支部)

 本稿は,本学藤田副委員長による標記 6/17 参議院文教科学委員会傍聴を受けての 6/19 同傍聴報告です。傍聴席には 30 余名,記者席には 4 名と比較的多く参集しました。10 時に 6 会派 7 名の委員による質疑が始まり,昼食をはさんで 14 時 30 分少し前に採決,18 対 1 で可決となりました。質疑が終わったあとの討議および採決で反対したのは共産党田村委員だけの状況でした。続いて自民・公明・維新・結い・みんなから提案があった 9 項目からなる附帯決議が可決されました。同席した全大教の長山書記長からは厳しい総括がありましたが,我々大学人の立場がほとんど通らなかった現実を直視せざるを得ません。

 以上が状況報告ですが,本日の委員会では 10 時 45 分より約 20 分にわたって,民主党大島委員による環境副大臣らへの質疑が挟まれました。内容は,6/16 の石原環境大臣の発言に関する追及で,なぜここにと思われましたが,原子力行政は文部科学省管轄でもあるためのようです。専門の委員会とはいえ党略マター(大義名分ではそのつもりはないはず)が入ってしまうのは,議員集団ゆえの現実かとしばらく聞き流していました。法案に唯一反対を表明した共産党田村委員からは,先日の産経新聞で報道された広島大学での講義と文部科学省の対応を引き合いにし,学問の自由に対して改めて問いかけが行われました。しかし現実には他の委員からは私語をはじめとする弛緩したオーラが伝わってきて,早く審議を終わらせたい意向がありありでした。
 また最後の附帯決議には,衆参の委員会を通じて懸案事項として取り上げられた,法案を施行するにあたって考慮すべき項目,たとえば学長が暴走しないように監視する方策を考える,高等教育のための予算を対 GDP 比で 0.5%の現状から OECD 諸国並みの 1%に引き上げるべきなどの努力目標が盛り込まれました。しかし所詮これらはガス抜きであることは明白で,傍聴参加者の中からは,平成 15 年の独立行政法人化法案の時も同じような附帯決議がなされたが,まったくもって無視された状態だとのつぶやきが聞こえてきました。傍聴会場から出るときには,「良識の府」といわれる参議院でこの程度の審議かとのつぶやきもありました。

 おそらく全大教の方々は誰も書かないとは思いますが,今回の傍聴で無視できないな,と感じた点は,維新の会・結いの党およびみんなの党からの質疑です。彼らの言い分は,学長のリーダーシップ強化のための法案とはいえ,民間企業の社長に比べたらまだまだ甘い,つまり現改正案よりももっと権限を付与せよ,いわんや教育界だけの大学の自治とは理解に苦しむとの意見です。民間出身者など大学の事情を知らない方々から出た意見と言い切ってしまえばそれまでですが,逆に世間一般の方からみた厳しいほうの意見として伺っておくものかと思います。一方で今回の改正で蔑ろにされるといわれる教授会といっても,自身の研究優先で教授会構成員そのものがまじめに参加していない現況もあるではないかとの厳しい指摘もありました。まったくもって反論のしようがなく,学問の自由は憲法で保障されているとか,明治以来の長年の経験に立って教授会が役割を果たしている,といった伝統の上であぐらをかいてメンテナンスを怠っていた大学人らに,不意打ちをかけるような形で今回の法改正がやってきたとはいえないでしょうか。皮肉なことに,これら最も厳しいと思われる意見と法案廃止の意見との中間に,今回の政府による改正案が位置づけられてしまったことにより,委員会での圧倒的な賛成多数がもたらされたようです。最後の解散直前に長山書記長の「これからは我々自身で学問の自由を守る必要がある」とのコメントに,ようやく目を覚まさせられたのは私だけではなかったと思います。

久喜キャンパス全面撤退、理科大理事会が決定

東京新聞(2014年7月10日)

 東京理科大(本部・東京)は九日の理事会で、二〇一六年三月末に久喜キャンパス(久喜市下清久)から全面撤退することを決めた。約十三万七千平方メートルの跡地利用については「売却を含め、市の意向を尊重しながら検討したい」としている。田中暄二・久喜市長は「誠に遺憾。キャンパスの利活用を含む将来計画を早期に示すよう理科大に強く求めていく」とコメントした。
 久喜キャンパスは一九九三年四月に開校。経営学部と大学院に学生約千百人が在籍する。市は用地取得や校舎建設費などで計三十億円を補助し、道路や下水道など周辺整備に約十億円を支出した。
 市や大学によると、一一年に大学側が全面移転の意向を市に伝え、存続を求める市と協議し、一六年四月から二年生以上を神楽坂キャンパス(東京都新宿区)に移すことで合意。だが今年六月、大学は常務理事会で全面移転を決定。中根滋理事長は田中市長に「想定した学生数の確保が困難。一年生だけ残すのは教育上も学校経営上からも厳しい」と説明した。市と市議会は「約束を一方的に破棄する行為」と反発し、撤回を求める決議文などを提出していた。

「大学から説明ない」 学生らに不満 部活や生活費の心配も

東京新聞(2014年7月10日)

 久喜キャンパスに通う学生は、二〇一六年春の一部移転が決まっていただけに冷静だったが「部活動はどうなるのか」「大学から詳しい説明がない」などの不満も漏れた。
 三年生の古谷祐磨(ゆうま)さん(20)は「各キャンパスで別だった部活動はどうなるのか。統合が必要だろうが、大学から説明も話し合いもない。後輩がかわいそうだ」と心配する。
 宮城県出身で一年生の及川章也(ふみや)さん(18)は「生活費が増えそう。アパートの賃貸でも、久喜市内と都内では違うだろうし、親に負担をかける」と話す。
 一方で歓迎する意見も。男子二年生(20)は「久喜での生活は伸び伸びしていいが、他大学との交流はあまりない。多くの学生が集まる場所の方が刺激にもなる」と話した。


2014年07月10日

AO入試合格者、6人に1人が退学…読売調査

読売新聞(2014年07月09日)

 主に学ぶ意欲をみるAO(アドミッション・オフィス)入試で合格した学生のうち、6人に1人にあたる15・5%が退学していたことが、読売新聞の「大学の実力 教育力向上の取り組み」調査でわかった。

 入試方法別で最も高い退学率で、一般入試の5・9%が最も低かった。入試方法別の退学率が明らかになったのは初めて。

 AO入試は本来、学力試験で測れない意欲や能力を重視する試験だが、早ければ入学の半年以上前に合格が決まることなどで学習意欲を失わせているとの指摘があり、見直しを迫られる大学も出そうだ。

 今年の「大学の実力」調査は、通信制などを除く全国744の国公私立大学を対象に、学生の成長のための取り組みや大学の現状を聞き、過去最高の659校(89%)が回答した。


2014年07月09日

京滋私大教連、憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

京滋私大教連
 ∟●憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

2014 年 7 月 4 日
京滋私大教連執行委員会


 7月1日、安倍内閣は戦後 60 数年続いてきた「海外での武力行使をしない」という憲法9条の解釈を変更し、憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行ないました。この間、首相官邸前では連日のように抗議行動が行なわれ、30 都道府県157の自治体(京都府では向日市、長岡京市、宇治市、大山崎町)で、集団的自衛権の行使容認の「閣議決定」に反対する決議や意見書が採択されているにもかかわらず、これらの声に一切耳を傾けることなく、安倍内閣が「閣議決定」を強行したことに強く抗議するものです。

 安倍首相は「国民の命と暮らしを守る」ために、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行なう必要性を強調しています。しかし、「閣議決定」に向けた与党協議は完全非公開で行なわれ、国家を縛る憲法解釈の議論をしているにもかかわらず、国民を排除して密室での協議に終始してきました。こうした対応そのものが、「憲法とは権力を縛るもの」という原則を根幹から否定する極めて重大な行為です。

 安倍内閣が、歴代政権の下で積み重ねられてきた憲法解釈を一片の「閣議決定」で変更すること自体きわめて重大な問題ですが、このような手法をとらざるをえないことは、安倍首相の自信のなさを表しているとも言えます。自ら考えていた憲法 9 条の明文改憲も、改憲手続きの緩和も多くの国民の反対の声に圧されて頓挫したため、憲法解釈の変更によって戦争行為に踏み出す集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行なう安倍内閣には、「国民の命と暮らしを守る」ために政権を担当する資格すらないと言わざるをえません。

 今回の「閣議決定」に対して、学生たちの間にも自らが戦場へ赴く対象となりうることへの不安や動揺が広がっています。大学は、過去の痛苦の反省の上に立って「二度と学生を戦地に送り出さない」という反戦・平和の誓いの下、平和と民主主義に立脚した日本社会の発展に寄与してきましたが、それ故に学生を再び戦地へ送り出すような事態を招くことにつながる道は絶対に阻止しなければなりません。

 私たちは、憲法第 9 条において「1.国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めた平和主義を積極的に世界へ押し広げていくことが、「国民の命と暮らしを守る」ための最善の策であると考えます。私たちは、今後、日本政府による集団的自衛権を行使させないために、多くの国民・労働者と共同して、憲法の平和主義を推し進めていく決意です。

以上

2014年07月08日

東京女子医大、学長解任…「無責任な言動」理由

読売新聞(2014年07月07日)

 東京女子医大は6日、臨時の理事会を開き、笠貫宏学長を解任した。

 同大病院では今年2月、男児(当時2歳)が死亡する医療事故が起きており、同大は、笠貫氏が事故後に「無責任な言動を繰り返した」ことが解任の理由としている。

 笠貫氏は6日夜、「解任に正当な理由はなく、受け入れる気持ちはない。大学改革のため、何をしないといけないか考えたい」と述べた。

 笠貫氏は6月12日、高桑雄一・医学部長らとともに会見し、男児が死亡した事故の対応について「社会的な説明責任を果たしていない」などと、吉岡俊正理事長や理事ら幹部全員の退陣を要求した。これについて、同大は「大学の正常な運営を阻害した」としている。

 同大は同15日に臨時理事会を開いて退陣しないことを決議し、逆に、笠貫氏に対し学長を退任するよう求めていた。


東京女子医大が学長を解任 医学部長は問責、医療事故巡り

共同(2014/7/7)

 東京女子医大は7日、6日の臨時理事会で、同医大病院で首を手術した2歳男児が死亡した医療事故で病院側の対応を批判していた笠貫宏学長を解任し、高桑雄一医学部長を問責したと発表した。後任には吉岡俊正理事長が学長代行として就任した。

 同医大は解任理由を「大学病院で起きた医療事故に対して偏向した情報を社会に公開することを容認した」などとしている。高桑医学部長は「前学長と同様な行為を行った」として問責した。

 6日の理事会終了後、取材に応じた笠貫氏は「理由に正当性はなく、受け入れる気持ちはない。大学改革のために何をすべきか考えたい」と述べた。

 笠貫氏は病院側が事故の調査報告書を公表しないのは社会的責任を果たしていないなどとして理事長らに退陣を求めたが、6月15日の臨時理事会で否決。逆に、退任するよう勧告されていた。〔共同〕


沖縄密約文書訴訟、原告敗訴確定へ

NHK(7月7日)

昭和47年の沖縄返還の際に日本とアメリカが密約を交わしたとして元新聞記者などが外交文書の公開などを求めていた裁判で、最高裁判所は今月14日に判決を言い渡すことを決めました。
判断を変える際に必要な弁論が開かれないため、原告側の訴えを認めなかった2審の判決が確定する見通しになりました。

この裁判は、昭和47年の沖縄返還の際にかかる費用を日本がアメリカの代わりに支払うという密約があったとして元新聞記者や大学教授などが国に当時の外交文書の公開などを求めていたものです。
1審は、国に文書の公開と慰謝料の支払いを命じましたが、2審は3年前、密約があったことは認めたものの「文書は廃棄された可能性が高い」として、訴えを退けていました。
この裁判で、最高裁判所は今月14日に判決を言い渡すことを決めました。
判断を変える際に必要な弁論が開かれていないため、文書の公開を認めなかった2審の判決が確定する見通しになりました。
沖縄返還の際の日米の密約を巡っては、外務省などが4年前、日本側が2000万ドルの費用を肩代わりしたことなどを認める調査報告書を公表していますが、国は裁判で「文書は見つからなかった」と主張していました。


2014年07月07日

富大教職組、未払い賃金請求訴訟第6回口頭弁論と報告集会が行われる!

全大教
 ∟●富大教職組「未払い賃金請求訴訟ニュースNO.6

未払い賃金請求訴訟第6回口頭弁論と報告集会が行われる!


 2014年7月2日(水)、真夏の日を思わせる晴天にめぐまれたなか、午後1時30分から1時50分まで、富山地方裁判所民事部第1号法廷にて、富山大学教職員55人を原告とし、国立大学法人富山大学を被告とする、「未払い賃金請求訴訟」の第6回口頭弁論が行われました。
 法廷では原告、富大教職員組合員、全大教(書記長)、および北陸地方国立大学教職員組合、富山県高等学校教職員組合(富山高教組)などからの支援者をあわせて、20 人が法廷の傍聴席を埋めました。
 今回の第 6 回口頭弁論は、先になされた原告の反論・主張(4 月 17 日付原告準備書面3)に対する、被告の反論(6月30日付被告準備書面5)を受けて行われたものですが、裁判長から、準備書面での被告の主張について、利益剰余金に現金の裏付けがあるのかどうか、剰余金の平成23年度と24年度との差額の使途は何かなどについて、原告の主張にそった質問が被告になされ、次回までに被告が回答することになりました。
 被告の準備書面5については、提出されてまもないことから、次回までに原告が反論を行うことになりましたが、幾つかの問題点が明らかになりました。まず、被告側は準備書面での主張の中で、予算の使い方について「人件費を優先しなければならないものではない」「被告の経営判断の基づき(…)分配した」などと、人件費について他の支出と同じ見方をしており、教職員の賃金は最大の経営努力をおこなって確保しなければならないものであり、不利益変更は基本的に避けなければならないという認識がないことが、あらためて明らかになりました。そのため、利益剰余金(目的積立金)、総人件費改革による人件費削減額と運営費交付金削減額の差額が生んだ予算上の余裕金などが存在し、経営努力をしさえすれば人件費に充てる余裕があったはずだという原告が主張に対して、被告は正面から答えていません。
 なお、次回、第7回口頭弁論は、10月1日(水)(富山大は開校記念日です)午後1時30分から、富山地方裁判所で行われることが決まりました。
 口頭弁論に引き続いて、午後2時から、裁判所近くの富山県弁護士会館にて、「第6回口頭弁論報告集会」が開かれ、弁護士、原告、組合員、支援者など17人が参加しました。
 集会では、広瀬富山大学教職員組合委員長から挨拶があり、次に全国大学高専教職員組合(全大教)の長山書記長から、全国で進められている未払い賃金訴訟の進行情況について説明がありました。それによると、先行する訴訟は順調に進んでおり、全国高専機構の訴訟では7月に証人尋問が行われ、その後 9~10 月に最終弁論がなされ、年内にも判決が出る見通してあることが紹介されました。他の単組の裁判でも年度内の判決も見込まれ、これらの進行状況と判決内容を見ながら、富山大の裁判も続けていくことになります。また、6月下旬に成立し た「学校教育法及び国立大学法人法」の改悪に対する全大教の取り組みが紹介されました。
 次に、坂林弁護士から、今回の口頭弁論の内容と今後の裁判の見通しについて解説がなされました。今後は、立証の段階に入り、これから陳述書を提出し、その後、年末から年明けくらいに証人尋問という段取りになるとのことです。陳述書については、賃金削減が生活に及ぼした影響について、具体的に原告(及びその家族も可)が書面を作成していくことになります。9月2日が陳述書提出の締め切りですが、出来るだけ多くの原告の参加をお願いします。
 報告集会では、最後に、今回傍聴に参加した、金沢大学、福井大学、富山高教組の代表からの連帯の挨拶があり、またそれぞれの現在の闘いの進行状況が報告されました。
 今後の裁判においても、傍聴席を埋めることで、本訴訟が社会的に注目を集めていることを裁判官に印象づける必要があります。すべての、教職員の皆様に、本訴訟への支援を訴えます。

東大が防衛省に協力拒否 機体不具合究明「軍事研究」と

共同通信(2014.7.6)

 防衛省が今年5月、強度試験中に不具合が起きた航空自衛隊輸送機の原因究明のため東大大学院教授に協力要請したところ、大学側が「軍事研究」を禁じた東大方針に反すると判断し拒否したことが5日分かった。防衛省は文部科学省を通じ東大に働き掛けを強め、方針変更を促す構えだが、文科省は大学の自治を尊重し消極的。一方、教授は大学側に届けず防衛省の分析チームに個人の立場で参加しており、大学方針の実効性が問われる可能性もある。

 輸送機はC2次期輸送機。離島防衛のため陸上自衛隊部隊が移動する際の主力輸送手段と想定されている。14年度末からの配備を予定していたが、2年延期された。


2014年07月05日

岐阜大学職員組合、学校教育法及び国立大学法人法の「改正」への抗議

岐阜大学職員組合
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の「改正」への抗議

岐阜大学職員組合中央執行委員声明
学校教育法及び国立大学法人法の「改正」への抗議


 先日閉会した第 186 回国会において、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」が、大学関係者によるさまざまな反対の意思表明を押し切って可決された。「改正」のポイントは、教授会の権限から、教員の採用と昇進および学部長選考などの人事に関わる一切を奪い、さらには教育課程編成や学部予算に関する権限も剥奪して、教授会を学長の諮問機関化することにある。また学長選考について選考基準が公表されることとなったが、このことは、経営協議会の学外委員比率が過半数とされたこととも相俟って、今後は大学構成員の要望とかけ離れた学長が選ばれるのではないかという危惧を抱かせる事態である。
 こうした学長へ権限を集中し大学運営をトップダウン型に変えていく改革は、国立大学法人化以来すでに十数年の歴史を持っている。この間に明らかになったことは、学長権限強化とは各大学の自立性ではなく文部科学省の影響力を強めるものであること、教育現場を担う教員たちの「同意」を伴わない改革は決して教育の質を高めることにつながらないことなどであろう。

 法案の成立を受け、今後の焦点は、新学校教育法第 93 条第 2 項第 3 号にある「教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」とは何かを具体化していく作業に移る。今後、文部科学省は有識者会議での議論を参照しつつ、学長が教授会の意見を聴くことが望ましい具体例を、同法の施行通知に提示することになっている。
 わたしたち岐阜大学職員組合は、極めて拙速に進められた今回の法改正に強く抗議するとともに、今後の法律の施行過程において、文部科学省が今度こそ広範な大学関係者の意見を取り入れ、教授会への意見聴取事項の中に、教育課程の編成、教員の研究教育業績審査、学部長選考などこれまで教授会が担ってきた役割が明記されることを求める。
 また他方で、新学校教育法のもとで従来通りの大学自治に基づいた大学運営がなされるためには、すべての大学構成員の取り組みが決定的に重要となる。まず各大学の学長には、大学運営にあたってこれまで以上に構成員の声に真摯に耳を傾けることを強く求める。それと同時に、各大学の教員や職員、さらには学生にも、それぞれの持ち場において働きやすく学びやすい環境作りの担い手として行動するよう訴えたい。

2014年7月2日 岐阜大学職員組合中央執行委員会

研究不正疑惑「全学生に説明を」 東大医学部生が会見

朝日新聞(2014年7月4日)

 東京大学がかかわる臨床研究で不正疑惑が相次いでいる問題で、東大の医学部生3人が4日、都内で記者会見し、「東大が社会から信頼を失ってしまっている」と疑惑の当事者の教授らに対し、今月中に全学生に説明するよう訴えた。

 学生らは先月下旬、アルツハイマー病研究「J―ADNI」や白血病薬研究などの不正について浜田純一総長に公開質問状を提出したが、理事から「医学部が再発防止策をとりつつある。対応を見守りたい」との回答があっただけという。6年の岡﨑幸治さん(24)は「短期間で問題が次々と起きるのは異常。説明してほしい」と話した。


京都大、次期学長に山極寿一教授 ゴリラ研究の第一人者

毎日新聞(2014年07月04日)

 京都大は4日、9月末で任期を終える松本紘学長の後任に、前大学院理学研究科長の山極寿一教授(62)=人類学・霊長類学=を選出したと発表した。3日にあった教職員による投票(意向調査)で1位になり、4日の学長選考会議で正式に決まった。任期は10月から6年。

 山極氏は東京都国立市出身で、1975年に京大理学部を卒業。日本モンキーセンターリサーチフェローなどを経て2002年、理学研究科教授に就任。11年4月から2年間、理学研究科長と理学部長を兼任した。ゴリラ研究の第一人者で知られ、国際霊長類学会長も務めた。

 山極教授は記者会見で「国際化の荒波の中、京都大の伝統である自由の学風や創造の精神をどう生かせるのか、多数の世界的科学者を生み出してきた土壌をどう支えるのか、全学体制で作り上げていきたい」と語った。また、任期途中に教職員が学長を評価する「リコール制度」の必要性にも言及した。【野口由紀】


2014年07月03日

自由法曹団、安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

自由法曹団
 ∟●安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

1 政府は本日、臨時閣議を開き、日本が集団的自衛権の行使を可能にすることを柱とする日本国憲法第9条の「解釈変更」を、閣議決定により強行した。われわれは、閣議決定が違憲無効であることを宣言するとともに、平和を求める民意を無視して閣議決定を強行した安倍内閣の責任を追及し、この暴挙に断固抗議するものである。

2 日本国憲法第9条は、1項で、個別的自衛権の行使として行われるものを含めてすべての戦争を放棄し、2項では戦争の放棄を実現するために、すべての軍備の保持を禁止し、国の交戦権を否認している。日本国憲法制定のための帝国議会においては、当時の首相であった吉田茂も、「第9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、交戦権も放棄したものであります。」と答弁しており、当時の政府が、憲法9条により、個別的自衛権の行使も含めて戦争が放棄されたと解釈していたことは明らかである。

 その後、朝鮮戦争の勃発と東西冷戦構造の進展の中で自衛隊が創設された。自民党政権と内閣法制局は、憲法9 条の解釈の「転換」を図り、自衛隊の存在を認める「専守防衛論」がとられることとなったのである。しかし、この「専守防衛論」の下においても、我が国が行使できる自衛権は自国への急迫不正の侵害があった場合に防衛する個別的自衛権に限定され、集団的自衛権の行使は憲法9 条のもとでは許されないという立場が、戦後、歴代政権により堅持されてきたのである。

3 ところが、本閣議決定は、「個別的自衛権」「集団的自衛権」、そして「集団安全保障」という区分を意図的に放棄して「自衛のための武力の行使」と一括りにした上で、「自衛のための武力の行使」が憲法上許容される場合として、「わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がない時」には、「必要最小限度の実力を行使すること」が憲法上許容される、としたのである。

 このような憲法解釈の変更は、憲法第9条の本来的な解釈から認められないことはもちろん、戦後の歴代政権の立場からも違憲であるとされてきた集団的自衛権の行使、そして集団安全保障上の措置としての海外での戦争・武力行使を無条件に解禁することを企むものであるといわざるを得ない。政府は集団的自衛権等の「限定容認」であるとの主張を繰り返すが、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由・・・が根底から覆される明白な危険」があるか、「ほかに適当な手段がない」かどうかの判断は、時の政権にまかされており、限定のための「要件」として意味をなしていないというほかない。すなわち、閣議決定により、集団的自衛権等を名目とした海外での武力行使が無制限に許容され、日本が、世界で戦争をする国に変質しようとしているのである。

4 そして、このような憲法解釈の大転換、そして、国民の権利に重大な影響を与える国の政策の大転換を、閣議決定により行おうとする政権の態度も、強く非難されなければならない。

 安倍政権は、私的会合にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に、集団的自衛権の行使容認等についての検討を委ね、同懇談会の報告を受けたのち、ごく短期間の与党内での密室協議を行ったのみで、閣議決定を行ったのである。国会審議を行わず、広く国民の議論に委ねることも回避しようとする点で、民主主義を否定するものであることはもちろん、憲法に基づく政治を求める立憲主義をも否定するものである。

5 閣議決定においては、集団的自衛権の行使の容認以外にも、いわゆるグレーゾーン事態における自衛隊の活動の迅速化や、「武力の行使との一体化論」の放棄による自衛隊の戦闘地域での活動範囲の拡大等が目論まれている。これらについても、憲法9条に反する活動を拡大するものとして違憲であり、到底許すことができないものである。

6 安倍首相は、閣議決定後の記者会見においても、「外国を守るために戦争に巻き込まれることはない。」「国民を守るための自衛の措置のみがとられる。」などと説明するが、詭弁であるというほかない。過去に、集団的自衛権行使の名の下に、ベトナム戦争へのアメリカ軍の参戦、アフガニスタン・対テロ戦争へのNATO 軍の参戦等が行われたが、これらは大国による覇権を求める戦争であった。このような戦争に今、日本が巻き込まれようとしているのである。

7 自由法曹団は、政権の勝手な解釈によって憲法第9条を破壊し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に強く抗議するとともに、安倍政権によって企まれている、戦争する国づくりのためのあらゆる改憲策動を阻止するために、全力を尽くすことを表明する。

2014年7月1日

自 由 法 曹 団
団 長 篠 原 義 仁

法科大学院定員が激減 学生離れ、ピーク時の半分に

時事通信(2014/07/02)

 文部科学省は2日、来春の法科大学院の入学定員総数が今年より634人少ない3175人になる予定との調査結果を公表した。学生の法科大学院離れが止まらない状況で、来春は鹿児島大や白鴎大(栃木)など13校が募集を停止。定員はピーク時の5825人から約45%減となった。
 文科省によると、今年の入学者は2272人で約9割の学校が定員を下回った。44校は充足率50%以下で、来春も定員割れが相次ぐ見通し。合格率が低い24校は学生数がピーク時の1割に激減した。
 各校が学生の質確保のため合格者を絞ったことや、卒業しなくても受験資格が得られる「予備試験」の志願者が増えたことが要因とみられる。
 法科大学院は当初74校あったが、募集停止が相次ぎ、来年度学生を募集するのは54校。全校がピーク時より定員を減らしており、来年度はさらに20校が減員する。

2014年07月02日

日弁連、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

日弁連
 ∟●集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明


本日、政府は、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。

集団的自衛権の行使容認は、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず、他国のために戦争をすることを意味し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものである。

集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。

このような憲法の基本原理に関わる重大な変更、すなわち憲法第9条の実質的な改変を、国民の中で十分に議論することすらなく、憲法に拘束されるはずの政府が閣議決定で行うということは背理であり、立憲主義に根本から違反している。

本閣議決定は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」等の文言で集団的自衛権の行使を限定するものとされているが、これらの文言は極めて幅の広い不確定概念であり、時の政府の判断によって恣意的な解釈がされる危険性が極めて大きい。

さらに、本閣議決定は、集団的自衛権の行使容認ばかりでなく、国際協力活動の名の下に自衛隊の武器使用と後方支援の権限を拡大することまで含めようとしている点等も看過できない。

日本が過去の侵略戦争への反省の下に徹底した恒久平和主義を堅持することは、日本の侵略により悲惨な体験を受けたアジア諸国の人々との信頼関係を構築し、武力によらずに紛争を解決し、平和な社会を創り上げる礎になるものである。

日本が集団的自衛権を行使すると、日本が他国間の戦争において中立国から交戦国になるとともに、国際法上、日本国内全ての自衛隊の基地や施設が軍事目標となり、軍事目標に対する攻撃に伴う民間への被害も生じうる。

集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定は、立憲主義と恒久平和主義に反し、違憲である。かかる閣議決定に基づいた自衛隊法等の法改正も許されるものではない。

当連合会は、集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正等が許されないことを明らかにし、反対するものである。

 2014年(平成26年)7月1日
  日本弁護士連合会
  会長 村越  進

2014年07月01日

東京高等教育研究所公開シンポジウム、「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」

東京私大教連
 ∟●東京高等教育研究所公開シンポジウム、「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」

東京高等教育研究所 公開シンポジウム
「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」


今、教授会の自治を圧殺する学校教育法「改正」案が国会に提出されている。この間の「大学改革」の集大成ともいえる攻撃である。しかし攻撃のねらいは単に大学を政府や財界の言いなりにすることで終わるのではない。むしろこれからが本格的な「改革」である。それは大学を財界のめざす「イノベーション」の推進組織として全面的に動員することをねらっている。
それは政府の意図のとおり成功するかという点ではきわめて疑わしい。これまでの「改革」によって大学は少しでも良くなったのだろうか。「改革」に追われ教職員の業務はますます増えるばかりで、学生はアルバイトに追われ学修をする余裕すらない。いわゆる「改革疲れ」を政府の政策でも認めざるを得ないのが現状である。国際競争力を高めるといいながら、日本の大学を世界水準からますます遠ざけるものとなっている
こうした日本の大学政策は世界の動向と真っ向から対立することをはっきりとらえなければならない。また日本の国民と社会の期待するところとは全く異質である。このシンポジウムでは現在進行している政府と財界の大学政策が世界の中でいかに異質なものとなっているかを明らかにし、大学関係者が国民とともに進むべき真の大学改革の課題を考えたい。

日 時 7月12日(土) 受付 13:30 開会 14:00 閉会18:00

会 場 明治大学リバティタワー 12階 1125 教室

報 告(仮題)

報告1 大学政策の現段階―教授会自治の封じ込めとイノベーション政策―
蔵原 清人 事務局長 (工学院大学)
報告2 経営大学院にみる大学政策の世界的動向と日本
山口 不二夫 第4部会責任者 (明治大学)
報告3 政府予算と私立大学補助金政策の変遷
山賀 徹 第4部会研究員 (東京私大教連書記次長)
主 催 東京高等教育研究所 ○ 参加費無料
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場 2-5-23 第1桂城ビル 3F 東京私大教連内
TEL 03-3208-8071 FAX 03-3208-0430 / Email:kakizaki@tfpu.or.jp (事務局直通)

*FAX:参加申込用紙(記名欄)は、「裏面」にあります。 ご利用ください。

憲法学者ら 閣議決定断念求める声明

NHK(6月30日)

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する憲法学者らが会見し、「限定的な容認だから日本の平和主義は維持されるというのは、国民を誤解させる説明だ」として、閣議決定を断念するよう求める声明を発表しました。

声明を発表したのは、憲法学者で慶應義塾大学名誉教授の小林節さんや内閣法制局長官を務めた大森政輔さんなど、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する専門家のグループです。
会見では、弁護士の伊藤真さんが「外国どうしの武力紛争に参加する集団的自衛権の行使は、その一部だとしても専守防衛を掲げてきた政府の憲法解釈の延長線上に位置づけられるものではなく、限定的な容認だから平和主義は維持されるというのは、国民を誤解させる説明だ」と訴え、閣議決定を断念するよう求める声明を発表しました。
また会見で、小林さんは「集団的自衛権の行使を容認するなら憲法9条の改正を発議し、日本人も戦場で戦うのかどうかを国民に問う必要がある。今、行われようとしているのは解釈に名を借りた憲法の破壊、無視であり、これを許せばあとで歴史の転換点だったと言われることになるだろう」と指摘しました。