全国
 カテゴリー 2014年11月

2014年11月28日

立憲デモクラシーの会、「安倍政権による解散・総選挙に関する見解」

立憲デモクラシーの会
 ∟●安倍政権による解散・総選挙に関する見解

2014年11月26日

安倍政権による解散・総選挙に関する見解

立憲デモクラシーの会

 安倍政権が本年7月1日、閣議決定によって憲法9条の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能にする方針を示した際、私たちは、それは憲法の枠内における政治という立憲主義の原則を根底から否定する行為であり、一内閣が独断で事実上の憲法改正を行うに等しく、国民主権と民主政治に対する根本的な挑戦でもあると抗議した。

 このたび衆議院を突如解散するにあたり、安倍首相は消費税増税の2017年への先送りと、いわゆるアベノミクスの継続に争点を絞る方針を示した。菅官房長官も、憲法改正は自由民主党の公約であり、限定容認は現行憲法の解釈の範囲内なので、集団的自衛権に関して国民の信を問う必要はないと発言した。衆参いずれの選挙公約にもなかった特定秘密保護法の制定についても「いちいち信を問うべきではない」とした。

 しかしながら、戦後日本が憲法を軸に追求してきた安全保障の大原則を転換するとすれば、国民的な議論の上での、手続きに則った条文改正が不可欠である。選挙に勝ちさえすれば、万能の為政者として、立憲主義や議会制民主主義の原則まで左右できるとするのは、「選挙独裁」にほかならない。選挙によって解釈改憲を「既成事実」にすり替え、選挙後の新ガイドライン策定や安全保障法制の整備につなげようとする企ては看過できない。

 そもそも内閣による衆議院の解散は、新たにきわめて重要な課題が生じた場合、あるいは国会と内閣の間で深刻な対立が生じ、民意を問うことによってしか膠着状態を打開できない際等に限られるべきものである。このたびの動きは、「政治とカネ」の問題が噴出し、アベノミクスが破たんしつつある中で、支持率低下前にリセットしたいという政権側の思惑による恣意的な解散であり、解散権の濫用とも言える。また最高裁に違憲状態と判断された一人別枠方式に基づく「一票の格差」を抜本的に解決しないまま、再び解散総選挙を行うことは、司法府のみならず国民をも愚弄するものである。

 人権を軽視し、権力の恣意的運用に道を開きかねない、立憲主義の原則にもとる憲法改正案を自由民主党が用意していることも懸念される。仮に安倍政権が政権基盤を維持したとしても、選挙で国民に対して憲法改正を正面から提起しない以上、選挙後に条文改正やさらなる解釈変更を進めることは、とうてい許されることではない。この選挙によって政権が、アベノミクス評価を前面に立て、他の重大な争点は隠したまま、白紙委任的な同意を調達しようとしているとすれば、それは有権者に対する背信行為である。

 私たちは、今回の選挙が、暴走する権力に対する異議申し立てと、立憲主義的な民主政治再生のための機会と位置付けられるべきであることをここに提起し、有権者の熟慮に期待するものである。


早大准教授、論文盗用で懲戒解雇…不服申し立て

読売新聞(2014年11月21日)

 早稲田大学は21日、海外の研究者の論文原稿を盗用したとして、商学部の准教授(50)を懲戒解雇処分にしたと発表した。

 准教授は、「手続きが公正でない」などとして、大学に不服を申し立てたという。早大によると、学内機関誌「早稲田商学」に2001年と03年に掲載された英語の論文2点で、准教授が米国の大学院在学中の1995~98年に入手した論文の大半を盗用していた。元の論文は当時未刊行だったがその後公開され、学内の複数の教員の指摘を受けて今年7月に調査を始めたところ、それぞれ7、8割が盗用だったという。


2014年11月27日

全大教、声明「高専機構・文科省不当労働行為事件に対する都労委の不当な命令に抗議します」

全大教
 ∟●声明「高専機構・文科省不当労働行為事件に対する都労委の不当な命令に抗議します」

高専機構・文科省不当労働行為事件に対する都労委の不当な命令に抗議します

2014年11月26日

 2014年11月21日、東京都労働委員会(房村精一会長)は、2012年7月12日に全大教が提起した不当労働行為救済の申立てに対し、申立てを棄却する不当な命令を下しました。
 独立行政法人国立高専機構は、「国家公務員の給与臨時特例」準拠を理由として教職員の平均8.2%も賃下げの給与臨時減額を組合(全大教高専協議会)に提案しておきながら、その経営上の必要性の説明や代償措置の協議を誠実に行うことなく、2012年6月22日、わずか三回目の団体交渉で交渉を打ち切り、2012年7月1日に賃下げを強行した上、その後もこの件に関する団体交渉を拒むという団交拒否の不当労働行為を働きました。
 文部科学省は、国立高専機構、国立大学法人に対し、執拗に賃下げ実施を要請することを通じて国立高専・国立大学の労使関係に介入し、労働組合の活動に支配介入する不当労働行為を働いたほか、この支配介入行為によって国立高専・国立大学労働者の使用者の立場に立っているにもかかわらず、全大教からの団交申し入れを拒否する不当労働行為も働きました。
 こうした事件に対し、今回の命令書に示された都労委の判断は、次のような重大な問題を含むものであり、到底認めることはできません。
(1) 都労委で高専機構が行った主張を鵜呑みにし、交渉を組合の要求通りに誠実に行ったかのように高専機構の行為を善意に解釈することで、高専機構を救済していること。高専機構の説明や資料提供は、内実を伴わない形ばかりのものであったことは準備書面で指摘したとおりである。
(2) 団体交渉における高専機構側の説明について「発言は抽象的であったとみえなくもない」としながら、組合がさらなる追及をしていないことを理由に不問に付すなど、使用者の誠実交渉を審査すべき労働委員会が、組合の交渉姿勢を問題にするという不当な論理を展開していること。
(3) 団体交渉が約1ヶ月にも満たない期間でかつわずか三回しか行われていないにもかかわらず、団体交渉が「行き詰まりの状態に達していた」「法人が、さらに交渉を1か月延長しても、その間に進展する可能性は少ないとみて、団体交渉を打ち切ったことはやむを得なかった」と何の根拠もなく判断していること。さらに、組合からの次回交渉の申し入れに対し、機構が7月実施を受け入れる前提でなければ交渉に応じないと不当な条件を付け、実質的に交渉を拒否したことについては、何ら判断していないこと。
(4) 文科省の支配介入及び団交拒否について、国(文科省)は「法人の給与等支給額の決定について、影響力を有していると認められる」としながら、十分な根拠もなく、組合員の労働条件決定について「現実的かつ具体的に支配決定することができる地位」にないとして、労組法上の使用者にあたらないと判断していること。

 都労委の決定に強く抗議するとともに、今後とも国立高専・国立大学における正常な団体交渉と労使自治の原則の確立を求めて運動していくことを表明します。


大学院生の奨学金借入、「500万円以上」が25%

朝日新聞(2014年11月26日)

 大学院生の4割以上が奨学金を借り、その4分の1近い利用者の借入金総額は500万円以上。院生による自治会などの連合体「全国大学院生協議会」が26日発表した調査で、そんな苦しい現状がわかった。利用者の75%が返済に不安を抱えているといい、奨学金が経済的支援ではなく、事実上の「借金」として重荷になっている。

 調査は今年6~8月、全国の国公私立大82校の千人を対象に実施した。

 奨学金の借入残高があるのは428人で、うち500万円以上が24・7%。1千万円以上も3%いた。最も多かった金額幅は「100万円以上200万円未満」で22・9%。返済に対する不安の有無では、「かなりある」が43・0%、「多少」が31・7%で、合わせて74・7%に上った。

 将来への懸念を複数回答で聞くと、「生活費・研究費の工面」が57・1%、「就職状況」が55・2%でいずれも半数を超えた。研究時間が十分確保できない理由(複数回答)については、「アルバイト」が25・5%で最も多かった。生活費や研究費をまかなうため、研究時間を削ってでもアルバイトせざるを得ない大学院生もいた。

 自由記述では、「1千万円の借金を背負って将来の見通しが立たない」「授業料納入が困難で休学措置をとった」など厳しい現状を訴える声が寄せられた。


2014年11月26日

大阪府大・市大、「統合は時期を定めず」

MBSニュース(11/25 )

 大阪市議会の反対で再来年度の統合が延期された大阪府立大学と市立大学のあり方について、25日府市統合本部の会議が開かれ、時期を定めず統合を目指すことになりました。

 府市統合本部の冒頭、大阪府の松井知事は議会の反対で改革が進まないとして、府議会、市議会に議員の参加を呼びかけたことを明らかにしました。

 「両議会に(参加を)お願いしたが、市議会からは参加しないと返事があった。」(松井大阪府知事)

 府立大、市立大の統合は、再来年度という当初予定からは先送りとなりましたが、25日の会議では時期を定めず統合を目指すことになりました。

 現状、できることから始めることとし、新しい大学のあり方が検討され、当面は単位を互いに取れるようにするなど、連携強化を進めることが決まりました。


脱・貧困のための進学が… 授業料高騰、重い奨学金返済

朝日新聞(2014年11月25日)

「貧困と東大」

 大手メーカーに勤める朝倉彰洋さん(25)は東大生だった2009年、そんなテーマで調査した。

 東大が行った「学生生活実態調査」では、東大生の親の年収は「950万円以上」が過半数を占めている一方、「どれくらいの貧困層が広がっているのか、知りたかった」。自分が入居していた学生寮は経済的な困難を抱えた学生が多く、アンケートを配ってみた。49人の回答者のうち、親の年収が300万円未満の学生が15人いた。

 「貧困層でも支援制度の存在をもっと広く知ってもらえれば、家庭の経済状況に関係なく東大に進学できるはずだ」

 朝倉さん自身、母子家庭で育った。母親には「勉強にかかるお金は出してあげる」と言われていたが、愛知県から東京への進学を伝えると一転、「行かせるお金はない」と反対された。国立大学の授業料(標準額)も、1975年度の3万6千円が、いまは約15倍の53万5800円かかる。

 そもそも中学時代は大学進学も考えていなかった。高校の先生の助言を受けながら、授業料の免除を手にした。給付型奨学金も得て大学院にも進んだ。「制度を教えてくれた中学や高校の先生、一緒に東大を目指した仲間、どれか一つでも欠けていたら進学できなかった。自分は運が良かった」

 愛知県春日井市のショッピングセンターの一角。週に1度、約2時間、大学生のボランティアが、中学生たちにほぼマンツーマンで教える。生徒は生活保護世帯や母子家庭の子ら約15人だ。

 その一人、中学3年の女子生徒(14)も母子家庭で育った。塾に通うのはあきらめていたが、教室に通いながら、商業高校への進学をめざす。卒業したら、すぐに就職するつもりだ。「大学に行くお金はないし、就職したら母が楽になるかな、と思って」

 この教室に中学3年の長男(14)を通わせる母親(38)は、「息子はなんとか大学まで行かせたい」と話す。夫(38)は病気がち。介護の資格を取ってパートで家計を支えてきた。経済的に豊かな人はどんどん上に行くのに、貧しい人は貧しいままだと感じる。「息子には繰り返してほしくない。踏ん張って上がっていってほしい」と願う。

 貧しくても能力を発揮できれば、未来を切り開けるのが、教育だった。だが、経済格差が拡大するなか、貧困を脱するための教育の平等が揺らいでいる。

■バイトを掛け持ち「もう大学やめたい」

 経済的に苦しいと、進学しても道は険しい。授業料の借金が重なり、家庭に負担がのしかかる。

 宮城県に住む保育士の母親(50)は、非正規雇用で稼ぐ月収約13万8千円で子ども2人を育てている。私立大学に通う長女(20)は、公立高校に進学時から貸与型奨学金の「借金」を背負ってきた。大学でも奨学金を二つ借りたので、卒業時の残高は、合計260万円に上る見込みだ。中学2年の長男(14)が高校に進学すれば、新たな借金が重なる。

 小学校教諭を目指す娘は、奨学金返済のためにレジ打ちなど二つのバイトを掛け持ちする。だが朝5時に起きて夜中まで学業とバイトに明け暮れる毎日。友人とのつきあいもできず、娘は夏になって「バイトがきついので、もう大学をやめたい」と言い出した。

 「バイトをやめてもいいよ、と本当は言ってあげたい。でも、今やめたら150万円の借金はどうするのと言うしかない」。無事卒業できても、借金を返せる職につけるか、確たる保証はない。「貧乏から脱出させるための進学でも、借金が増えるだけの『降りられない賭け』になっている」。母親の悩みは深い。

■奨学金受ける割合52・5%

 子どもの貧困率が過去最悪を記録する一方、国立大学の年間授業料は40年前の約15倍。奨学金という名の「借金」に頼らざるを得ない家庭は増え続けている。日本学生支援機構によると、昼間の4年制大学に通う学生のうち、奨学金を受けている割合は2012年度に52・5%に達した。10年前より20ポイント以上も増えた。奨学金を受けている人のうち、約9割が貸与型だ。

 名古屋市の杉山智哉さん(20)は、父が交通事故による後遺障害で思うように働けず、苦しい家計状況で育った。大学2年の途中で学費を払えなくなり、除籍に。高校、大学で受けた奨学金約350万円が借金となって重くのしかかる。

 子どもの貧困対策について考える集会などに参加し、「知識が無いと解決法も分からない。無知は貧困につながる」と思うようになった。貧しいと、知識を身につけるための教育さえ受けられない。「貧乏なら働けという考えが、貧困の連鎖を生んでいると思う」(杉原里美、山本奈朱香、河原田慎一)

■学費の壁、米・豪学生も

 「格差是正の装置」と見られてきた教育が、財政状況の悪化を背景に学費の高騰によって脅かされつつある。経済協力開発機構(OECD)によると、「教育は福祉」という理念があるフランスやオランダでも学費が上がっている。

 05年からの6年間で学費が28%上がった豪州では、シドニー大3年のカイル・ブレイクニーさん(21)が怒りをぶちまける。低所得層が多い先住民アボリジニーで、「貧困から脱するための高等教育を、貧困だから受けられないのでは絶望的」と憤る。「多文化主義国家と自称しながら、先住民や移民の子に『貧乏人は弁護士や医者になるな』と言っているようなものだ」

 保守連合のアボット政権は、大学への財政支出を減らし、最大300億豪ドル(約3兆円)の歳出削減案を打ち出している。法案が国会を通れば、修士号取得までにかかる授業料は現在の数万ドルから、2年後には世界でも最高級の10万豪ドル(約1千万円)以上になるとの試算もある。

 豪州では約40ある大学のほとんどが国立で、1989年までは無料だった。「今の時代に生まれたから10万ドルかかるなんて」。低所得層の生徒が多く通うシドニー郊外の高校生グレイス・ハーリーさん(17)はため息をつく。

 米国でもこれまでは、貧しい家庭で生まれ育っても大学を卒業すればいい職につき、中流階級に入れると言われてきた。しかし、米国の大学でつくるNPO「カレッジ・ボード」によると、4年制大学の1年間にかかる費用は、昨年の私立大学の平均で約3万1千ドル(約370万円)にのぼる。インフレ率を考慮しても、30年前の約2・5倍だ。公立、一般私立大の卒業生の約6割が借金を背負い、平均借入額は約2万7千ドル(約320万円)に達するという。

 NPO「学生借金危機」の創設者、ロバート・アップルボームさんは「借金のために、卒業しても家や車の購入ができず、起業できない人は多い。経済全体にも悪影響を与えている」と指摘する。(シドニー=郷富佐子、ニューヨーク=中井大助)

■進学費用は税金で 矢野真和・桜美林大学教授

 政府は貸与型の奨学金で機会の不平等の問題を解決しようとしたが、それは借金でしかない。負の遺産は親から子に引き継がれ、固定化している。大学に行けない人には、低所得だと返さなくていい所得連動型奨学金にして、私立大も国立大並みに授業料を引き下げ、進学費用は税金で負担するべきだ。親が支払うという意識を変える必要がある。高卒者と大卒者の将来得られる所得格差が広がる中、大卒者の生涯所得から得られる税収は、公的に投入した額を十分上回る。大学の授業料は、消費税1%分の額でしかない。大学は親の負担で18歳の子が行くところから、みんなで負担して、みんなが人生で一度は勉強するところになればいいのではないか。


大学入試改革、大切なのは入学後だ

東京新聞(2014年11月25日)

 大学入試改革について中央教育審議会がまとめた答申案は、知識の豊かさのみでなく、いわば人物の力量を重視する方向へかじを切るものだ。理念はわかるにしても、実現へのハードルは高い。
 漫然と高校に入り、惰性で大学受験を目指す。合格すれば、ほとんど難なく卒業でき、有名校であるほど就職に有利になる。高度成長に伴い、日本に広く根を下ろした人生行路の一典型だろう。
 だが、少子化やグローバル化が進み、先行きは見通せない。受け身で詰め込んだ知識量を一点刻みで争わせ、人生まで左右する大学入試では公正ではないし、そぐわない。答申案の問題意識はうなずけるものがある。
 そこで、入試の位置づけを抜本的に見直すという。子どもが高校で夢や目標を描き、積み重ねた努力を入試で評価し、大学や社会で花開くようにする、と。
 具体化はどうか。高校では、基本的な知識や技能が身についているかを確かめる「高校基礎学力テスト」を取り入れる。二、三年生向けだ。学力は担保したい。
 大学入試では、一発勝負のセンター試験を「大学入学希望者学力評価テスト」に切りかえる。教科を組み合わせて出題し、基礎知識を使いこなせるかを問う。
 加えて大学の個別試験では、小論文や集団討論を課したり、高校時代の活動実績を見たりする。意欲や仲間と協働する力をふくめ全体の力量を多角的に評価する。
 点数化できる能力のみでの一度限りの選抜では、子どもの可能性が見落とされかねない。人物重視の仕組みへの転換には異論を差しはさみにくいが、疑問も多い。
 新テストは年幾度か受けられるが、高校生活がテスト漬けにならないか。課外活動や行事にも響く。合否の決め方に納得するか。
 最大の問題は大学だ。とりわけ大規模大学は、受験生一人ひとりを丁寧に評価できるか。選抜基準をはじめ、制度設計は至難に違いない。財政負担も大きい。
 子どもの人口が減り、大学全入時代と呼ばれる。振るい落とすという入試の機能は働きにくい。重要になるのは、大学の出口の厳格化だ。学生の能力を引き出し、鍛え上げて社会に送り出すという役割が強く求められる。
 この先、学習指導要領が改定され、小中高校の教育が変わる。知識偏重でなく、自ら考え、仲間と共に動く力を培う授業になる。大学はその受け皿だ。可能性が花開く教育のあり方を吟味すべきだ。

2014年11月25日

首都大学東京労組、声明「誇りをもって働き続けることのできる大学をめざして」

首都大学東京労働組合
 ∟●『手から手へ』第2727号(2014年11月19日)

【声明】誇りをもって働き続けることのできる大学をめざして

2014年11月19日 公立大学法人首都大学東京労働組合中央執行委員会

 2005年4月1日、公立大学法人首都大学東京が発足し、組合は 地方公務員法上の職員団体から、労働組合法上の労働組合となり、「法人発足に当たり、新たな段階に入った運動と組合への結集を訴 える」と題した中央執行委員会声明を発表した。声明では、2003 年に始まった石原都政による大学破壊、教育と民主主義への攻撃に 対して、「私たちは直ちに、一年半にわたる大学破壊の傷跡の修復 と再建に立ち上がらねばなりません。」と表明し、以来 10 年にわ たって、たたかい続けた。
 その間、不合理な就業規則の改正を求めてきた。オープンで公正 な教員評価制度と、平等で将来設計が可能な給与制度の両方を確立 させ、優秀な教員の確保と円滑な世代交代が可能となる制度を要求 してきた。その結果、2015 年 4 月から、教授・准教授は無期雇用 となり、助教については 5 年+5 年の任期制は残されたものの、審 査を経て無期雇用となる制度を確立させた。

全員任期制の破綻
 組合が指摘したとおり、全員任期制によって教員公募の応募者は 激減し、大学教員の採用における他大学との競争力は大きく低下し た。内定者の就任辞退や適任者不在で採用人事をとりやめる事態も 生じた。企業からの応募者は皆無となった。やや遅きに失したとは 言え、2015 年 4 月採用より、教授・准教授についてはプロジェクト 採用などの一部の例外を除いて、無期雇用での採用という決断を下し た法人当局の判断を組合は歓迎する。全員任期制は完全に破綻した。
 組合のたたかいを勝利に導いた要因の一つは、給与差別を受けな がらも非任期を貫いた教員の存在があった。彼らは教育・研究をは じめとする教員としての職務は任期制への切り替えという外的強 制ではなく、自らを律することによって遂行すると決意し、それを 実践しきったのである。ある人は、任期制の押しつけに反対して、 誇り高くたたかい抜いた。またある人は、家族を守るため、雇い止 めの不安を抱える任期制を選択しなかった。いずれの非任期教員も 教育・研究、社会貢献、学内運営のすべてに力を尽くし、同僚の教 員とも協力し、十二分に大学 に貢献してきた。そのことは、業績評価においても、任期制教員と なんら変わることがなかった事実が証明している。こうして、彼ら は「全員任期制」という教員管理手法の誤りを、身をもって示した のである。

残された給与差別
 しかし、公立大学法人首都大学東京当局は、団体交渉を通じても、 新人事制度への切り替えにあたって、不当にもこの間の給与格差解 消を決断しなかった。完全に破綻した全員任期制の痕跡を残そうと いう人たちが、法人・大学内外に存在する証左である。
 ユネスコの高等教育教員の地位に関する勧告( 1997 年 11 月 11 日 第 25 回ユネスコ総会採択 )は、こう述べている。「高等教育教 員の雇用者は、効果的な教授、研究、学問及び地域社会における活 動に大いに役立ち並びに公平な及びいかなる差別もない雇用条件 を設定すべきである。」今回の法人の回答は、公立大学法人首都大 学東京が差別を容認する大学であることを内外に示したものである。
 首都大学東京労働組合は、「賃金差別解消」という組合要求を完全に実現できなかったことは遺憾であり、当局が差別を温存・容認 して恥じないことに懸念し、強い失望を表明する。

有期雇用職員の正規化
 法人固有職員制度についても、組合は大きな成果をあげてきた。
 国内の非正規雇用者は、1992 年から 2012 年の 20 年間で倍増し、 現在 2040 万人を超え、労働者の 38.2%となり、全労働者に占める 年収 300 万円以下の労働者は、40%を超えた。政府は、生涯派遣 を可能とするため労働者派遣法を改悪し、有期雇用労働者をさらに 増やそうとしている。
 こうした状況のなかで、2005 年には、すべて有期雇用であった 法人固有の職員は、組合の要求によって内部登用制度を創設、今年 度末で常勤契約職員制度を廃止させ、正規職員へと移行される。 2009 年 4 月から、内部登用制度によって、無期雇用となった法人固有職員は合計で 89 名となる。組合の要求によって、2008 年に 1 年前倒しで採用を開始した正規職員は、現在内部登用選考合格者を 含めて 177 名まで、増加した。

……以下,略……

2014年11月21日

群馬大教授を懲戒解雇、部下5人にパワハラ

時事通信(2014/11/20)

 群馬大(前橋市)は20日、部下の教職員に休日出勤の強要や女性蔑視の発言などパワハラをしたとして、医学系研究科の40代の男性教授を懲戒解雇した。教授は「反省しているが、指導の範囲と考えている部分もある」と話したという。
 大学によると、男性教授は2012年1月~13年8月、自分の研究室の教職員5人に、繰り返し「土日に出勤しなければ(自分が)月曜に仕事ができない」と強要。女性教職員に「結婚は三角で出産はバツだ」と発言した。5人のうち2人が退職したという。
 井手孝行副学長は「将来がある研究者の芽を摘む行為で許されない。パワハラ行為の防止を教職員に徹底する」と話している。

[同ニュース]
群馬大:パワハラで40代教授を解雇
パワハラで教授懲戒解雇
群馬大教授、パワハラで懲戒解雇
パワハラで教授懲戒解雇 群馬大、女性蔑視発言も
群馬大、パワハラで教授を懲戒解雇 退職や休日出勤強要
群馬大、パワハラで医学系研究科教授を懲戒解雇

学生に「ばか」日常的に暴言…教授を停職1か月

読売新聞(2014年11月20日)

 北九州市立大は19日、教授の立場を利用し、学生に対して暴言や授業外の拘束などの嫌がらせ(アカデミック・ハラスメント)をしたとして、地域創生学群の男性教授(50歳代)を停職1か月の懲戒処分にしたと発表した。

 発表によると、教授は2年ほど前から、地域の課題解決などに取り組む実習活動で、学生たちに日常的に「ばか」などと暴言を吐いた。週1回の実習以外の日も、準備のため、特定の日に他の講義を入れないよう指示したり、「出席しないと単位をやらない」と言ったりした。昼休みもほぼ毎日、特定の学生たちと昼食を取るなど拘束したという。

 複数の女子学生からの相談で発覚した。教授は「生半可な気持ちで実習に取り組んでほしくないと思った。学生や大学に迷惑をかけて申し訳ない」と話しているという。

 同大は「複数の教員が相互にチェックできる態勢を検討したい」としている。


2014年11月19日

名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、谷口教授を支援する会 第3弾「支援のつどい」を開催

谷口教授を支援する会
 ∟●谷口教授を支援する会ニュース、第26号(2014年11月18日)

第3弾「支援のつどい」を開催し、地裁勝訴を力に

 11 月 5 日(水)18:30 より、「支援のつどい」が開催されました。一昨年の結成大会より数えて三回目、今年も中京大学名古屋キャンパスを会場にしての開催です。東海私大教連の加盟組合のみならず、それ以外の公立大学、国立大学からの参加も含めて31名の支援者が集まりました。

 「つどい」は、支援する会世話人の中村浩也氏(東海私大教連)の司会進行のもと、代表世話人の猿田正機氏(中京大学)の挨拶から始まりました。すでに去る9月18日名古屋地方裁判所において、完全勝利の判決が下されていましたので、今回は、裁判報告が中心となりました。

 谷口氏からの裁判報告(写真)では、谷口氏に対して学園によって加えられた数々の不当な仕打ちや懲戒、そして解雇処分に至るまでの一年余の経過があらためて説明されました。谷口氏はこれらの学園の行為に解雇及び懲戒の無効と学園と理事長による損害賠償を求める裁判を起こしました(解雇前には 2回仮処分申立をしています)。一方学園は、谷口氏が残酷な仕打ちを受けていた時期に匿名で書き続けていたブログの内容が学園を誹 謗中傷しているとして名誉毀損の裁判を起こしました。この「名誉毀損」が解雇の理由であったため、両裁判は途中から併行審理となって今年4月10日に併合され、9月18日に、「名誉毀損」を否認した上で全面勝利の判決が下されたのです。谷口氏は以上の事件と裁判の経過を、簡明な表にまとめて報告しました。学園は 9月25日名古屋高裁に控訴しました。闘いはまだ長く続くと思われます。谷口氏は、「最後までがんばり抜くので支援の継続をお願いします」と言葉を結びました。

 続いて弁護団から判決の内容とその意義が解説されました。 石塚徹弁護士は、まず第一に判決の2つの異例な点を指摘しました。「7 つの処分をすべて違法で無効であり、組合潰しを目的とした不当労働行為と判断したこと」「谷口氏に対する不法行為に対する慰謝料の支払いを命じたこと」です。通常は職権濫用ぐらいで不当労働行為とまで認定しない、 労働事件において慰謝料の認定はきわめてまれということです。次に、配転・降格無効の理由に「大学教員にとって、講義・演習・研究は義務のみならず、雇用契約上の権利でもある」と認めたことを、今後の運動に役立てる重要なポイントだと強調しました。最後に、ブログによる名誉毀損を認めなかった判決文について、学園の控訴を見越した、これもまた異例で非常に丁寧な内容だと例を あげて解説しました。

 続く小島高志弁護士(東海私大教連の顧問弁護士)は、判決文から「越原学園が如何にひどいか を見抜いた裁判官の怒り」を感じる、と述べました。数年前まで職場のパワハラはそれほど問題に なっておらず、精神疾患・自殺においこまれていない段階で、業務の差し止めを訴えるのは難しかったが、谷口裁判はそれを破った。そして、今回の判決は教員の権利拡大に大いに役立てるべき、 と評価しました。最後に SLAP 訴訟(名誉毀損を口実にした言論封殺)の危険を避けるために、組合活動において使用者を批判するときには、言葉の選び方に気をつけること(しかし萎縮しないで立 ち向かうこと)を教訓としました。

 質疑応答をはさんで、名古屋大学職員組合中央執行委員の和田肇氏、中京大学教職員組合執行委員長の細川眞氏から支援のご挨拶をいただき、続いて、世話人の本多信弘氏(東海私大教連)から「支援する会」の活動報告と会計報告がされ、最後に「行動のよびかけ」が、世話人の竹田昌次氏(中京大学)により確認されました。

 裁判は地裁勝利判決をもって一段落しましたが、越原学園はすぐさま控訴し裁判を長引かせようとしています。谷口氏の闘いは教壇復帰までまだまだ長く続きます。一層の団結をもって支援を続 けていくことを決意して「支援のつどい」は閉会しました。

 終了後は、中京大学内のレストランにおいて懇親会が開かれ、世話人の淺川和也氏(東海学園大 学)が乾杯の音頭をとり、和やかな交流がすすめられるなか、大学や労働現場をとりまく深刻な現 状にも話題がおよびました。世話人の河野敏宏氏(愛知学院大学)の閉会の挨拶のなかの「越原学 園事件は他人事ではない、どの大学でも起こりうる」という言葉に深く感銘をうけました。

司法試験、7割合格目指す 法科大学院改革で工程表-文科省

時事通信(2014/11/18)

 学生離れなどで廃止が相次ぐ法科大学院について、下村博文文部科学相は18日の閣議後記者会見で、2018年度にも修了者の7割が司法試験に合格する規模に定員を縮小するなど、抜本改革の工程表を明らかにした。基本科目の単位増や到達度の確認試験導入など、法学部以外から入学した法学未修者向け教育の充実や、早期修了などの学びやすい環境づくりにも取り組むとしている。
 工程表によると、法科大学院の15年度の入学定員はピークから約2700人少ない3175人まで減る見込み。司法試験の合格率が修了者の半数弱と低いことが学生離れに拍車を掛けているとして、合格率に応じて補助金に差をつけるなどし、18年度に7~8割が合格できる規模を目指すとした。
 法学未修者の一部が授業についていけず、合格率低迷の一因になっているとされることから、基本科目の拡充や、進級の目安とする共通試験などを実施。司法試験の過去問題活用や若手合格者による指導など、教育内容の見直しも進める。
 また、経済的事情で法科大学院に通えない人のための予備試験が、受験資格を早期に得る「近道」に使われている実態などを踏まえ、成績優秀者は早期修了できる制度を導入する。奨学金返済の軽減や、地方学生のために遠隔授業を行うなど志願者増に向けた取り組みも加速させる。

2014年11月17日

東工大だけじゃない 京大、東大で逮捕者も 研究費不正の根深さ

産経(2014.11.15)

 研究費を詐取した容疑で元教授が逮捕されたことを受け、東京工業大の辰巳敬副学長は15日、記者会見し「大変残念で深くおわびする。管理体制を見直すなど再発防止に努める」と謝罪した。東工大は平成23年にも「預け金」などの研究費不正が指摘され、再建の途上だった。研究費不正は他大学でも相次いで起きており、不正が絶えないのが現状だ。

 「重大な改善事項がある」。文部科学省の審議会「国立大学法人評価委員会」は今月5日、東工大の法令順守に関し、5段階のうちの最低評価を下した。東工大では23年、学部長や副学長に研究費不正疑惑が生じ、新学長選びの停滞にまで発展。さらに、再発防止を図っていた時期に再び不正が浮上したためだ。

 23年の東工大の問題を受けて文科省が昨年4月にまとめた全国の研究機関への調査結果によると、架空取引で得た研究費を業者に管理させる「預け金」、架空請求費を個人や研究室で管理する「プール金」は20年度以降だけでも19機関の研究者48人、計約1億7200万円分が判明した。

 刑事事件も続き、24年には京都大大学院元教授が研究費流用疑惑に絡んで収賄容疑で逮捕され、25年には東京大教授が研究費を詐取した疑いで逮捕された。

 文科省は25年度から、不正発覚後に研究応募資格を停止する期間を延長するなど厳罰化も図っている。だが、国立大法人評価委によると、25年度も東工大など6大学に不適切な経理処理があり、問題の根は深い。


[同ニュース]
「私的に使った」東工大元教授が供述 研究費流用容疑
架空請求書で研究費約1,500万円詐取の疑い 東工大元教授ら逮捕
研究費プールして流用 東工大大学院の元教授逮捕
東工大元教授 研究費を車購入に流用

2014年11月14日

スラップ訴訟、「名誉毀損」不当提訴事件 東京高裁でも野中教授が全面勝訴!

マルクスBon appetit!.
 ∟●野中先生「恫喝訴訟」高裁も勝利判決
 ∟●東京高等裁判所第23民事部(裁判長・水野邦夫裁判官)判決文(2014年11月12日)

祝! 勝訴!

野中先生「恫喝訴訟」高裁も勝利判決

11月12日、午後1時10分から、東京高等裁判所717号法廷で開かれた、野中郁江・明治大教授への「恫喝訴訟」で、水野邦夫裁判長は「本訴・反訴ともに棄却」という判決を出しました。第一審の東京地裁判決を高裁として認めるものです。
本誌論文(「不公正ファイナンスと昭和ゴム事件」2011年6月号掲載)などの内容をとりあげ、当該のAPFファンドが名誉毀損で訴えた本訴では、完全勝利となりました。
一方、野中先生側が、スラップ訴訟を止めさせるという反訴は認められず、支援者からは「喜びは中の上かな」との声も出ました。
傍聴者にかけつけた50人近い支援者は、「学問研究と表現の自由を守った」ことに、確信を深めながら、最後の勝利までたたかいいぬく覚悟を固めました。

◆勝利判決報告集会で、交流
午後2時から、高裁近くの「日比谷図書文化館ホール」に移動して、勝利判決報告集会。
冒頭、野中弁護団の徳住弁護士から、高裁判決についての解説がありました。
「一審判決とほぼ同じ内容の勝利判決です。
判決は、『経済』の論文については、その前提となる事実を認め、その目的も公益性があり、論文は真実で、名誉毀損は免責されると述べています。相手側が、『労働組合支援のための論文』としたことに対しては、組合への助力という面があったとしても、ファンドのあり方や証券取引に関するもので論文の公益性は明らかだと、一審判決より踏み込んだ点は、評価できます。
しかし私たちの反訴について判決は、原告が研究論文と労働委員会への鑑定意見書を名誉毀損と訴え、5500万円もの巨額の賠償を求めた行為を、不当なものと認めない、アンフェアなものです。
したがって、ファンドの目論見を粉砕した点では勝利であり、また足かけ3年にわたって、苦しい裁判を強いられた野中先生を救えなかったことは、非常に残念です」。

梅田弁護士からは、「反訴」部分では、今回の名誉棄損裁判のような憲法23条の国民の裁判を起こす権利と、13条、23条の学問の自由、表現の自由の対立が争点となったわけだが、そのどちらがより重要か、「利益比較行為」がなされて、判断されるべきだと、地裁、高裁の判決の問題点を指摘しました。

つづいて、上条弁護士、片岡弁護士、「学問研究と表現の自由を守る会」会長で、大学の同僚でもある福田邦夫・明治大学が挨拶。
福田先生は、「野中さん、2年4ヵ月、負けないでよくがんばってくれました。まさにジャンヌ・ダルクだ。そして、働く人たちを守る論文を書いた野中さんを、今度は労働者、研究者の力で守った裁判だった」と奮闘をたたえました。

日本科学者会議東京支部、私大教連、全国私教連、『経済』編集部、昭和ゴム労組から、勝利判決の意義、野中先生へのねぎらい、今後のたたかいについての決意が語られました。

閉会のあいさつで、「守る会」事務局長の梶さんは、「本訴は完全勝利だった。ファンド側が上告するかもしれないが、高裁判決をひと区切りとして、スラップ訴訟を許さないたたかいを今後も続けていこう」と決意が示されました。

◆恫喝訴訟とたたかう、野中先生の姿をみた

野中郁江先生は、判決への心情を述べました。

「お忙しい中、毎回支援に来て下さった方々に心から感謝を述べたい。応援してくれる方たちのあたたかさを実感しています。
予測された判決だったが、私たちが控訴審で提起した問題については、ていねいなフォローのない<手抜き判決>との感想をもちました。
本訴に対して私たちは、<論文や鑑定書で名前も出していない重田衛氏が名誉毀損の原告になること自体がおかしい>と主張し、高裁判決もそれを認めました。にもかかわらず『反訴』部分で、判決は重田氏を含めて名誉毀損で提訴を認めており、これは矛盾しています」
こう判決の問題点をズバリ指摘し、負けないでたたかう野中先生の姿をみた思いがしました。

本件論文のような「ファンドによる会社のっとりの社会的な不当性を明らかにする」(野中さん)ための真面目な研究を、ファンド等がカネの力にまかせて賠償金をふっかけて提訴するような、「恫喝訴訟(スラップ訴訟)」は米国等では禁じられています。日本でも、第2、第3の「野中裁判」を許さないたたかいが求められています。
闘いは続きます。

経営者の高額賠償請求棄却 東京高裁

■しんぶん赤旗(2014年11月13日)

 大学教授が雑誌『経済』に発表した学術論文などに対して、経営者らが、「名誉棄損」だとして高額な賠償金を請求していた裁判で12日、東京高裁(水野邦夫裁判長)は経営者側の請求を棄却した二審判決を出しました。提訴自体が違法だとした大学教授側の反訴も棄却しました。
 この裁判は、明治大学の野中郁江教授が発表した学術論文などに対して、昭和ホールディングス(HD)と同HDを事実上支配する経営者らが、「名誉棄損」だとして5500万円もの高額な賠償金を請求しました。
 判決は一審同様、野中教授が発表した論文の重要な部分について真実だと認定しました。
 また、東京都労働委員会に提出した野中教授の鑑定意見書が経営者の社会的評価を低下させたと主張した点について、判決は、多数の者が閲読することが可能であったとは認められないとして、「判断するまでもなく不法行為は成立しない」としました。
 判決後の集会で、徳住賢治弁護士は「一審判決と理由、表現もほぼ同じ内容でした。全体的には勝利判決で、経営者側のもくろみを粉砕しましたが、反訴が認められなかったという残念な点もありました」と語りました。
 あいさつした野中教授は反訴を棄却したことについて「お金がある人は何でも名誉棄損で訴えてよいと、裁判所が事実上認める野放し判決ではないか」と話しました。

[関連情報]
■東京地裁判決(2014年5月19日)の記事はこちら
http://university.main.jp/blog8/archives/2014/05/post_453.html

東京私大教連、大会決議「すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議」

東京私大教連
 ∟●第38回定期大会決議(2014年11月8日)
  ∟●すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議

すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議

1.安倍政権は 2014 年6月 20 日、学校教育法と国立大学法人法の改正法案を、審議を尽くさないまま 可決成立させました。さらに、文科省が8月 29 日に発出した同法の施行通知は、法律および国会審 議をも逸脱し、学問の自由と大学の自治に対する不当な攻撃を加えています。
 憲法 23 条が保障する学問の自由とは、大学においては、東大ポポロ座事件最高裁判決(1963 年) が示すとおり、「教授その他の研究者がその専門研究の結果を教授する自由」、「大学の講義または演 習において教授する自由」を含意しています。このような自由が担保されるためには、各教員が大学 の意思決定に関して研究者、教育者の立場から主体的に参加する制度が必要であり、だからこそ、「大 学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている」のです。
 それに対し、施行通知は、大学の自治の保障は「教育研究に関する大学の自主的な決定を保障する もの」と説明します。もちろん、組織としての大学の自主的な決定が保障されていることは、大学の 自治が成り立つために必要ですが、上記最高裁判決も明らかにしているとおり、それだけでは大学の 自治が保障されたとは言えません。

2.私立大学における大学の自治は、国家権力等からの自治とともに、設置者(学校法人)からの自治 が保障されて初めて実現されるものです。個々の研究者が自己の学問的研究に誠実であるために学問 の自由の保障が必要とされるのですから、大学の学長や理事長・理事会の恣意的な判断が教員や学生 の自由な真理探究を阻害することがあってはなりません。
 ところが施行通知は、「私立大学においては、私立学校法第 36 条により、設置者である学校法人が その運営についての責任を負い、理事会が最終的な意思決定機関として位置づけられている」とし、 教学に対する理事会の権限を強調しています。しかし、私立学校法にそのような規定はありませんし、 今回の学校教育法改正とも一切関係がありません。
 一部の学校法人では、創立者一族や理事長による私物化と専断的な学園経営・大学運営が行われて います。こうした学校法人においては、教授会は教学事項に関しても審議権・決定権を奪われ、学長 は理事長が任命するか、もしくは理事長が兼任するなど、非民主的な管理運営がなされており、不祥 事の多くはこうした大学において発生しています。施行通知が、「学校法人自らが学長選考方法を再 点検し、学校法人の主体的な判断により見直していくこと」と述べるなど、改正法が要求しない私立 大学の組織・運営に言及していることは、大学の自治の理念を著しく矮小化しようとするものであり、 重大な問題です。

3.研究者が自己の学問的信念と責任に基づいて自由に議論し合う場が確保されることは、学術の健全 な発達にとって欠かすことできない条件です。今私たちが学問研究に励むことができるのは、過去の 学問的探究の成果を受け継ぎ、様々な困難を乗り越えて、真理探究のために忌憚のない議論を闘わせ、 切磋琢磨して発展させてきた先人たちの努力の賜です。学術の中心である大学に働く私たちは、単に 先人たちの成果を享受してそれに安住するだけでなく、学問をさらに発展させ、その営みを未来の研 究者、教育者、学生たちへと受け渡し、彼らが安心して創造的な学問研究と教育に専心できる条件を 整える責務を担っています。その責務の大きさを顧みるならば、政府・財界が「大学の自主的な判断」 というベールをまといつつ、様々な形で大学での研究教育に介入しようとしていることを断じて容認 できません。
 私たちは、今回の学校教育法と国立大学法人法の改正に改めて抗議するとともに、政府・文科省に対 し、すべての大学に真の「学問の自由」と「大学の自治」を保障するよう強く求めます。
以上、決議します。

2014 年 11 月 8 日
東京私大教連第 38 回定期大会

2014年11月12日

元朝日記者の雇い止め再考を 北星学園大の院生、学長に要望書

北海道新聞(2014/11/11)

 札幌市厚別区の北星学園大で、かつて朝日新聞記者として従軍慰安婦問題の報道に携わった非常勤講師をめぐり、大学側が来年度の契約を更新しない方向で検討していることについて、同大の大学院生4人が10日、田村信一学長に対し、その処遇に関して大学院生との意見交換の場を設けることなどを求める要望書を提出した。

 4人はこのほど「北星・学問の自由と大学の自治のために行動する大学院生有志の会」を結成した。

 要望書では「脅迫で誰かの雇用が奪われるという前例ができれば、私たち自身の研究も常に危険にさらされる状況となる」と指摘、大学院生との意見交換会や、契約更新しないとの方針について多方面との議論を踏まえて再考することを求めた。

 同大は理事会や公聴会で意見を聴いた上で、学長と理事長がこの非常勤講師との契約について月内にも最終判断するとしている。


2014年11月10日

京都大学職員組合賃金請求訴訟、第2回証人尋問傍聴記

京都大学職員組合
 ∟●第2回証人尋問傍聴記 ー賃金請求訴訟ー

第2回証人尋問傍聴記 ー賃金請求訴訟ー

 11月5日、京都地裁第101号法廷において未払い賃金請求訴訟の第二回目の証人尋問が行われた。前回が被告側証人への尋問であったのに対して、今回は、原告側の三人の証人として石田前書記長、高山原告団長、西牟田委員長が登場し、堂々と賃金引き下げの不当性を主張した。尋問は、石田前書記長、高山原告団長、西牟田委員長の順で、それぞれに、原告側弁護士による主尋問と被告側弁護士による反対尋問が行われ、途中に10分間の休憩を挟んで行われ、3時半におよぶものとなった。

 今回の証人尋問のポイントは、前回の被告側証人尋問で被告側が主張した論点が無効であることを、われわれ原告側が事実関係に基づいていかに説得的に明らかにできるのかという点にあったが、三人の証人と主尋問を行う弁護士との入念な打ち合わせによって次のように尋問は進められた。まず石田前書記長が団体交渉における法人側の対応が交渉と言えるような内容を持っておらず、法人による教職員への賃下げの周知方法も不十分であったことを明らかにし、続く高山原告団長はこの点に加えて賃金引き下げが教職員の生活はもちろん教育研究全般に深刻な悪影響を及ぼしたことを具体的に示した。そして最後に、西牟田委員長が、京都大学の財政分析に基づいて「運営交付金の減額(30億円余り)に対処するには、人件費の削減が不可欠であった」という法人側の主張を突き崩した。

 以上の尋問によって、法人側の主なる論点(事実上の国の強制、引き下げのための十分な手続き、人件費削減に財政的な必要性など)はほぼ完璧に反論されたわけであるが、これに対して、法人側弁護士は、些末とも言える細かな文言や記憶に関連した反対尋問を試みた。たとえば、賃金引き下げ対象となった教職員数に対して原告団へ参加している教職員数が少ないことなどを指摘して、教職員が賃金引き下げに対して「暗黙の同意」を行ったかの印象を作り出そうとしたが、しかし、高山原告団長の証言の前にこの被告側の試みはみごとに破綻したと言わざるを得ないであろう。

 今回の証人尋問で、賃下げという「不利益変更」を強行した法人側に求められていたのは、その合理的かつ十分な理由を説明することであった。しかし、以上からもわかるように、法人側はこの合理的な理由を何ら提示することはできなかった。むしろ、三人の証人の主張は、反対尋問に応えることを通して、大学の社会的責任とは政府の「要請」にひたすら応えることなのではなく、国の政策が誤っている場合には、それを説得的に批判することなのだという論点を明確にし、そのために、大学の自治、研究教育の自由が不可欠であることを裁判の場で示すものとなった。

 これからの裁判の日程は、来年1月22日午前10時からの最終弁論を経て、いよいよ結審へと向かうことになる。今回は70人あまりの傍聴人の見守る中で証人尋問が行われ、証人は大いに勇気づけられた。次回1月22日も京都地裁第101号法廷がいっぱいの傍聴人で埋め尽くされるよう、傍聴行動への参加をお願いしたい。


大学の自治に一石 京大私服警官取り押さえ印刷用画面を開く

京都新聞(2014年11月09日)

 京都大(京都市左京区)構内で京都府警の私服警官が学生とみられる男性に取り押さえられた4日の騒ぎは、国家権力から距離を置いた大学の自治の在り方に一石を投じた。過去にも警官による大学への立ち入りをきっかけにした事件が起きているが、司法は大学の自治を認めてきた。識者も警察がルールを尊重する必要性を指摘する。

 今回の騒ぎを受け、1952年の「東大ポポロ事件」があらためて注目を集めている。東京大で開かれた演劇発表会に入場した私服警官を取り押さえ、警察手帳を奪うなどしたとして学生が暴力行為処罰法違反の罪に問われた。

 最高裁は63年の判決で「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている」と言及、大学の自治について初の判断を下した。一方で演劇については「実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じる」と指摘し、大学の自治の範囲外に当たるとして、無罪とした一、二審判決を破棄した。

 51年の「愛知大学事件」では、大学の自治をより重んじる司法判断が示された。愛知大(名古屋市)に立ち入った制服警官を拘束し、殴ったとして、学生が公務執行妨害や暴力行為処罰法違反などの罪で起訴された。

 二審の名古屋高裁は70年、大学における情報収集活動を含む警察活動は大学当局の許諾が必要とする原則を示した上で、公務執行妨害罪は成立しないとの判決を言い渡した。最高裁も検察側の上告を棄却した。

 戦前の京大でも、大学の自治が問われた事件が起きている。25年、府警察部が大学側への通告や法的手続きを経ず吉田寮(左京区)に入り、左翼運動をしていた学生を連行した「京都学連事件」だ。

 「京都大学百年史」によると、事件直後の学生大会は「警察のとった処置に対し府当局と内務大臣に弁明を求む」などとする決議を採択。法学部教授会は「大学の使命たる研究と教育を妨げるものだ」との意見書を出した。当時の荒木寅三郎総長は内務相と文部相に捜査の不法性を訴えた。

 今回のケースで、京大は警官が大学構内に立ち入る場合は府警から事前に通告を受け、大学職員か学生が立ち会うと取り決めているとして、遺憾の意を表明した。一方、府警本部は「取り決めの存在の有無も含め調査している」とする。

 立命館大法学部の倉田玲教授(憲法)は「ポポロ事件の前、日本における大学の自治は教員人事を念頭に置いたものだった。63年の最高裁判決で、学問の自由を保障するための自律的な組織運営という広い概念となった」と説明。その上で「自治のある大学に権力が土足で踏み込まないようにするための取り決めがあったとすれば、警察側が一方的に破ったことに対して京大が異議を唱えるのは当然のことだ」と話す。


〝ガバナンス〟改革法改正受け内部規則等の見直し等要請

全私学新聞(2014年9月13日号二ュース)

〝ガバナンス〟改革法改正受け内部規則等の見直し等要請

チェックリストを作成、提示
12月中旬、進捗状況調査実施

 文部科学省は8月29日、全ての大学の学長および理事長等の設置者の代表に対して、学校教育法および国立大学法人法一部改正の施行通知を発出した。合わせて各大学の学長に対しては、内部規則等の総点検・見直しの実施を求める事務連絡も出した。これには具体的な確認事項や留意事項を示すチェックリストが添えられた。

 改正法は今年6月27日に公布、来年4月1日に施行予定。学長がリーダーシップを取るガバナンス体制の構築を主な目的として、副学長の職務権限の拡大、教授会の役割の明確化、国立大の学長等の選考の透明化等を趣旨としている。施行通知は、法改正の趣旨と概要を伝えるだけでなく、「改正の基本的な考え方」も示す。大学の社会的責任は学生や教職員だけでなく、地域社会や企業・団体、国民一般にまで及ぶとの考え方や、学長の権限と責任の一致を図ること等についての考え方が整理されている。

 私立大における学長選考等の人事は今回の法改正の対象ではないが、施行通知はこれも取り上げ、「取り扱いに変更はない」とした上で、「学校法人自らが学長選考方針を再点検し、学校法人の主体的な判断により見直していくこと」を改めて求めている。

 文科省はさらに「大学における内部規則・運用見直しチェックリスト」を作成、全ての大学に対して内部規則等の総点検・見直しを求めた。改正法施行までに実施することを求めており、12月中旬には進捗状況の調査が、施行後の来年4月末には実施結果の調査が行われる予定。

 チェックリストは「教授会の必置」「学長の最終的な決定権の担保」「重要事項に関する意思決定手続」等9つのチェックポイント(私大にも関係するものは5つ)を挙げ、それぞれについて具体的な確認事項と、確認に当たって留意すべき事項とを詳しく書いている。

 なお、9月2日には全ての大学を対象に、改正法と総点検についての説明会が同省内で開催された。今後も随時、個別相談に応じるほか、研修会等でも説明を行うとしている。


2014年11月08日

北海道私大教連、北星学園大学「非常勤講師」脅迫問題をめぐる一連の動きに対して

北海道私大教連

道私大教連発
2014年11月5日(水)

北星学園大学「非常勤講師」脅迫問題をめぐる一連の動きに対して

【 談 話 】

北海道私立大学教職員組合連合
(道私大教連) 執行委員会

 従軍慰安婦の本人証言をいち早く報じた元朝日新聞記者が非常勤講師 を務める北星学園大学(以下、同大学)と元記者本人に対する匿名勢力に よる卑劣な攻撃と人権侵害が社会問題になっています。私たちとしても重 大な関心をもって動向を注視し、11 月 1 日に開かれた定期大会では特別 決議を上げたところですが、それに前後して 10 月 31 日、同大学長が、 学生の安全、財政的・人的負担、入試への考慮等を理由に当該非常勤講師 の次年度採用を取り止める、と表明したことが報じられました。かかる新 たな事態に対して道内の私立大学教職員を組織する労働組合の立場から 懸念を深めており、現在の見解を以下の通り表します。

 この問題に関わっては、同様のケースで元朝日新聞記者が大学教員への 就職を取り消されたり、自主退職に追い込まれるケースが関西の2大学で生じていたこともわかり、日本における「大学の自治」と「学問の自由」 を揺るがす危機として受けとめられています。同大学がその自治と自由、 民主主義を貫くことができるかどうか、国の内外から注目が寄せられてい ます。同大学は 9 月 30 日付で学長名のメッセージを発し、その中では今 年度の当該非常勤講師の授業を最後まで行うこと、そして、来期以降につ いては「全ての非常勤講師の担当授業依頼と同様、本授業においても検討されている」と述べました。その姿勢は、「大学の自治」・「学問の自由」 を貫くものとして一定評価され、草の根で支援運動が生じるなどし、脅迫 電話事案では犯人が逮捕されました。また、当該非常勤講師の授業を扱う 教学組織の担当部局において、次年度も授業を依頼することが決定し、学 内機関としては通常慣行通りの承認を待つばかりとなっていました。しか し、わずか 1 ヶ月後に同じ学長が、入試等への考慮を理由に当該非常勤講 師の次年度採用を取り止める旨会見した、という報道に私たちは驚きを禁じえません。
 多様な思想や学問、言論が交錯する府においては、正々堂々としたそのぶつかり合いが大学としての質を高めていきます。しかし、それはあくま で平和的土台の上に成り立つものであり、匿名の暴力や個人への誹謗中傷 とは無縁です。脅迫にさらされていた同大学の「被害」および関係者の心 労は斟酌するべきですが、大学機関であればこそ学問の自由と相容れない 言論テロを排斥し、正当な大学自治を堅持する姿勢を貫かなければ最早そ の機能と社会的責任は果たしえない、ということも同大学側には問われて います。
 この問題では労働界のみならず言論界、法曹界、議会関係など各界各層 で同大学への支援決議や声明が上げられ、各紙の社説でも取り上げられる などしていますが、同学長は会見で「『北星頑張れ』という気持ちは分か るが、過大な要求だ」(11 月 1 日・朝日)と述べ、拙速に同講師の来年度 の雇い止めを評議会へ諮る、としています。苦しい胸中の吐露と理解する ものの、この発言を事実とすれば「暴力に屈するな、という気持ちはわか るが、過大な要求だ」と述べているに等しいものがあります。大学機関の 長の発言として、資質にかかわる重大な問題性を包含していると言わざる を得ません。
 「大学の自治」・「学問の自由」は社会における重要な価値として、人類 が築いてきたものです。わが国でも幅広く合意され、尊重されてきました。 暴力や言論封じのテロ的行為と相容れない価値です。いま、大学人それぞ れがその普遍性を貫き通すために、大学人としての矜恃をもって行動する ことが求められます。ゆえに私たちは、大学人として同大学当局の動向に 対しても多角的・批判的な検討を厭ってはならない、と考えます。「姿勢」 の毅然とした様が、この問題で社会的合意を見出すための大前提だと考え るからです。
 「大学の自治」・「学問の自由」が侵される流れを、何としても食い止め なければなりません。私たちは、同大学がその「平和宣言」の精神に即し た原則を堅持して目下の困難を乗り越えてより良い大学づくりへと邁進 できるよう、全力で支えなければなりません。そのことを再確認すると同 時に、その思いの共有を同大学へ強く求め、今後もあらゆる労を惜しまな い意向であることを表明するものです。

以 上

北星学園大脅迫、札幌市議会が非難決議

北海道新聞(11/07)

 札幌市議会は6日、北星学園大(札幌市厚別区)に、従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者の非常勤講師の解雇を要求する脅迫状などが届いた問題で、個人を攻撃する脅迫を非難する決議案を自民党・市民会議、民主党・市民連合などの賛成多数で可決した。

 決議は、北星大に「(講師を)すぐに辞めさせないと学生を痛めつけてやる」などとする脅迫文が送りつけられたことなどに触れ、「個人の人権を蹂躙(じゅうりん)する不当な行為は、断固として容認しない」と批判。無所属の金子快之(やすゆき)氏は「元記者は意図的に日本の名誉をけがした。大学に批判が集まるのは当然のことではないか」として、ただ一人反対した。


高校早期卒業、文科省が導入へ 「飛び入学」の不備是正

毎日新聞(2014年11月07日)

 中央教育審議会の分科会は7日、高校の途中段階で大学に入学する「飛び入学者」について、大学で一定の単位を取得すれば「高卒」と同等以上の資格を与える「高校早期卒業制度」を導入する案を了承した。現行では飛び入学者は「高校中退」扱いのため、大学を中退してしまうと公務員試験のような資格試験が受けられないなど、制度上の不備が指摘されている。改善することで飛び入学の促進を図るのが狙い。文部科学省は年度内の省令改正を目指す。

 同省によると、飛び入学は高校に2年以上在籍し、「科学オリンピック」に出場するなど特定の分野で優れた能力を持つ生徒が大学に入学できる制度。1997年度に導入されたものの、飛び入学者はこれまで7大学で計111人にとどまっている。現行制度では「高卒」扱いではないため、大学を中退した場合は公務員や食品衛生管理者などの資格試験が受けられず、進路が狭まるなどの問題点が指摘されていた。

 導入後は高校で50単位以上、かつ大学で16単位以上取得して文科相の認定を受ければ高卒と同等以上の資格を与える方針だ。同省は「国際的に活躍できる人材の育成には飛び入学制度の活用を図ることが重要」としている。


2014年11月07日

大阪大学非常勤職員、雇い止めで提訴

MBS(2014/11/06)

 大阪大学の非常勤職員の女性が、来年3月で契約切れとなるのは不当だとして、大学に対し来年4月以降も労働契約が続くことを確認する裁判を起こしました。

 訴えを起こしたのは、大阪大学の非常勤職員、石橋美香さん(34)です。

 訴状によりますと、石橋さんは11年前から3年毎に労働契約を更新し、図書館司書の仕事をしていましたが、2年前、「2015年3月までで更新はしない」とされました。

 しかし、石橋さんは「実質は期間の定めのない契約状態で、退職に合意していない」と、来年4月以降も契約が続く地位にあることの確認を求める裁判を起こしました。

 「ひとりじゃなくてみんな同じように思っているので、なんとしても(雇い止めを)撤回させたいと思っています」(大阪大学非常勤職員:石橋美香さん)

 大阪大学は「訴状を見ていないのでコメントできない」としています。


岡山大が「不正論文」疑いで調査 柏倉衆院議員が執筆

共同通信(2014/11/06)

 みんなの党所属の衆院議員の柏倉祐司元岡山大医学部特任准教授(45)が2008年に筆頭著者として発表した論文に、改ざんの疑いがあるとの告発があり、大学が外部の有識者を含む委員会で調査を実施していることが6日、大学関係者への取材で分かった。

 柏倉氏は事務所を通じて「指摘は承知しているが、事実無根だ。大学が調査中で、結果を待ちたい」とコメントした。

 告発したのは岡山大薬学部の元学部長森山芳則教授と、同学部の榎本秀一教授。柏倉氏のほか、医歯薬学総合研究科の男性教授らの論文計約10本に、画像やデータが不正に改ざんされた可能性があると指摘する告発書を大学に提出した。


医学論文不正疑惑の衆院議員「肩書きが利用された」と真っ向否定 背景に激しい派閥対立か

産経(2014/11/06)

STAP細胞の研究不正疑惑が明らかになった今春以降、各地の大学で研究不正に厳しい目を注ぐようになり、不正発覚や処分が相次いでいる。ただ、今回の衆院議員の論文をめぐる告発の背景には、大学内の派閥対立を指摘する声も上がる。議員は取材に対し論文不正を真っ向から否定し、今回の告発を「大学内の権力闘争で、(攻撃材料として)国会議員としての私の肩書きが利用された」と批判している。

 前薬学部長と前副学部長は今回、議員の論文だけでなく、大学病院長や副学長らが関わった論文を中心に告発した。

 議員は、今回の告発は学内の権力闘争の一環にすぎず、「新たなハラスメント(嫌がらせ)のやり口になっている。大学教授が告発を連発するのは倫理観が問われかねない」と話した。

 これに対し、前薬学部長は「『権力闘争』との批判は事の本質と深刻さが分かっていない」と反論。今年4月には、告発を取り下げるよう大学側から不当な圧力を受けたとして、副学長に損害賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こした。大学側は9月、教員らを蔑視する表現が多数含まれるメールを所属教員全員に送るなどのハラスメント行為があったとして、前薬学部長らを懲戒処分にしたが、「報復的だ」との批判の声も上がった。

 この状況に、ある大学関係者は「前回(平成25年)、前々回(22年)の学長選で病院長や副学長らは現学長を支持し、別の候補を推した前薬学部長らと対立した。背景には感情的な確執があるのではないか」との見方を示す。

 議員の論文に不正があったかどうかの真相は、現在も本調査の結果が出ておらず定かではないが、すでに“内紛”は泥沼化。前薬学部長らの懲戒処分後、指導を受けられない状況が続く学生らは「研究に専念できない」と憤りを隠せない。

 大学院で博士論文の審査を控える男子学生(27)は「大学からは『適正な教育、研究環境を確保することを約束する』とのメールが1通届いただけ。就職の内定先に状況を説明できない」と困惑している。


研究費不正が影響、東工大また最低評価 国立大評価委

朝日新聞(2014年11月5日)

 文部科学省の国立大学法人評価委員会は5日、2013年度の評価結果を発表した。研究費不正が繰り返されたとして、東京工業大に対し、5段階で最も悪い「重大な改善事項がある」とした。最低評価を受けたのは04年度の評価開始以降、東工大のみで、11年度に続き2度目となる。

 評価は「業務運営」「財務内容」「法令順守」「自己点検・情報公開」の4項目で行われ、毎年公表されている。

 東工大は今年1月、昨年3月までの5年間に名誉教授が研究費1900万円を不正使用していたと発表した。評価委は今回、「法令順守」を最低としたうえで、「研究者倫理に関する徹底的な教育などが強く求められる」と指摘した。

 東工大は11年、次期学長に内定した副学長らに「預け金」などの不正経理が発覚し、長期にわたり新学長を選出できなかったとして「業務運営」で最低評価を受けていた。


2014年11月06日

京都大学未払い賃金請求訴訟、第1回証人尋問傍聴記

京都大学職員組合
 ∟●第1回証人尋問傍聴記1 ー賃金請求訴訟ー(2014/10/31)

第1回証人尋問傍聴記1 ー賃金請求訴訟ー

 10月29日、京都地裁第101号法廷において未払い賃金請求訴訟の証人尋問が行われた。これまでの口頭弁論における原告被告双方の主張が証人の証言によっていかに裏付けられるかが争点となる。裁判もいよいよ山場を迎えたわけである。29日の尋問は被告側の二人の証人に対して、まず被告側の弁護士が主尋問を行い、次に原告側の弁護士が反対尋問を行う、という順で進められた(4時間近く)。主尋問は後の反対尋問をいわば予測する形で個々の論点を確認する仕方で進められ、反対尋問はその矛盾点を突くという攻防となった。

 わたしたち原告側から言えば、今回の証人尋問の目的は次の点にあった。反対尋問によって被告側の主張を切り崩すことよって裁判を優位に進めることと、被告側の論点を顕わにすることによって、一週間後11月5日の二回目の証人尋問(原告側の三人、石田前書記長、高山原告団長、西牟田委員長が登場)に備えることである。

 第一回目の証人尋問で明らかになったのは、被告側の論点は結局次の点に尽きているという点である。

1.給与引き下げという国の要請は事実上の強制であった。文言による強制ではないが、京都大学当局は強制と受け取った。この要請=強制に従わない場合、大学はその社会的な責任を果たしていないと言うことで、マスコミや世間(?)からの批判に晒されることになることを恐れた。

2.給与引き下げを実施するために、手続きに則った説明が行われた。つまり、部局長会議、教育研究評議会、経営協議会、役員会の一連の会議で審議し、教職員には一斉メール、グループウェア、ホームページによって周知し、組合とも団交などで説明した。

3.国の要請=強制に対応して、他大学と比べて減額率を圧縮することを、京都大学は自主的に行った。

4.運営交付金の減額(30億円余り)に対処するには、人件費の削減が不可欠であった。交付金のうちの物件費は人件費に回すことができず、外部資金の間接経費や寄付金からも人件費は支出できない。交付金における人件費の減額=給与削減しかなかった。

 以上の論点はこれまで被告側が述べてきたことの繰り返しであり、この論点をつぶす作業が次回の証人尋問のテーマとなる。被告側の立論から確認すべきは、次の点である。まず、給与削減はそもそも前提であった(給与削減ありき)。そしてこの前提は国の要請に応えることこそが大学に使命であるという公務員時代の発想へのとらわれからの帰結である。この前時代的意識こそが人件費削減を回避することの柔軟な検討を放棄させ、教職員と組合への対応の不誠実さの元凶となった。国の政策が誤っているときに、それを批判し質すことが大学の真の社会的責任であることを、もはや公務員ではない大学教職員は自覚しなければならない。ここに根本的な争点がある。

 第一回の証人尋問が終わり、山の4合目までは進むことはできた。後は、再度法廷を傍聴人で埋め尽くすことによって、第二回目の証人尋問に勝利するという山の頂上を目指すことのみである。11月5日の証人尋問への傍聴行動への参加を求めたい。


私服警官、京大でつかまる 大学「通告なく立ち入り遺憾」印刷用画面を開く

京都新聞(2014年11月04日)

 4日午後0時20分ごろ、京都市左京区吉田二本松町の京都大吉田南構内で、京都府警の男性警官1人が学生とみられる男性に取り押さえられる騒ぎがあった。大学関係者も加わり話し合った結果、警官は約3時間後に大学を退去した。

 府警の説明では、警官は極左暴力集団などの犯罪捜査に当たる警備2課の巡査部長で別の捜査員とともに私服で勤務中だった。構内では、2日に東京都内でデモ行進していた京大生が警視庁に公務執行妨害の疑いで逮捕されたとして、抗議活動が行われていた、という。

 京大の学生担当理事の杉万俊夫副学長によると、学生からの連絡で駆け付けると、警官は吉田南構内の講義室におり、20~30人の学生がいたという。杉万副学長が警官から事情を聴いたが、詳しいやりとりは「明かせない」としている。

 京大は、警官が大学構内に立ち入る場合は府警から事前に通告を受け、大学職員か学生が立ち会う取り決めにしているという。杉万副学長は「事前通告なしに立ち入ることは誠に遺憾。事実関係を調査し、府警に申し入れをする可能性もある」としている。

 府警は「捜査の内容や構内に立ち入った経緯は明らかにできない」とした上で、「捜査の都合上、大学への通告なしに構内に立ち入ることはある。捜査員から事情を聴いている」としている。警官が構内にいる間、京大付近に一時、数十人の機動隊員を乗せた車両が待機した。


「カラ宿泊」など出張費290万「不正受給」…奈良先端大、教授を停職2カ月

産経(11月05日)

 奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)は5日、実際には泊まっていないのに宿泊費を申請するなど出張費の不適切な受給が92件あったとして、物質創成科学研究科の教授(64)を停職2カ月の懲戒処分にし、約293万円を大学に返還させると発表した。処分は10月21日付。

 92件のうち、63件の約208万円分は京都大など三つの研究機関からの受託研究に関する旅費で、先端大を通じて研究機関に返還する。


2014年11月05日

北星学園大脅迫、全国の弁護士200人以上が刑事告発へ

毎日新聞(2014年11月04日)

 ◇7日にも容疑者不詳で札幌地検に威力業務妨害容疑で

 従軍慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者、植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)に脅迫状が届いた事件で、全国の弁護士が7日にも、容疑者不詳で札幌地検に威力業務妨害容疑で刑事告発する。弁護士200人以上が告発人に名を連ねる見込みだ。

 告発するのは札幌市や東京都、大阪市の弁護士5人が発足させた「北星学園大学への脅迫行為を告発する全国弁護士有志」で、「言論封じのテロというべき卑劣な行為。言論と学問の自由が危険にさらされている」と訴えている。

 北海道警や北星学園大によると、脅迫状は5月29日と7月28日に届いた。「非常勤講師を辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける」などと書かれ、虫ピン数十本が同封されていた。道警は既に威力業務妨害容疑で捜査している。

 同大の田村信一学長は植村氏を次年度以降は雇用しない考えを示している。雇用打ち切りの動きに危機感をもった同大の教授ら約20人は4日、学内で集会を開き、「結論を出すのは時期尚早。学内の意見を広く聞くべきだ」と訴えた。植村氏の雇用継続を議論する5日の大学評議員会に、公聴会の開催を求める要望書を手渡す方針。


2014年11月04日

北海道教育大学、学長の選考 自治揺るがす投票廃止

北海道新聞社説(11/03)

学長の選考 自治揺るがす投票廃止

 「大学の自治」が空洞化しかねない。

 学長を決めるに当たって、教職員投票を廃止する国立大学が出てきた。道内でも北海道教育大が初めて投票をやめる。これで全国86校中5校になる。

 経済界の重鎮や学内外の有識者などで構成される学長選考会議が選考を一手に握る形になる。

 法律上、問題はない。しかし、ほとんどの教職員がタッチできない密室でリーダーが決まれば、学内に閉塞(へいそく)感が募らないだろうか。

 経営手腕や対外交渉力ばかりが優先されれば、すぐには成果が出せそうにない基礎研究や教員の地位保全が脇に追いやられかねない。道教大には再考を求めたい。

 教職員による投票は2004年の国立大学法人化前はほとんどの大学で行われ、最多得票の候補者が学長に選ばれてきた。

 法人化後は、学長を最終的に決めて文部科学相に推挙するのは学長選考会議と明確化され、教職員による投票は必ずしも行わなくてもよくなった。

 だからといって、一気呵成(かせい)に廃止してよいものか。大学は自治が保障されることによって、学問と教育の自由が守られてきた。

 法人化から10年を経てなお、ほとんどの大学が学内投票を行い、その結果を尊重しているのは、教職員が自ら意思を示す投票行為が自治を下支えしているからだ。

 今年、大学当局が投票廃止に動いた京大で、教職員が大学の自治を掲げて反発し、廃止を阻止したことは記憶に新しい。

 逆に、07年の山形大学長選考では、投票2位の文科事務次官経験者が非公開の選考会議で選ばれ、就任後に選考会議で投票廃止を決めて学内の批判を浴びた。

 国立大学に国際競争力や産学協同の開発力がますます求められるようになり、学長に経営手腕や外に開かれた視野が必要とされるようになったのは確かだ。

 しかし、大学は利潤や業績を優先する企業とは異なる基本理念で運営されなくてはならない。

 そうでなくては、成果主義や効率一辺倒になって、基礎科学や実現に長い時間がかかる研究、社会のあり方を問う文系の学問がますます切り捨てられかねない。

 学問を守り発展させるためにも、大学の学長には幅広い見識と教員や研究を大事にする内面を備えた人物が就くべきだ。

 そうした学長を決める場が「密室」の選考会議だけでいいわけがない。


聖トマス大学、来春廃止へ 学長が同窓会に説明

神戸新聞(2014/11/3)

  在学生ゼロの状態が続いている聖トマス大学(尼崎市)は3日、来年3月で大学を廃止し、運営する学校法人「英知学院」を解散する方針を同窓会に示した。跡地については、尼崎市と協議していることも明らかにした。

 同大学は1963年に英知大学として開学し、2007年5月に改称。少子化などで定員割れが続き、10年度には新入生の募集を停止し、新学部の設立も今春断念した。卒業生は約1万500人。

 この日開かれた同窓会主催の公開フォーラムで、スティーブン・リン学長兼同学校法人理事長は「新学部設置や継続の資金が確保できず、存続が難しいとの結論になった」と発言。大学院博士課程の研究生1人が来年3月で在籍を終了するのに伴い、大学も廃止するとした。

 土地や校舎については、尼崎市に受け入れを打診。市も交渉の担当部署を設置し、同大学と協議を進めているという。

 同大学は赤字解消などの財源として、これまでに敷地の一部約1万6千平方メートルを売却。同窓生からは「資金不足を廃止の理由にするのは納得できない」などの声が上がった。

 藤本滝三同窓会長は「教職員や地域住民らと連携し、地域の学びやとして廃止後の活用も探りたい」と話している。

学生募集停止中の聖トマス大、来春廃止へ 理事長が表明

朝日新聞(2014年11月3日)

 学生の募集停止が続く聖トマス大(兵庫県尼崎市)が3日、来年3月末で大学を廃止する方針を明らかにした。大学を運営する学校法人英知学院のスティーブン・リン理事長が、同窓会主催の集会で表明した。

 1963年、カトリック系4年制大学として開学。2007年、英知大学から改称した。学生の定員割れが続き、10年度に募集を停止。各国で私大経営を手がけるローリエイトグループ傘下に入ったが、新経営陣のもとで文部科学省に提出した学部新設の申請書類に虚偽記載が見つかるなどしていた。

聖トマス大教授ら、解雇無効など求め提訴 地裁尼崎支部

神戸新聞(2014/9/16)

 在学生がゼロの状態が続いている聖トマス大学(兵庫県尼崎市)の教授と准教授の4人が、大学側から一方的に解雇を命じられたとして、16日までに大学を運営する学校法人「英知学院」に対し、解雇無効などを求める訴えを神戸地裁尼崎支部に起こした。

 訴状などによると、大学側は4人に4月末での合意退職を提案。応じなかったため、5~10月末までの休業と10月末での解雇を命じたという。

 同大学は1963年に英知大学として開学したが、定員割れが続き、2010年度から新入生の募集を停止。新学部設立を目指したものの、今春断念していた。

 16日に尼崎市役所で会見を開いた4人は「これまでの経緯や大学の今後について説明もなく、一方的な解雇」と訴え、解雇無効と、休業期間中に支払われるべき給与との差額など計約2180万円の支払いを求めている。

 同大学は「内容は訴訟の場で明らかにしていく」としている。

2014年11月01日

がんばらない北星学園大学

北海道新聞(2014/10/31)

元朝日記者の講師契約打ち切りか 脅迫事件の北星学園大

 札幌市厚別区の北星学園大に、元朝日新聞記者の非常勤講師の解雇を要求する脅迫状などが届いている問題で、教職員らで30日に結成した「大学の自治と学問の自由を考える北星有志の会」は、同大が来春、この講師との契約を更新しない方向で検討に入ったことを明らかにした。

 有志の会によると、田村信一学長が29日、学内の会議で初めて表明した。講師を雇用し続けるには、人的、財政的な負担が大きすぎ、来年度の入試も不安、との理由を挙げたという。学長は11月5日に予定している評議会に諮問し、理事会の意見を聞いた上で、学長として最終的に判断するとの考えを示したという。

 この講師は2012年からこれまで、1年ごとの契約を2回更新している。同大は北海道新聞の取材に、「内部の会議での話なので、内容は答えられない。(講師の契約については)学内手続きにのっとって進める」と話した。

 大学関係者によると、北星大は脅しの電話、メールに対応する職員や警備員を雇ったため、1500万円前後かかった。爆破予告により、授業や入試が妨害されることも心配している。

 同大は9月30日、田村学長名で「本学に対するあらゆる攻撃は大学の自治を侵害する卑劣な行為であり、毅然(きぜん)として対処する」との見解を発表していた。

 有志の会の初会合には教職員20人が参加。事態の急展開を受け11月4日、情報共有の学内集会を開く。

 攻撃されている非常勤講師は1991年、朝日新聞に韓国の元慰安婦の証言を韓国紙に先駆けて報じた。

 国内の著名人らが呼び掛け人になり、脅しに屈しないないよう運動している「負けるな北星!の会」は、「結果として、こうした(不当な)要求を受け入れたら、ほかにも波及する。結論を急がず、論議を深めてほしい」とコメントした。

北星学園大、脅迫文届いた元朝日記者「雇用せず」

スポーツ報知(2014年10月31日)

 従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に、元記者を辞めさせろとの脅迫文が届いた問題で、田村信一学長は31日、記者会見を開き、元記者との来年度の契約を更新しない方向で検討していると明らかにした。

 田村学長は、学生の不安が大きい上に、警備など多大な危機管理費用の問題もあり、「臨戦態勢を続けることは体力的に厳しい」と説明。29日に開かれた各学部長らで構成される危機管理委員会で「来年度の契約を更新しない」と提案したという。今後、大学評議会や理事会で意見を聴き、理事長と学長が最終的に判断する。

 大学への脅迫や抗議はことし3月から始まり、5月に本格化。多数の電話やメールが相次ぎ、学校説明会や大学祭では警察や警備会社を頼った。大学側は5月と9月に「大学の安全を守れなくなった場合は辞めてもらう」と元記者に伝えていた。

 来年の受験を考えている高校生の保護者からは心配の声が寄せられているといい、田村学長は「残念だが、いずれかの時点でこの問題を収束させないといけない」と苦渋の表情で話した。

 脅迫を受けた大学を励まそうと結成された市民団体「負けるな北星!の会」の関係者は「犯人の要求をのむことに等しい。北星学園大だけではなく、みんなが言うことを聞くと思わせてしまう」と大学側の動きに反発している。

 北星学園大は脅迫文が届いたことを受けて、9月30日に「大学の自治を侵害する卑劣な行為には、毅然(きぜん)として対処する」との文書を出していた。

 北星学園大には10月31日、不審な白い粉が入った封筒が郵便で届き、厚別署が威力業務妨害容疑で調べている。

脅迫受けた大学 元記者を雇用しない考え伝える

NHK(10月31日)

いわゆる従軍慰安婦の問題の取材に関わった朝日新聞の元記者が非常勤講師をしている大学が脅迫を受けた問題で、大学の学長が警備などを念頭に人手や財政面の負担が大きいことなどを理由に、来年度は元記者を雇用しない考えを学内の会議で伝えていたことが、関係者への取材で分かりました。
取材に対し、学長は、今後理事会との協議などさまざまな手続きを経たうえで雇用を継続するかどうか対応を決めるとしています。

いわゆる従軍慰安婦の問題の取材に関わった朝日新聞の元記者が非常勤講師をしている札幌市の北星学園大学を巡っては、「講師を辞めさせないと学生に危害を加える」などと書かれた脅迫文が届いたほか、「爆弾を仕掛ける」という内容の脅迫電話をかけた疑いで、今月、男が逮捕されました。
関係者によりますと、北星学園大学の田村信一学長は、29日の学内の会議で来年度は元記者を雇用しない考えを伝え、理由として、警備などを念頭に問題の対応に当たる人手や財政面の負担が大きいことや、来年の入学試験が無事に行えるかどうかの不安を挙げたということです。
田村学長はNHKの取材に対し、「今は答えられない」としたうえで、「まだ決定したわけではなく、これからもさまざまな手続きがある」と述べ、今後理事会との協議などを経たうえで雇用を継続するかどうか対応を決めるとしています。
この問題を巡っては、今月、全国の大学教授や弁護士らが「脅迫に屈すれば学問の自由が損なわれる」などとして元記者の雇用を守るよう大学側に申し入れをするなどの動きも出ています。


日本科学者会議常任幹事会、「決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない」

日本科学者会議
∟●「決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない」

決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない

 朝日新聞の従軍慰安婦報道問題に関連して、元朝日新聞記者が非常勤講師として講義を 行っている北星学園大学(札幌市)に対して、従軍慰安婦に関する記事が「捏造」である とする勢力から「彼を辞めさせろ」とメールや電話が集中している。そのなかには、「止め させなければ大学に危害を加える」という暴力的な脅迫も含まれている。記事とはまった く関係のない記者の家族の写真までがインターネット上でばら撒かれ、「自殺に追い込む」 との脅迫がなされている。卑劣で許しがたい人権侵害であり、違法行為である。
 もともと、この元記者は今年 4 月から神戸松蔭女子学院大学(神戸市)に赴任する予定 であった。しかし今年 1 月にある週刊誌が「"慰安婦捏造"朝日新聞記者がお嬢様女子大 教授に」という記事を載せ、それに反感を抱いた勢力が、大学に抗議の電話やメールを送 り、結果として元記者と大学の雇用契約は解消されてしまった。今回は、これらの勢力の 攻撃の矛先が北星学園大学に転じたのである。
 同様の攻撃、脅迫は、さらに、従軍慰安婦の強制連行に関する記事を書いた別の元朝日 新聞記者が教える帝塚山学院大学(大阪狭山市)にも加えられた。9 月に入ってから「元 朝日新聞記者の教授を辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス 爆弾を爆発させる」という趣旨の脅迫文書が送られ、同元記者は退職を余儀なくされた。
 これらの卑劣な行為はごく一部の勢力が行っていると考えられるが、彼らの行動を助長 している社会的背景には、右派メディアやいわゆるインターネット右翼らによる自らの価 値観に合わないものを徹底的に排除しようという危険な動きがある。最近の「朝日新聞バ ッシング」はその典型で、「売国奴」「国賊」などのレッテルをはった脅迫や恫喝は、アジア太平洋戦争前夜を彷彿とさせる。このような暴力的な脅迫による言論弾圧は断じて許されてはなない。
 北星学園大学は、今回の卑劣な「言論テロ」に対して、「学問の自由・思想信条の自由は教育機関において最も守られるべきものであり、侵害されることがあってはならない」、「大 学の自治を侵害する卑劣な行為」に「毅然として対処する」との基本的立場を表明してい る。学問の自由・思想信条の自由と大学の自治は表裏一体のものである。科学の正しい発 展を求め、自由と民主主義を否定するものと闘ってきた日本科学者会議は、北星学園大学 の以上の基本的立場を全面的に支持し、大学への脅迫を断固として許さないために広範な 大学人・市民と連帯することを宣言する。

2014年10月26日
日本科学者会議50期第3回常任幹事会