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 カテゴリー 2015年05月

2015年05月28日

千歳科学技術大学解雇事件、札幌地裁 5月28日不当判決 原告の請求を全て棄却! 

北海道私大教連
 ∟●【速報】千歳科技大事件の札幌地裁不当判決

【速報】千歳科技大事件の札幌地裁不当判決

【速報】

 5月28日午後、札幌地裁(民事第2部・宮崎拓也裁判長)は、千歳科技大の不当解雇事件で原告教員の請求を全て棄却する判決を下しました。

 被告の期待と求めに応じて大学に貢献しようと尽力しようとしたがゆえ、その熱心さあまり学長らと軋轢が生じてしまい、後追いで“試用期間”を口実にされて解雇された事件です。
「正直者がバカを見る」事件を許してはならない、と原告・支援者は2年に及ぶたたかいに臨んできましたが、この裁判官にはそれが届きませんでした。

 詳細は未検討のまま速報します。
 判決文等は追って、各加盟組合員の皆様へ配信します。

 以上

2015年05月26日

札幌医科大、教授を懲戒解雇 無許可で兼業報酬

時事通信(5月26日)

 札幌医科大学は26日、大学の許可を得ずに多額の兼業報酬を得たなどとして、50代の医学部教授を懲戒解雇処分にしたと発表した。処分は25日付。
 同大によると、昨年末に外部などから指摘があり発覚。調査委員会を設置して調べたところ、過去数年間にわたり、大学からの給与を大幅に上回る報酬を得ていたことが分かった。兼業の多くは大学側に報告されず、報酬は過少申告されていた。
 教授は大学側の調べに応じなかった。処分を伝えると「不当だ」と述べ、「不当な兼業はやっていない」などと主張したという。
 同大の島本和明学長は「信頼を裏切り心からおわび申し上げる。再発防止に向け、より一層倫理の向上を図る」とのコメントを発表した。 

2015年05月21日

大阪市立大学の統合問題を考える会、大阪市住民投票の結果を受け声明を発表

大阪 開業支援室

「大阪都構想」に終止符、大阪市立大学の存続と民主的発展を願う!

 5月17日の住民投票で大阪市民は、大阪市を廃止・解体する「大阪都構想」を否決、大阪市の存続が決まりました。橋下市長は12月の任期満了をもって「政界引退」を表明、橋下市長・維新の会が掲げた「大阪都構想」は終止符をうちました。私たちはこの結果を歓迎するものです。

 私たちは、2011年12月ダブル選で勝利した橋下市長が、大阪市立大学と大阪府立大学の統合推進に乗り出したときから、大学の内発的要求とは無縁な、外部から強制する拙速な大学統合に異議ありの声をあげてきました。「大阪市立大学の統合問題を考える会」を立ち上げ、「大阪府立大学問題を考える会」と共同し、拙速な統合を危惧する市大生の「陳情書」の市議会採択、市立大学・府立大学の名誉教授ら21氏の「大学統合を憂慮する」声明発表、市議会での大学統合関連議案の否決、「拙速な大学統合に反対する署名」運動(市長・知事宛にそれぞれ11000余筆)、そして昨年4月の市長の「統合延期表明」などを節目に、市長、知事、議会会派への申入れ、学習会、ネットワークづくりなどをすすめてきました。

 今回の住民投票は、市立大学の設立団体である大阪市そのものの存続が問われ、市立大学の存続を願うものにとって重大な正念場となりました。私たちは、緊急声明「大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする『大阪都構想』には反対です!」を発表し、連日大学門前で配布するなど、「反対」の勝利に力を尽くしてきました。住民投票の結果は「反対」が多数で勝利、橋下市長による大阪市解体、「二重行政解消」の名目での市大・府大の強制的な統合の企みは敗北を喫しました。市大の歴史、伝統を未来につなげる可能性はしっかりと残りました。橋下市長は、「僕が提案した都構想が受け入れられなかった」、自らの主張が「間違っていた」と認めました。府立大学と市立大学の存在がムダであるかのような議論は市民の理解を得られませんでした。

 橋下市長は「任期満了までに進めるものは進めていきたい」と述べ、大学内外の統合推進派は、大学統合と「都構想」は関係ないと言いだしています。しかし、大学統合をめぐる情勢は大きく変化しています。市民のなかで自治をめぐる議論が高まり、病院も大学も必要なものとの認識が広がりました。学者のみなさんの所見でも「大学が二つあって何が悪い」と大学統合に反対する意見が数多く出されました。市大の学生・院生のなかで「大学統合を考える大阪市大・府大学生の会」ツイッターや宣伝、学習会、パレードなどの行動が生まれています。維新以外の会派、自民党、公明党、共産党、民主党が、「大阪守れ」で一致、共同をひろげました。これらの新しい動きを、市立大学の存続と民主的発展へ生かしていくことが大事ではないでしょうか。市民が共同・連帯をつよめ、暮らしを守り、経済を発展させ、文化輝く大阪をつくりあげていく努力のなかで、大阪市大がその役割をしっかりと果たすよう、私たちも注視していきたいと考えます。

 2015年5月20日 大阪市立大学の統合問題を考える会

2015年05月20日

宝塚大、造形芸術学部の募集停止 定員割れ続き

朝日新聞(2015年5月19日)

 学校法人「関西女子学園」が運営する宝塚大学が、宝塚市にある造形芸術学部(宝塚キャンパス)の学生募集を来年度から停止することになった。入学者の減少に歯止めがかからず、251人の在校生が卒業すれば学部を廃止する。学生がいなくなるキャンパスをどうするかは未定だ。

 関西女子学園によると、9日の理事会で決定し、文部科学省に報告した。14日に在校生に伝え、大学のホームページで公表したという。看護学部(大阪梅田キャンパス)と、東京メディア芸術学部(東京新宿キャンパス)での学生募集は続ける。

 宝塚大は1987年、宝塚造形芸術大学として開学。看護学部の開設(2010年)にあわせ、現名称になった。

 造形芸術学部もこの時誕生し、当時の定員は310人。だが、少子化などで入学者が減り続けており、当初から定員割れだった。15年度は定員を80人にしぼったが、49人しか入学しなかった。文科省は今年2月、造形芸術学部について「健全な運営がなされているとは言い難い」と指摘していた。


2015年05月14日

関西圏大学非常勤講師組合、阪大労基法第90条違反の刑事告訴(告発) 嫌疑不十分で不起訴処分!

関西圏大学非常勤講師組合
 ∟●非常勤の声、第43号(2015年5月10日)

阪大労基法第90条違反の刑事告訴(告発)、
嫌疑不十分で不起訴処分!

 阪大は労働契約法第 18 条の「有期雇用契約が5年を超えて更新される場合に無期雇用への転換申込権が労働者に生じること」を避けるために、2004 年の法人化以来「準委任契約」でパートタイム労働者ではないと詭弁を弄してきた非常勤講師・TA・RA・アルバイトに対しても、契約更新上限 5 年を定めた 2013 年 4 月 1 日付就業規則を適用しました。それに対し、組合は労基法第 90 条に定める「就業規則を作成・変更する際には、事業所の労働者の過半数を代表する者の意見書を付けて管轄の労基署に提出すること」に大学が違反しているとして、2013 年 9 月 25 日付刑事告訴状を大阪地検に提出し、同年 12 月 16 日付で刑事告発として正式受理されました。その後複数回、大阪地検から組合執行委員長で阪大非常勤講師である新屋敷への事情聴取があり、地検への追加文書・データの提出を行いました。

 ところが、今年 3 月 20 日付で大阪地検から不起訴処分が通知されました。その後地検の担当検事から「阪大吹田・豊中・箕面キャンパスでの過半数代表者選出から非常勤講師が排除されていることは認定されたが、大学が非常勤講師の労働者性を否定する論拠を完全には崩せない」ので「嫌疑不十分で不起訴処分になった」との説明を受けました。

 この「嫌疑不十分で不起訴処分」は、早稲田大学が非常勤講師の契約更新5年上限の就業規則を作成したことに対し首都圏大学非常勤講師組合が労基法第 90 条違反で早稲田大を東京地検に刑事告発・告訴した件が「嫌疑なしの不起訴処分」なったことに比べると、同じ不起訴でも「嫌疑不十分」の阪大の方がより悪質性が高いことが認定されたので一定の評価はできます。しかし不起訴処分には納得できません。早稲田大に対し昨年 11 月に東京検察審査会が「不起訴不当」の決定を下したこともあり、大阪検察審査会に審査申し立てをする予定です。


日本科学者会議大阪支部、「大阪都構想」についての批判声明

日本科学者会議
 ∟●「大阪都構想」についての批判声明

2015年5月11日

「大阪都構想」についての批判声明

日本科学者会議大阪支部幹事会

 「大阪都構想」については、名前から受けるイメージとは全く逆の、大阪市と大阪市民にとって大きな痛手を被る結果になるという批判が、多くの分野の個人、団体、政党から出されています。また、短期間に100人以上の学者から大阪都構想の危険性を批判するコメントが報道されています。(http://satoshi-fujii.com/
 私たちもまた、「大阪都構想」の内容に大きな危惧を覚えるところであり、日本科学者会議大阪支部としての「大阪都構想」に対する態度を表明することとします。

1.二重行政という詭弁

 二重行政あるいは多重行政は、一般には、「国の出先機関、都道府県、市町村が同一地域で同じような仕事をすることにより、無駄が発生すること」と解説されていますが、 統一的な定義はありません。これについては、住民の立場で検討する必要があります。 問題とすべきは、住民にとって「無駄な二重行政」であり、単に、「同一地域で、都道 府県と市町村が、類似の事業を行っていた」としても、必ずしも否定する必要はありません。大阪維新の会は、無駄な二重行政の例として、大阪府主体で建設した関西国際空港のりんくうタウンにある「りんくうゲートタワービル」と大阪市主体で建設した大阪 市南港にある「WTC ビル」をその例に上げています。これらは共に破綻した事業で、 無駄な事業であったことは確かです。しかし、そもそも、「りんくうゲートタワービル」 は泉佐野市、「WTC ビル」は大阪市にあり、同一地域ではなく、二重行政ではない。これらは政策の失敗例です。

 橋下氏は、大阪府立大学と大阪市立大学、大阪市内にある大阪府立図書館と大阪市立 図書館、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所、府立救急期・総合医療センターと 住吉市民病院も二重行政に上げています。しかし、大阪府立大学と大阪市立大学は、それぞれ、堺市と大阪市にあり、同一地域にありません。また、同一地域にある施設についても、市民、府民に有効に利用されており、利用率が高いものであり、また、学術研究、公害・環境問題研究、医療など住民にとって必要なもので、無駄なものではありま せん。全国で、同一地域に都道府県立と市立の同様の施設は多数ありますが、それぞれ 地域住民にとって有用なものである限り、否定されていません。このような施設を、二重行政だと言って否定しているのは大阪維新の会だけで、他の都市ではほとんど問題に なっていません。

 最初に松井知事は、大阪都になれば、二重行政の解消により年間 4,000 億円の金額が 浮く、と主張していました。しかし、その中に、地下鉄、市バス、ごみ収集など市営だけのもので、二重行政とは無関係のものが入っていました。また、図書館、体育館、病院など無駄とは言えないものが入っていました。大阪市議会で野党が計算したところ、 むだな二重行政と言えるものは、実際は年間 1 億円程度、大阪自治体問題研究所の計算では年間約3億円という結果が出ています。つまり、最初の話は、金額を1,000 倍から4,000 倍に誇張していたことになります。 物事のある小さな一部分を取り出し、そこを大きく誇張することは、詭弁と言われており、橋下氏や大阪維新の会が述べている「二重行政」の例は、詭弁と言わざるを得ません。

2.政令指定都市と地方自治

 「大阪都構想」は、「大阪府と大阪市の二重行政の解消を目指して、政令指定都市である大阪市を廃止して、5 つの特別区に変えよう」、というものです。政令指定都市は人口が 50 万人以上の政令で指定する大都市で、全国で20 市ありますが、このような政令指定都市を廃止する話は大阪以外の地域でどこからも出ていません。これは、大阪市の自治権を手放すという、通常では考えられない提案であり、既に大阪市議会において否決されていたものです。

 「大阪都構想」で、大阪府と大阪市の役割分担、政令指定都市、特別区という言葉が出てきますので、まず簡単に言葉を解説します。都道府県と市町村の役割及び政令指定 都市と特別区の権限は、地方自治法で定められています。地方自治法では、「住民に身近な行政は出来る限り地方公共団体にゆだねる」とし、都道府県は、①広域にわたる事務、②市町村に関する連絡調整に関する事務、③その規模または性質において一般の市 町村が処理することが適当でない事務(例えば、大きな財政を要する事務、高度な専門 的能力を要する事務)を行うとされています。また、市町村は、基礎的地方公共団体であり、都道府県が行う事務を以外の、地域における事務を行う、とされており、この ように府と市の役割を大きく分けています。

 さらに、市町村の中では政令指定都市の行政権限、財源が最も強く、都道府県並みです。政令指定都市である大阪市は大阪府とほとんど同格で、大阪市域については、大部分の行政事務権限が大阪市に有り、大阪府には有りません。政令指定都市の次が、中核市、そして、特例市、一般市町村の順です。行政権限が強いということは、より多種類の仕事を行うという意味であり、仕事に財源も付いてきますので財源も大きくなります。 東京都の特別区は、第2次世界大戦中の 1943 年に東京市が廃止されて出来た制度で、 行政権限も弱く、財政的に自立しておらず、東京都から財源をもらって運営しています。 東京23特別区長会は、戦時集権体制として作られた特別区を廃止して、東京○○市と いう自立した基礎自治体の連合体に変えたいという提案を出しています。
http://www.tokyo23city-kuchokai.jp/katsudo/arikata/191217.html) 結論として、「大阪都構想」は、行政権限と財源が最も大きい政令指定都市から、最も小さい特別区に変えるという提案であり、東京特別区長会自らが否定している制度で あり、大阪市民にとって自治の喪失につながると考えます。

3.大阪市を解体し、特別区にすることにより生じる問題

 地方公共団体には、適当な範囲、面積という概念が重要です。大阪市の範囲は大阪府の都市域と一致し、都市を管理する自治組織としては適切な範囲、面積です。大都市の行政には、防災、都市計画、地域計画、都市区画整理、再開発、インフラ(道路、橋梁、 公園、街路樹、河川、下水道、上水道)、環境(大気、水質、騒音・振動、悪臭)、港湾、 消防、地下鉄、市バスなどの分野があります。これらは、「大都市としての一体化施策 や大都市全体の集中管理」が必要です。5 つの地域に分割してそれぞれが行なうと、都 市全体の集中管理が出来なくなり、また、職員数が 1/5 になり、分業と協業で高度に組 織化された業務が行えなくなることが予想されます。

 また、今まで大阪市が一元的に管理していたものが、大阪府、一部事務組合、特別区の三重行政となり、さらに複雑になることも懸念されています。
 さらに、上水道の民営化案のように、淀川の常時変化する水質、水量、予想できないような汚染物質など、高度な技術と経験による即時の対応が必要なものに対して、利潤追求を優先させる民間企業で対応できるのか疑わしいという指摘があります。

 これまで、大阪市は都市工学、環境工学など、日本の都市の中でトップクラスの専門技術者を育成してきました。大阪市立環境科学研究所や大阪市立工業研究所もその中に含まれます。大阪市を解体すると、これらの専門技術者、経験者の経験蓄積が壊される 可能性があり、新しい組織で技術者を育てるのに数十年の時間と余分な経費がかかるこ とになります。

4.住民投票と民主主義

 今回の住民投票で議論になっているテーマは、行政組織論であり、また、ゆがめられた二重行政論です。行政組織論は、行政関係者以外にとってなじみが薄く、そのため多くの大阪市民からわかりにくいという声が出ています。テレビで公開の討論が行われて いますが、1 時間という限られた時間の中で、複雑で大量の予備知識や裏付けとなる資料の理解が必要な問題を議論し、結論付けようというのは、かなり無理があります。民主主義とは、判断に困る複雑なことを、短時間で多数決により決めることではありません。この課題は議会で議員がきちんと時間をかけて議論した上で決めれば、それで済んだことです。いったん議会で否決されたことを、無理矢理住民投票にもってきたところに根本 的な問題があります。

5.大阪経済の問題

 1990 年以降全国的に事業所数と従業員数が減少傾向を示していますが、大阪府が他の大都市圏の都道府県よりも減少率が高いことは、経済統計に表れていますし、専門の 研究者からも指摘されています。その要因分析は必要であり、大阪の経済研究者、行政機関、経済団体が参加して、政策を早急に立てていく必要があると考えます。その方向は、大阪の地域特性を生かしたものであり、地域での自立的な経済を作っていくべきで、 東京をまねようとするものではだめだと言われています。さらに、現在地球温暖化対策として、2050 年までに化石燃料の大部分を自然エネルギーに転換し、持続可能な社 会を作っていくことが求められており、これを含めた経済政策を立てて行く必要があり ます。

6.結論

 結論として、日本科学者会議大阪支部は「大阪都構想」に反対を表明します。さらに、科学者の社会的役割の自覚に立って、この反対の運動に参加されている個人、諸団体と 協力して、市民の生活を安定させ、大阪の経済、学術、文化をより豊かなものに発展さ せていく活動を進めることを表明します。


2015年05月12日

名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、2審も勝訴判決!

■谷口教授を支援する会ニュース第29号より

2審も勝訴判決!

 4月30 日(木)午後1時10分より、名古屋高等裁判所 1001 法廷において、谷口教授裁判 控訴審判決の言い渡しがありました。
 まず学園側の控訴が棄却され、一審判決が維持されました。谷口教授側が起こした附帯控 訴については、一審に追加して請求した2014年度の夏期および冬期一時金が請求額どおり に認められました。また学園及び理事長(当時)の不法行為に対する慰謝料の増額は認めら れず、一審判決の額(慰謝料 300 万円、弁護士費用 30 万円)に据え置かれました。
 なお判決の言い渡しには、日本学士院、鈴鹿医療科学大学、中京大学、中日本自動車短大、 東海私大教連の関係者6名が応援傍聴に足を運んでくださいました。ありがとうございます。

裁判の争点と裁判所の判断

 一審判決では争点が 10 点にまとめられていましたが、控訴審判決では、3回の懲戒処分 と配転命令および教授から助手への降任処分が一つの争点として集約され、また、ブログに ついても甲事件(解雇事由としての名誉毀損)と乙事件(損害賠償請求根拠としての名誉毀 損)が一つの争点として集約されました。それゆえ事件全体が5つの争点にまとめられまし た。以下に裁判所の判断を要約します。

(1)本件特命プログラムは違法か
 特命プログラムとして授業改善のための業務命令を出す必要性があったとは認められ ず、各業務は嫌がらせであったと考えられる。そして被控訴人(=谷口教授)が大学組合 の副委員長であったことから不利益な取扱をするものと認められ、不当労働行為として違 法であると認められる。

(2)本件の各処分の有効性
 懲戒処分1は懲戒事由がないか、そうでないとしても懲戒権を濫用するものとして、違法・無効であると認めることができる。
 懲戒処分2については、大学組合活動を抑圧しようとする意図の下にされたものとして、違法・無効であると認められる。 配転命令については、学園が仮処分命令を回避して不当な業務命令を継続することを目的としてなされたものであると認めることができ、人事権を濫用するものとして違法・無 効である。
 降任処分については、教授から助手に後任すべき合理的理由はなく、違法・無効であると認められる。 懲戒処分3については、違法・無効であると認められる。

(3)本件ブログの記事掲載は違法か
 ブログは、控訴人学園の抱える問題を明らかにすることを目的として記事を掲載してい たものと認めるのが相当であり、公益目的ということができる。またブログに掲載された 事実については、公共の利害に関する事項であって、被控訴人の実体験に基づく真実であ ると認められる。したがって、各記事については、学園の名誉や信用を毀損するものとい えないか、又は、毀損するものとしても、違法ということはできない。
したがって、学園の損害賠償請求は理由がない。

(4)本件解雇の有効性
 解雇事由としてのブログの記事掲載行為は口実にすぎず、実際は、被控訴人が大学組合 の副委員長として活動していることを理由として解雇しようとするものであると認めら れる。
したがって解雇権の濫用で、違法・無効である。

(5)控訴人らの不法行為責任の有無
 被控訴人の自尊心を傷つけ、精神的圧迫を加え、大学教授としての本分である研究や教 育活動を奪い、違法な懲戒処分・降任処分・解雇を行ったうえに、解雇について学園の全 職員に学内メールで知らせるなど、学園の一連の行為は人格権や名誉を著しく侵害するも のであって不法行為に当たり、学園の行為の執拗さや行為の悪質性を考慮すれば、精神的 苦痛に対する慰謝料は300万円、弁護士費用は30万円と認めるのが相当である。
 控訴人越原一郎は一連の行為に理事長又は学長として深く関与し、その指示により不法 行為が行われたものと認められ、学園と連帯して不法行為責任を負うものと認められる。


安倍流「国立大改革」の暴走

しんぶん赤旗(2015年5月10日)

安倍流「国立大改革」の暴走(上)、3類型に再編“人文系つぶし”

 安倍内閣が進める「国立大学改革」で、人文・教育系学部の廃止が浮上しています。86の国立大はどうなるのでしょうか。

 「この夏までに『国立大学経営力戦略』を策定し、『3類型』のミッション選択に基づく自己改革を進める」

 安倍晋三首相は4月15日の産業競争力会議の課題別会合でこう表明し、そのために「運営費交付金と競争的資金の一体改革を進める」と述べました。

 「3類型」とは、文科省が「国立大学改革プラン」(2013年11月)で打ち出した「国立大の機能強化の方向性」―(1)世界最高の教育研究拠点(2)全国的な教育研究拠点(3)地域活性化の中核拠点―に基づくものです。

国策に沿い選別

 同会合で下村博文文科相は、「特定研究大学」「卓越大学院」などの創設を打ち出し、国策に沿う大学や分野を選別支援していく考えを強調しました。

 これまで文科省は、「3類型に再編」ではなく、「機能強化の三つの方向性」と説明してきました。国立大学に対する運営費交付金の検討会でも、各大学が選んだ機能強化の方向について重点支援を行うものだと説明。国立大学協会も中間まとめ案を受けて「大学のいわゆる『類型化』ではないことを改めて確認いたします」としていました。

 ところが、安倍首相が表明したのは、国立大学を文字通り三つに再編しようというものです。

 同会合では、財界人が「研究面での新しい発見がなくなってきたり、動きが止まっているような学問領域を思い切ってやめて、新しい領域、学際分野を立ち上げるべきだ」(小林喜光三菱ケミカル会長)と発言。学部学科の統廃合を公然と求めています。

 そのターゲットは人文科学や教員養成系です。国立大学法人評価委員会の「組織・業務見直しの視点」では、教員養成・人文社会科学系の「組織廃止」を打ち出しています。

 日本共産党の田村智子参院議員は4月21日の委員会で、「国策に沿った産業振興のために、大学や分野を国が選別し、予算を重点化するのと一体に教員養成・人文社会科学系を縮小・廃止するものだ」と批判しました。

 国立大学の基盤的経費である運営費交付金は、法人化後の10年で約1292億円も削減され、文科省の裁量で重点配分する仕組みが導入されてきました。

資金獲得競争に

 今後は、各大学が「3類型」から一つを選択。文科省が、各大学の取り組みを評価して配分することが検討されています。

 大学同士が類型ごとに資金獲得競争に追い立てられ、3類型に再編されていくことになり、基盤的経費の削減がいっそう拡大する危険を抱えています。

 日本学術会議は提言で、「(人文科学は)人間と社会のあり方を相対化し批判的に考察する」と人文科学系の役割を強調しています。

 田村氏は「豊かな教養や高度な専門知識をどれだけ国民の中に培うのかということが日本社会の発展にとってきわめて重要だ。学部再編や廃止を政府が大学に突きつけることはあってはならない」と主張しました。(つづく)

安倍流「国立大改革」の暴走(下)、「交付金増額を」15大学が声明

しんぶん赤旗(2015年5月11日)

 国立大学に対する運営費交付金に占める重点配分の割合は2016年度の予算編成で決められます。経団連は、運営費交付金の3~4割を重点配分に充てるよう主張。財務省の財政制度等審議会も3割を求めており、予断を許さない情勢です。

財界人や元大臣

 和歌山大学の山本健慈前学長は自著のなかで、文科省から「大改革をしていない」と評価されれば「そんな大学は退場してもらいますということに追い込まれていくと思います。まさに地方国立大学は『壊死(えし)』してしまう」と批判しています。

 日本共産党の田村智子参院議員は「運営費交付金の総額を増やさないまま重点配分を行えば、必然的にどこかを削る、縮小することになる」と追及しましたが、下村博文文科相は「増額する」とは言明しませんでした。

 こうした動きに各大学がいっせいに批判の声をあげています。

 東北、山形、福島、福井、奈良教育、和歌山の6国立大学の学長が3月、記者会見し、「(交付金の)削減は教育や研究の質の低下を招き国立大が衰弱する」と訴えました。

 各国立大学に設けられている経営協議会の学外委員も、交付金削減に反対し、財政支援を求める声明を発表。北海道教育、東北、秋田、山形、福島、筑波、静岡、名古屋、福井、奈良教育、和歌山、広島、高知、山口、宮崎の15大学に広がっています。

 学外委員にはトヨタ自動車会長、ファミリーマート会長ら財界人をはじめ、有馬朗人、遠山敦子両元文部・文科相も名を連ね、「基盤的経費の削減が続いていくならば『10年間で世界大学ランキングトップ100に日本の大学を10校以上』等の目標達成は、国立大学の衰退とともに実現が困難になってくる」(名古屋大学学外委員声明)として増額を求めています。

競争的資金では

 安倍内閣は、「競争的資金」についても「一体改革」を進め、交付金と併せて財源を確保するとしています。

 競争的資金は、各省庁がテーマを決めて募集し、審査で選ばれた大学や研究者らに出されるものです。14年度予算は4162億円で科学技術関係費の約11%を占めます。

 これまでも運営費交付金が減らされ、競争的資金が増やされてきました。しかし、競争的資金は3~5年の短期が主流です。研究者は研究しながら次の資金獲得を準備しなければならず、非常勤の研究者を増大させる要因になっています。

 日本学術会議は提言で「競争的資金で雇用される若手研究者やポスドク(ポストドクター=非常勤の研究員)等は、競争的資金での研究成果を出すことが困難となっている」と指摘しています。

 ところが、文科省は「産業界との連携を進めていく」として、財界の要求に応える仕組みや外国人研究者の登用を打ち出すなど競争的資金の性格をいっそう強める姿勢です。

 田村議員は「競争的資金を増やしても運営費交付金を減らしたままでは学術研究の発展はない」と指摘し、運営費交付金の増額を求めました。


国立大授業料、値上げを-財務省

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(2015年5月11日)

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は11日、文教・科学などの分野で、歳出抑制に向けた方策を議論した。財務省は、教育環境を改善するため国立大学の授業料引き上げも含めて検討するよう提案した。また、救急搬送の一部有料化検討も打ち出した。

 国立大学・大学院(86法人)の授業料標準額は年53万5800円。自主判断で値上げ(上限2割)や値下げ(下限なし)が可能だが、値上げは2研究科(大学院)にとどまる。

 同省は値上げの場合に増える各大学の収入を、「教育環境の改善や低所得家庭の学生支援に振り向けるべきだ」(幹部)と話している。値上げの対象は富裕層に限定される見込みだが反発が生じる可能性もある。

 義務教育分野では、児童・生徒数減少などを踏まえると、現在の教育環境を維持しつつ2024年度までに小中学校教職員を約4万2000人減らすことが可能だと指摘した。

 地方財政については、地方自治体が行う救急搬送について、結果として軽症だった場合の有料化を「検討すべきではないか」と問題提起した。全国の自治体の消防費合計額は年間約2兆円。救急出動が過去10年で2割増える中、約半数は軽症という。自治体が自由に使える「一般財源」は、リーマン・ショックにより地方税が不足。地方交付税交付金の「別枠加算」などで埋めてきた。しかし、景気が上向いていることなどを挙げ、一般財源の水準切り下げや、加算などの廃止を改めて求めた。

 公共事業では、「全体の公共事業費は増やせないということを前提に、必要不可欠な社会資本の機能を確保していく」と提出資料に明記。今年度予算の約6兆円から増やさない姿勢を示した。 

財政審:教職員4万人削減…「少子化」着目、歳出見直し案

毎日新聞(2015年05月11日)

 財務省は11日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)を開き、文教分野や地方などの歳出見直し案を提示した。少子化に伴い、小中学校の教職員を今後10年程度で約4万2000人削減できると指摘したほか、委員からは安倍晋三政権が地方創生の目玉施策として今年度予算に盛り込んだ1兆円の「まち・ひと・しごと創生事業費」の効果を疑問視する声も相次いだ。

 歳出の見直し案は、今月末をめどに取りまとめる財政審の建議(報告書)に盛り込んだ上で、安倍首相が議長を務める経済財政諮問会議に、麻生太郎財務相が報告する見通し。教職員の削減案には、文部科学省などから反発が上がるのは確実だ。

 小中学校の教職員数は現在約69万人で、今回提案した削減幅は約6%に相当する。今後の少子化を踏まえれば、今後10年間、学級数に応じて配置されている教職員を約3万7700人減らすことができるとした上で、少人数指導などのため配置されている教職員も約4200人を削減が可能とした。削減によって、人件費削減額は全体で約2300億円(うち国費は約780億円)が見込めるとした。

 国立大の授業料は、各大学が自主判断で決めることができるが、大半が文科省が定めた授業標準額の53万5800円と同額としていると問題提起した。国立大入学者は富裕家庭の子供も多いことから、私立大の授業料(平均86万円)近くに値上げした上で、親が低所得で優秀な学生向けの奨学金制度を充実させるなど、学ぶ意欲を重視した改革を行うべきだとした。

 また、地方財政については、2008年のリーマン・ショックをきっかけにした税収不足で導入された地方自治体向けの「別枠加算」など支援措置は速やかに廃止すべきだと提案。「まち・ひと・しごと創生事業費」については、委員から「ばらまきになる危険性がある」などの声が続出した。人口減に陥っていれば一定額が交付される仕組みを問題視したためで、今後の予算の使われ方を注視していくという。


家計に重い教育費の負担 日本公庫調査

わかやま新報(15年05月11日)

日本政策金融公庫がまとめた近畿地区の平成26年度「教育費負担の実態調査」の結果、収入が低い世帯ほど教育費が家計に重くのし掛かり、年収400万円未満の世帯では教育費負担が年収の約5割を占めていることが分かった。

調査結果によると、高校入学から大学卒業までに必要な教育費は子ども1人当たり888万円で、自宅外通学の場合は約1532万円。自宅外通学では、仕送り額が年間平均149・6万円(月額12・4万円)、自宅外通学を始めるためのアパートの敷金や家財道具などの費用が43・9万円となっており、この分が加算されている。

世帯年収に占める在学費用の割合は、平均で18・3%。負担割合「10%以上20%未満」が30・9%と最も多くなっているが、年収が「200万円以上400万円未満」の層では年収の約5割を教育費が占めている。
子どもの在学先別に世帯年収を比較すると、年収差は「短大」と「国公立大」の間で最大287万円となっている。

教育費の捻出方法は、節約(32・3%)、預貯金や保険の取り崩し(28・5%)が多く、節約する支出項目は、食費・外食費(63・9%)、旅行・レジャー費(61・3%)、衣料費(37・6%)の順に多かった。

子どもの留学については「させたい」または「条件が合えばさせてもよい」と答えた割合が全体の57%を占め、前向きな世帯が多い結果となった。一方、留学させることはできないと考える世帯が、留学の障害と感じることは「費用の負担」が最多の69・7%で、留学費用の負担が課題であることがうかがえる。

調査期間は平成26年11月22日~12月2日。25~64歳の高校生以上の子どもを持つ保護者を対象にインターネットでアンケート形式で調査した。有効回答数は600人(2府4県から各100人)。 


2015年05月11日

無残な科学技術立国、人口当たり論文数37位転落

BLOGOS(2015年05月10日)

科学技術立国を唱えてきた日本の無残な実情が見えました。人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落です。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れます。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用します。

 グラフは「人口当たり全分野論文数の推移(3年移動平均値)。日本は多くの東欧諸国に追いぬかれた。」です。年単位の凸凹をならすために前後3年間の平均を採用しています。右端に並ぶ国名が2014年での世界の人口当たり論文数ランクになります。この数年でクロアチア、セルビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロバキアといった東欧の小国に追い越されたばかりでなく、欧米先進国との差が開くばかりである惨状が分かります。

 世界的な論文数増加の勢いに取り残される傾向が、バブル崩壊があった1990年代から始まっている経過も見えます。北欧の小国はもともと上位を占めている上に、2000年前後の世界的伸長ペースに取り残されて西欧の小国にも置いて行かれました。さらに東欧諸国にもという次第です。

 2014年の論文総数は「昨年と同様に世界5位で順位は変わっていませんでした。ただし、人口が半分のフランスに接近されており、このままのペースが変わらないと仮定すると3年後にフランスに追い抜かれて6位になります」。人口当り論文数は「国ではありませんが香港を加えますと、国際順位としては37位」、「このままの政策が継続されれば、さらに国際競争力が低下する」と豊田氏は主張します。

 昨年6月の第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」と続編で政府・文部科学省が採っている大学「改革」政策の無謀さを指摘しました。論文総数の異常減少グラフはそちらで見てください。

 豊田氏の分析が、論文数は大学への公的研究開発資金に左右されることを示しており、それは日本では国立大学運営費交付金です。交付金が2004年の国立大学独立法人化から10年間で13%も減額され、自由な研究に充てられる余裕がほぼ消滅しました。

 文科省の今年4月8日付《第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について》はこれまでの重点配分方式では「大学改革促進係数により財源を確保した部分と、重点配分した部分の関係が不明確」「選択の幅が広すぎ、結果として各国立大学の強み・特色をより伸ばすことにつながっていない」と不十分とします。2016年から始まる第3期でもっと抜本的に重点配分していくと宣言しています。

 ここまで交付金総額を減らした上に重点配分を強力にすれば旧帝大クラスはともかく、中小の大学にはカツカツ以下の資金しか回らなくなります。「無駄な研究などしないでよい、学生の教育だけやりなさい」との含意があちこちに見えます。もともと財務省は教育のために配当すべき教員数よりも多くを抱えている現状が不満でした。しかし、重点配分でいま目立っている研究成果に資金を集中して早く果実を得ても、将来に育てるタネが草の根の研究者群から出て来る基盤を失ってどうするのか、とても大きな疑問があります。国家百年の計にかかわる論文数減少の意味を、自分の代で何か成果を出したい文科省官僚が全く考えていない愚かさが明らかになっています。


日本私大教連、声明「政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する」

日本私大教連

(声明)政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する

2015年5月8日
日本私立大学教職員連合中央執行委員会

 安倍総理大臣は2015年4月9日の参議院予算委員会で、国立大学における国旗・国歌の取り扱いについて、「税金によって賄われているということに鑑みれば新教育基本法の方針に則って正しく実施されるべき」との見解を示し、これを受けて下村博文文部科学大臣は「各大学で適切な対応が取られるよう要請していきたい」と答弁しました。下村大臣は翌日の記者会見でも「国立大学の学長が参加する会議等において要請することを検討している」と述べています。

 言うまでもなく国旗・国歌に対しどのような態度はとるかは個人の思想・良心の自由に関わる問題です。こと戦前戦中に「日章旗」「君が代」が国民統制と侵略戦争遂行に利用されたことにより、国の内外を問わずこれに抵抗を感じる市民が少なからず存在することは厳然たる事実です。そのため、国旗国歌法案の審議過程や、義務教育の現場への強制をめぐる国旗・国歌訴訟などにおいてさまざまな論争が行われ、それは今日においても本質的決着をみていません。

 今回の安倍総理の答弁は、教育基本法(2006年改正)の第2条第5項「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」を前提にしたものと思われますが、それを根拠に大学の入学式等で国旗掲揚・国歌斉唱を実施すべきとする主張はあまりに短絡的です。さらに、教育基本法の第7条第2項「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」という規定を全く無視し、税金を投入しているのだから政権方針に従うことが当然だと言わんばかりの答弁はきわめて乱暴です。とうてい容認することはできません。

 下村大臣は「要請」にすぎないから問題はないと弁明していますが、「税金投入」を盾にした「要請」が実質的圧力となることは明らかです。そしてその圧力はいずれ私立大学にも及ぶでしょう。大学という自由聞達に教育・研究を行うことを使命とする機関に対し、政府権力を行使して「国旗掲揚・国歌斉唱」を強要することは、「学問の自由」「思想信条の自由」並びに「大学の自治」の息の根を止めようとする暴挙です。 日本私大教連は、「学問の自由」「大学の自治」を担う教職員組合として、国立大学に対する国旗・国歌「要請」方針に対し断固抗議し、その撤回を強く求めます。


「専門職大学」創設へ 文科省 技術・経営感覚習得に力

北海道新聞(2015/05/10)

 文部科学省は、実践的な職業教育に特化した「専門職大学」(仮称)の創設に乗り出す。調理師や美容師といった専門技術の習得とともに、経営感覚を身につけた即戦力の育成が狙い。専門学校や短大からの移行を想定。一般の大学と同水準の教育内容とし、文科省が設置基準を定めて認可することで、教育の質を確保する。文科相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)が15日に開く特別部会で具体的な議論を開始し、2019年度以降の開校を目指す。

 職業訓練に特化した教育は現在、主に専門学校が担うが、技術習得が中心で経営学などには手が回らない。一方、一般の大学や短大は職業訓練に長い時間を充てられない。このため産業界からは高度な即戦力の育成機関を求める声が強かった。

 政府の教育再生実行会議が昨年7月、「実践的な高等教育機関の新設」を提言。有識者会議が今年3月、専門職大学制度の大枠をまとめた。それによると2~4年制で、高校新卒者や社会人が対象。美容、観光、情報通信技術、福祉などの分野を想定し、技術に加え、経営ノウハウの習得に力を入れる。

 教員の一部は各分野で活躍する人に担ってもらう。修業年限に応じ、大学卒業者に与えられる「学士」や短大卒業者に与えられる「短期大学士」に相当する学位を授与する方向だ。

 文科省は「道内は札幌だけでなく各地に専門学校がある。(専門職大学に移行した専門学校などが)高度な技能を持った人材を地元に輩出できれば、地域活性化にもつながる」と話す。

 ただ、教員の確保や経営面で成り立つかどうかなど課題は多い。中教審は年度内を目標に答申をまとめたい考えだが、曲折も予想される。


2015年05月09日

北海道文教大学雇い止め訴訟 、元2教授の請求棄却 道労働委は救済命令

■北海道新聞(2015年5月9日)

文教大雇い止め訴訟
元2教授の請求棄却
道労働委は救済命令

 北海道文教大(恵庭市)に不当に雇い止めされたとして、元教授の女性(68)と男性(67)が大学側に解雇の無効などを求めた訴訟で、札幌地裁(本田晃裁判長)は8日、2人の請求を棄却した。
 判決によると、女性は2009年、男性は11年に任期付き契約で教授として採用されたが、任期が満了した12年度未で契約が打ち切られた。
 弁論で原告側は「管理栄養士の国家試験対策をめぐる意見対立が原因で排除された」と主張。しかし、本田裁判長は「継続雇用の期待を抱かせる事情はなく、意見対立が理由とも認められない」と結論付けた。
 一方、北海道労働委員会は同日、大学側に対し、2人が個人加入する労組との団体交渉に誠実に応じることなどを求める救済命令を出したと発表した。
 命令書によると、大学側は13年の団体交渉で、試験対策をめぐる意見対立と雇い止めは「関係がない」と説明。これを道労働委は「意見対立が判断要素になっていた事実に反した説明であり、不誠実な態度だ」として不当労働行為と認定した。
 2人は「判決では主張が認められず残念」と話し、控訴するかどうか検討するという。大学側は「救済命令は主張が一部反映されていない。再審査の申し立でを考えたい」としている。


2015年05月07日

京都大学職員組合、声明「京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について」

京都大学職員組合
 ∟●京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について

2015 年5 月7 日

声明

京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について

京都大学職員組合・原告団

 本日、京都地方裁判所第6 民事部は、京都大学職員組合の組合員ら115 名が組合の支援を受けて国立大学法人京都大学を提訴した未払い賃金請求事件において、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

 本件訴訟は、2012 年2 月29 日の国家公務員給与臨時特例法による同年4 月から2 年間の国家公務員の給与減額に乗じ、国が全国の国立大学法人に対して賃下げを要請したことを受け、被告法人において減額された賃金の支払いを原告が請求したものである。

 今般の不当判決は、あらゆる面において、私たち労働者の権利だけでなく国家としての日本の国際的信頼をも著しく傷つけるものである。

 そもそも、今回の賃下げは復興財源の確保を口実としたが、会計検査院が2013 年10 月31 日に公表した報告書「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」は、被災地と直接関係のない事業に振り向けられていた予算額が、復興特別会計のうち約3000 億円、また復興予算で造成された「全国向け事業に係る基金」のうち1 兆円以上に上ったとしている。

 被告法人においてはこの口実に従って国からの運営費交付金が削減されたが、資金面の余裕があり、賃下げを強行する必要性は皆無であった。

 国立大学法人法上、国立大学教職員は公務員ではなく、民間労働法制の適用を受ける。労働契約法9 条は、労使の合意のない労働条件の不利益変更を禁じており、10 条はその例外の要件として「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」ことを定める。法律上、この要件を充足したことの挙証責任は被告にある。ところが、被告は挙証責任を果たそうとすらしなかった。すなわち、被告における賃下げ率が、運営費交付金の減額が大きいほど賃金削減幅が小さくなるという、理解困難な計算方法によって決められていたことを認めた。準備書面等においては定期預金が210 億円あったとし、証人尋問では財務について供述できる者を証人とすることを拒否して、証人に「財務のことはわかりません」と証言させている。

 本判決は、被告に財源のあったことを認め、賃下げ率の算定方法が不合理であったことを認めながら、国の要請という国家権力からの介入があれば従わざるをえないことを実質的な請求棄却の理由としており、これでは、学問の自由や大学の自治という憲法上の権利は全くないがしろにされてしまう。

 また、法律上、国立大学法人教職員は公務員としての地位を奪われ、民間の労働者と同様に扱われるものとされているにもかかわらず、本判決によれば、民間の労働者であれば適用されるべき労働法による保護すらも受けられないこととなり、劣悪な地位に置かれたことになる。私たちは本日の不当判決に対して直ちに控訴するとともに、法治主義に反し基本的人権を侵害するこの事態について、広く国内外に問題提起する所存である。


2015年05月02日

大阪市立大学の統合問題を考える会、緊急声明「大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!」

大阪 開業支援室
 ∟●大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!

大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!

 「大阪市廃止、5特別区に分割」(いわゆる「大阪都構想」)の賛否を問う住民投票が5月17日に行われます。私たち大阪市立大学の存続・発展を願うものにとって住民投票の結果はたいへん気がかりです。橋下市長は、市立大学について、「キャンパスは残るが、府立大学になる」と言いました。その口調は市大の在学生、教職員、卒業生ら関係者の心情に思いを致さない軽いものでした。大学の統合再編は、二つある箱ものを一つにすればいいという単なる器の議論ではありません。先人の奮闘、努力のうえに築かれ、今に至るかけがえない歴史と伝統、学風、学問研究水準こそが大学の本領です。二つの公立大学を「二重行政」とみて、たんに解消をはかればいいというのは、あまりに一面的で無責任、もったいない話です。
橋下市長が、「二重行政」解消が「都構想」の目的だといい、まず二つの公立大学をあげ、大阪市を解体して、市大、府大を統合することでムダを解消するなどと言っているのは理解に苦しみます。大学統合のために大都市大阪を解体するというのでしょうか。こんな話でしか「都構想」のメリットが語れないというのは驚くばかりです。

 橋下市長は、「首都大学東京の運営費は140億円、府大と市大は計200億円で、分不相応だ」といいます。しかし、富裕自治体の東京都は首都大学東京の運営費の大部分を負担していますが、市大、府大は運営費の多くが国からの交付金であり、大阪は東京に比べてはるかに少ない負担で、市大、府大あわせて二倍近くの学生が学んでいます。市大、府大が「東京に比べて負担が大きすぎる」というのはまったくの偽りです。
 国公立大学の数は、東京13、北海道12、愛知7、福岡7、京都6、兵庫5、広島5、神奈川4、大阪4。統合されると大阪は3校になります。これで大都市大阪がふさわしい高等教育・研究環境を備えているといえるでしょうか。市大、府大は創立以来、市民、府民に、比較的安い学費で、自宅から通える、貴重な高等教育の場を保障し、大阪の知の拠点として、経済・文化・科学技術の発展に貢献してきました。橋下市長も「大学がある街は活気づく」といっています。この大学を減らすことは、市民、府民、そして受験生の願いに反するのではないでしょうか。

 橋下市長は「大学をまとめて規模を大きくし強力にする」といいます。関西には規模の大きい大学がいくつもあるなかで、市大が一定のレベルを維持し、評価を得てきたのは、先人の奮闘と努力によるものであり、規模がすべてではありません。ノーベル賞を受賞した南部陽一郎さんや山中伸弥さんは、市大時代に「自由を満喫できた」「白紙に書けた」と振り返っています。学問・研究の発展にとって、憲法が保障する学問の自由、大学の自治こそ重要と考えます。橋下市長が「学長を選ぶのは市長」「教授会がしゃしゃり出るというばかげたやり方は認めない」というのはそれと相いれません。
あと先考えない大阪市つぶし、「大阪市立大学」をなきものする「都構想」には反対です。

2015年4月30日 大阪市立大学の統合問題を考える会

2015年05月01日

名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、名古屋高裁も勝訴

■谷口教授を支援する会メールニュース

祝! 勝訴!

支援者の皆様

「谷口教授を支援する会」事務局です。
お世話になっております。

本日、午後1時10分より、名古屋高等裁判所において
谷口教授の控訴審判決の言い渡しがありました。

学園側の控訴は棄却され、一審判決が維持されました。
また附帯控訴として谷口教授側が請求した、昨年6月と12月に支給されるべきだった一時金については請求どおりの額の支払いが認められました。

ただし慰謝料については、一審どおり、学園と越原一郎氏個人の不法行為責任を認めたものの、一審で300万円だった額の増額は認められませんでした。

詳細については「谷口教授を支援する会ニュース」の次号でお知らせいたします。
まずは、取り急ぎご報告まで。

谷口教授を支援する会ブログ

2審も勝訴!!
名古屋高等裁判所で控訴審判決がありました。
学園側の控訴を棄却して、一審判決を支持するとともに
谷口教授側が附帯控訴として請求した、結審後の昨年6月と12月を支給日とする一時金支払いが認められました。(2015/04/30)

2審も元教授の解雇無効認める

NHK(4月30日19時23分)

3年前に解雇処分になった名古屋女子大学の元教授が、処分は不当だとして大学側を訴えていた裁判の2審で、名古屋高等裁判所は、1審に続いて、元教授の訴えを認め、大学側に対し解雇の無効と未払いの賃金などの支払いを命じました。
名古屋市瑞穂区にある名古屋女子大学の谷口富士夫元教授(56)は、3年前、助手に降格された上、大学を非難する内容を個人のブログに書き込んだことを理由に不当に解雇処分にされたとして、大学を運営する「越原学園」側に対し、解雇処分の無効のほか、未払いの賃金などの支払いを求めています。
去年9月に1審が、処分が違法だったと認めて、処分の無効のほか、未払いの賃金など、約2200万円の支払いを命じたため、大学側が控訴していました。
30日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の木下秀樹裁判長は「ブログの書き込みは不当な処分の口実に過ぎず、元教授の人格権や名誉を著しく侵害した」として、1審に続いて、大学側に対し、解雇処分の無効のほか、1審の判決から、30日までの分を加えた未払いの賃金など、計約2900万円の支払いを命じました。
判決について越原学園は「不当で誠に遺憾だ。直ちに上告を検討する」とコメントしています。

学問の自由を考える会、国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する声明

学問の自由を考える会

みなさま

声明への賛同署名募集の呼びかけ(このメールは転送自由です。ぜひお知り合いに御転送下さい)

国立大学における国旗掲揚・国歌斉唱に関する文部科学省からの要請を撤回するよう求める声明の賛同者を募っています!

 私は「学問の自由を考える会」代表の広田照幸(日本大学・教育学)です。
 本年(2015年)4月9日の参議院予算委員会における安倍晋三首相の答弁を機に、文部科学省は、国立大学に対して、入学式等で国旗掲揚と国歌斉唱を行うようはたらきかけるとされています。日本近代史において続出した言論抑圧の経験をふまえれば、このような動きは、大学における学問の自由を大きく損なうことになりかねません。それは同時に、日本社会の思想の自由の大きな危機を生むものです。

 こうした危機感にもとづき、教育学者、憲法学者をはじめ、大学人および広汎な知識人が呼びかけ人となり、「学問の自由を考える会」を発足させ、文部科学省に、上記の「要請」を撤回するよう求める声明を発表しました。

 学問の自由を考える会ホームページ http://academicfreedomjp.wix.com/afjp
  (ご自身でHP等をお持ちの方は、積極的にリンクをしてください)

 ますは、ウェブ署名でこの声明への賛同者を募る活動をはじめました(5月末に第一次集約、7月半ばごろに第二次集約を予定)。ぜひ、多くの人たちに、この声明への賛同者になっていただきたいと、私たちは願っています(氏名を非公開にすることもできます)。大学教員、学生・院生の方々だけでなく、社会の広い分野の人たちにも賛同者になっていただければ、と思います。

 賛同署名は、上記のホームページに入っていただいて、そこで署名を行うことができます。よろしくお願いいたします。
 4月28日現在における,声明の呼びかけ人は次の通りです。

<呼びかけ人>(4月28日現在21人)
広田照幸(日本大学・教育学・本会代表)、内田樹(神戸女学院大学名誉教授・哲学)、佐藤学(学習院大学・教育学)、本田由紀(東京大学・教育社会学)、米田俊彦(お茶の水女子大学・教育史)、木村元(一橋大学・教育史)、加藤陽子(東京大学・日本近代史)、樋口陽一(東京大学名誉教授・憲法学)、池内了(名古屋大学名誉教授・宇宙物理学)、石川健治(東京大学・憲法学)、毛利透(京都大学・憲法学)、蟻川恒正(日本大学法科大学院・憲法学)中島岳志(北海道大学・政治学)、山口二郎(法政大学・政治学)、杉田敦(法政大学・政治学)、川本隆史(国際基督教大学・社会倫理学)、平川克美(立教大学・経営学)、石川康宏(神戸女学院大学・経済学)、平尾剛(神戸親和女子大学・身体論)、森まゆみ(作家)、斎藤美奈子(文芸評論家)

国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する声明


 本年4月9日の参議院予算委員会における安倍晋三首相の答弁を機に、文部科学省は国立大学に対して、入学式、卒業式において国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう要請するとされている。これは、日本における学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない大きな政策転換であり、看過できない。
 そもそも大学は、ヨーロッパにおけるその発祥以来、民族や地域の違いを超えて、人類の普遍的な知識を追究する場として位置付けられてきた。それぞれの国民国家の独自性は尊重されるが、排他的な民族意識につながらないよう慎重さが求められる。現在、日本の大学は世界に開かれたグローバルな大学へと改革を進めているが、政府主導の今回の動きが、そうした方向性に逆行することがあってはならない。
 日本近代史を振り返れば、滝川事件、天皇機関説事件、矢内原事件など、大学における研究や学者の言論が、その時代の国家権力や社会の主流派と対立し、抑圧された例は枚挙にいとまがない。その後の歴史は、それらの研究・言論が普遍的な価値にもとづくものであったことを示している。大学が国家権力から距離を置き、独立を保つことは、学問が進展・開花する必要条件である。文部科学省は今回のはたらきかけは要請にすぎないと説明しているが、国立大学法人が運営費交付金に依存する以上、「要請」が圧力となることは明白である。
 たしかに教育基本法第二条は、教育目標の一つとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養う」ことを掲げる。しかし、伝統と文化とは何かを考究すること自体、大学人の使命の一つであり、既存の伝統の問い直しが新しい伝統を生み、時の権力への抵抗が国家の暴走や国策の誤りを食い止めることも多い。教育基本法第七条が「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」とするゆえんである。政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することは、知の自律性を否定し、大学の役割を根底から損なうことにつながる。
 以上の理由から、我々は、大学に対する国旗国歌に関する要請を撤回するよう、文部科学省に求める。

2015年4月28日

学問の自由を考える会

京都大学一方的賃下げ無効・未払い賃金請求事件、5月7日判決言い渡し

京都大学職員組合
 ∟●5/7(木)14:00- 請求訴訟判決、傍聴に多数ご参...

京都大学一方的賃下げ無効・未払い賃金請求事件

                  
判決言渡

日 時:2015年5月7日(木) 14:00?
場 所:京都地方裁判所 第101号法廷

判決弁論報告会
同日14:30 京都弁護士会館 3階大会議室

傍聴に多数ご参加ください

 国家公務員に横並びでの賃下げによって、京都大学では 2012 年 8 月から2014 年3月まで、常勤教職員のほとんどが一方的な賃下げの対象とされました。教授職で約 70 万円、准教授や一般職掛長クラスで約 30 万円の減収でした。職員組合はこの賃下げに対して、2013年 6 月11 日に高山佳奈子・京都大学職員組合委員長(当時)を原告団長に未払い賃金請求訴訟を京都地裁に提起しました。当初、96 人だった原告団も、その後参加が相次ぎ、115 人に達しました。これまで 10回の口頭弁論が行われ、来たる5月7日に判決言渡の日を迎えます。

 この間の裁判闘争において、賃下げの不当性は明瞭になりました。まず東日本大震災の「復興財源」という国家公務員賃下げの大義名分が破綻していることは、会計検査院の 2013 年の報告書が示す通りです(2012 年度の「復興財源」のうち1 兆 3000 万 円 が 被 災 地 と 直 接 関 係 の な い 予算!)。さらに、わたしたち国立大教職員は国立大の法人化以降、公務員ではなく、民間の労働法制の適用対象となっており、国には賃下げを強制する権限がありません。国の事実上の強制という京大法人の主張はまったく根拠がありません。しかも、京大の収入のうち国の交付金が占める割合は 3 割にすぎず、この間にも京大全体の収入は増加しています。賃下げの財政的な必要性はまったくないのです。実際、団体交渉で、京大法人側は「財源がないから賃金を下げる」という主張を一度もしておりません。それどころか、京大法人は準備書面等において、定期預金が210億円あったとし、証人尋問では財務について供述できる者を証人とすることを拒否して、証人に「財務のことはわかりません」と証言させています。

 国家公務員でない国立大学教職員に適用される労働契約法の第9条では、労使の合意のない労働条件の不利益変更を禁じており、同第10条はその例外の要件として「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」ことを定めています。また、民事訴訟法は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない」(246条)とするとともに、判決「主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない」(253条2項)としています。

 これらのことから、口頭弁論、準備書面、書証において、賃下げの合理的な理由を挙証し得なかった京大法人に軍配を上げる理由を見出すことはできず、私たち原告団の勝訴を確信するところです。