全国
 カテゴリー 2015年06月

2015年06月30日

京大職組、定期大会特別決議「日本の真の民主主義実現に向け大学人の役割を果たすために」

京大職組
 ∟●日本の真の民主主義実現に向け大学人の役割を果たすために

日本の真の民主主義実現に向け大学人の役割を果たすために-京大職組第92回定期大会 特別決議

特別決議-日本の真の民主主義実現に向け大学人の役割を果たすために-

 誰もが知るとおり、現在、日本社会は大きな岐路に立っています。国会では、憲法学者がそろって違憲と明言する集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法案を、安倍首相が先に米国議会で行なった「この夏までに成就するという約束」を果たすために9月27日までの95日間の会期延長を行なってまで、強引な審議を行ない通そうとしています。国民の信を問うことなく行なわれようとしているこの行為は、約一年半前の政府による一方的な情報管理を定めた特定秘密保護法や約一年前の内閣の閣議決定のみによる集団的自衛権行使に関する解釈改憲と連動して、日本の「法にもとづく社会」という根本秩序を崩壊させるものです。

 そして誰もが知るとおり、現在、京都大学を含む日本の大学もまた大きな岐路に立っています。約一年前に国会で可決された「学校教育法改正」は大学の運営の意思決定を学長の専権事項に変えてしまいました。そして今度は政府による運営費交付金を理由として、文部科学大臣の単なる「要請」により、国立大学の入学式・卒業式における「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱を事実上押し付けようとしています。さらには国立大学の人文社会科学系学部・大学院の廃止提言等々、現在の政府は、あらゆる手段を使った大学への圧力により、日本社会に起きうる異論をあらかじめ封じる統制体制を導入しようとしているかのようにさえ受け止められます。こんなことになれば、国境を越え、言葉も越え、普遍的に真実をどこまでも追い求めようとする大学の理想像からなんと大きくかけ離れてしまうことでしょう。

 こうして明らかに、日本社会と日本の大学とは、軌を一にして同時に危機にさらされているのです。

 思えば、約2年前より私たちが闘ってきました「東日本大震災復興支援」を単なる口実とした不当な国立大学法人教職員の賃金引下げに対する裁判闘争や、ほぼ一年半前から行なわれた京都大学における民主的総長選挙存続のための闘争は、今起こってきているより大きな、全社会的な危機に対する闘争の“前哨戦”だったのではないでしょうか?
 危機は私たちの眼前にあります。しかし“前哨戦”を闘ってきた私たちにはそれに立ち向かうエネルギーが蓄積されています。

 私たちは決して屈しません。日本社会そして大学の理想をわがものとして実現する日まで、決して屈せず、日々の課題に全力で身を投じることを誓います。

 以上、決議します。

2015年6月27日 京都大学職員組合 第92回定期大会

2015年06月28日

大分大、学長選「投票」を廃止 北野正剛氏再任

朝日新聞(2015年6月27日)

 大分大学は25日、次期学長に北野正剛学長(65)の再任を決め、発表した。学長選考の際に教職員が投票する「意向調査」を廃止し、教授らで作る選考会議が次期学長を選出した。同大によると、意向調査をせずに学長を決めた国立大は九州で初めてという。

 大分大はこれまで教職員約650人が学長候補に投票し、選考会議が投票結果を踏まえ選んできた。今回は投票がなく、学部長らによる教育研究評議会などが北野氏ら2人を推薦。選考会議がそれぞれのプレゼンを聞いたり、面接したりして北野氏を選んだ。

 学長の権限を強める改正学校教育法が昨年成立したのをうけ、大分大は4月に学長選考の規定を改正した。北野氏は2011年に学長に就き、次の任期は今年10月から4年。


2015年06月26日

国旗・国歌要請、琉大「議論棚上げ」 学長が批判

琉球新報(2015年6月25日)

 琉球大学の大城肇学長は24日の定例記者懇談会で、下村博文文部科学相が16日に全国の国立大学長に入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請したことについて、個人的見解と断った上で「国が大学にグローバル人材の育成を求める一方で、国旗掲揚や国歌斉唱を求めるのは国粋主義的だ」と批判した。国旗・国歌の議論が学内に持ち込まれると混乱が懸念されるとして「当分は棚上げしたい」との方針を示した。
 大城学長は文科相要請に「アジアからの留学生が目にしたらどう思うか。国旗国歌は強制すべきものではない」などと述べた。
 琉大は1950年、米国軍政府布令で設置され、その後琉球政府立、復帰に伴い国立になった。大学によると、開学当初からの国旗・国歌への対応は記録が残っていないため確認できないが、少なくとも81年以降は卒業式や入学式で国旗掲揚・国歌斉唱をしたことはないという。
 大学では毎年260~300人前後の留学生が学んでおり、出身国・地域別(2014年5月時点)では中国が最多で、以下韓国、インドネシア、台湾とアジア圏が上位を占める。
 大城学長は個人的な考えとした上で「国旗を掲揚するなら留学生の母国全ての旗を掲揚したい。その方がグローバル教育を進める中で意味があるのではないか」と語った。
 国会などで「税金を使っている国立大は国の要請に応えるのは当然」といった意見があることに「地域に貢献することが社会に還元することになる。国旗を掲げることが(税金投入に)応えることになるとは思わない」と述べた。

自由法曹団、衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

1 労働者派遣法「改正」案は、2015年6月19日、衆議院厚生労働委員会と本会議で、相次いで強行採決され、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。 しかし、労働者派遣法「改正」案の審議は、極めて不十分である。①「改正」案は、業務単位の期間制限をなくし、直接雇用や正社員への道を奪うのか、それとも正規雇用を増やすのか? ②「改正」案の個人単位の期間制限は、派遣労働者の首切り自由をもたらすのか、それとも正社員化を促進するのか? ③「改正」案の均衡待遇の推進やキャリアアップ措置は、直接雇用につながるのか? ④「改正」案の4つの雇用安定措置は、実効性があるのか? ⑤施行予定日の1か月前に、「業務単位の期間制限違反の場合の労働契約申込みみなし制度」をなくし、多数の派遣労働者の直接雇用へ移行する権利を奪うことは正義に適うと言えるのか? 等々、解明が求められている問題点は、多数存在する。
 ところが、衆議院厚生労働委員会及び本会議では、6月19日、上記の問題点の審議も解明も極めて不十分なまま、「改正」案の採決を強行したのである。

2 自民、公明、維新の党は、同じ6月19日、衆議院厚生労働委員会と本会議で、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(「同一労働同一賃金推進法」)を、当初案の「派遣労働者について、待遇の均等の実現を図る」を「派遣労働者について、均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図る」に、「法制上の措置については、施行後1年以内に講ずる」を「施行後、3年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずる」に修正の上、賛成多数で可決した。
  同一労働同一賃金推進法は、上記修正により、均等待遇原則を骨抜きにされ、派遣労働者の処遇改善に役にたたないものとなっている。

3「改正」案は、一方で、直接雇用と結びついている「業務単位の期間制限」をなくし、他方で、派遣労働者を入れ替えれば、永久に労働者派遣を利用することができる「個人単位の期間制限」を導入している。しかも、「改正」案の「個人単位の期間制限」は、直接雇用と結びついておらず、派遣先に派遣切り自由の権限を与えている。このような仕組みと機能からして、「改正」案は、「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要し、「派遣労働者の首切り自由」を認める法案である。審議を尽くせば、「改正」案が「生涯派遣・正社員ゼロ」法案、「派遣労働者の首切り自由化」法案であることは、自ずと明らかになることである。
 このような中で、いま、全国の派遣労働者は、「改正」案によりますます不安定な働き方を強いられることについて、不安や反対の声を上げ始めている。

4 自由法曹団は、衆議院厚生労働委員会と本会議における労働者派遣法「改正」案の強行採決に強く抗議する。自由法曹団は、参議院において、徹底審議を尽くし、問題点を解明し、「改正」案を廃案にすることを強く要求するものである。

2015年6月25日

自由法曹団
団長 荒井 新二

2015年06月25日

名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、無謀・不当にも理事会が最高裁に上告受理を申し立て

■谷口教授を支援する会
 ∟●ニュース第30号(2015年6月24日)

無謀・不当にも名古屋女子大学・越原学園理事会が
最高裁に上告受理を申し立てました!!

 名古屋地方裁判所につづき、名古屋高等裁判所でも谷口教授側の勝利判決が出されましたが、名古屋女子大学・越原学園理事会は5 月15 日までに最高裁判所に上告受理申立をしました。このため谷口教授側の最終勝訴が確定するのは、かりに上告受理申立書の提出先である高等裁判所で学園の上告受理申立が却下されたとしても、7 月上旬になります。また書類が最高裁に送られれば、審理のためにさらに数ヶ月以上の時間がかかり、最終的に不受理(棄却)になるとしても高裁判決の確定が遅れます。


立憲デモクラシーの会、安保法制関連諸法案の撤回を求める声明

立憲デモクラシーの会
 ∟●安保法制関連諸法案の撤回を求める声明

安保法制関連諸法案の撤回を求める声明

立憲デモクラシーの会
2015年6月24日

国会で審議中の安保法制関連諸法案は、集団的自衛権の行使を容認する点、外国軍隊の武力行使と自衛隊の活動との一体化をもたらす点で、日本国憲法に明確に違反している。このような憲法違反の法案を成立させることは、立憲主義に基づく民主政治を根底から覆しかねない。ここにわれわれは全法案の撤回を要求する。

1.集団的自衛権行使容認の違憲性

政府見解の一貫性

 憲法9条の下で武力行使が許されるのは、個別的自衛権の行使、すなわち日本に対する急迫不正の侵害があり、これを排除するためにほかの適当な手段がない場合に限られる。しかも、その場合にも必要最小限度の実力行使にとどまらなければならない。この憲法解釈は、1954年の自衛隊創設以来、政府見解において変わることなく維持されてきた。集団的自衛権の行使には憲法9条の改正が不可欠であることも、繰り返し政府によって表明されてきた。

昨年7月の閣議決定

 集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定は、政府の憲法解釈には「論理的整合性」と「法的安定性」が要求されるとし、「論理的整合性」を保つには、従来の政府見解の「基本的な論理の枠内」にあることが求められるとした。その上で、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合には、当該他国を防衛するための集団的自衛権の行使も許容されるとしている。

論理的整合性の欠如

 しかし、個別的自衛権の行使のみが憲法上認められるという解釈と、集団的自衛権の行使が(限定的であれ)認められるという解釈とを、同じ論拠の上に成立させることはできない。自国を防衛するための個別的自衛権と、他国を防衛するための集団的自衛権とは、本質を異にするものであるからである。

法的安定性

 「法的安定性」について、昨年7月の閣議決定は、何ら語るところがない。しかし、ホルムズ海峡での機雷掃海活動が許容されるか否かについて、連立を組む与党の党首間でも見解が異なることを見れば、集団的自衛権の行使に対して明確な「限定」が存在しないことは明らかである。機雷掃海活動を超える武力の行使についても、現政権による発言がどうであれ、法的な歯止めがなければ、その都度の政権の判断次第でいつでも行われうることとなる。

砂川判決の意味

 砂川事件最高裁判決を根拠に集団的自衛権の合憲性を主張する向きも一部にあるが、砂川事件は、駐留米軍が憲法9条2項の禁ずる「戦力」に該当するかが争われた事件である。したがって、この裁判では日本の集団的自衛権は、全く争点となっていない。最高裁判決の先例としての価値は、具体的争点を基に語られるべきものであり、同判決が日本の集団的自衛権行使について判断しているとの主張は牽強付会である。

集団的自衛権行使は違憲

 要するに、現政権による集団的自衛権の行使の容認は、従来の政府見解の基本的な論理の枠を明らかに踏み越えており、かつ、法的安定性を大きく揺るがすものであって、憲法9条に違反する。

2. 外国軍隊等の武力行使との一体化

非戦闘地域の意味

 従来の政府見解は、「後方地域」での自衛隊による外国軍隊等の支援が、憲法の禁ずる武力の行使には当たらないものとするにあたり、自衛隊の活動が他国軍隊の武力行使と一体化しないことと、その活動が「非戦闘地域」に限られることという歯止めを設けてきた。「戦闘地域」と「非戦闘地域」との区分は、ある程度の余裕を見て自衛隊の活動地域を区分しようとの配慮に基づくものであり、実施期間を通じて活動を必ず合憲としうるための工夫であった。

武力行使との一体化へ

 今回の法案では、従来の「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別が廃止されている。現に戦闘行為が行われている現場以外であれば後方支援を実施しうるものとされ、自衛隊は、外国軍隊等への弾薬の供与や発進準備中の航空機への給油を新たに行ないうることとされている。もはや他国軍隊等の戦闘行為と密接不可分であり、具体的状況によって、外国軍隊の武力行使との一体化との評価を受けるおそれがきわめて高いと言わざるをえない。

3.国会軽視の審議過程

対米公約の問題性

 安倍首相は先の訪米時に、安保法制関連諸法案を今年8月までに成立させるという「対米公約」ともとれる発言を米議会で行った。まだ閣議決定さえされていない段階でのこのような発言は、唯一の立法機関たる国会の権威を損ない、国民主権をないがしろにするものである。

対米追随的姿勢

 本法案は内容的には本年4月に合意の「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)に沿ったものであり、国会審議でホルムズ海峡での機雷掃海などが強調されている背景に、米国の対日要求があるとも考えられる。条約ですらないものを、いわば憲法の上位に置き、それに合わせて実質的な改憲にも等しい立法化を進めることは許されない。また、このような対米追随ともとれる姿勢は、集団的自衛権行使に関して日本が自主的に判断できるとの政府の主張の信ぴょう性を疑わせる。

内閣による国会軽視

 国会審議においても、首相自らが質問者にヤジを飛ばしたり、大臣から「現在の憲法をいかにこの法案に適応させるか」という立憲主義を否定する発言があるなど、政府の対応は、国権の最高機関たる国会を中心とする立憲的な民主政治を尊重するものとはなっていない。

4 安全保障への影響

安全保障論のあいまいさ

 昨年7月の閣議決定は、集団的自衛権の行使が容認される根拠として、「我が国を取り巻く安全保障環境」の変化を挙げるが、その内容は、「パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威等」というきわめてあいまいなものである。

日米安保への過剰な期待

 世界各地でアメリカに軍事協力すれば、日本の安全保障へのアメリカの協力が強まるとの議論がある。しかし、アメリカはあくまで日米安全保障条約5条が定める通り、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」条約上の義務を果たすにとどまる。大規模な軍事力の行使について、アメリカ憲法は連邦議会の承認をその条件としていることを忘れるべきではない(米憲法1篇8節11項)。

抑止力万能論の陥穽

 日本を取り巻く安全保障環境が悪化しつつあるのであれば、限られた防衛力を地球全体に拡散するより、専守防衛に集中する方が合理的との判断もありうる。また政府は、集団的自衛権の行使容認が抑止力を高め、安全保障に寄与すると主張するが、日本が抑止力を高めれば、相手側がさらに軍備を強化し、結果的に安全保障環境が悪化しかねない(安全保障のジレンマ)。軍拡競争となれば、少子高齢化や財政赤字などの深刻な問題を抱える日本は、さらに大きなリスクに直面することになる。

国際協調による緊張緩和へ

 平和を維持するには、国際協調が不可欠である。外交交渉や「人間の安全保障」等によって緊張を緩和し、紛争原因を除去する努力を弛みなく続けていくことが、日本にとっての安全保障を導くのであり、抑止力にのみ頼ることはできない。

5. 結論

 安全保障関連諸法案は憲法に明確に違反している。立憲主義をないがしろにし、国民への十分な説明責任を果たさない政府に対して、安全保障にかかわる重大な政策判断の権限を与えることはできない。ここに全法案のすみやかな撤回を要求する。


「安保法案は違憲、撤回を」 法学・政治学者らが声明

朝日新聞(2015年6月24日)

 安全保障関連法案は違憲、撤回を――。法学や政治学の専門家らでつくる「立憲デモクラシーの会」は24日、声明を発表し、会期延長した今国会での法案成立を目指す安倍政権の政治手法を非難した。

 声明は、安保法案は集団的自衛権の行使を容認し、外国の軍隊と自衛隊の活動を一体化させる点で明確な憲法違反だと指摘。立憲主義をないがしろにし、国民への説明責任も果たさない政府に重大な政策判断をする権限はない、と訴えた。

 会見には政治学の山口二郎・法政大学教授、憲法学の樋口陽一・東大名誉教授、長谷部恭男・早大教授、小林節・慶大名誉教授ら9人が出席。自民党の高村正彦副総裁が「憲法学者の言う通りにしていたら、日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」と批判を繰り返すことについて、山口氏は「意見のぶつかり合いから戦後の平和国家の路線が生まれた」と反論。「政府批判は職業上の義務。この国の民主主義を健全に保つには必要との自負がある」と述べた。


2015年06月24日

福岡教育大学「未払い賃金請求訴訟」、第1回控訴審報告

熊本大学教職員組合
 ∟●福岡教育大学「未払い賃金請求訴訟」第 1 回控訴審報告

福岡教育大学「未払い賃金請求訴訟」第 1 回控訴審報告

本来の司法の役割をも問う控訴審、始まる!!
70 人が傍聴支援に参加!
!

控訴状、控訴理由書を痛烈・明快に陳述

 6 月 15 日(月)13 時 30 分から福岡高等裁判所501 法廷で、福岡教育大学未払い賃金請求訴訟の控訴審第1回が行なわれました。

 公判では、控訴状と控訴理由書について、原告団の岡俊房氏(福岡教育大学教職員組合書記長)と弁護団の吉村弁護士が意見陳述しました。岡氏は、今回の控訴は(1)国立大学法人で働く者の権利は労働法制のもとでいかに保障されるべきか、(2)国立大学法人において「学問の自由」と「大学の自治」はいかに保障されるべきかという 2 点にくわえて、(3)司法はいかにあるべきかを問うものであることを陳述しました。そのなかで岡氏は、2015 年 1月28 日の福岡地裁判決が「国民は、司法に対して、信頼も期待もできなくなってしまう」不当なものであることを痛烈に指摘しました。

 つづいて、吉村弁護士は控訴理由が(1)労働契約法第10 条の解釈適用の誤り、(2)労働契約法第10 条要件判断の誤り、(3)地裁判決では国立大学法人職員の労働基本権が否定されることになること、(4)地裁判決には多くの事実認定の誤りや判断遺脱があることの4点にあると明快に陳述しました。

 傍聴には原告側から70 人を越える方が参加し、傍聴席をほぼ満席にして公判を見守りました。福岡教育大学教職員組合以外からは、全大教(長山書記長以下6人)、加盟単組の山口大(2 人)、九州工業大(3人)、九州大(3 人)、佐賀大(4人)、大分大(7人)、熊本大(6人)、鹿児島大(1 人)の計32人が参加しました。記者席では6人の記者が傍聴していました。

報告集会にも 40 人が参加!!

 公判終了後、「アーバン・オフィス天神」の会議室で報告集会が開かれ、弁護団長の解説を学習しました。裁判所から徒歩 10 分と離れた会場であったにもかかわらず、報告集会にも 40 人の方が熱心に参加しました。

第2 回公判は9 月7 日、山口・九州地区の単組は傍聴支援のご準備を!!

 控訴審第2回公判は、9 月7日(月)11:30 から、同じく福岡高裁 501 法廷で行なわれます。控訴審の争点は、私たち国立大学法人の労使関係を左右するだけでなく、司法への信頼に関わるものです。月曜日は参加しにくい曜日ですが、次回は幸いにも夏休み期間中です。傍聴席を満席以上にできるよう、山口・九州地区の単組は傍聴支援行動への参加をご準備ください。


高知大学教職員組合、未払い賃金請求訴訟第9回口頭弁論のご報告

高知大学教職員組合
 ∟●未払い賃金請求訴訟第9回口頭弁論のご報告

未払い賃金請求訴訟第9回口頭弁論のご報告

2015年6月19日、高知地裁で第9回口頭弁論が開かれました。主な内容は、原告側準備書面(7)(8)の提出と、次回期日の設定で、約6分で終了しました(過去最速ではないかと思います)。傍聴者は17名でしたが、せっかく来ていただいたのに申し訳ない気もします。  口頭弁論後は弁護士会館に場所を移して、13名で口頭弁論報告集会を行いました。今回の準備書面(7)は今までの判例で示された就業規則の不利益変更の際の厳格な条件を整理し、(8)は不利益変更の必要性がなかったことを改めて主張したものです。  被告の反論である準備書面の期限は8月3日、次回第10回口頭弁論は9月4日の予定です。そろそろ主張が出揃い、証人尋問に入っていきそうな雰囲気です。質疑では、京大の判決の問題点、他大学の裁判の状況、国旗・国家の「要請」問題などが議論されました。  今回は、全大教の長山さんや、高知県労連の方たちが来て下さいました。どうもありがとうございます。そろそろ佳境に入っていきそうです。引き続きご支援の程、よろしくお願い申し上げます。


2015年06月23日

関西圏大学非常勤講師組合、「立命館大学当局による非常勤講師の労働条件の不利益変更と「脱法行為」を許すな!!」

関西圏大学非常勤講師組合
 ∟●立命館大学当局による非常勤講師の労働条件の不利益変更と「脱法行為」を許すな!!

立命館大学当局による非常勤講師の労働条
件の不利益変更と「脱法行為」を許すな!!

立命館大学で働くすべての非常勤講師の皆様へ

2015年6月16日
関西圏大学非常勤講師組合


 関西圏大学非常勤講師組合(当組合)は、 昨年度の大学側との団交で、改正労働契約 法に基づく就業規則の変更を行う場合は、 当組合に対して説明を行うとの約束を勝 ち取っていますが、2015 年 5 月 20 日、大 学常任理事会は、非常勤講師に対する雇用 契約を変更する決定をしました。これにつ いて当組合として関係文書を入手し、大学 側に説明会の開催を求めたところ、裏に示 した日時で行われることになりました。
 つきましては、皆様にその主な内容を紹 介いたしますとともに、説明会への参加を 呼びかけるものです。
 なお当組合は、この変更における定年引 き下げは不利益変更であり、授業担当講師 制度の新設は脱法行為(改正労働契約法 18 条違反)である、と考えています。

以下、5 月 20 日の理事会文書からの抜粋 です。

1 現行の非常勤講師にかかる対応

① 2016 年 4 月以降、非常勤講師として の 新たな雇用は行わない。
② 前記①にかかわらず、2015 年度に非 常勤講師として雇用契約があるものに ついては、経過措置として、科目の適 合性および専門性を勘案し、現行の非 常勤講師制度による契約更新を行うこ とがある。雇用年齢上限は 70 歳(組合 注:現行 75 歳)。ただし経過措置あり。
③ 2015 年度に非常勤講師として雇用契
(裏に続く)

約にあったもので、2018 年 4 月以降、 改正労働法に定める無期転換の要件を 満たした場合(組合注:2013 年 4 月以 降連続して非常勤講師の職にあったも の)は、本人の申し出により無期労働 に転換する。無期労働契約になること にともない、以下の 4 点を設ける。こ れ以外は直前の非常勤講師契約の労働 条件と同じ。
1)定年を満 70 歳とする。ただし、2016年 3 月 31 日時点の年齢が満 61 歳から満 74 歳のものにあっては経過措置を 定める。
2)本学の授業編成方針にしたがうこと。
3)カリキュラム改革等により担当する 授業時間数に変動があること。
4)カリキュラム改革等により、他の学 部で開講する類似の授業科目等も含 めて担当する授業科目がすべてなく なる場合は解雇となること。

2 授業担当講師の新設

① 現行の非常勤講師制度に替わる新制 度として、2016 年 4 月から授業担当講 師制度を設ける。
② 雇用期間は、1 学期、1 年または集中 期間とし、双方合意の場合、契約を更 新することがある。ただし、5 年目を 超える契約の更新は行わない。
③ 雇用年齢上限は 70 歳とする。

上記以外にも細かい規定が多くあります。 また、不明瞭な点もあります。また、すべての非常勤講師に対して説明会を開くの かどうかは現時点では不明です。

組合に対する説明会(教職員組合への説 明会と合同です)は、6 月 26 日(金)午 前 9 時から 10 時 30 分まで、衣笠キャンパ スの至徳館(地下が購買部になっている建 物)4 階 402 号室であります。なお、この 日時設定は当組合の都合によるものです。


京滋私大教連、「直接雇用や正社員への道を閉ざす労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!」

京滋私大教連
 ∟●直接雇用や正社員への道を閉ざす労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!

直接雇用や正社員への道を閉ざす
労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!

 6月19日の午前に開かれた衆議院厚生労働委員会において、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正」法案(以下「改正」法案)が、自民党・公明党の賛成で法案が可決され、同日午後に衆院本会議へ緊急上程され、採決が強行されました。

 「改正」法案は、現行法では「専門的な26業務」を除いて、原則1年、最大3年となっている派遣労働について、期間の制限を撤廃し、働き手さえ変えれば、無期限で派遣労働を受け入れることができるようにするものです。

 本法案の国会への提出は 3 度目となりますが、2 度にわたって廃案となった法案をそのまま提出すること自体、国会審議を軽視した対応ですが、5 月半ばに始まった本法案の国会審議を通して、改めて法案の問題点が浮き彫りになっています。

 派遣労働者の受け入れ期間が制限されていれば、企業側は期限を迎えてもその業務を続けたい場合は、派遣労働者に直接雇用を申し出なければなりませんが、期間制限が撤廃されれば、企業は労働組合や労働者過半数代表の意見を聞くだけで、人を入れ替えたり、部署を変更して派遣労働者を使い続けることができることになります。

 今回の法案提出にあたって、政府は条文に派遣は「臨時的一時的なものである」との原則を「考慮する」といった文言を盛り込みました。しかし、派遣の期間制限をなくし、正社員への道が閉ざされてしまえば、「考慮する」だけでは何らの歯止めにもなりません。 法案審議のなかでは、企業側が派遣労働受け入れ期間に違反した場合、派遣労働者に労働契約を申し入れたものと「みなす」規定が、今年 10 月から実施される予定であるにも関わらず、今回の「改正」法案が 9 月から施行されることになれば、その意味がなくなることも重大な問題として浮上しました。

 今回の「改正」法案では、派遣期間の制限がない 26 業務の指定も廃止されるため、専門的な派遣労働者が大量に解雇されることへの不安も広がっています。こうした不安に応えるためにも正社員との格差を是正し、雇用の安定化を図るための法整備をすべきですが、与党と維新の会が合意した「同一労働・同一賃金推進法」の修正案は、これらの問題を何ら解決するものではありません。

 与党との協議で修正された「同一労働・同一賃金推進法案」は、原案では正社員との格差是正のための立法措置を「1 年以内」に行うことを義務付けていましたが、これを「3 年以内」へと先送りにするとともに、「法制上の措置を含む必要な措置を講じる」と変更し、「同一労働・同一賃金」の実効性を大きく後退させる内容となっています。

 また、原案で「職務に応じた待遇の均等の実現」となっていたものを、修正案では「その業務の内容及び当該業務の責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇および均衡のとれた待遇の実現」と変更されています。これでは、派遣社員と正社員では「業務の内容」(労働時間や休日など)や、「責任の程度」(部署での地位など)が違うという理由で、待遇の違いを「正当化」されることになってしまいます。

 さらに、派遣法「改正」案では「政府は…(中略)…その能力を十分に発揮して充実した職業生活を営むことができる社会の実現のための取組を一層推進するため、労働者の解雇に関する法制度を含めた労働に関する法制度の在り方について、これに関連する社会保険制度の在り方と併せて、抜本的な見直しを行うものとする」との附則(第二条)を加えており、「労働者の解雇に関する法制度」の「抜本的な見直し」に言及している点は極めて重大です。今回の労働者派遣法「改正」法案は、派遣労働者の問題だけにとどまらない、解雇規制の緩和に向けた重大な見直しを行おうとするものであり、法案の廃案に向けた共同の取り組みを呼び掛けるものです。

2015年6月22日
京滋地区私立大学教職員組合連合
書記長 佐々江洋志

2015年06月20日

大学評価学会、声明「『安全保障関連法案』の撤回を求めます」

大学評価学会
 ∟●声明「『安全保障関連法案』の撤回を求めます」

大学評価学会の代表理事等有志は「安全保障関連法案」の撤回を求めます

2015年6月19日

 大学評価学会(以下、学会)は2004年3月に発足して以降、日本の大学(高等教育)の発展を願うとともに、学生(若者)と大学教職員の発達保障を願って、大学評価に関する学術的な営みを続けてきました(大学評価学会設立大会「大学評価京都宣言=もう一つの『大学評価』宣言」http://www.unive.jp/)。国会では現在、「安全保障関連法案」に関する審議が行われていますが、わたしたちの学会の立脚点からしてこの法案の内容および審議は大きな問題を有していると考えます。そこで、以下のような見解を表明し、日本の社会の民主的な発展と日本の大学(高等教育)の社会的な責任の発揮に向けた営みを続けていく決意を表明します。

 安全保障は軍事的なパワーに依るべきではなく、市民社会の合意にもとづいて平和的な手段によって実現されるべきものです。しかるに現在、政府によってめざされている安全保障は軍事力に依拠するものであり、国際的に緊張感をいっそう高めるものです。第2次世界大戦の反省にたって、日本国憲法は、その前文で「・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言し、また第9条は「・・・武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と明記しました。日本国憲法は、戦後の国際社会において先駆的な役割を果たしてきました。それは、ノーベル平和賞の候補にあがるほど画期的な意味を有しているものです。

 基本的な人権の一つである学習権(教育権)は、平和な社会でこそ可能になるものです。第2次世界大戦後の日本がさまざまな課題を抱えつつも発展をとげてきた原動力の一つは、教育の力に他ならないと考えます。これからの日本社会の発展にとっても、教育は引き続き大きな力を発揮すると考えます。その際に、日本国憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」非戦・平和の精神は、重要な指針を与えてくれるものと確信します。

 ところが、政府が提案する「安全保障関連法案」が立脚するのは、以上のようなこととは全く異なります。学問の自由や教育の自由は大きく制約され、軍事(戦争)のための学問に資することを求められかねません。この動きは、特定秘密保護法制定以来すでに軍産学共同(協同)による研究・教育への圧迫として顕在化しています。さらには、多様な国籍をもち、思想信条や信仰の異なる人々が「学問の自由」の下に集う(国立)大学に対して、式典等での国旗掲揚・国歌斉唱を強く要請する事態にまで至っています。わたしたちの研究や教育は、真理の探究、平和で民主的な社会、国際理解の実現をめざしたものであり、政府が提案する「安全保障関連法案」が目ざすものとは根本的に異なります。

 わたしたちは高等教育機関において教育や研究に携わっています。70年以前の日本の社会は、未来ある若者たちを戦場に送り、戦死者として迎えたことを想起しなければなりません。「安全保障関連法制」が実現されれば、わたしたちの身近にいる学生たち、若者たちが戦場に銃をとって向かい、戦死者として弔われることとなる恐れさえあるのです。

 以上のようなことから、わたしたち代表理事等有志は学問の自由・教育の自由、そして未来ある若者の発達保障、さらには21世紀の平和で持続可能な国際社会の発展に向けて、政府が提案する「安全保障関連法案」に反対するとともに、会期延長は行わず法案を速やかに撤回し廃案とすることを強く求めるものです。

【植田健男(代表理事)/重本直利(代表理事)/井上千一(副代表理事)/岡山茂(副 代表理事)/日永龍彦(副代表理事)/渡部昭男(事務局長)/細川孝(事務局次長)】

学長選考法見直し 教授らの投票廃止 大分大

大分合同新聞(2015年6/19)

 次期学長選考が進められている大分大学は今春、学長の任期と選考方法を見直した。教授らによる投票「意向調査」をやめ、学内外の委員で構成する「学長選考会議」が、一定の推薦を集めた候補者の中から面接やプレゼンテーションをして選ぶ。任期の制限を撤廃し、何度でも再任可能とするなど、「学長がリーダーシップを発揮できるような学内のガバナンス(統治)態勢をつくるのが狙い」と大学側。新しい方法で選んだ新学長は25日に決まる。

 学長の任期は1期4年。これまで再任は1回だけ可能で、その場合は2年に限っていた。意向調査は、2004年の大学法人化後、学長選挙に代わるものとして実施されていた。投票結果は、あくまでも学長選考会議が「参考」にするものとの位置付けだったが、これまでは意向調査で最も多く得票した人が学長に選ばれてきた。
 松崎和之総務部長は「意向調査の結果を学長選考会議が追認する形だった。同会議が主体的に選考するため、意向調査を廃止した」と説明している。
 学長のリーダーシップを強化するため、各学部長の選考方法も変更する。学部ごとに教授会で実施していた選挙をやめ、学長が現職の学部長から意見を聞きながら候補者を選んだ上で、面談などをして学部長を任命するようにした。
 昨年2月に中央教育審議会が「大学のガバナンス改革の推進について」を文部科学大臣に答申。答申では学長選考について「一部には学長選考組織が主体的に選考しているとは言い難い状況もみられる」として「選考方法が十分に適切か慎重に吟味する必要がある」と指摘していた。
 今年4月に国立大学法人法などが改正され、文科省は各大学に学長選考の透明化や学長のリーダーシップ確立を求めている。


社説[国旗国歌の要請]大学の自治 侵害するな

沖縄タイムス(2015年6月19日社説)

 大学の自治が脅かされている。そう感じざるを得ない事態だ。

 下村博文文部科学相は国立大の学長らに対し、入学式や卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を実施するよう要請した。

 発端は、4月の参院予算委員会での安倍晋三首相の答弁だった。次世代の党の議員から、国立大の国旗国歌実施率の低さを問われ、安倍首相は「税金によって賄われていることに鑑みれば、新教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」と述べた。今回の要請は、この答弁を受けたものだ。

 安倍首相が指摘した「新教育基本法の方針」とは、改正教育基本法で教育目標に盛り込んだ「わが国と郷土を愛する」態度を指すとみられる。ただ、同法は、大学について別途、「自主性、自律性が尊重されなければならない」とも定めている。

 文科省によると、国立大全86校のうち、ことし3月の卒業式での国旗掲揚は74校、国歌斉唱は14校だった。実施するかどうか、それぞれの大学が自主的に判断したものだろう。その自主性を無視して「正しく実施されるべき」と断じるのは矛盾してはいないか。

 学習指導要領では国旗掲揚と国歌斉唱の指導が明記されているが、大学には適用されない。文科相は「慣行として国民に定着している」と説明したものの、要請に法的な根拠はない。

 にもかかわらず、大学が自ら行う式典の中身に政府が口を挟むことに疑問を禁じ得ない。ただちに撤回すべきだ。

    ■    ■

 琉球大学は国旗掲揚、国歌斉唱とも実施していない。大城肇学長は、学内の混乱を懸念し「大学改革など先にやるべきことがある」と話す。国旗掲揚のみ実施している滋賀大学の佐和隆光学長も「納税者に対して教育、研究で貢献することが責務だ」と批判的だ。大学の役割を考えればもっともな意見である。

 一方で、国立大関係者には動揺が広がっているという。文科相がいくら強要を否定しても額面通り受け取れないのは、国立大には政府に財布を握られている弱みがあるからだ。

 大学法人化以降、国立大は「成果」が求められ、国から支給される運営費交付金は減少傾向が続く。さらに文科省の有識者会議は、国の方針に従って改革を進める大学に交付金を重点配分する制度の導入をまとめた。

 本来は、大学改革と国旗国歌は別次元の話だ。しかし、「税金で賄われている」ことをちらつかせながら意に沿うよう求めるのは、もはや「要請」とは名ばかりの「圧力」でしかない。

    ■    ■

 首相発言を受け、学者らの呼び掛けで発足した「学問の自由を考える会」は、「政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することは、知の自律性を否定し、大学の役割を根底から損なうことにつながる」との声明を発表した。

 大学が政府から思想弾圧された戦前の歴史を繰り返してはならない。国立大学側は毅然(きぜん)とした態度を貫き、学問の自由と大学の自治を守ってもらいたい。


2015年06月18日

国立大に経営力戦略 文科省、特色内容で交付金

道新(06/17)

 文部科学省は16日、経済成長につながる人材育成を目指す「国立大学経営力戦略」を、東京都内での国立大学長会議で発表した。国立大を《1》地域のニーズに応える《2》特定分野で全国的な強みを出す《3》世界トップクラスの研究を行う―の三つの枠組みに分類。積極的に取り組む大学に対し、2016年度から運営費交付金を重点配分する内容だ。

 少子高齢化や国際的競争の激化を背景に、国立大の機能を強化し、産業構造の変化に対応した人材づくりを狙う。各大学が三つの枠組みのいずれかを選択し、夏ごろまでに取り組み内容案を文科省に提出。同省が有識者の意見も踏まえて交付金の配分額を決める。年度ごとに進展状況を確認し、特に優れた取り組みにはさらに加算を検討する。

 戦略はこのほか「既存の枠組みや手法にとらわれない大胆な発想の転換」を要請。研究態勢強化や大学の強みとなる取り組みなど、各大学の特色を発揮させるため、学長に一定の裁量を持たせた経費を新設する。


2015年06月17日

国立大「改革」 無理ある要請だ。撤回を

道新(6/17)

 下村博文文部科学相はきのう国立大の学長を集め、中期目標(2016~21年度)の策定に当たって踏まえるべき基本線を示した。

 各大学は国や経済界が描く大学像に沿うように特色づくりや学部再編を進めてもらいたい―。文科相の要請には、こうした国の意思が強くにじんだ。

 だが、大学を鋳型にはめ込み、研究現場から自由や自主性、多様性を奪えば、知力が先細りするのは目に見えている。文科相は要請を撤回すべきである。

 要請は、すでに文科省が各大学に通知した「人材育成などで地域に貢献」「強みある分野で世界的、全国的な教育研究」「全学的に世界で卓越した教育研究」の三つの枠組みに沿った改革方針だ。

 各大学はいずれかを選んで研究内容や組織を見直す。国から高い評価を得れば交付される運営費が増え、場合によっては逆もある。

 1兆円を超える運営費の分配が各大学で収入の3~4割を占める以上、従わない選択肢はあるまい。今後、お眼鏡にかなう目標や計画が出せるかを競う状況が生まれることは避けられない。

 特に問題なのは、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院に対し「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組む」と促したところだ。

 経済成長や技術革新を重視するあまり、実利や短期的な成果が期待できない分野を切り捨てる発想が見て取れる。

 しかし、人文・社会科学の基礎を成すのは価値観や倫理、社会思想の探究であり、それは健全な批判精神や創造力につながる。

 それなくして社会が進むべき方向づけや心の豊かさの実現、すべきこと、なすべきではないことの判別はままならない。

 15日に開かれた国立大学協会の総会で学長らから懸念が相次ぎ、里見進会長(東北大学長)が「短期で成果を挙げようと世の中が性急になりすぎているのでは」とクギを刺したのはもっともだ。

 文科省の方針の下敷きには政府の産業競争力会議からの要請がある。4月の会議で、大学の役割を明確にし交付金の配分にメリハリを付ける方向を打ち出した。そもそもそれが筋違いで無理がある。

 04年に国立大学が法人化された際、各大学が独自性を発展させ、主体的に研究を切磋琢磨(せっさたくま)する将来像を多くの教員が描いたはずだ。

 その期待を裏切るばかりか、反対の方向に向かうようでは大学の未来は危うい。

国立大学改革 人文系を安易に切り捨てるな

読売新聞(2015年06月17日)

 「知の拠点」としての役割を果たせるよう、国立大学が自ら改革を進めることが重要だ。

 文部科学省が、86の国立大学に対し、組織や業務の全般的な見直しを求める通知を出した。各大学は通知を踏まえて、来年度から6年間の運営目標と計画を作成する。

 2004年度の国立大学法人化により、大学の運営や財務は自由度が高まった。にもかかわらず、依然として魅力や個性に乏しい大学があるのも否めない。

 大学が、グローバルに活躍する人材や地方創生の担い手を育成する機能への期待は大きい。文科省が今回の通知で、各大学に改めて、強みや特色を明確に打ち出すよう促したのは理解できる。

 昨年の学校教育法改正で、学長はリーダーシップを発揮しやすくなった。学長が人事や予算の権限を適切に行使し、戦略性を持って、教育・研究の環境整備を図ることが欠かせない。

 疑問なのは、文科省通知が、文学部など人文社会科学系や教員養成系の学部・大学院について、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換を迫った点だ。

 確かに人文社会系は、研究結果が新産業の創出や医療技術の進歩などに結びつく理工系や医学系に比べて、短期では成果が見えにくい側面がある。卒業生が専攻分野と直接かかわりのない会社に就職するケースも少なくない。

 社内教育のゆとりが持てない企業が増える中、産業界には、仕事で役立つ実践力を大学で磨くべきだとの声が強まっている。英文学を教えるより、英語検定試験で高得点をとらせる指導をした方が有益だという極論すら聞こえる。

 だが、古典や哲学、歴史などの探究を通じて、物事を多面的に見る眼めや、様々な価値観を尊重する姿勢が養われる。大学は、幅広い教養や深い洞察力を学生に身に付けさせる場でもあるはずだ。

 必要なのは、人文社会系と理工系のバランスが取れた教育と研究を行うことだろう。

 文科省は来年度以降、積極的に組織改革を進める大学に、運営費交付金を重点的に配分する方針だ。学生の就職実績や、大学発ベンチャーの活動、知的財産の実用化の状況といった指標を基に、評価するという。

 厳しい財政事情を踏まえれば、メリハリをつけた予算配分も大切だろう。ただ、「社会的要請」を読み誤って、人文社会系の学問を切り捨てれば、大学教育が底の浅いものになりかねない。


人文社会系学部「京大には重要」 山極総長、文科省通達に反論

京都新聞(2015年06月17日)

 文部科学省が国立大学に人文社会系の学部や大学院の組織見直しを通達したことについて、京都大の山極寿一総長は17日、「京大にとって人文社会系は重要だ」と述べ、廃止や規模縮小には否定的な考えを示した。

 通達は2016年度から始まる国立大学の中期目標の策定に関する内容で8日に送られた。教員養成系や人文社会系の学部・大学院について、18歳人口の減少や人材需要などを踏まえ、「組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」としている。

 山極総長は「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。(下村博文文科相が要請した)国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」と説明した。


国旗・国歌国立大に要請 学長ら異論、戸惑いも

東京新聞(2015年6月17日)

 下村博文(はくぶん)文部科学相は十六日、国立大学の学長を集めた東京都内での会議で「国旗と国歌の取り扱いについて、適切にご判断いただきたい」と述べ、入学式や卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を行うよう求めた。法的な根拠がない異例の要請で、大学側からは憲法が保障する「学問の自由」や「大学の自治」を揺るがしかねないとの批判も出ている。
 下村文科相は要請後、記者団に「最終的には各大学が判断されることで、大学の自治や学問の自由には全く抵触しない。お願いしているだけで、介入ではない」と強調。一九九九年に国旗国歌法が施行され「広く国民の間に定着している」と根拠を説明した。
 しかし、終了後に取材に応じた出席者らからは、異論や戸惑いが聞かれた。国旗掲揚はしているが、国歌斉唱はしていない滋賀大の佐和隆光学長は「来年以降も現状を続けようと思っている。教育研究面で納税者に貢献することがわれわれの責務で、必ずしも国の要請に従う必要はない」と強調。国旗掲揚、国歌斉唱とも一度も実施したことがない琉球大の大城肇学長は「かなり混乱するので、学内での議論は棚上げしたい」と話した。
 今回の要請のきっかけとなったのは、四月の安倍晋三首相の国会答弁。国旗掲揚と国歌斉唱について「(国立大が)税金で賄われていることに鑑みれば、正しく実施されるべきではないか」と答弁していた。
 背景には、国立大全八十六校中、今春の卒業式で国旗掲揚を行ったのが七十四校、国歌斉唱が十四校にとどまるという実態がある。国旗掲揚と国歌斉唱の指導を明記した学習指導要領に基づき、ほぼ全ての公立小中高校が入学式などで実施するのと事情が異なる。
 大学では戦前、研究や言論が国家権力に抑圧され、戦後に自治や学問の自由が認められてきた経緯がある。会議に出席しなかった国立大の幹部は「大学経営が厳しい中、国は運営費交付金の減額をちらつかせ、大学が今まで守ってきたことを曲げさせようとしている。公権力の介入はあってはならない」と批判した。 (沢田敦、安藤恭子)

大学オンブズマン・常葉大学巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会、第3回会合のご案内

■大学オンブズマン・常葉大学巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会
 ∟●第3回会合のご案内

大学オンブズマン・常葉大学
巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会
第3回会合のご案内

 常葉大学短期大学部准教授 巻口勇一郎先生は2015年3月31日付で、学校法人常葉学園から懲戒解雇処分を受けました。その理由は、就業規則における「学園の秩序を乱し、学園の名誉または信用を害したとき。」に該当するというものです。具体的な行為(事実)としてあげられているのは、巻口先生が法人本部職員、法人理事長、法人副理事長兼短期大学学長を強要罪にあたるとして静岡地方検察庁に告訴(結果は不起訴)したことです。
 わたしたちはすでに巻口先生の告訴は市民的な権利を正当に行使したものであること、巻口先生が告訴の際に示した内容は事実にもとづいており、検察も巻口先生からの告訴を「受理」したこと、さらに懲戒処分は巻口先生によって公表された私学助成の不正取得に対する報復措置であることを指摘してきました。
 巻口先生は3月に地位保全の仮処分裁判を起こされ、間もなく静岡地方裁判所の決定が出される予定です。巻口先生へのこれからの支援に向けて、この機会に第3回会合を開催いたします。多くの方々のご参加をお待ちしております。

・日時:2015年7月4日(土)13:30~
・場所:静岡産業経済会館3階第3会議室(静岡市葵区追手町 44-1)
  ※静岡駅から徒歩10分程度、静岡赤十字病院の西側。
・内容:仮処分決定の内容について(弁護団に要請中)
    本訴の取り組みについて(  〃  )
    支援の取り組みについて(意見交流)
    その他

主 催:大学オンブズマン・常葉大学巻口勇一郎先生を支援する全国連絡会
共 催:労働組合法人全国大学人ユニオン
連絡先:075(645)8634(細川)

文科相、国立大に国旗・国歌要請

文科相 国旗・国歌で適切な判断を要請

NHK(6月16日)

下村文部科学大臣は、国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着している」などと述べたうえで、各大学で適切に判断するよう要請しました。
安倍総理大臣は、先の国会審議で、国立大学の入学式や卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を行っていないケースがあると指摘されたのに対し、「国立大学の運営が税金で賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」などと述べました。
これに関連して、下村文部科学大臣は、16日国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗と国歌はどの国でも国家の象徴として扱われている。国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着していることや、平成11年に国旗および国歌に関する法律が施行されたことを踏まえ、各国立大学で適切に判断いただけるようお願いしたい」と述べました。
今回の要請を巡っては、国内の大学教授らで作るグループが「学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない」などとして反対する声明を発表しています。
下村大臣は16日の要請のあと記者団に対し、「最終的には各大学が判断されることであり、要請が大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。昔と比べると、国旗や国歌に対する国民の意識も変わってきたと思うので、時代の変化を各大学で適切に判断していただきたい」と述べました。
要請を受けた学長たちは
16日の会議に出席していた滋賀大学の佐和隆光学長は「国旗掲揚と国歌斉唱に関する要請にあたっては、国立大学が税金でまかなわれていることが要請の理由ともとれる発言がこれまでに聞かれたが、納税者に対して教育研究で貢献することが大学の責任だ。今回の要請に従う必要はないと思っている」と話しました。滋賀大学では国旗掲揚はしており、国歌斉唱はしていないということです。
また、国旗掲揚も国歌斉唱もしていない京都大学の山極壽一学長は「『適切に』ということだったので、大学の自治を尊重してくれていると考える。対応はまだ決められないが、これまでの伝統を踏まえて議論する」と話していました。
琉球大学の大城肇学長は「大学ができて65年になるが、日本に返還される前も国立大学になってからも国旗掲揚や国歌斉唱は行っていない。大学改革など優先して取り組まなければならない課題があり、今回の要請にどう対応するかの議論は棚上げにしておきたい」と話していました。
要請の経緯と反対の動き
今回の要請は、入学式や卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を行っていない国立大学があると、ことし4月、国会で指摘されたことがきっかけでした。
国会議員からの要求を受けて、文部科学省が初めて全国86の国立大学を対象に、国旗と国歌の扱いを調べたところ、ことしの入学式で、国旗掲揚を実施すると答えたのは74校、国歌斉唱を実施すると答えたのは15校でした。
教育現場での国旗掲揚と国歌斉唱。小中学校と高校では、入学式や卒業式などで国旗掲揚と国歌斉唱を行うよう指導すると学習指導要領に定められていますが、大学にはそうした規定はありません。
平成11年、日の丸・君が代を国旗・国歌と定めるための法案を審議していた参議院の特別委員会では、当時の有馬文部大臣が「大学は学習指導要領が適用されないので、少し違った立場になる。国立・公立大学の入学式、卒業式における国旗や国歌の取り扱いについては、入学式などが大学の教育研究活動の一環として行われていることに鑑みて、各大学の自主的な判断に任せられている」と答弁しました。
国立大学に対する今回の要請については反発の声が挙がっていて、教育学や憲法学が専門の大学教授らおよそ20人で作るグループが「政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することになり、学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない」などとして、要請に反対する声明を4月に発表しました。
このグループの声明に賛同して署名した人の数は、先月末時点で3250人余りとなっています。今月に入ってからも、弁護士やNPO関係者などおよそ200人のグループが反対声明を出しています。
また、15日は全国の国立大学で作る「国立大学協会」の会長に再任された東北大学の里見進学長が会見で、「大学では表現や思想の自由は最も大切にすべきもので、それぞれの信条にのっとって各大学が対応すると思う。萎縮しないよう頑張っていきたい」と話しました。
専門家「要請は大学を委縮させる」
大学教育の在り方を研究している日本高等教育学会の会長で、筑波大学の金子元久特命教授は今回の要請について、「国立大学は国の財政負担の上に成り立っており、『要請だけだ』と言っても、大学を萎縮させる効果を持つだろう」と話しています。
そのうえで「国立大学の法人化は、政府の直接の関与を受けず大学が自分で考えイノベーションを生ませることが精神だったはずだ。グローバル化のなかで外国人の学生や教員も増えているがそうした人たちにも国歌斉唱を求めるのは現実的ではなく、大学の自立性や国際化の観点から見て問題だと思う」と述べました。
一方で、「大学の自治は守られるべきだという一辺倒でこうした動きに反対するのはもう無理だと思う。なぜ自立性が必要か、国立大学が社会に何を還元すべきか、もっと真剣に考えていかなければいけない」と話していました。

文科相、国立大に国旗・国歌要請 大学自治巡り反発も

日経(2015/6/16)

 下村博文文部科学相は16日、東京都内であった全国の国立大学長らが一堂に会する会議で「国旗と国歌の取り扱いについて適切に判断いただけるようお願いします」と述べ、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した。「大学の自治」への介入とも受け止められかねない発言に、各学長から様々な声が聞かれた。

 下村文科相は要請後、記者団に「最終的には各大学が判断することで、大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。介入ではない」と強調。国旗国歌法の制定から15年以上が経過しているとして「国民が国旗や国歌に親しみを感じるようになってきた」と要請の理由を説明した。

 小中高校の学習指導要領では、入学式などで国旗掲揚や国歌斉唱を指導するよう定めているが、国立大学にはこうした規定はない。文科省によると、全国の国立大86校のうち、今年3月の卒業式で国旗を掲揚したのは74校、国歌を斉唱したのは14校だった。

 国立大での国旗国歌については、4月の参院予算委員会で安倍晋三首相が「正しく実施されるべきではないか」との認識を示し、下村文科相も「各大学で適切な対応が取られるよう要請していきたい」と述べていた。

 一方、入学式などで国旗掲揚や国歌斉唱をしていない京都大の山極寿一学長は「下村文科相は『適切に』と言っており、大学の自治を尊重してもらっていると考える。伝統を踏まえ適切に議論する」と発言。両方していない琉球大の大城肇学長は「学内で議論すれば混乱するので当面棚上げする。大臣の話だから強制的と捉える大学はあるかもしれない」と話した。

 国歌斉唱をしていない滋賀大の佐和隆光学長は「強制とは受け止めないが、(下村文科相が言うように)国歌斉唱が慣習になっているとは思えない」と否定的な見方を示した。

文科相、国立大に国旗・国歌要請…大学側反発も

読売(2015年06月16日)

 下村文部科学相は16日、国立大全86校の学長らを集めた東京都内の会議で、入学式や卒業式の際には国旗掲揚や国歌斉唱を行うよう要請した。

 国旗掲揚と国歌斉唱を両方とも行っている国立大は約16%にとどまっており、大学関係者からは「大学の自治や自主性は尊重されるべきだ」などと反発する声も上がっている。

 会議は文科省が各国立大に大学入試改革や運営費交付金などの方針を説明するために開かれた。その際、下村文科相は国旗掲揚や国歌斉唱について、「各国立大の自主的な判断に委ねられているが、適切に判断いただけるようお願いする」と実施を求めた。

 国立大での国旗掲揚などを巡っては、安倍首相が今年4月の参院予算委員会で、「税金によって賄われていることに鑑かんがみれば、(愛国心などのかん養をうたった)教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきだ」との考えを示していた。

 小中高校の場合、学習指導要領に国旗掲揚と国歌斉唱を行うよう明記されているが、大学については明確な規定がなく、各大学の裁量に任されている。文科省の調査によると、今年の卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱をいずれも行った国立大は14校。国旗掲揚のみ実施したのは60校で、12校はどちらも行わなかった。国旗掲揚の方法としては、式典会場の壇上に学校の旗とともに掲げたり、式場の外のポールに揚げたりで、国歌については「演奏だけ行っている」という大学も含まれている。

国旗国歌要請:文科相「適切判断」迫る 国立大学長は困惑

毎日新聞(2015年06月16日)

 下村博文・文部科学相は16日、東京都内で開かれた国立大学86校の学長を集めた会議で、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した。さらに、文科省が8日に通知した文系学部の廃止などの組織改編を進める方針についても説明し、改めて改革を促した。補助金と権限を握る文科省からの相次ぐ求めに、出席した学長らの間には困惑が広がり、一部の教員からは「大学攻撃だ」と反対の声も上がっている。

 国旗・国歌については、安倍晋三首相が4月に国会で「税金で賄われているということに鑑みれば、教育基本法にのっとり正しく実施されるべきではないか」との認識を示していた。下村文科相は16日、「各大学の自主判断」としながらも「長年の慣行により国民の間に定着していることや、(1999年8月に)国旗・国歌法が施行されたことも踏まえ、適切な判断をお願いしたい」と要請した。

 会議後の学長らは厳しい表情。琉球大の大城肇学長は「学内で問題提起しようと思うが、かなり混乱すると思う。集団的自衛権の議論や基地問題ともリンクして、大学改革とは違う所に話が飛んでいきそうな気がする」。50年の創立以来、慣例で国歌斉唱や国旗掲揚はしていない。「個人的には棚上げにしておきたい」と複雑な心境をのぞかせた。

 滋賀大の佐和隆光学長は「納税者には(国立大としての)責任を果たすべきだと思うが、国の要請に従う必要はない」と強調した。国旗掲揚はしているが、国歌斉唱はしておらず、その方針を継続する考えを示した。

 文科省によると、今春の卒業式で国旗掲揚したのは74大学、国歌斉唱は14大学だったという。

 一方で、文科省は国立大学に組織・業務の見直しを迫っている。8日の大学への通知では、人文社会科学系や教員養成系の学部の廃止や他分野への転換を求めた。国立大は中期計画(16年度から6年間)を作り、大臣の認可を受けなければならない。下村文科相はこの日「これらの学問が重要ではないと考えているわけではないが、現状のままでいいのかという観点から徹底的な見直しを断行してほしい」と理解を求めた。

 複数の学長は「交付金をもらえないと困る。今後、人文社会科学系の学部の定員は減らさざるを得ない」と話した。【三木陽介、高木香奈】


2015年06月16日

安全保障関連法案に反対する学者の会、「平和安全法制整備法案」に反対するアピールへの賛同署名

安全保障関連法案に反対する学者の会

「戦争する国」へすすむ安全保障関連法案に反対します

 「戦争しない国」から「戦争する国」へ、戦後70年の今、私たちは重大な岐路に立っています。安倍晋三政権は新法の「国際平和支援法」と10本の戦争関連法を改悪する「平和安全法制整備法案」を国会に提出し、審議が行われています。これらの法案は、アメリカなど他国が海外で行う軍事行動に、日本の自衛隊が協力し加担していくものであり、憲法九条に違反しています。私たちは憲法に基づき、国会が徹底審議をつくし、廃案とすることを強く求めます。

 法案は、・日本が攻撃を受けていなくても他国が攻撃を受けて、政府が「存立危機事態」と判断すれば武力行使を可能にし、・米軍等が行う戦争に、世界のどこへでも日本の自衛隊が出て行き、戦闘現場近くで「協力支援活動」をする、・米軍等の「武器等擁護」という理由で、平時から同盟軍として自衛隊が活動し、任務遂行のための武器使用を認めるものです。

 安倍首相の言う「武力行使は限定的なもの」であるどころか、自衛隊の武力行使を際限なく広げ、「専守防衛」の建前に反することになります。武器を使用すれば、その場は交戦状態となり、憲法九条一項違反の「武力行使」となることは明らかです。60年以上にわたって積み重ねられてきた「集団的自衛権の行使は憲法違反」という政府解釈を安倍政権が覆したことで、米国の侵略戦争に日本の自衛隊が参戦する可能性さえ生じます。日本が戦争当事国となり、自衛隊が国際法違反の「侵略軍」となる危険性が現実のものとなります。

 私たちは、かつて日本が行った侵略戦争に、多くの学徒を戦地へ送ったという、大学の戦争協力の痛恨の歴史を担っています。その歴史への深い反省から、憲法九条とともに歩み、世界平和の礎たらんと教育研究活動にたずさわり、再び戦争の惨禍を到来させないようにしてきました。二度と再び、若者を戦地に送り、殺し殺される状況にさらすことを認めることはできません。

 私たちは、学問と良識の名において、違憲性のある安全保障関連法案が国会に提出され審議されていることに強く抗議し、それらの法案に断固として反対します。

2015年6月
安全保障関連法案に反対する学者の会

◇呼びかけ人(*は発起人 五十音順)
青井 未帆
(学習院大学教授 法学)
浅倉 むつ子
(早稲田大学教授 法学)
淡路 剛久
(立教大学名誉教授、弁護士 民法、環境法)
池内 了
(名古屋大学名誉教授 宇宙物理学)
石田 英敬
(東京大学教授 記号学・メディア論)
市野川容孝
(東京大学教授 社会学)
伊藤 誠
(東京大学名誉教授 経済学)
上田 誠也
(東京大学名誉教授 地球物理学・日本学士院会員)
上野 千鶴子
(東京大学名誉教授 社会学)
内田 樹
(神戸女学院大学名誉教授 哲学)
内海 愛子
(恵泉女学園大学名誉教授、日本-アジア関係論)
宇野 重規
(東京大学教授 政治思想史)
大澤 眞理
(東京大学教授 社会政策)
岡野 八代
(同志社大学教授 西洋政治思想史、フェミニズム理論)
小熊 英二
(慶應大学教授 歴史社会学)
戒能 通厚
(早稲田大学名誉教授 イギリス法、法社会学)
海部 宣男
(国立天文台名誉教授 天文学)
加藤 節
(成蹊大学名誉教授 政治哲学)
川本 隆史
(国際基督教大学教授 社会倫理学)
君島 東彦
(立命館大学教授 憲法学・平和学)
久保 亨
(信州大学教授 歴史学)
栗原 彬
(立教大学名誉教授 政治社会学)
小林 節
(慶應義塾大学名誉教授 憲法学)
小森 陽一
(東京大学教授 日本近代文学)
齊藤 純一
(早稲田大学教授 政治学)
佐藤 学
(学習院大学教授 教育学)
島薗 進
(上智大学教授 宗教学)
杉田 敦
(法政大学教授 政治学)
高橋 哲哉
(東京大学教授 哲学)
高山 佳奈子
(京都大学教授 法学)
千葉 眞
(国際基督教大学特任教授 政治思想)
中塚 明
(奈良女子大学名誉教授 日本近代史)
永田 和宏
(京都大学名誉教授、京都産業大学教授 細胞生物学)
西川 潤
(早稲田大学名誉教授 国際経済学、開発経済学)
西崎 文子
(東京大学教授 歴史学)
西谷 修
(立教大学特任教授 哲学・思想史)
野田 正彰
(精神病理学者 精神病理学)
樋口 陽一
(憲法学者 法学・日本学士院会員)
広田 照幸
(日本大学教授 教育学)
廣渡 清吾
(専修大学教授・日本学術会議前会長 法学)
堀尾 輝久
(東京大学名誉教授 教育学)
益川 敏英
(京都大学名誉教授 物理学・ノーベル賞受賞者)
間宮 陽介
(青山学院大学特任教授 経済学)
三島 憲一
(大阪大学名誉教授 哲学・思想史)
水野 和夫
(日本大学教授 経済学)
宮本 憲一
(大阪市立大学名誉教授 経済学)
宮本 久雄
(東京大学名誉教授、純心大学教授 哲学)
山口 二郎
(法政大学教授 政治学)
山室 信一
(京都大学教授 政治学)
横湯 園子
(前中央大学教授、元北海道大学教授 臨床倫理学)
吉岡 斉
(九州大学教授 科学史)
吉田 裕
(一橋大学教授 日本史)
鷲谷 いづみ
(中央大学教授 保全生態学)
渡辺 治
(一橋大学名誉教授 政治学、憲法学)
和田 春樹
(東京大学名誉教授 歴史学)


安保関連法案 反対する学者が廃案求め声明

NHK(6月15日)

後半国会の焦点となっている安全保障関連法案に反対する学者らが東京都内で会見し、法案は憲法に違反しており、学問と良識の名において廃案を求めるなどと訴えました。
会見したのは、集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案に反対する、さまざまな分野の学者や研究者で作るグループです。
この中で学習院大学の佐藤学教授が「審議中の法案は、他国が海外で行う軍事行動に自衛隊が協力し、加担するもので憲法9条に違反する。学問と良識の名において断固として反対する」として、廃案を求める声明を読み上げました。
経済学が専門で青山学院大学の間宮陽介特任教授は、「政府は違憲の指摘に対し『学者の論理だ』というが、政治家の判断が常に正しいとはかぎらず、第三者がチェックすることが大切だ」と指摘しました。
また、国立天文台の海部宣男名誉教授は、「科学も芸術も取り込まれた戦前の翼賛体制を反省していないのではないかと民主主義の危機を感じている。憲法学や政治学の問題と言って黙っているわけにはいかない」と述べました。
声明には、これまでに2700人余りの学者や研究者のほか、一般のおよそ1800人が賛同しているということで、今後も訴えを続けていきたいとしています。

国立大交付金 地域貢献や世界水準研究で重点配分

NHK(6月15日)

国立大学に配分する運営費交付金について文部科学省の有識者会議は、地域に貢献する大学や世界トップ水準の研究を目指す大学など、国立大学を3つの枠組みに分類し、取り組みや実績が高く評価された大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
国立大学は平成16年度に法人化されて以降、6年ごとに中期目標を定め、その達成状況の評価などに応じて国から運営費交付金が配分されています。来年度から6年間の配分方法を検討してきた文部科学省の有識者会議は、15日、改革や機能強化に積極的に取り組む大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
具体的には、国立大学を人材育成や研究を通して地域に貢献する大学、特定の分野で優れた教育や研究の拠点となる大学、それに世界トップ水準の教育や研究を目指す大学の3つの枠組みに分類し、大学はいずれか1つを選んで取り組むとしています。そのうえで、取り組みの状況や実績を有識者の会議が評価し、翌年度の交付金の配分に反映させるということです。中期目標の策定にあたっては文部科学省が8日、国立大学に通知を出し、教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院については廃止やほかの分野への転換に努めることなど、組織や業務全般を見直すよう求めています。各大学はこうした方針を踏まえて、今月中に中期目標の素案を提出することになっています。

国立大学で進む学部再編

全国に86ある国立大学は法人化されて以降、特色ある大学作りや組織や業務の改革が常に求められてきました。グローバル化や地域の課題解決に取り組もうと学部を再編する動きが広がっていて、平成24年度から今年度までに5つの学部が新設されたほか、来年度だけで8学部の新設が申請されています。文部科学省によりますと、法人化されて以降、短期間にこれほど新たな学部が設置されることはないということです。
このうち、徳島大学は地域の農林水産業を支援する人材を育成しようと、来年度、「生物資源産業学部」を新設します。経営学の基礎なども学ぶことができ、いわゆる6次産業化にも対応したいとしています。また、宇都宮大学が人口減少など地域の課題に取り組む専門知識を学ぶ「地域デザイン科学部」を、福井大学がグローバル化や地域の活性化に貢献する人材を育成しようと「国際地域学部」を、それぞれ来年度から新たに設置する予定です。
学部の新設ではありませんが、弘前大学は理工学や農学系の人材育成を強化するとして、来年度、大規模な組織改編を実施する方針です。理工学部に新たな学科を設けるなど、2つの理系学部で定員を90人増やす一方、文系の2つの学部では150人削減します。人文学部の3つの課程を2つに集約するほか、教育学部で教員免許の取得を義務づけない課程を廃止するとしています。

「教育のすそ野を広げ長期的な視点で」

今回の運営費交付金の配分方法を検討した会議の委員の1人で、東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授は「大学が社会のニーズに十分対応していないという意見が一部に強くあり、交付金の配分で改革を促そうという議論が行われてきた。大学間の競争が強まることになるが、東京と地方とでは条件が一定ではなく、格差が広がりすぎないよう配慮が必要だ」と話しています。
また、中期目標の策定にあたって、文部科学省が教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院の見直しを求めたことについては、「教員養成や人文社会科学系は人件費が高く高コスト構造となっており、効率化したいというねらいがあると思うが、教養教育は大学の大事な役割のひとつで、理系の学生にとっても人文社会系の知識やものの考え方は重要だ。グローバル化が進むなか、世界の最先端で争える学生を養成していかなければいけないのは事実だが、時代が変わると最先端が最先端でなくなっていく可能性もあるわけで、大学教育のすそ野を広げ長期的な視点で考える必要がある」と指摘しています。


安保法案反対「茨大有志の会」結成 「平和国家ブランド壊す」

■東京新聞 2015年6月16日

 名誉教授や元職員ら茨城大関係者二十一人が十五日、「安全保障法制に反対する茨城大学有志の会」を結成し、集団的自衛権の行使容認を柱とした安全保障関連法案の、今国会での成立に反対する声明を発表した。現役の教授や准教授、講師、職員らに賛同を呼び掛けている。

 声明は「法案の狙いは米軍に追従して自衛隊を参戦させること。わが国の平和国家ブランドを壊すことにつながる」などと主張。その上で「学問研究や教育の健全な遂行は、平和が維持され、自由闊達(かったつ)な討論と発言が保障されてこそ可能だ。学生や卒業生を戦場に送ることを拒否する」と訴えている。
 「有志の会」は普段の主張に違いのあるメンバーが集まっており、同じく超党派で今月四日に結成した「『戦争法制』に反対する県実行委員会」と連携する。県庁で会見した「有志の会」幹事の田中重博名誉教授(地方自治論)は「今回の問題は党派や思想信条の問題とは違う。広く共感を得るために声を上げたい」と述べた。

地方大学生に奨学金、地元就職で返還が実質免除も 人口減少対策 斎藤剛史

産経ニュース(2015.6.15)

少子化や人口減少のなかで、地方の衰退が問題になっています。「地方創生」の一環として、政府が地方大学の活性化による地域振興を図ろうとしていることは、以前に当コーナーで紹介しました。その具体策の一つとして、地方大学に進学する学生や、地域活性化につながる特定分野の勉強を大学などでしようとしている学生に対して、地元企業などに就職した場合、返還の全部または一部が免除される奨学金が2016(平成28)年度から創設されることになりました。地元で進学して就職したいという学生にとっては、福音となりそうです。

少子化とともに地方の人口減少の大きな理由の一つが、大学進学や就職を契機とする若者の都市部への流出です。このため政府は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中に、自県大学進学者の割合を平均36%、新規学卒者の県内就職の割合を平均80%にするという目標を定め、地元大学などに進学し、卒業後も地元企業に就職するという学生を増やすことにしました。この方策の一つが、国の地方創生予算による「奨学金を活用した大学生等の地方定着」事業(以下、地方創生枠奨学金)です。

具体的には、都道府県や市町村などの地方自治体が「基金設置団体」を設置し、企業や団体などの地元産業界と協議のうえ、地方経済の先導役となる産業や戦略的に振興する産業を定めます。さらに、地元の大学・短大・大学院・高専・専門学校へ進学する学生、または地元産業の振興に役立つ特定分野などを大学などで学ぼうとする学生に対して、地方創生枠奨学金を支給します。地方創生枠奨学金の最大の特徴は、大学等卒業後に地元企業などに就職した人には、奨学金返還の全部または一部を基金設置団体が支援するため、実質的に奨学金を返還しなくても済むことです。文部科学省の説明によると、地方創生枠奨学金は大学等への新規入学者だけでなく、2年生以上の大学等在学者でも利用できることになっています。

地方創生枠奨学金の支給対象者は、都道府県ごとに毎年度上限100人です。ただし、奨学金自体は独立行政法人・日本学生支援機構の第一種奨学金(無利子)を活用することになっているため、学校の成績や家庭の所得などが、第一種奨学金の資格基準をクリアしていることが条件となります。現在、第一種奨学金の貸与月額は大学の場合、一律3万円、または自宅通学生が国公立4万5,000円 ・私立5万4,000円、自宅外通学生が国公立5万1,000円・私立6万4,000円 です。地方創生枠奨学金の募集は来年3月から始まる予定ですが、詳細はこれから各都道府県などが設置する「基金設置団体」によって決められます。

大学などに進学したいけれど、経済的に余裕がなく、奨学金を借りても返還できる自信がないという人、さらに生まれ育った地元で進学して就職したいという人にとって、地方創生枠奨学金は大きな力になるかもしれません。都道府県や市町村など地元自治体の動きに注意しておいたほうがよいでしょう。


2015年06月13日

都留文科大学の退職手当減額は違法! 退職手当全額と慰謝料の支払いを命じた東京地裁立川支部判決

三多摩法律事務所
 ∟●都留文科大学の退職手当減額は違法! 退職手当全額と慰謝料の支払いを命じた東京地裁立川支部判決(更新日:2015-06-13)

 公立大学法人都留文科大学による教職員の退職手当の一方的な切り下げに対し、6名の退職教員が、一方的な退職手当の切り下げは違法であるとして切り下げ前の退職手当の支払いと慰謝料の支払を求めた裁判で、本年4月16日、教員の請求を認める画期的な勝訴判決を得ました(東京地方裁判所立川支部)。

 今回、裁判所が違法と断じた退職手当の切り下げは、退職手当金を算出する際に「100分の104」とされていた「調整率」を「100分の98」に引き下げ、その後も段階的に「100分の87」まで引き下げるというものでした。大学は、この「調整率」の引き下げを強行するために、退職手当規程に「都留市条例を準用する」旨の規定を、教職員や教職員組合に説明することなく無断で挿入するという手法をとりました。しかも大学は、3月29日までに退職すれば引き下げ前の「調整率」を適用するが、年度末(3月31日)まで勤務すれば引き下げた「調整率」を適用するとしました。退職手当の引き下げに納得はできないが教員の職務を全うしたいと考えた6名の退職教員は、年度末まで大学に勤めました。しかしその結果退職手当が減額され、定年退職した教員の中には180万円以上減額された方もいました。
 大学は、国家公務員や山梨県職員、都留市職員等の公務員が同様の引き下げを行ったことを理由に、退職手当の引き下げを強行しました。しかし、大学は2009年4月1日に都留市から独立した経営を行う目的で公立大学法人となり、教職員は非公務員となりました。公務員や都留市職員の退職手当が引き下げられたからといって、民間の労働者である大学教職員の退職手当を引き下げる理由はありません。また、大学は法人化後も毎年多額の利益を計上しており、約7億円もの退職手当基金も存在したことから、退職手当を引き下げる経営上の必要性も全くありませんでした。まして、退職手当規程に「都留市条例を準用する」旨の規定を、教職員や教職員組合に一切説明することなく無断で挿入するなど、あってはならないことです。 

 今回の判決は、このような退職手当規程の変更は、労働契約法や労働基準法の定める手続きを何ら経ることなく行なわれたものであるから、都留市条例を準用する旨の規定はそもそも退職手当規程に存在するものではなく、効力も有しないと判断し、切下げられた退職手当の全額を支払うよう大学に命じました。
 また、大学が、年度末(3月31日)に退職を予定していた教員に対して、年度末よりも前に自己都合退職するか、あるいは年度末に退職して退職手当引き下げの不利益を受けるかのいずれかを迫ったことは、意思決定の自由を侵害する不法行為であると断じました。そして、2013年3月31日に定年退職した原告3名に対して各5万円、同日に自己都合退職した原告3名に対して各1万円の慰謝料を支払うことを大学に命じました。

 2012年11月に国家公務員の退職手当を引き下げる法律が成立して翌年1月から施行されたことをきっかけに、全国の国公立大学法人において同種の事件が起こっています。本件は数少ない勝訴例として意義のあるものです。
 しかし、この判決に対して大学は控訴し、今後東京高裁での控訴審がはじまります。大学の違法な退職手当の切下げを許さないために、引き続きのご支援をよろしくお願いします。


2015年06月10日

根津公子さん勝訴を無視した三大紙

週刊金曜日ニュース(2015年6月5日)

根津公子さん勝訴を無視した三大紙

目をこらして「その記事」を探しました。『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』のいわゆる三大紙(最終版)には1行も見当たりませんでした。『東京新聞』は社会面2番手3段記事で、写真もついた結構、目立つ扱いです。意外にも『産経新聞』は短信ながら載っていました。「その記事」とは、5月28日に東京高裁が下した「君が代不起立 逆転勝訴」を取り上げたものです。

数多(あまた)ある石原都政「負の歴史」の中でも、とりわけ悪質な「日の丸・君が代強制教育」。東京都教育委員会は、卒業式や入学式で「日の丸」掲揚の際に着席したままだったり「君が代」斉唱を行なわなかった良心的な教員を次々と処分してきました。

きっかけは、都教委が2003年10月23日付で出した、いわゆる「10.23通達」です。「都立学校の入学式・卒業式などにおける国旗掲揚・国歌斉唱の実施について、教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すべきこと、国旗掲揚・国歌斉唱の実施に当たり、校長の職務命令に従わない教職員は服務上の責任を問われることを周知すべき」という内容です。翌04年6月8日には、教育長が国旗国歌に関し、学習指導要領や通達に基づいて児童生徒を指導することを校長の職務命令として教員に出す方針を示しました。まさしく憲法をも蹂躙する暴挙です。

こうした傾向はその後、橋下徹氏が府知事、市長に就いた大阪など各地に広がり、安倍政権の国家主義的教育路線へとつながっています。

いわずもがなですが、都教委と全面的に闘ってきた教員もたくさんいます。その象徴ともいえるのが、根津公子さんと河原井純子さんです。二人は都の処分取り消しを求めて東京地裁に裁判を起こしました。一審では、河原井さんは勝訴したものの根津さんは敗訴。このため東京高裁に控訴。そして根津さんの逆転勝訴判決が出たのです。

『東京』の前文を紹介します。

〈卒業式で君が代斉唱時に起立せず、停職六カ月の懲戒処分を受けた東京都内の元中学校教諭の根津公子さん(六四)が、都に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(須藤典明裁判長)は二十八日、「都教育委員会の処分は裁量権を逸脱し、違法」と判断して停職処分を取り消し、慰謝料十万円を支払うよう都に命じた。一審東京地裁判決は請求を退けており、根津さんが逆転勝訴した〉

根津さんは07年、当時勤務していた中学校の卒業式で「校長の職務命令に従わず」起立しませんでした。06年にも起立しなかったことで、都は6カ月の処分を下していました。06年の際も、根津さんは処分取り消しを求めて裁判に訴えましたが、最高裁で敗訴が確定しています。

根津さんとは何度かお会いしました。大変、芯のしっかりした、そして筋の通った教員です。生徒に慕われるのは当然と納得しました。それは河原井さんも同様です。だから、都教委にとっては目の上のたんこぶであり、何とかつぶしたい対象だったのでしょう。個人的には、控訴審勝訴は厳しいのではないかと思っていました。しかし、予想はいいほうに外れました。須藤裁判長は都を厳しく断罪しています。その部分を引用します。

〈須藤裁判長は「積極的に式を妨害しておらず、不起立を繰り返していることを考慮しても、前回の停職三カ月を超える処分は重すぎる」と判断した〉

〈その上で、都教委が一回目の不起立は戒告とし、二回目以降は減給、停職へと機械的に処分を重くしている点を問題視。「不起立を繰り返せば長期間の停職や、免職処分を受けざるを得ない事態となる。教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、教職員としての身分を捨てるかの二者択一を迫られることになり、憲法が保障する思想や良心の自由の侵害につながる」と厳しく指摘した〉

記事によると、判決後に記者会見した根津さんは「納得できる判決。本当にうれしい」と感想を述べたそうです。裁判長が「憲法が保障する思想や良心の自由の侵害につながる」とまで踏み込んだことを評価したのでしょう。

ちなみに河原井さんは、07年に勤務していた都立特別支援学校卒業式での不起立により停職3カ月の処分を受け、取り消しを求めて根津さんとともに訴えました。一審判決で「停職処分取り消し、慰謝料10万円」の判決を勝ち取り、控訴審でも同じ内容の勝訴となりました。

東京都の教育政策は異様としかいいようがありません。法廷闘争も後を絶ちません。しかも、国政に目を転じれば、安倍政権は国立大学に対しても「日の丸・君が代」を押し付けようとしています。自民党の憲法草案では「国旗・国歌の尊重」の名のもとに、「日の丸・君が代」の強制がうたわれています。そうした状況における勝訴なのです。大きな報道価値があります。

しかし、『朝日』『毎日』の紙面には記事がありませんでした(『朝日』は東京北部の地方版のみに掲載)。もちろん『読売』はスルーです。『産経』は〈君が代不起立、「処分重過ぎ」逆転勝訴〉の見出しで200字弱の短信を載せています。当事者が会見しているのですから、各社の司法担当記者は記事にしているはずです。『朝日』『毎日』とも上司の判断でボツになったのでしょう。それにしても、現場から「これは大事なニュース」と突き上げがあればボツはありえないですから、担当記者の報道センスも疑わざるをえません。

『東京』の記事には都教委のコメントが載っています。

〈東京都の中井敬三教育長は「判決は誠に遺憾だ。教職員の職務命令違反には今後とも厳正に対処する」とのコメントを出した〉

まったく懲りていないのです。最高裁判所第一小法廷は12年1月16日、「戒告にとどまる限りは懲戒権の逸脱・濫用とはいえないものの、戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」との判決を出しています。にもかかわらず、都教委はいろいろな理屈をつけてその後も重い処分を出しています。まるでブラック企業です。

そもそも全国紙は、石原都政に対して厳しい姿勢を見せてきませんでした。「日の丸・君が代」強制に関してもそうです。もし「10.23通達」以降、徹底的に批判キャンペーンを展開していれば、都の教育行政を変えることができたかもしれませんし、安倍政権による国家主義的教育戦略の歯止めにつながった可能性もあります。今回の報道をみると、全国紙もまた反省が足りないようです。(北村肇、6月5日配信「きんようメルマガ」)


2015年06月09日

横浜市立大学教員組合、「教員評価制度および全員任期制に対する教員組合の考え」

横浜市立大学教員組合
 ∟●教員評価制度および全員任期制に対する教員組合の考え

2015 年 4 月 23 日

公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之殿
横浜市立大学教員組合
執行委員長 内山 英穂

教員評価制度および全員任期制に対する教員組合の考え

 教員組合では現在の全員任期制および教員評価制度について検討した結果、以下のように考えをまとめた。新しい労働契約締結に向けて労使交渉を進展させるため、真摯に検討し、対応いただきますよう要請する。

1 主位的要求 「全員任期制を廃止すること」

 教員組合は、教員の雇用形態を原則として無期雇用とすることを求める。その理由としては、第一に、大学教員任期法は、日本の大学教員に任期を付すことができる場合を定めており、逆にいえばその定めに当てはまらないときは任期を付すべきではないという法律である。教員組合は、横浜市大教員全員が大学教員任期法における任期を付すことができる場合に該当しているわけではなく、全員任期制を不当なものと考える。逆にこのことが全員任期制が採用されている大学が極めて少数派である理由だとも考える。第二に東大をはじめ全国の有力大学においても任期を付した教員の雇用はきわめて限定的であり、またこうした教員公募であっても大学教員任期法に則って行われている。従って当局が 2014 年10 月 7 日の断交において本学教員には大学教員任期法を適用しないと言明したことは遺憾である。第三に無期労働契約への転換時期に関して、当局は研究開発力強化法を無理矢理本学教員全員に適用して長期間におよぶ有期労働契約を結ぶよう主張しているが、これは法趣旨から認められないと考えるからである。首都大学東京が今年度より全員任期制を廃止したため、本学は全員任期制を続けているという点で全国でもさらに有名な存在となってしまっており、これを続けていると本学に応募する教員の数が減り、逆に本大学から他大学へと転出する教員の数が増え、研究の内容に関しても短期的な成果を追い求める傾向が強まることから、これ以上全員任期制を敷くことは本学の価値を高めるとは考えられないからである。……以下,省略……


2015年06月08日

首都圏大学非常勤講師組合・早稲田ユニオン、早稲田大学日本語インストラクター過半数代表選挙には 早稲田ユニオン「片山幹生」氏に投票を!!

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●早稲田大学日本語インストラクター過半数代表選挙には 早稲田ユニオン「片山幹生」氏に投票を!!

早稲田大学日本語インストラクター過半数代表選挙には
早稲田ユニオン「片山幹生」氏に投票を!!
形式的な過半数代表選挙を打ち破り真の労使交渉を求めて

首都圏大学非常勤講師組合・早稲田ユニオン

 早稲田キャンパスで働く全教職員の皆様。この選挙には日本全国の注目が集 まっています。
 専任教員への年俸制、クォーター制導入による非常勤講師への「クーリング オフ」復活など、早稲田大学が計画している数々の不利益変更を許さないため にも、9 日から 15 日までの「日本語インストラクター」就業規定に係わる過半 数代表選挙では是非「片山幹生」にご投票下さるようお願いします。

私たちは「片山幹生」さんを過半数代表候補として推薦します

宇都宮健児(弁護士、前都知事選候補者)
雨宮処凛(作家・活動家)
山本太郎(「生活の党と山本太郎と仲間達」参議院議員)
想田和弘(ドキュメンタリー映画作家)
斎藤貴男(ジャーナリスト)
中川勝之(東京法律事務所弁護士、早稲田大学商学部非常勤講師コマ減撤回裁判原告代理人)
青龍美和子(東京法律事務所弁護士、日本語インストラクター問題日弁連人権救済申立起案者、
早稲田大学出身)
室井真人(東北非常勤講師組合執行委員長)
新城知子(大学等非常勤講師ユニオン沖縄委員長)
梶涼子・布施えり子・田野新一(フリーター全般労働組合共同代表)
佐藤昭夫(早稲田大学名誉教授・弁護士、早稲田ユニオン顧問)
岡山茂(早稲田学政経学部教授・専任教員組合前委員長)

関西圏大学非常勤講師組合
東海圏大学非常勤講師組合
全国一般労働組合東京南部
労働組合法人全国大学人ユニオン
河合塾ユニオン
アレぜール日本(高等教育と研究の現在を考える会)

労働条件の切り下げを目論む早稲田理事会に抵抗を !
今回の過半数代表選挙を早稲田再生の第一歩に !

 皆さんもご存じのように早稲田理事会は専任教員の「年俸制」、クォーター制による非常勤講
師に「クーリングオフ」再導入することによる無期雇用転換の阻止、早稲田で働く教職員に対 し次々に労働条件の不利益変更を企てる動きをみせています。
 専任教員組合全執行部(岡山委員長・岡田書記長)と首都圏大学非常勤講師組合・早稲田ユ ニオンとの間で、非常勤に係わる過半数代表選挙には早稲田、戸山、西早稲田(理工)キャン パスおいて非常勤講師・早稲田ユニオンが候補を立てるという合意が結ばれていました。しか し 5 月 15 日、教員組合現執行部(高橋委員長・井戸書記長)は、「教員組合執行委員会は本件 についての過半数代表者選出手続きに、 推薦候補者を立てるてることとしました」と一方的な 通告を行い、今回過半数代表選挙に法学部準教授大橋麻也を候補として立ててきました。
 劣悪な条件での労働を強いられている日本語インストラクターを労基署にも届けず、労基法 の定める最低限の条件を満たさない「内規」にもとづき、5 年で雇い止めにする大学当局のやり 方を容認すれば、将来的には、専任・非常勤を問わず早稲田で働くすべての教職員の労働条件 の一方的な切り下げを招きかねません。
 今回の過半数代表選挙を早稲田再生の一歩にするために是非とも首都圏大学非常勤講師組 合・早稲田ユニオンの擁立候補「片山幹生」にご投票いただきますよう、お願いします。

今回の過半数代表選挙に投票できるのは早稲田キャンパスの教職員だけです


専修大職員、「労災受給者、安心して療養できなくなる」 解雇訴訟差し戻しで原告、最高裁を批判

産経(2015.6.8)

「労災受給者、安心して療養できなくなる」 解雇訴訟差し戻しで原告、最高裁を批判

 労災保険を受給している労働者を、使用者側が打ち切り補償すれば解雇可能とした8日の最高裁判決。専修大元職員の男性(40)は判決後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「金さえ払えば労災で療養中の労働者を解雇できるという判決。安心して労災申請や療養専念ができなくなる」と判決への疑問を訴えた。

 男性は今でも、首や肩などを長時間動かすことが難しく、電話での長時間通話やパソコン使用が困難という。男性は「完治していない状態で、再雇用先があるとは考えられない」と述べ、解雇有効とされた場合の不安をのぞかせる。

 男性の代理人の小部正治弁護士は、心の問題なども含め、労災は簡単に治癒しないと指摘。「『金を支払うから辞めてくれ』という企業が増えることを危惧している」と判決による悪影響を指摘する。

 ただ、最高裁は今回の解雇が正当だったのかについては、判断を示していない。小部弁護士は「大学はリハビリしながらの復帰を認めなかった。そうした大学の姿勢が認められるとは考えられない」と差し戻された高裁の判断に期待を込めた。

 専修大は「主張が認められたと理解している。引き続き適切に対応していく」とコメントを発表した。

労災保険受給の労働者「打ち切り補償払えば解雇可能」の初判断 最高裁が高裁に破棄差し戻し

産経(2015.6.8)

 労災認定を受け、国から労災保険の給付を受けている労働者について、使用者が一定の補償金を支払って解雇できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者が療養補償をしていない場合でも雇用打ち切りの補償金を支払って解雇できる」との初判断を示した。

 その上で、解雇無効とした2審東京高裁判決を破棄、「正当な解雇か審理を尽くす必要がある」と高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。

 労働基準法では、業務上の傷病で療養中の労働者を原則、解雇できないと規定。一方で使用者側が療養補償を行い、療養開始後3年を経過しても治らなければ、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払い解雇できるとしている。労災保険と療養補償を同質と見ることができるかが争点。

 訴えているのは専修大元職員の男性(40)。男性は肩などの難病「頸肩腕(けいけんわん)症候群」を発症して長期欠勤、平成19年に労災認定を受け労災保険を受給している。大学側は療養補償していないが約1630万円の打ち切り補償を支払い23年10月に解雇した。

 同小法廷は、「労災保険の給付は使用者側の療養補償に代わるものとして実質的に給付されている」と指摘。労災保険と療養補償が同質視できるとして、解雇は可能と結論づけた。

 ただ、こうしたケースでも、労働者の復帰可能性などを無視した解雇の場合、解雇権乱用にあたる可能性がある。


その学部、本当に必要? 全国立大に見直し通知、文科省

朝日新聞(2015年6月8日)

 文部科学省は8日、全86の国立大学に、既存の学部などを見直すよう通知した。主に人文社会系の学部と大学院について、社会に必要とされる人材を育てられていなければ、廃止や分野の転換の検討を求めた。国立大に投入される税金を、ニーズがある分野に集中させるのが狙いだ。

 国立大には、法人化された2004年度以降、6年ごとに「中期目標」を作って文科省に提出する義務がある。6月末が16年度からの目標案の提出期限で、大学の認可を受けるには、目標が通知の趣旨に沿っている必要がある。

 通知は「特に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院は、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めた。例えば、人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという実績を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握。需要にあった人材を育てる学部に転換するなどといった想定だ。


自由法曹団、労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

1 自民・公明両党は、現在、維新の党が提案する「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(通称「同一労働同一賃金推進法」)の成立を図ることと引き換えに、維新の党から労働者派遣法「改正」案の採決に応じるとの合意を取り付け、今月中旬にも「改正」案の採決を強行しようとしている。

2 しかし、労働者派遣法「改正」案の審議は、衆議院厚生労働委員会において、5月15日に開始されたばかりである。「改正」案は、「業務単位の1~3年の期間制限をなくし、直接雇用や正社員への道を奪う。」、「施行予定日の1か月前に、『業務単位の派遣受入期間制限違反の場合の労働契約申込みみなし制度』をなくし、多数の派遣労働者の直接雇用へ移行する権利を奪う。」、「個人単位の3年の派遣受入期間制限を導入し、専門26業務に従事する派遣労働者の大量首切りをもたらす。」等の多くの問題点を含んでいる。
 今、何よりも重要なことは、これらの問題点を解明するため、徹底審議を尽くすことである。

3 維新の党は、民主党、生活の党と共同で、既に、5月26日、「同一労働同一賃金推進法案」を国会に提出している。自民・公明両党は、上記「同一労働同一賃金推進法案」を修正の上、維新の党と共同で再提出し、同法の成立を図ることと引き換えに、維新の党に労働者派遣法「改正」案の採決に応じることに同意させようとしているのである。
 「同一労働同一賃金」を実現することは重要であるが、「改正」案の前記問題点は、「同一労働同一賃金推進法」を成立させても何一つ解決しない。そのことは、「改正」案の前記問題点を見るだけで明白である。
 「改正」案の問題点についての審議も不十分なまま、「改正」案の採決を強行することは、国会の審議権をないがしろにし、議会制民主主義を否定する暴挙である。

4 自由法曹団は、自民・公明両党の労働者派遣法「改正」案の採決強行の企てに強く抗議し、反対する。また、維新の党に対して、自民・公明両党の採決強行の企てに同意することなく、「改正」案の徹底審議のために尽力することを要請するものである。
 自由法曹団は、「改正」案の採決強行に反対し、徹底審議を尽くし、「改正」案の問題点を解明し、「改正」案を廃案にすることを強く要求するものである。

2015年6月8日
自 由 法 曹 団
団 長 荒 井 新 二

大阪市立大学、住民投票結果を受けての本学の考え方

大阪市立大学
 ∟●住民投票結果を受けての本学の考え方

住民投票結果を受けての本学の考え方

・5月17日、大阪市において特別区設置に関する住民投票が行われ、反対の票数が半数を超え、今後とも政令指定都市・大阪市が存続することとなりました。
・これにより、いわゆる「大阪都構想」は実現しないこととなりますが、さらなるグローバル人材の育成が期待され、ますます国内外の大学間競争の厳しさが増すなか、今後の公立大学のあり方を考えると、大阪の地域活性化に寄与し大阪の発展を牽引する「知」の拠点として、新大学の実現が望まれるものと考えております。
・今後の方針等については、改めて設立団体から示されることになると思われますが、本学といたしましては、今年2月に策定しました「新・公立大学」大阪モデル(基本構想)を深化させるべく、今後とも大阪府立大学と議論をしっかりと積み重ねるとともに、グローバルキャンパスの開設など、今までにない連携強化を図っていきたいと考えています。
・また併せて、こういった状況の中で、本学は、これまでにも増して本学の歴史伝統を礎に教育力や研究力の強化に力を注ぎ、広報活動も強化して発信力を高め、さらに多様なステークホルダーの方々の支援も仰ぎながら、今まで以上に大学のプレゼンスやブランド力を高めていきたいと考えています。

平成27年5月25日
理事長兼学長 西澤 良記

2015年06月05日

政府 新たな“教育機関”設置の方針

日テレ(2015年6月4日)

 政府は経済成長に貢献できる即戦力となる人材の育成を目指し、ITなどの技術の専門家を育成する新たな教育機関制度を作る方針を固めた。

 安倍首相「今後は政府を挙げて 人材改革に取り組んでいきます」「実社会のニーズに合わせた実践職業教育を行う、新たな高等教育機関制度を創設し、学校間の競争を促していきます」

 政府は今後、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を制度化して、企業の即戦力となる知識と技能を身につけた人材の育成を目指すことを決め、産業競争力会議で報告した。

 政府が設置を目指す「新たな高等教育機関」では、変化の速い産業界のニーズに応じ、ITの技術やサービス業などで活躍できる人材の育成を念頭にカリキュラムを構築し、既存の大学からの転換も認める方針。一方で新たな教育機関の設置により、高校生の進路の拡大や社会人の学び直しにも対応できるようにする考え。

 政府は今後、文部科学省の審議会などで制度の詳細を検討し、2019年度からの開学に向けて法律の改正などを行う方針。


「大学を「職業教育学校」に…19年度実施方針」

■読売新聞(2015年6月4日)

 政府は、実践的な職業教育や技能訓練を行う高等教育機関として「職業教育学校」を設置する方針を固めた。高校卒業後の進学や、社会人の専門知識の習得を想定している。学校は新設せず、希望する既存の大学や短大などに職業教育学校へ転換してもらう考えだ。4日の政府の産業競争力会議(議長・安倍首相)で原案が示され、月内にまとめる成長戦略の柱とする。

 中央教育審議会で詳細を検討する。学校の種類などを定める学校教育法の改正など、必要な法整備を来年度中に行う。2019年度からの実施を目指す。少子化が進む中、学生の確保に苦しむ私大や短大などの選択肢として制度化する狙いもある。大学が学部の一つとして併設できるようにする。

 企業は社員教育に十分な時間をかけることが難しくなっているが、大学は一般教養の学習や研究重視で、企業の求める即戦力を育てるには限界がある。また、社会人がより高度な知識や技術を習得する場を望む声も高まっている。

 カリキュラムの編成には産業界の意見も取り入れ、情報技術(IT)の活用で業績を向上させたサービス業の取り組みや、新興企業での事業の企画・立案の手法など、実例を中心に学ぶようにする。また、学校側は実際に企業を訪問するなど、自由に工夫を加えられるようにする。

 新たな学校の卒業生には、既存の大学の「学士」に代わる新たな学位を認定する。4年制の大学などとは異なって修業年限は設けず、集中して勉強すれば半年から1年程度で卒業できるようにする方向だ。

 職業教育学校に移行するかどうかは、それぞれの大学や短大などが判断するが、在職する教員らの反発が予想される。また、実学の重視で教養教育が軽視されかねないとの批判も出そうだ。実務経験のある教員をどう確保するかなども課題になりそうだ。

 政府は今年の成長戦略で、人材育成を重要課題の一つとして掲げており、すでに国立大学の改革案もまとめている。


2015年06月04日

札幌大学、法人理事長の電撃交代 太田博氏(元北海道職員)が選任 任期は半年

札幌大学
 ∟●学校法人札幌大学理事長に太田博理事が選任されました

学校法人札幌大学理事長に太田博理事が選任されました

平成27年5月29日に開催された第201回理事会において、太田博氏(元北海道職員、元札幌医科大学副理事長、元北海道監査委員)が理事長(任期:平成27年5月29日から平成27年11月15日まで)に選任されました。


東京私大教連、労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

東京私大教連
 ∟●労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

東京私大教連中央執行委員会
2015年5月30日

 現在、労働者派遣法改正案(以下、改正案という)が国会で審議されています。改正案は、昨年の通常国会と臨時国会に提出され、国民の反対のなか2度とも廃案になっており、今回で3度目の法案提出です。同じ内容の法案を3度も国会に提出し成立をめざすこと自体、議会制民主主義制を踏みにじる暴挙です。

 労働者派遣制度は、「臨時的・一時的なものに限る」「常用雇用の代替を防止する」ことを原則として、職業安定法の例外として認められてきた制度です。この原則があるため、現行法でも、企業がおなじ業務で派遣を使えるのは原則1年間、最長でも3年間に制限されています。ところが今回の改正案は、企業が派遣労働者を受け入れることができる制限を、例外としてきた専門業務の区別とともになくして、企業がどの業種でも何年でも派遣労働者を受け入れられるようにするものです。したがって、企業は派遣労働者を3年で「取り換える」だけで、永続的に派遣労働者を受け入れ、使用できるようになります。改正案は、常用代替防止の原則を投げ捨て、派遣労働者の不安定さはそのままに、企業が事実上、期間の際限なく派遣を受け入れ続けることができるようにするものです。

 また、改正案の施行期日を 2015 年 9 月 1 日と定めていますが、これは、2015年10月1日から施行される現行の労働者派遣法の「労働契約申し込みみなし制度」の適用回避をねらう財界の意向を受けたものです。現行法における「労働契約申し込みみなし制度」は、派遣労働者の派遣可能期間の違反など違法派遣があれば、派遣先企業が労働者に直接契約を申し込んだとみなす制度で、労働者を救済するために設けられた規程です。しかし、今回の改正案が成立すると、派遣期間の制限や業務規則が撤廃されるため、この制度の適用がほとんどなくなることが予想されます。このような救済の規程を、施行が迫った 1 ヵ月前に改変することは、適用回避のためと解さざるを得ず、到底許されることではありません。

 改正案は、直接雇用を減らし、企業の都合で労働者を使い捨てにできる不安定雇用を蔓延させるもので、生涯派遣を強要し、正社員をゼロにする日本の雇用を破壊する重大な法案です。私たちは次世代の労働者を教育する私立大学の教職員組合として、このような雇用不安に満ちた社会へと若者を送り出す事はできません。労働者派遣法案廃案を強く求めます。

以 上

東京私大教連、学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

東京私大教連
 ∟●学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

2015年5月29日
東京私大教連中央執行委員会

 安倍内閣は、5月 14 日に「国際平和支援法案」ならびに「平和安全法制整備法案」を閣議決定し、翌 15 日に国会に提出しました。これらは、昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定にもとづいて、アメリカが世界中で行う戦争に対し、自衛隊がいつでもどこでも支援・参加することを可能とする「戦争法案」にほかなりません。憲法9条のもとで戦後の日本が貫いてきた、海外で再び戦争をしないという外交の原則を覆す暴挙であり、私たちは断じて容認できません。

 「国際平和支援法案」は、新たな立法なしに多国籍軍等の戦争を自衛隊が随時支援できるようにするための恒久法です。また、「平和安全法制整備法案」は「存立危機事態」の定義を定め、日本が他国の攻撃を受けていなくても戦争に参加する集団的自衛権行使を可能とする法律です。周辺事態法などによる地理的制約も撤廃され、PKO 活動の際の「駆けつけ警護」も認められ、武器使用要件も緩和されるなど、自衛隊の活動内容は従来とは比較にならないほど大幅に拡大します。安倍首相は閣議決定後の記者会見で、自衛隊の任務拡大に伴う人命リスクについて、「自衛隊発足以来、1800 名が殉職している。災害においても危険な任務が伴う」と論理をすり替え、さらに 5 月 26 日の衆議院本会議では自衛隊員の「リスクは残る」と答弁し、戦後初の「戦死者」が出るリスクを否定しませんでした。

 日本国民は戦後、絶えず「戦争する国」であった戦前国家への痛切な悔悟に立ち、「平和のうちに生存する権利」の確立をめざして、憲法9条のもとで平和国家の道を歩み続けてきました。しかし、5月20 日の党首討論における安倍首相の「ポツダム宣言をつまびらかには読んでいない」という発言からも明らかなように、今回の法案は過去の日本の戦争が間違った侵略戦争であったと認めない歴史認識に淵源しています。このような歴史認識は、極東軍事裁判の受諾を明記したサンフランシスコ講和条約そのものを否定し、日本が国際社会から孤立することにつながります。外務省が発行するパンフレット『日本の安全保障政策―積極的平和主義』は、日本への具体的な「脅威」として北朝鮮と中国を挙げていますが、これらの近隣諸国に対してこそ公式・非公式のパイプを通じたあらゆる外交努力を積み重ねていくべきであり、そのためには、日本政府が歪みのない歴史認識を表明することで、「脅威」を緩和していくことが先決です。戦後 70 年談話について、侵略戦争と植民地支配への反省と謝罪を盛り込まないと表明している安倍政権が強行成立させようとしている「戦争法案」こそ、日本の「平和と「安全」に対する最大の「脅威」にほかなりません。

 新聞各社の世論調査でも、法案の今国会成立に対しては「反対55%・賛成25%」(日経)、「反対54%・賛成32%」(毎日)と、国民の圧倒的多数は反対しています。しかし、こうした国民世論に反して、安倍首相は閣議決定に先立って訪米し、4月29日の米議会演説で「夏までに必ず成立させる」と表明しました。国会審議どころか閣議決定さえ経ていない法案の成立を外国議会に約束するなど、議会制民主主義を愚弄し、日本国民の主権を他国に売り渡す行為として厳しく断罪されなければなりません。私たち私立大学教職員は、日本が再び戦争国家への道を歩み、学生・若者を戦場に送り出すことを容認することはできません。私たちは、今回の「戦争法案」を廃案とするよう強く求めます。また、広範な市民・団体との連帯と共同の上に立ち、平和憲法の理念を徹底して擁護する運動に全力で取り組むことを表明します。

以 上

2015年06月02日

京滋私大教連、京都大学未払い賃金請求訴訟の闘いを引き続き支援します!

京滋私大教連
 ∟●京都大学未払い賃金請求訴訟の闘いを引き続き支援します!

京都大学未払い賃金請求訴訟の闘いを引き続き支援します!

2015年5月22日
京滋地区私立大学教職員組合連合

 5月7日、京都地方裁判所第6民事部は、京都大学に所属する教職員115名の原告団が提訴した未払い賃金請求に対し、原告の請求を棄却する判決を言い渡しました。

 本訴訟は、2012 年2 月29 日の国家公務員給与臨時特例法によって、同年4 月から2 年間にわたって国家公務員の給与減額が実施される中、国が全国の国立大学法人に対して賃金の減額を要請し、被告法人においても賃金の減額が実施されたことを受けて、原告が減額された賃金の支払いを求めたものです。

 京都地裁は、被告・法人側に財源のあったことや、賃金引き下げ率の算定方法が不合理であったことを認めるとともに、原告が訴訟の提起に至るまで、給与減額措置について特段の意義を申し立てることもなく給与を受領していたことをもって、被告は「黙示の合意」があった旨を主張したものの、そのような合意は認められないと断じるなど、原告の主張をほぼ認める判決姿勢を示しました。

 しかしながら、国からの給与減額の要請に応じないことは「公的機関としての社会的責任を放棄するものである」とともに、他の国立大学法人や国会公務員の給与減額が実施されていた状況(社会一般情勢)に照らせば、「教職員の給与減額を実施すべき高度の必要性が存した」と判断して原告の請求を棄却しました。

 国立大学法人法上、国立大学の教職員は公務員ではなく、民間の労働法制が適用され、個々の経営事情を踏まえた適切な司法判断がなされるべきです。

 今回の判決は、国からの要請に従うことが大学の「社会的責任」であるかように断じている点から見て、国から経常費補助等が交付される私立大学にも同様の問題が生じる恐れがあり、極めて重大な問題があると言わざるをえません。

 原告団は今回の不当判決に対して、直ちに控訴する意向を表明し、控訴手続きを進めていますが、私たちも大阪高裁での公正な判決を求めて、引き続きその闘いを支援していきます。

以上