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 カテゴリー 2016年06月

2016年06月29日

大学オンブズマン、「2016年度 夏の研究会」テーマ-日本の大学ガバナンスを問う-

大学オンブズマン「2016年度 夏の研究会

テーマ:日本の大学ガバナンスを問う-大学の市民的公共性 vs 「私物化」される大学-

日 時:2016年7月15日(金)18:30~20:30(終了予定)
     ※ 終了後、近隣で懇親・交流会を開催
場 所:龍谷大学響都ホール 会議室(京都駅八条口側「アバンティ 9階)
内 容:事例報告とその検討
その他:準備の都合がありますので、uniomb@yahoo.co.jpまでご連絡ください。
     懇親・交流会に参加される方は、その旨をお伝えください。

主 催:大学オンブズマン


2016年06月23日

福岡教育大学、寺尾氏の「院政」

福岡教育大学の学長選を考える会
 ∟●【悲劇!寺尾氏の「院政」が福岡教育大学を蝕む!】

【悲劇!寺尾氏の「院政」が福岡教育大学を蝕む!】
 
 我々は、福岡教育大学を揺るがす「院生」の修士論文盗用事件の続報の取材を鋭意続けておりますが、今回は、それとは別の許しがたい「院政」の問題です。福岡教育大学の役職員の一覧(http://www.fukuoka-edu.ac.jp/about/overview/post/index)を見ますと、実に驚愕の事実に気付きます。福岡教育大学における役職員の数は、大規模総合大学をもしのぐ日本有数の規模ですので、一部の方々のみ示します。【 】には我々が取材で入手した情報を記しますが、もう余計な説明は不要でしょう。呆れて言葉もありません。
 
 なお、取材によりますと、現在は副学長・教職教育院院長を務める寺尾氏は、学長任期の末期に、(もちろん、大学のお金で)学長室の隣に自分専用の「院政室」を整備し、「院長室」と名付けたのだそうです。「なぜ院長室なのですか?」と質問したら、取材に答えて下さった教授の方は、「本来なら副学長室でしょうけど、副学長は沢山いますから、同列になるのがイヤだったんじゃないですか。それに、3月まで学長だったから、『副』という字が付くのが許せなかったのではないかと思いますけど。」と言って笑ってありました。
 
★★★福岡教育大学役職者(敬称略)★★★
学長
 櫻井孝俊【寺尾氏のもとで理事・副学長を務める。元数学科教授】
 
理事・副学長
 池田修【寺尾氏のもとで副学長を務める。元体育科教授】
 
理事・副学長
 嶋倉剛【寺尾氏のもとで理事・副学長を務める。文科省からの天下り】
 
理事・副学長・英語習得院院長
 楢崎洋二郎【◆寺尾氏のもとで理事・副学長を務める。元福岡県学校給食会理事長】
 
副学長・教職教育院院長
 寺尾愼一【ご存じの通り、前学長】
 
副学長
 平田哲史【寺尾氏のもとで理事、副学長を務める。元体育科教授】
 
副学長・大学院研究科長
 相部保美【寺尾氏のもとで副学長・大学院研究科長を務める。体育科教授】
 
副学長・教育学部長
 飯田慎司【寺尾氏のもとで副学長・学部長を務める。数学科教授】
 
副学長
 清水紀宏【寺尾氏のもとで副理事を務める。数学科教授】
 
副学長
 宮内健二【寺尾氏のもとで学長特別補佐・副学長を務める。文科省からの天下り】
 
事務局長
 松田成史【新任。文科省からの天下り】
★★★★以上★★★★

 そういえば、取材の際に、ある教授の方が、「この前の記事に、宮内氏のことを『教育研究費担当』と書かれてましたが、あれ違いますよ。あの人は、『博士課程設置』が、うちの大学における仕事ですよ。」と指摘されました。
 
 大変失礼しました。確かに、宮内氏は、昨年度は、副学長(博士課程設置)で、今年度から、副学長(博士課程設置・教職大学院担当)に変わってあるようです。ただ、我々が過去の取材記事を確認しましたところ、宮内氏は2014年の8月に、副学長(博士課程設置)として福岡教育大学に赴任しており、その直後の10月16日には、教授会に寺尾氏の代役として、「学長特別補佐」の肩書きを名乗って、寺尾氏と全く同様の「恫喝まがい」の発言をして、教授会が騒然となり、混乱した事実につきましたは、このページの(2014年10月19日)の記事で報告しました。
 
 また、「毎日新聞」の2015年9月3日の朝刊の記事には、実施当初から躓いた初等教員養成課程の推薦入試の説明者として「同大の宮内健二副学長によると~」とあります。そして、「朝日新聞」の2016年4月18日の記事には、「宮内健二副学長は教育研究費削減について~」とあります。この方の本来の職分は、いったい何なのでしょうか?

 宮内氏は、福岡教育大学に赴任してそろそろ2年になり、地方天下り官僚への「おもいやり」として支給される東京の地域手当18%(180万円)の支給期間が終わるはずですので、一度東京にもどって「地方の経歴をリセット」する必要があるでしょうけど、出て行く前に、本来の仕事「博士課程設置」を済ませてもらわないと、納税者として許せません。


高大接続システム改革で「最終報告」公表

全私学新聞(2016年5月23日号二ュース)

高大接続システム改革で「最終報告」公表
文科省会議 二つの「新テスト」を創設
平成29年度初頭に実施方針策定公表

高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革の具体的在り方について審議してきた文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)が3月31日、「最終報告」を公表した。  「最終報告」は、基本理念に当たる「検討の背景と狙い」、その方針に沿い具体的方策を列挙した「高等学校教育改革」、「大学教育改革」・「大学入学者選抜改革」、「改革の実現に向けた今後の検討体制等」で構成されており、このうち「検討の背景と狙い」では、先行き不透明な時代にあっては多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力、混沌とした状況の中に問題を発見、答えを生み出し、新たな価値を創造していく資質・能力が重要で、そのためには高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革が必要と強調。その上で高校教育改革に関しては、教育課程の見直しや、目標に準拠した観点別学習状況の評価の推進(指導要録の改善)、多面的評価の充実、「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の導入等が必要と指摘。同テストについては、高校生の多様性を踏まえ、複数の難易度の問題から学校や受検者(個人での受検も可)が選んで受検(CBT方式での実施が前提)し、基礎学力の定着度合いを段階表示で結果提供。問題については全国の教育委員会や高校等から既存の問題を収集、アイテムバンクに蓄積、良問については類似問題を作成するなどの考えを示している。対象教科は当面、全ての生徒が履修する範囲を上限に、国語、数学、英語(4技能を測定)とし、次期学習指導要領実施後は地理歴史、公民、理科等を追加導入する考え。同テストについては小・中学校の全国学力・学習状況調査(文科省実施)と近い性格のテストとなりそうだ。   また、大学入学者選抜改革に関しては、個別大学における入学者選抜を、多面的・総合的(調査書や活動報告書、面接、集団討論等)に評価する入学者選抜に改善していくこと、AO入試、推薦入試でも「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を適切に把握すること、加えて「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の導入が必要だとしている。同テストでは、知識・技能を十分に有しているかの評価も行いつつ、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価すること、試験の出題科目数についてはできるだけ簡素化すること、マークシート式問題に加え、条件付き記述式問題を導入、英語に関しては4技能を評価するが、民間の資格・検定試験の知見の積極的な活用等を検討する方針。テストの難易度は幅広くし、平成36年度からコンピュータを活用したテストの導入を目指す。テストの複数回実施は当面、見送る方針。両テストの実施主体は大学入試センターを抜本的に改組した新たなセンターとなる予定。 ◇ 文部科学省は4月28日付で高大接続改革の検討・推進体制を公表した。それによると「高校基礎学力テスト検討・準備グループ」(主査=荒瀬克己・大谷大学文学部教授、長塚篤夫・順天中学・高校長も参加)と「大学入学希望者学力評価テスト検討・準備グループ」(主査=岡本和夫・独立行政法人大学改革支援・学位授与機構理事、平方邦行・工学院大学附属中学・高校長も参加)を設け、それぞれ平成29年度初頭に実施方針を策定・公表する。委員は必要に応じ適宜追加される。  また大学入学者選抜方法の改善に関する協議(座長=片峰茂・長崎大学長、長塚校長らが参加)で入学者選抜実施の新ルールの検討、調査書・提出書類の在り方の検討などを行い、大学入学者選抜実施要項の見直しの予告を、29年度初頭を目途に通知する予定。そのほか新テストの実施体制を省内で検討する。こうしたグループ等の検討状況等については、文科省改革推進本部・高大接続改革チーム(リーダー=安西裕一郎・文科省顧問)が把握、フォローアップを行う。

山形大未払賃金請求訴訟、財務諸表の見方についての被告側主張の虚構と地裁判決の誤り

全大教時報(Vol.40No.2 2016.6)

山形大未払賃金請求訴訟
財務諸表の見方についての
被告側主張の虚構と
地裁判決の誤り

山形大学未払い賃金請求訴訟第1次訴訟原告団長

 国立大学法人山形大学において、2012年7月支給分から行われた最高約10%にも上る賃金の一方的カットに対して、筆者を含む山形大学職員組合組合員7人が、労働契約法第9条、第10条違反により無効として、2013年3月、山形地方裁判所に「未払賃金請求訴訟」を起こした。その後、33人の組合員による第2次提訴(2014年12月9日)も行われ、合計40人の原告団で訴訟が闘われた。

 残念ながら、本年(2016年)3月22日、原告敗訴(請求棄却)の判決が言い渡された。判決 1)では、富山大の判決と同じく、財務諸表、とりわけ貸借対照表の見方を完全に誤った被告側の主張をそのままなぞった理屈立てがなされていた。まるで、裁判所は、最初から、被告側や文部科学省が嘘をつくはずがないとでも思っているかのように、被告側の荒唐無稽な主張も、何の躊躇もなく正しいとして採用しているように見える。その明らかで重大な誤りとして、少なくとも以下の4点があげられるだろう。

…以下,省略…

2016年06月21日

大学オンブズマン、学校法人四国大学における重大な法令違反・人権侵害の是正を求める声明

■大学オンブズマン
 ∟●学校法人四国大学における重大な法令違反・人権侵害の是正を求める声明

学校法人四国大学における重大な法令違反・人権侵害の是正を求める声明

2016年6月20日 大学オンブズマン

 報道によれば、学校法人四国大学(徳島市、佐藤一郎理事長)が設置する四国大学は、徳島労働基準監督署によって労働安全衛生法の疑いで徳島地方検察庁に書類送検された。内容は、労災認定された、同大学に勤務する准教授に関する労働者死傷病報告書の提出を怠っていたというものである。
 当該准教授は2013年6月に徳島労働基準監督署から、うつ病を発症したのは長時間労働(直前の1か月の時間外労働は160時間を超える)による強いストレスが原因として労災認定されている。自らの責任によって被雇用者にうつ病を発症させながら、適切な対応を取っていなかったことは重大な法令違反であり、きわめて深刻な人権侵害である。
 『徳島新聞』2016年5月27日によれば、大学は「指摘を受けるまで義務づけられていることを知らなかった。労災保険の申請手続きには対応しており、労災を隠す意図はなかった」述べているとのことであるが、大学を含め組織の社会的責任が強調されるもとで、信じがたい対応である。
 労災認定後の四国大学の対応を見ていれば、この言をそのまま受け取ることはできない。学校法人四国大学は、健康状態が回復した当該准教授の復職の求めに対して、あれやこれやの理由をつけて拒否するという人権侵害を行っている。また、労働基準監督署の指導にしたがって、ハラスメントを生じさせない職場環境づくりに取り組むことも進んでいない。さらには、当該准教授が労災認定され給付を受けていることを知りながら社会保険(私学共済)の資格喪失手続きを行うという非人道的なことを行った。
 大学は「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」(学校教育法、第83条)場である。同じく大学は「その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」(同、第83条の2)とされている。ブラック企業が社会的な問題となっているもとで、大学はよりいっそう社会の範となることが要請される。
 学校法人四国大学のありようは早急に是正される必要がある。当オンブズマンは、学校法人四国大学に以下の2点の対応を早急に行うことを強く求める。
① 当該准教授の職場復帰に向けて、法令にのっとり適切に使用者責任を果たすこと。
② 当該准教授が起こした裁判をいたずらに長引かせず、訴えの内容を受け入れた和解を含め誠実に対応すること。

以上


2016年06月20日

短大数ピークの6割 大学全入時代、学生集まりにくく

神戸新聞(2016/6/18)

 66年の歴史がある神戸山手短期大学が、2018年度から募集停止に踏み切る。近年、短大数は全国的に減り、ピーク時の6割、学生数は4分の1に落ち込む。かつては「就職に強い」という魅力から、女子を中心に幅広く学生が集まったが、選ばなければ希望者全員が入れる「大学全入時代」に突入。保育士養成など特定分野しか学生が集まりにくい状況があるという。

 学校基本調査によると、兵庫県内の高校を昨年3月に卒業した生徒の大学進学率(通信教育などを除く)は55・5%で、10年前と比べて約9ポイントアップ。一方、短大進学率(同)は5%で、約3ポイント下がった。

 県立高校の50代教員は「20年前なら、女子に大学進学を勧めると保護者が『短大でいい』と反対した。いまは大学か専門学校を選ぶ子が多く、短大はほとんどない」と話す。

 短大は1949年、学校教育法改正で制度化。翌50年から開設された。神戸山手短大もこの時、女子短大としてスタートした。

 その後、企業の短大卒採用増や、短期間で学べることから人気が高まり、96年には全国で大学を上回る598校に達した。

 だが、少子化の波とともに、短大人気も低調に。11年に神戸松蔭女子学院大(神戸市灘区)が短期大学部を廃止するなど、14年度には全国353校(県内17校)とピーク時の6割、学生数も4分の1の約13万6千人に減った。

 県私立短大連合会の一谷宣宏理事長(園田学園理事長)は「女性の総合職採用が増えたり、4年間学ぶ時間的余裕ができたりして、時代が変わった。定員割れが続き、大学に吸収するケースが多い」と話す。その上で「地域に密着した短大はこれからも必要だ」と強調した。

 一方、新学科ができたばかりの募集停止方針に、神戸山手短大内部からは批判の声が上がる。ある教員は「新学科は定員の9割を満たした。二年制で学費が安く、資格も取れる短大にはニーズがある」。別の教員は「教員に十分な説明がない」と憤る。一部生徒から「学校はどうなるのか」と、戸惑いの声も寄せられているという。


名古屋女子大組合副委員長不当解雇事件、最高裁が受理を決定 原告の勝訴確定

最高裁判所は,2016年6月17日付で名古屋女子大学不当解雇事件について,上告受理申立の不受理を決定。
これにより2015年4月30日の名古屋高裁における原告側勝訴が確定した。

2016年06月16日

酪農学園・麻田信二理事長退任へ

■「北方ジャーナル」2016年7月

酪農学園・麻田信二理事長退任へ
学長更迭問題との関わりは否定
■常務理事など現職過半数が交替、新任に道・土屋農政部長ら

 昨夏に任期途中の学長が解任された酪農学園大学(江別市、竹花一成学長)で5月末、同学を運営する学校法人酪農学園(同、麻田信二理事長)の理事会が開かれ、法人理事9人のうち理事長を含む5人の退任が決まった。時期理事長などの人事は、7月の理事会で正式決定される。
 関係者によれば学園の理事会は5月27日、札幌市中央区のホテルで開かれた。麻田信二理事長のほか福山二仁常務理事など5人の退任が内定し、新たに谷山弘行・元酪農大学長や土屋俊亮・道農政部長らの理事就任が決まったという。
「麻田さんは午後6時からの懇親会で挨拶し、改めて辞意を述べていました。ただ、理由はあきらかにしていません」(法人関係者)
 酪農大では昨年7月、就任3年めを迎えて間もない干場信司学長(当時)が理事会決定により任期半ばで解任される騒ぎがあったり決定に疑義を唱える教員や同窓生らは理事会を激しく批判、「解任には合理的な理由がない」と訴え、署名活動などで現理事らに退任を迫り続けることになる。学長更迭の事情を知らされなかった現役学生の閤にも不信感が拡がり、昨年11月には法人が全学説明会を開くに到った。
 理事会が前学長解任を決めた理由の1つに、元常務理事が教員など6人を訴えた民事裁判がある。昨年5月の判決で、札幌地裁は原告が主張する干場前学長らの名誉毀損行為を一部認めた。理事会はこの一審判決を根拠に、干場氏が学長としての適性を欠いているとしていたが、本年3月の控訴審判決では地裁の判断が覆り、必ずしも名誉毀損は認められなくなった(本誌5月号既報)。
 この高裁判決が出る前から「確定前の判決を解任理由とするのはおかしい」と主張していた干場前学長は本年1月、自身が原告となって札幌地裁に〝第2の裁判″を提起した。学校法人を相手取り学長解任無効を求めるその訴訟では、4月までに2度の弁論が行なわれている。原告の干場氏は提訴後の会見で、活動の最終的な目標として現理事の即時退任を訴えていた。
 こうした混乱のさなかに内定した、麻田理事長退任。前学長を支持する関係者の聞からは「打れわれの運動が奏功した」との声が聴かれ、「引き続き全員の退任を求める」との主張も伝わってくる。当初「3期9年」だった理事長任期を廃止し、理論上無期限で法人の舵取りを続けられるルールをつくったのは、現在の理事会だ。定款(寄附行為)変更は一昨年度のことで、それを成し遂げたトップがここに来て自ら身を引くことには、どんな事情があるのか。麻田氏自身に問いを向けると、「そもそも長くやるつもりはなかった」との答えが返ってくる。先の裁判や教員らの反発は、辞意に影響していないという。
「深い意味はありません。もともと決めていたことですし、むしろ当初の予定より長くお世話になってしまったと思っているほど。仰言るような裁判の影響もありません。あれは学園が直接かかわっていることではないですから」
 一方、理事長退任の報に接した干場前学長は本誌に対して次のように語っている。
「自ら任期を撤廃したものの、ここに来て辞めぎるを得なくなったのでは。先の裁判の逆転判決や私の訴訟提起がなければ、理事長も常務理事もおそらく続投していたでしょう。新理事の顔ぶれには疑問もありますが、現職再任よりはよい結果になったと思います」
 麻田信二氏は道庁出身。おもに農政畑を歩み、2006年副知事で退職。翌07年から酪農学園理事長を務めている。現在3期。


2016年06月14日

岡山大学の研究不正と解雇無効決定-不正な科学者は誰だ?-

アゴラ

岡山大学の研究不正と解雇無効決定-不正な科学者は誰だ?-

2016年06月10日 06:00

筒井 冨美

大学に「最高学府~Fランク大」があるように、科学雑誌にもランクがある。大学ランクを示す数値が偏差値ならば、科学雑誌ランクを示すのがインパクトファクター(Impact Factor, 以下IF)である。ざっくりいうと、「その雑誌に掲載された論文が、どのぐらい他の論文で引用されたか」というのを数値化したものであり、一般人ならば「IF>30の雑誌に掲載≒スゴい発見」と理解しておけばよいだろう…「偏差値>70の大学を卒業≒エリート」みたいなものである。ちなみに、STAP騒動で有名になったNature誌はIF=41である。また、この数字は研究者の業績の目安でもある。私自身はIF=1~6の雑誌に5回の掲載経験があり、合計IF=12である。

 現在、日本で最も医師のフリーランス化が進行している診療科は麻酔科だが、教授たちには不評らしい。「自分が上司の靴をせっせと舐めて教授になったら、自分の靴を舐めるはずの部下がドンドン辞めてゆく」のは、面白くないのだろう。2009年、日本麻酔科学会理事長(当時)の森田潔教授は、学会ニュースレターで「モラルの喪失と感じさせる案件」としてフリーランス医師を公然と非難した。それは、「理事長の遠吠え」として業界では話題になった。というのも、森田氏が筆頭著書の英文論文は2本で、合計IF=6…(私を含む)多数のフリーランス医師に研究業績で負けており、下手すると大学院生にすら負けるレベルだったからである。インターネットの発達は、研究者の業績を数分間で丸裸にする。教授やら学会幹部の中には「エラそうにしてるけど、実はめぼしい研究業績がない」=「腕や研究よりも、政治力や年功序列で教授になった人材」がソコソコ存在することがバレるようになった。

 そもそも、「大学医局で10~20年間修業→独立開業」というのは、医者としてはごくありふれたキャリアパスであり、眼科や内科の学会トップがそれを非難することはない。また、日本麻酔科学会は学術団体であり、学問・研究・人材育成などを行う団体である。学会員が非正規雇用に転じると「モラルの喪失」と責めるのは、学術団体のやることではない。部下がどんどん辞めるからといって、辞めた人間を非難するだけで、辞めた理由を分析して問題点を改善しなければ、さらに部下が辞めるだけのことだ。

 2011年、日本麻酔科学会理事長だった森田教授は、岡山大学の学長になった。「論文二本で教授になる方法」とか「インパクトファクター6で学長になった僕」といったハウツー本でも書けば、かなり売れるんじゃないだろうか。2012年、同大学薬学部の教授2名が「論文31本の捏造疑惑」というかなり大規模な研究不正を告発し、調査が行われた。森田学長は「異なる画像を誤って掲載しただけ」という、どこかで聞いたような釈明とともに「不正はなかった」と結論づけた。2014年に、森田学長は「パワハラ行為があった」として告発者2名を停職処分とし、2015年にそのまま解雇した。橋下元大阪市長もビックリの強引な国家公務員解雇劇だったが、関係者に小保方晴子氏のようなビジュアル系人材がいなかったせいか、世間からはあまり注目されなかった。

 事件は法廷闘争となり、2016年6月6日に岡山地裁は「解雇無効と給与保全の仮処分」命令を下した。世間は「都知事の釈明記者会見」で大騒ぎだったせいか、これまたあまり注目されずに終わった。森田学長は大学ホームページで「本学の正当性を主張」しているが、炎上騒ぎも無いようだ。

 ところで、森田氏の論文の一つは2002年の「不整脈原性右室異形成2例に対するフォンタン手術の周術期管理」だが、「フォンタン手術」の麻酔管理とはトップクラスに高難度で、これがこなせる麻酔科専門医は1%未満である。ゆえに、こういうハイリスク症例が得意な高スキル人材は、この分野の教育講演や学会シンポジウムや医学書執筆などを頼まれることが多いはずだ…が、ネット検索しても森田氏が2002年前後にそういう学術活動をした形跡はなく…他人に書かせた論文を横取り(=ギフト・オーサーシップという研究不正行為)した可能性が高い。という訳で、解雇された元教授と関係者は、当時の麻酔台帳などを調べて「森田氏が本当にフォンタン手術などの高難度心臓手術に関与していたか」を確認すると、興味深いデータが得られるのではないだろうか。(一部、再訂正しました)

画像は岡山大学ホームページより

筒井冨美

フリーランス麻酔科医、医学博士

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。2013年から、東洋経済オンライン「ノマドドクターは見た! 」で論壇デビューし、執筆活動も行う。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、STAP騒動や岡山大研究不正を「オバサン系リケジョ」として分析している。

東北大学職員組合、非常勤職員の無期転換に対する「自己推薦制度」の導入に関する要請書

東北大学職員組合
 ∟●非常勤職員の無期転換に対する「自己推薦制度」の導入に関する要請書

2016年6月13日

国立大学法人東北大学
総長 里見 進殿

東北大学職員組合
執行委員長 山下 正廣

非常勤職員の無期転換に対する「自己推薦制度」の導入に関する要請書

 東北大学で働く職員の約53%が非常勤職員であり、東北大学の研究と教育等の運営は非常勤職員に大きく依存しています。ところが大学当局の説明によれば、改正労働契約法を理由として、平成30年3月から3年間で3200名以上の非常勤職員が雇止めになる可能性があり、東北大学の教育と研究の運営に多大な障害が出るのは誰の目から見ても明らかです。

 大学当局は、本年2月16日付で「准職員・時間雇用職員の無期転換者の選考について」という方針を出し、3月下旬~4月上旬まで全キャンパスで無期転換制度の説明会を行いました。それによると、無期転換者の選考は、「正職員と同等以上の成果を出すと見込まれる者」について、職場の上司などの評価により非常勤職員の推薦を部局から行い、人事担当理事の面接等により無期雇用への転換を決定するものです。本人が無期転換を希望する正式な手続きはありません。

 いわば、正職員にふさわしい人を無期雇用にするということですが、たとえば、本学の本年度の事務職員や技術職員への正規採用者は37名であり、大学当局は正職員の増員方針は打ち出していません。

 つまり、昨年10月1日現在雇用されている准職員・時間雇用職員3243名のうち正職員と同等以上の成果を出すと見込まれる者」として無期転換される者の総数は非常勤職員全体の数%しか考慮されておらず、多くの准職員、時間雇用職員が落胆しています。私たちは、このままではほとんどの非常勤職員が雇止めになるおそれが大きいと言わざるを得ません。

 東北大学職員組合は、非常勤職員の希望者全員の無期転換を要求しています。そのために、非常勤職員が無期雇用への転換を希望する場合に、「自己推薦制度(自ら自己推薦の理由書を作成して上司に提出して、人事担当理事の判断を伺う制度)」を導入するよう強く求めます。

東北大学3200名雇い止め通告の概要

首都圏大学非常勤講師組合・速報
 ∟●東北大学 3200 名雇い止め通告の概要(記者会見の質疑を踏まえ一部修正)

東北大学3200名雇い止め通告の概要

(記者会見の質疑を踏まえ一部修正)


○ 2016年6月6日 記者会見資料(PDF)

http://yahoo.jp/box/oSb8uC


【教職員の構成】

正職員4686名、非正規5771名。非正規教職員が多数。
非正規の内訳は、特定有期職員(有期契約の常勤職員)1621名、再雇用職員122名、準職員(フルタイム)1721名、時間雇用職員(パート)2307名。
*2015年5月1日現在、人数は東北大職組2015年度定期大会議案による。

無期転換される予定の非正規職員約400人
(准職員や時間雇用職員のうち法人化以前から勤務している人など)
雇い止の対象となりうる非正規教職員3243人
(准職員1493人、時間雇用職員1750人)

就業規則では非正規の職員と教員とが一括されているので、非常勤講師を含む。

時間雇用職員の職種(事務補佐員、技術補佐員、技能補佐員、臨時用務員、リサーチ・アシスタント、ティーチング・アシスタント、特別教育研究教員、教育研究支援者、産学連携研究員、研究支援者、科学技術振興研究員、事務補佐員(科学技術振興)、技術補佐員(科学技術振興)、リサーチ・アシスタント(科学技術振興)、厚生科研費研究員、事務補佐員(厚生科研費)、技術補佐員(厚生科研費)、技能補佐員(厚生科研費)、寄附講座教員、寄附研究部門教員、実務家教員(教授または准教授)、非常勤講師、サイエンス・エンジェル、医員、医員(研修医)、スチューデント・ラーニング・アドバイザー、グローバルキャンパスサポーター、アドミニストレイティブ・アシスタント(以上、就業規則掲載の別表より引用)。

部局推薦の「無期転換候補者」の数は、不明だが、ごく少数と推測しうる。

【経過】

○2012年
雇用の安定のため労働契約法改正、有期契約の労働者が5年以上継続勤務した場合、無期転換申込権が生じることに。

○2013年4月1日
改正労働契約法施行
(この日から5年を超えて継続勤務した場合、無期転換申込権が生じるようになった)。
この時点では、東北大学に5年上限はまだ存在していない。

この時点では、1年ごとの更新で3年上限とされていたが、実際には5年を超える人が40%、3年以上が半分以上いると見込まれ状態で、厳密な一律の上限は存在しなかった(2014年8月6日東北大職組団交記録より)。

○2014年1月
部局長連絡会議に東北大学は、「改正労働契約法を踏まえた対応方針案の概要」を提出。「准職員と時間雇用職員について、通算契約期間の上限は原則として5年(研究開発力強化法による労働契約法の特例の対象となるものについては10年)以内とする」との記載。

○2014年2月20日
大学は、東北大職組(専任中心の組合)に対して、「今後、時間雇用職員就業規則は、通算契約期間は5年以内とするという改正を予定している」と回答。

その後、就業規則の変更前に、当該の非正規労働者に対して具体的な説明はなく、その意見を聞くどころか、職組との労使協議さえされた形跡がほとんど見当たらない。労働者過半数代表の選出も行われたどうか不明。また、労基署に提出した就業規則に過半数代表の意見書が付いていたかどうかも不明。

○2014年4月1日
関連する就業規則が改訂され、「准職員と時間雇用職員について、通算契約期間の上限は原則として5年(研究開発力強化法による労働契約法の特例の対象となるものについては10年)以内とする」された。つまり、改正労働契約法が施行されてから1年後に、後出しで就業規則を改正し、原則として5年上限が設定され、1年間遡及して2013年4月1日からカウントされることになったことになる。

○2016年1月25日
東北大職組との団交で、大学は「1980年(昭和55年)7月以前採用の准職員、法人化前採用の時間雇用職員」について「雇用の更新限度がない」と整理されていることを明確に周知することを確認(確認書は2月18日付)。

○2016年2月16日
東北大当局「准職員・時間雇用職員の無期転換者の選考について」を作成。

①法人化以前から勤務している元々雇用上限のない非正規職員(約400名)は、引き続き更新の限度なしとされた。

②法人化後に勤務した非正規職員(約3200名)については、2013年4月1日からカウントして原則5年上限で、雇い止めすると通告した。

③例外として、部局推薦で「無期転換候補者」となる基準は、「現在各部署に配置されている事務一般職員に替わり同程度の職務を担当させた際に、これと同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれる者」であることとされた。

○2016年3月31日
雇用条件通知書に雇い止めの時期を記載。

○2016年3月22日?4月6日
無期転換に関する説明会を開催し、説明の文書配布。

○2016年4月22日
職組がポスター作製「希望する人全員を無期雇用に!」

○2016年4月26日
首都圏大学非常勤講師組合と東北非正規教職員組合が共同で団交要求。

○2016年5月
説明会を踏まえた東北大当局の質問と回答が公表される。

○同 5月31日
首都圏大学非常勤講師組合ブログに「3200名雇い止め問題」の情報拡散開始。


【東北大の5年上限の問題点】


東北大当局は、「無期転換制度の活用」と称して、大部分の非正規教職員を雇い止めにし、正規職員と「同等あるいは同等以上」という無理な基準でごく少数の非正規職員のみを「無期転換候補者」としようとしているが、これは、5年以上継続勤務した労働者全員に無期転換申込権を認めた改正労働契約法第18条の趣旨(雇用の安定)に反している。

2012年7月25日の衆議院厚生労働委員会で示された政府解釈によれば、改正労働契約法第18条は「雇用の安定を図るという趣旨で設けたもの」(金子政府参考人)であり、「今回の無期転換ルールの趣旨からしても、5年のところで雇い止めが起きてしまうと、この狙いとは全く違うことになってしまいます」(小宮山厚生労働大臣)とされている。東北大学の就業規則は、まさに「5年のところで雇い止め」にして「雇用期間が無期転換の時期を迎える前に雇い止めをする」ものであり改正法の趣旨と「全く違う」行為である。
(第180回国会 厚生労働委員会 第15号(平成24年7月25日(水曜日))議事録より)


5年上限の就業規則は、その作成の手続きにも疑問がある。
たとえば、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)第7条では「事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする」とされているが、今回の5年上限の就業規則は、非正規教職員の意見を全く聞かずに作成されている。
また、最近の最高裁判決(山梨県民信用組合事件・第二小判2016年2月19日)では、「労働条件を不利に変更する場合は、〔…〕、変更によってどんな不利益があるかなどを、雇用主から具体的に説明する必要がある」とされているが、5年上限の就業規則の制定の際には、事前の具体的な説明や意見聴取は行われていない。


早稲田大学の島田陽一副総長(労働法)は、改正労働契約法の第18条について「本条の施行時期〔2013年3月31日以前〕に有期労働契約の終期〔雇用上限〕を定めることができないと、この猶予期間〔制度整備の準備を含む猶予〕の意義が失われる」(『ジュリスト』2012年12月号)と述べ、5年上限を付ける場合には、少なくとも2013年3月31日よりも前でなければならないという趣旨の見解を示している。実際、早稲田大学は、非常勤講師に5年上限を付けるために、2013年の2月に労働者過半数代表を選出し、3月中に労働基準監督署に意見書を付けた就業規則を労基署に提出している。

ところが、東北大学では、改正労働契約法が施行された2013年4月1日の時点では、明確な上限がなかったにもかかわらず、無期転換を恐れて、2014年1月の部局長連絡会議に「改正労働法を踏まえた対応方針案の概要」が提出され、2014年4月1日に就業規則を変更し、厳格な一律5年上限を決めている。

したがって、後出しで5年上限を設けたという点では、東北大学は早稲田大学よりもはるかに悪質であり、無期転換を逃れるための脱法行為である疑いは、早稲田大学以上に濃厚である。


就業規則の変更は、2014年4月1日であるから、5年上限のカウントの開始は、それ以降でなければならない。ところが、東北大学は、1年間さかのぼって、2013年4月1日からカウントするとしており、一方的な不利益変更であるだけでなく、無期転換を逃れるための不利益変更の遡及であり、違法である。


東北大を含め、一部の大学は、「法〔労働契約法〕改正により、無期雇用の可能性が広がりました。しかし、基盤的経費が削減された大学にはその要請にこたえる余力はなく」(「学術研究懇談会(RU11)」の平成25年5月の提言)などと言って、財政難を理由に法律を無視することを示唆してきた。しかし、改正労働契約法第18条は、「別段の定めがない限り、申し込み時点の有期労働契約と同一の条件」としており、人件費が増えるわけではないので、財政難は口実にさえならない。

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東北大学では、非正規職員数が正規職員よりも多いと言われおり、非正規職員の大多数を雇い止めにした場合、職場が大混乱に陥る。それだけでなく、非常勤講師の雇用の不安定化を進めた場合、今でさえ「博士課程の進学数・率が低下し」、「望ましい能力を持つ人材が博士課程を目指していない」(前述の「RU11」の提言)というのに、ますます研究者が育たなくなることは明らかである。


大学の公式ホームページには、「東北大学は、被災地域の中心にある総合大学として、復興に全力を傾けていく歴史的使命があります」と書かれている。しかし、必要もないのに3200名を雇用不安にさらすことは、「復興に全力を傾けていく歴史的使命」に反するのではないだろうか。


最近の調査によれば、民間の営利企業でも、労働契約法の5年ルールによる2018年の無期転換に備えて、パートや契約社員を、無期契約に変える動きが目立っている(2016年3月11日『朝日新聞』参照)。また、2015年7月のJILPTの調査によれば、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」企業がわずか6.0%(フルタイム有期契約労働者)および5.8%(パートタイム有期契約労働者)しかないのに対して、「通算5年を超える有期契約労働者から申し込みがなされた段階で無期契約に転換」という企業が45.4%(フルタイム有期契約労働者)および50.8%(パートタイム有期契約労働者)であり、「有期契約労働者の適性を見ながら5年を超える前に無期契約にしていく」という企業も19.6%(フルタイム有期契約労働者)および11.1%(パートタイム有期契約労働者)ある。

さらに、大学関係でも、早稲田大学をはじめ、日大、慶応大、明大、法政大、千葉大、一橋大、琉球大など、全国のほとんどの大学が、組合との交渉の結果、非常勤講師に関しては5年上限を撤回し、将来の無期転換を認めている。

有期契約の職員に関しても、徳島大学と信州大学が無期転換を認めている。それ以外にも、国立高等専門学校機構(51校)の就業規則では、「非常勤教職員」の「雇用期間」が5年を超えた場合、労働契約法第18条の規定に基づき、当該非常勤教職員からの申し出により、「雇用期間の定めない雇用」(無期雇用)へ転換するものとする(第13章第54条)と明記されている。

以上のように、財政的に「余力」があるかどうかには全くかかわりなく、多数の企業や教育機関が法令順守の努力をしている。このことに東北大学も学ぶべきである。

<会見概要は以上>

オンブズマン北教大、旭川校教員の不当解雇についての申し入れ

オンブズマン北教大
 ∟●旭川教員の不当解雇について,申し入れを行いました(2016年4月17日)

旭川教員の不当解雇について,申し入れを行いました

 さる3月22日に、サテライトにおいて、佐藤共同代表と、姉崎共同代表が、蛇穴学長と面談を行い、大学オンブズマン?北海道教育大学の設立の趣旨を説明しました。
 北海道教育大学の3教員の解雇の問題で、最高裁で上告棄却が確定したにもかかわらず、完全職場復帰ができていない現状について、早期の解決を行うように申し入れを行いました。(申し入れ文書は次ページ参照)
 現在すでに重大なコンプライアンス違反の状態にあることを指摘しています。
 蛇穴学長は、できるだけ早期に解決したいとのことでしたが、我々は,これからも注視していきます。

〔経緯〕
 
*平成21年2月  3教員を諭旨解雇の懲戒処分。理由は、平成18年?20年、学生に対して,アイヌ語研究等の自己の研究に利用する目的で,過大な課題を強制するなどし,この問題に対する大学の調査にも応じなかったというもの。
*平成21年3月  退職に応じないため,懲戒解雇。
*平成22年11月 札幌地裁判決。大学側 敗訴。 → 大学側は評議会にはからずに高裁に控訴し,評議会には事後報告を行った。
*平成24年3月 札幌高裁判決。大学側 敗訴。 → 評議会、および各校教授会で控訴への懸念が表明されたが、学長は反対意見を押し切って、自ら「学長一任」と決定し,最高裁に控訴。
*平成26年2月 最高裁上告棄却。3教員の解雇無効が確定。
*平成26年6月 教育研究評議会で議題となり,学長が、「自らの行為に対する反省がなければ、大学教員としての復帰を認めない」として、3教員に反省文を求めることになった。
*平成26年7月 教育研究評議会で、3教員の提出文書について議論を行ない、学長から、反省が不十分として再度提出させる方向が示されるとともに、教員側から交渉の非公開の要望があったとして、以後の評議会で議題にされなくなる。
*平成27年 3教員のうち1名と和解し、同教員は辞職。2教員については、教育?管理運営への復職が認められておらず、今日に至る。

申し入れ書

2016年3月22日

大学オンブズマン・北教大
共同代表 姉 崎 洋 一
共同代表 佐 藤 博 文

1.貴大学は、2006(平成18)年から2008(平成20)年にかけ、旭川キャンパスの教員3名が学生にアカデミック・ハラスメント(以下「アカハラ」と言います)を行ない、大学側の調査に応じなかったとして、諭旨解雇としました。これに対し、3教員が解雇の無効を求めて裁判を起こし、2010(平成22)年11月の札幌地裁判決、2012(平成24)年の札幌高裁判決はいずれも解雇を無効としました。貴大学は最高裁に上告しましたが、2014(平成26)年2月20日、上告棄却の判決が下され、3教員の解雇無効が確定しました。
 ところが、2教員(1名は辞職)について、雇用上の地位の回復こそ認めたものの、今日に至るまで教育(授業の担当など)と管理運営(会議の出席など)への参加を認めておらず、完全に復職するには至っていません。これは異常というほかありません。
 
2.貴大学は、判決確定を受けて3教員との間で解決するにあたり、反省文の提出を求めました。それに対して提出された反省文が、3人とも自書したものでなく同一文章であるということを理由に、「反省しているとは思えない」として、貴大学が納得できるものが提出されるまで全面的な復職は認めないとされています。
 しかし、解雇無効の確定は、解雇が初めから無かったことを意味しますから、必然的に解雇時の状態に無条件で復帰させねばなりません。仮に、解雇後に既成事実が積み重ねられ、即時の復職に支障か生じているのであれば、それは貴大学の責任で除去・改善しなければならず、いやしくも被解雇者にその責任や負担を転嫁することは許されません。
 しかるに、貴大学の対応は、下記3、4に述べるように違法・不当であり、かえって問題解決を難しくしていると言わざるをえません。

3.近代市民社会の個人意思尊重の基本理念より、本人の自由な意思に基づくことなく、強制的に謝罪文の提出を求めることはできません。憲法第19条が保障する思想・良心の自由に反するからです。ましてや、貴大学が納得する謝罪文を提出するまで全面的な復職は認めないという、不利益処遇と引き換えにするやり方は許されるものでありません。
 また、就業規則に懲戒処分手続として「始末書」の提出を求めることを定めることがありますが、貴大学にかような規定はありません。従って、反省文提出は、雇用契約上根拠のないことを要求していることになります。
裁判例をみますと、「労働者の義務は労働提供業務に尽き、労働者は何ら使用者から身分的支配を受けるものでなく、個人の意思の自由は最大限に尊重されるべきであることを勘案すると、始末書の提出命令を拒否したことを理由に、これを業務上の指示命令違反として更に新たな懲戒処分をなすことは許されない」(豊橋木工事件:名古屋地判 昭和48年3月14日)とされています。「始末書」を「反省文」に、「懲戒処分」を「不利益」と置き換えれば、今回の事案にそのまま当てはまります。

4.解雇無効の判決が確定したならば、判決に従って直ちに復職させなければなりませんが、もし判決に従わず、「賃金は支払うが仕事はさせない」とした場合はどうなるでしょうか。
 言うまでもなく、判決の履行は、法人の業務執行行為にほかなりません。従って、法人役員がその業務執行責任を果たさないということは、法人に対する善管注意義務・忠実義務に違反していることになります。働かせるべき人を働かせないで賃金だけ支払うことは、その賃金相当額について法人に損害を与えていることになります。
これには有名な裁判例があります。渡島信用金庫会員代表訴訟判決(札幌高裁平成16年9月29日判決・平成14年2月12日上告棄却)は、違法解雇した職員に対して、仮処分・本訴訟等の敗訴により賃金は支払っていたものの職場復帰を認めなかった事案において、法人代表者2名に対して、被解雇者の賃金相当分(約3100万円)の損害を法人に与えたとして、賠償を命じたのです。「判決に従う」という法治国家として当然のことを、雇用関係におけるコンプライアンス遵守の問題として、役員の責任を認めたのです。
 貴大学における法人役員は、学長、理事、監事であり、同人らのコンプライアンス違反は、貴大学に対する善管注意義務・忠実義務違反として個人責任まで問われる重大な問題であります。

5.以上のとおり、私たちは、貴大学が、上記の指摘を真摯に検討され、判決の確定から2年を超えたという異状事態に対して、法に基づき速やかに解決することを強く申し入れます。
 また、本問題の解決を機に、貴大学が雇用関係全般にコンプライアンスを貫くことを強く求めるものです。

以上


(ニュースレターNo.2より)

2016年06月11日

酪農学園大学、専断体制をつくった麻田理事長と常務理事がセットで退陣!

■道私大教連速報33(2016年6月10日)

酪農学園の麻田理事長らが退陣!

【速報】5月末に開かれた酪農学園の理事会・評議員会で、学内でさまざまな混乱を引き起こし、内外からの批判を集めていた元道副知事天下り理事長の麻田信二氏、および常務理事の退任が決定した、ということです。
麻田氏は自らの任期制限を撤廃する寄附行為改定をゴリ押しするなど直近まで強権支配を続けてきましたが、今回、常務との同時退任はかかる経過からして不自然な動きです。先の元常務らによるスラップ訴訟判決の動向など学内外からの圧力が高まったことによって事実上の退陣に追い込まれたのではないか、と推察されます。


専修大学道短期大整理解雇事件,最高裁 棄却を決定

■道私大教連速報33(2016年6月10日)

8教員上告審が棄却決定

高裁でも不当判決されていた同短大8教員事件の上告審。1 年以上待たされた挙句、書面審理のみで 6 月 2 日付け棄却決定。事実上、教員側の敗訴が確定です。「これまでの皆様の まで強権支配を続けてきましたが、ご支援に深く感謝いたします」(同教員組合)。
募集停止、整理解雇をめぐる私学関係の事件で、ここまで酷い判例は見ません。極めて遺です。


岡山大学解雇事件、岡山地裁(仮処分)は解雇権の濫用として無効と決定

今、岡山大学で何が起きているのか?(6/6)

岡山地裁が6月6日、仮処分決定を下した。 本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、あるいは社会通念上相当と認められないから、解雇権の濫用として無効である、との決定である。 また、平成28年1月から本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月末日限り、月額40万円を仮に支払えとの命令が下された。森山、榎本両教授の主張がほぼ認められ、今回解雇が解雇権の濫用で無効であると、裁判所が断定した事に最大の意味がある。森田学長また、評議会のメンバーの先生方はどう責任を取るのか全岡山大学関係者は注目している。

論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令

産経(2016.6.6)

 岡山大の複数の博士論文について「データ改竄(かいざん)の疑いがある」との内部告発を行い、解雇された岡山大薬学部の元学部長と元副学部長が処分の無効を求めた仮処分申請で、岡山地裁(池上尚子裁判長)は6日、「解雇は無効」として、大学側に2人の給与の一部を支払うよう命じる決定をした。

 決定によると、元学部長らは岡山大大学院の博士論文28本でデータの捏造(ねつぞう)や改竄が行われているなどとして、平成26年以降、ジャーナリストに告発するなどした。大学側は岡山大の社会的信用を傷つけたとして昨年12月、2人に解雇を通知した。

 池上裁判長は決定で、内部告発の公益性を認定。処分について「合理的な理由を欠き、(大学側が)解雇権を濫用(らんよう)した」とした。同大の森田潔学長は「今後の不服申し立て手続きと訴訟で本学の正当性を主張していく」とコメントした。

 論文不正をめぐっては、改竄の可能性が高いとされた5本について岡山大が外部の有識者を含む調査を実施し、いずれも故意の不正などはなかったとする結果を明らかにしている。


2016年06月04日

常葉大教授を逮捕、公務執行妨害疑いで

■静岡新聞(2016年5月13日30面)

常葉大教授を逮捕、公務執行妨害疑いで

 浜松中央署は12日、公務執行妨害の容疑で、浜松市中区、常葉大教授(50代)を現行犯逮捕した。

 逮捕容疑は同日午後4時55分頃、浜松市中区役所内で、手続きに対応した男性職員(45)の首掛け式の名刺をひき外し、制止しようとした男性非常勤職員(61)の右肩を突くなどの暴行を加え、職務を妨害した疑い。

 同署によると、容疑者は窓口の手続きで提出した書類の不備を指摘されトラブルになったとみられる。やっていないと容疑を否認しているという。


2016年06月02日

四国大学、徳島労基署 大学を書類送検 准教授労災 報告書提出遅れる

■徳島新聞(2016年5月27日)

徳島労基署
四国大を書類送検
准教授労災 報告書提出遅れる

 長時間労働が原因でうつ病になったとして四国大(徳島市)の40代の女性准教授が労災認定された問題で、徳島労働基準監督署が同大を労働安全衛生法違反の疑いで徳島地検に書類送検していたことが26日、同大などへの取材で分かった。労災が起きた場合に必要な労働者死傷病報告書の提出が遅れたとして、准教授が労基署に告訴していた。

 同大などによると、准教授は2010年2月にうつ病を発症して休職。労基署に相談し、13年6月に労災認定されたが、同大は認定から約1年半後の15年1月に労基暑から報告書を求められるまで提出していなかった。

 労働安全衛生法では労災隠しを防止するため、労災発生から遅滞なく報告書を据出するよう定めている。同大は「指摘を受けるまで義務づけられていることを知らなかった。労災保険の申請手続きには対応しており、労災を隠す意図はなかった」としている。

 同問題を巡っては15年3月、准教授が同大に1571万円の損害賠償を求めて徳島地裁に揖訴し、係争中。


四国大学、「長時間労働でうつ病発症」 准教授が提訴 大学側は棄却求める

下記の新聞記事は約1年前の記事であるが,この事件は重大な事案であると判断し,あえて掲載する。原告教員は,損害賠償を求めて,現在,地裁に提訴中。(HP管理人)

■朝日新聞(2015年5月2日)

「長時間労働でうつ病発症」
 准教授が提訴
四国大、棄却求める

 長時間労働や人間関係のストレスが原因でうつ病を発症したとして、四国大学看護学部准教授の女性(45)が大学に1571万円の損害賠償を求め、徳島地裁に提訴した。1日、第1回口頭弁論があり、被告の大学側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は2008年4月に講師として採用され、講義のほか、09年に新設された看護学部の実習要綱の作成など多くの業務を担当。長時間労働を強いられたことなどから働く意欲を失い、10年2月、出勤できなくなった。翌月、うつ状態と診断された。その後、復職もしたが、人間関係のストレスなどで悪化し、12年3月から再び休職している。

 うつ病については徳島労働基準監督署が労災認定しており、時間外労働時間は多い時で月175時間を超えたという。女性は心身の健康について大学側の配慮が不十分だったとして、休業による損害の補償や慰謝料を求めている。

 女性は公判後に会見し、「人の健康や命を守る、看護職を教育する大学。裁判をきっかけに、教員が安心して働ける環境整備をすすめてほしい」と述べた。

 大学側は「裁判手続き中なのでコメントを差し控える」としている。(藤波優)

四国大学、半年が100時間残業 うつ病発症 准教授の労災認定

下記の新聞記事は約2年前の記事であるが,この事件は重大な事案であると判断し,あえて掲載する。原告教員は,損害賠償を求めて,現在,地裁に提訴中。(HP管理人)

■徳島新聞(2013年6月28日)

半年が100時間残業 うつ病発症
准教授の労災認定

 徳島市内の大学に勤務する40代の女性准教授がうつ病を発症したのは長時間の残業による強いストレスが原因だったとして、徳島労働基準監督署が労災認定していたことが28日、分かった。大学は「労基署から詳細な説明を受けていないが、准教授の復帰支援などに適切に対処したい」としている。

 大学や労基署などによると、准教授は2009年度に新教された学部のカリキュラム策定に加えて授業も担当し、長時間労働が続いていたという。10年3月、うつ病を発症し、その後休職している。

 准教授は12年秋に労基署に相談。労基署が調べたところ、うつ病を発症する直前の1カ月間の残業時間は160時間を超え、直前の6カ月間も月100時間程度の残業が続き、労災認定に該当していた。

 こうした実態を踏まえ、労基署は労災を認定。大学に対し、准教授が職場復帰できる環境を整え、労働状況を改善するよう口頭で指導した。
 労災が認定されたことについて准教授は「労災の事実が認められてありがたい」と話している。

 徳島労働局労災補償課によると、12年度にうつ病などの精神的な病気で労災認定されたのは全国で475件。県内では4件の申請があり、認定されたのは1件だった。


2016年06月01日

大学再生を願う福岡教育大学教員の会、「学長選考会議「意見書」の一刻も早い公表を求めます」

大学再生を願う福岡教育大学教員の会
 ∟●《学長選考会議「意見書」の一刻も早い公表を求めます》(5月23日)

《学長選考会議「意見書」の一刻も早い公表を求めます》

 これまで書いてきましたように、教員有志が3月22日に提出した「要望書」を、昨年度の学長選考会議は真摯に受け止め、3月31日に「意見書」を大学宛に提出しました。同会議の喜多議長は「意見書」を教員有志世話人に手渡すよう、担当事務に指示していたにもかかわらず、「大学の判断」として、教員有志にはいまだに渡されていません。
 これに対し有志世話人は、情報公開規程に基づき、4月5日に「意見書」および「3月22日の学長選考会議の議事録と資料全て」の開示を請求しました。
 その後、経営協議会の学外委員が確定していなかった(違法状態)ためか、4月の経営協議会・学長選考会議は開かれませんでした。本来、4月の学長選考会議で「意見書」が検討され、同時に教員有志にも内容が開示されるべきでした。
 情報開示請求への対応としては、ゴールデンウィーク明けの5月9日、事務担当者から有志世話人に連絡がありました。開示の可否の決定はもう1ヶ月待ってほしい、理由は、櫻井学長が4月12日の全学説明会で語ったように、「意見書」は学長選考会議のものなので、同会議の判断によるからだ、ということでした。議事録はまだできていないということでした。
 今月の経営協議会・学長選考会議は、5月24日に開かれるようです。最低限、そこで「意見書」を検討し、同時に教員有志への開示を決定すべきです。
 ただそうは言っても、「意見書」提出以来の学長らの一連の動きは、やはり筋が通りません。「意見書」は学長選考会議のものだから、そこで取り扱いを決める、と言うなら、「意見書」提出時点の会議議長の指示を、なぜ「大学の判断」で止めることができるのでしょうか。すでに学長らは、学長選考会議の判断に干渉しているわけです。これでは、今年度の学長選考会議で「意見書」の開示を仮に決定したとしても、同様に干渉できることになってしまいます。学長選考会議が都合の悪い決定をするとその判断には干渉しておきながら、開示延期の責任は当の会議に押し付けるというのは、無茶苦茶ではないでしょうか。
 問題は、学長選考会議の独立性にあります。本来、学長選考会議は大学執行部から独立した存在であるべきです。そうでないと、いま本学で起こっているように、大学執行部の恣意的運営を改める方法がありません。ところが学長選考会議は監事のように文科大臣から任命されるわけではなく、形式上はあくまで国立大学法人内部の組織のようにも見えます。すると、学長の権限が他の学内組織と同様に及ぶということにもなりかねず、まして担当事務局から見ると、学長と選考会議議長の指示が食い違っていた場合に、どちらに従うべきかという問題が生じます。
 このまま、万が一、大学執行部の干渉によって「意見書」が闇に葬られるようなことになれば、それはこの大学が、執行部にとって都合の悪いことはすべてもみ消す組織になったことを意味します。その事態を許してはなりません。


東北大、非正規教員3200人「雇い止め」? 非常勤講師労組がブログで告発

Jcastニュース(2016/6/1)

東北大学が実に3000人を超える非正規教職員を2年後に「雇い止め」しようとしている――。非常勤講師らで作る労働組合「首都圏大学非常勤講師組合」(本部:東京都豊島区)のそんな告発が、話題を集めている。

背景にあるのは、2013年4月に施行された改正労働契約法の「無期転換ルール」だ。最初の有期雇用契約から満5年経過後は、任期の定めのない無期雇用への転換を望んだ労働者は無期雇用としなければならないことを定めている。これが有期雇用の非正規雇用を大量に抱える大学法人にとって深刻な問題となり、非常勤講師などの働ける期間を最長5年に定める大学が相次いでいた。

大学当局「現在検討中です」

首都圏大学非常勤講師組合の「告発」は、2016年5月31日のブログに掲載された。それによると、東北大学は2018年以降、その時点で6年以上勤務する非正規教職員を、順次雇い止めする方針を固めたのだという。予想される対象人数は、およそ3200人。J-CASTニュースが取材した首都圏大学非常勤講師組合の関係者によると、無期雇用への転換となるのは04年の独立行政法人化のときから働いている教職員などで、各教職員にはすでに自身の雇い止め期日を知らせる文書も配られているらしい。

関係者によると、対象の非正規教職員は16年4月の学内説明会で2年後の雇い止めを通告された。ただ、説明会で配布された文書には「無期転換候補」となれる「選考基準」も示されており、それには正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれるものであること」と記されているという。改正労働契約法の「無期転換ルール」とは異なる基準とみられる。組合関係者は

「正規と同じ仕事をして欲しいなら、正規職員を雇えばいいじゃないですか。大学側は雇い止めの理由を『無期雇用を活用するため』と言っていますが、おかしな話ですよ」
と批判する。

 ちなみに、東北大学にコトの真偽を問い合わせたが、「本学における無期転換制度については、現在検討中です」としか答は返ってこなかった。

 大学教職員の「雇い止め」問題は「無期転換ルール」との兼ね合いで、以前から話題となっている。日本の大学は非常勤講師やTA(ティーチングアシスタント)といった非正規の教職員を多く抱えている。彼らのほとんどは大学と有期雇用契約を結び、1年ごとに契約を更新する。契約期間を過ぎれば契約を解除されてしまう不安定なポストだ。

そんな非正規教職員の数はここ数年右肩上がりだ。文部科学省が15年3月31日に発表した資料「大学教員の雇用状況に関する調査」によると、07年度から13年度の間に任期付きの教員が4000人も増えている。教員数全体に占める任期付き教員の割合は27%から39%に上昇。逆に、無期雇用の教員は約1400人減った。

3年前に「ブラック企業」特別賞を受賞

この傾向は若手教員の間で顕著だ。30歳以上35歳未満の教員の場合、任期付きは07年度の1618人から13年度には2493人に、35歳以上40歳未満は1650人から2899人に急増している。

大学は雇用の安定化を図るため、有期雇用の教職員を活用する方針に切り替え始めた。ところが、「無期転換ルール」によって大学側は逆に、大量の無期雇用を抱えるリスクを背負ってしまったわけだ。

無期雇用の急増は避けたい――。そう考えた多くの大学が、労働契約法が改正された13年頃から学内の就業規則を変えるなどして非正規教職員の雇用年数を最長5年に定め始めた。

早稲田大学など一部の大学では、これに反発する教職員労働組合が大規模な抗議活動を展開した。こうした活動も作用したのか、16年までに多くの大学で5年の上限は撤廃されている。早稲田大も15年11月に組合と和解し、撤回した。そんな中、突如持ちあがった東北大の通告。組合の関係者は

「こんなことやっていいのかと思います。時代に逆行していますよ」
と呆れ返る。

なお、今回の件と直接の関係はないが、東北大は13年6月27日発表の「第2回ブラック企業大賞」で、研究職員の過重労働を理由に、教育機関としては唯一「ブラック企業」特別賞を受賞している。


東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

首都圏大学非常勤講師組合・速報
 ∟●東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

改正労働契約法「無期転換」妨害のため「一律に5年上限」

東北大学は、3200名以上の非正規教職員に2年後以降、5年継続して勤務した非正規教職員を解雇することを通告しました。
その大半は恒常的業務に従事している職場で必要とされている人たちです。
以前は、3年上限が原則とされていましたが、実際には4年以上勤務する人が大半でした。

ところが、大学は、改正労働契約法が施行されると、このままでは非正規教職員が2年後には大量に無期契約に転換することを恐れ、2014年以降に「後出し」で就業規則を変えて、厳密な一律5年上限に労働条件を不利益に変更しました。
しかも、2013年4月1日から遡ってカウントして、以前からつとめていた非正規教職員の大半を雇い止めしようというものです。

東北大学当局は、「優秀さ」を基準にごく一部の職員を無期転換させ、残りの非正規職員は雇い止めにすると公言しています。

2016年2月16日の文書によれば、正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれるものであること」が「無期転換候補者」の「選考の目安」としています。これは雇用の安定を目指す改正労働契約法の趣旨を全く無視した違法行為と言わざるを得ません。

これに対して、東北大学職組は「希望する人全員を無期雇用に」というポスターを作成しました。東北非正規教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合は、共同で団体交渉を要求しています。

民間企業では大半が5年で無期転換を受け入れる意向で、前倒しで無期転換を進める例も増えています。
5年で雇い止めにするという悪質な企業は少数派になりつつあります。
国公私立大学でも、早稲田大学を初めとして大半の大学が非常勤講師に対する「5年上限」を撤回しています。また非正規職員に関しても徳島大学や信州大学では無期転換を認めることを表明しています。
国立高専(全国で52校)は2年後の非正規教職員の無期転換を就業規則に明記しています。

国公立大学は、法人化されたといっても、国家予算によって運営されている教育研究機関であり、誰よりも法令遵守が求められる立場にあります。
当然、改正労働契約法の趣旨を尊重し、2年後には恒常的業務についている希望者を全員無期転換すべではないでしょうか。

とりわけ、東北大学は、国大協の会長を出している代表的な大学であり、全国に大きな影響を与えるため、今後の展開が注目されます。