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2018年06月29日

明治学院大学解雇事件、勝訴判決を受け7月3日記者会見

記者会見のお知らせ

大学当局が教授に無断で授業を録音し、無断録音を告発した教授を解雇した「明治学院大学事件」。学問の自由、教育の自由、表現の自由の根幹を揺るがした大事件の判決が出ましたので、本件に詳しい憲法学者・小林節慶應義塾大学名誉教授をお招きして、記者会見を開催いたします。

日 時:2018年7月3日(火)15時30分~16時10分
場 所:東京地裁・司法記者クラブ

登壇者:
1.原 告・寄川条路(明治学院大学教授)「明治学院大学事件の概要」
2.弁護士・太期宗平(ベリーベスト法律事務所)「裁判と判決の概要」
3.法学者・小林 節(慶應義塾大学名誉教授)「明治学院大学事件の意義」

概 要:2018年6月28日、東京地方裁判所は、大学当局による教授の解雇は無効である、との判決を下した。


2018年06月28日

明治学院大学解雇事件、東京地裁判決(2018年6月28日)勝訴!

祝 勝訴!

速報 2018年6月28日,東京地裁にて,明治学院大学解雇事件について判決がありました。

原告の勝訴とのことです!

詳細は後ほど。

2018年06月26日

日大教員たちが訴える「大学本部の腐敗」 非常勤を解雇し、専任教員で穴埋め

プレジデント・オンライン(2018年6月26日)

日大教員たちが訴える「大学本部の腐敗」
非常勤を解雇し、専任教員で穴埋め

ジャーナリスト 田中 圭太郎

 日本大学のガバナンスはどうなっているのか。問題はアメフト部の危険タックルだけではない。日大は今年3月、英語の非常勤講師15人を解雇。プレジデントオンラインではその1人の声を報じたが、日大の態度は変わらず、講師8人は6月22日、日大に地位確認を求める訴えを東京地方裁判所に起こした。提訴を避けるため、講師たちは日大と団体交渉を重ねてきたが、大学本部のトップである田中英壽・理事長と人事の責任者だった内田正人・元アメフト部監督の2人は、一度も姿をみせなかったという。これでいいのか――。

非常勤講師8人が日大を提訴

 6月22日午後2時過ぎ、日本大学を解雇された非常勤講師と弁護団が東京地方裁判所を訪れた。持ってきたのは書き上げられたばかりの訴状だった。

 前夜、首都圏大学非常勤講師組合と日大との間で3カ月ぶりの団体交渉が行われた。しかし、違法な解雇だと訴える講師らの主張を、大学側はまったく聞き入れなかった。

 その結果、解雇された講師のうち6人と、一方的に担当授業を削減された講師2人が法廷闘争を決意。日大を相手取り、解雇や授業の削減は違法かつ無効であるとして、地位確認を求めて東京地方裁判所に提訴した。

 同日、原告団は記者会見を開き、危機管理学部とスポーツ科学部から雇い止めされた原告団長の真砂久晃さんが「声明」を読み上げた。以下はその抜粋だ。

「学びと研究の共同体を破壊する大学本部」

 「日本大学を提訴することは、私たちにとって、苦渋の選択でした。原告団の中には、今でも日大の学生を教えているものが何人もいます。それでなくても、アメフト問題で傷ついた学生たちが、私たちの行動で、また心を痛めるのではないかと思うと、いたたまれません」

 「日本大学には、愚かな人間はほとんどいません。大部分の教職員は思いやりのある、愛すべき人々です。私たちは日本大学を愛しています。ですから、私たちが今回、異議を申し立て、是正を要求するのは、日大の中枢部に寄生し、非常勤講師を良心の呵責もなく使い捨て、教職員をこき使って何食わぬ顔をしているわずかの人々に対してなのです」

 「私たちが糾弾したいのは、この学びと研究の共同体を破壊する大学本部です。彼らは、学生を守ると述べていますが、非常勤講師を含む教職員を人間扱いしない人に、学生が守れるはずがありません」

 真砂さんが糾弾する大学本部のトップは田中英壽理事長、講師を解雇した当時の人事の責任者は、危険タックル問題で職を追われたアメフト部前監督の内田正人氏だ。2人とも講師たちとの団体交渉に出席したことは一度もなく、責任者として解雇の理由を語ったこともない。外部からの指摘に対してしかるべき人物が明確な説明をしない点は、アメフト部の問題と同じだ。

なぜ日大は非常勤講師を解雇したかったのか

 今年4月の記事で声を報じた井上悦男さんも会見の席にいた。井上さんは17年間、日大で非常勤講師を務めたが、今年3月、突然解雇された。提訴についてはこう話す。

 「大学は、学生中心で、教員とともに学問と研究をするためにあるはずです。それが、一部の方の利益追求になりつつある。そのことを危惧している」

 なぜ自分たちは解雇されなければならなかったのか。大学側は何も語っていないが、提訴に至るまでの間に、少しずつその理由が明らかになってきた。

非常勤講師をゼロにして、すべて専任教員に担当させる

 日大の危機管理学部とスポーツ科学部で、英語の非常勤講師15人が集団解雇されることが明らかになったのは去年11月。今年3月末に解雇が強行されたが、その後、非常勤講師の解雇は他の学部にも及んでいることがわかった。首都圏大学非常勤講師組合が現時点で把握しているところでは、危機管理学部とスポーツ科学部に加え、経済学部、理工学部、文理学部、工学部(福島県郡山市)と、少なくとも6つの学部で数十人に及ぶとみられている。

 非常勤講師の多くは、2013年4月に施行された改正労働契約法によって、今年4月以降に無期雇用への転換を申し込めば、来年の契約から切り替わるはずだった。改正労働契約法では、非正規の労働者が同じ職場で5年以上働いた場合、無期雇用に転換する権利が得られる。本人が申し込めば、認められるのだ。

 それにもかかわらず、このタイミングで非常勤講師の大量解雇が行われた背景には、大学本部が無期雇用への転換阻止を狙っているのではないかと受け止められてきた。

 その事実を裏付ける内部文書の存在が明らかになった。その文書は「非常勤講師に係る対応について」というタイトルがつけられており、2015年11月に理事会で決定されたものだ。

 文書の冒頭には「1 非常勤講師に対しての基本的な考え方」とあり、そこには次のように記されている。

 「専任教員の授業持ちコマ数の適正化など教員人事配置計画の見直しを図る過渡期において非常勤講師の無期転換権発生を認めるということは今後の大学運営に支障をきたす可能性が大きいことを考慮に入れる必要がある」

 つまり「今後の大学運営」を考えると、非常勤講師の無期雇用は認められない、という意味だ。これは明らかに法律の趣旨と矛楯している。

非常勤講師を全員解雇して、専任教員に穴埋めさせる

 さらに、2015年7月に学内に通達された文書「教学に関する全学的な基本方針」では、各学部に授業科目数の2割削減を目指すことと、専任教員の担当講義数を1人週5コマから8コマに見直すことが盛り込まれていた。この通達が実施されると、のべ3600人以上の非常勤講師の授業がなくなることになる。

 具体的には、2017年現在、総授業コマ数は1万9828コマ(医学部と歯学部を除く)で、そのうち2714人の専任教員が1万2418コマ(ひとり平均4.6コマ)、のべ3643人の非常勤講師が7410コマ(ひとり平均2.0コマ)を担当している。大学本部が掲げる授業科目数の2割削減が実現されると、3965コマが削減されるため、それらがすべて非常勤講師の担当科目に集中すると、のべ1950人分、実数では1000人近い非常勤講師が雇い止めされることになる。

 さらに、専任のコマ数が5コマから8コマに増えた場合、計算上は専任だけですべての授業を担当できるようになる。このため講師たちは、大学の目的は、のべ3600人以上の非常勤講師を全員解雇することだと疑うようになった。

3カ月ぶりの団交でみせた大学の態度

 講師たちの疑念は、提訴の前夜、6月21日に、3カ月ぶりに開かれた首都圏大学非常勤講師組合と日大の団体交渉で確信に変わった。

 日大で非常勤講師15人が担当していた英語の授業は、現在、語学学校に委託されている。前回の記事でも詳報したが、大学の授業を語学学校に委託という形で「丸投げ」することは、学校教育法に違反する。大学側は3月の団体交渉で、「専任教員が授業を観察しているので丸投げではない」と主張した。だが、観察という名目で専任教員が授業に介入すれば、今度は労働者派遣法違反の「偽装請負」となる恐れがある。

 組合側は、専任教員が病気などで不在の場合の対応について聞いた。すると日大は「休講にはしない」という。これでは一時的に「丸投げ」の状態になる。また専任講師が語学学校の講師と一緒に授業をすることもあるという。これでは「偽装請負」だ。

 これでは違法な状態を黙認することになるはずだが、大学側はこう言い放った。

 「それはあなたたちには関係ない」

 大学側は現在の英語の授業について聞かれるのは「筋違いだ」と主張。その理由を次のように述べた。

 「まず先に、非常勤講師を辞めさせたのです。授業をどうするかは、その後の話です」

 つまり、危機管理学部とスポーツ科学部の英語の非常勤講師を全員辞めさせることが前提であり、その先の対応について説明するつもりはない、ということだ。

 この2つの学部は2016年4月に新設された。解雇の方針を打ち出した時、2つの学部を統括する三軒茶屋キャンパスの事務局長兼事務取扱は田中理事長だった。非常勤講師に解雇を言い渡した説明会の通知文書に、田中理事長の名前が載っている。15人の解雇と「丸投げ」や「偽装請負」という違法行為について、田中理事長は認識しているはずだ。

 田中理事長と人事の責任者だった内田氏は、団体交渉に一度も出席していない。提訴前日となる6月21日の団体交渉にも姿はなく、内田氏の後任となる人事責任者も出席しなかった。大量解雇を実施するうえで、責任者は一切の説明を放棄しているのだ。

日大は本当に変われるのか
 
 団体交渉を終えた夜9時過ぎ、会場から出てきた井上悦男さんは、あきれた様子でこう話した。

 「正直なところ、アメフト部の問題で大学が批判され、内田さんが人事担当常務理事や人事部長をやめたことで、対応が少し変わるのではないかと期待していました。しかし、まったくそんなことはありませんでした。これまでの団体交渉ともつじつまがあわない、その場しのぎの説明が繰り返されました。誠実さを欠いています」

 アメフト部の危険タックル問題でも、日大は内田氏と学生の証言の食い違いについて十分に説明していない。非常勤講師の大量解雇でも、解雇を行う理由や違法性の疑いについて説明していない。団体交渉が平行線で終わった後、井上さんは大学側に「人事の担当の方が変わって、これから皆さんとわれわれの関係は変わるんですか」と尋ねた。その回答はこうだった。

 「信頼関係がないとそちらが言うのであればわかりませんが、われわれは変わらないです」

 責任のとれない立場では、これが精いっぱいなのかもしれない。しかし、この団体交渉で、「信頼関係が作れる」と思えた講師はいなかった。

 井上さんは、翌日の会見で、こう述べた。

 「大学は、学生に本来法律を守らないといけないと身をもって示さないといけないのに、一部の方々が法律を破っているのは、学生に示しがつかないと思っています。教育機関として、正しい判断をしていただければと思います」

 どれだけ批判を集めても、トップが顔を見せないまま突き進む。これが日大のいまの姿だ。講師たちは残念ながら、交渉の余地を見いだせず、法廷に判断を委ねるしかなかったのだ。

田中圭太郎(たなか・けいたろう)
ジャーナリスト
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。


2018年06月25日

是正勧告 四国大に 違法な時間外労働で 労基署

毎日新聞(2018年6月21日地方版)

 職員に違法な時間外労働をさせていたとして、徳島労働基準監督署が5月7日付で、四国大(徳島市)に是正勧告を行っていたことがわかった。同大学は2013年にも違法な時間外労働で同監督署の是正勧告を受けている。

 四国大によると、同監督署は17年に労使協定で定めた1日4時間の時間外労働の上限を超えた自己申告の勤務記録が見つかったことや、労働日数や勤務時間を賃金台帳に記入していなかったことを指摘した。

 また、同大学は1カ月間の時間外労働を最も長い教員で労使協定の上限である60時間としていた。3月には60時間に近い申告をしている職員が複数おり、同監督署は「適正な自己申告が阻害され、過少申告の恐れがある」と指導した。

 同大学は「勧告を受け、勤務の実態に合わせた改善やシステムの更新などの対応をしている」と説明した。

 同大学では13年、女性准教授が時間外労働によるうつ病を発症したとして、同監督署に労災認定されている。【大坂和也】


2018年06月23日

「日大の中枢部に寄生する人々」がターゲット、今度は「雇い止め」で非常勤講師8人が怒りの提訴

弁護士ドットコムNews(2018年06月22日)

「日大の中枢部に寄生する人々」がターゲット、今度は「雇い止め」で非常勤講師8人が怒りの提訴

日本大学から不当に雇い止めをされたり講義のコマ数を減らされたりしたとして、日大で英語などを教えていた8人の非常勤講師が6月22日、日大を相手取り、東京地裁に雇い止めが無効であることの確認を求める訴えを起こした。あわせて、1人あたり20万円の慰謝料なども求めた。原告や原告を支援する首都圏大学非常勤講師組合が同日会見し、明らかにした。

●原告「契約更新への合理的期待がある」

訴状などによると、日大は原告ら非常勤講師を採用するにあたって、新学部である危機管理学部とスポーツ科学部の設立を見据え、「平成28(2016)年4月からご担当願います」「平成32(2020)年3月までは継続してご担当いただきますよう、お願いいたします」と記したペーパーを渡していた(ペーパーの日付は、2014年11月25日付)。

ところが2018年3月をもって雇い止めにされたり、コマ数を減らされたりした。原告側は「4年間の雇用期間まで更新される旨の合意が存在しており、仮に合意の存在が認められなくても、4年間の契約更新への高い合理的期待がある」と主張している。会見で代理人の中川勝之弁護士は「4年間という合意は明確にあったと思う。鋭意、戦っていきたい」と話した。

また、日大が講義を外部の民間組織に委託したため、そのぶん講義のコマ数を減らされた非常勤講師もいる。それにより、多い人で月額20万円前後の賃下げになったという。原告側は、委託した講義で、日大の専任教員が出す指示のとおりに委託先の講師が動いているとして、「偽装請負となっている疑いが強い」とも指摘している。

●日大による非常勤講師ゼロ化計画か

原告団の真砂久晃団長は会見で、「今回私たちが是正を要求するのは、日大の中枢部に寄生し、非常勤講師を良心の呵責もなく使い捨て、教職員をこき使って何食わぬ顔をしているわずかの人々に対して」だとし、「非常勤講師を含む教職員を人間扱いしない人に、学生が守れるはずがない」と語った。

別の非常勤講師の男性は「ルールを無視して、働く者の権利をないがしろにして、色々な事柄を隠蔽して対処しようとする姿勢に疑問を持っている。教育機関として、正しい判断をしてほしい」と求めた。

原告側が入手した日大人事部の内部文書「非常勤講師に係る対応について」には、「非常勤講師の無期転換権発生を認めるということは今後の大学運営に支障をきたす可能性が大きいことを考慮に入れる必要がある」と記されていたという。このため、原告側は、「日大による非常勤講師ゼロ化計画だ」と批判している。

無期転換ルールとは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのこと。賃上げの保証はないが、予期せぬ契約打ち切りに怯える必要がなくなる。


日大・解雇された非常勤講師がついに大学を提訴へ

現代ビジネス(2018.06.22)

日大・解雇された非常勤講師がついに大学を提訴へ

田中 圭太郎

アメフト部の危険タックル問題への対応で、ガバナンスの欠如が指摘されている日本大学。その日大で、今年3月末に数十人の非常勤講師を一方的に解雇した問題がくすぶっている。

合理的な理由も示さないまま解雇を強行したとして、首都圏大学非常勤講師組合は大学側に団交を要求。大学側はついにこれに応じ、6月21日の夜、同組合との団体交渉に応じた。

だが、この団交の場に、人事担当の常務理事は出席せず。さらに、復職を求めた講師らの声を聞くこともなく、解雇について納得のいく説明を行われないまま、交渉は決裂してしまったという。

結局、解雇された非常勤講師らは、22日午後に地位確認を求めて日本大学を提訴することに。両者の争いは泥沼の様相を呈してきた。

アメフト問題に揺れる日大だが、「非常勤講師の雇用問題」という火種にどう対応するのだろうか。

何も変わらなかった

「団体交渉に責任ある人物は出てきませんでした。大学側の説明はこれまでの交渉ともつじつまが合いません。誠実さを欠いているとしか言いようがありません」

6月21日午後9時過ぎ。団体交渉の会場から出てきた非常勤講師の男性が、呆れた顔で漏らした。

今年3月末、日本大学は危機管理学部とスポーツ科学部の英語の非常勤講師15人を解雇。非常勤講師らによれば、雇用当初は「最低でも4年間の雇用」を約束していたにもかかわらず、「教育課程の再構築を行う」という不明瞭な理由で、大学側は非常勤講師の解雇に踏み切ったという。

その後、解雇されたのはこの2つの学部の非常勤講師だけではなかったことが判明。複数の学部で、非常勤講師の雇い止めをしていたようだ。少なくとも複数の学部で、3月末時点で数十人が解雇されたとみられ、このままいけば、日大で働く3000人超の非常勤講師全員が解雇されるのではないか――そんな危機感が高まっていたという。

冒頭で嘆いた非常勤講師も、大学に突然の解雇を告げられた一人だ。それから3ヵ月。アメフト部の問題で世間の批判を浴びたこともあり、大学側も態度を改め、少しは耳を傾けてくれるだろう......と、今回の団交に少なからぬ期待を持っていたという。

特に焦点となっていたのが、大学側の人事の責任者である常務理事が団交の場に出て来るかどうか、だった。

今年3月時点での大学側の人事責任者は、アメフト部の前監督で、選手に危険なタックルを指示したかどうかが焦点となっている内田正人氏(肩書は人事担当常務理事兼人事部長)。過去、内田氏は非常勤講師組合との団体交渉には一度も出席したことはなく、結局責任者が何の説明もしないまま、大学は多くの非常勤講師を解雇したのだった。

その内田氏は、危険タックル問題の責任をとるような形で、5月30日付で常務理事を辞任。6月11日付で人事部長の職も解かれた。

これによって、大学側の対応の変化を期待していたというが、21日の団交でも、結局人事担当の常務理事は出席せず。非常勤講師への姿勢も、ほとんど何の変化もなかったという。その失意の大きさたるや、計り知れないものがあっただろう。

午後6時半から始まった団体交渉は2時間半に及んだ。非常勤講師側は、「なぜ突然解雇したのか」「そのようなことが許されるのか」といったことを問うたが、大学はほとんどすべてを「筋違いな主張」と一蹴。結局両者に歩み寄りは見られず、決裂してしまった。

もはや大学との交渉の余地はなくなった、と非常勤講師らは判断。解雇された非常勤講師6人と、担当している授業を減らされた2人が、本日6月22日午後、早期に復職させるよう地位確認を求める訴えを、東京地方裁判所に起こすことを決めたという。

理事長の説明を求める声

アメフト部の危険タックル問題も、非常勤講師の大量解雇問題も、大学側の説明が不十分であることに共通点が見られる。タックル問題について、内田氏も大学も世間の納得いく説明をほとんどしていない。同様に解雇問題でも、やはり十分な説明が尽くされぬまま「幕引き」を図ろうとしてるように見える。危険タックルを命じられた学生も、非常勤講師も「組織の中では使い捨ての駒のようなもの」と捉えているように見受けられる。

アメフト部の問題について、多くのメディアが日大のトップである田中英壽理事長自ら説明すべきだと求めたが、解雇問題でも、クビを切られた職員たちは、やはり日大のトップである田中理事長直々の説明が欲しいと求めているという。「クビきり」が経営上の理由から行われるのであれば、理事長の言葉を聞きたいという気持ちは当然だろう。

しかし、大学側からは、田中理事長の言葉はもちろん、他の理事からも納得のいく説明はなかったという。

これ以上何を話しても仕方がないと分かったうえで、組合側は少しでも今回の「クビきり」の背景にあるものをさぐろうと、団体交渉の最後にこう質問した。

「もしも理事長が別の人に変わったら、大学と組合の間で平行線になっている問題は、解決するのでしょうか」

大学側の答えはこうだった。

「仮定のことには答えられません」

非常勤講師の解雇をめぐる問題は、法廷の場に舞台を移すことになりそうだ。両者の歩み寄りが見られる日は来るのだろうか。


奈良学園大学、学部再編失敗で教員一斉強制解雇…学部新設で虚偽申請も

Business Journal(2018.06.11)

奈良学園大学、学部再編失敗で教員一斉強制解雇…学部新設で虚偽申請も

文=田中圭太郎/ジャーナリスト

 大学に入学する年齢である18歳の人口が、今年から減少する「2018年問題」。私立大学の約4割がすでに定員割れの状態にあり、これから本格的な淘汰の時代がやってくる。大学が再編や統合を迫られた時、大学で働く教職員はどうなるのか――。

 この点で注目されているのが、奈良学園大学をめぐる裁判だ。この大学では約40人の教員がリストラにあい、最終的に解雇された8人が大学を運営する法人を訴えている。筆者は奈良学園大学を訪れ、解雇された元教員を取材した。

教員約40人をリストラ

「私たちは、大学による学部の再編失敗のしわ寄せによって解雇されました。こんな解雇が許されたら、大学改革や再編の名の下で理不尽な解雇が可能になります。絶対に許すわけにはいきません」

 こう憤るのは、2017年3月末に奈良学園大学を解雇された川本正知さん(64)。京都大学大学院文学研究科博士後期課程を単位取得退学し、複数の大学・短大で非常勤講師を勤めたあと、1989年に奈良学園大学の前身、奈良産業大学に講師として勤務。1999年からは教授の立場にあった。

 実は、同じ時期に職を失った教員は川本さんだけではない。13年11月、約40人の教員が17年3月までに転退職するよう迫られた。多くの教員は他大学に移るなどして若干の優遇措置とひきかえに大学を去ったが、その他の教員は雇い止めされたほか、教職員組合を結成して最後まで交渉を試みた川本さんら8人が解雇された。

 8人は大学を運営する学校法人奈良学園を相手取り、地位の確認などを求めて17年4月に奈良地方裁判所に提訴。16年11月には、奈良県労働委員会に不当労働行為の救済の申し立てもしている。しかし、両者の主張は対立したままで、いまだ解決の糸口を見いだせていない。

 明確なのは、川本さんをはじめ、リストラされた約40人に非がないことだ。リストラの直接的な原因は、学部の再編の失敗にあった。

学部再編を申請するも文部科学省から「警告」

 奈良学園大学は1984年、奈良県生駒郡三郷町に奈良産業大学として開学。硬式野球部は過去に多くのプロ野球選手を輩出している強豪チームで、今年6月に開催される全日本大学野球選手権大会にも出場する。筆者が訪れた日は3月の春休み中だったが、練習があるのか、ユニフォーム姿の部員がキャンパス内を歩いていた。

 名称が奈良学園大学になったのは14年4月。名称が変わる直前はビジネス学部と情報学部を有していたが、法人は名称変更に合わせてこの2つの学部を「現代社会学部」に改編することと、「人間教育学部」と「保健医療学部」の新設を13年に文部科学省に申請した。

 しかし、新設する2学部は設置が認可されたが、「現代社会学部」は要件を満たしていないとして文部科学省から同年8月に「警告」を受けた。すると、法人は申請をやり直すのではなく、すぐさま申請を取り下げてしまった。

「現代社会学部」を申請する時点では、再編が成立しない時にはビジネス学部と情報学部に戻して募集を継続することを、教授会だけでなく、理事会も大学評議会も決議していた。申請を取り下げても、既存の2学部は存続するはずだった。

 ところがこの年の11月、法人は突然、教員向けの説明会を開催。ビジネス学部と情報学部の廃止を告げるとともに、教員約40人に対し転退職を迫ったのだ。

法人側は「警備員なら雇う

 川本さんは、法人側の説明に唖然とした。2学部を廃止することも、自分たちがリストラされることも、まったく想像していなかったからだ。

 法人側が説明した解雇の理由は「過員」。新設の2学部のために、すでに約40人の教員を新規に採用していたので、教員が多すぎるというのだ。しかし既存の2学部を廃止するのは法人側の一方的な決定であり、教員にとって「過員」という理由は納得できるものではなかった。さらに、この説明会で法人側が言い放った言葉に川本さんは驚いた。

「法人側は私たちに、警備員なら雇用継続が可能だと言いました。この発言には耳を疑いました。既存の学部を残すという決定があったにもかかわらずリストラをするのは、道義的にも許されることではありませんし、教育機関とは思えない行為です」

 大学を運営する学校法人奈良学園は、幼稚園から大学まで10の学校を運営し、約200億円を超える流動資産を保有。ここ10年間で300億円以上の設備投資もしている。経営難を理由としない大量リストラは異例だ。

 このリストラを止めようと、川本さんらは教職員組合を結成して、奈良県労働委員会にあっせんを申請。16年7月には、奈良県労働委員会から「互いの主張を真摯に受け止め、早期に問題解決が図られるよう努力する」ことと、「労使双方は組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する」とのあっせん案が示された。労使双方がこのあっせんに合意し、団体交渉を進めるはずだった。

 ところが法人はこの合意に反して、8月には「事務職員への配置転換の募集のお知らせ」を一方的に配布。さらに11月には組合員に退職勧奨をすることを理事会で決定した。

 組合は退職勧奨を受けてすぐに、奈良県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。すると法人は、翌17年2月に解雇予告通知書を出して、3月末に組合員全員の解雇を強行。翌月、川本さんら組合員が提訴して、裁判と労働委員会の審判は現在も続いている。

大学や学部新設で2度にわたる虚偽申請

 学部の新設などをめぐる法人の不手際は、今回に限ったことではない。法人は06年に奈良文化女子短期大学を改組して「関西科学大学」を設立する申請をしたが、申請書類に虚偽の記載があったことが文部科学省から指摘され、取り下げざるを得なくなった。すでに亡くなっていた初代理事長を理事会の構成員として申請していたのだ。

 申請を取り下げた時には、すでに200人以上の入学者の内定を出していて、大きな問題となった。内定者には1人あたり30万円の補償金を支払ったほか、文部科学省から処分を受けて、新たな学部の申請は3年間禁じられた。

 さらに07年にビジネス学部の開設を申請した際にも、またも書類に虚偽記載があったほか、虚偽の教員名簿を提出したことが判明した。そして今回の「現代社会学部」では、設置計画に多くの欠陥が指摘された。

 これだけ大学設立や学部の再編に失敗しても、法人や大学の幹部はなんの総括もしていないし、責任も取っていないと川本さんは指摘する。

「自分たちは失敗の責任を取らずに、教員にリストラを押し付けたのが今回の問題の構図です。こんなことが許されたら、大学の経営陣が赤字学部の教員を一方的に解雇することが可能になってしまいます」

 川本さんら解雇された多くの教員は、収入がゼロになり、貯金を崩しながらなんとか生活している。なかには他の大学で非常勤講師をしている教員もいるが、収入は以前の半分にも満たない。それでも裁判は続けると川本さんは話す。

「私たちが泣き寝入りしたら悪しき前例になり、日本の私立大学全体に影響してしまうでしょう。大学教員の労働者としての権利が蹂躙されているのは明らかです。大学教育を守るためにも、諦めずに訴えていきます」

 筆者の取材に対し、学校法人奈良学園は「係争中にあるのでお答えできません」と話すのみだった。裁判の結果は、これからの私立大学教員の雇用を左右する。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)


2018年06月22日

日本大学・田中理事長宛の「 要求書」への賛同署名のお願い

 大学のあり方が問われる社会問題となった日大アメフト事件および日大問題について、以下のリンク先で、日本大学教職員組合が学校法人 日本大学理事長宛に対する「要求書」のweb賛同署名を開始しています(締切予定日:6月27日(木)17:00)。

 日大関係者だけでなく、この問題に社会的関心を寄せている一般の人も署名できます。
 お忙しいところ恐縮ですが、SNS等でご家族・ご友人などに賛同の輪を拡散していただければ幸いです。

http://union-nihon-u.o.oo7.jp/wp/signature20180612/

 以下のスマホ用のサイトからも署名ができます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf1FgDVgh5L4qI1LlYdzNpkB-OnDU0kdUoQoqlxxM39tUUKXw/viewform?embedded=true

 なお、署名では、氏名等の情報の公開・非公開が選択できます。

田中理事長宛の「 要求書」への賛同署名のお願い

署名サイト
http://union-nihon-u.o.oo7.jp/wp/signature20180612/

 私たちは、5月31日(木)、「『日大アメフト部事件』関連の一連の騒動を踏まえての教職員組合の要求書」を田中英壽理事長に提出すると同時に、広く社会に向けて公表しました。
 「要求書」で詳しく述べている通り、「学生を守ることができない/自分たちの保身や組織防衛のためには学生を平気で切り捨ててしまう大学なんだ!」という世間から押されてしまった「負の烙印」を払拭して、地に落ちた社会的信用を回復し、在学生と保護者、卒業生が被る社会的不利益を最少化するためには、もはや日本大学が「抜本的な改革と再生」を図るより他に道はないと考え、6月30日までに実行すべきことを田中理事長に要求しました。
 私たち日本大学の教職員は、何よりも第一に一人一人の在学生や卒業生を守り抜き、この危機的な状況を脱し、社会からの信用を回復するために精励刻苦して、全教職員が一丸となって「抜本的な改革と再生」を図り、「新しい」日本大学となって「甦る」ようにしていかなければならないと思っています。詳しくは「要求書」をご覧ください。賛同していただける方は、ぜひ署名をお願いします。

ご記入いただいた情報は教職員組合で厳重に管理いたします。


「日大の中枢部に寄生する人々」がターゲット、今度は「雇い止め」で非常勤講師8人が怒りの提訴

弁護士ドットコム(2018年6月22日 18時30分)

日本大学から不当に雇い止めをされたり講義のコマ数を減らされたりしたとして、日大で英語などを教えていた8人の非常勤講師が6月22日、日大を相手取り、東京地裁に雇い止めが無効であることの確認を求める訴えを起こした。あわせて、1人あたり20万円の慰謝料なども求めた。原告や原告を支援する首都圏大学非常勤講師組合が同日会見し、明らかにした。

●原告「契約更新への合理的期待がある」
訴状などによると、日大は原告ら非常勤講師を採用するにあたって、新学部である危機管理学部とスポーツ科学部の設立を見据え、「平成28(2016)年4月からご担当願います」「平成32(2020)年3月までは継続してご担当いただきますよう、お願いいたします」と記したペーパーを渡していた(ペーパーの日付は、2014年11月25日付)。

ところが2018年3月をもって雇い止めにされたり、コマ数を減らされたりした。原告側は「4年間の雇用期間まで更新される旨の合意が存在しており、仮に合意の存在が認められなくても、4年間の契約更新への高い合理的期待がある」と主張している。会見で代理人の中川勝之弁護士は「4年間という合意は明確にあったと思う。鋭意、戦っていきたい」と話した。

また、日大が講義を外部の民間組織に委託したため、そのぶん講義のコマ数を減らされた非常勤講師もいる。それにより、多い人で月額20万円前後の賃下げになったという。原告側は、委託した講義で、日大の専任教員が出す指示のとおりに委託先の講師が動いているとして、「偽装請負となっている疑いが強い」とも指摘している。

●日大による非常勤講師ゼロ化計画か
原告団の真砂久晃団長は会見で、「今回私たちが是正を要求するのは、日大の中枢部に寄生し、非常勤講師を良心の呵責もなく使い捨て、教職員をこき使って何食わぬ顔をしているわずかの人々に対して」だとし、「非常勤講師を含む教職員を人間扱いしない人に、学生が守れるはずがない」と語った。

別の非常勤講師の男性は「ルールを無視して、働く者の権利をないがしろにして、色々な事柄を隠蔽して対処しようとする姿勢に疑問を持っている。教育機関として、正しい判断をしてほしい」と求めた。

原告側が入手した日大人事部の内部文書「非常勤講師に係る対応について」には、「非常勤講師の無期転換権発生を認めるということは今後の大学運営に支障をきたす可能性が大きいことを考慮に入れる必要がある」と記されていたという。このため、原告側は、「日大による非常勤講師ゼロ化計画だ」と批判している。

無期転換ルールとは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのこと。賃上げの保証はないが、予期せぬ契約打ち切りに怯える必要がなくなる。

(弁護士ドットコムニュース)


2018年06月20日

永田和宏さんの講演会のお知らせ

永田和宏さん講演会

劣悪することば
-ことばへの信頼を取りもどすために-

 フェイクニュース、ポスト真実、ヘイトスピーチ、公文書改ざんなど、「ことば」が歪められ、「真実」が覆い隠される状況が広がっています。特に政治の「ことば」の劣化が著しく、「ことば」の本来の機能を失いつつあります。このことは、わたしたちの社会にとって忽(ゆるがせ)にできない問題です。
 本講演会では、専門の細胞生物学だけでなく、歌人としてもご活躍の永田和宏先生に、「ことば」の大切さを通じて、社会や政治や私たちの生活の本質に迫る話をしていただきます。

永田和宏(ながた かずひろ)さん 
  1947年、滋賀県生まれ。京都産業大学総合生命科学部教授、 タンパク質動態研究所所長。京都大学名誉教授。紫綬褒章 (2009年)、"Hans Neurath Award (ハンス・ノイラート科 学賞)"(2017年)。近著に『知の体力』(新潮新書、2018年)、 『生命の内と外』(新潮選書、2017年)、『現代秀歌』(岩波新 書、2014年)などがある。

日時 6月23日(土)14時~(13時30分開場)
場所 龍谷大大学(深草校舎)22号館101号教室
その他 参加料無料,事前申し込み不要

チラシをご覧下さい。

2018年06月18日

「国立大の数を適正に」経団連が提言

産経(2018年6月13日)

 経団連は13日、国立大学の数と規模を適正化し、大学の質の向上や国際競争力を高めるべきとする大学改革に向けた提言をまとめた。中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)などに提出し、検討中の大学改革に反映させたい考え。

 少子化の中で国立大86校、公立大89校、私立大604校が共存し、私大の4割が定員割れする現状を憂慮。省庁横断の組織を設置し、大学関係者や経済界なども参画し、地方のニーズを考慮した形の大学再編を含めた全体像を策定すべきと提言した。

 一つの法人が複数の国立大を傘下にして運営できるよう法改正の必要性を強調。また、経営が悪化する私大の早期合併や撤退を促す対策として、学部、学科単位での事業譲渡を可能にし経営の自由度を高めることも提言した。経済同友会も今月、経営上の問題を抱える私大の再生・再編を促す第三者機関「私立大学再生機構」(仮称)の設立を文部科学省などに求める提言を発表している。


2018年06月05日

日大教職組、「日大アメフト部事件」関連の一連の騒動を踏まえての教職員組合の要求書

■東京私大教連ニュース

2018年5月31日

学校法人日本大学理事長 田中英壽殿

「日大アメフト部事件」関連の一連の騒動を踏まえての教職員組合の要求書

日 本 大 学 教 職 員 組 合
執行委員会委員長 菊地 香

 2018年5月6日(日)の日本大学アメリカンフットボール部「フェニックス」(以下、日大アメフト部)による悪質反則「事件」が発生して以来、様々なことが連鎖的に引き起こされ、依然としてTV・新聞・ネットなどで毎日のように大きく報じられています。時間の経過と共に、一運動部の一監督や一選手のあり方の問題から、大学としての事後対応の遅さや不適切さや不誠実さ、ハラスメントの温床にもなる上意下達の権威主義的な体質、権限・権力が一点に集中するピラミッド型の組織構造のあり方といった日本大学自体が抱える問題(「日本大学の構造的問題」)に、焦点/論点がシフトしてきております。

 そうした中で、日本大学教職員組合は、5月21日(月)に田中英壽理事長と大塚??兵衛学長宛の声明文を発表しました。そして、「監督の辞任だけでは済まされない状況を自ら作ってしまった」として、「専断的でなく民主的な大学を創るために、学内の多様な声を大学運営に反映させること」、「パワーハラスメントになりやすい権力行使を抑制する仕組みを構築すること」、「本学のあり方(姿勢・体質・構造)に対する厳しい批判を真正面から受け止め真摯に反省し、人事及び人心を一新すること」などを求めました。

 5月22日(火)、悪質な反則行為を行って相手選手を負傷させた当該学生が、多数の報道陣を前に会見を行いました。20歳になったばかりの学生を追い詰めあのような場に立たせてしまったことに心を痛める一方で、正々堂々と、かつ勇気をもって正直に「真実」を語り、謝罪の言葉を何度も口にした学生の姿に、私たちは深い感銘を覚え、励まされもし、また日本大学の構成員として誇らしくも思いました。記者団との一問一答の際に語った、「少し考えれば、自分がやったことは間違ってるというのを前もって判断できたと思うので、そういうふうに自分の意識を強く持つことが、今後重要だと思いました」という彼の言は、私たち日本大学教職員へのメッセージでもあると重く受けとめました。

 ところが、同日夜に出された大学広報部のコメントは、当該学生と日本大学の関西学院大学への回答書の間に根本的な見解の相違があることを無視して、一方の当事者=前監督側の見解のみを正しいとするものであり、日本大学の構成員である当該学生の尊厳を大いに傷つけるものになりました。そして翌5月23日(水)、日本大学が主催して内田正人前監督と井上奨コーチが会見を行いました。ことの重大性に対する認識や責任感が欠落し、司会者の横柄で不誠実な態度を含め、結果的に日大批判を増幅させるものとなりました。これによって、多くの学生や卒業生が社会から非常に厳しい「批判的なまなざし」を浴び続けなければならない状況が、ますます深まってしまいました。何よりも辛いことは、こうした大学側の不適切な対応によって、私たちの日本大学に対して、「学生を守ることができない/自分たちの保身や組織防衛のためには学生を平気で切り捨ててしまう大学なんだ!」という「負の烙印」が、世間から押されてしまったことです。ひとたびこうした否定的評価がくだされてしまうと、並大抵のことではそれを払拭することはできませんし、とりわけ学生や卒業生が不利益を被ることになりかねません。

 こうした深刻な事態を受けて、5月24日(木)、日本大学教職員組合文理学部支部長名で声明文が発表されました。そして、「大学法人本部の危機管理能力欠如をいよいよもって露呈させた」として、「理事長が被害者はもとより関西学院大学アメフトチームやアメフト界、社会全般、さらに本学学生・教職員に謝罪し、危険タックル事件及び大学の不適切な事後措置に対して再発防止、抜本的改革を明言すること」、「責任ある立場の理事会及び法人本部の人事刷新を図るとともに、法人本部組織改革の工程表を公表すること」、「公正な第三者独立委員会を立ち上げて、どこに問題があったかの徹底究明を開始させること」、マスコミに対しては「学生たちにマイクを突きつけるよりも日本大学の構造的問題を徹底的に追及すること」などを求めました。

 5月25日(金)、日本大学が主催して、大塚??兵衛学長が会見を行い、初めて大学として謝罪しましたが、遅きに失した感が否めないばかりか、歯切れの悪い説明に終始しました。学長は学生の運動部を統轄する責任者ですが、保健体育審議会事務局の人事等の職員組織上の権限を持つ立場にはありません。そのため、事実上この会見は学生の運動部の問題としてのみとらえ、監督やコーチのスタッフの問題を含めた謝罪とはなりませんでした。また、内田前監督が理事長に次ぐ地位である常務理事であり、一運動部の枠を超えて日大全体のガバナンスの機能不全にまで問題が波及しているのですから、保体審事務局長と常務理事の人事権を握る理事長が法人の責任者として社会に向けて謝罪と説明を行うべきでした。

 5月26日(土)、関学アメフト部が会見を行い、日大アメフト部が5月24日(水)に関学アメフト部に渡した加藤直人日大アメフト部長名の「再回答書」に対して、「多くの矛盾が存在し、真実とは到底認識できず」、「日大の見解には強い疑念を抱かざるを得ない」、と結論づけました。

 5月27日(日)、日大アメフト部の加藤部長、森琢ヘッドコーチが、父母会への説明会を開催し、初めて直に謝罪し経緯の説明を行いましたが、指導陣と選手の理解に乖離があった(選手側の思い込みが原因だった)という従来の説明を繰り返したということです。

 5月29日(火)、日大アメフト部選手一同が、声明文を発表しました。その中で、「私たちは、監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまいました」、「部の指導体制も含め生まれ変わったと皆様に認めていただいた時には、私たちが心から愛するアメリカンフットボールを他のチームの仲間たちとともにプレーできる(略)」、「今回の件の深い反省のもと、真剣に、謙虚に、一丸となってチーム改革を実行していく」などと述べました。

 5月29日(火)、関東学生アメリカンフットボール連盟が、内田前監督と井上前コーチが当該選手に悪質タックルを指示したと認定しました。そして、前監督と前コーチを事実上の永久追放にあたる「除名」、森ヘッドコーチを「資格剥奪」とする極めて重い処分を課しました。

 以上のような経緯と現在の状況を踏まえると、私たちは、各方面から指弾を受けるようになっている「日本大学の構造的問題」を作り出してしまっている「当事者」として重大な責任を負うことを自覚し内省して、高校を含めた日本大学の各部科校に籍を置く現役の教職員として、まずは広く社会の皆様や日本大学の在学生・保護者・卒業生の皆様に心よりお詫び申し上げなければなりません。その上で、私たちは、地に落ちた社会的信用を回復し、大学の不適切で不誠実な対応によってもたらされた在学生と保護者、卒業生が被る社会的不利益を最少化するためには、もはや日本大学が「抜本的な改革と再生」を図るより他に道はない、と考えるに至りました。

 それを果たすために、私たちは、以下の4項目を1ヶ月後の6月30日までに実行することを日本大学の最高責任者である田中英壽理事長に強く求めるものです。

(1)日本大学の社会的信用・信頼を失墜させ、名誉を著しく毀損した根源である内田正人前監督の、日本大学常務理事や保健体育審議会事務局長をはじめとする全ての職【(株)日本大学事業部を含む】を直ちに解任して、日本大学の「抜本的な改革と再生」へ向けての明確な第一歩とすべきです。

(2)日本大学アメリカンフットボール部が引き起こした「事件」の重大性・悪質性及び社会的な影響を踏まえ、責任ある立場にある同部の部長・副部長並びにコーチ陣を全員解任して、アメフト部の「抜本的な改革と再生」を図るべきです。

(3)日本大学は、全組織を挙げて上意下達の体質を改め、各部科校で日本大学の建学の精神であり教育理念でもある「自主創造」が十分に発揮される大学に生まれ変わっていかなければなりません。そのためには、1)職員採用人事における保健体育審議会出身者の優遇措置に代表される、不公平・不公正で不透明な仕組みを全面的に改めること、2)保健体育審議会傘下の運動部の監督や部長の常務理事・理事への登用もしくは常務理事・理事の監督・部長の兼任を禁止するなどして、権限・権力の集中を抑制し、理事会に対するガバナンスが有効に働くようにすること、3)教職員による無記名直接選挙によって学長が選出され、学長を名実ともに大学の最高責任者とする統治機構を構築すること、が不可欠です。それらの実効性を担保するために、学校法人の定款/根本をなす規則である「寄附行為」を全面的に見直し改定して、日本大学の組織のあり方の「抜本的な改革と再生」を図るべきです。

(4)日本大学は、事件への適切な初動対応に失敗し、大学自体に「当事者性」とともに「他者性」が欠落している(社会/世間からどのように見られ評価されるかを認識できていない)ことを露わにし、社会や学生・教職員に対する説明責任も果たせず、自浄作用を働かせることもできませんでした。このことで、日本大学の社会的評価を著しく低下させてしまった極めて重い責任をとって、内田常務理事だけでなく(迅速かつ的確な広報を行わず、真相究明に資するところのない不誠実な記者会見を連発して、危機管理能力の欠如を曝け出した)企画広報担当常務理事を含む5人の常務理事全員を解任した上で、法人組織の最高責任者たる田中理事長と教学の最高責任者である大塚学長が潔く職を辞して、大学上層部の「解体的な出直しと再生」を図るべきです。

 私たち日本大学の教職員は、何よりも第一に一人一人の在学生や卒業生を守り抜き、この危機的な状況を脱し、社会からの信用を回復するために精励刻苦して、全教職員が一丸となっての「抜本的な改革と再生」を図っていかなければならないのです。

 田中理事長が、この声明文には、部科校横断的で全学的な多数の教職員の声と思いが反映しているものと真摯に受け止めて、「日本大学の抜本的な改革/解体的な出直しと再生」への端緒を率先して開くべきであると考え、本要求書を提出・公表するものです。また同時に、「フェニックス」が引き起こした事件をきっかけとする一連の騒動を奇貨として、私たち教職員自身が当事者意識と統治能力を高めて、「新しい」日本大学となって「甦る」ように歩んでいくことを、広く社会に向けて宣言するものです。

以上

日大教職組、「日本大学アメリカンフットボール部による重大な反則事件に関する声明文」

■東京私大教連ニュース

2018年5月21日

学校法人日本大学理事長 田中英壽殿
学校法人日本大学学長 大塚吉兵衛殿

日本大学アメリカンフットボール部による重大な反則事件に関する声明文

日本大学教職員組合執行委員会委員長 菊地香
文理学部支部長 初見基
経済学部支部長 木暮雅夫
商学部支部長 竹内真人
船橋支部長 吉田洋明
湘南支部長 清水みゆき

 2018年5月6日に行われたアメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦において、本学アメリカンフットボール部選手が関西学院大学チームのQB(司令塔)に対してきわめて危険な反則プレーを行い負傷退場させる「事件」が起こってしまった。このことをめぐって、連日、新聞・TV・ネットなどで大きく報じられ、その行為のみならず、本学の示した事後対応が不透明・不誠実であるとの批判・非難の声が強まったのは周知の事実である。
 
 本学が教育機関であることを踏まえれば、上述した外部からの批判・非難の有無にかかわらず、本学の選手がなぜあのような悪質極まりない言語道断な暴力的行為におよんでしまったのかに関しては、第三者機関による調査活動とは別に、大学当局が自浄作用を働かせて公正かつ厳正な調査を実施して、真相を徹底的に究明しなければならない。また、被害者や関学アメフト部をはじめとする関係者の方々に納得していただくことができる説明と謝罪、ならびに補償と再発防止に向けた具体的な取り組みが示されなければならないことも当然である。
 5月19日(土)の報道によれば、アメフト部の内田正人監督がすべての責任を認めて謝罪し、監督を辞する旨を表明した。だが、その対応は遅きに失し、もっとも肝心な点が一切言及されなかったため、監督の辞任だけでは済まされない状況を自ら作ってしまったと言えよう。さらに、今回の事件に関して、内田監督が本学の人事担当の常務理事という要職に就き、学内で絶大な権力を行使する立場にあることから、一スポーツ部の一監督や一選手のあり方ばかりか、本学の大学としてのあり方、なかんずく外部の関係者に対する「姿勢」(不誠実と呼ばざるを得ない対応)や「体質」(有無を言わせずに従わせる上意下達の体育会的気風)や「社会構造」(学内の意思決定のあり方、権力構造や人的資源の配分構造)にまで関連させて問題視する指摘が各方面から相次いでなされるようにもなってしまった。今回の事件は、こうした本学の抱える看過できない問題性が、図らずも衆目にさらされることとなったのである。

 私たちは、スポーツマンシップ以前に人間としての基本姿勢に反する事件が起きたことに対して、高等教育機関であり、知の共同体であるべき本学の教職員一人一人が、この大学を創っているのだということを反省的に捉え返し、今後の歩みに生かしていく必要があるだろう。その上で、理事長、理事会と大学学長に対して、以下の諸事項の履行を強く求めるものである。

(1)付属学校も含めた本学における健全なスポーツのあり方を再検討し、すべての競技選手に対してあらためてフェアプレイ精神の重要性を再教育すると同時に、ラフプレーを行った当該選手が個人的な攻撃に見舞われないよう大学として最大限に配慮すること。
(2)第三者機関の徹底した真相究明に全面的に協力し、協力した者への如何なる圧力も禁じること。
(3)専断的でなく民主的な大学を創るために、一人一人の学生及び教職員を、それぞれ独自の意思を持つ人格的な存在として尊重し、権力を行使し得る立場にある自分たちと同等に位置づけ、多様な声に絶えず耳を傾けて、それを最大限に大学運営に反映させる制度を確立すること。
(4)運動部だけでなく、日本大学の全組織を挙げて、上意下達の体質を改め、パワーハラスメントになりやすい権力行使を抑制する仕組みを構築して、風通しの良い学内環境を醸成しつつ、自主創造の精神が十分に発揮される生き生きとした大学に再生させる行動計画を策定すること。
(5)本学のあり方(姿勢・体質・構造)に対する厳しい批判を真正面から受け止め真摯に反省し、人事及び人心を一新すること。

 連日メディアでセンセーショナルに報道されているこの問題によって、本学に対するイメージと社会的信用は深く傷つけられてしまった。学生の勉学意欲や様々な対外活動、学部生・大学院生等の就職活動、教職員の士気、さらには受験生の本学に対する見方や教職員の採用に至るまで深刻な悪影響が懸念される。ひいては、このことが本学の教育を誠実に支えてきた教職員の労働環境悪化にもつながりかねないことを危惧するものである。

 早急に本学の社会的信用を回復すべく、理事長、理事会と大学学長は直ちにことの真相をあますところなく明らかにして、関西学院大学の関係者に対してはもちろんのこと、上述した本学のイメージと社会的信用の低下に直面せざるをえない本学学生と教職員にも説明責任を果たすことが不可欠である。そして、この状況を踏まえた大学改革の道筋を、教職員からの声を充分に聞き届けたうえで社会に提示し、それを滞りなく推進していくべきである。

 以上、問題の深刻さと社会的広がりをふまえて、現時での私たちの見解を表明しておくものである。