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 カテゴリー 2018年12月

2018年12月21日

[社説]非常勤講師の切実な叫び、大学は無視するな

ハンキョレ(2018年12月20日)

「講師法」(改正高等教育法)の国会可決による大学の大量解雇の動きに対抗して、非常勤講師たちがストライキに入った。現在、韓国非正規教授労働組合の釜山大分会だけがストライキを宣言した状態だが、大々的な「構造調整」を準備する大学が多く、ストが複数の大学に広がる可能性も少なくない。すぐにも期末試験や成績処理など学事行政に支障が生じ、学生たちが被害を受けはしないか心配する声が出ている。しかし、身分保障と処遇の改善を期待したのに、逆に生存権の危機に追い込まれた非常勤講師らを責めることではない。

 講師法の主要な内容は、1年以上の任用、休み中の賃金と退職金の支給、職場の健康保険への加入などだ。国立と私立の大学は、来年8月に法が施行されれば年間3500億ウォン(約350億円)の追加費用が発生し、深刻な財政難に直面するとし、講師の大量解雇の不可避性を主張している。しかし、大学は国会、講師代表とともに6カ月にわたって講師法の具体的な内容を調整した「大学講師制度改善協議会」の当事者であった。無理に法案に同意させられたのではないため、最初から大量解雇を念頭に置いていたのではないかという疑念を抱かせる内容だ。

 講師法の施行による大学の追加費用と財政状態も綿密に追及する必要がある。国会と大学、非常勤講師側が推定する追加費用はまちまちだ。非正規教授労組は、大学の推計がすでに支給されている雇用保険料、労災保険料を重複計算するなど、2倍前後に水増しされていると主張する。大学の積立金総額が7兆ウォン(約7千億円)を超え、翌年に繰り越される未使用予算も6600億ウォン(約660億円)にものぼるなど、財政状態も悪くないと指摘する。にもかかわらず、国立大学や主な私立大学など財政的に余裕のある大学ほど、講師解雇の動きが活発なのは大きな問題だ。

 講師の大量解雇が大学教育の質を下げるだろうという懸念も持ち上がっている。各大学は、非常勤講師の数を減らすため、講義科目を統廃合したり教養科目を大幅に減らす代わりに、専任教授の講義時限数やサイバー講義を大幅に増やす案を推進しているという。学生の教育権を深刻に侵害することだ。非常勤講師らは大学の講義の70%を担当しながらも、学者や生活者として最低限の待遇も受けられなかった。大学は講師法の合意の精神を尊重し、教育機関として本来の使命に立ち返ることを望む。


2018年12月20日

「大学における<学問・教育・表現の自由>を問う」

「明治学院大学事件」が「法律学の活きた教材」として紹介されました。
http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=8803

<書評>『大学における<学問・教育・表現の自由>を問う』(法律文化社)

明治学院大学教授が大学側に授業中に無断録音されていたことを知り抗議したところ、目を付けられ、その後、授業で使用していた教科書や授業内容がキリスト教を批判しているなどとして解雇されたことに端を発する「授業無断録音訴訟」。その経緯と、本年6月28日の一審判決の詳細については、本紙で報じたことがある。

本書の編著者は、まさにこの裁判の原告であった寄川条路・教養教育センター教授(56。右写真)。事件の概要、判決文およびその解説に加え、憲法学者3人が寄稿している。憲法学の小林節・慶應義塾大学名誉教授が「学問の自由」の観点から、教育法の権威である丹羽徹・龍谷大学教授が「教育の自由」の観点から、そして志田陽子・武蔵野美術大学教授が「表現の自由」の観点から、それぞれ事件を検証している。

事件が起きたのは、特定秘密保護法が成立(2014年)した数ヵ月後だ。学問と表現の自由が最大限、保障されるべき大学内で起きた盗聴事件と、その結末について、本書はコンパクトにまとまっている。法律学の活きた教材にも使えそうだ。


2018年12月15日

山口准教授の岡山短大4月復帰を 弁護団が運営法人に協議申し入れ

山陽新聞(2018年12月15日)

 視覚障害を理由とする事務職への配置転換の無効などを求める訴訟で勝訴が確定した岡山短大(倉敷市有城)の山口雪子准教授(53)の弁護団が15日、岡山市内で報告会を開き、来年4月からの教壇復帰に向けて、短大を運営する学校法人原田学園に協議を申し入れていることを明らかにした。

 弁護団によると、11月下旬の最高裁判決確定後、学園からは来年度からの教壇復帰について、判決で触れられていないため直ちに受け入れられず、授業編成を決める教授会の判断に委ねると文書で回答があったという。

 水谷賢弁護士は「授業復帰は学園側の合理的配慮などで実現できると判決は認定しており、復帰を認めないのは新たな差別だ」と強調。山口准教授は「障害があってもみんなで支え合い、すてきな社会になることを教壇で伝えたい」と支援者ら約40人に語った。

 支援者らは17日に厚生労働省と文部科学省を訪れ、教壇復帰の実現に向けて尽力するよう各大臣宛ての要請文を渡す予定。


2018年12月09日

琉球遺骨返還、京大を提訴 「盗掘し権限なく占有」

京都新聞(2018年12月8日)

 昭和初期に京都帝国大(現京都大)の人類学者が沖縄県今帰仁(なきじん)村にある地元の首長を葬った「百按司(むむじゃな)墓」から研究目的で遺骨を持ち去ったとされる問題で、首長の子孫や沖縄県出身の大学教授らが4日、遺骨を保管している京都大に対して返還や慰謝料を求める訴えを京都地裁に起こした。研究目的で持ち出された遺骨の返還訴訟は、北海道のアイヌ民族の訴訟に続き全国で2例目。

 訴状によると、返還を求める遺骨は、京都帝国大医学部解剖学教室助教授だった金関(かなせき)丈夫氏(1897~1983年)が、1928~29(昭和3~4)年に百按司墓から持ち出した26体(男性15体、女性11体)の骨。金関氏が墓を管理する親族らの許可を得ずに、盗掘したとしている。遺骨は、現在も京大が人骨標本の研究材料として、何ら権限なく占有していると訴えている。

 原告は、15世紀に琉球王朝を開き、同墓に埋葬されたとされる王族「第一尚氏」の子孫2人と、沖縄県出身で琉球民族遺骨返還研究会代表の松島泰勝・龍谷大教授ら計5人。沖縄では、先祖の霊魂は骨に宿るとして遺骨そのものが崇拝の対象となっているとし、遺骨が本来あるべき場所にないため、憲法が保障する信仰の自由や民族的、宗教的自己決定権が侵害されたと主張する。

 持ち出された遺骨が誰なのかが判明していないため、訴訟では、原告に遺骨の返還を求める権利があるのか(原告適格)が争点となるとみられる。

 京都大広報課は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。