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 カテゴリー 2019年04月

2019年04月25日

苫小牧駒沢大学、雇用をめぐり大学側と団交 苫駒大の元教員2人

雇用をめぐり大学側と団交 苫駒大の元教員2人

 苫小牧駒沢大学の教授らでつくる教職員組合と苫小牧地区労連などは23日、3月末で退職した教員2人が「雇い止めされた」とし、雇用継続を求めて大学側と団体交渉を行ったと発表した。2人は「合意なく退職を迫られた」と訴えており、専任教員としての雇用を求めて団交を続ける構え。大学側は「契約満了によるもの」と主張している。
 苫駒大の経営は、2018年4月に経営法人が駒沢大学から京都育英館に移管。在籍する教員21人は19年3月末までの雇用契約となり、うち7人が契約更新されなかった。現在、在籍する教員は全員、1年間の有期契約を結び直し勤務している。
 2人は、ゼミ生の指導や研究継続の意志があることなどから雇用継続を要求。同組合は23日、大学側と団体交渉後、苫小牧市政記者クラブ内で横山傑議長ら地区労連メンバーと共に記者会見した。約1時間半の団交で具体的な進展はなかったとし、2人は「教員の退職でゼミの変更を余儀なくされた学生もいる。学生のためにも専任教員として働かせてほしい」と口をそろえた。
 大学側は「各教員の専門性などを踏まえた上で、大学の構想と合致する人材かを判断したかった」と強調。7人の雇用契約を3月未で終了したことについては「契約満了であり雇い止めではない」としている。


苫小牧駒沢大学、教員2人「不当解雇」 雇用巡り大学側と団交

■北海道新聞(2019年4月24日)

元教員2人「不当解雇」 雇用巡り大学側と団交

 苫小牧駒沢大学教職員組合や苫小牧地区労連などは23日、苫駒大を3月で退職した教員2人が「雇い止めにあった」として雇用継続などを求めて大学側と団体交渉した。教員側は「不当解雇」と主張する一方、大学側は「契約満了に伴うもの」と説明している。
 苫駒大は昨年4月、学校法人駒沢大学から京都育英館に経営が移管された。関係者によると、経営移管に伴い、京都育英館は「人物を見極めるため」として専任教員21人全員と1年間の有期契約を結び直し、2019年3月末で契約が終了。このうち多くは客員教授などへの衣替えも含め新たに契約したが、専任教員として雇用継続を求めた4人について、大学側は「専門分野が大学の方向性と合致しない」などとして契約を更新しなかったという。
 交渉後、苫小牧地区労連の横山傑議長は「労働者の権利を軽視する大学側の対応は納得できない」と主張。苫駒大幹部と約1時間半協議したものの平行線に終わったといい、今後も話し合いを続ける考えを示した。


2019年04月13日

非常勤講師をクビにする方法

首都圏大学非常勤講師組合『控室』第95号(2019年4月1日)http://hijokin.web.fc2.com/

非常勤講師をクビにする方法

明治学院大学教養教育センター教授 寄川条路
(よりかわ じょうじ・yorikawa@gmail.com)

1 非常勤講師の解雇
「ヘボン先生(仮名)は、授業態度に問題があるのでクビにします。」
 主任の提案は、非常勤講師の雇止めだったので、教授会ですんなりと承認されてしまった。どんな問題があったのかはわからないが、主任に逆らう者はいない。反対意見でも述べようものなら、つぎの標的にされてしまうので、みんな押し黙っている。
 非常勤講師には、「おまえはクビだ」とは言わないで、「来年度は、先生の科目は開講されないので、お願いできなくなりました」と、上手に伝える。
 勤続10年でクビを切られたヘボン先生は、労働基準監督署に相談はしたものの、それ以上のことはしなかった。後日、「事件」が公になってはじめて、雇止めのいきさつを知ったという。

2 明治学院大学事件
 大学当局が教授に無断で授業を録音し、告発した教授を解雇した「明治学院大学事件」。東京地裁での解雇無効判決にいたるまでの、事件の全貌を明らかにする本が公刊された。他人事ではないので、寄川条路編『大学における〈学問・教育・表現の自由〉を問う』(法律文化社)を手にとって読んでほしい。
 裁判で明らかになったのは、明治学院大学では、慣例的に授業が盗聴され、録音されていたことだった。大学を告発して解雇された教授のほかに、非常勤講師も授業を盗聴され雇止めにされていた。この件は、まだ知られていないので、ここではじめて公にする。

3 科目の削減と教員の削減
 クビになったのは、いずれも教養科目の担当者で、「明学★人気授業ランキング」で1位のシノロ先生(仮名)と2位のヘボン先生だった。二人とも、授業を休んで海外の学会に行くほど研究熱心だったが、学生のあいだでは、楽に単位が取れる先生で有名だった。
 そんな折、2018年問題をまえにして、大学執行部は、学生定員を15パーセントも増やしながら、開講科目を20パーセントも減らす方針を決定した。
 大学の方針は、専門科目はそのままにして、教養科目だけを減らすものだった。そのときは、非常勤講師を削減する話だろうと思って、教養部にさえ反対する者はいなかった。

4 大学による授業の盗聴
 教養科目は自由に選択できるので、「楽単科目」に学生が集中する。学期のはじめ、職員が教室を回って出席者を数えているが、教務担当の教員も加わって、教室の中を見て回るようになった。授業について、学生からクレームが寄せられたそうだ。
 明治学院大学では、学生のために「クレーム用紙」まで作って、積極的に、苦情や要望を書いてもらっている。あるとき、ヘボン先生の授業について、「学生の私語で先生の声が聞こえません」という、匿名の投書があった。
 そこで、教務担当の教員と職員が、ヘボン先生に事情を説明し、同意を得たうえで何度か授業を聴講させてもらったが、その後も授業に改善が見られなかったので、やむなく雇止めにいたったのだという。
 ところが、当のヘボン先生によれば、学生からクレームを受けたことはなく、教務担当の教員にも職員にも一度も会ったことはないという。「私は授業には自信がありました」というのが、研究熱心なヘボン先生のことばで、それまで授業が盗聴され調査されていたことなど何一つ知らなかった。

5 大学による教員の管理
 学期末には、学生による「授業評価」が行われる。あくまでも授業の評価なのであって、教員の評価ではないはずだが、実際には、人事評価の資料として使われている。
 明治学院大学では、「みんなのキャンパス」という授業評価のウェブサイトも監視しているが、たまたま見つけたという「学生と思われる者」の書き込みは、職員の自作自演だった。
 手書きのはずのクレーム用紙が、パソコンで書かれていたこともあった。ファイルのデータを調べたところ、「作成者」は職員だった。「宮崎大学セクハラ教員解雇事件」のように、学生のクレームは職員がねつ造したものだった。
 「リベラルな大学」に見えても、大学の方針を批判することは許されない。教科書の検閲はもちろん、プリント教材の事前確認から配布禁止まで、大学当局による管理運営は徹底している。
 採点済みのテストは、学生の個人情報を保護するためシュレッダー用の箱に入れるのだが、回収された用紙は、授業内容の調査のため倉庫に保管され、しっかりチェックされていた。
 大学では、これらをすべて「校務」と呼んでいる。いずれも組織的で計画的な犯行なのだが、不法行為に関与しているのは、執行部の指示や命令に従うまじめな教職員だ。理事の学部長は、裁判では、「授業の無断録音は許されるべきではない」と証言していたが、同じ人物が「のぞき」の常習者でもあった。

6 クビになったら非常勤講師組合へ
 さて、「事件」が大学界に広く知れ渡ったので、件のヘボン先生も、雇止めのいきさつを知るにいたった。「訴えることはできるかもしれないけれど、私は研究に専念したいので」。こう言ってくれる先生は、クビを切りやすい。
 クビになったら黙ってないで、すぐに非常勤講師組合に相談しよう。