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 カテゴリー 2020年08月

2020年08月30日

北海道大学長解任・学長選挙,教職員組合「声明」、候補者への「公開質問状」と「回答」

1.北海道大学教職員組合声明「学内民主主義を尊重する新しい総長を」
https://hokudai-shokuso.sakura.ne.jp/htm/seimei/20200811seimei.pdf

2.教職員組合「候補への公開質問状」(8/11提出)
https://hokudai-shokuso.sakura.ne.jp/htm/kousyou/20200811situmon.pdf

3.公開質問への次期総長候補3人からの回答
https://hokudai-shokuso.sakura.ne.jp/20/20200821souchoukouho-kaitou.pdf

4.意見等
https://hokudai-shokuso.sakura.ne.jp/htm/souchousen2020iken.html

北大総長選の教職員意向投票、トップ宝金清博氏の得票率過半数届かず

Real Economy(2020/08/29)

 北海道大学の名和豊春総長の解任に伴い実施される総長選の教職員による意向投票が28日行われ、即日開票された。総投票数1177票のうち473票で1位だったのが宝金清博氏(65、北大保健科学研究院特任教授)、369票で2位だったのが横田篤氏(63、北大農学研究員教授)、335票で3位だったのが笠原正典氏(64、総長代行・副学長)だった。

 投票は、講師以上の教員、課長補佐以上の職員、合わせて約1500人が対象で1177人が投票した。得票率は宝金氏40%、横田氏38%、笠原氏28%。宝金氏の票が伸びたのは、医学部、歯学部、保健科学研究院のほか理学部票も多かったためとみられる。前回までは過半数の得票を得るまで意向投票を行ったが、今回からは過半数に届かなくても投票は1回だけになっている。

 投票率は約78%で、名和前総長が726票を獲得した2016年12月の意向投票より、4ポイント上昇した。 今後のスケジュールは、9月1日に総長選考会議(議長・石山喬日本軽金属ホールディングス元会長、他委員は末尾に記載)が総長候補者へのヒアリングを行い、2日に同会議が総長予定者を決定、文部科学省が任命する。
 
 総長選考会議は、意向投票権を持つ教職員を対象にした8月18日の公開質疑と28日の意向投票結果、さらに9月1日の同会議による候補者ヒアリングによって総長予定者を決定する。これまでは、意向投票で最も得票数が多かった候補者が同会議で総長に選ばれなかったことはないが、今回について石橋議長は、組織運営の能力を重視するとして、2位以下の候補者を選ぶ可能性にも言及している。

 18日に行われた公開質疑の中で、文科省の運営交付金や学費等以外の財務基盤強化について、各発言者の要旨を掲載する。

 宝金氏
「大学が生産したものの販売や大学のブランドやネーミングライツ、不動産運用収入、知財収入、ベンチャーキャピタル収入(成功報酬など)が必要です。そのためには透明性の高い審査、監査など規定を順守する実務専門家が必要になります。最近、北大は非常に素晴らしい案で留学生宿舎を作ることになったようです。一部不透明ではないかという意見が出て残念に思っていますが、いずれにしてもこうしたことが今後の大学経営には重要です」

 横田氏
「北大自身の投資会社、北大ベンチャーキャピタルの設立によって新たな収益創出を考えています。既存の機能強化促進事業を活用、分野横断型、文理融合型の提案を積極的に採用します。そのことによって部局間の垣根が下がり一体感が醸成され、外部資金の獲得も促進されてきます。ロバスト農工連携のような産学官プラットフォームを形成して学内外の共同研究を獲得していく」

 笠原氏
「すでに民間出身の財務担当者や経営改革担当理事を配置したほか、東京オフィスにはファンドレイザー(社会貢献と発展のため活動資金を集める専門資格者)を配置しています。共同研究の契約額を年間30億円以上とするほか、ベンチャー起業、アントレプレナー(起業家)教育を強化・支援、株式収益を確保するとともに本学が保有する不動産を積極的に活用することを考えています」

 2020年度の総長選考会議の委員は次の通り
議長 石山喬氏
委員 横山清氏(アークス社長)/浅香正博氏(北海道医療大学学長)/長澤秀行氏(帯広畜産大学顧問)/松谷有希雄氏(国際医療福祉大学副学長)/山本文彦氏(北大文学研究院長)/堀口健雄氏(北大理学研究院長)/吉岡充弘氏(北大医学研究員長)/西邑隆徳氏(北大農学研究員長)/中垣俊之氏(北大電科研所長)


名和豊春・北大前総長が沈黙を破った!「私が解任された本当の理由」

Real Economy(2020/08/23)

 6月末に萩生田光一文部科学大臣によって北海道大学総長を解任された名和豊春氏(66)が22日、『私が解任された本当の理由』と題して講演した。名和氏は解任騒動の前後から1年半以上にわたって沈黙を守っていたが、初めてこの事件について口を開いた。「北大総長解任の真相を究明する市民の会」の主催によるもので、会場となった札幌エルプラザ3階ホールには約100人が集まった。以下、名和氏の講演要旨を抜粋して掲載する。(写真は、『私が解任された本当の理由』と題して講演する名和豊春氏)

「この講演の目的は北海道大学の教職員、数十万人の本学OB、OG、140年にわたって北大を愛し続けてくれている市民の方々に真相を知ってもらい、皆さんに将来どうしていくかを考えてもらうために行うものです」

「調査委員会の調査報告書を読んだが、私ひとりの判断ではいけないと思い、信頼のおける知り合いにも読んでもらいました。調査には、誘導尋問や誤導尋問が多く、聞かれている人が『そんなことはありません、私は知りません』と言っても、調査した人が執拗に『何かあるでしょう、本当にあるでしょう』と聞き、創作されて私は犯罪者のように扱われました」

「私は、総長の就任前から工学系の教育の在り方について、文科省の考え方を十分考慮して新しい政策を進めてきました。文科省も大学改革の推進に寄与する人材として期待したのではないかと思っています。荻生田文科相も解任会見の際には『大学改革に頑張っていることは認める』と発言していますから、期待されていたのかもしれません。しかし、私は様々な政策が出てくることに対し、必ずしも『正しい』とは言いませんでした」

「私は総長として、予算ありきではなく教職員をどうやって大切にするかということを前提に考えました。人件費を削らず物件費を削ってでも人は守ろうとしました。このことは文科省からすると、とんでもない発想だったのでしょう。北大が、これから考えなければならないことは『食料』だと思い、フードバレー構想を掲げたことがあります。同様の構想を進めていたオランダの大学と提携して、文科省に頼らず独自に財団を作って独自予算を持って動こうとしたこともあります。

 自立した大学をつくるという本来の独立法人化の精神に戻って大学改革を進めようとしました。それは逆に言うと、大学の自治が強まり、文科省主導の大学ではないものをつくろうということに繋がるわけです。文科省から北大の事務方にはたくさんの人が来ていますが、予算を取るために採用することはしたくないとはっきり言いました。また、官製談合や不正経理はしてはいけないということもかなり厳しく言いました。そういったことが引き金になって、何らかの口実を設けて解任に繋がったのではないかと思っています」

「もう一つ、なぜあの時期に騒動が持ち上がったのかがわかりませんでした。よくよく考えてみると、あの頃はいわゆる『加計・森友事件』が大きな問題になっていました。本学の獣医学部長が国会まで行って加計の準備不足を陳述しようとしていました。政府は本当に危なかったのです。財務省も文科省も省庁改変が必要じゃないかという声も出ていました。そんな時、マスコミを使って『パワハラ』というピンポイントで、私に流れを持ってきた。調査委員会では『パワハラ』と報告されていた事柄は、総長選考会議では認定せず、同会議が文科省に解任を申し出した時にも『パワハラ』という言葉はなく、『総長として適切とは言えない行動』とし、『パワハラ』を取り消していたのです。最初の『パワハラ』という言葉がなかったらどうだったのでしょうか」

「大学の教育や研究が商業化され、さらには(文科省の)天下りと両立させるようなシステムがつくられたら、大学の自治はどこに行くのでしょうか。それを阻止しようとした私の態度は、確かに文科省から見れば敵対勢力だったでしょう。今後、大学の自治、学部の解体が起きてくる可能性が高い。大学の自治を守って知の創成を守らなければいけない。そのためには、現場を大切にしなければならないと今も考えています」

「騒動の当時、事務方にいて文科省に戻ったスタッフが、こう言ってくれました。『厳しいことは言ったけど、名和さんは私利私欲を持っていない』と。私のモットーは、私利私欲を持たず国の大計となる高等教育を司る学長としてなすべきことをなすことです。これに殉じても仕方がない」

 名和氏は、モットーを貫徹しようとしたことで文科省と後戻りできない段階まで行ってしまったようだ。最後に発した「これに殉じても仕方がない」という言葉には無念さがにじみ出ていた。この言葉を語る時は、声に詰まり嗚咽を押し殺している風だった。今回の講演会は第1弾として行われたもので、主催した「北大総長解任の真相を究明する市民の会」では、引き続き真相究明の講演会を続けていく。


2020年08月29日

札幌国際大学の「懲戒解雇」処分に対する提訴について

2020年8月28日 北海道司法記者クラブにて,原告の提訴の報告と,訴状の概要
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20200828.pdf

札幌国際大学、“不当解雇”元大学教授提訴

NHK 北海道NewsWeb(8月28日)

留学生の受け入れをめぐり学内で対立が起きた札幌国際大学で、元教授の男性が不当に解雇されたとして地位の確認などを求める訴えを札幌地方裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは、札幌国際大学人文学部の大月隆寛元教授(61)で、28日、札幌地裁に訴状を提出しました。
札幌国際大学では、受け入れている留学生の日本語能力をめぐって、▽「基準を満たしている」とする理事長と、▽「助成金目的で、能力が不十分な留学生を入学させている」と指摘した当時の学長との間で対立が起き、大月元教授はことし3月の学長の記者会見に同席したあと懲戒解雇されていました。
訴状などによりますと、▽大学の名誉を損なう内容の記者会見に同席したことや、▽SNSに内部情報を漏洩する書き込みをしたことが解雇の理由とされたということですが、元教授はいずれの行為も懲戒処分の理由にはあたらず不当な解雇だとして、大学に教授としての地位の確認と慰謝料などの支払いを求めています。
大月元教授は提訴後の会見で、「『大学に逆らうとこうなるぞ』という明らかな見せしめと報復だ。元の職場に戻りたいのももちろんだが、大学の健全化につなげたい」と話しました。
一方、札幌国際大学は「コメントはできない」としています。
また、発端となった学内の対立については、文部科学省がすでに双方の意見を聞き取ったほか、札幌出入国在留管理局や大学が設けた第三者委員会も事実関係の調査を進めています。


2020年08月28日

追手門学院大学退職強要事件、「拷問だった」大学を訴えた職員らが明かす「人格否定研修」の中身

Friday Digital(2020年8月27日)

「拷問だった」大学を訴えた職員らが明かす「人格否定研修」の中身

「4年前のきょうは、退職強要研修の真っ最中でした。私は『あなたは腐ったミカンです』『戦力外です』と言われ続けたことで、パニックになりました。長時間にわたって、参加者全員に人格否定の言葉が浴びせられるのを聞くのはつらかった。はっきり言って、あれは拷問です」

学院を訴えた3人

こう話すのは大阪府の学校法人「追手門学院」に勤務していた40代の元職員。8月24日、この元職員と休職中の職員2人が、違法な退職強要を受けたなどとして、追手門学院と学院の川原俊明理事長、コンサル会社のブレインアカデミーなどを相手取り、慰謝料など約2200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。

問題の経緯はこうだ。2016年6月、学院の総務室長から専任事務職員に対し、「面談と指名研修を行う」という通知があった。そこには「学校経営は極めて厳しい時代となっています。(中略)『求められる職員像』に達していない方には、今後の職のあり方もご検討頂かなければなりません」と書かれていた。

翌月、18人を対象に学院が面談を実施。「2017年3月末までにやめていただきたい」と、退職勧奨が始まったのだ。

「2019年春に新キャンパスをオープンすることもあり、大学側は人件費を削減し、財政の安定化を進めたかったのでしょう。18人のなかには複数の管理職経験者や、昇進したばかりの人も含まれていました」(大学関係者)

面談が行われた後、この18人に対して追手門学院は「研修」を実施する。その際、自分たちの手で進めるのではなく、この研修を外部に委託。請け負ったのが、「ブレインアカデミー」という教育系のコンサル会社だ。

今回、追手門学院とブレインアカデミーを提訴した3人は「この研修によって体調を壊し、休職を余儀なくされた、と主張する。3人は提訴後、匿名を条件にメディアの取材に応じた。裁判所に提出された訴状に記されたのは、追手門学院とブレインアカデミーによる執拗な「退職強要」と彼らが受けたという、耳を疑うような「研修内容」についてだった。

訴状によると、始まりは4年前の2016年8月22日のこと。対象となった18人が「研修」を受けるために大阪市内のビルの一室に集められた。「研修」とは名ばかりで、その内容は「5日間計40時間にわたって退職を繰り返し強要する」ものだった、とのことだ。

学院から委託を受けたブレインアカデミー所属の講師は、参加した職員に対して業務とは関係ない人格否定を繰り返した、という。

「あなたのような腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない」
「戦力外なんだよ」「老兵として去ってほしい」「虫唾が走る」
「賞味期限切れちゃったかな」

暗幕で外の光を遮断した部屋では、このような講師の怒鳴り声が響き、水を飲むことも、トイレに行くこともはばかられる雰囲気。参加者の多くは頭痛や吐き気を起こすなど、体調に異常をきたした。なかには泣き出す職員もいたが、同席していた学院執行部は止めるわけでもなく、「ただ監視していただけ」(関係者)だったという。

その研修の末に原告の1人が受け取った「退職勧告書」には、「物事の本質を理解する能力が欠落している」「思考が浅く幼い」など、誹謗中傷ともいえる言葉が並んでいる。

退職を強要された18人のうち9人が心療内科などにかかり、うつ病などと診断された。その後、2017年3月末で10人が退職することに。冒頭の元職員も休職に追い込まれ、今月、追手門学院から休職期間が満了したとして解雇された。

「あの研修がきっかけでうつ病になりました。いまでも当時のことを思い出すと、体が動かなくなります。何とか職場に戻ろうと思っていましたが、バッサリ切られて、悔しいし、悲しいです」

裁判は、退職強要が社会常識的に逸脱したものであるかどうか、また違法性が認められるかどうかが争点となるだろう。原告の弁護団は「悪質で違法性が高い」とその問題点を指摘している。原告3人は現在労基署に労災を申請中だ。

一方、追手門学院は筆者の取材に対して「本件につきましては訴状が届き次第、内容を確認して、対応してまいります。多くの皆様方にご心配とご不快な思いをさせましたことをお詫び申し上げます」と述べるに留まった。これまでの経緯から、全面的に争うことが予想される。

しかし、そもそも学校法人が外部講師を雇って退職を強要すること自体、問題があるのではないだろうか。関係者の証言によると、この時の研修費用は最大で約3000万円になることが、学院内で承認されていたという。「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」、1名につき税込みで108万円支払う契約が結ばれていた…とのことだ。

言葉は選んでいるが、簡潔に言えば「一人退職させれば、約100万円が報酬として支払われる」契約だった可能性が高い、ということだ。筆者が入手した資料などから判断すると、2016年の年末までにブレインアカデミーに少なくとも700万円が支払らわれた可能性がある。

どのような理由があったにせよ、このような「研修」が行われていたのなら、問題アリといわざるを得ない。同大学は理念の一つに「自他の人格を尊重」すると記しているが、こうした訴訟が起こされるということは、その理念を忘れたのではないか、と疑われても仕方がないだろう。

取材・文:田中圭太郎

追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明

2020年8月24日

追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明

追手門学院退職強要職員研修等事件原告一同

 本日,私たちは,学校法人追手門学院,同学院川原俊明理事長及び株式会社ブレインアカデミー並びに同社が受託し実施した研修の講師であった西條浩氏に対し,損害賠償及び退職強要等の差し止めを求めて大阪地方裁判所に提訴いたしました。

 提訴の理由は,追手門学院が2016年8月に実施した研修において,私たちに退職ないし退職した上での特定事務職員への変更を強要または勧奨する言動や名誉を毀損する言動により精神的圧迫を受けたことに対してです。

 私たちは,5日間40時間にわたる研修を業務命令として拒否できない形式で受講させられました。研修は「自律的キャリア形成研修」と名付けられ、暗幕が引かれた部屋で「腐ったみかん」「あんたはいらない」「虫唾が走る」などの人格否定の言葉のシャワーを浴びさせらました。研修終了後も追手門学院の執行部による退職強要とも言える面談を繰り返し行われたことによって精神疾患を発症し,休職せざるを得ない状況となっています。
 このため,私たちはそれぞれ茨木労働基準監督署に対し労災申請を行っています。

 研修を受講した18名のうち10名が退職しました。現在,2名が休職,1名が休職期間満了による解雇となっています。

 受講した職員のなかには,未だ殺された心を取り戻せずに苦しみ,研修が行われた新大阪や追手門学院の大学や各学校がある茨木周辺には近づけない者もいます。大きな声での会話でさえ動悸がして身体がこわばり,当時の恐怖感がぬぐえず,動けなくなる人もいます。

 追手門学院は,研修は大学設置基準第42条の3に基づきSD(スタッフ・ディベロップメント)として実施したと言っています。しかし,その内容は,退職強要そのものであり,同基準が求める,職員に必要な知識及び技能を習得させ、その能力及び資質を向上させるための研修ではありませんでした。言い換えれば,追手門学院がブレインアカデミーと手を組み,退職を強要するハラスメント研修を企画し実行したのです。

 私たちが,この裁判でめざすところは,退職強要によって失われた心と時間を取り戻し,職場に復帰するきっかけをつかむことにあるとともに,追手門学院が教育基本法の前文である「個人の尊厳を重んじ,真理と正義を希求し,公共の精神を尊び,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに,伝統を継承し,新しい文化の創造を目指す教育を推進する」を踏まえた正常な教育機関に戻ること,追手門学院で学ぶ園児,児童,生徒,学生の育成に全力で取り組むことを望んでいます。


2020年08月26日

梅光学院騒動の真相に迫る なぜ14人の教師は辞めたか

長周新聞(2016年3月18日)

 今年に入ってから、下関市にある開学100周年を迎えた梅光学院で中・高校の教師14人、大学の教員8人が辞めることが明らかになって以後、生徒たちが「先生を辞めさせないでほしい」と署名活動を始め、3月5日には保護者、教職員有志、卒業生らが300人の集会を持って「梅光の未来を考える会」を設立。現経営方針の転換と理事長の解任を求める署名運動を展開してきた。署名は卒業生を通じて全国区で広がり締切の14日までに1万5361筆が集まった。16日には代表者らがそれを携えて梅光学院を訪れた。ただ、関係者以外の市民の耳に届いてくるのは「とにかく梅光が大変なことになっている」ということ以外には具体性が乏しく、さまざまな噂や憶測ばかりが飛び交い、いったいなにが起こっているのかわからない状態が続いてきた。本紙はこの間の経過について関係者に取材し、流言飛語ではなく何が真実なのかを問うてみた。
 
 下関で100年の歴史誇る私立 「改革」で学校崩壊の本末転倒

 「梅光の未来を考える会」がおこなっている署名は、「梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元の文化の一翼を担ってきた。しかし“改革”の名のもとでの専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつあり、資金の使途に数々の疑念があるばかりでなく、コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている…梅光学院の未来のために、私たちは、本間理事長の退任と、現行運営方針の転換を強く要求する」としている。
 生徒たちのなかでは「共学化に反対した先生が辞めさせられるのだ」と話題になっているものの、どの教師が解雇されるのかわからない状況が続いている。そのなかでアンケートをとって校長に提出して説明を求めたり、署名活動をしてきたが、学校が子どもたちに真摯に向き合った形跡は乏しい。先日開かれた高校の生徒総会で「10億円を株に運用している」ことが話題に上るなど、学校に対する子どもたちの不信感も強いものがあるようだ。
 梅光学院でいったい何が起きているのか? どうしてそれほどの教員が大量に辞めていくのか? 何と何が矛盾して、その結果、学校の宝であるべき子どもたちの教育環境はどうなるのか? である。

 希望退職募集が発端 異常な人格否定研修会

 問題の発端は、昨年10月下旬、「財政難」を理由に40歳以上の中・高校の教師11人を対象に希望退職の募集がおこなわれたことだった。
 第1回目の募集で、すでに嫌気がさしていた英語教師らの多くが辞表を提出したとされる。その要因として関係する人人が指摘しているのが、2014年度から只木徹氏(統轄本部長、大学事務長、中高校副校長)が主導する英語教育改革と矛盾が生じていたことだ。その英語教育改革とは、文科省が進める「授業をすべて英語で」を徹底するものだったという。基礎になる文法を教えないので、学力の低い生徒になるとついていけず置き去りになる状況も出ていたようだ。公立高校の受験を希望する中学3年、大学受験を控えた高校3年生には対応できない状況も生まれた。子どもたちが喜ばないことを、いいなりになってやらなければならないことに嫌気がさしたのだという。
 だが辞表を提出した教師は11人に及ばず、数年前から中・高校にかかわってきたブレインアカデミーというコンサルタント会社が前面に登場した。全国で50以上の私学の人事制度の構築・導入などにかかわった実績を売りにするコンサルだが、その実態は、最近問題になっているリストラビジネスを手がける人材派遣会社の私学バージョンのようにも見える。
 まずブレインアカデミーによる「再就職斡旋の説明会」が開かれた。当初は希望者のみだったが、直前になって「全員参加」となり退職を希望していない教師も含めて参加することになった。そして11月14、15日の2日間、まだ辞表を提出していない教師を集め、1日5時間、計10時間にわたって「キャリア再開発」と銘打った研修会が開かれた。学院によると「この研修を受けたのは十数人」。講師はブレインアカデミー特別専任講師の肩書きを持つ西條浩氏だった。
 1日目、「人の目を見て話聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」という場面があったり、「こういう発言をすることからして、あなたはこういう人だ」と嫌みな人格評価をするなど、特定の教師に狙いを定めた個人攻撃と人格否定がやられたことに教師たちは戸惑った。普通の人なら腹が立つ内容だが、事前に「会の趣旨に反することをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、なんらかの処分がある」と釘を刺され、教師たちは我慢するほかない状態に置かれていた。
 続く2日目は、参加者の能力を全面的に否定することに力が注がれたという。年末までの「必達5項目」が掲げられ、「今から頑張って90点、100点になる人がこのなかにいるか? せいぜい60点か65点にしかならない」「このなかで努力して学院が希望する点数になる人はいない」「これがあなたたちの中途半端な成果だ」といった調子で教師の能力を否定。そのうえで、「当事者意識」「自責」といった言葉を強調し、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「当事者意識を持って学校改革をしていかないといけない。でも能力がないからよそに行ったらどうか」と、「人生の棚卸し」などの言葉を使ってくり返し巻き返し精神的に追い詰めていった状況を、当事者である教師は明かしている。経営陣の「経営責任」をいつの間にか教師たちにすり替えていく手法だったようだ。
 そして最後に研修の成果を発表するプレゼンがおこなわれ、一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させられたが、西條氏はそれを聞いて「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」といい、続いて中野学院長が、「(この研修は)先生を辞めるまで終わらない。あまり無理をなさらず、他の道も探した方がいい」といった内容をのべたという。初めから「辞表を出すように」と囲い込んでいく研修会だったのか、参加した教師たちにとっては脳みそ破壊をやるブレインバスターがいきなりあらわれ、耐えがたい研修会となった。
 その後、2度目の希望退職の募集がおこなわれた。1回目の条件では退職金について「本俸8カ月加算」だったが、2度目は「6カ月加算」に削減されていた。それでも辞表を提出しなかった教師には、第2段階のブレインアカデミーによる「個別カウンセリング」(1人90分)が待ち受けていた。密室でのカウンセリングの後、第3段階は「面接」で中野学院長、只木統轄本部長、樋口学長、只木氏の秘書・辻野氏の4人に囲まれて、「あなたは来年度はいらない」「来年度の学院の構想には入っていない」と戦力外通告がされていったという。3度にわたる圧力で11人の教師が辞表を提出。今年度末で退職する予定の教師は中・高校全体で14~15人に上っている。
 梅光の教師たちの年収は300万~400万円、長く勤めた人で500万円台と、教師としては決して高給ではない。それに対してブレインアカデミーはたった1人を2日間・10時間の研修に派遣しただけで300万円を得た。時給にして30万円である。さらに驚かせたのは学院の顧問弁護士が渦中で口を滑らせ「1人辞めさせるごとに成功報酬100万円を手にしていた」という話が広まったことだった。11人分の成功報酬を得たとすると1100万円、計1400万円になる計算だ。ただ、この真偽について只木氏に問うたところ「まったくのデマだ」とのべていた。

 教員の大量解雇 来年の授業体制組めず

 これほどの大量解雇でもっとも心配されるのは、来年度からの子どもたちの教育がどうなるかだ。
 中・高校では正規の教師の半数が退職し、大学でも来年度の授業予定も組んでいた准教授が、2月24日になって「総合的な判断」という理由で突然雇い止めの通告を受けており、中・高・大学すべてで来年度の授業体制がいまだに組めていないと指摘されている。ある教員はこうした状況について「入学者が増えたというが、レストランで客が増えたのに料理を出さないようなもの。反教育だ」と語っていた。「改革」した末に教師が逃散するように辞めていき、おかげで学校が崩壊するというのでは本末転倒というほかないが、職安に梅光学院の教師募集の求人が幾つも出ていたのを見て、学外でも懸念する声は高まっていた。

 4年前からの改革 「文学は儲からない」

 今回の問題は突然起こったものではなく、4年ほど前から大学を手始めにやられてきた「学校改革」の一環で、それが表面化したものだと関係者は指摘する。背景には、政府・文科省が進める人文系廃止や、少子化のなかで財政難に陥っている地方の私立大学が、生き残りをかけて熾烈な競争をくり広げていることなど、根深い問題が横たわっている。梅光学院も十数年前から定員割れに頭を悩ませてきた。
 梅光学院の「学校改革」は、2011年10月、現・統轄本部長である只木徹氏(名城大学で非常勤講師をしていた)が梅光学院にやって来て、その翌年の2012年春から始まった。非常勤講師として着任した同氏は、まず事務局を廃止して統轄本部を新設。本部長に就任して人事と金を動かす権限を掌握した。1年たった2013年、ガバナンス(統治・支配)強化のために、只木氏が本間政雄氏(元文科省官僚、大学マネジメント研究会会長)を呼び寄せ、現在の本間理事長、只木統轄本部長(大学事務長)、樋口紀子学長、中野新治学院長(中・高校長)の体制ができあがった。
 「学生数を確保する」こと、「人件費比率の削減」が改革の内容で、真っ先に事務職員の給与切り下げがおこなわれた。意見をいう職員には降格人事や左遷など、容赦のない仕打ちがおこなわれたという。このなかで心を病んだり、学院のやり方に納得できず、半数ともいわれる事務職員が学院を去り、半分が非正規職員になっているようだ。
 2014年からは大学教員の給与切り下げと人員削減が始まった。執行部が「金にならない」とターゲットにしたのは文学だといわれる。梅光学院大学は歴史的に日本文学の研究で知られてきたが、2012年に13人いた日本文学科の専任教員を四人まで削減。残りは非常勤講師でまかなう状態になった。1人1人呼び出して「今年辞めたら退職金を○○円出すが、来年になったら半額になる」という手法だった。
 ある教員は、「梅光は文学や語学に力を入れていたのに、文学はもうからないという。かろうじて日本文学は守っているが、英文学や英語学などはなくし、薄っぺらな学問にしようとしている」と危惧していた。辞めた教員を非常勤で補うなど有期雇用に変え、いつ辞めさせても法律上問題のない手法で削減は進んでいる。
 大学教育にかかわった経験のある人物は、「子ども未来学科を設置したとき、子どもの未来を考えられる人材や研究をどのようにしていくか、喧々諤々(がくがく)論議しながら建設してきた過程がある。それが保育士の資格をとれればいいというものに変わってしまった」という。もともと「保育士を育てる教師の育成」を追求していたはずが、保育士資格をとらせるだけに変わった。教授会の発言権を奪って学長に権限を集中させ、理事会で反対意見をいう理事をやめさせるなど、「守旧派」と見なした人人を学外に追いやるなかで「改革」は次から次へと進んでいったという。
 その結果、高校への生徒募集や宣伝広告の強化、給付型奨学金(1億円ほど)の強化、2013年度からは学費を20%減額するなどして学生数は増加した。「地方小規模大学のV字回復」と、教育情報サイトでとりあげられるほどだ。ベトナムなど東南アジアからの留学生の確保にも力を入れたようだ。学生数を基準にする文科省にとっては、今回のような騒動が起ころうと「優秀な大学」である。しかし、「4年前は赤字が1億2000万円といっていたが、この4年で2億ずつ増え、今累積が8億円といわれている」とも指摘されている。そうしたなかで、学院のなかでも「赤字部門」、すなわち経営者の視点から見たときに不採算部門に映るであろう中・高校にも改革の手が伸び始めていった。

 生徒や同窓生の疑問 不透明なカネの使い道

 地方の私立大学が生き残りをかけて懸命になるのは無理もない。大学として存立するために何を為すべきかはどこの大学でも抱えている重要課題だ。しかし関係者の多くが怒っているのは、これらの「改革」が進むと同時に、不透明な金の使い道、執行部にまつわる黒い噂ばかりが拡大し、説明を求めても明らかにされないことだ。
 例えば生徒たちが問題にしているのは2015年度から導入されたタブレットだ。中・高校の全校生徒と教師全員に、およそ300台ものタブレットが一人ずつ配られた。ある生徒は「学習の記録や授業に使えといわれるが、重たすぎて家に放置している生徒もいる」と話す。学校で充電してはいけないので、毎日持ち帰らなければいけないからだ。「礼拝のときに先生がタブレットを活用しなさいというが、先生さえ使えていないのに意味がないと話になる」という。男子を増やすため、サッカー部をつくってレノファと提携を結んだことも話題になっており、「そんなお金があるなら、なぜ先生たちを首にするのか」と子どもたちは疑問にしている。
 さらにこの間、昨年7月から学院が所有している現金資産のうち10億円の運用を始め、昨今の株価下落で目減りしていることも心配されている。また、「4人の執行部が法人カードを持って好きなように使っており、学内の人間はその支出先を知ることができない」「毎月100万円を使い切っているというのは本当か?」「統轄本部長が報酬を1000万円から1300万円に上げてくれといっているのは本当か」等等、金銭にまつわる疑問も多い。さらに宗教上懸念されている問題として、戦後日本キリスト教団とつながりをもってきた梅光学院のなかに、オンヌリ教会(韓国)のチャペルをつくるという噂など、さまざまなものが飛び交っている。
 あと、教員たちや学院に関係する人人に取材するなかで共通して出されていた懸念は、一連の改革や解雇が中・高校をなくすための布石ではないかというものだった。2013、14年頃に、中・高校の生徒数が減っているにもかかわらず、1年契約の常勤講師を退職者数以上に採用しており、「教師が多すぎるのではないか」と疑問視されてきたが、それらが「正規の教師をリストラするための準備、もっといえば中・高校をいつでもつぶせる体制に向かっている」と真顔で心配しているのである。曲がりなりにも中心市街地の丘の上の一等地に位置するのが中・高校で、広大な用地は高値で取引されることは疑いない。「校舎を新しくしたばかりで、まさかそれはないだろう…」という意見と同時に、そうした将来を本気で心配している人人も少なくない。

 統轄本部長に聞く 中学・高校の存続は?

 これらの疑問や噂が目下、同窓生やその周囲を巻き込んで流言飛語のように拡大している。放置することは学院にとっても不名誉で、真相を明らかにすることによってしか打ち消すことなどできない。学院に取材を申し入れたところ、只木氏と小谷財務部長が対応した。まず第一に、教員不足でカリキュラムが組めないのではないかという疑問については、「雇い直しは(教科によっては)ぎりぎりのものもあるが、授業はきちんとできるようにしていく」という説明だった。
 株式運用については、担当の小谷財務部長が回答し「投資信託、株、債権、リートなど組み合わせたファンドラップでやっている。当然ながら規定があるし、理事会でも承認を得て長期の運用でやっている。決して投機的なことをしているとか、ギャンブル的な話はない」と強い口調でのべていた。昨年七月の運用開始からの目減り分について質問したところ、「株式が下がったパーセンテージの半分くらい」とのべていた。
 毎月100万円の限度額ともいわれている法人カードについて只木氏は「会社だったら当然持つ物だ。監事や公認会計士がみんな見る。絶対に証拠が残るから、むしろ明朗会計だと評議員の企業主もいっている」とのべていた。
 そしてもっとも心配されている中・高校の廃止については「過去10年を見て、普通の会計士が見ればつぶすのが正しい選択だという。今は再建しようという意志でやっている」とのべていた。「今」は再建するつもりであるが、今ではないいつかにその意志がどうなるのかはわからなかった。「今は」を強調していたのが印象的だった。
 また、オンヌリ教会について尋ねると、「奇想天外な発想ですね! そういう話があるんですか!」と驚いた表情をして、「キリスト教の学校だから個人的にはチャペルを建てたいが、今は計画はない」とのべた。

 子供たちの未来の為 真相示し教育的解決を

 この間の梅光学院を巡る騒動は、単なる労使問題で片付けることのできない問題を含んでいる。それは同じように財政難にあえぐ地方大学、とくに私学の姿を映し出すものでもある。しかし聞こえてくるのは、大人たちのどろどろした金の話だったり、支配と被支配のそれこそ専横的といわれる学院運営の実態だったりで、文科省官僚出身だった理事長のもとでくり広げられてきた改革の結末は、何ともしれない印象を放っている。それでいったい、学院に通っている子どもたちはどうなるのかがもっとも心配されている。
 少なくとも、梅光学院は誰かがカネを稼ぐための道具ではなく、子どもたちを教育するために理念を掲げ、100年の歴史を紡いできたはずだ。その梅光学院が乗っ取られる、別物のオンヌリ学院か本間学院にされてしまうという懸念が、同窓生を行動に駆り立てている最大の要因のようだ。
 現在、署名運動は広がりを見せており、学校の行く末を巡る論議が活発化している。お金にまつわる疑問にせよ、正面から真相を明らかにすることによってしか解決の道はない。教師の解雇についても、そのように学校を支えてきた人材を次から次へと追い込んでいく運営にどのような未来が待ち受けているのかである。
 「改革」して大学なり学校が崩壊したというのでは、あまりにも惨い結末といわなければならない。現経営方針を転換させたのちにどのような学校にして、子どもたちをどう育てていくのか、大学であればどのような理念によって人材育成の分野で社会的な役割を果たしていくのか論議を深めていくことが待たれている。建設的な力をつなげていくことしか梅光学院の未来はなく、阻害物があるならば取り除き、どう進んでいくのかが問われている。


追手門学院理事長が「腐ったミカンは置いておけない」と発言 職員らが約2200万円の賠償を求め提訴

読売テレビ(8月24日)

  職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと暴言を吐き、執拗に退職を迫ったのは違法だとして、学校法人「追手門学院」の職員ら3人が24日、学院理事長らに損害賠償を求める訴えを起こした。

「あなたのように腐ったミカンを追手門(学院)の中に置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」「老兵として去ってほしいんです」

 職員に浴びせられた暴言の数々。訴えによると、学校法人「追手門学院」が、4年前に行った職員研修の音声データだ。研修を請け負った東京のコンサルタント会社の男性講師が、20代~50代の事務職員18人に対し、退職を迫ったとされている。

 訴えによると、職員研修は貸会議室の一室で行われたという。黒い幕が張られた日の光が入らない部屋で、人事課の職員が見守る中、一日8時間の5日間連続で行われたという。

 研修の冒頭、男性講師は…。

「原則として今回の18名全員が今年度末、来年(2017年)の3月末の段階で残念ながら学院を退いていただきたい。例外なくです。18人全員がね」

 研修は、受講者全員が「私の自己改革テーマ」というタイトルで発表を行い、講師がコメントする形で進められたという。

「もう必要ないよ、戦力外通告されたわけでしょ、この度」「30前で、もう要らんと言われたんだよ、あなた。ノーサンキューと言われたんですよ」「あなたのように腐ったミカンを追手門の中においとくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」

 さらに研修終了後、退職に応じなかった職員らは学院幹部との面談で何度も退職を迫られ、中には理事長から退職勧告書を読み上げられた職員もいたという。

理事長とみられる男性「学院からの退職勧告をします。思考が浅く幼いと見え、向上心が見受けられない。外部による研修を受講させ、気づきの機会を与えたが、研修講師からの評価も芳しくなく…」

 研修や面談の結果、うつ病を発症するなどして、受講した職員18人のうち10人が退職。現在も2人が休職しているという。

 そして、きょう。大阪地裁。男性職員ら3人は、人格を否定する言葉で執拗に退職を迫ったのは違法だとして、理事長や研修を請け負ったコンサルタント会社に対し、合わせて約2200万円の損害賠償を求める訴えを起こした。

 会見で、原告は…。

「パワハラ言葉のシャワー」「本当にこれは現実なのかなと」「泣き出す方もいらっしゃいましたし」「自分以外の人が攻め立てられているのを見させられているのが非常につらかった」「(研修の)5日間通して(大学の)人事課員はいたんですけど、一回もこうした発言に対して止めに入ったことはなかった」

 原告の代理人の谷真介弁護士「我々も退職勧奨・強要などの事案をよく取り扱っていますが、ここまでの事例は本当に聞いたことがない」「これが本当に教育機関の中で行われているのかと、初めて聞いたときは信じられなかった」

 追手門学院は「訴状が届き次第、内容を確認し、対応してまいります。多くの皆様にご不快な思いをさせましたことをお詫び申しげます」とコメントしている。


2020年08月25日

研修で「腐ったミカン置いておけない」、解雇の職員ら追手門学院などを提訴

読売新聞(8月25日)

 職員研修で「腐ったミカン」などと言われて退職を迫られ、精神的苦痛を受けたとして、学校法人「追手門(おうてもん)学院」(大阪市)の男性職員ら3人(いずれも40歳代)が24日、学院や研修を行ったコンサルタント会社「ブレインアカデミー」(東京都千代田区)などに計約2200万円の損害賠償などを求め、大阪地裁に提訴した。

 訴状によると、3人は2016年8月にあった研修で、同社から派遣された講師に「あなたのように腐ったミカンを置いておけない。頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」などと罵倒され、退職を求められたという。3人は学院幹部からも退職を迫られ、うつ病などを発症して休職。うち1人は解雇された。

 原告側によると、研修内容は学院と同社が話し合って決め、研修を受けた18人のうち約10人が退職したといい、「人格否定を伴う退職強要だ」と主張している。

 学院は昨年7月、研修の責任者だった理事を厳重注意にしている。

 学院と同社は「訴状が届き次第、対応していく」としている。

追手門学院 “退職強要”で提訴

NHK関西News(08月24日)

大阪の学校法人、追手門学院の事務職員3人が事実上、退職を迫る研修で外部の講師から「腐ったミカンをおいておくわけにはいかない」などと人格を否定される発言を繰り返されたとして、学院側に賠償などを求める訴えを起こしました。

大阪地方裁判所に訴えを起こしたのは、追手門学院の大学などで事務職員として働いていた40代の男性3人です。
訴えなどによりますと、原告は4年前、キャリア形成を名目に学院が行った研修で、外部講師から「あなたのような腐ったミカンをおいておくわけにはいかない」「老兵として去ってほしい」などと参加者全員の前で人格を否定する発言を繰り返され退職を迫られたということです。
研修は暗幕が張られた部屋で5日間連続で行われ、受講した18人のうち10人が退職したほか、原告の3人は休職を余儀なくされ、このうち1人は休職期間が満了したとして解雇されたということです。
原告は違法な退職の強要だと主張して、学院と理事長、講師らにあわせて2200万円の賠償などを求めています。
提訴後に会見を開いた男性らは、「教育機関として許されないことで、早く正常な学院に戻ってほしい」と話していました。
一方、追手門学院は、「訴状が届きしだい、内容を確認し対応します。多くの皆さまにご心配、ご不快な思いをさせたことをおわび申し上げます」とコメントしています。


2020年08月23日

ウィキペディアに「明治学院大学事件」が掲載

ウィキペディアに「明治学院大学事件」が掲載されました。

「明治学院大学事件」

■職員不当解雇事件(東京地裁平成21年(ワ)第9644号)

元職員が、不適切な窓口対応などを理由に解雇されたのは不当として、大学側に地位確認や賃金支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は2010年7月12日、「問題行為」を認めた上で「態様や業務への支障の程度は、大学から排除しなければならないほど重大とは言い難い」と請求を全面的
に認めた。裁判所は、解雇に関して「担当業務の変更、縮小に準じるやむを得ない事情がある場合」などと定めた大学側の就業規則にはいずれも該当しないと判断した[20]。

高度な英語能力とマネジメント能力を有するものとして、大学の国際交流業務を行う管理職(次長)として中途採用した職員に対して、就任後、期待されたマネジメント能力を有しておらず、組織運営に極めて重大な支障をきたしたとして解雇がなされた事案である。裁判所は、大学職員として望ましくない、あるいは不適正なものであることは明らかとしつつも、業務支障の状況や程度からすれば、当該職員を大学から排除しなければならないほど重大なものであるとはいい難いとして解雇を無効としている[21]。詳細は「全国国公私立大学の事件情報」(
http://university.main.jp/blog8/archives/cat120/)を参照。

■教員不当解雇事件(東京地裁平成28年(ワ)第41597号)

授業を無断録音され、解雇されたのは不当として、元教授が、大学側に教授としての地位確認などを求めた訴訟で、東京地裁は2018年6月28日、解雇無効を命じる判決を言い渡した。授業の録音については違法性を認めなかった。解雇は「客観的に合理的な理由を欠く」として無効と結論づけた一方、大学が録音した授業は年度初めのガイダンスで、講義ではなかったと判断、「大学の管理運営のための権限の範囲内」と指摘した[22]。

元教授が、解雇は無効である旨を主張して、地位の確認と賃金の支払いを求めるとともに、解雇に至る過程において大学が同教授の授業の内容を無断で録音し、これを同教授に開示しなかったことにより、人格権を侵害され、多大な精神的苦痛を被った旨を主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料の支払いを求めた事案である。裁判所は、懲戒解雇は懲戒権を濫用したものであり、普通解雇は解雇権を濫用したものであるとして、解雇無効地位確認請求と賃金支払い請求を認容したが、損害賠償請求は棄却した[23]。詳細は「明治学院大学事件」(
https://sites.google.com/view/meiji-gakuin-university-jiken/)を参照。

■脚注
[20]「明治学院大職員の解雇無効――問題行為重大性なし」『共同通信』2010年7月12日。
[21]「明治学院大学事件」『大学教職員のための判例・命令集2』日本私大教連、2018年。
[22]「明治学院大教授の解雇無効――授業無断録音訴訟」『東京新聞』2018年7月4日。
[23]「明治学院大学事件」『労働判例ジャーナル』第82号、2019年1月15日。

■参考文献
・浅野健一「授業を無断録音し教授を解雇した明治学院大学の犯罪」『紙の爆弾』2017年3月号。
・小林節「学問の自由と信教の自由を弁えない大学」『月刊ベルダ』2017年10月号。
・寄川条路編『大学における〈学問・教育・表現の自由〉を問う』法律文化社、2018年。
・寄川条路編『大学の危機と学問の自由』法律文化社、2019年。
・寄川条路編『大学の自治と学問の自由』晃洋書房、2020年。

2020年08月21日

「腐ったミカン」発言 追手門学院の職員ら、提訴へ

朝日新聞(8月20日)

 職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと人格を否定する言葉で執拗(しつよう)に退職を迫ったのは違法だとして、学校法人追手門学院(大阪)の男性職員ら3人が近く、学院理事長や研修を請け負ったコンサルタント会社などに総額約2200万円の損害賠償などを求める訴えを起こす。

「腐ったミカン置けない」 追手門学院、外部講師が発言

 原告代理人の谷真介弁護士によると、3人が求めるのは、それぞれ慰謝料500万円を含む1人564万~998万円の損害賠償など。うち1人は「休職期間満了で解雇されたのは不当」として、職員の地位確認も求める。

 原告側の訴えによると、学院は2016年8月、「求められる職員像に達していない」として、3人を含む18人に「自律的キャリア形成研修」(5日間、計40時間)を受講させた。

 研修はコンサル会社・ブレインアカデミー(東京)が請け負ったが、学院側は研修の冒頭、「ブレインアカデミーとの間で研修内容を精査した」と説明。そのうえで、ブレインアカデミーの講師が「17年3月末で学院から退いていただきたい」と述べたとされる。

 講師はさらに、「あなたのように腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」「あなたにはもうチャンスがない」などと人間性を否定する言動で繰り返し退職を迫った、という。

追手門学院、「不適切」の認識 「腐ったミカン」発言

 その後も3人は学院幹部との面談で退職を迫られ、うつ病などを発症、悪化させ、休職を余儀なくされたと主張。うち1人は川原俊明理事長同席の面談で「退職勧奨をやめていただきたい」と言うと、川原理事長から「とことん変わってくれへんかったらいらんよ」「もう今後、退職勧奨をやめてください? あほなこと言わんといてくれ」と告げられたという。

 男性はその後の面談で、「視野が狭い」「思考が浅く幼い」などと書かれた「退職勧告書」を読み上げられた。

 19年6月、研修がパワーハラスメントにあたる可能性があると朝日新聞が報じた後、学院はホームページに「外部講師の発言とはいえ、報道された不適切な発言は決してあってはならないと認識し、研修を委託した本学院の責任を強く感じております」と掲載した。

「腐ったミカン」発言、監督者を厳重注意 追手門学院

 学院は今回の取材に、「厳粛に受け止め、二度とこのような事態が起こらぬよう努め、学校運営全般についても問題点がないか厳しく点検して進んでまいります」と文書で回答。後日、川原理事長の発言に関する取材には、「個別の案件については、係争の可能性があることから回答は差し控えさせていただきます」と文書で回答を寄せた。

 ブレインアカデミーは文書で「コメントを差し控えさせていただきます」と答えた。
「パワハラ言葉」のシャワー浴びせられた

 「人を育てる教育機関のあり方として許せない」。原告となる3人は学院の研修後に体調を崩し、4年たった今も、不眠や抑うつ状態などで苦しんでいる。


2020年08月16日

北大学長解任事件、真相究明講演会

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