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 カテゴリー 2020年10月

2020年10月31日

名古屋芸術大側に過料40万円 不当労働行為の救済命令不履行 地裁決定

毎日新聞(2020年10月30日)

 名古屋芸術大(愛知県北名古屋市)の教職員組合のニュース配布を妨げたとして愛知県労働委員会から不当労働行為の救済命令が出されていた、大学を運営する学校法人「名古屋自由学院」に対し、名古屋地裁が40万円の過料支払いを命じる決定を出していたことが、関係者への取材で判明した。組合代理人の弁護士によると、救済命令を履行せずに過料処分を受けるのは極めて異例。

 決定は7日付。組合によると、法人は2017年4月、教職員用メールボックスへの組合ニュースの配布禁止を通達。組合は同10月、県労働委に救済を申し立てた。……

2020年10月29日

札幌国際大学懲戒解雇事件、札幌地裁第1回口頭弁論 原告・大月隆寛教授の冒頭意見陳述

 札幌国際大学懲戒解雇事件に係わり,10月27日,札幌地裁にて,第1回口頭弁論が行われた。原告である札幌国際大学教授・大月隆寛氏の冒頭意見陳述(全文)をここに掲載。

2020年10月27日  於・札幌地方裁判所

第1回口頭弁論 冒頭意見陳述

大月隆寛です。

 裁判を始めていただくにあたって、冒頭、少しだけ自分の今の気持ちを述べさせていただきます。

 自分は1989年以来、大学や研究所の教員として生活してきました。2007年以来、縁あってご当地の札幌国際大学に教員として勤めてまいりました。同時にもちろん、研究者としての研究も行なってきました。

 それらがおよそ正当な理由と手続きのないまま、しかも懲戒解雇という労働者としては最も厳しい処分で職を追われることになった、そのことについては言うまでもなく非常なショックを受け、困惑し、大きな憤りも感じています。

 ただ、ひとつはっきり申上げておきたいのは、それらと共に、あるいはそれ以上に、公益法人である大学という機関がこのような異常とも言える処分をくだすにいたった、その背景の詳細とその是非について、この法廷の場で、法と正義に基づいたまっとうな判断を下していただくこと、そしてその過程において、大学の中でどのようなことがおこっていたのかについて、社会に、世間の方々にも広く知っていただくこと、を目的としているつもりであります。

 さらに、この6月末に自分がいきなり解雇されたことによって、自分が受け持っていた講義科目や演習の学生たちに著しい不利益が生じていることも申し添えておきます。今年に入ってからのコロナ禍でいわゆる遠隔授業が実施されていたことで、4月に入学したものの大学に顔を出すことも禁じられ、同級生やクラスメートとも顔をちゃんと合わせたこともないままだった1年生も含めて、あるいは他方、就職活動を行ない、卒業論文の執筆にもとりかかっていた4年生に至るまで、何の予告もそのための準備もないまま前期半ばでいきなり放り出されてしまいました。その後も誠実な対応をしないまま推移している大学側の態度と、それによって生じてしまった学生たちの不利益についてもまた、この場で明らかにして、それらの是非もまっとうに判断していただけることを、彼ら彼女らの名誉のためにも希望いたします。

 大学という場所が本来どういう場所であるべきか。少なくとも自分は、憲法で保障された「学問の自由」を教員も学生も共に、同じ「学生」、古い言い方を敢えてするならば平等な「書生」という立場で、保障されるべき場所だろうと思ってきましたし、今もそう信じています。それはその大学が有名か無名か、国立か私立か、文系か理系か、大規模なものかささやかなものか、といった違いを越えて、未だに国際的に共通する認識であり、前提だろうと思います。そして、そのような場所を持続的に、安定して維持してゆくのが大学経営の本来であるはずです。

 そのような経営側と、現場の教員を中心とした教学側の、良い意味での緊張関係をもってあるべき大学の姿をめざして努力して行く、立場の違いはあれど、大学という場所に関わり、それを仕事とする者にとってはみな同じ認識だと思っていましたし、今もそれは変わりません。

 経営側と教学側がそのような風通しの良い信頼関係を取り戻して、あるべき大学の姿に少しでももう一度近づくことができるような環境を、自分は何よりも望んでいます。それは、自分ひとりでなく、奇しくもこのような事態に巻き込まれてしまったこの札幌国際大学の、今いる教員や職員などの多くのもの言わぬ想いでもあるはずです。今回の自分の「懲戒解雇」とそこに至る過程は、この大学の教職員はもとより、いま在籍して学ぶ学生たちの、さらにはこれまでこの大学で学んで社会に出て行った卒業生のOBOGも含めた人たちの、大学に対する信頼も大きく損ねてしまった、そのことを教員のひとりとして残念に思いますし、またできるだけすみやかにそれらの信頼を回復できるよう、努力したいと強く思っています。大学としてのまっとうなあり方とはどんなものか、たとえ北海道の小さな私立大学あっても、それは世界的に共通する「学問の自由」という価値に向って開かれたものである、ということを示したいと願っています。

 大学の規定でフルタイム雇用の定年は63歳。自分はいま61歳ですから、あと2年で自分は時間切れになります。この裁判の結果が出る頃には、自分は大学に戻れなくなっているかも知れない。今いる学生たちとももう大学で会えなくなっているかも知れない。そういう意味で今の自分に残されている時間はもう少なくなっています。なので、縁あって大学で出会って共に学ぶことになった、今の学生たちとの関係をまずできるだけ早く取り戻したいと考えていますし、そのために公正な判断をできるだけ早くいただきたいと思っています。そしてそれは、学生たちのため、という一点において、大学本来の目的とも合致しているはずです。

 これはしょせん、地方の一私大のできごと、見る人によってはよくある内紛に過ぎないと思われているかも知れません。ただ、背後にある構造はどうやらいま、この国のさまざまな組織で起こっていることとも、陰に陽に関連しているようですし、その意味では案外厄介で根の深い問題も引きずり出しかねない案件だと、自分としては腹をくくってこの場に臨ませていただいております。

 「懲戒解雇」という異常で不当な処分を、「学問の自由」を保障するべき公益法人である大学が一方的に行なったことの是非。そして、そこに至った背景にある昨年来の留学生をめぐるさまざまな問題の経緯も含めて、どうか法と正義に基づいてご判断をしていただけるよう、裁判官のみなさま、心からよろしくお願いいたします。

 以上です。

2020年10月26日

中京大元教授の解雇は無効と判決 名古屋地裁、慰謝料は棄却

共同通信(2020年10月26日)

 中京大(名古屋市)の総合政策学部長だった羅一慶元教授(53)が不当に懲戒解雇されたとして、大学を運営する学校法人梅村学園に地位確認などを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は26日、「処分は解雇権の乱用」と判断して解雇を無効とし、未払い賃金約5300万円の支払いを命じた。慰謝料の請求は棄却した。

 判決によると、学園は、羅氏が13年8月から1年間の韓国・延世大での在外研究期間中、半年間無断でハワイ大に滞在したほか、学生の個人情報が入ったパソコンを紛失したり入学試験を欠勤したりしたとして、16年7月に解雇した。


2020年10月24日

筑波大、永田学長が再任 任期上限撤廃、最長で11年に 教職員有志「認めない」

■毎日新聞(2020/10/22(木))
 ∟●筑波大、永田学長が再任 任期上限撤廃、最長で11年に 教職員有志「認めない」

 筑波大学長選考会議は21日、次期学長に現職の永田恭介学長(67)を選出したと発表した。学長選を巡っては、選考会議が学長の通算任期の上限を撤廃したことなどについて教職員有志が公開質問状を提出するなど紛糾しており、有志は「再選に反対」などと緊急声明を発表。選考会議の河田悌一議長は「いちゃもんだ」と選考の正当性を主張した。【鳥井真平】

 選考会議は20日に開かれ、学内外の委員24人が参加。委員らは永田氏と生命環境系長の松本宏教授への面談などを実施したうえで投票を実施、3分の2以上を獲得した永田氏の再任が決まった。

 選考会議は4月に学内規則を改正し、最長6年の任期を撤廃。教職員による候補者への投票結果を選考に反映する「意向調査」も選考要件から外した。教職員投票では松本氏が永田氏の約1・6倍を獲得していたが、選考会議は「選考尺度の一つ」とし、各委員に扱いを委ねた。

 選考会議は永田氏について「人格が高潔で学識が優れ、教育研究活動を適切かつ効果的に運営できる」などとして、学長にふさわしいと判断したという。

 永田氏は前学長が病気で退任したため、2013年4月から任期を引き継ぐ形で学長を務めている。これまでに2回再任され、例外的に最長6年を超えていたが、規則改正で再任が可能になった。今回の再任で24年3月まで計11年務めることになる。

 教職員有志による「筑波大学の学長選考を考える会」は、これまでに「規則改正は事前に教職員への説明がなかった」などと指摘している。

 河田議長は記者会見で、学内への情報共有は尽くしているとし、「2年以上かけた規則改正だ。いちゃもんをつけたという感じで非常に残念」と憤った。

 稲垣敏之副学長は「改正の最終形が決まったのは19年12月。それまでに何度も(学内の会議で)話して学内の意見を集約している」と説明。会議の議事録は教職員向けの学内サイトで確認でき、会議のたびに教職員の意見を吸い上げてきたと主張した。

 永田氏は「日本は学長の任期が短い。諸外国、特に米国は10年単位でやらないと大学は変わらないとされている」と述べ、「日本の高等教育を守り、発展させるため、大学長の任期を真剣に考え直す時期が来ていると思う」との考えを示した。

 考える会は永田氏が再任されたことを受けて、「不正な選考を認めない。選考プロセスに関する情報公開と問題の責任追及を継続する」との緊急声明を発表、司法レベルでの検証も必要などとした。


2020年10月22日

筑波大学学長選考を考える会、永田学長再選を受けた緊急声明(10月21日)

筑波大学学長選考を考える会
 ∟●永田学長再選を受けた緊急声明(10月21日)

永田学長再選を受けた緊急声明(10月21日)
不正な選考を認めない。学長、副学長の責任を問う。

永田学長、あなたはご自分が任命した「学外委員」河田悌一氏を議長とする学長選考会議によって、とうとう再選が認められましたね。あなたは、ご自分の任期中に、「現学長ありき」で審議され、「現学長にも適用される」学長の任期上限撤廃の規則改正により、いま永遠の学長の座に座ろうとなさっています。大学内のあらゆる民主的な手続きを破壊してきたあなたの権謀術数(マキャヴェリズム)は見事というほかありません。

この筑波大学で独裁政治が展開され、いまや完成されようとしていることなど、世間一般の方々は思いもよらないでしょう。そもそも、あなたには、学長にふさわしい「リーダーシップ」などありません。「意見聴取」の結果は、あなたをそばでみてきた教職員たちによる、あなたへの事実上の不信任表明でした。公示の理由書の最後に「学長選考会議としては同氏(永田恭介氏)がふさわしいと判断した」とありました。「意見聴取」の結果によれば、「教職員としては」その判断はあきらかに間違っています。

あなたが、本学でその独裁的権力の源泉としてきた密室政治のからくりは次第に明らかになりつつあります。あなたが独断で選任した副学長はその職にふさわしくない人物たちであることを教職員たちは知っています。少なくとも次の2名の副学長を任命した学長の「責任」は厳しく問われなければなりません。

まずは企画評価・学術情報担当副学長である阿部豊氏には過去に原発関連企業から多くの研究費を受け取り、原子力規制庁の情報公開規定にもかかわらずその事実を隠蔽して原子力規制基準の策定に加わった、重大な利益相反が過去に報じられています。そのようなことをするに恥じない人物だけに、今回の「意見聴取」投票についても、教職員専用サイトで、職員番号など、投票者が同定できるような情報の入力が求められる、記名投票にもみえる不可解なシステムを採用した疑惑がもたれています。これにより、投票者に、誰に投票したのかが把握できてしまうのではないかという恐れを抱かせました。さらにオンラインで行われた投票のためには、VPN接続という日ごろその機能を使っていない教職員にとっては高い技術的ハードルも設けられていました。意見聴取の直前に松本宏候補の所信ホームページに貼られた本学の学術情報メディアセンターのVPN接続方法を説明したページ(学外にも公開)へのリンクを、「情報セキュリティ上」の観点から外すようにという指示をしてきたのはこの阿部副学長でした。これにより本学において、誰もが平等に投票する権利の行使を妨げました。

総務・人事担当副学長の稲垣敏之氏は、すでに追加公開質問書、緊急要求書において詳しく追及したように、問題だらけの人物と言わねばなりません。教職員組合から学長選考会議に発出された質問状は、所掌している総務部総務課から学長選考会議委員に届けられることはありませんでした。松本宏候補のホームページに寄せられた学内の教職員たちからの声(意見・要望書)が掲載されていたページが、学内「機微情報」に触れる可能性があるとして、学外からはアクセスできないように指示し、私たち教職員の声が外にでないようしたのは、この稲垣副学長でした。さらに彼は、学長選考会議の開催される直前の教育研究評議会(10月15日)において、松本宏候補のホームページの「内容」に関する検証委員会の設置の決定を主導しました。学長選考会議議長河田氏が発言したとされている「調査委員会が立ち上がるなら意見聴取の結果は無効」という二人のあいだのシナリオの実行のためではないのかという疑惑がもたれています。(そして同日15日には、絶妙のタイミングで本学が指定国立大学法人に決定され、文科大臣による永田学長のリーダーシップが讃えられていました。)稲垣氏のように恣意的な行為を行う人物が、教職員に恐怖を与えてしまうのは、権力を私的に利用するような人間に予算権・人事権という絶大な権力を与えた責任者、学長としての永田恭介氏が存在するからです。永田学長、あなたこそ最大の咎めを受けなければなりません。

二人の副学長がこれまでどのような仕事をし、それが任命者のどのような利益となっていたのかは、これから公開で、司法レベルへの依拠も含めて検証されていく必要があるでしょう。

筑波大学の学長選考を考える会は、永田学長再選に反対すると同時に、今後も学長選考プロセスに関する情報公開と、問題の責任追及を継続していく所存です。

筑波大学学長選考を考える会 一同

2020年10月18日

追手門学院大、パワハラ研修退職強要事件 壮絶な実態をテレビ放映

追手門学院大学の職員3人が,川原俊明追手門学院理事長,コンサルタント会社「ブレインアカデミー」及び研修を実施した講師・西條浩に対して,損害賠償,退職強要の差し止めを求めた追手門学院職員退職強要事件裁判の第1回口頭弁論が,10月16日大阪地裁で開催された。

この事件については,多くのマスコミが取りあげた。そのうち,テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」(2020年8月21日)は,退職を強要するパワハラ研修の実態について,下記のような壮絶な実際の音声を入れた動画を約16分間放映した。「腐ったミカン」と恫喝する講師が,ブレインアカデミーの西條浩と思われる。

追手門学院大量職員退職強要(腐ったミカン)事件、大阪地裁宛「原告意見陳述」

 職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと暴言を吐き,執拗に退職を迫ったのは違法だとして,学校法人「追手門学院」の職員3人が,2020年8月24日,川原俊明理事長,職員研修を受け負った東京のコンサルタント会社「ブレインアカデミー」及び研修を実施した講師に対して,損害賠償,退職強要等の差し止めを求めて大阪地裁に提訴したのが,この事件。パワハラ研修を請け負った「ブレインアカデミー」の男性講師・西條浩が、20代~50代の事務職員18人に対し、退職を迫ったという。そして研修を受講した18人のうち10人が退職し,2人が休職,1人が休職期間満了による解雇となった(追手門学院退職強要職員研修等事件原告一同「追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明」2020年8月24日より)。
 因みに,このブレインアカデミーと西條浩は,2015年,学校法人梅光学院においても,同様のパワハラ研修と退職強要事件を起こしている。
 この裁判,10月16日に,第1回口頭弁論が開かれた。原告の1人が「意見陳述書」を提出した。以下が,その全文である。
 なお,これまで同大学において発生した不当配転,不当解雇を含めた事件のすべては,こちらに掲載。

原告意見陳述

原 告 意 見 陳 述

令和2年10月15日

大阪地方裁判所第5民事部合議4A係御中

    住    所

    氏    名      印


原告の※※※です。私は,平成20年から学校法人追手門学院の専任事務職員として働いてきました。業務については真面目に取り組んでおり,上司からも安心して見ていられると評価されてきました。


9年目の平成28年7月,理事長や常務理事らによる執行部面談で,突然,学院が求めている職員像に達していないとして平成29年末で退職していただくと言われました。そして研修の参加を命じられ,改善しなければ退職勧奨を受け入れるようにと言われました。「退職」という言葉に「まさか自分が」と戸惑いましたが,退職するわけにはいきませんでしたので,心して研修に臨みました。
研修は18名が集められ,学院関係者が周りに座って監視される中,5日間計40時間にわたって行われました。研修の冒頭,学院から全権を委任されていたという西條講師から,事前の執行部の打ち合わせで再三確認している事項として,18名全員が平成29年末で学院から退いていただきたいと言われました。研修で頑張れば,という当初の思いはすぐに崩れ,もう逃げられないという気持ちになりました。その後も,西條講師は,「退職は,学院のパワーを持った意思 決定であり,その決定は覆せない」などと繰り返しました。
研修では,私は他の受講者の面前で「あなたにはもうチャンスがない」などと 罵倒されました。また他の受講生への普段耳にすることがないような暴言を延々と聞かされました。自分が言われている以上に他の方が目の前で貶められていることも堪え難いものでした。受講者は真っ青な顔をしていた方,なかには泣き出す方もいました。次第に気が遠くなり,ここで起こっていることは現実なのだろうかと思いました。


私はこれまで担当した業務を一生懸命担ってきたという自負があり,またもちろん生活のこともありましたので,研修中や研修後にも「退職しない」と何度も表明し,指摘された点の改善について自分なりの考えを伝えてきました。しかし,一向に受け入れられず,何度も学院執行部に取り囲まれる面談が続き,退職するよう迫られました。川原理事長からは,解雇もあり得るとまで言われました。退職期限の平成29年3月末には「退職勧告書」を読み上げられ渡されました。


私の心身に異変が出始めたのは研修中からでした。研修期間中ほとんど食べられず,眠れませんでした。心配や不安にさせることを思うと,家族にもなかなか話せませんでした。私の様子があまりにおかしいと感じた妻から「心療内科の予約を取ったから」と受診を勧められ,受診したところ,抑うつ状態と診断されました。
診断後も生活の基盤を失うかもしれない不安から,通院しながら我慢して勤務を続けましたが,どんなに仕事をしても「これでよいのか」と不安を常に感じ,ミスをすれば解雇されるのではという恐怖から,行動の一つ一つに時間がかかるようになりました。休日も何もやる気が起きず,ただ横になっていることが多くなりました。妻から「険しい表情をしている」と何度も指摘されました。
その後も退職を迫られる執行部面談が続きました。いつまた呼び出されるか, 解雇と言われるかビクビクするようになりました。平成30年1月,起き上がることができなくなり,以後休職せざるを得なくなりました。
研修から4年以上経った今も回復の兆しが見えません。時折,研修や面談を思い出して,夜中に何度も目が覚め、その後眠れなくなります。なぜ,こんな自分 になってしまったのかと情けなくなり,家族にも申し訳ない気持ちです。いま一 番不安なのは,1年後,また10年後,自分は一体どうなっているだろうか,元の自分に戻れるのだろうか,一生このままなんだろうか,ということです。


追手門学院は,未だ私たち被害者に謝罪していません。それどころか,学院のホームページでは,研修は「人材育成のために行ったもの」で,講師の発言は,「受講生の消極的な態度を指導したもの」と正当化しています。学院の答弁書でも,学院は全く悪くない,問題があったのは私たちの方だと言われています。私たちへの人格攻撃はいまも続いているのです。
追手門学院は教育機関であり,理事長は弁護士です。なぜ一生懸命職員として 働いてきた私たちが,ここまでされなければならないのでしょうか。私が裁判に 踏み切ったのは,たとえ回復して職場に戻ってもこのまま学院が何も変わらないままだと同じことが繰り返されるのではないかと恐怖を覚えたからです。
この裁判によって,退職強要によって失われた心と時間を取り戻し,職場に復帰するきっかけをつかみたいと思っています。

以 上

なお,追手門学院職員退職強要(腐ったミカン)事件に関する各種マスコミ報道は,以下のサイトで見られる。

●2019年度のまとめ
https://drive.google.com/file/d/1tzH7X5gAiUuyO33PPtg3r25C8YMbYLIC/view?usp=sharing

●2020年8月20日 朝日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1rt70eUAjFfBnOAFAQwMYz4-zVyQ6QrKh/view?usp=sharing

●2020年8月21日 羽鳥慎一モーニングショー(テレビ朝日系列)
https://drive.google.com/file/d/1GcJfxfqpRS0uEEgzJYwO7_h86msLrSXU/view?usp=sharing

●2020年8月24日 MBS News(TBS系列)
https://drive.google.com/file/d/1OoQ_WQxOtvmXp335b8cduRKQqDF_sP8a/view?usp=sharing

●2020年8月24日 TVO News(テレビ大阪)
https://drive.google.com/file/d/1y8dHSDrmw6A6peQBOC38eF18yRQWLjOZ/view?usp=sharing

●2020年8月24日 長周新聞
https://drive.google.com/file/d/1w9KotsttzqYeL0M-qq3mp5uLXcWK1tuE/view?usp=sharing

●2020年8月25日 毎日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1WSh79CRQvGkIW4KrMqYg3KEUuVC08rbq/view?usp=sharing

2020年10月17日

国士舘大の男性教授2人の懲戒無効

日刊スポーツ(2020年10月16日)

 国士舘大の男性教授2人が、学生の前で学長を中傷するような発言をしたことなどを理由に懲戒処分を受けたのは不当として、地位確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁は15日、いずれの処分も無効とし、未払い賃金などの支払いを大学側に命じた。

 判決によると、文学部の男性教授は2016年12月、学生が卒業論文を発表する研修で、直前に急死した別の教授の名前を挙げて「学長に殺されたと思っています」と発言。大学は17年4月、この発言などを理由に教授を懲戒解雇とした。

 伊藤由紀子裁判長は「学生に不信感、不安感を与える発言だったが、大学の一般的な信用を毀損(きそん)する恐れは小さい」とし、「解雇は社会的相当性を欠く」と結論付けた。

 もう1人の原告は、指導学生に不適切な発言をしたなどとして、18年1月に懲戒降格処分となった。伊藤裁判長は「学生の精神的苦痛は大きいが、指導全般に問題があったとは認められず、教授の地位を剥奪するのは重きに失する」とした。

 学校法人国士舘は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。(共同)


2020年10月14日

サイト紹介「ながみねWeb研究室」、早稲田大学学術研究倫理委員会は,剽窃に係わる調査報告書を公開すべきである。

■「ながみねWeb研究室」
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/

学術研究倫理問題 : 早稲田大学学術研究倫理委員会の調査報告書

2020‐10‐09

 早稲田大学学術研究倫理委員会の調査報告書(2020‐02‐25)を、10月1日に、「原朗氏を支援する会」ウェブサイトに掲載したが、10月9日、早稲田大学学術研究倫理委員会事務局から「著作権」等を理由に削除を求められ、ひとまずは削除することになろう。

 「原朗氏を支援する会」事務局は、2020年2月25日の盗作判定から7か月以上たっても、不正行為に基づくその後の対応(処分)に関しての問い合わせに対し、早稲田からは何の反応もないので、調査報告書の公開(9月15に、回答期限を月30日までと切っておいたので)に踏み切った。それは公益を考えて、やむにやまれず執った行為であった。
 問い合わせは、6月初旬、7月末におこない、何の回答もない場合、公開に踏み切らざるを得なくなるということは、8月初めに伝えた。そして、最後に9月15日,期限を切っての問い合わせを行った。

 しかし、早稲田サイドからは、こちらの問い合わせに対し、今日現在に至るまで、まったく何の回答もない。「支援する会」ウェブサイト責任者宛てにとどいたのは、学術研究倫理調査委員会事務局からで、しかも、「著作権」を理由とする削除要求だけである。

 これは、大学として誠実なやり方であろうか? 
 自治自立の大学として制定し、内外に公開している大学規程(不正行為に関する規程公開している大学規程)に合致することか?
 
 早稲田大学規程によれば、不正行為案件を適切に公表することを規定している。たしかに、公表期限を区切ってはいないが、審理進行状況・公開見通し等を伝えるくらいは、通報者に対する責務ではないのだろうか?
 不正行為を適切に審議処理して、再発を防ぐためには、迅速な公開こそが当然ではないのか? 不正行為の再発防止という見地からは。加害者・被害者をできるだけ出さないように迅速に対応すべきではないのか?

 今問題になっている学術会議の委員任命問題では、政府の問答無用の任命拒否について、全国的に各界から批判・抗議の声明等があがっている。
 しかし、その場合にも、任命拒否できる正当な理由として、ありうるのは、候補者の学術研究上盗作があった証拠・判定が挙げられており、その場合ならば、任命拒否はありうるだろうと例示されるくらい、盗作案件は、研究者のもっとも基本的要件にかかわるものである。
 
 それだけに、学術研究倫理委員会が下した判断の意味は重い。
 その判断を大学として、今後の不正防止・学術研究の健全な発展のためにどう生かしていくのか、どのような理由付けで不正行為の証拠と判断を社会に公開するのか、その周知徹底こそは、大学の重大な社会的学術倫理的責任であろう。

 学術研究倫理委員会の調査報告書(2020年2月25日)を通報者だけに知らせて事足れり、とはならないはずである。
 学術研究倫理は、大学の生命ともいうべきものである。学生・院生・研究者の全体に知らせるべきものである。
 事実、小保方問題ではごく短期間に総長が処分を発表したのではないか?
 公開している大学規程にてらしても、それが必然ではないか。それが大学規程というものではないのか?

その点に関する当方の問い合わせには、7か月以上、何の回答もないということは、社会通念として、許されるのであろうか?
いつまで待てというのか? 

早稲田大学学術研究倫理委員会は、著作権を理由に、調査報告書の公開を削除させる権利を有するのか?
 真実・真理の探究を、著作権を理由にして重要文書を非公開にし、抑圧してもいいのか?
 それが、真実・真理探究のための学問の自由・大学の自治を基本理念とする大学の取るべき態度か?
 事実・データを隠蔽すれば、事実・データの捏造と同じく、真実・真理の解明の阻害になるのではないか? 
 これは大学の存立・核心的使命に係ることである。

サイト紹介、「一般社団法人・大学教員の権利を守る会」

一般社団法人・大学教員の権利を守る会

「一般社団法人・大学教員の権利を守る会」

当法人は、学問の自由を擁護し、その担い手である大学教員の権利を守ることを目的とし、その目的達成のために以下の事業を行います。

①大学教員を対象とした相談実施機関の設置運営 

②学問の自由に関する調査

③前各号に附帯する一切の業務

相談例:学内でセクハラを受けているので、解決方法のアドバイスを受けたい。今、理事らが行っている行為が法的にパワハラかどうか教えてほしい。

    学長から身に覚えがない事項で懲戒を受けたので対処方法を教えてほしい。大学事情に詳しい弁護士を教えてほしい。etc

①の相談に関しては、大学事情に詳しい弁護士、司法書士、大学教員が対応します。弁護士の相談もすべて無料です。ただし、メールや電話で対応できないケース、数回の対応で解決できないケースなどは、お近くの法律事務所にご相談ください。

②に関連して、学術調査および地域文化発展事業などは立川日本語・日本語教育研究所で受託しています。

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2020年10月10日

小林英夫の剽窃に関する早稲田大学学術研究倫理委員会「調査報告書」の公表にあたって

「原朗氏を支援する会」

早稲田大学学術研究倫理委員会「調査報告書」の公表にあたって(2020年10月1日更新、10月9日再更新)

 小林英夫氏が原朗氏を訴えていた裁判の経過の中で、小林氏が原氏の論文だけでなく、他にも多くの剽窃を行っていた事実が明らかになっていました。裁判所はそれについて全く関心を示しませんでしたが、それに気づいた人たちはその調査を継続していました。

 一方、小林氏が勤務していた早稲田大学は、小保方事件の後、学術倫理に厳しい姿勢を持ち、同大学関係者に関わる学術不正に気付いた者は誰でも、同大学本部に通報することを歓迎され、通報後4か月以内には結論を通知されるという規程を設けていました。

 原朗氏を支援していたA氏は、この規程にしたがって小林氏の一論文について同大学に通報したところ、同大学学術研究倫理委員会からはA氏に対して、通報を正式に受理したこと、判定のための調査委員を決定したこと、倫理委員会として小林氏に「不正あり」の認定をしたこと、小林氏からは「不服申し立て」が出されたが却下されたことなど、順を追って経過報告がなされるとともに、倫理委員会の「調査報告書」(2020年2月25日付)もお送りいただきました。

 同大学のこのような対応は、学術研究上の不正事案に対しては学術界が責任をもって対処している点でも、規則通りの厳格な手続きを経て正当な結論に至っている点でも、学術機関として模範的な対応であったと評価できます。

 以上のような判断に立って私たちは、この文書の内容を学術研究倫理の前進を求める多くの方々に知っていただきたく、このホームページに掲載する形で、資料として情報提供させていただくことといたしました。

 文書のPDFは、こちらよりご覧ください。(早稲田大学学術研究倫理委員会事務局からの申し出により、2020年10月9日に削除しました。)

2020年10月1日  

原朗氏を支援する会・事務局

原朗氏を支援する会、声明「最高裁判決を受けて-批判と決意-」

原朗氏を支援する会
 ∟最高裁判決を受けて-批判と決意-

最高裁判決を受けて──批判と決意──

 6月15日最高裁判所は、原朗氏・小林英夫氏名誉毀損訴訟について、原朗氏側敗訴の決定を下しました。大変残念な結末になりましたが、これまでご支援くださったみなさまに、結果報告と現時点での所信表明を行うことにいたしました。

 本裁判は2013年に小林英夫氏によって、「名誉毀損」の名のもとに地裁への提訴がなされ、5年余の年月を経て、2019年1月21日に、小林英夫氏側の勝訴判決が言いわたされました。そして原朗氏の控訴によって開かれた高等裁判所の判決(2019年9月18日)も、原判決の結論を維持しました。そこで、原朗氏は、直ちに、最高裁判所への上告を決意し、2019年11月26日には、「上告理由書」「上告受理申立理由書」ほか関連書類を提出し、2020年4月13日には、「上告受理申立理由補充書」を最高裁判所に提出しました。以下、上告の経緯、内容を簡潔にふりかえっておきます。

 「上告提起」の理由として、高裁の判決が1剽窃の判断についての学界における学問的手法に反し、裁判官が自己流に造りあげた判断基準を使うことにより、小林英夫著書が原朗論文等を剽窃している事実を否定している、2「歴史的事実」などの用語を無理解のまま使用して原朗論文の学問的成果を否定している、3表記・表現方法の記載についてもその学問的意義を否定し、4先行研究の成果としての図表や地図について学界の慣行となっている記述方法を無視することによって、剽窃の事実を否定している、と批判したのです。そして、高裁判決は原朗氏が学問的立場から判断した発言や記述について、名誉毀損の成立を認めることによって、原朗氏の学問の自由(憲法23条)及び表現の自由(憲法21 条)を侵害するものになっているので、取り消されるべきである、と主張しました。

 また、「上告受理申し立て」の理由として、高裁判決には次のような誤りと法令違反があると主張しました。1高裁判決は、学界における剽窃の判断基準と著しく異なる、裁判官の恣意的な判断基準に基づいて剽窃の有無について判断し、当該学問分野である歴史学界の共通認識に反する認識をおしつけ、経験則違反をくりかえしている。2高裁判決の剽窃に関する判断基準は,現在確立している判例・実務の判断基準とも異なり、推定と反証を用いるべき判断方法を採用せず、絶対的論証を上告人に要求している。3高裁判決を維持すれば、学界において剽窃と判断されたものが裁判において剽窃を否定されるという、学問上一般社会上極めて不都合な結果を生じることになる。このように、高裁判決は、既存の判例・法令に反し、学界における不正剽窃に対する厳しいルールを覆し、学界的に深刻な混乱を引き起こすので、破棄されなければならない。以上が、主張点の概要です。

 さらに、原朗氏は、上告審の過程で明らかになった新事実をもって、「上告受理申立補充書」を提出しました。その一つは、小林英夫氏が係争中の著書の基礎の一つだとする「元山ゼネスト」論文(1966 年公表 2011 年再録)が、北朝鮮の歴史学者・尹亨彬氏の論文(1964年刊)を大量に剽窃(字数 48%)していることが早稲田大学学術研究倫理委員会によって本年 2 月 25 日に盗作と認定された事実です。いま一つは、小林英夫氏が早稲田大学在職中(2013 年)に発表した論文が、若手研究者の論文を剽窃した事実が明らかになったことでした。

 ところが、2020年6月15日、最高裁が本件に下した判決は、以下の通りでした。「上告を棄却する。」その理由は、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法 312 条1項又は2項所定の場合に限られる所、本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない」というものです。また、上告内容が、最高裁の判例と相反する判断がある事件、その他の法令解釈に関する重要な事項を含む事件とは認められないため、上告申立てを受理できないというのです。

 最高裁は「上告提起」と「上告受理申し立て」のいずれについても、審査の対象でないとして、上告人である原朗氏の訴えを退けました。日本の三審制ではこれ以上訴える術がなく、これで高裁判決は確定することになりました。しかし、原朗氏側が指摘した判決における多くの深刻な問題点は、最高裁が退けたところで、何一つ解決したわけではありません。研究倫理の喪失が引き起こしたこの事件は、業績主義が浸透を見せている今日の学界に、深刻な問題を引き起こすことが憂慮されます。すなわち、学術不正を行い学界で自律的に処分された研究者が、「名誉毀損」の名目で裁判に訴えた場合に、学界基準と異なる判定を手にする可能性が生まれたのです。このようなことは、日本の学術研究の健全な発展に、大きな歪みをもたらすことになります。

 地裁と高裁の担当裁判官は、学術研究の蓄積とそれに関する評価の基準を無視し、専門研究者の知見や証言を謙虚にうけとめることなく、自らが自己流に設定した非学問的恣意的・思いつき的な基準によって学術研究の内容に対し甚だしい誤判を下し、最高裁の担当裁判官は上告審としてそれを放置し、「学問の自由」への侵害に途を開く判決を容認したとみなすことができます。彼らの理解力の低さと見識の欠如は、司法に対する国民の負託を甚だしく裏切るものであり、私達は、これらの裁判官の歴史的責任を追及するものです。また、1966 年から剽窃行為を繰り返してきた小林英夫氏が、被害を受けた当事者から事実を指摘されると、学界に訴えるのでなく、司法界に訴えたことは、日本の学術研究体制に計り知れない損傷を与えたものということができます。研究の自由と学問の独立を自ら破壊したその行為も、歴史的責任を負い続けることになります。私達は、これら一連の判決が、学術研究と社会の要請に反するものであることを重視し、今後生じうる大小の研究不正事件の隠蔽や黙殺、被害者の沈黙という事態を生み出さないために、多面的で系統的な努力を学界内外で強めていくことを決意するものです。

 7年間に及ぶこの裁判の成り行きを粘り強く注視し、裁判傍聴・署名・資金カンパなどをはじめ、有形無形の支援をしてくださった多くの研究者、市民の皆様に、心から感謝申し上げます。

2020年6月27日
原朗氏を支援する会事務局

2020年10月04日

菅義偉首相による日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関する緊急声明

菅義偉首相による日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関する緊急声明

2020年10月3日
日本私大教連中央執行委員会

 10月1日、日本学術会議の総会において、山際寿一前会長は、学術会議が推薦した新会員のうち6名が菅義偉首相により任命を拒否されたことを明らかにした。
 日本学術会議は、わが国の科学者を内外に代表する、政府から独立した機関であり、同会議の会員は、任期6年で、その半数が3年ごとに改選されるが、改選にあたっては同会議の推薦に基づき首相が任命することとなっている。会員に推薦された者をそのまま任命することは、現在の任命方式に変更される際の国会審議における政府答弁でも明言されていた。これまで半数改選に際して、被推薦者が任命されなかった例は過去になく、このことにより同会議の独立性が一定担保されてきたのである。
 政府は、昨年、首相の任命拒否が可能であるとの解釈変更を行っていた。これは、今回の任命時期にあわせて行ったもので、意図的であったことは明らかである。これは解釈権の枠を超えた、立法権の簒奪ですらある。
 今回の新会員の任命にあたって、任命されなかった被推薦者には、国会の参考人として共謀罪法案や安保法制に対して批判を行った者が含まれている。政府の政策を批判したことを理由に、任命されなかったとすれば、明らかに政治的な判断によるものと言わざるを得ない。
 政治的な判断によって会員が任命されるようになれば、学術会議は政府の御用機関となり、日本の学術が政治に従属させられることになりかねない。戦前、日本の学術が戦争に動員された反省を踏まえ、政府からの独立を保障しつつ、設けられたのが現在の日本学術会議である。
 学術は、人類共通の財産として営まれるものであり、決して権力者のものではない。
 今回の菅義偉首相による任命拒否は、日本学術会議の歴史に残る汚点となるばかりか、学問の自由を定めている日本国憲法の明確な蹂躙である。
 日本私大教連中央執行委員会は、このような暴挙を行った菅義偉首相に抗議するとともに、日本学術会議法の定めどおりに推薦された6名の会員の任命拒否を直ちに撤回することを強く要求する。あわせて日本学術会議には、引き続き6名の任命を行うよう政府に働きかけることを求める。

以上

専修大学、30年勤務の非常勤講師の無期雇用を拒否…大学では異例、法律の抜け穴を悪用

Business Journal
2020/10/3

専修大学、30年勤務の非常勤講師の無期雇用を拒否…大学では異例、法律の抜け穴を悪用

文=田中圭太郎/ジャーナリスト

「法律が変わって、無期雇用になれると聞いていたのに、専修大学に拒否されて驚きました。勤務している他の大学ではすべて無期雇用が認められているのに、おかしいですよね」

 こう憤るのは専修大学で非常勤講師を務めている福岡悦子さんだ。2007年から英語講師をしている福岡さんは去年12月、大学に無期雇用への転換を申し込んだが、翌月、「拒否」の回答が大学からあった。

 同じく専修大学で30年間ドイツ語の授業を担当している小野森都子さんも、やはり無期雇用への転換を大学に拒否された。

「専修大学で30年間非常勤講師を続けてきました。長期間劣悪な環境で過ごしてきたのに、非正規で働く人の待遇の改善を目的にした法律をねじ曲げようとするのは許せません」

 2人とも複数の私立大学や公立大学で非常勤講師として勤務していて、すべての大学で無期雇用が認められた。専修大学だけが頑なに拒否しているという。

 非正規の有期契約で働く人が、無期雇用への転換を申し込めるようになったのは、2013年の労働契約法の改正からだ。2013年の4月以降に5年以上勤務した場合には、本人からの申込によって有期労働契約から無期労働契約に転換できることを定めた。法改正は有期契約で働く人の地位の安定と、労働条件の向上が目的だった。

 一方、10年経たなければ無期雇用に転換できないという例外もある。大学や研究開発法人の研究者や技術者、教員などについては、無期労働契約に転換する期間を特例として5年から10年に延長する法改正が2014年に施行された。法律名が成立時とは変わり、現在は「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(以下、科技イノベ活性化法)」という。

 科技イノベ活性化法は、一般の非常勤講師は対象にならないと考えられてきた。しかし専修大学は、非常勤講師は科技イノベ活性化法の対象になると主張し、非常勤講師など有期雇用で働く人ほぼ全員について、5年での無期転換を認めていないという。

 福岡さんと小野さんは、無期契約の権利を有する地位にあることの確認と慰謝料の支払いを求めて、今年4月に専修大学を提訴。新型コロナウイルスの影響で裁判日程がなかなか決まらなかったが、9月17日にようやく第一回口頭弁論が開かれた。

科技イノベ活性化法で5年無期転換拒否は専修大学だけ

 裁判に先立って9月15日に、原告である福岡さんと小野さん、それに弁護団が厚生労働省で記者会見した。

 そもそも科技イノベ活性化法による10年での無期雇用転換は、研究開発業務などのプロジェクトに従事する研究者が、5年未満で雇い止めをされる事態を防ごうと、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授らの提言によって法改正された経緯がある。

 弁護団の田渕大輔弁護士は、専修大学は科技イノベ活性化法と関係ない非常勤講師に、5年での無期転換を認めない専修大学のやり方は「脱法的な運用だ」と指摘。「語学を教える非常勤教員に適用するのは悪質だ」と主張した。

 会見に同席した首都圏大学非常勤講師組合(以下、非常勤講師組合)によると、「科技イノベ活性化法を理由に非常勤講師の無期転換を拒否した大学は、専修大学以外には聞かない」という。労働契約法の改正から5年が経過する2018年3月末までには、非常勤講師を5年未満で雇い止めしようとする動きが東京大学や早稲田大学など多くの大学で起きた。非常勤講師組合でも、各大学と団体交渉して、雇い止めをしないように説得した。

 その結果、首都圏ではほとんどの大学が法の趣旨を理解して、非常勤講師の無期転換に応じた。非常勤講師組合によると、現在でも慶応義塾大学や中央大学が「10年経たないと無期転換できない」と主張。早稲田、法政、立教など、労働契約法改正後に採用した非常勤講師に、10年での無期転換を適用しているケースもある。

 ただ、10年での無期転換を主張している大学は「大学の教員等の任期に関する法律(以下、任期法)」を根拠にしている。任期法はあくまで2013年度に無期転換権が発生しなかった人に特例として10年が適用されるもの。慶応義塾などの主張には問題点もあるが、10年で無期転換に応じる考えを示しているという。ただし、日本大学は2016年度以降に採用した人を、法律に関係なく5年で雇い止めしている。

 専修大学は、独自の法解釈で5年での無期転換を拒んでいることになる。田渕弁護士は「不合理な理由で無期転換を拒むこと自体が違法だと考えています。裁判所の見解を問いたい」と提訴の意義を説明した。

無期転換拒否は法の目的に沿っているのか

 9月17日の第1回口頭弁論では、専修大学側から答弁書が提出された。原告の主張に対して争う姿勢を見せている。主要な反論は、次のようなものだ。

 答弁書によると、原告の福岡さんは英語教育学を研究し、小野さんは独文学の研究をしていたので、「科学技術に関する研究者」に該当する、と指摘。さらに、労働契約法や科技イノベ活性化法は業務内容や労働契約の内容を限定していないとして、2人には科技イノベ活性化法が適用される、と主張しているのだ。

 科技イノベ活性化法には業務内容が書かれていないので、研究開発の技術者に限定するものではないということだろう。法律の抜け穴を指摘しているともいえる。

 5年での無期転換を認めていないことについて専修大学に質問したが、大学側は「係争中のため回答は控えさせていただきます」と述べるのみだった。

 一方、原告側は、この裁判で非常勤講師の立場の弱さについても問題提起をしている。田渕弁護士はその趣旨を次のように説明する。

「非正規労働者は使い捨てされ、企業にとって都合のいい雇用の調整弁になっています。雇用は不安定で、雇用主に逆らえば次の契約が更新されないかもしれないと考えると、主張したいことも主張できません。法律が悪用されないように、法の適用を合理的に制限すべきではないでしょうか」

 原告の小野さんは、裁判に踏み切った心情を次のように話す。

「自分のためだけではなく、多くの非常勤講師のみなさんのためにも、不安定な雇用を強いられる状況を改めたいと考えて思い切って提訴しました。

 雇用の安定があってこそ、優れた研究や教育ができるはずです。若い研究者や非常勤講師のためにも、安心して働ける環境が実現できるように訴えていきたい」

 両者の主張は法律の解釈で食い違っている。今後裁判で争われるが、現場で問題が起きていることを考えると、労働契約法と科技イノベ活性化法の趣旨について、監督官庁や国会などでも再度論議されるべきではないだろうか。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

2020年10月01日

「パワハラ退職強要」コンサル、ブレインアカデミーと西條浩氏

フリージャーナリスト・田中圭太郎氏の記事(ZAITEN2020年11月号に掲載)。
追手門学院大学の事務職員18名に,「研修」という名の「退職強要」。それを請け負うコンサルタント会社・ブレイン社(ブレインアカデミー)と専門講師。追手門学院は,この研修に最大3000万円を用意したという。「退職強要」の研修を受けた受講者は18人,このうち7人が退職し,うち1人が再就職のあっせんを受けた。田中圭太郎氏が入手した請求書には約700万円の成功報酬の支払いが確認されたという。

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