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2021年10月18日

下関市立大、理事解任無効確認訴訟 ご支援のお願い

飯塚靖先生の裁判闘争へのご支援のお願い

飯塚靖先生の裁判闘争へのご支援のお願い

2021年9月15日

飯塚靖先生の裁判を支援する会
世話人代表 木村健二(下関市立大学名誉教授)
同副代表 相原信彦(下関市立大学名誉教授)

皆さま

 2021年7月29日、下関市立大学経済学部教授の飯塚靖先生が、昨年10月の同大学理事長による理事解任は不当であるとして、大学を相手とした「理事解任無効確認等」を求めた訴訟を山口地裁下関支部に起こしました。

 飯塚先生は2019年4月より学部長として理事を兼務していましたが、同年6月には前田晋太郎下関市長の意向を受けて、教授会での意見聴取や教育研究審議会での議決を経ることなく、特別支援教育特別専攻科等の設置と担当教員人事が理事長・学長により強行されました。飯塚先生は法令・定款・各種規程を無視したそうした大学運営に対して強く抗議し、大学運営の正常化を求めてきました。しかし、2020年4月には下関市により大学定款が変更され、教育研究審議会から「教育研究の重要事項の審議権」が剥奪され、さらには大学教員の採用・昇任・懲戒などの人事権が新設の「理事会」及び学長に集中されました。飯塚先生は理事・学部長としてそうした事態を憂慮し、学内諸会議でその問題点を常に指摘してきました。2020年10月には「大分大学のガバナンスを考える市民の会」シンポジウムに出席して、大学の「自治破壊」と「権力的支配」の現状を報告しました。しかし、その直後に理事長より、本報告及び資料配布が「役員たるに適しない」として理事解任を通告されました。

 飯塚先生のシンポジウムでの報告は、①下関市の介入で正規の手続きを経ずに新教育課程が設置されたこと、②定款変更で教育研究審議会から「教育研究の重要事項の審議権」が剥奪されたこと、③新たな教育課程の教授に就任した人物が副学長になり権限が集中していること、④教員人事が学長単独で可能となり「学校教育法」などの法令違反の疑いがあること、などの事実を指摘したものであります。本報告は理事の立場ではなく、下関市立大学教授としての個人の立場で行ったものであり、個人としての表現の自由の保障を受けるものであります。あるいは仮に、本報告が理事の立場で行われたとしても、役員が法人の法令違反を認知してそれを指摘し是正を求めることは、理事としての忠実義務に基づいた正当な行為であります。まして、本件は「憲法23条」により制度的に保障された「大学の自治」に関する重大問題であり、教員を代表する理事として当然の責務であります。

 飯塚先生は、本解任は不当であり受け入れることはできず、さらに解任に至る過程での諸会議において理事長などより様々な人格権侵害を受けたとして提訴に踏み切りました。飯塚先生の提訴に込めた思いは、下記に添付しました7月30日の記者発表の文書をお読み下さい。また、提訴の具体的内容については、「訴訟の概略」(別添ファイル)をご一読下さい。なお、下関市立大学の「自治破壊」と「私物化」の経緯と現状については、駒込武編『「私物化」される国公立大学』(岩波ブックレット)が刊行され、詳しいレポートが掲載されていますので、ご参照下さい。

 本裁判は、飯塚先生個人の権利侵害の不当性を争うだけではなく、下関市立大学のガバナンスの在り方をめぐって、「憲法23条」及びそれが制度的に保障する「大学の自治」とは何かを争う重要な裁判でもあります。その判決の帰趨によっては、同大学のような「強権的」な運営が司法によっても容認されたとして、全国に広まる可能性もあります。あるいは、全国の国公立大学で進む「トップダウン型の大学改革」に対して、司法が一石を投じる可能性もあります。全国の市民及び研究者、大学人の皆さまにおかれましては、本裁判の重要性をぜひご理解いただき、支援の輪をどうぞ広げて下さい。また、裁判費用について、皆さまからのご寄付をいただければ、大きな力となります。

 以上、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

ご寄付は次の銀行口座にお振込み下さい。
山口銀行山の田支店(店番105)普通預金 口座番号 5108918 口座名 「飯塚靖先生の裁判を支援する会 会計 関野秀明」
※なお、ご寄付者氏名、金額は支援する会のみで共有し、外部には秘匿致します。


提訴に込めた私の思い

2021年7月30日 記者会見 飯塚 靖

①2019年4月から2020年10月の理事解任に至るまで、教育研究審議会、経営審議会、理事会などの会議の中で、理事長、学長(副理事長)、理事2名(副学長)から、人格権の侵害ともいえる数々の不当行為を受け、精神的に大きな苦痛を味わってきました。本学役員によるこうした不当行為は、私の人生の中でこれまで味わったことのない屈辱的なものであり、私の名誉を著しく棄損し、かつ精神的不調をもたらしました。こうした不当行為は断じて許すことはできず、司法の判断を仰ぎ、適切な謝罪と賠償を求めるために訴訟に踏み切ったものであります。そして裁判の中で、理事長などによる不当行為を明らかにし、裁判に勝利することで、精神的安定を取り戻したいと希求しております。

②下関市立大学は、市からの運営費交付金が少なく、設備が充分とは言えず、教員数 も少ないなどの問題はありました。しかし、そうしたハンディを乗り越え、民主的な 運営により、教職員が力を合わせて、より良い大学となるように頑張ってきました。 私も、優秀な同僚教員に恵まれ、教育と研究さらには学内業務に尽力してきました。 そして、こうした大学で働けることにやりがいと誇りを感じてきました。しかし、 2019年6月の唐突な専攻科設置と採用人事の強行以来、大学は大きく様変わりをしてし まいました。定款や諸規程の改悪により、教職員による民主的な運営体制は解体され、さらには教育課程編成や採用・昇任・懲戒などの教員人事からまで教員が排除されて しまいました。そして、教員の採用や昇任などの人事が学長単独で可能となり、全国 の国公立大学の中でも異例な形となってしまいました。さらに2021年度に入ると、教授会の毎月の定例開催まで取り止めとなり、教員に対する説明が一切なされないまま新学部開設の構想が進んでいます。こうした本学の現状を嫌い、この2年間で12名もの専任教員が本学を離れ、教育環境が急激に悪化しています。特に教育熱心で学生の人気があった若手の教員が多数転出してしまい、学生の期待を大きく裏切っています。私は、こうした本学の悲惨な状況を見過ごすことはできず、その是正を求めるためにも訴訟に踏み切ったものであります。これが、不本意な形で本学を離れられた先生方の気持ちに少しでも報いるものであると考えます。

③2019年6月の専攻科設置と教員採用の強行は、市長が推薦した特定の人物を正式の資 格審査も行わず、教授会での意見聴取や教育研究審議会での議決も経ずに採用すると いう不正な内容でありました。これは、「学問の自由」を定めた憲法23条、学校教育法、地方独立行政法人法に違反する内容であります。これに対して、定款や諸規程違反だとして本学教員の9割が反対すると、今度はルールそのものを変えれば良いとして、無理やり定款そのものが変えられてしまいました。そして理事会が新設され、教員の採用・昇任・懲戒などの教員人事が理事会のみで審議されることとなり、教授会での意見聴取や教育研究審議会での審議は剥奪されてしまいました。こうした本学の現行の定款や諸規程は、憲法および上記法令に違反する内容であり、裁判の中でこの点の不当も強く訴えて行きたいと考えております。