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 カテゴリー 2022年07月

2022年07月22日

無期雇用転換認める、専修大学非常勤講師が勝訴 東京高裁

しんぶん赤旗(2022年7月21日)

 専修大学のドイツ語非常勤講師が無期雇用契約への転換を求めた裁判で、東京高裁(村上正敏裁判長)は、研究者の無期転換を10年に先延ばしする特例法の適用を否定し、東京地裁に続いて無期転換を認める判決(6日付)を出しました。20日、原告が厚労省で会見しました。

 原告は1989年から非常勤講師を務め、2019年6月、労働契約法に基づいて無期転換を申し込みました。大学側は、科学技術イノベーション活性化法で、無期転換権発生が10年に先延ばしになる「研究者」にあたるとして拒否しました。

 東京地裁判決では、イノベ法が有期プロジェクトに参加する研究者などの特例だと指摘し、原告のようにドイツ語の授業や試験などの場合は該当しないと認定。東京高裁も、原告が「イノベ法の『研究者』にあたると考えるべき根拠は見いだせない」と判断しました。

 会見で原告は、「自分の身を守るだけではなく、多くの人が安心して働き、研究と教育に専念できることが願いです。若い人たちのためにも法律の悪用とたたかいたい」と強調。「来年、イノベ法を悪用した大量雇い止めの危険がある。無期転換できるよう願っている」と述べました。

※実名を「原告」に修正した(HP管理人)

2022年07月14日

日本学術会議幹事会声明「有期雇用研究者・大学教員等のいわゆる「雇止め」問題の解決を目指して」

日本学術会議幹事会声明

「有期雇用研究者・大学教員等のいわゆる「雇止め」問題の解決を目指して」

 令和5年(2023年)3月末をもって、大学及び研究開発法人などで有期労働契約により研究・教育等に従事する研究者・大学教員等(以下研究者等)、数千名に及ぶ多くの人びとの雇用期間が終了し、相当数の方々が契約更新や無期転換を認められずに失職する可能性が指摘されています。この問題の解決のため、政府、大学、研究機関、日本学術会議が協力することが必要だと考えます。
 これは、平成25年(2013年)4月1日の労働契約法改正によって、労働契約が5年を超えた場合に有期労働契約から無期労働契約への転換を求める権利が認められたのに対し、さらに翌年4月1日には「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(その後、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に改正)が制定されて、研究者等について無期労働契約への転換をする期間が5年から10年に延長されたことによって生じた事態です。この改正に際しては、平成24年(2012年)5月31日付で、総合科学技術会議有識者議員からも、大学関係者からのヒアリングなどを踏まえ、いくつかの懸念が表明され、対応の方向性も示されていました(注1)が、来年3月末で10年が経過して、任期満了に達する研究者等が発生することになりました。
 この事態については、大学・研究機関等において個別的に対応が進められており、一律で無期契約への転換を認める事例がみられる一方で、無期転換の回避を目的に、労働契約の更新を認めない(いわゆる「雇止め」)可能性もあることが指摘されています。こうした対応の違いは、当該機関のミッション、財務能力や研究者との労働契約に関する考え方の違いなど様々の要因で生じているものと考えられますが、個々の機関の判断と努力のみに委ねた場合、研究というミッションに違いがないにもかかわらず機関間で取り扱いに極端な差が生じることも懸念され、そのために生じうる知的な損失は多大なものになりかねません。
 この事態の解決を考えるにあたりもっとも重要なことは、これが個々の研究者等の労働や生活に関わる重要な権利問題であるのにとどまらず、その抜本的な再建が急務となっている日本の研究力強化にとってきわめて深刻な事態であるとの認識を、政府、アカデミア、個々の大学・研究機関等が共有し、大局的観点から抜本的な解決策を見出すことにあります。すでに進行中の研究プロジェクトの担い手が失職することによる研究の停滞等の直接的な負の影響に加えて、そもそも研究職が将来展望を抱きにくいものとなり、才能豊かな有為の若い世代の人々が学問研究に魅力を感じず、高度な研究・教育の基盤たるべき人材の確保に多大の困難をもたらしかねないことを深く認識することが求められています。
 すでに文部科学大臣からは、無期労働契約への転換を回避するための「雇止め」が労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとの判断が示されており(注2)、各大学及び研究機関などは、そうした基本的な認識に立ったいっそうの努力を求められています。同時に、本件は、研究者等の安定的雇用の保障と流動性の確保をはかるための適切なバランスの検討、機関間の協力により研究者等の雇用を維持するための制度の確立、そのための財源の確保、他の職種とは異なる研究者に固有の労働形態というものに見合った特例的な労働契約のあり方の検討など、立法も含めて、個別機関の対応では解決しえない次元を含んでいます。
 日本学術会議幹事会は、政府とアカデミアが一体となってこの深刻な事態を解決するための取り組みを早急に行う必要があると考えます。そのために、政府の関係府省庁、国立大学協会をはじめとした大学等関係団体、研究開発法人等の関係団体、個別の大学や研究機関などの間で情報を共有し、緊密な連携のもとで事態の是正をはかるための検討が進められなければなりません。加えて、これからの日本の学術を担う、研究者等(特に若手研究者)の働き方や処遇、キャリア形成のあり方について、広く合意形成を果たすことが求められています。日本学術会議でも関係諸機関・組織とも協力してどのような取り組みが可能か、検討を進める所存です。

(注1)文部科学省ホームページ
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/siryo/attach/1335760.htm
(注2)文部科学省ホームページ
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00255.html

令和4年7月12日 
日本学術会議幹事会
会長     梶田 隆章
副会長    望月 眞弓
副会長    菱田 公一
副会長    高村ゆかり
第一部部長  橋本 伸也
第一部副部長 溝端佐登史
第一部幹事  小林 傳司
第一部幹事  日比谷潤子
第二部部長  武田 洋幸
第二部副部長 丹下  健
第二部幹事  尾崎 紀夫
第二部幹事  神田 玲子
第三部部長  吉村  忍
第三部副部長 米田 雅子
第三部幹事  沖  大幹
第三部幹事  北川 尚美

2022年07月07日

大学オンブズマン、被告・龍谷大学に対する抗議声明

大学オンブズマン・龍谷大学経営学部李洙任リース―イム先生を支援する全国連絡会通信No.3
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抗議声明(支援全国連事務局)

 裁判官の和解調停に基づいて、原告側が和解提案を行ったことに対して、被告大学側が不誠実な対応に 終始し た ことに厳重に抗議する。
 この対応の根底に大学執行部 による「学部自治」の便宜的な使い分けがある。過去に 幾 度か学部教授会の決定を大学 執行部 の意向に沿って覆さなければならなかったことがあ る 。今回の対応は、この「学部自治」が教育の根幹において重大な支障 未ゼミ問題等 を来しているにも関わらず、この責任を「学部自治」の名の下に大学 執行部 が回避したことからきている。
 2020年 9 月 16 日に承認された「経営学部教授会における会議原則」 によれば、この間の経営学部教授会は、中立公正な議事運営ができず、議題外の発言を繰り返し、発言を妨害し、偏った一方的な意見が執拗に行われ、一部の構成員の発言で議事が進行していた事態であったことが認められている。これを放置した直接の責任は被告学部長にある。
 この異常な下で学部運営が行われたことに対し、「学部自治」の名の下に長らく放置してきた大学執行部 に対し厳重に抗議する。


龍谷大学「未ゼミ生問題」、「大学自治」のあり方を問う李洙任裁判

第14回口頭弁論と公開シンポジウム

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第14 回口頭弁論 原告証人尋問
2022年8月22日(月)13時半から16時ごろ
京都地裁第101号法廷

◆第2回公開シンポジウム◆
大学と自治の「再生」に向けた大学人の課題
―相次ぐ権利侵害から何を学び、どう行動するか―

主催 学生が考える「大学教育」実行委員会
協力:大学生の学ぶ権利(学習権)を考える龍谷大学有志の会<教員有志>
龍谷大学細川研究室
◆問い合わせ先:ru.university.education@gmail.com

2022年8月22日(月)16時15分から18時半まで
京都弁護士会館(京都地裁東隣) 地下大ホールにて
【講演1】 学習権と教育権の剥奪―李洙任裁判と共有するもの―
落合正行氏(追手門学院大学元学長・不当解雇事件原告)
【講演2】 司法はどこまで教学問題に踏み込めるか
李裁判弁護団より