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2016年10月18日

岡山大学事件、教授の解雇無効仮処分に対する異議申し立て棄却

Yahoo!ニュース(2016/10/19)

解雇無効の仮処分確定

岡山大学薬学部の教授2名が、医学部教授らの論文に研究不正があるのではないかと疑義を申し立てたところ、ずさんな内部調査を行い、研究不正がなかったとしたうえで、疑義を申し立てた教授が「教授にふさわしくない」として解雇された事件については、すでにYahoo!ニュース個人の記事でも取り上げてきた。

炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される
岡山地裁、「研究不正告発で解雇」無効の仮決定~岡山大学事件続報

6月に、二人の教授の解雇は無効であるとの仮処分に対し、岡山大学側が異議を申し立てていたが、去る10月18日、岡山大学側の異議が棄却され、教授の解雇は無効であるとの仮処分が確定した。

「森山先生を支援する会」より:解雇無効の仮処分決定に対する岡山大学からの異議申し立て裁判において,裁判所は大学側の異議を本日棄却しました。有利な状況ですが,今後本訴で争うことが予想されますので,引き続きご支援をお願いいたします。

出典:小波秀雄氏ツイート

【岡山大の件】

森山教授らに対する解雇無効の仮処分決定に対し、岡山大が異議申し立てをしていましたが、岡山地裁が異議を棄却しました。これで「解雇無効」の仮処分が確定しました。(※先のツイートで「却下」としましたが正しくは「棄却」です)

出典:片瀬久美子氏ツイート

あくまで仮処分の確定であり、裁判はこれからだが、解雇の不当性が示されたと言えるだろう。

医学部の研究不正はなぜ起こる?

しかし、日本の生命科学系における研究不正は、医学部に所属する研究者が行う傾向が強いように感じる(参考:白楽ロックビル氏のまとめ)。最近も、東大医学部の研究者らの論文に対する疑義の訴えがあり、大学が本調査を始めているところだ。

論文不正の告発を受けた東京大学(1) どこまで調査をするのか?
論文不正の告発を受けた東京大学(2) その解析方法の衝撃
東大、また論文不正を告発

白楽ロックビル氏は、医学部教授などに不正行為が多い理由は、「研究者特殊感」にあると指摘している(白楽ロックビル:『科学研究者の事件と倫理』(講談社,2011))。白楽氏は、医学部、医師の研究者のなかに、自分は研究不正をしてもかまわないという特殊感を持つものがいるという。

医学部は、歴史のある国立大学を中心として、他学部に比べ教授の権限が強く、下位の地位の研究者は上位の地位の研究者に従うべき、逆らえないという感覚が強い。また、医師免許を持っていない医学部以外の研究者を下に見る傾向が強い。

それはある意味必要なことだ。人の命を預かる厳しい職業である医師は、おのおのが勝手なことをしてしまえば、治療が成り立たないからだ。その点では軍隊のような組織に似ているのかもしれない。

しかし、それが行き過ぎれば、上位者が自分は特殊な人間で、研究不正を行っても問題ないだろうとの意識を持ってしまうのかもしれない。この「特殊感」が存在するか、さらなる調査が必要だ。

治療ではない研究は、本来自由な発想で行うべきであり、教授だろうが学生だろうが関係ないはずだし、医師免許の有り無しは関係ないはずだ。

解雇された森山教授は、薬学部の教授であり、医学部が特殊だという感覚がなかったため(ある意味当然だ)、疑問があるから問題点を指摘したまでで、まさか解雇に至るとは思ってもいなかっただろう。

岡山大学はどう出るか

これからも裁判は続く。

名門の岡山大学と教授2名という、権限や権力の差が歴然としている裁判であるが、事実に基づく公正な裁判がなされることを心より願う。

岡山大学も、誠実に非を認めるべきであり、それが岡山大学に在籍する多数の健全な教員、そして学生に対する責務であると言える。今後の裁判にも注視していきたい。


2016年06月14日

岡山大学の研究不正と解雇無効決定-不正な科学者は誰だ?-

アゴラ

岡山大学の研究不正と解雇無効決定-不正な科学者は誰だ?-

2016年06月10日 06:00

筒井 冨美

大学に「最高学府~Fランク大」があるように、科学雑誌にもランクがある。大学ランクを示す数値が偏差値ならば、科学雑誌ランクを示すのがインパクトファクター(Impact Factor, 以下IF)である。ざっくりいうと、「その雑誌に掲載された論文が、どのぐらい他の論文で引用されたか」というのを数値化したものであり、一般人ならば「IF>30の雑誌に掲載≒スゴい発見」と理解しておけばよいだろう…「偏差値>70の大学を卒業≒エリート」みたいなものである。ちなみに、STAP騒動で有名になったNature誌はIF=41である。また、この数字は研究者の業績の目安でもある。私自身はIF=1~6の雑誌に5回の掲載経験があり、合計IF=12である。

 現在、日本で最も医師のフリーランス化が進行している診療科は麻酔科だが、教授たちには不評らしい。「自分が上司の靴をせっせと舐めて教授になったら、自分の靴を舐めるはずの部下がドンドン辞めてゆく」のは、面白くないのだろう。2009年、日本麻酔科学会理事長(当時)の森田潔教授は、学会ニュースレターで「モラルの喪失と感じさせる案件」としてフリーランス医師を公然と非難した。それは、「理事長の遠吠え」として業界では話題になった。というのも、森田氏が筆頭著書の英文論文は2本で、合計IF=6…(私を含む)多数のフリーランス医師に研究業績で負けており、下手すると大学院生にすら負けるレベルだったからである。インターネットの発達は、研究者の業績を数分間で丸裸にする。教授やら学会幹部の中には「エラそうにしてるけど、実はめぼしい研究業績がない」=「腕や研究よりも、政治力や年功序列で教授になった人材」がソコソコ存在することがバレるようになった。

 そもそも、「大学医局で10~20年間修業→独立開業」というのは、医者としてはごくありふれたキャリアパスであり、眼科や内科の学会トップがそれを非難することはない。また、日本麻酔科学会は学術団体であり、学問・研究・人材育成などを行う団体である。学会員が非正規雇用に転じると「モラルの喪失」と責めるのは、学術団体のやることではない。部下がどんどん辞めるからといって、辞めた人間を非難するだけで、辞めた理由を分析して問題点を改善しなければ、さらに部下が辞めるだけのことだ。

 2011年、日本麻酔科学会理事長だった森田教授は、岡山大学の学長になった。「論文二本で教授になる方法」とか「インパクトファクター6で学長になった僕」といったハウツー本でも書けば、かなり売れるんじゃないだろうか。2012年、同大学薬学部の教授2名が「論文31本の捏造疑惑」というかなり大規模な研究不正を告発し、調査が行われた。森田学長は「異なる画像を誤って掲載しただけ」という、どこかで聞いたような釈明とともに「不正はなかった」と結論づけた。2014年に、森田学長は「パワハラ行為があった」として告発者2名を停職処分とし、2015年にそのまま解雇した。橋下元大阪市長もビックリの強引な国家公務員解雇劇だったが、関係者に小保方晴子氏のようなビジュアル系人材がいなかったせいか、世間からはあまり注目されなかった。

 事件は法廷闘争となり、2016年6月6日に岡山地裁は「解雇無効と給与保全の仮処分」命令を下した。世間は「都知事の釈明記者会見」で大騒ぎだったせいか、これまたあまり注目されずに終わった。森田学長は大学ホームページで「本学の正当性を主張」しているが、炎上騒ぎも無いようだ。

 ところで、森田氏の論文の一つは2002年の「不整脈原性右室異形成2例に対するフォンタン手術の周術期管理」だが、「フォンタン手術」の麻酔管理とはトップクラスに高難度で、これがこなせる麻酔科専門医は1%未満である。ゆえに、こういうハイリスク症例が得意な高スキル人材は、この分野の教育講演や学会シンポジウムや医学書執筆などを頼まれることが多いはずだ…が、ネット検索しても森田氏が2002年前後にそういう学術活動をした形跡はなく…他人に書かせた論文を横取り(=ギフト・オーサーシップという研究不正行為)した可能性が高い。という訳で、解雇された元教授と関係者は、当時の麻酔台帳などを調べて「森田氏が本当にフォンタン手術などの高難度心臓手術に関与していたか」を確認すると、興味深いデータが得られるのではないだろうか。(一部、再訂正しました)

画像は岡山大学ホームページより

筒井冨美

フリーランス麻酔科医、医学博士

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。2013年から、東洋経済オンライン「ノマドドクターは見た! 」で論壇デビューし、執筆活動も行う。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、STAP騒動や岡山大研究不正を「オバサン系リケジョ」として分析している。

2016年06月11日

岡山大学解雇事件、岡山地裁(仮処分)は解雇権の濫用として無効と決定

今、岡山大学で何が起きているのか?(6/6)

岡山地裁が6月6日、仮処分決定を下した。 本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、あるいは社会通念上相当と認められないから、解雇権の濫用として無効である、との決定である。 また、平成28年1月から本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月末日限り、月額40万円を仮に支払えとの命令が下された。森山、榎本両教授の主張がほぼ認められ、今回解雇が解雇権の濫用で無効であると、裁判所が断定した事に最大の意味がある。森田学長また、評議会のメンバーの先生方はどう責任を取るのか全岡山大学関係者は注目している。

論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令

産経(2016.6.6)

 岡山大の複数の博士論文について「データ改竄(かいざん)の疑いがある」との内部告発を行い、解雇された岡山大薬学部の元学部長と元副学部長が処分の無効を求めた仮処分申請で、岡山地裁(池上尚子裁判長)は6日、「解雇は無効」として、大学側に2人の給与の一部を支払うよう命じる決定をした。

 決定によると、元学部長らは岡山大大学院の博士論文28本でデータの捏造(ねつぞう)や改竄が行われているなどとして、平成26年以降、ジャーナリストに告発するなどした。大学側は岡山大の社会的信用を傷つけたとして昨年12月、2人に解雇を通知した。

 池上裁判長は決定で、内部告発の公益性を認定。処分について「合理的な理由を欠き、(大学側が)解雇権を濫用(らんよう)した」とした。同大の森田潔学長は「今後の不服申し立て手続きと訴訟で本学の正当性を主張していく」とコメントした。

 論文不正をめぐっては、改竄の可能性が高いとされた5本について岡山大が外部の有識者を含む調査を実施し、いずれも故意の不正などはなかったとする結果を明らかにしている。


2016年03月14日

岡山大学における暴挙

一研究者・教育者の意見
 ∟●岡山大学における暴挙

岡山大学における暴挙

 昨年の9月22日、12月7日、今年の1月10日の記事で、研究不正告発をした岡山大学・森山、榎本両教授への処罰が、報復行為の疑いが極めて強いことを述べた。その事件がまた新たな局面を迎えている。

 現在、両氏は仮処分および本裁判で解雇無効を訴えている。………(以下,省略)。 上記HPへ


2016年02月07日

なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇

webronza(2016年01月28日)

なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇
論文不正の告発から解雇処分までの4年間に起きたこと

高橋真理子
2016年01月28日

 岡山大学が薬学部の教授2人を昨年末に解雇した。2人は「論文不正の告発が解雇につながった」と主張、年明けに処分無効と慰謝料を求めて岡山地裁に提訴した。ツイッターなどでは「不正を告発したらクビ?」と驚きと憤りが広がっている。しかし、取材をしてみると、それほど単純な話ではない。始まりは、薬学部教授が博士論文の不正に気づいたことだった。ところが、その後に次々と異例の事態が起きた。ついには、学長や学部長ら35人で構成される教育研究評議会が2人に対して「岡山大学教授に必要な適格性を欠く」という、これまた異例の判断をして解雇を決定した。そこまでの経過を追う。

拡大岡山大学の本部

 解雇されたのは、森山芳則・元薬学部長と榎本秀一・元副学部長。森山氏は岡山大学薬学部を卒業し、帝京大や広島大、大阪大学で助手や助教授を務めたあと、1998年に岡大薬学部教授に就任した。薬学部が69年に設置されてから、初めての岡大卒の教授だった。生体膜の生化学が専門で、現在に至るまで研究室のメンバーとともに数多くの論文を出している。

大学院生の論文不正発覚が発端

 4年前の1月、薬学部の大学院生の博士論文に不正が見つかり、大学院医歯薬学総合研究科に設置された調査委員会が、この論文は博士号審査からはずすと決めた。森山氏によると、この過程で社会人ドクターコースに入ってすでに博士号を得ていた製薬企業社員2人の論文に、他人の修士論文の引き写し部分があることが発覚。これを報告したとき、森田潔学長から「これ以上、騒がないで欲しい」と隠蔽を指示されたと言う。一方、学長側は「不正隠蔽の指示など一切していない」と主張する。

 その真相は判断できないが、この後、事態は思わぬ展開を見せる。2012年から翌年にかけて、森山氏や榎本氏からハラスメント(嫌がらせ)を受けたという申し立てが複数の薬学部教員から出たのである。大学内部の人によると、個人を罵倒するメールを薬学部教員の多数に送るといった行為などがあったらしい。しかし、学部長選挙で森山氏は薬学部長に再選され、榎本氏が副学部長に選出された。その後、ハラスメント防止委員会は計6人(教授1,准教授4、すでに大学を辞めた元教授1)からの申し立てを一括して調査すると決めた。……


2016年01月15日

これは言論封殺だ! 不正告発教授のクビを切った岡山大学の愚挙

現代ビジネス(1月14日(木)7時1分配信)

これは言論封殺だ!不正告発教授のクビを切った岡山大学の愚挙

驚きの解雇理由

 岡山大学は1月12日、「大学教員としての適性を欠く」として、前薬学部長の森山芳則(62)教授と、前薬学部副部長の榎本秀一教授(52)を解雇したと発表した。

 岡山大学教育研究評議会は、「審査説明書」のなかで、私への情報提供を解雇理由のひとつとして挙げている。

 <(森山教授は)榎本教授とともに、フリーライター伊藤博敏氏に対して、大学院生の博士論文の不正を学長に訴えたところ、学長が「この件については騒がないで欲しい」「こんなこと(不正の暴露)をやったら、ウチの大学はたいへんなことになる」と話し、数値の操作や細胞映像の使い回しなど改竄された研究データを基とした論文が28本存在するなどとする情報提供を行った>

 これは、記者として、絶対に看過できないことである。(岡山大学の「不正論文問題」については、2014年2月に公開したこの記事を一読いただきたい。<データ改ざん、不正論文が次々発覚! 製薬業界と大学「癒着の構造」に切り込んだ2人の岡山大教授の闘い http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38358>)

 新聞、テレビ、雑誌、あるいは私のようなフリーの立場にある者も含め、記者は組織内外の情報提供者によって支えられている。

 情報は、精査し、裏付けを取り、公益性があって、世に問う価値があると判断した時に記事化するわけだが、たとえ記事化が難しくとも、情報提供者には丁重に接する。その果てしない繰り返しが記者の仕事である。

 そうしたなか、2013年末から14年初めにかけて、「製薬会社と大学医学部の暗部」「研究者が陥りやすい論文不正」について語ってくれた森山、榎本の両教授は、私にとって、医療と製薬と研究現場で発生している不正をどう認識すればいいかの道筋をつけてくれ、それを暴いて世に問う知識を与えてくれた、羅針盤のような存在だった。

 そもそも両教授が訴えたいことは、岡山大学の論文不正だった。12年1月、薬学部大学院生の論文不正に気付き、それを調査のうえ、森田潔学長に訴えたところ、森田学長が命じたのが、「問題を大きくするな」という“指示”だった。

 それに反発した森山、榎本両教授は、学生の論文から有名教授の研究発表まで200本以上の論文を精査、研究データの改ざんを含め、28本の論文不正が見つかったことを私に情報提供してくれた。

 両教授の思いは、こうした不正の土壌を除去することである。一時的に大学の名誉や信用を毀損したとしても、将来的にはそれが岡山大学の医学部と薬学部の信用を回復、地域医療の中核としての地位を向上させると信じた。

実名告発の代償

 それは時宜にかなう行為だった。

 岡山大学での不正追求の動きは、同時期、東京地検特捜部が薬事法違反で捜査に入り、14年7月、世界的な製薬会社・ノバルティスファーマの元社員を起訴して終結したノバルティス事件と重なっている。

 年間売上高が1000億円を超えるメガヒット商品の降圧剤ディオバンは、京都府立医大、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉、名古屋の5大学の教授らが、「他の降圧剤より、脳卒中や狭心症を防ぐ効果が高い」とするノバルティスの意向を汲んだ論文を発表、見返りに総額で約11億円の奨学寄付金を供与されていたほか、個人的には、医師向け雑誌等のディオバン推奨広告に登場、座談会料などの名目で金銭を受け取っていた。

 ディオバン問題は、11年頃から基礎研究論文の不正が指摘されるようになり、12年には論文不正の指摘が相次ぎ、大学側が調査委員会を立ち上げて精査、画像の捏造、改ざんなどが指摘され、論文が撤回され、最終的には14年1月、厚労省が薬事法違反で刑事告発、前述のように事件化した。

 また、大学医学部は絡まなかったが、14年1月、小保方晴子氏のSTAP細胞が権威ある英学術雑誌「ネイチャー」に掲載され、大ブームを巻き起こしながら、半年で論文不正が発覚。論文は撤回され、日本の再生医療研究の第一人者で小保方氏の後ろ盾だった笹井芳樹氏が自殺するという、不幸な幕引きとなった。

 大学医学部と製薬会社との癒着、研究者たちの功名心など、さまざまな理由によって、論文不正が横行していることが周知徹底されたのが12年から14年にかけてであり、森山教授の「科学者が不正などしない」という思いは、大学院生の博士論文の不正をきっかけに、打ち砕かれ、それを実名告発した。

 私は、その思いに乗り、本コラムや週刊誌、月刊誌などで、岡山大学、ノバルティス事件、小保方問題を取材、記事化。そういう意味で、両教授の“指導”は有難かったし、一連の記事は公益性に適うものだった。

 ところが、ノバルティス事件、小保方問題と岡山大学問題は真逆の結果となった。

「パワハラがあった」と断定

 大学医学部と製薬会社の癒着、研究論文不正の土壌が、一朝一夕に変わるとは思えないが、2つの事件は、そういう現実があることを世に知らしめ、警告を与える効果があった。ところが、岡山大学問題は、地元紙では指摘されたものの、マスコミの目が届かないこともあり、両教授は追い詰められていく。

 まず、論文不正の指摘と歩調を合わせるように、「2人にパワーハラスメントがあった」としてハラスメント防止委員会の調査が始まり、パワハラ行為が認定され、14年9月25日、2人は9ヶ月間の停職処分を受け、森山教授は薬学部長職、榎本教授は副部長職を解任された。

 停職処分は15年5月25日に開けるが、その直前の5月20日、自宅待機処分を発令され、その間に研究教育評議会が開かれ、私への情報提供を含む9項目を審査、15年12月、解雇を決定した。

 なお、両教授が訴えた論文不正については、大学側は調査委員会を設置。15年3月、「不正はない」という結果に至ったとして、その概要を3月27日、大学のホームページに掲載している。

 1月12日午後1時からの発表は、同日午前10時、森山教授が記者会見を開き、榎本教授とともに、処分の無効と1000万円ずつの慰謝料を求めて提訴したことを明らかにするのを受けてのこと。大学側は会見で、論文に不正がなかったことを改めて強調するとともに、「真実と認められない情報を流し、大学の名誉や信用を傷つけた」と、解雇理由を説明した。

 私は、記者会見終了時点の1月12日を回答期限とする森田学長宛の以下の質問書を、1月8日の時点で作成、窓口の広報・情報戦略室に送付した。

 ①私は、森山、榎本両教授の論文不正の告発が意義深いものであると考え記事化した。その記事をもとに解雇するということは、憲法21条が保証する表現の自由を侵すことにならないか。

 ②両教授は、最初から森田学長と対立していたわけではなく、学長が「剽窃論文」を隠蔽したことでこじれた。学長自身の不手際が今回の事態を生んだのではないか。

 ③近年、公益通報者保護法など、内部告発を認める動きが一般化している。両教授の告発は、公益に資すると考えて記事化したが、それを封じるのは、むしろ岡山大学の名誉と信用を傷つけるのではないか。

 それに対して、企画・総務担当の阿部宏史理事が、次のように回答した。

最後まで見届ける。そして、追及する

 <まず、前提として、森山、榎本両氏が、貴殿に対して提供した情報が事実とは認められず、それによって、本学の名誉と信用は、著しく傷ついた。記事となったことではなく、名誉を傷つける内容の情報を提供したことを解雇理由としたのだから、憲法が保障する表現の自由を害したとはいえない。

 また、貴殿は学長が「これ以上、騒がないで欲しい」と、論文不正を隠蔽したことを前提としているが、そのような事実はなく、したがって、②と③は隠蔽指示の事実がないのだから、ご指摘は的を得ていない>

 いずれにせよ、両教授の法定を舞台にした戦いはこれからも続き、そこで私が投げかけた疑問に対する回答がなされるだろうし、隠蔽があったという指摘の正否も問われる。

 そして、論文不正に関する検証も継続する。『毎日新聞』が、今年1月3日付けの紙面で「論文不正 告発に生データ見ず『適正』 岡山大調査委」というタイトルで掲載したように、調査委の「一切の不正はなかった」という結論は、最初にそう決めていたかのような不自然さが漂う。

 それを最後まで見届けるとともに、追及を継続することが、「情報を受け、それを発信した記者」の責務だと思っている。

伊藤 博敏

岡山大学、大学内部の不祥事対応は、なぜ、不可解な結果になってしまうのか?

Yahooニュース(2016年1月13日 20時52分配信)

みわよしこ | フリーランス・ライター(科学・技術・社会保障・高等教育)

大学内部の不祥事対応は、なぜ、不可解な結果になってしまうのか?

 大学でのパワーハラスメント疑いや研究不正疑いと、検討結果に対する大学の不可解な処分が、このところ続けざまに話題になっています。
 「大学なのに」でしょうか? それとも「大学だから」でしょうか?

 疑問を解く鍵は、「学問の自由」と「大学の自治」にあります。

 まず、記憶に新しい2つの出来事を振り返ってみましょう。

2015年11月、岡山大学で

 2015年11月、岡山大学で研究不正の可能性を申し立てた2人の教授が解雇されました。
 岡山大学は2016年1月13日現在、研究不正があったのかなかったのかを判断できる根拠を、世の中に提示していません。

 岡山大学医学部の研究者が関わる論文31報に疑義を訴えた、同大薬学部の教授2名が、パワハラをしたとして停職処分になり、その後「岡山大学教授としてふさわしくない」との理由で解雇された(前回の記事でパワハラをしたとして解雇されたと記載したが、誤りであり訂正する)。パワハラによる解雇なら、懲戒解雇になるはずなのに、普通解雇という不可解な理由で解雇されたという。 (略) 問題なのは、研究不正の疑義を申し立てた、という理由で解雇されたのではないか、つまり報復なのでないかということだ。

根拠に基づき疑義を申し立てること自体は、なんら問題のある行為ではない。疑義を申し立てられたほうが、潔白を証明できればそれでいい。

しかし、その行為をもって「教授にふさわしくない」などと言われ解雇されるならば、論文に対する健全な批判すらはばかられてしまい、科学の発展は阻害されてしまう。

出典:Y!ニュース:炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される(榎木英介)

 2015年11月より取材を開始していた片瀬久美子氏によれば、岡山大学に対して資料の開示請求を行っているものの、必要な資料を開示してもらうまでに大変なご苦労をされているようです。
 しかも、肝心の研究不正の有無に関する事実関係は「何一つ」といってよいほど明らかにされないまま、解雇処分が行われています。

参考(片瀬氏のブログより):
warblerの日記: 岡山大学の法人文書部分開示決定通知書に対する異議申し立ての内容
warblerの日記: 研究不正を内部告発した教授らに大学が解雇処分の判断

 学内で行われている研究不正など不適切な行為について内部および外部への告発を行うことは、禁止されていません。
 逆に、告発者に対して告発したことをもって不利益待遇を行うことは、文科省のガイドラインによって禁じられています。所詮は、強制力のないガイドラインですが。
 告発されても「わーたーしーはーやってないー 潔白だ(古いネタですみません)」なら、榎木英介さんが記事で書かれているとおり、調べてもらって潔白を明らかにすればよいだけの話。
 しかし、告発内容の事実関係をちゃんと調べたのかどうかも明らかでなく、研究不正があったかどうかも明らかでなく、でも告発者の処分は何がなんだか良くわからない理由で行われてしまったという話です。
 職を奪うのは、職員に対する死刑のようなものです。簡単に行われるべきではありません。
 もしかして、「懲戒解雇から罪を一等減じて普通解雇にしてやった」は「死刑ではなく無期懲役にした」なのでしょうか?
 「落し物を警察に届けたら、警察官が着服し、自分が嘘つきということにされた」
よりも不気味な話です。

2015年12月、山梨大学で

 2015年12月、山梨大学は、部下の助教に対して2010年~2014年にわたってパワーハラスメントなど不適切な行為を繰り返していた50代教授に対し、助教が申し立てた事実をほぼ認め、教授に対して処分を行いました。しかし処分の内容は、「減給半日」というものでした。事実上「罰していない」に近い内容です。
 以下、法律家の見解を紹介した報道です。

「一連の行為について、この教授は法的責任に問われる可能性があります。(略:同様の判例に)『違法な公権力の行使である嫌がらせに該当する』とされたものがあります。同裁判例においては、国家賠償法上の責任が肯定され、また場合によっては教授個人の不法行為責任が生ずる余地がある旨を判示しています。 そのため、本件においても、被害者である助教は、国に対して賠償請求できると考えられます。また、教授に対しても、不法行為に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。 (略) 教授の行為は、故意に第三者の心身にストレスを与えてノイローゼなどの体調不良に追い込んだとして、傷害罪(刑法204条)などに該当する可能性もあります」 (略) 「本件のような悪質性が高く、重大な結果が発生していると思われる教授の行為について、平均賃金の半日分の減給という懲戒処分が妥当かについては、疑問が残ります。 (略) 人事院の懲戒処分の指針では、処分量定の決定に当たっては、非違行為の態様および結果を考慮する旨を規定しています。 (略)本件のようなケースにおいては、停職などのより重大な懲戒処分であっても、決して不当ではないと考えられます」 「(注:民間企業であれば)同様の事実関係であれば、当事者が『会社の従業員と、パワハラを行う上司』であったとしても、従業員が上司および会社に対して、損害賠償請求などを行える」

出典:Business Journal 2015.12.26 企業・業界 山梨大教授、妊娠女性を強制労働・流産…医師の安静指示を無視、大学は大甘処分

大学はそもそも「治外法権の地」であることを理解すべき

 いずれのケースでも、大学の外での法・ルール・モラルといったものに照らせば「はぁ?」という成り行きとなっているわけです。
 組織としての大学が、あるいは個々の教員が、法・ルール・モラルに照らして問題のある振る舞いをしたとしても実質的に許されています。
 問題ある振る舞いに対する言挙げは可能ではあります。刑法上の被害として警察に訴えること。あるいは(同時に)損害賠償訴訟を起こすこと。
 その前に「ダメ元」で文科省に申し入れをすることも「やってみる価値がないとはいえない」かもしれません。
 解雇された岡山大の2名の教授・山梨大でパワハラ等の被害を受けた助教は、法的手段に訴えれば勝てる可能性は少なくありません。少なくとも「完敗」はありえないでしょう。
 しかし、判決確定までに、どれだけのコストと時間が必要なのでしょうか。
 その間、研究キャリアは進まないままです。もしも将来、研究を再開できたとしても、多大なブランクというコストを一方的に支払わされる、というわけです。
 完全な「やり得」「やられ損」の世界です。まるで治外法権の地、です。
 なぜ、こうなるのでしょうか? 大学が「治外法権の地」だからです。
 より穏やかな言葉で言い表わせば、「大学の自治」があるゆえです。

「大学の自治」と「学問の自由」の深い関係

 「教授会」を中心とした「大学の自治」は、大学内を「なんでもあり」の世界にするために重要視されてきたわけではありません。
 大学を、世俗の権力・宗教の権力が及ばない領域にしておかなければ、学問の自由を守ることができないからです。
 人文科学・社会科学・自然科学を問わず、科学の歴史は世俗や宗教の権力との闘いでもあります。
 自然科学(手っ取り早く言えば「理工バイオ系」)を「産業振興と国の稼ぎに貢献する学問」と認識している方は多く、それは事実ではあります。かくいう自分も、かつて半導体分野の企業内研究者。世の中に求められそうなものを生み出し、その結果が社会に活かされる恩恵に自分自身もあずかるフィードバックは、それはそれは楽しいものでした。
 しかし自然科学は、人間に世界観の転換や、これまで考えなくてよかったことを考える面倒臭さや、過去になかった脅威や……といったものをもたらしつづける存在でもあります。
 「世界観の転換」一つとっても、たとえば「地球が太陽のまわりを回っている」が明らかになり、世の中の誰もが知っている公知の事実になるまでに、科学者が何人死んだり拷問されたりすることになったでしょうか? 科学は、巨大な権力であった中世カトリック教会とも教会を支持する世俗の権力とも闘い続け、少しずつ、じりじりと、科学と社会を前進させてきたのです。
 このような学問の営みのために、大学が「学問の自由」を守れる場であるために、「大学の自治」が確立され、維持されてきたのです。
 現在も残る「教授会」は、その名残です。

皆さん、「学問の自由」と「大学の自治」がなくなってもいいんですか?

 少子化の進む日本で、ビジネスモデルとしての「大学」が破綻していることは、もはやミエミエすぎです。
 ならば、世の中に求められるものをタイムリーに提供しつづけて独自ビジネスで運営を続けられる大学、イノベーションを起こしつづけて社会を熱狂させる製品を次から次に提供できる大学が増えればよいのでしょうか? そんなことはありません。
 モノになるかならないか、モノになる可能性が高いかどうかと関係なく幅広く研究費の「バラマキ」を行ってきたことこそが、日本の研究を全体として進展させる結果を産んできた可能性は高いのです。このことは、鈴鹿医療科学大学学長・豊田長康氏がブログ「ある医療系大学長のつぼやき」で繰り返し発信し続けているところです。
 そもそも「産業での実用化につながる研究」、言い換えれば「カネになる研究」をすることは、大学の役割なのでしょうか? 儲かる可能性があるなら、産業界が率先して自社や自分たちの業界のプロジェクトでやるでしょう。
 なぜそれが「大学の役割」ということになりつつあるのでしょうか? 
 社会にとって、大学とあまり縁が深くない方々も含めた社会のあらゆる人々にとって、本当に良いことでしょうか?

 すべての人が、産業界にも大学にも使われる税金を納得して支払い、その結果に一定の納得をすることができるようであってほしいと私は思います。
 とりあえず人事の話は、誰にでも分かります。
 この2つの、大学の「なんだかなあ?」人事から、「自分たちの社会の問題」として大学に視線と関心を向け続ける方が増えることを願います。
 今のところ、「学問の自由」「大学の自治」は、主に大学に関する問題です。
 でも大学の問題を通じて、すべての人に関係する問題です。
 まかり間違っても、国立大学が国費で「なんでもあり」の国営伏魔殿を作るために「学問の自由」「大学の自治」があるわけではありません。国費による収入比率が異なる私学でも同じことです。
 大学の役割は何であり、なんのための「学問の自由」であり「大学の自治」なのかを考えて体現しつづける大学や大学人が増え、大学人と一緒に考える市民が増え、市民が一緒に考えることを歓迎する大学人が増えることを、大学の中(現在、社会人大学院生)と外(一市民かつ職業人)から、心より願います。


2016年01月14日

岡山大学解雇事件、サイト

■今、岡山大学で何が起きているのか?
http://seesaawiki.jp/rebirth_okayama/
■研究不正を告発した教授らを岡山大学が解雇処分に
http://togetter.com/li/923714
■炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される
http://bylines.news.yahoo.co.jp/enokieisuke/20160113-00053369/
■warblerの日記(研究不正を内部告発した教授らに大学が解雇処分)
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20151208/1449547733

サイト紹介、岡山大学による報告「研究活動に係る不正行為に関する調査結果について」に関する意見

岡山大学による報告「研究活動に係る不正行為に関する調査結果について」に関する意見
https://sites.google.com/site/investigationofokayamau/

報復人事? 岡山大が不正を告発した教授2人を解雇し、衝撃が広がる

IRORIO(2016年01月13日)

長澤まき

論文の不正を告発した大学教授2人が解雇され、衝撃が広がっている。

「適性を欠く」と前学部長らを解雇

岡山大学は12日、薬学部の前学部長の森山芳則教授と前副学部長の榎本秀一教授の2名を昨年12月28日で解雇したことを発表した。

大学側は解雇した2人について「真実と認められない情報を流し大学の社会的評価を傷つけた」と主張している。

論文の不正を告発

解雇された2人は2012年と2013年、学内の計31本の論文に「流用」や「ねつ造」などの不正行為があったと内部告発した。

これに対して岡山大学は2015年3月、いずれの論文にも不正はなかったという調査結果を発表。

論文に実験結果と異なる画像が掲載されていたことについては「誤って掲載した」として「故意ではないので、不正とは認定しない」とした。

大学側「教授の適正を欠く」と説明

大学側は2人の解雇理由として「調査中にも関わらず論文に不正があったかのように外部に情報を流した」「無断で学内で記者会見を開いた」など9項目を説明。

職務命令に違反しており大学教授の適正を欠くなどと指摘した。

元教授ら「職権乱用」と提訴

解雇された元教授らは解雇には合理的な理由がないとして12日、岡山地裁に提訴。次のように主張している。

解雇権の乱用だ

処分の無効と2千万円の慰謝料などを求めているという。

ネット上には批判や嘆きの声

論文の不正を告発した教授らが解雇されたことを受けて、ネット上には衝撃が広がっている。

考えられねぇ…
不正告発した方が解雇されるなんて…
明らかに報復人事?
要するに権力者に楯突くと粛清されるという話
リアル鬼が島
学外メンバーでもう一度調べるというわけにいかないのか?
まともな内部告発保護法を作るべき
批判や嘆きの声が多数投稿されていた。

解雇された元教授らは2014年にも、ハラスメント行為をしたという理由で岡山大学から懲戒処分を受け、学部長・副学部長から解任されている。


2016年01月13日

岡山大学解雇事件、解雇撤回を求める陳述書

今、岡山大学で何が起きているのか?
 ∟●津島他学部の状況(2016年01月11日)

陳述書

平成27年12月8日
国立大学法人岡山大学教育研究評議会 御中
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授
森山芳則

国立大学法人岡山大学教育研究評議会(以下「評議会」という。)の平成27年10月26日付け審査説明書記載の判断に対し、事実関係の記載を中心に、次のとおり陳述する。

第1 結論

評議会は、森山に対する解雇との判断を再考の上撤回すべきである。

第2 主張の概要

1.解雇理由は事実誤認であり、解雇理由とはなりえないこと

審査説明書記載の事実関係(1)乃至(9)は、事実誤認であり、解雇理由とはなりえない。特に、評議会は、解雇理由(1)、(4)、(5)及び(7)については告訴状を岡山地方検察庁に提出していないのであるから、明らかに事実誤認であり、国立大学法人の評議会の判断としては、到底許されるものではない。詳細は、第3において述べる。

2.審査結果は、解雇権の濫用であり無効であること

(1)結論

森山に対する解雇は、1記載のとおり解雇理由に誤りがあることに加え、以下の事情により、客観的な合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、解雇権の濫用に該当し、無効であることは明らかである。

(2)違法な自宅待機命令を前提とする普通解雇であること

国立大学法人岡山大学(以下「大学」という)は、平成27年5月20日付け自宅待機通知書において「国立大学法人岡山大学職員就業規則(平成16年岡大規則第10号)第68条の2の規定に基づき、平成27年5月26日から当該懲戒処分が決定するまでの間、自宅待機を命ずる。」と記載し、森山に対して、「当該懲戒処分が決定するまでの間」の期間に限定して、懲戒処分を前提とした自宅待機命令を行った。同就業規則68条2においては、「学長は、職員が懲戒処分に該当する行為を行った場合は、当該懲戒処分が決定するまでの間、当該職員に自宅待機を命じることができる」と規定しており、自宅待機命令は、あくまで懲戒処分に該当する行為を行った場合に限定して認められる措置であることから、懲戒処分を前提とせずに自宅待機命令を出すことは、同就業規則に反して違法である。

しかしながら、大学は、本通知書発行日から6か月以上経過しているにも関わらず、未だ懲戒処分を行っていないこと、及び、懲戒解雇ではなく普通解雇を行おうとしていることから明らかなように、「懲戒処分に該当する行為」は存在せず、就業規則に違反する行為を行っていることを自ら認めている。また、このような状況で、正式な懲戒処分を行わず、実質的な懲戒処分である普通解雇を大学が選択することは、自ら犯した違法行為を隠蔽する行為に他ならず、社会通念上著しく相当性を欠く行為である。

したがって、かかる状況の下、普通解雇を行うことは、解雇権の濫用に該当し無効である。

(3)先行の懲戒処分時に明確に認識していた事情を解雇理由としていること

懲戒処分が連続する場合、先行する懲戒処分の処分時に明確に認識していた解雇理由を、後続の懲戒処分における解雇理由とすることは、懲戒権の濫用として、解雇は無効とすべきである。この趣旨は、後続の処分が(本件のように)懲戒処分を前提とした自宅待機命令が先行し、懲戒処分が出ていない場合に、普通解雇を行う場合にも同様に当てはまる。したがって、懲戒処分を前提とした自宅待機命令が先行し懲戒処分が出ていない場合に普通解雇を行う場合、先行する懲戒処分の処分時に明確に認識していた処分事由を、後続の普通解雇理由とすることはできず、これに反する解雇は解雇権の濫用として違法である。

しかるに、解雇理由(1)乃至(7)は、平成26年9月25日付け停職処分時に、大学が明確に認識していた事情である。したがって、評議会がかかる理由をもって、解雇理由とすることは、いずれも解雇権の濫用として許されない。

(4)報復としてなされた解雇であること

普通解雇においても、報復として解雇することは、解雇権の濫用として無効である。大学は、以下の通り、森山の大学に対する要求に対する報復として、普通解雇を行うとしていることは明らかである。

すなわち、森山は、博士課程在籍中の大学院生の博士論文の不正行為、他人の修士論文を剽窃し己の博士論文とし博士号を取得した二名の○○企業社員がなした不正行為、それらの不正行為を指導した元教授の不正行為、並びに、理事が多数著者に含まれる論文の不正行為を大学に内部告発したところ、平成26年9月25日付けに別件で停職処分を受けている。こうした中、平成26年9月26日臨時薬学部教員会議において、学長は、「私を刑事告訴するということはどれだけ大きな社会的な非違行為かであるかということです。・・中略・・私が辞めるかそちらが辞めるかの戦いになります」また、「私自身の処罰もありえると私は思っています。これから処罰がありえると思っております」と発言している。以降、大学は、一環として、根拠ない自宅待機処分に続く、本件の普通解雇とする結論を出しており、本件の普通解雇が、大学の報復に基づくことは明らかである。

……以下,省略

2016年01月12日

岡山大が薬学部教授2人を解雇、「教員としての適性欠く」

山陽新聞(2016年01月12日 23時23分 更新)

 岡山大は12日、大学教員としての適性を欠くとして、薬学部の前学部長で大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則教授(62)と、前副学部長の榎本秀一教授(52)を解雇処分にしたと発表した。処分は昨年12月28日付。

 大学によると、元教授2人は、学内の論文不正を告発した自身らの役職解任を学長らが画策したことが職権乱用に当たるとして、2014年に岡山地検へ告訴状を提出し、記者会見。さらに調査中にもかかわらず論文不正があったかのように外部に情報提供した。2人に共通するこれらの行為を含めて9項目ずつを挙げ、大学の社会的評価を傷つけたとしている。

 学内で会見した阿部宏史理事は「真実と認められない情報を流しており、信頼関係の回復は困難」と説明。森田潔学長は「服務規律の徹底を図り、大学への信頼を回復すべく努力したい」とのコメントを出した。

 岡山大は14年9月、薬学部の准教授らにハラスメント(嫌がらせ)行為をしたとして元教授2人を停職9カ月の懲戒処分にし、学部長、副学部長から解任。2人は昨年1月、処分の無効などを求める訴訟を岡山地裁に起こしている。

■元教授2人、処分無効と慰謝料求め提訴

 岡山大による解雇処分をめぐり、森山芳則元教授と榎本秀一元教授は12日、合理的な理由がないなどとして、処分の無効と1千万円ずつの慰謝料を求めて岡山地裁に提訴するとともに、処分無効の仮処分を申し立てた。

 訴状では、大学側が解雇理由として挙げた項目のうち、学長らに対する刑事告訴について「地検に告訴状は提出しておらず事実誤認」と説明。記者会見などの行為についても「解雇の理由には当たらず、解雇権の乱用だ」と主張している。

 この日、岡山市内で会見した森山元教授は、自身らが学内の論文不正を告発してきた経緯を踏まえ「告発が解雇につながったと考えている。学生や大学の未来のため、司法の場で異常性を明らかにしたい」と話した。

 岡山大は昨年3月、教員が執筆した研究論文計31本に流用、捏造(ねつぞう)といった不正があるとした森山元教授らの告発に対し、調査の結果、いずれも不正はなかったとホームページ上で公表している。


2016年01月08日

今、岡山大学で何が起きているのか?

今、岡山大学で何が起きているのか?
 ∟●いま薬学部では(2016年01月08日)

緊急報告!解雇問題2  過去10年間 懲戒処分10数件 減給半日の軽処分まで全て記者発表してきた岡山大。今回前代未聞、全国注目の解雇処分につき会見もなくコメントも拒否!逃げ回る学長。学生には、偽メール。薬学部教員には桧垣暫定学部長が解雇について意味不明の説明会。原告弁護団、来週早々の大型提訴をマスコミに通知!

昨日、本サイトで報告したとおり森田学長は、年末の仕事納めのどさくさに紛れ12月28日付けで、森山榎本両教授に対し解雇通知をした。世間の注目を避け、記者クラブの休みを狙っての抜き打ち解雇を強行した。また正月早々薬学部学生達には、谷本研究科長、桧垣暫定部長の連名で「森山教授、榎本教授は、ご退職されました、・・」云々と、まるで両教授が自主的に退職したかのように装ったメールを送り付けた。

この間の解雇問題の真実を知る学生たちからは、疑問と怒りが噴出した。また当方への通報によると、同日1月4日薬学部教員達には、桧垣暫定部長から経過報告と称して解雇問題について説明会を開いたという。詳細は不明だが意味不明の言い訳に終始したとの事である。この数日本部学部を問わず数多くの内部情報が匿名で通報されてきている。これは、学長の暴走に疑問を抱く数多くの教職員が存在していることを示している。

タイトルにも書いたが、これほど全国注目の解雇問題について大学責任者や広報からは一言のコメントもなく、年末よりNHKが報道した科研費不祥事や姫那ちゃん基金の寄付金問題と重大問題が起き、また正月には「データ確認もなく」、シロ判定と論文不正問題の全国ニュースに対しても、大学としての正式コメントを避けている。何も語らず一切の社会的な責任も果たさずこのまま嵐が過ぎるのを待っているようなら、大学の社会的責任は果たせない。堂々と人様の前で語る勇気も喪失してしまったのか?コンプライアンス(法令遵守)の重大危機である。

さて、昨日弁護団から各マスコミに通知された。1月12日に解雇問題について複数の大型訴訟が予定されているという。今後の展開を皆さん方と注目していきたい。


2016年01月03日

論文不正、告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委

毎日新聞(2016年1月3日)

 岡山大(森田潔学長)の大学病院幹部が著者に含まれる医学論文について、研究不正の告発を受けて調査した学内の調査委員会が、実験画像の切り張りを確認したものの、本来必要な生データとの照合をしないまま「不正なし」と結論づけていたことが分かった。調査報告書は文部科学省や告発者に提出されたが、切り張りや生データについての記載はなく、別の論文でも実験条件を示した画像説明に食い違いがあったのに問題視しなかった。

 同大医歯薬学総合研究科の教授2人が複数の論文について告発し、調査委が昨年3月に結論を出した。研究不正についての国のガイドラインは、不正なしと判断された場合は調査結果を公表しないと定め、大学も公表しなかった。

 切り張りがあったのは、2006年に米国の内分泌学専門誌に掲載されたステロイドホルモンに関する論文。濃さが異なる横長の棒(バンド)が横に12個並び、実験条件を変えると特定のたんぱく質の量が変化することを示した。バンドの濃さを読み取ったグラフが下にあり、濃さを比較して結論を導くデータの一つとしている。告発は「同一条件で比較すべきデータが合成されている」と指摘した。

 大学によると、病院幹部から「1枚の連続的な写真ではない。代表的なバンドの写真を参考として添付した」と説明があったが、切り張り前の生データは「8年以上経過し、残っていない」として提出されなかった。

 切り張りは、別の画像の使用や画像処理が判明した場合、捏造(ねつぞう)や改ざんに当たる。元は連続した写真であると生データで確認できれば、不正とはならない。

 大学は「学外の委員も加え、きちんと検証した」と説明し、切り張りの事実や生データなどについて報告書で触れていないことに対しては「早く報告する必要があり、報告書を簡潔にしようともしたため、言葉足らずな点があったかもしれない」としている。

 一方、画像説明の食い違いは、08年に循環器関連の米医学誌で発表した論文と、10年に岡山医学会雑誌で発表した日本語の論文との間で生じている。高血圧に関係するたんぱく質の研究で、それぞれ複数の細胞の画像が示され、同一の画像の実験条件の説明が両論文で「Na+/K+ATPase」と「H+?ATPase」となり食い違う。

 調査委員長を務めた同大学の山本進一理事は「国のガイドラインや大学の規定で定める研究不正(捏造、改ざん、盗用)には当たらない。だから本調査はしなかった」と説明している。

 病院幹部は取材に「日本語の論文は岡山医学会賞の受賞紹介記事。掲載にあたり、一部のパネル(画像)を削除し、説明文を修正する際に誤りが生じた」と回答した。


2015年12月23日

岡山大が「内部告発」教授への「報復」? 「論文不正」指摘後の「停職」「解雇」裁判騒動

Jcastニュース(2015/12/10 20:02)

参考サイト
今、岡山大学で何が起きているのか?
岡山大学による報告「研究活動に係る不正行為に関する調査結果について」に関する意見

岡山大学で「論文不正問題」を内部告発した教授が、大学側から解雇されようとしている。教授側は裁判所に解雇停止の仮処分を申し立てているが、大学は「現時点で裁判所から通知がないので分かりません」としている。

内部告発者への「報復」「制裁」ではないか、とする見方がネットで出ている。

別のパワハラ騒ぎで停職処分も

薬学部の森山芳則教授と榎本秀一教授は、2012年12月と13年3月に医学部の論文に不正があると告発した。計31本の論文に、流用やねつ造の不正行為があったとする内容だった。

同大は15年3月、調査結果をサイト上で発表。対象となった1本の論文について「実験結果の画像と異なる画像を誤って掲載した」と認めつつも、「誤って掲載したものであり、故意によるものではないことから、不正行為は認定しない」とした。

一方、調査結果が出るまでの期間、大学と2教授の間には別の騒動もあった。14年9月、大学はこの両教授に別の所属教員に対するパワーハラスメントがあったとして、教授らに停職9か月の懲戒処分を下していた。2教授はこれを不当としていた。

大学側は明らかにしていないが、教授側の訴状によると、その後、大学の教育研究評議会は15年10月26日付で2教授を解雇する審査結果を出した。

2教授は12月7日、岡山地裁に「解雇権の乱用で無効であることは明らか」などとして、解雇停止の仮処分を申し立てた。大学側はJ-CASTニュースの取材に対し、「現時点で裁判所から通知がないので分かりません」と回答し、くわしい事実関係の説明はなかった。


2015年04月26日

パワハラで停職1カ月 岡山大の教授、受けた4人は全員退職

産経(2015.4.24)

 岡山大は24日、同僚の助教らにパワーハラスメント行為をしたとして、大学院医歯薬学総合研究科の教授を停職1カ月の懲戒処分とした。

 岡山大によると、教授は平成23年4月~25年3月、助教3人と講師1人に対し、授業担当や担当業務から外し精神的苦痛を与えたり、退職勧奨と感じさせる言動を継続的に行ったりしたという。

 25年2~3月に助教らが大学に相談して発覚。教授は「あくまで教室をよくするためにしたこと」と話しているという。パワハラを受けた助教ら4人は昨年6月までに大学を退職した。

 森田潔学長は「極めて遺憾。今回の事態を重く受け止め、環境の整備を図る」とコメントした。


2014年12月01日

サイト紹介、「今、岡山大学で何が起きているのか?」

サイト紹介
今、岡山大学で何が起きているのか?
http://seesaawiki.jp/rebirth_okayama/

はじめてこのページに訪問される方へ

このサイトは、平成26年9月25日に薬学部学部長である森山芳則教授、副学部長である榎本秀一教授の両名が、薬学部教員に対するハラスメント行為をはたらいたという理由により9月の懲戒処分を受けたことについて、その背景を解説するために設けられました。森田潔学長をはじめとする岡山大学執行部のこれまでの運営の問題点を明らかにすることを通じて、心あるみなさまとともに新たな岡山大学の未来を創ることを目標としています。

事件の概要:
・平成26年9月25日に薬学部学部長である森山芳則教授、副学部長である榎本秀一教授の両名が、薬学部教員に対するハラスメント行為をはたらいたという理由により9月の懲戒処分を受けた。
・二名の教授を告発した薬学部教員は、いずれも学生に対するハラスメント、あるいは予算執行の不正といった問題を抱えており、薬学部教授会を中心とした調査、是正に向けた取り組みが進められていた。
・大学執行部による懲戒処分は、研究不正を告発していた二名の教授を封じるために学部内のハラスメント問題を利用した疑いがある。

岡山大学における研究不正問題:
・薬学部教授会は平成24年1月に医歯薬学総合研究科の博士学位論文において、研究の実態がないにも関わらず、研究室内の修士の学生の研究成果をつなぎ合わせることによって作成された博士論文が、川崎博己元教授の研究室に複数存在することを見出し、谷本光音研究科長の指示により榎本副研究科長(当時)がこれを大学法人監査室に告発した。
・平成24年12月、許南浩理事により森山学部長の第二期学部長選挙の出馬断念要請、および榎本副研究科長更迭が命じられた。
・平成25年12月に、森山学部長と榎本副学部長が医学部における研究論文不正を大学法人監査室と文部科学省に告発した。
・多重投稿により医学部准教授が懲戒処分を受けているが、それ以外の研究不正についての調査状況は明らかにされておらず、処分もない。

岡山大学の問題点:
・大学執行部による懲戒処分は学部内のハラスメントという理由であるが、実際には岡山大学における研究不正問題を告発した二名の教授に対する懲罰的措置であった可能性が高い。
・ハラスメントとして認定された事実は、薬学部教授会として対処した事案に対するものであり、不十分な調査のもと極めて重い懲戒処分が拙速に決定されている。
・研究不正問題の隠蔽、ハラスメント事案の恣意的な調査、薬学部教員に対する度重なる恫喝的な対応、事務職員による不法侵入など、学長のもつ権力を背景に恣意的な大学運営がまかり通っている。
・国立大学の運営に欠かせない、コンプライアンス意識、高潔な道徳観、大学人としての見識というものが、学長をはじめ執行部、周辺の教職員に欠けている。

マスコミ報道一覧
■内部告発者の「懲戒」で言論統制強める岡山大の「窮状」(集中Confidential 20141121)
http://medical-confidential.com/confidential/2014/11/post-858.html
■岡山大が「不正論文」疑いで調査 柏倉衆院議員が執筆(47News 共同通信 20141106)
http://www.47news.jp/CN/201411/CN2014110601001068.html
■岡山大医学部と製薬会社の癒着を告発した2教授が停職処分に(Newsポストセブン 20141021)
http://www.news-postseven.com/archives/20141021_282629.html
■岡山大不正が白日の下にさらした理事会の「当事者意識」(集中Confidential 20141014)
http://medical-confidential.com/confidential/2014/10/post-798.html
■岡山大薬学部の正副学部長「懲戒処分」は「裁判の意趣返し」との見方(集中Confidential 20140929)
http://medical-confidential.com/confidential/2014/09/post-775.html
■研究不正告発した薬学部長を解任 岡山大 森山教授に停職9ヶ月の懲戒、不当処分で提訴(RISFAX(医薬経済社)20140929)
http://image01.seesaawiki.jp/r/a/rebirth_okayama/ad26a7746f4e1af9.pdf
■岡山大2教授に停職処分 教員に嫌がらせ(朝日新聞デジタル 20140926)
http://www.asahi.com/articles/ASG9V2W0SG9VPPZB006.html

2014年11月07日

岡山大が「不正論文」疑いで調査 柏倉衆院議員が執筆

共同通信(2014/11/06)

 みんなの党所属の衆院議員の柏倉祐司元岡山大医学部特任准教授(45)が2008年に筆頭著者として発表した論文に、改ざんの疑いがあるとの告発があり、大学が外部の有識者を含む委員会で調査を実施していることが6日、大学関係者への取材で分かった。

 柏倉氏は事務所を通じて「指摘は承知しているが、事実無根だ。大学が調査中で、結果を待ちたい」とコメントした。

 告発したのは岡山大薬学部の元学部長森山芳則教授と、同学部の榎本秀一教授。柏倉氏のほか、医歯薬学総合研究科の男性教授らの論文計約10本に、画像やデータが不正に改ざんされた可能性があると指摘する告発書を大学に提出した。


医学論文不正疑惑の衆院議員「肩書きが利用された」と真っ向否定 背景に激しい派閥対立か

産経(2014/11/06)

STAP細胞の研究不正疑惑が明らかになった今春以降、各地の大学で研究不正に厳しい目を注ぐようになり、不正発覚や処分が相次いでいる。ただ、今回の衆院議員の論文をめぐる告発の背景には、大学内の派閥対立を指摘する声も上がる。議員は取材に対し論文不正を真っ向から否定し、今回の告発を「大学内の権力闘争で、(攻撃材料として)国会議員としての私の肩書きが利用された」と批判している。

 前薬学部長と前副学部長は今回、議員の論文だけでなく、大学病院長や副学長らが関わった論文を中心に告発した。

 議員は、今回の告発は学内の権力闘争の一環にすぎず、「新たなハラスメント(嫌がらせ)のやり口になっている。大学教授が告発を連発するのは倫理観が問われかねない」と話した。

 これに対し、前薬学部長は「『権力闘争』との批判は事の本質と深刻さが分かっていない」と反論。今年4月には、告発を取り下げるよう大学側から不当な圧力を受けたとして、副学長に損害賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こした。大学側は9月、教員らを蔑視する表現が多数含まれるメールを所属教員全員に送るなどのハラスメント行為があったとして、前薬学部長らを懲戒処分にしたが、「報復的だ」との批判の声も上がった。

 この状況に、ある大学関係者は「前回(平成25年)、前々回(22年)の学長選で病院長や副学長らは現学長を支持し、別の候補を推した前薬学部長らと対立した。背景には感情的な確執があるのではないか」との見方を示す。

 議員の論文に不正があったかどうかの真相は、現在も本調査の結果が出ておらず定かではないが、すでに“内紛”は泥沼化。前薬学部長らの懲戒処分後、指導を受けられない状況が続く学生らは「研究に専念できない」と憤りを隠せない。

 大学院で博士論文の審査を控える男子学生(27)は「大学からは『適正な教育、研究環境を確保することを約束する』とのメールが1通届いただけ。就職の内定先に状況を説明できない」と困惑している。


2014年10月29日

岡山大学、薬学部長を懲戒処分にするとともに解任 後任に檜垣氏

読売新聞(2014年10月28日)

薬学部長解任 後任に檜垣氏 岡大

 岡山大は27日、薬学部長に檜垣和孝・創薬科学科長(54)(生物薬剤学)を充てる人事を発表した。発令は28日付で、任期は2016年3月末まで。

 同大学は9月26日、教員へのハラスメントがあったとして前薬学部長を懲戒処分にするとともに解任。一方、前学部長らは「ハラスメントの事実はない」として、地裁に処分停止の仮処分を申請している。


2014年10月24日

岡山大医学部と製薬会社の癒着を告発した2教授が停職処分に

Newsポストセブン(2014.10.21)

 9月25日に岡山大学が学長名で2名の教授に対して9か月の停職処分を発令した。処分を受けたのは、薬学部教授の森山芳則氏と榎本秀一氏。両氏の役職である薬学部長、副部長職も26日付の「人事異動通知書」で解任された。この処分の内幕について、ジャーナリストの伊藤博敏氏が10月20日発売の週刊ポスト(10月31日号)でレポートしている。

 両教授への処分理由は「複数の職員に対するハラスメント」と発表されたが、記者会見に詰めかけた記者の質問は、「論文不正問題を内部告発した両氏に対する報復ではないのか」という点に集中した。

 大学側と両教授は「論文不正問題」をきっかけに対立関係にあった。複数の大学院生の博士論文に剽窃やデータ改ざんなどの不正があることを発見した両教授は、やがてその背後に潜む利権構造に気付いた。

 有力教授が製薬会社から多額の奨学寄付金を受け取る一方で、その製薬会社の薬の構造の効能を謳う研究論文を書く、といった不適切な関係が浮き彫りになった。両教授は、そうした癒着構造を今春、同誌上で実名証言していたのだ。

 伊藤氏は、両教授や大学側に取材し、問題の真相に迫っている。