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 カテゴリー (私)梅光学院大学

2021年11月04日

梅光学院大に全学支払い命ず 地裁下関判決

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梅光学院大に1180万円支払い命じる

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2021年09月02日

梅光学院大、研究もゼミもできぬ新校舎 教員達が提訴

「研究もゼミもできぬ新校舎」長周新聞(2021.9.1)

http://university.main.jp/blog/bunsyo/20210901.pdf

2021年08月31日

大学のフリーアドレス化で「研究に支障」 教員ら提訴へ

■朝日新聞(2021年8月29日)

 決まった席や部屋がない「フリーアドレス」の職場になったことで研究活動に支障が出ているとして、梅光学院大学(山口県下関市)の専任教員や元専任教員ら9人が大学側を相手取り、計約1200万円の損害賠償を求める訴訟を30日にも山口地裁下関支部に起こす。「教員が研究室を利用する権利を侵害している」などと主張している。

 教員らの代理人弁護士などによると、同大では2019年春に地上3階建ての新校舎が完成。それまであった個室タイプの研究室は廃止され、広い空間に並ぶ机や椅子を自由に使うフリーアドレスとなった。教員には、一部だけ鍵がかかる書架が一つずつ与えられている。

 教員ら9人はこうした運用について、書籍や資料を保管するスペースが足りず、学生や学外の人も行き交う中で仕事をするため研究成果が盗用されるおそれがあると指摘。プライバシーが守れないため学生の質問や進路相談にも対応できず、試験問題の作成や成績をつける作業も困難だとしている。

 子ども学部の田中俊明教授(54)は「これまでは学生が研究室に来れば教員やゼミの仲間と話せたが、フリーアドレスでは周囲を気にして話がしにくい。授業時間にとらわれない学生の主体的な学びの拠点がなくなり、非常にやりづらくなった」と話している。

 梅光学院大には文学部と子ども学部、大学院があり、5月1日現在で学生は約1300人、教授や准教授など専任教員46人が在籍。ホームページでは、フリーアドレスの導入について「教職員間や学生との間でのコミュニケーションを重視する」と説明している。大学側は取材に「訴訟の中身を把握していないので、コメントは控える」と答えた。

 文部科学省の大学設置基準は、研究室について「専任の教員に対しては必ず備えるものとする」と定めている。ただ、面積などの基準や目安はなく、個室である必要も示されていない。研究に専念できる環境であることや、学生からの相談に適切に対応できることなどを求めており、7年以内に一度行う実地調査の中で研究室の状況をチェックすることもあるという。

 フリーアドレス制は近年、企業のオフィスなどで導入が進んでいる。


2021年08月12日

梅光学院、任期途中で本間理事長が辞任 私物化と混乱に拍車

長周新聞(2021年8月11日)

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2021年06月24日

梅光学院大学・雇い止め無効訴訟、下関地裁が棄却

以下,長周新聞(2021年6月23日)を掲載します。
「渡辺氏の訴え全面棄却 梅光学院大学・雇い止めの無効訴えた訴訟」
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20210623.pdf

2021年03月01日

梅光学院、教員側勝訴確定 学院側は控訴せず

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2021年02月06日

梅光学院大教員が全面勝訴、地裁下関・学院側の主張退ける

■長周新聞(2021年2月5日)

新聞記事の全面PDFは,こちら

 下関市の梅光学院大学の教員有志一〇人が労働条件などを一方的に変更したことについて学院を訴えた裁判の一審判決が二日に山口地裁下関支部であり、梅光学院に未払い賃金など計約六〇〇〇万円の支払いを命じる判決が下った。原告団のほぼ全面勝利となり、判決を受けて原告団の教員は弁護士とともに報告会を開き、二年以上にわたる裁判を支えてきた支援者に結果を報告した。……


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2021年02月04日

梅光学院に6千万円超支払い命令 給与など減額支払い訴訟

山口新聞(2021年02月03日)

 下関市向洋町の梅光学院大の教員と元教員計10人が同大を運営する学校法人梅光学院を相手に給与規定を含む就業規則の変更で減額された給与や退職金の差額約6230万円の支払いなどを求めた訴訟の判決が2日、地裁下関支部であった。種村好子裁判長は「就業規則の変更は合理的なものとは言えない」として、同法人に約6180万円の支払いを命じた。……

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6180万円の支払い 梅光学院に命令 地裁下関支部判決

■読売新聞 2021年2月3日

「6180万円の支払い 梅光学院に命令 /地裁下関支部判決」
 不当な新就業規則への変更で賃金や賞与、退職金を減額されたとして、梅光学院大(下関市)の教員ら10人が、大学を運営する学校法人・梅光学院を相手取り、変更前の賃金との差額の支払いなどを求めた訴訟で、山口…

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給与減額訴訟 梅光学院に支払い命令 教授ら10人に6000万円 地裁下関判決

毎日新聞2021年2月3日

 不当に給与や退職金が減額されたとして、梅光学院大(下関市)の教授や元教員ら計10人が同大を運営する学校法人梅光学院を相手取り、差額の支払いなどを求めた訴訟の判決が2日、山口地裁下関支部(種村好子裁判長)であった。判決は、原告の主張を大筋で認め、約6000万円を支払うよう学院側に命じた。 ……

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2021年01月07日

梅光学院、ブラインアカデミーの「研修」実態 人格否定し退職強要

長周新聞(2021年1月6日)

下記の記事を拡大したものはこちら。

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2020年12月26日

梅光学院大不当解雇事件、雇い止めの不当性訴える

長周新聞(2020年12月25日)

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2020年08月26日

梅光学院騒動の真相に迫る なぜ14人の教師は辞めたか

長周新聞(2016年3月18日)

 今年に入ってから、下関市にある開学100周年を迎えた梅光学院で中・高校の教師14人、大学の教員8人が辞めることが明らかになって以後、生徒たちが「先生を辞めさせないでほしい」と署名活動を始め、3月5日には保護者、教職員有志、卒業生らが300人の集会を持って「梅光の未来を考える会」を設立。現経営方針の転換と理事長の解任を求める署名運動を展開してきた。署名は卒業生を通じて全国区で広がり締切の14日までに1万5361筆が集まった。16日には代表者らがそれを携えて梅光学院を訪れた。ただ、関係者以外の市民の耳に届いてくるのは「とにかく梅光が大変なことになっている」ということ以外には具体性が乏しく、さまざまな噂や憶測ばかりが飛び交い、いったいなにが起こっているのかわからない状態が続いてきた。本紙はこの間の経過について関係者に取材し、流言飛語ではなく何が真実なのかを問うてみた。
 
 下関で100年の歴史誇る私立 「改革」で学校崩壊の本末転倒

 「梅光の未来を考える会」がおこなっている署名は、「梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元の文化の一翼を担ってきた。しかし“改革”の名のもとでの専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつあり、資金の使途に数々の疑念があるばかりでなく、コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている…梅光学院の未来のために、私たちは、本間理事長の退任と、現行運営方針の転換を強く要求する」としている。
 生徒たちのなかでは「共学化に反対した先生が辞めさせられるのだ」と話題になっているものの、どの教師が解雇されるのかわからない状況が続いている。そのなかでアンケートをとって校長に提出して説明を求めたり、署名活動をしてきたが、学校が子どもたちに真摯に向き合った形跡は乏しい。先日開かれた高校の生徒総会で「10億円を株に運用している」ことが話題に上るなど、学校に対する子どもたちの不信感も強いものがあるようだ。
 梅光学院でいったい何が起きているのか? どうしてそれほどの教員が大量に辞めていくのか? 何と何が矛盾して、その結果、学校の宝であるべき子どもたちの教育環境はどうなるのか? である。

 希望退職募集が発端 異常な人格否定研修会

 問題の発端は、昨年10月下旬、「財政難」を理由に40歳以上の中・高校の教師11人を対象に希望退職の募集がおこなわれたことだった。
 第1回目の募集で、すでに嫌気がさしていた英語教師らの多くが辞表を提出したとされる。その要因として関係する人人が指摘しているのが、2014年度から只木徹氏(統轄本部長、大学事務長、中高校副校長)が主導する英語教育改革と矛盾が生じていたことだ。その英語教育改革とは、文科省が進める「授業をすべて英語で」を徹底するものだったという。基礎になる文法を教えないので、学力の低い生徒になるとついていけず置き去りになる状況も出ていたようだ。公立高校の受験を希望する中学3年、大学受験を控えた高校3年生には対応できない状況も生まれた。子どもたちが喜ばないことを、いいなりになってやらなければならないことに嫌気がさしたのだという。
 だが辞表を提出した教師は11人に及ばず、数年前から中・高校にかかわってきたブレインアカデミーというコンサルタント会社が前面に登場した。全国で50以上の私学の人事制度の構築・導入などにかかわった実績を売りにするコンサルだが、その実態は、最近問題になっているリストラビジネスを手がける人材派遣会社の私学バージョンのようにも見える。
 まずブレインアカデミーによる「再就職斡旋の説明会」が開かれた。当初は希望者のみだったが、直前になって「全員参加」となり退職を希望していない教師も含めて参加することになった。そして11月14、15日の2日間、まだ辞表を提出していない教師を集め、1日5時間、計10時間にわたって「キャリア再開発」と銘打った研修会が開かれた。学院によると「この研修を受けたのは十数人」。講師はブレインアカデミー特別専任講師の肩書きを持つ西條浩氏だった。
 1日目、「人の目を見て話聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」という場面があったり、「こういう発言をすることからして、あなたはこういう人だ」と嫌みな人格評価をするなど、特定の教師に狙いを定めた個人攻撃と人格否定がやられたことに教師たちは戸惑った。普通の人なら腹が立つ内容だが、事前に「会の趣旨に反することをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、なんらかの処分がある」と釘を刺され、教師たちは我慢するほかない状態に置かれていた。
 続く2日目は、参加者の能力を全面的に否定することに力が注がれたという。年末までの「必達5項目」が掲げられ、「今から頑張って90点、100点になる人がこのなかにいるか? せいぜい60点か65点にしかならない」「このなかで努力して学院が希望する点数になる人はいない」「これがあなたたちの中途半端な成果だ」といった調子で教師の能力を否定。そのうえで、「当事者意識」「自責」といった言葉を強調し、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「当事者意識を持って学校改革をしていかないといけない。でも能力がないからよそに行ったらどうか」と、「人生の棚卸し」などの言葉を使ってくり返し巻き返し精神的に追い詰めていった状況を、当事者である教師は明かしている。経営陣の「経営責任」をいつの間にか教師たちにすり替えていく手法だったようだ。
 そして最後に研修の成果を発表するプレゼンがおこなわれ、一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させられたが、西條氏はそれを聞いて「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」といい、続いて中野学院長が、「(この研修は)先生を辞めるまで終わらない。あまり無理をなさらず、他の道も探した方がいい」といった内容をのべたという。初めから「辞表を出すように」と囲い込んでいく研修会だったのか、参加した教師たちにとっては脳みそ破壊をやるブレインバスターがいきなりあらわれ、耐えがたい研修会となった。
 その後、2度目の希望退職の募集がおこなわれた。1回目の条件では退職金について「本俸8カ月加算」だったが、2度目は「6カ月加算」に削減されていた。それでも辞表を提出しなかった教師には、第2段階のブレインアカデミーによる「個別カウンセリング」(1人90分)が待ち受けていた。密室でのカウンセリングの後、第3段階は「面接」で中野学院長、只木統轄本部長、樋口学長、只木氏の秘書・辻野氏の4人に囲まれて、「あなたは来年度はいらない」「来年度の学院の構想には入っていない」と戦力外通告がされていったという。3度にわたる圧力で11人の教師が辞表を提出。今年度末で退職する予定の教師は中・高校全体で14~15人に上っている。
 梅光の教師たちの年収は300万~400万円、長く勤めた人で500万円台と、教師としては決して高給ではない。それに対してブレインアカデミーはたった1人を2日間・10時間の研修に派遣しただけで300万円を得た。時給にして30万円である。さらに驚かせたのは学院の顧問弁護士が渦中で口を滑らせ「1人辞めさせるごとに成功報酬100万円を手にしていた」という話が広まったことだった。11人分の成功報酬を得たとすると1100万円、計1400万円になる計算だ。ただ、この真偽について只木氏に問うたところ「まったくのデマだ」とのべていた。

 教員の大量解雇 来年の授業体制組めず

 これほどの大量解雇でもっとも心配されるのは、来年度からの子どもたちの教育がどうなるかだ。
 中・高校では正規の教師の半数が退職し、大学でも来年度の授業予定も組んでいた准教授が、2月24日になって「総合的な判断」という理由で突然雇い止めの通告を受けており、中・高・大学すべてで来年度の授業体制がいまだに組めていないと指摘されている。ある教員はこうした状況について「入学者が増えたというが、レストランで客が増えたのに料理を出さないようなもの。反教育だ」と語っていた。「改革」した末に教師が逃散するように辞めていき、おかげで学校が崩壊するというのでは本末転倒というほかないが、職安に梅光学院の教師募集の求人が幾つも出ていたのを見て、学外でも懸念する声は高まっていた。

 4年前からの改革 「文学は儲からない」

 今回の問題は突然起こったものではなく、4年ほど前から大学を手始めにやられてきた「学校改革」の一環で、それが表面化したものだと関係者は指摘する。背景には、政府・文科省が進める人文系廃止や、少子化のなかで財政難に陥っている地方の私立大学が、生き残りをかけて熾烈な競争をくり広げていることなど、根深い問題が横たわっている。梅光学院も十数年前から定員割れに頭を悩ませてきた。
 梅光学院の「学校改革」は、2011年10月、現・統轄本部長である只木徹氏(名城大学で非常勤講師をしていた)が梅光学院にやって来て、その翌年の2012年春から始まった。非常勤講師として着任した同氏は、まず事務局を廃止して統轄本部を新設。本部長に就任して人事と金を動かす権限を掌握した。1年たった2013年、ガバナンス(統治・支配)強化のために、只木氏が本間政雄氏(元文科省官僚、大学マネジメント研究会会長)を呼び寄せ、現在の本間理事長、只木統轄本部長(大学事務長)、樋口紀子学長、中野新治学院長(中・高校長)の体制ができあがった。
 「学生数を確保する」こと、「人件費比率の削減」が改革の内容で、真っ先に事務職員の給与切り下げがおこなわれた。意見をいう職員には降格人事や左遷など、容赦のない仕打ちがおこなわれたという。このなかで心を病んだり、学院のやり方に納得できず、半数ともいわれる事務職員が学院を去り、半分が非正規職員になっているようだ。
 2014年からは大学教員の給与切り下げと人員削減が始まった。執行部が「金にならない」とターゲットにしたのは文学だといわれる。梅光学院大学は歴史的に日本文学の研究で知られてきたが、2012年に13人いた日本文学科の専任教員を四人まで削減。残りは非常勤講師でまかなう状態になった。1人1人呼び出して「今年辞めたら退職金を○○円出すが、来年になったら半額になる」という手法だった。
 ある教員は、「梅光は文学や語学に力を入れていたのに、文学はもうからないという。かろうじて日本文学は守っているが、英文学や英語学などはなくし、薄っぺらな学問にしようとしている」と危惧していた。辞めた教員を非常勤で補うなど有期雇用に変え、いつ辞めさせても法律上問題のない手法で削減は進んでいる。
 大学教育にかかわった経験のある人物は、「子ども未来学科を設置したとき、子どもの未来を考えられる人材や研究をどのようにしていくか、喧々諤々(がくがく)論議しながら建設してきた過程がある。それが保育士の資格をとれればいいというものに変わってしまった」という。もともと「保育士を育てる教師の育成」を追求していたはずが、保育士資格をとらせるだけに変わった。教授会の発言権を奪って学長に権限を集中させ、理事会で反対意見をいう理事をやめさせるなど、「守旧派」と見なした人人を学外に追いやるなかで「改革」は次から次へと進んでいったという。
 その結果、高校への生徒募集や宣伝広告の強化、給付型奨学金(1億円ほど)の強化、2013年度からは学費を20%減額するなどして学生数は増加した。「地方小規模大学のV字回復」と、教育情報サイトでとりあげられるほどだ。ベトナムなど東南アジアからの留学生の確保にも力を入れたようだ。学生数を基準にする文科省にとっては、今回のような騒動が起ころうと「優秀な大学」である。しかし、「4年前は赤字が1億2000万円といっていたが、この4年で2億ずつ増え、今累積が8億円といわれている」とも指摘されている。そうしたなかで、学院のなかでも「赤字部門」、すなわち経営者の視点から見たときに不採算部門に映るであろう中・高校にも改革の手が伸び始めていった。

 生徒や同窓生の疑問 不透明なカネの使い道

 地方の私立大学が生き残りをかけて懸命になるのは無理もない。大学として存立するために何を為すべきかはどこの大学でも抱えている重要課題だ。しかし関係者の多くが怒っているのは、これらの「改革」が進むと同時に、不透明な金の使い道、執行部にまつわる黒い噂ばかりが拡大し、説明を求めても明らかにされないことだ。
 例えば生徒たちが問題にしているのは2015年度から導入されたタブレットだ。中・高校の全校生徒と教師全員に、およそ300台ものタブレットが一人ずつ配られた。ある生徒は「学習の記録や授業に使えといわれるが、重たすぎて家に放置している生徒もいる」と話す。学校で充電してはいけないので、毎日持ち帰らなければいけないからだ。「礼拝のときに先生がタブレットを活用しなさいというが、先生さえ使えていないのに意味がないと話になる」という。男子を増やすため、サッカー部をつくってレノファと提携を結んだことも話題になっており、「そんなお金があるなら、なぜ先生たちを首にするのか」と子どもたちは疑問にしている。
 さらにこの間、昨年7月から学院が所有している現金資産のうち10億円の運用を始め、昨今の株価下落で目減りしていることも心配されている。また、「4人の執行部が法人カードを持って好きなように使っており、学内の人間はその支出先を知ることができない」「毎月100万円を使い切っているというのは本当か?」「統轄本部長が報酬を1000万円から1300万円に上げてくれといっているのは本当か」等等、金銭にまつわる疑問も多い。さらに宗教上懸念されている問題として、戦後日本キリスト教団とつながりをもってきた梅光学院のなかに、オンヌリ教会(韓国)のチャペルをつくるという噂など、さまざまなものが飛び交っている。
 あと、教員たちや学院に関係する人人に取材するなかで共通して出されていた懸念は、一連の改革や解雇が中・高校をなくすための布石ではないかというものだった。2013、14年頃に、中・高校の生徒数が減っているにもかかわらず、1年契約の常勤講師を退職者数以上に採用しており、「教師が多すぎるのではないか」と疑問視されてきたが、それらが「正規の教師をリストラするための準備、もっといえば中・高校をいつでもつぶせる体制に向かっている」と真顔で心配しているのである。曲がりなりにも中心市街地の丘の上の一等地に位置するのが中・高校で、広大な用地は高値で取引されることは疑いない。「校舎を新しくしたばかりで、まさかそれはないだろう…」という意見と同時に、そうした将来を本気で心配している人人も少なくない。

 統轄本部長に聞く 中学・高校の存続は?

 これらの疑問や噂が目下、同窓生やその周囲を巻き込んで流言飛語のように拡大している。放置することは学院にとっても不名誉で、真相を明らかにすることによってしか打ち消すことなどできない。学院に取材を申し入れたところ、只木氏と小谷財務部長が対応した。まず第一に、教員不足でカリキュラムが組めないのではないかという疑問については、「雇い直しは(教科によっては)ぎりぎりのものもあるが、授業はきちんとできるようにしていく」という説明だった。
 株式運用については、担当の小谷財務部長が回答し「投資信託、株、債権、リートなど組み合わせたファンドラップでやっている。当然ながら規定があるし、理事会でも承認を得て長期の運用でやっている。決して投機的なことをしているとか、ギャンブル的な話はない」と強い口調でのべていた。昨年七月の運用開始からの目減り分について質問したところ、「株式が下がったパーセンテージの半分くらい」とのべていた。
 毎月100万円の限度額ともいわれている法人カードについて只木氏は「会社だったら当然持つ物だ。監事や公認会計士がみんな見る。絶対に証拠が残るから、むしろ明朗会計だと評議員の企業主もいっている」とのべていた。
 そしてもっとも心配されている中・高校の廃止については「過去10年を見て、普通の会計士が見ればつぶすのが正しい選択だという。今は再建しようという意志でやっている」とのべていた。「今」は再建するつもりであるが、今ではないいつかにその意志がどうなるのかはわからなかった。「今は」を強調していたのが印象的だった。
 また、オンヌリ教会について尋ねると、「奇想天外な発想ですね! そういう話があるんですか!」と驚いた表情をして、「キリスト教の学校だから個人的にはチャペルを建てたいが、今は計画はない」とのべた。

 子供たちの未来の為 真相示し教育的解決を

 この間の梅光学院を巡る騒動は、単なる労使問題で片付けることのできない問題を含んでいる。それは同じように財政難にあえぐ地方大学、とくに私学の姿を映し出すものでもある。しかし聞こえてくるのは、大人たちのどろどろした金の話だったり、支配と被支配のそれこそ専横的といわれる学院運営の実態だったりで、文科省官僚出身だった理事長のもとでくり広げられてきた改革の結末は、何ともしれない印象を放っている。それでいったい、学院に通っている子どもたちはどうなるのかがもっとも心配されている。
 少なくとも、梅光学院は誰かがカネを稼ぐための道具ではなく、子どもたちを教育するために理念を掲げ、100年の歴史を紡いできたはずだ。その梅光学院が乗っ取られる、別物のオンヌリ学院か本間学院にされてしまうという懸念が、同窓生を行動に駆り立てている最大の要因のようだ。
 現在、署名運動は広がりを見せており、学校の行く末を巡る論議が活発化している。お金にまつわる疑問にせよ、正面から真相を明らかにすることによってしか解決の道はない。教師の解雇についても、そのように学校を支えてきた人材を次から次へと追い込んでいく運営にどのような未来が待ち受けているのかである。
 「改革」して大学なり学校が崩壊したというのでは、あまりにも惨い結末といわなければならない。現経営方針を転換させたのちにどのような学校にして、子どもたちをどう育てていくのか、大学であればどのような理念によって人材育成の分野で社会的な役割を果たしていくのか論議を深めていくことが待たれている。建設的な力をつなげていくことしか梅光学院の未来はなく、阻害物があるならば取り除き、どう進んでいくのかが問われている。


2020年07月06日

梅光学院大特任教授、不当な雇い止め 損害賠償求め提訴

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2020年02月08日

梅光学院大裁判、元教員2氏が証人にたつ(1)

長洲新聞(2020年2月7日)

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梅光学院大裁判、元教員2氏が証人にたつ(2)

長洲新聞(2020年2月7日)

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2020年01月25日

梅光学院大学、運営の不誠実さ浮き彫り

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梅光学院大学、運営の不誠実さ浮き彫り(2)

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2019年07月02日

梅光学院大、賃金を慰謝料を払わず口座異例の差押え、矢本特任准教授の裁判を巡り


2019年07月01日

梅光学院大雇止め訴訟、1050万円差し押さえ 下関地裁

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2019年05月30日

梅光学院雇止め二審も無効

■朝日新聞(2019年5月29日)

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2018年03月29日

梅光学院大学・矢本准教授の雇止めは無効 無期雇用・賠償は棄却 地裁下関支部が判決

長周新聞(2018年3月28日)

 梅光学院大学の特任准教授で、2015年度末に雇い止めを受けた矢本浩司氏が同学院に対し、雇い止めの無効などを訴えた裁判の判決が27日、山口地方裁判所下関支部(泉薫裁判長)であった。この日も教員や学生、同窓生や保護者など多数が傍聴に押しかけ判決を見守った。判決では、矢本氏の梅光学院特任准教授としての地位を今年度まで認め、賃金の支払いを命じたが、その他の訴えについては棄却した。

 矢本氏はこの裁判で、梅光学院特任教授としての地位の確認と賃金の支払いに加え、研究室や図書館を利用すること、准教授として論文を発表すること、また大学で講義をすることなどを求めていたほか、中野新治元学院長がその地位を利用して、矢本氏が執行部に反対する行動を主導したかのように扱い、雇い止めしたことによって研究や研究成果の発表、教授の自由を奪われたとして、中野元学院長と梅光学院大学に対し損害賠償を請求していた。

 判決では、仮処分申請時と同じく、矢本氏が梅光学院大学に勤務していた平成27年度中、授業については学生アンケートで高い評価を得ており、複数の論文を執筆したうえに査読を受けて掲載されたこと、また学内でもFD委員会副委員長や中高校長特別補佐職に就任するなど、豊富な業務量をこなし、かつ高い評価を受けていたことを認定。契約期間満了が近づいた平成28年2月中旬まで、矢本氏もかかわって翌年度の準備を進めており、契約更新を期待する合理的理由があったとし、雇い止めの無効を認めた。また2度目の契約更新についても、その合理的期待が消滅したといえる特段の事情もないとして、矢本氏の地位を認めるものとなった。

 ただ、矢本氏は採用時に中野新治学院長から「よほどのことがない限り、3年間勤めた後に無期雇用になる」と説明を受けたこと、また平成27年度中にも「雇い止めにすることはない」とたびたびいわれていたことについて、証拠も提出したうえで無期雇用を主張していたが、その点については退けられ、平成30年3月31日までに限り矢本氏の地位を認め、賃金の支払いを命じる内容となっている。

報告会で運動の継続を確認

 同日午後4時から、同窓生や学生、保護者ら関係者が集まって報告会を持ち、弁護士からも判決の概要について説明があった。無期雇用や損害賠償などの訴えは棄却されたものの、矢本氏の契約期間が1年となっているにもかかわらず、3年まで認められたことは、前例の少ない画期的な判断であることを確認し、今後もたたかい続けることを誓い合った。

 矢本氏は支援に対する謝辞をのべたうえで、「3年の契約まで認めてくれたというのは画期的だと思う。やはり梅光学院に問題があるから、こうした判断が出たのだろうと思う」とのべた。ただ、「中野新治元学院長が“君を雇い止めにすることはない”とくり返しいっていたことについて証拠を提出しているが、判決文では触れられておらず、納得がいかないところがある。非常に画期的な判断が出て喜んでいる反面、なぜこの証拠が認められないのかという思いがある」とのべ、今後の対応を検討することを明らかにした。

 参加者からは、「研究室や図書館を使用できない理由は何なのか」「一般市民に開放しているのに使えないのか」「大学というのはユニバーシティ・仲間たちという意味だ。研究に図書館を使うのは当たり前のことだ。“契約にないから”というのはどういうことなのか」「賃金は労働や働きに対して支払うものではないのか? ただ払えばいいのか?」など、市民感覚と法律上の判断の違いについて、質問や疑問、意見があいついだ。

 報告会では、大学教員が近況の報告もおこなった。報告に立った教員は、「学内で自由にものがいえず、異論を唱えると排除、左遷、辞めさせられるなど非民主的な運営が続いており、学生たちが被害をこうむっている」とのべた。今年度末にも多くの教職員が学院を去るが、後任を決めず雇い止め等をするため、来年度には哲学の授業を社会学の教員が、現代詩の授業を中野新治氏が担当するなど、看板と違う授業がおこなわれる状況にあり、教育の質がますます低下していることを明らかにした。

 またテスト期間をもうけず、新教務システムを導入し、間違ったデータが流れるなど、事務的な部分でもトラブルが多発しており、「無事、入学式が迎えられるかどうか」という状況にあることを報告。この27日にゼミが規定の回数開かれなかったことについて学生らが申し入れ、話しあいをおこなっていることも明らかにした。

 学生たちが受けられるはずの授業が受けられなくなったという状況から、日本文学部の教員ら有志で私塾を開く準備をしていることも報告した。

 最後に、矢本氏が挨拶に立ち、「社会正義に訴え、おかしいことはおかしいというために裁判をやっているので、ひき続きたたかっていく」とのべ、拍手が送られた。

 なお、今回の判決について梅光学院側は、「当方の主張についても、一部理解をして頂けた判決であると考えている。今後の対応については判断を精査して決めることとしたい」とのべている。

中高校の校長が1年で解任

 梅光学院をめぐっては、中高校でも23日、昨年4月に現経営陣の依頼で就任したばかりの校長がわずか1年で解任されたことが明らかになり、関係者のなかに衝撃が走っている。新年度を目前に控えるなかで、理科など後任の教員確保ができていない状況もあり、来年度さらなる混乱が発生することが懸念されている。


2018年03月28日

准教授雇い止め訴訟、梅光学院大側に賃金支払い命令 地裁下関支部判決

毎日新聞(2018年3月28日)

 梅光学院大(下関市)を2016年3月に雇い止めとなった男性准教授(45)が、同大を運営する学校法人・梅光学院に対し、雇用関係の確認と未払い賃金の支払いなどを求めた地位確認請求訴訟の判決が27日、山口地裁下関支部であった。泉薫裁判長は「雇い止めは社会通念上不合理だ」として准教授側の訴えを一部認め、学院側に16年6月~今年3月の月額賃金43万3300円の支払いを命じた。

 判決によると、准教授は16年4月、同大専任教員として任期1年、最長3年の有期雇用契約で採用された。豊富な業務量をこなし、学生アンケートなどでも高い評価を受けていたが、17年2月24日、同3月末での契約終了を通知された。判決は大学側が直前まで次年度の授業やゼミ、学外講演の講師などの業務も割り振っていたことなどから「契約更新に期待を抱くことは当然だ」として、雇い止めが客観的合理的理由を欠くと認定した。

 一方、3年間の有期雇用契約後は無期契約に移行する約束だったなどとする准教授側の主張は退けた。准教授は控訴する方針。


2018年01月18日

注目される地裁下関支部の判断 雇い止め問題めぐり梅光学院学長、前学院長ら証人尋問

長周新聞(2018年1月18日)

注目される地裁下関支部の判断 雇い止め問題めぐり梅光学院学長、前学院長ら証人尋問
学生や同窓生らが傍聴につめかける

 梅光学院大学(下関市)の矢本浩司特任准教授が、平成27年度末での雇い止めの無効と地位の確認を求めた裁判をめぐって16日、証人尋問がおこなわれた。矢本浩司氏と、学院側から樋口紀子学院長・学長、中野新治前学院長の3人が証人として出廷した。山口地方裁判所下関支部には梅光学院の同窓生や教職員、学生などが傍聴に詰めかけた。38の傍聴席に対し、傍聴希望者は50人をこえ、多くの関係者がこの裁判の成り行きを見守っていることを示した。梅光学院側からも只木統轄本部長など3人が傍聴していた。

 裁判では、矢本氏を採用したさいの無期雇用への転換を期待させる発言の有無や、「1年更新の最長3年」とした契約書をめぐる理解なり認識、就任後の業績についてなど、さまざまな面から雇い止めの是非が争われている。ここ最近、学院側は「財政難」を強調するようにもなっている。

 証人尋問では改めて、矢本氏の雇い止めに至るまでの経緯が双方の証言から浮き彫りになった。同窓生や教職員が現経営陣の方針に疑問を抱き、運動を開始するきっかけとなった教員の大量解雇(自主退職、希望退職)による「経営改革」と大きくかかわっていたこと、初志を覆し矢本氏を雇い止めするに至った中野前学院長の態度も傍聴席の人人のなかで関心を呼んでいた。

 矢本氏は大阪の八洲学園高校の前職を辞して2015年4月に梅光学院に赴任した。在職中、学生からの授業評価が高かったことなどは周知の事実だ。

 しかし同年7月頃、本間政雄理事長、樋口学長、只木統轄本部長など執行部に弁護士や社労士をまじえ、人件費削減による収支の黒字化を進める話しあいが持たれた。この会議への参加を要請された矢本氏は、その場で中野学院長(当時)が最後まで首を縦に振らず、首切りをしない財政黒字化を主張していたことに共感し、「気骨のある人だと思い、協力したいと思った」とのべた。

 その後、中野氏の求めに応じて「首切りをしない財政黒字化」の方向を検討し、前職の学校での経験から、梅光に通信制課程を導入することなどを提案、その場合の試算をおこなうなどしていた。その過程では中野氏から理事1人の紹介も受け、副学長をまじえた4人で何度か話しあいを持っていたという。矢本氏は、執行部方針に逆行する行動のため、何度も中野学院長(当時)に「雇い止めになることはないか」と質問したが、当時人事権を持っていた中野学院長は「雇い止めすることはない」との趣旨の発言をおこなっていたとのべた。話しあいを重ねた結果、9月の理事会で中野氏が執行部の改変をおこなう「学院長声明」を読み上げることが決まったが、当日中野氏は声明を読み上げず、後日矢本氏のもとに謝罪に訪れた。矢本氏は、その後中野学院長から「しばらく待ってくれ」との連絡があり、待機していたところ、2月24日に突然、雇い止めの通告がおこなわれたと証言した。

 この点について中野氏は、希望退職を募る以外の方法について矢本氏に相談していたことを認めたうえで、「もし本当にやったら相当な混乱が起こる」と考えて学院長声明を読み上げなかったこと、その後、学院長声明を破棄するよう矢本氏に伝えたにもかかわらず、矢本氏が活動を続けたと主張した。

 中野氏の証言については、否定した内容について録音テープが提出されるなど、事実と証言の食い違いも見られた。

 樋口氏の証言は、梅光学院の経営がいかに厳しいかを強調する内容で、学院が人件費を抑えるために任期制を導入しており、雇い止めになった教員が多数いることをあげて矢本氏が特別でないことを強調した。ただ、具体的な経営状況を質問されると答えられないことが多く、最近、梅光が起こした借入についても言葉を濁す状況だった。

 教員が多数雇い止めになる一方で、「只木先生の働きが著しい」という理由から、只木氏については任期なしの雇用に転換したことも明らかになり、傍聴していた同窓生らは驚いていた。

 最終的な判断は裁判所が下すことになる。矢本氏の裁判は終盤を迎えているが、今後教員ら10人が起こした集団訴訟も始まっていく予定で、集まった人人は「まだこれからだ」と思いを新たにしていた。


2018年01月08日

雇い止めは無効、梅光学院大 地裁支部

■朝日新聞(2018年1月6日)

 学校法人梅光学院(下関市向洋町1丁目)による雇い止めは無効だとして,梅光学院大学の矢本浩司特任准教授(45)が地域保全などを求めた2度目の仮処分申し立てについて,山口地裁下関支部(池内継史裁判官)は雇い止めの無効を認める仮処分決定を出した。決定は昨年12月27日付。

 決定などによると,矢本さんは2015年4月に同大文学部の特任准教授として採用され,16年3月末までで雇い止めとされた。矢本さんは地位保全と賃金の仮払いを求めて仮処分を申し立て,地裁下関支部は9月,矢本さんの地位と同年6月以降の賃金の仮払いを認める決定を出した。だが仮払いされないため,17年1月に地位確認などを求める訴訟を起こし,再び仮処分も申し立てた。

 今回の決定は改めて矢本さんの地位を認めた,賃金の仮払いについては今年1月以降の分のみ認めた。

 矢本さんは取材に対し,「地位保全の主張が通り喜んでいる。訴訟では本人尋問が控えており,さらに自分の主張をしていきたい」と述べた。梅光学院は「係争中につきコメントは控えるが,今回の決定についてはこちらの主張もある程度認められたと考えている」とコメントした。(山田菜の花)

2017年11月09日

梅光学院大の給与・退職給与訴訟 大学側は争う姿勢 地裁下関

毎日新聞(2017年11月8日)

 下関市の梅光学院大の教授や准教授ら10人が同大を相手取り、給与と退職給与規定の変更の無効などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が7日、山口地裁下関支部(泉薫裁判長)で開かれた。大学側は「棄却を求める」として、全面的に争う姿勢を示した。

 訴状などによると、同大は昨年4月1日、教員給与と教職員退職給与規定を変更し、これにより教授らの給与や扶養手当などが大幅に減少し、大きな不利益が生じたとしている。原告によると、手当を含めた給与は月4万~7万円程度減額となり、原告の1人は大学側から規定変更後の退職金は約700万円減額となる説明を受けたという。原告側は、(規定変更による)不利益の程度が著しい▽労働条件変更の必要性が乏しい▽変更後の内容に相当性がない--などと主張している。

 裁判後、記者会見した原告の渡辺玄英准教授は「今の梅光学院大は、大学の中で自由に物が言えず、多様性が排除されている。優秀な教員が次々と辞めていき、学生たちが不利益をこうむっている。(同学院の)中学高校でも同様のことが起こり、教師が大量に辞めている。こうした現状を訴えるために提訴を決意した」と経営陣を批判した。

 同大は訴訟について「急速に進む少子化により、私立大学の経営を取り巻く環境は、年々厳しさを増している。賃金体系の見直しは経営改革の一環として、安定した経営基盤を確保することを目的に行ったもので、法令に則(のっと)って、慎重に進めてきた。訴訟が提起されたことは遺憾」などとするコメントを発表した。【上村里花】

[新聞記事]
山口新聞
朝日新聞
長周新聞
読売新聞

梅光学院を教授たちが提訴、「赤字」理由に相次ぐ雇い止め

長周新聞(2017年11月9日)

 梅光学院大学の教員有志10人が9月29日、学院が給与切り下げ等の労働条件を一方的に変更したことについて梅光学院を下関地裁に提訴した。7日午前10時から山口地裁下関支部でおこなわれた第1回口頭弁論には、教員や同窓生ら約50人が傍聴に詰めかけ裁判を見守った。同日、ひき続き教員代表2人が弁護士、私大教連の代表とともに記者会見を開き、提訴に踏み切った理由と梅光学院の現状について明らかにした。

 今回教員有志(教授、准教授)が提訴したのは、梅光学院大学が2016年4月1日に労働者である教員らと合意形成しないまま給与・退職給与規定を変更し、本俸の大幅な切り下げ、通勤・住宅・扶養手当の切り下げや廃止、退職金の大幅な切り下げをおこなったことについてである。

 2013年に本間政雄氏が理事長に就任して以後、「赤字解消」「人件費比率の削減」を掲げて「改革」を始めた現経営陣は、中高の40歳以上のベテラン教員に対し人材コンサルタント・ブレインアカデミーの「研修」と称する退職勧奨をおこない、2016年3月末で14人を退職に追い込んだ。これと同時進行で、大学では給与・退職金規定の変更を進め、「辞めなければ退職金が減る」などの形で退職勧奨をおこない、大学では同年、教員11人が学院を去り、その後も毎年のように雇い止めが続いている。原告団の教員らは、この給与・退職給与規定変更は無効であり、差額分の給与・退職金計1500万円を支払うことを求めている。

 この規定変更によって、現時点で学院側が開示している資料からは本俸がそれぞれどれだけ減額となったか特定できない状態であるが、おおよそ月額4万~7万円の減額となっており、2人の退職者(1人は今年度末退職予定)については退職金が700万円減額されると説明を受けた教員もいるなど、大幅な切り下げとなっている。

 給与等の削減にあたって学院側は、「流動資産が今後10年で枯渇すること」「人件費が高いこと」をあげている。しかし近年、梅光学院大学の学生納付金は増加傾向にあり、流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は2016年度648%と全国平均の242%を大きく上回っている。負債比率(自己資金に対する総負債の割合)も2016年度は7・5%と全国平均の26・7%と比べてきわめて良好な数値であることなどから、「流動資産が今後10年で枯渇する」状況ではない。

 また人件費比率の削減を進めてきた梅光学院大学では、2016年度の人件費比率は44・5%と全国平均の54・9%を下回っており、学問をおこなう大学においてもっとも重要な要素である教員の人件費削減がほかを上回るペースでおこなわれている。教員側は、これらの状況から学院側が主張する「10年後に流動資産が枯渇する」状況にはなく、大幅な給与切り下げをおこなうほどの危機的な経営状況ではないことを明らかにした。

 また一方で同時期(2016年1月5日)の常任理事会において理事長、学院長、学長など執行部の役員報酬を増額する議案を提出したほか、職務手当の支給方法を変更し、役職の掛け持ちで執行部に多額の手当が支給されるようにしていることの矛盾を指摘している。

 例として訴状では、2016年度、樋口学長(現在は学院長も兼任)は学長(10万円)、大学学術情報センター長(5万円)、大学博物館長(1万円)を兼任。只木統轄本部長は大学事務長(4万円)、大学文学部長(5万円)、キャリア支援センター長(5万円)、アドミッションセンター副センター長(1万円)、中高校長特別補佐(支給額不明)をかけ持ちしていたことを明らかにしている。

 さらに、この労働条件の変更にあたっては、労働者過半数代表者を選出する必要があるが、教授会で立ち上げた選挙管理委員会は、学院側が全教職員名簿等を示さないなどして事実上凍結された。そして施行後の五月になって学院側から候補者が示され、執行部に対して実名のわかるメールで賛否を示すよう求められるなど、適正かつ民主的な手続きをへずに労働者過半数代表者が選出された経緯を明らかにし、就業規則の変更が無効であることを訴えている。

記者会見 職員や学生の声伝える

 午前11時半から市政記者クラブでおこなわれた記者会見には10人を代表して渡辺玄英准教授(文学部)、黒田敏夫教授(子ども学部)の2氏が弁護士とともにのぞんだ。

 渡辺准教授は、「今の梅光学院大学の現状は、教育の場としての大学、言論の場としての大学が壊されることが起こっている。中高も同様だ。私たち原告団は給与のこともさることながら、そこに強い危機意識を持っている」と今回提訴に踏み切った理由についてのべた。現在、大学内で自由に発言できない雰囲気があり、多様性が排除され、異論を唱えた者は排除される状況を明らかにし、原告団に加わることは教員にとってハードルが高いものであること、多くの教職員が怒りを持っているなかで10人が立ち上がったとのべ、今後原告団が増える可能性も示した。

 もっとも重要なこととして、教育の場としての大学が崩壊している現状を強調し、「今回のことで教員が大勢減ったためゼミが開かれない、教員がいてもゼミが開かれないことが起こっている。優秀な教員が辞めていき、期待して入学してきた学生たちが学べない状況にある」とし、これについて学生らがこれまでに教員の解雇撤回を求める署名や、ゼミについて質問状を提出するなどしているが、学院は一度たりとも回答していないことを明らかにした。

 教員養成課程を持ち、教員を志す学生が入学してくる大学で、労働者過半数代表を選出するにあたって、立場の弱い労働者の多くの人たちが、執行部側か反執行部側かの踏み絵を踏まされることが平然とおこなわれる一方で、学生たちに教育を語る矛盾に原告団の多くが怒りを持っているとし、「教育の場としても、学問や言論の場としても崩壊し、学生も生徒もその不利益を大きく被っている。これは、ひいては日本の文化が破壊される一つの形ではないかと認識している。そういう意味で、給与のこともさることながら、名前をさらしてでもたたかわなくてはいけないと考えている」と決意を示した。

一昨年三月来の経過 深まる経営陣への不信

 梅光学院をめぐっては、2015年3月末で中高・大学ともに大量に教員の首切りをおこなったことをきっかけに、現経営陣の「財政赤字の解消」「人件費比率の削減」を掲げた「改革」に対して、生徒・学生、教員や保護者、同窓生らが学院の正常化を求める運動を展開してきた。2016年2月に突然雇い止めを通告された矢本特任准教授も裁判を通じて復帰を求めているところだ。

 このなかで学内の問題を隠蔽するかのように恣意的な雇い止めや体制変更があいつぎ、教育機関として体をなさない状況が深刻化してきた。日を追うごとに物いえぬ空気が強まり、精神を病んで休職したり、突然のハラスメントに疲弊して退職していく事務職員も後を絶たない。

 教員有志の調査によると大学では、教員移動率がここ3年間、毎年3割にのぼっており、「大学人がほとんどいなくなってしまった」といわれている。かつて50人規模だった文学部の教員は30人台にまで減少し、古典、近世、中世、近現代、創作と全分野を網羅する教授陣がそろい「文学の梅光」とも呼ばれた文学部はすでに惨憺たる状況にある。資格を持った専門教員がいなくなったため教職課程が一時凍結されたり、ゼミ担当教員が途中で雇い止めになったり、教員を排除したカリキュラム編成によって卒業が危ぶまれる状況すら生まれるなど、しわ寄せは学生たちに及んでいる。

 専門教員を削減する一方で、ANAエアラインスクールや東京アカデミーの公務員講座、教員養成講座など、民間業者と提携し、契約のために学生たちに講座にするようハッパをかける、あるいは公務員試験に合格すれば「講座のおかげだというように」と指導が入るなど、本末転倒した状況が蔓延している。「毎年1億円の赤字を出している」として大リストラがおこなわれた中高の現状はさらに深刻である。教育機関をうたいながら、学生なり生徒を金ないしは物としかみなさない現経営陣への不信は深まるところとなっている。

 経営陣の主張するとおり、たしかに人件費は以前と比べて2億円ほど圧縮された。しかし、提携する業者やブレインアカデミーへの支払い、労働組合との協議などのさいに只木氏に常に同行する弁護士費用などを含むといわれる管理経費は2倍化、教育研究費も増額するなどしている。「財政再建」どころか資産は減少している現実がある。

 「少子化による大学の危機」を煽りながら、政府・文科省が進める「大学改革」のもとで、経営陣への権限集中がおこなわれ、梅光学院と似たような状況は全国各地で頻発している。学問・研究の崩壊に大学人らが声を上げるなかで梅光学院のたたかいは注目を集めるところともなっている。140年にわたる伝統を持つ教育機関である梅光学院の正常化に向け、関係者らは「新たなたたかいの始まり」と決意を新たにしている。


2017年11月03日

梅光学院大学有志、労働条件の不当な不利益変更等に関する訴え

労働条件の不当な不利益変更等に関する訴え

2017年11月2日

報道機関及び関係各位

梅光学院大学 教員有志
幹事 渡辺玄英

労働条件の不当な不利益変更等に関する訴え

 
梅光学院大学は、2016年4月から教員の労働条件の不利益変更を実施しました。
それに対して、その変更は一方的かつ不当なものであると、教員10名が下関地裁に提訴しました。この件についてご説明をさせていただきたく、ここに記者会見のご案内を申し上げます。

一、概要  
一方的かつ不当なかたちで次の労働条件が変更された。
・本俸の大幅な切下げ
・手当(通勤、住宅、扶養など)の切下げや廃止
・退職金の大幅な切下げ

二 問題点
・労働条件の不利益変更は、労働者と経営者との十分な合意形成が前提とされているが、本件における合意形成ははなはだ不十分かつ妥当性を欠くもの、と原告側は認識している。
・経営側は経営の悪化を理由としたが、その主張を根拠とする程度の緊急性はなかった、と原告側は認識している。
・不利益変更の必要性や時期や切下げ幅などの内容に関して、経営側は十分に誠意をもって協議を行わなかった、と原告側は認識している。
・不利益変更は2016年4月から一方的に実施されたが、その内容範囲がバランスを欠いている
・賃金手当等の切下げを実施するにあたっての優先順位に多くの疑問がある。
・経営側執行部は同時期に、執行部の常任理事の報酬アップを画策していた。
・労働条件の関わる就業規則変更の手続きに疑義がある。

三、日時場所
 下関市役所の記者クラブ(を希望します)
 2017年11月7日 11時30分~

四、出席予定
 原告団から二名。弁護士二名。支援団体一名。

連絡先・・・渡辺玄英 {電話 090-9585-9979}

以 上

2017年04月29日

梅光学院1300人名簿紛失事件、「トイレに行って」は嘘だった。

長周新聞(2017年7月26日)
 ∟●梅光学院1300人名簿紛失事件、「トイレに行って」は嘘だった。

2017年04月22日

梅光学院大学の学生情報資料が盗まれる

山口朝日放送(2017年04月19日)

下関市の梅光学院大学は、学生の名前や在籍学部など個人情報が含まれた資料が盗難にあったと発表し、樋口紀子学長が会見で「本当にこのようなことになり申し訳ありません」と謝罪しました。

梅光学院大学によりますと盗まれたのは今年春の受験生や今年度の学生のリストなど延べ1336人分の資料です。

資料には名前や在籍学部、出身校のほか入試の合否などが書かれていましたが、住所などは含まれていませんでした。

17日の夜に29歳の男性職員が車で帰宅途中に下関市内のパチンコ店に立ち寄った際、
書類を入れたカバンを車に置いていたところ車上荒らしにあったということです。

職員は車に鍵をかけていましたがガラスを割られて盗まれたということです。

大学では学生の個人情報が入った書類の持ち出しを禁止していましたが、男性職員は翌朝早くに出張があるため持ち帰っていたということです。

19日夕方現在で二次被害などの報告はないということですが大学では事実関係を確認後、男性職員を処分するとともに学内の情報管理を徹底したいとしています。

長周新聞(2017年4月21日)
「千三百人の情報流出 梅光学院の学生リスト盗難 学院長ら会見「改革」で学内劣化

2017年03月23日

教育体制崩壊露わな梅光学園、卒業も資格取得も困難に

長周新聞(2017年3月22日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20170322.pdf

教育体制崩壊露わな梅光学院 
梅光の未来を考える会が報告会
卒業も資格取得も困難に

2017年3月22日付

 
 現役大学生が切実な訴え

 下関市で幼稚園、中高、大学を運営する梅光学院をめぐる問題は、昨年度末、多数の教員の雇い止めをきっかけに表面化して1年を迎える。学院の正常化を求めて運動してきた「梅光の未来を考える市民の会」は18日、下関市生涯学習センター宙のホールで報告会を開いた。報告会では「赤字解消」を掲げた改革のもとで、教育体制・教育内容ともに崩壊に拍車がかかっている現状が明らかになり、参加者は新たな怒りを燃やしつつ、子どもらのために最後までたたかうことを誓いあうものとなった。

中高では教員の退職者は14人

 今回、現役の大学生らも複数参加した。2回生の学生たちがマイクを握り、あと2年間通っても卒業できない、もしくは目標にしていた資格がとれない可能性に直面している現状を訴えた。
 大学では、幼・小・中・高校教員免許、保育士資格、司書資格など、資格取得をうたって学生を募集してきた。学生数は増加したが、教員を辞めさせて教える側が不足しているうえ、時間割編成も教員を排除しておこなったことから、文学部では、真面目に単位をとり、成績のいい学生ですら卒業が危うい可能性が浮上している。ましてや資格取得との両立はカリキュラム上難しい。学生の将来をも左右する問題であり、早期解決は待ったなしだ。
 問題が発覚した昨年9月、学生らは樋口学長にシミュレーションを出すことを申し入れたが、12月に学長は「シミュレーションをしていない。するのは難しい」と回答。不足している単位(とれなければ卒業が難しい)を補うために、海外語学研修やイングリッシュキャンプなど、当初説明していない金銭のかかる授業や、そもそも受けることのできない授業を示したという。
 学生の1人は、「“不足する単位と資格をとる授業が重なった場合はどのように対処すればよいか”という学生の質問に、学長は“資格よりも卒業を優先しろ”といった。資格をとるために入学したことを伝えても、“でも卒業が優先だろう”という不誠実な答えが返ってきた」と憤りをもって発言。別の学生も、「教職課程や図書課程といった課程科目をとっている学生がたくさんいるが、学長に“資格よりも卒業を優先しなさい”といわれた。夢があって資格をとろうと入学したのに、資格がとれないかもしれない状況になり、怒りを感じている学生もいる。資格取得にはお金がかかる。親も怒りを感じている」と発言した。
 さらに、先日2回生に対して来年度から始まるゼミの説明があり、現在の3回生がとっているゼミが開設されないことが知らされた。とくに文学部の地域文化専攻、東アジア言語文化専攻は各1ゼミしかない。選択肢のない状況に学生のなかで怒りが広がっていることも明らかにした。
 学生たちは「ある先生に学びたいと思って2年間授業を受けてきたにもかかわらず、学長の考えでゼミを選ぶことができなくなったことに、みんなが怒りを覚えている」「ゼミのことも卒業のことも、今どうにかしないととり返しがつかなくなる。よろしければ助けてほしい」「残された時間は2年間しか残っていない。安心して学べる環境がほしい」と切実な思いを訴えた。

学生が主役というが… 広がる学生の怒り

 司会者が報告した学院の全体状況は、学生らの訴えに加えて参加者の怒りを強めた。
 大学では、今年1月の教職員の新年会の場で、長らく活動実態がなくなっていた教職員会(互助会)の解散が、学長によって宣言された。まともな議論もなされず、教職員が積み立ててきた積立金は一部を返還し、残りを学院に寄付する方向で話が進んでいる。
 また、新年会も宴たけなわとなったころ、学院出身者が前に並び校歌を歌った。歌い終わるとある職員が、校歌の最後の「玉なし」という一節をとりあげて「女子校だから玉なしで」と発言。これを聞いた男性教職員の複数は興奮し、玉なしを性的ニュアンスに絡めた発言を連呼したという。女子職員は屈辱感に怒りを感じたが、学院長、学長、統轄本部長の3者は笑っており、セクシュアルハラスメント防止委員会の長を務める副学長も事態を放置していた。
 司会者は、「校歌は学院のアイデンティティーだ。その一節を性的ニュアンスに絡めてからかうのは、卒業生を含む先人たちが築き上げてきた学院の伝統の品位を著しく貶める行為であり、ミッションスクールに奉職する人間として恥ずべき行為だ」とのべ、これらの人人が今年、大学開学50周年を祝う前面に立つことに疑問を呈した。
 似たような状況は、先日おこなわれた就職対策の研修旅行でも見られたという。この北海道までの船旅には、就職先決定済みの4年生と1、2年生の希望者が参加した。引率した教職員らは研修期間中、飲酒する場面の画像を学生に送り、学生ら(未成年を含む)を飲酒に誘うという無責任な態度で、学生が二日酔いの引率者の尻ぬぐいをする事態も起こったとのべた。
 また、今年度も3月末で大量の雇い止めや退職者が出ていることを明らかにした。大学では、子ども学部の授業評価が高い教員が雇い止めとなったことに、学生らが撤回を求める署名をおこなった。同学部の半数が署名したが、樋口学長は回答していない。そのほか日本文学研究と演劇評論家の教員、秘書を含む3人の職員が雇い止めになった。さらに、4人の教員が来年3月での雇い止めを通告されている。
 これらに対する学生らの怒りは広がっており、卒業式後の祝会を、子ども学部のほとんどの学生がボイコットする様相だ。文学部も申し込みは1人という状況になっており、「学長は“学生が主役の大学”と口ではいうが、学生が主役ではなく自分が主役だ」と指摘した。
 中高では校長・教頭を含め退職者は14人にのぼり、うち常勤教員が7人も入れ替わる。ブレインアカデミーの紹介で今年度来たばかりの教員も含まれている。退職する教員らの、「昨年3月30日に“あなたが来てくれないと授業に穴が開くのでぜひ来て下さい”と頼まれて来たが、来年度の契約はしないといった」「本学で勤めることが夢だった。生徒とのかかわりを考えると辞めることは残念だが、神様がこの学校であなたの役割がないといわれたんだ」などの声を紹介した。

現状を広く知らせよう 学院内外協力して

 こうした現状に報告会では教師OBや同窓生などから、怒りとともにあきらめずたたかい続けるとの発言があいついだ。
 2010~12年の13年間、中野学院長の依頼を受けて中高の校長を務めた男性は、教職員の協力も得て中学校の生徒数は倍になったにもかかわらず、解任された経緯をのべた。在職中から只木氏を中高に寄せ付けないようにしていたこと、学校運営について後任の校長にくり返し意見してきたにもかかわらず、「梅光の宝」である教員を辞めさせるに至ったことへの憤りを語った。
 1、2年目の教師のみで会議をするなど、「梅光の精神を持っている人たちを追い払い、自分に顔が向いている人だけで運営しようとしている」現状を語ったうえで、梅光は切羽詰まった状況にあるが、市民の会の運動や矢本准教授の裁判が抑止力になっていることを明らかにし、「絶対に負けないという気持ちだ」と力強くのべた。
 矢本浩司特任准教授も、昨年九月の仮処分申請の完全勝利に続き、学院が起こした異議申立でも学院の主張が退けられたことを報告。同時に進行している本裁判の経過等にもふれたうえで、「メールやライン、電話などで励ましてもらい、野菜や果物、弁当をつくって頂いたりすることが強みになっている」と謝辞をのべた。昨年度末、ブレインアカデミーの研修で辞職に追い込まれた元教員も発言した。
 福岡で梅光を考える会を立ち上げた女性は、昨年7月以来の活動を報告した。昨年の同窓会総会で下関の熱気にふれて福岡で臨時総会を開くと、問題を知る同窓生約30人が怒りに燃えて集まり、会発足へとつながった。弁護士などから「手遅れだ」といわれながらも、「教師や学生・生徒といった当事者ではない同窓生に何ができるか」とその方法を模索し、①感情に流されることなく情報を正確に知ること、②できる限り身近な人に広げていくこと、③矢本先生の裁判を支援することの3つの旗を立て、毎月集まっている。
 女性は、同窓生という一点で気持ちが通じあう光景が生まれており、「梅光で大事な物を受けたことが私の人生を変えた」「どん底に陥ったときに支えてくれた」という声も多数寄せられたことを紹介し、その思いに背中を押されて活動してきたとのべた。「今の若い人たちは、将来の就職口が保障されている時代の私たちとは違い、いつ無職になるか、ホームレスになるかわからないという恐れを持ちながら暮らしている。職場で人を育てなくなり、即戦力を求めるので、学校が専門学校化することはやむを得ない現状もある」としつつ、この間の同窓生の反応から、教育とは目前のノウハウ以上に「人生のなかでくずおれたり、立ち止まったときに支えとなる、魂・人間を育むものでなければならないと改めて思う」と語った。
 「静かな怒りを持って活動していく」という会員の言葉を紹介し、「カッとなる出来事が多いが、静かな怒りを持ち続けて活動していきたい。それは中高、大学にいる生徒たちが魂・人間の根っこを育てられたいと願い、人を育てたいと願う先生たちがいるからだ。私たちはその場に携わることはできないが、集まり続けることでそれを支える一つの枝になるのではないか」とのべ、下関との連帯を呼びかけた。
 「梅光だけは守らないといけないと思っている市民が外にたくさんいる。決して孤立していないので、内部の人も頑張ってほしい」との発言もあり、学院の内と外が支えあい、協力しあって運動を進めること、現状を一人でも多くの人に伝え、世論にしていくことが強い力になることを確認しあった。


2017年03月22日

梅光学院大学問題、センター試験中に洗礼式 当局の責任を問う声

長周新聞(2017年3月17日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20170317.pdf

2017年02月18日

梅光は正常化に向かったのか、更なる教員の雇い止め続 1年経て混乱に拍車

長周新聞
 ∟●梅光は正常化に向かったのか、更なる教員の雇い止め続く

梅光は正常化に向かったのか
更なる教員の雇い止め続く
1年経て混乱に拍車

2017年2月10日付

 
 下関市にある梅光学院(幼、中高、大学)では、昨年度末で中・高、大学ともに大量に教師らの首切りをおこなったことをきっかけに、現経営陣の「財政赤字の解消」を掲げた「改革」に対して、生徒・学生、教師、保護者、同窓生らが学院の正常化を求める運動を展開してきた。このもとで学内の問題を隠蔽するかのように恣意的な解雇や体制変更があいつぎ、教育機関として体をなさない状況がさらに深まっている。生徒や学生たちがあたりまえに学ぶことができない環境になっていることを誰もが心配し、下関市で140年にわたって伝統ある教育機関としての地位を築いてきた梅光学院の正常化を求める世論はますます強いものになっている。1年をへてどうなっているのか、取材にかかわってきた記者たちで論議した。

 学生かき集め学習環境は貧弱 子ども学部の学生が署名提出

 A 梅光の問題が表面化したきっかけは、昨年度末で中高のベテラン教師が14人、大学で11人が辞職に追い込まれたり、解雇されたことだった。その辞めさせ方があまりにもひどいと、かつての梅光を知る下関市民に衝撃を与えた。中高の生徒が真っ先に動き始め、慕っていた先生の解雇を止めようと署名運動をし、大学では文学部の矢本准教授の雇い止めに対して学生たちが署名を集めるなど行動に踏み出した。梅光学院始まって以来の大リストラに、同窓生や保護者らも危機感を抱き、「梅光の未来を考える会」を設立して経営陣の退陣と学院の正常化を求める署名運動を展開した。しかし、経営陣はその声に耳を傾けることもなく、多くの教師が学院を去った。
 しかし「改革」した結果ベテラン教員が多数いなくなり、県内外でブレインアカデミーが非正規教員をかき集めるなどして何とか今年度をスタートしたが、中高にせよ大学にせよ、薄氷を踏むような体制で年度当初からミスや混乱が続き、今ですら落ち着いて勉学に励む環境ではないといわれている。それなのに今年度末でさらに教職員を雇い止めするという。
 B 大学では子ども学部の30代の若手教員に対して1月半ばに雇い止めが通告された。学生の授業評価も高く、信頼の厚い教員だったようで、学生も教員らも継続雇用を当然視していた存在だった。それが「積極的ではない」という理由で雇い止めになり、かわりに公募で50代の教員が雇われることになった。それを知った子ども学部の学生有志が契約更新を求める署名をとりくみ、7日に樋口学長に宛てて提出した。事前に4年生が学部長に嘆願書を出す動きもあったようだ。
 学生有志から届いた文書によると、1月25日から2月1日までのわずか8日間で225人の署名が集まったそうだ。「学生の悩みや思いに耳を傾け、親身になって相談に乗ってくださり、教諭や保育士を目指す学生たちへの教育や指導も丁寧にしてくださるため、学生からの信頼度や人気も高く、今後もこの大学で教鞭をとり続けてくださると信じていた」と記している。続けて指導を受けることは、学生が本来持っている安心できる環境で質の高い教育を受ける権利であること、後輩たちのためにも将来にわたって梅光学院に残ってほしい、という強い願いを記している。この要望に対する回答を、2月10日午後5時までに全学集会を開催するか、学内全掲示板とポータルサイトに掲示するかのいずれかの形で示すことを求めている。学生たちの切実な思いに大学側がどのような対応をするか注目されている。
 C この教員は3年生のゼミも持っていた。卒論のテーマを定め、これから準備していくという時点で担当教員がいなくなり、かわりに来るのは専門分野の違う教員だ。ゼミがどうなるかも知らされず、放り出された状態で年度末を迎えている学生たちの不安ははかりしれないものがある。
 子ども学部では、公立小学校の教師をめざす学生の就職活動にもっともかかわっていた教員も今年度末での雇い止めが決まっており、公立保育園・幼稚園の窓口になってきた教員2人を含む3人に来年度いっぱいでの雇い止めが通告されている。昨年、教員らの反対を押し切って子ども学部の定員を拡大したばかりだが、今度はつぶすつもりなのかと思うほど、中核を担っている教員を首にしようとしている。
 A 学院全体で今わかっているだけでも、大学では子ども学部の教員2人、文学部の教員3人の計5人、職員ではアドミッションセンターの20代と50代の職員2人と秘書が1人、今年度いっぱいで雇い止めになるようだ。中高では10月から休職していた校長が2月末で退職届けを出しており、今でも校長不在という異常事態だが、教頭も他校に就職するために3月末で退職するし、社会科の教員も雇い止めなどで2人退職するという。具体的に考えたとき、来年度の学校運営が成り立つのか心配になる。
 D 今回は学院に協力的だった教職員も雇い止めになったという。理由なく切られるため大学内は戦戦恐恐という空気もあるようだが、客観的に見ると、むしろ経営陣の方が学内の様子を知られることを極度に恐れていることをあらわしている。
 この間、「赤字経営」といいながら、本間理事長や只木統轄本部長らは月額100万円の法人カードを使い放題だとか、理事長が下関に来たときはグランドホテルの最上階を定宿にしているとか、役員報酬を1000万円以上に引き上げることを要求したことなど、さまざまな問題が明らかになった。とくに学院の資産30億円(現在は28億円)の半分をつぎ込んでいる運用について実態解明を求める世論が強まってきた。理事会も評議委員会も意に添わないメンバーを入れ替えて外部に経営実態が漏れない体制をつくったが、どこからか学内の様子が広まるので、本部の2階にあった総務を1階に降ろして狭い部屋に押し込めたり、中高の運動会を部外者立ち入り禁止にしたり、閉鎖的な対応が続いている。開かれた学校でみんなが安心できる教育環境が望ましいだろうに、一体何を隠したがっているのだろうかと不思議がられている。学内で疑わしい教職員を血眼になって探している様子もたびたび話題にされている。やましいことが何もない以上、堂堂としていればよいのだ。何をそんなに警戒しているのかと逆に関心を呼ぶものだ。

 紙おむつすら買わない 保育士めざす実習

 B 本間理事長や只木統轄本部長、中野学院長、樋口学長ら経営陣が自慢しているのは、大学入学者の「V字回復」だ。少子化のもとで、私学にとって学生数の確保が死活問題であるのは間違いない。しかし梅光の場合、問題なのは学生をかき集めておいて学ぶ環境は驚くほど粗末なことだ。人事にもその姿勢が出ているが、故・佐藤泰正氏が常常いってきた「一人一人を大切にする」梅光の教育を否定して、学生=金ないしはモノとしか見ない傾向が顕在化している。
 A 保育士をめざす学生は、おむつ替えや沐浴の実習などをするが、練習に使う紙おむつは使い回しでベロンベロンだと嘆いていた。昨年頃、非常勤講師が「紙おむつを買ってくれ」と頼んだら断られたようだ。その話を漏れ聞いた学生が購入の要望をあげると、逆に非常勤講師が叱られたという。沐浴の練習も給湯器の湯が出ないから、冷たい水を使っている。赤ちゃんの沐浴を冷たい水でするのか? 離乳食をつくる練習をしようと調理室に行けば、ホコリをかぶっている鍋等を洗おうにも洗剤はなく、タオルはカピカピになって不衛生きわまりない状態。「保育士になりたい」と志して梅光を選んで入学したのに、基本的なことを学ぶことができない。
 B 最近ではピアノが3台なくなって、気づいた学生たちのあいだで「売られたようだ」と話題になっている。それも試験の直前で、家や下宿先にピアノを持っていない学生が練習に使う時期だ。「電子ピアノを入れる」という説明があったものの、コンセントがなく、今になって工事が始まっているという。ピアノは調律さえすればいくらでも使えるし、幼稚園・保育園ではピアノを使うところが多いのに、なぜ電子ピアノをわざわざ買うのか? との疑問を学生たちは持っている。
 A 「学生生活充実度2年連続NO1」の横断幕を掲げているけれど「どこで調査したのか?」というのが学生の実感だ。まともに学べないうえに、頼りにしていた教員が次次にいなくなる。卒論も就職も不安ばかりだ。子ども学部の場合、幼稚園教諭、保育士、小学校教師の3つの免許が取得できることを売りにしているが、カリキュラム上、現1年生は3免許を取得することは不可能だといわれている。入学当初は「介護士の資格がとれる」という話だったのに、いざとろうとすると「開講していない」といわれた学生もいたりと、学費を払っている親たちが知ったら詐欺だと思うのではないか。
 B ANAエアラインスクールとの提携や東京アカデミーの公務員講座、教員養成講座など、民間業者との提携を売り出しているが、この契約のために学生たちに講座に参加するようハッパを掛けるという本末転倒な状況も生まれている。
 「成績がよければ受講料を安くする」などするから、よけいでも金がかかるようだ。派手にこうした提携を売り出しているが、それが逆に「この学校は自分の大学で教育ができないのだろうか」という印象を深めるものにもなっている。

 混乱は大学改革の産物 文科省天下り

 C なぜこれほど学生、生徒や大学・中高の教員ら、保護者や同窓生らが意見しても聞く耳なく暴走できるのか。背景には教授会の権限を弱め、理事会・学長への権限集中を図る文科省の動きがあり、実は梅光だけでなく全国の私立大学でも似たような事件が頻発している。「ガバナンス強化」などといいながら、逆にチェック機関の無力化や、気に入った人物中心の統治などがはびこるようになり、理事会のいいなりになって意見しない、理事会にとり入るなど、大学の自由な雰囲気を破壊する事態が進行している状況を危惧する大学人も少なくない。これは国立大学で先行してきたものでもある。
 文科省天下りの本間理事長らが、こうした動きを知ったうえで梅光学院に乗り込んで来て、もともと家父長的校風で理事会権限の強かった梅光で「改革」を進め、経営陣の権限を利用して現在のような混乱状況をもたらしたともいえる。最近、文科省が組織ぐるみで天下り先を斡旋していたことがとり沙汰されている。OBが月2日の勤務で大手保険会社から年収1000万円を得ていたとか、早稲田大学に天下った人物が1400万円の契約だったなどなど、今更ながら驚いたように報じられるが、月4日ほど梅光学院に来て報酬を得ていく本間理事長とそっくりだ。理事会を内部の教職員ばかりにしてしまったので、いくら報酬を得ているのか、1000万円以上に引き上げる案が通ったのか、教職員も含めて知りようのない状態になっているが…。
 D 「中高が毎年1億円の赤字を出している」という理由で「改革」を始めたが、むしろ資産は減り、赤字も拡大している。10年の長期運用に回している13億円とも17億円ともいわれる金も現時点でどれだけの損失を出しているのか明らかにするべきだろう。28億円のうち動かせる金は半分の15億円程度だという。仮に毎年1億円以上の赤字が出続けたとき、梅光学院の存続は時間の問題になってくる。今年の新年会の場では、実質機能していなかった教職員会を解散して、300万円ほどの積立金のうち一定額を返却し、残りを学院に寄付する提案もあったという。金に困っているのか? と思わせている。仮に梅光が本当に行き詰まったとき、本間理事長なり只木統轄本部長なりが最後まで責任を持って梅光に残るだろうか。
 C この間、同窓生や父母、学生だけでなく市民を巻き込む形で、140年にわたって培ってきた梅光の教育を子どもたちのために守ろうという運動が広がってきた。昨年度は「文学部の問題だ」と思っていた学生たちも、「大学全体で考えなければ」と連携をとりつつ動き始めている。今の大学なり中高の現状をおおいに父母や市民に知らせ、世論を強めていくことが求められている。
 A 梅光の混乱状況は文科省天下り問題や大学改革の産物であって、決して梅光に限った特別なものでもない。全国の私学や国公立でも似たような問題が起こっている。しかし、余りにも酷すぎる。佐藤元学院長や歴代の教員たちが聞いたら嘆くのはあたりまえだ。仏作って魂入れずといったら宗教的に違うのかもしれないが、その逆で魂が抜かれていくような事態にも見える。女子教育とかかわって歴史的な伝統も蓄積してきた教育機関が、これほど横暴によそ者に踏みにじられて良いのだろうか。30億円の現金資産の心配もさることながら、教育機関として変質してしまうことの損失の方が甚大だ。少なくとも、中高、大学にしても子どもたちや学生たちが置かれている状況はかわいそうの一言に尽きる。教員がモノ扱いされてコロコロ首を切られるような状況は改めさせないと、安心して勉学に励むことができない。
 B 理事長が月4~5日で報酬を得ている実態についても「ここにもいるよ! 天下り!」といって全市的に周知するとか、そのもとで学生や生徒たちがどのような難儀を強いられているかを世間に訴えることも必要ではないか。メディアも踏み込んでとりあげないが、大学改革の最たる例として下関で起きている実態を全国に発信することが重要だ。宗教的には「オンヌリの乗っとり」とかさまざまな背景もあるのかもしれないが、間違いなく梅光が別物にされようとしている。そして、気付いた時には現金資産もスッカラカンになっていた――というオチすら想定される。大学や教育機関は学問探究や子どもの教育が中心的な仕事であって、もうけるためにあるのではない。いくら少子化とはいえ、そこをはき違えたなら経営も成り立たない。その存在意義や教育理念をはっきりさせて正常化の力を発動することが求められている。


2016年09月28日

梅光学院大准教授雇い止め、地裁下関支部が無効決定

News47(2016/09/25)

梅光学院大(下関市)の矢本浩司特任准教授(44)が雇い止めは無効として地位保全などを求めた仮処分申し立てについて、山口地裁下関支部(池内継史裁判官)は、同大を運営する学校法人梅光学院に地位保全と賃金の仮払いを命じる決定を出した。決定は2日付。 矢本氏は昨年4月に同大文学部特任准教授として採用された。1年後の今年3月末限りで雇用契約終了を言い渡され、雇い止めとなった。決定では「1年間で三つの論文を執筆し、学生の授業評価アンケートで極めて高い評価を受けた。出前授業やオープンスクールの体験授業を任され…

2016年08月26日

混乱やまぬ梅光学院、隠蔽・恫喝では解決にならず

長周新聞(2016年7月25日付)

隠蔽・恫喝では解決にならず
混乱やまぬ梅光学院
子供のため教育機能回復を

 【本紙記者座談会】
 
 下関市の梅光学院(幼稚園、中・高校、大学)では、「財政赤字」「人件費比率の削減」を掲げて、今春に中・高校のベテラン教師14人、大学でも11人を退職に追い込むなどして、メンバーが大幅に入れ替わったもとでなんとか1学期を終えた。このなかで、とくに教師が半数近く入れ替わった中・高校や経理2人がいなくなった事務部門では深刻な崩壊状況があらわれている。経営陣が進める一連の「改革」に対して、3月以降、教職員や生徒・学生、保護者、同窓生らが「梅光学院の未来を考える会」を結成して方針の転換と理事長の退陣を求める署名(1万9000筆到達)を広げてきた。それは100年の歴史を誇る梅光学院が、損得勘定のみに身を委ねて混乱するのではなく、代代に渡って大切にしてきた教育理念を継承し、子どもたちが安心して成長できる学びの場として機能を回復するよう、願いがこもったものだった。ここまできた現状について、関係者はどう見ているのか取材し、記者座談会をもって論議した。
 
 経営陣はなぜ怯えているのか

 司会 梅光の問題が表面化したきっかけは、昨年10月に40歳以上の教師14人を人材派遣会社・ブレインアカデミーの研修で辞職に追い込んだことだった。そのやり方が人格否定も含めてあまりにひどかったことから世間が驚いたわけだが、取材してわかったのは、少子化で経営に苦労している地方の私学に文科省キャリアや他の大学で行き場を失ったよそ者たちが乗り込んできて、あれよあれよという間に実権を握り、「改革」といって教育の場を「もうかるか、もうからないか」のビジネス基準で様変わりさせてしまったことだった。教員の大量首切りも、要するにカネのかかるベテラン組を労賃の安い有期雇用に貼り替えただけだった。一学期を終えて現状も含めて論議してみたい。
 A 中・高校では、昨年10月に40歳以上の教師を対象に希望退職を募るとき、「高いレベルの学力の保証」「国際教育」「ICT教育」などに重点を置くために新しい体制にするのだといっていたが、新年度の現状は「高い学力」とかいう以前に、ベテラン教師が多数いなくなり、1学期が始まる直前まで教師不足でカリキュラムさえ組めない状況が続いた。ブレインアカデミーが塾講師などにも声をかけて県内外から非正規教師をかき集めたが、直前になって国語の教師が辞退したり、新学期が始まってからも理科の教師を募集していることが教育関係者のなかで話題になっていた。生徒や学生、親たちにとって一番心配なのは、教育機関として責任ある体制がとれるかどうかだ。結局、教師を確保できなかった教科は臨時免許を申請したり、副校長が1人で週16時間受け持つなど、かろうじて体裁を整えて1学期をスタートした。
 しかし1年目の教師が全体の半数、2年目の教師が4分の1という体制で、日常の学校生活から文化祭などの行事までわからないことばかりだ。教師の数が減っているので副担任が学年に1人になるなど、校務分掌が回らない状況は今も続いている。従って、教師たちは目前の仕事に追われて、問題が起こっていても意見する暇がない状況だという。
 C 親たちに聞くと、学校からの連絡が遅かったり、連絡すらないことも頻繁にあるようで、教師向けに配布された通達がそのまま子どもに配られたりもしていたという。混乱は解決に向かうどころかますますひどくなっていて、「子どもを預けて大丈夫だろうか」と不安を感じている。とくに新入生にとって学校生活はわからないことばかりだ。昼食の弁当はどうやって購入するのか、部活動は何時に終わるのか、顧問への連絡はどうするのかとか、日曜日に教会の礼拝に参加しないといけないが、クリスチャンでない家庭はどこの教会に行けばいいのかもわからない。親は「ちゃんと先生に聞いてきなさい!」と子どもを叱るし、子どもは「先生たちも忙しいんだから!」といって親子げんかになる家庭もあったようだ。日日の学校生活を送るための説明もないまま1学期が終わった。
 B 1学期末のテストも大変だったようだ。テスト範囲発表の日は、前日に雨はやんだのに「大雨警報が出ている」という理由で休校となり、タブレットとホームページ上で範囲が発表されることになった。みないつ発表されるかと待機していたが発表があったのは午後2時か3時頃。しかも初めてタブレットで全校発信したようで、アクセスが殺到してつながらない人もいて、再びメールで同じ内容の通知が来るなど、とても落ち着いて試験に臨むような状況ではなかった。休校になったのも「テスト発表の準備ができていなかったからのようだ」と話題になっていた。
 C 中1のクラスではカリキュラムが終わっていない授業があり、期末テスト最終日の午後に授業をすることが前日に決まったそうだ。しかしその連絡がなかったため、弁当を持参していなかった生徒たちは昼食を食べずに午後の授業を受けたという。一事が万事その調子で、新入生は一学期が終わっても「学校に慣れた」という実感はなく、疲れ果てている。経験不足の部分を補うベテランがいないから学級崩壊状況のクラスもあるという。中一のなかでも一学期末で退学者が1人出ており、あと3人ほど辞めたいといっているのを学校がひき止めている。高校受験を控えた中3ではさらに退学者が出たという。「この学校、大丈夫だろうか?」という不安が大きいからだ。
 D 1学期半ば頃だったが、独自でとりくんでいる英単語検定が100問すべて四択問題になっていて生徒も親も驚き、「教育内容が最低になっている」と危惧していた。単語テストはスペルを自分の手で書かないと覚えているかどうかわからないが、四択なら覚えていなくても一か八かで点数はとれる。それで「成績優秀」扱いするのは英語の授業担当に入った統括本部長の手柄にはなるが、果たして子どもたちの実力はついているのか? と疑問が語られていた。全国共通模試も今年は参加しないことに決まったようで、他校との比較もできない。受験生を抱える親などは、低レベル化をすごく心配している人が多い。ICT教育の目玉であるタブレットにしても、今年度リニューアルしたが、おもな使途はやはり朝の健康観察くらいだという。あとはソフトバンクやベネッセが開発した「クラッシー」という学校管理サービスを導入して、自宅学習のときに社会が○時間、国語○時間と15分ごとに学習記録を入力するよういわれているが、時間さえ記録すればいいので、次第に中身のない勉強になっていることを危惧する親もいた。先に「改革」に着手した大学はビジネススクール化が進んできたが、中・高校の教育内容も薄っぺらいものになっている。

 中・高閉校に導く路線 不明多い会計や人事

 B 子どもたちの放置状態に、学院全般の金銭の不透明さも加わって、親たちの不信感は根強いものがある。昨年からの騒動もあるし、ならば学院は立て直しが進むのかといえば、そうではなく逆に向いている。教育機関としてどうなのか、監督官庁である県教委の責任も問われる問題だ。
 E 今年度最初のPTA総会が、会計報告を巡って紛糾したことも親たちの思いをあらわしていた。会計報告自体、「学習費支出」「教育費支出」など、予算がついているのに「支出ゼロ」となっている項目がいくつもあり、総額で約325万円の予算に対して決算が約83円と、普通では考えられない会計報告だった。しかも会計監査の日時も捺印も空欄のままだ。事情を聞いてみると、学院本部に預けていたPTA会費をPTA側が整理しようとしたら不明な領収書がたくさんあり、明らかに不適切なものは学院から支出するよう求めたが、不明が多すぎて会計監査できなかったようだ。統括本部長が3月末で経理2人を切り、わからない者ばかりが経理を握ったことも影響しているようだが、説明責任のある財務部長は総会に参加するのを逃げたのだと話されていた。
 C 子どもたちや親たちが不信を強め、梅光を見限って離れて行くことは、中・高校にとって存亡がかかった問題だ。しかし、中・高校がつぶれて経営陣は残念がるのか? だ。最終的に行き詰まって「仕方がない…」体裁で、なんならもうからない中・高校を閉校して、敷地を売り払った方がもうかるという判断が明らかに働いている。売却益を試算していることのはそのためだと見なされている。いずれ閉校して現在地は売り飛ばすか、オンヌリ教会の本部にするという意図があるなら、現在の中・高校の崩壊状況はそのように時間をかけて誘導していると見てもおかしくない。
 A 今のところ、塾に勧誘に行くなどして生徒を募集しようとはしているが、「生徒=金」というか「生徒をくれ」という姿勢が露骨すぎて、塾関係者もまいっている。少子化が急ピッチで進む下関で、梅光がこれまでのように生徒を集めるのに困難があるのは確かだ。中・高校は大学のように他県から呼び込むにも限界がある。しかし今通っている生徒や親が「梅光で学んでよかった」と思えない改革をして生徒が増えるはずがない。現実にはボロボロと退学者が出て、じり貧のような状態になっている。まさに閉校に向けてまっしぐらのような印象だ。

 意に沿わぬ職員は追放 崩れる学校運営

 A 署名運動が一気に広がり、その過程で赤字といいながら30億円の現金資産のうち10億~17億円もの金額を資産運用に回していること、月の限度額が100万円とも200万円ともいわれる法人カードで経営陣が私物を購入したり旅行に使っているといった噂も流れ、事実の解明を求める声が高まっていった。すると三月の理事会で、理事長や学院長、統轄本部長の給与引き上げ案などに反対した理事を解任した。
 経理2人も退職に追い込み、新しく雇った2人の派遣(現在は嘱託)に非正規職員と統括本部長の秘書が加わって、経理内容も外部に漏れない体制をつくり上げた。さらに大学の学長補佐に本間理事長が会長を務める大学マネジメント研究会のメンバーを引っ張ってきたり、事務方にも理事長肝いりの職員を入れるなどして「署名が100万通集まろうが1億通集まろうが私は動じない!」「“卑劣な行為”をしているのが教職員であれば断固たる措置をとる!」と叫んでいた。一見すると盤石な本間体制ができ上がったかのように見えた。
 C しかし教育現場や事務を担うのは彼らではなく現場の教職員だ。思い通りになる人を集めたつもりになっていたようだが、そんな手法で実際の学校運営が回るはずがない。中・高校の混乱は先に出た通りだが、事務方でも実務は回らないし、最近でも学費を納めている学生80人にまた請求書を送って抗議が殺到したりと次から次に問題が起こる。引っ張って来た大学マネジメント研究会のメンバーである学長補佐も理事長に相談なく辞表を提出してしまった。
 D 最近、学長や統括本部長が秘書などを連れて、署名運動にかかわっている人たちや古くからの教職員を一人一人呼び出しては「自分たちについてこなかったら辞めてもらう」などと脅しをかけている。今春にあれだけ辞めさせて、まだ懲りてないようだ。「そして誰もいなくなった」(アガサ・クリスティ著)を真顔でやっている。恫喝以外に手がないというのも稚拙だが、やればやるほど本来温厚なはずの同窓会などを激怒させている。それ自体、家族的なつながりによって結ばれていた梅光ではあり得ないものだ。異物混入事件というか、梅光に異物が混ざってきて紛争が起こっている。
 6月初めには同窓会幹部が呼び出され、「礼拝を無断撮影した同窓会員がいる」と叱責されたり、「未来の会」にかかわっている大学教員が3人がかりで3時間も「不満があるならなぜ辞めないのか」と絞られたことが話題になっている。どこから学内の状況が漏れているのか気にしている。「長周新聞に写真を出すな」とか「この内容を知っているのはだれか」と血眼になって犯人捜しをしている。中・高校の保護者にも探りを入れている。大学敷地内には「関係者以外立ち入り禁止」の立て札もあらわれた。
 B やましいことがないなら正正堂堂とオープンキャンパスにすればいいのに、いったい何を隠したがっているのだろうか。個別バラバラに呼び出される方は首もかかっているからすごい圧迫感で、物言えぬ空気も漂っているが、客観的に見ると経営陣がかなり追い詰められて、いつひっくり返されるかとビクビクしているような印象だ。そんなことに何時間も費やす暇があったら、学校のことや子どものことを考えた方が、いまの梅光にとっては余程有益だ。「オマエ、しゃべったな!」以上に、中・高校がまともな教育体制をとれるようにするとか、子どもの教育を第一に考えなければ教育機関ではない。

 放漫な巨額の資産運用 「赤字財政」叫ぶ一方

 C 何をそんなに怯えているのか? 経営陣が世間に知られたくないこと、守りたいものは何なのか? だ。同窓会や父母も含めて、みんなは梅光を潰そうとしているのではない。純粋に学院として正常化して欲しいと願っている。教員体制も含めて子どもに向き合える環境を望んでいる。ところが、大胆な首切りや学院改革をやる割には、その内容を知られたくないという行動に及んでいる。立派な改革なら、それこそ正正堂堂「何が悪い!」と正面から訴えればいいだけだ。そして批判や異論についても恫喝して封殺するというのではなく、反駁して思いの丈をぶつけあって、より良い方向を共に見出していけば済む問題だ。なぜそれをしないのかと思う。端から見ていて、教員が異物なのではなくて、逆だろうに…とも思ってしまう。とらえ方がひっくり返っている。
 E この間の改革で理事長には文科省キャリアを招き、「改革」を取り仕切ってきた統括本部長も失礼な言葉でいうとよそ者だ。豊富な現金資産を運用している財務部長も大阪から引っ張ってきた住友銀行出身者だ。同窓会などは理事長の退任を求めているが、頑として辞めない。むしろ行き場がなくしがみついているような印象すらある。しかしこれも一面だけ見ていたらだめで、裏返して見てみると別の側面が浮かび上がってくる。法人カードの不可解な出費など不明朗会計をみなが問題にしているが、もっとも大きな問題は株式運用だ。
 表向きは現金資産30億円のうち10億円を運用しているという説明だったが、取材を重ねるなかで昨年3月末の段階で、野村證券に5億円、大和証券に5億円、大和ネクストに5億5000万円という記録も出てきた。この時点で15億円を超す金額になっている。さらにこの後、「証券は今が底値だから買っておけばもうかる」といって三井住友銀行系の日興証券の系列に2、3億円を突っ込んでいるという話もあり、合計17億円を運用しているとも見られている。最近の説明では12、3億円といっているようだが、長期運用しているのに運用額が減ったのはなぜなのか、12、3億円という説明が嘘なのか疑問が残る。
 A 追手門学院から来た財務部長が運用担当に就任して、大阪市にあるクライアント・ポジションというコンサル会社に300万円払って相談しながら大規模な資産運用を始めた。普通は財務担当者を雇うと金がかかるからコンサルと契約するのだが、梅光の場合は財務担当を雇ってホテル住まいさせたうえにコンサルと契約を結んでいる。それ自体も赤字財政の経営者がやることなのか疑問だが、さらに問題なのが株価の下落による損失だ。昨年3月というと日経平均株価は1万9000円台と「15年ぶりの高値」といわれていた時期。だがその後アベノミクスも破綻して株価は下落する一方だ。今のところ明らかにされている損失額は8000万円ほどだが、実際のところどの程度の損失が出ているのかわからない。もし「実は多額の損失が出ていた」となったら経営陣の責任は重大だ。通常であれば背任罪を問われておかしくない。

 求められる公明正大さ 誰の為の「改革」か

 E 5月の理事会・評議委員会で、山口銀行の代表として評議委員会に入っていた梅本裕英常務(当時)が評議委員をおろされたが、これも株式運用の実態について明らかにせよ! と主張したのが発端だった。山口銀行如きが生意気をいうな! と思ったのか思わなかったのか、メガバンク出身の財務部長から報復のように山口銀行は数億円の資金を引き揚げられている。山口銀行も地銀として大きい顔をしている割に情けない話だが、別の面から見たときに、資産運用に大失敗している実態を把握して逃げたのか? という見方もある。逃げ足の早さこそが山口銀行の真骨頂であることは近年の破綻企業の債権者一覧を見ても話題になることだ。どこから情報を仕入れるのか、身のこなしが素早いし、火の粉をかぶらない対応、つまり切り捨てることにかけては天下一品だと定評がある。こういうときこそ「山銀も!」とやってほしいが、「山銀も! 山銀も!」を封印して評議委員職をポイッと明け渡した。この不思議さがある。
 A GPIF(年金資金)と同じで、資産運用が焦げ付いて回収の見込みがない、あるいは現在の損失についてはとてもではないが公表できないという場合、それは経営陣にとってもっとも知られたくないものだろう。将来的に補うほどの利益が出ればホッと胸をなで下ろす事になるかもしれないが、十数億円も突っ込んで溶かしていた、証券会社にカモにされただけだったとなると重大な背任行為だ。だから、理事長退任などに応じられないもう一つの面として、いまや「立つ鳥跡を濁さず」で逃げることもできず、仮に逃げたら泥をかぶりたくない後任が前任者の責任として洗いざらい公表するだろうし、その上で「背任行為」として訴訟沙汰にするまでいく。理事長職あるいは統括本部長や財務部長ポストにしがみついているのではなく、怖くてとても離れられない事情を抱えてしまったのだと指摘する人もいる。さもありなんだ。
 B 理事長肝いりの学長補佐が就任早早に辞職していったのも、何らかの事情を察知して、巻き添えにされたらたまらないと判断したことを伺わせた。「立つ鳥」どころか、まるで戦闘機のタッチ&ゴーみたく着地した途端に危険を察知して飛び立っていった。膨大な現金資産はどうなっているのかは見過ごせない。それは理事たちの責任問題にも発展する。
 C 梅光でくり広げられている「改革」を巡る衝突は、全国の学校改革と共通した問題でもある。企業が求める手軽な人材をいかにつくるかを競わせるものであり、目先のもうけにつながるかどうかが基準になって、梅光と同じように多くの学校がビジネススクール化なり企業の下請研究機関の道を進んでいる。このなかで、文科省キャリアが文科省路線そのままに地方私学を実験台にして、同時に金融資産を空っぽにするのではないかと懸念されている。梅光問題は子どもの教育にとってどうかを中心にして考えなければいけない。それで、「改革」を掲げる側がデタラメならば多いに批判を加えて検証し、その実態を世間に知らせていくことが重要だ。何事も隠蔽とか恫喝ではなく、オープンキャンパスでいくことが信頼につながる。よそ者やオンヌリ教会の乗っ取りに甘んじるのか否か、100年の伝統を誇る梅光がどっちを向いて歩んでいくのかが問われている。


2016年05月28日

梅光学院、「梅光の教育取戻せ」の声圧倒 同窓会総会に200人超が参加

長周新聞(2016年5月18日)

「梅光の教育取戻せ」の声圧倒
同窓会総会に200人超が参加
同窓生や保護者が思いぶつける

2016年5月18日付

 下関市にある梅光学院の経営・教育方針をめぐって、同窓生や保護者、生徒・学生と執行部の対立が鮮明になり、理事長の退任を求める署名が1万8000人集まっている。14日には同窓会総会(シーモールパレス・エメラルドの間)が開催され、現状を憂える同窓生ら200人以上がつめかけた。初めて本間理事長・中野学院長が出席し、同窓生や保護者の思いや疑問を直接ぶつける場となった。経営陣の受け答えは「はぐらかした」という印象を参加者に与えたが、総会全体は梅光の教育をとり戻すことを願う同窓生らの思いが圧倒するものとなった。
 
 一生の支えとなる伝統継承を

 同窓会を開催するに当たっては質疑の場をもうけようと、コール梅光(同窓生の合唱グループ)の演奏時間を短縮するなど急きょプログラムを変更。参加する同窓生らも構えて臨んでおり、当日には経過と問題点を整理した資料も配布された。
 挨拶に立った濵谷静枝会長は、昨年、佐藤泰正元学長が逝去したことにふれ、「梅光は地方の小さな私学だが、佐藤先生は“私学だけでも志がある学校でなければならない”という信念で70年間、梅光のため、学生・生徒、同窓会のために尽くしてこられた。研究者、文学者、キリスト者として捧げた生涯だった」とのべ、その志を学び受け継ぐことを強調した。
 現状について「梅光の教育を真剣にとりくもうとする指導者がいないと考えている。卒業生は人間として生きるときに大切なもの、立ち返るものを与えられて卒業した。それが梅光の宗教教育であり人間教育であった」とのべた。人口減少、少子高齢化は今に始まったものではなく、学院の定員割れは10年前から続いていること、中・高校は1200人いた生徒が400人を切っており、「改革は必要であるが、それが突如として過酷な、非情な方法でやられた」ことを指摘。「厚労省が注視しているような民間会社から人が派遣され、中・高では専任が11人、非常勤が4人、計15人がやめざるを得ない形でやめていった」と報告した。学院長・教職員が信頼関係を築きつつ教育第一の学校運営・経営をしてきた梅光100年の教育が忘れられている気がするとのべ、「梅光が教育をとり戻すため同窓生は支援しなければならない。それはいいなりになることではない。生徒・学生が梅光で学んでよかったといえる教育をしてもらわなければならない」と発言した。
 さらに、下関の人口が27万人を切り、市民の平均年収が290万円というなかで、月謝を払って私学に子どもを送るのは決意がいることであり、「とくに中・高は市民の信頼を失ったら成り立たない。同窓生、保護者、市民の方の信頼を得る改革をしていただきたい」「経営も大切だが一番大切なのは教育だ。すばらしい人と出会い、よい本を読み未知の世界にふれて感動する、こういうことから人は知識を重ね、人間性を磨いていくのだと思っている。そのような教育をとり戻してほしい」とのべた。
 続いて挨拶した中野新治学院長は、「相当な事実無根の風評が広がっている。大学はV字回復したが、その反面で悪いことも起きる。その対応で問題が起きたことは確かだし、お詫びする。責任をとってやめるべきだが事情があってそうはいかない。ここを乗り越えなければ梅光の未来がない」「中・高は経営的には完全に破綻している。毎年一億数千万円の赤字だ。そこに理事長は入ってこられた。火中の栗どころか火中の爆弾を拾う仕事をしてこられた」とのべ、「私が一千何百万円も給料をとるとか理事長が1500万円などの数字が入っているが、そんなことあるはずがない!」「中・高は大変よくなっている。胸を張ってこれがミッションスクールだといえる」とのべた。
 続いて本間政雄理事長は、「友人にもこの学院の立て直しは無理だといわれ」ながら、「只木統轄本部長の熱意と学院長の真摯な態度に打たれて」、一肌脱ごうと理事長に就任したことを強調。グローバル化が進むなかで財政難の梅光が他大学との競争に耐えられないことを力説し、「中・高校は先生の給料すら授業料でまかなえない状況だった。大学は学生数が増えたが、大学の教職員がいくら頑張ってもお金が入ってくるそばから出て行く」「残念ながら梅光学院はみんなその日暮らし、目の前の仕事を片付けているだけで、3年後、5年後の学院のことをだれも考えていない。だから私は梅光ビジョンを九カ月かけてつくったのだ」といった。そして「地元の新聞とか未来を考える会で、お金の使い道が不透明とか、私が高額な報酬をとっているといわれている。当初月額30万円ということで来たが、カットして21万円。ボーナスも退職金もない」「お金や名誉がほしくて理事長をやっていると思うのはとんでもない間違いだ」「このポストにいつまでも固執するつもりはない。批判は結構だが、なにかいうのだったら具体的な提案を出していただくのが条件だ」などと、終盤は語気を荒らげていた。
 その後、新たな同窓会長に片山宣子氏が就任した。片山氏は、梅光には卒業生が学校を訪ねてくる伝統があり、「一生の、とくに危機的な状況のときに梅光を思い出し立ち直れた人が多い」と紹介。「梅光は小さな塾から始まった。世の中に本当に役に立つ、しかも判断力のある、人間として正しく、隣人のために生きていく、そういうものを育てようというのが始まりだった。その精神はずっと受け継がれてきたと思う。今の世の中は進学率など、数字であらわされることが一番大切だという時代になり、資本主義はどこまでいくのだろうかという状況にまでなっている。梅光のような教育はなかなか受け入れてもらえないかもしれないが、逆に人間として一生を生きるときに“梅光の教育が自分を助けてくれた”という言葉は非常に意味の深い言葉だ。厳しいなかで経営し、判断するのは困難を極めることは理解するが、失ってほしくないものははっきりある」「小粒でもしっかりとした意志を持った、志を持った教育をしていく学校として残ってほしいと思っている。長崎から140年以上、下関にできて101年。その重みを大切にしていきたい」と挨拶し、今後の同窓会の姿勢を明確にした。

 生徒犠牲に進む「改革」 質疑応答で追及

 質疑応答の時間は10分あまりとなったが、そのなかで同窓生、保護者から質問や意見があいついだ。
 最初に9期卒業生が「本間先生は1年に何回くらい来られるのか」「今の梅光の現状を報告される方はどんな方か」と質問。本間理事長は、この1年はほぼ毎週来ていることに加え、金銭的な不透明さについて「いわれても仕方のないような事務進行のあり方はあった。コンプライアンス違反で労基署が入ることもあった」が、それが梅光の旧弊のせいで起こったかのような説明をしていた。再び同窓生が「風前の灯火の梅光に向き合ってもらうためには週に一度来る理事長を相手に立て直しはできない。学院長がもう少ししっかりしてもらわないと困る」と発言すると、「立て直しができないというが、この数字をどう評価するのか!」「抽象的な話は結構だ。具体的な数字で失敗したのかどうか、この数字を見て下さい」と感情的になっていた。
 同窓生で現役の保護者は、オンヌリ教会から中・高校の宗教主任が来たことへの疑問や、その発言に子どもたちが戸惑っていること、「改革、改革といわれるが、それが現在学んでいる子どもたちの犠牲のうえに成り立っていることや先生がいなくなる悲しみなどをどう考えているのか」と発言。
 娘が期待にあふれて梅光に入学したという保護者も、イースター礼拝の式次第に不思議な表現がたくさんあったこと、そこに記載されていたホームページを開くと、ファミリーインターナショナル(アメリカのカルト宗教)につながったことを発言。「間違いだとは思うが、おかしいと気づく人が今の梅光にいないということだ」と危惧を語った。
 保護者らの発言に対して中野学院長が、「生徒が悲しい思いをしたのは申し訳ないが、人事のことはだれが辞めるとかいえない状況だった」とか、オンヌリ教会について「キリスト教の内容についてカトリックもローマ教もあるし教えることも違っているが、基本的な考え方は聖書に基づいたものだ」などとのべたので会場はざわついた。宗教教育については、オンヌリ教会の背後には別のカルト集団がいるという話を出す参加者もおり、「本気で探したら梅光のために力を尽くしてくれる宗教の先生はいるのではないか」「日本の気持ちや言葉を大事にするような宗教主任を選んでほしい」などの意見も出た。
 また人事権の所在に質問が及ぶと、本間理事長は長長説明しながらも「私は非常勤なので学院長が事実上の決済をすべてやることになっている」といい、「経営責任を負っているのは理事長ですよね」と問われると、「梅光の場合は変則で、私と学院長が同じ権限を持っているが、私が毎日学校に来ていないので…」といい始め、司会に遮られる場面もあった。
 別の同窓生は、「梅光で私たちが感動したのは広津先生をはじめとして、人を育てることが教育の基本としてあったことだ。学生を育てるためには教員を育てることをもっとも大事なこととし、この小さな学校がたくさんの先生を国内留学させてきた。そういう学校だったことに誇りを持っている」とのべた。「今回外から人事に携わる会社を引き入れたのは、人事権を持った人が、私たちの学校が大事にしてきた学院の信頼関係を切るために、自分がその痛みを負うことを放棄したからではないか。自分が責任を負うことが嫌だったからブラック企業と同じように、人をモノとして扱えるところに委託して人事をおこなった結果ではないだろうか。それを一番不安に思う。教育がもっとも大事にしなければならないのは人間の信頼関係だ。その関係を断ち切るためにそういう力を使ったことがとても残念だし、そここそが私たちの学校の教育の大きな転換点になったのではないかという不安を抱く」とのべた。
 最後に一人が「中高の存続についてどのように考えるか」「丸山の校地についての考えと将来像は」「私たちが梅光をいかに愛しているかわかったと思う。こんな同窓会は初めてだ。署名も全国各地から1万8000人集まった。本間理事長はどのように受け止めているか」の3点を質問した。それに対して本間理事長が、「署名を屁とも思っていないということはない」が、自分たちがいかに愛を持って頑張っており、いかに誤った情報で署名活動がおこなわれているか、「経営方針を撤回してなにもしなければ2、3年で破綻し、全教職員が職を失うんだ」と、自身の他大学での業績も含めて力説していた。
 一部の総会が終わった後、保護者たちが本間理事長をひき止め、子どもたちに好かれていた教師をなぜあのような辞めさせ方をしたのか問いただしたりする場面もあった。母親たちは、新1年生が放置されていることや、教師が大幅にかわり手探り状態であることなど、新学期の状況を切実な思いで語っていた。


梅光学院、子供らの為正常化に道筋を 損得勘定が教育支配した姿

長周新聞(2016年5月11日)

子供らの為正常化に道筋を
放置できぬ梅光学院の混乱
損得勘定が教育支配した姿

2016年5月11日付

 【本紙記者座談会】

 下関市にある梅光学院の同窓生や保護者、教員らが経営陣の退陣を求めて広げている署名運動は、下関市民のなかでも大きな関心を呼んでいる。14日には同窓会総会と大学保護者会の総会が開催される予定であり、さらに25日の理事会では株式投資に突っ込んでいる17億円ともいわれる大学資産がどうなっているのか詳細が明らかになる見込みで、一連の動向が注目されている。3月末で中・高校の教師14人、大学では11人が辞職に追い込まれたり、解雇されたり、あるいは嫌気がさして去っていき、その辞めさせ方があまりにも酷すぎると衝撃を与えた。その後、大幅に教職員が入れ替わって新年度を迎え、「梅光は大丈夫なのか?」と心配されていたが、事務方の職員や教員の奮闘に支えられながら、何とか大混乱のなかを突き進んでいる状態となっている。関係者への取材を進めてきた記者たちが集まり、現在の状況もふまえて論議した。
 
 仇になった裕福な経営基盤

 司会 今回問題が表面化したきっかけは、中・高校の40歳以上の教師14人をブレインアカデミーの研修で辞職に追い込んだことだった。世間一般からすると、昨年来から何が起きているかわからない状態だった。梅光関係者のなかですら認識は個個バラバラで判然としない面があったが、取材を重ねて各方面に話を聞くなかでその実像が見えてきた。
 一言でいってしまうと30億円の大学資産を持っている梅光が目を付けられ、少子化による環境の変化にたじろいでいる隙によそ者が乗っとってしまった。そして、「改革」を標榜して進めているのは教育ではなく「儲かるか」「儲からないか」、つまり損得勘定に基づく金儲けで、それが100年の伝統を誇る梅光が目指してきた教育的方向とは相容れないものとして衝突していることだった。その後の状況も含めて、まず出しあってみたい。
 A 「改革」したおかげでベテラン教員が多数逃散してしまい、新年度が始まるまでは教師不足やカリキュラムが組めないことが問題になっていた。県内外でブレインアカデミーが非正規教員をかき集め、塾講師などにも声がかかっていた。生徒や学生、親たちにとって一番心配なのは、教育機関として責任ある体制がとれるのかどうかだった。4人が辞めた国語科は新年度直前までに3人決まっていたが、4月2日の新年度最初の職員会議の段になって1人が辞退したので専任教師2人、非常勤講師6人の体制になった。樋口学長が自分のつてで日本文学の卒業生に当たったとかで、教壇を離れて10年以上専業主婦だった人などが非常勤講師として来ている。生物の教師も決まっておらず、教頭が1人で16時間授業を受け持つなどして、かろうじて体裁を整えている。
 しかし1年目の教師が全体の半数、2年目の教師が4分の1を占め、掃除の仕方やゴミ箱の位置など細かいことも含めてわからないことだらけのようだ。教師が生徒会の生徒たちに昨年のことを聞きながら学校運営するなど、ただでさえ忙しい新学期に右往左往している。長年梅光に勤めている教師が生徒指導主任に決まっていたが、只木氏の指示で追手門大学から引っ張ってきた1年目の教師に交代したようだ。
 B 新任教師のなかで下関在住は1人で、多くが関東や関西から来ており、下関の地域や文化、伝統も知らない人がほとんどだ。「やる気はすごくあるし、新しい先生たちに罪はないが、梅光の校風的な部分は大きく変わった」という人もいた。
 全体で専任教師が10人、常勤講師が14人、非常勤講師が30人ほど。常勤講師も1年更新などの契約で、いつでも切れる有期雇用ばかりになった。40歳以上の教師を解雇したのに、新しく来た教師も29歳と30歳の2人以外は40代~70代だ。結局、正規雇用を非正規雇用に置き換えただけで、新しい先生たちもいつ切られるかわからない立場に置かれている。生徒たちにとっても、長期的なかかわりを持って「恩師と生徒」の関係を築けなくなっていくことが懸念されている。経営陣にとってはカネのかかる専任教員を非正規に貼り替えたことで経費としても身軽になるし、いずれ中・高校を廃止する計画を持っているならバッサリ1年雇用を切ればいいだけという体制作りにも見える。
 C 大学では今年度、定員の290人を大幅に超え340人もの学生が入学した。過去最高といわれているが、そのうち30人は韓国や中国、台湾、ウガンダ、ミャンマー、ベトナムなどからの留学生だ。なかには日本語も英語もできない学生もいるという。ただ「学生が増えた」といっても、それに対応する教育体制がとれない。教員は昨年11人が退職に追い込まれたり解雇されており、そのうちゼミの担当教員が6人含まれていた。新しく来た8人は非常勤講師をしていたとか、高校で教えていた人たちで、大学教員のキャリアを持っている人が1人もいない。その教員たちにまで生活指導を任せているようだが人数的にも実力的にも戦力ダウンは否めない。学生1人1人に十分対応できないのが現状のようだ。先生たちは「“少人数指導、学生生活充実度ナンバーワン”とうたっているが、それができない状態を経営陣が招いている」と嘆いていた。
 首を切るだけ切って、結果的に大混乱がもたらされているのに、その対応はすべて教員や事務職員に押しつけられている。誰のおかげでこの状態はつくられたのか? 責任を持って収拾にあたるべき者はどこで何をしているのか? と思ってしまう。
 学生が教室に入りきれない事態も起こり、急きょ講堂や会議室などに教室を移すと、今度は黒板が見えず、数年前に購入して放置されていた電子黒板(約600万円)を使おうとすると、外国製のために取扱説明書はすべて英語で書いてあるし、だれも使い方がわからないとか、混乱にまつわるエピソードもさまざま。中・高校も大学も大混乱だ。
 D 事務方も、これまで給料などを握っていた経理の女性2人を3月末で辞めさせた。只木氏たちが「役員報酬を上げる」と主張するのに意見して衝突していたようだ。新年度には私学助成金の申請手続き(生徒の家庭状況によって助成額が変わる)や校納金の引き落とし額の計算、教職員の保険など煩雑な事務が立て込む。派遣職員を二人雇い、只木氏専属の女性秘書四人など含めて計七人がかりでやっているという。専門職員がいなくなり、所得証明の見方もわからないから大変なようだ。
 経理を辞めさせるというのは中小企業でも大変な覚悟がいることだ。社長が少々抜けていても、経理がしっかりしているところは盤石だったりする。カネの出入りを扱う実務において扇の要になるからだ。しかし切った。派遣職員や秘書などいわば素人集団が大変な思いをしなければならないが、その困難以上に経理2人を辞めさせたい理由があったことを示している。今後は只木氏たちが金を一手に握ることになり、「今まで以上に好き放題できる体制になった」と危惧されているのはそのためだろう。

 教員は正規を非正規に 経理の2人も解雇

 A なんとか体裁を整えて新年度はスタートした。しかし、先生たちの奮闘があるにもかかわらず教育体制としては脆弱だ。経営陣が気に入らないとか方針に反対する教職員を切ったおかげで、大変な部分を担うのは残された現場の教職員だ。「改革」の結果、教育現場がガタガタになり、生徒や学生たちも落ち着いて学ぶことができない。この状態は「金になるかならないか」が第一で、教育がどうなろうと構わないという経営路線がもたらしたものだ。「文学は儲からない」という言葉に象徴されているが、金儲けのために梅光があると見なしているからこんな事態にまでなる。学生=カネに転換される。本来ならこういう考え方は知性を育む教育機関としてもっとも対極にあるべきものだが、「梅光の生き残り」にかこつけて跋扈(ばっこ)している。
 ただ教育機関を舞台にした損得勘定主義の横行は梅光に限った問題ではない。政府が進めている人文系廃止とも深くかかわっている。大学改革全体が、企業が求める手軽な人材をいかにつくるかを競うもので、全国の大学が目先の経済的利害につながるかどうかが基準となり、ねつ造事件も頻発している。地道に過去や現在、そして未来を深く考察していく学問の役割が否定される流れのなかで起こっていることだ。銭金が最上段に君臨するというのが現在の経済構造でもある。
 C 少子化で公立中・高校でさえ統廃合が進むなかで、梅光がこれまでのように生徒を集めるのが困難なのは確かだ。とくに中・高校は、大学のように他県から生徒を呼び込むのにも限界がある。下関は国勢調査でも浮き彫りになったが、人口減少数が全国の自治体のなかで四位だった。少子高齢化がよそに比べても急ピッチで進行している。そのなかで公立も私立も少ない子どもを奪い合っている。いずれ閉校する私学が出てきても仕方がないのかもしれないが、金のために教育を放棄するのは本末転倒だろう。梅光がなんのためにあり、どんな教育をするのかを抜きに「中・高校の跡地を売り払ったら5億円になる」と皮算用しているようでは、同窓生が怒るのも無理はない。
 D 経営面から見ても、やはり大学は儲かるようで、将来的にはそちらに専念する道を思い描いている感じだ。ただ、外国から留学生を引っ張ってきて学生数を確保するというのは、つぶれる寸前の私学の姿だ。
 A 中・高校を閉校して売り飛ばし、大学資産としてとり込んでいくというのは現実味を帯びている。査定して「売却したら五億円になる」と見なしていることも話題になっている。教職員には「人件費が高い」「赤字経営なのだ」ばかりいわれてきたが、実際には人件費は毎年ほぼ変わっておらず、増えているのは管理経費や雑費的な経費だ。管理経費は只木氏たちが入ってきてから年間で1000万円以上増え、この1、2年は2000万~3000万円増えている。今年度、中・高校のタブレットの機種変更をするが、それにもお金がかかるし、2年前には資産処分で2000万円超出費している。その頃に旧市内の土地を測量したという話もある。ブレインアカデミーに300万円プラス首切りの成功報酬、株式運用を委託しているクライアント・ポジションにも300万円など、以前にはなかった経費がすごいことになっている。
 B というか、「赤字経営」というのが実際とは異なる。あの規模で30億円の現金資産を持っているのだから、東亜大学と比べてもはるかに裕福な経営基盤だ。だいたい赤字でどうしようもない経営陣が男女で海外出張に出かけたり、月に数日やってくるだけの理事長が1000万円以上の報酬を要求したり、グランドホテルの最上階暮らしをしていたり、財務部長が駅前でホテル暮らしをしていたり、4人の理事らが毎月100万円を使い放題というのは、よほど頭がおかしいか何かでないと説明がつかない。赤字か否か、経営難か否か、口先で何をいっているかではなく、その行動が正直に映し出している。「赤字」を盾にして大なたを振るうのは経営者がやりがちな手口だ。
 C 資産運用も梅光では歴史的に「元本を割る商品には手を出さない」ことを徹底してきたという。以前の担当者だった真方さんは、株式ではなく国債などを短期で運用し、1円でも利益が出たら手放すなど、確実に利益を出していたという。「梅光のためにお金をつくる」という目的が明確だったからだろう。しかし三井住友銀行出身で追手門大学から財務部長が来て大変な額を株に投資するようになり、今では一億円ともいわれる損失を出している。金儲けするはずが証券会社に手玉にとられて食いつぶしている印象だ。この間の株価暴落でどれだけの損失になっているのかは曖昧にできないだろうし、場合によっては責任を問われておかしくない。損切りするまでは損失ではないといっても、今後はアベノミクスも息切れして円高・株安に一気に傾いていく趨勢だ。

 よそ者が乗取り食潰し 創設以来の伝統放棄

 A 同窓生や保護者たちが怒っているのはよそ者が梅光を乗っとって別物にしていることだ。経営陣が自分の財産のように扱っているが、その30億円の現金資産も歴史的に梅光が蓄積してきたお金だ。もともとが本間理事長や只木氏の金ではない。苦労した自分の金でないから豪快に使えるのだと指摘されている。
 B 文科省キャリアといっても事務次官の出世レースに敗れた者が全国の大学に押しつけられて、どこもまいっている。
 下関で文科省キャリアというと嶋倉元教育長を思い出す。地元の歴史や地域性などお構いなしに「朝鮮への植民地支配はなかった」といって、在日朝鮮人の市民を怒らせた。
 また、小・中学校の大統廃合計画をうち出したり、暴れる中学生を警察に逮捕させよと指令を出したりと、さんざん下関の教育現場を混乱させて帰って行った。しかし文科省でも厄介者だったようで、現在は福岡県内の大学に押しつけられている。文科省キャリアというが使い物にならないから追い出された、あるいは都市部の大学で叩き出された者が、30億円を持っている梅光に流れ着いてしがみついているような印象だ。なぜよその大学に居場所がなくなったのか、それぞれの前任地で何があったのか取材したら見えてくるものがある。
 D ある知識人が、「戦時中は軍事で教育がつぶされたが、今は金儲けでつぶされている。全国的な問題だ」といっていた。今の世の中、新自由主義で社会的使命とか目的をすべて金儲けにすり替え、それが生産現場や教育現場、行政まで支配していくようになっているが、梅光でも典型的にあらわれている。しかし人間を育てる教育の場が損得勘定に支配されるわけにはいかない。ろくな結果にはならないからだ。
 B 梅光女学院は、明治維新を成し遂げた力を原動力に、日本で女子教育をやらねばならないという情熱をもった人人の手で創立された。当時の人人はその情熱で、なにもないところから必死になって金も集め、学校をつくっていった。服部章蔵と同じ吉敷郡出身の成瀬仁蔵も日本女子大の創立にあたり、知人や実業家などを熱心に説いて金を集めた。「寄付金は一厘一毛であっても浪費してはならない」と、2人で自転車に乗って走り回り、昼食はうどんや蕎麦で済ませて安い下宿に泊まり、東奔西走したという。
 「金がないからできない」ではなく、教育するために金をつくるという姿勢だ。今の経営陣の姿はその反対だ。そのような創設者から受け継がれてきた伝統・精神も根こそぎ放棄してしまっている。人間を育てるために教育があるのに、金儲けのために教育があると見なすなら誤る。
 教育に対する熱情を否定して金儲けする熱情が支配したときに、大学や中・高校はどうなるのかだ。

 地元世論の盛り上がり 居直れば孤立は必至

 B この間、同窓生や保護者、市民にも実態が知られてきて、世論の包囲網ができあがってきている。県の学事文書課にも抗議の電話が殺到していることが県庁界隈で話題になっている。監督責任が問われるから、行政としても無視できないようだ。
 A 新年度最初の教授会では本間理事長がすごい剣幕だったという。「私が専横的な学院運営をしているとか、お金の使い方に疑惑があるとか、最近では匿名で新聞社に私がドバイに行ったとか海外に行っているとか投書をして、しかも匿名で私の家内のところに新聞のコピーが届いた。こういうことを卑劣といわずしてなんだというんだ」「子どもでもあるまいし、学外の人間を巻き込んで文科省や県教委や市長にいいつけに行って、みずから自分たちの解決能力を放棄しているという話にほかならない」とか、1万7000人の署名についても、一方的な話を聞いて署名しているのであれば、「そんな署名が100万通集まろうが1億通集まろうが私は動じない」などと叫んでいたようだ。「卑劣な行為」をしているのが教職員であれば断固たる措置をとる!と脅しもかけていたようだ。
 D 大学の副学長に本間理事長が会長を務める大学マネジメント研究会のメンバーを引っ張ってきたり、事務方にも理事長肝いりの職員を2人入れたりして、本間体制を死守するためにムキになっている印象だ。文科省キャリアなのに、梅光以外に行き場がないのだろうか? とも思う。
 B しかし下関で教育を続けていこうと思ったら、地元の協力なしには成り立たない。これほど同窓生たちが激怒して、教員や学生たちも厳しい視線を注ぎ、しかも市民世論が盛り上がっているなかで、居直って恫喝すれば孤立していくしかない。力関係としては既に詰んでいる。ここまできたら丸く収まることは考えられないし、延長戦になって全国に「梅光問題」が知れ渡っていくのは避けられない。そもそも理事長退任署名など聞いたことがないもので、それだけでも注目される。梅光の名前と同時に、登場人物たちの名前も知れ渡る。文科省もそのキャリアを売りにして大騒ぎを引き起こしている男がいるのに監督責任はないのか? と思わせている。
 C 評議委員会のなかには地元の人間もいる。3月の理事会・評議委員会で辞めた人もいたが、まだ残っているのが安成工務店の安成信次氏、林派で下関市教育委員(毎月13万円支給)でもある林俊作氏、カモンFMの冨永洋一氏など、安倍派・林派のそうそうたる面面が関わっている。彼らは一体なにをしているのか? なぜ黙っているのか? と話題になっている。一肌脱ぐような人間はいないものかと。
 それに加えて、山口銀行の梅本裕英常務と西中国信用金庫の山本徹会長までいるのに、現金を30億円も持っている地元大学を三井住友銀行の出身者に持って行かれている。メガバンク出身者にとっては、山口銀行がなにかいっても「地銀がなにをいうか」という感覚なのだろう。普段はあれだけ地元企業に情け容赦のない態度をとっているのだから、こういうときくらい山口銀行も意地を見せたらどうかという声もある。
 B 3月の理事会で山口銀行の梅本常務が資産運用額と運用先の詳細を報告するよう求めたが、その後に三井住友出身が腹を立てて、山口銀行の口座に入れていた3億~4億円を引き揚げて三井住友に移したという噂も出回っている。これが事実なら情けない限りだ。この外部食い荒らし、植民地略奪の手法は、この20年来市政でやられてきた手法とそっくりで、今の下関の疲弊状況を象徴するような問題でもある。
 A あと話題になるのが中野学院長で、「六三四(むさし)の息子がしっかりせんか!」と唐戸の人たちは語り合っている。梅光の歴史や伝統を守るために、どうして肝心な場面で身体を張れないのか…、経営がわからないにしてもその命運を丸投げしてどうするのか…と。
 D このまま放置していると証券会社のカモにされて資産がなくなるまで食いつぶされる。それを徹底的にチェックするのが本来は監査や理事会だ。地元の評議委員にしても、食いつぶしたときの責任は大きい。現状ではまだ現金資産があるが、これがなくなったとき、本間理事長や只木統轄本部長が最後まで責任を持って梅光に残るだろうか。失礼な話かもしれないが、ヘッジファンドのように食い物にして飛び去って行く光景すら目に浮かぶ。そうなる前に解決するかどうかが梅光の命運にかかっている。今ならまだ傷は浅く済む。
 B 100年の歴史のなかで培ってきた梅光の教育を子どもたちのために守りたいと同窓生の多くが思っている。梅光をどういう学校にするのかおおいに論議し、同窓会や現役の教職員、父母が結束して大学なり中・高校を建設していく力を強いものにしていくしか展望はない。その桎梏(しっこく)になるのであれば、本間理事長には東京に帰ってもらって、首都圏のもっと大きな大学の運営に携わってもらったらいいし、只木氏も名古屋に帰ってもらって、向こうで大活躍してもらえばいいと思う。下関の梅光は、自分たちで頑張るんだというのが要になると思う。


梅光学院、子供の為に教育の場守れ 梅光の未来考える会が会合

長周新聞(2016年4月25日)

子供の為に教育の場守れ
梅光の未来考える会が会合
同窓生や父母、教員が結束

2016年4月25日付

 下関市にある梅光学院の運営をめぐって、教師の大量解雇をはじめとする一連の経営方針の転換と学院の正常化を求め、理事長の退任を要求する署名運動を展開してきた「梅光の未来を考える会」は23日に第2回会合を開いた。同窓生や保護者、教職員、関心を持ってきた市民などが参加した。この間おこなってきた署名運動の経過と新学期が始まった中・高校、大学の状況を共有し、今後の運動方向を確認しあう場となった。

 教師解雇で混乱極める新学期 理事長退任求める署名継続

  初めの礼拝の言葉をのべた女性は、職場を追われた人、尊厳を傷つけられた人、子どもを人質にとられたようで物をいえない母親たちがいることにふれ、「四年前からなにかがおかしいと思ってきたが、こうして人人が集まり、声を上げ、署名を集めるところまでたどりつくことができたことに感謝する」とのべた。さらに「一人一人の子どもたち、学生を大切にし連綿と受け継がれてきた教育の場が、本当の意味で守られるように」と、思いを込めた。
 3月まで学院の理事を務めていた男性が署名運動と現在の学院の状況の報告に立ち、1万7000人をこえる署名を携えて市長、文部科学省、県学事文書課に出向き、状況を伝えたことを報告した。
 男性は、理事会が男性以外はすべて学院関係者で占められており、方針について意見しても聞く耳がなく、理事長がかわらなければこの状況は変わらないという結論に至ったことをのべた。その過程で辞表を提出すると、長年協力してきたにもかかわらず、「もう学院には関係ない」とする書面が郵送されてきたことを憤りをもって紹介し、現経営陣が自分に反抗する者を次次切るなど、人を人とも思っていないことを指摘した。
 さらに「理事長の就任前から“中・高はもう廃止した方がいい”という話になっていた」「10億円を運用し、1億2000万円の赤字が出ている。これは彼らのお金ではない。彼らは自分たちがエリートだという意識でやっているが、能力がないということだ。心のないビジネスはいつかぼろぼろになる」とのべた。現経営陣が中・高校を梅光大学付属にする構想も持っていることをのべると、参加者からは驚きの声が上がっていた。男性は、「みんながノーといっていかないと梅光は終わりだ。下関から出て行けという形にしないといけない」と、声を上げていくことを呼びかけた。
 続いて、2月に雇い止めとなった准教授が、弁護士と相談しながら復帰の方策を探っていることを報告した。「時間がかかることで、精神的にも経済的にもきつい時間が続く。だが先生方や学生たちからの連絡、文学が支えになっている」とのべた。梅光学院は自治が認められた私学であり、キリスト教に基づく建学理念を持ち、厳しい状況の支えとなる文学を中心にした学校であるという、三重の「聖域」を持っているとのべ、「現在の社会で困った人が駆け込んで来て、守られながら育ち、実社会に出て行く存在になることができたらいいと思っている。グローバルビジネス、グローバル人材といわれるが、それがビジネス社会の歯車としてむちゃくちゃに働かされる人材を育てることになるのではないか。そうしたものに一歩距離を置いて“大丈夫か”と問うていくことが梅光の存在価値だと思う。現在の社会と同じようになると、存在価値そのものがなくなってしまう」とのべた。
 続いて大学教員が中・高校ならびに大学の新年度の現状を以下のように報告した。中・高校については教師が表に出ることができないため、大学教員が代読する形となった。
 中・高校では14人もの教師が事実上退職勧奨を受けて3月末で学院を去った。国語科では3人が新たに赴任する予定だったが、4月2日に新年度最初の職員会議が開かれる段階になって1人が辞退したため、専任教師2人、非常勤講師6人の体制となった。6人のうち2人は家庭の事情で10年以上教壇に立っていない教師だ。生物の教師も決まっておらず、教頭が16時間授業を受け持つなどして、4月10日にようやく時間割が決まった。中・高校では専任教師が10人、常勤講師が14人、非常勤講師が30人ほどと、常に生徒を見守っている教師の数が極端に少ない体制である。うち1年目の教師が全体の半数を占め、2年目が4分の1という状態だ。新任教師のうち下関在住は1人だけで、多くが関東や関西から来ており、下関の地域の文化や伝統などを知らない教師がほとんどだ。
 ただでさえ新年度という多忙な時期に、校務のひきつぎもできておらず、生徒会の生徒たちに昨年のことを聞きながら学校運営をするなど右往左往している状況や、古文担当の教師が最初の授業で「実は古文は好きではない」とのべ、生徒ががっかりしていることなども報告があり、こうした状況のなかでレノファ山口からも、「梅光とは契約を持ちたくない」と断りの電話があったことも明らかにされた。
 大学では今年度、定員の290人を大幅にこえる340人もの学生が入学した。一方で教員だけでも昨年11人がやめており、そのうちゼミの担当教員が6人含まれていたため、大量の学生に対応できない状況になっている。報告した大学教員は「入学してお金は入るが、大事なのはそれに見合う教育をすることではないか」とのべた。
 教室が足りず、急きょ会議室などを教室にしたが、黒板が見えないという事態が起こった。そこで数年前に購入して放置されていた電子黒板(約600万円)を使おうとして設置したが、だれも使い方がわからない。外国製のため取扱説明書はすべて英語で書いてあり、いまだに起動していない状態だという。
 日本文学科では、ゼミを担当していた准教授を雇い止めにしたためカリキュラムが組めず、数日前にようやく時間割が整った。教員は「梅光は少人数教育を売りにしてきたが、現状ではそれに対応するだけの教員がいない。一人一人の学生に向き合う時間がなくなっている」とのべた。職員の時間外手当の未払いも依然として続いており、「身を粉にして事務の方方が仕事をしているのに支えられている。当たり前の形に戻したい」とのべた。
 日本文学科の学生は、「たくさんの学生が入学してきて、正しく授業がおこなわれていない。私の授業でも、一度教室に集められたが、イスが足りず、他のところからイスを持ってきて補充した。それも次のときにはまた教室がかわったり、座れない人が出てくるなど、むちゃくちゃになっている」とのべた。
 また准教授の雇い止めに対して、学生として公開質問状を出した経緯を報告。先日ゼミの学生たちに学長が説明会をしたが、「総合的な判断」「理由は説明できない」など、きちんとした回答はなかった。学生から「日本文学科全体に説明してほしい」と意見が出たため、4月12日に学長懇話会が開かれたが、そこでも同様に「的を射ない、謎な回答」ばかりだったことを報告。「矛盾するところがたくさんあるので、これからも頑張りたい」とのべた。
 同窓会会長は、「今回のようなことは梅光で初めてのことで、大変な衝撃を受けている。100年の教育を信頼してくれていた市民もびっくりしている。正常化を願って支援して下さっていることに感謝している」とのべた。「今一番被害を受けているのは生徒たち。未来を守る会は世論に訴えることを目的に設立され、1万7000人の賛同を受けている。この力を生かし、効力のある活動になるようにしていかないといけない。同窓会も微妙な立場だが、生徒・教育を支援するという形で、ノーといい続けていく」とのべた。
 署名は3月31日段階で1万7331人となったが、その後も次次に届いており、現在1万8000人をこえている。

 学校は儲けの具に非ず 公開質問状を準備

 今後の活動方向として、署名を継続し、次の締め切りを5月20日とすることが提案された。同時に公開質問状を準備することも報告され、質問内容、疑問を募ること、未来の会の事務局への協力者を募ることが呼びかけられた。
 続いて同窓会から、「5月14日にシーモールパレス・エメラルドの間で開催する同窓会に本間理事長と中野学院長が出席するので、ぜひ参加して質問してほしい」と呼びかけがあり、そのことを巡って多くの意見が交わされた。
 挙手した女性は、「今度の同窓会では、懇親会でも歌などをやめて、私たちは怒っているんだということを前面に出してほしい。広津先生の遺影を大きく掲げて2人にもよく見えるようにしてほしい。福岡女学院や西南学院の同窓生も署名に協力してくれたが、一番梅光を守らないといけない学院長、学長がバリケードにならなかったことに怒っている」とのべた。
 別の女性は「“文学はもうけにならない”というが、公開質問状にはぜひ“教育でもうけるのですか”という質問を入れてほしい。マスコミにもとりあげられ、梅光の権威を失墜させた責任は、原因をつくった人がとるべきだ。学校は企業ではなく、教育はもうけではない。理事長や学院長は身銭を切るのが普通だと思っていた。教育者である以上、教育の名を汚した責任をとるべきだ。4、5年前、東京から“梅光はいい先生がいる”という評判を聞いた。それを守ってほしい」と発言した。
 別の同窓生は、「社会に出たらこんなことはたくさんある。この場を勉強の場として、若い人に梅光はこうあってはいけないということをしっかり伝えたい」とのべた。
 「感情論ではなく事実を広く知らせるような資料があったらいいのではないか」などの意見も出され子どもたちの教育を守る熱い思いで結束して運動を広げることを確認し、会合を終えた。
 参加した母親は、「子どもを通わせる親としては、とにかく上質な教育を与えてほしいのが一番だ。選んで私立に入れたのに、英語の実力が低い状況もある。学校の経営や宗教上などさまざまな問題が山積しているようだが、ひずみは全部子どもたちにきている。教育を第一に考えてほしい」とのべていた。


梅光学院、女子教育の先駆け担った歴史 継承すべき梅光100年の伝統

長周新聞(2016年4月13日)

女子教育の先駆け担った歴史
継承すべき梅光100年の伝統
明治維新発祥の地で開学した必然性

2016年4月13日付

 下関の梅光学院で起こっている騒動の真相解明と、正常化を望む声が高まっている。そうしたなかで、文科省の天下りなど外部の者によって、同学院の先人たちが歴史的に積み重ねてきた伝統が踏みにじられようとしていることが、教職員や同窓生はもとより、広範な市民の間で問題になっている。梅光学院は下関開学から100年、その前身の梅香崎女学校(長崎)の創立から145年の歳月を刻んできた。それは同時に、下関の社会的風土とひとつながりのものとしてあった。教育現場の正常化を願う側から、今一度学院の歴史をふり返ってみた。
 
 封建的土壌打ち破った先進性 交通・文化要衝の地に咲く

 梅光学院の沿革を遡れば、1872(明治5)年、アメリカの宣教師ヘンリー・スタウト夫妻が長崎に開設した英語塾にたどり着く。それが梅香崎女学校になった。もう一つの流れは、1879(明治12)年に服部章蔵が下関に創立した赤間関光塩英学校である。これはその後、山口における光城女学院につながっていった。1914(大正3)年4月、この梅香崎女学校と光城女学院が下関で合同して、下関梅光女学院が開校した。
 明治の初期、「文明開化」が叫ばれるなか、廃藩置県とともに欧米の近代的な法制度、教育制度が導入された。キリシタン禁令が解かれたことから、明治10年ごろまでに、おもにプロテスタントによるミッションスクールが全国に設立されていった。それらは新島襄の同志社など日本人によるものもあるが、立教や青山学院、関西学院など多くがアメリカの宣教師によるものであった。
 また、そのほとんどが英語塾から出発したが、「女に学問はいらぬ」といった封建的な因習をうち破り、向学心に熱い女子を集めた教育に力を注いだことで、日本における近代的な女子高等教育の先駆けとなった。日本で、女子教育を目的とした公立の女学校が制度化されるのは、1899(明治32)年まで待たなければならなかった。
 1899年(明治32)年、梅香崎女学校の国語教師・三宅古城がつくった校歌の第一連には〈くすしきものは あまたあれども/よにうめばかり くすしきはなし/ゆきふりしきる ふゆとはいはず/はるをしらせてまずはなさきぬ〉とうたわれていた。いまだ女子教育への社会的理解が進まなかった時期に、それを担う誇りをにじませた一節である。三宅古城は「長崎おくんち」で有名な諏訪神社の宮司、国学の大家でもあったことは、こうした進取の気風が、宗教の違いを越えて多くの人人の心をとらえていたといえる。
 当時のミッションスクールの多くは、横浜などの開港地と東京などの大都市にあった。服部章蔵が下関で英学校を始めたのは、下関が当時の交通の要衝の地であったことに加えて、明治維新の発祥地であったことが大きい。そのことは、学校設立にあたって、維新革命で高杉晋作と奇兵隊を支えた商人・入江和作の大きな支援があったことにも見ることができる。
 服部章蔵は周防国吉敷郡吉敷村(現・山口市吉敷町)出身で、若くして明治維新の戦役に積極的に参加した。1864(元治元)年7月、16歳のとき京都禁門の変に参戦、その年12月、高杉晋作が奇兵隊を率いて下関で挙兵すると聞いた服部は、それに呼応し同志八人とともに正義派として激戦に身を投じた。さらに幕府の第2次征長軍に対しても藩兵の小隊長として活躍したあと、戊辰戦争で京都の戦役に出陣した経歴を持っていた。
 章蔵は蘭学を学んできたが、明治維新後、西洋諸国の事情を知るために英学の必要を痛感して上京した。そこで、開成校(東大の前身)や福澤諭吉の塾などで学んだ。その後、海軍兵学校教官を務めたときにキリスト教徒となった。下関に赤間関光塩英学校を開設したのは1881(明治14)年のことでその10年後に山口の英和女学校(光城女学院の前身)の校長となった。

 梅光設立時の下関 近代的文芸の交流拠点

 梅香崎の校長・広津藤吉を初代学院長として下関梅光女学院が設立された大正初期は、NHKの朝ドラ『あさが来た』のモデルとなった広岡浅子が日本女子大の設立に力を尽くし、明治初め7歳でアメリカに留学した津田梅子が東京で津田英学塾を開くなど、女子高等教育への流れが加速したころであった。
 そのころ、長崎と山口にあった女学校をそっくり、地方都市の下関に移す決断がなされたことは、当時の下関が全国的にどのような位置を占めていたかをよく示している。学院史によれば全国多多ある都市のなかで下関が選ばれた要因に、日本における交通網、文化網から見て、長崎が関門の地に及ばないことがあった。
 当時は山陽鉄道が下関までつながった時期で、関釜連絡船の就航によって大陸と向きあう玄関口として海陸交通の要衝をきわめていた。関釜航路の乗船者数は年間50万人を数えるまでになっていた。下関駅は東京、名古屋、京都、大阪と並ぶ鉄道省の指定する特別一等駅であった。日本銀行が大阪に次いで2番目の西部支店を下関に置いたこと、大阪の堂島に並ぶ米穀取引所があったことなども、そうした事情と重なっている。
 下関はかつて北前航路の中継地として「西の浪華」と呼ばれる賑わいを見せ、各地の志士が交流し、維新革命の拠点となった。文化の方面を見ればこうした風土のなかで、多くの新聞社が拠点を置き、近代的な文芸、映画、音楽、舞踊などの活発な交流地点となっていた。
 梅光女学院が開学して10年ほどたった昭和の初め、吉田常夏が主宰した『燭台』に代表されるように、下関を拠点に「関門ルネッサンス」と呼ばれる文芸の隆盛を極めた時期があった。『燭台』には、金子みすゞ、高島青史、山下寛治、玉井雅夫(後の火野葦平)、田上耕作、阿南哲朗など下関、北九州の文芸愛好家が書いていたが、たんに地方の文芸誌というものではなかった。
 東京の文壇からも泉鏡花、生田春月、徳田秋声、小山内薫、尾上柴舟、萩原朔太郎、与謝野晶子、野口雨情、久米正雄、西條八十、北原白秋、佐藤春夫、里見弴、島崎藤村、佐佐木信綱、岸田國士、三木露風らが寄稿しており、最高時には6000から7000部も発行されるほどであった。そして、ここから多くの若い作家、詩人が巣立っていった。
 吉田常夏夫人は、長女・玉の緒が梅光女学院への転入学に踏み切ったのは、当時『燭台』を支援していた河村幸次郎(伊勢安呉服店)の力があったと語っていた。河村幸次郎については彼の多くのコレクションが現在の下関市立美術館の所蔵品としておさめられ、発足に貢献したことで知られる。
 河村はみずから海峡オーケストラを運営し、築地小劇場や舞踏家の石井漠、崔承喜、下関出身のテナー・藤原義江など全国的に著名な芸術家を下関に招いたり、福田正義らが発行した『展望』や映画上映会など青年の文化運動に惜しみない援助をしていた。彼は服部章蔵が設立した下関教会に通うクリスチャンでもあり、梅光の広津学院長と深い親交があった。
 広津藤吉は教育者として、吉田松陰に深く共鳴していた。また植物分類学者・牧野富太郎らとともに高山植物を採集し、押し花にして数百種類の標本を作製したこと、下関に来て2年後の植物採集の途上、椋野で火山弾と火口跡を発見し地質学界に貢献したことで知られる。
 広津は鉱物や昆虫類でも標本採集とともに、歴史・美術・民俗にいたる多方面にわたる資料を収集していた。それらのコレクションは、単に個人的な関心からではなく、広津自身が書き残しているように、女子教育に従事する教育者として学生の理解を促すうえでの実物教育の必要性と結びついていた。

 梅光の女子教育 中傷や妨害にも負けず

 梅光の女子教育をめぐっては、とくに第1次世界大戦直後の1919(大正8)年の卒業生の学芸会での演説と、広津学院長の式辞がマスコミの標的にされたことがあげられる。
 生徒の演説は、「日本女性が男子の従属的地位から解放されて婦人自らの意志で国家、社会に尽くすようになることを望む」と訴えるものであった。当時の生徒の思想は、「婦人は解放されなければならないが、男性的に解放されなくてもよい。女性とし解放されれば十分だ」「良妻賢母というのは、婦人の全人格の一部分で、全部ではない。妻であり母であると同時に、社会および国家のことにも尽くさなければならない」というものであった。
 また、広津学院長は式辞のなかで、「日本婦人が人間として男子と対等に認められず、終始男子の従属として存在せる従来の因習を打破せられんことを望み、婦人自らの意志により家庭社会および国家につくす世界を樹立せよ、そのためには婦人もまた高等教育を受け、知識と技能を充実すると同時に修養を積み努めてその人格の向上に努力せねばならぬ」とのべていた。
 ところが翌日の新聞は、このように純粋な気持ちで婦人が男性と平等に、社会的に貢献できる力を身につけ発揮できるようになりたいと願う女生徒と、それを励ます学院長の熱い交流に対して、「婦人参政権を叫ぶ梅光女学院生」「自由の鐘をつく広津院長」の見出しで中傷する記事を掲載し、これが全国に波紋を広げた。
 それに呼応する形で、翌4月に入って、日東太郎を筆頭とする右翼団体が演説会を開いて「梅光撲滅運動」を開始した。日東太郎は梅光学院長室に押しかけ迫ったが、広津学院長が「よかろう、やってみたまえ、しかし、撲滅されるのは君の方だろう」と一喝、その気迫におされて退散せざるをえなかった。これは、梅光における女子教育の真髄を誇るできごととして語り継がれてきた。
 ちなみに当時、教員の藤山一雄が生徒を連れて下関市議会を見学し、生徒に感想文を書かせたが、その作文のなかで、「議員が寝ていた」と書かれたものがあったことが問題になった。このときも、藤山は動じることなく突っぱねている。
 梅光の英語教育の水準の高さについては、市内はもとより教育界で一目置かれてきた。卒業生の多くが、社会に出てから、梅光の授業で身につけた英語力の高さを知って驚いたことを語っている。それは、学院の出発点が英語学校であったことにもよるが、とくに、梅香崎から下関の梅光に学び、卒業後1918年に母校の英語教師となった上野シゲの功績が大きいといわれる。
 上野は梅光の英語の授業に、これまで主体であった「外国人教師による耳と口からだけの英語教授」ではなく、日本人が英語を勉強するための文法を基本にした教授法を導入した。「その授業はたいへんわかりやすかった」と感動的に語られてきた。

 慕われる教育者の姿 戦災孤児と寝食を共に

 第2次世界大戦では、梅光女学院においても男子教員の召集と生徒の勤労動員があった。さらに学院の裏山に軍の日和山部隊が大きなトンネルを掘り、新館と図書館が軍に接収された。そして、1945(昭和20)年の6月と7月にかけて、二度にわたる米軍の空襲で校舎とすべての教具、図書、教材が焼かれるなど多大な損失を被った。
 とくに、7月2日の下関空襲で広津学院長が収集した教材用の資料の大半が焼失したことは、生徒たちの展覧・学習を目的にした博物室の開設を控えていたこともあって、学院にとって痛恨の痛手となった。
 戦後の梅光は焼け跡の復興事業から始まった。当初の授業は、焼け残った教室と近くの教会、バラックの旧兵舎を利用し、窓ガラスがなく寒風がすさぶなかで卒業式がおこなわれた。
 1951(昭和26)年に学校法人・梅光女学院となった後、幼稚園の開園(1953年)、1960年代に入って、短期大学と4年制大学(その後大学院も)が設立された。
 大学は文学部として出発し、日本文学科と英文学科を基本にしてきた。それは梅光学院の歴史がそのときどきの時流に流されず、人間的普遍性を探究し、生涯学びつづける姿勢を持つ女性を育てるという女子教育の精神を貫いてきたことによる。そうして、西日本における日本文学研究、文芸創作の拠点として、全国からも注目されてきた。また、日本文学科に書道課程が置かれ、全国的にも知られる道岡香雲と田中江舟という郷土の書家を教授に招き成果をあげてきた。このことも、通常大学の書道課程は教育学部や東洋文化の専門学部に置かれることと対比して、期待を集めてきた。
 同大学の教授で夏目漱石の研究者として知られた故・佐藤泰正元大学学長の業績は、そのような精神と重ねて同窓生はもとより市民の間でも共感を広げてきたといえる。とくに、佐藤夫妻が戦争直後、戦災孤児の施設「天の家」で、子どもたちと寝食をともにし、生活指導とともに国語や数学、演劇や美術などを教えて、社会に送り出していったことへの尊敬の念がある。
 とくにこの時期に、非行や盗癖のある子どもに詩を書かせて導くなどの教育的な視点は、佐藤が漱石の「文明社会の底にひそむ権威主義や様々な矛盾に対する批判の眼」とともに、「時代の矛盾と危機」を、その時代の人間の内面の葛藤を通して描くことを文学に求めてきたことと無関係とはいえない、と語りあわれている。
 近年、男女共学となったのを機に梅光学院と改称されたが、学院は梅香崎、光城、梅光女学院、中高、短大、大学院あわせて4万人もの卒業生を送り出してきた。このような校風で巣立った同窓生はもとより、多くの市民の間で、今のような乱れた風潮のもとでこそ、学院の伝統を発揮すべきだとの思いは強まっている。「改革」の名のもとで変貌した現在の姿が、こうした伝統と誇りの系譜から見てどうなのか問われている。


2016年05月14日

放置できぬ梅光学院の混乱、損得勘定が教育支配した姿

長周新聞
 ∟●子供らの為正常化に道筋を 放置できぬ梅光学院の混乱

子供らの為正常化に道筋を
放置できぬ梅光学院の混乱
損得勘定が教育支配した姿

 2016年5月11日付

 【本紙記者座談会】

 下関市にある梅光学院の同窓生や保護者、教員らが経営陣の退陣を求めて広げている署名運動は、下関市民のなかでも大きな関心を呼んでいる。14日には同窓会総会と大学保護者会の総会が開催される予定であり、さらに25日の理事会では株式投資に突っ込んでいる17億円ともいわれる大学資産がどうなっているのか詳細が明らかになる見込みで、一連の動向が注目されている。3月末で中・高校の教師14人、大学では11人が辞職に追い込まれたり、解雇されたり、あるいは嫌気がさして去っていき、その辞めさせ方があまりにも酷すぎると衝撃を与えた。その後、大幅に教職員が入れ替わって新年度を迎え、「梅光は大丈夫なのか?」と心配されていたが、事務方の職員や教員の奮闘に支えられながら、何とか大混乱のなかを突き進んでいる状態となっている。関係者への取材を進めてきた記者たちが集まり、現在の状況もふまえて論議した。
 
 仇になった裕福な経営基盤

 司会 今回問題が表面化したきっかけは、中・高校の40歳以上の教師14人をブレインアカデミーの研修で辞職に追い込んだことだった。世間一般からすると、昨年来から何が起きているかわからない状態だった。梅光関係者のなかですら認識は個個バラバラで判然としない面があったが、取材を重ねて各方面に話を聞くなかでその実像が見えてきた。
 一言でいってしまうと30億円の大学資産を持っている梅光が目を付けられ、少子化による環境の変化にたじろいでいる隙によそ者が乗っとってしまった。そして、「改革」を標榜して進めているのは教育ではなく「儲かるか」「儲からないか」、つまり損得勘定に基づく金儲けで、それが100年の伝統を誇る梅光が目指してきた教育的方向とは相容れないものとして衝突していることだった。その後の状況も含めて、まず出しあってみたい。
 A 「改革」したおかげでベテラン教員が多数逃散してしまい、新年度が始まるまでは教師不足やカリキュラムが組めないことが問題になっていた。県内外でブレインアカデミーが非正規教員をかき集め、塾講師などにも声がかかっていた。生徒や学生、親たちにとって一番心配なのは、教育機関として責任ある体制がとれるのかどうかだった。4人が辞めた国語科は新年度直前までに3人決まっていたが、4月2日の新年度最初の職員会議の段になって1人が辞退したので専任教師2人、非常勤講師6人の体制になった。樋口学長が自分のつてで日本文学の卒業生に当たったとかで、教壇を離れて10年以上専業主婦だった人などが非常勤講師として来ている。生物の教師も決まっておらず、教頭が1人で16時間授業を受け持つなどして、かろうじて体裁を整えている。
 しかし1年目の教師が全体の半数、2年目の教師が4分の1を占め、掃除の仕方やゴミ箱の位置など細かいことも含めてわからないことだらけのようだ。教師が生徒会の生徒たちに昨年のことを聞きながら学校運営するなど、ただでさえ忙しい新学期に右往左往している。長年梅光に勤めている教師が生徒指導主任に決まっていたが、只木氏の指示で追手門大学から引っ張ってきた1年目の教師に交代したようだ。
 B 新任教師のなかで下関在住は1人で、多くが関東や関西から来ており、下関の地域や文化、伝統も知らない人がほとんどだ。「やる気はすごくあるし、新しい先生たちに罪はないが、梅光の校風的な部分は大きく変わった」という人もいた。
 全体で専任教師が10人、常勤講師が14人、非常勤講師が30人ほど。常勤講師も1年更新などの契約で、いつでも切れる有期雇用ばかりになった。40歳以上の教師を解雇したのに、新しく来た教師も29歳と30歳の2人以外は40代~70代だ。結局、正規雇用を非正規雇用に置き換えただけで、新しい先生たちもいつ切られるかわからない立場に置かれている。生徒たちにとっても、長期的なかかわりを持って「恩師と生徒」の関係を築けなくなっていくことが懸念されている。経営陣にとってはカネのかかる専任教員を非正規に貼り替えたことで経費としても身軽になるし、いずれ中・高校を廃止する計画を持っているならバッサリ1年雇用を切ればいいだけという体制作りにも見える。
 C 大学では今年度、定員の290人を大幅に超え340人もの学生が入学した。過去最高といわれているが、そのうち30人は韓国や中国、台湾、ウガンダ、ミャンマー、ベトナムなどからの留学生だ。なかには日本語も英語もできない学生もいるという。ただ「学生が増えた」といっても、それに対応する教育体制がとれない。教員は昨年11人が退職に追い込まれたり解雇されており、そのうちゼミの担当教員が6人含まれていた。新しく来た8人は非常勤講師をしていたとか、高校で教えていた人たちで、大学教員のキャリアを持っている人が1人もいない。その教員たちにまで生活指導を任せているようだが人数的にも実力的にも戦力ダウンは否めない。学生1人1人に十分対応できないのが現状のようだ。先生たちは「“少人数指導、学生生活充実度ナンバーワン”とうたっているが、それができない状態を経営陣が招いている」と嘆いていた。
 首を切るだけ切って、結果的に大混乱がもたらされているのに、その対応はすべて教員や事務職員に押しつけられている。誰のおかげでこの状態はつくられたのか? 責任を持って収拾にあたるべき者はどこで何をしているのか? と思ってしまう。
 学生が教室に入りきれない事態も起こり、急きょ講堂や会議室などに教室を移すと、今度は黒板が見えず、数年前に購入して放置されていた電子黒板(約600万円)を使おうとすると、外国製のために取扱説明書はすべて英語で書いてあるし、だれも使い方がわからないとか、混乱にまつわるエピソードもさまざま。中・高校も大学も大混乱だ。
 D 事務方も、これまで給料などを握っていた経理の女性2人を3月末で辞めさせた。只木氏たちが「役員報酬を上げる」と主張するのに意見して衝突していたようだ。新年度には私学助成金の申請手続き(生徒の家庭状況によって助成額が変わる)や校納金の引き落とし額の計算、教職員の保険など煩雑な事務が立て込む。派遣職員を二人雇い、只木氏専属の女性秘書四人など含めて計七人がかりでやっているという。専門職員がいなくなり、所得証明の見方もわからないから大変なようだ。
 経理を辞めさせるというのは中小企業でも大変な覚悟がいることだ。社長が少々抜けていても、経理がしっかりしているところは盤石だったりする。カネの出入りを扱う実務において扇の要になるからだ。しかし切った。派遣職員や秘書などいわば素人集団が大変な思いをしなければならないが、その困難以上に経理2人を辞めさせたい理由があったことを示している。今後は只木氏たちが金を一手に握ることになり、「今まで以上に好き放題できる体制になった」と危惧されているのはそのためだろう。

 教員は正規を非正規に 経理の2人も解雇

 A なんとか体裁を整えて新年度はスタートした。しかし、先生たちの奮闘があるにもかかわらず教育体制としては脆弱だ。経営陣が気に入らないとか方針に反対する教職員を切ったおかげで、大変な部分を担うのは残された現場の教職員だ。「改革」の結果、教育現場がガタガタになり、生徒や学生たちも落ち着いて学ぶことができない。この状態は「金になるかならないか」が第一で、教育がどうなろうと構わないという経営路線がもたらしたものだ。「文学は儲からない」という言葉に象徴されているが、金儲けのために梅光があると見なしているからこんな事態にまでなる。学生=カネに転換される。本来ならこういう考え方は知性を育む教育機関としてもっとも対極にあるべきものだが、「梅光の生き残り」にかこつけて跋扈(ばっこ)している。
 ただ教育機関を舞台にした損得勘定主義の横行は梅光に限った問題ではない。政府が進めている人文系廃止とも深くかかわっている。大学改革全体が、企業が求める手軽な人材をいかにつくるかを競うもので、全国の大学が目先の経済的利害につながるかどうかが基準となり、ねつ造事件も頻発している。地道に過去や現在、そして未来を深く考察していく学問の役割が否定される流れのなかで起こっていることだ。銭金が最上段に君臨するというのが現在の経済構造でもある。
 C 少子化で公立中・高校でさえ統廃合が進むなかで、梅光がこれまでのように生徒を集めるのが困難なのは確かだ。とくに中・高校は、大学のように他県から生徒を呼び込むのにも限界がある。下関は国勢調査でも浮き彫りになったが、人口減少数が全国の自治体のなかで四位だった。少子高齢化がよそに比べても急ピッチで進行している。そのなかで公立も私立も少ない子どもを奪い合っている。いずれ閉校する私学が出てきても仕方がないのかもしれないが、金のために教育を放棄するのは本末転倒だろう。梅光がなんのためにあり、どんな教育をするのかを抜きに「中・高校の跡地を売り払ったら5億円になる」と皮算用しているようでは、同窓生が怒るのも無理はない。
 D 経営面から見ても、やはり大学は儲かるようで、将来的にはそちらに専念する道を思い描いている感じだ。ただ、外国から留学生を引っ張ってきて学生数を確保するというのは、つぶれる寸前の私学の姿だ。
 A 中・高校を閉校して売り飛ばし、大学資産としてとり込んでいくというのは現実味を帯びている。査定して「売却したら五億円になる」と見なしていることも話題になっている。教職員には「人件費が高い」「赤字経営なのだ」ばかりいわれてきたが、実際には人件費は毎年ほぼ変わっておらず、増えているのは管理経費や雑費的な経費だ。管理経費は只木氏たちが入ってきてから年間で1000万円以上増え、この1、2年は2000万~3000万円増えている。今年度、中・高校のタブレットの機種変更をするが、それにもお金がかかるし、2年前には資産処分で2000万円超出費している。その頃に旧市内の土地を測量したという話もある。ブレインアカデミーに300万円プラス首切りの成功報酬、株式運用を委託しているクライアント・ポジションにも300万円など、以前にはなかった経費がすごいことになっている。
 B というか、「赤字経営」というのが実際とは異なる。あの規模で30億円の現金資産を持っているのだから、東亜大学と比べてもはるかに裕福な経営基盤だ。だいたい赤字でどうしようもない経営陣が男女で海外出張に出かけたり、月に数日やってくるだけの理事長が1000万円以上の報酬を要求したり、グランドホテルの最上階暮らしをしていたり、財務部長が駅前でホテル暮らしをしていたり、4人の理事らが毎月100万円を使い放題というのは、よほど頭がおかしいか何かでないと説明がつかない。赤字か否か、経営難か否か、口先で何をいっているかではなく、その行動が正直に映し出している。「赤字」を盾にして大なたを振るうのは経営者がやりがちな手口だ。
 C 資産運用も梅光では歴史的に「元本を割る商品には手を出さない」ことを徹底してきたという。以前の担当者だった真方さんは、株式ではなく国債などを短期で運用し、1円でも利益が出たら手放すなど、確実に利益を出していたという。「梅光のためにお金をつくる」という目的が明確だったからだろう。しかし三井住友銀行出身で追手門大学から財務部長が来て大変な額を株に投資するようになり、今では一億円ともいわれる損失を出している。金儲けするはずが証券会社に手玉にとられて食いつぶしている印象だ。この間の株価暴落でどれだけの損失になっているのかは曖昧にできないだろうし、場合によっては責任を問われておかしくない。損切りするまでは損失ではないといっても、今後はアベノミクスも息切れして円高・株安に一気に傾いていく趨勢だ。

 よそ者が乗取り食潰し 創設以来の伝統放棄

 A 同窓生や保護者たちが怒っているのはよそ者が梅光を乗っとって別物にしていることだ。経営陣が自分の財産のように扱っているが、その30億円の現金資産も歴史的に梅光が蓄積してきたお金だ。もともとが本間理事長や只木氏の金ではない。苦労した自分の金でないから豪快に使えるのだと指摘されている。
 B 文科省キャリアといっても事務次官の出世レースに敗れた者が全国の大学に押しつけられて、どこもまいっている。
 下関で文科省キャリアというと嶋倉元教育長を思い出す。地元の歴史や地域性などお構いなしに「朝鮮への植民地支配はなかった」といって、在日朝鮮人の市民を怒らせた。
 また、小・中学校の大統廃合計画をうち出したり、暴れる中学生を警察に逮捕させよと指令を出したりと、さんざん下関の教育現場を混乱させて帰って行った。しかし文科省でも厄介者だったようで、現在は福岡県内の大学に押しつけられている。文科省キャリアというが使い物にならないから追い出された、あるいは都市部の大学で叩き出された者が、30億円を持っている梅光に流れ着いてしがみついているような印象だ。なぜよその大学に居場所がなくなったのか、それぞれの前任地で何があったのか取材したら見えてくるものがある。
 D ある知識人が、「戦時中は軍事で教育がつぶされたが、今は金儲けでつぶされている。全国的な問題だ」といっていた。今の世の中、新自由主義で社会的使命とか目的をすべて金儲けにすり替え、それが生産現場や教育現場、行政まで支配していくようになっているが、梅光でも典型的にあらわれている。しかし人間を育てる教育の場が損得勘定に支配されるわけにはいかない。ろくな結果にはならないからだ。
 B 梅光女学院は、明治維新を成し遂げた力を原動力に、日本で女子教育をやらねばならないという情熱をもった人人の手で創立された。当時の人人はその情熱で、なにもないところから必死になって金も集め、学校をつくっていった。服部章蔵と同じ吉敷郡出身の成瀬仁蔵も日本女子大の創立にあたり、知人や実業家などを熱心に説いて金を集めた。「寄付金は一厘一毛であっても浪費してはならない」と、2人で自転車に乗って走り回り、昼食はうどんや蕎麦で済ませて安い下宿に泊まり、東奔西走したという。
 「金がないからできない」ではなく、教育するために金をつくるという姿勢だ。今の経営陣の姿はその反対だ。そのような創設者から受け継がれてきた伝統・精神も根こそぎ放棄してしまっている。人間を育てるために教育があるのに、金儲けのために教育があると見なすなら誤る。
 教育に対する熱情を否定して金儲けする熱情が支配したときに、大学や中・高校はどうなるのかだ。

 地元世論の盛り上がり 居直れば孤立は必至

 B この間、同窓生や保護者、市民にも実態が知られてきて、世論の包囲網ができあがってきている。県の学事文書課にも抗議の電話が殺到していることが県庁界隈で話題になっている。監督責任が問われるから、行政としても無視できないようだ。
 A 新年度最初の教授会では本間理事長がすごい剣幕だったという。「私が専横的な学院運営をしているとか、お金の使い方に疑惑があるとか、最近では匿名で新聞社に私がドバイに行ったとか海外に行っているとか投書をして、しかも匿名で私の家内のところに新聞のコピーが届いた。こういうことを卑劣といわずしてなんだというんだ」「子どもでもあるまいし、学外の人間を巻き込んで文科省や県教委や市長にいいつけに行って、みずから自分たちの解決能力を放棄しているという話にほかならない」とか、1万7000人の署名についても、一方的な話を聞いて署名しているのであれば、「そんな署名が100万通集まろうが1億通集まろうが私は動じない」などと叫んでいたようだ。「卑劣な行為」をしているのが教職員であれば断固たる措置をとる!と脅しもかけていたようだ。
 D 大学の副学長に本間理事長が会長を務める大学マネジメント研究会のメンバーを引っ張ってきたり、事務方にも理事長肝いりの職員を2人入れたりして、本間体制を死守するためにムキになっている印象だ。文科省キャリアなのに、梅光以外に行き場がないのだろうか? とも思う。
 B しかし下関で教育を続けていこうと思ったら、地元の協力なしには成り立たない。これほど同窓生たちが激怒して、教員や学生たちも厳しい視線を注ぎ、しかも市民世論が盛り上がっているなかで、居直って恫喝すれば孤立していくしかない。力関係としては既に詰んでいる。ここまできたら丸く収まることは考えられないし、延長戦になって全国に「梅光問題」が知れ渡っていくのは避けられない。そもそも理事長退任署名など聞いたことがないもので、それだけでも注目される。梅光の名前と同時に、登場人物たちの名前も知れ渡る。文科省もそのキャリアを売りにして大騒ぎを引き起こしている男がいるのに監督責任はないのか? と思わせている。
 C 評議委員会のなかには地元の人間もいる。3月の理事会・評議委員会で辞めた人もいたが、まだ残っているのが安成工務店の安成信次氏、林派で下関市教育委員(毎月13万円支給)でもある林俊作氏、カモンFMの冨永洋一氏など、安倍派・林派のそうそうたる面面が関わっている。彼らは一体なにをしているのか? なぜ黙っているのか? と話題になっている。一肌脱ぐような人間はいないものかと。
 それに加えて、山口銀行の梅本裕英常務と西日本信用金庫の山本徹会長までいるのに、現金を30億円も持っている地元大学を三井住友銀行の出身者に持って行かれている。メガバンク出身者にとっては、山口銀行がなにかいっても「地銀がなにをいうか」という感覚なのだろう。普段はあれだけ地元企業に情け容赦のない態度をとっているのだから、こういうときくらい山口銀行も意地を見せたらどうかという声もある。
 B 3月の理事会で山口銀行の梅本常務が資産運用額と運用先の詳細を報告するよう求めたが、その後に三井住友出身が腹を立てて、山口銀行の口座に入れていた3億~4億円を引き揚げて三井住友に移したという噂も出回っている。これが事実なら情けない限りだ。この外部食い荒らし、植民地略奪の手法は、この20年来市政でやられてきた手法とそっくりで、今の下関の疲弊状況を象徴するような問題でもある。
 A あと話題になるのが中野学院長で、「六三四(むさし)の息子がしっかりせんか!」と唐戸の人たちは語り合っている。梅光の歴史や伝統を守るために、どうして肝心な場面で身体を張れないのか…、経営がわからないにしてもその命運を丸投げしてどうするのか…と。
 D このまま放置していると証券会社のカモにされて資産がなくなるまで食いつぶされる。それを徹底的にチェックするのが本来は監査や理事会だ。地元の評議委員にしても、食いつぶしたときの責任は大きい。現状ではまだ現金資産があるが、これがなくなったとき、本間理事長や只木統轄本部長が最後まで責任を持って梅光に残るだろうか。失礼な話かもしれないが、ヘッジファンドのように食い物にして飛び去って行く光景すら目に浮かぶ。そうなる前に解決するかどうかが梅光の命運にかかっている。今ならまだ傷は浅く済む。
 B 100年の歴史のなかで培ってきた梅光の教育を子どもたちのために守りたいと同窓生の多くが思っている。梅光をどういう学校にするのかおおいに論議し、同窓会や現役の教職員、父母が結束して大学なり中・高校を建設していく力を強いものにしていくしか展望はない。その桎梏(しっこく)になるのであれば、本間理事長には東京に帰ってもらって、首都圏のもっと大きな大学の運営に携わってもらったらいいし、只木氏も名古屋に帰ってもらって、向こうで大活躍してもらえばいいと思う。下関の梅光は、自分たちで頑張るんだというのが要になると思う。


2016年03月25日

梅光学院、真相解明と正常化が急務 「改革派」が踏み荒らした梅光

長周新聞(2016年3月23日)
 ∟●真相解明と正常化が急務

真相解明と正常化が急務
「改革派」が踏み荒らした梅光
子供たちの為に奮起を

2016年3月23日付

 下関市にある梅光学院で、「改革」を巡って経営陣と教員・父母・同窓生・生徒たちとの間で衝突が起き、本間理事長の退任を求める署名が広がりを見せている。「梅光の未来を考える会」が訴えた署名は1万7000筆に達するなど、下関市内だけでなく広範な人人のなかで関心を呼んでいる。本紙はこの間、地方の私学において何が起きているのか、どうしてそこまで同窓生や教員、父母や子どもたちが怒っているのか、相当数の学校当事者たちに意見を聞き、真相に迫るべく取材を進めてきた。当初は口が重かった教師たちや学院関係者たちも次第に内実を語り始め、おぼろげながらその全貌が見えてきた。100年の歴史を誇る梅光学院で何が起きているのか、どうすることが教育にとって求められているのか、記者座談会を持って論議した。
 
 学問と教育投げ捨てた文科省路線の産物 建設的な力結集することに展望

 A この間、「梅光がたいへんだ!」という話は伝わってくるが、具体性に乏しく何が問題になっているのか分かりづらい状況が続いていた。それは、一つには解雇というか辞職に追い込まれた教師たちの口が重く、はっきりとしたことが伝わらなかったからだと思う。苦しくても辛くても話せない抑圧感があったようだ。家族にすら打ち明けられずに悩んでいた教師もいた。
 B 同窓生の1人は、3月5日の集会に参加して初めて梅光の実態を聞き、ショックと憤りを感じて署名を集めてきたが、詳しいことがわからなかったと話していた。自身はキリスト教信者ではないが、梅光の精神やそこでの出会いで教えられたことは多かったという。梅光を別物にしていくのは許せないと話していた。「尋常ではない事態が起こっているぞ」ということで同窓生を中心に署名は広がった。そのなかで、先生たちが経験したことや学院運営を巡るさまざまな問題が浮き彫りになってきた。
 D 表面に出てきたのは、教師をパワハラで退職に追いやるという労使関係の問題だった。そのやり方も確かにびっくりするようなもので、ブレインアカデミーによる「研修」は最近流行している首切りビジネスそのものだったが、取材を進めるなかでわかったのは、その労使関係も含めて四年前からやられてきた「改革」に問題の根源があり、教師・生徒・学生たちと学院経営陣との矛盾が激化してきたことだった。
 E 地方の私学が少子化のもとで生き残るのは大変な困難をともなっている。梅光も同じで、中・高校が男女共学になったときも世間は「生徒確保でたいへんそうだ」と話題にしてきた。東亜大学がアジア圏から留学生ばかり連れてきているのもしかり。学生や生徒の確保が経営にとって生命線になってくることは誰でも分かる。問題は、そこで何がやられたのかだ。梅光の場合統轄本部長の只木徹氏が赴任して次第に実権を握り始め、文科省官僚だった本間政雄氏を理事長に引っ張ってきたところから、それまでと明らかに違いが出てきた。彼らは地元民からすると「よそ者」になるわけだが、外部から乗り込んできた力によって「梅光が別物にされている」という思いをいろんな人が口にしていた。
 B 今回の解雇騒動で、結果的に中・高校は21人の教師が辞めていった。全教職員の半数以上になるようで、子どもたちに聞くと離任式は涙、涙だったようだ。生生しい大人世界の事情をさらけ出すものになった。ひどい辞めさせ方に対抗する術がなく、教師集団が各個撃破で追い込まれていったのについて、結束してどうにかできなかったのだろうか…という意見もある。ただ、もともと家父長的な色彩が強かったことや、採用の際には「組合をつくらないように」といい渡されるのが常だったこと、昔からの校風というか、とくに波風が立つこともない雰囲気のなかに「改革」勢力が乗り込んできて、何が何だかわからないうちに物いえぬ支配的な力が加わっていたこと、急展開していく事態への戸惑いのようなものを当事者たちからは感じる。「まさかあの梅光で」とみなが語っているのは、まさにそのギャップからだと思う。昔のイメージからは考えられないようなことがやられていたわけだ。
 D それで何を「改革」してきたのか。近年は学校の壁に「授業料を○%減らします」とか「○○大学に何人入学しました」とか、携帯会社のPRかと思うほど大きな垂れ幕や宣伝文句を並べてアピールするようになった。テレビCMにも出てくるようになった。学生集めに必死だというのは傍目にもわかる。
 E そういう意味で私学の苦境には普遍性があるし、梅光では文科省官僚出身者を理事長に据えて、そのパイプを頼りに補助金を得たいとかさまざまな思惑もあったのだろう。しかし、その結果、文科省路線そのままの「改革」が持ち込まれ、ここまで事態がこじれたというのが実態だ。

 「文学は儲からない」 経営の為学生求む転倒

 C 大学関係者は職業専門学校化してきたことを非常に憂えている。例えば、2015年度から文学部(日本文学科)と国際言語文化学部(英語英文学科、東アジア言語文化学科)が、「文学部人文学科」に統合された。梅光は歴史的に日本文学で知られてきたが、同時に英文学や語学にも力を入れてきた。それが「英語コミュニケーション専攻」「国際ビジネスコミュニケーション専攻」などになり、国際ビジネスコミュニケーション専攻では、ANAと提携してキャビンアテンダントを養成するコースができるなど、「まるでANAのビジネススクールだ」と指摘していた。かろうじて日本文学科を守っているが、宮沢賢治の研究者である中野学院長本人が“文学はもうからない”と公言する始末だ。
 D 子ども未来学科(子ども学部)の立ち上げにかかわった関係者は、保育士を育てる教師を育成する学科という位置づけで、喧々諤々(がくがく)議論をしながら建設してきたものだったという。ところが、その理念を置き去りにして単純に保育士資格をとる薄っぺらな学科になったことを残念がっていた。資格がとれることを売りにして学生を集め、保育士資格を与えるが、それで現場に出て行った保育士が現場に対応できず、すぐにやめていく。深く学問として幼児教育等を探究することよりも、資格がとれるか否かという方向にねじ曲がってしまった。
 A 大学改革は全般的に、企業が即戦力になる学生をいかにつくるかを競っている。梅光も同じようにビジネススクール化の道を歩んできた。直接的には文科省出身者がトップに就いたこともあるが、政府が進めている人文系廃止の動きともかかわっている。「大学の知的劣化」はどこでも問題になっている。企業が求める人材を手軽な商品として市場に送り出す職業専門学校と化してしまい、最高学府としての面目を失いつつある。このなかで梅光でも「文学は飯にならない」といって別の道を探し始めていた。人文・社会科学は現在の人間と社会のあり方を相対化したり、批判的に考察する独自の役割を持っている。ところが、目先の経済的利害につながるか否かがすべての判断基準となり、大学教育全体が底の浅いものになっている。これは大学改革全般に普遍的に貫かれている方向だ。
 D この間のグローバリズム、市場原理を導入した独立法人化もそうだが、遠い将来を見通した学問としての社会貢献ではなく、目前の産業界の要請や国家、地方行政の下請研究・教育機関として役立つことが第一になり、国家統制が強まってきたのも特徴だ。梅光に限らず全国の大学に文科省出身者や事務次官レースに敗れた者たちがたくさん天下り、同じように「改革」を競っている。
 C 「改革」の成果として、確かに梅光学院大学の入学者数は増加した。授業料の2割引きとか給付型奨学金の拡充で学生を集めると同時に、外国人留学生も増やしている。来年度に入学する学生は330人といわれるが、そのうち約30人はウガンダ、ミャンマー、ベトナム、台湾、韓国などからの留学生だ。これまでは台湾や韓国など近隣の国からの留学生が多かったが、今度は日本語も英語も話せない学生を連れてくるようだ。
 A 「改革」の成果が学生数確保だけなら、最終的に東南アジアあたりから連れてくる競争の仲間入りをするだけだ。文科省族の河村建夫がかかわっていた萩国際大学がそうだったが、私学助成金を得るために中国人留学生をたくさん引っ張ってきて、行方不明者が続出して大問題になった例もある。学問探究を投げ出して経営だけが一人歩きすれば、大学の設置目的すら吹っ飛んでしまいかねない。しかし、そうした本末転倒が公立や私学を問わず、全国の大学を舞台にしてくり広げられている。学生が学ぶために大学があるのではなく、経営のために学生を必要とする。少子化のもとで、そうしたパイの奪いあいみたいなことをやっている。
 B 大学改革の背景は確かにあるが、客観視したときに梅光で起こっている事態を「改革派」「守旧派」などと見なすのは誤っている。流言飛語の類いを排除するべく、金銭にまつわる噂も含めて学院経営陣にも質問をぶつけてきたが、教師の扱いにしてもあまりにも乱暴で、とても「改革」=正義といえる代物とは思えない。もっとはっきりいうと、文科省関係者などのよそ者が入り込んで、食い物にしているというのが実態ではないか。真相解明が求められる点は多多あるし、とくに金銭面についての疑問が多すぎるというのが印象だ。
 C 梅光は決して財政難の学校ではない。30億円ともいわれる金融資産を有しているし、数年前には理事長をしていた山田石油の会長が六億円ともいわれる寄付をしている。東亜大学のように金銭の工面に苦労している大学に呼ばれたとして、果たして問題視されているよそ者たちは行ってみようと思っただろうか? 裕福な経営だからこそ魅力を感じたのではないか? という疑問がある。

 本当に赤字なのか? 豊かな資産を食い物に

 B この間の「改革」は財政赤字を錦の御旗にして実行してきた。しかし、本当に赤字なのかだ。本間理事長や只木統轄本部長、樋口学長などの行動を見ていると、今年1月5日の常任理事会で、自分たちの報酬を引き上げる案を出している。それは理事長1300万円、学院長1300万円、学長1200万円、統轄本部長1200万円に引き上げるというものだった。それを見て常任理事が驚いて反対すると、すぐにやめさせる行動に出た。本間理事長の場合、学院にやってくるのは月に1、2回、それも2、3日しか来ないのに1300万円というのは破格の報酬だ。それで、下関に来たときにはグランドホテルの最上階を定宿にしている。とても財政赤字に苦しむ大学トップの姿とは思えない。
 E 中学校の合唱部が1月の声楽アンサンブルコンテスト県大会で金賞をとり、全国大会に行けるようになったが、学校から「今経営が苦しくて金がないから交通費は出さない」といわれ、仕方なく次点の学校に譲って福島に行けなくなった。中高校で教師たちが大量に首を切られて年収300万円程度の契約社員のような教師を増やしているのともあわせて、「ダブルスタンダードだ」という声は多い。
 B この間、学院内部の事情に精通する人人にも取材していったが、みなが丹念に資料を整理しているし、問題点あぶり出しに向けた態勢は整っているように思えた。驚かされたのは、只木氏の出張経費は1人だけで年間400万円という点だ。コーポレートカード(法人カード)にしても月100万円までは自由に使えるというもので、一番使う只木氏がカードを管理しているから、そのほかの人にはチェックしようがない状態になっているという。何に400万円も費やすのか、毎月100万円近くを費やすのかは領収書や明細も含めて重要かと思うが、いったいどんなチェック体制になっているのか、監事は何をやっているのかと、聞いていて疑問に感じた。問題を指摘する監事もいたようだが、逆に首を切られたという話も耳にした。
 C 物品購入にしても不透明なものが多いといわれている。中・高校の生徒たちが一番問題にしているタブレットも、教職員たちの反対意見を無視して推し進め、300台以上を購入した。毎月の学校負担は110万円に上るようだが、ほとんど使っていない生徒も多い。「大好きな先生たちを辞めさせるのに、なぜこんな物にお金を使うのか」という生徒たちの怒りとなっている。
 D そして大きな問題が株式運用だ。表向きは現金預金30億円のうち10億円を運用しているという説明だったが、これももう少し詳しく取材してみると、昨年3月末の段階で、野村證券に5億円、大和証券に5億円(退職給与引当金を入れている)、大和ネクストに5億5000万円と、これだけで15億円を超す金額になっている。さらにこの後「証券は今が底値だから買っておけばもうかる」といって、日興証券の系列に2億円を突っ込んでいるという話で、合計17億円を運用しているようだ。
 運用を株式会社クライアント・ポジションというコンサル会社に委託しており、ここにも約300万円支払っているという。株価の下落が止まらないなかで、損失額はふくれ上がる一方だ。裕福な学院の資金に、証券会社などが寄ってたかって群がっているのもわかる。
 A 「改革」というよりは、こうした学院経営に批判意見を持つ人、抵抗勢力と見なした人を次次に切り捨てていったことに特徴がある。理事、監事などの役員、事務職員を切り、今回は大学や中・高校の教員を大量に解雇した。一方で只木氏は四人も女性秘書を抱えている。
 「気に入った秘書の給与を8万円もアップした」とかも噂話ではなく、真相解明してみたらいいと思う。この3月末で、真面目に働いていた経理の女性2人も解雇してアウトソーシングするようだ。25日に開かれる理事会で現監事2人が解任されるという話にもなっている。
 D 梅光の経営状態を知る人たちは、「赤字、赤字というが、梅光には借金がない。30億円持っていれば、こつこつ地道にやっていけば十分な経営状態だ」と話している。中・高校については少子化の下でここ数年は年間1億円ずつ赤字が出ていたようだが、21人もの教師を解雇しなければならないほど、ましてやつぶさなければならないほどの経営状態ではないという。
 B 私立中・高校に対しては、学校規模(生徒数)が1~299人には50万円、300~599人には100万円、600人以上には200万円の補助金が出ており、加えて生徒1人当たり(保護者が市内在住に限る)には1万5000円の補助金も出ている。それを合計した額は下関短期大学付属高校では318万5000円、早鞆高校は1256万円、国際高校は527万5000円、梅光高校は537万1710円。さらに国(県)からの助成金も生徒1人当たり34万円ある。市内の私立高校の関係者も「赤字を理由に首切りするのは私学の常套手段だ」と指摘していた。
 A 現金で30億円も持っている私立学校というのはお金持ちだ。東亜大学などは私学振興財団に毎年2億円ずつ返済している。とても投資に回す貯金などない。梅光はお金を持っているからこそ証券会社も喜んで飛びついているし、そのお金をみんなで食い物にしているのが実態ではないか。駅前のホテルに暮らしている資産運用担当職員についても、どこからそのようなお金が出ているのか真相解明したらいいと思う。自分のカネで単身赴任のホテル暮らしなどするものだろうか。

 梅光100年の歴史 評価高い日本文学研究

 D 一般市民のなかでは「あの梅光で」というショック、驚きが大きい。100年の伝統がある梅光のイメージといえば、地道ではあるが下関の歴史のなかで存在感があり、下関の風格に一つの影響を与えてきた。かつては「上流階級の子どもが行く学校」だった梅光での騒動が、今の下関の疲弊と重なり、商業都市・水産都市として繁栄した下関の衰退の象徴だという論議にもなっている。よそ者に引っかき回されて散散な目にあっている姿も下関の政治経済の状況とそっくりで何ともいえないものがある。
 A 梅光そのものの歴史を見ると、140年ほど前にヘンリー・スタウト博士夫妻が長崎に英語塾を開設したのが始まりだ。彼が下関に来て一番最初につくったのが下関教会で、そこにいた服部章蔵が梅香崎女学校を長崎につくった。その後、梅香崎女学校と山口の光城女学院を合併して、下関に梅光女学院高等学校・同中学校を設立した。それから100年になるが、明治維新後の女子教育を担ってきた学校だ。伝統的には日本文学研究で知られる、まさに人文系だ。
 B 元学院長の佐藤泰正氏は夏目漱石の研究者として知られているし、大学内にある郷土文化研究所にはかつて、国分直一という国内屈指の考古学者がいた。綾羅木郷台地遺跡の発掘にかかわっていた国分博士が、ベトナム戦争のさい企業が砂を採取して遺跡を破壊しようとしたとき、現場で体を張ってブルドーザーと対峙し阻止した歴史は、山口県をはじめ全国の考古学研究者のなかで語り草になっている。そして守られてできたのが現在の考古博物館だ。
 独自の宗教教育が中心ではあるが、一つの理念を持った純潔な教育をしているというところでの信頼があり、学問的・教育的な内容にしても水準の高さは認められる権威があった。

 25日の理事会に注目 子供に責任負う解決を

 D こうした歴史や伝統、地域や同窓生とのかかわりを断ち切るから矛盾になる。あと、宗教戦争の色彩もあって、オンヌリ教会で塗り替えようとしているという危惧は同窓生や関係者のなかに強くある。市内の教会を切ってオンヌリ教会を入れ始めたのが1昨年からといわれている。それが佐藤元学長の死で、たがが外れたように加速したようだ。「梅光の歴史の終焉」とみる人もいる。幼稚園長や中・高校の宗教担当など主要ポストにオンヌリ教会の関係者が就いているのも特徴だ。
 A 労使問題から学校運営、私学の置かれている苦境、さらに宗教上の問題など、さまざまな問題が複雑に絡みあって単純ではない。ただ、「カネがない…」といっている「改革」派が、結構大胆な金遣いであることはわかってきたしそのダブルスタンダードをみなが疑問に感じている。文科省改革路線、英語教育の最先端を梅光でやって、その結果、学校崩壊を引き起こしている。それが「改革」の結果だった。
 E 学校、教育機関であるなら、子どもたちの教育に責任を負うことが大前提だ。
 今回の解雇問題では解雇する側のやり口もひどいが、同時にそれを恐れて逃散するだけでは何も物事は解決しない。今後立て直していくにはどのような力がいるのか、同窓会の援護射撃もあるし、世間の世論も動き始めたなかで、梅光で起きた出来事を一つずつ真相解明も含めて明らかにし、膿をとり除かなければ前に進みようがない。理事長そのほかを解任しただけで何かが解決するわけでもない。どのような大学なり中高校にしていくのか、発展的な力を束ねていくことが事態打開の大きな原動力になると思う。
 A 25日には理事会・評議委員会が開かれるようだが、そこでどういう結果になるのかが注目されている。評議委員会には地元企業のメンバーもかなり含まれているが、同窓生や地域、保護者、生徒たちの思いに対して、どのような態度をとるのか注目されている。あと、投資信託等に突っ込んでいる17億円の金融資産は、この間の株式市場の落ち込みで相当に目減りしていることは疑いない。この焦げ付きも将来的に誰が責任をとるのかが注目されている。理事も評議委員もみんなが蜘蛛の子散らして逃げていったでは話にならないし、子どもたちに責任を負わなければならない。それこそ学院経営の抜本的な改革が迫られるところへきている。


涙、涙の離任式……梅光学院中・高校

長周新聞(2016年3月21日)
 ∟●涙、涙の離任式……梅光学院中・高校

涙、涙の離任式……
梅光学院中・高校
生徒に深い印象残す

2016年3月21日付

 「財政難」を理由に多くの教師が解雇された下関市の梅光学院中・高校で18日、離任式がおこなわれた。どの教師が学校を去るのか、この日まで生徒たちは知らされていなかった。講堂が涙で包まれるなかで教師たちが残した言葉は、子どもたちの心に深く印象を刻み込むものとなった。

 満身の怒り語る教師 担任の退職初めて知る生徒も

 離任式が始まり、校長の「今年やめる先生を紹介します」という言葉で並んだ教師は16人にのぼった。残る教師の方が少ないほどだったという。そのなかには噂になっていなかった教師もおり、また担任教師がやめることを初めて知るなど、衝撃を受けたことを生徒たちは語っている。高校1年生の担任は全員が退職。体育科も専任教師全員、英語科は昨年と1昨年に採用された2人を残し、古参の教師はほぼ全員だった。国語科も4人のうち3人など、生徒たちが長く信頼を寄せてきた教師たちだった。
 「本当はやめたくないのに、やめさせられた」「腹が立って腹が立ってしかたがありません」「パワハラに負けてやめるような人間ではないことをわかってほしい」。教師たちが一人一人発言を始めると、講堂中が涙で包まれたという。
 ある教師は、「この学院を愛してもいない人たちによって学院が踏みにじられている」といい、またある教師は、「教師を6人やめさせて4人採用するなら、やめさせる教師は2人でよかった。この学校が数学の足し算・引き算ができる学校かどうか、あなたたちが来年確かめなさい。私たちは確かめられないから」とのべた。
 一人の教師が、「古い教師がいたら今の梅光がなくなる」といわれ希望退職に応じたこと、生徒会などが署名するのを見て「やっぱり梅光に残りたい」と思い取消を求めたが、受理されなかった経緯を涙ながらに語るのを聞き、慕っていた高校2年生たちは大泣きしていたという。
 また、昨年秋頃から突然姿を見せなくなり、生徒たちが心配していた宗教主任も出席。離任式への参加も迷ったが、生徒たちから寄せ書きが届いたり、自宅に押しかけてきたり、同僚の教師たちに後押しされて出席したことを語り、「学校を見るだけで苦しかった」と思いを語ったという。
 教師が語る内容は、「私たち生徒にとってはびっくりすることばかりだった」という。悲しみと同時に教師たちの満身の怒りにふれ、多くの生徒が悔しさ、怒りを募らせている。
 これほどの教師が去り、4月から学校はどうなるのか、中・高校が今後どうなっていくのか不安も広がっており、「自分たちのときはまだ学校はあるのだろうか。大丈夫だろうか」と語りあわれている。
 子どもを育てる教育の場で、教師も子どもたちも、これほどの思いをしなければならない学校とは何なのかを考えさせる離任式となったようだ。


梅光学院騒動の真相に迫る、なぜ14人の教師は辞めたのか

長周新聞(2016年3月18日)
 ∟●梅光学院騒動の真相に迫る、なぜ14人の教師は辞めたのか

梅光学院騒動の真相に迫る
なぜ14人の教師は辞めたか
理事長解任署名の背景

2016年3月18日付

 今年に入ってから、下関市にある開学100周年を迎えた梅光学院で中・高校の教師14人、大学の教員8人が辞めることが明らかになって以後、生徒たちが「先生を辞めさせないでほしい」と署名活動を始め、3月5日には保護者、教職員有志、卒業生らが300人の集会を持って「梅光の未来を考える会」を設立。現経営方針の転換と理事長の解任を求める署名運動を展開してきた。署名は卒業生を通じて全国区で広がり締切の14日までに1万5361筆が集まった。16日には代表者らがそれを携えて梅光学院を訪れた。ただ、関係者以外の市民の耳に届いてくるのは「とにかく梅光が大変なことになっている」ということ以外には具体性が乏しく、さまざまな噂や憶測ばかりが飛び交い、いったいなにが起こっているのかわからない状態が続いてきた。本紙はこの間の経過について関係者に取材し、流言飛語ではなく何が真実なのかを問うてみた。
 
 下関で100年の歴史誇る私立 「改革」で学校崩壊の本末転倒

 「梅光の未来を考える会」がおこなっている署名は、「梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元の文化の一翼を担ってきた。しかし“改革”の名のもとでの専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつあり、資金の使途に数々の疑念があるばかりでなく、コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている…梅光学院の未来のために、私たちは、本間理事長の退任と、現行運営方針の転換を強く要求する」としている。
 生徒たちのなかでは「共学化に反対した先生が辞めさせられるのだ」と話題になっているものの、どの教師が解雇されるのかわからない状況が続いている。そのなかでアンケートをとって校長に提出して説明を求めたり、署名活動をしてきたが、学校が子どもたちに真摯に向き合った形跡は乏しい。先日開かれた高校の生徒総会で「10億円を株に運用している」ことが話題に上るなど、学校に対する子どもたちの不信感も強いものがあるようだ。
 梅光学院でいったい何が起きているのか? どうしてそれほどの教員が大量に辞めていくのか? 何と何が矛盾して、その結果、学校の宝であるべき子どもたちの教育環境はどうなるのか? である。

 希望退職募集が発端 異常な人格否定研修会

 問題の発端は、昨年10月下旬、「財政難」を理由に40歳以上の中・高校の教師11人を対象に希望退職の募集がおこなわれたことだった。
 第1回目の募集で、すでに嫌気がさしていた英語教師らの多くが辞表を提出したとされる。その要因として関係する人人が指摘しているのが、2014年度から只木徹氏(統轄本部長、大学事務長、中高校副校長)が主導する英語教育改革と矛盾が生じていたことだ。その英語教育改革とは、文科省が進める「授業をすべて英語で」を徹底するものだったという。基礎になる文法を教えないので、学力の低い生徒になるとついていけず置き去りになる状況も出ていたようだ。公立高校の受験を希望する中学3年、大学受験を控えた高校3年生には対応できない状況も生まれた。子どもたちが喜ばないことを、いいなりになってやらなければならないことに嫌気がさしたのだという。
 だが辞表を提出した教師は11人に及ばず、数年前から中・高校にかかわってきたブレインアカデミーというコンサルタント会社が前面に登場した。全国で50以上の私学の人事制度の構築・導入などにかかわった実績を売りにするコンサルだが、その実態は、最近問題になっているリストラビジネスを手がける人材派遣会社の私学バージョンのようにも見える。
 まずブレインアカデミーによる「再就職斡旋の説明会」が開かれた。当初は希望者のみだったが、直前になって「全員参加」となり退職を希望していない教師も含めて参加することになった。そして11月14、15日の2日間、まだ辞表を提出していない教師を集め、1日5時間、計10時間にわたって「キャリア再開発」と銘打った研修会が開かれた。学院によると「この研修を受けたのは十数人」。講師はブレインアカデミー特別専任講師の肩書きを持つ西條浩氏だった。
 1日目、「人の目を見て話聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」という場面があったり、「こういう発言をすることからして、あなたはこういう人だ」と嫌みな人格評価をするなど、特定の教師に狙いを定めた個人攻撃と人格否定がやられたことに教師たちは戸惑った。普通の人なら腹が立つ内容だが、事前に「会の趣旨に反することをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、なんらかの処分がある」と釘を刺され、教師たちは我慢するほかない状態に置かれていた。
 続く2日目は、参加者の能力を全面的に否定することに力が注がれたという。年末までの「必達5項目」が掲げられ、「今から頑張って90点、100点になる人がこのなかにいるか? せいぜい60点か65点にしかならない」「このなかで努力して学院が希望する点数になる人はいない」「これがあなたたちの中途半端な成果だ」といった調子で教師の能力を否定。そのうえで、「当事者意識」「自責」といった言葉を強調し、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「当事者意識を持って学校改革をしていかないといけない。でも能力がないからよそに行ったらどうか」と、「人生の棚卸し」などの言葉を使ってくり返し巻き返し精神的に追い詰めていった状況を、当事者である教師は明かしている。経営陣の「経営責任」をいつの間にか教師たちにすり替えていく手法だったようだ。
 そして最後に研修の成果を発表するプレゼンがおこなわれ、一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させられたが、西條氏はそれを聞いて「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」といい、続いて中野学院長が、「(この研修は)先生を辞めるまで終わらない。あまり無理をなさらず、他の道も探した方がいい」といった内容をのべたという。初めから「辞表を出すように」と囲い込んでいく研修会だったのか、参加した教師たちにとっては脳みそ破壊をやるブレインバスターがいきなりあらわれ、耐えがたい研修会となった。
 その後、2度目の希望退職の募集がおこなわれた。1回目の条件では退職金について「本俸8カ月加算」だったが、2度目は「6カ月加算」に削減されていた。それでも辞表を提出しなかった教師には、第2段階のブレインアカデミーによる「個別カウンセリング」(1人90分)が待ち受けていた。密室でのカウンセリングの後、第3段階は「面接」で中野学院長、只木統轄本部長、樋口学長、只木氏の秘書・辻野氏の4人に囲まれて、「あなたは来年度はいらない」「来年度の学院の構想には入っていない」と戦力外通告がされていったという。3度にわたる圧力で11人の教師が辞表を提出。今年度末で退職する予定の教師は中・高校全体で14~15人に上っている。
 梅光の教師たちの年収は300万~400万円、長く勤めた人で500万円台と、教師としては決して高給ではない。それに対してブレインアカデミーはたった1人を2日間・10時間の研修に派遣しただけで300万円を得た。時給にして30万円である。さらに驚かせたのは学院の顧問弁護士が渦中で口を滑らせ「1人辞めさせるごとに成功報酬100万円を手にしていた」という話が広まったことだった。11人分の成功報酬を得たとすると1100万円、計1400万円になる計算だ。ただ、この真偽について只木氏に問うたところ「まったくのデマだ」とのべていた。

 教員の大量解雇 来年の授業体制組めず

 これほどの大量解雇でもっとも心配されるのは、来年度からの子どもたちの教育がどうなるかだ。
 中・高校では正規の教師の半数が退職し、大学でも来年度の授業予定も組んでいた准教授が、2月24日になって「総合的な判断」という理由で突然雇い止めの通告を受けており、中・高・大学すべてで来年度の授業体制がいまだに組めていないと指摘されている。ある教員はこうした状況について「入学者が増えたというが、レストランで客が増えたのに料理を出さないようなもの。反教育だ」と語っていた。「改革」した末に教師が逃散するように辞めていき、おかげで学校が崩壊するというのでは本末転倒というほかないが、職安に梅光学院の教師募集の求人が幾つも出ていたのを見て、学外でも懸念する声は高まっていた。

 4年前からの改革 「文学は儲からない」

 今回の問題は突然起こったものではなく、4年ほど前から大学を手始めにやられてきた「学校改革」の一環で、それが表面化したものだと関係者は指摘する。背景には、政府・文科省が進める人文系廃止や、少子化のなかで財政難に陥っている地方の私立大学が、生き残りをかけて熾烈な競争をくり広げていることなど、根深い問題が横たわっている。梅光学院も十数年前から定員割れに頭を悩ませてきた。
 梅光学院の「学校改革」は、2011年10月、現・統轄本部長である只木徹氏(名城大学で非常勤講師をしていた)が梅光学院にやって来て、その翌年の2012年春から始まった。非常勤講師として着任した同氏は、まず事務局を廃止して統轄本部を新設。本部長に就任して人事と金を動かす権限を掌握した。1年たった2013年、ガバナンス(統治・支配)強化のために、只木氏が本間政雄氏(元文科省官僚、大学マネジメント研究会会長)を呼び寄せ、現在の本間理事長、只木統轄本部長(大学事務長)、樋口紀子学長、中野新治学院長(中・高校長)の体制ができあがった。
 「学生数を確保する」こと、「人件費比率の削減」が改革の内容で、真っ先に事務職員の給与切り下げがおこなわれた。意見をいう職員には降格人事や左遷など、容赦のない仕打ちがおこなわれたという。このなかで心を病んだり、学院のやり方に納得できず、半数ともいわれる事務職員が学院を去り、半分が非正規職員になっているようだ。
 2014年からは大学教員の給与切り下げと人員削減が始まった。執行部が「金にならない」とターゲットにしたのは文学だといわれる。梅光学院大学は歴史的に日本文学の研究で知られてきたが、2012年に13人いた日本文学科の専任教員を四人まで削減。残りは非常勤講師でまかなう状態になった。1人1人呼び出して「今年辞めたら退職金を○○円出すが、来年になったら半額になる」という手法だった。
 ある教員は、「梅光は文学や語学に力を入れていたのに、文学はもうからないという。かろうじて日本文学は守っているが、英文学や英語学などはなくし、薄っぺらな学問にしようとしている」と危惧していた。辞めた教員を非常勤で補うなど有期雇用に変え、いつ辞めさせても法律上問題のない手法で削減は進んでいる。
 大学教育にかかわった経験のある人物は、「子ども未来学科を設置したとき、子どもの未来を考えられる人材や研究をどのようにしていくか、喧々諤々(がくがく)論議しながら建設してきた過程がある。それが保育士の資格をとれればいいというものに変わってしまった」という。もともと「保育士を育てる教師の育成」を追求していたはずが、保育士資格をとらせるだけに変わった。教授会の発言権を奪って学長に権限を集中させ、理事会で反対意見をいう理事をやめさせるなど、「守旧派」と見なした人人を学外に追いやるなかで「改革」は次から次へと進んでいったという。
 その結果、高校への生徒募集や宣伝広告の強化、給付型奨学金(1億円ほど)の強化、2013年度からは学費を20%減額するなどして学生数は増加した。「地方小規模大学のV字回復」と、教育情報サイトでとりあげられるほどだ。ベトナムなど東南アジアからの留学生の確保にも力を入れたようだ。学生数を基準にする文科省にとっては、今回のような騒動が起ころうと「優秀な大学」である。しかし、「4年前は赤字が1億2000万円といっていたが、この4年で2億ずつ増え、今累積が8億円といわれている」とも指摘されている。そうしたなかで、学院のなかでも「赤字部門」、すなわち経営者の視点から見たときに不採算部門に映るであろう中・高校にも改革の手が伸び始めていった。

 生徒や同窓生の疑問 不透明なカネの使い道

 地方の私立大学が生き残りをかけて懸命になるのは無理もない。大学として存立するために何を為すべきかはどこの大学でも抱えている重要課題だ。しかし関係者の多くが怒っているのは、これらの「改革」が進むと同時に、不透明な金の使い道、執行部にまつわる黒い噂ばかりが拡大し、説明を求めても明らかにされないことだ。
 例えば生徒たちが問題にしているのは2015年度から導入されたタブレットだ。中・高校の全校生徒と教師全員に、およそ300台ものタブレットが一人ずつ配られた。ある生徒は「学習の記録や授業に使えといわれるが、重たすぎて家に放置している生徒もいる」と話す。学校で充電してはいけないので、毎日持ち帰らなければいけないからだ。「礼拝のときに先生がタブレットを活用しなさいというが、先生さえ使えていないのに意味がないと話になる」という。男子を増やすため、サッカー部をつくってレノファと提携を結んだことも話題になっており、「そんなお金があるなら、なぜ先生たちを首にするのか」と子どもたちは疑問にしている。
 さらにこの間、昨年7月から学院が所有している現金資産のうち10億円の運用を始め、昨今の株価下落で目減りしていることも心配されている。また、「4人の執行部が法人カードを持って好きなように使っており、学内の人間はその支出先を知ることができない」「毎月100万円を使い切っているというのは本当か?」「統轄本部長が報酬を1000万円から1300万円に上げてくれといっているのは本当か」等等、金銭にまつわる疑問も多い。さらに宗教上懸念されている問題として、戦後日本キリスト教団とつながりをもってきた梅光学院のなかに、オンヌリ教会(韓国)のチャペルをつくるという噂など、さまざまなものが飛び交っている。
 あと、教員たちや学院に関係する人人に取材するなかで共通して出されていた懸念は、一連の改革や解雇が中・高校をなくすための布石ではないかというものだった。2013、14年頃に、中・高校の生徒数が減っているにもかかわらず、1年契約の常勤講師を退職者数以上に採用しており、「教師が多すぎるのではないか」と疑問視されてきたが、それらが「正規の教師をリストラするための準備、もっといえば中・高校をいつでもつぶせる体制に向かっている」と真顔で心配しているのである。曲がりなりにも中心市街地の丘の上の一等地に位置するのが中・高校で、広大な用地は高値で取引されることは疑いない。「校舎を新しくしたばかりで、まさかそれはないだろう…」という意見と同時に、そうした将来を本気で心配している人人も少なくない。

 統轄本部長に聞く 中学・高校の存続は?

 これらの疑問や噂が目下、同窓生やその周囲を巻き込んで流言飛語のように拡大している。放置することは学院にとっても不名誉で、真相を明らかにすることによってしか打ち消すことなどできない。学院に取材を申し入れたところ、只木氏と小谷財務部長が対応した。まず第一に、教員不足でカリキュラムが組めないのではないかという疑問については、「雇い直しは(教科によっては)ぎりぎりのものもあるが、授業はきちんとできるようにしていく」という説明だった。
 株式運用については、担当の小谷財務部長が回答し「投資信託、株、債権、リートなど組み合わせたファンドラップでやっている。当然ながら規定があるし、理事会でも承認を得て長期の運用でやっている。決して投機的なことをしているとか、ギャンブル的な話はない」と強い口調でのべていた。昨年七月の運用開始からの目減り分について質問したところ、「株式が下がったパーセンテージの半分くらい」とのべていた。
 毎月100万円の限度額ともいわれている法人カードについて只木氏は「会社だったら当然持つ物だ。監事や公認会計士がみんな見る。絶対に証拠が残るから、むしろ明朗会計だと評議員の企業主もいっている」とのべていた。
 そしてもっとも心配されている中・高校の廃止については「過去10年を見て、普通の会計士が見ればつぶすのが正しい選択だという。今は再建しようという意志でやっている」とのべていた。「今」は再建するつもりであるが、今ではないいつかにその意志がどうなるのかはわからなかった。「今は」を強調していたのが印象的だった。
 また、オンヌリ教会について尋ねると、「奇想天外な発想ですね! そういう話があるんですか!」と驚いた表情をして、「キリスト教の学校だから個人的にはチャペルを建てたいが、今は計画はない」とのべた。

 子供たちの未来の為 真相示し教育的解決を

 この間の梅光学院を巡る騒動は、単なる労使問題で片付けることのできない問題を含んでいる。それは同じように財政難にあえぐ地方大学、とくに私学の姿を映し出すものでもある。しかし聞こえてくるのは、大人たちのどろどろした金の話だったり、支配と被支配のそれこそ専横的といわれる学院運営の実態だったりで、文科省官僚出身だった理事長のもとでくり広げられてきた改革の結末は、何ともしれない印象を放っている。それでいったい、学院に通っている子どもたちはどうなるのかがもっとも心配されている。
 少なくとも、梅光学院は誰かがカネを稼ぐための道具ではなく、子どもたちを教育するために理念を掲げ、100年の歴史を紡いできたはずだ。その梅光学院が乗っ取られる、別物のオンヌリ学院か本間学院にされてしまうという懸念が、同窓生を行動に駆り立てている最大の要因のようだ。
 現在、署名運動は広がりを見せており、学校の行く末を巡る論議が活発化している。お金にまつわる疑問にせよ、正面から真相を明らかにすることによってしか解決の道はない。教師の解雇についても、そのように学校を支えてきた人材を次から次へと追い込んでいく運営にどのような未来が待ち受けているのかである。
 「改革」して大学なり学校が崩壊したというのでは、あまりにも惨い結末といわなければならない。現経営方針を転換させたのちにどのような学校にして、子どもたちをどう育てていくのか、大学であればどのような理念によって人材育成の分野で社会的な役割を果たしていくのか論議を深めていくことが待たれている。建設的な力をつなげていくことしか梅光学院の未来はなく、阻害物があるならば取り除き、どう進んでいくのかが問われている。


2016年03月18日

梅光学院、経営方針の転換,本間理事長の退任を求める署名、目標を上回る1万6千人

山口新聞(2016年3月16日)

全国から集まった署名簿を集計する梅光学院の同窓会員ら

 下関市の学校法人梅光学院(本間政雄理事長)の教育環境が破壊される-などとして、同窓生らが中心になって設立した「梅光の未来を考える会」が、経営方針の転換、本間理事長の退任を求めて呼び掛けた署名の集計が15日あり、同日夕までに1万6千人近い署名が集まった。

 14日までの9日間で1万人の署名を目標に活動を展開したが、学院運営に納得できない同窓生らが運動の輪を広げて、北海道から沖縄まで全国から署名が集まった。梅光には縁のない市民からも多くの署名が寄せられた。同日夕までの集計では1万5631人、今後も増えそうだという。

 同窓会役員で元教員の梶間真寿美さん(79)は「梅光で受けた教育は素晴らしいものだった。それがここ数年、改革という名のもとで信じられない状況になっている。卒業生として黙っておれない、何日間か立ち上がろうと呼び掛けた結果だ。学院は重く受け止めてほしい」と語った。

 梅光学院大学教職員組合の委員長を務める渡辺玄英文学部専任講師は、署名の数に「皆さんの関心、学校への愛情の深さを示すものだ」とし、「市民の方々からもたくさん寄せられたのには驚いた。学院執行部がやっていることが、いかに社会通念からはずれているかということ」と話している。

 同会は16日午後、署名簿を持って同市向洋町の学院本部で本間理事長に会い、署名の本旨を伝える。17日以降も下関市や山口県、文部科学省などを訪れ、同様に訴える予定だ。

 5日に設立された同会は6日から署名活動を展開。財政健全化などを理由に同学院が中学校高校で一気に11人の希望退職を募集する際に、研修名目の面談に参加した教員から「パワハラだ」と反発の声が上がり、大学で特任准教授の突然の雇い止め通告など人事で混乱が続く学校運営を、「計画性のない人事」「専横的な学校運営で教育環境が破壊されつつある」などと訴えていた。大学では4月からのカリキュラムが決まらない学科、ゼミもあるという。


梅光の未来を考える会、状況の説明と退陣要求がなされました

梅光の未来を考える会
 ∟●本日の通告の概要

本日の通告の概要

2016年03月16日

本日の「通告」は、梅光学院大学 学院長室にて行いました。
学院側は理事長、学院長、統括本部長、秘書室長、「梅光の未来を考える会」側は発起人3名と有志6名が出席しました。また、新聞社など数社も立ち会うことになりました。
17:00から15分程度、「梅光の未来を考える会」による状況の説明と退陣要求がなされました。学院側は、理事長は言葉を発せず、学院長が「真摯に受け止めて今後対応する」と言っただけでした。
今回は、署名は途上という理由で、呈示しただけで学院には引き渡さず回収して参りました。

過去に、「大学の諸問題についての学生自身によるアンケート結果報告」を受け取りながらロクな対応もせずそのまま放置したり、今年1月の中高の署名運動でも署名を受け取った後に形式的な対応をしただけで問題の本質的な対応はせず、また3月の学生による公開質問状に対する返答も内容が無意味であるなど、様々な働きかけに対する学院の姿勢は常に真摯とはかけ離れたものでした。

今回の私たちの活動は署名を集めるのが最終目標ではなく、これからも続いていく梅光の未来を描くことです。
今後の活動につきましても随時ご報告できるよう致します。
何卒、皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い致します。

署名結果(暫定)

2016年03月15日

私たちの活動にご理解とご協力を賜り感謝致します。

3月15日にご署名の集計を致しました。
17:30時点の暫定ですが15,631名に上り、目標の1万を大きく上回ることができました。
これも偏に皆様のご協力の賜物と存じます。あらためまして感謝申し上げます。
判明している未到着分もありますので、最終的にはこれらを含めて確定値と致したいと存じます。
各方面への反響の大きさもありますので、しばらくの間電子メールでの署名受付を継続致します。
ご協力頂ける場合にはこれまで同様のメールアドレスで受け付けておりますので署名にご協力頂けましたら幸です。

署名活動はこの会の最初に第一歩でございます。
この皆様からのお志を糧に、梅光を未来に資する活動を続けて参りたいと存じます。
まずは、3月16日17:00に梅光学院大学東駅キャンパス学院長室(予定)において、理事長・学院長に対し、署名の開示とこの会の要求の通告を行います。
お時間が許す様であればこの場へお越し頂き、様子をご覧頂ければと存じます。

これからの活動の詳細につきましては、ブログ(http://baikomirai.seesaa.net/)やツィッター( 梅光未来@baiko_mirai )でお知らせ致しますので、これからもご支援を頂戴できれば幸に存じます。
今後共、ご支援を賜りますようお願い致します。

略式ではありますが、ひとまずお礼とご報告を兼ねて。

2016年03月14日

梅光の未来を考える会、梅光学院に対する現経営陣の運営方針に反対し、理事長・本間政雄の退任を強く求める

梅光の未来を考える会
 ∟●署名活動のお願い
 ∟●署名用紙

署名活動のお願い

 新聞報道で御承知の通り、梅光学院は現在、混乱の極みにあります。

 長い歴史の中で、梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元文化の一翼を担ってまいりました。
 しかし、「改革」という名のもとでの専横的な学校運営は、多くの教職員の退職・巨額の資金運用による損失を誘発し、時間外労働及び休日労働にかかわる賃金未払などの法令違反にもつながっています。また、中・高・大学ともに、4月新学期からの教育に支障はないのか、憂慮すべき状況です。
 今のままでは、梅光の教育理念も梅光の未来も閉ざされてしまいます。
 そこで、わたしたち有志は、本間理事長の退任と、現行の学院運営方針の転換を強く要求致します。
 
 以上の趣旨に御賛同下さいます方は、別紙署名用紙に、御芳名と御住所をご記入くださいますよう、お願い申し上げます。また、ご多用中まことに恐縮ですが署名用紙は、3月14日(月)までにご返送下さい。
 
 なお、今後の「梅光の未来を考える会」活動報告をご希望される方は、住所欄にFAX番号もしくはメールアドレス、電話番号をお書き添え下さい。
 
 最後に、梅光が目指す教育と、梅光の未来を取り戻すために、お力とお知恵を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

2016年3 月5日   

「梅光の未来を考える会」

学校法人梅光学園、同窓生ら 本間政雄理事長の退陣を求め署名活動

山口新聞(2016年3月6日)

理事長退陣を求める署名活動 梅光学院同窓生ら300人集会-下関

 下関市の学校法人梅光学院(本間政雄理事長)の運営をめぐり、同窓生らが5日、経営方針の転換や本間理事長の退任を求めて「梅光の未来を考える会」を同市細江町の市生涯学習プラザで設立した。

 学院が運営する中学校高校や梅光学院大学の学生、同窓生、3月末で契約終了を言い渡された同大の矢本浩司特任准教授、保護者ら約300人が集まった。

 学院をめぐっては財政健全化を理由に、中学校高校で40歳以上の教員(常勤講師と非常勤除く)に希望退職を募集。現役教員によると、対象外の教員を含めて14人が退職届を出しているという。対象の教員に外部のコンサルティング会社が行う研修を受けさせており、参加した教員から研修内容が「パワハラだ」と反発の声が上がっていた。

 集会では同大や中学校高校の関係者が「計画性のない人事」などを指摘。矢本特任准教授が雇い止めの経緯などを説明し、「生徒や学生を中心に考えた対応をしてほしい」と求めた。中学校高校の教員が「パワハラ」研修について、「言葉の暴力で個人攻撃するようなことがあった」と訴え、講師の具体的な言動を説明するたびに会場がどよめいた。

 同窓生が本間理事長の退任を求める決意文読み上げなどがあり、現経営陣の運営方針に反対し理事長の退任を求める署名活動を始めることを決めた。署名簿には「専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつある」「コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている」などの文言もあった。8千~1万人分の署名を目標に、14日まで続ける。理事会が開かれる3月下旬までに本間理事長に届ける。

■人気准教授 突然の契約打ち切り 学生反発、抗議文送付

 梅光学院大学(下関市)の特任准教授が3月末での契約打ち切りを突然通告されたことに、ゼミ生を中心に学生が「納得できない」と反発、大学側だけでなく、県や文部科学省などにも反対署名を添えて抗議文を送ったことが5日分かった。3月末での事実上の解雇通告を受けた同准教授は、学生による授業評価がトップランクとされるが、学生が動いた背景に、多くの教員が年度末で去ることへの、学院側に対する不信感ものぞく。

 教員は同大学文学部の矢本浩司特任准教授(43)で専門は日本文学。1年ごとの雇用契約で昨春から教壇に立った。学生の人気が高く、一般講義のほか受け持つ日本近代文学ゼミに、来年度は新たに文学研究13人のうち10人が志望するなど集中し、調整が急がれる矢先の通告だった。

 赴任して間もない昨年7月の学生の授業評価アンケートでいきなり評価最上位ランクになり、教員の教育力向上を目指すFD委員会の副委員長を命じられた。年4回の同アンケートで准教授は常に最上位に入っていたとされる。

 准教授によると春休みに入った直後の2月24日、学院長室に呼び出しを受け、樋口紀子学長から「3月末の契約期間終期をもって雇用を終了し、以後は更新しない」旨の通告書を突然渡された。理由をただしても「総合的な判断」としか説明がなかった。

 准教授は「学校運営などで疑問に思う点を中野新治学院長に何度か申し入れた行動が、おそらく契約打ち切りの理由だろう。ハラスメント的に突然辞めさせられる事例は聞いたことがない」と憤る。

 契約打ち切りの事実を知った学生は大学側に(1)准教授の名前も入る4月からのカリキュラム、時間割がすでに決まったなかで、春休み中に通告した理由(2)授業評価アンケート結果の明示と具体的な雇い止め理由-などを1日付の公開質問状で示し、契約打ち切りの白紙撤回を求める。

 「学生有志」による抗議文、公開質問状は同学院の理事長、学院長、学長、統轄本部長宛てだが、「実態を知ってほしい」と文科省や県教委などにも送った。

 春休み中で多くの学生が帰省するなか、1日から3日間で103人の学生から抗議の意思表明を得た。

 学生らは矢本准教授について「講義は固定概念にとらわれず、とても幅広い視野で文学に迫った」「常に課題を出しながら個々にアドバイスするなど、真摯(しんし)に学生と向き合った」「教職の授業では、自身の体験を交えた心構えなど、懇切丁寧だった。契約を切る理由はどこにもない」と授業の充実度を口々に語る。

 学生が大学外に向けて動きだした背景には、学生らによると、2015年度末でゼミを受け持つ教職員が少なくとも6人も退職、他にも「数人が納得できない形で大学を去る」という窮状がある。
 
 15年度で卒業する学生は「新入学生には不安が広がるかもしれないが、学院側への不信感が在学生に根強く、後輩のためにも、学外で訴えるしか解決できないと決断した」と話す。

 樋口学長は「雇用契約等の判断は個人の評価に関するものであり、プライバシーに関わるもので回答できない。本学では教員の雇用関係は、教育の質や学院職員としての資質等をふまえて適切に判断している。学生に対してはきちんと話し合いの場を設けて説明する予定」とコメントした。