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2017年09月07日

宮崎大学による「ハラスメント捏造」その悪辣手法

紙の爆弾9月号

 二〇一六年十月十八日、筆者が以前勤務していた宮崎大学から嫌疑をかけられたハラスメント事件での無実が最高裁で確定した。この事件は、その後、宮崎大学(以後宮大)に文科省の指導が入るという異例の事態になり、ハラスメント捏造事件として、現代ビジネス(一七年三月二十八日付)、週刊金曜日(同三月三十一日付)、西日本新聞(同五月三日付)、朝日新聞(同五月十日付)などで大きく報道された。石原俊「日本の大学をぶっ壊した、政官財主導のガバナンス改革」(現代ビジネス同五月十二日付)でも無理筋のでっち上げ事件として紹介された。
本件は、一二年六月、筆者が女子学生の「裸写真」を、指導学生の卒論に無理矢理入れさせたなどの虚偽発表を宮大行い、全国的に報道された。ハラスメントは一四項目で、一項目に数件あり、三〇件を越えるハラスメントが捏造されている。その詳細は三月二十八日付の現代ビジネス(田中圭太郎)を参照されたい。
本稿では、宮大がどのようにハラスメントを捏造し、筆者を陥れたのかを、証拠保全で宮大から押収した証拠資料をもとに検証する。

捏造組織の「特別調査委員会」

事の発端は、一二年二月二十四日に筆者のゼミ生である女子学生Aが精神疾患で自殺したことから始まる(筆者は同年二月七日に卒論成績を出している)。Aに関しては、彼女を最初に診察した宮大附属安全衛生保健センター(以下、センター)医師、およびセンターが紹介したクリニックの佐藤医師から、①詳細な記録を付けること ②Aを一人にしないこと ③Aには二人以上で対処すること ④紐、ライター、カッターを渡さないことなどを指示されていた。センターとは、Aの件で頻繁に情報交換していた。
Aは発病前から友人関係などでトラブルを抱えており、「○○とは会いたくない」との要望も多かったが、発病後は暴力的になることも多かったので、筆者がAと会う際は、医師の指示通りゼミ生のBとC(ともに女子)のどちらかが同席していた。Aが特に避けていたのがゼミ生Dなので(理由の記載は控える)、ゼミ時間をずらして二人が会わない配慮をしていた。Bのゼミの様子を知っているのは筆者とゼミ生IとTの3人だけであった。
Aは、Bと「学部重点経費(学生・院生の研究プロジェクト)」に「癒やし宮崎の映像表現」(以下「学生企画」)で応募を企画していた。途中、筆者のゼミ生ではない学生四名が加わったが、その一人が、竹川昭男准教授のゼミ生e(ゼミと無関係な学生は小文字表記)である。eが学生企画でまとめた冊子が「『裸写真』の掲載された卒論」とされ、さらには自殺したAの卒論に捏造され、ハラスメント事例とされた。「裸写真」は「学生企画」で撮影されたものだった。
この「学生企画」の責任者(認可者)は兒玉修学部長(当時)で、記者会見で虚偽発表をした人物である。なお、会見の内容は裁判で名誉毀損が認定され、多額な慰謝料が国民の血税や学生授業料から支払われている(兒玉は本事件後、副学長に昇進している)。
 本捏造事件を行った中心は「特別調査委員会」(以後「委員会」)なる組織だ。メンバーは原田宏・岩本俊孝・石川千佳子の3名。しかし、この「委員会」の設置自体が学則上、極めて根拠に乏しいように思われたので、弁護士を通して大学当局にその根拠を質問すると、大学当局は「根拠規定や条項は存在しないが、学長の権限(裁量)によって設置された」(原田宏名義一二年三月十九日付)と回答してきた。この文書から、この時点ですでに宮大が学則無視の状況にあったことがわかる。学長権限は国立大学法人化で強化された。法人化後、宮大の学長は全て医学部教員で、独裁体制に拍車がかかっていると推測される。
 この原田名義の書類に「委員会」の目的は「亡くなった学生の卒論指導上、教員として適切な指導がなされたのかどうか、又、その経緯・写真の必要性を調査」と記されている。つまり、「委員会」の目的は、Aの卒論指導を調査することであるが、実際に行われたのは、Aとは関係のないハラスメント事項の捏造であった。石川(当時教務長)は大学側代表として法廷(証人尋問)で「自殺したAのことは全く調べていない」、さらには「(Aの発病時から対応をしてきた)センターにも全く連絡をしていない」と証言している。大学側にとって、センターがケアをしていたのに自殺が起きたと外部に知られると困るからであろう。「委員会」の本当の目的は、Aの当時の状況を明らかにすることでなく、最初から筆者を懲戒解雇することにあった。筆者はAの入院の必要性をセンターに再三伝えたが、Aの主治医(宮大医学部教授)は入院させなかった。さらに、Aの入院を主張したセンター医師が筆者の前に、やはりセクハラ嫌疑で懲戒解雇になっている。そこから、本件は医学部(Aの主治医)を守るための捏造事件だった側面が強いと推測できる。医学部絶対主義の思想である。

特別調査委員会の手法

 石川らはAの卒論ゼミに同席していたBとCを一切調査せず、代わりに彼らが調査したのは、「Aから会いたくないと言われた」「Aのゼミは知らない」と自ら証言しているゼミ生Dと、そのDが連れてきた学生f・gとeらである。fとgの二人も、自殺したAから「会いたくない」と伝えられた人物で、もちろん筆者のゼミとは関係ない。筆者の知るところでは,「委員会」が本件で最も利用したeも、Aとトラブルを起こしていた。
結果として「委員会」は、Aに対してやましいところのある学生らを利用したのだ。学則無視の姿勢を終始貫く「委員会」が使った手法を整理する。

(1)関係者を調査せず、悪意ある伝聞証言を多数集めて虚偽報告書を作成
学生調書には伝聞であることが記されているが、石川作成の報告書ではすでに直接的関係者のごとく扱われ、実際にAの様子を知るBやCの存在は審議会等には全く報告されていない。さらには、「裸写真」の撮影に関しても証言したのはeだけで、代表者のBや他の撮影当事者が委員会の調査を受けると申し出ても拒否している。
実は、ハラスメント認定をした時点では、卒論(とされた「学生企画」の冊子)や「裸写真」の事情聴取をeに対しても行っていなかった。つまり、誰一人当事者を調査していないにも関わらず、「事情聴取した殆どの学生等からの多くの具体的証言を得ている」と言った虚偽事項で報告書がまとめられ、大学執行部を欺くに至っている。しかし、そのような調査委員を任命したのは他ならぬ大学執行部であり、大学執行部が「報告」と「検証」のチェック機能を全く理解していなかったことの帰結だ。ちなみに、その虚偽報告の直後、つまり当事者を全く調査していない段階で筆者の懲戒解雇が決定している。

(2)ハラスメント申立書そのものを捏造
一二年三月十一日付けのハラスメント申立者は、D・f・gの3名。ハラスメント項目として「指導学生への就職妨害、屈辱的発言、漫画掲載、卒論指導上の資料提供の渋りと不当な要求、学生等の写真の雑誌への無断掲載、学生の裸体写真の撮影と卒論掲載、飲酒を伴い女子学生と2人だけで研究室に居るよう強要」等と羅列されている。これらの内容はDとfの調書に基づくと書かれているが、実際、Dとfの調書には書かれていない項目ばかりだ。
これらの事実から,石川らがあらかじめ話を作り上げて、学生らに証言させたと考えられる。マスコミは、eが「裸写真」の卒論でハラスメント申し立てをしたかのように報道したが、実際、eは何ら申立てをしていない。またeの事情聴取が行われたのは、ハラスメントが認定(懲戒解雇決定)された約三週間後の四月十七日である。eは宮大とDに利用されただけだが、ありもしない「裸写真」を撮られたレッテルと、裁判で偽証した事実を一生背負っていくことになる。申立者として名前のあるgの聴取日も、ハラスメント認定から約1ヶ月後だ。
申立書には、学生の直筆サインもなければ捺印もない。作成日も三月十一日でなく三月二十三日で、ハラスメント認定会議の直前に農学部事務のパソコンで作成されていることが判明している。明らかな捏造である。

(3)「無理矢理」「しつこく」「嫌がるにも関わらず」等の付加。
大学側が出してきたハラスメントに関する質問項目には、「H23年度卒業生に東京の方へ就職するようしつこく勧誘したか」「H23年度卒業生に自分の卒論指導を受けるように無理強いしたか」「H23年度卒業生に対して、卒論用の資料を渡さず、学生を困らせたか」「半裸の写真を学生が嫌がるにも関わらず卒論内に入れるよう指導したか」等である。すべて「無理矢理」「しつこく」「嫌がるにも関わらず」等が加えられている。
 就職関係の質問項目への筆者の確認に対し、辻褄合わせに大学が言ってきたのは、筆者が「東京でビルを建て会社を始めるので、そこに就職するように複数の学生をしつこく誘った」とのことだ。筆者はビルも会社も持っていない。ゼミ生は、ほぼ全員が大学院に進学し、就職を勧誘する余地がなかったのが実態だ。
 卒論指導を無理強いしたとのは、大学側の主張では「H22年の夏、eをAと共同で卒論を書くように無理に勧めた」とのことだ。eは筆者と学科が違う竹川ゼミの学生で、eを知ったのもH23年だ。大学側がハラスメントを立件するため、eの卒論を筆者と強引に関連づけようと企んでいたことがわかる。eの陳述書には「誘われたが断る理由もないので了承した」と書かれているだけで、「無理に」など、どこのも書かれていない。石川らの捏造である。ちなみに「誘われた」こと自体が虚偽だ。
 卒論用の資料を渡さないという件は、学生の調書にもこの件は全く書かれておらず、石川らの完全な捏造と言える。大学側がハラスメントを認定した後に、Dとeが大学側に口裏を合わせた証言をしているが、そもそもDとeはAの卒論ゼミは知らないと証言しており、証言の矛盾は覆いようもない。結局、最高裁判決後も具体的にどの資料が問題にされたのか全くわからないままだ。
 「裸写真」の卒論に関しても、eの調書に「嫌だった」「無理矢理」「写真を入れるよう指導を受けた」等は一切書かれていない。調書には「(eが)自分で卒論を早野研究室に持っていったが、そのままだった」と書かれているだけだ。筆者が知らないうちに勝手に研究室に置いていかれたのだから、「そのままだった」のは当たり前だ。石川らによって「嫌がるにも関わらず」「裸の写真を入れるよう指導した」が加えられて、マスコミに発表された。ちなみに「裸写真」とは、eの陳述書に「白衣をまとい、それ以外は何も身に着けていない」と書かれているが(その陳述書は宮大代理人[大迫弁護士]が書いたもの)、以下の写真の通り、裸ではない。ここからもeが大学側に利用されただけとわかる。

宮崎大学が裸体と発表した写真

(4)具体的なことを聞いたらハラスメント認定
 前記(3)で述べたように、荒唐無稽な質問項目ばかりなので、「思い当たらないので、いつ、誰に対して何をしたのか教えてください」と回答したら、「『誰が、いつ、何処で』など具体的なことを問うてくること自体極めて不自然なことであり、自ら関与していると考えられる。」(ハラスメント調査結果一二年三月二十七日付)としてハラスメント認定された。おそらくナチスドイツでも、もう少しまともな理由を付けてくると思われる。

(5)時系列を無視
 調書を取る前に、ハラスメント事項をつくる。ここまでなら悪質企業でもしそうだが、宮大ではハラスメントを認定してから、その根拠となる調書を取っている。質問項目が抽象的なのはこのためで、筆者が何か答えたら、それに合わせて捏造する予定だったことがわかる。ハラスメント申立書も、ハラスメント事項を先につくって、後付けで学生から調書をとる。ハラスメント申立書や学生調書の杜撰さは、すべて書き換える前提であったからと考えられる。おそらく証拠保全が入らなければ、日時や内容を一切変えて書類を偽造していたであろうと推測できる。
eに対するセクハラも、最初は二月中旬と言っていたが、「二月中旬は東京に出張中」と伝えると、eに確認したら 二月二十日だったと変え、「二十日は一日県庁で仕事」と伝えると、今度は、二十一日だった変える。このように、何度も日にちを変えて、筆者が証明できない日を探ってきた。飲酒を強要したと件も、筆者が出張の日ばかりだった。

(6)吹き込みと口裏合わせ
 石川作成の学生調書には、石川がどのような質問をしたかが全く書かれていない。誘導尋問を隠すために使われる手法だ。Aの自殺後、Aの状況を調べるはずの最初の調書が「早野教員についての学生からの事情聴取」(一二年二月二十九日付)となっている。最初から、筆者を陥れる前提であったことがわかる。「委員会」設置から3週間で懲戒解雇を決定するには、最初から懲戒解雇前提でないとできない。
 先ほどの就職に関して、fは「eが就職に誘われていた」と証言し、そのeは「自分は誘われていないがAが誘われていた」と証言している。言っている内容はバラバラである。石川は法廷で「自分からは質問していない。学生が勝手に言った」と証言して、すべての責任を学生に押しつけているが、誘導尋問していることは明らかだ。法廷で大学側に学生を事情聴取した際の録音の提出を求めたが、大学側は録音をとっていないと言い張った。かなり強引な誘導尋問があったと考えられる。
Dの調書には石川らと連絡を取り合って「学生たちと情報を共有」すると書かれているので、「委員会」とDが口裏を合わせていたことは間違いない。eは法廷で「Aの死後、eに話を聞いて考え方が変わった」と証言しており、fの調書でも多くがDから聞いたと書かれている。Dが中心となって学生らに嘘を吹き込んだと考えられる。吹き込んだ側のDは大学側の証人(同行)として証人尋問の日時も決まっていたが、出廷しなかった。
 一二年四月九日に、「裸写真」の撮影参加学生から連絡があった。その学生によると、石川らは「早野がAを自殺に追い込んだので許してはいけない。ぜひ協力してほしい」と話したらしい。その学生は事情聴取を受けたが誘導に負けずに「私は最後まで抵抗しました」と電話で伝えて来た。しかし、その学生の調書はない。おそらく、この時点で当事者から調書を取ると「委員会」の虚偽が明るみに出ると判断して、当事者の事情聴取を一切拒否しだろう。石川から撮影参加者らに「あなた方の調査はしない」と連絡が来たのは、その学生の事情聴取後だ。また、原田らは学生らの自宅まで行って証言をお願いしていたことが裁判資料でわかった。学生の虚偽証言だけが、大学側の頼りだったわけだ。

(7)目的・権限無視
 「亡くなった学生Aの卒論指導を調査する」はずの委員会が、Aへの卒論指導に同席していたBとCの調査を拒否しているだけで業務放棄であるが、逆に、権限のないハラスメント調査(捏造)をしだす。ハラスメントならば、学則上、ハラスメント委員会が調査しなくてはならないが、すべてのハラスメント調査の報告を特別調査委員会が行っている。この学則無視の越権行為を許したことが石川らの暴走を許すことになった。

一日で卒業できる宮崎大学
 「根拠規定や条項は存在しない」特別調査委員会が設置された段階で、すべての捏造が可能となる。今回は前記の(1)~(7)にまとめたが、それらの手法を使うと荒唐無稽な話ですらハラスメントが捏造できてしまう。国立大学法人化後の学長独裁がどれだけ危険であるか、大学人は認識しなくてはならない。
 宮大は、正式な書類でも竹川ゼミ所属のeを、筆者のゼミ生に捏造した。そのeの卒論指導に関してもとんでもない主張をしている。
eは、筆者のゼミは受けていないが打ち合わせがあったと証言している(おそらく言わされている)。その打ち合わせは、eの調書によると四回ほど「三分だけで、その後はAだけとメールでするようになった。」とある。具体的にはどの様な打ち合わせであったか不明だが、これを宮大は卒論指導だったと主張してきただ。
四×三分で合計一二分。しかも、打ち合わせ相手は筆者でなくAである。卒論は六単位なので、宮大では、学生同士で一二分打ち合わせをしたら六単位認められると主張したことになる。仮に卒業単位が一三〇単位とすると、約二六〇分(三コマ)で卒業できることになる。このことを当時の学長(菅沼龍夫)と副学長(原田・岩本)が裁判で主張したのだから驚きだ。宮大執行部に大学としてのプライドはない。
これだけ荒唐無稽な主張でも、裁判では、組織(大学)対個人となり、個人が圧倒的に不利になる。ある法学者から、個人に一〇%の非があれば、大学が勝訴すると言われたことがある。大学は組織として捏造などしないという先入観が、一般や裁判官にあることが原因だ。本誌前号では、大学組織ではインチキが日常茶飯事で起きていることを述べたが、大学社会は一般企業よりも暗黒社会なのだ。(文中・一部敬称略)

早野慎吾(はやのしんご)
都留文科大学教授(社会言語学)。宮崎大学准教授を経て現職。


2017年06月21日

宮崎大学解雇事件、パワハラ捏造に関して被害者早野慎吾氏による「宮崎大学学長宛公開質問状」

宮崎大学への質問状

2017年6月15日

国立大学法人宮崎大学学長池ノ上克先生

若葉青葉の候、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 この度、文部科学省国立大学支援課より連絡を頂き、貴学に検証委員会が設置することを知りました。2016年10月の最高裁の判決で、私が貴学から不法行為を受けた被害者であることが確定しましたが、当時の貴学の対応で、いまだに理解できないことが多々あります。以下、質問状としてまとめましたのでお答えくださるよう、よろしくお願いいたします。

早野慎吾(都留文科大学教授)


宮崎大学への質問状

 宮崎大学が2012年6月、私が女子学生の半裸を卒業論文に掲載させていたなどにより退職金不支給を決定し、さらには原田宏、兒玉修(敬称略)らが記者会見で公表した事件について、2016年10月、最高裁において私の勝訴が確定し、私の無実が証明されました。判決では、退職金だけでなく、慰謝料や弁護士費用までが認められる内容となっています。

 2017年3月7日、文部科学省国立大学法人支援課より、「宮崎大学からは、今回の件についての検証委員会(第三者委員会)を設置することを決定したとの連絡がありました。」とのメールをもらいました、また、検証委員会設置の件で宮崎大学を取材した西日本新聞、朝日新聞、共同通信社の各記者から、検証委員会では手続きと調査過程の問題点を検証すると聞きました。

 私は宮崎大学から不法行為を受けた被害者として、宮崎大学に対して質問いたします。検証委員会の方には、以下の質問に対して調査し、回答をお願いいたします。また、必要な資料の提供や宮崎大学に出向いてお話しすることもやぶさかではありません。できる限りの協力を致します。

(写真-略)「特別調査委員会の設置について」原田宏

1.今回の件は、原田宏・岩本俊孝・石川千佳子ら3名による「特別調査委員会」の杜撰な調査により起きた事件です。「特別調査委員会」とは2012年3月19日付の原田からの通知(上記資料)によると、平成24年2月24日に自殺した学生の「卒論指導上、教員として適切な指導が行われたのか」を調査するために3月8日に設置されたと明記されています。

(1) 「特別調査委員会」の人選はどのように行われていたのですか。裁判でも証言しましたが、私と石川、岩本はもともと関係が良好ではありません。元同僚の松井洋子(元宮崎大学講師)もそのことを陳述書で述べています。私が予約していた公用車を、後から割り込んで岩本が使用してしまう等の嫌がらせも受けていました。そもそも、岩本と石川を選定した段階で今回の捏造事件は始まっていたと考えています。

(2) 「特別調査委員会」は、自殺した学生(以降学生B)のことを調査する目的で設置されたのに、石川千佳子(以後石川)は学生Bの自殺の要因などは調査していないと証人尋問(法廷で)証言しています。学生Bの自殺の要因を全く調べなかったのはなぜですか。私は文科省に学生Bの死因調査を依頼しています。(文科省からは、保護者でないと受けられないと拒否された。)

(3) 「特別調査委員会」は、学生Bの卒論指導について調査をする目的なのに、学生Bの卒論指導については全く調査せず、他学科で竹川昭男准教授のゼミ生である学生Yの卒論や、学生Bとは関係ないハラスメント項目を多数報告しています。設置目的の学生Bの卒論指導および卒論を全く調査していないのはなぜですか(石川らが調査した学生Kらは、そもそも学生Bの卒論指導は知らないと調書に書かれていますので、卒論指導の調査ではありません)。また、どのような権限で学生Bの卒論指導以外の調査したのですか。証拠保全資料や裏付けを全く取らずに数週間で懲戒解雇を決定している状況から考えると、調査の開始直後に、原因の解明ではなく、私を懲戒解雇処分にする理由が見つかれば何でもいいという、懲罰ありきの方針に転換したと考えられます。

(4) 裁判所が採取してきた「証拠保全検証調書」には、学生K、学生A、学生Mから、ハラスメント調査を行った書類が多く存在しています。石川は自らが中心となって調査したと法廷で証言していますが、ハラスメント行為ならば、ハラスメント委員会が調査を行う必要があります。なぜ、ハラスメント委員ではなく権限のない石川がハラスメントの調査をしたのですか。石川の行為は、学則違反ではないのですか。

(5) 石川が行った調査において、学生に対して質問はしておらず、学生Kらが言ったことだけを記録したと石川は法廷で証言していますが、学生らの調書を取っているのに何も質問をしていないなどあり得ません。「特別調査委員会」が作成した調書には、質問事項が一切書かれていないのはなぜですか。このような調書は調書としての機能を果たしておらず、誘導を隠すための行為とも考えられ、恣意的な解釈、誤解への歯止めが一切ききません。学生らの調書をとる際、録音をとっていないと石川は法廷で証言していますが、それも考えにくいことです。本当に録音をと調書をとらずに調書をとったのですか。学生Kは、石川作成の調書に対して、多くの項目に「言った覚えはない」と陳述書を提出しています。本当に学生らは証言したのですか。私は多くが石川・原田・学生Kらが誘導したか、証言していない可能性が高いと考えています。

(6) 私は、学生Bが精神疾患に気づいた際、速やかに宮崎大学安全衛生保健センター(以降センター)秋坂医師のもとに学生Bを連れていき、診察をさせました。その後、私はセンター医師とセンター紹介のタヅメクリニック医師の指示で行動しています。それは、2012年2月24日、石川の報告からもわかります。それなのに、石川はセンターには連絡すらとっていないと法廷で証言しています。学生Bに対する卒論指導を調べる目的の「特別調査委員会」が、学生Bの対応で最も重要なはずのセンターに状況を確認しなかったのはなぜですか。目的を逸脱した行為は盛んに行われているのですが、原田、岩本が、石川らの恣意的関心で動いたものですか。

(7) 宮崎大学が私の研究室から回収したとされている冊子は、学生Bの卒論ではなく、他学科の学生Yの卒論です。私は回収の際、「それは学生Bの卒論ではない」と当時学部長の兒玉修らに伝えています。さらに、学生Yが私のゼミ生でないことは、指導教員届けを確認すればすぐわかることで、実際、石川は指導教員一覧(乙43号証)で、学生Yが私の指導学生ではないことも確認しています。また、学生Bの卒論成績は2012年2月7日に提出済みの記録があり(証拠保全資料)、学生Yが2月23日に提出したと証言している卒論でないことは、成績入力記録を見れば一目瞭然です。正式な記録で学生Yは竹川昭男教員のゼミ生であり、正式な成績記録からも自殺した学生Bの卒論でないことが明白な学生Yの卒論を学生Bの卒論と偽ったのはなぜですか。

(8) 今回、中心になったのは学生Kですが、学生Kは「学生Bから会いたくないと言われた」「学生Bと連絡を取らなかった」「学生Bは自分たちのゼミには来ていなかった。学生Bのゼミは知らない」と自ら述べています。学生Bは学生Kからストーカーされたと認識しており(メールあり)、私も相談を受け、学生Kを学生Bに接触させないよう対処してきました。学生Bは自殺直前、学生Kについてセンシティブな内容のメモを書き残しています(必要ならお見せします)。調書でも学生Bから避けられていたことを自認している学生Kが学生Bについて証言したものを信頼できるとし、その証言の裏付けすら確認しなかったのはなぜですか。また、学生Kは虚言癖や盗癖があることを、学生Kをよく知る学生らが複数証言しているのも関わらず、学生Kの証言をそのまま利用したのはなぜですか。
 私は学生Bから、数人にいじめられていたと相談されていましたが、その中に、学生K、学生A、学生M、学生Yが含まれています。その学生らのいじめが事実か否かはわかりませんが、そのような学生らの言い分を一方的に採用するような宮崎大学の体質が問題であったとは思わないのですか。

(9) 学生Bの卒論指導においては、常にゼミ生Tが同席し、ゼミ生Iも時々同席していました。そのことは、ゼミ生Tが2012年5月(懲戒解雇相当と発表する前)に宮崎大学に提出した陳述書に明記されています。早野ゼミのゼミ生Tとゼミ生Iは、特別調査委員会の調査は受けると懲戒処分決定前に申し出ています。特にゼミ生Iは、そのとき在学中で、いつでも調査できる状況にありました。学生Bの卒論指導を全く知らない学生N、学生M、学生Yの3名には、2012年4月に調書を取っています。学生Bの卒論指導を調査する目的の特別調査委員会が、学生Bの卒論指導を全く知らない学生K、学生A、学生N、学生M、学生Yを調査して、学生Bの卒論ゼミを目の前で見ていたゼミ生T、ゼミ生Iを調査しなかったのはなぜですか。もし調査しないのなら、懲戒処分を決定すべきではありません。

(10) 私の懲戒処分を決めた最大の理由が学生Yの卒論となっています。しかし、特別調査委員会が学生Yからはじめて卒論の話を聞いたのは、私を懲戒解雇するとの書面が送られてきた(3月29日決定)約3週間後の4月17日(学生Yの調書)となっています。つまり、懲戒処分を先に決め、後から処分の理由を決めたことになります。学生Yから卒論の調査を全く行わず、調査もしていない学生Yの卒論を根拠に懲戒解雇を決めたのはなぜですか。学生Yの卒論のことを学生Y本人に聞かずに事実と認めるのは捏造です。もし、捏造でないと言うのなら、その根拠を明示してください。

(11) 大学側が問題にした写真撮影は、卒論とは全く関係ない学部重点研究での企画によるものです。その撮影には、学生Yの他、ゼミ生I(企画代表者)、学生B、学生O、学生H、院生Mが参加しています。学生I、院生M、学生Oは特別調査委員会の調査を応じると言っていました(学生Oは保護者同伴との条件)。学生Hは、「3月中旬、特別調査委員会に呼び出されて「真っ黒で何がわからないコピーを見せられて、これは早野が撮ったのかと聞かれたが、私は、早野先生は関係ないと答えた。」と2012年4月9日に電話で私に伝えてくれました(記録あり)。しかし、学生Hの調書は証拠保全でもありませんでした。写真撮影を問題にしておきながら、学生Yのみを調査対象者にして、調査に応じると答えた他の参加者(ゼミ生I、学生O、院生Mら)を調査しなかったのはなぜですか。

(12) マスコミ報道では、撮影参加者全員が被害者の如くなされています。しかし、裁判で虚偽の証言を繰り返した学生Yをはじめ撮影参加者6名の誰もハラスメント申立をしていません。ある撮影参加者は、「自分らは自信を持って企画を進めたのに、嘘の報道をされて非常に迷惑でした。私たちは被害者ではないが、加害者がいるとすれば嘘を発表した宮崎大学と学生Yです。できれば、原田宏と兒玉修をパワハラで訴えたい。学生Yは許せない。」とまで言っています。ハラスメント申立もしておらず、調査もしていない、逆に学生Yの証言は嘘だと証言する撮影参加者が複数いるのに、撮影参加者全員を私の被害者としてマスコミに嘘を発表したのはなぜですか。高裁判決文には不法行為と明確に書かれています。

(13) 学生Yは卒論ゼミはやっていないが研究打ち合わせはあったと主張しましたが、それは4回「3分だけで、学生Bとメールだけで打ち合わせするようになった」と学生Yの調書(3頁)に書かれています。4回×3分(計12分)だけで学生Yと学生Bがメールでした(つまり教員は打ち合わせに関わっていない)打ち合わせを、大学として卒論指導だったと主張したのはなぜですか。宮崎大学では、教員が関わらずに学生同士が12分打ち合わせしたら、6単位(卒論単位)は認められるのですか。(宮崎大学が12分で6単位認めるならば、260分の受講で卒業単位が取れてしまう)。

(14) 原田宏、兒玉修は記者会見で事実無根のハラスメントを発表しましたが、それは裁判で不法行為と認定されました。また、石川は権限のないハラスメント調査をして、虚偽の報告書を多数あげています。原田や兒玉が発表した内容が虚偽であった以上、明らかに宮崎大学の名誉を傷つけています。西日本新聞の記事をヤフーニュースで『「でっち上げ」敗訴の宮崎大学検証へ』と報道されています。特別調査委員会の原田、岩本、石川と虚偽を発表した兒玉らは、宮崎大学の名誉を傷つけたのは明らかなのに処分しないのですか。

(15) 石川らは、2012年3月13日(証拠保全200頁)、学生Bの両親に対して、学生Bと私が男女関係であったなどの虚偽をなぜ伝えたのですか。仮に学生Kと学生Aが言っていたとしても、事実確認をする前に伝えるのは余りに不適切な行為です。私は、学生Bの父親から殺人予告を受けましたが、もし事件になっていれば、石川らの行為は殺人教唆(刑法61条1項)にあたると私の代理人は判断しております。また、日野弁護士(理事)は、学生Bの両親に、私や大学を民事的に訴えることができ、「連絡頂ければ相談に乗る」と言ったと記録されていますが、この発言は大学にとっての背任行為ではないですか。この発言が事実なら、私にとっても、調査する以前から私を犯人視する行為で、弁護士としてあまりに軽率と言わざるを得ません(弁護士がこのような発言をするとは、とても信じられませんが)。この書類に書かれている、犯罪に繋がる発言をした人物たち(岩本、兒玉、石川ら)の処分はしないのですか。さらに、最高裁判決後、大学が伝えたことは、間違いであったことが判明したと、学生Bの両親に伝えたのでしょうか。文科省国立大学支援課係長は、必ず伝えるべきとおっゃっています。

2.証拠保全の資料を見ると、宮崎大学はハラスメント認定の過程で様々な捏造を行っております。ハラスメント認定過程での不正と思われる点を質問します。

(1) 3月11日のハラスメント申立書には「3月9および11日大学で事情聴取にて話したとおりです。」と書かれていますが、3月9日学生A、3月11日学生Kの調書はありますが、卒論指導上のことや学生への裸体撮影など、ハラスメント項目の大半がそれらの調書には書かれていません。また学生Kと学生Aは、それらを全く知る立場にもありません。調書に書かれていないことを書いているのですから、これは捏造であり、公文書偽造にあたると考えられます。また、申立者は学生K、学生A、学生Mの3名となっていますが、学生Mの調書はありません(学生Mの調書は4月25日)。3月11日の申立書に調査のない学生Mの名前が出ているのはなぜですか。ハラスメント申立書が農学部会計係のパソコンで作成されており、作成日が3月23日となっているのはなぜですか。「学生A・例」のように複数のハラスメント申立書が作られているのはなぜですか。申立者に学生Kの名前しかなく(学生A、学生Mはない)、直筆でもなく印鑑も押されていないのはなぜですか。なぜ、このような捏造書類がなぜ作られたのですか。

(2) 2012年3月27日、学生K・学生A・学生Mによる「ハラスメント申立書に関する調査結果について」では、石川の調査報告がそのままハラスメント認定で使われています。そして「事情聴取した殆どの学生等から具体的な証言を得ている」「(早野が)一切否定しておきながら『誰が、いつ、どこで』など具体的なことを問うてくること自体極めて不自然なことであり、このことからも、自ら関与をしめしていると考えられる。」とハラスメント行為が認定されています。根拠となる学生K、学生Aの調書に全く記載のない多くのハラスメント項目が「学生等から具体的証言を得ている」とされたのはなぜですか。これは明らかな捏造です。また、「誰が、いつ、どこで」と聞くことが極めて不自然で、自ら関与を示しているとの理由付けこそ、社会通念上極めて不自然です。そのような理由付けが宮崎大学では通用するのですか。

(3) 宮崎大学が私の解雇相当処分を決定するに当たって、「国立大学法人宮崎大学ハラスメント等の防止・対策に関する規程」に定められた、「ハラスメント申立」と「ハラスメント防止・対策委員会の対処」の手順が一切無視されています。それにも関わらず、記者会見ではいかにも大学として学則で規定した、セクハラ、パワハラの事実を確認したかのような発表をしています。解雇相当処分を急ぐために、特別調査委員及び大学執行部が学則を飛ばして、一方的にハラスメントを認定したのではないですか。

(4) 学生Kの調書・学生Aの調書の証言の多くは伝聞になっています。特に学生Aは自身がハラスメントを受けたとは言っておらず、調書でも、すべて伝聞や、伝聞の伝聞と記録されています。学生Kは、学生Bが無理矢理方言調査に連れて行かれたなど悪質な虚偽を繰り返していますが、方言調査に参加した山本友美講師、院生Mやゼミで話を聞いていたゼミ生Tらは学生Kの証言が悪質な虚偽であると大学の懲戒処分決定前に陳述書を提出しています。実際にその場にいた人たちが違うと証言しているのに、伝聞に過ぎない学生Kと学生Aの証言でハラスメント認定したのはなぜですか。

(5) 学生Kは、学生K以外の学生に私がハラスメント行為をしていたと証言しています。しかし、宮崎大学は大学関係者がハラスメントを受けたとされた人物に直接確認を取ることもなく、学生Kに確認させていたのはなぜですか。学生Kの証言はほとんどが虚偽だと、ゼミ生Tが宮崎大学に伝えていました。ハラスメント行為の確認をハラスメント委員会でもない学生(しかも申立者)にさせることは、大学として許される行為なのですか。しかも学生Kに確認させたことを根拠に懲戒解雇処分を下すなどあり得ない行為です。

(6) 本件の裁判費用や賠償金は、国民の血税もしくは学生から徴収した授業料で支払われています。原田、岩本、石川、兒玉らの行った不法行為の代償を税金や授業料で支払っておきながら、国民に対して何の説明もなく、被害者の私に対して謝罪すらないのは、税金で運営している国立大学法人として許されるのですか。

(7) 今回の検証に関しても、国民の血税もしくは学生から徴収した授業料で行われています。税金や授業料で行われる以上、検証結果を学内に周知する必要がありますが、学内に周知するのですか。また、税金が使われている以上、結果を国民に公表しないと納税者に対しての責任を果たせません。2017年5月10日の朝日新聞には「結果は公表しない」と書かれていますが、それはどうしてですか。

以上のことにお答えください。

※本質問状は、学生名のみ匿名にしております。文部科学省と大学および、各新聞社に送ったものは、全て実名を記載しています。


宮崎大、パワハラを捏造し解雇 メディアも攻撃加担

人権と報道連絡会ニュース(2017年6月10日)第325号

パワハラを捏造し、解雇-宮崎大、メディアも攻撃加担

 早野さんの事件については、ジャーナリストの田中圭太郎さんが「ルポ・大学解雇②/国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白」として、ネットに詳細なレポートを発表している。例会で早野さんはこれをもとに、パワハラ捏造・報道被害体験を詳しく話した。(以下、山口が要約)

◆ある日突然、懲戒解雇に

 私は2012年4月に約8年間勤めた宮崎大学を退職し、山梨県の都留文科大学教授に就任することが決まっていました。ところが、退職直前の3月12日、宮崎大学から「特別調査委員会に出席するように」との通知が来たのです。嫌な予感がし、私は弁護士を通じ、「なぜ調査委に出席しなければならないのか」質問しました。すると大学から私が指導した女子学生の卒業論文に、女子学生の半裸写真が載っているので調査すると文書で回答がありました。

 「ハラスメント質問事項」という文書がその後に届き、14項目にわたる質問が書かれていました。たとえば「あなたの研究室の女子学生に、遅い時間帯、二人だけで研究室にいるよう勧めたことはあるか」など、どれも思い当たる節がないものばかりでした。女子学生のゼミに常に同席していた学生に連絡したら、その学生も意味がわからないと言う。私は質問に対して「一切ありません。内容が抽象的で分からないので具体的に教えてほしい」と文書で回答しました。

 予定通り宮崎大学を退職し、都留文科大学に赴任した直後、宮崎大学の菅沼龍夫学長名で「懲戒解雇する」との文書が送られてきました。退職後にもかかわらず、懲戒解雇するというのです。6月には「退職金は支払わない」との通知も送られてきました。宮崎大学の内部でいったい何が起きているのか、私には理解できませんでした。

◆メディアが一斉に報道

 宮崎大学は6月、私に対する処分を記者会見して公表しました。メディアはこれを大々的に報道しました。(《学生の半裸写真卒論に/元準教授を「懲戒解雇」/宮崎大》=6月29日『宮崎日日新聞』、《下着の学生撮影/卒論に複数掲載/宮崎大元準教授》=同『朝日新聞』西部本社版、《卒論に裸写真掲載させる/宮崎大元準教授、女子学生に》=同『読売新聞』、《学内誌にも女学生写真/浴衣姿など09年に掲載/宮崎大元準教授》=7月19日『西日本新聞』など)。

 私の代理人に事実関係を確認する取材が来たとのことで、代理人は会見を開き「全く身に覚えがない、事実誤認の決めつけ」と答えたのですが、大学側の言い分が大きく報道されました。後に東京高裁の岡口基一裁判官は「マスコミが大学当局からいいように利用された例」とツイッターでコメントしています。この報道後、私は都留文科大学の理事から呼び出され、「私は何もしていない」と説明したのに、一方的に解雇されました。

 私は12月、解雇無効を求めて宮崎地裁に提訴しますが、提訴の前に宮崎地裁に申し立てた証拠保全が通り、宮崎大学から証拠資料を押収しました。この証拠資料で、宮崎大学がなぜ私を懲戒解雇に追い込んだのか、わかってきました。

◆ハラスメントの訴え捏造

 実は私が退職する前の2月、私がゼミで指導していた4年生の女子学生が自殺する痛ましい事件が起きました。彼女は重度の精神疾患に罹患しており、私は彼女の精神科への通院もサポートしていました。自殺の前日、彼女は私の机に学生間でトラブルがあったことなどを書いたメモを残していました。

 証拠保全した資料で、そのメモに名前のあった学生が彼女の自殺の5日後、大学側に「早野は、自殺した女子学生には性的関係があった」と報告していたことがわかりました。大学は私の言い分も聞かず、この学生の言葉に沿って動き、自殺した女子学生の家族にも私が原因だったかのように告げました。

 大学は私を解雇した後「複数の学生から『早野からハラスメントを受けた』という申し立てがあった」とマスコミ発表しました。ところが、この申立書は学生自身が書いたものではなく、大学内で捏造されたものでした。

 大学が私の懲戒処分を決めた最大の理由が半裸写真の卒論ですが、この卒論を書いたのは私のゼミ生ではなく、別の教員のゼミに所属する女子学生です。

 大学は3月27日に開かれた処分を検討する会議で、この卒論を「自殺した学生のもの」と捏造して、「早野がこの卒論を指導し、半裸写真の撮影をした」と認定しました。それらの経過が、証拠保全で押収された資料から明らかになったのです。

◆二審で逆転勝訴、確定

 ところが、裁判では大学側は「ハラスメントは事実だ」と主張し、一審の宮崎地裁は14年11月、大学側の主張をなぞり、請求を棄却しました。

 しかし二審の福岡高裁宮崎支部15年10月、私の主張を聞き入れ、大学側による「ハラスメント捏造」を認定しました。判決は「半裸状態の女子学生の写真撮影をし、卒業論文に掲載させたりしたことを認めるべき証拠はない」と、私の主張をほぼ全面的に認め、大学側に慰謝料と退職手当、合わせて約313万円の支払いを命じました。

 大学側が主張したセクハラ・パワハラなどもすべて事実無根と認定され、判決は16年10月、最高裁で確定しました。

 都留文科大学の解雇処分も無効になり、私は都留文科大学教授に復帰しました。現在、処遇について話し合いをしています。

 最高裁の判決が出た後、ネットでは宮崎大学への批判、ツイートが一気に広がりました。それでも大学側は、「捏造」関係者に対して何の処分もしていません。しかし、文科省は今年3月、大学側に一連の解雇手続き、事実認定などの問題点を検証するよう、指導しました。詳しくはウェブ「全国国公私立大学の事件情報」を参照してください。

◆宮崎大学に公開質問状も

 最高裁で勝訴が確定しても、そのことは最近まで、報道されませんでした。今年3月7日になってやっと『宮崎日日』が、《宮大の敗訴確定/最高裁決定/元準教授へ退職金》と報道したぐらいです。ただ、文科省が「再発防止」に向けた第三者の検証を求めたことで、『西日本』は5月3日、《元准教授へのセクハラ処分敗訴の宮大検証へ》という記事を載せました。『朝日』も5月10日の宮崎県版に《宮大、「処分」第三者検証へ/退職めぐる訴訟、逆転敗訴受け》という記事を掲載しています。

 しかし、この記事では「結果は公表しない」となっています。

 私は、なぜこんな捏造事件が起きたのか、大学に対して公開質問状を出すつもりです。私を「セクハラ教員」に仕立てた大学の特別調査委員会の「調査」経過、ハラスメント認定過程で捏造されたさまざまな文書の作成経過など、裁判で明らかになった事実をもとに詳細な質問をぶつけ、その結果を公表したいと思っています。今後の大学改善と私の名誉回復のためです。


2017年05月11日

宮大、「処分」第三者検証へ 退職金巡る訴訟、逆転敗訴受け

■朝日新聞宮崎版(2017年5月10日)

宮大、「処分」第三者検証へ
退職金巡る訴訟、逆転敗訴受け

 宮崎大学(宮崎市)で2012年,セクハラを理由に退職金を不支給とした元准教授の男性への処分について,同大が近く外部有識者による検証を始める。男性が退職金の支払いを求めた訴訟で最高裁が訴えを認め,大学側の敗訴が確定したため。

 同大は12年6月,男性が在職中に女子学生の半裸写真を卒業論文に掲載するよう指導したといして,「懲戒解雇処分相当」と判断し,退職金を支払わなかった。

 男性は無実を主張し12年12月,大学を提訴。宮崎地裁は訴えを棄却したが,福岡高裁宮崎支部は15年10月,「処分理由のような事実は認められない」として大学側に退職金や慰謝料など約313万円の支払いを命じた。昨年10月,最高裁もこれを支持し,男性の逆転勝訴が確定した。

 判決確定を受け,文部科学省が,同大に再発防止のために第三者による検証を打診。同大は,近く弁護士2人に学内の調査資料や裁判資料を渡し,7月末をめどに検証結果をまとめてもらう方針という。結果は公表しないとしている。

 男性は「事件を捏造し,その賠償金や訴訟費用には国立大として使うべき税金や授業料が使われていることにも憤りを感じる」と話している。


2017年05月04日

元准教授へのセクハラ処分 敗訴の宮大検証へ

西日本新聞(2017年05月03日)

 宮崎大学(宮崎市)が2012年6月、女子学生の半裸写真を卒業論文に掲載させていたなどとして、元准教授への退職金を不支給とした処分について、事実関係に疑問が生じ、同大が近く外部有識者による検証を始めることが2日分かった。元准教授が退職金の支払いを求めた訴訟で最高裁が訴えを認め、大学側の敗訴が確定。これを受け、文部科学省も大学側から事情を聴く事態となっている。

 宮崎大は同年6月、元准教授が指導する女子学生4、5人を野外に連れ出して撮影し、写真をコンピューターグラフィックス加工させ十数枚を卒論に掲載させたと認定。「懲戒解雇処分相当」として、すでに別の大学に転籍していた元准教授の退職金を不支給とし、報道機関に発表した。

 元准教授は事実無根として同年12月、大学を提訴。宮崎地裁は14年11月、元准教授の訴えを棄却した。しかし福岡高裁宮崎支部は15年10月、「男性が撮影した証拠はなく、卒論に掲載するよう指導した証拠もない」と判断。大学側に約313万円の支払いを命じ、元准教授逆転勝訴の判決を言い渡した。

 最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)も昨年10月、大学側の上告を退け、元准教授の勝訴が確定した。

 これを受け、文科省国立大学法人支援課は同大に事実関係や判決後の対策について事情を聴き、第三者による検証を打診。同大は弁護士など外部有識者に検証を委託し、「7月末をめどに結果をまとめてもらいたい」としている。

 元准教授を巡っては、撮影した女子学生の写真を掲載した09年の学内情報誌について、一部の女性教員が「浴衣姿など教育の場に不適切な写真がある」と抗議した問題もある。

 だが、その後、情報誌は学生が企画制作したものと判明。関わった元学生は「(被写体となった)学生たちも納得し、写真は当時の学長らの審査を経ていた。読んだ人たちの評価も高かった」と証言している。

 元准教授は国語学の専門家で、新聞連載やテレビ出演などで地域ではよく知られた存在だった。一連の問題について、元准教授は「大学は自分たちの意向に沿う証言を学生にさせ、セクハラをでっち上げた。きちんと検証して非を認めてほしい」と話している。


2017年04月08日

宮崎大学パワハラ捏造事件について、当事者教員が事件の真相を文書で説明

 2012年,宮崎大学が事実無根の「セクハラ」を理由に40代教員を懲戒解雇した事件,同時に都留文科大学も同じ事案を理由に同教員を解雇した事件は,いずれも裁判において,教員の解雇無効が確定している。

前者は,最高裁が2016年10月18日に宮崎大学の上告を棄却。解雇無効の高裁判決が確定。
後者は,東京地裁立川支部が2014年4月21日解雇無効の判決を下した。

 この事件は,1人の教員が,同じ事案により2つの大学から解雇通告を受けたという点で特異な事件であるのみならず,この解雇事件で,宮崎大学は事実関係を捏造した疑いが濃厚であり,裁判所も異例の証拠保全を行い,また文科省も現在事実関係の解明を当該大学に促したという点で,極めて異常な事件である。

 また,都留文科大学も自らの裁判で敗訴し解雇無効となり,同時に宮崎大学の上告棄却という最高裁の判断を知りながら,当該教員の現職復帰を認めていないという点で,その不当な取り扱いは常軌を逸している

 こうした事件の異常性から,フリー・ジャーナリスト田中圭太郎氏は,『現代ビジネス』(2017年3月28日号)に,「国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白」と題するルポルタージュを掲載した。また,中嶋啓明氏(「人権と報道・連絡会」
会員)も,事件の経緯とともに,最高裁で無実が確定されたにも拘わらず,現職に戻れない状態を告発している。

『現代ビジネス』(2017年3月28日号)「パワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白 」
『週刊金曜日』(2017年3月31日号)「宮崎大ハラスメント訴訟、「無実」確定も現職戻れず」

 今回,この事件の当事者である教授(早野慎吾氏)から,事件の核心部分について正確な事実関係を明らかにする文書(「宮崎大学パワハラ捏造事件について」)と関連資料「大学が裸体と主張した卒論写真一覧」が寄せられた。以下,それを紹介する。(2017年4月8日,ホームページ管理人)

寄せられた文書は以下の2つのである。
宮崎大学パワハラ捏造事件について
大学が裸体と主張した卒論写真一覧

なお,下記の転載した文章には,資料1~6に写真がない。上記のPDFを参照のこと。

宮崎大学パワハラ捏造事件について

 このほど、田中圭太郎氏「国立大にパワハラ捏造され、解雇通知を受けた教授の告白」『現代ビジネス』(2017/3/28)について、幾つかのご質問を受けましたので、要点のみ整理して申し上げます。検証調書(裁判所が宮崎大学から採取した証拠保全資料)と裁判資料をもとに説明しますが、私の知らない内容があまりに多く、一部推測を交えざるを得ませんが、できるだけ客観的に説明したいと考えています。

①本件のきっかけ

 今回の件は2012年2月29日、K.H君(早野ゼミ所属)が、A.Sさん(山田ゼミ所属)、M.Mさん(医学部学生所属)らを連れて、自殺した女子学生Bさん(以後Bさん)のことについて虚偽の内容を石川千佳子教員(教育文化学部教務長)に伝えたことからすべてが始まります(所属は当時のもの)。

 K.H君はそのときの調書記録で「Bさんの卒論メニューは別メニューなので、別の曜日にゼミをしていたのかも知れないが知らない」(検証調書3頁)、Bさんに連絡をしようとしたが「Bさんに、早野さん以外に会いたくないと言われた」(検証調書8頁)と書かれています。筆者もBさんから「K.H君だけには会いたくない」とメールで伝えられていたので、K.H君をBさんと面会させずにいました。このような事情で、K.H君は、自らも言っているように、Bさんの様子をほとんど知らないにも関わらず、Bさんに関する様々な虚偽を石川教員に伝えたようです。もっともK.H君が裁判所に提出した陳述書には、かなりの部分で「そのようなことは言っていない」と書かれており、K.H君と石川教員のどちらが虚偽の発信源なのかは判然としません。どっちもどっちだと思えます。
K.H君について、Bさんのメモにかなりセンシティブな内容が書かれていましたが、その内容の真偽がわかりませんのでここで提示することはやめておきます。A.Sさんは他のゼミでよくわかりませんし、M.Mさんとはまったく面識がなく、推測しようがありません。ただし、A.Sさんには「バイト先でいやがらせを受けた」、M.Mさんには「ファミレスで正座させられた」とBさんからメールで伝えられていましたが、実態はわかりません。

 この学生らの虚偽証言に石川教員が尾ひれ背びれを付けて学長以下の役員に3月2日「Bさんの『自殺』に係わる事実経過」(検証調書128頁)として報告したことから、すべての間違が始まったと思います。ちなみに、石川教員は法廷(証人尋問)で、Bさんの自殺に関しては調べていないと述べました。筆者の代理人である江島寛弁護士が「学生が一人亡くなっているのに、何故調べないのか」と厳しく追及したのに対し、「生きていている学生のケアの方が大切だから」と平然と答えています(筆者はこの発言を受けて、Bさんの自殺調査を文科省国立大学法人支援課に依頼しましたが、動いてもらえませんでした)。

 石川教員が大学執行部に「調査結果」を報告した後、大学執行部と関連委員会等関係者が「早野憎し」で固まり、筆者を解雇するためなら何でもありの状態になっていく様子が検証調書から伺えます。田中氏は裁判資料と検証調書から、大学執行部の思惑がBさん自殺の責任転嫁にあったと結論づけています。それもあると思いますが、大学執行部及び関連委員会等関係者が石川教員の報告を真に受けた可能性もあると思います。

 その後、石川教員が中心になり、調査書と称する虚偽報告書が次々と大学当局に上げられるに至ります。証人尋問で、石川教員は「副学長・学部長の許可を得て自らやった」と述べていますが、ほとんどが単独調査の形を採るに至ったのは、他者に調査を委任した場合、最初に報告した内容が虚偽だとばれるのが恐ろしかったのだと思います。その後、虚偽に虚偽を重ねていきます。

②問題となった卒論

 今回の事件で、半裸写真の卒論が問題の中心にされましたが、その作成者はY.Yさんという学生で、筆者とは別の学科に属しており、指導教員は竹川昭男准教授でした。石川教員らがY.Yさんの卒論について、本人に事情聴取をしたのが4月17日(検証調書14頁)で、筆者に懲戒解雇と記された文書が送られてきた3週間後のことです。

資料1 Y.Yさんが卒論の事情聴取を受けたのは筆者の退職後の4月17日

 実際に本人が言っているかわかりませんが、検証調書によれば、Y.Yさんは「早野先生から卒論で○○点をもらいました」と竹川教員に言って成績を出してもらったとあります(それで出す方も出す方ですが)。証拠資料には、竹川教員が2月16日に成績を付けた記録が残っています。

 ちなみにY.Yさんが筆者に卒論を提出した日は2月23日と証言しています。既に成績が7日前に出されている卒論を提出したと証言されても,筆者にはその意味がまったくわかりません。また、Y.Yさんは法廷で1度も筆者のゼミを受けていないとも証言しているので、何が指導だったのか今でもわかりません。
筆者がその卒論を指導した証拠はないと裁判でも認定されましたが、指導教員の竹川教員も指導していないとのことですから、Y.Yさんは誰の卒論審査も受けずに不正で卒業したことになるのです。

資料2 竹川教員によるY.Yさんの卒論成績入力。筆者に提出したと主張する日より7日前に既に成績が付けられていた。(検証調書127頁)

資料3 裁判所作成のY.Yさんの卒論成績記録(検証調書2頁)、●●は筆者   
(申立人)によるBさんの卒論成績記録(2月7日15時に入力済)。

 Y.Yさんは卒論単位を不正で取得して卒業しているのですから、その卒論を問題にされれば大学の言いなりになるのは当然です。私に責任を押しつけなければ、自らが不正で卒業取り消しになるのですから。その点で、筆者を陥れたい宮崎大学と、卒業が延期になれば除籍になりかねない学生の利害が一致したと推測します。卒論の不正を見逃す代わりに大学の言うとおりに証言しろと脅されていたのかもしれません(あくまでも想像です)。理由は、自らの卒論を猥褻と評価するとは思えないからです。高裁の判決文も「卒業論文の趣旨を逸脱しているとは言い難い」と書かれています。証拠保全で採取してきたY.Yさんの卒論を見てみても、半裸に見えるのは人魚の項だけで、あとは服を着ていました。また、Y.Yさんの陳述書(代理人作成)で「白衣をまとい、それ以外は何も身に着けていない」裸体写真(乙32)と書かれていますが、学生がこのような表現をするとは思えないのです。資料4はその卒論画像です(検証調書114頁。もともとモノクロです)。これのどこが裸体なのか筆者には理解できません。学生の顔は誰なのか筆者には判別できませんでしたが、目線だけは筆者がいれました。別途、宮崎大学が裸体写真と公表した写真一覧を提示します。

資料4 大学がY.Yさんの裸体と主張した「白衣をまとい、それ以外は何も身に着けていない」写真 検証調書114頁

 Y.Yさんが提出してきた陳述書(作成は代理人)によると、Y.Yさんは当時25歳で卒論が書けずに留年していました。Y.Yさんは、初修外国語で中国語を選択したのに、ドイツ語の竹川ゼミに入っていたそうですから、書けなくて当然です(ゼミに入れる事自体問題です)。何とか、竹川教員をごまかして卒業したものの、K.H君にそのことがばれて、大学側に協力させられたのではないかと推測しています(証人尋問でK.H君に言われてやったと証言したので)。

 田中氏の記事に、Bさんが自殺直前に報告書の作成を押しつけられていたと書かれていますが、押しつけたのはY.Yさんです。Bさんは学部重点研究プロジェクトの経費を獲得したが、病気のため継続ができなくなり、代わりにY.Yさんが経費を使って報告書をまとめることになっていたようです。しかし、Y.Yさんは経費を使い切ったうえ、報告書作成をBさんに押しつけました。Bさんが自殺する直前の出来事です。これがBさんの自殺に直接関係しているかどうかはわかりませんが、Bさんの自殺に関して、Y.Yさんは、かなり後ろめたいものを感じていたのは確かだと思います。

 宮崎大学はハラスメント申立が3月9日、11日に行われていたと公表しています。申立書には医学部のM.Mさんの名前が記されています(証拠保全電磁記録)。M.Mさんの事情聴取は4月25日ですから(資料5)、事情聴取もしていない学生の名前を勝手に使っているのです。4月25日のM.Mさんの調書にはかなり悪質な内容が書かれていますが、本当に本人が言っているかわかりません。作成者が石川教員ですから。


資料5 ハラスメント申立書に名前があるM.Mさん(医学部)の聴取は、筆者の退職後の2012年4月25日に行われている。

 宮崎大学は、この卒論の撮影で、参加したモデルが被害者の如く報告していますが、Y.Yさん以外は筆者の無実を証言してくれていました。ある撮影参加者の保護者は「委員長(石川教員)に、早野先生には細やかな心配りをしてもらい娘も感謝している事、Bさんも同様に細やかな配慮を受けていたと伝えました。委員会に親同伴で出席させてくれと言った所、慌てて『それには及びません。お電話でお伺いしたので十分です』と言われました。やることが稚拙。」とメールで伝えてくれました。また、ある参加者も「早野先生はやましいことはしていないって伝えたら、石川先生から私の調査はしないって言われました。」とメールをくれましたが、この学生は最後までBさんの面倒をみて、もっともBさんの状態を知っていました。結局、私の無罪を主張する学生は、撮影に参加していようが、Bさんをよく知っていようが、全員調査から外されたのです。Y.Yさん以外の撮影参加者は、筆者の代理人の弁護士事務所で事情聴取を受けていましたが、在学生が陳述書を出すと大学側から不利益を被る危険性があるとの判断から、卒業生3名が在学生の意見を代表して陳述書を出しました。結局、大学の思惑通り話したのが卒論で不正をしたY.Yさんだけでした。卒論や撮影と無関係な学生らを集めて、卒論や撮影について話をさせて、「複数の学生から具体的証言を得た」と宮崎大学は公表したのです。

 その他のハラスメントがあったと大学が主張する現場に実際にいた山本講師(学外の教員)や学生T.Kさんが、大学が公式発表する前に意見書を出して筆者の無実を証言してくれていた資料が検証調書179頁にありました。しかし、山本講師は宮大在籍記録がない(他大学の教員なので当たり前)、T.Kさんは留学生なのでわかるはず無いと、訳のわからない理由で二人の意見書を無視して、その場におらず、全く関係のないK.H君の意見を採用しています。

③中心人物

 今回の件で石川教員が中心であったことは間違いないのですが、兒玉修学部長(当時)が大きく関与していることは間違いありません。兒玉教員、石川教員ともに、筆者とはかなり仲は悪かったのです。Y.Yさんの卒論を押収していったのも兒玉教員です。執行部でも他学部所属であれば、Y.Yさんが私のゼミ生であるかどうかはわかりませんので、石川教員の報告を信じ込んだということもあり得ますが、私と同じ学部で、学生名簿(指導教員名が記されている)を渡されている兒玉教員が知らないはずはあり得ません。学内にハラスメントがあったとする掲示物もすべて学部長名でなされていますし、虚偽の内容を記者会見で公表したのも兒玉教員で、その行為で慰謝料が認められています。

 あれだけのハラスメントが事実ならば、兒玉教員は学部長(管理責任者)として責任をとらなければならないはずが、逆に副学長に昇進するという不可解なことが生じています。

 田中氏は裁判資料と検証調書から記事をまとめましたが、私の見解は、田中氏の分析とやや異なっています。

 Bさんの件でやましさのある学生らのことばを、石川教員がセンセーショナルに報告してしまい、さらにBさんの両親に伝えたことで、引くに引けなくなってしまった。大学執行部及び関連委員会等関係者は石川教員の報告を真に受け、また自殺の責任を取らせようとして捏造の手助けをした。その結果、今回の事件が起きたのではないかと考えています。
筆者はBさんの主治医のひとりから(田中氏の記事に記載されている)、Bさんは自傷の危険が高いので録画を含めて常に記録を取っておけとアドバイスを受けており、その通りにしていたため(Y.Yさんは知っていた)、Bさんがらみの捏造はできないと判断して、石川教員はBさん以外の学生のハラスメントを捏造していったと推測します。

資料6 ハラスメント申立書に関する調査結果の結論(検証調書149頁)

 ちなみに、ハラスメント認定の根拠は「誰が、いつ、何処で」と筆者が聞いてきたことだそうです(資料6)。このような論理無視の人権侵害がまかり通るのは、組織ぐるみ、結論ありきの決めつけがなされていた証です。結論ありきを通そうとすると、捏造が生まれるのです。

 おそらく大学側は、訴訟を起こされた段階で日付や内容を改ざんして、学生たちにサインだけもらい調書や申立書を捏造しようと考えていたのでしょう。筆者は代理人を含め10名以上の弁護士に、証拠保全調書を見せましたが、全員がそのように意見を述べていました。それが予想もしない証拠保全が入ってしまい、捏造がばれてしまった。
今回はすべて特別調査委員会が中心で活動しているので、石川教員以外の原田宏教員(副学長)、岩本俊孝教員(副学長)も大きく関係していることは明らかですが、会議記録からはどのように関係していたかわからないので、第三者委員会の調査結果を待つしかありません。

 筆者の前に、宮崎大学は数人の教員に懲戒処分を出しています。同じ執行部です。大学側は裁判で多くの学生に証言させて勝訴しています。筆者のケースも筆者と無関係なY.Yさんの卒論を問題にして、さらにY.Yさんの卒論に全く関係の無いK.H君、A.Sさん、M.Mさんに証言させて、「多くの学生の具体的な証言を得た」と主張しています。過去のケースでも、かなりの捏造があったのではないかと感じています。第三者委員会には、筆者のケースだけでなく、過去のケースも調査して欲しいと望んでいます。

早野慎吾(都留文科大学教授)

2017年04月01日

宮崎大ハラスメント訴訟、「無実」確定も現職戻れず

■「週刊金曜日」2017年3月31日号より転載

宮崎大ハラスメント訴訟、「無実」確定も現職戻れず

中嶋啓明

 在職中に学生に対しハラスメント行為を行なったとする大学側の調査結果は事実無根だとして,元准教授の男性が大学を訴えていた裁判で,男性の「無実」がこのほど,最高裁で確定した。

 男性は,宮崎大学で准教授を務めていた早野慎吾さん。

 宮崎大学では2012年2月,早野さんが指導教員を務めていた女子学生が精神疾患で自殺した。大学側は,その調査の過程で早野さんが,別の女子学生の半裸写真を卒業論文に掲載させるなど,学生にさまざまなハラスメント行為を行なっていたことが発覚したと主張。懲戒解雇処分に相当するとして,退職金の不支給を決め,同年6月,原田宏理事(当時)らが記者会見して公表した。早野さんが宮崎大を退職し,都留文科大学の教授として勤務し始めた直後だった。調査結果は報道されて,都留文科大はそれだけを理由に早野さんを解雇。このため早野さんは,退職金の支給を求めて宮崎大を相手に裁判を起こした。

 裁判で早野さんは,大学の調査は早野さんに悪意を抱いていた学生らの虚偽の証言にのみ依拠して行なわれたと主張。だが,一審宮崎地裁は14年11月,大学側の主張をそのままなぞり,早野さんの請求を退けた。これに対し,福岡高裁宮崎支部は15年10月,一転して大学側の主張をことごとく否定。男子学生の"証言"は伝聞証拠であり,信用性に乏しいと指摘した上で「女子学生を半裸状態にしたり,半裸状態の女子学生の写真撮影をし,卒業論文に掲載させたりしたことを認めるべき証拠はない」などと早野さんの主張をほぼ全面的に認め,16年10月,最高裁で確定した。

 早野さんによると「無実」を主張したり大学側に不利な証言をしたりする学生には意図的に事情を聴かないなど,大学の態度は初めに結論ありきだった。大学は男子学生の虚偽証言のまま,あたかも早野さんに自殺の原因があったかのように,一方的に女子学生の家族に告げた。大学は調査の過程で,女子学生から避けられていたと男子学生が自認していたことを把握していたにもかかわらずだ。

 宮崎大総務課の坂元博巳課長は私の取材に「残念だが,本学の主張は認められなかった。最高裁判決を踏まえ,当時の調査を検証する準備を進めている。資料をそろえ,早ければ年度内には第三者に検証を依頼するなどしたい」と話した。文部科学省の指導が入ったようだ。

 メディアは当時,「学生の半裸写真 卒論に」/元准教授を「懲戒解雇」/宮崎大」(『宮崎日日新聞』12年6月29日),「下着の学生撮影/卒論に複数掲載/宮崎大元准教授」(『朝日新聞』西部本社版同日),「卒論に裸写真掲載される/宮崎大元准教授,女子学生に」(『読売新聞』同),「学内誌にも女学生写真/浴衣姿など09年に掲載/「不適切」抗議受ける/宮崎大元准教授」(『西日本新聞』同年7月19日)などと大々的に報道。共同通信も6月28日に「学生の半裸写真を卒論掲載/宮崎大の元准教授」と配信するなどした。

 だが,最高裁での「無実」の確定についてはつい最近まで一切,報道されなかった。今年3月7日になってやっと『宮崎日日』が「宮大の敗訴確定/元准教授へ退職金」と伝えただけだ。共同通信は,高裁判決で「宮崎大に退職金支給命令/セクハラ訴訟、高裁支部」と報じたものの,早野さんは「灰色無罪的な書き方で,まったく名誉回復になっていない」と憤っている。

 報道の影響は続いている。都留文科大の解雇処分は一応撤回されたが,早野さんは今も現職復帰できず不安定なままだ。

なかじま ひろあき「人権と報道・連絡会」会員。

2017年03月28日

宮崎大学不当解雇事件 パワハラまで捏造 最高裁が異例の対応

現代ビジネス
 ∟●国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白

田中圭太郎氏が,前回の同志社大学の解雇事件に続き,【ルポ・大学解雇②】として宮崎大学の解雇事件についてルポルタージュを書き,『現代ビジネス』(講談社)2017年3月28日付に掲載された。
この宮崎大学のケース,本当にひどい。証拠の捏造も含めて人権侵害も甚だしい。ブラック大学中のブラック。かかる事件を起こし,当局側の人間のみならず,この何年もの間,同僚である多数の教職員は何をやっていたのだろうか。あるいは,この大学は良識ある者が声を発することさえできない状況にあるのかもしれない。宮崎大学に対しては,今後も社会的に厳しく監視していく必要がある。
また,都留文科大学の対応も,極めておかしい。最高裁が2016年10月18日付で宮崎大学の上告を棄却しても,なお教壇に立たせていない。同大学は,別の事件でも,不当労働行為で訴えられるなど,問題の多い大学である。(ホームページ管理人)

国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白

先日公開した「ルポ・大学解雇」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51247)では、近年、学校側の一方的な通知によって大学教授らが解雇されるケースが増加していることを指摘した。

今回は、国立大学法人・宮崎大学のケースを追う。同大学で教鞭を振るっていた准教授が、身に覚えのない「セクハラ」「パワハラ」で突然解雇されてしまった。裁判の結果、この解雇が不当なものであることが認められたが、その裁判資料からは「捏造」というほかない、あまりに強引な大学のやり方が明らかになる。

なぜ宮崎大学は「捏造」をしてまで、この准教授を解雇したかったのか。そこには、一人の女子学生の死が関係していたのではないか――。ジャーナリスト・田中圭太郎氏のリポート。

身に覚えのないハラスメントで懲戒解雇

宮崎大学の准教授のAさんは、2012年4月に約8年間勤めた同大学を退職し、公立大学法人・都留文科大学(山梨県)の教授に就任することが決まっていた。准教授から教授になること、新たな立場と環境で研究活動ができることに期待を膨らませていたのは言うまでもない。

そんなAさんのもとに、悪夢のような報せが入ったのは、退職直前の3月12日のことだった。宮崎大学から、唐突に次のような通達が届いたのだ。……以下,本文を参照のこと……

2017年03月10日

宮崎大学不当処分事件続報、裁判において多数のハラスメント捏造が発覚し、文科省からの指導で検証委員会設立

 2017年1月25日付の本HP記事において 2012年,宮崎大学が事実無根の「セクハラ」を理由に退職した教員の退職金を支給しなかった事件で、最高裁が2016年10月18日宮崎大学の上告を棄却し、40代教員の完全勝訴が確定したことを紹介した。

 その続報が原告教員から届いたので,ここで紹介したい。それによれば,同事件に係わりハラスメント裁判で多数の捏造が発覚した結果、宮崎大学にたいして文科省から指導が入り,同大内に第三者の調査委員会が設立される運びとなった旨,文科省の担当官から直接原告宛に連絡があったとのこと。

[過去の記事]
宮崎大学不当処分事件ならびに都留文科大学不当解雇事件について
宮崎大学不当処分事件・最高裁決定、宮崎大の敗訴確定 元准教授へ退職金(2017年3月10日付)

宮崎大学不当処分事件・最高裁決定、宮崎大の敗訴確定 元准教授へ退職金

ハラスメント訴訟 宮大の敗訴確定、最高裁決定 元准教授へ退職金(宮崎日日新聞2019年3月7日)

 在職中のハラスメントは事実無根で,退職金が支給されなかったのは不当として,宮崎大の元准教授の男性が退職金や慰謝料など約1045万円の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3法廷(大橋正春裁判長)は6日までに,大学側の上告を棄却する決定を出した。大学側に約313万円の支払いを命じた二審判決が確定した。

 同大学は,元准教授が在籍中に女子学生の半裸の写真を撮影し,卒論に掲載させたなどとして、懲戒解雇処分に相当すると判断。2012年6月,すでに退職していた元准教授に退職金を支給しない決定をした。元准教授は同年12月,「事実無根」と提訴した。

 一審の宮崎地裁判決は准教授側の請求を棄却。二審・福岡高裁宮崎支部の判決では「元准教授が撮影し,画像を卒論に掲載させたと認めるべき証拠はない。(そもそも)卒論の指導教員は別の教員。退職手当不支給の決定は法的に無効で,原告に精神的苦痛を与えた」などと指摘。一審判決を変更し,大学側に退職金203万円と慰謝料など110万円の支払いを命じた。

 元准教授は「大学は自分たちの意向に沿う発言を学生たちにさせ,学生を利用してハラスメントを捏造(ねつぞう)した。私自身と学生の両方を陥れた」と話している。

 同大学は「残念ながら主張は認められなかった。これからも教育研究にまい進する」とコメントした。上告棄却は昨年10月18日付。


2017年01月25日

宮崎大学不当処分事件ならびに都留文科大学不当解雇事件について

 2012年,宮崎大学が事実無根の「セクハラ」を理由に,退職した教員の退職金を支給しなかった事件について,最高裁は2016年10月18日宮崎大学の上告を棄却した。これにより40代教員の完全勝訴が確定した。

 なお,宮崎大学は,一審判決を変更した福岡高裁宮崎支部の控訴審判決(2015年10月21日)を不服とし,上告していた。

 また,この事件では,同じ事案を理由に,都留文科大学が2012年に同教員を不当解雇している。この不当解雇事件についても,すでに,東京地裁立川支部は,2014年4月21日解雇無効の判決を下している。

 宮崎大学及び都留文科大学の両大学から不当な処分を受けた事件について,当事者の教員から簡単ではあるが,正確な経過と事実についてのコメントが寄せられた。以下,それを紹介する。(2017年1月24日,ホームページ管理人)

 宮崎大学がセクハラ等を行ったとして40代元教員を懲戒解雇相当とした事件について、平成28年10月18日最高裁の判決が出た。大橋正春裁判長は宮崎大学の上告(宮崎大学は福岡高裁で敗訴したため上告)を棄却し、40代男性の完全勝訴が確定した。福岡高裁では、宮崎大学の主張がすべて否定され、40代男性に対し、退職金に加え慰謝料も認められる判決を出している。

 なお、この裁判に関しては、宮崎大学に証拠保全(立ち入り調査)が裁判所職員立ち会いのもと行われ、会議録や職員のパソコンなどが調べられた。学生ではなく事務員のパソコンで懲戒解雇相当を決定する会議の直前に作成された(学生の署名もない)ハラスメント申立書や、争点となった卒論の本人調査が懲戒解雇相当を決定する前には行われていない(卒論作成者本人から聞く前にその卒論を名目に懲戒解雇相当を決定している)資料等が見つかっている。また、問題になった卒論を書いた学生は、40代男性のゼミとは全く関係ない他学科の学生で指導教員(T教員)が別にいた。さらにハラスメント申立者として記載されていた学生(実際申し立てたかも不明)は、問題になった卒論とは全く無関係な人物ばかりで、40代男性と全く面識のない学生も含まれている。ハラスメント調査を中心的に行った女性教員が数回にわたり行った上への虚偽報告がすべてのもとになっていることが伺えた。

 都留文科大学は、無実の人をハラスメントがあったと報道されただけで解雇したのである。