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2019年03月08日

岡山短大不当解雇事件、教壇復帰をめざした山口雪子さんの裁判のその後

NHKハートネット(2019年03月06日)
 ∟●教壇復帰をめざした山口雪子さんの裁判のその後

教壇復帰をめざした山口雪子さんの裁判のその後

2018年11月、ある重要な裁判の判決が下されました。視覚障害のある岡山短期大学の准教授、山口雪子さんが、「障害を理由に授業の担当から外されたのは障害者差別だ」として、学校法人を訴えていた裁判で、山口さんの勝訴が確定したのです。しかし、まだ山口さんの教壇復帰のめどはたっていません。そこにはどのような問題があるのでしょうか。山口さんの裁判を通し、障害者への差別をなくすために必要なことを考えます。

学生にとって大きな学びだった山口さんの授業

岡山短期大学准教授の山口雪子さんは、網膜色素変性症で、今は明暗がわかる程度の視力です。大学院で博士号を取り、1999年に岡山短期大学の教員となりました。採用の際には履歴書に網膜色素変性症という病名を書き、面接でも聞かれましたが、問題なく採用となりました。

保育士や幼稚園教諭をめざす学生の通う幼児教育学科で、山口さんは、専門科目である「保育(環境)」の授業を受け持っていました。

「子どもたちが不思議に思ったり、もっとやりたいと思うような活動をしていくのに、どんな計画をしたらいいんだろう、どんな準備をしたらいいんだろうと、そういう力を伸ばす授業でした」(山口さん)

一方で、就職した当初に比べ、視力は低下していきましたが、「学生たちが支えてくれたので、あまり不自由は感じていなかった」と山口さんはいいます。

授業において山口さんが大切にしてきたのが、「学生たち自身でやってもらう」ということでした。授業を通じ、学生がさまざまなことを学んでくれたことを山口さんは感じていました。

「卒業して保育園に勤めた卒業生が『障害がある子どもに対して、この子のできることは何だろう、この子の頑張れることは何だろうと、可能性に目を向けられるようになった』と話してくれました」(山口さん)

以前は、視力がなくなったときが人生の終わり、と考えていた山口さん。短大に勤めたことで、その考え方は変わっていきました。

「学生たちと出会って、学生たちと一緒に学び合うなかで、私の視覚障害はこの学び合うという空間をつくるために与えられたものなんだと感じられるようになったんですね。そこから私は、視覚障害が進行しても大丈夫だと、前向きに思えるようになりました」(山口さん)

全盲の弁護士で日本盲人会連合評議員でもある大胡田(おおごだ)誠さんによると、今、地域の幼稚園や保育園で、障害を持った子どもたちが受け入れを断られるケースが少なくないといいます。原因は、保育園や幼稚園の側が障害について知らないことにあると、大胡田さんは考えています。

「山口先生の授業は、学生たちにとって、ほかでは体験できない、ほかでは学べないことを学ぶ、かけがえのない機会だったはずです。それでやめさせようというのは、本当に信じがたい行いだと思います」(大胡田さん)

配置転換命令は違法

山口さんの証言を元に、提訴までの経緯を振り返ってみましょう。

2014年1月、学長から呼ばれた山口さんは、事務員が退職するため視覚支援をできる人員がいなくなることを理由に、退職を考えるよう言われました。

「レポートや試験の採点の代読を、学外の知人に依頼していたのですが、それが個人情報漏洩だというような叱責をもらいました」(山口さん)

そのときは、答案用紙などを学外に持ち出したことについては始末書を提出し、視覚支援は自費で雇った補佐員に学内で行ってもらうことで問題はクリアされたと考えていた山口さん。しかし2016年2月、今後は授業を担当させず、学科事務に専念するよう通告を受けます。理由は、「授業中の飲食、教室から抜け出すなど、学生の不適切な態度を見つけて注意することができない」というものでした。

短大側は、教員ではない「補佐員」が学生を注意することを禁じていました。視覚障害があることをわかっていながら、その責任を負わせようとする姿勢に、山口さんは絶望的な気分になったといいます。

それでも最初は、話し合いでの解決を求めましたが、糸口すらつかめません。やむを得ず、裁判に訴えることを決断したのです。

「裁判になると学生たちが心を痛めるかもしれないとは思いましたが、私は学生たちに、より良い社会をめざす者として、問題があったときに目を背けず取り組むこと、解決をめざすことが大切だと伝えてきました。自分がそれを破ることはできない、学生たちに嘘をつくことはしたくないと思って、障害者を排除するというこの問題に向き合おう、そのためには裁判しかないと決意しました」(山口さん)

裁判で山口さんは「視覚障害を理由として配置転換をした、これは違法であり、無効」と主張しました。

一方、短大側の主張は、弁護団の団長を務めた弁護士、水谷賢さんの説明によると2つです。

「1つは、授業中に飲食などを発見して、山口先生が学生を指導する、監督することができなかったというもの。もう1つは、視覚障害を理由にした差別ではない。もともと山口先生は教員としての資質、能力を欠いているから授業を外しただけだと。この2つが短大の主張でした」(水谷さん)

この主張に対して、水谷さんは次のように指摘します。

「指導・監督できなかったという主張に対しては、目の見えない人に見えることを要求しているわけですから、仮にそういうことがあれば、補佐員を配置して、補佐員から注意するとか、あるいは指導してもらうということで十分可能です。2つ目に対しては、むしろ逆に他の教員より優れている面がたくさんあるではないかと主張しました。学生が教員に対する評価を出している資料があるのですが、そこでは山口先生ははるかに高得点の教員でした」(水谷さん)

そうした資料に加え、裁判のことを知った山口さんのかつての教え子たちも、陳述書を裁判所に提出。番組にも次のようなメールを寄せてくださいました。

「授業中の飲食については、他の先生の講義でもあったことで、目の前で食べていても注意をしない先生や、注意をしてほしいくらい私語があるときでも何も言わない先生もいました。そのなかで、山口先生は、私語などはすぐ注意していたので、先生の講義は落ち着いて受けられました。先生の視覚障害については、学生に迷惑をかけていると感じたことはありませんでした。何でも話しやすい人柄で相談にも親身にのってくれる尊敬できる先生でした。

「山口先生の授業では、実際に屋外に出てみたり、保育で使えそうな玩具を作ってみたりなど、具体的に学ぶことができてとても役に立ちました。短大では、障害児についても、皆が一緒に楽しく保育生活を送れるための支援について学びましたが、今の短大では、それとは逆の行動を、先生方がとっていることに残念な気持ちを抱いています。幼児教育を学ぶ場として、学長や先生方には、山口先生を職員の一員として受け入れるよう願っています。」

裁判の結果、2018年11月には最高裁で短大側の上告が棄却され、山口さんの勝訴が確定しました。判決では、短大の業務命令に山口さんが従う義務はないとし、慰謝料として110万円を支払うことも命じました。

「この判決のポイントとしては、もし働いてる障害者が障害のために何かできないことがあったとするならば、雇い主はまずはそれをできるための方法を考えなさい、そんな支援を何も講じないで、まるで厄介払いをするように窓際に配置転換することは、それは権利濫用で違法、無効なんだということをはっきり言った。そういう意味があると思っています」(大胡田さん)

勝訴しても実現しない教壇復帰 背景にある「司法の限界」

2年半にわたる裁判の末、勝訴が確定した山口さん。しかし、まだ教壇に復帰するめどがたっていません。

「最高裁判所の決定ですから、短大側は真摯に受け止めてくれると思っていました。しかし、教壇に復帰したいという申し出をしたところ、合理的配慮どころか、これは教授会で決めることなので、大学としては回答ができないという対応にでました」(水谷さん)

そして2019年1月下旬。短大側からは来年度、山口さんが担当する授業の開講はないと通知がありました。

こうした状況の背景には司法の限界があると、大胡田さんは指摘します。

「日本の裁判所はこれまで、ある労働者がこういう仕事をさせてほしいというふうな裁判を起こした際に、この仕事をさせなさいという判決は下せない、そういう前例があるんですね。今回の裁判でもそこが1つ問題になりました。裁判所としては、授業外しの命令は無効だということは言えますけど、この授業を山口さんにやらせなさいというところまでは言えない、それが司法の限界なんだなということをね、改めて思いました。短大側としては、「大学の自治」ということを持ち出して、授業を持たせないと言っています。ですが、これも本当におかしい話で、障害者を差別する自由だとか、マイノリティを排除する自由というのはないんですね」(大胡田さん)

最高裁で判決が確定していることから、再び裁判を起こすことは考えていないという水谷さん。今後について次のように語りました。

「日本は法治国家で、この最高裁の決定の趣旨を守らなければなりません。短大もそのとおりです。だから短大が授業外しをまだ続けているということを世論に訴えていきたいと思います。同時に、2018年から厚生労働省にも文部科学省にも要請をしてまいりました。この最高裁決定を事実上無視する短大の学校法人の運営の仕方、この点についても可能な限り行政指導を要請していきたいと考えています」(水谷さん)

山口さんは今、授業がないにもかかわらず、短大に出勤をしています。教壇への復帰を見据えているからです。

「大学は、教育と研究が2本柱だと、私は思っています。今、教育からは外されましたけれども、研究は続けよう。そして、教育にいつでも戻れるように準備しようと思っています。だから、研究に専念することによって、負けないって思っています」(山口さん)

※この記事は2019(平成31)年2月10日(日)放送の視覚障害ナビ・ラジオ「教壇復帰をめざして」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

※山口雪子さんは2月25日、障害者雇用促進法に基づく調停を岡山労働局に申し立て、短大側に協議に応じるよう求めています。


2019年02月27日

岡山短大解雇事件、「授業担当なし」調停申し立て

NHK岡山(2019年02月25日)

「授業担当なし」調停申し立て

倉敷市にある短期大学の視覚障害のある准教授をめぐり、授業の担当から外した措置は無効だとする判決が確定したあとに、短大側が新年度も授業を担当させない決定をしていたことが分かりました。
准教授は労働局に調停を申し立て、「話し合いのテーブルについてほしい」と述べました。

倉敷市の岡山短期大学に勤務する山口雪子准教授(54)は、病気が理由でほとんど目が見えません。
3年前、授業中に飲食をしていた学生を注意できなかったことなどを理由に授業の担当から外され、「障害を理由にした差別だ」として運営法人を相手取って裁判を起こし、去年11月、最高裁判所が短大側の上告を退けて担当を外した措置は無効だとする判決が確定しました。
ところが山口准教授の弁護士によりますと、判決の確定後、教壇への復帰を申し入れたものの短大側は協議に応じず、先月、「新年度の担当授業はない」と連絡があったということです。
このため山口准教授は25日、短大側に協議に応じるよう求める調停を岡山労働局に申し立てました。
申し立てのあと、山口准教授は記者会見を開き「短大側は問題から目を背け続けている。話し合いのテーブルについてほしい」と話していました。
一方、短大の弁護士はNHKの取材に対し「授業を割り当てなかったのは准教授の研究実績に基づいた決定だ。調停については労働局から連絡を受けていないのでコメントできない」と話していました。


2019年02月26日

岡山短大解雇事件、大学は最高裁の解雇無効判決にもかかわらず職場復帰を拒否

現在ビジネス
 ∟●突然教員を辞めさせられた、視覚障害をもつ准教授の嘆き(田中圭太郎)

突然教員を辞めさせられた、視覚障害をもつ准教授の嘆き
最高裁判所の判決にもかかわらず…

岡山短期大学幼児教育学科の准教授が、2016年3月、視覚障害を理由に「指導能力がない」と教職を外された。准教授は教職への復帰を訴えたが、岡山短大はこれを認めず法廷闘争に発展。18年11月、職務変更を無効とする判決が最高裁で確定し、准教授が勝訴した。

ところが19年1月、岡山短大は准教授の教職復帰を引き続き認めず、事務職として働かせる決定をした。表向きの理由は「授業の担当教員の変更」と説明し、障害が理由ではないという。しかし、その背景に浮かび上がるのは、准教授への差別だ。問題の経緯と、現状を取材した。

岡山短大による職務変更命令は「不法行為」

「教員能力が欠如しているとして授業を外されましたが、裁判所は職務変更が無効だと判断してくれました。にもかかわらず、今年4月以降も私は授業を担当できないのです。私は大学に謝ってほしいわけではありません。以前のように教壇に戻してほしい、ただそれだけです」

教職への復帰を訴えているのは、岡山短大幼児教育学科の山口雪子准教授(54)。遺伝性の網膜色素変性症を患いながら、博士号を取得後、1999年に講師として採用され、2007に准教授になった。自然の中での遊びや科学遊びなどを通して、幼児の好奇心を引き出しながら教育を実践する「環境(保育内容)」の科目を専門にしている。

山口さんが岡山短大で講師をするようになったのは、博士課程を学んだ岡山大学資源生物科学研究所(現在は資源植物科学研究所)の教授からの紹介がきっかけだった。「短大なら視覚障害があっても安心して勤められるだろう」と紹介されたのだ。

山口さんの視力は0.2ほどあるものの、網膜色素変性症は視野が徐々に狭くなる病気だ。「映画館のスクリーンが徐々になくなっていく感じ」と山口さんは説明する。暗いところで物が見えなくなる夜盲も起きる。

罹患していることがわかったのは、小学校の入学前検診の時。兄も同じ病気だったことから気がついたという。小学校の頃は0.5ほどの視力があり、症状はいまと同じでゆっくり進行していた。山口さんは小学校から高校までずっと普通の学級で過ごしている。

病気の進行には個人差があり、20歳くらいで目が見えなくなる人もいれば、高齢でも視力が残る場合がある。自分の病気を理解した山口さんは、自分のしたいことを仕事にしようと研究者の道に進むことを決意。日本大学の農獣医学部(現在の生物資源科学部)で農芸化学を専攻。大学院で修士課程を卒業後、一旦就職して、岡山大学の研究所で再び学んだ。

岡山短大では当初、生物学を教えていたが、「環境」という新たなテーマに取り組むようになって、大きなやりがいを感じるようになったという。

「ふだん、土いじりや虫を嫌う文系の学生が、幼い子どもたちと一緒だと自然の中で興味を持って活動してくれます。野外での活動や、シャボン玉などの科学遊びを、幼児教育にどのように取り入れていくかを考えてきました。面白い研究テーマをいただいたと思っています」

研究や授業を進めるうえで、視覚障害はほとんど支障がなかった。現在の視力は、目の前で手を上下左右に振ると、その様子は見えるものの、指の数まではわからないという状態だが、長年の経験もあり、今後も授業を続けることについて問題はないと思っている。

しかし、山口さんは16年3月以降、「指導能力が欠如している」として大学から突然授業を外されたのだ。大学はその年の1月、教職から事務職への職務変更と、研究室からの退室を通告。山口さんが弁護士を通じて教職への復帰を求めたが、大学は応じない。非公開で地位保全の仮処分を申し立てて和解の道も探ったが、これにも大学は応じなかった。

他に方法を失った山口さんは、16年3月に大学を提訴。一審と控訴審は、山口さんの職務変更と研究室からの退去を無効とし、大学に110万円の支払いを命じた。18年11月、最高裁で判決が確定した。

判決では、職務変更が必要だと大学が主張する理由は、補佐員による視覚補助で解決が可能だとして、職務変更は不法行為と指摘。山口さんが授業をする権利までは認められないものの、専門分野について学生を指導する利益はあり、山口さんに著しい不利益を与える行為だと結論づけた。

ところが大学は今年1月7日の教授会で、今年4月以降も山口さんの担当授業はないと決定。やはり事務職への職務変更を曲げなかったのだ。その理由は、山口さんが担当していた専門分野の授業は「別の教員が担当者として適任」であり、その他の一般教育科目は「履修者が少ないために開講しない」というもの。つまり、大学はあくまで教員の交代と科目の消滅で「担当教員から外す旨の決定ではない」と主張している。

視覚障害を理由に「指導能力がない」

では元々「他に適任者がいる」という理由で、山口さんが授業から外されたのかと言えば、そうではなかった。最初に動きがあったのは14年1月。

当時、幼児教育学科に在籍していた事務担当の派遣職員が、山口さんの業務の補助をしていた。以前よりも病気が進行していた山口さんは、派遣職員が自ら「手伝えることはありませんか」と声をかけてくれたことから、書類のレイアウトの調整や、印刷物や手書き文書の読み上げなど、視覚障害のためにできない作業の補助をお願いしたという。

にもかかわらず大学は、派遣職員の契約が14年2月に満期を迎えることを理由に、山口さんに「今年度で辞めたらどうですか」と言ってきたという。次に着任する職員には、視覚障害をカバーするための補助作業はさせられないからと、山口さんに退職勧奨した、というのだ。

この時は山口さんが自費で補佐員を雇うことで、退職を回避した。補佐員は週に2、3日、1日5時間ほど出勤し、研究室での補助や、授業での出欠の確認などを手伝っていた。

ところが16年1月、大学が今度は「山口さんには指導能力が欠如している」と言い始め、教職をやめるよう迫ってきた。山口さんによると、その理由は次の2点だったという。

ひとつは、山口さんがゼミで教えていたある学生が、同じゼミの学生と仲が悪くなり、ゼミが楽しくないと他の教員に伝えたことを、大学が山口さんへのクレームとして大きく扱ったこと。もうひとつは、山口さんの授業中に抜け出している学生がいるが、山口さんが視覚障害のために注意できない、というものだった。

山口さんは16年2月、代理人弁護士を通じて、話し合いで解決するよう求めた。しかし大学の態度は頑なで、さらにいくつもの理由をつけてきた。視覚障害のために授業中にスマホをいじっている学生を注意できない、無断で教室を退去する学生を注意できない、など。

大学は特に、授業中にカップラーメンを教室で食べていた学生がいたにもかかわらず、山口さんの視力が弱いために気づかず、注意できなかったことを大きな問題にした。しかし、それなりの分別があるはずの短大の学生による問題行動を、目が見えなくて気づかず注意できないのが悪いと、全て山口さんに責任を押し付けるのはいかがなものだろうか。

山口さんはこれまで20年近くにわたって授業を担当してきた。講師から准教授にもなった。それなのに大学は、視覚障害があるために学生の問題行動を注意できないから指導能力がないと突然言い始めたのだ。

本来は、視覚障害がある山口さんの補佐は、大学が合理的配慮によって考えるべきことだ。しかし大学は、配慮はせず、教員から外してしまった、ということだ。

教育者を育てる大学なのに

山口さんの裁判や教職への復帰については、「支える会」が結成されて、多くの人が支援している。16年5月には視覚障害がある全国の大学教授が文部科学省で会見し、「視覚障害がある大学教員は不適格などと、私たちは言われたことがない」「ナンセンスだ」と声を上げた。この時点で視覚障害の大学教員は少なくとも全国で25人いた。

勝訴確定後の18年12月15日には岡山市で、16日には東京・新宿区で「支える会」の集会が開かれ、山口さんが教壇に戻れるように活動を続けていくことを確認した。

16年4月に施行された障害者差別解消法は、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」を目的としている。岡山短大の行為は、法の趣旨に反していると言える。

厚生労働省は、障害者雇用促進法の観点からも、問題があると捉えている。最高裁での判決確定を受けて、18年12月末には岡山労働局が岡山短大を訪れ、「障害者であることを理由とする差別を禁止」し、「合理的な配慮を当事者と事業主との間で話し合い、必要な措置を講じること」を定めている法の趣旨を説明した。

その後、19年1月に岡山短大が山口さんに授業をさせないと決定したことについて、厚生労働省障害者雇用対策課の担当者は「問題が多い状況だと考えている」と話している。しかし一方で、岡山短大に対する指導については、「裁判になった時点で指導、監督などの行政行為は行うことができない」と及び腰で、「岡山短大には判決内容に基づいて、自主的に解決を図るように務めていただきたい」と述べるに留まっている。

岡山短大は自主的に解決を図る考えがあるのだろうか。今年4月以降も山口さんを授業から外す決定をしたことについて、改めて岡山短大に聞くと、「代理人弁護士からお答えします」とノーコメントだった。

代理人弁護士は「授業の担当者は毎年教授会にかけて決定しています。この度の決定は、専ら研究教育実績に基づいて判断したものであり、視覚障害は理由ではありません」と話した。岡山短大としてはこの問題は「解決した」という態度だ。

しかし、岡山短大は「16年4月以降山口さんの職務を変更したことは無効」とする判決を無視していると言えるのではないか。山口さんは今、大学の態度に、怒りよりも残念な気持ちを抱いているという。

「かつては、私が廊下を歩いていて障害物に当たりそうになったら、教職員も学生も声をかけて教えてくれました。しかし現在は、廊下でドアにぶつかっても見て見ぬ振りをする人が多くなっています。教育者を養成する大学で、言葉では思いやりが大切といいながら、視覚障害のある私を差別し、村八分にして、学生は何を学ぶのでしょうか。

人間ですから間違うこともあります。その間違いを認めて、乗り越えていけば、大学もよりよく発展できると思うのです。しかし、裁判所に間違いを指摘されながらも、変えることができない大学の態度には悲しいものがあります。

私は障害があっても、自分の好きなこと、得意なことを見つけて頑張れば、社会の中で輝けるということを知りました。もう一度教壇に戻って、支え合い、認め合うことで、豊かな社会になるのだということを、学生に伝えたいと思っています」

復職したいという思いの一方で、教育者を要請する大学で起きている障害者差別をこのまま見過ごすわけにはいかない。そう考える山口さんは2月25日、障害者雇用促進法に基づいて、岡山短大と協議をするための調停を岡山労働局に申請した。今後も大学に協議の場を持つように求めていく考えだ。


2018年12月15日

山口准教授の岡山短大4月復帰を 弁護団が運営法人に協議申し入れ

山陽新聞(2018年12月15日)

 視覚障害を理由とする事務職への配置転換の無効などを求める訴訟で勝訴が確定した岡山短大(倉敷市有城)の山口雪子准教授(53)の弁護団が15日、岡山市内で報告会を開き、来年4月からの教壇復帰に向けて、短大を運営する学校法人原田学園に協議を申し入れていることを明らかにした。

 弁護団によると、11月下旬の最高裁判決確定後、学園からは来年度からの教壇復帰について、判決で触れられていないため直ちに受け入れられず、授業編成を決める教授会の判断に委ねると文書で回答があったという。

 水谷賢弁護士は「授業復帰は学園側の合理的配慮などで実現できると判決は認定しており、復帰を認めないのは新たな差別だ」と強調。山口准教授は「障害があってもみんなで支え合い、すてきな社会になることを教壇で伝えたい」と支援者ら約40人に語った。

 支援者らは17日に厚生労働省と文部科学省を訪れ、教壇復帰の実現に向けて尽力するよう各大臣宛ての要請文を渡す予定。


2018年11月30日

岡山短期大学、不当な授業外し等に対する最高裁 上告棄却 山口雪子さんの勝訴確定

山口雪子さんを支える会

岡山短期大学,山口雪子さんに対する授業外し,研究室退去事件について,最高裁は大学側の上告申立を棄却し,山口さんの勝訴が確定したさ。本当によかったです。長い間,大学の不当な扱いと闘ってこられたこと,心から敬意を表すると同時に,勝訴を喜びたいと思います。

山口雪子さんからの速報です?↓

今日(11月29日)、代理人弁護士の先生より「最高裁から、11月27日付けで上告棄却との通知が届いた」との連絡をいただきました。今年4月に短大が上告してから、どんな状況になっているのか…皆目わからず、不安でなかったと言えば嘘になりますが、みんなからの励ましで何とかくじけることなく今日の報せを受け取ることができました。ひとえに励まし支えてくれたみんなの力のおかげです。良い報告ができたことに安堵するとともに、みんなへの言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます!裁判は終わったとはいえ、教壇復帰までにはまだまだ時間がかかるかと思います。でも、これからも諦めずへこたれずに頑張ります!まだまだ心配をかけてしまいますが、これからもどうかよろしくお願いいたします!ありがとうございます!!


2018年04月12日

岡山短大不当解雇事件、短大側…最高裁へ上告へ

山口雪子さんを支える会

短大側…最高裁へ上告へ。

ご支援くださる皆様、お世話になっています。山口雪子です。

今日(4月10日)20時45分から始まるNHK岡山局の地方ニュースを聴いていましたところ、「岡山短期大学が第2審判決を不服として最高裁に昨日付で上告」との報道がありました。3月29日の勝訴報告で皆様へのご心配を少しでも軽くできたかも…と嬉しく思っていましたが、残念な状況にまたなってしまいました。

再び皆様にご心配をおかけしてしまうことを、申し訳なく思いますし、何より教育現場として岡山短期大学の現状が残念で嘆かわしくて仕方ありません。

教壇復帰の道のりは上告を受けて、ますます長く遠くなるのかもしれませんが、あきらめずへこたれずに取り組んで参りますので、今後ともご支援お力添え賜りたく、どうかよろしくお願いいたします。

本当に残念なご連絡でごめんなさい。
いつもありがとうございます。皆様のご支援に心から感謝しています! 山口 雪子

2018年03月30日

岡山短大、視覚障害理由の配転無効 山口さん高裁も勝訴

■しんぶん赤旗(2018年3月30日)

 岡山短期大学(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(53)が視覚障害を理由にした事務職への配転命令の無効確認などを求めた控訴審で、広島高裁岡山支部(松本清隆裁判長)は29日、山口さんの訴えを認める勝利判決を出しました。昨年3月の岡山地裁判決に続く勝訴です。

 判決は、同短大が山口さんに出した職務変更と研究室退室の命令は権利乱用で無効としました。合理性を欠く不法行為で精神的苦痛を与えたことへの慰謝料として短大側に100万円の支払いを命じました。また、山口さんの授業遂行能力が他の教員と比べても劣っていないと認定し視覚障害害で生じる問題は補佐員の補助で解決すべきだと断じています。

 報告集会で山口さんは「当初は自分のわがままかと悩み、提訴は考えていなかった。支えてくれる人を見て『私だけの問題ではない』と気付いて強くなった。多様な人が学び合うところが高等教育。これからも復帰をあきらめないので支えてください」と話しました。

 視覚障害者の大胡田(おおごだ)誠弁護士は「中途視覚障害者を排除してはならないことを示した判決だ。誰でも、いつ病気になるかわからない。すべての労働者にとって良い判決だ」と評価しました。


2017年09月05日

「視覚障害で事務職に」准教授が不当訴え

日テレNEWS24(2017年9月4日)

 岡山短期大学の准教授が「視覚障害を理由に授業や研究を外されたのは不当」と訴え、
文部科学省に短大への是正指導を求めた。

 4日に5500人分を超す署名を文科省に手渡したのは岡山短期大学准教授の山口雪子
さんと支援者ら。山口さんは、網膜の異常から視野が狭くなる障害があり、去年、短大側
から、「授業中に飲食する学生に気付かず注意できなかった」などとして、授業や研究か
ら外され、事務職への変更を命じられたという。

 この問題では今年、岡山地方裁判所で「職務変更命令は無効」とする判決が出されたが
、短大側が控訴している。

 山口さん「私はただただ教壇に戻りたいだけ。障害のある教員が活躍できない、排除さ
れる、健常者じゃないと教員になれないという。このままでいいんですか」

 山口さんらは、「保育者を養成する教育課程として許されない状態」だとして、視覚障
害者の教員にも補助員をつけるなどして、差別のない教育推進を、と求めている。一方、
岡山短期大学は取材に対し、「担当者不在のためコメントできない」としている。

視覚障害の准教授 短大側の不当対応に是正要請

テレ朝(2017/09/04 23:29)

 岡山短期大学の視覚障害のある女性准教授らが授業や卒業研究の担当から不当に外されているとして、文部科学省に是正指導を求めました。

 5000人以上の署名を集めて文科省に要請にきたのは、岡山短大の准教授・山口雪子さんと支援者です。山口さんは視野がだんだん狭くなる障害があり、自ら補佐員を雇って授業をしていましたが、授業中に飲食していた学生を注意できなかったなどの理由で短大側から事務職になるよう命じられたということです。山口さんらは短大側を提訴し、一審では授業を外す命令は無効という判決が出ていますが、山口さんは授業に復帰できていないということです。短大側は控訴しています。文科省への要請について、短大は「事実関係が分からないのでコメントできない」としています。

2017年06月20日

サイト紹介、山口雪子さんを支える会-視覚障害者に対する不当配転事件

山口雪子さんを支える会

今までの経緯

山口さんへインタビューする形でまとめました。

1、短大側から今回の通告を受けたのはいつ?

授業外しは、2016年2月5日の学科会議においてです。
次年度分掌を学長が説明する中で、出席者全員に告知する形で「28年度、山口先生に授業はありません」と、言われました。

研究室明け渡しについては、次年度より学科主任教授となる方からのメールで「学長指示」として通告されました。ただし学長側は、「単なる研究室移動であって退去ではない」と言っています。
でも、移動先は旧事務室で、しかも使用できるスペースが限られています。研究に必要な資料などを置いておくスペースはありません。

学長から「私物を撤去してもらう」と言われているので、机やロッカー以外、スクリーンリーダー(文章を元読み上げるソフト)の入ったパソコンも私物となってしまいます。つまり、私の研究活動そのものをできなくする処置だと感じています。

2、短大側の理由は?

① 授業中に飲食したり、無断で出て行ったりする学生を注意できなかった
② 筆記試験を採点する際に学生の答案を第三者に読み上げてもらった 等です。

実は、2年前に、ほぼ同様の理由で退職勧奨を既に受けています。
特に2年前の時は学生課題を第三者に読んでもらっていたことが「個人情報漏洩」と叱責されました。
「視力がない教員は職業能力がない」と言われ、続けるのは難しいかとも思いました。

しかし、2年前は「補佐員を私費で雇用する」ことで退職を免れ、授業を続けてきました。
補佐員は週2日で授業の中では出席簿への記入などを手伝っていただいています。
ただし、短大との制約の中に「補佐員は学生と直接関わってはならない」とあるため、飲食や居眠りなどをみつけたとしても学生に注意を促すことはできません。
そのような中で学生から飲食している者への指導をしないとクレームが出ている…と言われ、2月5日の告知を受けました。

3、裁判で訴えていることは?

2件の仮処分申請 と 本案提訴 をしています。

まず、3月2日に研究室退去を無効にするための仮処分申請をしました。
3月14日が引き渡し期限となっていたためです。
15日以降に研究室に入れない・勝手に部屋の荷物を移動される等の危惧がありました。
そのため、研究室退去について先に申請しました。

そして、3月23日に授業外しを撤回するよう求めた仮処分申請と、研究室退去・授業外しを不服とする地位確認の提訴を行いました。

全て岡山地裁倉敷支部に提出していますが、岡山地裁本庁での取り扱いとなるそうです。

4、通告から提訴まで

2年前、「話し合いで穏便に何とか解決したい」と願いました。
母校の悪い評判は学生や卒業生が心を痛めるだろうと思ったからです。
今回、2月5日に告知された時も、「まだ何とか穏便に…」との思いが強くありました。
そこで、代理人弁護士から話し合いをしていただくことで何とかならないかと考えました。

2月9日に代理人就任挨拶と面談申し入れを弁護士の先生がしてくださいました。
しかし、なかなか面談の期日について回答はありませんでした。

2月22日に大学側代理人弁護士からの挨拶があり、ようやく3月1日に話し合いの場がもたれました。
短大側は、学長と主任教授以外に学科教員6名を同席。
私のできないこと(飲食・居眠りが注意できない等々)をA4用紙にまとめさせて読み上げさせたそうです。
そして、研究室の明け渡しについても、授業外しについても通告に変更はないとのことだったそうです。

致し方なく期限の迫っていた研究室退去について先に仮処分申請をしました。
ここでの審尋は非公開ですから、学生や卒業生に知れることなく解決する希望を持っておりました。

しかし、3月15日審尋でも変更・撤回はないとの姿勢は堅いものでした。
新年度に入ってから授業外しのことを不服申し立てしても遅すぎます。
そのため、せめて年度内にできることを…と考え、3月23日の提訴となりました。

5、大学での授業は?

現在(H28.4月)、時間割に私の名前はありません。授業はできない状況です。
待遇として「准教授の役職変更はない」とのことですが、会議席は学科教員から外れた末席にされており、教員としての処遇がどうなているのか疑問には感じています。
ただ私のほうで確認する術もなく、今後どうなるのかは私自身がわからない…というのが本音です。

6、研究室の明け渡しは?

保留となっています。
第1回審尋が上述のように3月15日でした。そのため代理人弁護士の方から「仮処分が結審するまでは研究室については現状維持」とするようにとの求めを仮処分申請後に大学側代理人弁護士にしてくださり、結果として大学側は保留を了承しています。

7、どのような場所に働きかけを?

文部科学省を含め様々なところへの働きかけを模索しています。

文科省に今回の問題について仮処分申請などをする前に何か救済してもらえるところがないかと問い合わせをしたことがあります。
でも文科省の答えは「学校と教員の問題は労使の問題だから厚労省に…」とのことでした。

厚労省には、4月から障害者差別解消法が施行されることもあり、障害者雇用対策課を頼って要請させていただく経緯となりました。でも労使問題、障害者の雇用問題だけではないと思っています。

「共生社会を目指す教育」 を子ども達にするよう求めている教育現場。

人権を無視したことをしていて真の教育ができるのでしょうか?
より良い教育現場であるように指導する責任は文科省にはないのでしょうか?
そのことに気づいていただきたい…
文科省としても考えていただきたい…

そんな強い希望もあり、署名の提出先の筆頭は文部科学大臣にさせていただいております。


障害で配置転換無効判決に不服 岡山短大運営の学園が控訴

山陽新聞(2017/04/04)

 視覚障害を理由に、事務職への配置転換と研究室からの退去を命じたのは不当な差別だとして、岡山短大(倉敷市有城)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園(同所)に配置転換の無効などを求めた訴訟で、学園側は3日、准教授側の主張をほぼ認めた一審岡山地裁判決を不服として控訴した。 一審判決は、配置転換を「権利の乱用」と指摘して無効と認定。精神的苦痛を受けた慰謝料などとして110万円の支払いも命じた。 学園側は同日、配置転換の業務命令の効力仮停止を決定した地裁の仮処分についても、地裁に保全異議を申し立てた。

岡山短大が控訴、一審判決に不服 広島高裁

毎日新聞(2017年4月30日)

 視覚障害を理由に授業の担当から外されたとして、岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園を相手取って職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟で、同学園は3日、職務変更命令の取り消しと慰謝料など計110万円の支払いを命じた岡山地裁の一審判決(3月28日)を不服として広島高裁岡山支部に控訴した。控訴について学園側は「裁判所の認識や判断には間違った部分がある」と主張している。

 この裁判は、山口准教授が授業中に飲食や無断退室する学生を見つけられなかったとして、昨年から授業の担当を外されたことを視覚障害者に対する不当な差別だとして起こした。岡山地裁は判決で「介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できる」として、授業の担当から外した短大側の命令は無効だとした。控訴について山口准教授は「あきらめずに主張を続けていきます」と話している。


視覚障害理由の配転命令「無効」 岡山短大に賠償命令

朝日新聞(2017年3月29日00時28分)

 岡山短期大(岡山県倉敷市)の女性准教授が「視覚障害があることを理由に授業を外され、事務職への変更を命じられたのは不当」として、短大を運営する学校法人を相手取り、配転命令の撤回などを求めた訴訟の判決が28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は、配転と研究室の明け渡し命令は無効とし、短大側に慰謝料など110万円の支払いを命じた。

 訴えていたのは、倉敷市の山口雪子さん(52)。判決によると、山口さんは1999年に岡山短大の教員となり、幼児教育学科の准教授として勤務してきた。網膜異常で視野が狭くなる「網膜色素変性症」を患い、次第に視力が低下。14年に退職勧奨を受け、私費で視覚補助の補佐員を雇って授業を続けていたが、昨年3月、事務職への変更を命じられたことなどを不服として提訴した。

 裁判で、短大側は「授業中、ラーメンやお菓子を食べている生徒を注意できなかったり、無断退出が横行したりしている」などと主張。これに対し、判決は「適切な視覚補助のあり方に改善すれば、学生の問題行動については対応可能」と指摘。「職務の変更の必要性は十分とは言えず、権利の乱用だ」と退けた。


山口准教授が勝訴 障害理由の授業外しは無効 岡山短大、権利乱用認める 慰謝料など110万円 地裁

毎日新聞(2017年4月16日)

 岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、視覚障害を理由に授業の担当から外されたのは不当な差別だとして、短大を運営する学校法人原田学園(同市)に事務職への職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟の判決が3月28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は職務変更命令は無効と判断し、短大側に慰謝料など計110万円の支払いを命じた。【平井俊行】

 判決によると、山口准教授は昨年2月、授業中に飲食や無断退室をする学生を見つけられなかったとして、次年度から授業の担当を外され、学科事務を行ない、更に研究室を立ち退くよう短大側に命じられた。山口准教授は網膜色素変性症で視力が低下し、文字の判読が困難な状態だった。

 判決で善元裁判長は、山口准教授の介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できると判断。「職務変更命令は山口准教授が教員として授業を行なう機会や研究発表の自由を完全に奪うものであり、短大側の権利乱用だ」と指摘した。更に「視覚補助のあり方を全体で検討し、模索することこそ、障害者に対する合理的配慮の観点からも望ましい」と述べた。また研究室からの立ち退きについては「立ち退きを命じた経緯が不当な職務変更を前提としており無効」と説明した。

原告代理人弁護士「画期的な判決」

 判決後の記者会見で山口准教授は判決内容を喜び、「1年間、授業の担当から外されて、学生を教えることは私が人生を全うするうえでかけがえのないものだと改めて感じた。教員としての本分である授業に戻れるよう頑張ります」と語った。原告代理人の水谷賢弁護士は「障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法(ともに昨年4月施行)に定められた合理的配慮のあり方を短大側に投げかけた点で画期的な判決だ」と話した。

 短大側は同29日の点字毎日の取材に対し「(控訴するかどうか)今の段階で答えられることは何もありません」と答えた。


2017年03月28日

岡山短大訴訟、視覚障害准教授の「職務変更は無効」判決

毎日新聞(2017年3月28日)

慰謝料など110万円の支払い命じる

 岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、視覚障害を理由に授業の担当から外されるなどしたのは不当として、短大を運営する学校法人を相手取り、事務職への職務変更命令の無効確認などを求めた訴訟の判決が28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は職務変更命令は無効と判断し、慰謝料など110万円の支払いを命じた。

 判決によると、山口准教授は1999年に採用され、生物学などを担当。網膜の異常から次第に視野が狭くなる難病「網膜色素変性症」を患い、文字の判読が困難になった。短大は昨年2月、授業中に無断で教室を出る学生を見つけられなかったことなどを理由に、次年度から学科事務のみを担当するよう命じた。

 善元裁判長は、視覚補助者を置くなど短大側が対応すれば授業の問題は解決できると指摘。「職務変更命令は原告が教える機会を完全に奪うもの。権利乱用で無効だ」と述べた。