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2018年04月18日

日大が英語講師15人を集団解雇する事情、外部の語学学校に「丸投げ」か

President Online(2018.4.18)

 日本大学は今年3月、英語の非常勤講師15人全員を解雇した。解雇されたのは、2016年に新しく設置された危機管理学部とスポーツ科学部の教員で、雇用された際には2020年までの継続雇用も打診されていた。さらに授業は外部の語学学校に「丸投げ」している恐れがあり、解雇の違法性が疑われている。解雇された非常勤講師の1人が、プレジデントオンラインの取材に答えた――。

何の根拠もなく突然の雇い止め

 「大学に雇い止めを通告された時はうちのめされました。経済的に苦しくなりますし、地位も失います。しかし、何よりも腹立たしいのは、何の理由もなく辞めさせられたことです。これまでの自分の仕事を否定されたと感じました」

 今年3月まで、日本大学・危機管理学部で英語の非常勤講師を務めていた井上悦男さんはそう語る。井上さんは危機管理学部で週4コマの授業を担当していた。1コマの報酬は月額で約3万円。4コマで月12万円の収入減となる。

 井上さんは1965年生まれの53歳。東京都生まれで、日本大学文学部から日本大学大学院に進み、1997年に文学研究科英文学専攻博士後期課程を満期退学。その直後から4年間、日本大学文理学部で助手を務め、2001年から日本大学の非常勤講師となった。以降、非常勤講師の仕事で生計を立ててきた。

 昨年度は1週間に日本大学の5学部で19コマ、東京理科大学で2コマの合計21コマを受け持っていた。1コマとは90分間の授業を指す。21コマであれば合計で31時間30分。週5日とすれば、毎日6時間以上教壇に立つことになる。講師の仕事は教壇に立つだけではない。授業には準備が必要になるうえ、試験の作成や採点も仕事だ。

午前9時から午後7時半までずっと授業

 井上さんの場合、平日は毎日朝6時半から7時の間に家を出て、朝8時には大学に着き、授業で配布するプリントを印刷する。最もハードだったのは月曜日で、法学部の二部の授業を担当したため、1限から6限まで、つまり午前9時から午後7時半まで、ずっと授業が続いた。授業が終わっても、帰宅後は翌日の授業の準備。ゆっくり食事をする余裕はない。試験の時期には問題の作成や採点のため、睡眠時間を削って対応する必要があった。

 年収は約760万円。少ない金額ではないが、専任教員と比べると、その労働環境の厳しさがわかる。日本大学の専任教員の場合、担当コマ数は平均6.5コマで、井上さんと同じ年齢であれば年収は約1200万円。授業の数だけをみれば、井上さんは3倍以上も担当しているのに、報酬は6割程度におさえられている。

1コマ分の報酬は、専任教員の5分の1

 これは1コマあたりに置き換えるとわかりやすい。非常勤講師は1コマ月3万円だが、専任教員は1コマ月15万円という計算になる。もちろん専任教員には授業以外の業務もあるが、その差はあまりに大きい。

 井上さんが多くの授業を担当する理由のひとつは4人の子どもの教育費だ。長女は私立理系の大学を卒業したが、下の3人はそれぞれ大学、高校、中学に在学中で、下の2人も大学進学を考えている。

 「授業を多く担当しているのは、子どもに大学で学ぶ機会を与えたいと思っているからです。多い年には、週23コマ担当していたこともありました」

他大学の授業を断って引き受けたのに

 教育費だけではない。井上さんは大学院時代に借りた奨学金をいまでも月3万円ずつ返済している。また助手時代に購入した東京都立川市の自宅のローンもまだ10年残っている。介護関係で働く妻の給与とあわせると、世帯年収は950万円。非常勤講師という不安定な身分でありながら、これだけの収入が確保してきたというのは驚くべきことだ。それだけ井上さんの授業の質には高い評価があったのだろう。

 実際に日本大学は、2016年に危機管理学部を新設した際、井上さんに新たに4コマの担当を要請している。井上さんは新学部の立ち上げに関われることを光栄に思い、日本大学の商学部の授業や、東京電気大学で担当していた授業を断って、新学部の授業を引き受けた。

 ところが、授業を担当して2年目の2017年11月、井上さんは危機管理学部から「雇い止め」の通告を受けた。雇い止めにあったのは井上さんだけではない。日本大学は三軒茶屋キャンパスに新設した危機管理学部とスポーツ科学部という2つの学部について、英語の非常勤講師15人全員を2018年3月31日で解雇すると通告したのだ。

 大学は解雇の理由について「教育課程の再構築」と説明したが、それ以上の詳しい説明はなかった。

大学の目的は「語学学校への丸投げ」

「雇い止め」の目的はなにか。その後、しばらくしてその狙いがわかった。井上さんは話す。

 「大学は私たちの代わりに誰が授業を担当するのか、説明会では明らかにしませんでした。しかし3月に入って、語学学校の講師と専任講師による『ペア授業』を実施すると発表しました。ペア授業の内容について、大学は『語学学校の外国人講師が授業を行い、専任教員は授業を観察する形式』と説明しています。これは授業の『丸投げ』で、許されるものではありません」

 この「ペア授業」では、語学学校から講師が派遣される形になる。だが厚生労働省は、「労働者派遣、請負のいずれに該当するかは、契約形式ではなく、実態に即して判断される」としている。つまり外部講師に、大学側が「授業の内容についての打ち合わせ」といった指揮命令行為をすれば、それは労働者派遣事業とはみなされず、法令違反の「偽装請負」となる。

語学学校に授業を委託することは認められない

 一方で、語学学校が授業内容を決めることがあれば、文部科学省が禁止している「授業の丸投げ」になる。どちらにしても、語学学校に授業を委託することは認められないのだ。

 問題はそれだけではない。日本大学は、今回解雇を告知した非常勤講師全員に、2014年の時点で、2016年から最低4年間の継続雇用を伝えていた。実際、井上さんが危機管理学部の非常勤講師に採用された時、大学から受け取った文書には「完成年度の平成32年3月までは、継続してご担当いただきますよう、お願いいたします」とある。

日本大学が井上さんに通知した文書(略)

 完成年度とは、学部などが新設されて、最初に入学した学生が卒業する年度のことを指す。つまり、学部ができて4年間は、継続雇用を大学が約束していたといえる。労働契約上の「期待権」が、この文書によって生じている可能性がある。

 さらに、学部の設置から完成年度までの4年間について、文科省は、授業の内容や担当する教員について、原則として変更を禁じている。学部を新設する際、大学は文科省に「学部設置計画」を提出する。この内容は、合理的な理由がない限り、完成年度まで変更できない。たとえば教員が自己都合で退職した場合にも、代わりの教員を採用する際には大学設置・学校法人審査会による教員資格審査を受けなければならないのだ。

見過ごせば大学教育の低下に直結

 日本大学の「雇い止め」を批判し、日本大学と団体交渉を行なっている首都圏大学非常勤講師組合の志田昇書記長は、「もし日本大学の行為が認められると、全国の大学に影響が及ぶ」と話す。

 「日本大学の手法が許されたら、授業を外部業者に委託してコストカットを図る大学が続出するでしょう。そうなれば、多くの教員が職を失うとともに、大学教育の質が著しく低下する恐れがあります」

 このままでは、特に経営が苦しい中堅私立大学を中心に、非常勤講師の「雇い止め」と授業の外部委託が広がる可能性があるのだ。

 井上さんは日本大学で長く教えているため、キャンパスでは知り合いの生徒もたくさんいる。だが先日、大学から「キャンパス内の秩序を乱さないように」と警告を受けた。問題が大きくなることを大学が恐れたのかもしれない。井上さんは一部の授業を失うだけでなく、学生と自由に話す機会も奪われてしまったのだ。

真っ当な大学であってほしい

 そうした状況に追い込まれても、なぜ自らの顔と名前を出して現状を訴えるのか。井上さんは「自分の母校でもあり、教員もしている大学が、おかしな方向に進むことを止めたい」と話す。

 「日本大学には法学部がありますが、危機管理学部を卒業しても『法学士』の学位が授与されます。そのような学部が法律を破る行為をするのは教育的ではありません。まだ新しい学部ですが、危機管理学部の学生はみんないきいきとしています。英語の授業は毎週クラスの生徒たちと接するので、まるで中高の担任のような関係でした。ここで定年まで働けるものと思っていました。できることなら戻りたいですね」

 筆者の取材に対して、日本大学広報課は「特にお答えできることはない」と話すのみ。一方で、文科省大学設置室は、「設置計画の変更について日本大学から報告書があがってきていないので、現時点ではコメントできない状態」と話している。

 大学教育のために汗を流してきた人たちが、報われないままでいいのだろうか。いま良識が問われている。

田中圭太郎(たなか・けいたろう)
ジャーナリスト
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。


2018年03月08日

日大授業 外部委託が再浮上、団交で示す 偽装請負の疑い

しんぶん赤旗(2018年3月8日)

 日本大学が危機管理学部とスポーツ科学部で、英語担当の非常勤講師15人全員に雇い止めを通告した問題で、授業を外部業者に委託する計画が再浮上していることが分かりました。首都圏大学非常勤講師組合との団体交渉(2月28日)で日大側が明らかにしました。

 文部科学省の見解では、大学が授業に責任をもつために「実際に教育にあたる教員」は直接雇用すべきだという原則を示し、外部委託や業務請負に歯止めをかけています。

 日大の授業外部委託計画は、学部当局が昨年11月、非常勤講師に雇い止めの理由として説明していました。

 非常勤講師組合は、新設学部の文科省認可に反する計画だと批判。日大は昨年12月13日に文科省から聞き取り調査を受け、その後の団体交渉では、授業は専任教員が担当するかのように回答しました。

 ところが、今回の団体交渉で日大側が明らかにしたのは、「ウエストゲイト」という外部業者の講師が実際の授業、採点を行い、専任教員はその場にいるだけという脱法計画でした。

 専任教員を教室に配置しても、外部委託講師と連携するために指示を出せば「偽装請負」という違法行為になります。「実際に教育にあたる教員」を直接雇用する原則に反し、専任教員は自分で指導できない授業の単位認定の責任だけ取らされる恐れがあります。

 また、専任教員は外部委託講師の授業に出席するだけだから負担が軽いものと扱われ、週10~12コマ程度に出席させられます。もともとの自分の担当授業と合わせて、90分授業を毎日3~4コマ出席し、満足に研究時間を取れない恐れがあります。

 日大は、専任教員が専門研究の成果を教育に還元していることを魅力としてアピールしています。学生にとっても、研究を反映させた授業を受けられなくなります。

 日大側は、非常勤講師組合との団体交渉では、まだ外部業者との契約を結んでおらず、3月中旬に再回答するとしています。本紙は、偽装請負の疑いなどについて日大に問い合わせましたが、7日までに回答はありませんでした。


2018年02月28日

日大の「雇い止め」、労基法違反で申告

しんぶん赤旗(2018年2月27日)

日大の「雇い止め」 労基法違反で申告
労組が会見 非常勤講師の2人

 日本大学(本部・東京都千代田区)が非常勤講師を契約上限5年で雇い止めとする就業規則などをつくる際、正当な労働者過半数代表の意見聴取を行わなかったとして、日大に勤める非常勤講師2人は26日、渋谷労働基準監督署に労働基準法違反を申告しました。同日、厚生労働省内で会見しました。

 申告した井上悦男、眞砂(まなご)久晃両氏=首都圏大学非常勤講師組合組合員=は、日大三軒茶屋キャンパス(世田谷区)などで英語を教えています。

 日大では、労働者代表を選出するにあたって、複数人の立候補者がいる場合は、あらかじめ1人にしぼったうえで、通常の信任投票ではなく、不信任投票を行っています。組合側は、民主的な手続きではないと批判しています。

 首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長は、「日大は労働契約法の無期転換ルールを逃れるため、大量の雇い止め通告を行っており、認めるわけにはいかない」と強調しました。

 井上氏は、「日大は、三軒茶屋キャンパスの新設学部で最低4年は授業を担当するよう義務づけながら、2年で英語担当の非常勤講師全員に雇い止めを通告している。契約違反だ」と訴えました。

 日大の労働者代表不正については、松村委員長ら非常勤講師組合有志3人が14日に刑事告発も行っています。


2018年02月25日

日本大学を労働基準法 90 条違反により刑事告発・申告

厚生労働省記者会(2018 年2月26日)

日本大学を労働基準法 90 条違反により刑事告発・申告

~非民主的な過半数代表選挙
に基づく非常勤講師の就業規則制定は無効~

内容 2 月14 日(水)、東京大学教職員組合委員長佐々木弾、首都圏大学非常勤講師組合委員長松村比奈子、同首都圏大学非常勤講師組合副委員長大野英士の三名は、連名で、日本大学を労働基準法 90条違反(労働基準法第120 条第1 号、同法第90 条第1 項及び同法第121 条第1 項に該当)として、東京中央労働基準監督署に刑事告発しました。また 26 日までに、当事者が同労働基準監督署に出向き、申告をします。その内容を 26 日の記者会見で公表し、これまでに入手した情報と概要を説明いたします。