全国
 カテゴリー 教育の無償化

2020年05月02日

高等教育予算の大幅増額・学習権保障を求める共同アピール

学生,大学教職員のみならず,市民の方の賛同署名もお願います.
署名サイト⇒「政府に対して、学費無償化に向けて足を踏み出すことを求めます

高等教育予算の大幅増額・学習権保障を求める共同アピール

わたしたちは学生たちの「学費半減を求める」運動に賛同し、
政府に「無償教育の漸進的導入」に取り組むことを求めます

2020年5月1日

高等教育予算の大幅増額・学習権保障を求める大学関係者の会

 新型コロナウイルスの感染が広がるもとで、世界は深刻な不況に陥っています。日本でも企業の倒産や失業者の増大などが広がっています。

 感染の影響は大学や短期大学(以下、大学)にも及んでいます。新学期を迎えた大学では、新入生たちをキャンパスに迎えることができずに、オンラインでの授業をせざるを得ない状況です。教員たちはその準備に追われています。また、職員たちは学生たちの支援に力を尽くしています。

 同時に、わたしたちが直視しなければならないのは、学生たちもかつてない厳しい状況におかれているということです。とりわけ世界有数の高学費、そして貧困な奨学金制度のもとで学ぶ権利を奪われようとしている大勢の学生がいることです。

 高学費を学生自らが負担することは困難であり、家族が学費を負担することが一般的です。しかし、不況が深刻化するもとで家計の経済状況は急速に悪化しています。学生たちのアルバイトも営業の自粛などによってその機会が奪われています。一方で、オンライン授業にともなう支出の増大にも対応しなければなりません。

 わたしたちは、いま全国的に広がっている学生たちによる「学費半減を求める」運動は正当なものであると考えます。しかし、それは新型コロナウイルスの感染にともなう緊急避難的な要求にとどまらないものという認識をもつことが必要です。

 大学の教育は商品やサービスではありません。教育は高等教育までを含めて基本的人権の中核をなすものです。また、対面での授業はできなくなったとはいえ、大学は懸命にオンライン授業を行うなどして学生たちの学びを保障しようとしています。対面授業ができなくなったからといって、学費を引き下げるという論理は適切とはいえないでしょう。

 高等教育についても日本政府は「無償教育の漸進的導入」を国際社会に対して約束しています。このようなことからすると学生たちの要求は、国際水準に立ったものとして受け止めるべきです。ここで「無償教育の漸進的導入」とは、学ぶ権利を保障するために、(学費以外を含めて)教育費の負担を徐々に減らしていくということです。

 いま全国の大学では、①オンライン授業のための費用を大学が負担し、全学生に一律3~5万円程度を支給する、②学費納入期限の延長や分納の措置をとる、③(一部の大学では)独自の給付制奨学金を設ける、といったことが行われています。しかし、これは新型コロナウイルスの感染の広がりへの対応として不十分です。加えて、「無償教育の漸進的導入」という国際社会の到達点からしても大きな問題点があります。肝心の学費、とりわけ授業料は据え置かれたままであるからです。

 なぜ、このような状況なのでしょうか。学費が無償であったり低学費であったりする国では、日本のような「学費半減を求める」運動は起こらないのではないでしょうか。日本では、世界的に見ても高等教育(を含め教育)に対する公財政支出が貧困です。そのため学生や家族は学費負担の重さに苦しめられています。一方、大学は学費収入に大きく依存せざるを得ません。それは、とりわけ私立大学において顕著です。

 個別の大学で学生の経済的な困難に対する支援策を抜本的に拡充することには限界があります。また、財政的に一定の余裕がある大学であれば学生に対する経済的な支援は可能ですが、すべての大学がそのようなことができるわけではありません。

 いま求められているのは、高等教育予算の大幅な増額であり、すべての学生の学ぶ権利を保障することです。学費を引き下げ、給付奨学金の対象者の拡大などが急務となっています。そのためには、国民的な運動が必要です。大学関係者も連帯して社会に対してこのことを積極的に呼びかけていく必要があります。

 新型コロナウイルスの感染の拡大は、さまざまなシステムの限界を露呈させています。危機の状況にある現在だからこそ、未来を切り拓く若者たちに対する社会的な支援が必要です。わたしたちのアピールへのみなさまの賛同を心から呼びかけます。

井上 千一(大阪人間科学大学)   
岡山 茂 (早稲田大学)      
片山 一義(札幌学院大学)     
國本 真吾(鳥取短期大学)     
小池由美子(上田短期大学)     
小山 由美(日本大学)       
西垣 順子(大阪市立大学)     
藤原 隆信(筑紫女学園大学)    
細川 孝 (龍谷大学)       
堀 雅晴 (立命館大学)      
光本 滋 (北海道大学)      

事務局(連絡先)          
細川孝(hosokawa@biz.ryukoku.ac.jp)


2019年01月31日

東工大・芸大の学費値上げ、高学費は国による人権侵害 無償化を進める立法が必要

「しんぶん赤旗」(2019年1月15日)

東工大・芸大の学費値上げ
高学費は国による人権侵害 無償化を進める立法が必要

渡部 昭男

 国立大学の授業料等は、2004年の法人化以降、国の定める標準額(53万5800円)を据え置くとともに、各法人がそれを超えない形で節度を保ってきました。ところが昨秋、東京工業大学、東京芸術大学が2019年度からの約10万円もの値上げを通告しました。これに対して国は、容認ないし推奨する姿勢です。ここには、次のような人権侵害が認められます。

 負担軽減こそが国際法上の義務

 2012年9月、日本政府は国際人権A規約13条2項(b)(C)の「特に、無償教育の漸進的な導入」にかかる留保を撤回しました。以降、日本国憲法98条2項が「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する」と求めているように、中等教育及び高等教育の漸進的無償化を進める義務を負うことになりました。国が負うべき義務には、学費負担の軽減を速やかに進めるという作為義務(すべきこと)と、これ以上の学費負担の加重を行わないという不作為義務(してはならないこと)の2種類があります。
 国立大学の授業料に関して言えば、12年以降、①標準額自体を次第に下げる②減額収入分を大学法人宛ての基盤的経費においてしっかり補填する③標準額を上限とするとともに、それを下回る授業料設定をしたり学内奨学金を拡充した法人に対してインセンティブ(報奨)を与える仕阻みを整備する、などに踏み込むべきでした。しかし、実際には運営費交付金を減額し続けて、競争の名の下に各法人や学生たちを追い詰めたのです。
 日本弁護士連合会は、子どもの貧困、学習権の保障などに関して、これまで複数の意見書・会長声明を出しています。直近の「若者が未来に希望を抱くことができる社会の実現を求める決議」(18年10月5日)においては、「『生まれた家庭』の経済力によって受けられる教育が左右されており、高等教育における学費の高騰等により進学できない若者も少なくない」と指摘した上で、「全ての教育の無償化」を提言しています。

 各地域・学園で連帯を広げよう

 昨年11月1日、私ども「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」(代表世話人・重本直利、三輪定宣)は、日弁連の人権擁護委員会に対して「人権救済申立て」を行いました。
 加害者は国であり、被害者は中等教育・高等教育段階で修学する意思及び能力があるにもかかわらず、主に経済的な負担のために、①進学を断念した②中途退学を余儀なくされた③修学のための費用を得るための労働等により修学のための時間を奪われるなど充実した学生生活を送ることができない、または④修学のための負債の返済に困難を抱える人々です。
 最終的には、人権侵害救済のために、立法措置その他のすべての適当な方法により、A規約の「中等教育及び高等教育への権利及び漸進的無償化実施義務」の完全な実現を達成するため、国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、行動する義務があることを確認し、その迅速な実現のために中等教育及び高等教育の漸進的無償化を促進する法案(仮称)の立法を含め、その他適切な措置をとるよう、国に勧告することを求めています。
 日本では障害者権利条約の批准に伴って、障害者基本法を改正し、障害者差別解消法を実現するなど、当事者参画による権利保障運動の経験があります。子育てや教育を共同的に営む豊かな社会を展望しっつ、漸進的無償化が市民と野党の共闘テーマになり、各地域」学園で連帯の輪が広がることを期待しています。
    ◆
 日弁連への申立書や関連情報は同会のHPで公開中

 わたなべこ・あきお
 神戸大学教授(教育行政学)。中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会事務局長。『格差問題と「教育の機会均等」』ほか


2018年11月02日

サイト紹介「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」

「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」
http://mushou.jinken-net.org/

学費を苦に中退、奨学金で破産…教育無償化しないのは「人権侵害」 日弁連に申し立て

弁護士ドットコム11/1(木)

高校や大学などに通う意思と能力があるのに、国が「教育無償化」のための取り組みを十分にせず、経済的理由から学生生活を送ることができない人が出ることは人権侵害だとして、有識者団体は11月1日、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。教育無償化のための法整備も含め適切な措置を取ることを、日弁連として国に勧告するよう、求めている。

●学費稼ぐため長時間アルバイト、学業そっちのけ

団体は「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」で、千葉大名誉教授の三輪定宣氏(教育行政学)と元龍谷大教授の重本直利氏(社会経営学)がそれぞれ代表世話人を務める。世話人には西川治弁護士らが就任している。

日弁連に提出した申立書ではまず、日本の学生が納める授業料がOECD諸国のなかでみても有数の高さで、しかも奨学金は返済が必要な貸与制である場合がほとんどであり、返済できないまま自己破産に追い込まれる例が少なくないことを指摘した。

そして、経済的理由から中退する学生が多く、低所得層の学生が学費や生活費を稼ぐために長時間のアルバイトをし、充実した学生生活を送ることが難しいことも問題だとした。中学校や高校でも制服代などの負担が重い問題は解消されていないと訴えた。

●東工大など授業料値上げの動き、波及を懸念

もともと日本政府は、国連の社会権規約がいう「無償教育の漸進的な導入」に拘束されない権利を持っていた(留保していた)が、外務省の発表によると2012年9月にその留保を撤回することを国連事務総長に通告した。つまり留保撤回により、日本政府は法整備や財政的措置などを講じ、教育の無償化を進める責任を負うことになったと求める会は主張している。

国立大の授業料(年額)は、文科省令が規定する「標準額」をもとに各大学が定める仕組み。授業料の標準額は53万5800円で2005年4月以降は据え置かれてきたが、2018年9月以降、東京工業大と東京芸術大が相次いで授業料改定を表明した。東工大は53万5800円を63万5400円に、東京芸大は53万5800円から64万2960円に、それぞれ引き上げるとしている。

求める会では、こうした引き上げが他の大学などにも波及し、学生や入学を志す人たちの負担がさらに増すことを強く懸念している。求める会は申立書の結びで、「具体的な行動をとる義務が国にあることを明確に意識するよう、求める必要があることは明らか」とした。