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2015年09月17日

自由法曹団、「安倍政権による労働者 安倍政権による労働者派遣法の改悪に強く抗議し、派遣労働者の処遇改善と派遣 派遣労働者の処遇改善と派遣法の抜本改正を要求する声明」

自由法曹団
 ∟●「安倍政権による労働者 安倍政権による労働者派遣法の改悪に強く抗議し、派遣労働者の処遇改善と派遣 派遣労働者の処遇改善と派遣法の抜本改正を要求する声明

安倍政権による労働者 安倍政権による労働者派遣法の改悪に強く抗議し、
派遣労働者の処遇改善と派遣 派遣労働者の処遇改善と派遣法の抜本改正を要求する声明 を要求する声明

1 労働者派遣法「改正」案は、「派遣元管理台帳の記載事項に、派遣元が講じた雇用安定措置を追加する」等の修正を行った上、2015年9月8日に参議院厚生労働委員会で、翌9日に参議院本会議で、自民党、公明党等の賛成多数で可決された。その後、「改正」案は、9月11日、衆議院本会議で、自民党、公明党等の賛成多数で可決、成立させられた。「改正」法の施行日は、修正されて、2015年9月30日とされている。

2「改正」法は、「派遣就労への固定化を防ぎ、正社員を希望する派遣労働者についてその道が開けるようにする」等の政府答弁に反し、派遣労働者の優先雇用権と結びついている「1~3年の業務単位の期間制限」をなくし、派遣労働者の直接雇用や正社員への道を奪っている。また、「改正」法の「3年の事業所単位の期間制限」は過半数労働組合等から意見聴取しさえすれば何回でも延長でき、「3年の個人単位の期間制限」は派遣労働者を入れ替えるか、「課」等の所属組織を変えさえすれば労働者派遣を永続利用することができ、派遣労働者に「生涯派遣」を強要する仕組みとなっている。これに加えて、「改正」法は、3年間待たせた上、施行日の2015年10月1日の1日前に「業務単位の期間制限違反の場合の労働契約申込みみなし制度」を廃止し、派遣労働者の直接雇用と正社員への道を奪っている。

 「改正」法は、派遣先の正社員と派遣労働者との間の均等待遇を保障せず、派遣労働者の劣悪な労働条件を容認している。これでは、派遣先は正社員を派遣労働者に置き換える動きを加速し、派遣労働者が激増するであろう。

 政府は、雇用安定措置やキャリアアップ措置を設けたことを強調するが、審議の中で、これらの措置が強制力がなく、実効性に乏しいことが明らかになっている。逆に、「3年の個人単位の期間制限」は、直接雇用と結びついておらず、派遣先に派遣切り自由の権限を与え、派遣労働者の雇用を不安定極まりないものにしている。

 以上のとおり、「改正」法は、「生涯派遣・正社員ゼロ」法、「派遣切り自由化」法そのものであり、最後の修正も「改正」法の性格をまったく変えていない。

 自由法曹団は、安倍内閣と自民党・公明党による労働者派遣法の改悪強行に強く抗議する。

3 この間、労働者派遣法「改正」案の正体が明らかになるにつれ、「改正」案反対の世論と運動は大きく拡がっている。日本経済新聞社等が今年8月4~10日に行った共同調査では、派遣社員・契約社員の68%が「改正」案に反対している。自由法曹団等が今年7月2日に行った「派遣労働者の声を国会へ!!『7・2派遣労働110番』」でも、「改正」案について、25名の派遣労働者が反対を表明したのに対し、賛成する派遣労働者は1人もいなかった。

 労働者派遣法改悪反対の世論と運動に押されて、「改正」法には39項目にのぼる附帯決議が付けられている。その中には、「直接雇用が労働政策上の原則であることに鑑み、正社員として働くことを希望している派遣労働者に正社員化の機会が与えられるよう、派遣元事業主と派遣先のそれぞれに派遣労働者の正社員化に向けた取組を講じさせること」や「新たに期間制限が掛かることとなる26業務に現に従事する派遣労働者について、不当な更新拒絶を行わないための関係団体への要請等、当該派遣労働者の雇用の安定化のための措置を早急に講ずること」等のように、「生涯派遣」や「派遣切り自由」と矛盾し、派遣労働者の権利を守ることに役立つ規定もある。

 自由法曹団は、この間つくられた派遣労働者との共同を大切にし、派遣労働者の雇用と労働条件を守り、向上させるために全力を尽くす決意である。

4 今、労働者派遣法の改悪に抗して、①労働者派遣における常用代替防止原則と臨時的・一時的業務に限定する原則の徹底、②登録型派遣・製造業派遣の全面禁止、③直接雇用につながる業務単位の派遣受入期間制限の復活と短期化、④違法派遣の場合の労働契約申込みみなし制度を派遣先の正社員と同一の労働条件での直接雇用を実現する制度へ改善すること、⑤派遣先の正社員と派遣労働者との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を実現することが重要である。

自由法曹団は、安倍内閣と自民党・公明党による労働者派遣法の改悪に強く抗議し、派遣労働者の処遇改善と労働者派遣法の抜本改正のため、全力をあげて奮闘する決意である。

2015年9月16日
自 由 法 曹 団
団 長 荒 井 新 二

京滋私大教連、緊急声明「労働者派遣法「改正」法案の強行採決に強く抗議するとともに、人間らしく働くことのできるルールづくりを要求する!」

京滋私大教連
 ∟●労働者派遣法「改正」法案の強行採決に強く抗議するとともに、 人間らしく働くことのできるルールづくりを要求する!

労働者派遣法「改正」法案の強行採決に強く抗議するとともに、
人間らしく働くことのできるルールづくりを要求する!

 労働者派遣法「改正」法案は、9 月 9 日に参議院本会議で可決され、9 月 11日には衆議院本会議で与党などの賛成により可決・成立しました。本「改正」法案は、採決直前に法案の主要部分が修正され、39 項目にわたる付帯決議とともに採決されるなど、法案の大きな矛盾点が露呈する中で、法案の強行採決が行なわれたことに強く抗議します。

 今回の法「改正」は、これまで「常用雇用代替の禁止」「臨時的・一時的業務に限定する」とされてきた雇用の大原則を破って、いつでも、どこでも、いつまでも、派遣労働者を使い続けることを可能にするとともに、正規労働者の仕事を派遣労働者に置き換え、労働者全体の処遇を切り下げることに繋がりかねません。

 また、2009 年のリーマンショックの際、仕事と生活を奪われた派遣労働者が路頭に迷うことになった経験を踏まえ、今年 10 月 1 日から派遣先企業への直接雇用を定めた法律が施行される直前に、このような措置が取られたことは、極めて重大な問題です。

 今回の法案に対して、7 割近くの派遣労働者が「派遣社員の根本的な地位向上にならない」(9 月 1 日付・日経新聞調査)との意見を表明しているにも関わらず、今回の法「改正」によって、劣悪な賃金・労働条件が常態化することが危惧されます。

 今後も、残業代ゼロや解雇の自由化など、安倍政権の下で労働法制のいっそうの改悪を進めようとする動きが強まることが予想される中、引き続き多くの労働者と力を合わせ、厳しい労働環境に置かれた労働者とともに、雇用と権利を守るたたかいを広げていくことを呼びかけるものです。

2015 年 9 月 15 日
京滋地区私立大学教職員組合連合四役

2015年09月09日

全労連、労働者派遣法大改悪法案の採決強行に強く抗議する

全労連
 ∟●労働者派遣法大改悪法案の採決強行に強く抗議する

労働者派遣法大改悪法案の採決強行に強く抗議する(談話)

 本日、参院厚生労働委員会は、労働者派遣法大改悪法案の採決を強行した。派遣労働者の多くも反対する雇用破壊の大改悪であり、全労連は強く抗議する。

 第一に指摘すべきは、参院段階の審議を通じて、同法案が直接雇用の大原則を侵し、低賃金・使い捨ての労働者派遣を一般的な働き方に変え、派遣労働者を急増させる雇用破壊法案だということがいっそう鮮明になったことである。

 生涯ハケン・正社員ゼロの大改悪にほかならず、これでは、雇用はますます不安定化し、働く人々の賃金水準はいっそう下がってしまう。暮らし破壊、内需縮小による経済破壊の大改悪として厳しく批判されねばならない。

 第二に指摘すべきは、運動のなかで実現した「労働契約申込みみなし制度」の10月1日発動を阻止し、違法企業を免罪しようという与党の黒いねらいもまた鮮明になったことである。

 与党は採決直前に施行日を9月1日から9月30日に修正したが、それでも施行日まで残された期間はわずかしかなく、異常といわざるを得ない。

 これでは、派遣労働者の急増が強く危惧されるだけでなく、違法のやり得として、法の支配の大原則すら揺るがしかねない。

 同時に指摘すべきは、派遣労働者自らが反対に立ちあがり、労働組合や雇用の安定を願う広範な世論が与党を追い詰めてきた結果が、会期末が目前に迫るなかでの委員会採決強行という事態となったことである。

 与党は、採決直前に施行日を9月30日に修正しただけでなく、労働組合や野党各党が厳しく批判してきた点について、形ばかりだが三点の修正をおこない、質疑なしで採決を強行した。事実上、与党自ら法案の欠陥を認めるものである。この点でも運動が追い詰めてきたことを確認すると同時に、形ばかりの修正ではとうてい許されず、廃案しかないことを明らかにするものだということを強く指摘しておく。

 委員会での採決は強行されたが、まだ本会議が残っている。法案修正の結果、再度、衆院に回付する必要もある。会期末が目前に迫るなか、この間の運動を確信に、戦争法案の国民的なたたかいと結んで、雇用破壊の労働者派遣法大改悪法案を廃案に追いこむために全力を尽くすことが求められている。全労連は断固たたかいをひろげる決意である。

2015年9月8日
全国労働組合総連合
  事務局長 井上 久

2015年06月26日

自由法曹団、衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

衆議院における派遣法「改正」案の強行採決に抗議し、廃案を要求する声明

1 労働者派遣法「改正」案は、2015年6月19日、衆議院厚生労働委員会と本会議で、相次いで強行採決され、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。 しかし、労働者派遣法「改正」案の審議は、極めて不十分である。①「改正」案は、業務単位の期間制限をなくし、直接雇用や正社員への道を奪うのか、それとも正規雇用を増やすのか? ②「改正」案の個人単位の期間制限は、派遣労働者の首切り自由をもたらすのか、それとも正社員化を促進するのか? ③「改正」案の均衡待遇の推進やキャリアアップ措置は、直接雇用につながるのか? ④「改正」案の4つの雇用安定措置は、実効性があるのか? ⑤施行予定日の1か月前に、「業務単位の期間制限違反の場合の労働契約申込みみなし制度」をなくし、多数の派遣労働者の直接雇用へ移行する権利を奪うことは正義に適うと言えるのか? 等々、解明が求められている問題点は、多数存在する。
 ところが、衆議院厚生労働委員会及び本会議では、6月19日、上記の問題点の審議も解明も極めて不十分なまま、「改正」案の採決を強行したのである。

2 自民、公明、維新の党は、同じ6月19日、衆議院厚生労働委員会と本会議で、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(「同一労働同一賃金推進法」)を、当初案の「派遣労働者について、待遇の均等の実現を図る」を「派遣労働者について、均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図る」に、「法制上の措置については、施行後1年以内に講ずる」を「施行後、3年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずる」に修正の上、賛成多数で可決した。
  同一労働同一賃金推進法は、上記修正により、均等待遇原則を骨抜きにされ、派遣労働者の処遇改善に役にたたないものとなっている。

3「改正」案は、一方で、直接雇用と結びついている「業務単位の期間制限」をなくし、他方で、派遣労働者を入れ替えれば、永久に労働者派遣を利用することができる「個人単位の期間制限」を導入している。しかも、「改正」案の「個人単位の期間制限」は、直接雇用と結びついておらず、派遣先に派遣切り自由の権限を与えている。このような仕組みと機能からして、「改正」案は、「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要し、「派遣労働者の首切り自由」を認める法案である。審議を尽くせば、「改正」案が「生涯派遣・正社員ゼロ」法案、「派遣労働者の首切り自由化」法案であることは、自ずと明らかになることである。
 このような中で、いま、全国の派遣労働者は、「改正」案によりますます不安定な働き方を強いられることについて、不安や反対の声を上げ始めている。

4 自由法曹団は、衆議院厚生労働委員会と本会議における労働者派遣法「改正」案の強行採決に強く抗議する。自由法曹団は、参議院において、徹底審議を尽くし、問題点を解明し、「改正」案を廃案にすることを強く要求するものである。

2015年6月25日

自由法曹団
団長 荒井 新二

2015年06月23日

京滋私大教連、「直接雇用や正社員への道を閉ざす労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!」

京滋私大教連
 ∟●直接雇用や正社員への道を閉ざす労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!

直接雇用や正社員への道を閉ざす
労働者派遣法「改正」法案の強行採決に抗議する!

 6月19日の午前に開かれた衆議院厚生労働委員会において、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正」法案(以下「改正」法案)が、自民党・公明党の賛成で法案が可決され、同日午後に衆院本会議へ緊急上程され、採決が強行されました。

 「改正」法案は、現行法では「専門的な26業務」を除いて、原則1年、最大3年となっている派遣労働について、期間の制限を撤廃し、働き手さえ変えれば、無期限で派遣労働を受け入れることができるようにするものです。

 本法案の国会への提出は 3 度目となりますが、2 度にわたって廃案となった法案をそのまま提出すること自体、国会審議を軽視した対応ですが、5 月半ばに始まった本法案の国会審議を通して、改めて法案の問題点が浮き彫りになっています。

 派遣労働者の受け入れ期間が制限されていれば、企業側は期限を迎えてもその業務を続けたい場合は、派遣労働者に直接雇用を申し出なければなりませんが、期間制限が撤廃されれば、企業は労働組合や労働者過半数代表の意見を聞くだけで、人を入れ替えたり、部署を変更して派遣労働者を使い続けることができることになります。

 今回の法案提出にあたって、政府は条文に派遣は「臨時的一時的なものである」との原則を「考慮する」といった文言を盛り込みました。しかし、派遣の期間制限をなくし、正社員への道が閉ざされてしまえば、「考慮する」だけでは何らの歯止めにもなりません。 法案審議のなかでは、企業側が派遣労働受け入れ期間に違反した場合、派遣労働者に労働契約を申し入れたものと「みなす」規定が、今年 10 月から実施される予定であるにも関わらず、今回の「改正」法案が 9 月から施行されることになれば、その意味がなくなることも重大な問題として浮上しました。

 今回の「改正」法案では、派遣期間の制限がない 26 業務の指定も廃止されるため、専門的な派遣労働者が大量に解雇されることへの不安も広がっています。こうした不安に応えるためにも正社員との格差を是正し、雇用の安定化を図るための法整備をすべきですが、与党と維新の会が合意した「同一労働・同一賃金推進法」の修正案は、これらの問題を何ら解決するものではありません。

 与党との協議で修正された「同一労働・同一賃金推進法案」は、原案では正社員との格差是正のための立法措置を「1 年以内」に行うことを義務付けていましたが、これを「3 年以内」へと先送りにするとともに、「法制上の措置を含む必要な措置を講じる」と変更し、「同一労働・同一賃金」の実効性を大きく後退させる内容となっています。

 また、原案で「職務に応じた待遇の均等の実現」となっていたものを、修正案では「その業務の内容及び当該業務の責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇および均衡のとれた待遇の実現」と変更されています。これでは、派遣社員と正社員では「業務の内容」(労働時間や休日など)や、「責任の程度」(部署での地位など)が違うという理由で、待遇の違いを「正当化」されることになってしまいます。

 さらに、派遣法「改正」案では「政府は…(中略)…その能力を十分に発揮して充実した職業生活を営むことができる社会の実現のための取組を一層推進するため、労働者の解雇に関する法制度を含めた労働に関する法制度の在り方について、これに関連する社会保険制度の在り方と併せて、抜本的な見直しを行うものとする」との附則(第二条)を加えており、「労働者の解雇に関する法制度」の「抜本的な見直し」に言及している点は極めて重大です。今回の労働者派遣法「改正」法案は、派遣労働者の問題だけにとどまらない、解雇規制の緩和に向けた重大な見直しを行おうとするものであり、法案の廃案に向けた共同の取り組みを呼び掛けるものです。

2015年6月22日
京滋地区私立大学教職員組合連合
書記長 佐々江洋志

2015年06月08日

自由法曹団、労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

労働者派遣法「改正」案の採決強行に反対し、廃案を要求する声明

1 自民・公明両党は、現在、維新の党が提案する「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(通称「同一労働同一賃金推進法」)の成立を図ることと引き換えに、維新の党から労働者派遣法「改正」案の採決に応じるとの合意を取り付け、今月中旬にも「改正」案の採決を強行しようとしている。

2 しかし、労働者派遣法「改正」案の審議は、衆議院厚生労働委員会において、5月15日に開始されたばかりである。「改正」案は、「業務単位の1~3年の期間制限をなくし、直接雇用や正社員への道を奪う。」、「施行予定日の1か月前に、『業務単位の派遣受入期間制限違反の場合の労働契約申込みみなし制度』をなくし、多数の派遣労働者の直接雇用へ移行する権利を奪う。」、「個人単位の3年の派遣受入期間制限を導入し、専門26業務に従事する派遣労働者の大量首切りをもたらす。」等の多くの問題点を含んでいる。
 今、何よりも重要なことは、これらの問題点を解明するため、徹底審議を尽くすことである。

3 維新の党は、民主党、生活の党と共同で、既に、5月26日、「同一労働同一賃金推進法案」を国会に提出している。自民・公明両党は、上記「同一労働同一賃金推進法案」を修正の上、維新の党と共同で再提出し、同法の成立を図ることと引き換えに、維新の党に労働者派遣法「改正」案の採決に応じることに同意させようとしているのである。
 「同一労働同一賃金」を実現することは重要であるが、「改正」案の前記問題点は、「同一労働同一賃金推進法」を成立させても何一つ解決しない。そのことは、「改正」案の前記問題点を見るだけで明白である。
 「改正」案の問題点についての審議も不十分なまま、「改正」案の採決を強行することは、国会の審議権をないがしろにし、議会制民主主義を否定する暴挙である。

4 自由法曹団は、自民・公明両党の労働者派遣法「改正」案の採決強行の企てに強く抗議し、反対する。また、維新の党に対して、自民・公明両党の採決強行の企てに同意することなく、「改正」案の徹底審議のために尽力することを要請するものである。
 自由法曹団は、「改正」案の採決強行に反対し、徹底審議を尽くし、「改正」案の問題点を解明し、「改正」案を廃案にすることを強く要求するものである。

2015年6月8日
自 由 法 曹 団
団 長 荒 井 新 二

2015年04月25日

自由法曹団、生涯派遣を強要し、正社員をゼロにする労働者派遣法「改正」案の廃案を要求する意見書

生涯派遣を強要し、正社員をゼロにする労働者派遣法「改正」案の廃案を要求する意見書
過労死を激増させ、残業代をゼロにする労働基準法等「改正」案の廃案を要求する意見書

2015年04月14日

自由法曹団、高度プロフェッショナル制度を創設し、裁量労働制を拡大する労働基準法「改正」案等の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●高度プロフェッショナル制度を創設し、裁量労働制を拡大する労働基準法「改正」案等の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

高度プロフェッショナル制度を創設し、裁量労働制を拡大する労働基準法「改正」案等の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

1 安倍内閣は、2015年4月3日、労働時間規制の適用を除外する「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」の創設や企画業務型裁量労働制の拡大等を定める労働基準法の「改正」案等を閣議決定し、同日、同「改正」案等を国会に提出した。

2 「改正」案の高度プロフェッショナル制度は、「この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。」と定め(41条の2の1項本文)、残業代や深夜割増賃金の不払いを合法化する制度であり、2007年に第1次安倍内閣が国会提出断念に追い込まれたホワイトカラー・エグゼンプションそのものである。

 「改正」案は、高度プロフェッショナル制度の対象業務を、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定められる業務」と定めている(41条の2の1項1号)。しかし、上記の「高度の専門的知識等」や「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」との概念はあいまいであり、これでは対象業務の範囲は際限なく拡がりかねない。

 「改正」案は、高度プロフェッショナル制度の対象労働者を、「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間あたりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上」の賃金の労働者と定めている(41条の2の1項2号)。この点について、建議は、「具体的な年収額については、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1075万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。」としている。しかし、日本経団連は、2005年6月21日発表の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」の中で、対象労働者を「年収400万円以上」の労働者にすることを提言しており、早くも、日本経団連の榊原定征会長は、4月6日の記者会見で、「最終的にこの制度を実効性あるものにするには、年収要件の緩和や職種を広げる形にしないといけ
ない」などと言い出している。

 労働基準法は、企画業務型裁量労働制については、「当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」(38条の4の1項1号)と定めている。ところが、「改正」案は、高度プロフェッショナル制度について、上記のような定めをまったくしていない。この制度の下では、使用者は、対象労働者に対して、始業時刻や終業時刻を定めたり、指揮命令や具体的な業務指示をすることを禁止されていない。これでは、高度プロフェッショナル制度下の対象労働者は、際限のない長時間労働や深夜労働を強要されかねない。

以上のとおり、新たに創設される高度プロフェッショナル制度は、労働時間規制を全面的に解体するものであり、とうてい許されない。

3 「改正」案は、企画業務型裁量労働制について、対象業務を①「事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用し、当該事項の実施を管理するとともにその実施状況の評価を行う業務」、②「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘又は
締結を行う業務」に拡大するとしている(38条の4の1項1号ロ、ハ)。しかし、上記「実施の管理」、「実施状況の評価」及び「契約の締結の勧誘又は締結」の業務は、「その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある」業務とはいえず、このような業務を企画業務型裁量労働制の対象にすることは許されない。

 現行の労働基準法施行規則は、事業場の労使委員会の企画業務型裁量労働制についての決議の届出は、所轄の労働基準監督署にしなければならないと定めている(24条の2の3の1項)。ところが、建議は、現行の所轄の労働基準監督署への届出に代えて、「事業場の労使委員会決議の本社一括届出を認める」等と、手続を簡素化するとしている。しかし、事業場に対応する地元の労働基準監督署でなければ、裁量労働制についての適切な監督、指導は期待できない。労使委員会決議の本社一括届出は、労働基準監督署の監督、指導を弱める措置であり、とうてい認めることはできない。

4 「改正」案は、フレックスタイム制について、清算期間の上限を現行の「1箇月以内」から「3箇月以内」に延長している(32条の3の1項2号)。
 しかし、フレックスタイム制では、清算期間が長くなればなるほど、長時間働く労働日が生じがちになる。実質的には、それだけ、長時間労働と残業代不払いが増えることになる。清算期間の上限の延長も、とうてい認めることはできない。

5 以上のとおり、「改正」案の高度プロフェッショナル労働制度の創設や企画業務型裁量労働制とフレックスタイム制の拡大は、「1日8時間・1週40時間」の労働時間法制の大原則を破壊し、過労死を激増させ、残業代をゼロにするものであり、とうてい容認できない。
 自由法曹団は、高度プロフェショナル労働制度を創設し、企画業務型裁量労働制とフレックスタイム制を拡大し、労働時間法制の大原則を破壊する労働基準法「改正」案等の国会提出に抗議し、その廃案を強く要求する。そして、「労働時間(時間外労働)の上限を法律で規制すること」、「24時間について継続した一定の時間以上の休息時間(インターバル時間)を法律で定めること」等の長時間労働を抑制し、人間らしく働くルールを確立することを要求するものである。

2015年4月13日

自由法曹団
団長 荒井 新二

2015年04月07日

日弁連、労働時間規制を緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

日弁連
 ∟●労働時間規制を緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

労働時間規制を緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明


本年4月3日、政府は、「労働基準法等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)を閣議決定した。

まず、本法案は、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を創設し、高度専門的知識を要する業務において、年収が平均給与額の3倍の額を相当程度上回る等の要件を満たす労働者については、労働基準法で定める労働時間並びに時間外、休日及び深夜の割増賃金等に関する規定を適用しないものとしている。この制度について、当連合会は、2014年11月21日付け「労働時間法制の規制緩和に反対する意見書」において、長時間労働の蔓延、過労死及び過労自殺が後を絶たない深刻な現状において、更なる長時間労働を助長しかねない危険性を有することから、これに反対する意見を述べたところである。本法案においても、事業主は時間外労働に対する割増賃金を支払う必要がなくなり、長時間労働に対する歯止めが一層かかりにくくなることや、対象業務の範囲や年収要件の詳細が省令に委ねられ、対象範囲が容易に拡大される恐れがあることなど、依然として重大な問題が残されたままである。

また、本法案は、企画業務型裁量労働制について、対象業務を拡大するとしている。当連合会が、2013年7月18日付け「『日本再興戦略』に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書」においても述べたとおり、裁量労働制によれば、労働の量や期限は使用者によって決定されるため、命じられた労働が過大である場合、労働者は事実上長時間労働を強いられ、しかも労働時間に見合った賃金は請求し得ないという問題が生じる。よって、長時間労働が生じる恐れのある裁量労働制の範囲の拡大は慎重に検討されるべきである。

なお、政府は、上記制度の創設や見直しと同時に、働き過ぎ防止のための法制度の整備を本法案の目的として掲げている。しかし、本法案には、労働時間の量的上限規制や休息時間(勤務間インターバル)規制のように、直接的に長時間労働を抑止するための実効的な法制度は定められていない。我が国では、一般労働者(フルタイム労働者)の年間総実労働時間が2013年時点で2000時間を超え(第103回厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会資料及び厚生労働省「毎月勤労統計調査」から)、他の先進国と比較して異常に長く、労働者の生命や健康、ワークライフバランス保持、過労自殺及び過労死防止の観点から、長時間労働の抑止策は喫緊の課題であるが、これに対する実効的な制度が定められていないことは大きな問題である。

よって、当連合会は、本法案が、長時間労働の実効的な抑止策のないままに労働時間規制を緩和しようとすることに反対する。

2015年(平成27年)4月6日
日本弁護士連合会      
会長 村 越   進 

2015年03月25日

自由法曹団、労働者派遣法大改悪法案の3度の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法大改悪法案の3度の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

労働者派遣法大改悪法案の3度の国会提出に抗議し、廃案を要求する声明

1 安倍内閣は、2015年3月13日、労働者派遣を無期限に使用できるようにする労働者派遣法「改正」案を閣議決定し、同日、国会に提出した。これは、2014年の通常国会と臨時国会で2度廃案となった「改正」案を一部修正したものであるが、「生涯派遣・正社員ゼロ」法案という改悪法案の構造は何ら変更されていない。

2 3度目の「改正」案(本「改正」案)は、「厚生労働大臣は、労働者派遣法の運用に当たっては、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」との規定を付け加えている。
 しかし、本「改正」案では、「永続派遣」の仕組みは従来の「改正」案のまままったく変更されていない。本「改正」案では、有期雇用派遣労働者については、派遣先の事業所単位では、3年ごとに過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聴取しさえすれば、労働者派遣を延長できることになっている。聴取した意見が反対意見であっても、延長する理由を説明しさえすれば労働者派遣を延長することができるのであり、これでは永続派遣の何の歯止めにもならない。派遣先の組織(課等)単位では、個人の派遣労働者に上限3年の期間制限があるが、派遣先は、派遣労働者を3年で入れ替えれば、組織(課等)単位でも永続的に派遣労働者を使用することができる。さらに、「改正」案では、無期雇用派遣労働者については、派遣期間制限は一切ない。
 以上のとおり、本「改正」案は、「運用に当たっては、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」との規定に反して、派遣期間制限を廃止し、派遣労働者の永続使用と労働者派遣による常用代替を可能にしており、とうてい容認できない。

3 本「改正」案は、「雇用安定措置の『派遣先への直接雇用の依頼』を省令ではなく法律で規定する」、「雇用安定措置の『新たな派遣先の提供』が派遣労働者の能力、経験等に照らして合理的なものに限る旨を法律で規定する」との修正を加えている。しかし、この修正によっても、「派遣先の直接雇用」や「新たな派遣先での派遣就業」の保障は何らなく、雇用安定措置としての実効性はない。
 逆に、本「改正」案には、「正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、労働者の能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合、新法の規定について速やかに検討を行う」との労働者派遣により常用代替が促進されることを予想し、懸念することを示す附則が付け加えられている。

4 本「改正」案は、1度目、2度目の「改正」案と同様、派遣期間制限を廃止し、現行法の直接雇用(努力)義務を定める規定を縮小、廃止している。これらの内容を見る時、「改正」案が常用代替防止原則と「派遣は臨時的・一時的業務に限る」との原則を廃棄するものであることは明白である。
 自由法曹団は、労働者派遣法大改悪法案の3度の国会提出に抗議し、その廃案を強く要求し、登録型派遣・製造業派遣の全面禁止、業務単位での派遣期間制限の厳格化、派遣労働者の派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を要求するものである。

2015年3月24日
自由法曹団
団長 荒井 新二

2015年03月03日

日弁連、公労使三者構成の原則に則った労働政策の審議を求める会長声明

日弁連
 ∟●公労使三者構成の原則に則った労働政策の審議を求める会長声明

公労使三者構成の原則に則った労働政策の審議を求める会長声明


 2015年2月13日、厚生労働省労働政策審議会(以下「労政審」という。)は、「今後の労働時間法制等の在り方について」との建議をとりまとめた。この建議は、「高度プロフェッショナル労働制」と称する、職務の内容や年収の要件を満たした労働者につき労働時間規制の適用除外とする制度の創設や、裁量労働制及びフレックスタイム制の規制緩和などを内容とする。この建議を受けて、労働基準法改正案が本年の通常国会において提出される予定である。

 上記建議が検討された労政審労働条件分科会においては、労働者委員から「長時間労働を誘発する懸念が払拭できない」など、新制度に反対する意見が繰り返し述べられていた。しかし、こうした労働者側の意見は反映されないまま、2015年1月16日に厚生労働省が発表した骨子案に沿った建議がなされたものである。公益委員案として作成された骨子案に沿って2014年1月29日に労政審労働力需給制度部会が建議した「労働者派遣制度の改正について」と同様の経緯をたどっている。

 労働者委員の意見が反映されない建議が連続する背景には、労政審で審議されるよりも前に、労働時間法制及び労働者派遣制度の見直しの内容と時期が盛り込まれた「日本再興戦略」及び「規制改革実施計画」が、政府の政策方針として閣議決定されているという問題がある。雇用政策を含む重点政策については、政府の諮問機関である産業競争力会議や規制改革会議で議論されているが、その構成員には大企業経営者や労働者派遣事業経営者など使用者側の利益から発言する者が多く含まれている一方で、労働者側の利益を代弁する者は一人もいない。つまり、使用者側の意見のみが反映された政策方針が先立って閣議決定されていることで、労政審において労働者委員が反対意見を述べても、反映されないという状況が続いている。

 ILO第144号条約及び第152号勧告は、労働分野の法律改正等については、政府委員・労働者委員・使用者委員の三者構成による効果的な協議を経て行うことを求めている。しかし、労働時間法制や労働者派遣法のように、我が国の労働法制の根幹をなす法制度の審議に関し、上記のような状況で建議がなされるならば、事実上ILOの要求する効果的な三者協議は骨抜きにされており、産業競争力会議や規制改革会議での審議自体がILOの要求に反している。

 当連合会は、2013年7月18日付け「『日本再興戦略』に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書」において、「規制改革会議や産業競争力会議は、資本家・企業経営者とごく一部の学者のみで構成されており、労働者を代表する者がまったく含まれていない。このような偏った構成で雇用規制の緩和を議論すること自体が不公正であり、ILOが労働立法の根本原理として推奨している政府・労働者・使用者の三者構成主義にも反する。」との意見を述べている。

 当連合会は、公労使三者構成の原則を形骸化する現在の労働政策の審議のあり方に反対するとともに、政府に対し、公労使三者構成の原則に則った公正な審議を求める。

2015年(平成27年)2月27日
        日本弁護士連合会
       会長 村 越   進

2014年03月28日

日弁連、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」に反対する会長声明

日弁連
 ∟●「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」に反対する会長声明

「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」に反対する会長声明

2014年3月7日、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」(以下「法案」という。)が閣議決定され、同日、今国会に提出された。

法案は、国家戦略特別区域法(以下「特区法」という。)附則2条に基づき、5年を超えるプロジェクトに従事する専門的知識を有する有期雇用労働者(第一種特定有期雇用労働者)や定年後に継続して雇用される労働者(第二種特定有期雇用労働者)を、労働契約法18条のいわゆる5年無期転換ルールの例外とし、最大10年まで有期労働契約のままで雇用することを認めるものである。

しかし、少なくとも第一種特定雇用労働者について最大10年の雇用契約を適用することについては、当該労働者の雇用関係を不安定にするおそれがあり、反対である。

労働契約法18条は、有期雇用労働者の雇用の安定を図る目的で昨年4月1日から施行されたばかりであり、適用事例はいまだ1件もない。法案は、この例外を拙速に導入しようとするものであり、労働政策審議会においても、僅か約1か月半の短期間かつ5回の審議のみで、労働者代表委員の反対意見を半ば強制的に打ち切る形で提案された。

そもそも労働政策立法は、ILO諸条約の規定を待つまでもなく、公労使の三者協議を経て決められるべきことが国際常識である。法案に関する手続は、公労使の三者協議の場である労働政策審議会の審議を事実上骨抜きにするものであり、その策定過程は到底容認できるものではない。

また、特区法附則第2条は、特例の対象となる労働者の要件に関して、「その年収が常時雇用される一般の労働者と比較して高い水準となることが見込まれる者に限る」との限定を付している。ところが、法案では、第一種特定有期雇用労働者にかかるこの限定をあえて法律上の要件とせず、厚生労働省令等で定めることができるようにしている。しかも、「年収」の「水準」については一切規定していない。かかる規定では、特区法附則第2条が定めた限定の枠を超えて、省令による特例の適用対象者の拡大が可能となってしまう懸念がある。

当連合会は、2008年10月3日付け「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」及び2012年4月13日付け「有期労働契約に関する労働契約法改正案に対する意見書」などにおいて、期間の定めのない直接雇用を原則的な雇用形態とすべきこと、有期労働契約の対象者を限定し、1年間での無期転換を実現すべきことなどを求めてきた。無期転換権の行使期間を一部労働者に対して10年まで延長する法案の方向性は、かかる当連合会の意見に反するものといわざるを得ない。

したがって、当連合会は、法案に反対するとともに、有期雇用労働者の雇用安定を確保し、同一価値労働同一賃金原則を実現することにより有期雇用労働者の待遇が向上するような方向性での法改正を行うよう強く求める。

2014年(平成26年)3月26日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司

2014年03月19日

自由法曹団、「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要する労働者派遣法大改悪案の国会提出に抗議し、改悪案の廃案を要求する声明

自由法曹団
 ∟●「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要する労働者派遣法大改悪案の国会提出に抗議し、改悪案の廃案を要求する声明

「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要する労働者派遣法大改悪案の国会提出に抗議し、改悪案の廃案を要求する声明


1 安倍内閣は、2014年3月11日、労働者派遣を無期限・無制限に使用できるようにする労働者派遣法「改正」案を閣議決定し、同日、国会に提出した。
 「改正」案は、専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃したうえ、有期雇用派遣労働者に係る労働者派遣について、「派遣先は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。」と定めている。他方、「改正」案は、「派遣先は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴いて、3年の派遣可能期間を延長することができる。その後3年が経過した場合も、同様とする。」と定めている。
 「改正」案は、無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣、有期の事業の開始、転換等のための業務等への労働者派遣には、派遣期間制限を一切設けないとしている。

2 これでは、有期雇用派遣労働者に係る労働者派遣についても、派遣先は、事業所の過半数労働組合等の意見を聴取しさえすれば、過半数労働組合等が反対しても、無期限に労働者派遣を使用し続けることができる。結局、派遣先は、組織単位(課等)が同一でも、3年ごとに派遣労働者を入れ換えて、無期限に労働者派遣を使用し続けることができる。また、派遣先は、組織単位(課等)を変えれば、同一の派遣労働者を無期限に使用し続けることができる。
 「改正」案のもとでは、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、派遣先に直接雇用され、正社員になる機会はほとんどなくなり、生涯派遣労働者のままに置かれることになる。派遣先は、低賃金の派遣労働者を無期限・無制限に使用できることになり、正社員の派遣労働者への置き換えを飛躍的に促進するであろう。「改正」案は、「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要するものであり、廃案しか選択のみちはない。

3 「改正」案は、労働政策審議会の建議の「派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置付けることを原則とする」、「派遣先の常用労働者(いわゆる正社員)との代替が生じないよう、派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とする」との提言を一切無視し、まったく取り入れていない。また、「改正」案は、建議の「派遣労働者に対する雇用安定措置」のうち、「派遣先への直接雇用の依頼」を除外している。
 労働法制の改定は、公労使3者からなる労働政策審議会の提言に基づいて行うのが原則である。「改正」案は、労働政策審議会の建議すら無視しており、この点からもとうてい容認できない。

4 自由法曹団は、安倍内閣による「生涯派遣・正社員ゼロ」を強要する労働者派遣法「改正」案の国会提出に抗議し、ただちに「改正」案を廃案にすることを強く要求する。
 自由法曹団は、「改正」案の廃案を要求し、「登録型派遣・製造業派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇」等の労働者派遣法の抜本改正のため、奮闘する決意である。

2014年3月18日

自由法曹団
団長 篠原義仁

2014年03月12日

労働者派遣法改正案を閣議決定 派遣固定化に懸念の声も

朝日新聞(2014年3月11日)

 政府は11日、企業が自由に派遣労働者を活用できる「期間」や「職種」を広げる労働者派遣法の改正案を閣議決定した。今国会で成立させ、2015年4月からの施行を目指す。

 改正案では、企業が3年ごとに働き手を交代させれば、どんな仕事も、ずっと派遣に任せられるようにする。いまは秘書や通訳など「専門26業務」でない限り、3年までしか任せられなかった規制を緩める。

 一方、人材派遣会社はすべて国の許可制にする。派遣労働者への教育訓練を義務づけ、待遇改善に向けた国の指導も強める。

 改正案をめぐっては、「派遣の固定化につながる」「正社員雇用の枠が狭まる」といった懸念が、労働組合や野党から出ている。田村憲久・厚生労働相は閣議後の会見で「人材派遣会社にも責任を持ってもらい、労働者のキャリアアップをはかってもらう」と改正の意義を強調した。(山本知弘)

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2014年02月21日

自由法曹団、「有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明」

自由法曹団
 ∟●「有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明」

有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明

1 労働政策審議会は、2014年2月14日、田村憲久厚生労働大臣に対し、労働契約法18条に規定された有期労働契約の無期転換ルールの特例等について建議した。安倍内閣は、この建議に基づいて、労働契約法18条の特例を定める法案を作成し、今通常国会でその成立を図り、2015年4月からの施行をめざすとしている。
2 2012年8月3日成立、2013年4月1日施行の労働契約法18条は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的に、同一の使用者との間で有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールを定めている。
 これに対し、労働政策審議会の建議は、この無期転換ルールの特例として、「一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有する有期契約労働者」について、労働者が無期転換権を行使できるようになる期間を「5年超」から「10年超」に延長しようとするものである。また、「定年後引き続いて雇用される有期契約労働者」について、同一の事業主等に継続して雇用されている期間は、無期転換権発生の根拠になる通算契約期間に算入しないとするものである。
3 しかし、通常、5年を越えるような業務は、臨時的・一時的業務であるとはとうてい言えない。「5年超」の期間でも長すぎるのに、この特例が適用されれば、当該労働者は、「10年超」にならない限り、有期のままでの働き方を強いられることになる。さらに、長期にわたって働いたのにもかかわらず、「10年超」になる前に雇止めされる危険もある。このことは、当該労働者が高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有する労働者であったとしても変わりはない。
 また、定年後引き続いて雇用される有期契約労働者であっても、有期労働契約が反復更新されて「5年超」になった時には無期転換権を与えるのが当然である。定年後の継続雇用労働者だからといって、不安定雇用を強いられる謂れはない。
 建議は、有期契約労働者の雇用をますます不安定にするものであって、とうてい容認できない。
4 そもそも、労働契約法18条は、施行後1年もたっておらず、いまだ無期転換権を行使
できる労働者は現れていない。無期転換権行使の実績もなく、その実情の検討もないなかで同条の特例を設けるなど、極めて異常な立法作業である。労働者の雇用の安定を図るという同条の立法目的を骨抜きにする建議であり、とうてい許されない。
5 労働政策審議会の建議は、1か月半程度の審議で、労働者代表委員の「すべての労働者に適用されるものに特例を設けることは慎重であるべきだ。」との意見を押し切って出されたものである。今通常国会に特例法案を提出するために、労働者代表委員の意見を押し切り、審議を短期間で打ち切るなど、手続的にも不当である。
6 自由法曹団は、有期労働契約の無期転換権ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対し、その撤回を求め、今通常国会において本建議に基づく労働契約法18条の改悪をしないよう、強く要求するものである。

2014年2月20日
自由法曹団
団 長 篠原義仁

2014年02月19日

労働政策審議会建議、「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」

労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」(平成26年2月14日)
有期労働契約の無期転換ルールの特例等について(報告)

建議要旨

1.無期転換ルールの特例について
 ○ 特例の対象となる労働者
 (1) 一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者
 ※ 対象者の範囲や年収などの具体的な要件については、法案成立後改めて労働政策審議会において検討
 (2) 定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者

 ○ 特例の対象となる事業主
 対象労働者に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針を策定した上で、この指針に沿った対応を取ることができると厚生労働大臣が認定した事業主

 ○ 特例の具体的な内容 
 (1)の労働者 : 企業内の期間限定プロジェクトが完了するまでの期間は無期転換申込権が発生しないこと(上限は10年)
 (2)の労働者 : 定年後に同一事業主または特殊関係事業主に引き続いて雇用されている期間は、通算契約期間に算入しないこと

 ○ 労働契約が適切に行われるために必要な具体的な措置
 事業主は、労働契約の締結・更新時に、特例の対象となる労働者に対して無期転換申込権発生までの期間などを書面で明示する仕組みとすること

2 改正労働契約法に基づく無期転換ルールの円滑な施行について
 平成25年4月から施行された無期転換ルールについて、無期転換申込権が発生する直前の雇止めについて懸念があることを踏まえ、厚生労働行政において無期転換ルールの周知などを積極的に進めること


2014年01月30日

日弁連、労働政策審議会建議「労働者派遣制度の改正について」に反対する会長声明

日弁連
 ∟●労働政策審議会建議「労働者派遣制度の改正について」に反対する会長声明

労働政策審議会建議「労働者派遣制度の改正について」に反対する会長声明

本日、厚生労働省労働政策審議会は、「労働者派遣制度の改正について」との建議をとりまとめた。この建議を受けて、本年の通常国会において、労働者派遣法を改正する予定とされている。

上記建議は、2013年8月20日に発表された厚生労働省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の報告書(以下「報告書」という。)の考え方を基本的に採用しており、労働者派遣法の根本原則である常用代替防止の考え方を見直し、派遣元で無期雇用されている派遣労働者については、常用代替防止の対象から外すこと、及び、派遣元で有期雇用されている派遣労働者については、①個人レベルで派遣期間を制限することとして、政令指定26業務を含めて、派遣労働者個人単位で上限期間(3年)を設定すること、②派遣期間の上限に達した派遣労働者の雇用安定措置として、派遣元が、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じなければならないこと、③派遣先において、有期雇用派遣労働者の交代によって派遣の継続的受け入れが上限を超す場合には、過半数組合か過半数代表者の意見聴取を義務付けることとしている。

しかしながら、このような建議に基づいて労働者派遣法が改正されることになれば、以下のように、無期か有期かにかかわらず、全ての労働者派遣において常用代替防止の理念は事実上放棄され、企業が一般的・恒常的業務について派遣労働者を永続的に利用できることになり、労働者全体の雇用の安定と労働条件の維持、向上が損なわれる事態となる。

すなわち、まず無期雇用の派遣労働者については、派遣元で無期雇用されているからといって、必ずしも派遣労働者の雇用が安定しているわけでもなく、また労働条件が優良であるわけでもない。実効性ある均等待遇の確保策の導入もないままに、無期雇用派遣労働者について派遣可能期間を撤廃すれば、直接雇用労働者が優良な労働条件を確保されない派遣労働者に置き換えられ、常用代替を促進することになりかねない。

次に、有期雇用の派遣労働者についても、上記①の点は、結局のところ、派遣先・派遣元事業者が3年経過するごとに派遣労働者を入れ替えて派遣労働を継続して使うことが可能となり、やはり常用代替防止の理念は果たされないことになり、派遣労働の固定化につながる。また、上記②の雇用安定措置については、派遣先への直接雇用申入れも、派遣元での無期雇用化も、私法的な効力を付与しない限り、実効性を欠き、多くの派遣労働者が失職することを防止できない。上記③の派遣先での意見聴取も、労働組合等が反対しても使用者は再度説明さえすれば導入できる制度となっており、歯止めになり得ない上、36協定締結や就業規則改定における労働者過半数代表の意見聴取制度が多くの事業場で形骸化してしまっている我が国の現実からすれば、派遣労働者の受入上限をいくらでも延長されるおそれが強く、常用代替防止を図る実効性はない。

以上、直接雇用の原則から導かれる常用代替の防止の理念を軽視する建議は非常に問題だといわざるを得ない。

また、労働政策審議会の議論においては、均等待遇の確保策の導入も議論されたが、上記建議においてはその導入も見送られている。

当連合会は、2013年11月21日付け「『今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書』に対する意見書」において、報告書に示される方向性での労働者派遣法改正に反対するとともに、2010年2月19日付け「労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書」の方向性を提言することを改めて確認した。しかしながら、上記建議の制度改革の方向は、当連合会が上記意見書で述べた常用代替防止の理念を維持すべき等の意見に反するものといわざるを得ない。

当連合会は、上記建議に従った方向性での労働者派遣法改正に反対するとともに、派遣労働者の雇用安定を確保し、常用代替防止を維持するための労働者派遣法改正を行うよう求める。

 2014年(平成26年)1月29日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司

2014年01月16日

自由法曹団、労働者派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める意見書

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める意見書

 2014年1月8日(水)、自由法曹団は、労働者派遣法の改悪の阻止を求めて厚生労働省需給調整課に要請を行いました。
 現在、厚生労働省の労働政策審議会では派遣法の見直しが議論されています。審議会で提出されている公益委員案は、労働者派遣を恒常的・永続的な制度に代えるものであり、そのほかにも登録型派遣・製造業派遣の全面容認、特定行為の解禁等々、極めて多くの問題点を含んでいます。自由法曹団はこの派遣法の大改悪を阻止するのみならず、現在の派遣法の抜本的改正を要求しています。今回の要請では、この公益委員案の問題点を指摘し、労働政策審議会での徹底審議を要請しました。

 意見書本文はこちら


2014年01月09日

自由法曹団、労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、 派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

2014年1月8日


厚生労働大臣
田 村 憲 久 殿
労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会長
鎌 田 耕 一 殿

東京都文京区小石川2-3-28
DIKマンション小石川201号
TEL03-3814-3971
FAX03-3814-2623
自由法曹団
団 長 篠 原 義 仁



1 公益委員案をめぐる審議の状況 公益委員案をめぐる審議の状況
(1)2013年12月12日の労働力需給制度部会
 2013年12月12日に開催された労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、公益委員は、唐突に、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案(公益委員案))」を提示した。
 この公益委員案に対して、使用者委員は「大変評価できる。」(高橋弘行・経団連労働政策本部長)と賛同したが、労働者委員は「無期雇用でもリーマン・ショックで9割以上が雇い止めされた。労組の意見聴取では実効性あるチェックにならない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)、「派遣が例外にとどまらなくなり、使い捨てにされてしまう。」(清水謙一・全建総連書記次長)と反対した。
(2)2013年12月25日の労働力需給制度部会
 次いで、12月25日に開催された労働力需給制度部会で、鎌田耕一部会長は、「部会開催に先がけて、年内の取りまとめに向け、労働者側委員、使用者側委員とそれぞれ議論を行ったが、意見の隔たりが大きく、取りまとめにはいっそうの調整が必要だ。今後の進め方について意見があれば出していただきたい。」と表明した。
 これに対し、労働者委員は、「①有期雇用派遣の期間制限のあり方で、過半数代表者の意見聴取だけになっているが、これでは実効的なチェックができない懸念がある。②無期雇用派遣の労働者の雇用が必ずしも安定しているわけではなく、違法な解雇を回避する手立てが必要だ。③派遣労働者の処遇改善については、均等待遇を求めてきたが、均衡待遇となっており、納得できない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)と、公益委員案に反対し、引き続き審議することを要求した。使用者委員は、「次回、公益委員案に肉付けして合意できる内容をお示しいただきたい。」(高橋弘行・経団連労働政策本部長)と発言している。
(3)徹底審議の重要性
 以上のとおり、公益委員案については労働者委員の強い反対があり、しかもその反対の理由は合理的である。このような状況で審議を打ち切り、公益委員案に基づいて労働力需給制度部会の報告書をまとめることは、とうてい許されない。
 以下、その理由を述べる。

2 労働者派遣を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する公益委員案
(1)労働者派遣を恒常的・永続的な制度に大改悪
ア 歯止めにならない過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取
 公益委員案は、「専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃し、有期雇用の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課等)における派遣受入可能期間は、最長3年とする。この場合、派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないものとするが、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴取すれば、引き続き派遣労働者を使用できる。」、「無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、有期プロジェクト業務等への派遣には、派遣期間制限を一切設けない。」としている。
 上記のとおり、公益委員案では、有期雇用の派遣労働者の場合でも、派遣先は、3年ごとに派遣受入の組織単位(課等)を換えれば、同一の派遣労働者を使用し続けることができる。また、同一の組織単位(課等)への派遣でも、派遣労働者を入れ換えれば永続的に派遣労働者を使用できる。
 派遣先の事業所単位の期間制限にとって、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取は、聴取すればそれで足りるとされるものであり、まったく歯止めにならない。
イ 常用代替防止原則の廃棄
 公益委員案は、「派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。」、「派遣労働者の派遣先での正社員化を推進するための措置を講ずる。」と言っている。
 しかし、公益委員案の提示する制度の下では、派遣先は、派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できるのであり、労働者派遣における常用代替防止原則はないがしろにされてしまう。このような制度の下では、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、直接雇用される契機や機会はまったくなくなり、一生派遣労働者の地位に置かれることになる。
 低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が増大、蔓延し、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を永久に閉ざされてしまうことになる。
ウ 実効性のない雇用安定措置
 公益委員案は、「派遣元は、3年の上限に達する有期雇用の派遣労働者に対し、3 ①派遣先への直接雇用の依頼 ②新たな就業機会(派遣先)の提供 ③派遣元における無期雇用 ④その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかの雇用安定措置を講ずるものとする。」としている。
 しかし、これらの雇用安定措置は強制力がなく、また、従来、①派遣先への直接雇用、③派遣元における無期雇用はほとんど実行されておらず、その実効性には大きな疑問がある。
(2)常用代替防止原則を踏みにじるキャリアアップ措置
 公益委員案は、一方で、派遣先は派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できるとしながら、他方で、派遣元と派遣先が協力して、派遣労働者のキャリアアップ措置を実施すべきとしている。派遣労働者のままでキャリアをアップさせ、正社員と同様の恒常的業務に従事させようという考えである。常用代替防止原則を踏みにじるキャリアアップ措置であり、とうてい容認できない。
 派遣労働者のキャリアアップ措置は、派遣労働者の正社員化のためのものであることを明確にすべきである。
(3)実効性のない均衡待遇原則、均等待遇原則の採用こそ重要
 公益委員案は、派遣労働者の処遇について、均等待遇原則を採用せず、「派遣労働者の賃金について、均衡が図られたものとなるために派遣元及び派遣先が行うことが望ましい事項を指針に規定する。」などと均衡待遇原則を求めるにとどまっている。
 しかし、均衡待遇原則の下では、派遣労働者に対する待遇格差は継続し、低賃金・不安定雇用の労働者派遣はますます増大することになる。貧困と格差の拡大は、派遣労働者の労働条件に最も深刻にあらわれている。この現状を是正するためには、派遣先の正社員との均等待遇原則の採用こそ重要である。
(4)労働者犠牲の登録型派遣・製造業務派遣の全面容認
 公益委員案は、「登録型派遣・製造業務派遣」について、「経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。」としている。
 しかし、登録型派遣は、派遣先からの注文があってはじめて派遣元は派遣労働者と派遣労働契約を締結するのであり、派遣元は、雇用主としての雇用責任をほとんど果たさない。製造業務派遣では、労働災害と労災かくし、派遣切り等が横行している。これらの実態からして、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止が要請されるのである。
 公益委員案は、企業の経済活動の便宜のために、労働者の雇用と労働条件を犠牲にする提言であり、許されない。
(5)特定目的行為まで容認
 公益委員案は、「無期雇用派遣労働者に対する特定目的行為を可能とする。」と、派遣労働者に対する事前面接等を容認している。
 しかし、事前面接等の特定目的行為の下での労働者派遣は、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業そのものであり、とうてい許されない。

3 公益委員案及び労働者派遣法の抜本改についての徹底審議の重要性
(1)公労使の参加する労働政策審議会での徹底審議の重要性
 ア 労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割
 厚生労働省は、労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割について、下記のように説明している。


 「労使参加の下での政策決定―労働現場のルールは、現場を熟知した当事者である労使が参加して決めることが重要となります。国際労働機関(ILO)の諸条約においても、雇用政策について、労使同数参加の審議会を通じて政策決定を行うべき旨が規定されるなど、数多くの分野で、公労使三者構成の原則をとるように規定されています。そのために、労働分野の法律改正等については、労働政策審議会(公労使三者構成)における諮問・答申の手続が必要とされています。」
イ 労働者委員の反対を無視し、押し切って報告書をまとめることは許されない
「1 報告書骨子案(公益委員案)をめぐる審議の状況」で述べたように、現在、労働者委員は、公益委員案に反対している。しかも、その反対理由は、「無期雇用でもリーマン・ショックで9割以上が雇い止めされた。労組の意見聴取では実効性あるチェックにならない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)、「派遣が例外にとどまらなくなり、使い捨てにされてしまう。」(清水謙一・全建総連書記次長)等、極めて合理的である。
 労働者委員の合理的な理由に基づく反対がある中で、その反対を無視し、押し切って労働力需給制度部会の報告書をまとめることは、上記の労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割に反する行為であり、とうてい許されない。
(2)公益委員案の可否及び労働者派遣法の抜本改正の必要性について徹底審議することが重要
 ア 労働者派遣法の抜本改正の重要性
 自由法曹団は、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対し、その撤回を要求する。
 自由法曹団は、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、業務単位での派遣期間制限の厳格化、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求する。
イ 徹底審議こそ重要
 いま、労働政策審議会労働力需給制度部会に求められていることは、労働者委員の反対を押し切って、公益委員案に基づいて報告書をまとめることではない。
 広く、派遣労働者、労働力需給制度部会に労働者委員を出していない労働組合の代表者、法律家団体の代表者等の意見を聞いて、報告書骨子案としての公益委員案の可否と公益委員案の対極にある上記労働者派遣法の抜本改正の必要性を検討することこそ、労働力需給制度部会に求められている。

以上

2013年12月23日

自由法曹団、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

自由法曹団
 ∟●派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する
労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明


1 2013年12月12日に開催された労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、公益委員は、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案(公益委員案))」を提示した。労働政策審議会は、年内にも骨子案にそった答申をまとめ、安倍内閣は、年明けの通常国会に労働者派遣法の「改正」案を提出する予定と伝えられている。

2 骨子案は、「専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃し、有期雇用の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課等)における派遣受入可能期間は、最長3年とする。この場合、派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないものとするが、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴取すれば、引き続き派遣労働者を使用できる。」、「無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、有期プロジェクト業務等への派遣には、派遣期間制限を一切設けない。」としている。
上記のとおり、骨子案では、有期雇用の派遣労働者の場合でも、派遣先は、3年ごとに派遣受入の組織単位(課等)を換えれば、同一の派遣労働者を使用し続けることができる。また、同一の組織単位(課等)への派遣でも、派遣労働者を入れ換えれば永続的に派遣労働者を使用できる。派遣先の事業所単位の期間制限にとって、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取は、何らの
歯止めにならない。

3 骨子案の提示する制度の下では、有期雇用の派遣労働者は、3年ごとに組織単位(課等)を換えて派遣使用されるか、あるいは3年ごとに派遣切りされるか、いずれかの取扱いを受けることになる。無期雇用の派遣労働者は、何らの制限なく、永続的に派遣使用されることになる。骨子案の提示する制度の下では、派遣先は、派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できることになる。このような制度の下では、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、直接雇用される契機や機会はまったくなくなり、一生派遣労働者のままの地位に置かれることになる。
骨子案は、「派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。」、「派遣労働者の派遣先での正社員化を推進するための措置を講ずる。」と言っている。しかし、骨子案の提示する制度の下では、労働者派遣における常用代替防止原則はないがしろにされ、派遣先は、派遣労働者を正社員化する動機や契機がなく、派遣労働者のまま使用し続けることになる。低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が増大、蔓延し、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を永久に閉ざされてしまうことになる。

4 骨子案は、「派遣元は、3年の上限に達する有期雇用の派遣労働者に対し、①派遣先への直接雇用の依頼 ②新たな就業機会(派遣先)の提供 ③派遣元における無期雇用 ④その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかの雇用安定措置を講ずるものとする。」としている。しかし、これらの雇用安定措置は、従来ほとんど実行されておらず、その実効性を期待することはできない。
 骨子案は、派遣労働者の処遇について、均等待遇原則を採用せず、「派遣労働者の賃金について、均衡が図られたものとなるために派遣元及び派遣先が行うことが望ましい事項を指針に規定する。」などと均衡待遇原則を求めるにとどまっている。これでは、派遣労働者に対する待遇格差は継続し、低賃金・不安定雇用の労働者派遣はますます増大することになる。

5 骨子案は、「登録型派遣・製造業務派遣」について、「経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。」としている。企業の経済活動の便宜のため労働者の雇用の安定を犠牲にする提言であり、とうてい容認できない。
 さらに重大なことに、骨子案は、「無期雇用派遣労働者に対する特定目的行為を可能とする。」と、派遣労働者に対する事前面接等を容認している。しかし、事前面接等の特定目的行為の下での労働者派遣は、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業そのものであり、とうてい許されない。

6 自由法曹団は、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対し、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、業務単位での派遣期間制限の厳格化、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求するものである。

2013年12月18日
自由法曹団
団長 篠原 義仁

2013年10月11日

自由法曹団、派遣労働を恒常的・永続的な制度にする労働者派遣法の大改悪に反対する声明

自由法曹団
 ∟●派遣労働を恒常的・永続的な制度にする労働者派遣法の大改悪に反対する声明(2013年9月25日)

派遣労働を恒常的・永続的な制度にする労働者派遣法の大改悪に反対する声明

規制改革会議答申は、2013年6月5日、「『常用代替防止』等を見直す」とし、派遣期間の在り方等を検討することを提起した。この答申を受けて、安倍内閣は、6月14日、派遣期間の在り方の見直し等を含む労働者派遣制度の見直しを閣議決定した。厚生労働省に設置された今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会は、8月20日、報告書を発表した。これらの答申、閣議決定、報告を受けて、現在、労働政策審議会は、労働者派遣法の改定案を年内に取りまとめ、政府は、来年の通常国会に労働者派遣法の改定案を提出する予定と伝えられている。

労働者派遣制度の在り方に関する研究会(在り方研)報告は、冒頭、「我が国の労働市場・経済活動において、労働者派遣制度は労働力の迅速・的確な需給調整という重要な役割を果たしている。こうした役割を評価し」と述べている。しかし、これは、低賃金・不安定雇用の労働者派遣の実態をみない、労働者の雇用と労働条件の保護に逆行する評価である。 在り方研報告は、「常用雇用代替防止は、派遣先の常用労働者を保護する考え方であり、派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない面がある。」として、「無期雇用派遣については、今後の常用代替防止の対象から外す」、「有期雇用派遣については、これまでと同様、常用代替防止の対象として一定の制約を設けることが適当」としている。しかし、常用代替防止とは、「派遣労働者を常用労働者の代わりに使用してはならない」という原則であり、1~3年の期間制限を超えて派遣労働者を使用する場合には、派遣先は派遣労働者を正社員にする義務があるという原則であり、今後とも守られるべき原則である。

在り方研報告は、無期雇用派遣については派遣期間制限を一切なくし、有期雇用派遣については3年の派遣期間制限を設けるとしている。しかし、有期雇用派遣の場合でも、派遣先は、派遣労働者を代えれば永続的に労働者派遣を使用することができる。この場合、在り方研報告は、3年の派遣期間制限を超える場合、派遣を継続するか否かについて派遣先の労使がチェックする制度を設けるとしている。しかし、今でも、派遣期間制限違反、偽装請負等の違法派遣が労使のチェックを受けずに横行している実態からして、上記の派遣先のチェックが実効性を持つことは期待できない。

さらに、在り方研報告は、「派遣元は、同一の有期雇用派遣労働者が派遣受入期間の上限に達する場合は、①派遣先への直接雇用の申入れ、②新たな派遣就業先の提供、③派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じなければならないこととする。」としている。しかし、従来、派遣先の直接雇用がまったく実行されず、新たな派遣就業先の提供も実行されないことが多い実態からして、これらの雇用安定措置の実効性もまた期待できない。

安倍政権が押し進める労働者派遣法の改悪のもとでは、一方で、低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が蔓延し、他方で、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を閉ざされてしまうことになる。これでは、直接雇用の原則はますますないがしろにされてしまう。 私たちは、安倍政権が押し進める労働者派遣法の大改悪に反対し、製造業派遣・登録型派遣の全面禁止、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求するものである。

2013年9月25日
自 由 法 曹 団
団 長 篠 原 義

2013年07月24日

「なくそう、貧困と格差!最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」に賛同していただけませんか

2013年7月

「なくそう、貧困と格差!
最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」に
賛同していただけませんか

拝啓
 このたびは突然のお願いごとで恐縮ですが、法定最低賃金の引き上げを求める有識者アピールへのご賛同を、呼びかけさせていただきます。
 この間に進んだ円安と株価の上昇は、輸出産業の一部企業や投機筋には利益をもたらす一方、内需型産業や中小零細企業、国民の暮らしには重い負担となっています。
 賃金はいっこうに改善されないのに、政府は物価上昇政策を打ち出し、消費税増税も実施しようとしています。このままでは、貧困と格差はさらに拡大し、日本経済はデフレ不況からインフレ下の不況へと転落しかねません。
 課題は多々ありますが、特に是正が急がれるのは、フルタイムで就労しても、貧困から逃れられない劣悪な労働条件が広がっている問題です。その主な原因のひとつに、低額すぎる法定最低賃金の問題があります。最高額の東京でも時間額850円、最低の島根と高知は652円で、いまだに600円台の地方が29県もあります。
 安倍政権は参院選を前に、今期の最低賃金については引き上げが必要とのメッセージを出しています。しかし、その一方で、2010年に政府が財界と労働団体代表に呼びかけて合意に至った「雇用戦略対話合意」(できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均1000円を目指す)については、使用者側の意向をふまえて捨て去ろうとしています。
 ついては、この夏、法定最低賃金の金額改定の審議が行われるタイミングに合わせ、最低賃金を積極的に引き上げ、できるだけ早く、一定の生計費を保障しうるレベルにする必要があることを、広くアピールしたいと考えます。
 そこで、先生のお力添えもいただきながら、各界・各方面に、最低賃金の引き上げへの賛同を呼びかけたいと考える次第です。
 なにとぞ、よろしくお願いいたします。

<最低賃金大幅引き上げアピール 呼びかけ人>
雨宮 処凛 (作家・活動家)        井上 英夫 (金沢大学名誉教授)
宇都宮 健児(反貧困ネットワーク代表)    小越 洋之助(國學院大学名誉教授)
竹信 三恵子(ジャーナリスト・和光大学教授) 浜岡 政好 (佛教大学名誉教授)
藤田 実 (桜美林大学教授)        牧野 富夫 (日本大学名誉教授)

※最低賃金大幅引き上げアピール運動事務局 伊藤
〒113-8462 東京都文京区湯島2-4-4全労連会館4F 電話5842-5611

「なくそう、貧困と格差 
最低賃金の大幅引き上げを求めるアピール」運動について

1.賛同の呼びかけ
別紙の「アピール」文書に賛同していただける方々を募っています。
最低賃金の金額改定審議が、中央および地方の審議会で行われる8月末か9月初旬まで実施します。他の先生にもお声かけいただき、広げていただければ幸いです。

2.公表・記者発表
  呼びかけ人・賛同人の一覧をまとめ、呼びかけ人の方々には、できるだけご出席いただいて、目安答申の直前と見込まれる7月末か8月第一週に、厚生労働省記者クラブで会見を行う予定です。最低賃金の大幅引き上げにかかわる考えや、最低賃金と整合性をはかることとされている生活保護の改悪問題について、お考えをご披露いただきたく、お願いいたします。
なお、中央最低賃金審議会の目安答申の日程はまだ固まっていない模様ですが、7月末から8月上旬となりそうです。それを受けた地方の審議会の結論は8月末から9月初旬までかかる見通しですので、その間も、賛同を増やし、アピールによって最低賃金審議会を激励したいと考えています。

3.財政について
呼びかけ人・賛同人の方々に、費用のご負担をお願いすることはいたしません。記者会見等の際の交通費は、「アピール運動」の負担とさせていただきます。

4.事務局について
最低賃金大幅引き上げアピール運動 事務局 伊藤圭一
〒113-8462  東京都文京区湯島2-4-4全労連会館4F
Tel 03-5842-5611, Fax 03-5842-5620,
E-メール minwageup@yahoo.co.jp

日弁連、「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

日弁連
 ∟●「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書


2013年(平成25年)7月18日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨

 政府は,本年6月14日,「日本再興戦略」とそれを受けた「規制改革実施計画」を閣議決定した。「日本再興戦略」においては,産業競争力会議や規制改革会議等の答申を基に,我が国の経済を再生するに当たっての阻害要因を除去し,民需主導の経済成長を実現していくために不可欠であるとして,様々な規制改革・規制緩和が提言されている。経済を新たな成長軌道に乗せるためには,人材こそが我が国の最大の資源であると言いつつ,「多様な働き方の実現」のためとして,多様な正社員モデルの普及,労働時間法制の見直し,労働者派遣制度の見直し等が検討対象とされている(日本再興戦略第Ⅱ一2③)。規制改革実施計画においても,人口減少が進む中での経済再生と成長力強化のため,「人が動く」ように雇用の多様性,柔軟性を高めるものとして,ジョブ型正社員・限定正社員(ジョブ型正社員と限定正社員はほぼ同じ意味で用いられている。以下,両者を併せて「ジョブ型正社員」と記載する。)の雇用ルールの整備,企画業務型裁量労働制等の見直し,有料職業紹介事業の規制改革,労働者派遣制度の見直しが個別措置事項とされている(規制改革実施計画Ⅱ4)。その内容は,現段階ナは抽象的な記載にとどまるが,それらの議論の経過において解雇の金銭決消制度が具体的に検討されたように,労働者の地位を不安定にしかねない制度となる可能性も残っており,参議院選挙後に予定されている具体的な検討において,経済成長の手段として雇用規制の緩和を利用しようする議論が展開されるおそれがある。しかし,日本の労働者の現状は,非正規労働やワーキングプア問題の拡大に代表されるように,窮乏を極めており,雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない。

 そこで,当連合会は,国に対し,具体的な制度改革の実現に当たって,以下の諸点について十分に留意するよう強く求めるものである。
1 全ての労働者について,同一価値労働同一賃金原則を実現し,解雇に関する現行のルールを堅持すべきこと。2 労働時間法制に関しては,労働者の生活と健康を維持するため,安易な規制緩和を行わないこと。
3 有料職業紹介所の民間委託制度を設ける場合には,求職者からの職業紹介手数料の徴収,及び,民間職業紹介事業の許可制の廃止をすべきではなく,労働者供給事業類似の制度に陥らないよう,中間搾取の弊害について,十分に検討,配慮すること。
4 労働者派遣法の改正においては,常用代替防止という労働者派遣法の趣旨を堅持し,派遣労働者の労働条件の切下げや地位のさらなる不安定化につながらないよう十分に配慮すること。


第2 意見の理由

……以下,略……

2010年04月22日

厚生労働省関係の主な制度変更(平成22年4月から実施)について

■厚生労働省

 厚生労働省は14日、改正労働基準法など4月の新年度に入ってから実施される法律や事業のうち、国民生活に特に影響を与える16項目について一覧表をホームページに掲載した。改正労基法のほか、改正雇用保険法、労働時間見直しの改正ガイドラインなどの要点を説明している。

厚生労働省関係の主な制度変更(平成22年4月)について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/04/tp0415-1.html


全労連、「派遣法」改正法案閣議決定に対する労政審意見書についての見解

全労連
 ∟●「派遣法」改正法案閣議決定に対する労政審意見書についての見解

「派遣法」改正法案閣議決定に対する労政審意見書についての見解

全国労働組合総連合(全労連)
常任幹事会

 さる2010年4月1日に開催された労働政策審議会(「労政審」)で、「労働政策審議会による答申等の尊重に関する意見」(意見書)が採択され、長妻厚生労働大臣に手渡された。
 全労連は、労働者派遣法「改正」法案の閣議決定にあたっての事務局長談話(2010年3月19日付)でも述べているように、労働政策の立案過程で政府が公労使三者の合意形成場を設け、その論議の結果を尊重することは、国際的な流れからしても当然のことだと考える。しかし、今回出された労政審の意見書には必ずしも賛同できない部分もあることから、全労連としての見解を明らかにすることとした。……


2010年04月16日

日弁連、真に労働者保護に値する労働者派遣法抜本改正を求める会長声明

日弁連
 ∟●真に労働者保護に値する労働者派遣法抜本改正を求める会長声明

 真に労働者保護に値する労働者派遣法抜本改正を求める会長声明労働者派遣法改正法案(以下「改正法案」という。)が本年4月6日、衆議院に提出された。当連合会は、「労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書」(2010年2月19日)を発表し、この意見書の趣旨に沿った抜本改正を強く求めてきたところである。

 今般、改正法案では、法案要綱段階で盛り込まれていた派遣先による事前面接の解禁については、引き続きこれを禁止とする修正を行ってはいるが、改正法案のままでは、労働者保護に値する抜本改正にはなおほど遠く、法案策定の過程において、法改正を切実に望む派遣労働者の声が十分に反映されていたのか疑問が残る。

 よって、当連合会は、以下のとおりの修正を要請するものである。

 第1に、改正法案では、登録型派遣について原則禁止としながら、政令指定26業務を例外としている。登録型派遣は全面的に禁止すべきである。仮に例外的に専門業務について許容するというのであれば、真に専門的な業務に限定されなければならないにもかかわらず、現行の政令指定26業務の中にはもはや専門業務とは言えない事務用機器操作やファイリング等が含まれており、専門業務を偽装した脱法がなされるなど弊害が大きい。また、これらの業種は女性労働者の占める割合が高く、女性労働者の非正規化、男女賃金格差の温床となっていることからも、厳格な見直しが必要である。

 第2に、改正法案では、本来全面禁止されるべき製造業務への派遣を含めて「常用型」派遣は認められている。ところが、改正法案では「常用型」についての定義規定が定められておらず、期間の定めのない雇用契約のみならず、有期雇用契約も含まれる運用がなされる危険性がある。また、行政解釈では、有期契約であっても更新によって1年以上雇用されている場合や雇入れ時点で1年を超える雇用見込みがあれば、常時雇用として取り扱うとされており、登録型派遣を禁止する意味がない。「常用」については「期間の定めのない雇用契約」であることを法律に明記すべきである。

 第3に、団体交渉応諾義務等派遣先責任を明確にする規定が今回の法案には定められていない点も問題である。派遣労働者は、派遣先の指揮命令下に日々労務の提供を行っているのであり、派遣先が自ら使用する労働者の労働条件改善について一定の範囲で責任を負うべきである。

 法改正は、労働者保護のための規制強化への転換点となるものである。当連合会は、真の派遣労働者の保護ひいてはわが国の労働者全体の雇用の改善に資するよう、派遣労働者の実態を踏まえた修正を求める。

2010年(平成22年)4月14日

2010年04月14日

労働政策審議会による答申等の尊重に関する意見書

■厚生労働省
 ∟●労働政策審議会による答申等の尊重に関する意見

労働政策審議会による答申等の尊重に関する意見

 本審議会は、標記について、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、下記のとおり、意見を申し述べる。
 貴職におかれては、これを踏まえ、労働政策審議会の答申等について、適切に対処されたい。

 昨年12月28日、本審議会が、厚生労働大臣に答申した「今後の労働者派遣制度の在り方について」を踏まえた「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」の要綱について、本審議会は、本年2月17日に厚生労働大臣から諮問を受け、同24日に、全会一致で答申した。
 しかしながら、今般、政府は、この法律案について、3月19日に本審議会の答申とは異なる形で閣議決定を行い、3月29日に、国会に提出した。このような取扱いは、本審議会の答申が、公労使三者により真摯な議論を積み重ね、ぎりぎりの調整を行った結果であることにかんがみれば、遺憾である。
 本審議会が雇用・労働政策の企画立案に不可欠であり、ILOの三者構成原則に基づく非常に重要な意義を有するものであることを踏まえ、本審議会は、政府に対し、労働政策審議会の意見を尊重するよう、強く求める。