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2019年06月09日

一橋大学の教員を退職 教員の分断に翻弄された大学教授の告白

■現代ビジネス(2019年6月9日)

国立大の教員が私立に移るケースが増えている

私事で恐縮なのだが、私河野はこの新年度に、昨年度まで勤めた一橋大学大学院経営管理研究科(旧商学研究科)を退職し、専修大学法学部に着任した。

大学教員がキャリアの間に何度か大学を移ることは珍しいことではない。だが、私の今回の移籍のニュースを聞いた知人の中には「なんで?」という反応をする人もいた。

そう反応した人の言いたいことはなんとなく分かる。つまり、言いにくいことをはっきり言えば、一橋大学といえば研究者が望みうる最高の所属先のひとつであり、なぜわざわざ中堅どころの私学に移籍するのか、と考えたのだろう。これから私が勤める専修大学に対してとても失礼な話だが。

一橋大学の兼松講堂〔PHOTO〕Wikimedia Commons・wiiii氏撮影

しかし、そのように考えるのも無理はないかもしれない。というのも、私の今回のような移籍は、確かに一昔前であればあまりないことだった。

かつて、国立大学から私立大学に移るケースと言えば、国立を退職した教員、もしくは退職直前の高齢の教員が、国立よりも定年が遅い私学に移って、キャリアの最後を過ごす、というのが大勢だったし、今でもある程度はそうしたケースがある。一方で、40代半ばの働き盛りとも言うべき年齢の人間(私は今44歳だ)が同じ異動をするのは、かつてであれば珍しいことだっただろう。

しかし現在においては、私の例はかなり典型的で一般的な現象の一部なのだ。私の直接知る範囲でも、一橋だけではなく東大や東京外国語大学といった国立大から都内の中堅私大(中堅、という言葉が何を意味するにせよ)への異動が多く起きている。今年度、一橋から私大へと「流出」した若手~中堅の教員は私だけではない。そしてそれは、国立大学と、さらに広く大学一般や学問が直面している危機をよく表している。

本稿では、国立大学から私立大学へと移籍した私の体験から出発しつつ、その私個人の体験がここ30年ほどの大学の変化の表現となっていることを示したい。私の異動など非常にローカルな話に聞こえるかもしれない。しかし、これは大学と学問研究一般の危機の問題に、ひいてはこの国の高等教育がどこに向かうのかという由々しき問題につながっている。

この後、具体的に一橋大学の状況を述べ、批判的な視点を提示する。だが、私は一橋とそこで今も働いている人たちを断罪したいわけではない。問題は歴史的かつ構造的であり、一橋大学だけに当てはまるものではないのだ。
「辞めてやる」

さて、まずはとても個人的な告白から。

私は一橋大学に2009年に着任したので、足かけ10年間勤めたことになる。しかし私はその特に後半の数年間、そしてひょっとすると最初からずっと、キャンパスに足を踏み入れると気分は落ち、動悸が高鳴り、最後のころは「辞めてやる」と心の中で唱えることで平静を保つような、危険な精神状態に陥っていた。

ちなみに私は一橋大学法学部の出身であり、この大学の自由な校風、学問的な懐の深さ、私と同様、地方出身者も多い学生たちの雰囲気、そういったものを、人並みには愛しており、2009年に着任した時には、母校に凱旋することに意気揚々としていた。

それが、なぜそんなことになってしまったのか?(私は、国立大学全体の状況を訴えたいのであって、一橋大学やその中の個々人の名誉を傷つけたいわけではない。そのため、以下では個人ができるだけ特定できないような曖昧な形で書く。)

私が着任してそれほどの年月が経っていなかったころのことである。

当時、商学部は新たな英語教育のプログラムを作ろうとしていた。それに関する会議で、座長をしていた先生からの発言に、私は耳を疑った。発言は、その英語プログラムを統括する教員を新たに雇うため、現在すべて埋まっているポストに空きが必要になる、それをどう工面するか、という文脈でなされた。

〔PHOTO〕iStock

座長は、私を含む旧教養課程系(この言葉については後述)の英語教員に対して、「今いる人に辞めろとは言えないので」、「○○さん(上記英語教員の一人)はおいくつでしたか、みなさんの前で年齢を聞くのも何ですが、あと○○年くらいですか」云々と発言した。会議に出ていた数十名の教員の面前での発言である。

つまり座長が言おうとしたのはこういうことだ。国立大学のポストは決められており、大学や学部の恣意で増やすことはできない。しかし、新たなプログラムのためにはポストが足りない。誰か辞めてくれることが最善の策である。ただ、クビにはできないので、定年で辞めるのを待とう、と。

その発言の趣旨は、旧教養課程系の英語教員が座っている椅子を、できれば商学部で自由に使いたいということであり、私は、希望にあふれて着任して早々に、「できればあなたには辞めてもらった方がいいのだが」というメッセージを浴びせられたのである。私の一橋ライフは、これによって決定的に呪われたものになった。

その後私は、自分なりに状況を改善させる努力をしたつもりだが、後述する2015年を経て大学の内外の状況は悪化の一途を辿り、「お前(たち)はいらない」というあのメッセージは、結局私の頭からぬぐい去られることはなく、現在にいたる。それが、私の背中を押したのである。

では、なぜ座長は「お前(たち)はいらない」というメッセージを発したのか。その背景には、この30年間で起きた大学の大きな変化がある。話の鍵は、「旧教養課程」という一語である。経緯を振り返ろう。

大綱化=規制緩和?

「旧教養」というワードは、奇しくも「平成」とほぼ一致するここ30年間の大学改革の歴史にとって中心的な重要性を持っていると、私は考えている。以下は、ここ30年間の国立大学にとって重要な項目のみをピックアップした年表である。

1991年 大学設置基準の大綱化
1996年 東京大学教養学部再編・大学院重点化
一橋大学大学院言語社会研究科発足(学部化はされず)
2004年 国立大学の法人化(国立大学法人法)
2015年 国立大学法人法改正(「ガバナンス」の強調、教授会の議決権剥奪)
2015年6月 文部科学大臣通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(文系取り潰し?)

当面の出発点となったのは1991年の「大綱化」である。大綱化とは聞き慣れない言葉であろう。私も、どう説明すべきかと思い、英語にはどう訳せるのか調べたことがある。すると、大学評価・学位授与機構の英文資料では、なんのことはない、deregulationと訳されているのである。つまり、規制緩和である。

この時に緩和された規制とはなんだったか。それは一般教育(教養教育)と専門教育との区分だった。それまで大学では、2年間の「教養教育」、その後の「専門教育」の区分が義務化されていた。大学設置基準の大綱化は、その区分を、かならずしもしなくてもよいとしたのである。

これは決して、教養と専門の区別を「禁止」するものではなかった。だが、親方(文部省/文科省)にへつらう日本の大学らしく、各大学は雪崩をうって教養部を解体していったのだ(東大の教養学部は例外だろう)。

一橋大学はそのひとつの典型だった。かつて教養部に所属していた教員は、あらためて学部、というより正確には大学院所属に振り分けられた。一橋は商・経・法・社の四学部だが、形の上ではそれらの学部・大学院に所属しつつ、実質上はたとえば一年生に英語を教えるといった従来の教養教育を受け持つという、奇妙な形の教員ポストが生まれたのである。

私のような教員は、この大綱化から生まれたと言ってもよい。私の専門はイギリス文学・文化であるが、商学部に所属しつつ、大学で基本的に教えることが期待されたのは教養の英語だった。

とはいえ、大綱化によって、それまで存在しなかった教養対専門の分断・対立が生まれたという話ではない。その対立はずっとあった。大綱化のポイントは、教養部が解体され、人事権をはじめとする力を失っていき、さらに法人化を経て、現在教養教員のポストが奪い去られつつあるということだ。

ここで強調したいのは、教養教育が消え去ろうとしていることだけではない。問題はその消え去り方だ。現在にそのような影を落としている大綱化が、英語ではderegulation(規制緩和)であること、つまり同時代に日本全体で進んでおり、今も終わっていない新自由主義改革の一部だったことである。それが前述した座長の発言の背後に隠れている事情の一部だ。だが、物語はまだ続く。

大学の二つの市場化

私が言いたいのは、90年代の大綱化が、2000年代の国立大学法人化、そして2015年の国立大学法人法改正と文部科学大臣通知へとまっすぐにつながっているということだ。そしてそれらをつなぐキーワードが新自由主義である。

私が「できれば辞めて欲しい」というメッセージを受け取ることになった事情は、ここまで述べた大綱化に、2000年代以降の大学の新自由主義化、もしくはそこに「緊縮」が加えられた合わせ技によるところが大きい。

大学の新自由主義化とは、平たく言ってしまえば、これまで国が丸抱えで運営していた国立大学の業務を市場化することである。市場化するとは大きく二つのことを意味する。それは大学の世界を「市場のように」運営すること。つまり競争原理や成果主義を持ちこみ、運営や意志決定プロセスに一般企業的な原理を持ちこむこと。

そしてもう一つの意味は、大学に「民間」の参入を促すこと、もしくは言い方を変えると大学業務を民間に切り売りすることである(例えば大学入学共通試験の英語に民間検定試験が参入することや、「実務家教員」の雇用の強制を考えればよい)。

〔PHOTO〕iStock

ここで問題にしたいのは、一つ目の意味での市場化である。国は、大学に定常的に交付していた運営費交付金を原則として年1%ずつ削減し、それに代えて「競争的資金」を獲得することを推奨したり、中期計画を策定してその達成度を査定したりといったことによって、それを推し進めようとしてきた。

後者は要するに、「改革」をより多く達成した大学に高い評価と資金を与えようということである。その「改革」の中にはいわゆる「ガバナンス改革」がある。2015年の国立大学法人法の改正は、教授会の議決権を大幅に削減するなどして、学長の権限を拡大するという「ガバナンス改革」(その内実は、上意下達以外の何物でもない)を進めたという意味で、決定的に重要だった。

このような意味での市場化は大いに結構、と思われる方も多いだろう。非効率であった大学をより効率的に運営し、研究や教育成果を世の中により多く、より良く還元する方法として。

だがそれは、二つの意味で幻想である。大学は効率化などしていない。

「効率化」の大失敗

一つには、現代の新自由主義、つまり「より少ない官僚制度」を原理とする社会は、逆説的にも、「より多くの官僚制度」を必要としてしまうのだ。大学であれなんであれ、これまで競争原理のなかったところに競争原理を持ちこむためには、巨大な評価・査定の制度とプロセスを必要とする。

デヴィッド・グレーバーが『官僚制のユートピア』で述べているように、新自由主義時代はより多くのペーパーワークの時代になってしまった。官僚制度を減らすための原理が巨大な官僚制度を生み出している。

実際、現在の大学教員は外部資金や認証を得たり自己点検評価をしたりするためのペーパーワークに溺れて、研究どころではなくなっている。さながら大学は、その組織自体を維持するためのペーパーワークや会議をすることを目的とした組織、という、「シジフォスの労働(労働をさせられた後に、その成果も過程も否定される苦役)」を地で行くような笑えない様相を呈している。大学は、それ自体を維持するための官僚組織になってしまった。

二つ目は、雇用の崩壊である。定常的な経費が削減される中、大学は、教員であれ事務職員であれ、正規雇用を維持する余裕を失っている。それはとりわけ、一橋大学のような文系の大学では顕著になる。文系大学は人が資本である。たとえば一橋は予算の65%を人件費が占めている。予算削減は雇用を直撃するのだ。

とはいえ、今働いている人間が解雇されるわけではない。人が辞めた際にポストがなくなったり、臨時雇用で補充したり、ということが行われる。教員の雇用が流動化し不安定になると、じっくりと腰を据えた研究がしにくくなる。

その結果は例えば、2015年の、国立大学協会政策研究所所長の豊田長康氏による研究レポート「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」が衝撃的な形で示している。それによれば2002年あたり以降、日本の論文数は停滞・減少し、先進国中でも最も低水準に落ち込んでいる。

例えば、2013年の生産人口あたりの論文数は、日本は31位で「東欧諸国グループに属する」という刺激的な言葉が見える。豊田氏がその要因として挙げるのは、フルタイム研究者の数、公的研究資金の額の減少であり、日本はそこで比較された先進国中で、いずれについても最低水準となっている。これは、明白に、ここまで述べたような改革のみごとな「成果」である。

この二つの問題の両方に関連して、最も深い問題は、大学が、そこで働く人間にとって、所属し貢献すべきコミュニティではなくなりつつある、ということだと思う。自分たちの参加によって、自分たちの意志と意図で大学をよりよいものにしていこう、といった感情は、「ガバナンス改革」という非民主主義化と官僚組織化、そして雇用の不安定化によってどんどん抱きにくくなっている。

そこに属する者が所属の意識を抱かず、自己利益のみを追求するような組織は、実のところ非効率な組織である。国立大学はそのような組織になりつつある。

その結果、大学を利用する側、つまり学生にとって、国立大学は従来の役割を失いつつある。現在、国立大学は我先に学費の増額に打って出ている。これもまた、大学の市場化の結果である。学費だけを見ると、国立大学と私大の差異がどんどんなくなっていくことが予想される。地域や経済事情に縛られた学生にも教育機会を与えるという公教育の役割を、国立大学は捨て去ろうとしているのだ。

分断統治

さて、そのような大きな情勢は、個々の大学ではどのように表れるだろうか。

その表れの一つが、私の経験であった。上記のような緊縮財政に大学が直面する中、旧来からの専門教員と教養教員とのあいだの分断が先鋭化したのである。だがその分断は、対等な分断などではない。実質的に人事権を持たない教養教員は、私が遭遇したような圧力にさらされることになる。

それを後押ししたのが、先の年表に挙げた、2015年6月の文部科学大臣通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」であった。これについては『大学出版』No. 106に文章を寄せたが、この通知は「教員養成系や人文社会科学系学部・大学院〔を〕、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めて大きな衝撃をもたらした。

私はこの通知がその後どれくらいの実効力をもったのかについては確かなことを知らない。しかし、「文系お取り潰し」とも取れるこの通知が、一橋大学のようなまさに「人文社会科学系学部」のみで構成された大学にすでに存在していた上記の分断をさらに悪化させたのは確実である。

それは一種の分断統治だった。現在一橋では英語教育の外注化や第二外国語の必修廃止が進められている。これらは、何らかの教育理念に従ったカリキュラム改革の結果というよりは、ここまで語ったような外的な事情の結果なのだ。

その結果、人文学研究(それは文学部だけではなく、教養系の教員や組織によっても担われてきた)の継承は、危機的なものになりつつある。例えば、上記の記事で述べた通り、英語やフランス語などをまともに翻訳できる人間が──また、まともに翻訳するとはどういうことかを理解している人間が──日本からいなくなるような事態は、誇張ではなく想定される。
「お前は使い捨ての駒だ」

だが、私は人文学の危機だけを言いつのりたいのではない。これが分断統治であるということの意味は、「教養対専門」の対立は、「大学改革」を押し進めるための人為的な対立だ、ということである。確かに私は個人的な恨みを持っている。だがその一方で、私に石を投げた人間たちが、私と同じ苦しみの中にあることは分かっている。

ここまでの文章で伝わっていることを祈るが、教養系・人文系の苦境は、国立大学全体が過去30年間の新自由主義改革で疲弊してやせ細っていることの、ひとつの表現なのだ。それは、新自由主義というウイルスが引き起こした熱の症状なのだ。この熱にうかされているのは、大学全体である。

これが教養・人文教員の問題だけではないことは、私の経験が、私と同時に前年度末で一橋を退職された一橋のある事務職員さんの経験と強く響き合ったことにも示されていると思う。その職員さんは非正規雇用ではあるが、私と同じく10年ほど一橋に勤めていた。

私は私の著書(それがまた、女性が非正規労働者としてかり出されることを問題にした本だったのだが)に興味を持ってくださったのをきっかけにこの方と親しくさせていただいた。だが、彼女が大学を辞める直前につぶやいた言葉は、私に深く刺さった。自分がいかに、「お前は使い捨ての駒だ」という大学上層部からのメッセージにさらされ続け、思っていた以上に心を蝕まれていたのかが分かった、という言葉だ。

私はそれを読んで落涙を止めることができなかった。あなたは、私だ、と思った。

彼女のエピソードについて重要なのは、彼女が一橋をとてもいい職場だと思い、同僚にも恵まれていると感じながら働いていたという点である。それにもかかわらず、彼女は自分が「蝕まれている」ことを発見した。それは、ここに述べたような経緯で大学職員の非正規化が進み、その非正規職員の扱いも捨て駒的になっていった大状況を原因としたのである。

国立大学が、より豊かな探究や学びの場として生まれ変わることはあるだろうか。少なくとも、改革のための改革に奔走させられ、転がる岩を山の上にかつぎ上げ続けるような労働を強いられている間は無理だろう。私は一橋大学を、国立大学を愛していた。愛が深いがゆえに裏切られた時の苦しみも深かった。

転職した事情を、このような感情とともにこの場に晒すことはあまり褒められたことではないだろうし、この文章を書くことで私は学会や大学における立場を確実に狭めてしまうだろう。私の元同僚の一部は、私のことを許さないだろう。

でも、それくらいの犠牲で国立大学の現状を世に少しでも知らしめることができ、その生まれ変わりの可能性を針の先ほどでも開くことができるならと、筆を執った。私は国立大学を去った。そして今願うのは、去ったことを私に後悔させるような場に、国立大学がもう一度なってくれることである。


2019年01月06日

私学ガバナンス強化…違法行為、監事へ報告義務

読売新聞(2019/1/5)

 私立学校のガバナンス(組織統治)強化を目指して文部科学省は、学校法人で違法行為などを把握した理事に監事への報告を義務付けるなど、監事の権限を拡充する方針を固めた。今月召集される通常国会に私立学校法の改正案を提出し、2020年度に施行する見通し。私学のガバナンスを巡っては昨年、汚職事件や入試不正のあった東京医科大(東京)でその欠如が問題視されていた。

 文科省によると、現行法では学校法人の理事が法人内で横領や乱脈経営などの違法行為や、入試不正や不当な人事といった将来、法人に大きな損害を与える恐れのある行為を確認しても、法人を監査する役割を持つ監事に報告する義務はなかった。改正法案では、こうした行為を把握した理事に対し、監事への報告義務を盛り込んだ。


2016年06月23日

高大接続システム改革で「最終報告」公表

全私学新聞(2016年5月23日号二ュース)

高大接続システム改革で「最終報告」公表
文科省会議 二つの「新テスト」を創設
平成29年度初頭に実施方針策定公表

高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革の具体的在り方について審議してきた文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)が3月31日、「最終報告」を公表した。  「最終報告」は、基本理念に当たる「検討の背景と狙い」、その方針に沿い具体的方策を列挙した「高等学校教育改革」、「大学教育改革」・「大学入学者選抜改革」、「改革の実現に向けた今後の検討体制等」で構成されており、このうち「検討の背景と狙い」では、先行き不透明な時代にあっては多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力、混沌とした状況の中に問題を発見、答えを生み出し、新たな価値を創造していく資質・能力が重要で、そのためには高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革が必要と強調。その上で高校教育改革に関しては、教育課程の見直しや、目標に準拠した観点別学習状況の評価の推進(指導要録の改善)、多面的評価の充実、「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の導入等が必要と指摘。同テストについては、高校生の多様性を踏まえ、複数の難易度の問題から学校や受検者(個人での受検も可)が選んで受検(CBT方式での実施が前提)し、基礎学力の定着度合いを段階表示で結果提供。問題については全国の教育委員会や高校等から既存の問題を収集、アイテムバンクに蓄積、良問については類似問題を作成するなどの考えを示している。対象教科は当面、全ての生徒が履修する範囲を上限に、国語、数学、英語(4技能を測定)とし、次期学習指導要領実施後は地理歴史、公民、理科等を追加導入する考え。同テストについては小・中学校の全国学力・学習状況調査(文科省実施)と近い性格のテストとなりそうだ。   また、大学入学者選抜改革に関しては、個別大学における入学者選抜を、多面的・総合的(調査書や活動報告書、面接、集団討論等)に評価する入学者選抜に改善していくこと、AO入試、推薦入試でも「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を適切に把握すること、加えて「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の導入が必要だとしている。同テストでは、知識・技能を十分に有しているかの評価も行いつつ、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価すること、試験の出題科目数についてはできるだけ簡素化すること、マークシート式問題に加え、条件付き記述式問題を導入、英語に関しては4技能を評価するが、民間の資格・検定試験の知見の積極的な活用等を検討する方針。テストの難易度は幅広くし、平成36年度からコンピュータを活用したテストの導入を目指す。テストの複数回実施は当面、見送る方針。両テストの実施主体は大学入試センターを抜本的に改組した新たなセンターとなる予定。 ◇ 文部科学省は4月28日付で高大接続改革の検討・推進体制を公表した。それによると「高校基礎学力テスト検討・準備グループ」(主査=荒瀬克己・大谷大学文学部教授、長塚篤夫・順天中学・高校長も参加)と「大学入学希望者学力評価テスト検討・準備グループ」(主査=岡本和夫・独立行政法人大学改革支援・学位授与機構理事、平方邦行・工学院大学附属中学・高校長も参加)を設け、それぞれ平成29年度初頭に実施方針を策定・公表する。委員は必要に応じ適宜追加される。  また大学入学者選抜方法の改善に関する協議(座長=片峰茂・長崎大学長、長塚校長らが参加)で入学者選抜実施の新ルールの検討、調査書・提出書類の在り方の検討などを行い、大学入学者選抜実施要項の見直しの予告を、29年度初頭を目途に通知する予定。そのほか新テストの実施体制を省内で検討する。こうしたグループ等の検討状況等については、文科省改革推進本部・高大接続改革チーム(リーダー=安西裕一郎・文科省顧問)が把握、フォローアップを行う。

2016年05月30日

中教審 「専門職大学」創設を答申 ITなど即戦力育成

東京新聞(2016年5月30日)

 中教審(北山禎介(ていすけ)会長)は三十日、ITなど成長分野で即戦力となる人材育成を目指し、実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関の創設を馳浩文部科学相に答申した。大学制度に位置付け、「専門職大学」「専門職業大学」の名称案を提示。文科省は二〇一九年春の開学を目指し、法改正や制度設計を進める。大学制度に新たな教育機関が加わるのは一九六四年の短大以来で約半世紀ぶり。
 創設は政府の教育再生実行会議が提言、新成長戦略に盛り込まれていた。大学や専門学校からの移行を想定するが、教員確保や産業界との連携、既存の教育機関との違いをどう出すかが課題だ。
 答申は、ITや観光、農業などの成長分野の現場で、けん引役を担う人材の育成が必要だと指摘。農産物の生産から販売、加工品開発まで手掛ける生産者といった具体例を挙げた。
 新機関は大学相当の四年制課程と、短大相当の二、三年制課程とし、工業高校など専門高校を含む高卒生だけでなく、専門学校生や大学生、社会人などを受け入れる。既存の大学よりも実践を重視し、産業界や地域の関係機関と連携して教育課程を編成。インターンシップ(就業体験)など企業内実習は四年制課程で六百時間以上の履修を義務付け、こうした実習科目が卒業に必要な単位の三~四割以上を占めるべきだとした。企業などで五年以上実務経験がある教員を全体の四割以上とする一方、敷地面積などは弾力的に対応し、大学より小規模での開設が可能とした。
<大学制度> 大学は、学校教育法の第1条で幼稚園や小中高校などとともに、学校の一つとして位置付けられている。「深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的および応用的能力を展開させること」を目的とし、学部などのほか大学院を設置できると規定。別の条文で、大学は「職業または実際生活に必要な能力を育成すること」を主な目的とすることができるとも定めており、この大学の名称を短期大学(短大)とし、学部ではなく学科を置くとしている。

専門職業大学、2019年度創設へ…中教審答申

読売新聞(2016年05月30日)

 文部科学省の中央教育審議会(北山禎介ていすけ会長)は30日午前、職業教育に特化した新たな高等教育機関「専門職業大学」を創設するよう馳文科相に答申した。

 情報技術(IT)や観光、農業など成長分野で即戦力となる人材を育成するのが目的で、文科省は2019年度の開設を目指す。

 大学の改革は、短期大学が制度化された1964年以来55年ぶりとなる。新機関は大学の一形態とされ、専門学校からの移行を見込むほか、既存の大学や短大の参入も認める。履修期間は大学が4年、短大が2~3年で、「学士」か「短期大学士」の学位が与えられる。高校卒業者だけでなく、他大学からの編入も可能。社会人にも門戸を開き、入試で実務経験も考慮される。

専門職大学創設を答申 中教審、ITなどで即戦力育成

中日新聞(2016年5月30日)

 中教審(北山禎介会長)は三十日、ITなど成長分野で即戦力となる人材育成を目指し、実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関の創設を馳浩文部科学相に答申した。大学制度に位置付け、「専門職大学」「専門職業大学」の名称案を提示。文科省は二〇一九年春の開学を目指し、法改正や制度設計を進める。大学制度に新たな教育機関が加わるのは一九六四年の短大以来で約半世紀ぶり。

 創設は政府の教育再生実行会議が提言、新成長戦略に盛り込まれていた。大学や専門学校からの移行を想定するが、教員確保や産業界との連携、既存の教育機関との違いをどう出すかが課題だ。

 答申は、ITや観光、農業などの成長分野の現場で、けん引役を担う人材の育成が必要だと指摘。農産物の生産から販売、加工品開発まで手掛ける生産者といった具体例を挙げた。

 新機関は大学相当の四年制課程と、短大相当の二、三年制課程とし、工業高校など専門高校を含む高卒生だけでなく、専門学校生や大学生、社会人などを受け入れる。既存の大学よりも実践を重視し、産業界や地域の関係機関と連携して教育課程を編成。インターンシップ(就業体験)など企業内実習は四年制課程で六百時間以上の履修を義務付け、こうした実習科目が卒業に必要な単位の三~四割以上を占めるべきだとした。

新しい高等教育機関「専門職業大学」創設を答申

NHK(5月30日 14時56分)

専門的な技術や知識を持つ人材を育てるため、中教審=中央教育審議会は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関「専門職業大学」を創設するよう30日、馳文部科学大臣に答申しました。
政府の教育再生実行会議の提言を受けて、中教審は、専門的な技術や知識を持つ人材を育てるための新たな高等教育機関の創設について、特別部会を設けて検討を進め、30日北山禎介会長が馳文部科学大臣に答申しました。
それによりますと、新たな教育機関は2年制から4年制とし、高校を卒業した人や学び直しを目的とした社会人を対象にするとしています。また教員は、企業の社員など現場での実務経験がある人として、学問と技術の両方を学ぶほか、卒業に必要な単位のうち3割から4割以上は、企業でのインターンシップなど実習や演習を義務づけるということです。そしてこの教育機関を卒業すると、大学や短大と同じように学位が取得できるようにするとしています。
文部科学省は30日の答申を受けて3年後の平成31年をめどに新たな教育機関の創設を目指すことにしていて、今の専門学校や短期大学などが移行すると見込まれています。文部科学省は今後、必要な法改正などに向けて、準備を進めることにしています。


2016年05月25日

中教審、「専門職業大学」創設の答申案 即戦力を養成

毎日新聞(2016年5月25日)

 中央教育審議会(中教審)の特別部会は25日、企業で即戦力となる人材の養成を目指して職業教育に特化した新たな高等教育機関の創設を求める答申案をまとめた。専任教員の4割以上を企業などでの勤務経験が5年以上ある「実務家教員」とすることなどが柱。30日の中教審総会で馳浩文部科学相に答申し、文科省は2019年度の開設を目指して必要な法改正をする方針。

 実現すれば1964年の短期大学(短大)の制度化以来、約半世紀ぶりの高等教育制度の抜本改革となる。既存の専門学校からの移行や、大学、短大が一部学部・学科を転換して参入することが見込まれている。

 新機関は大学や短大と同じ位置づけで、大学相当は4年制、短大相当は2?3年制。名称は「専門職業大学」「専門職業短期大学」などを軸に文科省が検討している。大学や短大同様「学士」や「短期大学士」の学位を与える。

 通常の大学で学ぶ一般教養や理論に加え、実践を重視する。4年制の場合、企業実習(インターンシップ)などの実践を600時間以上課す。情報技術(IT)や観光、農業などの分野で主導的役割を果たす人材を養成し、工業高校や商業高校など専門高校卒業生のほか、社会人の入学も見込む。新機関は現在の大学などと同様、公費助成の対象にする。教育の質の確保▽実務経験のある教員の採用▽卒業後の生徒を受け入れる産業界との連携??などが課題となる。

 職業教育に特化した高等教育機関の創設は政府の教育再生実行会議が14年7月に提言。15年4月、当時の下村博文文科相が中教審に制度設計を諮問した。

 特別部会委員で新機関の創設に批判的な金子元久・筑波大特命教授は、新機関の創設は専門学校が以前から国に強く求めてきたと説明。「現在は大学でも職業教育に力を入れており、既存の大学や大学院の充実を図るべきだ。専門分野への特化は途中での進路変更が難しくなるという問題もある」と指摘した。


2016年04月11日

実践的な職業教育を行う 新高等教育機関特別部会

全私学新聞(2016年3月23日)

実践的な職業教育を行う 新高等教育機関特別部会
審議経過報告」まとめる 今後は団体ヒアリング等を実施

中央教育審議会の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会」(部会長=永田恭介・筑波大学長)は3月15日、文部科学省内で第12回会合を開いた。この日の議論を経て審議経過報告が完成に至り、18日の大学分科会で報告された。今後はパブリックコメントで広く意見を募り、さらに各種団体からのヒアリングを実施する予定。  審議経過報告は「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化について」と題し、職業人養成の現状と課題を整理した上で、新高等教育機関の制度化の方向性や具体的な制度設計を示している。  審議報告は職業人養成について、「専門分野における高度で実践的な専門性」と「専門の中で閉じることなく、変化に対応する能力や、生涯にわたり学び続けるための力」を備えた人材が今後求められる、との現状認識に立って、「職業実践知の教育に軸を置きつつ、学術知の教育にまで至る、実践的な職業教育に最適化した高等教育機関」の創設が効果的と考えられる、としている。産業界・地域等との連携を重視し、教育課程の編成等について連携体制の整備を義務とするほか、学生のインターンシップへの参加、実務家教員の受け入れなども積極的に行う。修業年限は社会人の学び直しなども考慮し、4年制(前期・後期の区分制課程を含む)、2年または3年制と複数導入。大学体系に位置付けられ、修了者には学士相当または短期大学士相当の学位を授与する。ただしこれは、現行の短期大学士の学位、準学士の称号との関係に留意して検討する必要がある、としている。情報の公表や認証評価も大学等と同様に義務付けられるが、校舎面積などについては小規模な基準の整備も検討される。設置に関しては、既存の大学・短大が「一部の学部や学科を転換させる等により、新たな機関を併設することも可能とする必要がある」とする。  この日の議論では「実務家教員のことが書かれているが、教員だけでなく職員についてもどのような人材が必要かの規定が必要では」「結果が重視される教育機関であるべきで、過去の制度にとらわれない方がいい」「インターンシップについては現場を知ることの価値の再定義がほしい」などの意見が委員から出たが、大きな反対はなく、細かな修正を座長一任としてこの審議報告を了承した。

高大接続システム改革会議 最終報告案を審議

全私学新聞(2016年3月23日)

高大接続システム改革会議 最終報告案を審議
次回で今後の検討体制含め最終報告取りまとめへ
「高校基礎テ」の問題例も提示

文部科学省の高大接続システム改革会議(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は3月11日、同省内で第13回会議を開いた。会議では文科省から「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題作成イメージ例と同会議の「最終報告案」が示され、議論が行われた。このうち「最終報告案」については、先の見えない時代だからこそこうした改革が必要なことなど報告案の序論というべき「検討の背景とねらい」をもっと丁寧に書くべきだなど、多くの委員からさまざまな意見が出された。今後、同省による修文作業を経て次回会議(日程未定)で最終部の「改革の実現に向けた今後の検討体制等」について新たに審議した後、最終報告として取りまとめる予定。

最終報告案は、昨年9月の「中間まとめ」に、同会議の二つのワーキンググループのまとめ、中教審の他の部会の審議状況等を加味して作成された。構成は、「Ⅰ検討の背景とねらい」、「Ⅱ高大接続システム改革の基本的な内容・実施方法」、「Ⅲ高大接続システム改革の実現のための具体的方策」、「Ⅳ改革の実現に向けた今後の検討体制等」の4章立て。Ⅲの具体的方策の中で、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を含む高校教育改革、大学教育改革、個別大学における入学者選抜改革や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入を含む大学入学者選抜改革を取り上げている。  内容的にはこれまでの検討段階と大きな変更点はないが、委員からは、「従来の履修主義から修得主義的なものに移行するということを書いてほしい」「全国から収集、精査・蓄積したテストを全国の高校が定期テスト等に使えるようにしてほしい」「夢のよう(な計画)だが、どう実現するか見えてこない」などさまざまな意見が出された。  一方、問題作成イメージ例については、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の当初の対象教科となる「国語」、「数学」、「英語」の問題例が提示された。このうち「国語」、「数学」では学校祭のPTAバザー企画や総合感冒薬の説明書を題材にした「生活との関わりをより意識させる問題例」、「文章を読んで設問に解答するオーソドックスな形式の問題例」、「義務教育段階の学び直しの観点から、高校段階でも確認しておくことが必要な事項の問題例」「義務教育段階の正答率から、高校段階でも引き続き指導が必要な事項の問題例」の4パターンが示された。「英語」に関しては、聞く、読む、書く、話す、の4技能の問題例が提示された。こうした問題例について委員からは、「細やかなテストの作りがいい。PISA型の問題も参考にしてほしい」「生徒がどこでつまずいたか分かりやすい」「高校1年生で(あるレベルのテストを)クリアすると、次はレベルアップしたものを受けるのか」「習熟度検定のようになって、教科別習熟度別クラスが広がっていくのではないか」など、評価するとの意見が数多く聞かれた。同テストについては、アイテムバンクに蓄積された大量の問題群から複数レベルの問題のセットを構築、学校がその中から適切なものを選び受検できる仕組みとなる(個人も受検可)。1科目のテスト時間はおおむね50~60分程度が基本だが、課題を抱える生徒向けに短いテスト時間の問題も考慮される。


2016年03月12日

私大への補助金、3174億円に減少 15年度

日経(2016/3/11)

 日本私立学校振興・共済事業団は10日、私立の大学や短大、高等専門学校への2015年度の経常費補助金が計約3174億2千万円になると発表した。前年度から約39億円減った。大学566校、短大308校、高専3校に交付する。

 学校法人の前理事長らに勤務実態の伴わない給与など約9900万円の不正支出があった嘉悦大学(東京都小平市)は50%減。学校法人の元学園長が私的流用をしていた西武文理大(埼玉県狭山市)、裏金問題が発覚した中学・高校と同じ法人が運営する大阪産業大(大阪府大東市)はそれぞれ25%減額された。


2016年02月13日

実践的な職業教育行う新たな高等教育機関創設を

NHK(2月12日)

文部科学省の審議会は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を3年後をめどに創設し、大学を卒業したのと同じように学位を取得できるようにするという基本方針を示しました。
これは政府の教育再生実行会議の提言を受けて文部科学省の中教審=中央教育審議会が検討を進めているもので、12日開かれた特別部会で基本方針が示されました。
それによりますと、技術革新やグローバル化に伴い働くのに必要な知識や技術が複雑化、高度化しているとして、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を3年後の平成31年春をめどに創設するとしています。
新しい学校は、2年制から4年制で、高校の卒業生や学び直しを目指す社会人を対象とし、職場実習を行ったり企業の社員を講師にしたりして、学問と技術の両方を学ぶほか、卒業すれば大学と同じように学位を取得できるようにするということです。
特別部会の委員で、大学教育に詳しい筑波大学の金子元久特命教授は、「職業が多様化するなか高等教育の在り方も変化が求められているが、新しい教育機関の役割や従来の大学との違いについてさらに議論が必要だ」と話しています。
中教審はことし夏ごろに最終的な方針をまとめ答申することにしています。

ニーズへの疑問も

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の創設は、政府の教育再生実行会議で提言され、ことし閣議決定された成長戦略の実行計画にも盛り込まれました。職業教育はこれまで専門学校を中心に行われてきましたが、専門学校は国の認可が必要ではないなど大学や短大に比べて設置基準が緩いため、教育の質にばらつきがあると指摘されてきました。また、大学でも卒業後の進路を見据えた授業は増えてきていますが、まだ十分ではないとして、文部科学省は新たな高等教育機関で企業などと連携した授業を行い、高度な実務能力を持つ人材を育成したいとしています。
ただ、少子化が進むなかで新たな教育機関へのニーズがどれほどあるのか、専門家の間からは疑問視する声も上がっています。文部科学省によりますと、18歳人口は今年度の時点でおよそ120万人とこの20年で57万人少なくなり、私立大学のおよそ4割は定員割れとなっています。さらに、今ある大学や専門学校と差別化できるのかや、教員や教育の質をどのように確保するのかといった課題も指摘されています。文部科学省は「専門学校や短大などが新しい教育機関に移行することを想定しており、社会人も入学できるようにする。少子化のなかで学校の数が増え続け、運営に行き詰まるケースが相次ぐとは考えていない」としています。


2015年11月12日

日本科学者会議、声明「危機的状況にある大学と学問・研究の現状打破のために」

日本科学者会議
 ∟●危機的状況にある大学と学問・研究の現状打破のために

危機的状況にある大学と学問・研究の現状打破のために

 わが国の大学と高等教育が大きな曲がり角に直面している。日本科学者会議は、これまでにも繰り返し、政府・文科省の大学政策に批判的な立場を表明してきた。しかし、事態は改善されないばかりか、ますます危機の度合いを深めてさえいる。

(1) 現時点で、われわれがもっとも危惧するのは、以下の3点である。まず第1に、本来それぞれの大学構成員が自主的かつ民主的な討議や手続きを経て確認し、実行に移していくべき大学のあり方、使命、運営方針などが、トップダウン式の管理運営という学長をはじめとする役員会などの執行部の専権事項とされる傾向が強まっていること、そして、本年4月の改定学校教育法・国立大学法人法の施行によってその方向が決定的となったことをあげなければならない。大学の自治、学問の自由の担い手が教職員、学生を含めた構成員であることなど、一顧だにされない、そんな大学が確実に増えているのである。

 第2には、こうした方向性が、政府・文科省の政治介入や財政誘導によって誘導されており、個々の大学等の執行部においてすら、自主的な判断で独自の展望をもって当該大学のあるべき方向性を打ち立てることができないという深刻な事態に至っていることである。去る6月に文部科学大臣の名で出された「国立大学法人等 の組織及び業務全般の見直しについて」の通知は、事態の重大さから、人文・社会系学部等の廃止や他の分野への転換を強制するものだとして社会的にも強い批判が寄せられ、そうしたなか、文科省も「誤解を招く文章だった」とトーンダウンの説明に転じ、経団連も文系軽視すべきでないとする談話を公表するなど、事態の収拾に努めざるをえないなど一定の変化を作り出してはいる。しかしとはいえ、文科省自体は先の文書の撤回にはいっさいふれていないし、財界にあっても正規・非正規の雇用、正社員相互間の分断などの労働政策、人材養成を見れば、額面どおりに理解するわけにはとうていいかない。第3期中期目標・中期計画素案では、文系学部の見直しを計画している大学が26大学に及んだことも報道されている。各大学の自主的な改革こそが基本におかれ、それと同時に大学の社会的役割や21世紀における大学・高等教育のあり方を、政府や財界から独立した広く国民的レベルで検討する機会も保障されなければならない。この点で、今月15日の日本学術会議幹事会声明の提言を支持するものである。

 第3は、安保法制(戦争法)の強行「採決」による「戦争のできる国」への急激な転換が、これまた法の施行前であるにもかかわらず、強権をもって推し進められていることと連動するかのように、大学における軍事研究が現実の問題として懸念されるに至っていることである。防衛省が募集した研究費交付事業には、残念ながら大学等から58件の応募があったとされる。「デュアル・ユース」とか「研究者の研究の自由」の名であいまいにされていい問題ではない。大学における軍事研究の拒否は、とりわけアジア太平洋戦争時における痛苦の経験から学んだわが国における大学と学問研究がようやくにしてわが物とした、ないがしろにされてはけっしてならない財産でもある。同時に、各大学と個々の教員は、予算削減により、研究費は本意ならずとも大変な苦労をして獲得する外部資金に頼らざるを得なくなっている実情も看過できない。国公私立を問わず、大学の予算は極めて厳しい環境を強いられており、学費値上げということになれば、学生の学ぶ権利さえ危ぶまれることになる。この苦境から逃れるためには、文科省や財務省の圧力を跳ね返し、国の高等教育予算のあり方を根本から見直されネければならない。

 日本科学者会議は、現在、大学の直面している現状や課題について広くアンケートを実施し、平和と真理の砦としての大学を取り戻し、学生が人として市民として豊かな教養と専門的素養を身につけ、そして大学が、総体として「知の拠点」たるべく、社会が解明や対応を求める諸課題に持続的に、かつ勇躍して挑んでいく、そのような使命と理念をもって、今日と明日の大学と学問研究を構築することを目指している。この課題は、すべての大学関係者、教育や学術研究にかかわる諸団体・機関や広範な国民各層の共同の取組によってこそ成し遂げうるものであることはいうまでもない。

 安保法(戦争法)案反対の国民的運動が大きく盛り上がるなか、大学においても学生と教員の新たな共同の輪と信頼の絆が形成され、今も確実に拡がり、強まっている。こうした新しい条件を生かすことによって、国民の付託に応え得るような真の大学改革が進むことが求められている。日本科学者会議は、その一翼として、現在の状況に真摯に向き合い、大学と学問研究の自主的民主的な発展のために力を尽くすものである。

2015 年 10 月 25 日
日本科学者会議常任幹事会

2015年10月29日

医学部定員増の答申、2校の負債率を問題視- 学科設置で海外研修に注文も

CBnews(2015/10/28)

 大学設置・学校法人審議会は27日、私立大7校の医学部定員の増員などを認めるよう馳浩文部科学相に答申した。ただ、このうち2校については、負債率が高いことを問題視。理事が欠員となっている1校に対しても「速やかに補充すること」と注文を付けた。学科設置でも理学療法の海外研修の実行可能性に懸念を示した。【新井哉】

■負債総額900億円超の日本医科大、「適切に負債償還を」

 「申請前年度の負債率が高いことから、負債の減少に努めること」。今回の答申では、日本医科大(東京都文教区)と愛知医科大(愛知県長久手市)の負債率を、「留意事項」として取り上げた。

 日本医科大は2014年度の財産目録に、約1285億円の資産総額に対し、負債総額が約917億円となっていることを記載。答申では、19年度以降の負債償還率が高いことも挙げ、留意事項に「適切に負債の償還を行うこと」と書き込んだ。

 一方、愛知医科大には、負債の減少に努めることに加え、欠員となっている理事の早期補充を要望。このほか、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)に対しても、医療科学部のリハビリテーション学科と臨床工学科、医療経営情報学科の定員超過を是正するよう求めた。

■教員4人で学生80人対応の海外研修、実行可能性に懸念

 答申では、学部の学科を設置する城西国際大(千葉県東金市)と帝京科学大(東京都足立区)に対しても、それぞれ複数の留意事項を挙げ、改善に取り組むことを促した。

 城西国際大福祉総合学部に開設する理学療法学科については、海外研修などに関する5項目の留意事項を提示。必修科目として1年後期に開設する「理学療法海外研修」を取り上げ、学生が十分に「理学療法学」を学んだ後に履修することを要望した。

 また、授業担当教員2人と補助の引率教員2人で80人の学生に対応する計画についても「確実に実施できるかどうか、その実行可能性に懸念がある」と指摘。「何らかの理由で海外研修に参加できない学生がいた場合の措置が不明」とした上で、教員の配置と履修できない学生への措置を十分に検討することも求めた。

■「各教員の担当科目が多い」、教員の研究時間確保を

 帝京科学大医療科学部の医療福祉学科については、留意事項で「全体的に各教員の担当科目が多く、精神保健福祉士関係の科目も特定の教員に過度に偏っている」と指摘。「実習指導教員の非常勤採用を計画的に行っていく」との大学側の説明に対しても、実習指導以外の教員の計画的配置を行い、教員の研究時間の確保を図るよう要望した。

 答申内容は次の通り。【私立大医学部の収容定員増加】帝京大2人▽日本医科大2人▽愛知医科大2人▽藤田保健衛生大5人▽埼玉医科大(埼玉県毛呂山町)1人▽順天堂大(東京都文京区)3人▽東海大(神奈川県平塚市・伊勢原市)3人【私立大の学科新設】城西国際大(福祉総合学部理学療法学科=80人▽帝京科学大(医療科学部医療福祉学科=80人、3年次編入10人)


2015年09月09日

私立大学国立大との格差是正を、全私学連合 予算、税制で要望書まとめる

私立大学国立大との格差是正を
全私学連合 予算、税制で要望書まとめる
私立中学生へ公的支援制度創設
寄附促進のための措置拡充を

 全私学連合(清家篤代表=慶應義塾長)は、7月29日、「平成28年度私立学校関係政府予算に関する要望」と「平成28年度私立学校関係税制改正に関する要望」を決定、同日、文部科学省や文教関係議員等に提出した。今後、文部科学省内で平成28年度予算概算要求づくりや税制改正要望づくりが本格化し、8月末日までに財務省に提出される予定。

 「平成28年度私立学校関係政府予算に関する要望」は、①私立大学関係予算要望②私立高等学校等関係予算要望③私立幼稚園関係予算要望④日本私立学校振興・共済事業団要望⑤一般財団法人私学研修福祉会研修事業要望からなっている。

 このうち私立大学関係は七つの最重点要望と八つの重点要望項目を掲げている。最重点項目は、①私立大学の経営基盤強化に向けた支援の拡充・強化(国私間における格差是正、消費税引き上げに伴う負担軽減をはじめとする公財政支出の見直し・拡充)②学生の修学上の経済的負担の軽減に係る支援の拡充・強化(私立大学生の修学上の経済的負担軽減のための就学支援金制度の創設など)③学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換に対する支援の拡充(少人数授業や双方向授業を実施する学習施設や図書館機能を強化する教育施設整備に係る支援など)④地方創生に係る私立大学の取り組みへの支援の拡充(地方活性化に貢献する人材の育成のための支援の拡充など)⑤大学改革の推進に係る支援の拡充・強化(生涯教育、グローバル化、教員養成、課外活動〈スポーツ活動等〉等に係る支援の拡充⑥学生の生命を守る安全・安心な教育研究環境の実現に係る支援の拡充(私立大学の耐震改築、耐震改修、防災に係る支援の拡充など)⑦東日本大震災の復興等に係る支援の継続・拡充等(被災学生に対する授業料等減免措置の継続・拡充及び給付型奨学金制度の創設)。この要望の中では、学生1人当たりの公財政支出額が国立大学180万円に対して私立大学は14万円(平成25年度)にすぎないこと、学生に対する授業料減免でも国私間に大きくな開きがあり、耐震化でも国立大学は全額補助、私立大学は2分の1補助と違いは大きく、国立大学の耐震化が平成27年度にも完了予定なのに対して、私立大学の耐震化完了にはなお約1200億円の予算措置が必要だと訴えている。

 私立高等学校等関係予算要望では、①私立高等学校等の経常費助成費等に対する補助の拡充強化②私立高等学校等施設設備の整備等に対する補助の拡充強化(私立高等学校等施設の耐震化支援の拡充強化など)③私立学校生徒への修学支援の拡充強化(私立高等学校就学支援金の拡充強化、私立中学校生徒への公的支援制度の創設)④私立学校教員の資質能力向上等のための補助の拡充強化を掲げている。ポイントは国の進める「新しい教育」に必要な経費については全額公費で支援するような制度の導入と、現在、支援の届いていない私立中学校生徒への公的支援制度の創設。高校就学支援金に関しては基準金額の増額と加算措置限度額の引き上げを強く要望している。

 幼稚園関係要望では、私立高等学校等経常費助成費等補助制度(幼稚園分)の拡充(教員の処遇改善への考慮、特別支援教育の一層の充実)、幼稚園就園奨励費補助制度の拡充、私立幼稚園施設整備費補助制度の充実(耐震化補助率の嵩(かさ)上げなど)の実現を求めている。

 私学事業団は、私立学校に対する貸付事業に必要な財政融資資金等の確保等を要望、私学研修福祉会は研修事業の充実・継続のための安定的な財源基盤の強化・支援(財源確保)を要望している。

 一方、税制では寄附促進のための措置の拡充(寄附金所得控除限度額の拡大等)、教育費に係る経済的負担軽減のための措置の創設(教育費の所得控除制度の創設など)、東日本大震災により被災した学校法人の復興のための特例措置の拡充(被災した学校法人に対する寄附の特例措置の拡充など)、学校法人の健全な財政基盤の確立に向けた優遇措置の創設・拡充(消費税率の引き上げに伴う私立学校の負担軽減のための特例措置、受託研究に対する非課税措置の拡充など)を要望している。私立大学における受託研究については平成14年度の税制改正で非課税措置が創設されたが、研究成果の公表という知的財産権に絡む条件が課されており、民間企業との契約でこの条件を満たすのは非常に難しい状況で、非課税措置を活用できない。国立大学は無条件に非課税となっている。


2015年09月01日

文科省、ICTを活用した学びの推進に9億円

RBBToday(2015年8月31日)

 文部科学省は8月28日、平成28(2016)年度の概算要求を発表した。要求額は前年度比9.8%増の総額5兆8,552億円。このうち、ICT活用による学びの環境の革新と情報活用能力の育成に9億円(前年度比2億円増)を盛り込んだ。

 文部科学関係予算5兆8,552億円のうち、文教関係予算が4兆3,704億円(前年度比7.6%増)、スポーツ関係予算が367億円(同26.6%増)、文化芸術関係予算が1,192億円(同14.8%増)、科学技術予算が1兆1,445億円(18.2%増)。教育再生実行会議の提言などを踏まえ、学ぶ意欲と能力のあるすべての子ども・若者、社会人が質の高い教育を受け、ひとりひとりがその能力を最大限伸長できる社会の実現を目指す。

 ICT教育関連では、ICT活用による学びの環境の革新と情報活用能力の育成に前年比2億200万円増の9億1,400万円を計上した。児童生徒の情報活用能力の実現状況の把握や教員のICT活用指導力の向上、ICT支援員の育成・確保を進める。

 このうち、情報通信技術を活用した教育振興事業に前年比6,600万円増の1億7,300万円、ICTを活用した教育推進自治体応援事業に前年度比4,900万円増の2億9,400万円、人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業に1億4,200万円、先進的な教育体制の構築事業に1,900万円増の1億2,600万円、青少年を取り巻く有害環境対策の推進に8,300万円増の1億2,400万円などを盛り込んでいる。

 そのほか、文教関係の新規事業として、「幼稚園教育要領の改訂」に1,500万円、「ロング・アクティビティ・ラーニング推進事業」に1,000万円、「大学等におけるキャリア教育推進のための委託事業」1億円、「専修学校版デュアル教育推進事業」に3億200万円、「学校給食・食育総合推進事業」に2億4,000万円などを計上した。


2015年08月28日

長文記述解答は24年度から=大学入試改革で中間案-文科省会議

時事通信(2015/08/27)

 大学入試改革を議論する文部科学省の有識者会議は27日、大学入試センター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の方式などについての中間報告案をまとめた。2020年度開始予定の新テストは思考力を測るため記述式解答を導入するが、採点負担を考慮し、当初は短文記述で始め、長文記述は新学習指導要領で学んだ生徒が受験する24年度以降とした。年内にも最終報告をまとめる。
 中間案は、難関大学の入試にも新テストを活用できるよう難易度に幅を持たせ、複数正解がある問題や、判断の途中過程を確かめる選択肢などを導入。複数の文章の内容を分析しないと答えが選べない問題などで深い思考力を測るとした。
 新指導要領に応じて科目を見直し、思考力の判定機能も強化するとし、これに伴いより文字数の多い記述解答を導入する。パソコンなどで答える方式の本格実施も24年度以降とした。
 基礎学力の定着を見る「高校基礎学力テスト(同)」は19年度に始めるが、22年度までの4年は試行実施期と設定。この間は、結果は授業改善などに用い、就職や大学入試には利用しないとした。国数英の3科目で始め、23年度から新指導要領に合わせた必修科目を追加する。
 受験者の成績は10段階以上の評価で通知し、順位は示さない。年2回受験できる方式で始め、回数増や学校単位での受験などを可能にする方向で検討する。

東北薬科大医学部を認可=新設は37年ぶり-設置審

時事通信(2015/08/27)

 大学設置・学校法人審議会は27日、東北薬科大(仙台市)の医学部新設を認めるよう、下村博文文部科学相に答申した。医学部の新設は1979年の琉球大以来で37年ぶりとなる。入学定員は100人で、2016年4月の開設と同時に、名称を東北医科薬科大に改める。
 医師の質確保などの観点から、医学部の新設は原則として認められていないが、文科省は13年、東日本大震災の復興支援と医師不足解消のため、東北地方で1校限りの特例を認める方針を決定。3校が応募し、東北薬科大が選ばれていた。
 同大の高柳元明理事長は記者会見し、「ようやく出発点に立った。東北の医療を担う医学部を円滑に立ち上げ、どのように発展・充実させていくか、これからの努力が問われる」と語った。
 医学部を持つ大学は80校となる。設置審は認可に当たり、地域への医師定着など目的の順守や付属病院の人員確保などの留意事項を挙げ、同省は指摘事項が守られているか定期的に点検する。 
 設置審はこのほか、横浜創英大(横浜市)と岐阜医療科学大(岐阜県関市)の私学2校の大学院新設を認可。大学の新設は、滋慶大(大阪市)が申請を取り下げ、約30年ぶりにゼロだった。同省は「審査時間の確保のため申請期間を半年繰り上げたことが影響したのでは」としている。

東北薬科大で「医学部新設」認可へ 琉球大以来37年ぶり 文科省審議会が答申

産経(2015.8.27)

 文部科学省の大学設置・学校法人審議会は27日、東北薬科大学(仙台市)が来春の開設を目指し認可申請していた医学部について、大学設置基準などに適合するとして、下村博文文科相に新設を認めるよう答申した。医学部設置は昭和54年の琉球大(沖縄県)以来37年ぶり。同大学は「東北医科薬科大学」と改称し、東北地方に7大学目の医師養成の拠点が誕生する。

 政府は昭和57年以降、医師の供給過剰への懸念などから医学部新設を制限しているが、今回は東日本大震災に襲われた東北地方の復興促進の観点から特例として認めた。そのため、審査結果に多くの留意事項が設けられたのが特徴的だ。

 答申によると、地域への医師定着や復興支援といった本来の目的の順守▽教育や診療に従事する医師数の確保▽地域の要望を踏まえた病院の特色づくり-など留意事項は13項目に上り、文科省は開設後に各項目の履行状況を調査するとしている。

 同審議会で医学部設置の可否が審査されるのは37年ぶりだったため、特別審査会が設けられ、書類だけでなく実地調査などより慎重な審査が行われた。

 同大学は現在、医学部付属病院に必要とされる病床数を確保するため、NTT東日本東北病院(仙台市)と譲渡交渉などを進めている。

 同審議会は27日付で、同大学を含む公私立の大学・大学院・短大で計46件の学部や学科、研究科などの設置を「可」と答申した。


2015年08月02日

人文系学部廃止要請に批判相次ぐ 日本学術会議が討論会

朝日新聞(2015年8月1日)

 国立大に人文社会・教員養成系学部の廃止などを求めた国の通知について、2千人以上の研究者でつくる日本学術会議が7月31日、討論会を開いた。「現実の問題に対処できる教養は人文系の学問で育つ」など国への批判的な意見が相次ぐ一方、「人文系の有用さについて研究者が発信を怠った結果」との指摘もあった。

 会員の大学教授ら約370人が参加。酒井啓子千葉大教授(中東研究)らが「日本から海外へ優秀な研究者が流出しかねない」「『すぐに役立つ学問』がもてはやされる社会全体の風潮を危惧する」などと発言した。

 文部科学省は6月、全国立大学に特色の明確化などを促す通知を出し、特に人文・教育系学部について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組むよう」に求めた。


国立大学の人文社会系見直しで激論 京都でシンポ

京都新聞(2015年08月01日)

 下村博文文部科学相が国立大学に人文社会系学部の組織見直しを求める通知を6月に出したことを受け、今後の高等教育のあり方を考えるシンポジウムが1日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開かれた。文科相補佐官の鈴木寛東京大教授が通知の内容を解説、国立大学関係者は問題点を指摘した。

 鈴木教授は、通知の内容を人文社会系の軽視ととらえる見方について「誤解だ」と否定。その根拠として、通知の基になった「国立大学のミッション(社会的役割)の再定義」という文書では、人文社会系を重視し、充実の方向性を打ち出していることを挙げた。また、人文社会系の大きな課題として、学生数に対して教員数が少ないことを説明し、「人文社会系の教育の質をもっと高めることが必要だ」と指摘した。

 一方、愛媛大の松本長彦前副学長は「現場には人文社会系をつぶせとしか読めない。もっと文言を工夫してほしかった」と苦言を呈した。奈良女子大の小路田泰直副学長は「人文社会系を縮小するつもりはない。理工系の人材を育てるためにも人文社会系は必要だ」と強調した。

 関西の国公私立大学の教員らでつくる高等教育研究会の主催。大学関係者ら約50人が参加した。


2015年07月27日

「人文系見直し」広がる波紋 文科省通達に国立大から異論

京都新聞( 2015年07月26日)

 国立大学に教員養成系や人文社会系の学部・大学院の組織見直しを求めた文部科学省の通達が、波紋を広げている。京都や滋賀では、京都大の山極寿一総長が人文社会系の廃止や縮小に否定的な考えを表明し、滋賀大の佐和隆光学長も国の方針に批判的な立場を取る。一方、地方の国立大学では既に、学部の再編や新設に乗り出す動きがある。

■学長ら批判

 「特に教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」。6月8日、2016年度から始まる国立大学の第3期中期目標を作る際の留意点を伝える通達の中で、文科省は各大学にこう求めた。

 教員養成系を挙げたのは、18歳人口の減少に伴う教員需要の縮小を見越した対応といえる。一方、人文社会系が標的になった背景には経済界の意向が強く働いたとみられている。企業の競争力強化には、理系や実践的な知識を身に付けた人材が必要という考え方だ。

 通達には国立大学の学長から強い異論が出ている。

 京大の山極総長は6月17日の記者との懇談で「大学は今すぐ役立つ人材でなく、未来に役立つ人材を育てるのが使命。人文社会系は教養として重要だ」と力説。多様な知識を身に付けた学生を送り出すためにも、人文社会系は不可欠とする持論を展開した。

 滋賀大の佐和学長は「政府の産業競争力会議に入っている財界人や学者は、人文社会系の教育が産業振興に貢献していないと考えている」と指摘する。世界の大学ランキングで上位に入る英米の大学で人文社会系の教育研究が活発なことを挙げ、「欧州では人文社会系の学問は存在感がある。批判精神のある人間を育てるためだ。国が大学のランキングを上げたいなら、人文社会系にこそ力を入れるべきだ」と訴える。

■交付金への影響懸念

 文科省はこれまでも、国立大学に教育研究の特色や社会的役割を見直すよう求めてきた。その流れを受け、地方の大学では、教員養成系や人文社会系の定員を減らし、国際教育や文理融合などの新学部を開設する構想が相次いでいる。

 福井大は2016年度に「国際地域学部」の開設を予定。既存の教育地域科学部の1課程を廃止して、60人分の定員に回す。宮崎大も教育文化学部の定員をほぼ半分に減らし、定員90人の「地域資源創成学部」の設置を計画する。

 滋賀大も例外ではない。大規模データの解析にたけた学生を育成する文理融合系の「データサイエンス学部」の開設を17年度に目指している。100人の定員は経済、教育の両学部からそれぞれ90人と10人を削減して充てる。

 背景には国立大学の懐事情がある。収益の4割近くは国が支出する大学運営費交付金。しかも国は今後、機能強化や組織改革の取り組み次第で配分額に差をつける方針だ。佐和学長は「何もせずに交付金を削られるのは耐え難い。時代を先取りした新学部開設で前向きに対応する」と話す。

 一方、京大は今のところ、学部や大学院の再編は打ち出していない。教育担当の北野正雄理事は「人文社会系だけを取り出して議論するものではないというのが学内の意見だ。学内全体で教員を柔軟に動かせる仕組みを取り入れ、新たな教育や学問分野をつくる」と説明する。


2015年07月25日

自民党の高大接続改革小委、次々意見聴取

全私学新聞
 ∟●自民党の高大接続改革小委、次々意見聴取

自民党の高大接続改革小委、次々意見聴取
中高連や私大団体連等を対象に
改革趣旨に賛同も 慎重な審議等の要請

 自由民主党の文部科学部会「高大接続改革に関する小委員会」(委員長=小坂憲次・参議院議員)は3月19日に初会合を開いて以降、4月15日に第2回会合を開き文部科学省の前中央教育審議会長で高大接続システム改革会議座長の安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長から「高大接続システム改革とその意義」について意見聴取を行い、5月20日の第3回会合では日本私立中学高等学校連合会、一般社団法人全国高等学校PTA連合会、ベネッセ教育総合研究所の3団体からヒアリングを行った。

 5月27日の第4回会合では、一般社団法人国立大学協会、日本私立大学団体連合会、一般社団法人公立大学協会の大学3団体から高大接続改革に関して意見聴取を行っており、6月3日には有識者からヒアリングを行い、それ以降、意見の集約を図っていく予定。

 このうち第3回会合では、中高連の吉田晋会長(富士見丘中学高校理事長・校長)が改革の方向性に賛同しながらも、「大学入試改革は子供たちの将来を大きく左右する。子供たちの立場で検証と慎重な審議を」と要請、学習指導要領改訂に先立ち新テスト論議が行われていることについて慎重な手順での改革を要望した。また、中高連の長塚篤夫常任理事(順天中学高校長)も教育の実態に合わせたスケジュール等を要請した。

 高P連の佐野元彦会長も、「具体的なものが見えてこない。今、霧の中。保護者に不安感がある」とし、新設予定の二つの新テストの関係性の整理、見込まれる教育の私費負担拡大への手当ての必要性を指摘。ベネッセ教育総研は平成25年末に全国の高校長や大学学科長を対象に実施したアンケート結果を報告したが、テストに振り回されることへの不安が反映していることなどを報告した。

 また、第4回会合では、国大協の里見進会長(東北大学長)は、国立大学の個別試験では既に論理的思考力・判断力・表現力を問う記述式・論述式の学力検査に加え、面接、小論文等も課し、中教審の知識だけ、1点刻みのとの批判は必ずしも当たらないことなどを指摘、高校生や教育関係者に過度な負担を与えないよう、改革に当たっては慎重な対応、試行期間の必要性を強調した。

 私大団体連の清家篤会長(慶應義塾長)は、中教審の高大接続改革等に関する答申の基本理念については同感とした上で、個々の私大の「多様な入試制度は、多様な学生選抜という高大接続の理念からも最大限維持されるべきであり、新テストを一律に活用するということになれば、理念と実態とが大きく矛盾することとなる」と指摘、入試制度改革のプラス・マイナスを考慮しつつ慎重な対応、十分なリードタイムの確保を要請した。

 公立大学協の清原正義会長(兵庫県立大学長)は、高大接続システム改革会議で検討中の「高大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)を複数回実施した場合、大学の実施業務負担が更に過大となるため、慎重な制度設計を求めたほか、アドミッション・オフィスの整備充実なくして入試改革は前進しないとして、必要な手当ての先行実施を要請した。大学団体に対しては小委員会出席の議員から社会のニーズへの対応の遅れを指摘する意見も聞かれたが、里見会長は「言われる程(国立大学は)悪い教育をしてきた訳ではない」と、清家会長は短期的な対応ではなく、学問を通じて学生に自分の頭で考える力を育てていく重要性を指摘、清原会長は大学、高校、社会が連携して人間力の育成をしていく必要性を強調した。


2015年07月08日

文科省、競争的研究費改革議論の中間取りまとめ-間接経費30%を設定、研究基盤強化

日刊工業新聞(2015年07月07日)

 文部科学省は競争的研究費改革の議論の中間取りまとめを行い、「文科省の全ての競争的研究費で30%の間接経費を付ける」と明記した。間接費の増額に伴って研究インフラが充実し、研究が効果的に行われることが見込まれる。また、研究代表者の人件費を直接経費から出す仕組みも打ち出した。2016年度からの第5期科学技術基本計画と併せ、年内に最終結論を出す。(編集委員・山本佳世子)

 「競争的研究費」は公募によって競争的に獲得する事業の研究費を指す。このうち研究そのものや任期付き研究員の雇用といった研究用途に使うのが「直接経費」。一方、光熱費や特許戦略などで研究を支える大学の業務に手当てするのが「間接経費」。今回、直接経費の30%分を手当てすることが固まった。文科省が新規採択する大学の事業について、16年度から実施する見通しだ。
 間接経費は、民主党政権時代の「事業仕分け」で多くが廃止となり、一部事業に限定された。研究型の国立大学は国の補助金である運営費交付金の削減に対応し、競争的資金を増やすことで補ってきた。ただ、直接経費は使途が決まっており、これが増えたとしても研究インフラの充実などに使える分はなく、大学側は「本部の負担が重い」と訴えていた。それだけに大学全体の研究基盤強化につながる間接経費の増加は朗報だ。
 もっとも文科省では科学研究費助成事業、戦略的創造研究推進事業での30%をはじめ、めぼしい事業には間接経費を措置済みだ。「間接経費としてすでに1000億円を拠出しており、『全事業が対象』となって増えるのは100億円ほど」(研究振興局・基礎研究振興課)にすぎない。
 むしろポイントとなるのは、他省庁の研究開発支援事業に浸透できるかどうか。間接経費が民主党政権時代の事業仕分けで300億円から数億円に減額されたままの機関もあるからだ。今回の動きを呼び水に、どれだけ広がるかと大学関係者は注視する。


2015年07月02日

大学生の都市圏集中を是正、定員超えは私大助成を減額 文科省

産経(2015.7.1)

 文部科学省は30日、大都市圏への大学生の集中を解消するため、大規模な私立大学を中心に超過定員に応じて助成金を減額する計画を発表した。平成31年度までに段階的に実施する。この計画により、東京都と愛知県、大阪府を中心とした三大都市圏で、約1万4000人の学生の流入を抑制する効果があるとしている。

 文科省によると、26年度には、全国で約4万5000人の入学定員の超過が発生。うち8割に当たる約3万6000人が三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県)に集中している。

 助成金の交付額は学生数などを基準に算出され、文科省は定員に対する学生数の割合を1・0倍とするよう求めている。現行制度では、大規模大学(8000人以上)で1・2倍以上、中規模大学(4000人以上8000人未満)で1・3倍以上となった場合、助成金を全額不交付としている。

 今回の計画では、それぞれ1・1倍以上、1・2倍以上となった場合に全額不交付とするが、地方に多い小規模大(4千人未満)では、これまで通り1・3倍以上の基準を維持する。

 現在は1・0倍を上回っても定員分の助成金が交付されているが、今後は1・0倍を超えた場合は学生超過分に応じて減額することにした。逆に大学側が1・0倍以下に抑えた場合には、私学助成金を上乗せする優遇措置も導入する。

 国立大でも厳格化し、定員超過分の金額を国庫へ返納させる計画を示した。


2015年07月01日

大学生の都市部集中抑制=定員超過で補助金削減-文科省

時事通信(2015/06/30)

 都市部への大学生の集中を改めるため、文部科学省は30日、定員を超えている私立大に超過人数に応じて補助金を減らすなどの抑制策を導入すると発表した。私学助成金を全額カットする基準もより厳しくし、国立大にも同様の基準を設定。いずれも2016年度から段階的に実施する。
 文科省によると、14年度は全国の私大で約4万5000人の定員超過が生じ、うち8割が3大都市圏に集中。地方には定員割れの大学も多く、同省は学生の偏在解消が地方創生につながると判断した。

2015年06月16日

国立大交付金 地域貢献や世界水準研究で重点配分

NHK(6月15日)

国立大学に配分する運営費交付金について文部科学省の有識者会議は、地域に貢献する大学や世界トップ水準の研究を目指す大学など、国立大学を3つの枠組みに分類し、取り組みや実績が高く評価された大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
国立大学は平成16年度に法人化されて以降、6年ごとに中期目標を定め、その達成状況の評価などに応じて国から運営費交付金が配分されています。来年度から6年間の配分方法を検討してきた文部科学省の有識者会議は、15日、改革や機能強化に積極的に取り組む大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
具体的には、国立大学を人材育成や研究を通して地域に貢献する大学、特定の分野で優れた教育や研究の拠点となる大学、それに世界トップ水準の教育や研究を目指す大学の3つの枠組みに分類し、大学はいずれか1つを選んで取り組むとしています。そのうえで、取り組みの状況や実績を有識者の会議が評価し、翌年度の交付金の配分に反映させるということです。中期目標の策定にあたっては文部科学省が8日、国立大学に通知を出し、教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院については廃止やほかの分野への転換に努めることなど、組織や業務全般を見直すよう求めています。各大学はこうした方針を踏まえて、今月中に中期目標の素案を提出することになっています。

国立大学で進む学部再編

全国に86ある国立大学は法人化されて以降、特色ある大学作りや組織や業務の改革が常に求められてきました。グローバル化や地域の課題解決に取り組もうと学部を再編する動きが広がっていて、平成24年度から今年度までに5つの学部が新設されたほか、来年度だけで8学部の新設が申請されています。文部科学省によりますと、法人化されて以降、短期間にこれほど新たな学部が設置されることはないということです。
このうち、徳島大学は地域の農林水産業を支援する人材を育成しようと、来年度、「生物資源産業学部」を新設します。経営学の基礎なども学ぶことができ、いわゆる6次産業化にも対応したいとしています。また、宇都宮大学が人口減少など地域の課題に取り組む専門知識を学ぶ「地域デザイン科学部」を、福井大学がグローバル化や地域の活性化に貢献する人材を育成しようと「国際地域学部」を、それぞれ来年度から新たに設置する予定です。
学部の新設ではありませんが、弘前大学は理工学や農学系の人材育成を強化するとして、来年度、大規模な組織改編を実施する方針です。理工学部に新たな学科を設けるなど、2つの理系学部で定員を90人増やす一方、文系の2つの学部では150人削減します。人文学部の3つの課程を2つに集約するほか、教育学部で教員免許の取得を義務づけない課程を廃止するとしています。

「教育のすそ野を広げ長期的な視点で」

今回の運営費交付金の配分方法を検討した会議の委員の1人で、東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授は「大学が社会のニーズに十分対応していないという意見が一部に強くあり、交付金の配分で改革を促そうという議論が行われてきた。大学間の競争が強まることになるが、東京と地方とでは条件が一定ではなく、格差が広がりすぎないよう配慮が必要だ」と話しています。
また、中期目標の策定にあたって、文部科学省が教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院の見直しを求めたことについては、「教員養成や人文社会科学系は人件費が高く高コスト構造となっており、効率化したいというねらいがあると思うが、教養教育は大学の大事な役割のひとつで、理系の学生にとっても人文社会系の知識やものの考え方は重要だ。グローバル化が進むなか、世界の最先端で争える学生を養成していかなければいけないのは事実だが、時代が変わると最先端が最先端でなくなっていく可能性もあるわけで、大学教育のすそ野を広げ長期的な視点で考える必要がある」と指摘しています。


2015年06月08日

その学部、本当に必要? 全国立大に見直し通知、文科省

朝日新聞(2015年6月8日)

 文部科学省は8日、全86の国立大学に、既存の学部などを見直すよう通知した。主に人文社会系の学部と大学院について、社会に必要とされる人材を育てられていなければ、廃止や分野の転換の検討を求めた。国立大に投入される税金を、ニーズがある分野に集中させるのが狙いだ。

 国立大には、法人化された2004年度以降、6年ごとに「中期目標」を作って文科省に提出する義務がある。6月末が16年度からの目標案の提出期限で、大学の認可を受けるには、目標が通知の趣旨に沿っている必要がある。

 通知は「特に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院は、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めた。例えば、人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという実績を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握。需要にあった人材を育てる学部に転換するなどといった想定だ。


2015年06月05日

政府 新たな“教育機関”設置の方針

日テレ(2015年6月4日)

 政府は経済成長に貢献できる即戦力となる人材の育成を目指し、ITなどの技術の専門家を育成する新たな教育機関制度を作る方針を固めた。

 安倍首相「今後は政府を挙げて 人材改革に取り組んでいきます」「実社会のニーズに合わせた実践職業教育を行う、新たな高等教育機関制度を創設し、学校間の競争を促していきます」

 政府は今後、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を制度化して、企業の即戦力となる知識と技能を身につけた人材の育成を目指すことを決め、産業競争力会議で報告した。

 政府が設置を目指す「新たな高等教育機関」では、変化の速い産業界のニーズに応じ、ITの技術やサービス業などで活躍できる人材の育成を念頭にカリキュラムを構築し、既存の大学からの転換も認める方針。一方で新たな教育機関の設置により、高校生の進路の拡大や社会人の学び直しにも対応できるようにする考え。

 政府は今後、文部科学省の審議会などで制度の詳細を検討し、2019年度からの開学に向けて法律の改正などを行う方針。


「大学を「職業教育学校」に…19年度実施方針」

■読売新聞(2015年6月4日)

 政府は、実践的な職業教育や技能訓練を行う高等教育機関として「職業教育学校」を設置する方針を固めた。高校卒業後の進学や、社会人の専門知識の習得を想定している。学校は新設せず、希望する既存の大学や短大などに職業教育学校へ転換してもらう考えだ。4日の政府の産業競争力会議(議長・安倍首相)で原案が示され、月内にまとめる成長戦略の柱とする。

 中央教育審議会で詳細を検討する。学校の種類などを定める学校教育法の改正など、必要な法整備を来年度中に行う。2019年度からの実施を目指す。少子化が進む中、学生の確保に苦しむ私大や短大などの選択肢として制度化する狙いもある。大学が学部の一つとして併設できるようにする。

 企業は社員教育に十分な時間をかけることが難しくなっているが、大学は一般教養の学習や研究重視で、企業の求める即戦力を育てるには限界がある。また、社会人がより高度な知識や技術を習得する場を望む声も高まっている。

 カリキュラムの編成には産業界の意見も取り入れ、情報技術(IT)の活用で業績を向上させたサービス業の取り組みや、新興企業での事業の企画・立案の手法など、実例を中心に学ぶようにする。また、学校側は実際に企業を訪問するなど、自由に工夫を加えられるようにする。

 新たな学校の卒業生には、既存の大学の「学士」に代わる新たな学位を認定する。4年制の大学などとは異なって修業年限は設けず、集中して勉強すれば半年から1年程度で卒業できるようにする方向だ。

 職業教育学校に移行するかどうかは、それぞれの大学や短大などが判断するが、在職する教員らの反発が予想される。また、実学の重視で教養教育が軽視されかねないとの批判も出そうだ。実務経験のある教員をどう確保するかなども課題になりそうだ。

 政府は今年の成長戦略で、人材育成を重要課題の一つとして掲げており、すでに国立大学の改革案もまとめている。


2015年05月11日

無残な科学技術立国、人口当たり論文数37位転落

BLOGOS(2015年05月10日)

科学技術立国を唱えてきた日本の無残な実情が見えました。人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落です。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れます。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用します。

 グラフは「人口当たり全分野論文数の推移(3年移動平均値)。日本は多くの東欧諸国に追いぬかれた。」です。年単位の凸凹をならすために前後3年間の平均を採用しています。右端に並ぶ国名が2014年での世界の人口当たり論文数ランクになります。この数年でクロアチア、セルビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロバキアといった東欧の小国に追い越されたばかりでなく、欧米先進国との差が開くばかりである惨状が分かります。

 世界的な論文数増加の勢いに取り残される傾向が、バブル崩壊があった1990年代から始まっている経過も見えます。北欧の小国はもともと上位を占めている上に、2000年前後の世界的伸長ペースに取り残されて西欧の小国にも置いて行かれました。さらに東欧諸国にもという次第です。

 2014年の論文総数は「昨年と同様に世界5位で順位は変わっていませんでした。ただし、人口が半分のフランスに接近されており、このままのペースが変わらないと仮定すると3年後にフランスに追い抜かれて6位になります」。人口当り論文数は「国ではありませんが香港を加えますと、国際順位としては37位」、「このままの政策が継続されれば、さらに国際競争力が低下する」と豊田氏は主張します。

 昨年6月の第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」と続編で政府・文部科学省が採っている大学「改革」政策の無謀さを指摘しました。論文総数の異常減少グラフはそちらで見てください。

 豊田氏の分析が、論文数は大学への公的研究開発資金に左右されることを示しており、それは日本では国立大学運営費交付金です。交付金が2004年の国立大学独立法人化から10年間で13%も減額され、自由な研究に充てられる余裕がほぼ消滅しました。

 文科省の今年4月8日付《第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について》はこれまでの重点配分方式では「大学改革促進係数により財源を確保した部分と、重点配分した部分の関係が不明確」「選択の幅が広すぎ、結果として各国立大学の強み・特色をより伸ばすことにつながっていない」と不十分とします。2016年から始まる第3期でもっと抜本的に重点配分していくと宣言しています。

 ここまで交付金総額を減らした上に重点配分を強力にすれば旧帝大クラスはともかく、中小の大学にはカツカツ以下の資金しか回らなくなります。「無駄な研究などしないでよい、学生の教育だけやりなさい」との含意があちこちに見えます。もともと財務省は教育のために配当すべき教員数よりも多くを抱えている現状が不満でした。しかし、重点配分でいま目立っている研究成果に資金を集中して早く果実を得ても、将来に育てるタネが草の根の研究者群から出て来る基盤を失ってどうするのか、とても大きな疑問があります。国家百年の計にかかわる論文数減少の意味を、自分の代で何か成果を出したい文科省官僚が全く考えていない愚かさが明らかになっています。


「専門職大学」創設へ 文科省 技術・経営感覚習得に力

北海道新聞(2015/05/10)

 文部科学省は、実践的な職業教育に特化した「専門職大学」(仮称)の創設に乗り出す。調理師や美容師といった専門技術の習得とともに、経営感覚を身につけた即戦力の育成が狙い。専門学校や短大からの移行を想定。一般の大学と同水準の教育内容とし、文科省が設置基準を定めて認可することで、教育の質を確保する。文科相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)が15日に開く特別部会で具体的な議論を開始し、2019年度以降の開校を目指す。

 職業訓練に特化した教育は現在、主に専門学校が担うが、技術習得が中心で経営学などには手が回らない。一方、一般の大学や短大は職業訓練に長い時間を充てられない。このため産業界からは高度な即戦力の育成機関を求める声が強かった。

 政府の教育再生実行会議が昨年7月、「実践的な高等教育機関の新設」を提言。有識者会議が今年3月、専門職大学制度の大枠をまとめた。それによると2~4年制で、高校新卒者や社会人が対象。美容、観光、情報通信技術、福祉などの分野を想定し、技術に加え、経営ノウハウの習得に力を入れる。

 教員の一部は各分野で活躍する人に担ってもらう。修業年限に応じ、大学卒業者に与えられる「学士」や短大卒業者に与えられる「短期大学士」に相当する学位を授与する方向だ。

 文科省は「道内は札幌だけでなく各地に専門学校がある。(専門職大学に移行した専門学校などが)高度な技能を持った人材を地元に輩出できれば、地域活性化にもつながる」と話す。

 ただ、教員の確保や経営面で成り立つかどうかなど課題は多い。中教審は年度内を目標に答申をまとめたい考えだが、曲折も予想される。


2015年04月16日

国立大学を3分類 首相が改革具体化指示

NHK(4月15日 19時22分)

政府の産業競争力会議の大学改革などをテーマにした会合が開かれ、安倍総理大臣は関係閣僚に対して、全国の国立大学を、卓越した教育や研究を推進する大学や地域のニーズに応える人材育成などを推進する大学など、3つに分類する改革の具体化を指示しました。
政府は15日、総理大臣官邸で大学改革などをテーマにした会合を開きました。
この中で下村文部科学大臣は、日本を世界で最もイノベーション=技術革新に適した国にするには国立大学の改革を進める必要があるという考えを示しました。
そのうえで下村大臣は国立大学を、▽世界トップの大学と肩を並べて卓越した教育や研究を推進する大学、▽分野ごとの優れた教育や研究の拠点となる大学、それに▽地域のニーズに応える人材育成や研究を推進する大学の3つに分類する方針を示しました。
また、規模などに応じて全国の国立大学に毎年度合わせておよそ1兆1000億円配分している運営費交付金に、来年度からメリハリをつける考えを示しました。
これを受けて、安倍総理大臣は「日本を世界一技術革新に適した国にするには、大学の役割が不可欠だ。この夏までに『国立大学経営戦略』を策定し、3類型の選択に基づく自己改革を進めていく」と述べ、国立大学を3つに分類する改革の具体化を指示しました。
政府は今後、産業競争力会議などで国立大学の改革の検討を進め、ことし夏に取りまとめる成長戦略にも反映させることにしています。

国立大、新評価制度導入へ 政府「成長戦略の柱」

朝日新聞(2015年4月15日)

 政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が15日開かれ、国立大学の改革に向けた新たな評価制度の導入を決めた。全国86ある国立大の役割をはっきりさせ、運営費交付金の配分にもメリハリをつける。6月にもまとめる成長戦略の柱にする。

 今夏までに文部科学省が「経営力戦略(仮称)」をつくる。「地域に貢献する教育研究」「特色ある分野で世界的な教育研究」「世界で卓越した教育研究」のいずれかから、各大学がめざす大学の特徴を選び、その大学像に沿った評価に応じて交付金を配分するようにする。

 安倍首相はこの日の会議で「これまでは各大学の特徴に応じたミッション(役割)設定が不明確なままで、自律的な経営に欠けていた面があったことは否めない」と指摘。企業などからの資金獲得や資産の運用など、大学独自の取り組みを促す考えを示した。


2015年04月15日

専門職大学、実践的職業教育に特化…制度化を中教審に諮問

毎日新聞(2015年04月14日)

 下村博文文部科学相は14日、実践的な職業教育に特化した高等教育機関「専門職大学」(仮称)の制度化を中央教育審議会(中教審)に諮問した。幅広い知識と高度な技術を持った「質の高い職業人」を育成するのが狙い。文科省が設置基準を設け、認可することで教育内容の質を保証する。中教審は今年度内をめどに答申をまとめる方針。

 現在、職業に特化した教育は主に専門学校が担っているが、技術習得が中心。専門職大学ではそれに加え、経営のノウハウや高度な技能の習得に重点を置くことを想定している。

 昨年7月の政府の教育再生実行会議の提言を受け、文科省の有識者会議が今年3月に制度に関する審議結果をまとめた。それによると、入学者は高校新卒者や社会人が対象。修業年限は2?4年とし、4年なら「学士」、それ以外は「短期大学士」に相当する学位を授与する。教育課程(カリキュラム)づくりには産業界が参画し、実習や実験を重視した内容にする。

 分野はICT(情報通信技術)、観光、美容などが想定される。学校教育法上の「大学」に位置づけるか、「専門職大学」という学校種を新設するかなど具体的な制度設計を中教審で議論する。現行の大学・短期大学同様に国が補助金を出すことから、専門学校が「専門職大学」に移行することが想定されるほか、大学が学内に併設することも考えられる。文科省によると、ドイツや韓国では同様の教育機関がある。


2015年04月14日

大都市部の私大入学者抑制へ 文科省、16年度から補助金交付基準を厳格化

現代ビジネス(2015年04月13日)

文部科学省は早ければ2016年度の大学入学者から、首都圏など大都市部にある私立大学の入学者数を抑制する方針だ。「私立大学等経常費補助金」の不交付対象となる入学定員超過率のラインを厳しくするもので、現在、定員8000人以上の大規模大学の場合、定員の120%以上なら不交付になるが、これを110~107%まで減らす方針で調整している。定員8000人未満の私立大も、現行の130%から120%へ引き下げる。

「私立大学等経常費補助金」は私立大や高等専門学校を対象に、教育・研究環境の向上や学生の負担軽減のため補助する制度で、教職員数や学生数に応じて交付する。私立大収入の約1割を占め、13年度は880校に計3204億円を交付した。

同補助金の不交付ルールを厳格化する狙いは主に2点ある。一つは、大都市への学生集中を抑制し、地方からの学生流出に歯止めをかけること。安倍晋三政権が推進する地方創生策の一環だ。

対象となるのは、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)▽関西圏(京都、大阪、兵庫)▽中部圏(愛知)の私立大。

なぜこの3大都市圏が対象なのか。文科省や日本私立学校振興・共済事業団によると、14年度は私立大全体では46%が定員割れを起こしている。この割合は前年度より5・5ポイント上昇している。しかし、その多くは地方大学で、3大都市圏では逆の現象が起きているのだ。

3大都市圏に偏る入学者

3大都市圏の私立大入学者は、▽首都圏20万4287人▽関西圏7万6677人▽中部圏2万9206人。この3大都市圏だけで計約31万人に上り、全私立大の入学者の65%、国公私立合わせた入学者のおよそ半数を占める。

このうち入学定員を超過した人数は計約3万3000人(首都圏2万2007人▽関西圏7541人▽中部圏3386人)。中でも定員の110%以上の学生数は計約2万6000人で8割を占める。定員超過率の基準を110%近くまで引き下げる狙いはここにある。新基準が適用されると、超過人数の多くが不交付対象になるとみられる。

定員超過率の厳格化のもう一つ狙いは、「地方創生」よりも以前から指摘されていたもので、教育環境の改善だ。

教員当たりの学生数(ST比)は、日本は欧米の有名大学と比べると高い傾向にある。国内の国立、私立のトップ大学である東京大、京都大、慶応大、早稲田大の4大学の平均は15・2。一方、ハーバード大(米)は4・36、ケンブリッジ大(英)は4・66、カリフォルニア工科大(米)は5・56、などと教員数が充実している。

大学では、教授が一方的に講義する従来の授業方式から、学生自身で課題を見つけ討論しながら解決策を探る「アクティブラーニング(課題解決型学習)」の必要性が高まっており、多くの大学で取り入れる動きが進んでいる。ST比の引き上げは不可欠だ。

そうした中で、「定員超過」は逆行する動きといえる。大学の入学定員は、国が教育環境上「適正」とする標準規模だ。それでも一定の幅で認めているのは、受験生が他大学にどの程度流れるかを見極めるのが難しいことや、入学後に中退する学生が出ることなどから、大学は多めに合格者を出さざるを得ないことに配慮しているのだ。

今回、不交付対象となる定員超過率を引き下げるのは、大都市圏の大規模大学の中には、推薦入試などで「入学者数を調整することができる」(大学関係者)ことを利用し、基準ぎりぎりまで学生を受け入れているところも少なくないからだ。授業料など学費収入を増やすための経営戦略でもある。

このため、文科省の方針について、反発も予想される。関西圏の大規模私大の担当者は「財政を直撃するだけに深刻だ」と打ち明ける。大学財政の根幹は学費収入だ。さらに「合格しても入学しない受験生の歩留まりを読むのは難しい。今よりも超過率の基準が厳しくなれば、どうなるのか」と悩む。これに対し、「定員超過というルール違反をしているわけだから表だっては反対はできないだろう」(文科省幹部)という見方もある。

地方の大学はどうか。東北地方の私立大幹部は「定員割れしている地方大には一定の効果はある」と期待する。四国の私立大関係者も「ありがたい話」と歓迎するが、「それで受験生が地方大を向くかというと、そう単純な話でもないと思う」とも指摘する。

定員超過率を厳格化すれば、定員自体を増やす大学や、補助金不交付を覚悟で多めに入学者を取る大学が出る可能性もある。定員の基準や助成金の交付条件を地方大学に有利になるよう見直したり、大学の地方移転を財政支援する仕組みも必要になる。

一方、私立大だけを厳しくして国公立大学に学生が流れては効果が薄れるため、国立大でも運営費交付金の不交付対象になる定員超過率を現行の110%から引き下げる方針だ。

政府の地方創生総合戦略は今後、大都市圏への集中を解消し、地方の学生が自分の住む県の大学に進学する割合を20年までに36%(13年度は33%)に引き上げる目標を掲げる。

地方大学支援を強化

地域格差を解消するには入学者抑制と同時に、地方大学の機能強化と、地方の雇用創出も必要だとして、文科省は地方大学への支援策を15年度から強化する。

その一つが文科省の補助事業「地(知)の拠点大学による地方創生推進整備事業」。雇用創出などの取り組みは一大学では限界があるため、都道府県単位で、複数の地方大学が地元の自治体や企業と連携して雇用創出など地元定着率を上げる計画だ。補助期間は5年間。同省は「これまで自治体にとって教育行政と言えば義務教育が中心だったが、政策の実現ツールとしての大学に注目して連携を強化してほしい」と話している。


2015年03月17日

大学改革、国補助金で促進…淘汰加速も

毎日新聞(2015年03月16日)

 大学が国主導の「改革競争」の波にさらされている。文部科学省は、世界トップレベルを目指す大学には毎年数億円の資金を集中投入するなど補助金に「メリハリ」をつけて改革を促す動きを強化。大学入試改革でも国が目指す「多面的総合評価」の試験を導入する大学を財政支援する。今後、「改革競争」から脱落した大学の淘汰(とうた)が加速する可能性も指摘されている。【三木陽介】

 ◇最低評価は半減

 「運営費交付金が減る中、補助金を取りにいかないと経営が苦しくなる」。今年度から始まった文科省の補助事業「スーパーグローバル大学」に選ばれた国立大学の担当者はそう打ち明ける。国立大の収入不足を補うために国が出す運営費交付金は減少傾向。同事業は、世界トップレベルの大学やグローバル化を目指す大学に1大学当たり毎年4億?1億円を10年間投入する異例の厚遇策だ。採択の競争倍率は約3倍だった。

 一方、法科大学院は、司法試験の合格実績が低迷しているため、2015年度から、司法試験の合格状況や改革計画の内容によって補助金額を決める仕組みを導入。最も増額されるのは堅調な実績を誇る早稲田大で1・35倍増に。「最低評価」を受けた7校は半減されるため、募集停止や統廃合が加速するのは必至だ。

 今年度から始まった「大学教育再生加速プログラム」事業では、入試改革や「課題解決型授業」促進など五つの改革テーマごとに補助金を支給する。採択されると、最長で5年間補助金が受けられる。

 入試改革部門には8校から申請があり、お茶の水女子大(東京都)、岡山大、追手門学院大(大阪府)の3校が採択された。補助額は1校当たり年間約2000万円。文科省は、ペーパー試験の高得点者から順に合格者を決める「1点刻み」式から、面接や討論を活用した「多面的総合評価」式への転換を目指しており、入試改革を加速させるため補助制度創設も検討する。

 大学の実情に詳しい「主体的学び研究所」フェローの倉部史記さんは「国は大学の自主的改革を促してきたが、十分とは言えなかった。『体力』が厳しくなった大学の淘汰が進む可能性がある」と話している。


2014年12月01日

私大の定員超過抑制へ 文科省検討、大都市で助成厳格化

朝日新聞(2014年11月30日)

 文部科学省は、大都市圏の私立大学について、入学定員を超過して学生を集めた場合のペナルティーを厳しくする方向で検討に入った。大学生全体の4分の3を占める私大生のうち、5割程度が首都圏に集中している現状を変え、地方の過疎化に歯止めをかけるのが狙い。

地方の大学、魅力向上がカギ
 文科省の学校基本調査によると、東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県の私立大、短大、大学院は全国の学生数の48%を占める。大阪、京都、兵庫の3府県と愛知県を加えた3大都市圏でみると、総人口比47%(2013年)に対し、学生数は75%にのぼった。

 都市部の私大が定員を大きく超えて学生を集めることで、地元への就職が比較的多い地方大学に通う学生が減り、地方企業に人材が集まらない悪循環に陥っている。

 このため、文科省は私学助成金の交付要件を変えて学生の都市部への集中を防ぐ検討を始めた。現行のルールでは、入学者が定員の130%以上、全体の定員が8千人以上なら120%以上だと助成金を交付しない。この基準をそれぞれ120%、110%に10ポイントずつ下げる案が軸になる見通しだ。変更の範囲は首都圏など都市部になる予定で、実施時期は未定だが早ければ、今年度中にもルール変更を決める見通し。

 私大にとっては助成金は収入の1割を占めるため、要件変更によって事実上、過度の超過分の削減を迫られることになる。定員自体は現在、私大の経営判断である程度自由に設定ができるうえ、国は抑制を強制することはできないが、都市部では定員自体を簡単には増やせないような仕組みも今後検討される見込みだ。

 例えば、都内では定員110%以上の超過部分だけで学生数は約1万2千人、学部は173にのぼる。文科省は要件変更により、一定の数の学生が地方に流れることを想定している。

 文科省が定員超過に厳しい態度をとるのは、教員数が定員数に基づき決まり、定員を超過するほど、教育の質の悪化につながりかねないからだ。私大にとっては定員を抑えたままなるべく多くの学生を獲得した方が経営にプラスになるという事情もある。

 日本私立学校振興・共済事業団が全国578大学を対象に行った調査では、14年春の入学者の入学定員に占める割合は東京都で110%、大阪府105%、愛知県104%といずれも超過した。これに対し、宮城県を除く東北5県は82%、四国が90%など、地方では「定員割れ」が目立つ。


2014年11月08日

高校早期卒業、文科省が導入へ 「飛び入学」の不備是正

毎日新聞(2014年11月07日)

 中央教育審議会の分科会は7日、高校の途中段階で大学に入学する「飛び入学者」について、大学で一定の単位を取得すれば「高卒」と同等以上の資格を与える「高校早期卒業制度」を導入する案を了承した。現行では飛び入学者は「高校中退」扱いのため、大学を中退してしまうと公務員試験のような資格試験が受けられないなど、制度上の不備が指摘されている。改善することで飛び入学の促進を図るのが狙い。文部科学省は年度内の省令改正を目指す。

 同省によると、飛び入学は高校に2年以上在籍し、「科学オリンピック」に出場するなど特定の分野で優れた能力を持つ生徒が大学に入学できる制度。1997年度に導入されたものの、飛び入学者はこれまで7大学で計111人にとどまっている。現行制度では「高卒」扱いではないため、大学を中退した場合は公務員や食品衛生管理者などの資格試験が受けられず、進路が狭まるなどの問題点が指摘されていた。

 導入後は高校で50単位以上、かつ大学で16単位以上取得して文科相の認定を受ければ高卒と同等以上の資格を与える方針だ。同省は「国際的に活躍できる人材の育成には飛び入学制度の活用を図ることが重要」としている。


2014年10月25日

大学入試、32年度から新テスト導入案

NHK(2014年10月24日)

大学入試の在り方を検討してきた文部科学省の中教審=中央教育審議会の部会は、現在の大学入試センター試験に代えて、「大学入学希望者学力評価テスト」という新たなテストを平成32年度から実施する案をまとめました。

これは24日開かれた中教審の部会で示されました。
現在の大学入試センター試験に代えて、「大学入学希望者学力評価テスト」という新たなテストを導入し、知識の活用力をみるために複数の教科にまたがる問題を出題するほか、英語については『聞く・話す・読む・書く』の4つの技能をはかるため外部試験を活用するとしています。
結果は1点刻みではなく段階別に示すとしています。
また、各大学に対しては、筆記試験だけでなく小論文や面接などで評価し多様な学生を確保するよう求めています。
さらに、高校在学中に学習の到達度をはかるため「高等学校基礎学力テスト」という新たなテストを設け、希望者が高校2年生と3年生で年に2回、受験する案が示されました。
「国語総合」や「物理基礎」など6教科から選択することができ、進学や就職の際の学力証明として活用できるなどとしています。
大学入試センター試験に代わる新たなテストは平成32年度から、高校在学中のテストは平成31年度から実施するとしていて、中教審はこの案を年内にも答申する方針です。


2014年06月30日

学部新設や定員増、審査厳しく 京都の大学、対応苦慮印刷用画面を開く

京都新聞( 2014年06月29日)

 大学の学部・学科新設や定員変更に対する国の審査が昨年から厳しくなり、京都の各大学も対応に苦慮している。大学は定員が満たせることを客観的な根拠で証明する必要性から高校生にアンケートをしているが、多大な手間やコストに負担を感じている。複数の大学から依頼を受ける高校側も「とても回答しきれない」と困惑を隠さない。

 「進学希望者が集まらない限り、文部科学省に定員増を申請できない。結果が出るまで不安で仕方なかった」。大谷大の岡田治之事務部長はそう振り返る。

 2015年春に社会学科の定員を100人から120人に増やす計画がある。文科省の審査をパスするには定員に見合う進学希望者がいることを示す必要があり、5月上旬から近畿を中心に315校の高校にアンケートを発送した。進学希望者の必要数は確保できたが、協力を断られることもたびたびあったという。

 京都学園大は、来春に京都太秦キャンパス(京都市右京区)を開設し、健康医療学部の新設や既存5学部の再編を予定する。必要な進学希望者は760人。アンケートは業者に委託したが、回収率を上げるため、内山隆夫学長を筆頭に教職員を動員し、昨年11~12月に近畿の高校202校を訪れて協力を求めた。

 石原祐次事務局長は「何とか定員分を集めたが、中規模の大学には厳しい作業だった」と打ち明ける。

 文科省大学設置室によると、学部・学科新設などの認可申請や届け出の手引きには以前から学生確保の見通しを説明する規定があった。ただ、客観的なデータとして高校生のアンケートを例示したのは昨春からという。

 同室は「アンケートを強制しているわけではない。客観的であれば、他のデータでもいい」とするが、「多くの大学がアンケートを選んでおり、実態としてそう受け止められていないのは事実」と認める。

 大学がアンケートに頼る背景には、審査の厳格化がある。18歳人口の減少で定員割れの大学が相次いでいることを受け、文科省の有識者会議が昨年2月、大学設置認可制度の見直しを提言した。これを受け、同省は学生確保の見通しを審査する専門組織を設け、チェック体制を強化した。京都学園大の石原事務局長は「説得力ではアンケートがベストの手法。根拠が弱いと言われた時に追加調査もしやすい」と話す。


2014年04月09日

私立学校法の一部を改正する法律、参議院文教科学委員会の国会附帯決議

■私立学校法の一部を改正する法律
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/detail/1346340.htm
私立学校法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

私立学校法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成二十六年三月二十五日
参議院文教科学委員会

 政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、私立学校制度は、私立学校の特性に鑑み、その自主性を重んじつつ公共性を高めることによって私立学校の健全な発達を図ることを目的としていることに留意し、学校法人がその自主性及び公共性を十分に発揮できる管理・運営の在り方、特に内部チェック機能の強化、財務・会計関係書類の開示等について検討すること。

二、所轄庁による措置命令等の判断基準を明確化するため、第六十条第一項に規定された「その運営が著しく適正を欠くと認めるとき」の適用事例を具体的に示し、学校法人等に周知徹底すること。

三、措置命令等を発する場合には、所轄庁による恣意的な適用が行われないよう、法的手続の遵守を徹底し、その運用に当たっては、私立学校審議会等の意見を尊重するとともに、所轄庁の判断について公表し、説明責任を果たすこと。

四、学生等が在籍している学校法人に対し解散命令等を発するに当たっては、修学機会確保の観点から、在校生の転学等が円滑に行われるための支援等に積極的に取り組むこと。

五、我が国の学校教育において、私立学校が大きな割合を占め建学の精神に基づく特色ある教育活動を通して重要な役割を果たしていることに鑑み、私学助成の拡充を始めとする私学振興策の充実に努めること。

  右決議する。


私立5大学の設置を諮問 下村文科相

朝日新聞(2014年4月8日)

 下村博文文部科学相は8日、2015年度の開設を申請した大学5校の審査を、大学設置・学校法人審議会に諮問した。いずれも新設で、私立のみ。申請した大学は次の通り。

 幸福の科学大(千葉県長生村)▽湘南医療大(横浜市)▽長野保健医療大(長野市)▽滋慶大(大阪市)▽鳥取看護大(鳥取県倉吉市)



[同ニュース]
幸福の科学大が設置申請、人間幸福学部など3学部 文科相、私立5校を諮問

2014年03月20日

政府の教育再生実行会議で続く学制改革論議

全私学新聞(2014年2月13日号)

政府の教育再生実行会議で続く学制改革論議
「論点」が徐々に浮上  意見聴取や学校視察等も実施

 政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は2月18日、総理官邸で17回目の会合を開いた。議題は、学制の在り方で、これまでの議論や視察を踏まえた「学制の在り方にかかる論点」(別掲)と「これからの教育の在り方、特に義務教育や無償教育にかかる論点」(別掲)が示された。今後、論点に沿って検討が進められる。

 昨年10月31日の第14回会合から始まった学制改革論議は、概ね月に1回のペースで行われている。これまでに、6・3・3制の下で世界を舞台に挑戦する主体性と創造性、豊かな人間性を持つ多様な人材が育っているかの検証の必要性、教育の画一的な取り扱いから脱却し、それぞれの子どもが各自の能力を伸ばせる柔軟な対応を認める制度づくり、義務教育期間の延長、高校教育では知の向上に加え、社会的ルールを守る意味と責任を理解させる規範意識の育成が重要、経済的な困難さがあっても大学まで進学できる方策の必要性等の意見が出されている。

 また、「学制の在り方にかかる論点」には、特に子供の発達の変化等を踏まえ、義務教育の在り方やその期間、学校段階の区切りなどが挙げられており、「これからの教育の在り方、特に義務教育や無償教育にかかる論点」には高校教育の義務教育化、無償化、幼児教育の義務教育化、無償化等が挙げられている。

 さらに1月16日の第16回会合では、無藤隆・白梅学園大学教授から子どもの発達段階と学校教育に関して説明を受けており、小学校の教育を5歳から導入することに関して無藤氏は、半分くらいの子どもが落ちこぼれるため、厳しいのではないか、それを義務教育と呼ぶか、呼ばないかは別として、幼児教育の中身の質の向上が必要で、教員の研修は不可欠と語っている。また、幼稚園ではベテラン教員が少ないことから、幼児教育への投資を増やして教育の質を上げる方向を目指してほしいと語っている。この席で、安倍総理は義務教育については期間延長の可能性を視野に入れ教育基本法から9年との規定を削除し、学校教育法に委ねることとしたと語り、義務教育の幅広い観点からの丁寧な議論が必要との考えを示している。また下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣は、委員に学制改革論議の中で、財源論も含め議論してほしい、と語っている。

 教育再生実行会議では、学校関係者からの聞き取り調査や学校現場の訪問も実施しており、本年1月20日には、東京都教育庁の関係者と委員との間で意見交換会や、都立戸山高校の授業視察等を実施しており、都教育庁関係者からは、学力スタンダードの設定、グローバル人材の育成、チャレンジスクールなど多様なタイプの学校の運営などについて聴取している。国際社会に貢献するトップリーダーの育成をミッションに掲げる戸山高校では学習指導における工夫等に関する説明を受けている。


文部科学省、私立学校法の一部改正案、提出へ 解散命令前に段階的措置

全私学新聞(2014年2月13日号)

立ち入り検査、役員解任勧告など可能に
文部科学省 私立学校法の一部改正案、提出へ
解散命令前に段階的措置 私立学校の自主性に配慮

 文部科学省は開会中の第186回国会に「私立学校法の一部を改正する法律案」を提出する方針。これは昨年3月28日付で解散命令を受けた群馬県高崎市の学校法人堀越学園の事案で、最終手段というべき解散命令までの間に段階的な対応ができず、結果として学生等が転学を余儀なくされる事態に至ったことから、私立学校の自主性を尊重しつつ、私学全体に対する不信感につながるような異例の事態に所轄庁が的確に対応するための仕組みを整備するもの。

 「私立学校法の一部を改正する法律案」の改正ポイントは3点。その①は、所轄庁による必要な措置命令等の規定の整備(第60条関係)で、「所轄庁は、学校法人が、法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該学校法人に対し、期限を定めて、違反の停止、運営の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる」とする。しかし学校法人がそうした措置命令に従わないときには、役員の解任を勧告することができる、というもの。その際、所轄庁は私立学校審議会等の意見を聞かなければいけないこと、また行政庁または私立学校審議会等による弁明の機会を当該学校法人に付与することとしている。

 ②は、報告および検査の規定の整備(第63条関係)で、所轄庁はこの法律の施行に必要な限度において、学校法人に対し業務・財産の状況について報告を求め、または学校法人の事務所等に立ち入り、検査すること等ができるとしている。

 ③は、忠実義務規定の明確化(第40条の2関係)で、学校法人の理事は、法令および寄附行為等を遵(じゅん)守(しゅ)し、学校法人のため忠実に職務を行わなければいけない、とする。

 施行は交付日から。

 こうした改正案は、文部科学大臣の諮問機関である大学設置・学校法人審議会学校法人分科会が、異例な事態に対応するための制度の在り方について検討、昨年8月20日に公表した報告「解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方について」が基礎となっている。その報告の中では、「学校法人の運営は、私学の自主性と公共性の自覚に信を置いて、いわばその善意に基づく運営に対して行政の関与は極力控えるものとして制度が設けられているところであり、このような制度の基本的な理念は、今後とも大切にされていくべきだ」と指摘されている。今回の改正案では、そうした私学の自主性尊重への配慮は、私立学校審議会等からの意見聴取の義務付けや、当該学校法人が所轄庁による弁明の機会の付与に代えて私立学校審議会等による弁明の機会の付与を求めることができるなどの形に表れている。


2014年03月18日

国立大学改革、強化推進事業に7大学を選定…文科省

Resemom(2014年3月17日)

 文部科学省は3月14日、平成25年度の「国立大学改革強化推進補助金」の選定結果を発表した。横浜国立大、千葉大、埼玉大など、7大学による組織改革や機能強化などの取組みが選ばれた。

 同補助金は、各大学の強みや特色の伸長につながる国立大学改革を強化推進することが目的。取組みに必要な経費を補助することで、将来を支える人材の育成、大学運営の高度化、国際競争力の強化に資することを目指している。

 平成25年度選定されたのは、北海道教育大学、埼玉大学、千葉大学、横浜国立大学、静岡大学、九州工業大学、政策研究大学院大学の7大学。

 このうち千葉大は、国立大学唯一の医療系3学部(医学・薬学・看護学)と附属病院が結集した亥鼻キャンパスの高機能化構想を提案。「次世代の多様なニーズに応える医療人育成機能強化を果たし、全学に改革を展開する」としている。

 道教育大は、教育学部の抜本的組織改革を事業として提示。教員養成の質向上を図るため、課題解決型授業の実施、若手研究者が任期付き雇用形態で経験を積むことができる「テニュアトラック制」の導入などに取り組むとしている。

◆平成25年度「国立大学改革強化推進補助金」選定事業
・北海道教育大学「教員養成の質向上を図るための教育学部の抜本的組織改革」
・埼玉大学「学部の枠を越えた再編・連携による大学改革~ミッションの再定義に基づく研究力と人材育成の強化~」
・千葉大学「次世代対応型医療人育成と『治療学』創成のための亥鼻キャンパス高機能化構想」
・横浜国立大学「世界の持続的発展に資する『リスク共生学』に基づく教育研究拠点の形成」
・静岡大学「全学的な教育改革・組織改革によるグローバル人材育成機能の強化-ターゲット・アジア人材育成拠点の構築-」
・九州工業大学「社会と協働する教育研究のインタラクティブ化加速パッケージ~技術者のグローバル・コンピテンシー獲得へ~」
・政策研究大学院大学「諸外国の研究大学とアカデミアの知識戦略及びガバナンス戦略の分析に基づく大学改革のリーディングモデルの実践」


2014年03月04日

第186回国会で現在審議中、「私立学校法の一部を改正する法律案」

■文科省
 ∟●私立学校法の一部を改正する法律案

私立学校法の一部を改正する法律案(概要)
私立学校法の一部を改正する法律案(要綱)
私立学校法の一部を改正する法律案(案文・理由)
私立学校法の一部を改正する法律案(新旧対照表)
私立学校法の一部を改正する法律案(参照条文)

私立学校法改正案決定 違反時に命令権限

NHK(2月28日)

政府は、私立学校を運営する学校法人が、法令に違反したり深刻な経営危機に陥ったりした場合などに、国や都道府県が立ち入り検査を行い必要な措置をとるよう命令を出せることなどを盛り込んだ私立学校法の改正案を、28日の閣議で決定しました。

文部科学省は、去年3月、群馬県高崎市の「創造学園大学」などを運営する学校法人に対し、必要な財産を持たないなど法律に違反しているとして解散命令を出しましたが、深刻な事態に至るまで国として改善を促す対応が十分とれなかったことが課題となりました。
28日、閣議決定された私立学校法の改正案では、法令に違反したり深刻な経営危機に陥ったりした場合などに、国や都道府県が学校法人に業務や財産の状況について報告を求め立ち入り検査ができるようにするとしています。
そして、事実が確認された場合には、国や都道府県が学校法人に必要な措置をとるよう命令を出せることとし、従わない場合は役員の解任を勧告できるようにするなどとしています。
政府は、この改正案を今の国会で成立させたいとしています。


2014年02月19日

ネット大学を全国解禁、文科省方針 特区以外も

日本経済新聞(2014/2/18)

 文部科学省は18日、「構造改革特区」で認めているインターネットだけで授業を行う大学の運営を全国で解禁する方針を固めた。早ければ2015年度の開設を認める。ネット大学は時間や場所を問わずに受講でき、必要な単位を取れば学士の学位を得られる。新たな形の大学として、社会人やひきこもりの若者らに学びの場が広がると同省はみている。……

高校の早期卒業制度導入へ、中教審部会が報告書案

日経新聞(2014年2月18日)

 中央教育審議会(中教審)高校教育部会は17日、高校教育の質を向上させるための施策をまとめた報告書案を示した。優秀な生徒が次のステップに進みやすくするため早期卒業制度を導入することや、創設を検討している新共通試験「達成度テスト(仮称)」の基礎レベルを高校卒業程度認定試験(旧大検)と統合することなどが柱。同部会は3月末にも最終的な報告書をまとめる。

 報告書案は優れた才能を持つ生徒を支援する取り組みとして、早期卒業制度の創設を求めた。厳格な成績評価を前提に、2年程度で高校を卒業できる制度を想定。高卒認定が得られないために活用が進まない飛び入学制度の促進や、高校卒業から大学入学までの期間(ギャップターム)を使った海外留学などを促す狙いがある。

 ICT(情報通信技術)の発展を踏まえ、全日制や定時制高校での遠隔授業を認めることも要請。パソコンやタブレット端末を活用し、離島などの高校の生徒がレベルの高い教育を受けられる環境を整える。

 また、高校生の実態を詳しく把握するため、生徒の学習時間や学習意欲に関する定期的な調査の実施も求めた。

 達成度テストの基礎レベルを巡っては、試験教科を国語、数学、外国語(英語)、地理歴史、公民、理科の6教科とし、高1から年2~3回受験できる希望参加制のテストとすることを提案。生徒や高校には、得点ではなく段階別の成績を示すとした。

 基礎レベルを高卒認定試験と統合し、一定の成績を収めた者に大学や短大などの受験資格を与える。大学には、基礎レベルの成績をAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試での学力判定に活用することを求めた。


2014年01月23日

中教審、「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)

■中教審
 ∟●「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)

「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)

平成25年12月24日
中央教育審議会大学分科会組織運営部会

「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(本文1/3) (PDF:1,239KB)
「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(本文2/3) (PDF:1,567KB)
「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(本文3/3) (PDF:1,507KB)
「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(付属資料) (PDF:1,507KB)
「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(概要) (PDF:126KB)


2014年01月09日

私学経営、公的管理強化へ 立ち入りなど 法改正の方針

朝日新聞(2014年1月5日)

 文部科学省は、経営破綻(はたん)など問題を抱える学校法人の管理を強めるため私立学校法の改正を目指す方針を決めた。国や都道府県による立ち入り検査や改善命令などの措置を新設する。学校の存続に関わる事態が相次いだためで、今春に改正法案を国会に出す予定。

 文科省によると、問題を抱える学校法人に対する行政措置は、今は解散命令のみ。改正案では、経営危機や法令違反など重大な問題のある法人への立ち入り検査を可能にし、資産の横領など不正をした法人役員を解職させる措置も加える。

 学校存続が危うい事態にありながら生徒募集を続ける例もあるため、入学停止や在籍生の転学支援を行政が命じられる制度も新設する。私学経営の独立性を保つため、行政措置に踏み切る際は有識者からの意見聴取を定める考えだ。


文部科学省、世界の頭脳を丸ごと誘致 国立大学を強化

毎日新聞 2014年01月03日

 文部科学省は来年度から、海外の世界トップクラスの大学研究者を研究室スタッフを含めて丸ごと日本の大学に誘致する方針を決めた。「ユニット誘致」と名付け、まず京都工芸繊維大、北海道大の国立2大学で開始予定。国立大の機能強化の一環で、国内初の取り組みとなる。今後、大学のグローバル化を加速させるため、国立大を中心に実施校を広げていく方針だ。

 ユニットは教授、准教授、助教のほか大学院生ら5?10人程度のスタッフで構成し、誘致期間は1ユニット5?10年。誘致する大学にとっては、共同研究・開発が活性化する上、学生が海外留学しなくても世界トップクラスの研究者の指導を受けられる利点がある。

 1級建築士試験の合格者が国公立大でトップ(2012年度)の実績を持つ京都工繊大はデザイン、建築分野で世界最高レベルの研究者がいる英国王立美術大やスタンフォード大(米国)、チューリヒ工科大(スイス)などから計4ユニットを誘致する計画。既に交渉を進めており、早ければ4月にも実現する。

 学内に研究室を設け、日本人大学生向けの講義も想定しているほか、日産自動車やソニー、清水建設など世界有数の国内企業との共同研究プロジェクトも予定し、誘致される研究者側にもメリットがある。古山正雄学長は「これを機にグローバル化をさらに進めたい」と話している。

 北海道大は、がん治療や感染症の分野で著名な研究者がいる米国やオーストラリアなどの大学からの誘致を予定している。

 文科省国立大学法人支援課の担当者は「各大学の強い分野をさらに強化することで、他の部門への波及効果も期待できる」と話している。【三木陽介】


2014年01月08日

文科省、国立大学に年俸制を強要 学問の自由と自治に介入

しんぶん赤旗(2014年1月7日)

国立大学に年俸制を強要
文科省 学問の自由と自治に介入


 文部科学省は来年度から、教員の賃金を「業績評価」によって決める「年俸制」を導入する大学を重点的に支援する方針です。2014年度予算では「導入促進」に24億円を計上しています。これに対して、学問の自由と大学の自治をゆがめるものだとの声が上がっています。

 年俸制導入は、文科省が昨年11月に発表した「国立大学改革プラン」に盛り込まれました。安倍内閣が掲げる「産業競争力強化」に向けて、「持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す」大学に「改革」することが目的です。大学の種別化・ランク付け、学長の権限強化などと合わせて打ち出されました。

 具体的には、「国内外の優秀な人材の活用によって教育研究の活性化につながる人事・給与システム」と称して、年俸制を導入する大学に運営交付金を重点配分。15年度までに「1万人規模で年俸制を導入する」との目標を掲げています。これは全教員の約19%に当たります。さらに、「シニア教員から若手・外国人へのポスト振替等を進める」として、1500人分の常勤ポストを確保するためにベテラン教員の追い出しを進めるとしています。

 年俸制について全国大学高専教職員組合(全大教)は、人事制度に文科省が介入するものであり、「教職員の中に過度の格差を生み出し、将来に不安を与える」と批判しています。

 すでに昨年の臨時国会では、大学や研究機関の非常勤講師など有期雇用の研究者が5年を過ぎると正規雇用に転換できる権利を10年に先延ばしする改悪を強行しましたが、「研究者の使い捨てを進め、研究を劣化させるものだ」と指摘されています。

 全大教は、「国立大学改革プラン」について「政府が大学を産業政策の中に組み込み、産業競争力強化の観点だけに立った大学改革を行わせようとするものだ」と批判。「大学の自治を破壊し、国立大学の責任と自主性を蔑(ないがし)ろにする」と強調しています。


国立大 文科省が強化 世界の頭脳、丸ごと誘致

月刊私塾界(1月7日)

 文部科学省は来年度から、海外の世界トップクラスの大学研究者を研究室スタッフを含めて丸ごと日本の大学に誘致する方針を決めた。「ユニット誘致」と名付け、まず京都工芸繊維大、北海道大の国立2大学で開始予定。国立大の機能強化の一環で、国内初の取り組みとなる。今後、大学のグローバル化を加速させるため、国立大を中心に実施校を広げていく方針だ。

2013年12月24日

日本経団連、「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」

日本経団連
 ∟●本文「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について(2013年12月17日)」

イノベーション創出に向けた国立大学の改革について


2013 年 12 月 17 日
一般社団法人 日本経済団体連合会


 激化するグローバル競争を勝ち抜くにあたり、既存の製品や生産方法の改良による「プロセス・イノベーション」に加え、革新的な製品・サービスによって他社と差別化する「プロダクト・イノベーション」が企業にとって極めて重要となっている。こうしたイノベーションを実現するためには、先端的な基礎研究や自由な発想と、これを支え更には産業化に結び付ける世界レベルの優秀な人材の育成が不可欠である。産業界は、こうした役割を大学が担うことを強く期待している。

 諸外国では、イノベーション創出における大学の重要性を認識し、国際競争力の強化に積極的に取り組んでいる。他方、わが国については、これまで経団連でも大学の教育・研究・産学連携等に関する多くの提言を行ってきたが、依然として改革すべき多くの課題が残されている。 こうしたなか、安倍政権は、「日本再興戦略」において、大学改革や人材力の強化を成長戦略の文脈で捉えて積極的に取り組む旨を表明するとともに、産業競争力会議において具体的な議論を進めてきた。これを踏まえ、文部科学省は、「国立大学改革プラン」(以下「プラン」)を、11 月 26 日に公表した。

 国立大学は、2004 年の法人化から来年で 10 年を迎える。今こそ真に国際競争力のある大学に改革することで、イノベーションの創出に貢献していくことが求められる。こうした観点から、今回の「プラン」で示された方向性は評価できるが、産業界から見て、踏み込み不足の面も多々存在する。そこで、国立大学の実効ある改革を実現するための方策について、本年3月の「英国高等教育調査ミッション」の成果等も活用しつつ、以下の通り提言する。

…以下,略… 


2013年12月12日

新刊紹介、「危機に著面している日本の大学-新自由主義と大学ガバナンス」

日本科学者会議

合同ブックレット『危機に著面している日本の大学-新自由主義と大学ガバナンス』(日本科学者会議大学問題委員会編、合同出版発行)12月上旬

2013年12月06日

東京私大教連、「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

東京私大教連
 ∟●中教審大学分科会組織運営部会「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

中教審大学分科会組織運営部会「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見


2013年12月1日
東京私大教連中央執行委員会


◆私立大学の現状に対する無理解について

 素案は、私立大学の現状に対してあまりにも無理解であると言わざるを得ない。財界による一面的な主張を前提にしており、客観的な現状分析を著しく欠いている。教職員組合をはじめとする大学関係者による開かれた議論を行うべきである。
 「はじめに」において、「権限と責任の所在が不明確ではないか、大学として意思決定するまでに時間がかかり過ぎるのではないか、といった疑問となって、近年、経済界等から大学のガバナンス改革の必要性について問題提起されるようになっている」と述べ、経済同友会の「私立大学におけるガバナンス改革-高等教育の質の向上を目指して-」を出典として挙げている。経済同友会の同提言に対しては、理事長の権限の無条件の拡大を要求する暴論であり、様々な批判が提示されている。財界の主張を検証なく前提とすることはやめるべきである。

 素案は随所で、「…指摘がある」として実証的な現状把握もなしに、大学を経済活動に従属させようとする財界の声高な主張の受け売りに基づいて、拙速な「ガバナンス改革」を実施しようとしていることは重大な問題である。

 私立大学を設置する学校法人のなかには、創立者一族が学園経営・大学運営の実権を握り続けている「一族支配」の学校法人や、理事長の「ワンマン支配」による私物化と専断的な学園経営・大学運営が行われている学校法人が存在する。こうした学校法人においては、教授会は教学事項に関しても審議権・決定権を奪われ、学長は理事長が任命するか、もしくは理事長が兼任するなど、非民主的な管理運営がなされている。不祥事の多くはこうした大学において発生している。
 素案が提起する「ガバナンス改革」は、「高等教育の質の向上」につながるどころか、一部私立大学の専断的経営をいっそう助長し、私立大学の不祥事をいっそう多発させる事態を招くものである。

……以下,略……


2013年11月27日

文科省、国立大改革プラン

■文科省
 ∟●国立大学プラン(2013年11月)

6.(4)人事・給与システムの弾力化

◆運営費交付金について、必要額を確保した上で退職手当にかかる配分方法を早期に見直し、併せて競争的資金制度において間接経費30パーセントを確保しこれを活用することにより、人事・給与システム弾力化がさらに加速

◆各大学の改革の取組への重点支援の際に、年俸制の導入等を条件化

◆特に、教員の流動性が求められる分野において、改革加速期間中に1万人規模で年俸制・混合給与を導入
(例えば、研究大学で20%、それに準ずる大学で10%の教員に年俸制を導入することを目標に設定)

◆年俸制の趣旨に沿って、適切な業績評価体制を整備
優秀な若手・外国人の力で大学力を強化するため、シニア教員から若手・外国人へのポスト振替等を進める
意欲的な大学を資金面で積極支援し、改革加速期間中に1,500人分の常勤ポストを政策的に確保することを目指す

○各大学の取組例
大阪大学
世界的に優秀な教員に対して、「大阪大学特別教授」の称号を付与するとともに、「特別教授手当」(年間最高600万円)を支給。このほか、業績変動型の年俸制やクロス・アポイントメント制度等の柔軟な人事・給与システムを導入

北陸先端科学技術大学院大学
外国人研究者や企業の研究者等、多様な人材の確保及び流動性を更に促進するため、新規採用者及び現職者について年俸制の導入を決定

第3期には、国内外の優秀な人材の活用によって
教育研究の活性化につながる人事・給与システムに

2013年11月25日

経済学分野の教育「参照基準」の是正を求める全国教員のネット署名

ネット書名サイト

経済学分野の教育「参照基準」の是正を求める全国教員署名

 
日本学術会議経済学委員会 御中

 私たちは、貴委員会が分科会を設けて作成作業にあたっている「大学教育の分野別質保証」のための「専門分野(経済学)の参照基準」について、私たちの知りえた現在の素案の内容から判断して、それが経済学の教育と研究における自主性・多様性、および創造性を制約するものになりかねないという重大な懸念を抱いています。

 私たちも、高等教育の普及のもとでの「質の保証」を国際的な視野にもとづいておこなうために専門分野ごとに「参照基準」をつくることの意義を否定しません。しかし、そのような「参照基準」は、教育内容・カリキュラムの標準化をはかるものではなく、それぞれの専門分野の教育にあたる大学・学部・学科とその教員たちの自主性と多様性を前提としたものでなければなりません。「教育の質」「国際的通用性」といううたい文句のもとに一定のモデルを押し付けるものになれば、「参照基準」は高等教育の画一化を促進するだけのものになるでしょう。私たちは、文部科学省の依頼にこたえて学術会議が専門分野ごとの「参照基準」作成の課題を引き受けたのは、「日本の科学者コミュニティを代表する機関」として、それぞれの専門分野で研究と教育をおこなっている科学者の自主性と多様性を前提とした「参照基準」を作成することによって、教育面においても質の保証と自主性・創造性の確保を両立させるためであったと考えます。

 実際に、学術会議が2010年7月22日付けで文部科学省におこなった「回答:大学教育の分野別質保証の在り方について」においても、「大学教育の多様性を損なわず、教育課程編成に係る各大学の自主性・自律が尊重される枠組みを維持すること」への留意が求められ、「作成の手引き」においても、「参照基準では、あくまで一定の抽象性と包括性を備えた考え方を提示するに留め、それを参照した各大学がそれぞれの理念と現実に即して自主的・自律的に具体化する」「カリキュラムの外形的な標準化を求めるコアカリキュラムではない」ことが確認されています。

 しかし、現在上記分科会で審議されている経済学分野の「素案」は、そのような慎重さを欠いています。経済学は合理的選択の科学であり、歴史・制度・思想などは副次的な要因にすぎないという新古典派的な経済学観が自明なものとして想定され、「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」が基本であり、それに「統計学」を加えたものを基礎科目とし、他のいくつかの科目をその応用分野とする「経済学の体系」が示され、このような「経済学の体系」に合わない科目は排除ないし周辺化されています。具体的に言えば、現代の経済にその資本主義的な特質からアプローチする「政治経済学」(マルクス経済学だけとは限りません)は全面的に排除され、歴史的要因・制度的要因・思想的要因にかかわる科目はすべて周辺に追いやられています。

 経済学は社会科学であり、合理的な選択というのも、歴史的、制度的、政治的、そして思想をも含む文化的要因によって形成された状況のもとでの選択ではないでしょうか。経済領域の歴史、制度、政策、思想、そして社会とともに発展した経済学自体の歴史についての教育が周辺的分野にすぎないというのは、経済学についての特定の見方に基づく区分にすぎません。20世紀以降の経済学(Economics)において、ミクロ経済学とマクロ経済学が発展したことはその通りですが、その母体となった18世紀後半以来の政治経済学(Political Economy)は近代の経済の歴史的・制度的特質の認識の上に立つものであり、その現代的な継承と展開は多くの経済学者によって研究され教育されています。また、理論を基礎として応用に進むだけが研究と教育の道ではなく、現実の社会的・経済的問題に取り組むなかから理論を発展させていく道もあるはずです。このように考えると、現在「分科会」が準備している「素案」は、特定の「経済学」観に基づいたコアカリキュラムを想定する偏ったものにすぎません。それは日本の科学者のコミュニティを代表するはずの学術会議が作成する「参照基準」としてふさわしくありません。

 今後、大学進学年齢期の人口の急激な減少が見込まれるなかで、大学教育組織の日本全体としての規模は縮小に向かうことが予想されています。そのなかで、上記のような偏った内容の「参考基準」が採択されるならば、それが経済学関係の学部・学科の破壊的リストラクチャリングの指針として用いられかねません。それは経済学教育の画一化を急速に進行させ、経済学が社会科学としてもつべき独立性・創造性の喪失につながるでしょう。この署名をもって、私たちは経済学研究者および教育者として、「参照基準」の上記のような偏った内容の是正を、強く求めます。

2013年10月28日

署名呼びかけ人 
伊藤正直(大妻女子大学教授、日本学術会議連携会員)
岡田知弘(京都大学教授、日本学術会議連携会員)
八木紀一郎(摂南大学教授、日本学術会議連携会員)
有賀裕二(中央大学教授、進化経済学会会員)
伊藤誠(東京大学名誉教授、日本学士院会員)
小野塚知二(東京大学教授、政治経済学・経済史学会会員)
片岡 尹(相愛大学特任教授、信用理論研究学会会員)
田中洋子(筑波大学教授、社会政策学会会員)
宮川彰(首都大学東京名誉教授、マルクス・エンゲルス研究者の会会員)
宮本憲一(大阪市立大学・滋賀大学名誉教授、日本財政学会会員)
本山美彦(京都大学名誉教授、日本国際経済学会会員)
森岡孝二(関西大学教授、経済理論学会会員)

参考資料
1.2013年10月5日 経済理論学会要望書 http://jspe.gr.jp/drupal/node/107
2.2013年11月5日 進化経済学会要望書 http://www.jafee.org/sanshokijun.html
3.日本学術会議経済学委員会 経済学分野の参照基準検討分科会 議事次第 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/keizai/giji-sanshoukijun.html
(2013年11月18日時点では、11月12日に開催された第7回委員会の提案1として経済学分野の参照基準(原案)が掲載されています。)
4.2013年12月4日 日本学術会議公開シンポジウム「大学で学ぶ経済学とは~学士課程教育における参照基準を考える~」の案内チラシ http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/182-s-1-1.pdf


2013年10月13日

私学ずさん経営、監視強化…立ち入り検査可能に

読売新聞(2013年10月13日)

 経営破綻に陥るなどした学校法人に対する立ち入り検査などを可能にするため、政府が私立学校法を改正する方針を固めたことが12日、分かった。

 大学や専門学校、幼稚園の廃止で学生にも混乱が広がった学校法人「堀越学園」の解散(群馬県高崎市)の例を教訓に、問題を抱える法人を早い段階から把握する狙いがある。

 改正案では、学校法人の運営が混乱するなどの「重大な問題」が生じた場合、文部科学省や都道府県は実態を把握するため、立ち入り検査ができると規定。法令違反などが発覚すれば改善命令を出すほか、法人の財産を流用するなどした役員に対する解職命令も明記する。法人の解散がほぼ決まった時点で、新規入学者の受け入れを停止させたり、在校生の転学を命じる措置なども検討している。年明けの通常国会への法案提出を目指す。


2013年10月04日

段階評価の新共通テスト創設、センター試験に代え-再生会議原案

時事通信(2013/10/03)

 政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は3日までに、1点刻みの大学入試センター試験に代え結果を段階別に示す新しい共通テストと、在学中に学習到達度を測るテストの2種類を創設することを柱とした大学入試改革の原案をまとめた。
 11日の会議で議論し、11月中にも安倍晋三首相へ提言する方針。どちらのテストも複数回受けられるようにする方向だが、具体的な制度設計などは中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)でさらに議論する。
 現役の高校生への影響を避けるため、導入時期は早くても5~6年後になる見通し。
 センター試験に代わる新テストは、受験生を段階別の点数グループに分けて評価。各大学は結果を基に、論文や面接などを加味して入学者を選抜する。
 到達度を測る新テストは、基礎的な学力の到達度を確かめる。希望者のみが受験し、大学入試や高校卒業認定には使わない方針という。

2013年09月13日

学校法人 解散命令に至る前段階の措置創設へ、中教審大学分科会

全私学新聞(2013年9月13日)

実地調査や役員解職命令など可能に
学法分科会長が検討結果報告

 中央教育審議会大学分科会(分科会長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は9月12日、三田共用会議所で第115回会合を開いた。その中で、学校法人に対する解散命令等の法制度の課題と今後の在り方について、検討結果の報告があった。
 報告を行ったのは、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会で分科会長を務める日髙義博・学校法人専修大学理事長・大学長。同分科会は平成24年10月、著しく重大な問題を抱えていた群馬県の堀越学園について審議し、解散命令が適当と文部科学大臣に答申した。その審議の中で、問題がある学校法人に対する制度的手段が実質的に解散命令しかないことなど、現行制度の課題を認識。今後の対応の在り方について検討を重ねてきた。
 同分科会は新たな対応の在り方として以下の4点を挙げた。重大な問題があるとみられる学校法人について「①実態把握のための実地調査が可能な仕組みとすること」、実際に問題がある場合には「②改善等のために必要な措置の命令」、「③役員の解職命令」、「④入学者の受け入れ停止や円滑な転学のための措置の命令」、これらを可能とすること。①は、現行制度では調査を受ける学校法人の任意の協力が必要で、問題が重大なほど逆に調査を拒否される可能性があることを踏まえている。②は現状の行政指導には法的拘束力がなく、事態が改善されない場合は解散命令という最終手段に至ってしまうため、段階的措置が必要だという観点による。また、②③④に関しては行政による権限乱用を防止するため、命令を行う際には私学関係者等によるチェックの仕組みを確保する必要がある、としている。法改正を含む提言であるため、今後は通常国会のスケジュールを意識して案を詰めるという。


2013年08月19日

日本の異常 大学教育

しんぶん赤旗(2013年8月19日)

日本の異常 大学教育

日本再生の柱(安倍政権)と言いながら
毎年、予算削減の怪


 安倍晋三政権が「世界の中で競争力を高め、輝きを取り戻す『日本再生』のための大きな柱」(教育再生実行会議提言)と位置づけるのが、大学教育です。ところが大学教育予算は10年連続で減らされ、増額される気配はありません。(浜島のぞみ)

各国と比較最低の水準

グラフ:国立大学法人運営費交付金の推移
 高等教育(大学や高等専門学校)の予算を国際比較すると、日本のお粗末さは一目瞭然です。

 経済協力開発機構(OECD)諸国のなかで、国内総生産(GDP)に対する高等教育機関への公財政支出は平均1・4%。これに対し、日本は0・7%と最低水準です。(図)

 さらに、高等教育機関への公財政支出の伸び率をみると、この10年で各国が支出を増やし、なかでも韓国は1・8倍に達しています。それなのに、日本はほぼ横ばいのままです。教育に対する姿勢の違いは明らかです。

 日本では、2004年の国立大学法人化を起点に、大学側の裁量で使える運営費交付金が、毎年、およそ1%ずつ減らされつづけています(図)。運営費交付金の8割程度を占めるのは「基盤的経費」。最低限の研究費、人件費、水光熱費、事務費など、大学運営に必要不可分な予算です。

東大と京大廃止に匹敵

 文部科学省国立大学法人支援課の担当者は「大学サイドから『予算が厳しい』という声が聞こえてくる。運営に支障をきたさないよう、削減に歯止めをかけ、予算を獲得していきたい」と話します。

 ところが安倍内閣は、概算要求でシーリング(上限)のしばりをかけ、運営費交付金を1%ずつ減額しつづける方針を変えていません。予算総額を減らし、特定の研究に重点配分する“アメとムチ”を続ける姿勢です。

 大学法人化以降、政府は、新しい学部開設やプロジェクトなどに対して審査のうえで交付する「競争的資金」を推進。基盤的経費とは別建てで、短期間で成果をあげる研究を優遇しています。

 国立・私立・大学で構成する「学術研究懇談会」は5月に提言を発表し、「(国は運営費交付金を)わずか10年間で1600億円も削減した。これは東大と京大の廃止に匹敵する額だ」と告発。「基盤的経費を削る方向性は研究者や大学を養わないことと同じ。国際競争力を確実に低下させる」と危機感をあらわにしています。

研究費少なく科学的検証できません

 大学キャンパス内の学生食堂や付属病院の廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製する循環システムの研究をしている山梨大学大学院の竹内智教授(工学博士)を訪ねました。

 実験室には大型の廃油回収タンクや精製装置が並びます。

 竹内教授は「教育・研究のためには科学的な測定に基づいて検証することが必要です。しかし、研究費がわずかなために計測機器を買えず、検証できない」と嘆きます。

 燃料へ精製する機械自体が高額であることに加え、成分分析器は1台で数百万円。十数項目の成分分析にそれぞれ1台ずつ必要です。

 バイオディーゼル燃料に関心が高まるなか、竹内教授の研究室では市民公開講座を開催してきました。「市民が持ち込む廃食用油が実用に適するかどうか調べたくても、測定機器が備わっていないためにできません」。研究を地域社会に還元できない歯がゆさを訴えます。

 資金を競争で獲得させるやり方では、すぐ息切れしてしまい、共同研究も進みません。

 「教育費・研究費がしわよせを受け、学生の基礎学力の低下にもつながるのが教育予算削減の問題です。全体的な底上げこそが必要です」


2013年08月08日

文科省、研究力に応じて22大学等に計64億円配分

リセマム(2013年8月7日)

 文部科学省は8月6日、2013年度「研究大学強化促進事業」の支援対象機関と配分額を発表した。22の大学と研究機関に計64億円支給する。

 同省では、世界水準の優れた研究活動を行う大学や研究機関の増強を目指し、2013年度より研究大学強化促進事業を開始。指標に基づく評点とヒアリング審査に基づく評点に基づき合議審査を行い、支援対象機関と配分額を決定した。

 配分額は、4億円が東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学の4大学。

 3億円が筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学、電気通信大学、大阪大学、広島大学、九州大学、奈良先端科学技術大学院大学、早稲田大学の9大学と自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構、情報・システム研究機構の3機関。

 2億円が北海道大学、豊橋技術科学大学、神戸大学、岡山大学、熊本大学、慶應義塾大学の6大学。

 支援期間は10年で、5年後に見直し・入替えも検討するという。


2013年07月29日

上位10大学に100億円補助か…世界大学ランキング国内大学の順位

リセマム(2013年7月29日)

 文部科学省は4月にまとめた「人材力強化のための教育改革プラン」の「産業競争力強化のための国立大学改革」において、秋入学や外国人積極採用、英語による授業などを進め「世界大学ランキングトップ100に10校、国際的存在感を増大」するとしている。

 また自民党は参議院選挙公約において、今後10年間で世界大学ランキングトップ100に日本の大学が10校以上入ることを目指し、大学のガバナンス改革、大学経営基盤の強化、教育・研究の高度化、外国人教師の増強を推進することを掲げている。

 7月29日には、文部科学省が世界ランク入りを支援するために、10大学に対して100億円補助することを2014年度予算の概算要求に盛り込むとの報道もあり、Twitterなどで話題になっている。

 これに対して文部科学省では、「概算要求に盛り込もうと、現在、教育再生実行会議で提言に盛り込んでいる段階で、まだ来年度の概算要求に入れたわけではない」としており、100億円という金額についても決まっていないとしている。

 文科省は、これまでも外国人教員の積極採用や、海外大学との連携、英語による授業のみで卒業可能な学位課程の拡充など、国際化を断行する「スーパーグローバル大学」(仮称)を重点的に支援するとしており、今回の100億円補助もその動きの一つと考えられるだろう。

 ではこの世界大学ランキングとはどのようなものなのか、また国内大学のランキングはどうなっているのだろうか。

 世界大学ランキングは、世界中の高等教育機関をさまざまな指標により評価し、ランキングとして定期定期に発表されているもの。英クアクアレリ・シモンズ社の「QS世界大学ランキング(QS)」、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング(THE)」、上海交通大学の「世界大学学術ランキング(ARWU)」が主要3ランキングとされている。

 最新の、国内上位大学のランキングは以下のようになっている。

◆THE世界大学ランキング(THE)2012-13
27位 東京大学
54位 京都大学
128位 東京工業大学
137位 東北大学
147位 大阪大学

◆世界大学学術ランキング(ARWU)2012
20位 東京大学
26位 京都大学
83位 大阪大学
96位 名古屋大学
101-150位 北海道大学

◆QS世界大学ランキング(QS)2012
30位 東京大学
35位 京都大学
50位 大阪大学
65位 東京工業大学
75位 東北大学

 なお、国内大学が数多くランキング上位に入っている「QSアジア大学ランキング2013」の国内上位10大学は、下記の結果となっている。

◆QSアジア大学ランキング2013
(1)9位 東京大学
(2)10位 京都大学
(3)13位 東京工業大学
(4)15位 大阪大学
(5)17位 東北大学
(6)18位 名古屋大学
(7)20位 九州大学
(8)24位 北海道大学
(9)32位 慶應義塾大学
(10)34位 筑波大学


[同ニュース]
大学世界ランク入り支援、10校100億円補助

2013年05月20日

なんとまぁ! 立命館アジア太平洋大学は教育熱心で交付金を手厚く配分する? 最低の成長戦略

■FNN(2013/05/18)

……安倍首相は、「世界で勝つ」をキーワードとした、成長戦略の第2弾を打ち出した。
安倍首相は「きょう、私はここで正式に、『農業・農村の所得倍増目標』を掲げたいと思います」と述べた。
17日、安倍首相が掲げた成長戦略の第2弾。
 今後10年間で、農業・農村の所得の倍増を新たに掲げ、農地の集約を図るほか、農産物の輸出を倍増させる方針を表明した。
 安倍首相は「現在、340兆円の世界の食市場の中で、日本の農産物・食品の輸出額はわずか4,500億円程度。こんなもんじゃないはずなんです」と述べた。
また、安倍首相は「あす、大分県にある立命館アジア太平洋大学に伺います。ここは教授陣も学生も、約半分が外国籍です」と述べた。

キーワードは「教育の国際化」。
 安倍首相は「学生生活を通じて、世界中の文化に触れることができます」と述べた。
安倍首相は、世界78の国と地域、およそ2,500人が、海外からの留学生という立命館アジア太平洋大学を例に挙げ、英語による授業など教育熱心な大学に対し、交付金を手厚く配分していくことを示した。


2012年09月14日

国際人権規約社会権規約(A規約)中等・高等教育の漸進的無償化条項、日本政府ついに留保を撤回!

■日本私大教連
 ∟●News Letter No.101(2012年9月12日)

国際人権規約社会権規約(A規約)
中等・高等教育の漸進的無償化条項
日本政府ついに留保を撤回!

 野田内閣は9月11日の閣議において、国際人権現約のうち「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約、A規約)の13粂2(b)(c)項、中等教育・高等教育の「漸准的無條化条項」に対する留保の撤回を閣議決定しました。日本が同条約を批准した1979年以来、実に33年の年月を経て、ついに留保撤回が実現しました。同(c)項「高等教育の漸進的無償化条項」については、日本私大教連や国庫助成に関する全国私大教授会連合はじめ多くの大学関係団体、大学関係者が、長年にわたり政府に対して留保撤回を求め、さまざまな運動を積み重ねてきまLた。今回の閣議決定は、運動の成果がようやく実を結んだものであり、たいへんに画期的なことです。
 衆議院文部科学委員会委員の宮本岳志議員事務所によると、政府は11日23時30分(NY時間9月11日午前10時30分)に国連に通告書を送付、国連はこれを即受理し、各国に「回状」を出す予定とのことです。
 今後、政府が高等教育の学費無償化に向けて実効性のある具体的な政策を計画的に実施するよう、私大助成署名はじめとする私たちの運動をいっそう強めていくことが求められます。

◆国際人権規約社会権規約13条抜粋
1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a)初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b)種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c)高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

2011年02月24日

署名のお願い 「朝鮮学校への「高校無償化」制度即時適用を求める大学関係者の要請書」

「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書

 朝鮮学校にいわゆる「高校無償化」制度の即時適用を求める大学関係者の要請書を作成しました。要請書をお読みいただき、賛同いただけるようでしたら、2月27日(日)正午までに下記の要領でご署名をお願いします。

【署名の仕方】
 下記の署名用フォームのページにアクセスし(携帯からでも可能)、必要事項を記入のうえ、送信してください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/9f2ca06b140640

※政府に提出する署名にはお名前と所属大学のみを記します。職位はデータの客観性を担保するために念のために確認させていただくものです。不記入でもけっこうです。

※今回の呼びかけは「大学関係者として」という立場からのものです。何らかのかたちで大学に職を得ていれば教職員の別、常勤・非常勤・有期雇用などの別は一切問いません。もちろん国籍・居住地の別も問いません。

※メッセージをご記入いただいた場合、政府に提出するとともに、報道関係者に公開する可能性があることをご了解ください。不記入でもけっこうです。

※アクセスが集中して送信できない場合は、お手数ですが、しばらく待って再度送信してみてください。その他、ご不明の点については次の問い合わせ先にご連絡ください。
問い合わせ先: msk_univアットyahoogroups.jp

※最新情報は下記ブログにて更新予定です。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/

2011年2月 日

内閣総理大臣 菅直人様
文部科学大臣 高木義明様
内閣官房長官 枝野幸男様

朝鮮学校への「高校無償化」制度即時適用を求める大学関係者の要請書

  「全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」ことを目的に設けられた公立高校無償化・高等学校等就学支援金制度(以下「高校無償化」制度)が始まって間もなく1年を迎えようとしていますが、いまだ朝鮮学校の生徒には就学支援金が支給されていません。大学はいま入試シーズン真っ只中ですが、公私立の高等学校、高等専修学校、朝鮮学校以外の外国人学校の生徒らは同制度の恩恵を受ける一方で、朝鮮学校の生徒のみ「安心して勉学に打ち込め」ない状態で受験せざるを得ないという露骨な格差が生じています。わたしたちはこの異常な事態を決して容認することができません。

 政府は、「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用については、「教育上の観点から客観的に判断するものであって、外交上の判断などにより判断すべきものではない」と国会の場などで明言してきました。ところが、幾度も適用の判断を先送りにしたあげく、昨年11月23日の延坪島砲撃を受けて、「北東アジア地域全体の平和と安全」なる観点から手続きを「停止」しました。これは誰が見ても矛盾であり、外交問題を朝鮮学校への就学支援金支給に転嫁する措置に他なりません。そうした揺れ動く政府の対応の影響をも受けながら、大阪府や東京都をはじめとする複数の都道府県では、長年にわたって朝鮮学校に支給してきた教育助成の「中断」「留保」などの措置をとるにいたっています。さらに、今年から特定扶養控除の減額がはじまり、高校生相当の年齢の子どもをもつ保護者は増税となります。つまり、朝鮮学校に子どもを通わせる保護者には、幾重もの不利益が課せられることになります。

 20世紀の日本は朝鮮の民族教育を弾圧してきました。植民地支配下での民族教育の監視と弾圧、日本の敗戦後に広まった朝鮮人学校の強制閉鎖措置、その後自主的に再建された朝鮮学校にも様々な排除の政策がとられてきました。昨年来の政府・地方自治体の一連の措置は、まさにその歴史に連なるものであるといわざるを得ません。

 わたしたちは、4月に遡って朝鮮学校に就学支援金制度を即時適用することを、強く要求します。

呼びかけ人(五十音順)
板垣竜太(同志社大学)、市野川容孝(東京大学)、鵜飼哲(一橋大学)、内海愛子(早稲田大学)、宇野田尚哉(大阪大学)、河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、高橋哲哉(東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(大阪大学)、仲尾宏(京都造形芸術大学)、中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、布袋敏博(早稲田大学)、水野直樹(京都大学)、三宅晶子(千葉大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学)


2010年04月27日

科研費、「ガバナンス強化すべき」と結論

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4413292.html

 事業仕分け2日目。午後には日本学術振興会が仕分けの対象となり、「税金を使って事業をしているのに、必ずしもお金の流れが透明でないところがある」などと指摘がなされました。

 日本学術振興会は、科学研究費の補助金の配分や若手研究者の育成などを行う文科省の独立行政法人で、26日は、その科研費の配分が適正に行われ、効果的に使われているのかを中心に議論が進みました。……


2010年04月20日

研究費1千万円→市民講座を年1回 研究者に義務化?

http://www.asahi.com/science/update/0419/TKY201004190202.html

 国から1千万円の研究費をもらったら年1回、子どもや市民に自分の研究をわかりやすく説明する――来年度以降、研究者がこんな必要に迫られる可能性が出てきた。

 政府の総合科学技術会議の調査会で2011年度から始まる科学技術基本計画の素案が示され、「1千万円以上の研究費を得た研究者には、小中学校や市民講座でのレクチャーなどの科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求める」との文言が盛り込まれた。……


2010年04月19日

日本映画大学など10校の設置諮問…文科相

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100416-OYT1T01182.htm

 川端文部科学相は16日、日本映画大学(川崎市)など来春の開校を目指す10校の設置認可を大学設置・学校法人審議会に諮問した。

 同大学は、認可されれば、映像関連では国内初の単科大学となる。福山市立女子短大(広島県)は来春の学生募集をやめ、福山市立大に改組しての大学新設を目指す。諮問のあった大学などは次の通り。……


[同ニュース]
ファイル:数字・言葉・経済 大学審議会に10校の認可諮問
文科相が大学など10校新設諮問 国内初の映画単科大も
福山市立大など10校の設置を諮問