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 カテゴリー 東日本大震災

2011年03月16日

日本科学者会議緊急アピール「大震災・大津波の被災にあたって全面的な復興支援が不可欠」

日本科学者会議
 ∟●日本科学者会議緊急アピール

日本科学者会議緊急アピール

 3月11日に東日本を襲った巨大地震と大津波によって、1万数千人とも推定される多くの住民が尊い命を奪われたり、行方不明となっています。犠牲となられた方々に日本科学者会議として心より哀悼の意を表し、被災者の皆さんに心よりお見舞い申し上げます。多数の行方不明者の中から一人でも多くの方々が一刻も早く救出されることを、切に願っています。

 被災地では45万人に達する人々が避難を余儀なくされ、それぞれに孤立した状況下で水、食料、暖房用の毛布・ストーブ等の欠乏・不足に苦しんでいます。被災者を救済しようという声が、いま日本中で急速に広がりつつあります。日本科学者会議としても組織をあげて災害実態の把握とそれを活かした救援活動に取り組む所存です。しかし、寒空の下で、水、医療資材、食料、燃料、衣類・防寒具など被災者の生存に最低限度必要な物資が決定的に不足しています。また、被災地では、停電が続く中で情報の収集発信がままならず、孤立した状態におかれています。国や地方自治体と民間企業等の総力を傾注して、急速かつ抜本的な救援態勢を構築する必要があります。例えば、現地に支社や店舗を持つ大企業の協力、日本海側航路や秋田県・山形県・青森県などで被害の軽微だった地域のインフラや陸送業者の活用など、可能なのに未着手のことがあります。日本政府の態勢はこの点で極めて不十分であり、緊急の対応を求めます。

 また何より、東京電力福島第一原子力発電所において、複数の原子炉が同時に、日本で過去に起こったことのない、極めて重大な放射能漏れを発生させています。政府や事業者の極めて不十分な発表によっても、放射線防護に関わる炉の中枢部分の機能喪失さえも懸念される事態となっています。

 日本政府と事業者は、今起こっている事態をすみやかに明らかにし、最悪の事態への進行を防ぐために何ができ、何をなすべきかを、全国・世界の英知を結集して検討し、実行していく責任があります。そして、住民に対して、事態の全容を分かりやすく説明し、今ある危険と今後事態が悪化する場合に取るべき対応について、十分な情報の提供と平易な説明を行う必要があります。

 現状では、断片的な現場の情報と、避難・室内待避の指示が出されるだけであり、冷静な対処を首相が求めても、むしろ住民の不安は極限に達していると言えます。十分な情報提供と、事態や取るべき対応についての科学的かつ平明な説明こそが、パニックを防ぎ、デマ情報を無力化し、国民の冷静な行動と協力を可能にします。それは、世界の日本への信頼を取り戻す道でもあります。日本政府と事業者に対し、広報体制の抜本的な見直しを緊急に求めます。また、私たちを含む全国・世界の多様な分野の科学者に、協力を求める態勢をつくるべきであることを指摘するものです。

 さらに、今回の大震災・大津波の被災状況の深刻さからみて、被災者の皆さんの生活の再建と安定化ならびに被災地の復興・再建には、日本政府による県や市町村などの地方自治体への全面的な復興支援が不可欠です。その際、阪神淡路大震災からの復興過程で多くの社会的弱者が取り残された経験から学んで、地域住民の生命と暮らしを最優先にした復興計画を策定することを、日本政府ならびに各地方自治体に強く要望するものです。

 創設以来国民の生活向上のために科学を発展させることをめざしてきた日本科学者会議は、困難な中でも、まずは住民の生存と健康のため、さらには希望住民本位の復興計画の策定に向け、広範な専門領域の会員の英知を結集するものです。また、会員・非会員を問わず、全ての科学者と研究機関に対し、救援に可能な全力を傾注することを訴えます。

2011年3月15日

日本科学者会議