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 カテゴリー 不正論文問題

2016年03月12日

滋賀医科大学、看護学科教授を懲戒解雇 教え子の修士論文を盗用・改ざん

クリスチャントゥデイ(2016年3月9日)

滋賀医科大学(大津市)は9日、教え子の修士論文を盗用・改ざんして、自身の論文として学会誌へ投稿していたとして、同大医学部看護学科の教授を懲戒解雇処分にしたと発表した。調査の結果、教授の論文は修士論文と95パーセント同じだったという。処分は1月28日付。

発表によると、不正があったのは、教授が2012年12月に単著で学会誌へ投稿した論文。昨年6月、この論文について「修士論文に酷似しており、盗用・改ざんに当たるのではないか」とする匿名の申し立てが寄せられ、大学が調査委員会を設置。関係資料の調査や関係者への聞き取りを行い、昨年12月に盗用と改ざんがあったと認定したという。

調査の結果、教授の論文は論述や数値データが修士論文のものと95パーセント同じで、修士論文から31カ所373行、また教授が教え子から受け取っていた修士論文の草稿から2カ所3行にわたって流用されていたという。教授は、この論文を単著の原著論文として発表した理由について、「(教え子の)修士論文作成者と連絡が取れなかったため、共同研究者としての立場で判断し、単著で投稿した」と説明していたというが、共同で研究した形跡はなく、教え子に連絡し、承諾を得る努力をしたことも認められなかったという。

また、教授の論文は、修士論文で用いられている調査データをそのまま用いて作成されているが、論文中に示されている調査期間と実際のデータ収集期間が食い違っており、実際にこの調査期間にデータの収集が行われた事実もなかったため、盗用だけではなく、改ざんもあったと認定したという。

調査結果ではその上で、「研究倫理規範を逸脱する不適切なものであっただけでなく、大学院生の研究指導にあたる教育者として、信義にもとる倫理違反があったものと認められた」としている。

問題の論文については、大学側からの勧告を受け、教授が関係学会に撤回と削除を申し出、関係学会が1月27日付で対象論文を取り消し処分にしている。

滋賀医科大学の塩田浩平学長は、「今回の事態を真摯(しん)に受け止め、今後の研究者倫理のより一層の徹底を図り、再発防止に努める」としている。なお、滋賀医科大学は教授の性別や年齢は公表していない。


2015年03月03日

26本131ヵ所に不正 大分大元講師2人の論文

大分合同新聞(2015/02/28)

 2012年に発覚した研究不正疑惑を調べていた大分大学は27日、医学部の元講師2人の論文計26本で、同一画像の使用や実験の数値データの書き換えなど、131カ所に捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと発表した。大学は2人に対し、不正が確認された論文の取り下げを求めている。国の補助金を使った研究もあり、返還も視野に関連を調べる。
 大学の説明によると、1997~2012年にかけて産科婦人科学講座にいた元講師(47)は、異なる論文でタンパク質の発現を見る画像を使い回し、細胞を刺激する化学物質の濃度の値を偽るといった不正が論文21本で123カ所確認された。02年ごろから不正があったとしている。
 元講師は事情聴取で画像の流用は認めたが「実験は誠実にした」と主張。だが大学は実験を裏付けるノートや資料が確認できなかったことなどを理由に、捏造や改ざんがあったと判断。「研究者としてのモラルが著しく欠如し、不正が常態化していた」と指摘した。
 08~13年まで麻酔科学講座にいた元講師(42)の論文5本にも8カ所で同じ画像やグラフを使う不正が確認された。講師は「データを取り違えた」と説明したが、大学は証拠がなく不正と判断した。
 2人とも調査報告書に異議は申し立てていない。2人は自主退職しているが大学は27日、産科婦人科学元講師が停職9カ月、麻酔科学元講師は停職3カ月の懲戒処分が相当とした。
 大学は明確な規定のない論文の保存期間を10年程度に定めたり、倫理教育の責任者を置く再発防止策を進める。会見した北野正剛学長は「社会からの信頼を大きく損ない、管理責任を重く感じている。不正防止を徹底したい」と話した。
 調査開始から2年以上たっていることについて、大学は「疑惑を一つ一つ調べるのに時間がかかった」と説明している。

2015年02月05日

論文不正、名古屋大が本格調査へ 金沢大も

日経(2015/2/4)

 東大や大阪大など24の大学の研究者らが発表した生命科学系の論文に不正の疑いがあると文部科学省に告発があった問題で、名古屋大は4日までに、疑いを否定できないとして論文2本を本格的に調査すると決めた。金沢大も論文2本を調査していることを認めた。

 名古屋大によると、2本の論文は2000年と02年に医学部の研究者らが執筆。画像に使い回しの疑いがあるなど不自然さを指摘されていた。文科省から連絡を受けて予備的調査を実施。疑いを払拭できないため、本格的な調査委員会の設置を決めた。

 金沢大は文科省から連絡を受け、論文2本で不正を指摘されていることを確認。広報室は「不正があるかないかを含めて調査している」と説明した。〔共同〕


2015年01月28日

群馬大の元教授「諭旨解雇相当」 採用時に不正論文提出

産経(2015.1.23)

 群馬大学は22日、採用時に不正な論文を研究業績として提出したとして、同大生体調節研究所に勤務していた40代男性の元教授=昨年8月末退職=を15日付で諭旨解雇の懲戒処分が相当とする決定をしたと発表した。

 同大学によると、元教授は以前、論文に不適切な画像を使ったとして問題となった東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授の研究室で特任講師を務め、筆頭著者として発表した3本の論文について東大から昨年末、「自ら捏造(ねつぞう)・改竄(かいざん)を行った」と不正を認定された。

 元教授はこの3本を含む計37本の論文を教授応募時の平成21年8月に群馬大に提出。同大の調査委員会は昨年8月、本人に聞き取りを申し入れたが応じず、書面で「不正の認識はなかった」と弁明したという。

 同大は「すでに辞めた教職員に懲戒処分はできないため、懲戒処分相当の措置とした。退職金は昨年8月に支払った」と説明した。


2014年12月27日

東大 論文不正に元教授ら11人関与と発表

NHK(12月26日)

東京大学は26日、濱田純一学長らが会見し、ホルモンの働きに関する論文など30本以上に不正が見つかり、元教授や当時学生だった研究員ら11人が不正に関わっていたとする調査結果を発表しました。
東大では、元教授らについて懲戒処分と退職金の返還を検討するほか、学長の報酬の10分の1を3か月間返納するとしています。

この問題は、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループが発表したホルモンの働きについての論文など51本に画像の切り張りなどが見つかったものです。
東京大学の濱田純一学長らは26日会見し、問題が指摘された論文のうち33本で、ねつ造と改ざんの不正があったと認定し、すでに辞職した加藤茂明元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったとする最終的な調査結果を明らかにしました。
大学では、加藤元教授ら当時の教員に対しては、すでに辞職しているものの懲戒処分に相当する可能性があるとし、退職金の返還を検討するほか、東京大学で学位を取得した当時の学生ら6人についても、学位の取り消しを審議するということです。
会見で、東京大学の濱田純一学長は「不正行為が行われたと認定された論文が多数に上り、学術の健全な発展を大きく揺るがしたことはまことに遺憾です。研究倫理の徹底を図りたい」と述べ、みずからの報酬の10分の1を3か月間返納することを明らかにしました。

元教授「心よりおわび」
今回の調査結果について加藤茂明元教授は、「不適切な論文に関して事態の収拾のためにたくさんの人に膨大な労力をおかけしたことについて、研究室と論文の責任者として心よりおわび申し上げます。また、論文の訂正の方法について不適切な判断があったことも重ねておわび申し上げます。ただ、論文の作成過程などに研究員に対して強制的な態度や過度の要求をしたことはありませんし、そのような意図を持って発言したこともなく、『不正行為が発生する環境を作り上げた』という調査委員会の認定は承服できません」と話しました。


2014年12月16日

科学研究の健全性向上のための共同声明

国大協
 ∟●科学研究の健全性向上のための共同声明

科学研究の健全性向上のための共同声明

 我が国の研究機関は、種々の学術分野で世界の拠点の一角を占め、数多くの 重要な成果を挙げてきた。このことは、我が国の研究者がノーベル賞をはじめ とする国際的な学術賞の受賞者に数多く含まれていることからも明らかである。
 その中にあって大学は、高等教育を通じて広く人材を育成するとともに、研 究活動の拠点として重要な役割を果たし、優れた研究成果を挙げてきた。
 学術分野における国際協力と競争が進む中で、我が国の大学が果たす役割は、 これからもますます重要さを増すと考えられる。

 一方で、研究費の不正使用、データのねつ造や改ざん、盗用に代表される研 究活動における不正行為が後を絶たないという問題が存在している。最近も、 研究費の不適切な使用、データねつ造等の論文作成における不適切な行為等の 研究活動に対する社会的な不信を招く事案が大学等の研究機関で多発している のは、残念ながら事実である。
 これまで、日本学術会議は、平成18年10月に声明「科学者の行動規範」を公表し、平成 25年1月にその改定を行うなど、研究不正問題に関して、科学者 コミュニティの代表機関として取組を進めてきた。また、各大学においても学 内に倫理委員会が設置され、研究不正の防止や疑惑が生じた際の対応を行う体 制が整備されてきた。
 政府においても、総合科学技術・イノベーション会議が、科学技術の研究に 関わる各主体に研究不正行為に対する不断の取組を求める意見具申「研究不正 行為への実効性ある対応に向けて」を決定した(平成 26 年 9 月 19 日)。また、 研究機関を所管する各府省により取組が進められ、例えば、文部科学省は、先 般、従来の研究における不正行為や研究費の不正使用に関わるガイドラインを 格段に充実させ、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(文部科学大臣決定) 」の策定(平成 26 年 8 月 26 日)及び「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の改正(平成 26 年 2月 18 日)を行ったところである。

 一般社団法人国立大学協会、一般社団法人公立大学協会、日本私立大学団体 連合会及び日本学術会議は、我が国の学術界が、日常的な研究活動における研 究の健全性を飛躍的に強化するとともに、研究者の育成において一人ひとりの 研究者の規範意識を高めるための対策を講じることによって、我が国及び国際 社会における学術研究に対する信頼性を回復して、さらにそれを高めていくことが急務であると考え、以下のとおり決意を表明し、我が国の学術界の責務と して、各団体が協力して研究の健全性向上のために活動することを宣言する。

1 大学等の研究機関は、世界における研究活動の中心の一つとしての役割を さらに高めていくため、研究活動における不正行為、研究費の不正使用を許 さず、世界の範たる健全な研究を遂行する。もし疑惑が生じた場合には、第 三者の協力を得つつ、組織の責任として、適切な方法で迅速・的確に対処す る。

2 研究活動における不正行為、研究費の不正使用の防止には予防的な措置が 不可欠であり、大学等の研究機関は、すべての研究者が健全な研究活動を実 践できるよう、広く研究の倫理を含めて、適切な学習プログラムの履修を義 務付けるとともに、これらが実効性あるよう、継続的に評価・審議していく。

3 大学等の研究機関及び日本学術会議は、我が国の科学者コミュニティの主 要な一員として、研究活動における不正行為、研究費の不正使用に対する厳 正な対処・予防のための学習プログラムの開発と普及に向けて相互に協力し、 我が国の科学研究に対する国内外の信頼を高めるために全力で取り組む。

平成26年12月11日

一般社団法人国立大学協会会長 里見進
一般社団法人公立大学協会会長 木苗直秀
日本私立大学団体連合会会長 清家篤
日本学術会議会長 大西隆

2014年12月13日

慈恵医大、新たに不自然データ 理事長ら給与返上

共同通信(2014/12/12)

 ノバルティスファーマ(東京)の降圧剤ディオバンを使った臨床研究のデータ操作問題で、東京慈恵医大は12日、狭心症などの発生数がディオバンに有利になる不自然な偏りがあったとの最終報告を公表した。

 研究責任者で既に退職した望月正武元教授の客員教授の称号を取り消し、栗原敏理事長、松藤千弥学長がそれぞれ給与の20%、10%を3カ月間返上すると明らかにした。

 大学の調査委員会が新たに入手したデータを基に検証した結果、不自然な偏りが判明。望月元教授が扱った症例に多く、基準に合わない症例を解析に含めていたケースも調査対象の半数近くに上っていた。


山梨大、論文の捏造・改ざんで元教授を諭旨解雇処分

毎日新聞(2014年12月12日)

 山梨大は12日、同大大学院医学工学総合研究部の教授が過去に公表した論文計4本で実験データの捏造(ねつぞう)や改ざんが判明し、諭旨解雇処分にしたと発表した。

 昨年10月に医学部の別の教授から申し立てがあり調査。その結果、4本のうち2本については、別の実験で得られた画像を使い回す「捏造」、2本で画像の明るさや縦横比を変更したりする「改ざん」が意図的に行われたと判断した。

 調査に対し、元教授は「画像を分かりやすく見せるためで不正だとは思っていなかった」と説明したといい、同大は元教授が論理をより明快に展開することにより、業績を高めようとしたことが動機とみている。

 同大の調査委員会は「論文の結論は変わらない」と結論付けたが、「研究倫理に反する」として、4本全てについて論文の取り下げを勧告する。また、同大は約30万円の研究費の返還を求める。元教授は昨年12月に退職しており、処分は今年11月4日付。


2014年12月12日

研究不正防止へ共同声明、学術会議と国公私立大学団体

時事通信(2014/12/11)

 日本学術会議と国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会は11日、「科学研究の健全性向上のための共同声明」を発表した。大学や研究機関が研究上の不正行為や研究費の不正使用を許さず、疑惑が生じた場合は迅速・的確に対処することや、協力して不正防止学習プログラムを普及させ、全研究者に履修を義務づけることを目指す。
 日本学術会議の大西隆会長(豊橋技術科学大学長)は文部科学省で記者会見し、赤崎勇名城大教授らがノーベル物理学賞を受賞したように、世界的に重要な成果が数多く上がっている一方で、理化学研究所のSTAP細胞論文などの不正行為や研究費の不正使用が後を絶たないと説明した。

2014年11月28日

早大准教授、論文盗用で懲戒解雇…不服申し立て

読売新聞(2014年11月21日)

 早稲田大学は21日、海外の研究者の論文原稿を盗用したとして、商学部の准教授(50)を懲戒解雇処分にしたと発表した。

 准教授は、「手続きが公正でない」などとして、大学に不服を申し立てたという。早大によると、学内機関誌「早稲田商学」に2001年と03年に掲載された英語の論文2点で、准教授が米国の大学院在学中の1995~98年に入手した論文の大半を盗用していた。元の論文は当時未刊行だったがその後公開され、学内の複数の教員の指摘を受けて今年7月に調査を始めたところ、それぞれ7、8割が盗用だったという。


2014年08月02日

東大論文不正、元教授がノートねつ造指示

NHK(8月1日)

東京大学の元教授のグループが発表したホルモンの働きに関する論文など43本に画像の切り貼りなどの不正が見つかった問題で大学の調査委員会は、1日、元教授が、不正が発覚しないよう実験ノートのねつ造を指示していたなどとする調査結果を公表しました。

この問題は東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループが発表した骨が出来る仕組みやホルモンの働きについての論文など43本に画像の切り貼りなどの不正が見つかったものです。
大学の調査委員会は1日、記者会見し、これまでに調査が終わった5本の論文について加藤元教授と当時の助教授ら合わせて4人が不正に関わっていたとする調査結果を公表しました。
このうち加藤元教授についてはねつ造や改ざんを直接行った事実は確認できなかったものの、研究員に対し、よい実験結果を出すよう強く求め、高圧的な態度で日常的に不適切な指導を行ったことが不正につながったと認定しました。
さらに論文を掲載した科学雑誌から不正の疑いを指摘された際に不正が発覚しないよう研究員らに画像のデータや実験ノートのねつ造などを指示していたとしています。
また残りの3人についても、論文の画像などのねつ造や改ざんをみずから行ったなどと認定しました。
加藤元教授は国から30億円の研究費を受けるなど日本を代表する分子生物学者の一人で、大学では、残りの38本の論文についても不正への関与を調べたうえ関係者を処分する方針です。

元教授がコメント
調査委員会の結果について加藤茂明元教授は、研究員らに実験ノートのねつ造などを指示したとされた点については、「私の不適切な判断がありましたことをおわび申し上げます」とする謝罪のコメントを出しました。
その一方で加藤元教授の不適切な指導が不正につながったとされたことについては、「事実を曲げて私の名誉を毀損しかねないもので、到底承服できない」と反論しています。

[同ニュース]
■東大研究論文不正「4人が関与」と認定 調査チーム
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000031818.html
■東大論文不正問題、4人の不正関与を認定 「懲戒事由に相当する可能性」も
http://www.j-cast.com/2014/08/01212116.html?p=all
■東大論文捏造(ねつぞう)問題調査結果 元教授ら4人が不正に関与
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00273734.html
■研究論文で不正、東大が4人の関与を認定
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140801-OYT1T50094.html
■東大論文不正:元教授強圧的指導 調査委「懲戒処分相当」
http://mainichi.jp/select/news/20140801k0000e040207000c.html

2014年07月29日

日本学術会議幹事会声明、「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

日本学術会議
 ∟●「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

日本学術会議幹事会声明
「STAP細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

 日本学術会議は、本年1月29日に理化学研究所(以下「理研」)発生・再生科学総合研究センター(以下「CDB」)から発表された STAP 細胞についての 2編の Nature 誌論文に、様々な不正が見いだされた問題に重大な関心をもち、3 月19日には会長談話「STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について」を発 表しました。その後、理研内部での自主的調査などの結果が報告され、この問題は一部の図版の不正な置き換えに止まらず、研究全体が虚構であったのではないかという疑念を禁じ得ない段階に達しています。2 編の論文は取り下げられ ましたが、STAP 研究の革新性を必要以上に強調した記者会見もあって広く社会 問題化したことに加え、指摘された研究不正の深刻さから、我が国の科学研究 全体に負のイメージを与える状況が生み出されています。

 日本学術会議は、昨今、我が国において科学研究の健全性を損なう事案が相次いだことを深く危惧し、声明「科学者の行動規範-改訂版-」1ならびに一連の提言2を発出するとともに、研究不正を防止するための研究倫理教育プログラムの開発を、文部科学省、日本学術振興会、科学技術振興機構等とともに進め ているところです。今回の STAP 細胞事案の主要な問題点を解明し、対処することができるかどうかは、今後の我が国の科学研究の在り方に大きな影響を与えるものであり、そのために役割を果たすことは研究者コミュニティの責務で あると考え、日本学術会議幹事会は以下の要望と見解を表明します。

1.本年6月12日に「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)が、理研の野依良治理事長に提出した「研究不正再発防止のための提言書」(以下「提言書」)には、今回の事案の経過と原因、さらに理研CDB の今後の在り方についての詳細な考察が述べられています。日本学術会議は、 野依理事長が同日「研究不正再発防止のための改革委員会からの提言を受けて」で述べたとおり、理研が「研究不正を抑止するために実効性あるアクシ ョンプランを策定し、早急に具体的な実行に移」すことを要望します。

2.「提言書」では、小保方氏の採用から、論文の発表と撤回にいたる経過の分析を踏まえて、「・・STAP問題の背景に、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、組織の構造的な欠陥があった」(「提言書」5頁以下)とし、さらに、「・・STAP問題が生じて以降、理研のトップ層にお いて、研究不正行為の背景及びその原因の詳細な解明に及び腰ではないか、と疑わざるを得ない対応が見られる」(「提言書」15頁)と指摘しています。本事案が一研究者の不正に止まるものではなく、防止する機会が何度もあったにもかかわらず、それらを漫然と見逃し問題を巨大化させた理研CDBの指 導層に、大きな過失責任があったという指摘は説得力のあるものです。日本 学術会議は、理研CDBの解体を求める「提言書」に対する理研の見解が早急 に示されることを要望します。

3.一方で、「提言書」で言及しているように、理研内にも問題の全容解明を目指し、自浄に向けて活動している研究者がいること、また理研CDBがこれまで若手の人材育成に貢献してきた結果として、現在も、今回の事案とは無関係に日々誠実に研究に取り組んでいる若手・中堅研究者がいることを忘れ てはなりません。理研CDBの抜本的な組織改変が行われる場合には、日本の生命科学の発展にとって極めて重要との観点から、これらの若手・中堅研究 者が、安心してその能力を発揮できる環境を整えることを要望します。

4.現在、研究不正に最も深く関わったとされる小保方氏が参加する STAP 現象の再現実験が始められ、関係者の懲戒については結論が先送りされると伝えられています。しかし、この再現実験の帰趨にかかわらず、理研は保存されている関係試料を速やかに調査し、取り下げられた2つの論文にどれだけ の不正が含まれていたかを明らかにするべきです。また、そこで認定された研究不正に応じて、関係者に対する処分を下すことは、この事案における関 係者の責任を曖昧にしないという意味で重要です。関係試料の速やかな調査による不正の解明と、関係者の責任を明確にすることを要望します。

5.「提言書」では、再現実験の監視、論文検証、及び理研による改革をモニタリング評価するために「理化学研究所調査・改革監視委員会」の設置と、その際に日本学術会議による援助・助言を得ることによって、理研改革に科学者コミュニティ及び社会の意見を反映させることを求めています。日本学術 会議は、6でも述べるように、我が国の科学研究における健全性を向上させることに責任があると認識しており、理研が健全性を回復するために行うすべての行動を支援する所存です。

6.研究不正問題に関して昨年来発生した諸事案や種々の対策に関わる提案に対応して、文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」をまとめつつあり、日本学術会議も積極的に協力しています。 このガイドライン案では、個々の研究者のみならず、所属する研究機関にも 不正防止の責任を果たすことを求めています。研究機関が、そこに所属する研究者の研究活動および研究費使用において不正が生じることのないよう、より積極的な役割を果たすことは、不正撲滅の実を上げるために極めて重要 です。日本学術会議も、我が国の科学研究における健全性を向上させることに責任を負う立場から、この考え方を支持し、研究機関等が不正防止や解明 の措置をとる際に協力を惜しみません。

2014年7月25日 日本学術会議幹事会

2014年07月24日

早大博士論文 杜撰な審査がまかり通るのか

読売新聞(2014年07月23日)

 博士論文がお粗末なうえに、大学内の審査も杜ず撰さんだった。

 理化学研究所の小保方晴子氏が早稲田大学に提出した万能細胞に関する博士論文について、早大の調査委員会は、盗用などの不正を認定し、「内容の信ぴょう性は著しく低い」と結論づけた。

 早大側の対応についても、論文の作成指導や審査体制に重大な不備があったと批判している。

 ところが、調査委は「博士号の取り消しには該当しない」と判断した。実験結果を偽った不正ではないという理由からだ。

 解せない結論である。

 小保方氏は、3年半前に下書き段階の「草稿」を誤って大学に出してしまったと弁明し、今年5月になって、「完成版」を調査委に改めて提出した。

 草稿を出したこと自体、研究者を目指す者として、うっかりでは済まされない行為ではないか。

 論文の完成版でさえ、研究の意義をアピールする序章の大半で、米国の研究機関の文章を丸写ししていた。論文の独創性が疑問視されても仕方がない。

 他の著作物の画像流用についても、小保方氏は「何の問題意識も持っていなかった」と調査委に語ったという。本人の未熟さは言うに及ばず、研究倫理や論文作成の基本をきちんと教えなかった指導教員の責任は重い。

 指導教員は審査の責任者でありながら、博士論文を精査しなかった。論文の合否判定を担う学内の審査会に草稿が出ていることすら気づかなかったのは問題だ。

 審査の形骸化も看過できない。審査会の委員が個々の論文を閲覧する時間は数分程度にすぎなかった。これでは、論文の中身をチェックするのは不可能だろう。

 博士号を授与するかどうかの最終的な決定権は大学総長にある。調査委の報告を受け、鎌田薫・早大総長は「内容を吟味して、学内での検討に入る」と述べた。

 早大が厳正な対処を怠れば、日本の博士号に対する国際的信用も揺るがしかねない。

 小保方氏の所属した研究科では、他の学生の博士論文にも疑義が指摘されている。早大には徹底した実態解明が求められる。

 政府は、科学技術の向上を目指し、博士を大幅に増やす政策を進めてきた。博士号の取得者は1990年代初めに比べて、1・5倍に増えた。

 だが、質は伴っているのだろうか。他の大学も、学位授与の審査体制を点検すべきだ。

2014年05月15日

富山国際大 元教授の論文盗用認定

読売新聞(2014年05月14日)

 富山国際大(富山市)の元教授(82)(資源工学)が同大地域学部教授だった2001年、大学が発行する紀要に掲載した論文の中で、他の研究者の著書を盗用していたことが13日、わかった。著者から指摘を受けた大学当局は先月、盗用を認めて著者に謝罪し、紀要から論文を削除するとともに、元教授の名誉教授称号を剥奪した。

 同大などによると、盗用が指摘されたのは2001年3月発行の「富山国際大学地域学部紀要」創刊号に掲載された元教授の論文「資源・環境・リサイクル―循環型社会をめざして―」。

 43ページの論文のうち15ページ分が、循環資源研究所(東京)の村田徳治所長(79)の著書「最新リサイクル技術の実際」(1993年、オーム社刊)の記述とほぼ一致していた。章の順序を入れ替えた以外は、章・節の題や図表もそのまま使用し、引用文献の記載もなかった。

 村田所長が今年3月、大学のホームページ(HP)で公開されている論文を見つけ、大学に盗用を指摘。同大は学内規定に基づき、中島恭一学長ら5人で構成する調査委員会を設置し、元教授への事情聴取などから盗用を確認した。

 元教授と大学側は4月に村田所長を訪問し、謝罪した。中島学長によると、元教授は「引用文献を示したつもりだった。軽率だったと痛感している」などと反省しているという。元教授は04年3月に退職しているため、懲戒処分の対象にはならない。

 同大は4月23日、HP上からこの論文を削除し、「大学の教育・研究者としてあるまじき行為。不正に気付くことなく、紀要を公開し続けたことを深くおわび申し上げる」とする謝罪文を掲載。紀要を送付した約200の大学などに紀要の破棄を求めた。

 中島学長は取材に対し、「著者と出版社にご迷惑をおかけした。再発防止に全力を挙げたい」と話した。教職員に倫理綱領の順守を徹底させ、今後は紀要の投稿者に対し、盗用などがないことを確認するチェックリストに記入させるなど再発防止策を講じるという。

 村田所長は「引用したなら参考文献として載せるのは常識。丸写しして自分の主張のように書いているのは、今の時代にあり得ないことだ」と憤っている。


2013年08月02日

大学不正行為で検討会議設置へ

NHK(8月2日)

 下村文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、東京大学の教授が研究費をだまし取ったとして逮捕されるなど、大学での研究を巡る不正行為が相次いでいることを受けて、省内に検討会議を設置して対策をまとめる考えを明らかにしました。

 大学での研究を巡っては、先月、東京大学の教授が大学などから研究費2100万円余りをだまし取ったとして逮捕されたほか、東京大学の元教授のグループが発表した論文に多数の改ざんが見つかるなど、不正行為が相次いでいます。これについて下村文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、「科学技術に対する国民の信頼を揺るがす、ゆゆしき事態だ。不正を行わせないため、事前のチェック機能などを図っていく必要がある」と述べ、福井副大臣を座長とする検討会議を設置して対策をまとめる考えを明らかにしました。
 会議では、これまでに明らかになった研究費の不正使用や論文の改ざんの事例を検証したうえで、秋ごろまでに、不正防止のための具体的な対応策を取りまとめる方針です。


2012年02月22日

東北大総長が研究論文で不正行為か JSTが指摘

テレ朝

東北大総長が研究論文で不正行為か JSTが指摘

 東北大学の井上明久総長の研究論文に不正疑惑が浮上している問題で、研究費を提供したJST=科学技術振興機構は、「研究に不正があったかどうかの調査が必要」とする異例の報告を公表しました。

 JSTは、井上総長の「金属ガラス」という新素材の研究に対し、17億円の研究費を提供してきました。しかし、研究内容に疑問を抱く東北大教授らからの告発を受け、去年から調査を始めました。今回の報告書では、金属ガラスの作り方や特徴を明らかにした成果はあったとする一方、実験データの使い回しや論文に二重投稿があり、「不適切な研究行為」としています。そのうえで、JSTは、この研究が不正行為にあたるかどうか、東北大などによる公平な調査が難しい場合は、第三者による調査が必要だとしています。二重投稿については、東北大が外部に委託した調査でも先月、「不適切で遺憾である」とする判断が出ています。


2010年04月20日

「論文不正あった」解雇認める、筑波大元教授敗訴-水戸地裁支部

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010041900662

 筑波大大学院の元教授(56)が、研究論文の実験データ改ざんを理由に懲戒解雇されたのは無効として、同大などに地位確認と2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、水戸地裁土浦支部であった。犬飼真二裁判長は「恣意(しい)的なデータ解析などの不正行為を指導、実行した」と述べ、長元教授の請求を棄却した。……

2010年04月05日

盗用論文など懲戒解雇相当と決定、東京大のトルコ人元助教

http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040201000380.html

 東京大は2日、学位授与のもとになった論文に盗用などの不正が見つかり博士号を取り消したトルコ人のアニリール・セルカン元大学院助教(37)を、3月31日付で懲戒解雇相当と決定したと発表した。本人は3月15日に辞表を提出し29日付で退職したため、処分はできなかった。……

[同ニュース]
東大が元助教を懲戒解雇相当の処分 採用で学歴詐称
博士号論文盗用問題 トルコ人助教「懲戒解雇相当」 東大
論文盗用のトルコ人、東大が「懲戒解雇相当」
東大、トルコ人助教を解雇処分 自称「宇宙飛行士候補」
論文盗用:東大がトルコ籍の元助教懲戒解雇、経歴偽造も

2010年04月01日

盗用? 英文科教員が自筆として論文掲載 論集を回収-東北学院大

http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20100331ddlk04100097000c.html

 ◇調査委設置
 東北学院大は30日、仙台市青葉区の土樋キャンパスで会見を開き、16日発行の「東北学院大学論集-英語英文学-」の中に、引用した出典を示さずに執筆者の自筆として掲載した論文があったと発表した。同大は既に研究機関などに配布した論集の回収を進める一方で、学内に調査委員会を30日付で設置。出典を示さなかったことが故意かどうかを調べる。……

[同ニュース]
教員が論文盗用の疑い 東北学院大、調査委を設置
東北学院大教員、論文盗用か