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2016年05月03日

国旗・国歌 文科相要請後、新たに15大学 86国立大調査

毎日新聞2016年5月1日

 下村博文文部科学相(当時)が昨年6月、すべての国立大(86大学)の学長に入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した後、15大学が対応を変え、今春から国旗掲揚や国歌斉唱などを実施していたことが毎日新聞のアンケートで分かった。いずれも「大学として主体的に判断した」と答えた。うち6大学は文科相要請が学内議論のきっかけになったとした。【大久保昂、畠山哲郎】

 毎日新聞は4月、すべての国立大を対象に2015年と16年の入学式と卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱の実施状況などについて書面で尋ね、81大学から回答を得た。福島大、東京大、東京医科歯科大、福井大、政策研究大学院大は回答しなかった。

 集計の結果、今春の式典で76大学が国旗を掲揚した。このうち弘前大、宮城教育大、信州大、和歌山大の4大学が大臣要請後に対応を変えていた。

 一方、国歌斉唱は14大学が実施。このうち今春から始めたのは、愛知教育大、兵庫教育大、奈良教育大、鳥取大、佐賀大、北陸先端科学技術大学院大の6大学。また、宇都宮大、東京学芸大、東京海洋大、島根大、九州工業大の5大学は斉唱はしなかったものの、演奏や歌手による独唱という形で、今春から式典の中に国歌を組み込んだ。

 回答があった81大学のうち、国旗掲揚も国歌斉唱も行わなかったのは、横浜国立、名古屋、京都、九州、琉球の5大学だった。

 国立大の入学式などにおける国旗掲揚・国歌斉唱を巡っては、安倍晋三首相が昨年4月の参院予算委員会で「税金によって賄われているということに鑑みれば、教育基本法にのっとって、正しく実施されるべきではないか」と答弁した。

 これがきっかけとなり、当時の下村文科相が同6月、国立大学長を集めた会議で「各大学の自主判断」としながらも、「長年の慣行により国民の間に定着していることや、国旗・国歌法が施行されたことも踏まえ、適切な判断をお願いしたい」と事実上の実施要請をした。

 また、後任の馳浩文科相は2月の記者会見で、岐阜大が国歌斉唱をしない方針を示したことに対し、「日本人として、国立大としてちょっと恥ずかしい」などと述べた。一方で下村氏や馳文科相は「強制ではない」とも述べている。

 小中高校の学習指導要領には、入学式や卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱が定められているが、大学は指導要領の対象外となっており、こうした決まりはない。

声楽教員による国歌「独唱」 ゆかりの13カ国の国旗掲揚 苦肉の対応も

 昨年まで国旗掲揚だけをしていた宇都宮大は、要請を契機に改めて式のあり方を検討し、国歌も組み込むことに決めた。ただ、全員で歌う「斉唱」ではなく、声楽を専攻する教員が壇上で歌う「独唱」をした。「出席者への強制にならないよう配慮した結果」と説明する。

 今春から国旗掲揚を始めた和歌山大は、卒業生の出身国や提携先の大学がある13の国旗(日の丸を含む)をすべて壇上に掲げた。海外の大学を参考にしたといい、外国籍の学生に配慮したものとみられる。

 豊橋技術科学大は、国歌斉唱の実施を検討したが、外国籍の学生への配慮などから見送った。一方で「税金で運営されており、納税者への感謝を示すことは重要」との結論に達し、大西隆学長が今春の式で国民への感謝の意を表明することとした。「教育研究活動を通じて国民の期待に応えていく」と宣言した。


2016年03月25日

国立大の中期計画了承 神戸大など26校組織再編

神戸新聞(2016/3/24)

 国立大学法人評価委員会は23日、文部科学省内で総会を開き、国立大86校が同省に提出した2016年度から6年間の教育・研究や運営の指針となる第3期中期計画を了承した。学部などの組織再編は半数超が予定。神戸大など26校が人文社会科学系の組織見直しを盛り込み、地域の活性化を目指す人材育成や文理融合の学部設置を掲げる大学が目立った。

 計画は文科相が月内に認可。計画の達成状況などを評価委が評価し、各校への運営費交付金の配分にも反映される。

 計画や各大学によると、福井大は教育地域科学部を教育学部に改組するとともに、地域創生に資する人材を育てる国際地域学部を創設する。神戸大は国際文化学部と発達科学部を再編統合し、17年4月に国際人間科学部(仮称)を開設するとした。

 計画内容のうち、各大学が先駆的に取り組むものは「戦略性が高く意欲的な目標・計画」と認定され、達成状況だけでなく経過内容も評価される。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響を抱える子どもや家族への専門的支援を掲げた福島大の計画などを認定することを決めた。

 文科省は昨年6月、国立大に対し、教員養成系と人文社会科学系学部の廃止や社会的要請の高い分野への転換を求める通知を出していた。


2016年03月24日

26国立大、人文社会科学系見直しへ 中期計画を提出

朝日新聞(2016年3月23日)

 文部科学省の国立大学法人評価委員会は23日、全86の国立大の運営や改革の方針を定めた「中期計画」を了承した。26大学が人文社会科学系の見直しを盛り込んだほか、地域に根ざした取り組みも目立った。今月中に認可され、4月から運用が始まる。

 文科省は新年度から、国立大が重点的に取り組む内容を三つに分類。このうち「地域に貢献」を選んだ中では、福島大が東京電力福島第一原発事故後の子どもや家庭への支援方法の開発や、支援活動をコーディネートする人材育成を掲げた。福岡教育大は、保護者や地域と協力できる教員を養成するため、学生のボランティア参加率100%を目指す。愛媛大は地域が舞台のフィールドワークやインターン科目を100以上開講するとした。

 「世界で卓越した教育研究」では、東北大が世界最高水準の外国人研究者を招くなどして国際共著論文数を20%以上増やすことを掲げた。

 人文社会科学系の組織見直しでは、山形、千葉、三重、神戸、九州など26大学が学部の統合や学科の再編などを掲げた。昨年10月に公表された素案の段階から大きな変更はなかった。

 国立大は2004年度の法人化以降、6年ごとに中期計画を国に提出しなければならない。


2016年03月16日

国歌斉唱なしに文科相「恥ずかしい」 憲法学者、発言撤回求め声明

東京新聞(2016年3月15日)

 入学式や卒業式で国歌斉唱しない方針を示した岐阜大学学長を「恥ずかしい」と批判した馳浩文部科学相の発言をめぐり、憲法学者七人が十四日、東京・永田町の参院議員会館で会見し、「発言は学問の自由を保障した憲法二三条の趣旨に違反する」として、撤回を求める声明を発表した。
 声明は、学問の自由を制度的に保障するのが大学の自治とした上で、「憲法の通説は、政治権力は大学の自治に介入してはならないと考えている」と指摘。九十六人の憲法学者が賛同者に名を連ねる。
 武蔵野美術大の志田陽子教授は会見で「かつてナチスが美術、音楽、映画を統制し国の方針とそぐわないものをおとしめるレッテルを貼った。馳文科相の発言はそれと同じ」と批判。日体大の清水雅彦教授は「憲法二三条を分かっていない人が文科相であることはおかしい」と訴えた。
 研究室に日の丸を飾り、大相撲の千秋楽で一緒に国歌斉唱するという群馬大の藤井正希(まさき)准教授は「それでも国旗、国歌は国に強制されるべきものではない。十八歳選挙権の時代だからこそ、学生の自主的判断を尊重すべきだ」と述べた。
 岐阜大の森脇久隆学長が二月十七日の定例会見で、卒業式などで国歌斉唱しない方針を示すと、馳文科相はその後の会見で「国立大学として、ちょっと恥ずかしい」などと批判した。

岐阜大学長、君が代斉唱しない方針を改めて表明

朝日新聞(2016年3月15日)

 岐阜大学(岐阜市)の森脇久隆学長は15日、今春の卒業式と入学式で国歌「君が代」を斉唱しない方針を改めて示した。これまで通り、大学の愛唱歌「我等(われら)多望の春にして」を歌う。

 森脇学長は定例記者会見の質疑で、「3月の卒業式と4月の入学式は例年通りです」と説明した。馳浩文部科学相が2月23日の閣議後会見で「日本人として、特に国立大学としてちょっと恥ずかしい」と述べたことについては、「コメントを差し控えます」と答えた。

 国立大の入学式や卒業式での国歌をめぐっては昨年6月、当時の下村博文文科相が学長に斉唱を要請。一方、森脇学長は2月17日の定例会見で、今春の卒業式や入学式では大学の愛唱歌を歌う考えを示していた。

 日本科学者会議岐阜支部幹事会は同26日、国歌を斉唱しないとする森脇学長の態度を支持する声明を出した。憲法学者のグループは3月14日、馳文科相に発言の撤回を求める抗議声明を出したと発表していた。


2016年03月10日

国立大交付金、42校増額 改革評価で傾斜配分

日経(2016/3/9)

 文部科学省は9日、国立大学が目指す教育研究改革の方向性や戦略に応じ、運営費交付金に差をつける重点支援制度の審査結果を発表した。全国86の国立大のうち、京都大や神戸大など42大学が増額評価となった。43大学は減額となる。増額幅は最大約7千万円、減額幅は同約5千万円だった。

 運営費交付金はこれまで学生や教員の数などに基づき算出してきた。文科省は国立大に特色を打ち出すよう求めており、2016年度から交付金の一部を拠出させ、改革の中身を評価した上で再配分する仕組みを導入。各国立大は「世界で卓越した教育研究」「強み・特色のある分野の教育研究」「地域貢献」から目指す方向性を1つ選び、戦略を提案していた。

 文科省の有識者検討会(座長=稲永忍ものつくり大学長)の審査を踏まえ、各国立大の拠出金計101億円(運営交付金総額の約1%)を再配分した結果、42大学が100%を超えて増額となった。43大学はマイナス評価。旭川医科大は申請せず評価対象外だった。

 「世界で卓越」を選んだ16大学のうち、最高評価は京都大、神戸大、九州大の3大学で、再配分率はいずれも110.3%。九州大は世界トップレベルの大学との共同研究、アジア圏の大学とのネットワーク形成の推進が高く評価された。

 東京大など7大学はほぼ同額の100.2%。金沢大は「戦略の達成状況を判断する評価指標の設定が不十分」とされ、80.2%にとどまった。

 「地域貢献」の分野で拠出分より再配分額が多かったのは24大学。地域創生を先導する人材養成に向け、学士課程の改組を打ち出した岩手大は再配分率が118.6%に上った。京都教育大(75.5%)など30大学は再配分率が100%に満たなかった。

 京都教育大の担当者は「計画の数値目標がうまく表現できず、厳しい査定につながったと受け止めている。戦略をより具体化し、交付金増額につなげたい」と話している。

国立大交付金 宇大など大幅増

NHK(03月09日)

来年度から6年間の国立大学の取り組みについて文部科学省の評価結果が公表され、最も高い評価を受けた宇都宮大学など9校には国から配分される運営費交付金が18%余り増額されることになった一方、25%近く減額される大学も1校あることがわかりました。
文部科学省は「交付金にメリハリをつけることで改革を促進したい」と話しています。

国立大学は来年度から、地域に貢献する大学、特定の分野で拠点となる大学、世界トップ水準を目指す大学の3つの枠組みの中からひとつを選んで取り組み、国から支給される運営費交付金の一部はその内容や実績によって傾斜配分されることになっています。
各大学は来年度から6年間の取り組みを文部科学省に提出していて、評価結果が9日公表されました。
それによりますと、大学の特色を生かした具体的な戦略や方法を示しているなどと評価され、来年度、交付金が10%以上増額されるのは、13の大学です。
なかでも小樽商科大学、帯広畜産大学、岩手大学、宇都宮大学、長岡技術科学大学、三重大学、京都工芸繊維大学、奈良教育大学、和歌山大学の9校は最も高い評価を受け、18.6%増額されるということです。
一方で、10%以上減額される大学は7校あり、最も低い評価となった京都教育大学は24.5%の減額となります。
京都教育大学の日向野隆司理事は「評価結果を受けて戦略を練り直すとともに、減額される分経費節減に取り組みたい。ただ、運営費交付金に頼っている部分は大きく、安定した配分を求めたい」と話していました。
また、文部科学省は「交付金が減額される大学に負担をかけることは承知しているが、交付金にメリハリをつけることで、これまで以上に大学の改革を促進したい」と話しています。


2016年03月03日

国立大交付金に競争制度-分かりやすい形で改革を進めよ

日刊工業新聞(2016年3月2日)

 政府の2016年度予算案では国立大学の運営費交付金を15年度と同額にした。同時に新年度からは各大学の改革に応じて支給額を増減する新制度が始まる。文部科学省は制度を分かりやすい形で運用しつつ、さらなる改革を推し進めてもらいたい。

 近年の財政難の中で国立大の運営費交付金は毎年1%ずつ減額されてきた。ただ文科省の常盤豊高等教育局長は今後「こうした形をとらない」と明言する。

 減額を求める財務省を説得できた大きな要因は、競争的な改革の導入だ。各大学は昨夏、新たな改革の枠組みである「世界」「特色」「地域」の3類型のうち、どれに沿った改革に取り組むかを選択した。国は交付金1兆1000億円のうち308億円を、この改革の程度に応じて配分する。交付金という基盤的経費に競争を取り入れたことは国立大の歴史の中でも大きなエポックだ。

 交付金の大部分は大学の規模や教職員の退職金で決まる。16年度はこのうち平均1%、約100億円を留保し、競争による配分の308億円の一部に充当する。交付金を留保する比率を定めた「機能強化促進係数」は類型ごとに異なり、「世界」が一律1・6%なのに対して「地域」は0・8―1・2%だ。つまり「世界」を選んだ大学の方が大きな額を留保され、より競争的な環境となる。

 この制度設計は、大学ごとの実情に配慮しつつ変化を促すものだと感じられる。ただ仕組みとして複雑な上に、必ずしも万能ではない。例えば大学の総収入に占める交付金比率は教育大学が7割程度なのに対し、病院収入のある医科大学では2割程度。交付金の1%を留保することで改革を促したとしても、大学によって意識の差は大きいだろう。

 文科省は17年度から、留保する100億円のうち半分を、思い切った改革プランを策定した大学を後押しする新設の補助金に振り向ける計画という。大学関係者の納得を得ながら改革を加速するには、きめ細かく分かりやすい制度運用と同時に、こうした継続的な取り組みが必要だ。


2016年02月23日

岐阜大「君が代は斉唱しない」 馳文科相「交付金が投入されているのに恥ずかしい」

ハフィントンポスト(2016年02月22日)

岐阜大(岐阜市)は2月17日、国歌「君が代」を入学式・卒業式で斉唱しない方針を表明した。これに対して、馳浩文部科学相が「運営交付金が投入されているのに恥ずかしい」と批判する事態になっている。

きっかけは、下村博文文部科学相(当時)が2015年6月、国立大の学長に対して式での国歌斉唱と国旗掲揚を要請したことだった。これについて、岐阜大の森脇久隆学長はその後の記者会見で「学内でよく話し合って対応したい」と話していた。

そして森脇学長は17日の定例記者会見で、今春の卒業式と入学式で国歌「君が代」を斉唱しない方針を明らかにした。岐阜大は旧制岐阜高等農林学校(岐阜大応用生物科学部の前身)の校歌「我等(われら)多望むの春にして」を愛唱歌としており、森脇学長は「式には愛唱歌の方がふさわしい」との考えを示した。

これに対し馳文科相は21日、金沢市で記者団に、「国立大として運営費交付金が投入されている中であえてそういう表現をすることは、私の感覚からするとちょっと恥ずかしい」と述べた。朝日新聞デジタルは次のように報じた。

馳氏は21日、金沢市内での講演で「岐阜大学の学長が国歌を斉唱しないと記者会見した」と指摘。その後、記者団に「(下村氏の要請は)大学の自主的な活動についてああしろ、こうしろと言うものでもない。学長が(斉唱しないことに)言及することはちょっと恥ずかしい」と語った。


2016年02月22日

岐阜大が国歌斉唱しない方針 馳文科相「恥ずかしい」

朝日新聞(2016年2月21日)

 馳浩文部科学相は21日、金沢市で記者団に、岐阜大学の森脇久隆学長が卒業式などで国歌「君が代」を斉唱しない方針を示したことについて、「国立大として運営費交付金が投入されている中であえてそういう表現をすることは、私の感覚からするとちょっと恥ずかしい」と述べた。

 卒業式や入学式での国歌斉唱は昨年6月、当時の下村博文・文科相が全国の国立大学長らに要請していた。岐阜大は前身の旧制学校の校歌を式で斉唱しており、森脇学長は今月17日の定例記者会見で、これまで通りの方針で臨む考えを示していた。

 馳氏は21日、金沢市内での講演で「岐阜大学の学長が国歌を斉唱しないと記者会見した」と指摘。その後、記者団に「(下村氏の要請は)大学の自主的な活動についてああしろ、こうしろと言うものでもない。学長が(斉唱しないことに)言及することはちょっと恥ずかしい」と語った。


2016年02月09日

国立大学の学費 値上げの危険ここに 交付金削減へ新方式導入

しんぶん赤旗(2016年2月8日)

 安倍晋三首相らは、国立大学の学費値上げの危険性について「デマ」だと国会で繰り返しています。しかし、値上げの危険性はデマどころか、現実にあることは隠せません。

 安倍政権による国立大学の学費値上げ計画は、昨年10月、政府の財政制度等審議会で「(国からの)運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合とする」という財務省の方針が了承されたのが発端です。

方針は撤回せず

 財務省方針は、今後15年間、交付金を毎年1%削減して1948億円も削減する一方、大学の自己収入を2437億円も増やせというもので、同省は現在もこの方針を撤回していません。

 同審議会がとりまとめた昨年11月の「建議」は、国立大学に対し、数値目標は示さなかったものの「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の値上げについても議論が必要」「国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」と打ち出しました。

 自己収入増を授業料だけで賄えばどうなるのか―。日本共産党の畑野君枝衆院議員が昨年12月に国会でただすと、文科省は「授業料は40万円増えて93万円になる」と答えました。

 若者が奨学金で多額の借金を背負う実態を無視した暴論であり、高等教育の段階的な無償化を求める国際人権規約や、憲法が定める教育機会の均等にも反するものです。馳浩文科相も「一律削減ありきの考え方に反対だ」と答えざるをえませんでした。

 運営費交付金の削減に対しては大学関係者や学生、保護者からも反対の声が広がり、来年度予算案では交付金は前年度と同額になりました。しかし、交付金と一体に配分されていた補助金が半減され、各大学に配分される予算は88億円減となっています。

 さらに重大なのは、最も基盤的な経費である基幹運営費交付金は毎年1%、100億円も削減する新たなルールが導入されました。

 文科省は、この100億円を使って各大学の「機能強化」を支援するとしていますが、これはそのままでは「人・物・施設」には使えません。

 国立大学協会の里見進会長も「機能強化促進分は使途が限定されているので、教育研究活動に必要な基盤的予算(基盤経費)はこれまで以上に減らさざるをえません」「高等教育局の予算もかなり減額されたので、補助金として大学に配分される予算も少なくなる」と指摘しています。

値上げの悪循環

 結局、民間企業からの資金獲得が困難な大学は、学費値上げに踏み切らざるをえなくなります。国立大学への予算削減による学費値上げの危険が現実にあることは明らかです。

 公明党も前出の「建議」について、昨年12月11日の参院文教科学委員会で「授業料の値上げによって教育の格差が拡大してしまう」(新妻秀規議員)と批判し、「わが党として到底容認できません」と明言していました。

 国立大の学費値上げは私大にも波及し、学費値上げの悪循環を招くことは必至です。日本共産党は「国の大学予算削減のために学費を値上げする方針を撤回させるという一点で、引き続き世論と運動を広げよう」と呼びかけています。

 (深山直人)

国立大の財政難は超深刻 新潟大は教員人事凍結、研究費は「自腹」

Jcast ニュース(2016/2/4)

国立大学法人の新潟大学は、財政難を理由に、2016年春から2年間をめどに、定年退職する教授が出ても教員の新規募集や内部昇任などの人事を凍結する。

 国からの運営費交付金が減少したのに対応し、人件費を抑える措置だが、全国の国立大学法人が加入する国立大学協会は「(経費削減で人事を凍結したケースは)これまで、聞いたことがありません」という。

新潟大への運営費交付金、15年度は134億円 12年間で7.6%減

新潟大学が教員人事の凍結を決めたのは、学部長らが重要事項を審議する教育研究評議会が開かれた2016年1月28日で、即日実施に踏み切った。

人事凍結の背景には、国立大学の収入の約3~4割を占める、国からの「運営費交付金」の減少がある。新潟大によると、同大の運営費交付金は国立大学法人に移行した2004年度の145億円から、15年度は134億円に減少した。

一方、同大の教員の定年退職者は毎年20~30人で、人件費の削減効果は年間で数千万円から億単位になるとされる。今後も厳しい状況が予想されるため、退職する教員の補充を控えることで人件費を抑えることにした。

ただ、決定が1月だったため、3つの教員組織(人文社会・教育科学系、自然科学系、医歯学系)ごとに空きポストが5つ出た場合や病院診療の担当教員に欠員が出た場合、配置数が国の設置基準を下回る場合――などは例外として新たな配置を認める。

支障がある場合は非常勤講師などで補うほか、3か月ごとに教員の配置や財政状況を確認して必要に応じて見直すともいう。

具体的には、大学では現在、電気情報工学系列の教授を1人募集(3月31日締め切り)しているが、この募集を最後に、原則教員の採用を凍結することになる。

高橋姿学長は今回の人事凍結について、「あくまで短期的な対応」と強調したうえで、「教員の給料や教育、研究の質を下げないための苦渋の判断」と話す。

新潟大は16年1月から、これまでの学長らからの勧奨退職に代わって、50歳以上を対象とする教職員の早期退職制度を導入。大学側は「(この制度は)退職を促すものではない」と話しているが、経費削減のため、人件費に手をつけざるを得なくなってきたようすがうかがえる。

さらには、教員が実験に必要な消耗品を「自腹」で購入するなどのケースも生じているらしい。大学側は「すべてを把握しているわけではありません」としたうえで、「予算が回らない時期にそういったことはあるかもしれません」と、こうした話を耳にしたことがないわけではないと話す。

財政難は「新潟大学に限ったことではありません」

新潟大学の「人事凍結」を受けて、インターネットではその衝撃が広がっている。

“「なんで国立大学法人の新潟大学が財政難?」
「地方の有力国立大学でもこの状態かよ・・・」

といった驚きの声や、

“「こんなんで新潟大はまともな教育できんの?」
「しわ寄せが行くのは若手の教員ってわけだ。文科省はどう思っているんだろうな」
「こんな事態に陥っている大学に、受験生は魅力を感じるだろうか?」
「教員が退職、補充なし→教員数が減少→一人あたりの仕事が増える→教育研究成果が上がらなくなる。負のスパイラルだな」
「削れるところって他にもあるような気がするが・・・」

などの嘆きや、教育への影響を憂う声も数多く寄せられている。

とはいえ、国立大学の財政難は「新潟大学に限ったことではありません」(国立大学協会)。大学が経費節減のために、古い機材を更新しないで使いまわすようなことは珍しくなく、今後はさらに厳しくなることが予想されている。

財務省によると、2015年度の国立大学法人の予算収入(研究機構を含む90法人)は全体で2兆4650億円。このうち、運営交付金は1兆945億円と44.4%を占めている。残りは授業や入学検定料の3666億円(14.9%)や附属病院収入の9786億円(39.7%)などの自己収入になる。

この運営交付金を2031年度までに約9800億円にする方針で、今後毎年1%ずつ削減する。すでに2004年の法人化以降の12年間で1470億円(11.8%)が削減され、加えて消費税率の引き上げや諸経費の値上りで、人件費や教育研究費など大学の運営基盤は急激に脆弱になっている。

その一方で、財務省は自己収入を毎年1.6%増加させるよう提案が示しているが、16年度以降の新たな財源として期待できるのは、「税額控除が認められるようになった寄付金ぐらい」。ただ、寄付金収入は「個々の大学で異なりますが、現状でも数%ほどだと思います」(国立大学協会)とわずか。減っていく運営交付金の穴を埋めるには心もとないかもしれない。

生き残りには、学生数を増やすか、経費削減を続けるしかないようだ。


2015年12月16日

国立大交付金、17年度から減額 16年度は据え置き-政府方針

時事通信(2015/12/15)

 政府は15日、国立大学法人への運営費交付金について、2017年度から新制度を導入する方針を固めた。毎年、総額をいったん1%減額した上で、その半分の50億円程度を自主的な収益確保など経営改革に取り組む大学に再配分する。16年度予算では、経営改革に向けた準備期間として、15年度(1兆945億円)並みを維持する。
 運営費交付金は、04年度に法人化した国立大学に交付され、国立大学全体(付属病院を除く)の収入の5割超を占める。
 新制度では、減額する1%のうち、交付金として再配分して残った一部も大学への補助金の財源に充てることで、財務、文部科学両省が合意した。従来は財務省の査定の結果として平均1%程度減額し、一部を再配分してきたが、これを制度化する。

2015年12月09日

国立大学振興議員連盟、国立大学法人運営費交付金の拡充に関する決議

国大協
 ∟●国立大学法人運営費交付金の拡充に関する決議

国立大学法人運営費交付金の拡充に関する決議

 経済社会の重大な転換期において、我が国社会の活力や持続的な成 長を確かなものにするためには、国家戦略としての大学政策が不可欠 である。しかし、国立大学においては、法人化以降続いてきた運営費 交付金の削減により、若手の育成や研究力の低下などに深刻な影響が 生じている。
 このような状況において、十一月二十四日の財政制度等審議会の
 「平成二十八年度予算の編成等に関する建議」では、運営費交付金の 削減を前提とした提案がなされた。このような提案は、国民からの期 待に応えるべく、自ら改革を進める方針を打ち出している国立大学の 改革意欲を損なうものであり、全く容認できない。
 急速な少子高齢化やグローバル化の進展を乗り越え、我が国が持続 的に成長していくため、全都道府県に設置された「知」の拠点である 国立大学は、人材育成、幅広い研究、社会や地域への貢献、グローバ ル化への対応などにおいて中核的役割を果たしていかなければなら ない。第三期中期目標期間がスタートする平成二十八年度の取組は、 国立大学の改革の決意と着実な実行を示すためにも決定的に重要で ある。
 このような方針を示すため、平成二十八年度予算において、左記事 項の実現に万全を期すべきである。

一、国立大学の機能を強化し、着実に改革を加速するため、基盤 的経費である国立大学法人運営費交付金の拡充を図ること。

右決議する。

平成二十七年十二月七日

国立大学振興議員連盟


2015年12月05日

大阪大学、財政制度等審議会の審議内容に関する声明

大阪大学
 ∟●財政制度等審議会の審議内容に関する声明

財政制度等審議会の審議内容に関する声明

平成 27 年 12 月 4 日

国立大学法人大阪大学経営協議会学外委員(50 音順)
国立研究開発法人科学技術振興機構顧問 相 澤 益 男
政策研究大学院大学副学長、教授 上 山 隆 大
大阪ガス株式会社代表取締役会長 尾 崎 裕
国立研究開発法人国立循環器病研究センター名誉総長 川 島 康 生
公益財団法人日本国際問題研究所副会長 佐 藤 行 雄
関西大学システム理工学部教授 鈴 木 直
塩野義製薬株式会社代表取締役社長 手代木 功
新日鐵住金株式会社相談役 友 野 宏
株式会社神戸クルーザー会長 南 部 真知子
株式会社小松製作所代表取締役会長 野 路 國 夫
朝日放送株式会社特別顧問 渡 辺 克 信

 私たちは、国立大学法人法に基づき設置される経営協議会の学外委員として、各々の専門性や社会的立場を活かして、国立大学法人大阪大学の経営に関する重要事項の審議に参画し、大阪大学が社会からの信頼と支援を得られるようにするための役割を果たしてきました。

 このような立場から見ても、平成 27 年 10 月 26 日に開催された財政制度等審議会における「国立大学法人運営費交付金」の今後の在り方に関する審議内容については、大きな疑念や危惧を持たざるを得ません。

 財政制度等審議会の資料によれば、国立大学が自律的、持続的な経営を続けていくため、国費に頼らず自らの収益で経営していく力を強化していくことが必要であるとされ、具体的には、運営費交付金を今後 15 年間に亘って毎年 1%減少させる一方で、自己収入を毎年1.6%増加させることが必要とされています。これらの指摘は、グローバル化対応やイノベーション創出など、我が国の発展のため国立大学に期待されている数々の役割が踏まえられておらず、国立大学の存立を危うくするものと断じざるを得ません。

 たしかに、我が国の財政状況が極めて厳しい折、国立大学が高い質を保ちながら自律的な経営を続けていくためには、多様な自己収入の確保に向けた努力が必要と考えますが、教育研究を主たる業務とする国立大学にとっては自己収入の増加にも限界があります。

 すでに、基盤的経費である運営費交付金は平成 16 年度の法人化以降大幅に削減されており、これまでの大阪大学における削減額は 104 億円(マイナス 19%)にのぼります。そもそも、我が国における高等教育への公財政支出の対GDP比は 0.5%ですが、これはOECD加盟国平均の半分にすぎず、加盟国の中で最低水準です。

 大阪大学は、これまで人文・社会科学から自然科学まで幅広い分野で世界をリードする教育研究を推進し、世界トップ級の優れた研究業績を産み出すとともに、国民の負託に応える有為な人材を育成し社会に輩出してきました。しかし、このまま運営費交付金が機械的に削減されることとなれば、これまで大阪大学が行ってきた、将来を担う若手人材の育成、多様な知の創出を担う学術研究の推進、それらを通じた社会への貢献の継続に重大な支障を来たすばかりでなく、国立大学全体の将来、ひいては我が国を支える高等教育及び科学技術の未来に大きな禍根を残すことになります。

 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献していくためには、運営費交付金の充実が不可欠であることを重ねて強調し、各方面のご理解をお願いするものです。


岩手大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

岩手大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年12月3日

国立大学法人岩手大学 経営協議会学外委員(50 音順)
雨宮 忠(元中央大学文学部特任教授)
大井 誠治(岩手県漁業協同組合連合会代表理事会長)
鎌田 英樹((株)IBC 岩手放送代表取締役社長)
新宮由紀子((株)長島製作所代表取締役社長)
高橋 真裕((株)岩手銀行代表取締役会長)

 我々は、国立大学法人法にもとづく経営協議会の学外委員として、岩手大学の将来計画や大学経営の審議に参画する立場から、国立大学の充実発展への取組、第 3 期中期目標期間を迎える国立大学への予算の拡充及び地方国立大学への財政支援の強化について、その必要性を強く認識している。

 しかしながら、先般、財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省から「国立大学の運営費交付金を今後 15 年にわたり毎年度 1%減少させるとともに自己収入を 1.6%増加させる」という提案がなされた。すでに国立大学は平成 16 年の法人化以降、12 年間で運営費交付金が 1,470 億円(約 12%)減額され、大学全体の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化している。また、運営費交付金の削減分を自己収入の増加により補うという提案は、授業料の大幅な引き上げにつながりかねず、現下の国民の経済状況からみても教育格差の更なる拡大につながることを強く危惧する。今後、我が国の将来を切り拓く人材の育成や技術革新のための研究開発、さらには、東日本大震災からの復興をはじめ地方創生への貢献など、国立大学が果たしていくべき責務は多大なものであるにも関わらず、このような提案がなされたことに、我が国の将来への危機感を強く覚えるものである。

 今般、このような事態を受けて、我々、岩手大学の経営協議会の学外委員としても、岩手大学をはじめ、我が国の国立大学が、今後とも教育研究の充実及び地域の発展への貢献という責務を確実に果たしていけるよう、運営費交付金の拡充を強く要望するものである。


2015年12月04日

「授業料の値上げ危惧」と福大学長 運営費交付金削減継続で

福島民友(2015年12月03日)

 福島大の中井勝己学長は2日の定例記者会見で、国立大学運営の基盤となる「運営費交付金」について、国が毎年1%削減の方針を継続する考えを示したことを明かし、「大学はすでに自己努力で経費削減に取り組んでいる。今後も運営費交付金の削減が続くのであれば、授業料を値上げせざるを得ないと危惧している」と懸念を口にした。

 中井学長は「授業料が上がれば受験生、保護者への教育負担が増える。東北地区では今でも授業料免除の申請が多く、値上げとなれば教育の機会均等が果たせなくなるという声が、東北の学長たちから上がっている」と語った。国の来年度の予算編成が大詰めを迎える中で、大学予算の充実をあらためて訴えた形だ。

2015年12月03日

佐賀大学、地方国立大学に対する予算の充実を求める声明

佐賀大学
 ∟●地方国立大学に対する予算の充実を求める声明

地方国立大学に対する予算の充実を求める声明
―第3期中期目標期間に向けて―

平成27年11月30日

国立大学法人佐賀大学経営協議会学外委員(50音順)
井 田 出 海(株式会社ミゾタ取締役会長・佐賀商工会議所会頭)
大 平 明(大正製薬ホールディングス株式会社取締役相談役)
潮 谷 義 子(学校法人日本社会事業大学理事長)
陣 内 芳 博(株式会社佐賀銀行取締役頭取)
戸 上 信 一(株式会社戸上電機製作所代表取締役社長)
中 尾 清一郎(株式会社佐賀新聞社代表取締役社長)
古 川 貞二郎(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会会長)
山 口 祥 義(佐賀県知事)

 私たちは、国立大学の法人化以降、国立大学法人法(平成15年7月16日法律第112号)第20条第2項第3号に基づく経営協議会の学外委員として、佐賀大学の基本理念を基にした将来構想の策定をはじめ、大学経営の審議に参画し、佐賀大学に対して「社会の声」を反映させるべく役割を果たしてきました。

 先般の第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方の審議まとめにおいては、機能強化に応じた重点配分を行うこととされており、この議論を踏まえて、佐賀大学では特色・強みにおいて世界・全国的な教育・研究を行うことを目指しつつも、地域のニーズに応えて自治体や企業に貢献する人材育成や課題を解決するCOC大学として、第3期中期目標期間における計画目標が達成できるよう期待しております。

 国立大学の運営費交付金は、法人化以降これまで1,470億円という膨大な額(佐賀大学は平成16年度と比較して10億円以上)の削減が行われました。たしかに我が国の財政状況は極めて厳しく、国立大学が自律的・持続的な経営を続けていくためには、国費による支援に専ら頼るばかりではなく、自ら少子化に伴う学生定員等のダウンサイジングを含めた組織改組の検討、業務の効率化や経費節減を図るとともに、附属病院収入の増、地域や産業界との相互協力を踏まえた競争的資金や寄附金などの外部資金獲得に努め、教育研究の質的な劣化を招かないよう、これまで以上の経営努力が必要であることは言うまでもありません。

 教育は国の礎であり、今後も我が国の持続的な成長発展の実現のために期待される国立大学の役割を全力で果たす必要があります。佐賀大学は、佐賀の地域から必要とされる「佐賀のための佐賀大学」いわゆる Center of Community として、地(知)の拠点大学を目指すこととしており、佐賀県における人材養成の基盤となり、まさに地方創生へ寄与する中核的機関としてその役割を担っています。

 先般の国立大学法人法の一部改正により、経営協議会において学外委員を過半数とすることとなったことは、私たちのこれまでの「社会の目」としての役割が認められたと同時に、国立大学法人の経営に対する責任がこれまで以上に求められているものだと認識しています。

 第3期中期目標期間を迎え、国立大学がミッションの再定義にそった機能強化を着実に実行していくためには、政府内だけにとどまらず、地方自治体や地方経済界はもとより、私たち経営協議会の学外委員も参加した議論が重要であり、さらに地方創生を担う国立大学がその責務を充分に果たすための財政支援が不可欠であることをご理解いただき、ここに要請いたします。


和歌山大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

和歌山大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年12月1日

国立大学法人和歌山大学 経営協議会外部委員(50 音順)
赤木 攻(元大阪外国語大学長)
大島 道隆(元三菱電機メカトロニクスソフトウェア株式会社代表取締役社長)
帯野 久美子(株式会社インターアクト・ジャパン代表取締役)
樫畑 直尚(株式会社南北代表取締役)
柏原 康文(株式会社テレビ和歌山代表取締役社長)
松原 敏美(弁護士)

 私たちは、国立大学の法人化以降、国立大学法人法(平成 15 年 7 月 16 日法律第 112号)第 20 条第 2 項第 3 号にもとづく経営協議会の学外委員として、和歌山大学の将来計画をはじめ、大学経営の審議に参画する立場から、平成 27年1月6 日に「地方国立大学に対する予算の充実を求める声明-第 3 期中期目標期間に向けて-」を表明し、第 3 期中期目標期間を迎える国立大学への予算の拡充及び地方国立大学への財政支援の強化を求めてきた。

 しかしながら、政府における議論において私たちの意見は汲みしてもらえず、先般、財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省から「国立大学の運営費交付金を今後 15 年にわたり毎年度 1%減少させる」という提案がなされたわけである。激化する国際環境の中で、我が国の将来を切り拓く人材の育成や技術革新のための研究開発、さらには、地方創生への貢献など、今後において国立大学が果たしていくべき責務は多大なものであるにも関わらず、このような提案がなされたことに我が国の将来への危機感を覚える。

 このたび、このような事態を受けて、一般社団法人国立大学協会において、財務省案に対する声明や決議がなされたと承知しているが、私たち和歌山大学の経営協議会の外部委員としても、和歌山大学をはじめ、我が国の国立大学が、今後とも教育研究の充実及び地域の発展への貢献という責務を確実に果たしていけるよう、運営費交付金の拡充をあらためて強く要望するものである。


滋賀大学、国立大学に対する予算の充実を求める声明

滋賀大学
 ∟●国立大学に対する予算の充実を求める声明

国立大学に対する予算の充実を求める声明-第3期中期目標期間に向けて

平成27年11月30日
国立大学法人滋賀大学 経営協議会学外委員(50 音順)
井 上 理砂子(元京都新聞論説委員)
大久保 貴(彦根市長)
大 田 啓 一(公立大学法人滋賀県立大学理事長)
柏 原 康 夫(京都銀行取締役相談役)
塩 田 浩 平(国立大学法人滋賀医科大学長)
戸 田 一 雄(陵水会(経済学部同窓会)理事長)

 私たちは、国立大学法人法(平成15年7月16日法律第112号)に基づき設置されている経営協議会の学外委員として、滋賀大学の経営に関する重要事項の審議に参画し、国民や社会の視点から様々な意見を述べてきました。

 国においては、閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015や「経済財政運営と改革の基本方針2015」の中で、大学改革を重要な柱と位置付け、様々な施策を講じていくとの方針を打ち出しています。特に、国立大学としての人材育成機能を抜本的に強化するため、産業構造の変化や雇用のニーズを的確に把握し、実社会のニーズに即した人材育成を行っていく仕組みを作っていくことの重要性が指摘されています。滋賀大学においても、ビッグデータ時代の到来を受け、諸外国と比べわが国で著しく不足しているデータサイエンティストを養成する学部の新設準備を進めています。また、教育学部では義務教育諸学校に関する地域の教員養成機能の中心的役割を担う人材、経済学部では国際的視野を持ち地域社会に貢献する高度な専門職業人を輩出する等、地域社会の発展に貢献してきました。

 そうした中、国立大学に対する基盤的な経費である運営費交付金は、平成 16 年度の法人化以降、11 年間で1,470 億円(約 12%)の削減(滋賀大学は 5.5 億円の削減)が行われています。また、消費税率の引き上げ、電気料金をはじめとした諸経費の値上がりが、人件費や基盤的教育研究費を更に圧迫し、その結果、若手教員の新規採用が減少し、優秀な人材の確保等に支障が生じており、大学全体の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化しています。

 滋賀大学のみならず各大学では、これまでも業務の効率化や経費の節減を進め、競争的資金や寄附金等の外部資金獲得を全力で行いながら、質の高い教育研究活動の維持向上に努めてきました。しかし、このような経営努力も限界に達しており、こうした状況下で、運営費交付金を今後 15 年間にわたっても年1%の割合で削減すべきとの議論が財政制度等審議会財政制度分科会でなされていることに強い懸念を抱きます。仮にこのような国立大学予算の削減が続けば、教育研究の質の劣化を招くのみならず、日本の高等教育の中核を担う国立大学が壊滅的な機能不全に陥り、結果としてわが国に将来にわたり計り知れないほど大きな損失を与えかねません。

 現在、社会保障費の負担増等により、国の財政状況は極めて厳しい状況にありますが、わが国の知識基盤社会を支える国立大学が、教育研究の質を担保しながら各地域において高等教育の機会を提供し、有為の人材を育成し、かつ、イノベーションの創出を目指していくことは、日本の持続的発展を支えるために必須であると考えます。そのため、運営費交付金の継続的な削減方針へ反対するとともに、運営費交付金など国立大学の基盤的経費の充実について、関係者のご理解とご協力をお願い申し上げます。


運営交付金削減方針に山形大学長が異議、財政制度等審議会の意見書受け

山形新聞(2015年12月02日)

 財政制度等審議会が示した来年度の予算編成に関する建議(意見書)について、国立大学運営費交付金を今後削減するべきとの提案が盛り込まれたことを受け、山形大の小山清人学長は1日の定例会見で「授業料の負担増につながり是認できない」と述べた。

 建議は11月24日に公表された。これに先立つ10月の同審議会分科会では、国の財政難を背景に大学に自助努力を求める狙いから、運営費交付金を毎年度1%ずつ減少し、自己収入を1.6%ずつ増加させる案が議論されている。

 自己収入の大半を授業料が占めているため、実施されれば引き上げとなる可能性がある。小山学長はこれら経緯に触れ、山形大の将来的な財政試算では、年間授業料を現行の53万5800円から30万円ほど上げなくてはならないとした。授業料ではなく人件費を削減した場合、約220人の教員を減らす必要があるという。

 小山学長は「人口減少問題が大きい中、人材育成は地方の大学にとって重要なポイント。既に教育と研究で不断の改革を進めており、生産性の高い人材の輩出に努力していることに理解を求めたい」と語った。


国立大授業料、54万円が93万円に 2031年度試算

朝日新聞(2015年12月2日)

 文部科学省は1日、年間約54万円の国立大学授業料について、2031年度には93万円程度に上がるという試算を示した。大学の収入の核となる国の運営費交付金が大幅に減らされる可能性があり、大学が減らなければ、授業料で減収分を賄う必要性があるという。

 財務省は、全86国立大学の収入の3~4割を占める運営費交付金約1兆1千億円を31年度までに約9800億円にする方針だ。この日の衆議院文部科学委員会の閉会中審査で、畑野君枝委員(共産)が、減収となった際の対応を尋ねた。

 文科省の常盤豊・高等教育局長は「授業料で賄うとして試算すると(31年度には)約93万円。年間2万5千円の値上げが必要」と答えた。馳浩文科相は「学生になるべく教育費負担をかけないようにする必要がある」として、来年度予算で交付金の額を充実する考えを示した。


国立大学の「運営費交付金」削減で授業料が高騰!? 渡辺敦司

産経新聞(2015.12.2)

年末に向けた政府の来年度予算編成で、公立小・中学校の先生の数を算定する「教職員定数」の在り方が一つの焦点となっていることは、以前の記事でお伝えしました。教育分野では、もう一つ焦点があります。国から国立大学に毎年渡される「運営費交付金」です。財務省が年1%の削減方針を提案したのに対して、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は総会で「高等教育予算の充実・確保に係る緊急提言」を、「教職員定数に係る緊急提言」と一緒にまとめています。そこでは、財務省の提案どおりにしたら授業料の大幅な引き上げにつながりかねないと反論しているのです。

財務省が、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会に提出した資料によると、国立大学法人の収入の内訳(付属病院収入を除く)は現在、「運営費交付金」が51.9%と半数を超え、補助金等収入(15.6%)を合わせれば67.5%と、3分の2が国からの支出に依存しています。独自財源である授業料等収入は14.7%と、7分の1程度にすぎません。「国立なんだから、当たり前だろう」と思うかもしれませんが、国立大学は2004(平成16)年に各大学が「国立大学法人」となったことを契機に、これまでの国直轄の予算という形を改め、基盤的経費として運営費交付金を交付する一方、「経営努力」で経費を削減したり、自己資金を調達したりすることも可能となっています。

以前の記事で、国立大学86校のうち55校が「地域貢献」大学に分類されたことなどをお伝えしました。これは、2016(平成28)年度から始まる6年間の「第3期中期目標期間」の中で、3タイプ別に運営費交付金の配分の仕方を変えることで、間接的に学部再編などを促していこうというものです。

私立大学の場合、収入のうち学生納付金の割合が76.9%と4分の3を占めており、国からの補助金(私学助成など)は10.9%にすぎません。国立大学も法人化されたのだから、4分の3とまでは言わないまでも、せめて運営費交付金と自己収入を同じ割合(約42%)にしよう。そのためには運営費交付金を毎年1%ずつ減額すると同時に、自己収入を毎年1.6%増加させよう……というのが財務省の提案で、それには「授業料の引上げなど交付金以外の自己収入を確保する努力」が必要だというのです。

今でも国立大学法人は、その授業料を、国が定める標準額(現在は53万5,800円)に上限120%の範囲で増額したり、減額(下限なし)したりできるのですが、実際に学部段階で標準額を増減している大学はありません。もし財務省どおりになったら、自己資金を得にくい大学を中心に、増額せざるを得ない大学が続出することでしょう。

授業料の公私間格差も縮めるべきだというのも、財務省のかねてからの主張です。しかし文科省によると、大学生の家庭の年収は近年、500~900万円の中間所得層が減少する一方、500万円未満の層が4人に1人にまで増加しています。教育費負担の在り方も含めて、運営費交付金の問題を考える必要があるでしょう。


2015年12月02日

横浜国立大学、国立大学の財政基盤の強化を求める声明

横浜国立大学
 ∟●国立大学の財政基盤の強化を求める声明

国立大学の財政基盤の強化を求める声明

平成27年11月25日

国立大学法人横浜国立大学 経営協議会外部委員(50 音順)
相澤 益男(科学技術振興機構顧問)
伊藤 文保(前神奈川大学理事長)
亀崎 英敏(三菱商事(株)常勤顧問)
佐藤 禎一(国際医療福祉大学学事顧問)
羽入佐和子(理化学研究所理事)
蛭田 史郎(旭化成(株)常任相談役)
松本洋一郎(理化学研究所理事)

1.予算の充実
 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献する改革を着実に実行していくため「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実を図ること

2.税制改正
 財政基盤の確立に資するため、国立大学法人に対する寄附の税額控除制度を導入し、私立大学と同様に個人寄附にかかる所得控除と税額控除の選択ができるようにすること

 私たちは、国立大学法人法に基づく経営協議会の学外委員として、国立大学法人横浜国立大学の将来計画をはじめとする大学経営の審議に参画し、大学コミュニティとは違う経営の視点でその役割を果たしてきた。

 その立場から、これまでの国立大学に対する運営費交付金などの予算の削減などを見るにつけ、平成28年度から始まる第3期中期目標期間における国立大学の存立に危惧を抱かざるを得ず、声明を発出することとしたものである。横浜国立大学は、国際都市横浜、神奈川地域発のグローバルな貢献を成し得る国立大学として、伝統的な強みと特色を保持し、その責務を一層果たすべく、教育研究機能の充実・強化に努めてきた。

 さらに、第3期中期目標期間においては、理工学分野、教員養成分野及び人文社会科学分野の強みや特色を活かし、21世紀のグローバル新時代に求められる、イノベーティブかつ広い専門性を持った実践的人材を育成する教育プログラムを実施するため、都市科学部(仮称)の新設を始めとする本学一体による教育組織の改編を構想しているところである。

 これまで運営費交付金が年々削減される中、横浜国立大学においては、業務の効率化や外部資金の獲得に取り組み、また、教育研究費を圧縮したうえに正規の教員を減らして特任の教員を雇用する等により、教育研究の質を維持してきた。

 このような大学の経営努力も限界に近づいた今、これ以上の運営費交付金の削減がなされれば、教育研究にかける基盤的経費は第3期中期目標期間中に大幅に減少し、教育研究に携わる教員の更なる削減等の断行を避けられず、社会の要請に応じた改革の取組は失速せざるを得ない。むしろ大学現場はますます疲弊し、教育研究の質の低下を招くことはおろか地域への貢献も十分果たせなくなることは必至である。

 平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会では、今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案として、運営費交付金を今後15年間毎年1%機械的に削減すべきなどの考え方が財務省より示されたが、これは国立大学の責務として社会的必要性に応えていくための数々の役割や自己変革の実現を不可能とするものであり、大学経営に関与してきた立場として、日本社会の成長と発展に寄与する国立大学の行く末に大きな不安を覚える。

 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献する改革を着実に実行していくためには学生に負担を強いるのではなく「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実が不可欠であることを重ねて強調したい。

 また、個人からの寄附金収入の増加は財政基盤の確立に資することになるが、その促進には国立大学法人に対する寄附の税額控除制度を導入し、私立大学と同様に個人寄附にかかる所得控除と税額控除の選択ができるよう強く要望する。


北大、国立大学法人の機能強化に向ける国による財政支援の充実を求める声明

北大
 ∟●国立大学法人の機能強化に向ける国による財政支援の充実を求める声明

国立大学法人の機能強化に向ける国による財政支援の充実を求める声明

平成27年11月24日

国立大学法人北海道大学経営協議会学外委員
秋 庭 英 人 北海道経済産業局長
五十幡 玲 子 株式会社インテグラル代表取締役
石 山 喬 日本軽金属ホールディングス株式会社代表取締役会長
大 内 全 北海道経済連合会会長
一般財団法人北海道電気保安協会理事長
Christina Ahmadjian 国立大学法人一橋大学大学院商学研究科教授
富 田 敏 明 北海道高等学校長協会会長
北海道札幌南高等学校長
辻 泰 弘 北海道副知事
林 菜つみ 弁護士(林菜つみ法律事務所)
樋 口 達 夫 大塚ホールディングス株式会社代表取締役社長兼 CEO
平 山 健 一 国立大学法人福島大学監事
元国立大学法人岩手大学長
古 川 周 三 北海道新聞社論説主幹
松 谷 有希雄 国立保健医療科学院名誉院長
横 山 清 株式会社アークス代表取締役社長
株式会社ラルズ代表取締役会長兼 CEO
(五十音順)

 私たちは、国立大学法人法に基づき設置されている経営協議会の学外委員として、北海道大学の経営に関する重要事項の審議に参画し、社会からの視点で、経済、行政、地域等多方面から様々な意見を述べており、大学も私たちの意見を真摯に受け、懸命に取り組んできました。

 北海道大学に限らず、各大学では、これまでも業務の効率化や経費の節減を進めるだけでなく、国立大学法人の経営の観点から、競争的資金や寄附金等の外部資金獲得の増、附属病院収入の増など様々な取り組みを行いながら教育研究活動の維持向上に努めています。しかしながら、国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金が大きく削減される中、国立大学法人として求められる機能を維持し、さらに機能強化を進めることは困難な状況にあると、私たちは強い危機感をもっています。

 国立大学法人の基盤的な経費である運営費交付金は、平成 16 年度の法人化以降 10 年間で大きく削減され、交付金額は北海道大学では 85 億円(▲19.0%)の減少となっており、国立大学法人全体でみると 1,292 億円の減少(▲10.4%)に及んでいます。

 現在、「日本再興戦略」改訂 2014 や「経済財政運営と改革の基本方針 2014」の中で大学改革が重要な柱として位置づけられ、国立大学法人の運営費交付金の重点的・戦略的な配分強化を行う一方で、実際には基盤的経費の削減が一層強化されようとしています。

 運営費交付金と各種の競争的資金を組み合わせたシステムにより国立大学法人の一層の機能強化を図ることは重要ですが、このままの形で基盤的経費の削減が続いていくならば、「科学技術イノベーションの推進/世界最高の知財立国」、「世界最高水準のIT社会の実現」、「今後 10 年間で世界大学ランキングトップ 100 に日本の大学を 10 校以上」などの政策目標が達成できなくなるものと大変危惧しております。

 政策目標の達成と国立大学法人の将来、ひいては日本社会を支える学術研究の発展と高等教育の未来への投資として、今、国立大学法人の機能強化を支える基盤的サポート体制の構築が必要です。

 国立大学法人法が改正され、経営協議会において学外委員を過半数とすることとなったことは、私たちのこれまでの「社会の目」としての役割が認められたと同時に、私たちに国立大学法人の経営に対する責任をこれまで以上に求めているものだと認識しています。

 これから、第3期中期目標期間を迎え、国立大学法人が一層の機能強化を実行するにあたり、世界トップレベルの研究・人材育成と地方創生を担う基幹国立大学としてその責務を果たせる基盤的財政支援を、国として実施されるよう要請いたします。


お茶の水女子大学、財政制度等審議会財政制度分科会における財務省提案に関する声明

お茶の水女子大学
 ∟●財政制度等審議会財政制度分科会における財務省提案に関する声明

平成 27 年 11 月 20 日

財政制度等審議会財政制度分科会における財務省提案に関する声明

国立大学法人お茶の水女子大学 経営協議会学外委員(50 音順)
相澤 益男(独立行政法人科学技術振興機構顧問、国立大学法人東京工業大学名誉教授・元学長)
上田 良一(日本放送協会経営委員会委員、前三菱商事株式会社代表取締役副社長執行役員)
大橋 節子(学校法人創志学園学園長、社会福祉法人元気の泉理事長)
小野 元之(学校法人城西大学理事・大学院センター所長)
北原 和夫(東京理科大学大学院科学教育研究科教授、国立大学法人東京工業大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授)
坂本喜久子(株式会社冨山房インターナショナル代表取締役、公益財団法人坂本報效会評議員)
野間口 有(三菱電機株式会社相談役、国立研究開発法人産業技術総合研究所最高顧問)
村松 泰子(公益財団法人日本女性学習財団理事長、国立大学法人東京学芸大学名誉教授・前学長)
毛利 衛(日本科学未来館館長)

 国立大学法人お茶の水女子大学は、本年で 140 周年を迎える歴史と実績ある女子大学である。日本における近代女性教育の始祖であり、社会に貢献する優れた女性人材を輩出してきた。

 現在、同大学は、文教育学部、理学部、生活科学部の 3 学部と人間文化創成科学研究科から構成され、学生数約 3,000 名、事業規模約 80 億円と、大学としては比較的小規模ながらも、グローバルに活躍する女性リーダーを育成し、豊かで自由、公正な社会を実現することを目標に、高い志、強い意志と行動力を発揮して、特に女性教育、幼児教育の分野において日本のみならず、世界をもリードしてきた。

 さらに、同大学では、息長く社会貢献活動に取り組んでいる。例えば、10 年先を見据えつつ、大学を挙げて東日本大震災の被災地支援の実践活動を継続している。また、アフガニスタンの女性教育支援を 10 年来継続しているなど、外からの視点で見ても、社会への献身的関与には特筆すべきものが多い。

 私たち経営協議会学外委員は、平成 16 年の国立大学法人化以来、国民を代表して、同大学の経営面における監視役としての役割を果たしてきた。本年 4 月より学外委員を過半数とするよう国立大学法人法が改正されたが、これは、国からの財源措置が徐々に削減されるなかで、我々学外委員に対し、より積極的に経営に関与することを期待されたものと理解している。

 さて、同大学では、国立大学法人化以降、国からの安定的な財源措置が毎年度 1%ずつ削減されてきたため、自助努力として、競争的補助金、科学研究費補助金や寄附金を獲得しつつ、組織体制の抜本的見直しや、正規教員の削減などにより対処してきた。

 その過程で、教職員の非正規化が進み、研究と教育文化の承継が困難となり、正規教員への管理業務集中化に伴う教育研究活動へのしわ寄せ、正規職員への負荷集中などの課題が顕在化しつつある。昨今では、財源確保が伸び悩む一方で、経費削減については、組織体制を抜本的に見直しても対応が困難となり、大学の基盤である基礎的研究費を削減せざるを得ない状況にある。努力の余地も限界が見えつつあるといえる。

 そうした中で、財政制度等審議会財政制度分科会において、国からの安定的な財源措置である運営費交付金を今後も 1%ずつ削減し、削減分は自助努力で賄うとする案が公表された。

 たしかに、国の負債は未曽有の水準にあり、財政状況も極めて厳しいことを勘案すると、国立大学も自ら財源確保に努力すべきことは自明である。

 しかしながら、家計の実質所得が伸び悩む中での学生納付金の値上げは、奨学金制度の充実等がなければ、高等教育の機会均等が担保されず、日本の将来を担う若者の可能性の芽を摘むことになりかねない。また、競争的資金や寄附金の追加獲得など自助努力の余地はあるものの、景気に左右され、大学の財務基盤が益々不安定化することから、大学として必要となる教育・研究機能を維持できなくなる懸念がある。

 これまで、私たち日本国民は、同大学をはじめとする国立大学の所産の恩恵を大いに享受してきた。これからも、これら大学の活躍なくして豊かで自由、公正な未来は展望できないのではないか。

 同大学をはじめとする国立大学が、機能強化を加速させて、それぞれ掲げる目標を達成し、引き続き日本と世界に貢献していくためには、国立大学法人運営費交付金の安定的措置が必須の前提である。

 引き続き、各方面のご理解とご支援を強くお願いする。

国立大学法人が持てる力を存分に発揮し、日本と世界に益々貢献していくため、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金の一層の充実を!

以上

2015年12月01日

神戸大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

神戸大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

2015年11月30日

神戸大学は、平成27年11月27日に開催された第16回神戸大学長定例記者会見において、以下のとおり声明を発表しましたのでお知らせします。

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

 平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会において財務省が示した今後の国立大学運営費交付金に関する提案について、神戸大学アドバイザリーボードとして危惧の念を抱くものである。

 国立大学運営費交付金は、平成16年の法人化から12年間で1,470億円(12%)削減されており、そのしわ寄せが若手教員の採用減少や新たな設備投資の先送りにつながり、大学全体の教育研究機能の低下を招いている。

 国立大学は、法人化以降、各種資金の充実に努めるとともに、教育再生実行会議や社会からの要請を真摯に受け止め、国立大学改革プランに基づく大学改革の途上にある。神戸大学においては、本年4月に新たな大学ビジョン「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を打ち出し、「学理と実際の調和」の理念のもと、世界最高水準の教育研究拠点を構築し、世界ランキングトップ100位以内、国内ランキングトップ5位以内を目標に大学改革を強力に推し進めようとしており、これらの改革に資金が必要なことは言を俟たない。

 国の方針においても、経済成長の源流は「人」にあり、人材育成は重要な先行投資であると位置付けられているように、教育はまさしく国家百年の計であって、長期的な視点での制度設計が必要であり、その中でも重要な教育投資をおろそかにすることは、国の将来に大きな悔恨を残すことになることを深く憂慮する。

 神戸大学アドバイザリーボードは、神戸大学の教育研究に関する助言を行う組織として、本年4月に設置され、我々委員は外部有識者として積極的に意見を述べ、外部から神戸大学、延いては大学を変える力になりたいと考えるため、この声明を行うものである。

以上

平成27年11月27日

神戸大学アドバイザリーボード委員
パナソニック株式会社 フェロー 先端研究本部担当 上野山 雄
国際会計基準審議会(IASB) 理事 鶯地 隆継
川崎重工業株式会社 常務執行役員 技術開発本部長(兼)技術研究所長 門田 浩次
フューチャーアーキテクト株式会社 代表取締役会長CEO 金丸 恭文
大阪大学大学院医学系研究科 分子病態生化学 教授 菊池 章
株式会社カネカ 執行役員 R&D企画部長 鷲見 泰弘
神戸新聞社 代表取締役社長 髙士 薫
三菱電機株式会社 開発本部役員技監 田中 健一
大日本印刷株式会社 常務取締役 塚田 正樹
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 常勤監査役 塚本 雅信
株式会社日本総合研究所 理事 西口 健二
バンドー化学株式会社 執行役員 R&Dセンター長 畑 克彦
国立研究開発法人理化学研究所 理事 松本 洋一郎

京都大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

京都大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月26日

国立大学法人京都大学 経営協議会学外委員(50 音順)
岩永 勝(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター理事長)
嘉田 由紀子(びわこ成蹊スポーツ大学 学長)
加藤 秀樹(構想日本代表)
門川 大作(京都市長)
黒田 清喜(株式会社京都新聞社代表取締役社長 主筆)
小島 啓二(株式会社日立製作所 執行役常務)
小長谷 有紀(大学共同利用機関法人人間文化研究機構 理事)
榊 裕之(豊田工業大学 学長)
佐藤 勝彦(大学共同利用機関法人自然科学研究機構長)
竹中 登一(公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会長)
増田 寿幸(京都信用金庫理事長)
山田 啓二(京都府知事)
鷲田 清一(京都市立芸術大学 学長)

 私たちは、国立大学法人法(平成15年7月16日法律第112号)第20条第2項に基づく経営協議会の学外委員として、国立大学法人京都大学の経営に関する重要事項を審議し、経済、産業、行政、地域等多様な立場で社会からの視点として意見を述べ、大学運営に反映させる役割を果たしてきました。

 その立場から見ても、平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案については、大きな疑念や危惧を持つものであります。

 今回の提案で財務省は、今後15年間に運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合とすることを目標とし、運営費交付金を毎年1%減少させ、自己収入を毎年1.6%増加させることが必要としていますが、国立大学の現状や自律的な取組に対してあまりにも配慮を欠いたものであり、国立大学の存立を危うくすると言わざるを得ません。

 たしかに我が国の財政状況は極めて厳しく、国立大学が高い質を確保しながら自律的・持続的な経営を続けていくためには、国費による支援に安住することなく、自ら多様な自己収入を確保していく努力は必要なことと考えますが、教育・研究が本務である国立大学では自己収入を増やすにもおのずから限界があります。

 すでに国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金は平成16年度の法人化以降大幅に削減されており、国立大学全体ではこの12年間で1,470億円(約12%)、京都大学においても99億円(約15.4%)削減されております。

 そもそも我が国における高等教育への公財政教育支出の対GDP比は0.7%ですが、これはOECD加盟国平均の半分にすぎず加盟国の中で最下位レベルです。

 京都大学はこれまで人文社会科学から自然科学まで幅広い分野で世界をリードする教育・研究を推進し、ノーベル賞をはじめとする世界に冠たる賞の受賞者を多数輩出してきました。

 しかし、このまま運営費交付金を機械的に削減していけば、京都大学が行ってきた将来を担う若手人材の育成や多様な分野にまたがる世界トップレベルの基礎研究の推進及びそれらを通じた社会貢献に重大な支障をきたすだけでなく、国立大学の将来、ひいては我が国を支える科学技術と高等教育の未来に大きな禍根を残すことになります。

 また、家庭や学生の経済状況が厳しくなっている中で、授業料の引上げと併せて運営費交付金の減額を行うことは、経済条件や地域にかかわらず意欲と能力のある若者を受け入れて優れた人材を社会に送り出すという国立大学の役割を十分に果たすことができなくなり、教育格差の拡大につながることを危惧します。

 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献していくためには、「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実が不可欠であることを重ねて強調し、各方面のご理解をお願いするものです。


秋田大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

秋田大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成 27 年 11 月 26 日

国立大学法人秋田大学 経営協議会学外委員
小笠原 直 樹 (秋田魁新報代表取締役社長)
小山田 雍 (秋田県医師会会長)
杉 山 文 利 (DOWA ホールディングス株式会社代表取締役)
銭 谷 眞 美 (東京国立博物館館長)
高 島 幹 子 (秋田県看護協会会長)
藤 原 清 悦 (秋田銀行相談役)
吉 本 高 志 (東北大学名誉教授)
米 田 進 (秋田県教育委員会教育長)

 平成 27 年 10 月 26 日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した「国立大学法人運営費交付金を今後15年間、毎年1%削減する」という提案について、国立大学法人秋田大学の経営協議会学外委員として、地方の国立大学の存立に極めて深刻な危惧を抱かざるを得ません。地方の国立大学が置かれた現状と地域社会に果たすべき役割に対して、更なる理解を求めるとともに、国立大学法人運営費交付金による基盤的経費の確保充実を強く求めます。

 国立大学法人化以降の国立大学運営費交付金の削減は、特に地方の国立大学に対しては重大な事態を招いています。人口減少が最も早く進むといわれる秋田県においては、2040年には人口が 70 万人まで減少するといわれ、県内のあらゆる機関がこの超少子高齢化社会に向き合う中、秋田大学が果たす人口ダム機能は、地域社会存立に対し極めて大きな役割を果たしています。

 こうした秋田大学の経営に対する民間企業からの支援は、特定目的の研究開発等極めて限定的であり、東京一極集中が進みかつ企業の基礎体力が縮減している日本社会、特に地方においては、新たに設立した大学の基金に対する多額の寄附・支援は極めて厳しいのが現状です。

 また、授業料免除を求める学生や優秀でありながら経済的理由で学業を断念せざるを得ない学生は近年ますます増加しており、授業料を増額することは、こうした学生たちが大学で学び、未来を切り拓いていく機会を国の政策によって奪うことを意味し、特に地方の国立大学法人にとっては全く現実的な選択肢ではありません。

 私たちは、「社会の目」として秋田大学の経営に関わる中で、国立大学法人の行く末を極めて憂慮しています。秋田大学においては、全国で唯一の国際資源学部への学部改組や、学外者を入れた学部運営を行うカウンシル制度の先駆的な導入など、国家戦略に即した大学改革に真摯に取り組んでいます。安倍政権は「大学は国力」を掲げています。我が国の将来の国力を支える国立大学法人に対する予算措置を優先的に配慮されるよう、強く求めるものです。


2015年11月30日

岩手大、授業料値上げも 交付金削減案受け試算

岩手日報(2015/11/28)

 岩手大(岩渕明学長)は27日、運営費交付金を毎年度1%削減する財務省案が導入された場合、授業料の28%値上げや教職員削減を迫られるとの試算を明らかにした。外部資金の獲得で減収を補うのは困難な状況で、教育格差の拡大や研究の質の低下を招く恐れがあるとして、同大など全国の国立大は削減に強く反発している。県内の国立以外の大学の授業料にも影響する可能性もあり、国の動向が注目される。

 岩手大が同日公表した資料によると、本年度の運営費交付金(一般分)は56億7300万円。これに対し15年間1%ずつ削減する財務省案が導入されれば、2031年度には8億4300万円減の48億3千万円となる。

 削減分を授業料(年間53万5800円)で補うためには単純試算で15万1700円(28%)増の68万7500円への値上げが必要。人件費のみの試算では、現在の教職員750人は90人(12%)減の660人としなければならない。

 財務省案では31年度に交付金と自己収入を同じ割合にすることが目標だが、同大の14年度の自己収入は34億3200万円で、交付金に頼る割合が大きい。既に過去10年間で10%削減されており、産学間連携の推進などこれ以上の自己収入を確保するのも困難という。


2015年11月28日

国立大交付金削減は「無謀」、神戸大が反対声明

神戸新聞(2015年11月27日)

 神戸大学の武田廣学長は27日、定例会見を開き、10月に財務省が示した国立大学運営費交付金の削減案について、「大胆で無謀な案」と批判した。外部有識者でつくり、大学に助言する組織「神戸大学アドバイザリーボード」に呼び掛け、削減案に反対する声明を出した。

 財務省は10月26日、財政制度等審議会の分科会で、国立大に配る交付金を2016年度から毎年度1%ずつ削減する改革案を示し、大学の自助努力を促した。

 武田学長は会見で声明文を紹介。「法人化以降、既に交付金は削減されている。教育投資をおろそかにすることは国の将来に大きな悔恨を残す」などと反対の姿勢を強調した。

 声明は近く、国立大学協会に送り、財務省と文部科学省に提出される予定。


国立大の中期目標・計画-改革は抽象的、肉付け急ぎ発信を

日刊工業新聞(2015年11月26日)

 国立大学86校が2016年度から取り組む「第3期国立大学中期目標・中期計画」素案が公表された。すべての大学が何らかの組織見直しを挙げており、改革の意欲は感じられる。しかし個々の特色強化は抽象的な表現もみられる。財政支援の理解を社会から得るためにも、具体的な計画を急ぎ肉付けして発信してほしい。

 この素案は、各大学が6月に文部科学省に提出した計画をまとめたもの。文科省が同じ時期に問題提起した人文社会科学系の再編・見直しについては33大学が計画に盛り込んでいる。これは「人文社会系の教育研究は浮世離れしたものでなく、社会で活躍する人材育成につながるべきだ」という意識を、多くの大学が早い段階から持っていたことを意味する。

 一方、理工系の取り組みをみると、東北大学はスピントロニクスやデータ科学などで、海外有力大学と連携した七つの国際共同大学院プログラムの実施を挙げた。豊橋技術科学大学は、社会実装と社会提言につながる研究の両面で、それぞれ3件以上の成果を目標に掲げた。九州大学は二酸化炭素を増やさないカーボンニュートラル、エネルギー関連という強みに力を入れ、米国イリノイ大学などとの連携を計画している。

 改革意識を明確に示す数値指標は限定的だ。目立つのは留学の派遣・受け入れや女性教員の数字で、8割近くの大学が挙げた。ただ、この切り口は横並びでしかなく、各大学の特色強化に結びつけるのは難しかろう。各大学は個性を明確にした取り組み策を具体化し、広く理解を得る努力をしてほしい。

 財務省の財政制度等審議会は16年度予算の編成方針で、大学等の運営費交付金の年1%削減を継続する一方、自己収入 の年1・6%増を求めた。共同研究費や寄付金の増加を目標とするのは結構だが、現実にはこれほど高い伸び率で大学が資金を集めるのは難題だ。行き詰まった大学が学費値上げに動くようでは公益にも反しかねない。各大学は国の交付金削減をはね返す意味でも、個性の発揮に努めるべきだ。


2015年11月25日

北陸地区国立大学連合、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

国大協
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月20日
北陸地区国立大学連合
富山大学学長 遠 藤 俊 郎
金沢大学学長 山 崎 光 悦
北陸先端科学技術
大学院大学学長 浅 野 哲 夫
福井大学学長 眞 弓 光 文

 我々北陸地区の国立四大学は,地域の中核的高等教育機関として,教育の機会均等等を担う公共的性格の下,優れた教育を提供し,医師や教員など地域になくてはならない有為な人材を育成している。また,北陸地域は,産業・建設等の一般機械,アルミサッシ等の金属製品,電子部品,繊維等の最先端技術開発を必要とする様々な基幹産業のみならず,農業,水産,製薬等の地場産業に及ぶ幅広い産業分野で日本の発展を支えており,我々四大学は,地元産業界との共同研究等により,優秀な人材の育成や再教育を行うとともに,研究成果の還元により様々な機能を支え,地域の発展・活性化に貢献している。一方で,近年の日本の急速な少子高齢化と財政難から,我々四大学を含む国立大学は更なる機能強化を強く求められており,知の拠点として世界的な研究成果やイノベーションの創出等に向けた大学改革を主体的に進めてきている。

 そのような状況で,先般の財政制度等審議会財政制度分科会において,財務省から,国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金を平成 28 年度から毎年1%減額し,その減額分に見合う自己収入を毎年 1.6%増やすことが提案された。すでに国立大学は平成 16 年の法人化以降,12 年間で運営費交付金が 1,470 億円(約 12%)減額されている。さらに,医療人材の養成,高度医療の提供,地域医療の拠点としての機能を担う附属病院に関しても,消費税増税等の影響により非常に厳しい経営環境にさらされており,特に附属病院を持つ富山,金沢及び福井の三大学は危機的な財務状況に陥っている。我々四大学は,これまでも業務の効率化や経費節減などの諸施策を講じてきたが限界に達してきており,さらに継続的に運営費交付金を削減されれば,大学の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化し,壊滅的な機能不全に陥る恐れがある。このことは,地域の教育,研究,医療の拠点としての機能を衰退させ,ひいては地域の発展・活性化を停滞させることが懸念され,地域における中核人材の育成拠点であり,強み・特色のある分野で世界的な研究を行っている我々四大学にとっては大きな問題ナある。

 また,運営費交付金の削減分を自己収入の増加により補うという提案は,授業料の大幅な引き上げに繋がりかねず,現下の国民の経済状況からみても教育格差が更に拡大されることが懸念され,各地域における教育,文化,産業の基盤を支え,学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという国立大学の使命が十分に果たせなくなることを強く危惧している。

  我々四大学は,この様な急激に悪化した財政状況の下にも関わらず,学長のガバナンス改革を実行し社会を変革するエンジンとしての大学へと改革を着実に進めている一方で,「北陸地区国立大学連合」を設置して,教育,学術研究,医療,社会貢献等の各分野における連携を推進し,大学の機能強化に取り組んでいるところである。そのような時に,今回のこのような提案が表明されたことは,あまりにも配慮を欠いたものであり,大学の自主的な改革や機能強化の実現を危うくするものと懸念するところである。

 昨今の国の財政状況を鑑みれば,国立大学が厳しい環境におかれていることは十分に認識している。しかしながら,地域における中核人材の育成を担う我々四大学が,教育研究の質を担保しながら高等教育の機会を提供し,イノベーションの創出を目指していくことは,日本の持続的発展を支えるために必須であると考える。そのため,運営費交付金の充実は必要不可欠なものであり,その継続的な削減方針への反対について,関係者のご理解とご支援をお願い申し上げるものである。


2015年11月18日

国大協、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

国大協
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明(平成27年11月13日)

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月13日
国立六大学連携コンソーシアム
千葉大学 学長 徳 久 剛 史
新潟大学 学長 髙 橋 姿
金沢大学 学長 山 崎 光 悦
岡山大学 学長 森 田 潔
長崎大学 学長 片 峰 茂
熊本大学 学長 原 田 信 志

 我々国立六大学は、旧制医科大学を引き継いだ新制大学として戦後の昭和 24 年に設置され、現在ではそれぞれの大学が学生数 1 万人以上の総合大学となり、各地域の高等教育の中核として有為な人材を育成してきている。また、近年の日本の急速な少子高齢化と財政難の中でも、国立大学は更なる機能強化を強く進めており、知の拠点として世界的な研究成果やイノベーションの創出、グローバルに活躍できる人材の育成などに向け、大学改革を主体的に進めてきている。このような状況で、先般の財政制度等審議会財政制度分科会において財務省から、国立大学は平成 28 年度から運営費交付金を毎年 1%減額し、その減額分に見合う自己収入を毎年 1.6%増やすことが提案された。

 すでに国立大学は平成16年の法人化以降、12 年間で運営費交付金が 1,470 億円(約 12%)減額されている。このような急激な運営費交付金の減額は、人件費の減額として若手教員の新規採用の減少と非常勤教員の増加に繋がり、結果として優秀な人材の確保や教員の研究時間の確保に支障が生じており、大学全体の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化している。さらに、医師の養成とともに特定機能病院として最先端の医療を提供している附属病院に関しても、消費税増税等の影響により非常に厳しい経営環境にさらされており、附属病院を持つ国立大学は危機的な財務状況に陥っている。

 このような状況の下において、継続的に運営費交付金を削減することは、日本の高等教育の中核を担う国立大学が壊滅的な機能不全に陥り、結果として我が国に将来にわたり計り知れないほど大きな損失を与えかねない。

 また、運営費交付金の削減分を自己収入の増加により補うという提案は、授業料の大幅な引上げに繋がりかねず、現下の国民の経済状況からみても教育格差の更なる拡大に繋がり、各地域における教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという国立大学の使命が十分に果たせなくなることを強く危惧している。

 国立大学は、このような急激に悪化した財政状況の下にも関わらず、学長のガバナンス改革を実行し社会を変革するエンジンとしての大学へと改革を着実に進めている最中である。そのような時に、今回のこのような提案が表明されたことについては、あまりにも配慮を欠いたものであり、教職員の改革に対する熱意や将来への希望を奪うものと懸念するところである。

 現在、国の財政状況が極めて厳しい状況におかれていることは十分に認識している。しかしながら、新興国の台頭によりあらゆる分野で国際競争が激化していく中、我が国の知識基盤社会を支える国立大学が、教育研究の質を担保しながら各地域において高等教育の機会を提供し、有為の人材を育成し、かつ、イノベーションの創出を目指していくことは、日本の持続的発展を支えるために必須であると考える。そのため、国立大学への基盤的経費である運営費交付金の投資は必要不可欠なものであり、その継続的な削減方針への反対について、関係者のご理解とご協力をお願い申し上げるものである。


2015年11月03日

財務省の予算提案、国立大学交付金削減を許すな

しんぶん赤旗(2015年11月2日)

 財務省が大学予算削減のために、国立大学の授業料引き上げと運営費交付金の大幅削減の方針をまとめ、文部科学省に提案しました。国立大学協会(国大協)や中央教育審議会(文科相の諮問機関)が抗議声明を出すなど、危ぐの声が広がっています。

授業料40万円増の危険が

 財務省提案は10月26日の財政制度等審議会に示され、了承されました。同提案は、国立大学に対して運営費交付金に頼るなと脅し、今後15年間、交付金を毎年1%削減することで、授業料引き上げや産学連携などによる毎年1・6%の自己収入増と、少子化に対応した大学の「規模の適正化」を迫るものです。高等教育にたいする国の責任放棄といわざるをえません。

 第一の問題は、産学連携による収入増には限界があり、交付金削減は授業料の大幅引き上げを招きかねないことです。仮に、授業料引き上げだけで自己収入を増やすとなれば、毎年2万5千円程度値上げし、16年後の授業料は40万円増の93万円になります。経営難の私立大学も値上げに踏み切り、1970年代から2005年まで続いた大学全体の「値上げの連鎖」が復活します。

 現在、大学4年間で必要な費用は約670万円です(日本政策金融公庫調査)。アルバイト漬けの学生や、経済的不安を抱えながら進学にむけて勉学に励む高校生に、さらなる経済的負担を強いることはあってはなりません。財務省提案は、憲法26条が求める「教育を受ける権利」の保障を投げ捨てる暴挙です。

 第二の問題は、運営費交付金の削減により、少子化に対応した「規模の適正化」を図るとする提案は、大学の再編・縮小を招くことです。運営費交付金は04年に国立大学法人化された後、1470億円(11・8%)も削減されました。経常収支における交付金の割合は、48%から34%に低下し、教育研究費が枯渇する大学もあります。

 国大協は声明で「運営基盤は急激に脆弱(ぜいじゃく)化しており、諸経費の高騰も相まって危機的な状況にある」と訴えています。財務省提案どおり毎年1%削減を続ければ、交付金は16年後に1948億円の削減です。中小規模の国立大学約40校分に匹敵します。大学が授業料を据え置くなら、教育研究組織の大幅縮小しかありません。ノーベル賞の連続受賞に象徴される国際的に高い水準にある基礎研究の基盤を失いかねません。

 18歳人口が減少するから規模を縮小するという議論は、あまりにも短絡的です。他の先進諸国と比べて日本は、大学進学率が低く、社会人学生も留学生も極めて少ないのが現状です。年齢や出身を問わず、誰もが大学で学ぶことができる環境の整備こそが求められています。社会の知的基盤である大学が「学問の府」にふさわしいやり方で改革することは、日本社会の発展のためにも欠かせません。

財政支援の充実こそ必要

 いま必要なことは、政府主導の再編・縮小ではなく、大学の自主的な改革の努力であり、そのためには、国公私立をこえて、大学自らが大学のあり方を議論する場をつくることと、私立大学も含めた財政支援の充実です。

 国立大学交付金の「毎年1%削減」は亡国の道であり、財務省提案は撤回すべきです。

2015年10月31日

日本学術会議幹事会声明、「人文・社会科学系のあり方に関する声明への賛同・支援への謝意と 大学改革のための国民的合意形成に向けての提案」

日本学術会議幹事会声明(2015年10月15日)

日本学術会議幹事会声明

「人文・社会科学系のあり方に関する声明への賛同・支援への謝意と 大学改革のための国民的合意形成に向けての提案」

1.人文・社会科学問題に関するその後の経過と要望
日本学術会議幹事会が、去る6月8日の文部科学大臣通知1 (以下「通知」という。)を受け て 7 月 23 日に公表した幹事会声明「これからの大学のあり方-特に教員養成・人文社会科学 系のあり方-に関する議論に寄せて」2に対して、ISSC(国際社会科学評議会)からのメッセー ジをはじめとして、国内外諸団体から多くの御意見を頂戴した。それらの多くは、「総合的な学 術の一翼を成す人文・社会科学には、独自の役割に加えて、自然科学との連携によって我が国と 世界が抱える今日的課題解決に向かうという役割が託されている。このような観点からみると、 人文・社会科学のみをことさらに取り出して『組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換』を 求めることには大きな疑問がある」という幹事会声明に賛意を示したものであり、ここで改め て感謝したい。
一方で、文部科学大臣や文部科学省は、その後、通知に対する大学等の関係機関の捉え方と 大臣や同省の本意との間に乖離があることを様々な機会に表明してきた。9 月 18 日には、同省 高等教育局長が日本学術会議幹事会に出席し、「新時代を見据えた国立大学改革」3と題する文 書を配布した上で、この件について説明した。この文書は、文部科学省は人文・社会科学系学 部・大学院を廃止し、社会的需要の高い自然科学系分野に転換すべきだと考えているのではな いか、あるいは人文・社会科学系の学問は重要ではなく、すぐに役立つ実学のみを重視しよう としているのではないかという通知の受け止め方を否定した上で、「廃止」については教員養成 系のいわゆる「新課程」を対象としたものと例示する一方、各国立大学に「社会的要請の高い 分野への転換」に取り組むよう求めている。これらの説明を通じて、日本学術会議幹事会とし ては、通知の背後にある文部科学省の考えを理解したところである。ただ、通知の文言そのも のからこのような趣旨を読み取ることは困難である。このため、通知を読んで我が国の高等教 育行政における人文・社会科学系の位置付けに不安や疑問の念を抱いた国内外の方々は多く、 そのことは諸メディアの報道にも表れている。したがって、文部科学省においては、上記のような同省の真意を述べた文書等を国内外に示しつつ、引き続き丁寧に説明されるように要望し たい。

2.高等教育機関が抱える問題の認識
その上で、日本学術会議は、今回の通知やそれに関連して行われた議論を通じて、現在の我 が国の高等教育の抱えるいくつかの重要な問題が浮かび上がってきたことに着目し、これを高 等教育の改善と強化を図る契機とすることが重要と考える。
機を同じくして、本年も我が国の研究者がノーベル生理学・医学賞、同物理学賞を受賞した。 平成 12 年以降、米国に次いで多くのノーベル賞受賞者を輩出していることは、我が国の科学 研究の高い水準と研究者の層の厚さを示すものであり、学術研究と人材育成に関する産学官の 努力と国民の支援が結実したものである。他方、近年、世界の学術研究が急速に発展する中で、 我が国の研究教育環境が劣化し、それが、我が国の高等教育に対する国際的な評価の低下を招 くことになるのではないかという懸念が各方面から表明されている。言うまでもなく、高い研 究力と優れた人材育成環境を維持していくことが、我が国の発展にとって極めて重要である。
日本学術会議は、我が国の高等教育が抱える重要な問題を以下のように認識する。
第 1 に、先の幹事会声明の「6.」で言及した人文・社会科学における質的向上の必要は、 同分野に止まるものではない。すなわち、人文・社会科学、生命科学や自然科学・工学の分野 を含む、我が国の人材育成には、グローバル化への対応、リベラルアーツと専門科目によって 的確に構成された学部・大学院のカリキュラムと学習の達成目標の設定や評価方法の採用等に おいて課題がある。さらに研究においても、基礎と応用や実用との間の区別と連関に関する社 会的共通理解の不足等の課題をなお抱えている。我が国の大学において、今後速いテンポでこ うした課題に対処するための改革を進めて、国内外の学生が自分の学修の目標と達成度を認識 することができ、真の意味で社会に有用な人材が育ち、さらに研究成果が社会に還元されるよ うに、高等教育機関を研究と教育の国際的な拠点として強化していくことが求められている。
第 2 に、この通知は、第 3 期中期目標・中期計画の内容に関する文部科学省の要求という位 置付けであったことから、国立大学に対する運営費交付金の配分を方向付ける文書として関心 を集めた。第 1 で述べた改革を実行していく過程で、国立大学への運営費交付金、私立大学へ の助成金、その他の高等教育への国の資金、大学に所属する研究者を含む科学・技術の研究者 への研究資金等を、少なくとも今後一定の期間においては安定的に確保することが、各大学による自主的な改革を進める上で不可欠である。特に、国立大学運営費交付金のこれまでの経過 を振り返れば、毎年 1%ずつ削減されることによって、大学における教育・研究そのものに支 障を来している。その結果、肝心な改革が停滞したり、若い有為な人材を登用することが次第 に困難になってきたりしている。これを防ぐためには、厳しい国家財政の中でも国民の合意を 得ながら、改革を可能とする財源の確保が必要である。
第 3 に、大学改革にあたっては、目先の実用性に目を奪われるのではなく、幅広い教養と優 れた専門性を備えグローバルな視野を持った人材を育成することが必要である。このことは、 例えば、国立大学協会が発表した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」4(9 月 14 日)に示されているばかりではなく、経済界においても、例えば日本経団連が先述の通 知に関連して出した文書において「学生がそれぞれ志す専門分野の知識を修得するとともに、 留学をはじめとする様々な体験活動を通じて、文化や社会の多様性を理解することが重要」(日 本経済団体連合会「国立大学改革に関する考え方」59 月 9 日)としている。したがって、学術 界のみならず、大学卒業生の多くが職を得る産業界との対話を含んだ幅広い場において、大学 のあり方について議論し、合意を形成することが必要である。

3.大学改革に向けた提案
このような認識から、日本学術会議は、既に設置している「学術振興の観点から国立大学の 教育研究と国による支援のあり方を考える検討委員会」において、大学のあり方に関する提言 を行うために審議を継続する所存である。同時に、その途中の段階でも主要な論点を公表し、 国民的な議論を起こし、グローバル時代に必要な人材を送り出し、優れた研究成果を生み出す 高等教育機関のあり方を模索することが必要と考える。日本学術会議は自らこのような活動を 行うとともに、関係機関(1)、(3)及び政府(2)、(4)に対して以下のことを提案す る。
(1) 高等学校・高等専門学校卒業生はもとより、社会人にとってもより魅力的な大学となるた めの学修内容や学部・学科構成のあり方、及び大学の研究成果が基礎、応用、実用のそれ ぞれの段階でより社会の発展に資するものとなるためのあり方、さらにグローバル時代に 世界の学生や研究者が魅力を感じる教育研究組織となるための我が国の大学のあり方等 について、大学・学術界、産業界、一般の方々が自由に意見を交わして合意を形成するための議論の場を設置すること。
(2) 政府は、上記議論の場から得られる提言を可能な限り尊重し、実施していくこと。その際 に、厳しい国家財政の下で、年金・医療等の高齢社会に対応した財政支出と高等教育を含 む次世代の育成に対応した財政支出にどのように資源配分を行うかを含めて、国民的議 論を促すこと。
(3) 国公私立を問わず、各大学は、積極的にこうした議論に参加して、得られた成果をもとに 自ら改革を実現していくこと。
(4)こうした改革が行われる間(概ね第3期中期目標・中期計画の6年間)、政府は、大学への 国の財政的支援を充実し、自主的な大学改革の実施が可能となるような環境を整えること。
日本学術会議は、以上の提案の実現を通じて、我が国における人材育成と科学研究の改善 と持続的発展を目指すものである。

2015年10日15日 日本学術会議幹事会
大西 隆 向井 千秋 井野瀬 久美惠 花木 啓祐 小森田 秋夫 杉田 敦 小松 久男 恒吉 僚子 長野 哲雄 大政 謙次 石川 冬木 福田 裕穂 相原 博昭 土井 美和子 大野 英男
川合 眞紀
会長 副会長

同 第一部長
同 副部長 同 幹事 同 幹事
第二部長
同 副部長 同 幹事 同 幹事
第三部長
同 副部長 同 幹事 同 幹事


2015年09月23日

国立大、「文系改革」に揺れる 文科省通知「廃止」言及

朝日新聞(2015年9月22日14時58分)

 全86校の国立大に対し文部科学省が6月に出した通知が波紋を呼んでいる。「廃止」という言葉を使って人文社会系学部の見直しを迫り、それに対応する大学も出始めた。一方で強い批判もあり、文科省は火消しに追われている。

 「とうとうきたか……。戦時中の文系学生の学徒動員や高度成長期の理系偏重をほうふつとさせる」。文科省の通知に、滋賀大の佐和隆光学長はそう思った。

 通知は「特に教員養成系、人文社会科学系学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」と統廃合にも言及していた。経済と教育の2学部体制の滋賀大への影響は大きいという。

 佐和学長は、産業競争力会議や文科省の有識者会議で「社会の要請に応えていない」「職業訓練大学に変えろ」と指摘されるたびに危機感を抱いてきた。「このままでは運営費交付金を削減され、極貧大学になる」。対策として滋賀大は2017年度、文理融合のデータサイエンス学部を新設。統計学と情報工学などを使ってビッグデータを解析し、新たな価値を創造する人材を育てる。経済・教育両学部の定員を減らして新学部に回すという。

 人文社会系学部の見直しを検討する国立大は多い。

 弘前大は16年度、教育学部の定員を70人減とし、人文学部を人文社会科学部に変えて80人減らす。一方で理工学部は学科の新設などで60人増やす。「大学の役割の再定義を踏まえた結果」(広報)という。

 千葉大が16年度に新設する「国際教養学部」は人文社会科学、自然科学、生命科学の学問分野にまたがる。定員の90人は、教育学、文学、理学、工学、園芸学部を減らして捻出する。小沢弘明副学長は「ここ十数年、すぐ役立つ人材を育てるとか、企業がそれを要望するとかの流れがある。正しく大学の自治があれば、通知にどう対応するかは大学の考え方、見識しだいだ」と話す。

 国立で唯一「芸術大学」を名乗る東京芸術大学も、文系学部の危機を前に「明治時代の開学以来」という改革に取り組む。「このままでは生き残れない。不退転の覚悟で世界最高峰を目指す」と宮田亮平学長。この7、8年で芸術系離れが進み、同大の受験者数は美術学部で約33%、音楽学部で約25%減ったという。

 改革の中心はグローバル化だ。昨年、芸術系大学で唯一、国のスーパーグローバル大学に認定された。最大3億円の支援を受け、美術学部は海外の4校と連携を進める。同学部の学生たちは7月から、パリの国立高等美術学校の学生と2人1組で「私と自然」がテーマのパフォーマンスを制作。英語で話し合い、竹や布などの素材を集め、所作を考えた。

 フランスの学生からは「原発事故」から「軽トラック」まで社会問題や文化と結びつけたキーワードが飛び出した。

 作品は8月に国内外の芸術家が参加して新潟県で開かれた「大地の芸術祭」で発表された。「危険なものとの歩み寄り」を表現した彫刻専攻の大学院生角田里紗さん(23)は「今までは1人で黙々と素材を触っていた。フランスの学生のアイデアは刺激的で、社会への発信力が身についた」。

 保科豊巳美術学部長は「学生には国際的な芸術祭で公開できるレベルを求めた。グローバルに考えた問題意識を社会に出せないと、世界で活躍する芸術家になれない」と考える。沢和樹音楽学部長は「今は例えば、芸術家を世界平和にどう役立たせるのか、自分の存在感をどう打ち出すのかが問われている」と話す。(石山英明、河原田慎一)

■文科省、批判対策に苦慮

 大学が自主的に再編を続ける一方、通知を出した文科省は文系軽視との批判を受け、火消しに追われる。

 18日、2千人以上の科学者でつくる日本学術会議の幹事会。文科省の常盤豊・高等教育局長は、文系を廃止して自然科学系に転換すべきだという意味ではない、と明確に否定した。7月に学術会議から「人文社会科学の軽視は大学教育を底の浅いものにしかねない」と批判されたためだ。

 経団連も9日、安易な文系見直しに反対する声明を出した。下村博文文科相は11日の記者会見で「非常に誤解を与える文章だった」と通知の不備を認め、「廃止」の対象は少子化で需要が減る教員養成系で、人文社会系には改善を求めるというのが真意だったと説明。「経済界が即戦力を求めているからこうしたなんて一言も書いてないし、思っていない」と話した。

 文科省によると、専門分野が細分化されて人文社会系の教育が「たこつぼ化」していることや、どんな人材を社会に送りたいかの説明が足りないことなどの課題があるという。幹部は「人文社会系はむしろ重要で、積極的に対応してほしいとのメッセージ」と説明する。

 国立大の収入の4割を占める運営費交付金は年間約1・1兆円。なるべく特長のある分野に投資しようと、文科省は12~14年、各大学に強みとなる教育や研究の洗い出しを求めた。その結果、人文社会系の課題が大きかったという。

 文科省の通知案を了承した「国立大学法人評価委員会」委員の河田悌一・日本私立学校振興・共済事業団理事長は、国立大人文社会系には、ほとんど勉強しなくても単位が得られる科目があるなどの課題を指摘する。「多額の交付金に守られ、社会でどんな役割を果たすのか説明してこなかった」。少子化の中、改革しなければつぶれる。そんな私立大なら当然の意識も乏しかったという。(高浜行人)

■研究・教育のバランスを

 〈本田由紀・東京大大学院教授(教育社会学)〉国立大の人文社会系学部は、学生や社会の側に立って授業の魅力を十分説明できていない面もある。また、分野によって専門知識の習得や社会問題への関心の喚起が乏しいなどそれぞれ課題があり、カリキュラムの偏りを正す工夫の余地がある。財政事情が苦しい中、投資に見合った人材育成を求める国の考えにもそれなりの背景はある。ただ、教員が減るなどして結果的に人文社会系分野の研究が衰退するとすれば問題だ。これ以上国に改革の口実を与えないよう、大学院などで研究機能を維持しつつ、教育では組織や内容を工夫するなどバランスの取れた改革が必要だ。


国立大学協会、AO・推薦の入学定員拡大 改革プランまとめる

SankeiBiz(2015.9.22)

 国立大学協会は書類や面接などで選考するアドミッション・オフィス(AO)入試や推薦入試、海外の大学の入学資格「国際バカロレア」取得者対象の入試の合格者を、入学定員の30%に拡大することなどを盛り込んだ改革プランをまとめた。

 来春の平成28年度入試では東大が推薦入試を導入、京大もセンター試験や面接による「特色入試」をするなど、AO・推薦入試を実施する国立大は増加しているが、募集定員は全体の約15%にとどまっている。

 文部科学省も大学入試改革を議論しているが、国立大の規模や環境はさまざまで、全ての大学が改革を推進するためには体制整備など課題は多そうだ。

 国立大学協会は、各国が高等教育への投資に力を入れている海外の状況、少子化や厳しい財政状況といった国内の事情を挙げ、抜本的な改革の必要があると指摘。改革プランへの取り組みを28~33年度に開始し、実行するとした。


2015年09月19日

国立大文系見直し 文科省が学術会議に説明

NHK(9月18日 21時09分)

国立大学の人文社会科学系学部の見直しを求める通知を巡り、文部科学省の担当者は、18日、通知に対する批判声明を出した日本学術会議を訪れ、「通知は大学の変革を促すのが目的で、人文社会科学系の学問を軽視しているわけではない」などと説明しました。
この通知は文部科学省が、ことし6月、全国の国立大学に出したもので、人文社会科学系や教員養成系の学部や大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」と書かれています。
この通知に対し、日本の科学者の代表などでつくる日本学術会議は、大学教育全体を底の浅いものにしかねないとして批判する声明を発表していました。
18日、日本学術会議の幹事会を訪れた文部科学省の常盤豊高等教育局長は、誤解が生じているとして通知の趣旨を説明し、「社会の変化に合わせた大学の自己変革を促すのが目的で、人文社会科学系の学問を軽視しているわけではない」と述べました。
出席者からは理解を示す声とともに、「組織を見直すことだけが変革ではない」とか「社会的要請に合わせるだけでなく、その先のニーズを生み出す人材を育てることが教育だと思う」といった意見が出ていました。
日本学術会議の大西隆会長は、「きょうの説明は理解したが、通知の文面はそのような趣旨には読み取れないので、今後も丁寧に説明し続けたほうがいいのではないか」と話していました。

2015年09月12日

国立大・文系廃止通知:下村文科相「見直し求めた」と釈明

毎日新聞 2015年09月11日

 ◇「誤解を与える表現だった」とも

 国立大学に文系学部の改組や廃止を求めた文部科学省の通知で、下村博文文科相は11日、閣議後の記者会見で、人文社会科学系については廃止ではなく見直しを求めたものだったとして「誤解を与える表現だった」と釈明した。通知に対し学術界から「文系軽視か」と批判が出るなど波紋が広がる中、文科省は火消しに躍起だが、通知の見直しや撤回は予定していない。

 通知は文科相名で6月に出された。各大学が作成する2016年度から6年間の業務運営計画の基になるもので「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については(中略)組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」ことを求めた。

 これに対し、日本学術会議は7月、「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」と批判する声明を出した。大学改革が政府の成長戦略に位置づけられたこともあり、有識者らから「実学重視」の流れを警戒する声が強まると、経団連は今月9日、文科省の通知について「即戦力を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材像はその対極にある」との文書を出した。

 下村文科相は11日の会見で「人文社会科学系は廃止ではなく、見直しが必要ではないかというのが通知の本来の趣旨だった」と述べ、「廃止」対象は教員養成系だと説明。特に教員免許取得を卒業条件としない「新課程」(いわゆるゼロ免課程)について、少子化に伴い教員数が減っているため「廃止は当然のこと」と強調した。

 通知の文章について下村文科相は「一字一句私が全部チェックしているわけではない」と弁明した。【三木陽介】


富山大 文系定員100人規模削減も

2015年09月11日

 富山大は、文系学部の定員を100人規模で削減する方向で検討に入った。文系学部で削減した定員を、新設する理系学部に充てることで、地域創生を担える人材の育成を目指す狙いがある。文部科学省は今年6月、文系学部の廃止・転換を求める通知を出しており、同大幹部は「文系の定員削減規模がさらに拡大する可能性もある」と話している。


 同大などによると、定員の削減が検討されているのは、富山市の五福キャンパスにある人文、人間発達科学、経済の3学部と、高岡市の高岡キャンパスにある芸術文化の計4学部。定員の削減数は、人文が15人、人間発達科学が10人、経済が昼間と夜間で計60~70人、芸術文化が5人。現在、最多の定員(405)を抱える経済学部の削減数が特に多くなっている。

 同大は、文系学部で削減した定員を、2017年度の新設を目指している理工系の「システムデザイン学部(仮称)」(定員150)に充てる方針だ。当初は16年度に理工系学部を再編して新設する計画だったが、文科省との調整が難航したため、文系学部の定員削減と連動する形で、新学部の17年度開設を目指す。

 現在、同大の理系学部は、理(定員230)、医(同185)、薬(同105)、工(同405)の4学部。現状でも、理系4学部の定員合計925人は、文系4学部の同875人を上回っているが、文系学部の定員削減が実行されると、その差は最大250人に広がり、より「理系色」が強い大学となる。

 文科省は今年6月、全国の国立大学法人に対し、「人文社会科学系学部については、18歳人口の減少や人材需要などをふまえて、廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組む」ことを求める通知を出した。富山大が文系学部の定員削減を検討しているのも、この方針に沿った動きだ。

 ただ、定員の削減対象とされている文系学部の教員からは「目先のことだけを考えて、文科省が理系を重視するのは拙速だ。文系学部が輩出してきた人材も社会を支えてきたではないか」と憤る声も出ている。

 同大は今夏、文科省に国立大学法人運営費交付金を要求した際、「人材育成や地域課題を解決する取り組みなどを通じて地域に貢献すると同時に、強みや特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究を推進する」という枠組みを選択。「富山の知の拠点」として、これまで以上に最先端の研究や地域創生に重点を置く方針を掲げている。


2015年09月11日

国立大、卓越研究型に16校 地域型55校、3類型確定

共同通信(2015/09/10)

 文部科学省は10日までに、国立大の改革推進策として、重点的に取り組む教育や研究の内容によって全86校を三つのグループに分ける枠組みをまとめた。卓越した教育研究で外国大学と競うグループに東大、京大など16校、地域ニーズに応える人材育成・研究を行うグループに横浜国立大など55校、特色ある教育研究を進めるグループに東京芸術大など15校が入った。
 文科省は2016年度から運営費交付金の一部を、各グループに分かれた国立大の取り組み内容に応じて傾斜配分するが、現場からは「枠組みに縛られ、多面性を失いかねない」との懸念も出ている。

2015年09月10日

経団連、国立大学改革で提言 人材育成に向け機能分化を

産経(2015.9.9)

 経団連は9日、人材育成に向け、それぞれの強みや特色を生かし、機能を分化する形での国立大学改革を求める提言を発表した。

 大学教育が画一的で知識詰め込み型の教育が多く、産業界の求めるグローバルな視点でのさまざまな課題を、分野横断型の発想で解決できる人材が育っていない中で、大学側への改革加速を求めた。

 提言では、理系、文系を問わず、幅広い教養、課題発見・解決力、外国語でのコミュニケーション能力などを身につけた上で、専門分野の知識を習得し、留学などのさまざまな体験を通じ、文化や社会の多様性を理解できる人材育成が必要としている。

 理系でも人文社会科学を、文系でも先端技術に関心を持った上で理数系の基礎的知識を身につけることが不可欠という。

 そのためには学長がリーダーシップを発揮し、各大学が画一的でない魅力ある大学づくりや、ガバナンス改革による経営刷新を図るべきとしている。

 また、経団連としては企業人講師の派遣や海外留学のための奨学金制度などで協力し、産学連携を強化する方針だ。

 国立大学改革では、今年6月に出された文部科学大臣通達で「教員養成系、人文社会科学系の学部や大学院についての組織見直し」を盛り込み、再編を強く求めた。一部では「文系切り捨て」といった声も出ている。そのなかで、企業が即戦力を求め過ぎることが背景にあるという経済界への批判もあり、経団連としてはそういった懸念を払拭する狙いもあり、今回の提言をまとめた。


2015年09月01日

文科省、国立大学3分類で「世界で卓越した教育研究」を16大学が選択

日刊工業新聞(2015年08月31日)

 文部科学省は2016年度から国立大学を3分類する仕組み「三つの重点支援枠」で、各大学の選択枠を公表した。全86大学のうち、旧7帝大に地域の有力総合大学を加えた16大学が「世界で卓越した教育研究」を選択。このほか、55大学が「地域貢献の教育研究」と約6割を占め、15大学が「特色分野の教育研究」だった。
 「世界で卓越した教育研究」を旧帝大以外で選択したのは、東京農工大学と東京工業大学、一橋大学の在京3大学のほか、筑波大学、千葉大学、金沢大学、神戸大学、岡山大学、広島大学など。
 地域との関連性が深い「地域貢献の教育研究」に関しては、長岡技術科学大学のほか、室蘭工業大学、北見工業大学、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学が選択。特定分野に強みを持つ東京海洋大学、電気通信大学、北陸と奈良の2先端科学技術大学院大学は「特色分野の教育研究」を選んだ。

2015年08月30日

国立18大学、文系は大幅改組…来年度入学定員

読売新聞(2015年08月29日)

 文部科学省は28日、来年度の86国立大の入学定員予定を発表した。

 それによると、18校が文系の学部や学科、課程を改組し、うち15校は教員養成系学部の中で教員免許の取得を義務付けない「ゼロ免課程」定員計1112人分の募集を停止する。全体では、2004年度の国立大法人化以降、最も大幅な改組だという。

 宇都宮大、千葉大、福井大など「ゼロ免課程」の募集を停止する15校中7校は、理系と融合させるなどして新しい学部を開設し、定員を振り分ける改革を行う。

 また「ゼロ免課程」の募集停止校6校と東京大、山口大、高知大の計9校は、教員養成系以外の人文社会科学系の学部や学科を改組する。文科省は、国際的な大学間競争の激化などを背景に、今年6月、各大学に人文社会系学部の廃止や他分野への転換を求める通知を出しており、組織再編はさらに進むとみられる。


2015年08月29日

国立大3類型で支援 文科省が概算要求 北大は「世界トップ」型

北海道新聞(08/28 16:00)

 文部科学省は28日、2016年度予算の 概算要求 を発表した。要求総額は15年度当初比9・8%増の5兆8552億円。国立大学改革の一環で、各大学を3類型に分け、取り組みに応じて運営費交付金を配分する「重点支援枠」に404億円を計上。20年 東京五輪 ・ パラリンピック に向けて、スポーツ関連予算は26・6%増で過去最高の367億円を要求した。

 国立大の3類型の中で「世界トップクラスの研究を行う」ことを目指すのは北大など16大学。「地域に貢献する取り組みを行う」を選択したのは道教大、室工大、樽商大、帯畜大、旭医大、北見工大の道内6大学を含む55大学。「特定分野で全国的な強みを出す」のは15大学だった。金額配分は今後、各大学の計画を評価して決める。

 スポーツ関連予算のうち169億円が五輪・パラリンピックの準備で、この6割を占める103億円を競技力向上事業に充てる。新国立競技場の建設費は現段階では計上していない。

 このほか、経済的理由で学生が大学進学を諦めないよう無利子奨学金を3万8千人分増やすため220億円を増額。国立大と私立大の授業料減免を充実させるため計13億円増やした。

 また、公立小中学校で子供が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」や少人数指導などの充実のため、3040人の教職員定数増も要求した。


2015年08月26日

【国旗国歌要請】政府は大学の判断尊重を

高知新聞(2015年08月25日)

 国立大学の苦しい立場がにじみ出ているといえよう。
 下村文部科学相が6月、国立大に入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を求めたことに対し、半数以上の大学が「対応を検討するが未定」としていることが、共同通信のアンケートで分かった。2校は従来方式を変更し、両方を実施すると答えた。
 要請は安倍首相の意向を受けるかたちで行われた。下村文科相は「あくまでお願い」であり、「圧力」を否定したが、国立大の判断に影響を与えているのは明らかだ。
 アンケートは全86校のうち、77校が回答した。今年の入学式で国旗掲揚、国歌斉唱を完全実施したのは7校で、双方とも未実施は11校、国旗掲揚のみが54校、国旗は掲揚し、国歌は伴奏のみが5校だった。
 注目すべきは、双方未実施の11校を含む47校が「対応を検討するが未定」と回答し、変更の可能性に含みを持たせたことだろう。
 大学の自治を侵しかねない状況といえる。大学の自治は、憲法が保障する学問の自由に不可欠な制度である。法的根拠もないまま、政府が大学の式典の中身にまで注文を付けることがあっていいのか。
 ただ、国立大のこうした反応は6月段階から一定予想された。
 各国立大は、独立した法人経営のかたちを取っているものの、自主財源が少なく、運営費は国に大きく依存しているからだ。
 しかも、国からの運営費交付金は年々減少しており、6、7月は来年度予算の概算要求に向けた重要な時期でもある。大学にとっては、「お願い」も強く意識せざるを得ない。
 アンケートからは多くの大学の疑問や戸惑いが見て取れる。「大学の自治を尊重すべきだ」「政権中枢が、とりたてて要請することに違和感を禁じ得ない」などの回答があった。
 一方で、既に完全実施している大学などからは「国費で運営するので当然」などと理解を示す声もあった。
 重要なのは各大学が自主的に判断し、それに基づいて式典を執り行うことだ。政府には各大学の判断の尊重が求められる。
 大学は純粋な学問探求の場である。時の政権の意向を押し付けたり、政治の介入を想像させたりする対応は許されない。

2015年08月25日

国立大に文系再編の波、26校が学部の改廃計画

読売新聞(2015年08月24日)

 文系学部のある全国の国立大60校のうち、半数近い26校が2016年度以降、文系学部の改廃を計画していることが、各国立大学長を対象にした読売新聞のアンケート調査でわかった。

 教員養成系学部を中心に計1300人以上の募集が停止され、定員の一部を新設学部に振り分けるなどの改革が行われる。国立大の文系に再編の波が押し寄せている実態が浮かび上がった。

 文部科学省は今年6月、大学改革を狙いに、法学部や経済学部などの人文社会科学系と教員養成系の学部・大学院の廃止や他分野への転換を求める通知を出した。アンケートはこれを受け、全国立大86校の学長に7月末現在の学部の改廃計画や通知への受け止めなどを尋ね、81校から回答を得た。


2015年08月22日

国旗国歌、国立大5割超「検討」 文科相の要請に

共同通信(2015/08/21)

 安倍晋三首相の意向を受ける形で、下村博文文部科学相が6月、国立大に入学式や卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を実施するよう求めたことに対し、共同通信が国立大全86校にアンケートを行った結果、匿名条件を含め77校から回答があり、47校が「今後の対応を検討するが未定」としていることが21日、分かった。東京農工大と匿名1校の計2校が、従来の方式を変更し、今後は国歌を斉唱すると答えた。

 「あくまでお願い」とする下村氏の要請だが、国立大の動向に一定の影響を与えている実態が浮かんだ。「要請は大学の自治や学問の自由を脅かす」との批判もあり、論議を呼びそうだ。


2015年07月31日

国立大学法人などへの寄付金税制拡充、文科省要望

SankeiBiz(2015.7.31)

 文部科学省は30日、平成28年度税制改正要望で国立大学法人などへの寄付金税制の拡充を要望する方針を固めた。国立大学法人に対する個人寄付には税額控除の導入、私立大学などの学校法人に対する寄付には所得控除の上限額引き上げを求める。寄付金を支出する人の裾野を広げて、大学などの経営基盤を強化し、教育や研究の振興につなげる。

 個人が国立大学法人に寄付する際、現在は所得控除が適用される。寄付金額から2千円を引いた額を所得控除額とし、稼いだ所得から差し引くことで所得金額を減らし、税負担を軽くする仕組みだ。寄付金の上限は総所得金額の40%。所得控除を行った後に税率をかけるため、所得税率が高い人の方が減税効果が大きい。

 これに対し、文科省が要求する税額控除は、寄付金額から2千円を引いた額の40%を控除額として、税額から直接差し引ける。税率に関係なく、税額から直接控除できるため、小口で寄付する人も減税効果を実感しやすく、新たに寄付金を支出する人の増加が期待できる。

 学校法人には23年度税制改正で税額控除が導入されており、寄付する人が税額控除と所得控除のどちらかを選択できる仕組みだ。文科省は学校法人の寄付に対する所得控除には、控除できる寄付金額を総所得額の40%から50%に引き上げるよう求める。

 学校法人に先行して税額控除が導入されているのは、国立大学法人の方が集金力が高く、国からの運営費交付金などを受けていることなどを勘案したからだ。このため、国立大学法人への寄付に税額控除が入るのに合わせて、学校法人の寄付税制も拡充し、国立大学法人に寄付が集中しないようにする。


2015年07月25日

日本学術会議、声明「国立大の文系学部見直し通知は『大きな疑問』」

ITmediaニュース(2015年07月24日)

 日本学術会議は、国立大学に文系学部の廃止やほかの分野への転換を求めた文科省の通知について、「大きな疑問がある」と批判する声明を発表した。

 日本学術会議(会長:大西隆 豊橋技術科学大学学長)幹事会は7月23日、文部科学省が6月に各国立大学に通知した、文系学部の廃止やほかの分野への転換を求めた通知について、「大きな疑問がある」と批判する声明を発表した。

 文科省は6月、各国立大学に通知した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(PDF)で、18歳人口の減少を見すえ、教員養成系や人文社会科学系の学部について、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める」などとした。

 これに対して日本学術会議は声明で、「人文社会科学には独自の役割に加え、自然科学との連携によって世界の課題解決に向かうという役割が託されている」と指摘。人文社会科学のみを取り出して「組織の廃止や社会的要請への高い分野への転換」を求めることには「大きな疑問」があると批判する。

 「社会的要請の高い分野」の定義については、「具体的な目標を設けて成果を測定することになじみやすい要請もあれば、長期的な視野に立って知を継承し、創造性の基盤を養う役割を果たすという社会的要請もある」と指摘。「前者のみに偏り後者を見落せば、社会の知的豊かさを支え、より広く社会を担う人材を送り出すという大学の基本的な役割を失いかねない」とする。

 教員養成学部の見直しについては「18歳人口の減少という見通しと関連するものと思われる」としつつ、「18歳選挙権の実現ひとつ考えても、高校までの教育の質に対する期待と要請が高まっており、それを支える教員の質と量については多面的な検討が求められる」と指摘する。

 一方で、人文社会科学の大学教員は「現代社会でどのような人材を養成し、どのような役割を果たしうるかについて、これまで社会に十分説明してこなかった面があることも否定できない」とし、「これらの点の考究を深め、教育と研究の質的向上に反映するために一層の努力が求められる」としている。

 同会議は現在、学術振興の観点から国立大学の在り方を検討する委員会を設置して審議を進めており、審議を通じ、大学のあり方に関する考えを提示するとしている。

関連リンク
日本学術会議幹事会の声明(PDF)

2015年07月13日

国立大学から文系がなくなる? 文科省の揺さぶりに地方大学が浮足立っている

Jcast(2015/7/12)

文部科学省が全国86の国立大学に対し、人文社会科学系の学部と大学院について廃止や他分野への転換など大規模な組織改編を行うよう求めていることが波紋を広げている。

将来的には国立大から文系学部が消えてしまう可能性さえ指摘され、国立大側の文科省方針への反発は強い。ただ、一部の大学は既に文科省の意向に沿う形で文系学部の定員を減らす計画を打ち出すなどの動きもあり、国立大の文系学部の行方は混とんとしている。

■文科省が交付金配分権を握る

文科省は2015年6月初旬、国立大に対し、「社会が必要としている人材の育成や地域への貢献を進めてほしい」として、文学部や法学部などの文系学部のほか、教員養成系学部などについて徹底的に見直すよう通知した。少子化が急速に進み、国際競争が激しくなる中、文系学部は理系学部のように「技術革新」に直結せず、将来に向けた目に見える成果がすぐには期待しにくい。さらに、国の財政難から税金を効率的に使いたいという政府側の狙いがあるとみられている。

これに対し、国立大側から反発の声が沸き起こった。国立大学協会の里見進会長(東北大学長)は6月中旬に東京都内で開いた記者会見で、「非常に短期の成果を上げる方向に性急になりすぎていないか。大学は今すぐ役に立たなくても、将来大きく展開できる人材をつくることも必要」と述べ、文系学部の必要性を訴えた。実際のところ、大企業の経営者や官僚の多くは法学部や経済学部の出身者だし、ネット業界では文系の起業家も少なくない。

京都大の山極寿一総長も、「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。(下村博文文科相が要請した)国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」(6月16日の会見)と、強く批判している。

ただし、「大学の自治」と言っても、文科省は国立大向けの交付金について、取り組みや実績で評価が高い大学に対して重点的に配分する方針を示している。交付金配分をいう「制裁与奪の権」を握る文科省に、真っ向から対抗するには容易ではない。特に、ブランド力に乏しい地方の大学は厳しいところだ。

■「学際」に光を当てて生き残り図る

実際、既に文科省の求めに応じる形で具体的な対応に乗り出すところも出始めている。弘前大は2016年4月から、理系学部で定員を90人増やす一方、文系の人文学部と教育学部で計150人減らすことを決めた。同大はこうした再編に踏み切る理由として、「国際化」と「地域政策課題の対応」を強調している。宇都宮大や徳島大なども2016年4月に向け、再編を始める計画を明らかにしている。「交付金をもらえないと困るから、文系学部の定員は今後、減らさざるを得ない」と話す国立大は複数に上る。

文科省の顔色を見つつも、したたかな対応を模索する大学もある。滋賀大は、文科省通知にある「社会的要請の高い分野」として、「ビッグデータ時代の人材養成」を目指すデータサイエンス学部の創設(2017年度予定)を打ち出しているが、これは「未来志向と文理融合」という理念に沿って、大半は広義の社会データであるビッグデータの分析のため、人文社会系の学識とデータ解析能力を融合した人材を養成するというもの。「学際」に光を当てることで、文系、理系という枠組みを超越しようという試みといえようか。

こうした対応がどこまでできるか、国立大も総合力を試されるところだが、交付金ほしさに文科省の方針通りに対応すれば、いずれ全国の国立大から文系学部が一切なくなってしまいかねないとの懸念は残る。特に、金儲けと縁遠い文学部や社会学部は狙い撃ちにされる可能性も指摘される。

旗振り役の下村文科相は安倍晋三首相に近いということもあり、大学関係者からは「文系学部をなくしてしまえば、批判する力も社会から奪われてしまう。現政権の深い狙いがそこに隠れているようにさえうかがえる」との恨み節も漏れてくる。

2015年07月12日

大学自治への政治介入「多様な価値観 尊重を」

河北新報(2015年07月11日)

◎国立大学協会長 里見進・東北大総長に聞く

 国立大学運営交付金の増減をちらつかせて安倍政権が、大学自治への政治介入を強めようとしている。この事態を最高学府のトップに立つ里見進国立大学協会長(東北大総長)はどう受け止めているのか、聞いた。(聞き手は報道部・野内貴史)
 -政府内で議論されている運営交付金の重点配分などの国立大改革を、どう受け止めますか。

予算減に疑問

 「大学は今、少子化の進展、教育にかける国家予算の減少という問題に直面している。国立大の数や規模は現状のままでいいのかどうか、厳しく問われる時代だ」
 「だが、財政難を理由に教育予算を減らせば国の力は弱くなる。高等教育にかかる予算を減らしていいのだろうか」
 -成果主義に傾く文部科学省は、人材育成につながらない人文社会系の学部廃止や転換を求める通知を出しました。

人が育つ要素

 「人文社会系の素養がなければ国際的なリーダーにはなれない。非常に大事な学問だ。ただ、古い学問体系を縦割りで教えてきた手法の見直しを求めるというメッセージなら十分納得できる」
 -先日の国立大学長会議で下村博文文部科学相が入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱を要請し、波紋が広がっています。
 「それは各大学が決めること。多様な価値観を持った人たちがたくさんいるというところに人の育つ要素がある。ときには権威に対して批判的なことを言うのも大学の役割だ。各大学の判断を尊重してほしい」
 「東北大では国旗の掲揚はしているが、国歌の斉唱はない。そのまま続けようと思っている」
 -本土復帰前の沖縄から国費留学生として東北大に入学した自身の思いは?

方法いろいろ

 「父が事業に失敗し、大学進学など望めなかった私にとって、国費留学制度は本当にうれしかった。国にすごく感謝しているし、国を愛している。ただ、それは国歌や国旗に向ける姿勢で象徴されるものではない。国を愛する気持ちを表明する仕方はいろいろあっていい」
 「私も留学生だった。お金の心配なく日本で学ばせてもらったという留学生をたくさんつくりたい。親日国を世界中につくる安上がりの戦略と言えるのではないか」

<さとみ・すすむ>東北大医学部卒。95年医学部教授。04年東北大病院長。12年から東北大総長。14年11月国立大学協会長に就き、ことし6月に再任。67歳。那覇市出身。


2015年06月26日

国旗・国歌要請、琉大「議論棚上げ」 学長が批判

琉球新報(2015年6月25日)

 琉球大学の大城肇学長は24日の定例記者懇談会で、下村博文文部科学相が16日に全国の国立大学長に入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請したことについて、個人的見解と断った上で「国が大学にグローバル人材の育成を求める一方で、国旗掲揚や国歌斉唱を求めるのは国粋主義的だ」と批判した。国旗・国歌の議論が学内に持ち込まれると混乱が懸念されるとして「当分は棚上げしたい」との方針を示した。
 大城学長は文科相要請に「アジアからの留学生が目にしたらどう思うか。国旗国歌は強制すべきものではない」などと述べた。
 琉大は1950年、米国軍政府布令で設置され、その後琉球政府立、復帰に伴い国立になった。大学によると、開学当初からの国旗・国歌への対応は記録が残っていないため確認できないが、少なくとも81年以降は卒業式や入学式で国旗掲揚・国歌斉唱をしたことはないという。
 大学では毎年260~300人前後の留学生が学んでおり、出身国・地域別(2014年5月時点)では中国が最多で、以下韓国、インドネシア、台湾とアジア圏が上位を占める。
 大城学長は個人的な考えとした上で「国旗を掲揚するなら留学生の母国全ての旗を掲揚したい。その方がグローバル教育を進める中で意味があるのではないか」と語った。
 国会などで「税金を使っている国立大は国の要請に応えるのは当然」といった意見があることに「地域に貢献することが社会に還元することになる。国旗を掲げることが(税金投入に)応えることになるとは思わない」と述べた。

2015年06月20日

社説[国旗国歌の要請]大学の自治 侵害するな

沖縄タイムス(2015年6月19日社説)

 大学の自治が脅かされている。そう感じざるを得ない事態だ。

 下村博文文部科学相は国立大の学長らに対し、入学式や卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を実施するよう要請した。

 発端は、4月の参院予算委員会での安倍晋三首相の答弁だった。次世代の党の議員から、国立大の国旗国歌実施率の低さを問われ、安倍首相は「税金によって賄われていることに鑑みれば、新教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」と述べた。今回の要請は、この答弁を受けたものだ。

 安倍首相が指摘した「新教育基本法の方針」とは、改正教育基本法で教育目標に盛り込んだ「わが国と郷土を愛する」態度を指すとみられる。ただ、同法は、大学について別途、「自主性、自律性が尊重されなければならない」とも定めている。

 文科省によると、国立大全86校のうち、ことし3月の卒業式での国旗掲揚は74校、国歌斉唱は14校だった。実施するかどうか、それぞれの大学が自主的に判断したものだろう。その自主性を無視して「正しく実施されるべき」と断じるのは矛盾してはいないか。

 学習指導要領では国旗掲揚と国歌斉唱の指導が明記されているが、大学には適用されない。文科相は「慣行として国民に定着している」と説明したものの、要請に法的な根拠はない。

 にもかかわらず、大学が自ら行う式典の中身に政府が口を挟むことに疑問を禁じ得ない。ただちに撤回すべきだ。

    ■    ■

 琉球大学は国旗掲揚、国歌斉唱とも実施していない。大城肇学長は、学内の混乱を懸念し「大学改革など先にやるべきことがある」と話す。国旗掲揚のみ実施している滋賀大学の佐和隆光学長も「納税者に対して教育、研究で貢献することが責務だ」と批判的だ。大学の役割を考えればもっともな意見である。

 一方で、国立大関係者には動揺が広がっているという。文科相がいくら強要を否定しても額面通り受け取れないのは、国立大には政府に財布を握られている弱みがあるからだ。

 大学法人化以降、国立大は「成果」が求められ、国から支給される運営費交付金は減少傾向が続く。さらに文科省の有識者会議は、国の方針に従って改革を進める大学に交付金を重点配分する制度の導入をまとめた。

 本来は、大学改革と国旗国歌は別次元の話だ。しかし、「税金で賄われている」ことをちらつかせながら意に沿うよう求めるのは、もはや「要請」とは名ばかりの「圧力」でしかない。

    ■    ■

 首相発言を受け、学者らの呼び掛けで発足した「学問の自由を考える会」は、「政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することは、知の自律性を否定し、大学の役割を根底から損なうことにつながる」との声明を発表した。

 大学が政府から思想弾圧された戦前の歴史を繰り返してはならない。国立大学側は毅然(きぜん)とした態度を貫き、学問の自由と大学の自治を守ってもらいたい。


2015年06月18日

国立大に経営力戦略 文科省、特色内容で交付金

道新(06/17)

 文部科学省は16日、経済成長につながる人材育成を目指す「国立大学経営力戦略」を、東京都内での国立大学長会議で発表した。国立大を《1》地域のニーズに応える《2》特定分野で全国的な強みを出す《3》世界トップクラスの研究を行う―の三つの枠組みに分類。積極的に取り組む大学に対し、2016年度から運営費交付金を重点配分する内容だ。

 少子高齢化や国際的競争の激化を背景に、国立大の機能を強化し、産業構造の変化に対応した人材づくりを狙う。各大学が三つの枠組みのいずれかを選択し、夏ごろまでに取り組み内容案を文科省に提出。同省が有識者の意見も踏まえて交付金の配分額を決める。年度ごとに進展状況を確認し、特に優れた取り組みにはさらに加算を検討する。

 戦略はこのほか「既存の枠組みや手法にとらわれない大胆な発想の転換」を要請。研究態勢強化や大学の強みとなる取り組みなど、各大学の特色を発揮させるため、学長に一定の裁量を持たせた経費を新設する。


2015年06月17日

文科相、国立大に国旗・国歌要請

文科相 国旗・国歌で適切な判断を要請

NHK(6月16日)

下村文部科学大臣は、国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着している」などと述べたうえで、各大学で適切に判断するよう要請しました。
安倍総理大臣は、先の国会審議で、国立大学の入学式や卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を行っていないケースがあると指摘されたのに対し、「国立大学の運営が税金で賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」などと述べました。
これに関連して、下村文部科学大臣は、16日国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗と国歌はどの国でも国家の象徴として扱われている。国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着していることや、平成11年に国旗および国歌に関する法律が施行されたことを踏まえ、各国立大学で適切に判断いただけるようお願いしたい」と述べました。
今回の要請を巡っては、国内の大学教授らで作るグループが「学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない」などとして反対する声明を発表しています。
下村大臣は16日の要請のあと記者団に対し、「最終的には各大学が判断されることであり、要請が大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。昔と比べると、国旗や国歌に対する国民の意識も変わってきたと思うので、時代の変化を各大学で適切に判断していただきたい」と述べました。
要請を受けた学長たちは
16日の会議に出席していた滋賀大学の佐和隆光学長は「国旗掲揚と国歌斉唱に関する要請にあたっては、国立大学が税金でまかなわれていることが要請の理由ともとれる発言がこれまでに聞かれたが、納税者に対して教育研究で貢献することが大学の責任だ。今回の要請に従う必要はないと思っている」と話しました。滋賀大学では国旗掲揚はしており、国歌斉唱はしていないということです。
また、国旗掲揚も国歌斉唱もしていない京都大学の山極壽一学長は「『適切に』ということだったので、大学の自治を尊重してくれていると考える。対応はまだ決められないが、これまでの伝統を踏まえて議論する」と話していました。
琉球大学の大城肇学長は「大学ができて65年になるが、日本に返還される前も国立大学になってからも国旗掲揚や国歌斉唱は行っていない。大学改革など優先して取り組まなければならない課題があり、今回の要請にどう対応するかの議論は棚上げにしておきたい」と話していました。
要請の経緯と反対の動き
今回の要請は、入学式や卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を行っていない国立大学があると、ことし4月、国会で指摘されたことがきっかけでした。
国会議員からの要求を受けて、文部科学省が初めて全国86の国立大学を対象に、国旗と国歌の扱いを調べたところ、ことしの入学式で、国旗掲揚を実施すると答えたのは74校、国歌斉唱を実施すると答えたのは15校でした。
教育現場での国旗掲揚と国歌斉唱。小中学校と高校では、入学式や卒業式などで国旗掲揚と国歌斉唱を行うよう指導すると学習指導要領に定められていますが、大学にはそうした規定はありません。
平成11年、日の丸・君が代を国旗・国歌と定めるための法案を審議していた参議院の特別委員会では、当時の有馬文部大臣が「大学は学習指導要領が適用されないので、少し違った立場になる。国立・公立大学の入学式、卒業式における国旗や国歌の取り扱いについては、入学式などが大学の教育研究活動の一環として行われていることに鑑みて、各大学の自主的な判断に任せられている」と答弁しました。
国立大学に対する今回の要請については反発の声が挙がっていて、教育学や憲法学が専門の大学教授らおよそ20人で作るグループが「政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することになり、学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない」などとして、要請に反対する声明を4月に発表しました。
このグループの声明に賛同して署名した人の数は、先月末時点で3250人余りとなっています。今月に入ってからも、弁護士やNPO関係者などおよそ200人のグループが反対声明を出しています。
また、15日は全国の国立大学で作る「国立大学協会」の会長に再任された東北大学の里見進学長が会見で、「大学では表現や思想の自由は最も大切にすべきもので、それぞれの信条にのっとって各大学が対応すると思う。萎縮しないよう頑張っていきたい」と話しました。
専門家「要請は大学を委縮させる」
大学教育の在り方を研究している日本高等教育学会の会長で、筑波大学の金子元久特命教授は今回の要請について、「国立大学は国の財政負担の上に成り立っており、『要請だけだ』と言っても、大学を萎縮させる効果を持つだろう」と話しています。
そのうえで「国立大学の法人化は、政府の直接の関与を受けず大学が自分で考えイノベーションを生ませることが精神だったはずだ。グローバル化のなかで外国人の学生や教員も増えているがそうした人たちにも国歌斉唱を求めるのは現実的ではなく、大学の自立性や国際化の観点から見て問題だと思う」と述べました。
一方で、「大学の自治は守られるべきだという一辺倒でこうした動きに反対するのはもう無理だと思う。なぜ自立性が必要か、国立大学が社会に何を還元すべきか、もっと真剣に考えていかなければいけない」と話していました。

文科相、国立大に国旗・国歌要請 大学自治巡り反発も

日経(2015/6/16)

 下村博文文部科学相は16日、東京都内であった全国の国立大学長らが一堂に会する会議で「国旗と国歌の取り扱いについて適切に判断いただけるようお願いします」と述べ、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した。「大学の自治」への介入とも受け止められかねない発言に、各学長から様々な声が聞かれた。

 下村文科相は要請後、記者団に「最終的には各大学が判断することで、大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。介入ではない」と強調。国旗国歌法の制定から15年以上が経過しているとして「国民が国旗や国歌に親しみを感じるようになってきた」と要請の理由を説明した。

 小中高校の学習指導要領では、入学式などで国旗掲揚や国歌斉唱を指導するよう定めているが、国立大学にはこうした規定はない。文科省によると、全国の国立大86校のうち、今年3月の卒業式で国旗を掲揚したのは74校、国歌を斉唱したのは14校だった。

 国立大での国旗国歌については、4月の参院予算委員会で安倍晋三首相が「正しく実施されるべきではないか」との認識を示し、下村文科相も「各大学で適切な対応が取られるよう要請していきたい」と述べていた。

 一方、入学式などで国旗掲揚や国歌斉唱をしていない京都大の山極寿一学長は「下村文科相は『適切に』と言っており、大学の自治を尊重してもらっていると考える。伝統を踏まえ適切に議論する」と発言。両方していない琉球大の大城肇学長は「学内で議論すれば混乱するので当面棚上げする。大臣の話だから強制的と捉える大学はあるかもしれない」と話した。

 国歌斉唱をしていない滋賀大の佐和隆光学長は「強制とは受け止めないが、(下村文科相が言うように)国歌斉唱が慣習になっているとは思えない」と否定的な見方を示した。

文科相、国立大に国旗・国歌要請…大学側反発も

読売(2015年06月16日)

 下村文部科学相は16日、国立大全86校の学長らを集めた東京都内の会議で、入学式や卒業式の際には国旗掲揚や国歌斉唱を行うよう要請した。

 国旗掲揚と国歌斉唱を両方とも行っている国立大は約16%にとどまっており、大学関係者からは「大学の自治や自主性は尊重されるべきだ」などと反発する声も上がっている。

 会議は文科省が各国立大に大学入試改革や運営費交付金などの方針を説明するために開かれた。その際、下村文科相は国旗掲揚や国歌斉唱について、「各国立大の自主的な判断に委ねられているが、適切に判断いただけるようお願いする」と実施を求めた。

 国立大での国旗掲揚などを巡っては、安倍首相が今年4月の参院予算委員会で、「税金によって賄われていることに鑑かんがみれば、(愛国心などのかん養をうたった)教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきだ」との考えを示していた。

 小中高校の場合、学習指導要領に国旗掲揚と国歌斉唱を行うよう明記されているが、大学については明確な規定がなく、各大学の裁量に任されている。文科省の調査によると、今年の卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱をいずれも行った国立大は14校。国旗掲揚のみ実施したのは60校で、12校はどちらも行わなかった。国旗掲揚の方法としては、式典会場の壇上に学校の旗とともに掲げたり、式場の外のポールに揚げたりで、国歌については「演奏だけ行っている」という大学も含まれている。

国旗国歌要請:文科相「適切判断」迫る 国立大学長は困惑

毎日新聞(2015年06月16日)

 下村博文・文部科学相は16日、東京都内で開かれた国立大学86校の学長を集めた会議で、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した。さらに、文科省が8日に通知した文系学部の廃止などの組織改編を進める方針についても説明し、改めて改革を促した。補助金と権限を握る文科省からの相次ぐ求めに、出席した学長らの間には困惑が広がり、一部の教員からは「大学攻撃だ」と反対の声も上がっている。

 国旗・国歌については、安倍晋三首相が4月に国会で「税金で賄われているということに鑑みれば、教育基本法にのっとり正しく実施されるべきではないか」との認識を示していた。下村文科相は16日、「各大学の自主判断」としながらも「長年の慣行により国民の間に定着していることや、(1999年8月に)国旗・国歌法が施行されたことも踏まえ、適切な判断をお願いしたい」と要請した。

 会議後の学長らは厳しい表情。琉球大の大城肇学長は「学内で問題提起しようと思うが、かなり混乱すると思う。集団的自衛権の議論や基地問題ともリンクして、大学改革とは違う所に話が飛んでいきそうな気がする」。50年の創立以来、慣例で国歌斉唱や国旗掲揚はしていない。「個人的には棚上げにしておきたい」と複雑な心境をのぞかせた。

 滋賀大の佐和隆光学長は「納税者には(国立大としての)責任を果たすべきだと思うが、国の要請に従う必要はない」と強調した。国旗掲揚はしているが、国歌斉唱はしておらず、その方針を継続する考えを示した。

 文科省によると、今春の卒業式で国旗掲揚したのは74大学、国歌斉唱は14大学だったという。

 一方で、文科省は国立大学に組織・業務の見直しを迫っている。8日の大学への通知では、人文社会科学系や教員養成系の学部の廃止や他分野への転換を求めた。国立大は中期計画(16年度から6年間)を作り、大臣の認可を受けなければならない。下村文科相はこの日「これらの学問が重要ではないと考えているわけではないが、現状のままでいいのかという観点から徹底的な見直しを断行してほしい」と理解を求めた。

 複数の学長は「交付金をもらえないと困る。今後、人文社会科学系の学部の定員は減らさざるを得ない」と話した。【三木陽介、高木香奈】


2015年05月12日

安倍流「国立大改革」の暴走

しんぶん赤旗(2015年5月10日)

安倍流「国立大改革」の暴走(上)、3類型に再編“人文系つぶし”

 安倍内閣が進める「国立大学改革」で、人文・教育系学部の廃止が浮上しています。86の国立大はどうなるのでしょうか。

 「この夏までに『国立大学経営力戦略』を策定し、『3類型』のミッション選択に基づく自己改革を進める」

 安倍晋三首相は4月15日の産業競争力会議の課題別会合でこう表明し、そのために「運営費交付金と競争的資金の一体改革を進める」と述べました。

 「3類型」とは、文科省が「国立大学改革プラン」(2013年11月)で打ち出した「国立大の機能強化の方向性」―(1)世界最高の教育研究拠点(2)全国的な教育研究拠点(3)地域活性化の中核拠点―に基づくものです。

国策に沿い選別

 同会合で下村博文文科相は、「特定研究大学」「卓越大学院」などの創設を打ち出し、国策に沿う大学や分野を選別支援していく考えを強調しました。

 これまで文科省は、「3類型に再編」ではなく、「機能強化の三つの方向性」と説明してきました。国立大学に対する運営費交付金の検討会でも、各大学が選んだ機能強化の方向について重点支援を行うものだと説明。国立大学協会も中間まとめ案を受けて「大学のいわゆる『類型化』ではないことを改めて確認いたします」としていました。

 ところが、安倍首相が表明したのは、国立大学を文字通り三つに再編しようというものです。

 同会合では、財界人が「研究面での新しい発見がなくなってきたり、動きが止まっているような学問領域を思い切ってやめて、新しい領域、学際分野を立ち上げるべきだ」(小林喜光三菱ケミカル会長)と発言。学部学科の統廃合を公然と求めています。

 そのターゲットは人文科学や教員養成系です。国立大学法人評価委員会の「組織・業務見直しの視点」では、教員養成・人文社会科学系の「組織廃止」を打ち出しています。

 日本共産党の田村智子参院議員は4月21日の委員会で、「国策に沿った産業振興のために、大学や分野を国が選別し、予算を重点化するのと一体に教員養成・人文社会科学系を縮小・廃止するものだ」と批判しました。

 国立大学の基盤的経費である運営費交付金は、法人化後の10年で約1292億円も削減され、文科省の裁量で重点配分する仕組みが導入されてきました。

資金獲得競争に

 今後は、各大学が「3類型」から一つを選択。文科省が、各大学の取り組みを評価して配分することが検討されています。

 大学同士が類型ごとに資金獲得競争に追い立てられ、3類型に再編されていくことになり、基盤的経費の削減がいっそう拡大する危険を抱えています。

 日本学術会議は提言で、「(人文科学は)人間と社会のあり方を相対化し批判的に考察する」と人文科学系の役割を強調しています。

 田村氏は「豊かな教養や高度な専門知識をどれだけ国民の中に培うのかということが日本社会の発展にとってきわめて重要だ。学部再編や廃止を政府が大学に突きつけることはあってはならない」と主張しました。(つづく)

安倍流「国立大改革」の暴走(下)、「交付金増額を」15大学が声明

しんぶん赤旗(2015年5月11日)

 国立大学に対する運営費交付金に占める重点配分の割合は2016年度の予算編成で決められます。経団連は、運営費交付金の3~4割を重点配分に充てるよう主張。財務省の財政制度等審議会も3割を求めており、予断を許さない情勢です。

財界人や元大臣

 和歌山大学の山本健慈前学長は自著のなかで、文科省から「大改革をしていない」と評価されれば「そんな大学は退場してもらいますということに追い込まれていくと思います。まさに地方国立大学は『壊死(えし)』してしまう」と批判しています。

 日本共産党の田村智子参院議員は「運営費交付金の総額を増やさないまま重点配分を行えば、必然的にどこかを削る、縮小することになる」と追及しましたが、下村博文文科相は「増額する」とは言明しませんでした。

 こうした動きに各大学がいっせいに批判の声をあげています。

 東北、山形、福島、福井、奈良教育、和歌山の6国立大学の学長が3月、記者会見し、「(交付金の)削減は教育や研究の質の低下を招き国立大が衰弱する」と訴えました。

 各国立大学に設けられている経営協議会の学外委員も、交付金削減に反対し、財政支援を求める声明を発表。北海道教育、東北、秋田、山形、福島、筑波、静岡、名古屋、福井、奈良教育、和歌山、広島、高知、山口、宮崎の15大学に広がっています。

 学外委員にはトヨタ自動車会長、ファミリーマート会長ら財界人をはじめ、有馬朗人、遠山敦子両元文部・文科相も名を連ね、「基盤的経費の削減が続いていくならば『10年間で世界大学ランキングトップ100に日本の大学を10校以上』等の目標達成は、国立大学の衰退とともに実現が困難になってくる」(名古屋大学学外委員声明)として増額を求めています。

競争的資金では

 安倍内閣は、「競争的資金」についても「一体改革」を進め、交付金と併せて財源を確保するとしています。

 競争的資金は、各省庁がテーマを決めて募集し、審査で選ばれた大学や研究者らに出されるものです。14年度予算は4162億円で科学技術関係費の約11%を占めます。

 これまでも運営費交付金が減らされ、競争的資金が増やされてきました。しかし、競争的資金は3~5年の短期が主流です。研究者は研究しながら次の資金獲得を準備しなければならず、非常勤の研究者を増大させる要因になっています。

 日本学術会議は提言で「競争的資金で雇用される若手研究者やポスドク(ポストドクター=非常勤の研究員)等は、競争的資金での研究成果を出すことが困難となっている」と指摘しています。

 ところが、文科省は「産業界との連携を進めていく」として、財界の要求に応える仕組みや外国人研究者の登用を打ち出すなど競争的資金の性格をいっそう強める姿勢です。

 田村議員は「競争的資金を増やしても運営費交付金を減らしたままでは学術研究の発展はない」と指摘し、運営費交付金の増額を求めました。


2015年05月01日

学問の自由を考える会、国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する声明

学問の自由を考える会

みなさま

声明への賛同署名募集の呼びかけ(このメールは転送自由です。ぜひお知り合いに御転送下さい)

国立大学における国旗掲揚・国歌斉唱に関する文部科学省からの要請を撤回するよう求める声明の賛同者を募っています!

 私は「学問の自由を考える会」代表の広田照幸(日本大学・教育学)です。
 本年(2015年)4月9日の参議院予算委員会における安倍晋三首相の答弁を機に、文部科学省は、国立大学に対して、入学式等で国旗掲揚と国歌斉唱を行うようはたらきかけるとされています。日本近代史において続出した言論抑圧の経験をふまえれば、このような動きは、大学における学問の自由を大きく損なうことになりかねません。それは同時に、日本社会の思想の自由の大きな危機を生むものです。

 こうした危機感にもとづき、教育学者、憲法学者をはじめ、大学人および広汎な知識人が呼びかけ人となり、「学問の自由を考える会」を発足させ、文部科学省に、上記の「要請」を撤回するよう求める声明を発表しました。

 学問の自由を考える会ホームページ http://academicfreedomjp.wix.com/afjp
  (ご自身でHP等をお持ちの方は、積極的にリンクをしてください)

 ますは、ウェブ署名でこの声明への賛同者を募る活動をはじめました(5月末に第一次集約、7月半ばごろに第二次集約を予定)。ぜひ、多くの人たちに、この声明への賛同者になっていただきたいと、私たちは願っています(氏名を非公開にすることもできます)。大学教員、学生・院生の方々だけでなく、社会の広い分野の人たちにも賛同者になっていただければ、と思います。

 賛同署名は、上記のホームページに入っていただいて、そこで署名を行うことができます。よろしくお願いいたします。
 4月28日現在における,声明の呼びかけ人は次の通りです。

<呼びかけ人>(4月28日現在21人)
広田照幸(日本大学・教育学・本会代表)、内田樹(神戸女学院大学名誉教授・哲学)、佐藤学(学習院大学・教育学)、本田由紀(東京大学・教育社会学)、米田俊彦(お茶の水女子大学・教育史)、木村元(一橋大学・教育史)、加藤陽子(東京大学・日本近代史)、樋口陽一(東京大学名誉教授・憲法学)、池内了(名古屋大学名誉教授・宇宙物理学)、石川健治(東京大学・憲法学)、毛利透(京都大学・憲法学)、蟻川恒正(日本大学法科大学院・憲法学)中島岳志(北海道大学・政治学)、山口二郎(法政大学・政治学)、杉田敦(法政大学・政治学)、川本隆史(国際基督教大学・社会倫理学)、平川克美(立教大学・経営学)、石川康宏(神戸女学院大学・経済学)、平尾剛(神戸親和女子大学・身体論)、森まゆみ(作家)、斎藤美奈子(文芸評論家)

国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する声明


 本年4月9日の参議院予算委員会における安倍晋三首相の答弁を機に、文部科学省は国立大学に対して、入学式、卒業式において国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう要請するとされている。これは、日本における学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない大きな政策転換であり、看過できない。
 そもそも大学は、ヨーロッパにおけるその発祥以来、民族や地域の違いを超えて、人類の普遍的な知識を追究する場として位置付けられてきた。それぞれの国民国家の独自性は尊重されるが、排他的な民族意識につながらないよう慎重さが求められる。現在、日本の大学は世界に開かれたグローバルな大学へと改革を進めているが、政府主導の今回の動きが、そうした方向性に逆行することがあってはならない。
 日本近代史を振り返れば、滝川事件、天皇機関説事件、矢内原事件など、大学における研究や学者の言論が、その時代の国家権力や社会の主流派と対立し、抑圧された例は枚挙にいとまがない。その後の歴史は、それらの研究・言論が普遍的な価値にもとづくものであったことを示している。大学が国家権力から距離を置き、独立を保つことは、学問が進展・開花する必要条件である。文部科学省は今回のはたらきかけは要請にすぎないと説明しているが、国立大学法人が運営費交付金に依存する以上、「要請」が圧力となることは明白である。
 たしかに教育基本法第二条は、教育目標の一つとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養う」ことを掲げる。しかし、伝統と文化とは何かを考究すること自体、大学人の使命の一つであり、既存の伝統の問い直しが新しい伝統を生み、時の権力への抵抗が国家の暴走や国策の誤りを食い止めることも多い。教育基本法第七条が「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」とするゆえんである。政府の権力、権威に基づいて国旗国歌を強制することは、知の自律性を否定し、大学の役割を根底から損なうことにつながる。
 以上の理由から、我々は、大学に対する国旗国歌に関する要請を撤回するよう、文部科学省に求める。

2015年4月28日

学問の自由を考える会

2014年10月28日

国立大学交付金、成果で配分 財務省案、統廃合も

共同通信(2014/10/27)

 財務省は27日、財政制度等審議会の分科会を開き、国立大学に配る運営費交付金の改革案を示した。交付金の3割程度を「改革経費」とし、論文数や若手登用といった指標で成果を評価し配分する仕組みに見直す。文部科学省と協議し、2015年度の導入を目指す。

 成果を上げている大学に重点配分する一方、不十分な大学は減額されるため、競争原理が働いて大学の統廃合につながる可能性がある。

 運営費交付金は14年度予算で1兆1123億円を計上しているが、大部分が教員や学生数に応じて配分されるため、各大学の取り組みや改革姿勢が反映されにくい。


2014年09月02日

国立大9割に、文科省「天下り」 理事ら幹部77人出向

東京新聞(2014年9月1日)

 全国の国立大学法人八十六校のうち約九割にあたる七十六校で、計七十七人の文部科学省出身者が理事や副学長、事務局長などの幹部として在籍していることが分かった。事実上の「天下り」を通じ、国立大の運営に文科省の意向が反映されている恐れがある。 
 文科省が自民党の無駄撲滅プロジェクトチーム(PT)に提出した資料で明らかになった。PTでは、文科省と国立大との人事交流を若手職員に限るなどの改善を提起する方針だ。
 資料は四月一日現在で、文科省から国立大への出向者をまとめた。課長級以上の管理職は国立大ほぼ全ての八十三大学で、計二百三十九人が在籍している。
 二〇一三年の同省幹部の出向者は、七十五大学で七十五人。管理職は八十三大学で二百四十七人いた。一二年は幹部が七十大学で七十人、管理職は八十大学で二百三十九人だった。
 六月に国会で成立し、来年四月から施行される改正学校教育法は教授会の権限を限定し、学長主導の大学改革を促す。同法の改正では、学長を補佐する副学長の職務範囲を拡大した。副学長への出向を通じ、国立大への文科省の影響力が一層強まる可能性がある。
 文科省は「各学長から要望があった際、該当する人がいれば協力をする」(人事課)と要請に応じた人事交流と説明している。
 文科省出身の理事二人がいる東京大は「文部科学行政全般に幅広い知識や経験を有した人材は、本学の発展に貢献いただけると期待し、総長(学長)が任命した。出向終了後は文科省に戻るので天下りではない」(広報課)としている。

2014年07月22日

学問の自由と外国籍教員を守る声明

今を考える会

学問の自由と外国籍教員を守る声明

 広島大学の教養教育におけるオムニバス形式の総合科目「演劇と映画」で提供されたある講義に対し、産経新聞が執拗な批判を繰り返しています。授業で取りあげたドキュメンタリー映画が従軍慰安婦問題について偏った内容であると決めつけ、この授業の担当教員が外国籍であることを報じたため、ネット上では担当教員に対する不当な非難と中傷がエスカレートし、他方では、衆議院内閣委員会において某国会議員から当該講義を批判するような発言が行われたことで、広島大学にも多数の抗議が寄せられました。このような誹謗中傷は、担当教員の人権を著しく傷つけるものであり、決して許されるものではありません。法的手段にも訴える必要のある深刻な事態であると考えます。
 同時に、これは大学における学問の自由への重大な侵害です。学生と教職員の信頼関係の中で、多様な意見や考えを自由に出し合うことができる場を奪おうとする極めて憂慮すべき事態です。加えて、外国籍教員の排斥を呼びかけるこのようなヘイトスピーチは、「自由で平和な一つの大学」を建学の理念とし、世界に開かれた大学をめざし、国際社会で活躍できるグローバル人材の養成を果たすはずの広島大学にとって、また学問の自由を守り国際化をめざす日本の大学にとって、極めて重大な危機と言わざるを得ません。
 広島大学は未だに学外に対して公式声明を発表していません。確かに、現在進みつつある「改革」によって、大学は自治の精神を失いつつあることが懸念されますが、「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を持つ広島大学であるなら、これらの攻撃から学問の自由と外国籍教員を守ることを毅然と表明できるものとわたしたちは考えます。
 こうした事態を重く見たわたしたち「今を考える会」は、6月18日に広島大学総合科学部において緊急集会を開催し、まず、ここに声明を発表して、学問の自由と外国籍教員の同僚を守ると同時に、あらゆる差別を断じて許さないことを強く決意するものです。そして、この声明への賛同を求め、多くの方々の連帯を広く呼びかけます。

2014年6月20日


呼びかけ人(50音順)
青木利夫(広島大学大学院総合科学研究科教員)
淺野敏久(広島大学大学院総合科学研究科教員)
市川浩(広島大学大学院総合科学研究科教員)
隠岐さや香(広島大学大学院総合科学研究科教員)
河西英通(広島大学大学院文学研究科教員)
坂田省吾(広島大学大学院総合科学研究科教員)
辻学(広島大学大学院総合科学研究科教員)
西村雄郎(広島大学大学院総合科学研究科教員)
布川弘(広島大学大学院総合科学研究科教員)
平手友彦(広島大学大学院総合科学研究科教員)
カロリン・フンク(広島大学大学院総合科学研究科教員)
丸田孝志(広島大学大学院総合科学研究科教員)
水羽信男(広島大学大学院総合科学研究科教員)
Claude Levi Alvares(広島大学大学院総合科学研究科教員)

※本文冒頭の日付は声明文サイトアップロードの日付であり、声明文本体は2014年6月20日に作成されました。賛同者人数、賛同者氏名のみ随時更新します。
※現在、大学関係者を中心に賛同者の方を募っています。ご賛同頂ける方はABOUT USに記載された連絡先メールアドレスまでご連絡下さい。


2014年06月28日

国立大交付金、重点配分へ…学力向上など基準に

読売新聞(2014年06月26日)

 政府は、全国86の国立大向けの「運営費交付金」について、学長のリーダーシップや学力向上などを評価の基準に使い、改革に積極的に取り組む大学に重点配分する。

 学生数など大学の規模で比例配分している現状を改めて、新基準を来年夏までに作る。大学同士の競争を促し、それぞれの専門性を生かした「脱・総合大学化」を進める。将来の大学再編につながる可能性もある。

 運営費交付金は、大学の業務費用の一部として年間約1・1兆円が配られている。2016年度予算から見直し、最大4割を重点配分に充て、残りは従来通りに配る。

 文部科学省と財務省が評価基準を協議しており、学長権限の強化や、年俸制の導入など優秀な研究者を集める努力などが考えられている。博士号取得後も助教などに就けずに生活基盤が不安定な「ポストドクター」の就業支援なども含まれる。


2013年12月18日

国大協、科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)

国大協
 ∟●科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)

科学研究費補助金予算の確保について(緊急声明)


平成25年11月29日
一般社団法人国立大学協会
会長 松本 紘


 科学研究費補助金は、我が国の人文・社会科学及び自然科学分野の多様な学術研究分野を支え、研究者の自由な発想と連携を活かす真に競争的な基礎的研究資金として定着し、国際的にも高く信頼されている。科学研究費補助金は、萌芽的研究から世界最高水準の研究までをシームレスに支援し、科学技術立国を目指す我が国の次代の研究者の育成にも極めて大きな役割を果たしている。

 ノーベル賞をはじめとする国際的科学賞や社会経済に大きなインパクトを与える技術革新も、その多くは長年にわたる科学研究費補助金の支援を受けた研究が実を結んだものであり、こうした基礎研究こそ我が国の成長にとっての最大の資本であると言って過言ではない。

 我が国の経済成長を確実に実現していくために示された「日本再興戦略」においても、世界の先を行く基礎研究の成果を一気に実用化レベルに引き上げるための革新的な研究を徹底的に支援し、また競争性を有する研究資金の制度において、間接経費 30%の確保に努める旨の方針が盛り込まれており、我が国の礎研究の国際的優位性を維持発展させることはその大前提と考えられる。

 平成26年度予算の編成に当たっては、科学研究費補助金予算について、新たなシーズを生み出す新規の研究課題が採択されず基礎科学研究の国際的競争力の低下を生ずるというような事態が万が一にも生ずることのないよう、ぜひとも助成額を維持・増額されることを要望する。さらに、政府におかれては、財政健全化との整合性を図る中で、追加投資なく研究成果の最大化を可能とする「科学研究費の全種目基金化」を早急に実現されるよう要請するものである。


2013年12月10日

島根大学職員組合、「年俸制+任期制(+評価制度)について考える緊急集会」

島根大学職員組合
 ∟●組合ニュース、 12月6日
 ∟●要求書「年俸制についての性急な方針決定の停止を要求します」

「年俸制+任期制(+評価制度)について考える緊急集会」開催される

 11 月教授会において、評議会から「平成 27 年度より全学部で新規採用の准教授以下は全員、任期制(5 年)と年俸制を適用する(センターにおいては教授も含む)」という提案がなされたとの学部長報告があり、メールでの意見提出を求められたが、学部構成員より評議会提案への異論が噴出しました。その後、「55 歳以上の現構成員には全員年俸制を適用する」との追加提案を、企画・総務担当理事が各学部を訪問し説明されたとの情報が伝わりました。

 これを受け、島根大学職員組合(以下,組合)では 12 月 4 日、緊急集会を開催しました。昼休みという時間にもかかわらず、全学より 70 名を超える参加があり、以下のような議論がありました。
・ 年俸制を導入することで本当に教育・研究は活性化するのか。生涯所得の低下は著しく職員のモチベーションを下げることになり、かえって教育・研究の質の低下につながる。
・ 評価基準や評価方法などが不明確で、果たしてどこまで公正な評価が可能なのか。
・ 収入が下がる上に任期制が導入されれば、優秀な人材の確保などかえって難しくなり、競争力の低下につながる。
・ 人材の流動化は本学が進める「地域とともに」という理念や、COC プログラムを進める上でもマイナスに作用するのではないか。
・ 日頃、人事院勧告準拠を主張する理事から年俸制提案が出るのは自己矛盾ではないか。

 これ以外にも、構成員の意思を無視したような理事側からの提案に対する異論が数多く出されました。
 どの意見も島根大学の将来を憂い、現状を少しでも良いものにして次にバトンタッチしたいという願いが込められているものでした。 こうした議論の結果、組合から大学当局に対し、以下の要求をすることとしました。
1.構成員との間における十分な議論のプロセスを経ずに方針決定をしないこと。
2.組合に対しても、今回の提案に至った経緯を含め、必要な情報提供を行うこと。
 なお、仮に拙速かつ一方的に提案を押し通すことがあれば、組合としても対抗措置を取らざるを得ないこと。

 集会当日、「任期制を取り下げる」との修正提案が理事側からあったという情報が伝えられるという事態も発生し、目まぐるしく提案内容を変更する学長をはじめ担当理事の大学運営方法を問題視する意見
も多数出されました。 (法文:飯野公央)

2013年12月05日

国大協、「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

国大協
 ∟●「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見


平成25年11月29日
一般社団法人国立大学協会


1.国立大学におけるガバナンス改革の現状

○大学のガバナンスについては、社会の急激な変化の中で、大学が新たなニーズに機敏に対応し、その機能を強化していくことが、我が国の現在及び将来にとって極めて重要であるとの観点から、改革の必要性が指摘されている。

○国立大学協会としても、こうした国民や社会の強い期待に応え、各国立大学がそれぞれの強みや特色を活かして機能強化を図っていくことを国立大学の総意として取りまとめ、平成 23年 6月には「国立大学の機能強化-国民への約束」、平成 25年 5月には「国立大学改革の基本的考え方について-国立大学の自主的・自律的な機能改革を目指して」を公表した。

○現在、各国立大学においては、教育、研究、地域貢献、国際貢献、大学間の有機的連携等の各般にわたり、学長のリーダーシップの下に迅速かつ適切な改革を実行するため、それを支えるガバナンス体制を整備しつつ、様々な取組を推進している。

○既にほとんどの国立大学においては、学長のリーダーシップに基づく意思決定過程を明確化し、全学的に次のようなガバナンス改革を進めている。
・学長による中長期ビジョンの提示と全教職員による共有
・副学長、学長特別補佐などの任命とそれらを構成員とする学長直属の会議の設置による執行部体制の強化
・教職員定員、予算、施設等についての学長裁量枠の設定による戦略的な資源配分
・IR室等の設置による学内情報の集約と活用

○さらに、多くの国立大学が、それぞれのビジョンに基づいて、次のような切り口でさらなる学長によるガバナンスの発揮に取り組んでいる。
・全学的な教養教育の再構築やグローバル化対応を推進するための学長直属の新たな全学組織の設置
・革新的な運営体制を有する新しい学部等の設置と、その運営体制の全学的波及
・グローバル化や産学連携の推進に資する多様で優れた人材を戦略的に確保するための柔軟な人事システムの構築
・地域の複数大学の資源を効果的に共同活用して教育、研究、社会貢献等の機能の強化を図るための学長のリーダーシップによる大学間連携

2.このたびの素案について

○このたび、第7期中央教育審議会大学分科会組織運営部会の素案において示された方向性は、国立大学において既に取り組んでいる上述のガバナンス改革と軌を一にしており、賛同するものである。

○しかしながら、大学のガバナンスについては、素案においても随所に記述されている通り、一般の企業とは異なる様々な特性が存在する。とりわけ大学は、普遍的な価値を追求する高度な教育研究機関として、我が国の憲法・教育基本法においても、また国際的にも、その自主性・自律性の尊重が基本とされている。今後、国において具体的な制度設計を行うに当たっては、このことを前提としつつ、次のような大学の特性に十分に留意されることを要請する。
・大学運営に当たっては、中長期的な視点が不可欠(教育研究の成果は短期間では現れず、定量的な成果測定が困難)
・優れた教育研究のためには教職員の自由で多様な発想を引き出すことが極めて重要
・教育研究の基本は優れた人材の確保(流動性を高めつつ多様で優れた人材を安定的に確保することが必要)
・各大学の多様な実態に即した改革が必要(総合大学と単科大学、保有学部の分野附属病院の有無、所在する地域などにより、組織、財務、人事等の実態は極めて多様)

○また、国立大学については、「日本再興」の原動力として政府、産業界をはじめ各方面からますます大きな期待が寄せられている一方で、その基盤的経費である運営費交付金は毎年減額されている。もちろん競争的資金等による重点的支援も重要であるが、前述したように大学運営には中長期的視点が不可欠であり、多様で優れた人材を安定的に確保することが極めて重要であって、ガバナンスをはじめとする各種の改革を推進するためにも、一定の安定した財政的基盤を確保することが必要である。このことについては、これまでも様々な場において、国際比較をまじえながら述べてきたところであるが、この機会に改めて要請するものである。

2013年11月26日

国立大改革プラン、教員に年俸制 機能強化へ 文科省

毎日新聞(2013年11月26日東京夕刊)

 文部科学省は26日、国立大の機能強化に向けた方針「国立大学改革プラン」を発表した。学長の強いリーダーシップを確立し、各大学の強みを精査して将来計画を立案させる。2015年度中に教員1万人に年俸制を導入するなどし、国際競争力や地域で果たす役割を強める。文科省は国立大への運営費交付金の3?4割を改革関連に重点配分する。

 プランは、改革加速期間(今年度?15年度)に取り組む内容を提示。年齢層の高い教員から若手・外国人への流動化を進めるため、国立大の全教員の約16%に該当する1万人が年俸制、または複数から給与を受けられる混合給与制となるよう、各大学の人事・給与システムの改革を促す。各大学の強みや役割を整理する「ミッションの再定義」は、今年中に策定・公表する。

 基本的な体制を整えた上で、第3期中期目標期間(16年度?)に、各大学が持続的な競争力を培い、高い付加価値を生み出せるよう目指すとしている。

 当面の目標として、教育研究組織や学内資源配分を恒常的に見直せる環境作り▽20年までに留学生(日本人、外国人いずれも)を倍増▽今後10年間で世界大学ランキング上位100校に日本の大学を10校以上入れる▽今後10年間で20以上の大学発新産業を創出する??など6項目を示した。【福田隆】

[関連ニュース]
国立大運営費交付金を重点配分 4000億円、文科省が改革プラン
国立大改革プランを策定=公的支援重点配分で後押し-文科省

2013年10月01日

熊本大学教職員組合、声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

熊本大学教職員組合
 ∟●声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

 2012 年 8 月 1 日、熊本大学使用者は、2011 年度の人事院勧告分として基本給:平均 0.23%の削減にくわえて、「国家公務員の給与改定及び給与の臨時特例に関する法律」(以下、「臨時特例」と略記する)に対応して、基本給:平均 7.8%(最大 9.77%)、賞与:一律 9.77%、管理職手当:一律 10%という前代未聞の大幅な給与削減を行なった。さらに使用者は、組合との団体交渉を一方的に打ち切り、2013 年 1 月 1 日、熊本大学教職員に対して改正「国家公務員退職手当法」と同一の退職金引き下げを強行するという不当労働行為を犯した。

 我われ組合は、昨年度の団体交渉において、労働法制の下にある本学教職員へのこうした行為が、労働契約法の求める「高度の必要性に基づいた合理的な内容のもの」でもなければ、「社会一般の情勢」(=民間の賃金水準)に適合させるものでもないことを明確にし、2012 年に締結した労働協約(「国家公務員の給与の『臨時特例』に対応した組合員の給与の取扱いに関する労働協約」)に明記された「経営判断上可能な範囲において、給与水準を最大にするよう努力する」という事項に基づき、給与削減率の圧縮、熊大使用者が想定した運営費交付金削減額と実際の削減額の差額分の返還、代償措置の実現を使用者に強く要求した。さらに組合は、退職金引き下げが労働者側の合意を得ていない労働条件の不利益変更・不利益遡及という違法性を孕んだものであることを指摘し、激変緩和措置の実施を要求した。しかし、谷口学長は「できる限りのことはしてきたと自負している」(2013 年 3 月 11 日の団体交渉)とまで強弁する有様である。これらの問題が、本学教職員の生活基盤を破壊し、人生設計の見直しを迫るきわめて深刻なものであるにもかかわらずにである。大学の自主的・自律的運営を行なう当事者能力・意欲の欠如は、ここに極まったと言わざるを得ない。

 我われ組合の粘り強い運動によって、医学部附属病院の医療職員等への給与削減の波及回避や「臨時特例手当」(2013 年 6 月期の期末・勤勉手当 9.77%削減分を補填する手当)を獲得することはできたものの、我われの要求の実現はごくわずかにとどまっている。組合が要求し続けてきた定年まで無際限に再任を認めている教員任期制の廃止は、経費負担増なく教職員の定着化を可能にする有効策でもある。度重なる給与削減によって優秀な人材流出に歯止めがかからない状況を招いている熊大使用者には、一刻の猶予も許されない。給与削減と退職金切り下げ問題に関する団体交渉は昨年度から継続中であり、熊大使用者は一日も早く交渉を再開すべきである。

 こうした熊本大学教職員の置かれた窮状と本学の危機的状況(私立大学や大都市圏の国立大学法人との給与格差による人材流出・優秀な人材確保の困難)を、組合は経営協議会学外委員に書簡で伝え(2013 年 6 月 7 日)、経営協議会において、①人事院勧告や政府の要請に左右されることのない、国立大学法人の教職員の適正な給与水準を実現できる制度作りを他の国立大学法人の学長たちと共同して始めること、②熊本大学教職員組合の要求事項をふまえて、2012 年度・2013 年度の給与減額の縮減に最大限努力することを提言するよう求めた。これを受けてか、本年度の第 2 回経営協議会(2013 年 6 月 14 日開催)において、学外委員から「国からの交付金が減額されることに伴い、教職員の給与を次々と減額しては、教職員のモチベーションが上がるはずもない」・「国の給与体系に準じるのではなく、時間はかかると思うが、教職員組合と協力し、熊本大学独自の給与体系を作ってみてはどうか」といった踏み込んだ提言がなされている。熊大使用者がこうした声に真摯に耳を傾け、大学の運営を担う当事者としての義務と責任を果たすための行動に出なければ、本学の将来など望むべくもない。

 むろん、給与削減・退職金引き下げ問題は、本学にとどまる問題ではない。全国の国立大学法人等では、未払い賃金の請求訴訟が相次いでおり(現時点で、全大教高専協議会、高エネルギー加速器研究機構職員組合、福岡教育大学教職員組合、山形大学職員組合、富山大学教職員組合、京都大学職員組合、新潟大学職員組合、高知大学教職員組合、原告 500 名以上)、いくつかの裁判では早ければ今年度内に判決が出る可能性がある。組合は、今年度の定期大会(8 月 1 日開催)にて、本学の課題と同様の争点で提訴したこれらの単組による裁判闘争を全面的に支援していくことを決定した。昨年度の団体交渉(2013 年 3 月 14 日)において、谷口学長が“熊本大学が訴訟当事者でないとしても、同じ内容の裁判の結果”については、退職した後でも“役員メンバーで責任を持ちます”と明言している以上、これらの裁判は我われの闘争でもある。熊本大学教職員組合は、「未払い賃金訴訟の公正な判決を求める署名」活動・募金活動を今年度の最重要課題の一つと位置づけ全力で取り組んでいくとともに、裁判も選択肢としながら、給与削減・退職金引き下げ問題に関する再開後の団体交渉において、削減された給与の奪還と代償措置の実現を求め総力をあげて闘い抜く。
 以上、2013 年度定期大会の議論をふまえ、ここに宣言する。

2013 年 9 月 11 日
熊本大学教職員組合執行委員会

2013年08月19日

未払い賃金請求訴訟、公正判決を求める署名に全力をあげよう!!

熊本大学教職員組合
 ∟●公正判決を求める署名,支援募金活動に全力をあげよう!!「赤煉瓦」第6号(8/8)

公正判決を求める署名,支援募金活動に全力をあげよう!!
--組合員は 1 人が最低でも 5 筆集めよう!!--

全国で8 単組,約500 名の組合員が提訴!!

 『赤煉瓦』№4(2013.8.5)でお伝えしたように,7 月4 日に新潟大学職員組合の16 名,7 月26 日に高知大学教職員組合の18 名が提訴したことによって,「臨時特例」に対応した給与減額と退職金減額問題で提訴した単組・原告は全国で 8 単組・約 500 名にのぼっています(2013 年7 月末時点)。これまでに提訴した単組・原告の内訳は次のとおりです。

2012 年11 月27 日提訴 福岡教育大       原告:4 名
           高専協議会           原告:281 名
           高エネルギー加速器研究機構 原告:6 名
2013 年 3 月26 日提訴 山形大           原告:7 名
     5 月24 日提訴 富山大           原告:55 名
     6 月11 日提訴 京都大           原告:109 名
     7 月 4 日提訴 新潟大           原告:16 名
     7 月26 日提訴 高知大           原告:18 名

 さらに東京学芸大学教職員組合,電気通信大学教職員組合,福島大学教職員組合が提訴の準備を進めています。

全大教が公正判決を求める署名,支援募金活動を提起!!

 福岡教育大教職員組合と全大教高専協議会の裁判は,年度内に結審を迎すえる可能性があります。そのため,全大教は7 月4 日に福岡教育大,高専協議会,高エネ研の組合員の裁判について公正判決を求める署名,支援募金活動を提起しました。今年 8 月から 11 月の間に全国で福岡教育大,高専協議会,高エネ研の裁判について,それぞれ50,000 筆の署名を集めて,裁判長宛てに提出するものです。
 
……以下,略……

2013年07月20日

資料紹介、[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟

労働法律旬報,No.1795 7月上旬号(発行日 2013年7月10日)

[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟

=小部正治/鮎川泰輔/今泉義竜/吉村真吾/岩橋多恵/田中暁/坂林加奈子/中村周而/平和元/齊藤園生
主な目次

[巻頭]グローバリズムのなかの一挿話?=武井寛・・・04

[特集]国立大学法人の賃下げ訴訟
国立大学法人の賃下げ訴訟について=小部正治・・・06
高エネルギー加速器研究機構=鮎川泰輔・・・12
高専賃金減額事件のあらまし=今泉義竜・・・14
福岡教育大学教職員組合の賃下げ裁判=吉村真吾・・・16
京大訴訟の特徴=岩橋多恵・・・18
山形大学賃金減額訴訟について=田中暁・・・20
国立大学法人富山大学の賃下げ回復訴訟について=坂林加奈子・・・22
新潟大学「賃下げ訴訟」について=中村周而・・・24
国立大学法人電気通信大学=平和元・・・26
東京学芸大学の賃金切り下げ分返還訴訟=齊藤園生・・・28

[紹介]弁護士短信―労働事件簿102長崎島原中国人技能実習生事件/中国の派遣会社代理店の不法行為責任を認めた画期的判決=小野寺信勝・・・30
[紹介]ユニオンネット―現場からの報告23マツダ派遣切りのたたかい=高根孝昭・・・32
労働判例/マツダ(派遣切り)事件・山口地裁判決(平25.3.13)・・・51
[紹介]港湾における石綿問題と国の責任=伊藤彰信・・・37

2013年06月28日

岡山県立大、告発教員 処分禁止を求め地裁倉敷支部に仮処分申請

山陽新聞(2013/6/26)

告発教員、県立大の処分禁止訴え 地裁倉敷支部に仮処分申請

 岡山県立大(総社市窪木)の入試不正疑惑問題で、不正があったと内部告発した教員が26日、大学側が事実でない憶測に基づき進めている懲戒処分手続きは違法として、処分禁止を求める仮処分を岡山地裁倉敷支部に申請した。

 申請書では、大学側は「教員が報道関係者に告発内容を提供したと考えられ、事実でない情報を流布させようとしたとみるべき」との推測によって、大学の信用を失墜させたとして懲戒処分を検討。教員の代理人は「情報提供した事実は無い。そもそも提供していても、公益に基づく告発者は法的に守られる」としている。

 同大調査委員会は2011年度入試で受験生1人が不正に不合格にされたとする教員の告発を検証し、5月27日に「不正はなかった」とする報告書を発表した。教員は理事長(学長)から講義などを禁じられ、講義や会議参加を妨げないよう求める仮処分を同支部に申請している。


2013年04月25日

国立大教員、年俸制導入へ…外国人研究者確保で

読売新聞(2013年4月24日)

 下村文部科学相は23日、政府の産業競争力会議で、国立大学改革の一環として教員給与に年俸制を導入し、優秀な外国人研究者の採用を促す方針を表明した。

 6月にまとめる成長戦略に盛り込む予定だ。

 国立大は2004年の独立法人化以降、給与体系を自由に決められるようになったが、年俸制の導入は進んでいない。

 文科省は、海外で活躍する優秀な外国人研究者らを日本の大学に迎えるためには、高い給与などで優遇することが重要と判断。国立大に退職金にとらわれない年俸制を採用させ、年度途中の9月からでも働けるようにする。人事給与制度改革を進める大学には、必要な財政支援を行う方針だ。

 同省は今後、国内の大学が海外大の優れた人材を研究室単位で招くなどして、10校が世界大学ランキングの100位までに入るよう推進していく考えだ。


2010年08月04日

北陸地区4国立大学学長、共同声明「教育・研究開発力充実と高等教育に対する公的投資の拡充を」

富山大学
 ∟●北陸地区国立大学連合4大学長による共同声明

平成22年8月3日

-教育・研究開発力充実と高等教育に対する公的投資の拡充を-
(共同声明)

北陸地区国立大学連合
金沢大学長 中 村 信 一
富山大学長 西 頭 德 三
福井大学長 福 田 優
北陸先端科学技術大学院大学長 片 山 卓 也

 国家財政建て直しの中長期的戦略として、「第三の道」、すなわち、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置く「新成長戦略」が閣議決定(6月18日)されました。そこでは、「強い人材」すなわち将来にわたって付加価値を創出し、持続可能な成長を担う若年層や知的創造性(知恵)(ソフトパワー)の育成は、成長の原動力である、とされています。

 「強い経済」が無ければ何事も図れません。自然資源に乏しい我が国がグローバルな競争に勝つには、知識基盤社会の構築とそれによる科学技術立国にあるとされています。そのためには、優れた技術の開発と高い技術を生み出す人材の育成が欠かせず、その実現は高等教育による以外にありません。「強い人材」の育成は大学、特に国立大学に求められています。

 現在の我が国の知的基盤と科学技術は、いま活躍している研究者・技術者が受けた教育の成果であり、これは彼らを育成した「強い人材」(教師)と、教育の機会を整えた行政(財政)あってのものです。そして、現在教育を受けている人材(学生)は、成長して次世代の「強い人材」を育てる人材となります。このように、「強い人材」の育成は、人材を育成する側と育成される側の連続性の上にあります。連続性が一旦断ち切られると、将来の人材育成に空白の期間を生じさせることとなり、教育を通じたその回復には長い時間がかかります。

 国立大学における教育・研究の根幹となる教職員の人件費と教育に必要な経費の多くは、国立大学法人運営費交付金により賄われています。しかし、「政策的経費は一律10%削減」という概算要求組替え基準が7月27日に閣議決定されました。先の「財政運営戦略」(平成22年6月22日閣議決定)に基づく約71兆円の「歳出の大枠」を堅持し、機械的に政策的経費の一部である国立大学法人運営費交付金の削減を3年間続けると、3年間で今年度当初比30%の削減となります。

 国立大学法人の現状に当てはめると、10%削減では学科の廃止、30%削減では、学部単位での削減により対応せざるを得ません。学科や学部の廃止は、景気が回復基調に戻ればまた設置し直せばよいというような、単純なことではありません。学科や学部の廃止により一旦断ち切られた人材育成の連環を元に戻すには数十年という年月が必要です。この失われる年月の間の人的損失とそれに基づく経済的損失は予測できません。

 「強い人材」の育成による「新成長戦略」に基づき、安心・安全な社会の実現という国家の未来を描く上で、国立大学法人をどの様に位置づけるかは、国家経営の上で重大な選択といえます。今般の閣議決定の「政策的経費は一律10%削減」を国立大学法人運営費交付金に課すことは、日本の未来に致命的なことになるものと危惧し、「新成長戦略」に基づき、長期的な観点から予算配分が行われるよう強く要望します。


2010年07月31日

千葉大学ユニオン、「運営費交付金:年8%、3 年間で24%削減を許してはならない」

千葉大学ユニオン
 ∟●ユニオンニュースNo.58

運営費交付金:年8%、3 年間で24%削減を許してはならない

 菅内閣は6 月22 日の閣議で、2020 年度までを見据えた『財政運営戦略』を閣議決定し、その中の2011~13 年度対象『中期財政フレーム』(以下『フレーム』)においては、国債費等を除く歳出を2010 年度(71 兆円)以下に抑えるという原則を盛り込んでいる。国立大学協会は、この原則によって政策的経費の減額が年間マイナス8%(3 年間で24%減)になると試算し、この数値が国立大学運営費交付金などに適用されれば国立大学の研究教育は壊滅的な打撃を受けるとして、『フレーム』の国立大学への機械的適用に反対する緊急行動の開始を濱田会長名で全国に呼びかけた(7 月1 日)。続いて、国大協は私立大学団体連合と共同声明を発表した(14 日)。これらに関する資料は、国大協第3 回理事会資料4(国大協HP)に掲載されている。さらに 32 大学理学部長会議が10 日に、齋藤千葉大学長が12 日に緊急アピールを発するなど全国的規模で『フレーム』適用反対の声が拡がっている(理学部と千葉大学のHP 参照)。……


愛教大への支援 周辺5市長訴え、「交付金削減しないで」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aichi/news/20100730-OYT8T01231.htm

「交付金削減しないで」

 碧南、刈谷、安城、知立、高浜の5市長が30日、愛知教育大学(刈谷市)への支援アピールを発表した。

 国立大学への運営費交付金が、2004年度から毎年1%削減され、6年間で総額830億円減額され、愛知教育大でも2億7000万円の減収となった。国が6月に策定した11年度から3年間の「中期財政フレーム」で試算すると、同大の来年度の交付金はさらに約4億円の減額となる。これは、同大の一般運営費約79億円の5%に相当。……


2010年07月27日

国立大存亡の危機、交付金1000億円減試算 27大学分に相当、節減限界

■「意見広告の会」ニュース488より

東京新聞7月24日(夕刊)

 政府の二〇一一年度予算概算要求をめぐり、八十六の国立大学法人でつくる国立大学協会(会長・浜田純一東大学長)は二十四日までに、運営費交付金の一千億円規模での削減が懸念され、二十七大学が消滅しかねないとの試算をまとめた。「国の知的基盤を破壊する」として、削減対象から外すよう求めている。
 政府は社会保障費の自然増一兆三千億円を容認する一方、国債費を除く歳出を本年度並みの七十一兆円以下に抑える方針。同協会関係者は、運営費交付金が10%前後削減され、一千億円減となることも予想されるとしている。
 同協会によると、日本の高等教育への公的資金は現時点でもOECD(経済協力開発機構)諸国で最下位、交付金は過去六年で計八百三十億円削減され、本年度は一兆一千五百八十五億円だった。企業からの受託研究を増やすなどして対応しているが、研究者からは「成果が出るまで時間のかかる基礎研究が難しくなった」との声が上がる。
 一千億円が削減されれば、小樽商科大の十五億円をはじめ、福島大三十五億円など交付金が少ない大学順に合計すると、二十七大学分に相当するという。実際には各大学の交付金がほぼ一律に削減されると見られる。
 東北大は「教員を四百人解雇するか、五十二万円の授業料を七十五万円に値上げしなければまかなえない額」と分析。五十二億円の交付金を受けた愛知教育大の松田正久学長は「既に教員を削減し、高熱水道費も削った。さらに減らせと言われても難しい」と顔を曇らせた。 


大学予算削減 関係者ら反対相次ぐ、国の知的基盤を破壊し、国家の危機を招来する

■「意見広告の会」ニュース488より

『しんぶん赤旗』7月20日

 政府は20日にも2011年度の概算要求基準(シーリング)の大枠となる骨子を策定しようとしています。政府はすでに「中期財政フレーム」を閣議決定しており、そこでは国債を除く歳出を前年度以下に抑える方針を示しています。

 これに対し、大学などが大学予算削減反対の声明を相次いで発表。削減額が東北地区の7国立大学の運営費交付金全額に匹敵する(16日の東北地区国立大学学長連名の共同声明)など教育研究活動に破壊的な打撃を与えると危機感を表明し、知事など地方自治体に要望する学長もいます。うち14日発表の国立大学協会と日本私立大学団体連合会の連名の声明を紹介します。

国大協と私大連共同声明

 「国立大学法人運営費交付金」及び「私立大学等経常費補助」は、平成23年度(2011年度)概算要求枠での削減対象から除外すること!!

 大学予算の一律削減は、人材養成・学術研究の中心として、成長の原動力をなす我が国の知的基盤(大学)を破壊し、国家の危機を招来する!!

 菅内閣の下で策定された「財政運営戦略」と「新成長戦略」が目指す「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」は、わが国が置かれている経済・財政の危機的状況に照らし、当然実現されるべきものです。同時に、「新成長戦略」は、「強い人材」の育成が、成長の原動力として未来への投資であることを踏まえ、教育力や研究開発力を世界最高水準にするための効果的な公的投資を拡充する旨、明記しています。

 現在の厳しい財政状況について、大学関係においても認識しているところです。大学は、これまで人件費削減をはじめ、ぎりぎりの努力をしておりますが、これ以上の削減は限界であります。

 大学は、「持続可能な成長を担う若年層や知的創造性(知恵)(ソフトパワー)の育成」(「新成長戦略」より)の欠くべからざる土台であり、わが国全体にかかわる新しい未来を切りひらく存在でなければなりません。「強い大学」の実現を目指し、大学の教育研究環境の整備や学生への経済的支援の充実を図ることが、日本の輝かしい未来を切りひらくものと確信します。

 一方、「財政運営戦略」(6月22日閣議決定)の「中期財政フレーム」によれば、平成23年度からの3年間は「基礎的財政収支対象経費」について前年度を上回らないこととし、できる限り抑制に努めることとされています。これを受けて仮にこう間1兆円以上とも言われる社会保障関係経費の伸びを勘案すれば、いわゆる「政策的経費」は年率8%の減となります。教員等の人件費を含む大学運営の基盤的経費である国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助もその対象とされれば、削減額は、単年度だけでも1185億円(国立927億円、私立258億円)という、すさまじい削減を求められることが予想されます。

 わが国の高等教育への公財政支出は既にOECD(経済協力開発機構)諸国の最下位という状況です。その上、このようなさらなる過酷な削減を行うことは、わが国の成長の原動力である大学の存立を危うくするものであり、天然資源に乏しく科学・技術と人材に頼るしかないわが国においては、まさに国の将来を危うくする致命的な施策となります。

 ついては、平成23年度概算要求枠において、「国立大学法人運営費交付金」および「私立大学等経常費補助」については、削減の対象外とし、「新成長戦略」に基づき、長期的な観点から予算配分が行われることや、高等教育への公的資金の投入について国民の皆様のご理解ご支援をいただき、来年度概算要求にあたっても高等教育予算確保について強く要望します。


2010年04月27日

進まぬ契約の効率化 国立大の「民間開放度」 内閣府調査

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201004260127.html

 全国86の国立大学法人の運営に、どの程度競争が導入されているかを調べたランキングを内閣府が初めて公表した。官の事業の民間開放度を測る「市場化テスト」の国立大学版とも言えるものだ。「事業仕分け第2弾」と時を合わせ、独立行政法人をモデルにした国立大の「ムダ」も洗い出されたかたちだ。……

2010年04月19日

長大、女性教員支援

http://mytown.asahi.com/nagasaki/news.php?k_id=43000001004170002

 女性教員らに働きやすい環境を提供するため、長崎大学男女共同参画推進センターの施設が今月、学内に開設された。愛称は九州の方言で「一緒に仲良く使う」を意味する「おもやい」センター。女性研究者を支援することで、多様な人材を集め研究レベルの底上げを図る。……

吉田寮の新築含め取り組む、京大が重点計画を発表

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100416000207&genre=G1&area=K00

 京都大は16日、本年度から6年間に重点的に取り組む事業をまとめた「第2期重点事業実施計画」を発表した。京都市左京区の吉田南構内で「学生寮の建設に向けた整備」を明記し、吉田寮の新築を含めた計画を進める。……

2010年04月16日

弘前大「最下位」に抗議、学長「ランク付けしないはず」

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201004140385.html

 弘前大学(弘前市)の遠藤正彦学長は9日の記者会見で、法人化した国立大の予算に差をつけるため、国が各大学の研究・教育水準などをもとに行った初めての評価で弘前大が最下位とされたことに対し、文部科学省に文書で抗議したことを明らかにした。……

2010年04月12日

国立大学法人の経営改善度、内閣府が初のランキング作成

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100408/mca1004080040000-n1.htm

 民間企業との連携をしやすくするなど、経営の自由度を広める目的で平成16年度に国から独立して発足した86の国立大学法人について、内閣府が経営改善度に基づくランキングを初めて作成したことが7日、分かった。8日の官民競争入札等監理委員会の国立大学法人分科会で公表し、さらなる取り組みを促す。……

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阪大、京大がワースト10に=東大46位-初の経営効率ランク

弘前大、「最下位」に抗議

http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000001004100002

 弘前大学(弘前市)の遠藤正彦学長は9日の記者会見で、法人化した国立大の予算に差をつけるため、国が各大学の研究・教育水準などをもとに行った初めての評価で弘前大が最下位とされたことに対し、文部科学省に文書で抗議したことを明らかにした。……

[関連ニュース]
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弘大、交付金反映制度の評価や算定法に反論

2010年04月05日

香川大、大腸菌問題 違法処理の疑いで文科省が調査

http://mainichi.jp/area/kagawa/news/20100403ddlk37040645000c.html

 香川大医学部の研究室が遺伝子を組み換えた大腸菌の培養液を違法に処理した疑いがある問題で、報告を受けた文部科学省は2日、職員2人を派遣して現地調査をした。……

[同ニュース]
香大医学部の培養液廃棄容疑/文科省が現地調査

2010年04月01日

香川大、違法廃棄の疑い 遺伝子組み換え培養液

http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20100331000174

 香川大医学部の生体情報分子学の研究室が、実験で遺伝子を組み換えた大腸菌の培養液などを滅菌処理せず、流しに捨てて処分し続けていた疑いがあるとして、香川大が調査していることが30日、分かった。遺伝子組み換え生物は生態系に影響を及ぼす恐れがあり、「遺伝子組み換え生物使用規制法」で処理方法が定められている。文部科学省も近く実地調査に乗り出す方針。……

[同ニュース]
組み換え大腸菌 不法廃棄か…香川大が調査委設置
組み換え大腸菌を違法廃棄か 香川大、調査委を設置