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2018年03月08日

私立大学生の学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

私立大学生の学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

【請願趣旨】
 現在、日本の私立大学・短期大学(以下「私立大学」)には、大学生全体の約73%(2017年度・約225万人)が学んでいます。数多くの卒業生が日本社会のさまざまな分野で活躍するなど、私立大学はたいへん大きな役割を果たしています。

 しかし、私立大学の学生・父母等は、非常に重い教育費負担を強いられています。私立大学学部の初年度納付金の平均額は131万6816円です。高校入学から私立大学卒業までにかかる入在学費用は1人当たり1000万円近くにも上ります 注。
教育は人類にとって必要不可欠な営みです。誰もが教育を受ける権利を有し、教育を受ける機会は均等に与えられなければなりません。諸外国では、高等教育を無償としている国も数多くあります。ところが日本では学費が非常に高額なうえ、奨学金のほとんどが貸与=ローンであり、卒業後の返済額は多額で「奨学金破産」が社会問題となっています。昨年から「給付型奨学金制度」が開始されましたが、対象者も給付額もごくわずかで、極めて不十分なものです。こうした中で、多くの私立大学生が学業に専念できない状況に置かれています。

 2012年に日本政府が国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項の受け入れを決定したことを踏まえれば、高等教育を含む全ての教育費の無償化をすすめていくべきです。
あわせて、私立大学と国公立大学との間には、国の財政支援に大きな格差があります。国から私立大学への補助(私大助成)を学生1人当たりに換算すると約14万円ですが、国立大学への交付額は学生1人当たり約180万円です。国立大学も私立大学も法律上、同等の高等教育機関であり、このような格差を放置すべきではありません。
1975年に私学振興助成法が制定された際、参議院は附帯決議で経常的経費の2分の1補助を速やかに実現することをもとめました。その後、補助率は29.5%(1980年度)にまで達したものの後退し、現在では9.9%(2015年度)にまで低下しています。そのため、私立大学は学費収入に依存せざるをえない財政状況にあります。

 以上のことから、次の各事項の施策の実現を請願します。

【請願事項】
1.私立大学生の学費負担を軽減するため、以下の施策を速やかに実施してください。
  ①「給付型奨学金」の給付額と対象人数を増やしてください。
②高校で実施されている「就学支援金制度」を大学生にも拡大してください。
③無利子奨学金の貸与基準を見直し、希望者全員が受給できるようにしてください。
2.奨学金の返済は、卒業後の本人所得に応じて負担が緩和されるよう改善してください。
3.大学の学費無償化に向けた計画を立案してください。
4.私立大学の経常的経費の2分の1を補助するよう私大助成を増額してください。

2016年02月09日

日本私大教連、定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

日本私大教連
 ∟●定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

2016年2月4日
日本私立大学教職員組合連合
中央執行委員会

 安倍政権は、「地方創生」策の一環として、大都市圏(特に東京圏)への学生の集中を是正 することを閣議決定し、その手段として文科省が、入学定員超過の私立大学に対する補助金 の不交付・減額措置の強化を実施することを決定しました。2015 年 7 月 10 日には文科省高等教育局私学部長、日本私立学校振興・共済事業団理事長が連名で「平成 28 年度以降の定員 管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」を発出しています。

 現行の経常費補助金が全額不交付となる定員超過率(収容定員 8000 人以上 1.2 倍、8000 人未満 1.3 倍)を 2016(平成 28)年度から段階的に引き下げ、2018(平成 30)年度には、
・収容定員 8,000 人以上の私立大学では、1.10 倍以上で全額不交付
・収容定員 4,000 人以上 8,000 人未満の私立大学では、1.20 倍以上で全額不交付 とすることを決定しています。
 さらに 2019(平成 31)年度には、収容定員の規模にかかわらず、入学定員充足率が 1.0 倍を超える場合、超過した入学者数に応じた学生経費相当額を減額する措置を導入する方針 を示しています。
 政府・文科省は、三大都市圏に集中する大規模・中規模大学の定員超過を抑制し、地方私 大の活性化を図ることを政策目的としていますが、これらの措置では大都市圏への学生集中 を抑制するという政策目的を果たすことにはつながりません。また文科省が主張している「教 員一人あたりの学生数などの教育研究条件の維持・向上」も図れないどころか、学費値上げ や教育研究条件の悪化を誘発しかねません。その理由は次のとおりです。

(1)地方私立大学の活性化をはばんでいるのは、貧困な補助金および学生支援策 地方大学に定員割れが集中している大きな原因は、大都市圏への人口流出をもたらす地方の所得水準の低さや産業構造の問題および大学進学率の低さにあります。地元大学に進学す る若者を増やすためには、都市圏私大の入学者数を制限するのではなく、経済的理由で大学 進学を諦める若者を減らすことです。
 地方私立大学の活性化を本気で図ろうとするならば、少なくとも、経済的な理由で大学進 学を断念せざるを得ない事態が生じないように、給付奨学金制度や就学支援金制度を創設す るなど、学費負担軽減のための抜本的な対策を講じ、地方大学の進学率を引き上げる施策こ そ求められます。
 また定員割れ大学に対する補助金不交付措置は、年々厳格になりました。在籍している学 生に対しても不交付となる措置は、「地方創生」の政策目的に反するばかりか、学生の教育を受ける権利の侵害です。過疎地の初等・中等教育に対する政府の対応に比べて、なんと冷遇 されていることでしょう。地方私大の淘汰促進政策となっている定員割れ大学に対する補助 金の減額措置・全額不交付措置を中止し、在籍する学生数に見合う経常費補助の確保、さら に増額配分こそ、実施しなければなりません。
 文科省は、2015 年度予算で経常費補助の特別補助に「経営強化集中支援」予算 45 億円を 新規計上しましたが、額もわずかで、毎年のように内容が変動する場当たり的な予算措置で は、安定的に充実を図ることなどできません。
 地方私立大学の活性化をはばんでいる原因は、淘汰をすすめる補助金政策および貧困な学 生支援策という現行政策にこそあります。

(2)定員超過率の「厳格化」措置と私学助成 そもそも定員超過率の「厳格化」、補助金不交付措置は、
 一片の通知文書で決定されてよいような問題ではありま せん。かつて私立大学がマスプロで、しかも国立大学に比 して高い学費であることは、私学助成制度の整備によって 解決されなければならない課題でした。定員超過の状態を どのように解消して、しかも学費を上げずにすむか、その ために経常費補助を計画的に引き上げるということが経 常費補助制度の目的でした。
 政策として経常費補助が開始されたのは 1970 年で、補 助金不交付となる定員超過率(以下、定員超過率)が定め られたのは 1973 年でした。当時は 7.0 倍までの定員超過 が認められていました。私立学校振興助成法が施行された のが 1975 年で、このときの定員超過率は 5.0 倍でした。
 その後 1977 年から 1981 年までに 3 倍から 2.5 倍にさがります。この間、経常費補助率(以下、補助率)は 1981 年 までに 29.5%にまで上昇しました。7 倍から 2.5 倍への驚 異的な低下は、経常費補助制度によって支えられていたの です。
 その後、臨調行革と受益者負担主義への転換により、補 助率は低下を続けます。定員超過率は 84 年まで 2.5 倍に 据え置かれますが、その後、補助率が低下していくにもか かわらず、定員超過率は下がり続け、96 年までに 1.5 倍に まで下がります。しかしその後下げ幅は鈍化して、2011 年 1.3 倍になるまでに 15 年を要しています【右表】。
 補助率の低下と定員超過率の「厳格化」の併行を可能にしたのは、各大学での学費値上げと人件費などの抑制です。この結果、学費値上げは、貧困 な奨学金制度とあいまって、アルバイトづけの学生生活を常態化させ、人件費抑制はアウト ソーシングや非正規雇用、任期付教員という安価な教職員への代替をもたらすことになりま した。
 今回の大都市圏の中規模・大規模私大の定員超過率の「厳格化」措置の背景には、18 歳人 口が減少する中で大規模私大などが進めてきた定員純増をともなう規模拡大に対する批判が あるとみることができるかもしれません。しかしながら、10.3%でしかない補助率のもとで、 定員超過率を大規模大学の場合、現行の 1.3 倍から、わずか 3 年間で 1.1 倍にまで引き下げ るという政策は、あまりにも急激なダウンサイジングであり、教育・研究条件の改善につな がる保証はありません。

(3)定員超過率の厳格化を教育・研究条件の改善につなげることができる保証はない 入学する学生数が減少すれば、一見すると学生一人あたり経常経費、学生数と教員数の比率、学生一人あたり教育施設費は、高くなります。しかしながらこれを実現するためには、 財源が必要です。
 経常費補助金が全額不交付となる定員超過率の引き下げは、中規模・大規模大学の学納金 収入の大幅な減少をもたらします。例えば、収容定員 8,000 人規模の大学で、現行の補助金
 不交付となる入学定員超過率 1.3 倍近くの学生を入学させている大学の学納金収入が 130 億 円であるとすると、この大学が補助金不交付となることを回避するために入学定員超過率を 1.1 倍未満に引き下げれば、学納金収入は 20 億円以上、15%以上も減少することになります。
 同じく入学者数を定員の 1.0 倍に抑制すれば、学納金収入は約 30 億円、23%以上も減少しま す。私大経常費補助の長期にわたる減額により、私立大学の学納金収入への依存度は非常に 高まっており、また教育・研究の質向上のために経常費支出が増加している状況において、 これほどの収入減は私立大学にとって死活問題です。政府はこの大幅な収入減を何に転嫁し ろというのでしょうか。
 学納金に転嫁すれば、学費の大幅値上げを引き起こすことになります。学生数の減少にと もなって経常経費を減らせば、学生一人あたり経常経費は増えません。教員の新規採用を控 えれば、結局、学生数と教員数の比率も変わりません。また定員超過率に見合う学生数を定 員化すれば、実態はかわりません。
 定員超過率の「厳格化」を教育・研究条件の改善につなげることのできる大学がないわけ ではありません。それは学納金の減少を上回る帰属収支差額をあげてきた、これまで教育・ 研究を軽視して「溜め込み」をすすめてきた大学です。こうした大学が溜め込んできた原資 を教育研究経費に使うならば、学生一人あたり指標に示される教育・研究条件を改善できる でしょうが、「溜め込み体質」を変えるという転換が必要になります。
 定員を厳格に守ることで教育・研究条件の向上を実現するための財源を含めた方策が、具 体的に示されなければ「絵にかいた餅」にすぎません。

(4)すべての在籍学生に補助金を不交付にすることは過度に懲罰的 定員超過に対する補助金不交付措置は、定員割れに対する補助金不交付措置と同様に、実際に在籍している学生の補助金までも不交付とする懲罰的なものです。基本的な考え方とし て、学部の入学定員が 1,000 人の大規模大学の場合、現行では定員超過入学者数が 299 人ま では補助金が交付されるのに対し、2018(平成 30)年度からは 100 人以上の定員超過で補 助金が不交付となります。いくつか例外条件が付されてはいるものの、1,000 人以上の学生 が在籍し、教育・研究が現に行われているにもかかわらず、基準をたった 1 人でも超過すれ ば学部全体の補助金が全額不交付となることによって、それが大学側の入学人数確保策の失 敗であったとしても、しわよせを受けるのは学生です。

 以上のとおり、今般の定員超過に対する「厳格化」措置は、「地方創生」という政策目標を 実現するものではありません。また多大な財源が確保されなければ、教育・研究条件の低下 につながりかねない危険性をもっています。このように深刻な影響が見込まれるにもかかわ らず、今回の政策決定プロセスは、国会での審議もせず、私立大学関係者の意見も聴かず、 中教審での検討も行わないまま、安倍内閣が閣議決定したことを行政が実行に移している点 でも重大な問題です。日本私大教連はこれら一連の措置に対して抗議するとともに、撤回す ることを強く求めます。
 定員規模の急激なダウンサイジングを強いる今回の措置に対して、理事会には、むしろ教 育・研究条件の改善につなげるために長期的で冷静な対応が求められています。定員超過率 の「厳格化」により学納金収入が減少し続ける 3~7 年間を過ぎて、8 年後から 10 年後ほど のスパンでみれば、定員枠での学納金収入に見合う経常経費によって採算を確保することは 可能です。理事会は、使途の決まっていない金融資産を使うなどして、教育・研究条件が低 下しないよう目を配る責任があります。安易な労働条件の引き下げによって、この危機を乗 り越えるようとすることには、断固、反対します。

以上


2015年11月11日

日本私大教連、文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

■日本私大教連
 ∟●文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

2015 年 10 月 21 日
日本私大教連中央執行委員会

 文部科学省(以下、文科省)は「平成 28 年度概算要求」を 8 月に公表しました。うち、私立大学・短期大学関係予算にみられる主要な問題点を指摘するとともに、今後の予算編成においてその問題点を修正し、最大限の予算を確保するよう求めるものです。

1.私立大学等経常費補助(以下、私大助成)について

(1)文科省は 2016 年度概算要求で、私大助成予算額を、前年度予算比で 122 億円(3.9%)増の3,274 億 5 千万円要求しました。しかし、この要求額には、政府の成長戦略に合致する施策へ予算を重点化する「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、推進枠)での要望額 161 億 5 千万円が含まれており、これを除く実質的な私大助成の計上額は前年度比 39 億 5 千万円(1.3%)減の 3,113 億円となります。

 文科省は昨年度の概算要求でもまったく同様の方法で、私大助成を前年度より 41 億円(1.3%)減額し「推進枠」160 億円を上乗せして要求しました。その結果、2015 年度の政府予算では私大助成は前年度比 31 億円(1.0%)の減額となりました。しかもその内訳は一般補助が 51 億円の減、特別補助が 19 億円の増となっており、すべての私立大学等に共通の基準で配分される基盤的経費である一般補助が大幅に減額されるという重大な結果を招いています。

 そもそも政府は、私立大学等の経常費総額の 50%を補助することを目標として私大助成を開始したにもかかわらず、1980 年に補助率 29.5%に達して以降、30 年以上にわたり予算の抑制・削減を続けたため、今日ではわずか 10%程度にまで落ち込んでいます。この事実を踏まえれば、私大助成の本体部分をさらに削減し、「推進枠」に紐付けた予算で上乗せを図ろうとする文科省の手法は極めて問題です。

(2)加えて重大な問題は、「私立大学等改革総合支援事業」予算を 192 億円(前年度比 48 億円・33.3%増)と大幅に増額する要求をしていることです。この支援事業は文科省が指定した特定の「改革」に取り組む大学を選定し「経常費・設備費・施設費」を一体的に重点支援するというもので、選定大学に一般補助・特別補助を増額配分する枠組みです。前述したとおり一般補助は本来、教員数や学生数等の定量的基準により算定・配分される基盤的経費への補助であり、これに競争的な重点配分を持ち込むことは私立学校振興助成法に明示された私大助成の理念・制度を歪めるものにほかなりません。

 政府は一般補助の減額、重点配分化を即刻中止し、私立大学の教育研究基盤を強化すべく予算の増額を図るべきです。

(3)さらに、特別補助のうち各私立大学が実施している「経済的に就学困難な学生に対する授業料減免事業」への支援予算を、前年度比わずか 1 億円増の 86 億円を要求するにとどまっていることも極めて重大です。国立大学生に対する当該予算要求額が前年度比 13 億円増の 320 億円であることに比べれば、私立大学生が合理性のない不平等な状態に置かれていることは明らかです。私立大学で授業料減免を実施すれば多額の原資が必要となりますが、予算額があまりに少ないために各大学の財政余力によって減免対象者数や減免基準が左右され、大学間の格差が生じています。学生に何ら責任がないのに不公平を被っている事態は一刻も早く解消されなければなりません。

 そのためには、現行の「経済的に修学困難な学生に対する授業料減免事業」を増額するとともに、経常費補助という補助事業とは別枠で私立大学生授業料減免事業予算を計上し、私立大学の学生が国立大学の学生と同等の水準の授業料減免が受けられるようにすべきです。

2.大学等奨学金事業について

(1)文科省が今回の概算要求でも、給付奨学金の創設要求を見送ったことは重大な問題です。OECD加盟 34 カ国のうち大学学部生を対象とした給付奨学金制度がない国は日本とアイスランドのみで、大学授業料が有償でかつ給付奨学金を有しない国は日本ただ一国です。高額な授業料と過重な私費負担によって就学困難となっている若者が、私立、国公立の区別なく等しく受給できる給付奨学金制度を創設することを求めます。

(2)日本学生支援機構の奨学金事業に関しては、「有利子から無利子への流れを加速」するとして、無利子奨学金貸与人員を 49 万 8 千人(3 万 8 千人増)、有利子奨学金貸与人員を 85 万 7 千人(2 万人減)とする方針が打ち出されました。この方針は評価できるものの、給付奨学金制度が存在しない現状にあっては、教育の機会均等を保障する最低限の手段として、無利子奨学金を希望するすべての学生が貸与できるように貸与人員を抜本的に拡充し、貸与基準を緩和すべきです。

 また、無利子奨学金貸与人員が不十分であるために、私立大学は国立大学に比して無利子奨学金採用者数が少なく、残存適格者が多く存在しています。貸与人員の拡大と合わせて、予約採用制度を拡大することを求めます。

(3)所得額に応じて奨学金返済額を決定する「所得連動返還型奨学金制度」の導入を文科省が掲げて 3 年以上が経過するものの、来年度概算要求でも「導入に向けた対応の加速」にとどまっており、制度設計は遅々として進んでいません。日本学生支援機構の奨学金がローンであることにより奨学金申請を躊躇させ教育の機会均等の上で十分な役割を果たせていない現状をいくらかでも改善する上で、速やかに「所得連動返還型奨学金制度」を導入すべく必要な予算措置を行うべきです。


2015年07月08日

日本私大教連・全国代表者会議、「学問と大学を戦争に動員する戦争法案に反対するアピール」

■日本私大教連
 ∟●「学問と大学を戦争に動員する戦争法案に反対するアピール」

学問と大学を戦争に動員する戦争法案に反対するアピール

2015年7月5日
日本私大教連・全国代表者会議

 安倍政権が 5月 15日に国会に提出した「国際平和支援法」と 10本の戦争関連法案に対し、国民各層の怒りの声が高まっています。安倍首相は「平和安全法制」を標榜していますが、その内容は米国が世界で行なう戦争に際して、いつでも・どこでも・どんな戦争でも、自衛隊が支援・参加するための「戦争法案」にほかなりません。たとえそれが「後方支援」であっても、国際法上の観点からは戦争当事国になるのは周知のことです。戦闘地域に派遣される自衛隊員等の身に危険が及ぶだけでなく、国民がテロの標的となる危険性を増幅させるものです。

 6月 4日の衆議院憲法審査会では、自民党推薦も含む 3名の憲法学者が全員、法案を「違憲」とする意見を述べました。200名を超える憲法学者が廃案を求める声明を上げ、「安全保障関連法案に反対する学者の会」のネット署名に賛同する学者・研究者は 1万人に迫ろうとしています。連日の国会前行動への参加者は日増しに増え、学生・若者たちの反対運動も全国各地で展開されています。

 しかし安倍政権は、こうした反対世論を無視し、法案成立を強行する構えを崩そうとしません。95日間という会期大幅延長を強行決定し、7月半ばにも衆院を通過させようとしています。戦争法案を違憲と批判する世論の高まりに対し、安倍首相は「世界情勢の変化にあわせて憲法解釈を変えるのは当然」などと強弁を重ねています。立憲主義を公然と否定し、学問研究を愚弄する安倍政権の姿勢は、体制を批判する学問や言論を弾圧して破滅への途をひた走った戦前の軍国主義国家を彷彿とさせるものです。

 戦争法案は、若者・学生を再び戦場に駆り出し、国民の生命と安全を危険に晒すとともに、学問と大学を戦争に動員する亡国の法案にほかなりません。私たちは、大学の教育・研究と学生たちを守るために、安倍政権が狙う 7月中旬の衆院採決を阻止し、廃案をめざすたたかいに総力を尽くす決意を示すとともに、私立大学で働くすべての教職員のみなさんに、このたたかいに参加されることを心より呼びかけます。


2015年06月04日

東京私大教連、労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

東京私大教連
 ∟●労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

労働者派遣法改正案の廃案を要求する声明

東京私大教連中央執行委員会
2015年5月30日

 現在、労働者派遣法改正案(以下、改正案という)が国会で審議されています。改正案は、昨年の通常国会と臨時国会に提出され、国民の反対のなか2度とも廃案になっており、今回で3度目の法案提出です。同じ内容の法案を3度も国会に提出し成立をめざすこと自体、議会制民主主義制を踏みにじる暴挙です。

 労働者派遣制度は、「臨時的・一時的なものに限る」「常用雇用の代替を防止する」ことを原則として、職業安定法の例外として認められてきた制度です。この原則があるため、現行法でも、企業がおなじ業務で派遣を使えるのは原則1年間、最長でも3年間に制限されています。ところが今回の改正案は、企業が派遣労働者を受け入れることができる制限を、例外としてきた専門業務の区別とともになくして、企業がどの業種でも何年でも派遣労働者を受け入れられるようにするものです。したがって、企業は派遣労働者を3年で「取り換える」だけで、永続的に派遣労働者を受け入れ、使用できるようになります。改正案は、常用代替防止の原則を投げ捨て、派遣労働者の不安定さはそのままに、企業が事実上、期間の際限なく派遣を受け入れ続けることができるようにするものです。

 また、改正案の施行期日を 2015 年 9 月 1 日と定めていますが、これは、2015年10月1日から施行される現行の労働者派遣法の「労働契約申し込みみなし制度」の適用回避をねらう財界の意向を受けたものです。現行法における「労働契約申し込みみなし制度」は、派遣労働者の派遣可能期間の違反など違法派遣があれば、派遣先企業が労働者に直接契約を申し込んだとみなす制度で、労働者を救済するために設けられた規程です。しかし、今回の改正案が成立すると、派遣期間の制限や業務規則が撤廃されるため、この制度の適用がほとんどなくなることが予想されます。このような救済の規程を、施行が迫った 1 ヵ月前に改変することは、適用回避のためと解さざるを得ず、到底許されることではありません。

 改正案は、直接雇用を減らし、企業の都合で労働者を使い捨てにできる不安定雇用を蔓延させるもので、生涯派遣を強要し、正社員をゼロにする日本の雇用を破壊する重大な法案です。私たちは次世代の労働者を教育する私立大学の教職員組合として、このような雇用不安に満ちた社会へと若者を送り出す事はできません。労働者派遣法案廃案を強く求めます。

以 上

東京私大教連、学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

東京私大教連
 ∟●学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

2015年5月29日
東京私大教連中央執行委員会

 安倍内閣は、5月 14 日に「国際平和支援法案」ならびに「平和安全法制整備法案」を閣議決定し、翌 15 日に国会に提出しました。これらは、昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定にもとづいて、アメリカが世界中で行う戦争に対し、自衛隊がいつでもどこでも支援・参加することを可能とする「戦争法案」にほかなりません。憲法9条のもとで戦後の日本が貫いてきた、海外で再び戦争をしないという外交の原則を覆す暴挙であり、私たちは断じて容認できません。

 「国際平和支援法案」は、新たな立法なしに多国籍軍等の戦争を自衛隊が随時支援できるようにするための恒久法です。また、「平和安全法制整備法案」は「存立危機事態」の定義を定め、日本が他国の攻撃を受けていなくても戦争に参加する集団的自衛権行使を可能とする法律です。周辺事態法などによる地理的制約も撤廃され、PKO 活動の際の「駆けつけ警護」も認められ、武器使用要件も緩和されるなど、自衛隊の活動内容は従来とは比較にならないほど大幅に拡大します。安倍首相は閣議決定後の記者会見で、自衛隊の任務拡大に伴う人命リスクについて、「自衛隊発足以来、1800 名が殉職している。災害においても危険な任務が伴う」と論理をすり替え、さらに 5 月 26 日の衆議院本会議では自衛隊員の「リスクは残る」と答弁し、戦後初の「戦死者」が出るリスクを否定しませんでした。

 日本国民は戦後、絶えず「戦争する国」であった戦前国家への痛切な悔悟に立ち、「平和のうちに生存する権利」の確立をめざして、憲法9条のもとで平和国家の道を歩み続けてきました。しかし、5月20 日の党首討論における安倍首相の「ポツダム宣言をつまびらかには読んでいない」という発言からも明らかなように、今回の法案は過去の日本の戦争が間違った侵略戦争であったと認めない歴史認識に淵源しています。このような歴史認識は、極東軍事裁判の受諾を明記したサンフランシスコ講和条約そのものを否定し、日本が国際社会から孤立することにつながります。外務省が発行するパンフレット『日本の安全保障政策―積極的平和主義』は、日本への具体的な「脅威」として北朝鮮と中国を挙げていますが、これらの近隣諸国に対してこそ公式・非公式のパイプを通じたあらゆる外交努力を積み重ねていくべきであり、そのためには、日本政府が歪みのない歴史認識を表明することで、「脅威」を緩和していくことが先決です。戦後 70 年談話について、侵略戦争と植民地支配への反省と謝罪を盛り込まないと表明している安倍政権が強行成立させようとしている「戦争法案」こそ、日本の「平和と「安全」に対する最大の「脅威」にほかなりません。

 新聞各社の世論調査でも、法案の今国会成立に対しては「反対55%・賛成25%」(日経)、「反対54%・賛成32%」(毎日)と、国民の圧倒的多数は反対しています。しかし、こうした国民世論に反して、安倍首相は閣議決定に先立って訪米し、4月29日の米議会演説で「夏までに必ず成立させる」と表明しました。国会審議どころか閣議決定さえ経ていない法案の成立を外国議会に約束するなど、議会制民主主義を愚弄し、日本国民の主権を他国に売り渡す行為として厳しく断罪されなければなりません。私たち私立大学教職員は、日本が再び戦争国家への道を歩み、学生・若者を戦場に送り出すことを容認することはできません。私たちは、今回の「戦争法案」を廃案とするよう強く求めます。また、広範な市民・団体との連帯と共同の上に立ち、平和憲法の理念を徹底して擁護する運動に全力で取り組むことを表明します。

以 上

2015年05月11日

日本私大教連、声明「政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する」

日本私大教連

(声明)政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する

2015年5月8日
日本私立大学教職員連合中央執行委員会

 安倍総理大臣は2015年4月9日の参議院予算委員会で、国立大学における国旗・国歌の取り扱いについて、「税金によって賄われているということに鑑みれば新教育基本法の方針に則って正しく実施されるべき」との見解を示し、これを受けて下村博文文部科学大臣は「各大学で適切な対応が取られるよう要請していきたい」と答弁しました。下村大臣は翌日の記者会見でも「国立大学の学長が参加する会議等において要請することを検討している」と述べています。

 言うまでもなく国旗・国歌に対しどのような態度はとるかは個人の思想・良心の自由に関わる問題です。こと戦前戦中に「日章旗」「君が代」が国民統制と侵略戦争遂行に利用されたことにより、国の内外を問わずこれに抵抗を感じる市民が少なからず存在することは厳然たる事実です。そのため、国旗国歌法案の審議過程や、義務教育の現場への強制をめぐる国旗・国歌訴訟などにおいてさまざまな論争が行われ、それは今日においても本質的決着をみていません。

 今回の安倍総理の答弁は、教育基本法(2006年改正)の第2条第5項「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」を前提にしたものと思われますが、それを根拠に大学の入学式等で国旗掲揚・国歌斉唱を実施すべきとする主張はあまりに短絡的です。さらに、教育基本法の第7条第2項「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」という規定を全く無視し、税金を投入しているのだから政権方針に従うことが当然だと言わんばかりの答弁はきわめて乱暴です。とうてい容認することはできません。

 下村大臣は「要請」にすぎないから問題はないと弁明していますが、「税金投入」を盾にした「要請」が実質的圧力となることは明らかです。そしてその圧力はいずれ私立大学にも及ぶでしょう。大学という自由聞達に教育・研究を行うことを使命とする機関に対し、政府権力を行使して「国旗掲揚・国歌斉唱」を強要することは、「学問の自由」「思想信条の自由」並びに「大学の自治」の息の根を止めようとする暴挙です。 日本私大教連は、「学問の自由」「大学の自治」を担う教職員組合として、国立大学に対する国旗・国歌「要請」方針に対し断固抗議し、その撤回を強く求めます。


2015年04月18日

日本私大教連、北星学園大学と同大学非常勤講師への脅迫事件に関する声明

日本私大教連

北星学園大学と同大学非常勤講師への脅迫事件に関する声明

2015年4月10日 日本私大教連中央執行委員会

 従軍慰安婦に関する朝日新聞社の「誤報問題」に端を発した、北星学園大学非常勤講師(元朝日新聞記者)への匿名勢力による執拗な攻撃と人権侵害は今も続いています。昨年10月に容疑者が逮捕された後も、今年 2 月には入試で受験生に危害を加えるとの新たな脅迫が行われました。こうした状況のなか、卑劣な脅迫には屈しないという大学関係者の決意と努力により、同大学が無事入試日程を終え、新年度を迎えたことに、私たちはひとまずの安堵を覚えるものです。
 しかし事態は深刻です。昨年、関西の2大学では同様の脅迫行為により、元朝日新聞記者が採用を取り消され、また「自主退職」に追い込まれました。広島大学では従軍慰安婦に関する映像を用いた講義に対し、国会でのバッシングを含め陰に陽に執拗な攻撃が加えられました。これらは一部マスメ ディアも加担した「言論テロ」というべきものであり、到底看過できるものではありません。とりわけ先の侵略戦争に関わる歴史認識や憲法改正、辺野古の新基地建設や原発再稼働などをめぐり政治と市民が鋭く衝突する場面において、意にそぐわない言論・表現への暴力的な攻撃がネット空間から実社会に浸潤し、学問の自由や言論・表現の自由を脅かしつつあります。また、政権政党による報道機関への圧力や、過激テロ集団 ISIL による邦人惨殺事件に際し「非常時に政権批判すべきでない」と の高圧的キャンペーンの影響により、マスメディアに自粛や忖度の「空気」が広がりつつあります。
 こうした社会状況は、現政権の政治姿勢と深く関わって出現しています。安倍政権は発足以来、近隣諸国との緊張緩和の努力を怠たる一方、卑劣な言論攻撃や社会的弱者や外国籍の人々を標的とした ヘイトスピーチを放置し、言論の萎縮を利用して日本の軍事国家化などの政策を推進しています。特定秘密保護法制定の強行(2013年12月)、「武器輸出三原則」の廃棄(2014年4月)、集団的自衛権の行使を認める閣議決定(2014年7月)、「文民統制」を撤廃する防衛省設置法改正案の国会提出(2015年3月)などを矢継ぎ早に強行し、いままさに集団的自衛権行使を具体化する関連法令改正を強行すべく準備を進めています。
 しかし、言論・表現の自由への圧力を跳ねのけようという人々の声も大きく広がりつつあります。北星学園大学への脅迫事件をめぐっては、作家の池澤夏樹さんらが呼びかけ人となった「負けるな北星!の会」の活動等に励まされ、大学は同講師の雇用継続を決定し、脅迫に屈せず大学の自治を守る姿勢を貫きました。このことは、私たち大学関係者が団結と連帯を深め、卑劣な攻撃を跳ね返してい くことの大切さを示しています。
 私たちは、学問と教育の多様性と自由を担う私立大学に働く教職員として、現在の日本社会を覆っ ている憎悪と排除の連鎖と拡大を傍観することはできません。物言えぬ大学では、この国の将来を担う創造的な人間は育ちません。日本私大教連は、私立大学に自治と学問の自由を確立するために、不当な社会的圧力とたたかう決意をここに表明します。


2015年02月01日

日本私大教連、声明「私大助成を大幅に削減する 2015 年度予算案に強く抗議する」

日本私大教連
 ∟●声明「私大助成を大幅に削減する 2015 年度予算案に強く抗議する」

私大助成を大幅に削減する 2015 年度予算案に強く抗議する
教育費負担の軽減と私立大学の健全な発展に資する私大助成予算の拡充を!

2015 年 1 月 27 日 日本私大教連中央執行委員会

 さる 1 月 14 日に閣議決定された 2015 年度予算案で、私立大学等経常費補助(以下、「私大助成」)は、前年比でマイナス 31 億円(-1.0%)となる 3153 億円が計上されました。私大助成の総額は、2006 年度の 3313 億円をピークに、第 1 次安倍政権が閣議決定した「骨太方針 2006」の「5 年連続 で対前年比 1.0%削減」を進めるという方針の下で 3 年連続の削減が行なわれてきました。その後、 民主党政権の下でも小幅な削減が行なわれる中、今回の大幅な削減が再び実行されることになれば、 2007 年度からの 9 年間で合計 160 億円もの私大助成が削減されることになります。
 最も重大な問題は、4 年連続で一般補助が削減されていることに加えて、これまでの削減額を大き く上回る 51 億円もの減額がされている点です。一般補助は、教員数や学生数など定量的な基準によ って決定されるものであり、全ての大学・短大に関係する私大助成の根幹を成すものですが、今回の 予算案はこの重要な一般補助を大幅に削減する一方、予算の重点配分化をいっそう推進しようとする 安倍政権の姿勢がより鮮明になっています。この予算案は日本の高等教育の 8 割を占める私立大学の 教育を衰退させるものに他なりません。
 特に、予算の重点配分化と関連して、今回新規に計上(45 億円)されている「私立大学等経営強化 集中支援事業」(特別補助)は、各私大のあり方に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。この事業 は、概算要求の段階では「三大都市圏以外の収容定員 2000 人以下の私大を対象に、『経営改善』の取り組みを点数化し、上位 250 大学を採択」するものとして計上され、具体的内容として「定員充足率 80%以上の大学等では経費の効率化、学部・学科・研究科の再編等を支援」する、「充足率 80%未満 の大学等では実効性ある中長期的な経営改善を支援」することが打ち出されていました。今後 18 歳 人口の急減期を迎える下で、経営状況の悪化に直面する各大学が文科省の設定する「経営改善」策に 従わざるを得ないような状況になりかねません。
 学生の経済的負担軽減に関する予算では、前年度に引き続き「無利子奨学金の貸与人員の増員」が 図られ、貸与人員を 44 万 1 千人から 46 万人へ引き上げるとともに、「貸与基準を満たす年収 300 万 円以下の世帯の学生等全員への貸与を実現」する方針が明示されました。これは、私たちが学生・父 母の切実な願いを踏まえて、奨学金は「せめて無利子を主とすべき」という要求を繰り返し訴えてき た成果といえますが、実質的な予算の増額をともなう「給付型奨学金制度」の創設は棚上げにされた ままです。また、本格的な「所得連動返済型奨学金制度」の導入についても、「対応を加速」するとい う表現にとどまっており、経済的な理由で高等教育を受ける権利が侵害されている実状は認めつつも、 その早急な解決を図ることについては曖昧にしています。
 さらに、各大学が実施する授業料減免事業等に対する支援についても、前年度より増額計上(3 億 円増)されているものの、減免の対象人数はわずか 3 千人増(約 3.9 万人から約 4.2 万人)にとどま っています。しかも、授業料減免事業等に対する支援予算が増額されても、私大助成そのものが大幅 に削減される下では、各大学の財政状況の制約を受けて必要な減免事業を実施することは不可能です。
 日本私大教連は政府・文科省に対し、教育費負担の軽減を切実に願う学生・父母の思いに応える給 付型奨学金制度の創設をはじめとした予算措置を図るとともに、各大学の個性や多様性を損なうこと なく、地域社会を支える私立大学の健全な発展に資する一般補助の増額を基本として、私大助成を拡 充することを強く求めるものです。


2014年12月12日

日本私大教連、2014総選挙に向けた公開質問と各党の回答

日本私大教連
 ∟●2014総選挙に向けた公開質問と各党の回答

2014総選挙に向けた公開質問と各党の回答

日本私大教連中央執行委員会は、衆議院選挙に向けて、私立大学・短期大学に関する基本的政策について大きく5つの分野の7項目に絞り各党に対し公開質問を行いました。11月26日付で各党に質問状を送付し、12月9日現在で自民・共産・公明・社民・生活・民主の6党から回答がありました(回答のあった順)。
以下、質問事項をクリックすると回答一覧を見ることができます。

【質問1】 私立大学等経常費補助の拡充について

 私立大学の経常費に対する国庫補助である私立大学等経常費補助は、1975年の私立学校振興助成法制定時の参議院附帯決議において、経常費の2分の1補助を速やかに達成することが要請されたにもかかわらず、実際の補助率は1980年の29.5%をピークに減少の一途をたどり、2012年度にはわずか10.4%にまで落ち込んでいます。政府は「基盤経費を確実に確保する」と枕詞のように述べていますが、予算削減に歯止めがかかりません。私立大学等経常費補助の拡充について、貴党のお考えをお示しください。

【質問2】 公的奨学金制度の拡充について

①給付型奨学金の創設について

 文部科学省は2012(平成24)年度予算概算要求において、大学生を対象とした給付型奨学金を初めて計上しました。しかし制度創設はしりぞけられ、それ以来、文科省は概算要求で給付型奨学金の予算要求を行っていません。ご案内の通り、OECD加盟国で高等教育の授業料が有償でかつ給付型奨学金制度を整備していないのは日本のみであり、国際的にみても非常に後進的です。大学生を対象とした給付型奨学金制度の創設について、貴党のお考えをお示しください。

②無利子奨学金の大幅拡大について

 日本育英会法(1984年)および独立行政法人日本学生支援機構法(2003年)制定時の国会附帯決議はいずれも、無利子奨学金を根幹または基本とすることを求めていました。政府は2012(平成24)年度予算においてようやく無利子奨学金の大幅な拡大方針を打ち出し、2013年度予算では有利子奨学金が制度創設以来はじめて縮減に転じました。しかし、2014年度予算においても貸与人員は無利子44万1千人、有利子95万7千人と、なお有利子奨学金が主となっています。無利子奨学金の貸与人員を大幅に拡大することについて、貴党のお考えをお示しください。

③無利子奨学金の私立国立間格差の是正について

 現行の無利子奨学金の採用状況には、私立大学と国立大学の間に大きな格差があります。例えば、入学者数に占める無利子奨学金採用人数の割合は、私立大学では12.2%であるのに対し国立大学では20.7%と1.7倍もの開きがあります(2012年度)。このため私立大学では、貸与基準に合致していても無利子奨学金を受給できないことが珍しくありません。このような格差を生じしめる合理的根拠はまったくなく、早急に解消すべきものと考えます。無利子奨学金の採用における私立国立間の格差について、貴党のお考えをお示しください。

【質問3】 各大学が実施する授業料減免事業に対する公財政支援について

 経済的に就学困難な学生を対象として各大学が実施している授業料減免等に対して、政府は私立大学に対しては経常費補助を通じ、国立大学に対しては運営費交付金を通じて、財政支援を行っています。しかしその額には私立国立間で非常に大きな格差があります。2014年度予算では、私立大学に57億円(対象学生数約5.4万人)、国立大学には254億円(同約5.0万人)が計上されています。私立大学と国立大学の学生数の比率(77:23)に鑑みれば、極めて重大な格差が政策的に設けられていると言わざるを得ません。経済的困難を抱える学生に対する支援という意味では、私立も国立も同等であるべきです。授業料減免事業に対する私立大学への支援を大幅に引き上げることについて、貴党のお考えをお示しください。

【質問4】 高等教育の漸進的無償化について

 日本政府は2012年9月11日付で、国際人権規約社会権規約第13条2項c(いわゆる高等教育の漸進的無償化条項)に対する留保を撤回しました。これにより政府は「無償教育の漸進的な導入」に向けた具体的な政策立案・実施の責務を負うこととなりました。高等教育の漸進的無償化に関する具体的施策について、貴党のお考えをお示しください。

【質問5】 学校教育法の改正に関して

 本年6月に成立した改正学校教育法は、これまで教授会が果たしてきた役割を否定するとともにその権限を縮減し、大学自治を大きく侵害するものと私たちは考えています。今般の学校教育法改正について、貴党がどのようにお考えになっているかお示しください。


2014年11月14日

東京私大教連、大会決議「すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議」

東京私大教連
 ∟●第38回定期大会決議(2014年11月8日)
  ∟●すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議

すべての大学で真の「学問の自由」「大学の自治」を保障することを求める決議

1.安倍政権は 2014 年6月 20 日、学校教育法と国立大学法人法の改正法案を、審議を尽くさないまま 可決成立させました。さらに、文科省が8月 29 日に発出した同法の施行通知は、法律および国会審 議をも逸脱し、学問の自由と大学の自治に対する不当な攻撃を加えています。
 憲法 23 条が保障する学問の自由とは、大学においては、東大ポポロ座事件最高裁判決(1963 年) が示すとおり、「教授その他の研究者がその専門研究の結果を教授する自由」、「大学の講義または演 習において教授する自由」を含意しています。このような自由が担保されるためには、各教員が大学 の意思決定に関して研究者、教育者の立場から主体的に参加する制度が必要であり、だからこそ、「大 学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている」のです。
 それに対し、施行通知は、大学の自治の保障は「教育研究に関する大学の自主的な決定を保障する もの」と説明します。もちろん、組織としての大学の自主的な決定が保障されていることは、大学の 自治が成り立つために必要ですが、上記最高裁判決も明らかにしているとおり、それだけでは大学の 自治が保障されたとは言えません。

2.私立大学における大学の自治は、国家権力等からの自治とともに、設置者(学校法人)からの自治 が保障されて初めて実現されるものです。個々の研究者が自己の学問的研究に誠実であるために学問 の自由の保障が必要とされるのですから、大学の学長や理事長・理事会の恣意的な判断が教員や学生 の自由な真理探究を阻害することがあってはなりません。
 ところが施行通知は、「私立大学においては、私立学校法第 36 条により、設置者である学校法人が その運営についての責任を負い、理事会が最終的な意思決定機関として位置づけられている」とし、 教学に対する理事会の権限を強調しています。しかし、私立学校法にそのような規定はありませんし、 今回の学校教育法改正とも一切関係がありません。
 一部の学校法人では、創立者一族や理事長による私物化と専断的な学園経営・大学運営が行われて います。こうした学校法人においては、教授会は教学事項に関しても審議権・決定権を奪われ、学長 は理事長が任命するか、もしくは理事長が兼任するなど、非民主的な管理運営がなされており、不祥 事の多くはこうした大学において発生しています。施行通知が、「学校法人自らが学長選考方法を再 点検し、学校法人の主体的な判断により見直していくこと」と述べるなど、改正法が要求しない私立 大学の組織・運営に言及していることは、大学の自治の理念を著しく矮小化しようとするものであり、 重大な問題です。

3.研究者が自己の学問的信念と責任に基づいて自由に議論し合う場が確保されることは、学術の健全 な発達にとって欠かすことできない条件です。今私たちが学問研究に励むことができるのは、過去の 学問的探究の成果を受け継ぎ、様々な困難を乗り越えて、真理探究のために忌憚のない議論を闘わせ、 切磋琢磨して発展させてきた先人たちの努力の賜です。学術の中心である大学に働く私たちは、単に 先人たちの成果を享受してそれに安住するだけでなく、学問をさらに発展させ、その営みを未来の研 究者、教育者、学生たちへと受け渡し、彼らが安心して創造的な学問研究と教育に専心できる条件を 整える責務を担っています。その責務の大きさを顧みるならば、政府・財界が「大学の自主的な判断」 というベールをまといつつ、様々な形で大学での研究教育に介入しようとしていることを断じて容認 できません。
 私たちは、今回の学校教育法と国立大学法人法の改正に改めて抗議するとともに、政府・文科省に対 し、すべての大学に真の「学問の自由」と「大学の自治」を保障するよう強く求めます。
以上、決議します。

2014 年 11 月 8 日
東京私大教連第 38 回定期大会

2014年07月01日

東京高等教育研究所公開シンポジウム、「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」

東京私大教連
 ∟●東京高等教育研究所公開シンポジウム、「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」

東京高等教育研究所 公開シンポジウム
「グローバル競争の敗退に向かう日本の大学-大学解体に走る政府の政策を批判する-」


今、教授会の自治を圧殺する学校教育法「改正」案が国会に提出されている。この間の「大学改革」の集大成ともいえる攻撃である。しかし攻撃のねらいは単に大学を政府や財界の言いなりにすることで終わるのではない。むしろこれからが本格的な「改革」である。それは大学を財界のめざす「イノベーション」の推進組織として全面的に動員することをねらっている。
それは政府の意図のとおり成功するかという点ではきわめて疑わしい。これまでの「改革」によって大学は少しでも良くなったのだろうか。「改革」に追われ教職員の業務はますます増えるばかりで、学生はアルバイトに追われ学修をする余裕すらない。いわゆる「改革疲れ」を政府の政策でも認めざるを得ないのが現状である。国際競争力を高めるといいながら、日本の大学を世界水準からますます遠ざけるものとなっている
こうした日本の大学政策は世界の動向と真っ向から対立することをはっきりとらえなければならない。また日本の国民と社会の期待するところとは全く異質である。このシンポジウムでは現在進行している政府と財界の大学政策が世界の中でいかに異質なものとなっているかを明らかにし、大学関係者が国民とともに進むべき真の大学改革の課題を考えたい。

日 時 7月12日(土) 受付 13:30 開会 14:00 閉会18:00

会 場 明治大学リバティタワー 12階 1125 教室

報 告(仮題)

報告1 大学政策の現段階―教授会自治の封じ込めとイノベーション政策―
蔵原 清人 事務局長 (工学院大学)
報告2 経営大学院にみる大学政策の世界的動向と日本
山口 不二夫 第4部会責任者 (明治大学)
報告3 政府予算と私立大学補助金政策の変遷
山賀 徹 第4部会研究員 (東京私大教連書記次長)
主 催 東京高等教育研究所 ○ 参加費無料
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場 2-5-23 第1桂城ビル 3F 東京私大教連内
TEL 03-3208-8071 FAX 03-3208-0430 / Email:kakizaki@tfpu.or.jp (事務局直通)

*FAX:参加申込用紙(記名欄)は、「裏面」にあります。 ご利用ください。

2014年06月12日

2014年度学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

北海道私大教連
 ∟●2014年度学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

2014年度 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

【請願趣旨】
現在、私立大学・短大(以下、私立大学)には、大学生・大学院生全体の約75%にあたる約225万人が学んでいます。私立大学は我が国の大学進学率の向上を支え、全国各地で多様な教育・研究を担い、日本の高等教育において大きな役割を果たしています。
しかし政府は、30年以上にわたり私立大学への補助(以下、私大助成)を削減し、非常に低い水準に抑え込んできました。国の大学への予算を学生一人当たりに換算した額は、2013年度で国立大学が185万円であるのに対して、私立大学はわずか14万円、国立大学の13分の1でしかありません。私大助成があまりに低いために、私立大学の学費は国立大学の1.6倍と高額で、初年度納付金は平均132万円にものぼります。そのうえ公的な奨学金制度はすべて貸与制であるため、卒業後の返済困難者を大量に生み出すなど深刻な問題に直面しています。私立大学生と保護者にとって学費負担は非常に重く、学生の多くが学費や生活費を捻出するためのアルバイトに追われています。また私立大学では、教員一人当たりの学生数が国立大学の3倍近くにのぼるなど、教育環境の整備も遅れています。さらに、地方・中小規模の私立大学を中心に経営状況の悪化が広がっており、教育・研究を支える基盤そのものが揺らぎ始めています。
政府が私立大学の学費負担を学生と家庭に押し付け、同時に国立大学の予算も削減してきたために、我が国の高等教育費支出は国際的にみても極端に低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低水準です。OECD加盟34ヵ国のうち32ヵ国が給付型奨学金制度を有しており、17ヵ国は大学授業料が無償です。授業料が有償で、公的奨学金がすべて貸与制という国は日本以外にありません。日本は世界で学費負担が最も重い国となっています。その結果、「教育を受ける権利」「教育の機会均等」が憲法で保障されているにもかかわらず、経済的理由で大学で学ぶことを断念せざるを得ない若者が後を絶ちません。
学費負担の軽減を求める世論の高まりの中で、政府は2012年、国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を受け入れる決定を下しました。これにより政府は、大学の学費無償化に向けて段階的に学費負担を軽減するための具体的な施策を実施する責務を負うことになりました。
学生・保護者を含むすべての私大関係者は、私立大学の過重な学費負担が一刻も早く軽減されること、私立大学の教育・研究条件が改善・充実され質の高い学びが保障されることを切に願っています。以上のことから、次の各項の施策を実現することを請願します。

【請願事項】
1.私立高校生への学費助成と同様に、私立大学生への学費助成制度を新設してください。
2.大学生を対象とした給付型奨学金制度を創設してください。
3.無利子奨学金を希望者全員が受給できるようにするとともに、奨学金の返済額を卒業後の所得額に応じて決定する制度を創設してください。
4.すべての私立大学で、経済的に修学困難な学生に、授業料減免などの支援を実施できるよう補助を拡充してください。
5.私大助成は、私立学校振興助成法制定時の参議院附帯決議に従って、私立大学の経常的経費の2分の1を補助するよう速やかに増額してください。

以上


2014年03月18日

日本私大教連、「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望

日本私大教連
 ∟●「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望

「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望


2014年3月7日
日本私立大学教職員組合連合
(日本私大教連)


 文部科学省は、今通常国会に「私立学校法の一部を改正する法律案」(以下、改正案)を提出しました。今般の法改正は、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会(以下「学校法人分科会」)の報告書「解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方について」(2013年 8月)を踏まえ、「重大な問題のある」学校法人に対して所轄庁が「適切な対応」を講じることができない現行制度を改め、解散命令に至るまでに段階的な措置を講じられるようにするというものです。
 上記報告書は、2013 年 3 月 28 日に文部科学大臣が解散命令を出した群馬県の学校法人の事例を受けて検討されたものです。同学校法人の理事長・学長をはじめとする理事者は、学校法人に求められる公共性を無視し、評議員会や監事のチェック機能や教育研究に関わる教授会の権限を形骸化して専断的運営を行い、乱脈経営と法令違反を繰り返した挙句に破たんに陥りました。こうした事態を招いた根本的な原因は、現行の私立学校法があまりに大きな裁量権を理事会に付与し、内部のチェック機能をたやすく形骸化できる仕組みとなっていることにあります。解散命令を受けた学校法人の事例は突出して深刻なものですが、少なくない学校法人で一部理事者が恣意的な運営を行い、投機的資産運用による巨額な損失、不正入試、各種申請書類への虚偽記載など、さまざまな不祥事を引き起こしています。しかし今般の改正案は、私立学校法の根本的な問題にはまったく手をつけず、所轄庁の行政権限だけを強化する内容となっており、非常に問題です。
 私立学校は、幼稚園から大学までの全教育段階において公教育の一端を担う重要な教育機関です。とりわけ私立大学は学生の約 75%を担うわが国の主要な高等教育機関であり、私立大学を設置・運営する学校法人の公共性を高めるための法整備を行うことは、私立大学の教育研究の質を向上させる上で不可欠の条件です。そのためにもっとも必要とされることは、学校法人に「重大な問題」を生起させないための法改正です。私たちは、今回の私立学校法改正案ならびに国会審議について以下事項を要望するものです。

1.理事会による不適切な管理運営や不祥事を未然に防止できるよう、理事会に対するチェック機能が正常に働くよう法改正を行うこと。
 学校法人の「重大な問題」を未然に防止するためには、学校法人自身のチェック機能が正常に働くように私立学校法を改正することが必要です。日本私大教連は 2013 年 7 月に『日本私大教連の私立学校法改正案―私立大学の公共性と教育・研究の質を高めるために―』を発表し、文部科学省に要請を行いました。そこでは、公正に役員(理事長、理事、監事)を選任するための改正、理事会の成立と議決要件の厳格化、監事制度の改善、理事会に対する評議員会のチェック機能を高めるための改正、財政情報の公開に関する改正等について、全23 項目にわたる具体的な法改正を提起しています。
 2006 年の公益法人制度改革では、例えば社団法人・財団法人の社員や評議員に理事の法令定款違反行為に対する差止請求権や会計帳簿閲覧請求権を与えるなど、公益法人の運営を健全化するための規定が新たに設けられました。しかし私立学校法には、このような規定は設けられておらず、公益法人制度の水準に比して大きく立ち遅れています。所轄庁の行政権限の強化の前に、すべての学校法人が守らなければならない管理運営のしっかりとしたルールを私立学校法に明記することが必要です。
 今回の改正案は、学校法人が法令に違反しているときに、「違反の停止」などの必要な措置をとるべきことを命令できるとしています(第 60 条)。しかし、不祥事の温床となっている私立学校法の不備を放置したままでは、私立学校法違反にもとづく措置命令が学校法人の不適切な運営を正すものとはなり得ません。そのためには、『日本私大教連の私立学校法改正案』にもとづき、学校法人の「公共性」を担保できる管理運営の仕組みを確立する法改正が必要です。

2.改正案第 60条 1項「その運営が著しく適性を欠くと認めるとき」ならびに「その他必要な措置」について、その具体的内容を法定すること。
 所轄庁が、学校法人の「運営が著しく適正を欠くと認めるとき」に措置命令を行えるとする規定は極めて曖昧であり、所轄庁の行政権限の濫用につながる惧れがあります。法案は、措置命令を行おうとするときは「あらかじめ、私立学校審議会等の意見を聴かなければならない」としていますが、所轄庁やときどきの審議会委員の判断で「著しく適正を欠く」水準が左右される危険性はぬぐえません。今国会で行政権限の強化を先行させる法改正を行うのであれば、何が「適正を欠く」ことに該当するのかを法令に明示すべきです。
 「その他必要な措置」についても同様です。所轄庁が学校法人に対して「違反の停止、運営の改善」以外にいかなる措置を命令することを想定しているのかを法令に明示すべきです。

3.今国会において十分な時間を取って審議を行うこと。
 私立学校法の水準が、我が国の高等教育において主要な役割を担っている私立大学に大きな影響を及ぼすことに鑑み、今般の私立学校法改正案について、現行法の問題性、今後の改正方針等を含めて十分な審議を行うことを求めます。

以上

2014年03月17日

京滋私大教連、大学の組織運営とは相容れない トップダウン型の「ガバナンス改革」に断固反対する

京滋私大教連
 ∟●第58回臨時大会特別決議

【大会特別決議】

大学の組織運営とは相容れない
トップダウン型の「ガバナンス改革」に断固反対する


 政府・文科省は、中教審大学分科会組織運営部会の審議を受けて、学校教育法「改正」案を今通常国会中に提出するとしています。具体的には、大学の「ガバナンス改革」の一環として、教職員による学長選挙(意向投票)の廃止を含む「学長選考方法の見直し」、学長を補佐する「統括副学長」や「高度専門職」の導入などとともに、学校教育法第 93 条の教授会が審議する「重要な事項」の範囲を「①学位授与、②学生の身分に関する審査、③教育課程の編成、④教員の教育研究業績等の審査等」に限定し、学部長の選出など教員人事にかかわる教授会の権限を見直すことを主たる内容としています。こうした内容は、大学の自治の根幹に対する政治権力の重大な介入であり、私たちは断じて容認することはできません。

 学問・研究は、自由な精神により既存の価値や社会のあり方を批判的に検証し、真理や普遍を追究する人間的営為であり、学問の府たる大学は、その時々の政治的・経済的・宗教的な圧力に対して、自律すなわち自治を確立してきました。学問の自由と大学の自治は、そうした本質と歴史的な経緯に根差すものであり、それゆえ専門的同僚教員から構成される教授会(教員組織)が大学の自治を担う中心的な役割を果たしてきました。

 戦後、日本は日本国憲法第 23 条で「学問の自由」を保障し、そのために「大学の自治」が保障されていると考えられてきました。現行の学校教育法第 93 条 1 項で「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定し、教育公務員特例法が学長や学部長の選考、教員の人事を教授会の審議に委ねたことは、そうした憲法上の大学の自治と教授会の関係を法律で具体化したものでした。

 このような理念と法的枠組みは、各大学の「特性にかんがみ、その自主性を重んじ」、「公共性を高めることによって…健全な発展を図る」(私立学校法第 1 条)ことを目的とした私立大学にも当然共通するものです。まして、国公立大学に比して極めて低い水準に抑制された公費補助の下、大学生の 75%を受け入れる私立大学で教育・研究の水準を支えているのは、学問の自由に支えられ、高度の専門性を有する教員集団であり、教授会の自治という法的な枠組みです。そして、その枠組みの下で教員と職員が協働し、学生の学びと成長を保障して、日本社会を支える有意な市民を数多く輩出してきたのです。

 学長・学部長の選考や教員の採用・昇任等は、学部(教員組織)の教育方針や教育内容、さらには個々の教員の研究内容などと密接に関係するものです。しかし、今回政府・文科省が行おうとする法改正は、一部の大学・学園において、学長・理事会の独善的、専断的な組織運営が引き起こしている重大な問題状況をさらに深刻化させることになりかねず、「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」し、社会・文化全体の発展に寄与することを社会的な使命とする大学の「自主性、自律性その他の……教育及び研究の特性が尊重され」(教育基本法第 7 条)ることにはならないものです。

 大学の目的と組織原理は、短期的な経済的利潤の最大化を目的とする企業のそれとは決定的に異なるものであり、私たちは学校教育法「改正」によって、トップダウン型の「ガバナンス改革」を強要することに対して断固反対します。

2014 年 3 月 8 日
京滋私大教連第58回臨時大会


2014年03月13日

3月29日,第2回「どうなってる!? 道内の大学 大学シンポジウム 」を開催

■道私大教連書記局ニュース(第13号)

大学危機突破へ! 3・29 第2回「大学シンポ」成功を!

~ 大学自治と言論の由を守ろう。教法改悪許すな!道内育まもり発展させよ~

 安倍政権の暴走はとどまるところを知りません。既に報道されていますが、学校教育法を改悪して大学教授会の権限骨抜き化と学長権限の抜本強化を企てています。道内大学での権利事件多発の背景に見るとおり、各大学法人の先走り迷走で、憲法や同法で保障する学問の自由や教授会自治の原則の不当な侵害は既に相次いでいます。これらが改憲策動の先取りであり、断じて容認できないものとして私たちは対峙してきました。今回の法改悪の動きは一連の大学危機を更に深刻化させるばかりか、大学自治の根幹にかかわる重大な問題です。
 私たちは関係各団体・市民と共同し、昨年5月に「大学シンポジウム」を成功させましたが、その後の大学をめぐる情勢や権利事件は一向に改善しないばかりか、泥沼化の様相です。しかし、負けてはいられません。この間、継続してきた実行委員会では、全道・全国的な大学と言論の危機的現状を語り、本気の大学教育を再生めざして、3月29日(土)午後 1:30 ~北海道大学内で「第2回・大学シンポ」開催を決めました !詳細は近くご案内しますが、今から予定ださい。 …前回以上の 規模 で成功 を。総力をあげましょう。


2014年02月22日

日本私大教連、声明「大学自治の根幹である教授会自治を否定する学校教育法改悪に断固反対します 」

日本私大教連
 ∟●「大学自治の根幹である教授会自治を否定する学校教育法改悪に断固反対します」

<声明>
大学自治の根幹である教授会自治を否定する学校教育法改悪に断固反対します


2014年 2月18日
日本私大教連中央執行委員会


1.大学の自治が根底から脅かされようとしています。政府・文部科学省は、学長権限を抜本的に強化するための学校教育法改正案を開会中の通常国会に提出するとしています。その最大の狙いは、学校教育法第 93条を改悪し、教授会が審議する「重要な事項」を、学位授与、学生の身分に関する審査、教育課程の編成、教員の教育研究業績等の審査に限定して、教育研究と不可分である教員の任用、予算の編成、学部・学科の組織改編などについて教授会に審議させないようにしようというものです。また学部長の選考についても教授会の審議事項から除外し教員の選挙によらずに学長任命とすること、さらには教職員による学長選挙を否定しようとする「学長選考方法の見直し」をも射程に置いています。
 これらは日本国憲法が定める「学問の自由」を担保する「大学の自治」の根幹にかかわる重大な改悪であり、政治権力による大学自治・大学運営への重大な介入です。私たちはこれを断じて容認することはできません。

2.学問・研究は、既存の価値や社会の在り方を批判的に検証し、深く真理を探究するという人類的営為であり、学問の府たる大学は、時々の政治的・経済的・宗教的な外圧・介入に対して自律性を確保するための努力を積み重ねることによって発展してきた歴史があります。「学問の自由」と「大学の自治」は、学問・研究とそれにもとづいて行われる教育の本質的性格に根ざすものであり、それゆえ高度の専門学識を担う教員集団たる教授会は、大学の自治を担う中心的な組織です。ユネスコの『高等教育の教育職員の地位に関する勧告』(1997年)も、教職員が予算配分等を含む大学の意思決定に参加することを大学自治の原則としています。
 わが国においては戦後、憲法第 23 条に規定された「学問の自由」のもとで「大学の自治」を保障するために、学校教育法第 93 条 1 項に「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と国公私立の別なく規定し、教育公務員特例法では学長や学部長の選考、教員人事を教授会の審議事項と定めました。こうした理念と法的枠組みは、私立大学を含めて歴史的に確立されてきたものです。
 したがって、学部長等の選考や教員の任用は「経営に関する事項」であり教授会で審議すべき事項ではないとする主張は誤りです。日々の教育活動に直接的な責任を負って1 いる教員集団が、教育課程の編成等の教育活動と密接不可分にある教員人事を審議し、また自らの長を自ら選出することは、大学に最もふさわしい民主的な手続きです。これら人事に関する事項を、法令改正によって強制的に教授会の審議事項から除外することは、大学の自治の根幹を脅かすものに他なりません。

3.学校教育法改正によって教授会の権限を制限することは、戦後、大学人が営々として築いてきた大学の自治の理念と制度を根底から否定するものであるばかりか、とりわけ私立大学にとっては死活的に重大な問題を生起させることになります。 わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・父母の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展を遂げてきました。研究面においても、理系文系を問わず多様な分野において学術研究の発展に寄与してきました。しかしながら、一部の私立大学では、理事会による教授会を無視した専断的な運営が行われ、そのことに起因する不祥事が後を絶ちません。このような私立大学では学長の権限強化は理事長・理事会の権限強化につながります。2013年 3月に文部科学大臣の解散命令を受けた群馬県の学校法人では、理事長・学長に権限を集中させて教授会を無視した専断的な大学運営・学校法人運営を続けてきたことにより、社会的信頼を失墜させ経営破たんに至ったことが明らかになっています。
 私たち日本私大教連は、私立大学の公共性を担保するための私立学校法の改正を提言しています。私立大学における教育・研究の質を向上させるためには、教授会自治を尊重した民主的な大学運営の確立が不可欠です。教授会の権限を縮小させ学長の権限を強化する学校教育法改悪は、私立大学の専断的運営にいっそう拍車をかけ、私立大学の教育・研究の発展を阻害するものに他なりません。

4.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命を果たすことが求められています。こうした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています。大学の目的と組織原理は、利潤の最大化を目的とする企業のそれとは決定的に異なります。政府・文部科学省、財界はこのことを厳粛に受け止め、学校教育法改正方針を撤回すべきです。
 私たちは、教授会の自治と大学の自治を根底から破壊する今回の法改正等に断固として反対するとともに、すべての大学人が反対の声をあげることを呼びかけるものです。

2013年12月24日

京滋私大教連、【大会特別決議】「高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議」

京滋私大教連
 ∟●高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議

【第 57 回定期大会特別決議】
高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議


 文部科学省中教育審議会大学分科会組織運営部会(以下「部会」)では、安倍内閣の下に設置された教育再生実行会議の「第 3 次提言」で、大学における「ガバナンスの改革」の必要性に言及していることを踏まえ、今年 6 月から 7 回にわたって大学における「ガバナンス改革」をめぐる審議が行なわれてきました。今回、「部会」で取りまとめられた「審議まとめ」では、「学長のリーダーシップの強化」を軸にした「ガバナンス改革」が強調されていますが、大学の「ガバナンス」について明確な定義がされておらず、「ガバナンス改革」「ガバナンス機能」「ガバナンス体制」「ガバナンスの仕組み」など、用例に幅があり意味合いも明瞭でないため、「ガバナンス」の定義が極めて曖昧になっています。その主たる原因は、これまで「大学の自治」の中心的な役割を果たしてきた「教授会」ないし「教員組織」に対する一方的な認識にあります。「審議まとめ」によれば、教授会の役割は今後「教育課程の編成」「学生の身分に関する審査」「学位授与」「教員の研究業績等の審査」等に限定されるのみならず、それを学長の考慮事項にとどめようとしています。

 学長が責任ある決定を下すことが重大な責務であることは言うまでもありませんが、学校教育法第92 条 3 項で「学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する」と規定していることをもって、学長が「特に高い立場から教職員を指揮監督することを示すものと解されている」と断定するのは、あまりに一面的な解釈と言わざるをえません。

 大学において重要なことは、真に優れた人物を学長に選任する仕組みを確立することであり、選任された学長がリーダーに相応しい能力を発揮できるかどうかが重要になってきます。今回の「審議まとめ」では、学長個人の力量を過信せず、「学長補佐体制の強化」にも言及していますが、学長の個人的な関係の範囲で補佐するメンバーを任命するようなことになれば、真に責任ある判断を下す保証にはなりえません。

 大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。その中心に教職員の働きがあったことを忘れてはなりません。

 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や文化・スポーツ活動の展開による学生の成長と、それを支える教職員の真摯な取り組みであり、そうした取り組みがあったからこそ、高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な学生を輩出してきました。

 今日の企業社会における行き過ぎたトップダウンと利潤追求の姿勢は、食品表示の偽装問題や、公共性の高い分野における安全管理の検査データの改ざん問題など、国民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学では理事会の誤った組織運営によって、学園の解散命令を受ける深刻な事態に陥る大学さえあります。

 今、必要なことは、トップが組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、その運営方針を練り上げるという基本的な方向性を確立することです。今回の「審議まとめ」は、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。

 学校法人の公共性を担保し、高等教育の真の発展に資する包括的な「ガバナンス」のあり方については、教育・研究の現場を支える教職員をはじめとした大学各層の意見を広く集約して検討を進めるとともに、大学の特性を踏まえた民主的な組織運営の確立を求めます。

2013 年 12 月 14 日
京滋地区私立大学教職員組合連合第 57 回定期大会

2013年12月10日

東京私大教連、秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

東京私大教連
 ∟●秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

秘密保護法案の強行採決に抗議する声明

1.12 月 6日深夜、政府・与党は野党の反対を押し切り、参議院本会議において秘密保護法案を強行採決して可決成立させました。国民の知る権利を大きく制限して軍事国家化への途をひらく同法案に対しては、国内外を問わず各界各層の反対の世論が日増しに沸騰してました。国会ではすべての参考人が反対・慎重意見を述べたにもかかわらず、それを一顧だにせず採決を強行した政府・与党に対し、私たちは大きな怒りをもって抗議します。

2.国会での審議は、衆参両院ともに拙速かつ強権的に行われ、アリバイづくりにひとしい地方公聴会開催をその前夜に一方的に強行議決するなど、数の驕りとしかいいようがない横暴な国会運営に終始しました。原発や食品の安全に関する情報も特定秘密に指定される可能性があること、第三者に伝えないことを条件に外国からもたらされた情報は国会から求められても提出できないこと、さらに「不正取得罪」をめぐっては、記者や市民が明確に特定秘密と認識していなくても、取得するかもしれないという「未必の故意」が成立すれば罪に問われる可能性がある等、次々と新たな問題が審議を通じて明らかになりました。
 こうしたなか、法案の全容が国民に知られる前に採決を急ぐために、安倍首相は 12月4日に「保全監視委員会」「情報保全諮問会議」「独立公文書管理監」を政府内に置くと表明し、翌5日には内閣府にも「情報保全監察組織」を新設するなどと述べましたが、いずれも法には明記せず、客観性・独立性が極めて疑わしい泥縄式の対応としか言いようがありません。安倍内閣は6日の閣議で民主党の質問趣意書に答え、特定秘密の廃棄について「秘密の保全上やむを得ない場合、政令などで公文書管理法に基づく保存期間前の廃棄を定めることは否定されない」とする答弁書を決定しています。重要な公文書が、政権の思惑ひとつで廃棄され永遠に闇に葬られる危険性があります。

3.今回成立した秘密保護法は、私たち大学教職員にとっては、「知る権利」に立脚した「学問の自由」を根底から脅かす法律でもあります。罰を怖れて外交や安全保障等にかかわる情報収集・調査活動を躊躇するような風潮が生まれ、学問研究に大きな支障をきたすことが懸念されます。秘密保護法は、大学の社会的責任を十全に果たすことを阻害する法律であり、大学と学問が国策に服従させられた戦前の軍国主義国家体制の再来をもたらす稀代の悪法だと言わざるを得ません。

4.さらに、市民のデモ活動をテロと同視した石破自民党幹事長の暴言は、「テロの防止」を名目に特定秘密の範囲を際限なく広げ、平和的な市民・労働組合の運動さえ監視・抑圧し、国民の思想・信条にまで介入しようとするこの法律の本質を露呈させるものです。秘密保護法案は成立しましたが、研究と教育を日常的に担う大学教職員としての良心にもとづき、私たちは今後とも同法の廃止を求めて運動をすすめる決意です。

2013 年12月7日

東京私大教連中央執行委員会

京滋私大教連、中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

京滋私大教連
 ∟●中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見


2013年11月29日
京滋地区私立大学教職員組合連合


 今回の「審議まとめ」(素案)の冒頭、「大学へのメッセージ」として「ガバナンス改革は、大学が自主的・自律的に行うべきもの。学長のリーダーシップの下で、大学自らがガバナンス改革を」との文言が付されています。しかし、大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。

 大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。

 それは決して独善的な取り組みではなく、70 年代以降、大学の「ユニバーサル化」が進む中で、「社会に開かれ、社会に支えられた大学づくり」に向けて、不断の努力で営まれてきたものです。特に、日本の私立大学は大学全体の 80%を占めており、70 年代に「私学の公共性」を確保する目的で私立学校振興助成法が成立し、経常費補助が行なわれるようになる中、個別私学の視野をこえて、全社会的な枠組みで社会と学生実態の変化に応じた「大学改革」が行なわれてきました。
 
 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や、文化・スポーツ活動の展開による学生の成長であり、それを支える教職員の真摯な取り組みがあったからこそ、他の先進諸国に比肩する高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な人材を輩出してきました。

 他方、今日の日本社会は、行き過ぎたトップダウンと利潤追求の結果、食品表示の「誤表示」や、公共性の高い分野における安全管理の検査データ改ざんなど、市民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学においても理事会の誤った運営によって、学園の解散命令を受けるような深刻な事態に陥るところもあり、大学における「ガバナンス」のあり方は、慎重な検討を要する問題であると考えます。

 いま必要なことは、トップが示す運営方針に対して、単にその実行を請け負うだけでなく、トップが示す運営方針の客観性を検証するために、組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、運営方針を練り上げることに、組織のトップに立つべき人物は尽力すべきです。そして、そのような取り組みを通じてこそ、組織の構成員にもトップの意図が十分に行きわたることになると考えます。

 今回の「審議まとめ(素案)」では、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の組織特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。しかも、今後の大学の組織運営に重大な影響を及ぼす問題であるにもかかわらず、今回のパブリックコメントの募集期間がわずか 10 日余りと非常に短期間であることも問題です。

 日常的に学生への対応をおこない、教育・研究の現場を支える関係者の意見を広く集約する中で、大学の特性を踏まえた組織運営のあり方を慎重に検討していただくことを強く要望します。


2013年05月21日

「自由に物言えぬ」と危機感 大学の労働トラブルめぐり集会、約170人の参加で成功!

■朝日新聞道内版(2013年5月19日)

「自由に物言えぬ」と危機感 大学の労働トラブルめぐり集会

 「どうなってる?!道内の大学緊急!大学シンポジウムin北海道」と題した集会が18日、札幌市北区の北海道大学で開かれた。道内の大学で教職員の身分や大学運営などを巡るトラブルが相次いでいることを受けたもので、約170人が参加した。
 事例報告では、希望退職に応じなかった教員8人が解雇された専修大学北海道短大(美唄市、今春閉校)、教員側の意向や手続きを無視して様々な規程の改定が進んでいるという天使大(札幌市東区)などのケースを当事者が報告。「気に入らない人間の意志的解雇につながりかねず、自由に物が言えなくなる」などと危機感を訴えた。
 続くパネルディスカッションでは、問題噴出の背景について、北大の光本滋・准教授(教育学)が。「経済政策に従属する形で進められた大学改革が大きなひずみをもたらした結果」と分析。また、中島哲弁護士が「企業の株主総会や地方公共団体の監査請求などに当たる外部からのチェック機能が、大学では法的に整備されていない」などと指摘した。
 集会は最後に「『大学の自治』が労働問題という形で侵されている。様々な人々と連帯し、自由の実現につなげていきたい」とするアピールを採択した。(芳垣文子)