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 カテゴリー (公)大阪市立大学

2016年04月25日

大阪府立大学と大阪市立大学の統合について

大阪府副首都推進本部
 ∟●第3回副首都推進本部会議「資料3」

府市大学統合について

2016年02月10日

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

■日本共産党大阪府委員会
 ∟●大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

2016年2月8日  日本共産党大阪府委員会学術文化委員会

 府議会と大阪市議会は昨年12月と今年1月、知事と市長がそれぞれ提出していた府立大と大阪市立大の「統合」を準備する議案(府大・市大の中期目標を一部変更)を大阪維新の会などの賛成多数で可決強行しました。日本共産党は反対しました。

 同趣旨の議案は2013年11月の市議会で、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想は昨年5月の住民投票で、それぞれ否決されています。これらの民意と両大学の学生や院生、教職員、卒業生ら大学関係者の批判・反対の声を踏みにじって強行したことは許されません。

 両大学の統合は、大阪の教育、文化、福祉、経済などの様々な分野で長期にわたり大きな影響を与える問題です。統合は政治権力が押し付けるのではなく、府民意見を尊重した両大学の関係者による慎重な議論・検討が必要です。

 私たちは、これまでの議論を踏まえ、府大・市大「統合」問題をめぐる経過と問題点、重点的な大学政策を提起し、府民的討論と共同を呼び掛けます。

1 府大・市大「統合」問題をめぐる経過

 大阪府と大阪市は2013年秋に「新大学ビジョン~強い大阪を実現する知的インフラ拠点をめざして~」(9月)や「新法人基本方針」(10月)を公表し、府大・市大「統合」計画の基本を明らかにしました。これは、大学を構成する学生や院生、教職員のあいだでの自由な議論を抜きに、また、府民と市民の意見をほとんど聞かずに、「大阪維新」主導の府市統合本部のもとで、問答無用で強引に推進されたものです。

 こうした「統合」計画のもとになった「提言」(「新大学構想<提言>~統合と再編、新教学体制と大胆な運営改革~」2013年1月)を策定したのは、「大阪府市新大学構想会議」ですが、この会議を構成する6人の委員のなかには府大と市大の大学関係者は一人も含まれていませんでした。

 「新大学ビジョン」をベースにして、大阪府と市、府大と市大は「新大学案~新世代の大学~ 大阪モデル」(同年10月)を作成・公表しました。

大学関係者の批判と「統合」関連議案の市議会での否決

 こうした府・市の動きをみて、府大・市大名誉教授ら21氏は2013年10月、「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表し、「大学には独自の建学の精神と伝統があり、専門分野も独自に発展を遂げて」おり、「大学の統合はそれぞれの大学の内発的要求が合致し、財政的保障が十分なされなければ難しい」として、「高度の有機的な研究教育機関である二大学の統合計画をこのまま進めるというのはあまりに拙速」だと指摘しました。

 これに先立って同年3月には、市大の学生が提出した「市立大学と府立大学の拙速な統合撤回を求める陳情書」が市議会財政総務委員会で「大阪維新」以外の会派の賛成多数で採択されていました。

 こうした大学関係者の批判をまえに、橋下徹市長(当時)が提出した府大・市大「統合」関連議案(市大の中期目標と大学法人定款の一部変更案)が2013年11月の市議会で「大阪維新」を除く会派の反対多数で否決されました。これを受けて府は議案提出を見送りました。

 「統合」関連議案は、2016年度の「府立大学との大学統合をめざし」準備すると明記し、市大理事長と学長を分離し、理事長を市長任命とすることで大学の支配・統制を強め、「強い大阪を実現するための」大学という特定の大学観を押し付けるものでした。

 この時期に、橋下市長(当時)は、安倍政権による「大学のガバナンス(統治)改革」を先取りして、市大学長選挙での教職員意向投票の廃止を押し付けました。

大学「統合」の延期と住民投票の民意

 「統合」関連議案否決を受けて大阪府・市は翌年(2014年)4月に両大学「統合」の延期を表明、当初予定の2016年度の大学「統合」はなくなり、今後については、「両大学で、主体的に大阪における公立大学のあり方について検討」するとされました。これを受け、府大・市大は2015年2月に「『新・公立大学』大阪モデル(基本構想)」を公表しています。

 2015年5月に実施された、大阪市民による住民投票では、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想が否決され、市議会での「統合」関連議案の否決に続いて市大存続の民意が示されました。

 住民投票の翌日に発表された大阪市立大学教職員労働組合の声明は、「大阪市立大学は、大阪市民とともにある大学であり、市民の示した民主的な意思、市民が選んだ都市の将来像とともに進むべきである」と強調しました。

 日本共産党の石川多枝府議は昨年12月の府議会教育常任委員会で、「関係者の合意形成もないままで統合ありきで進めるのは拙速だ」と批判。小川陽太大阪市議は今年1月の市議会本会議で、「大阪市がすべきは、未来ある若者により広く高等教育を保障し、教育研究条件の拡充を図ることだ」と強調しました。

 この府議会(教育常任委員会)と市議会の「統合」関連議案の採決では、結論ありきで検討を急がず、関係者の意見を柔軟に取り入れることや、議会の意見を十分踏まえるとする附帯決議を全会一致で可決しました。市議会の附帯決議は「一から幅広く議論」するとしています。ここに、両大学「統合」を押し付ける「おおさか維新」政治と府民・大学関係者との矛盾が現われています。

2 府民・大学関係者の共同の広がり

 両大学の学生有志でつくる「大阪の公立大学のこれからを考える会」は2016年1月、大学の統合計画の白紙撤回を求める署名を、市大学長あてに2498人分、府大学長あてに2784人分を提出。「統合を前提にした改革はおかしい」と語りました。このなかで、「受験生にとっても、比較的安い授業料で学べる二つの公立総合大学が減らされれば、選択肢が奪われます。家族にとっても子や孫の学ぶ場が奪われる」と訴えています。

 大学関係者が実施した学内アンケートでも、回答した教員の7割が統合を「進めるべきでない」としています。

 2015年11月に開催された多様な分野の研究者による「豊かな大阪をつくる」シンポジウムは府大・市大統合問題をテーマに取り上げ、「大学統合は、大阪の文化、教育、福祉、経済等の様々な領域において長期にわたって多大な影響を与える」として、学生と教員らが活発な議論を行いました。

 両大学の卒業生らでつくる「大阪府立大学問題を考える会」と「大阪市立大学の統合問題を考える会」は、「拙速な統合反対」と知事・市長に署名11000人分以上を提出したことを始め、学習会や議会要請などの取り組みを進めています。

 こうした府民・市民と大学関係者の共同が政治を動かしています。府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう。

3 府民・市民の大学教育への願いに応えて――日本共産党の提案

 この間の経過からみて、「統合」計画は両大学が内発的に要求しているものではなく、政治権力により強権的に大学に押し付けられたものです。これは、憲法が保障する学問の自由を脅かし大学の自治を破壊する学校教育法改悪などを強行してきた安倍政権「大学改革」の先取りです。大学関係者からは、「統合」による教育研究条件低下と学費負担増を危惧する声が上がっています。

 府大と市大はそれぞれ、独自の建学の精神と伝統をもち、専門分野も独自に発展を遂げ、教育研究に重要な役割を果たしています。「二重行政」を解消するとして、両大学を「統合」することは許されません。

 私たちはこうした点を踏まえ、重点的な大学政策について改めて次の諸点を提案します。

(1)府大・市大「統合」計画を撤回します

 大学の再編・統合は、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提としてすすめるべきです。「おおさか維新」が主導する府大・市大の「統合」(統廃合)計画は、政治権力による大学への介入であり撤回します。

(2)学問の自由・大学の自治を守ります

 憲法が保障する学問の自由・大学の自治を守ります。世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず」であり、大学の自治を尊重して大学への財政支援を行うことです。大阪府・大阪市と、教育研究を担う両大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。

(3)大学の日常的運営に必要な経費の増額をはかります

 この間、両大学への運営費交付金が削減され続けてきました。大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)である運営費交付金を増やし、教育研究条件の拡充をはかります。

 国に対しては地方交付税の大学経費を引き上げることや公立大学への国庫補助制度を確立するなど財政支援を強めることを求めます。

(4)学費負担の軽減、給付奨学金制度をつくります

 国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました。大学で経済的な心配なく学び、将来に希望をもって研究したい若者の願いを実現するために、学費無償化にむけて、大学授業料を段階的に引き下げます。奨学金の無利子化、返済方法の改善、給付制の創設と授業料減免制度の拡充をはかります。

(5)基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展へ

 科学、技術は府と市がその多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。

 そのため、基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と府民・市民本位の利用をはかります。公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります。産学連携の健全な発展をうながします。女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかります。

府民・大学関係者と共同して

 府大・市大は日本と大阪での学術の進歩に貢献し、住民要求に応えた大学教育を行い、大阪の文化、経済の発展に寄与しています。今後もその役割の発揮が期待されます。

 日本共産党は引き続き、広範な府民・大学関係者と共同して、安倍自公政権の補完勢力である「おおさか維新」政治と対決し、府民・市民の大学教育への願いに応えて、府大・市大の存続・発展へ力を尽くします。


2016年01月16日

市立大学と府立大学の統合議案市可決へ

ytv(01/15 08:50)

 大阪市立大学と府立大学の統合議案が市議会で15日に可決される見通し。自民や公明が慎重な姿勢を崩さず継続審議にするとしていたが、吉村市長が自公の要求に応じ議会や大学側の意見を取り入れることを追記した修正案を出すと決め、自公が方針転換した。

2016年01月14日

大阪市大学生ら 府大との統合反対署名提出

ytb(01/13 08:43)

大阪市立大学の学生らが12日、府立大学との統合計画の撤廃を求める約2500人分の署名を大学側に提出した。大学統合に向けた議案は先月、府議会で可決し、市議会でも議論が行われいる。学生らは、府立大学にも同様の署名を提出する予定。

2015年12月23日

府立・市立大学の統合議案可決 大阪府議会

YTV(12/22 18:37)

大阪府立大学と大阪市立大学の統合に向けた議案が22日、大阪府議会で可決された。府立大学と市立大学の統合に向けた議案は、府議会で維新・自民・公明などの賛成多数で可決した。自民はこれまで、統合に慎重だったが、先月の大阪ダブル選での維新の圧勝を受け、方針を転換した。一方で、2つの大学をひとつにする知事らの案に対し、自民は運営母体をひとつにするものの、大学は2つとも残す案を主張しており、今後、対立が予想される。松井知事は「(大学を)機能強化するには学部再編です。これからの時代に見合った学部をつくれるのが(大学統合の)メリット。このあたりは、これからの議論になると思います」などと語った。一方、大阪市議会では、自民・公明が依然統合に慎重な態度で、来年の採決に向けて議論を続けるという。

2015年12月16日

大阪府・市立大統合の関連議案、今府議会で可決の見通し

朝日新聞(2015年12月14日)

 大阪府立大と大阪市立大の統合の議論を進める議案について、自民党大阪府議団は14日の総会で賛成する方針を決めた。継続審議を求めていた公明党府議団も賛成する方向で、22日に可決される見通しとなった。

 この議案については、11月の大阪ダブル選での大敗を受けて、自民党市議団が賛成に転じる方針を確認していた。杉本太平・府議団幹事長は記者団に「賛成の方向で公明党と話をしたい」と語った。松井一郎知事はそれぞれの運営法人と大学を統合する「1法人1大学」を目指すが、府議団は「1法人2大学」を念頭に議論したい考えという。

大阪府立大・市立大、統合準備案可決へ 大阪府議会自民が賛成

産経(2015.12.14)

 自民党大阪府議団は14日、府立大と大阪市立大の統合に向け準備を進める議案に賛成する方針を決めた。推進派の大阪維新の会と合わせれば可決に必要な過半数となり、今月22日の本会議最終日に可決される見込み。

 議案は府立大の運営目標に市立大との統合推進を加える内容。先に自民市議団が賛成の方針を固め、市議会でも可決する見通しとなっていた。

 両大学はいずれも約8千人の学生を抱える。府立大は理系、市立大は文系や医学系に定評がある。自民府議団は議案に反対する姿勢を示していたが、11月の知事・市長のダブル選で大阪維新が勝利した結果を受けて賛成に転じた。


2015年12月10日

統合準備議案、可決見通し 大阪府・市立大で市議会

大阪日々新聞(2015年12月9日)

 大阪府立大と大阪市立大の統合に向け準備を進める議案が市議会で可決される見通しであることが8日、分かった。反対していた自民党市議団が賛成に転じたためで、推進派の大阪維新の会と合わせれば可決に必要な過半数となる。来年1月15日に閉会する今議会中にも可決される見込み。

 議案は府立大の運営目標に市立大との統合推進を加える内容。11月の知事・市長のダブル選で大阪維新が勝利した結果を受け、自民市議団幹部は「民意を尊重して議論の場につくべきだと判断した」と理由を話している。

 同様の議案は橋下徹市長が2013年に市議会に提案したが、大阪維新以外の会派が反対に回り否決された。しかし松井一郎知事と橋下氏はダブル選前の10月上旬に「二重行政を解消すべきだ」として、それぞれ両議会に提案した。

 橋下市長は「選挙の民意を踏まえて公選職として判断されたのだと思う。すぐさま統合に賛成というわけにはいかないだろうが、一歩前進だ」と評価。18日で退任することから「今後は吉村洋文新市長が議会と議論していくこと」とした上で、「ポテンシャルは高い。大阪にものすごい強い公立大学をつくってもらいたい」と期待を示した。

 自民府議団も統合に前向きな姿勢を示しているが、具体的な形態については「大阪維新とは考え方に隔たりがある」(府議団幹部)との意見もあり、市議団や公明党の対応をみて、最終的に判断する方針。


2015年12月09日

大阪府大・市大統合 自民党が賛成の方針

ytb(12/08 18:23)

大阪市の橋下市長が提案した、大阪府立大学と大阪市立大学の統合に向けた議案に自民党が賛成する方針を示した。大阪ダブル選挙での維新の圧勝を受け、対立が続いた議会に変化の兆しが見えている。大阪府立大学と大阪市立大学を統合する議案について8日、大阪市議会の自民党と公明党の幹事長が対応を協議した。議案は、松井知事と橋下市長がそれぞれ、議会に提案し、おととしの市議会では同じ様な議案が維新以外の反対で否決された。自民党は大阪ダブル選挙で維新が圧勝した結果を受け、すでに具体的な議論に入る方針を確認。きょう公明党に意向を伝え、吉村次期市長が就任した後、所信表明を聞いた上で態度を決めることで合意した。自民党市議団・黒田當士幹事長は「統合するつもりで議論に入ります。我々はあくまで大阪市を残す前提のもとで、我々議論していますので、吉村新市長が都構想のことをがんがんいってこられたらなかなか話進めにくいかなと思っております」と述べた。議案は、早ければ来月15日の会期末にも採決され、可決されれば、2つの大学の統合の時期や形態などの議論が進められる。

大阪府大・市大統合協議へ、医療・理工系…国際競争勝ち抜きランク上昇目指す

産経新聞(2015.12.8)

▼橋下維新の進める統合構想、自民市議団も検討へ

 互いの強みを持ち寄れば、世界的な大学間競争を勝ち抜くことができる-。統合議論が続いている大阪府立大と同市立大。若者人口の減少など、大学を取り巻く環境が厳しさを増す中、統合の相乗効果による大学ランキング上昇を目指している。

■学生数は首都大学東京を抜く1.6万人

 府立大は明治16年に設置された獣医学講習所が前身で、航空宇宙工学やロボットなど理工系分野に強い。一方、市立大は、同13年創立の大阪商業講習所を前身とし、都市研究などの特色がある文系に加え、医学系の評価が高い。

 両大学が今年2月にまとめた基本構想では、新大学は文系から理系、医学・獣医学分野まで幅広い教育・研究領域とする。工学や看護学など重複する分野で再編を進め、理工系や医療系など強みのある研究に重点的に投資する方針だ。

 統合すれば、学生数は計約1万6千人となり、公立大トップの首都大学東京を抜く。

 両大学は「新たな公立大のモデルとして大阪の発展を牽引(けんいん)できる」とメリットを強調する。

 だが、府内に点在する5カ所のキャンパスの活用方法や、学部・学域の再編方針は固まっておらず、学生にとってデメリットになりかねない現状もある。学生からは「統合で各大学の良さや教授との身近さなどが失われるのでは」と危惧する声が上がる。

 専門家は「これまでの蓄積を生かした特色のある大学づくりのビジョンを明確に打ち出せなければ、統合は意味のないものになる」と指摘している。


2015年11月03日

大阪の公立大学のこれからを考える会、「現行の大学統合計画の白紙撤回を求める要望署名」

大阪 開業支援室
現行の大学統合計画の白紙撤回を求める要望署名

大阪市立大学学長 西澤 良記 様

現行の大学統合計画の白紙撤回を求める要望署名

【要望趣旨】
 市大と府大の統合計画は、もともと大阪府・市が「二重行政」の解消として持ち出してきたものです。大阪府・市が市大・府大関係者を抜きに発足させた新大学構想会議が、2013(平成25)年1月に「新大学構想<提言>」を、続いて同年4月に大阪府・市が「新大学ビジョン(案)」を発表しました。大阪府・市から公表されたこれらの案やビジョンを両大学は唯々諾々と受け入れ、ついには今年2015(平成27)年2月、市大・府大の連名で「『新・公立大学』大阪モデル(基本構想)」を発表するに至りました。果たしてこれが在学生、卒業生、教職員が誇りを持てる大学の姿でしょうか?

 一方で、2013(平成25)年10月、市大・府大の名誉教授ら21氏が「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表し、「学問の自由と大学の自治の伝統が根底から脅かされている」と懸念を表明されました。同年11月の市議会では、統合メリットやキャンパス配置、財源などの基本問題が具体化されないまま”統合ありき”で進められる強引なプロセスに批判が集中し、市長が提案した「統合関連議案」は否決されました。2014(平成26)年春から夏、市大・府大の卒業生らが「拙速な統合はやめてください」署名に取り組み、同年9月、知事・市長宛てにそれぞれ約11,000筆の署名を提出しました。2015(平成27)年5月、大学統合計画を含む「大阪市廃止・5分割」(いわゆる「都構想」)の賛否を問う住民投票は反対多数で否決され、橋下市長も「私が間違っていた」と認めました。このように、大学内外からも多くの批判があり、市議会でも住民投票でも否決された大学統合計画を、大阪府・市および市大・府大はいまなお進めようとしています。

 私たちには、大学関係者の民主的な議論や客観的な検証を十分に経ないまま強引に設立されようとしている新大学が、大阪市民・府民、広くは社会全体の要求に応えて行く大学になれるとは思えません。また、異なる二つの大学を統合して新大学に生まれ変わらせることは、どちらの大学の個性も喪失させることになり、両大学の在学生、卒業生、教職員が選んだ大学ではなくなってしまいます。受験生にとっても、比較的安い授業料で学べる二つの公立総合大学が減らされれば、選択肢が奪われます。家族にとっても子や孫の学ぶ場が奪われることになります。

 両大学は「市井の精神に発した、自主独立・自由進取の気風あふれる建学の伝統」(市大・大学憲章)、「地域に信頼される知の拠点」(府大・基本理念)の精神をいまこそ思い起こしてください。私たちは、両大学が市民・府民の願いを尊重して大学統合計画を撤回し、これまで通り互いに独立した公立大学として、それぞれの伝統と特色を生かして発展することを望みます。そして、先人の努力と奮闘の上に築かれ、現在まで続く輝かしい歴史と伝統、学風、学問研究水準のいっそうの発展を心から願うものです。


2015年10月04日

「市立大学と府立大学について、学生との合意のない統合撤回を求める陳情書」、「継続」扱いに―大阪市議会都市経済委員会

大阪開業支援室
 ∟●「陳情書」は「継続」扱いに―市会委

「陳情書」は「継続」扱いに―市会委

 10月2日、大阪市議会の都市経済委員会で、「大阪の公立大学のこれからを考える会」が提出した「市立大学と府立大学について、学生との合意のない統合撤回を求める陳情書」が審議された。審議のあと、自民党(3)と共産党(1)は「採択賛成」を表明したが、維新の会(6)と公明党(4)が「継続審議」を主張したため、「陳情書」は採択されず「継続」扱いとなった。《( )内は委員数。市会の会派数は、維新36、自民20、公明19、共産9、osakaみらい2 》
「陳情書」に対する各党の審議内容の要点について(メモ)
①維新・田辺 2013年に「大学統合関連議案」が否決されときの理由は何だったのか、その後の進展はどうか。
大学担当課長・森山 平成25年当時は、大学の施設、統合スケジュール、学生への説明などの問題で、「統合議案」が否決された。そして、文部科学省の審査が厳しくなり、当初スケジュールどおりの統合は困難と判断、延期となった(平成26年4月)。その後、両大学の主体的検討を経て、平成27年2月「新・公立大学」大阪モデル(基本構想)がまとめられた。市は、これをうけて大学統合をすすめたいと考えている。
田辺 陳情で「両大学の個性が喪失」と述べているが、両大学の特性・個性はどうなるか。
森山 大学の個性は「独自性」と「強み」。市大は日本初の市立大学。両大学とも130年の歴史と伝統がある。個性は失われないものと考える。
 田辺 「個性は失われない」ことを確認。統合によって学生に不利益があるのか。また、「学生に説明されていない」といわれているがどうか。
 森山 学生に不利益ないようにしたい。両大学のリソースを生かし、教育力もアップする。学生には、大学問題見解発表ごとに「ホームページ」で説明している。
 田辺 ホームページでの説明だけでは不十分ではないか。「基本構想」には、中期目標を決めてから4・5年かかると書かれている。4・5年かかると現役学生には関係ないとも考えられるが、学生に不安を感じさせないようにするべきだ。     市大の運営費交付金はいくらか。
 森山 平成27年度、医学部付属病院を除いて106億円である。
 田辺 106億円は市民の税金だ。これが妥当な額か。大学統合は、市の財政負担からみて意義あることだ。統合でいくらコスト削減できるのか。府が10億円、市が数億円ともいわれるが。統合でマネジメント部門の経費削減、統合のシナジー効果を発揮してほしい。コスト削減(効果)を是非検証してほしい。100億円も投入している大学の市民への還元を考えるべき。「100億円も」「小中学校に回してほしい」という声もある。学生を小中学校教育にもかかわるよう検討するべき。
②自民・前田 陳情書を提出した学生の「会」から直接意見を聞く機会があった。学生たちは、この間、学生には何の説明もない。5月の住民投票で大学統合が問題になった時も、説明がない。大学の伝統、教育内容、キャンパス、学費など、不安がいっぱいと話していた。学生への説明をやってきたのか。陳情で「合意のない統合」と言っているが「合意」は必要なのか。
 森山 市大・府大が検討し「基本構想」を発表、ホームページで公表・説明してきた。手続き上「合意」の必要はないが、情報提供、説明はやっていきたい。
 前田 統合で、学生を混乱させないようにするべき。ホームページだけでなく、説明会なども必要ではないか。
 森山 市大は、「新大学」の具体化がすすんだ段階で説明することにしている。
 前田 決まった後での説明でなく、よく意見を聞いて検討するべきだ。
③共産・小川 大学統合には、何度も反対の民意が示された。学生、教員、卒業生などの意見を聞くべき。「二重行政」のムダ解消といわれた「統合」、住民投票でも否決されたではないか。「陳情趣旨」の2)で述べているとおりだ。統合に大義はない。いまこそ、大学問題も熟議が必要。統合などするべきではないと考える。
 森山 大学は「智」の拠点。両大学を統合して、リソースを発揮、シナジー効果を期待する。大阪発展の牽引力になる。
 小川 今回、大学が自ら「基本構想」を作成したかのように、「大学統合」を押し付けている。両大学は、公立大学としてその役割を立派に果たしている。なのに、交付金を7割に削減しているのは問題だ。交付金を削減しておいて、「より良い大学」になりうるのか。「一度も意見を聞かれていない」と言われているが、学生からの意見徴集はどのようにしたのか。
 森山 ホームページでやった。
 小川 HPでなく、直接、意見を聞くべきだ。ステークホルダーというなら、定期的に意見を聞くようにするべきではないか。
●維新、自民、共産が質疑したが、前回「統合に反対」だった公明は、発言せず、「継続」を表明した。


2015年09月27日

大阪府大・市大「統合」の計画 議会も住民も否決済み 議案提出は許されない

しんぶん赤旗(2015年9月25日付)

 橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事は、25日開会の市議会と29日開会の府議会にそれぞれ、府大・市大「統合」関連議案を提出しようとしています。

 同趣旨の「統合」関連議案は2013年11月末、日本共産党、自民党、公明党、民主系会派の反対多数で否決されたものです。また、府大・市大「統合」方針は、今年5月の住民投票で否決された「大阪都」構想に含まれており、大阪市民の民意が示された問題です。

 すでに二重に決着した問題を持ち出し、「統合」関連議案を提出することは許されません。

 府大・市大「統合」の問題点は第一に、全国と大阪の子どもの公立大学受験の機会を減らし、憲法が保障する学ぶ権利を奪うものです。第二に、「統合」は両大学が内発的に要求しているものではなく、橋下・「維新」が、学問の自由・大学の自治を蹂躙(じゅうりん)し、強権的に大学に押し付けているものです。第三に、府大と市大はそれぞれ、独自の建学の精神と伝統をもち、専門分野も独自に発展を遂げ、教育研究に重要な役割を果たしており、ムダな「二重行政」ではありません。

 こうした重大な問題点をもつ府大・市大「統合」計画は撤回すべきです。いま、府と市がやるべきは、運営費交付金を増やすことなど両大学の教育研究条件を拡充することです。

 これまでに、府大・市大名誉教授ら21氏が「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表。学内では「市民が大阪市解体を否定したいま、私たち大学人が自ら、大学のあり方を根本から問い直し、議論する必要がある」として教員有志が呼びかけた懇談会が開かれました。両大学の学生は、学生と合意のない統合の撤回を求め、卒業生らは拙速な統合に反対する運動を進めています。

 私たちは、広範な府民・市民、大学関係者と共同し、大学自治に介入し「統合」を押し付ける「維新政治」に終止符を打つため奮闘します。府大・市大の大学改革は、府民・市民の意見を十分踏まえて、大学自治を尊重して大学関係者の議論と合意で進めることが求められます。

(日本共産党大阪府委員会学術文化委員会責任者 小林裕和)


2015年09月24日

大阪の公立大学のこれからを考える会、「大阪市立大学と大阪府立大学について、学生との合意のない統合撤回を求める陳情書」提出の記者会見

特集 大阪都構想

 2015年9月17日(木)、大阪の公立大学のこれからを考える会が、「大阪市立大学と大阪府立大学について、学生との合意のない統合撤回を求める陳情書」を市議会へ提出した。その後、大阪市北区の大阪市役所で、学生有志による記者会見が開かれた。


2015年09月21日

市大・府大学生有志の会「大阪市立大学と大阪府立大学について,学生との合意のない統合はやめてください」

大阪 開業支援室

学生との合意のない統合はやめてください―陳情書を提出

「大阪市立大学と大阪府立大学について,学生との合意のない統合はやめてください」


2015年06月08日

大阪市立大学、住民投票結果を受けての本学の考え方

大阪市立大学
 ∟●住民投票結果を受けての本学の考え方

住民投票結果を受けての本学の考え方

・5月17日、大阪市において特別区設置に関する住民投票が行われ、反対の票数が半数を超え、今後とも政令指定都市・大阪市が存続することとなりました。
・これにより、いわゆる「大阪都構想」は実現しないこととなりますが、さらなるグローバル人材の育成が期待され、ますます国内外の大学間競争の厳しさが増すなか、今後の公立大学のあり方を考えると、大阪の地域活性化に寄与し大阪の発展を牽引する「知」の拠点として、新大学の実現が望まれるものと考えております。
・今後の方針等については、改めて設立団体から示されることになると思われますが、本学といたしましては、今年2月に策定しました「新・公立大学」大阪モデル(基本構想)を深化させるべく、今後とも大阪府立大学と議論をしっかりと積み重ねるとともに、グローバルキャンパスの開設など、今までにない連携強化を図っていきたいと考えています。
・また併せて、こういった状況の中で、本学は、これまでにも増して本学の歴史伝統を礎に教育力や研究力の強化に力を注ぎ、広報活動も強化して発信力を高め、さらに多様なステークホルダーの方々の支援も仰ぎながら、今まで以上に大学のプレゼンスやブランド力を高めていきたいと考えています。

平成27年5月25日
理事長兼学長 西澤 良記

2015年05月21日

大阪市立大学の統合問題を考える会、大阪市住民投票の結果を受け声明を発表

大阪 開業支援室

「大阪都構想」に終止符、大阪市立大学の存続と民主的発展を願う!

 5月17日の住民投票で大阪市民は、大阪市を廃止・解体する「大阪都構想」を否決、大阪市の存続が決まりました。橋下市長は12月の任期満了をもって「政界引退」を表明、橋下市長・維新の会が掲げた「大阪都構想」は終止符をうちました。私たちはこの結果を歓迎するものです。

 私たちは、2011年12月ダブル選で勝利した橋下市長が、大阪市立大学と大阪府立大学の統合推進に乗り出したときから、大学の内発的要求とは無縁な、外部から強制する拙速な大学統合に異議ありの声をあげてきました。「大阪市立大学の統合問題を考える会」を立ち上げ、「大阪府立大学問題を考える会」と共同し、拙速な統合を危惧する市大生の「陳情書」の市議会採択、市立大学・府立大学の名誉教授ら21氏の「大学統合を憂慮する」声明発表、市議会での大学統合関連議案の否決、「拙速な大学統合に反対する署名」運動(市長・知事宛にそれぞれ11000余筆)、そして昨年4月の市長の「統合延期表明」などを節目に、市長、知事、議会会派への申入れ、学習会、ネットワークづくりなどをすすめてきました。

 今回の住民投票は、市立大学の設立団体である大阪市そのものの存続が問われ、市立大学の存続を願うものにとって重大な正念場となりました。私たちは、緊急声明「大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする『大阪都構想』には反対です!」を発表し、連日大学門前で配布するなど、「反対」の勝利に力を尽くしてきました。住民投票の結果は「反対」が多数で勝利、橋下市長による大阪市解体、「二重行政解消」の名目での市大・府大の強制的な統合の企みは敗北を喫しました。市大の歴史、伝統を未来につなげる可能性はしっかりと残りました。橋下市長は、「僕が提案した都構想が受け入れられなかった」、自らの主張が「間違っていた」と認めました。府立大学と市立大学の存在がムダであるかのような議論は市民の理解を得られませんでした。

 橋下市長は「任期満了までに進めるものは進めていきたい」と述べ、大学内外の統合推進派は、大学統合と「都構想」は関係ないと言いだしています。しかし、大学統合をめぐる情勢は大きく変化しています。市民のなかで自治をめぐる議論が高まり、病院も大学も必要なものとの認識が広がりました。学者のみなさんの所見でも「大学が二つあって何が悪い」と大学統合に反対する意見が数多く出されました。市大の学生・院生のなかで「大学統合を考える大阪市大・府大学生の会」ツイッターや宣伝、学習会、パレードなどの行動が生まれています。維新以外の会派、自民党、公明党、共産党、民主党が、「大阪守れ」で一致、共同をひろげました。これらの新しい動きを、市立大学の存続と民主的発展へ生かしていくことが大事ではないでしょうか。市民が共同・連帯をつよめ、暮らしを守り、経済を発展させ、文化輝く大阪をつくりあげていく努力のなかで、大阪市大がその役割をしっかりと果たすよう、私たちも注視していきたいと考えます。

 2015年5月20日 大阪市立大学の統合問題を考える会

2015年05月02日

大阪市立大学の統合問題を考える会、緊急声明「大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!」

大阪 開業支援室
 ∟●大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!

大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!

 「大阪市廃止、5特別区に分割」(いわゆる「大阪都構想」)の賛否を問う住民投票が5月17日に行われます。私たち大阪市立大学の存続・発展を願うものにとって住民投票の結果はたいへん気がかりです。橋下市長は、市立大学について、「キャンパスは残るが、府立大学になる」と言いました。その口調は市大の在学生、教職員、卒業生ら関係者の心情に思いを致さない軽いものでした。大学の統合再編は、二つある箱ものを一つにすればいいという単なる器の議論ではありません。先人の奮闘、努力のうえに築かれ、今に至るかけがえない歴史と伝統、学風、学問研究水準こそが大学の本領です。二つの公立大学を「二重行政」とみて、たんに解消をはかればいいというのは、あまりに一面的で無責任、もったいない話です。
橋下市長が、「二重行政」解消が「都構想」の目的だといい、まず二つの公立大学をあげ、大阪市を解体して、市大、府大を統合することでムダを解消するなどと言っているのは理解に苦しみます。大学統合のために大都市大阪を解体するというのでしょうか。こんな話でしか「都構想」のメリットが語れないというのは驚くばかりです。

 橋下市長は、「首都大学東京の運営費は140億円、府大と市大は計200億円で、分不相応だ」といいます。しかし、富裕自治体の東京都は首都大学東京の運営費の大部分を負担していますが、市大、府大は運営費の多くが国からの交付金であり、大阪は東京に比べてはるかに少ない負担で、市大、府大あわせて二倍近くの学生が学んでいます。市大、府大が「東京に比べて負担が大きすぎる」というのはまったくの偽りです。
 国公立大学の数は、東京13、北海道12、愛知7、福岡7、京都6、兵庫5、広島5、神奈川4、大阪4。統合されると大阪は3校になります。これで大都市大阪がふさわしい高等教育・研究環境を備えているといえるでしょうか。市大、府大は創立以来、市民、府民に、比較的安い学費で、自宅から通える、貴重な高等教育の場を保障し、大阪の知の拠点として、経済・文化・科学技術の発展に貢献してきました。橋下市長も「大学がある街は活気づく」といっています。この大学を減らすことは、市民、府民、そして受験生の願いに反するのではないでしょうか。

 橋下市長は「大学をまとめて規模を大きくし強力にする」といいます。関西には規模の大きい大学がいくつもあるなかで、市大が一定のレベルを維持し、評価を得てきたのは、先人の奮闘と努力によるものであり、規模がすべてではありません。ノーベル賞を受賞した南部陽一郎さんや山中伸弥さんは、市大時代に「自由を満喫できた」「白紙に書けた」と振り返っています。学問・研究の発展にとって、憲法が保障する学問の自由、大学の自治こそ重要と考えます。橋下市長が「学長を選ぶのは市長」「教授会がしゃしゃり出るというばかげたやり方は認めない」というのはそれと相いれません。
あと先考えない大阪市つぶし、「大阪市立大学」をなきものする「都構想」には反対です。

2015年4月30日 大阪市立大学の統合問題を考える会

2015年02月25日

うめきたに新キャンパス 府立大・市立大統合で構想案

日経(2015/2/24)

 統合予定の大阪府立大、大阪市立大は23日、新大学推進会議を開き、「大阪都心にキャンパスを展開する」などとする新大学の基本構想案をまとめた。統合時期は未定だが、新大学の開学に合わせ、新たに大阪の中心部にキャンパスを設置し、国際交流や研究の拠点とする。JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた」の2期区域を想定しているという。

 新大学の理念は「大阪の発展をけん引する『知の拠点』」。グローバル人材の育成などに取り組むほか、社会人大学院「都市経営研究科」(仮称)を設置する。統合の具体的なメリットとして健康科学や創薬、環境などの分野での研究、教育、地域貢献を挙げた。

 両大学は今後、基本構想案を大阪府、市側に提示する。来年4月の統合を目指していたが、関連議案が市議会で否決されるなど統合時期のメドは立っていない。


2014年11月26日

大阪府大・市大、「統合は時期を定めず」

MBSニュース(11/25 )

 大阪市議会の反対で再来年度の統合が延期された大阪府立大学と市立大学のあり方について、25日府市統合本部の会議が開かれ、時期を定めず統合を目指すことになりました。

 府市統合本部の冒頭、大阪府の松井知事は議会の反対で改革が進まないとして、府議会、市議会に議員の参加を呼びかけたことを明らかにしました。

 「両議会に(参加を)お願いしたが、市議会からは参加しないと返事があった。」(松井大阪府知事)

 府立大、市立大の統合は、再来年度という当初予定からは先送りとなりましたが、25日の会議では時期を定めず統合を目指すことになりました。

 現状、できることから始めることとし、新しい大学のあり方が検討され、当面は単位を互いに取れるようにするなど、連携強化を進めることが決まりました。


2014年05月23日

大義も道理もない大阪府大・大阪市大統合問題、講演会に90人、署名が8000超える

大阪 開業支援室
 ∟●大義も道理もない大学統合―講演会に90人、署名が8000超える

大義も道理もない大学統合―講演会に90人、署名が8000超える

2014.5.18統合問題講演会.jpg

 市大と府大の両「考える会」が共催した講演会は、会場いっぱいの90人が参加して、橋下維新が進める「大学統合」が断念されるまで、署名をはじめとする取り組みを強めることを確認しました。

(講演の要旨)

森裕之教授
 橋下維新が目標としているのは関西州を作るということ。「都」はきえてしまう。都構想は大阪市をつぶすことが目的だ。橋下市長の実行力を世間に知らしめることが目的。そんなことのために市をつぶしていいのか。橋下改革の特徴は「統治機構の改革」・「上意下達の組織改革」だが、この二つが大学統合に収れんしている。
 橋下市長は、「大学の存在感がない」というが、大学に存在感が無くて当たり前。彼の単に面白いだけの話だ。大学の先生は「税金で食っている役に立たない集団」、とくに文系の教授、そこで学ぶ学生は「役に立たない」という。上意下達が機能しない大学がゆるせない、という感覚。
 しかし、公募区長や文楽・慰安婦問題などで彼らに失点がつづいた。さらに水道の民営化や堺市長選の敗北、法定協などで「改革」がとん挫しそうだ、なにか成果を見せたい、その道具として大学統合をすすめようとしている。
 新大学構想会議の視点は、「強い大阪」を実現する成長戦略と「でかくなる方がよい」というものだ。その<提言>を見ても市の「ビジョン」を読んでも「改革」は必要ない、と思える。大学のガバナンス改革というが、本質的に上意下達の大学というものは、その組織は劣化するものだ。大学の統廃合の問題は、大学「改革」についてわかりやすい切り口になっている。
「大阪市立大学・府立大学の統合問題と大学改革」レジメは→こちら

小林宏至名誉教授
 大阪の二大学は、東京の役4分の一の純経費で1・9倍の学生に大学教育の機会を提供している。橋下市長の言う財政難は政策的なもので、大学をくっつけたら何か解決するのか。統合によって財政難が打開されるものでは全くない。
「橋下徹市長による府・市二大学『二重行政』論の的はずれな攻撃」レジメは→こちら

参加者の発言
◆学費の心配なく、きちんとした大学を残さなければならない。
◆大学には多様性をつぶしてはならない。乱暴な議論が許されていいわけがない。
◆高校でも学区が撤廃され、進学校には遠くから通っている。補助金をエサに競争させている。安上がりの教育になっている。
◆市大の研究環境が悪化している。15年で教員は3分の2になり、学生数は1.5倍になった。研究費は2分の1から3分の1になった。それも競争的な資金を獲得しなければならない。被害者は学生だ。
◆市大の初代学長・恒藤恭は「死して生きる途」といったが、財政で締め上げて若手が声をあげ辛くなっている。学内にも流動化する空気があり、ここに市民運動の反映があるのでは。大学統合が市民にとって有害なプランであることが知られてきた。「じり貧」論をどのように崩していくか。
◆学外理事を増やすというのはくせ者。京大の例を見ても、政治家と財界が大学を支配しようとしている。
◆藤本統紀子さん(女子大OG)は「もっと愛校心を持とう」「なにをするべきか。強く行動しよう」というメッセージを残された。
 署名の到達点は、8000を超えたことが報告され、さらに伸ばすことが拍手で確認されました。会場で52000円余りのカンパが集められました。


2014年05月21日

大阪府・市大統合考える 講演会中止まで運動強めよう

■しんぶん赤旗(2014年5月20日)

 橋下徹大阪市長らが進めている大阪府立大学(堺市)と大阪市立大学(大阪市)の統合問題を考える講演会が18日、大阪市内で開かれ、講師らが、両大学を「無駄な二重行政」とする「維新の会」の決めつけは的外れだと批判しました。
 会場には、両大学の卒業生ら約90人が集い、市立大卒業生の森裕之丘命館大学教授と小林宏警府立大名善教授が清濁しました。
 森氏は、今回の2大学統合には、組織の統廃合と上意下達型の組織への変質という二つの面があるが、それは大学の関係者の内発的な思いから出たものではなく上から一方的に言われてきたものだと指摘。「つぶすことだけが目的の政治によって日本が誇るべき公立大学をつぶさせていいのか」と訴えました。
 小林氏は、国の助成・交付システムを活用して運営してきた大阪府・市の大学運営は、2008年度の数値を事例に分析すると、東京の約4分の1の純経費で1.9倍の学生に大学教育の機会を提供していると指摘。地域貢献などでも立派に公立大学の役割を果たしており、橋下氏のいう「二重行政」とは正反対だと話しました。
 共催した両大学の「考える会」の関係者は、世論と運動の力で、2016年度の統合が延期されたことを確信に統合中止まで運動を進めていこうと署名活動の強化を呼びかけました。

2014年04月26日

大学統合、大阪府立と市立 16年4月の新大学移行断念

毎日新聞(2014年04月25日)

 大阪府立大(堺市中区)と大阪市立大(住吉区)の統合を巡り、府と市は、計画していた2016年4月の新大学移行を断念する方針を固めた。25日の府幹部会議で正式決定する。関連議案が市議会で否決されるなど実現のめどが立たず、受験生への影響を考慮した。統合計画自体の撤回ではないが、新たな統合スケジュールは白紙とする方針だ。

 大学統合は、府市の二重行政を解消する「大阪都構想」の一環。今年度にまず両大学の理事長を一本化する方針だったが、昨年11月の市議会で、前提となる市立大の定款変更議案が否決された。さらに橋下徹市長の出直し選(3月)の影響で、府市の新年度予算で、カリキュラムを検討する有識者会議の開催経費計上が見送られていた。【林由紀子、熊谷豪】

大阪府立大・市立大の統合延期正式決定 平成28年に間に合わず 

産経新聞(2014.4.25)

 平成28年度の統合を目指していた大阪府立大と大阪市立大について、府は25日、昨年11月に市議会で関連議案が否決されたことを踏まえ、統合延期を正式に決定した。新たな統合スケジュールは今後協議する。松井一郎知事は「われわれ府だけではどうにもならず、残念だ」と述べた。

 府によると、28年4月に新大学を開学するには、今年10月までに文部科学省に申請が必要。ただ、昨年11月に市議会で関連議案が否決されたため、府は府議会への議案提出を見送っており、今後改めて府市両議会で審議すれば、目標期限に間に合わないと判断した。

大阪の府市大学16年度統合断念 橋下市長の公約

共同通信(2014/04/25)

 大阪府は25日、松井一郎府知事らが出席した戦略本部会議で、橋下徹市長が公約に掲げる府立大と大阪市立大の統合問題に関し、これまで目標としていた2016年4月の新大学スタートを断念することを確認した。関連議案の成立が見通せず、文部科学省への正式な認可申請が間に合わないと判断した。

 橋下氏は二重行政解消の一環として、初当選した11年11月や今年3月の出直し選公約で両大学の統合を主張。府市でまとめた計画案に16年4月スタートの目標を盛り込んでいたが、13年11月の市議会で、橋下氏が率いる大阪維新の会以外の全会派が反対し関連議案が否決された。


2014年02月05日

署名開始、「大阪府立大学と大阪市立大学の拙速(せっそく)な統合はやめてください」

大阪 開業支援室
■大阪府立大学問題を考える会・大阪市立大学の統合問題を考える会

大阪府知事宛署名用紙
大阪市長宛署名用紙

大阪府立大学と大阪市立大学の拙速(せっそく)な統合はやめてください

【要請趣旨】
 橋下徹大阪市長は、大阪府立大学と大阪市立大学を平成28年度に統合しようとしています。
 大阪府と大阪市に公立大学があるのは「二重行政」で、「東京と比べて負担が大きすぎる」と言いますが、東京都は「富裕自治体」として、首都大学東京の運営費の大部分を負担しています。しかし、大阪府立大学と大阪市立大学の運営費の多くは国からの交付金です。大阪の国公立大学数は、100万人以上の大都市のある11の都道府県でみれば、今でも下から3番目です。
 大阪府立大学と大阪市立大学は、創立以来、大阪の知の拠点として、経済・文化・科学技術の発展に貢献し、大阪の発展とともに歩んできました。統合でこの大学が減ることは、比較的安い学費で、自宅から通える、貴重な高等教育の場を保障してほしいという、府民、市民、そして受験生の願いに反するのではないでしょうか。
 大阪市議会では、大学のキャンパスや財源などの基本問題が具体化されないまま、統合先にありきのやり方に、強い批判と懸念が出され、提案された「大学関連議案」は否決されました。拙速な統合の撤回を求める学生の「陳情書」も採択されています。両大学の名誉教授ら21氏は、「大学の自治への介入と拙速な統合を憂慮する」声明を発表しています。
 府民や市民に周知せず、議会も反対し、学生はじめ大学関係者への説明も納得もないまま、それぞれ歴史と伝統、学風のある二つの大学を拙速に統合することはやめてください。

【要請項目】
一、大阪府立大学と大阪市立大学の拙速な統合はやめてください。


2014年01月30日

大阪市立大学、「都構想」も行き詰まり 大学統合も「不透明」に

大阪 開業支援室
 ∟●「都構想」も行き詰まり、大学統合も「不透明」に

「都構想」も行き詰まり、大学統合も「不透明」に

大阪市議会において統合スケジュールを前提とした市立大学関連議案が否決(11月22日)されて以来、大学内外で様々な動きが出ています。
西澤市大学長は、年頭あいさつにおいて、この市議会の「否決」について「これは、現在の新大学案では、キャンパスの整備、学部・学域の併設など課題が多くもっと現実的なスケジュールにすべきであるといった理由でありましたが、重要な点は、大学統合そのものが否定されたものではないということです」と、述べています。「あいさつ」で「統合・ガバナンス」問題にほぼ半分を費やし、その意気込みを示しましたが、その内実は不安がいっぱいです。
12月25日には学長が主催し、名誉教授を集めて「説明会」が開催されています。大学総務課にその内容を電話で問い合わせました(1月14日)が、「説明会なので議事録などは公開しない」とのこと。独自に取材してみると、出席者からは、「都構想が行き詰まっているもとで、統合すれば新大学の財政負担はどうなるのか」「大学予算は削られてきた。新大学で増額される保証などないではないか」「統合というが大学内でどのように検討されたのか。設置者がもちだしたものではないか」「国や社会が間違ったとき、これをただすのが大学の役割ではないか」という批判が噴出したことが分かりました。答弁した学長は「都構想が実現し、府・市統合しなければ、法人統合も難しい。財源問題は不透明である。ガバナンス改革を先行させる考えである。今のまま生き残れるのか、厳しい経済状況の下で、大学統合にメリットを認めるものである」と述べるにとどまった模様です。
また、同日には同窓会などへの説明会も開催され、学生にポータルサイトで意見募集を呼びかけています。この意見募集は後日公開される予定とのことですが、市大HPや総務課の担当者の口の端からは「新大学への期待」の声を主に「期待」していることがにじんでいます(募集は1/24まで)。
学長選考は、西澤現学長のみが立候補し、学長選考会議は同氏を推薦することを決定しました。学長選考会議の議事録が公開されていますが、学長・理事長分離の議案が否決されたことについて、「ガバナンス」をめぐる「恨み節」と混乱が延々と述べられています。
なお、卒業生には「大学サポーター」に登録すれば、統合に関する情報をメールで送ってくれます。(詳しくは市大HP「ステークホルダーの皆さまへ」で)
「大阪市立大学の統合問題を考える会」は、「拙速な統合をやめてください」という内容の署名運動を「大阪府立大学問題を考える会」とともに取り組むべく、準備を急いでいます。


2013年12月10日

市大考える会、「市大・府大の統合問題を考える」学習会を開催

大阪 開業支援室

「市大・府大の統合問題を考える」学習会を開催

12月6日、市大・府大の統合問題を考える学習会が市大近くの集会所で開かれ、会場いっぱいの約30人の参加者を迎えました。今後も、統合問題の真相を大学内外に知らせるために、学習会などの取り組みを広げることを申し合わせました。

市民資産としての大学を守ろう  森裕之・立命館大学教授(市大商学部卒)講演

「大阪は貧しい」と恐怖で統治する方法をとった大阪維新の会は、都構想が看板だった。しかし、相次ぐ失点や住民投票などに至るまでに相当な準備期間がいるために、「政治は実行力」を掲げる維新にとっては何か成果が必要になる。その成果を示しやすいのが大学統合だ。表立った反対の声がないことや、外堀を埋められてきたことがある。
「新大学ビジョン」は規模が拡大すれば世界的な競争で勝負できるという単純な物量主義だ。大学改革のとりまとめをするのが経済戦略局とは、経産省が国立大学を所管しているというほどにおかしなこと。
苦しい教育環境を解決するには予算を増やすことしかない。大きな大学になることで「水ぶくれ」を期待するむきもあるが、首都大学東京を見ても、教員はすべて契約制・毎年更新という、恐怖のなかで仕事をせざるを得ない状況がある。
市大は法律を変えてまで設立しようとした関一らの努力の賜物だ。関の精神を将来につなげ、担うものとして市大の設立が考えられた。今言われている改革は、実践や声の積み上げがない机上主義だ。他の公立大学の統合でうまくいったという例はない。


2013年12月04日

大阪市立大学、学長選考で意向投票を廃止 外部委員が主導

大阪 開業支援室
 ∟●大阪市立大学の統合問題を考える会

学長選考で意向投票を廃止 外部委員が主導

 大阪市大の理事長(兼学長)選考が告示されました。
 今回の理事長(学長)選考では、定款の変更ができなかったため、理事長・学長の分離はできませんが、外部委員の増員という点では、さしあたって理事長選考会議委員に外部委員を優先し、内実は先取りして、外部の意向できめられるやり方に変えるというものです。
 大阪市大の理事長(兼学長)選考会議は、22日の大阪市議会都市経済委員会で、橋下市長提案の統合にむけた市大の定款と中期目標の変更案が否決される前日21日に、その選任と議事が行われていました。なお、二つの変更議案は、29日の市議会本会議でも、維新以外の全会派の反対で否決されました。
 市議会は市民の意向を反映する面があります。今回の審議では「統合先にありき」「学内、卒業生の意向をちゃんと聞いてほしい」という疑問点が共通して出されましたが、そういう意見にはとらわれないという姿勢が見えます。
 こういう学内および市議会の意向をふまえないやり方は許されるのでしょうか。
 また、学内で、こういうやり方に異を唱える声があがるでしょうか。(T)

(以下、参考まで関連資料を紹介します)

●21日の市大経営審議会議録から
11 月21 日(木)午後1時~1時20分  議長は西澤理事長(学長)
理事長選考会議委員に野村委員、吉川委員、柏木委員を選出。
(外部委員)地元の財界人でもあるので、理事長選考会議にそういう意見をきっちりと反映させるという趣旨から、野村委員を推薦したい。
(議長)在阪の財界人ということで野村委員が推薦されたが、いかがか。
(一同)異議なし。
(外部委員)法制度に詳しい、吉川委員を推薦したい。
(議長)吉川委員に参画してほしいという意見であるが、いかがか。
(一同)異議なし。
(議長)外部委員ということで野村委員、吉川委員の2人が決まった。それでは、定款第10条第6項に基づき、副理事長及び理事のなかから残り1名を選出することになるが、これについては意見はないか。
(内部委員)前回、前々回の理事長選考会議においても、副理事長職が委員に就任しており、今回についても、ガバナンス改革についても詳しく、内容についても理解されている副理事長の柏木委員を推薦したい。
(議長)これまでの事例からも柏木委員が良いのではないかという意見であるが、いかがか。
(一同)異議なし。
(議長)それでは、経営審議会からの委員選出については、野村委員、吉川委員、柏木委員の3名で決定とする。これで経営審議会からの選出者は、全員外部人材ということになる。教育研究評議会から選出された石河委員、鈴木委員、日野委員は内部人材ということになるので、半数は外部人材で占めることになる。これは、ガバナンス改革の提言を先取りした形になろうかと思う。

●第一回理事長選考会議録から
11月21日(木)午後1時30分~3時20分
互選で、柏木孝議長、野村正朗議長職務代理者を選任。  (いずれも外部人材)
理事長選考方法について、従来の手法にとらわれることなく、大阪府市新大学構想会議による「ガバナンス改革について」の提言の趣旨を踏まえ、推薦を受けた候補者から理事長を選考する方針を決定。後日メール会議にて第2回理事長選考会議を速やかに開催し、承認することとした。
(これまでの理事長選考規程は、 その趣旨で“市大定款に基づき理事長選考会議が行う市大の理事長の選考に関し必要な事項を定めるものとする”とさだめ、本文は「(意向投票の実施)第5条 理事長選考会議は、理事長の選考に当たり、法人内の意向を調査するため、意向投票を行う」というように、記述の大半を意向投票の方法にあてていました)。
今回は、橋下市長の意向をうけて学内の意向投票を廃止し、選考会議が被推薦者を選考して、理事長候補一人にしぼり、その者を「法人の申し出に基づき」市長が任命するというものです。

会議録では興味をひく議論もあります。
・意向投票廃止は、「学内でのしこりを残さない」からと理由づけしています。さすがに橋下市長が、教授の意見など聞く必要がないと公言していることはあげづらかったでしょう。
・一方で、「選考会議が落とした人に、どう理由を説明したらいいだろうか。これまでは投票数できまっていたからそれでよかったが」との意見も。
・関係者の共感をえられるかどうかは心配になるようです。
「意向投票が大学自治のなかで続けられてきた。今回、教員に理解してもらえるだろうか」。
・「今回、異例な人が推薦される可能性はある」「ちゃぶ台をひっくりかえしてしまうとか」「大学は統合する必要がないという候補が出るかもしれない。所信表明は、こちらの設問に答える形にしてはまずいか」。
・露骨ないい方も。「今回は、ガバナンスの先取りだ」。
・定款はどうなるのか。
・継続審議にでもなれば、またややこしい。(……否決されましたけど)


2013年11月30日

大阪市議会、橋下市長提案の大学統合案を否決!

大阪 開業支援室

橋下市長提案の大学統合への議案が否決!

 11月22日の大阪市議会・都市経済委員会は、橋下市長が提案した、
① 大阪市大の定款変更案――市大の理事長と学長を分離し、学長は学外者が多数を占める選考会議の選考を経て理事長が任命、また理事や教育研究評議会に学外者多数を登用する。
② 同じく中期目標の変更案――府大との統合推進を明記し、「強い大阪を実現するための知的インフラ拠点として大阪の成長に貢献し」を書き込む。
――この二つの議案を、維新以外の全会派の反対で否決しました。
 討論では、維新以外の会派の討論者は、そろって橋下市長の「統合先にありき」の姿勢を批判しました。
 橋下市長はなお、学長選考時の学内の意向配慮をやめること、教授会の役割を軽視する姿勢に固執し、「大学の自治」に挑戦する態度を改めようとはしませんでした。しかし、ご本人の提案が、目の前で否決されたことはショックでしょう。(2013.11.22)

インターネット録画
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/committee/20131122tos.html

(朝日新聞2013.11.23)

府市大学理事長「一元化」否決へ 大阪市議会

 2016年度に大阪府立大との統合を目指す大阪市立大の理事長と学長の兼職を来年4月から分離するための議案が、開会中の大阪市議会で否決される見通しとなった。松井一郎知事と橋下徹市長は両大の理事長を一元化して統合の旗振り役とする方針だったが、大阪維新の会をのぞく4会派が「統合の是非の議論が深まっていない中、統合の地ならしには賛成できない」などとして反対に回った。
 市幹部は「理事長一元化は必須条件ではなく、統合スケジュールに影響はないが、統合プランの中身の修正は必要となるだろう」と話している。

(産経新聞2013.11.22)

またも橋下氏苦境に! 大阪府・市立大統合で市長提案の議案が市議会で否決

 大阪市立大と大阪府立大の統合を目指している橋下徹市長が統合に先立ち、市立大の理事長と学長の兼務をなくすために提出していた関連議案が22日、市議会委員会で否決された。29日の本会議でも否決される見通し。橋下市長は出鼻をくじかれた格好だ。

 市立大と府立大は理事長が学長を兼務。議案では市立大の理事長と学長の兼務をなくし、理事長は学校経営に、学長は学問にそれぞれ役割を分担。府市では兼務を解消させた上で両大学の理事長を同一人物にし、平成28年の大学統合を目指している。

 委員会では「兼務でも実績は出ている」「統合ありきの変更で時期尚早」と反対意見が噴出。大阪維新の会を除く公明、自民、民主系、共産の4会派の反対で否決された。

 橋下市長は否決後、「(統合のスケジュールに)影響がでないよう頑張る」と述べたが、市長答弁を求めたのが共産だけだったことに触れ「市議会の審議のやり方はちょっと特殊だ」と不満を漏らした。


2013年10月19日

橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する

■大阪府立大学と大阪市立大学の統合問題を考える懇談会
 ∟●橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する

橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する


橋下市長の大学自治への介入を憂慮する

 大阪府と大阪市は、10月9日、大阪府立大学と大阪市立大学を統合した新大学を設置・運営する新法人について「新法人基本方針」を発表し、同時に府・市・両大学が策定した「新大学案~新世代の大学~大阪モデル」を発表しました。両大学の統合計画を立案してきた大阪府市新大学構想会議(両大学関係者は委員に入っていません)から同日、新大学の「ガバナンス改革について」の提言も出されました。市大・府大統合計画を実行に移す態勢が整ったといえます。しかし、大学自治にかかわる二つの大きな問題があります。

 一つは学長選考のあり方です。新大学では理事長と学長を分離し、理事長は設立団体の長が任命し、学長選考については学外者が多数を占める学長選考会議(学外者が委員長)が行い、「全学意向投票」は廃止するとしています。 橋下徹大阪市長は、8月9日の記者会見で大阪市大の学長選考における教職員の意向投票について「学長を選ぶのに何の権限もない教職員が一票を投じるなんてふざけたことを言ってきた、まかりならんと突き返した」と、意向投票があたかも不法、不当なものであるかのように攻撃し、制度の見直しを指示していましたが、市長の意向を反映した方針が出されたことになります。

 学長選考における意向投票は、大阪市大の定款及び理事長選考規程に基づいて大学内の意向を調査するためのものであって、何ら不法なものではなく、国立大学でこれを実施している大学も多く、市長の発言は一般市民に誤解を与えかねないきわめて悪意のある発言です。大学が国民から付託された使命を果たすためには、教職員の高度の自発性と深い責任の自覚が不可欠であり、適切な意向投票がそれに寄与することは疑いありません。 もう一つは、新大学における教授会のあり方です。教授会は、学校教育法で「大学には、重要事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と定められています。大学運営の要をなす組織です。ところが橋下市長は10月9日の会見で「人事に教授会がしゃしゃり出るというばかげたやり方は認めない」と強調しました。現在、大阪市大では研究科長は研究科教授会で選ばれていますが、新大学ではこの選出方法をやめ、部局長(研究院長等)の推薦する複数の候補者から学長が選考し、理事長が任命するとしています。また、現在教授会がおこなっている教員人事は、学長のもとに人事委員会を設置し、人事を一元化するとしています。新大学では教授会の人事が奪われ、大学自治を担う基本組織が弱体化することが懸念されます。

 大阪市は、2016(平成28)年の新大学設立に向け、まず今秋、大阪市大の現「定款」を変更して理事長と学長を分離し、意向投票を廃止した新選考規程によって次期学長選考を実施しようとしています。大阪市大はいま重大な岐路に立たされているといわなければなりません。

 大阪市大は、近代大阪の骨格をつくった大阪市長・関一の絶大な努力によって創設された大阪商科大学の自由の学風をうけついで、戦後、他の市立高等教育機関と合わせて日本最大の公立総合大学として創設されました。学長選考問題に留まらず、市大で長年にわたって築きあげられてきた学問の自由と大学自治の伝統がいま根底から脅かされているのではないでしょうか。市大で起こっている事態は大阪府大にも深くかかわる問題です。

 大学の自治は、憲法23条の「学問の自由は、これを保障する」という規定に基づく大学存立の大原則です。これは、日本の大学が戦前、京大滝川事件など国家権力の弾圧でその使命を十分果たせなかったことに対する痛切な反省に基づいて生まれた規定です。大学自身がたえず厳しく自己を省みることは当然ですが、大学をめぐる環境が変化するなかでも、大学の自治はその真価を発揮させていくべき普遍的原理です。橋下市長は、世界と日本の歴史が生みだした学問の自由と大学自治という普遍的価値をまったく理解していないと言わなければなりません。

府大・市大の拙速な統合を憂慮する

 大学には独自の建学の精神と伝統があり、専門分野も独自に発展を遂げてきました。大阪市長・関一は、商科大学設立にあたって、「国立大学のコッピーであってはならない」、「大阪市立大学は、大阪市を背景とした学問の創造が無ければならない。この学問の創造が、学生、出身者、市民を通じて、大阪の文化、経済、社会生活の真髄となっていくときに、設立の意義を全くする」と述べました。この理念は日本の公立大学の歴史における輝かしい歴史的達成であり、戦後の新制大阪市大にも発展的にうけつがれ、いまも2010年の「大阪市立大学憲章」などにその発展した内容を見ることができます。府立大学にもまた、独自の建学理念と大阪に根ざした個性的な歴史があります。しかし、今回の「新大学案」では、かつてない「改革」に立ち向かうために想起すべき両大学の歴史と自由の伝統、それに基づく個性的かつ普遍的な大学の理念が生き生きと伝わってこない憾(うら)みがあります。

 大学の統合はそれぞれの大学の内発的要求が合致し、財政的保障が十分なされなければ難しいと言わなければなりません。現在は予算削減が先行し、「新大学案」においても「新法人」への府・市の財政的支援方針の策定は次年度以降にまわされています。優れた人材が大学を去る事態さえ起こりかねないと懸念します。高度の有機的な研究教育機関である二大学の統合計画をこのまま進めるというのはあまりに拙速と言わざるをえません。

 府大・市大の統合問題は、大阪府民・市民にとってもきわめて重大な問題です。府民・市民にとって、比較的安い授業料で自宅から通える二つの公立総合大学があることは大きな意味があります。

 橋下市長は、府内に府大・市大が存在するのは「二重行政」であり、あわせて2百億円の運営交付金は府民・市民の過重負担だと批判してきました。しかし、公立大学設置自治体には総務省助成交付金があるため、2008年度でみると、府と市の運営交付金240億円の約8割(190億円)は国から助成され、府と市の純経費(持ち出し)はあわせて約42億円にとどまります。橋下市長の発言は、国の助成を無視した妥当性を欠く発言です。ちなみに、府立大学の学生一あたり純府経費は11万7千円で、2010年度に始まった高校授業料無償化額11万8800円と同水準です。二大学統合の結果、子や孫の学ぶ場が今までどおり保障されるかどうかに府民・市民は大きな関心をもたざるをえません。橋下市長は統合の目的を「大阪の成長戦略への貢献」においていますが、大阪の知的・文化的拠点である公立二大学の統合は、より総合的な府民・市民の立場から慎重に検討されなければなりません。今年3月の大阪市議会財政総務委員会では、「市立大学と府立大学の拙速な統合撤回を求める陳情書」が賛成多数で採択されましたが、当然の市民の声といわなければなりません。

 私たちは、「新法人基本方針」や「新大学案」が発表されたこの機会に、両大学の内部で徹底的な討論が起こることを期待します。私たち、両大学の元教員や卒業生なども、この機会に学内の皆さんとともに、大阪府民や市民の意見も尊重しながら、両大学の将来のあり方を真剣に考えたいと思います。その立場から、橋下市長の大学自治への介入と統合計画の拙速な推進を深く憂慮することを表明いたします。

2013年10月15日
大阪府立大学と大阪市立大学の統合問題を考える懇談会
世話人 (○印は代表世話人)
東 恒雄(大阪市立大学名誉教授)
飯田 武(大阪市立大学名誉教授)
石神正浩(大阪府立大学名誉教授)
今井義郎(元大阪府立大学教授)
上田悦範(元大阪府立大学教授)
甲斐道太郎(大阪市立大学名誉教授)
川崎東彦(大阪府立大学名誉教授)
鬼追明夫(元日本弁護士連合会会長・大阪市立大学卒業)
○ 小林宏至(大阪府立大学名誉教授)
梶浦恒男(大阪市立大学名誉教授)
木津川計(「上方芸能」発行人・大阪市立大学卒業)
澤田進一(大阪府立大学名誉教授)
高森康彦(大阪府立大学名誉教授)
直木孝次郎(大阪市立大学名誉教授)
西谷 敏(大阪市立大学名誉教授)
穂波信雄(大阪府立大学名誉教授)
増田繁夫(大阪市立大学名誉教授)
溝川悠介(大阪府立大学名誉教授)
三本弘乗(元大阪府立大学教授) ○ 宮本憲一(大阪市立大学名誉教授・滋賀大学名誉教授)
和田野晃(大阪府立大学名誉教授)



[同ニュース]
橋下大阪市長の府・市大学統合問題、大学関係者が憂慮声明
府立大・大阪市立大:統合計画 OBら声明「拙速な統合、憂慮」 /大阪

2013年10月18日

学長人事選考をめぐる諸問題についての公大連見解

学長人事選考をめぐる諸問題についての公大連見解

2013年10月7日
全国公立大学教職員組合連合会中央執行委員会

 去る8月9日、橋下徹大阪市長が、任期満了に伴う大阪市立大学の学長選考を前にして、大学自治を侵しかねない重大な意見表明を行ったことが、新聞等により報道されました。同大学がこれまで教職員による学長選挙を実施し、その結果にもとづいて学長選考会議が候補者を市長に伝えるという手続きを踏んでいたのに対し、橋下市長は「(教職員による選挙につき)ふざけたこと。そんなのは許さん。」「選考会議に僕の意見を反映させる。それが民主主義だ。」と述べ、同大の学長選考に直接介入する意志を示しました(8/9朝日新聞夕刊)。この問題は一大学の内部事情にとどまらず、全国的に学問の自由と大学自治に多大なダメージを与えかねない危険性を孕んでいます。

 そもそも、大学構成員による学長選挙は大学自治の一環として、戦後日本の大学で通常に行われてきたものです。確かに大学の法人化を契機として、多くの公立大学では構成員による選挙の規程を失い、一部に意向投票の制度を残すのみとなってしまいました。しかし、国立大学においては、今でもこの全学投票が大きな力を有していますし、私立大学においても同様の手続きで学長を選出することは決して特異な例外ではありません。このような制度に対し、橋下市長は「何の責任もないメンバーが1票を投じるなんてまかりならない。選挙で選ばれた市長が任命するのが民主主義だ。」と話したとも報道されています(同日付毎日新聞夕刊)。報道された発言の細部に誤りがないとすれば、まことに奇異な主張です。

 大学運営に「責任」は重要だと思います。けれども「何の責任もないメンバー」とは誰のことなのでしょう。もしそれが大学構成員を指すことばであるとするならば、大学という組織や制度に対する大いなる無理解だと言わざるをえません。また、「選挙で選ばれた」ことが絶対的な力の根源であるならば、大学の中での選挙を敵視することと根本的な矛盾とならざるを得ないと思うのですがいかがでしょう。大学構成員にだけは民主主義は要らないということでしょうか。

 しばしば、大学を企業に擬えて「トップを選挙で選ぶ会社がどこにあるか」などと、構成員の意向投票を敵視する発言が法人化以降いくつかの大学で見られますが、大学の運営は企業経営とは全く違うものです。大学は、運営そのものが「学問の自由」や「大学自治」と不可分の関係にあるからです。また、それ故にこそ、憲法23条において「学問の自由」が明文化され、ユネスコの「高等教育職員の地位に関する勧告」第18項にも、大学の自治を、「学問の自由が機関という形態をとったものであり、高等教育職員と教育機関に委ねられた機能を適切に遂行するための必須条件」と規定しているのです。加えて地方独立行政法人法の採決に当たっての附帯決議にも、「憲法が保障する学問の自由と大学自治を侵すことのないよう、大学の自主性、自律性が最大限発揮しうる仕組みとすること」とあったのではないでしょうか。

 運営費交付金というお金を受けている以上、大学運営の説明責任は重いと思います。しかし独立行政法人化した公立大学は、大学基準協会等の審査を受け、且つ設置団体の評価委員会の審査を受け、というように、既に過大なまでの説明責任を果たしています。「責任」を根拠として学長選挙に否定的な意見が一部の大学で見られますが、学長を公選にしている大学は現在でも数多くあります。これらの大学で、何か重大な責任を負うべき不祥事でもあったというのでしょうか。仮にそうした事例があったとして、それは学長の公選に原因を有していたというのでしょうか。

 大学は、原則的に何十年と継続していくことを想定して運営されています。組織的に社会に容認されないような運営を行えば、たちどころにその責任は大学構成員に跳ね返ってきます。この間、大学改革と称して数多くの政策提言がなされ、矢継ぎ早にその実施を求められた案件が数限りなくあります。また、この後にも幾つもの案件が控えています。しかし、教育・研究・診療の現場をまったく顧慮しない多くの改革案に対し、その効果を検証して「責任」を負うのはどこの誰なのでしょう。大学運営の「責任」を問題とするということは、そういうことなのではないでしょうか。

 教育も研究も、その成果の検証には時間のかかるものです。短期的視野で思いつき的に導入された諸制度が破綻したときには、責任をとるべき当事者がいない。それが、討議と選挙の機会を奪われた大学の現状であり、そのことこそが問題なのだと我々は考えています。

 最後に設置者権限という観点から一言述べておきます。
 確かに現在の地方独立行政法人法によれば、理事長の任命を設置団体の長である首長に委ねています。しかし、法人定款に定められた学長選考の機関である選考会議にまで、首長が直接介入することは想定されていない事態です。もし、大学自治の原則を犯してまで設置団体の長がここに介入するのであれば、そこには重大な不祥事など、首長の介入が必要とされるそれなりの根拠が必要となるはずです。

 もちろん公立大学はその設置形態からしても、設置団体との有機的な連携の中でその存在意義が発揮されるべきものです。しかし、それと同時に大学は教育・研究・診療という面で、更に大きな社会的責務の中で自らの使命を果たすことが求められています。そのような大きな観点から、大学の責任と体制は議論されなければなりません。大阪市のように首長が直接学長人事に介入せずとも、大学と設置団体、大学と市民との連携はこれまでにも十分に果たされてきましたし、これからも機能していくことでしょう。

 大学の自治について、附帯決議というような形でしか保証されなかったことに顕著なように、公立大学の地位は非常に不安定です。その不安定さを利用して設置団体の長が大学に干渉することは、特別な事情のない限り退けられるべきことです。大学の自治や学問の自由を持ち出すことは、決して大げさなことではなく、このような恣意的な政治介入を見過ごすところから大学の瓦解は始まるのだと、我々は警鐘を鳴らし、広く訴えたいと思います。


2013年10月11日

大阪府市新大学構想会議、「ガバナンス改革について」 学意向投票を実施しない

大阪府市新大学構想会議
 ∟●ガバナンス改革について(2013年10月9日)

ガバナンス改革について

大阪府市新大学構想会議
2013年10月9日

目 次
1. 現行のガバナンス体制の課題
2. 改革の方向性
(1) 法人経営と教学体制の分離
 (2) 学長、教育研究組織の長の選考
(3) 教員人事のあり方
(4) 目標管理と評価
(5) キャンパス戦略

1. 現行のガバナンス体制の課題

・府立大学、市立大学ともに独法化や合理化の過程で、この数年間、運営の仕組みを変えてきた。

・しかし、時代の流れを先取りしたダイナミックな資源(ヒト、モノ、カネ)の重点配分ができるリーダーシップ構築に向けて一層の改革が求められる。

・また、評価(教員活動評価、授業評価など)結果の公開に基づく自律的改善の仕組みや透明性の確保が不十分である。

・ 新大学の設計にあたっては、これらのガバナンス課題を解決できる体制を構築する。

・府立大学及び市立大学の既存の部局の細則や申し合せ等については、学長選考、教員人事に関する大学規則に沿って、廃棄もしくは修正すべきである。

……(略)……

(2) 学長、教育研究組織の長の選考

④ 学長選考の方法

・法人化した大学において、法人の経営審議機関と教育研究審議機関の構成員のうちから選出された者で構成する理事長・学長選考会議の申し出に基づき、設立団体の長が理事長・学長を任命する(地独法71条)。

・理事長=学長の選考に際し、意向投票を行うかどうかは法律や定款事項ではない。選考会議の判断により、国立大学などで行っている例が多いが、公立大学では、大阪市立大学、下関市立大学など数例しかない。

・加えて、現行の市立大学方式は、選考委員の2/3が学内者であり、学内関係者の意向を強く反映する仕組みとなっている。

・府立大学は、法人化を契機に学内の意向投票を廃止したが、市立大学は従来から、学内の意向投票を実施しており、法人化後も引き続きこの手法により実施してきた。

・理事長と学長を分離した場合の学長選考方法も、法人の経営審議機関と教育研究審議機関の構成員のうちから選出された者で構成する学長選考会議の選考に基づき行う、となっている(地独法71条、P7概念図参照)。

学長・理事長分離体制のもとでの学長選考の考え方

1.設立団体との協調
設立団体が策定する中期目標を誠実に実行するとともに公立大学としての大学運営に関し、市民に責任を負える人材を選任すること

2.理事長との協働
理事長と協働して中期計画を効率的に実行し、大学改革をリードする人材を選任すること

3.学内の意向を反映
教育・研究や改革の実際の担い手である教職員のモチベ―ションの向上につながる選考方法であること

4.全学意向投票の廃止
学内部局間、キャンパス間、教員間でしこりを残さないため全学意向投票を実施しない

⑤ 研究院長・研究科長、学部長・学域長等の選考の方法

・市立大学では、学部長は教員による学部運営に責任を負うことから互選で選ばれている。しかし、学部長は、教育研究評議会委員でもあり、学長とともに大学運営を牽引する責任も負っており、任命権は理事長にある。
・府立大学もかつては教授会による選考だったが法人化を契機に改革し、学域長等の推薦に基づき、理事長が選考・任命することとした。学域長等は、当該学域等の専任教授のうちから学域長等候補者として2人以上の者を理事長に推薦している。(推薦方法は問わない。)
・新大学では、研究院長等部局長が2-3人を推薦し、学長がその中から選考し、理事長が任命することとする。(但し、開設時別途検討する。)
・研究院長は、原則として対応する研究科長、学部長・学域長を兼任する。 ただし、対応する学部・学域が複数の場合、または学部・学域、研究科に対応する研究院が多数の場合は、学長が独自に選考し、理事長が任命する。
……以下,略……

大阪府立・市立大統合「学長選廃止を」 有識者会議提言

日経(2013/10/10)

 大阪府立大と大阪市立大の統合のため府市が設置した「新大学構想会議」は9日、統合後の大学では学長選考で教職員による投票を廃止することや、理事長と学長を分離することなどを求める提言を府市に提出した。

 提言は両大学のガバナンス体制を検証。市大は教職員の意向投票結果を尊重して学長を選んでいるが、こうした方法は公立大では数例しかないとして廃止を提言。大学法人の経営審議機関と教育研究審議機関の構成員から選出した選考会議が選び、最終的には首長が任命するよう求めた。

 理事長と学長の兼務もやめ、理事長は経営や改革を担当し、学長は教育研究を担当する体制が望ましいと指摘した。

 市大の学長選考を巡っては、橋下徹市長が8月「全教職員の投票なんか許さない」と述べ、選考方法の見直しを指示していた。


2013年08月10日

橋本徹、大阪市立大の学長選 廃止の意向表明

毎日新聞(2013年08月09日)

橋下大阪市長、市立大の学長選、廃止の意向表明

 橋下徹大阪市長は9日、大阪市立大の学長を教職員らの投票などで選ぶ制度を廃止する意向を表明した。今後は橋下市長の意向を反映させた選考会議で選定する方針。市役所で記者団に明らかにした。

 橋下市長は「僕の意見を反映させる。何の責任もないメンバーが1票を投じるなんてまかりならない。選挙で選ばれた市長が任命するのが民主主義だ」と話した。

 市立大によると、現在は、全教職員が学長候補者を投票し、辞退者を除く候補者から、常勤教員らが2次投票。その結果を考慮し、大学幹部や有識者でつくる理事長選考会議が決定する。

 市立大は「大学の自治を重視し、教職員の意向を反映できる仕組みにしている」と話し、国立大の多くが同様の制度を導入しているという。現在の西沢良記学長の任期は今年度末までで、9月ごろから投票が行われる予定だったが、見直しを検討している。


[関連ニュース]
橋下氏、大阪市立大学長人事での教職員投票を否定
橋下大阪市長、市立大学長選認めず 「選ぶのは市長」

2013年06月25日

大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

大阪市立大学教職員労働組合
 ∟●2013年6月18日 大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

 大阪市立大学は今、消滅の危機にある。
 本年4月、大阪市立大学は、大阪府市新大学構想会議より出された「新大学構想<提言>」を受け、「新大学検討本部」を設置した。同本部は8月を目途に、統合後のより詳細な大学像を示す予定となっている。
 こうした動向は、2016年4月に新大学を発足させるというスケジュールに基づくものと考えられるが、今日の本学および府市をめぐる状況を鑑みれば、非常にリスクの大きい計画を拙速に進めるものであると言わざるを得ない。
 大阪市議会では、府市の水道事業統合条例案が否決され、自民・民主・共産の3会派からは市長に対する問責決議案が提出されるなど、大阪都構想の先行きは不透明さを増しているが、その一方で大阪市は、「都構想とは切り離して大学の統合を目指す」と明言している。
 府市が存続した状態での法人統合には、地方独立行政法人法の改正が必要だが、現在の国会情勢を見るに、2016年度の統合に間に合うかは疑問を呈さざるをえない。この場合、「いずれかの法人を解散させ、もう一方に吸収させる」という手法が最終的な手段として想定できるが、都構想の趣旨を踏まえれば、「大阪市立大学が消滅、大阪府立大学が存続」というシナリオが有力視される。
 これまで大阪市立大学が果たしてきた役割を背景として、長年にわたり培ってきた「市民の誇りとなり、市民に親しまれる大学」としてのアイデンティティーが失われるということを、大学法人は理解しているのだろうか。卒業生、在校生、教職員、そして大学の発展に協力してこられた方々は納得できるのだろうか。
 我々は拙速な統合のもたらす未来を憂慮する。
 新大学構想会議で示されたように、法人化後の運営費交付金の大幅な削減をはじめとする「改革」により、大学は疲弊した状態にある。教員人数の減少で、教員1人当たりの学生数は増加。市派遣職員の急激な引き揚げおよび同時に進められた職員の非正規化により、大学運営の継続性・安定性はゆらいでいる。学生サポートセンターへの移行等の再編により発生した問題も解消されていない。
 急激に予算を削減し、大学を二重行政と切り捨てた自治体が、統合後の大学に大学二つ分の予算措置を行うことがあるだろうか。財源については未だにその方針が明らかにされていないが、大学の統合により従前の予算規模が維持されないような事態になれば、大学に対する社会の期待の高まりに反して「教育」「研究」「診療」の質を低下させ、府市の描く「強い大学を実現する知的インフラ拠点」「研究で世界と戦う大学」といったビジョンとは全く逆の結果をもたらすだろう。
 我々は、こうしたリスクの存在を含めた、メリット・デメリットの十分な検討と議論を行わず、時期だけを優先した拙速な統合に反対する。

2013年6月18日
大阪市立大学教職員労働組合
執行委員会