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 カテゴリー 慰安婦問題

2015年02月11日

元朝日記者が桜井よしこ氏ら提訴 「慰安婦捏造は名誉毀損」-札幌地裁

時事通信(2015/02/10)

 元朝日新聞記者で従軍慰安婦報道に関わった北星学園大(札幌市)非常勤講師の植村隆氏(56)が10日、「捏造(ねつぞう)記事」などと書かれて名誉を毀損(きそん)されたとして、ジャーナリストの桜井よしこ氏や記事を掲載した雑誌の発行元に計1650万円の損害賠償や謝罪広告を求める訴えを札幌地裁に起こした。
 訴状によると、桜井氏は自身のホームページのほか、「週刊新潮」、「月刊WiLL」、「週刊ダイヤモンド」などに記事を寄稿。植村氏の記事について「明確な捏造記事」だと述べ、「学生を教える資格があるのか」と植村氏を批判した。
 提訴後に記者会見した植村氏は「これまで自分の記事が捏造でないと根拠を挙げて論証してきたが、大学への脅迫はやまない」と説明。「言論戦だけでなく、司法判断を仰ぎたい」と語った。

2014年11月05日

北星学園大脅迫、全国の弁護士200人以上が刑事告発へ

毎日新聞(2014年11月04日)

 ◇7日にも容疑者不詳で札幌地検に威力業務妨害容疑で

 従軍慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者、植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)に脅迫状が届いた事件で、全国の弁護士が7日にも、容疑者不詳で札幌地検に威力業務妨害容疑で刑事告発する。弁護士200人以上が告発人に名を連ねる見込みだ。

 告発するのは札幌市や東京都、大阪市の弁護士5人が発足させた「北星学園大学への脅迫行為を告発する全国弁護士有志」で、「言論封じのテロというべき卑劣な行為。言論と学問の自由が危険にさらされている」と訴えている。

 北海道警や北星学園大によると、脅迫状は5月29日と7月28日に届いた。「非常勤講師を辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける」などと書かれ、虫ピン数十本が同封されていた。道警は既に威力業務妨害容疑で捜査している。

 同大の田村信一学長は植村氏を次年度以降は雇用しない考えを示している。雇用打ち切りの動きに危機感をもった同大の教授ら約20人は4日、学内で集会を開き、「結論を出すのは時期尚早。学内の意見を広く聞くべきだ」と訴えた。植村氏の雇用継続を議論する5日の大学評議員会に、公聴会の開催を求める要望書を手渡す方針。


2014年11月01日

がんばらない北星学園大学

北海道新聞(2014/10/31)

元朝日記者の講師契約打ち切りか 脅迫事件の北星学園大

 札幌市厚別区の北星学園大に、元朝日新聞記者の非常勤講師の解雇を要求する脅迫状などが届いている問題で、教職員らで30日に結成した「大学の自治と学問の自由を考える北星有志の会」は、同大が来春、この講師との契約を更新しない方向で検討に入ったことを明らかにした。

 有志の会によると、田村信一学長が29日、学内の会議で初めて表明した。講師を雇用し続けるには、人的、財政的な負担が大きすぎ、来年度の入試も不安、との理由を挙げたという。学長は11月5日に予定している評議会に諮問し、理事会の意見を聞いた上で、学長として最終的に判断するとの考えを示したという。

 この講師は2012年からこれまで、1年ごとの契約を2回更新している。同大は北海道新聞の取材に、「内部の会議での話なので、内容は答えられない。(講師の契約については)学内手続きにのっとって進める」と話した。

 大学関係者によると、北星大は脅しの電話、メールに対応する職員や警備員を雇ったため、1500万円前後かかった。爆破予告により、授業や入試が妨害されることも心配している。

 同大は9月30日、田村学長名で「本学に対するあらゆる攻撃は大学の自治を侵害する卑劣な行為であり、毅然(きぜん)として対処する」との見解を発表していた。

 有志の会の初会合には教職員20人が参加。事態の急展開を受け11月4日、情報共有の学内集会を開く。

 攻撃されている非常勤講師は1991年、朝日新聞に韓国の元慰安婦の証言を韓国紙に先駆けて報じた。

 国内の著名人らが呼び掛け人になり、脅しに屈しないないよう運動している「負けるな北星!の会」は、「結果として、こうした(不当な)要求を受け入れたら、ほかにも波及する。結論を急がず、論議を深めてほしい」とコメントした。

北星学園大、脅迫文届いた元朝日記者「雇用せず」

スポーツ報知(2014年10月31日)

 従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に、元記者を辞めさせろとの脅迫文が届いた問題で、田村信一学長は31日、記者会見を開き、元記者との来年度の契約を更新しない方向で検討していると明らかにした。

 田村学長は、学生の不安が大きい上に、警備など多大な危機管理費用の問題もあり、「臨戦態勢を続けることは体力的に厳しい」と説明。29日に開かれた各学部長らで構成される危機管理委員会で「来年度の契約を更新しない」と提案したという。今後、大学評議会や理事会で意見を聴き、理事長と学長が最終的に判断する。

 大学への脅迫や抗議はことし3月から始まり、5月に本格化。多数の電話やメールが相次ぎ、学校説明会や大学祭では警察や警備会社を頼った。大学側は5月と9月に「大学の安全を守れなくなった場合は辞めてもらう」と元記者に伝えていた。

 来年の受験を考えている高校生の保護者からは心配の声が寄せられているといい、田村学長は「残念だが、いずれかの時点でこの問題を収束させないといけない」と苦渋の表情で話した。

 脅迫を受けた大学を励まそうと結成された市民団体「負けるな北星!の会」の関係者は「犯人の要求をのむことに等しい。北星学園大だけではなく、みんなが言うことを聞くと思わせてしまう」と大学側の動きに反発している。

 北星学園大は脅迫文が届いたことを受けて、9月30日に「大学の自治を侵害する卑劣な行為には、毅然(きぜん)として対処する」との文書を出していた。

 北星学園大には10月31日、不審な白い粉が入った封筒が郵便で届き、厚別署が威力業務妨害容疑で調べている。

脅迫受けた大学 元記者を雇用しない考え伝える

NHK(10月31日)

いわゆる従軍慰安婦の問題の取材に関わった朝日新聞の元記者が非常勤講師をしている大学が脅迫を受けた問題で、大学の学長が警備などを念頭に人手や財政面の負担が大きいことなどを理由に、来年度は元記者を雇用しない考えを学内の会議で伝えていたことが、関係者への取材で分かりました。
取材に対し、学長は、今後理事会との協議などさまざまな手続きを経たうえで雇用を継続するかどうか対応を決めるとしています。

いわゆる従軍慰安婦の問題の取材に関わった朝日新聞の元記者が非常勤講師をしている札幌市の北星学園大学を巡っては、「講師を辞めさせないと学生に危害を加える」などと書かれた脅迫文が届いたほか、「爆弾を仕掛ける」という内容の脅迫電話をかけた疑いで、今月、男が逮捕されました。
関係者によりますと、北星学園大学の田村信一学長は、29日の学内の会議で来年度は元記者を雇用しない考えを伝え、理由として、警備などを念頭に問題の対応に当たる人手や財政面の負担が大きいことや、来年の入学試験が無事に行えるかどうかの不安を挙げたということです。
田村学長はNHKの取材に対し、「今は答えられない」としたうえで、「まだ決定したわけではなく、これからもさまざまな手続きがある」と述べ、今後理事会との協議などを経たうえで雇用を継続するかどうか対応を決めるとしています。
この問題を巡っては、今月、全国の大学教授や弁護士らが「脅迫に屈すれば学問の自由が損なわれる」などとして元記者の雇用を守るよう大学側に申し入れをするなどの動きも出ています。


日本科学者会議常任幹事会、「決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない」

日本科学者会議
∟●「決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない」

決議 学問の自由・思想信条の自由と大学の自治を蹂躙する大学への脅迫を 断じて許さない

 朝日新聞の従軍慰安婦報道問題に関連して、元朝日新聞記者が非常勤講師として講義を 行っている北星学園大学(札幌市)に対して、従軍慰安婦に関する記事が「捏造」である とする勢力から「彼を辞めさせろ」とメールや電話が集中している。そのなかには、「止め させなければ大学に危害を加える」という暴力的な脅迫も含まれている。記事とはまった く関係のない記者の家族の写真までがインターネット上でばら撒かれ、「自殺に追い込む」 との脅迫がなされている。卑劣で許しがたい人権侵害であり、違法行為である。
 もともと、この元記者は今年 4 月から神戸松蔭女子学院大学(神戸市)に赴任する予定 であった。しかし今年 1 月にある週刊誌が「"慰安婦捏造"朝日新聞記者がお嬢様女子大 教授に」という記事を載せ、それに反感を抱いた勢力が、大学に抗議の電話やメールを送 り、結果として元記者と大学の雇用契約は解消されてしまった。今回は、これらの勢力の 攻撃の矛先が北星学園大学に転じたのである。
 同様の攻撃、脅迫は、さらに、従軍慰安婦の強制連行に関する記事を書いた別の元朝日 新聞記者が教える帝塚山学院大学(大阪狭山市)にも加えられた。9 月に入ってから「元 朝日新聞記者の教授を辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス 爆弾を爆発させる」という趣旨の脅迫文書が送られ、同元記者は退職を余儀なくされた。
 これらの卑劣な行為はごく一部の勢力が行っていると考えられるが、彼らの行動を助長 している社会的背景には、右派メディアやいわゆるインターネット右翼らによる自らの価 値観に合わないものを徹底的に排除しようという危険な動きがある。最近の「朝日新聞バ ッシング」はその典型で、「売国奴」「国賊」などのレッテルをはった脅迫や恫喝は、アジア太平洋戦争前夜を彷彿とさせる。このような暴力的な脅迫による言論弾圧は断じて許されてはなない。
 北星学園大学は、今回の卑劣な「言論テロ」に対して、「学問の自由・思想信条の自由は教育機関において最も守られるべきものであり、侵害されることがあってはならない」、「大 学の自治を侵害する卑劣な行為」に「毅然として対処する」との基本的立場を表明してい る。学問の自由・思想信条の自由と大学の自治は表裏一体のものである。科学の正しい発 展を求め、自由と民主主義を否定するものと闘ってきた日本科学者会議は、北星学園大学 の以上の基本的立場を全面的に支持し、大学への脅迫を断固として許さないために広範な 大学人・市民と連帯することを宣言する。

2014年10月26日
日本科学者会議50期第3回常任幹事会

2014年10月31日

マケルナ会の緊急シンポジウムのおしらせ 「いま、民主主義が危ない!-守ろう!北星学園-」

「負けるな北星!の会」

マケルナ会 緊急シンポ
「いま、民主主義が危ない!~守ろう!北星学園~」

北星学園大学非常勤講師(植村隆さん)の解雇を要求する大学への一連の脅迫は、大学の自治、学問の自由、言論の自由を脅かす言論テロであり、私たちが大切にしている民主主義への攻撃にほかなりません。
この緊急シンポジウムでは、これまでの経緯、現状、問題点を確認し、卑劣な攻撃から北星学園を守るために私たちに今何ができるのか、会場との意見交換も交えて考えます。

★日時
2014年10月31日(金)18:45(開場18:15)~20:45
★会場
かでる2・7(4F)大会議室(札幌市中央区北2条西7丁目)

★発言者
荻野 富士夫さん(呼びかけ人・小樽商科大学教授)
鈴木 賢さん(呼びかけ人・北海道大学教授)
佐藤 博文さん(賛同人・弁護士) ほか

★主な論点
①ネット攻撃などの犯罪性について
②大学の自治と学問の自由、報道の自由について
③歴史的、社会的な位置づけについて
④私たちに何ができるか

2014年10月24日

北星学園大脅迫、逮捕の上村容疑者「自分で電話」認める

毎日新聞(2014年10月23日)

 ◇北海道警札幌厚別署、逮捕容疑は威力業務妨害容疑

 従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者、植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に脅迫電話をかけたとして、北海道警札幌厚別署は23日、新潟県燕市新生町2、施設管理人、上村(かみむら)勉容疑者(64)を威力業務妨害容疑で逮捕した。道警によると、「自分で電話したことに間違いありません」と容疑を認めているという。

 同様の趣旨の脅迫文が北星学園大と、別の元朝日新聞記者(67)が教授を務めていた帝塚山学院大(大阪狭山市)にも届いており、道警は関連を調べる。

 容疑は9月12日午後5時48分ごろ、自宅の固定電話から北星学園大の代表番号に電話し、対応した男性警備員に「(元記者は)まだ勤務しているのか。爆弾を仕掛けてやるからな」などと脅し、大学に不審物の捜索をさせるなど業務を妨害したとしている。大学と道警が不審物を捜したが見つからなかった。

 電話の履歴などから上村容疑者が浮上した。道警は23日朝から上村容疑者の自宅を家宅捜索して資料を押収した。動機や背景について詳しく調べる。

 北星学園大などによると、3月中旬から「非常勤講師を辞めさせろ」などとのメールやファクスが多数寄せられた。5月29日と7月28日には学長や教授会などに宛てて複数の脅迫文が届いた。文書はパソコンで打ったとみられる文字で「非常勤講師を辞めさせなければ、天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける。釘(くぎ)を混ぜたガスボンベを爆発させる」などと書かれ、茶封筒に虫ピン数十本が同封されていた。

 帝塚山学院大にも9月13日、「(別の元記者を)辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス爆弾を爆発させる」との脅迫文が届いた。この元記者は文書が届いた当日に教授を退職した。

 一連の脅迫について、道警と大阪府警が威力業務妨害の疑いで捜査していた。【酒井祥宏、三股智子、日下部元美】

 朝日新聞社広報部の話 記事に関して元記者の勤務先の業務を妨害することは許し難い行為と考えており、真相解明を願っています。また弊社の過去の報道をめぐって北星学園大ならびに関係者の方々にご心痛をおかけし、大変申し訳なく思っております。

北星学園大脅迫:元朝日記者の植村氏「今後の捜査見守る」

毎日新聞(2014年10月23日)

 従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者、植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に脅迫電話がかかってきた事件。23日、新潟県燕市新生町2、施設管理人、上村(かみむら)勉容疑者(64)が北海道警札幌厚別署に威力業務妨害容疑で逮捕された。北星学園大の非常勤講師を務める元朝日新聞記者の植村氏は23日、「容疑者逮捕の報にホッとしている。しかし、脅迫文との関連はわからず、今後の捜査を見守りたい。いずれにしても、このような卑劣な行為は許されない」と話した。

 一連の脅迫事件を受け、作家の池澤夏樹さんらが呼びかけ人となり、北星学園大を励ますための「負けるな北星!の会」が結成された。呼びかけ人の一人で元高校教諭の新西(しんざい)孝司さん(85)=札幌市厚別区=は「脅迫電話や脅迫文は氷山の一角。容疑者一人の問題ではなく、背後には、社会全体として意に沿わない意見への攻撃やヘイトスピーチなどが横行している問題がある。そうした流れに対抗できるよう活動を続けていきたい」と話した。

 同じく呼びかけ人の内海愛子・恵泉女学園大名誉教授は「学生が集まる大学への脅迫は深刻な問題になる。言論や表現の自由に対する脅威だ。名前を出して批判するならよいが、匿名という陰に隠れて脅迫することは許されない」と語った。


2014年10月16日

<琉球新報社説>大学へ脅迫文 卑劣な「言論テロ」許すな

琉球新報(2014年10月15日 )

 これは言論や学問の自由を暴力で押しつぶす卑劣な犯罪だ。
 元朝日新聞記者が教授を務める帝塚山学院大学と、別の元朝日記者が非常勤講師を務める北星学園大学などが相次いで脅迫された。
 「辞めさせないと爆破する」「学生を痛めつける」と大学を脅し、教授は大学を辞職した。攻撃の対象は非常勤講師の子どもにまで及び、実名入り写真がインターネット上にさらされた。「自殺するまで追い込むしかない」などと書き込まれた。
 言論の自由を暴力で屈服させる行為はテロリズムと同じであり、断じて許されない。
 2人の元記者は「慰安婦」報道に関わっていた。1月末「“捏造(ねつぞう)”記者が大学教授に」と週刊誌が報じたことが発端となった。その後「反日」「捏造記者」という言葉で元記者を中傷するネット上の書き込みが相次いだ。
 朝日新聞社は8月5日、自社の「慰安婦」報道を検証した特集を掲載した。非常勤講師の書いた記事中、表現の誤用を認めた上で、意図的なねじ曲げはなかったと結論付けた。強制連行したとする故吉田清治氏の証言は「虚偽」と判断し取り消した。
 しかし、吉田証言が事実に反したからといって、「慰安婦」問題がなかったことにはならない。日本軍の組織的関与を示す資料は存在する。オランダなど当事国の調査結果や公文書でも明らかにされている。国連人権委員会は7月の対日審査後、意思に反した性行為を強いるのは強制的に慰安婦にするのと変わらないとの声明を出した。
 しかし朝日新聞の誤報記事撤回後、「慰安婦」問題をめぐる河野談話に関し自民党の萩生田光一総裁特別補佐は「骨抜きになっていけば良い」と発言した。歴史に真摯(しんし)に向き合わない国は国際社会から受け入れられないだろう。
 現在の状況は日中戦争開戦前夜に似ている。言論を封じ込めるために使われた「国賊」「売国奴」という言葉があふれている現状を危惧する。
 かつて沖縄の新聞は国により1紙に統合され、戦争遂行の宣伝紙と化した。沖縄戦後に内相が「敵の砲弾下にありながら1日も休刊せず友軍の士気を鼓舞」したと語り、国の言論統制の成果を示唆した。日本中の新聞が疑心暗鬼に陥り相手を監視し、自壊したことを忘れてはならない。自由な言論の保障は戦後民主主義の原点だ。

2014年10月07日

元朝日記者脅迫で学者らが励ます会「言論、学問の自由守れ」

産経新聞(2014/10/06)

 従軍慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に脅迫文が届いた問題で、大学と元記者を励ます市民団体「負けるな北星学園!の会」が6日、発足した。呼び掛け人らが東京都内と札幌市内で記者会見し、「言論、学問の自由を守らないといけない」と訴えた。

 呼び掛け人は、法政大の山口二郎教授ら43人。賛同者は5日現在で401人となった。山口氏は「朝日新聞の慰安婦問題報道や、これに対する批判にはそれぞれ意見があるだろうが、元記者を首にせよといった不当な脅迫、圧力から大学の自治を守れるよう支援するのが狙いだ」と述べた。

 元記者は平成24年4月に北星学園大非常勤講師に就任。大学には今年3月中旬から元記者に関する抗議メールやファクスが多数届いたほか、5月と7月には「辞めさせないと学生を痛めつける」などと書かれた脅迫文と虫ピンが送りつけられた。

[関連ニュース]
「負けるな北星!の会」、記者会見-共同通信(2014/10/06)

2014年05月21日

東京地裁、維新議員は発言甘正を 「慰安婦」著書吉見教授が要求

■しんぶん赤旗(2014年5月20日)

 旧日本軍「慰安婦」問題の第一人者、吉見義明・中央大学教授が、自身の研究をまとめた著書を「ねつ造」と発言した、日本維新の会の桜内文城衆院議員を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判の第4回口頭弁論が19日、東京地裁(小林久起裁判長)でありました。
 桜内氏は2013年5月28日、外国特派員協会での記者会見で、司会者が引用した吉見教授の本について「これはすでにねつ造であるということが、いろんな証拠によって明らかにされている」と発言しました。
 桜内氏側は、「これ」が吉見教授の本を特定しているのではなく、「『慰安婦』が性奴隷という説をねつ造と発言したものであり、吉見氏の名誉は傷つけていない」と主張しました。
 吉見教授側は、「一般の感覚では吉見氏の本と解釈できる」と反諭。「ねつ造した本を出版しているという印象を受けることは、研究者としての社会的評価を低下させる」とのべました。
 桜内氏側は「学問・学者の世界では学説の批判を受けるのは当然だ」と論点をすり替えました。また、裁判所から「慰安婦」が性奴隷でなかったという根拠を求められると、「証拠を出します」「いくらでも出せる」などと発言しました。
 吉見教授は桜内氏に対し、1200万円の賠償と謝罪広告、発言の訂正を求めています。

2014年05月12日

吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明
 ∟●吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

吉見裁判第4回口頭弁論のご案内

■ 第4回口頭弁論

日時:2014年5月19日(月)15時?
場所:東京地方裁判所103号大法廷
■ 夜のyoいっション(第4回口頭弁論拡大報告集会)

日時:2014年5月19日(月)18時?
場所:豊島区民センター第3・4会議室(4F)
JR・東京メトロ・西武池袋線・東武東上線「池袋駅」東口より徒歩5分
プログラム:
吉見義明さん、大森典子さん(弁護団長)による裁判報告
中西新太郎さん(横浜市立大学)による講演
「排外主義・レイシズムとネット社会 「慰安婦」問題を題材に」

2014年03月09日

ネット署名、「河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明」

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明
 ∟●「河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明」について

全ての研究者の皆さん

「河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明」への賛同と周囲への呼びかけのお願い

拝啓

 ご存知のように、この間、安倍政権は「維新の会」やさまざまなマスメディアとも提携しながら、「河野談話」の見直しを進めており、その動きがこの間、急速に進められています。

 日本軍「慰安婦」問題についての河野談話は、これで十分と見るか不十分と見るか、見解の相違はあるとしても、この20年余りにわたって日本政府のこの問題についての事実の承認と反省の表れとして、一定の積極的な機能を果たしてきました。これを実質的に否定するような見直しは、韓国や中国のみならず、米国を含めた国際社会との関係でも深刻な緊張をひき起こしてしまうことを危惧しています。

 そこで、さまざまな立場から、河野談話を維持すべきであるという点で一致する研究者が、その考えを表明しようと、この共同声明を企画しました。ぜひ多くのみなさんに賛同していただき、署名をお願いしたいと思います。

 署名は次のChangeのサイトからお願いします。

 http://p.tl/1fRR

 とりあえず、3月13日に第一次集約、3月末に第二次集約をおこない、国会議員に働きかけるとともに、記者会見を開いて広く社会にアピールする予定です。

  賛同頂ける方は、ご署名をお願い致します。署名にあたっては、「コメント欄」に、所属、身分、専門分野 をお書きいただき(必須)、また任意でメッセージもいただければ幸いです。

 また周りの同僚や友人の方、所属する学会の関係者の方などに、メール、ブログ、ツイッター、フェイスブックなどで署名の呼びかけを広めていただけると幸いです。 

2014年3月

「河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明」事務局
林博史(関東学院大学教授/平和学)
小浜正子(日本大学教授/歴史学)

【声明文】河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明

 この間、いわゆる日本軍「慰安婦」問題に関する1993年の「河野談話」を見直そうという動きが起きています。「河野談話」は「慰安婦」問題は日本軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたものであることを認め、同じ過ちをけっして繰り返さないという日本政府の決意を示したものであり、これまで20年余にわたって継承されてきました。

 「河野談話」が出されてからも、学者や市民の努力によって数多くの新たな資料が発見され、多数の被害者からの聞き取りも行われて、研究が深められてきました。「慰安婦」の募集には強制的なものがあったこと、慰安所で女性は逃げ出すことができない状態で繰り返し性行為を強要されていたケースが多いこと、日本軍による多様な形態の性暴力被害がアジア太平洋の各地で広範に発生していること、当時の日本軍や政府はこれらを真剣に取り締まらなかったこと、など多くの女性への深刻な人権侵害があったことが明らかになっています。こうした日本軍による性暴力被害が、日本の裁判所によって事実認定されているものも少なくありません。

 被害者の女性は、戦争を生き延びたとしても、戦後も心身の傷と社会的偏見の中で、大変過酷な人生を歩まざるを得なかった方がほとんどです。

 「河野談話」で示された精神を具現化し、高齢となっている被害女性の名誉と尊厳を回復することは、韓国や中国はもとより、普遍的な人権の保障を共通の価値とする欧米やアジア等の諸国との友好的な関係を維持発展させるためにも必須だといえます。

 私たちは、「河野談話」とその後の研究の中で明らかになった成果を尊重し、日本政府が「河野談話」を今後も継承し、日本の政府と社会はその精神をさらに発展させていくべきであると考え、ここに声明を発表します。

2014年3月8日

呼びかけ人(アイウエオ順)

阿部浩己(神奈川大学教授・国際法)
荒井信一(茨城大学名誉教授・歴史学)
伊藤公雄(京都大学教授・社会学)
石田米子(岡山大学名誉教授・歴史学)
上野千鶴子(立命館大学特別招聘教授・社会学)
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授・日本-アジア関係論)
岡野八代(同志社大学教員・西洋政治思想史)
小浜正子(日本大学教授・歴史学)
小森陽一(東京大学教授・日本近代文学)
坂本義和(東京大学名誉教授・国際政治、平和研究)
高橋哲哉(東京大学教授・哲学)
中野敏男(東京外国語大学教授・社会理論・社会思想)
林 博史(関東学院大学教授・平和学)
吉見義明(中央大学・日本現代史)
和田春樹(東京大学名誉教授・歴史学)

事務局:林 博史・小浜正子
連絡先:kounodanwaiji@outlook.com

お願い:署名にあたっては、「コメント欄」に、所属、肩書き、専門分野をお書きくださるようお願いします(必須)。


2014年02月20日

吉見裁判第3回口頭弁論のご案内

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

多くの皆さまが傍聴に駆けつけてくださいますよう、よろしくお願いいたします!!

日時 : 2014年3月3日(月)午後3時?
場所 : 東京地方裁判所103号大法廷
※直前の急な変更もございます。念のため事前にご確認下さい。 
※当日は、傍聴券の抽選が行われる見通しです。お早めにお集まりください!!
※裁判が終わりしだい(時間未定)、東京地方裁判所近くの日比谷図書文化館4階スタジオプラス(小ホール)にて、報告集会を開催する予定です(参加費:500円)。ふるってご参加ください!!


2014年01月15日

サイト紹介、吉見義明さんの裁判闘争を支援するネットワーク「YOいっション」

YOいっション

吉見義明さんの裁判闘争を支援するネットワーク「YOいっション(YOSHIMI裁判いっしょにアクション!)」が2014年1月11日(土)に発足し、公式サイトも開通しました。
http://www.yoisshon.net/

吉見裁判とは

「吉見裁判」とは、中央大学の吉見義明さんが、日本維新の会の桜内文城衆議院議員を名誉毀損で訴えた裁判です。

2013年5月13日、橋下徹大阪市長は、「慰安婦制度が必要なことはだれでもわかる」と発言し、国内外の批判を浴びました。そのため橋下市長は特に外国のメディアに弁明しようと、外国特派員協会で5月27日に記者会見を行いました。
その場において、司会者が吉見義明さんの著書に触れたことに対し、同席していた日本維新の会の桜内文城衆議院議員が、「これはすでにねつ造であるということがいろんな証拠によって明らかとされております」と発言しました。
20 年以上にわたって日本軍「慰安婦」の実態を追求してきた吉見義明さんが、自著を「ねつ造」だと言われたのです。そのため、吉見義明さんは、その発言の撤回 と謝罪を求め、桜内議員に内容証明を送りました。しかし桜内議員がこれに応じなかったため、損害賠償をもとめる裁判を提訴しました。
この裁判が「吉見裁判」と略称している裁判です。

2013年12月11日

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明ブログ

お礼とご報告

声明にご賛同下さったみなさまへ

このたびは「吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明」にご賛同いただき、まことに有り難うございました。短期間のうちに多数のご賛同を賜り、呼びかけ人一同心よりお礼申し上げます。

結果のご報告に先立ち、お詫びと訂正がございます。声明文冒頭の提訴の日付が間違っていました。まことに申し訳ありません。

  〔誤〕さる7月29日→〔正〕さる7月26日

またご賛同いただいた方々には、吉見裁判関連の情報を折に触れて送信申し上げたいと存じますが、以後の連絡は不要という方は、お手数ですが、下記までご連絡下さい。一方で、ご報告のメールを差し上げたところ、アドレスのエラーで戻ってきたメールが20通弱ございました。お心当たりのある方で、以後、連絡が必要な場合も下記までご連絡下さい。

  y-support@freeml.com

以下、集約の結果等についてご報告申し上げます。

(1)声明賛同者として11月25日18時までに844筆の署名が寄せられ、呼びかけ人22名と合わせて、合計866名の賛同が得られました。韓国ほか海外からも50名程度の賛同がありました。

(2)声明発表の記者会見は11月29日(金)11時より約25分間、大阪市役所市政記者クラブで行いました。呼びかけ人からは、志水紀代子、庵逧由香、藤永壯が出席し、その他、方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク共同代表)、梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)も同席されました。報道関係からは5社が参加しました。

(3)記者会見終了後、マスコミ、政党、政府機関などに、声明文と呼びかけ人・賛同人名簿(あるいは記者会見用資料)を送付しました。確認できた範囲では、朝鮮新報が記事を掲載しています。

  http://chosonsinbo.com/jp/2013/12/1203riyo/

(4)12月1日(日)13時30分より、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの主催でシンポジウム「維新・橋下市長の歴史認識を問い辞任を求める~吉見義明さんは、なぜ桜内文城衆院議員を訴えたか~」が大阪・PLP会館にて開催されました。参加者は190名ほどで、吉見義明さん、梁澄子さん、大森典子弁護士がお話をされました。集会の終わりに、声明について呼びかけ人より藤永がアピールをさせていただきました。

声明賛同募集は今回の集約と発表をもって、一段落いたしましたが、吉見裁判はいま、まさに始まったばかりです。ぜひともご協力、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

今後の裁判関係の日程は、以下のようになっております。

《第2回口頭弁論》

 2013年12月11日(水)15:00~ 東京地裁103号大法廷
  17:00~ 弁護士会館1008号室(東京地方裁判所隣)にて報告集会
  http://www.courts.go.jp/tokyo/about/syozai/tokyotisai/index.html

《"YOSHIMI裁判いっしょにアクション"発足集会》

 2014年1月11日(土)14:00~16:30(開場13:30)
  在日本韓国YMCA アジア青少年センター
  http://www.ymcajapan.org/ayc/jp/

ではみなさま、今後ともよろしくお願い申し上げます。

声明呼びかけ人一同

  ブログ: http://y-support.hatenablog.com/
  e-mail: y-support@freeml.com


2013年11月18日

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持する研究者の声明・署名の呼びかけ

 すでに報道などを通じてお聞き及びかと存じますが、日本軍「慰安婦」研究の第一人者・吉見義明中央大教授がさる7月29日、「日本維新の会」の桜内文城議員を名誉棄損で東京地裁に提訴しました。桜内氏が吉見氏の著書を「捏造」と侮辱したのが、その理由です。

 ところが桜内氏側は論点をすり替え、吉見氏が「「慰安婦=日本軍の性奴隷」という虚偽を世界に発信している」と非難し、裁判で正面から争う姿勢を示しています。

 この裁判は、「慰安婦」問題についての誤った認識を拡散させている悪質な宣伝を許さず、「慰安婦」問題の根本的解決を求めるという点からも、また不当な政治的圧力から学問研究の自由を守るという点からも、きわめて重要な意義をもっています。

*吉見義明教授の訴状
  http://space.geocities.jp/japanwarres/center/hodo/hodo53.pdf
*桜内議員・日本維新の会の主張
  https://j-ishin.jp/legislator/news/2013/1008/890.html
*「慰安婦」問題解決の方策としては、解決編中の1-5「解決への提言」をご参照ください。
  http://fightforjustice.info/?page_id=417

 そこで私たちは、長年、関西地方で「慰安婦」問題解決のための活動に取り組んでおられる「日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク」の方々との相談のうえで、吉見氏の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の真の解決を求める内容のアピールを、研究者の立場から発表したいと考えております。

 つきましては下記の声明をお読みいただき、ご賛同いただけるようでしたら、11月25日(月)午後6時までに以下の【署名の仕方】の要領で、ご署名をお願いします。

 なおその結果は、関係各方面に通知するとともに、12月1日に大阪で予定されている「日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク」の集会で報告することにしています。また、あわせて記者会見も行う方向で検討しています。

【署名の仕方】

下記の署名用フォームのページにアクセスし(携帯からでも可能)、必要事項を記入のうえ、送信してください。

  https://ssl.form-mailer.jp/fms/8e0697c6270781

※今回は「研究者の声明」という形式をとっていますが、ここで言う「研究者」とは何らかの形で研究に携わっている(または携わった経験のある)方という程度の意味です。大学・研究機関などへの所属の有無は問いません。もちろん国籍・居住地の別も問いません。

※声明文と賛同人名簿は11月末に関係機関・団体、報道機関などに送付の予定です。

※メッセージをご記入いただいた場合、報道関係者に公開する可能性があることをご了解ください。不記入でもけっこうです。

※アクセスが集中して送信できない場合は、お手数ですが、しばらく待って再度送信してみてください。1時間に50人以内しか受け付けられません。アクセス制限は1時間毎に更新されます。たとえば10時台にアクセス制限ページが表示された場合は、11:00には解除されます。

※ご質問・ご意見は、次のメール・アドレスまでお願いします。

  問い合わせ先: y-support@freeml.com

※最新情報は下記ブログにて更新予定です。

  http://y-support.hatenablog.com/

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

さる7月29日、日本軍「慰安婦」研究の第一人者として知られる吉見義明中央大教授が、「日本維新の会」所属の桜内文城衆議院議員を名誉棄損で、東京地裁に提訴しました。問題の発端は、今年5月27日「日本維新の会」共同代表の橋下徹大阪市長が、「慰安婦」問題発言などに関する釈明の記者会見を日本外国特派員協会で行った際、同席した桜内氏が吉見氏を冒?する発言をしたことでした。桜内氏は、司会者が参考文献として吉見氏の著書を紹介したところ、「これはすでに捏造であるということが、いろんな証拠によって明らかとされております」と述べたのでした。

前後の文脈から、桜内氏が吉見氏の著書を「捏造」と侮辱したことは明白です。しかし吉見氏が発言撤回と謝罪を求めると、桜内氏はこれに応じるどころか、「捏造」と述べたのは「sex slavery(性奴隷)」という概念であると、論点をすり替えようとしました。そして10月7日の第1回口頭弁論にあわせて発行された「日本維新の会 国会議員団本部」の『NEWS RELEASE』は「桜内文城・衆議院議員は、日本国および日本国民の名誉と尊厳を守るため、「慰安婦=日本軍の性奴隷」という虚偽を世界に発信している吉見氏の讒訴を法廷で粉砕します」と宣言し、吉見氏と正面から争う姿勢を示したのです。

私たちはこのような桜内氏らの不誠実きわまりない法廷戦術に、強い憤りを感じています。桜内氏側の戦略は、「性奴隷」という一般には馴染みの薄い用語に世間の耳目を向けさせ、今日の日本社会に蔓延する排外主義的風潮に便乗することで、自らの過ちを隠蔽するとともに、実証的に積み上げられてきた歴史研究の成果を虚偽であると印象づけようとするものと見られます。これは研究者が自らの研究成果にもとづいて主張する学問的見解を、政治的な策略を弄して葬り去ろうとするものであり、このような行為を許してしまえば、「慰安婦」研究にとどまらず、研究成果の自由な表明に政治が干渉する道を開くことに繋がりかねません。自らの保身のために、論点をすり替え、「慰安婦」問題の解決を遠ざけようとする桜内氏らの策略は、とうてい国際社会においても受け入れられるものではなく、それこそ「日本国および日本国民の名誉と尊厳」を傷つけるものではないでしょうか。

桜内発言とその弁明の論理は、昨今、日本社会の一部で繰り返されてきた、「慰安婦」問題についての誤った認識を拡散させ被害者の名誉を傷つける悪質な宣伝を拠り所としています。そしてその背景には、過去の植民地支配や侵略戦争の過ちから目をそむけ、被害者に責任を転嫁することで自らを正当化しようとする歪んだ歴史認識があります。私たちはこのような卑劣で浅薄な歴史認識と決別することこそが、日本社会の将来を切り開く道であると確信していますが、万一、裁判で桜内氏が主張するような理屈が通ってしまえば、「慰安婦」問題の本質を歪曲しようとする歴史修正主義の主張に、司法が「お墨付き」を与えることになりかねません。

私たちは「慰安婦」問題の根本的解決が、過去の日本の過ちを正し、近隣諸国との真の和解を成し遂げるために不可欠であるという認識に立ち、また日本における学問研究の自由を守る意味からも、吉見氏の裁判闘争を全面的に支持することを、ここに表明します。司直には正義と良識にもとづいた、国際社会に恥じるところのない賢明な判決が下されることを心から期待します。また日本政府には、本年5月17日の国連社会権規約委員会および5月31日の国連拷問禁止委員会の勧告に沿って、元「慰安婦」被害者を侮辱する言動を認めない措置を取るとともに、すでに明らかにされている関係諸団体の提言にもとづき「慰安婦」問題の根本的解決をはかるよう、強く要求します。

呼びかけ人(五十音順)

庵逧由香(立命館大学)、板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、岡真理(京都大学)、長志珠絵(神戸大学)、小野沢あかね(立教大学)、笠原十九司(都留文科大学名誉教授)、北原恵(大阪大学)、金富子(東京外国語大学)、駒込武(京都大学)、河かおる(滋賀県立大学)、志水紀代子(追手門学院大学名誉教授)、宋連玉(青山学院大学)、高橋哲哉(東京大学)、中野敏男(東京外国語大学)、早川紀代(女性史研究者)、林博史(関東学院大学)、姫田光義(中央大学名誉教授)、藤永壯(大阪産業大学)、藤目ゆき(大阪大学)、吉田裕(一橋大学)


【参考資料】
◆ 2013年5月27日、日本外国特派員協会における桜内文城衆議院議員の発言

1点だけ先ほどの、最初の司会者の紹介の点について少しコメントいたします。橋下市長を紹介するコメントのなかで、彼は「sex slavery」という言葉を使われました。これは日本政府としては強制性がないということ、その証拠がないということを言っておりますので、そのような言葉を紹介の際に使われるのはややアンフェアでないかと考えております。

それからヒストリーブックスということで吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これは既にねつ造であるということが、いろんな証拠によってあきらかとされております。この点も付け加えてコメントしておきます。

出典:吉見義明教授の訴状 (http://space.geocities.jp/japanwarres/center/hodo/hodo53.pdf

◆ 国際連合・経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会「第50会期において委員会により採択された日本の第3回定期報告に関する最終見解(2013年4月29日~5月17日)」2013年5月17日(外務省仮訳)

26. 委員会は、「慰安婦」が被った搾取が経済的、社会的及び文化的権利の享受及び補償の権利にもたらす長きにわたる否定的な影響に懸念を表明する(第3条、第11条)。

委員会は、締約国に対し、搾取がもたらす長きにわたる影響に対処し、「慰安婦」が経済的、社会的及び文化的権利の享受を保障するためのあらゆる必要な措置をとることを勧告する。また、委員会は、締約国に対して、彼女らをおとしめるヘイトスピーチ及びその他の示威運動を防止するために、「慰安婦」が被った搾取について公衆を教育することを勧告する。

出典:外務省(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/pdfs/kenkai_130517_jp.pdf

◆ 国際連合・拷問禁止委員会「第50会期拷問禁止委員会(2013年5月6日~31日)で採択された第2回日本政府報告に関する総括所見」2013年6月28日(国際人権活動日本委員会訳)

軍事的性奴隷制の被害者

19. 世界第2次大戦中の日本の軍隊による性奴隷制の被害者(いわゆる、従軍慰安婦)に対する虐待に関して講じられたいくつかの措置についての締約国による情報にもかかわらず、当委員会は、締約国がこの問題に取り組みながらも、当条約上の義務に応えようとしないこと、特に以下の事柄に関して深い懸念を抱く。
(a) 被害者に対して適切な救済とリハビリを提供していないこと。当委員会は公的資金よりも民間からの拠出金の財源による賠償は不十分であり不適当であったことを残念に思う。
(b) このような残虐な行為の実行者を訴追することなく、裁判にかけて罰していないこと。当委員会は、残虐性の引き続く影響の理由により、被害者から救済、賠償、そしてリハビリの機会を奪う時効は適用されるべきではないことを想起する。
(c) 関連する事実や物的証拠を隠蔽し公開しないこと。
(d) 政府高官や地方自治体の高官、そして数名の国会議員を含む政治家による止まらぬ事実の公的な否定と被害者に対する再トラウマの呼び起こし。
(e) とりわけ歴史教科書内でこの問題の引用が減少しているとの例証により、当条約の男女の性に基づく違反を防ぐための有効な教育的措置を実施しないこと。
(f) 締約国によるこの問題に関連する種々の勧告の拒否、例えば、UPRによるもの(A/HRC/22/14/Add,1 para.147.145 et seq.), これは当条約による勧告(24項)と全く同じであり、それから他の多くの国連人権メカニズムによるもの、とりわけ、自由権規約委員会(CCPR/C/JPN/CO/5, para.22), 女性差別撤廃委員会(CEDAW/C/JPN/CO6, para.38), 社会権規約委員会 (E/C.12/JPN/CO/3, para.26), そして人権理事会でのいくつかの特別手続きによる委任保有者(特別報告者)である。(第1条、2条、4条、10条、14条、そして16条)

当条約の一般的意見第3号(2012年)を想起し、当委員会は「従軍慰安婦」問題に対して被害者中心の解決策を見出すために、特に下記に述べる、緊急的かつ有効な法的及び立法的措置を講じるよう締約国に強く要求する。
(a) 性奴隷性の犯罪に対する法的責任を公式に認めること。そして適切な刑罰にて犯罪実行者を訴追し罰すること。
(b) 政府当局者や社会的有名人による事実の否定や、このような繰り返えされる否定を通して被害者を再びトラウマに陥れることに対して反論すること。
(c) 関連する物的証拠を公開し、事実を徹底的に調査すること。
(d) 被害者の救済を求める権利を認め、それに従い、賠償、償い、そして可能な限りの十分なリハビリの措置を含む、十全で有効な救済と補償金を提供すること。
(e) この問題について一般市民を教育すること、そしてさらに締約国が当条約の遵守義務に違反することを防ぐ方策として、歴史教科書の中にこの事件を記載すること。

出典:国際人権活動日本委員会(http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/2013goumonkinshiiinkaishoken.pdf