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2016年10月12日

京都産業大学昇任拒否雇止め事件、京都地裁判決の不当性について

女性助教裁判の判決の不当性について

京都産業大学昇任拒否雇止め事件について,2016年9月27日,京都地裁は原告教員の訴えを棄却する判決を下した。
原告によれば,同判決は,原告には一分の利も認めない不当な判決であった。しかし「大学の人事審査権については当該大学が決定権を持つものであり、『大学の自治』及び『学問の自由』などの憲法条項からも司法はそれに介入できない」との姿勢を示したため、上告した処でこれを覆せるまでの証拠を提示できない(=証拠を提示出来る側の人間が全て被告の証人や証書となっている)と判断したため、控訴を断念した。

女性助教裁判の判決の不当性について

京都産業大学教職員組合
執行委員会からのアピール

 今回の裁判の原告である女性助教は、助教から准教授への文化学部の昇進規定である任期中の論文3本の公刊という条件を満たしたにもかかわらず、平成25年4月に本学文化学部助教から准教授への昇進を果たすことはできませんでした。その地位回復のための裁判が3年以上にわたり、続いていました。

 9月27日午後1時10分、京都地方裁判所で判決が出されました。そこでの判決は、原告である女性助教の請求を全面的に棄却するという、予想だにしなかったものでした。

 裁判所は、すでに学会誌に掲載済みの論文であっても、学部による再審査により、その質をさらに検証することは当然だという趣旨の判決を出しました。

 学会誌の査読は、専門家によるものであり、学部の人事委員会による審査が、専門家とはいえない人たちによる判断となる可能性は否定できません。少なくとも専門性という観点から見れば、学会誌による審査の方が、学部の人事委員による審査よりも学問的に客観的な裏付けができるということは、研究者にとって常識であると言えるでしょう。ですが、残念ながら今回の判決は、そのようなことは一切考慮に入れられておりません。

 ここでの判例は、有期雇用から無期雇用に転換するさいに、とりわけ大きな問題となると言わざるを得ません。専門家によるピアレビューよりも、より専門性が劣る人たちによる審査の方が、研究能力に関する判断基準として適切だという判例を裁判所が出したことになり、学問業績の評価の基準を大きく歪め、昇進に深刻な問題をもたらす判決であると、私たちは考えます。

 すでに文化学部では、5年間、准教授から教授への昇進人事がありません。それは、女性助教が昇進できなかったので、教授への昇進人事においても、これまでの自分の研究業績が否定されるようなことを言われたうえに昇進できないかもしれないと考え、昇進願いを出さないからだと思われます。

 また、他学部の公募においても、女性助教の裁判はよく知られているので、「業績があっても本当に助教から准教授に昇進できるのか」と質問されることも少なくないと聞きます。

 今回の判決により、京都産業大学は、公明で透明性がある人事をしない大学だという評判が立つことを、私たちは恐れます。さらに、今回の裁判結果が、テニュアトラックにいる多数の研究者の将来にとって大きなマイナスになるのではないかと危惧します。有期から無期への雇用形態の転換が、結局のところ恣意的な判断に基づくことを放置してしまうことになるからです。これは、とりわけ若い研究者にとって、研究をしていく上での大きな妨げとなるでしょう。

 私たち執行委員会は、今回の判決は不当であり、京都産業大学、さらには日本の学界に対して大きな負の遺産を残したと訴えます!


2013年03月29日

准教授に昇任できず…雇い止め不当 女性助教が京産大提訴

産経新聞2013/03/29

 准教授への昇任の審査基準を満たしながら、助教としての契約が終了したとして雇用を打ち切られるのは不当として、京都産業大文化学部の女性助教(40)が28日、同大を相手取り、地位確認などを求めて京都地裁に提訴した。

 訴状によると、女性は平成20年に任期5年の同大の助教として採用された。同大は今年3月末の任期満了に伴い、女性に対し雇用契約を終了すると通知。

 女性側によると、学部内の規定に基づいた准教授への昇任基準を満たしているが、同大側は「(基準となる)論文の内容が昇任にふさわしくない」などとしているという。

 この日、京都市内で会見した女性は「恣(し)意(い)的(てき)な判断で昇任が認められない先例ができ、助教の雇用が不安定になる」と話した。

 同大学長室は「訴状が送達されておらず、詳細はコメントできない」としている。