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2018年07月17日

都留文科大学における執行部による大学私物化とその背景

法と民主主義 2017/6 No.519

地方独法法+学校教育法改悪=大学ではないもの
-都留文科大学における執行部による大学私物化とその背景-

都留文科大学文学部教員有志

 国公立大学の法人化(二〇〇四年度~)後、日本の大学の劣化がさまざまに報じられている。石原都政下での東京都立大学への攻撃や、福岡教育大学の例がある(福岡教育大学教員有志FUEの会「大学ガバナンス強化の最悪の帰結」、『日本の科学者』一七年七月号)。都留文科大学で近年行われている「改革」も常軌を逸したものであって、本学は「大学ではないもの」に変質しつつあると言わざるをえない。このことは、JSA・全大数など主催「大学間題シンポジウム」第三回(一七年三月二〇日)の討論でも告発された。それをもとにここに論考を発表し、全国の大学人、法律専門家諸氏への訴えとしたい。本学を転落の淵から救い出す運動を強化するべく、みなさんからのご支援をぜひとも賜りたい。
 都留文科大学(以下、都留文大と略記。)は、山梨県都留市(人口釣三万二千人)という地方小都市に立地し、一九六〇年に文学部のみの市立四年制単科大学となった。二〇〇九年度からは地方独立行政法人法(以下、地方独法法と略記。)に基づき公立大学法人に転換した。約八五人の常勤教員と約九〇人の職員は「非公務員」となった。常勤教員にはいわゆる専任教員(任期なし、学部ゼミを担当、教授会メンバーとなる)と一〇人程度の各種の任期付き教員がおり、たいして非常勤教員が約三〇〇人と異様に多い。職員は、都留市からの出向等職員約三五名(幹部層)、法人固有職員、各種非正規職員の三階層からなる。大学の歳入は、地方交付税大学分を源とする市からの運営費交付金が約三分の一、入学金・授業料収入が約六割で、国立大学と私立大学の中間型である。

一 法人化による大学運営の改悪

 都留文大では、太田堯学長(一九七七~八三年)のもとで大学運営が民主化され、①学長の事実上の教授会直接選出、②役員を多く置かず、あらゆる議題を教授会で討議し、その下に各種委員会を置いて教員と職員の熟議と協働による全員参加型大学運営を行う、④教授会、教職員組合、学生・院生自治会との四者協議などの慣行が確立していた。
 しかし、地方独法法により公立大学の法人化が可能となった。都留市では〇五年の市長選挙で小林義光氏(右派系)が大学法人化を公約して四選され、〇七年度をとおして議論が行われた。大学側と市側の決裂答申となったが、市長=市議会多数派が学内の「穏健な法人化」論を押し切った。市側は全員参加型大学運営を嫌悪し、(ア)市の言うことを聞く大学に作り替えるとともに、(イ)地方交付税大学分と大学の積立金等への介入権を強化するべく、地方独法法を利用したのである。
 この際、全員参加型大学運営を快く思っていなかった教授会少数派が市長・市役所と組み、アカい大学だというイメージを払拭しないとこれからの時代には生き残れないなどの宣伝を陰で拡散させるなどし、〇七年秋の学長選挙で「強硬な法人化」派を当選させた。その陰の中心人物が福田誠治氏(ソビエト型集団主義教育の研究者であったが、ソ連崩壊後転向し、現在はグローバル化時代のPISA型学力等の論考を発表している)、新保祐司氏(フジサンケイグループ主催「正論大賞」新風賞を受賞した右派系文芸評論家でもある)などであった。法人化を利用して自派の権力を奪取することが彼らの目的だったように思われる。
 法人化された二〇〇九年四月、激変が起こつた。第一に、都留市議会が議決した法人の定款に基づき、役員体制は、理事長・学長別置型の理事会方式となった。学長は、(a)教授会メンバーに新たに市出向職員等を加えた意向投票を行う→(b)その結果も一つの参考として、法人に置かれる学長選考会議が選考し理事長が任命する、という新方式で選ばれることとなった。その後三回の学長選挙が行われ、教授会レベルでは福田・新保両氏らに付き従う人びとと全員参加型大学運営をできるだけ残そうとする人びととは括抗していたが、職員票に支えられた福田民らが多数派を握れる様相となっている。
 第二に、専任教員の採用・昇任等人事は、従来は①文学部内の五学科間の協議により年度人事計画を立てる→②各学科の人事要望も尊重しながら候補の選考を行う→③教授会で熟議のすえ投票で決する→④大学当局・労組双方で構成する人事委員会での合意により格付けをするという方式であったが、法人化後は人事案件がすべて教授会の審議事項からはずされ、①法人組織である教育研究者議会(以下、教研審と略記。)で執行部主導による年度人事計画の決定→②教研審の下に置かれる選考委員会での選考→③教研審での採決→理事会での承認→④大学当局による一方的な各付け決定という方式に変更された。このことの影響は甚大で、福田・新保両氏らの意に沿わない採用人事の否決や、昇任を気にして教授会で発言しない若手教員の増大、新任教員の低賃金化などが起こっている。
 第三に、大学の中期計画策定、予算編成、学部・学科再編、キャンパス再編や校舎増改築などの研究教育上の重要案件もまた、教授会の単なる報告事項とされ、実質的には執行部、理事会、経営協議会(もう一つの法人組織)の間で決められることとなった。
 ここまでを法人化の第一段階ということができる。第二段階は第二代学長下で、上記の法人化の枠内にとどまるもののそれなりに均衡のとれた大学運営が行われ、教授会では全員参加型大学運営を主張する人びとの理にかなった発言に多数の支持が集まることもしばしばであった。それが福田・新保両氏らには耐えがたかったのであろう。

二 学校教育法改悪後の大学運営の野蛮化

 二〇一三年秋の学長選挙で職員票を固めた福田氏が当選し、一四年四月から学長に就任した。副学長には新保民らが任命された。また一四年通常国会で学校教育法九三条が改悪され、本学の法人化は第三段階を迎えた。
 学校教育法九三条の改悪とは、同第二項で「教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする」とし、教授会=意見具申機関に格下げし、学長=単独の決定権者としたことをさす。しかしそうであっても、教育研究に関する重要事項で学長が定めたもの(文科省があげる例は専任教員採用人事、教育課程、学部学科再編、キャンパス移転など)について教授会は意見を述べる(同第二項3)。ここで「意見を述べる」とは文科省見解によれば、従来の「議決する」に準じる行為であって、自由聞達に審議したうえで教授会の見解(賛否など)をまとめることをさしている。
 ところが福田学長は、「意見を述べる」とは教授会の場で各教員が個別発言を行うことであり、「教授会は意見を述べるのみで審議してはいけないのだ」との独自解釈を大声で延々とまくしたて、審議を封じにかかる。これに異論を唱えると二人の副学長が「発言中止!」「黙れ!」と叫ぶ-本学の教授会はこうした異様な状況になっている。この結果、教授会は次第に単なる事務連絡会議に堕しつつある。
 教研審の変質も著しい。従来、学部の下にある五つの学科の長は、学科の互選であったが、福田執行部は一方的に学科長任命制を導入し、意に沿わない人物の学科長就任を拒否した。このため教研審の大半が学長任命の「イエスマン」となった。
 こうした変化がもたらしたものを、以下、都留文大ホームページ、都留文大数職員組合ニュース、地元紙「山梨日日新聞」記事によりつつ、具体的に紹介したい(注記は省略)。

三 大学を「大学ではないもの」にする異常人事

 福田学長下での第一の特徴は、野蛮な人事の連発である。三例だけ指摘しよう。二〇一四年の地方自治論専任教員採用では、学長によって専断的に任命された選考委員会が、T氏を最終候補とした。選考委員の一人は副学長と密約を結び、一度も委員会に出席せず、業績も読まず、T氏を推した(定年後、この人物は学長から任期付き教員として再雇用された)。しかしT氏には地方自治にかんする研究論文が一本も存在しないことが判明し、所属学科から抗議声明が繰り返しだされた。だが学長はT氏の着任を強行した。その後丁氏が地方自治論ゼミを指導できないとわかると、学長は担当変更を求めてきた。地元密着の公立大学をうたう本学で地方自治を学習できる唯一のゼミが、こうして廃止されたのだった。
 本学は教員養成系大学とされており、中学社会・高校地歴教員免許課程をもつが、そこでは地理学の専任教員は必須である。二〇一三年度で同数員が定年退職したが、福田副学長(当時)らが後任の採用を拒否したため、一四年度当初、同教員はゼロとなった。彼は、地理学の専任教員がいなくとも、文科省が査察に来たりはしない。来ても夏休み明けだから、その時には来年に向けてこれから採用人事を始めますと言えば、許される」とニヤニヤしながら言ったそうである。一四年度の社会科教育法の専任教員採用についても、選考委員会で満場一致で決まった候補に対して、新保副学長らが「日韓共同教科書づくり」にかかわる者だから認められないとの根回しをして、教研審で否決する策動を行った。これらの結果、この学科では一四年度には一六ゼミのうち七を非常勤教員に任せる異常事態に陥った。その果てに、一六年秋、文科省から中学社会教免課程等で大量の学生が長年履修漏れしていたので改善せよとの行政指導を本学が受けることになった。しかし学長らはこの事実を学生に告げずに繕おうとした。これは同年末、新聞・TVで大きく告発されたところである。
 とくに重大なのが、本学で唯一の日本国憲法専任教員採用問題である(二〇一七年)。副学長・学長補佐など学長の意に沿う教員で固められた選考委員会はH氏を候補に推薦したが、H氏は法学の学位を持たず、日本国憲法にかんする研究論文が一本もなく、民族主義改憲派の集団「憲法学会」に所属していた。教授会で再三にわたって抗議声明が出されたが、学長らは採用を強行した。そして着任直後、H氏が学長補佐に任命されたのである。
 
四 退職金裁判

 大学当局と市側が大学を私物化している例として、退職金裁判をとりあげたい。二〇一二年度の国家公務員給与削減政策に影響されて、都留市でも市職員の退職金削減を決定した。本学当局は、市側に右へ倣えして本学教職員の退職金削減を画策した。二二年三月、大学労組との団体交渉もなく、また教職員への周知もなく、本学退職手当規程を、旧来から市側の規程を準用することになっていたかのように書き換え、同月退職教職員の退職金を一方的に削減したのである。
 これに対し、当該教員六名が東京地裁に提訴した(第一次訴訟、一五年四月地裁判決)。大学労組は原告団を支援することを決定した。一五年、最高裁は大学当局の労働契約法・労働基準法違反を認め、原告に削減分を還付する決定を行った。ところが大学当局は何ら反省しなかった。そこで新たに五名が甲府地裁に一七年六月、第二次訴訟を提訴したところである。
 この事件の意義は二つある。第一に、東京地裁判決は、法人化し「非公務員型」の大学は設置者たる市側から経営上独立しているとの判断を示したことである。第二に、大学当局=市側は逆に、大学を市役所の従属物とみていることが明らかになったことである。

五 学部・学科再編と不当労働行為

 福田学長は当選後、「選挙公約」でほぼ触れなかった学部学科再編を開始する。
 第一は、文科省路線に沿った、国際バカロレア課程と連携した全科目英語授業の「国際教育学科」新設である(二〇一七年度開設)。その持続可能性は学内では大いに疑問視されている。
 第二は、現「社会学科」廃止、「地域社会学科」新設と「教養学部」新設である二八年度予定)。その新学科準備室は副学長・学長補佐・学長側近でかため、現学科の中心メンバーを一切排除し、また新学科の重要方針案は現学科メンバーから意見を聴くことなく、三菱総研に委託して作成させた。新学科の教育課程案も準備室が専断的に作成した。
 第三は新校舎建設で、落札業者には前・現市長系土建会社が含まれ、落札率は九九・七%となっている。
 特に深刻なのは、二〇一六年軟、学長らが社会学科の三教員について新学科への移籍拒否を強行してきたことである。この三教員は、第一次退職金訴訟の東京地裁提訴時、大学労組による原告団支援決定時、最高裁決定時それぞれで大学労組書記長だった者で、異常人事について教授会で「モノ言う」教員でもあった。本学では他学科等への移籍については本人同意を得るという雇用慣行が確立していたにもかかわらず、学長らは三教員の意思確認を一切拒否し、団体交渉では配置転換先も提示しない不誠実な態度を繰り返した。これは大学労組への弾圧(不当労働行為)であり、本年三月、山梨労働委員会に救済申し立てが行われたところである。学長・副学長によるパワーハラスメントでもあるため、三教員は学内の人権委員会、山梨県弁護士会人権擁護委員会にも救済を申し立て、公立大学職員組合連合会からの支援も得ている。

 おわりに

 二〇一五年、文科省通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」が教員養成系・人文社会科学系学部の「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換」を打ち出し、大学人にショックを与えた。前述のように、都留文大での異常人事、学部・学科再編はその都留文大バージョンと言ってよい。ここでの最大の被害者は学習主体=学生たちである。
 国立大学では、安倍政権の教育再生実行会議「これからの大学教育等の在り方について」および文部科学省「国立大学改革プラン」(二〇一三年)などをとおして、大学の安倍政権の経済政策(アベノミクス)への従属と新自由主義的グローバル化が進んでいる。公立大学では、ローカルな諸事情に媒介されながら、輪をかけて野蛮な「改革」が進んでいる。「軍学共同」、新自由主義的グローバル化に対応した一七年度小中学校学習指導要領改訂(アクティヴエフーニングと道徳教科化など)の影響も及んできている。
 「改革」が強行された英国には、大学の「資格付与工場」化に反対し、人類・社会・自然への深い洞察に貢献する「博物館」的な大学をと訴える大学人の運動がある(S.Collini, What are Universities for ?, Penguin Books, 2012)。そして今年の総選挙では大学授業料無料化などの野党の公約に共鳴して学生・若者たちが政治変革の波を作り出した。
 私たち都留文大数員有志はローカルな野蛮さと闘い、本学が「大学ではないもの」に転落することへの抵抗運動を粘り強く広汎に展開したい。安倍政権下で大学が「大学ではないもの」に転落することに粘り強く立ち向かっている全国の大学人や本誌読者と連帯しながら。


2018年07月09日

都留文科大学、ブラック大学(人権侵害大学)の先端をいく

都留文科大学事件一覧

■労働組合役職者に対する所属学科からの不当な排除事件
  2018年3月26日東京地裁に提訴(3人)
1.異を唱えた専任教員3名を所属学科から不当に排除 (三多摩法律事務所)
2.組合理由に排除は不当 都留文科大学教授ら提訴 (日本共産党山梨県委員会)

■根拠のないパワハラを理由とした授業・ゼミ担当外し事件
  2018年2月1日東京地裁に提訴 (1名)

■東京地裁無実確定後も授業を外し研究室などへの立ち入りを妨害する事件
 2018年7月4日東京地裁に提訴(1名)

■労働組合に所属の教員6名に対して違法な退職金減額事件
 東京地裁(2015年6月13日)二審高裁高裁判決(2015年10月28日),最高裁で大学側敗訴(2016年6月)

■上と同様の事件で,別の6人による提訴(不当に退職金を減額した事件)
  甲府地裁判決(2018年1月18日)約1250万円の支払い命令

この大学、かなり異常! 
80人が所属するこの大学で,少なくとも2年間に11名が不法な扱いで大学を提訴。

2018年07月07日

地位確認求め都留文大提訴、男性教授

■山梨日日新聞(2018年7月5日)

 研究室などへの立ち入りを妨害されて研究や授業が行えないなどとして、都留文科大文学部の男性教授(53)が4日、同大と理事7人を相手取り、地位確認などを求める訴訟を東京地裁立川支部に起こした。

 訴状や原告代理人によると、都留文科大は2012年7月、教授が以前勤めていた大学の処分を躇まえ、教授を解雇。その後、教授は地位確認を求めて提訴し、14年11月に復職することなどで同大と和解した。しかし、和解後も「教授会に出席できず、研究や授業ができない状態が続いているとし、実際には復職が認められていないと主張している。

 訴訟では、①教授が国語学の指導を担当する地位にあることの確認②教授が同大の研究室などへの立ち入りや教授会への出席などを妨害しないこと③慰謝料などとして約665万円を支払うこと-などを求めている。

 提訴後、会見した教授は「嫌がらせもあり、大学の対応は異常だ。研究や学生指導など教員として仕事を全うさせてほしい」と訴えた。

 同大総務課は取材に「訴状の内容義認し、対応を検討していく」とした。教授の現状については「教授として在籍しているが担当する業務はない」と説明している。
(小池直輝、岡達也)(共同〉

都留文大教授、復職を求めて提訴

NHK News(2018年07月04日)

山梨県の都留文科大学の教授が、セクハラ行為があったとする疑いで解雇されたあと、裁判で、教授としての地位を認めることで和解したにも関わらず、業務が出来ない状態が続いているなどとして、大学側に業務が出来るよう復職などを求める訴えを東京地方裁判所立川支部に起こしました。

訴えを起こしたのは、山梨県都留市にある都留文科大学の53歳の男性教授です。
訴えによりますと、男性教授は以前務めていた大学でセクハラ行為があったとする疑いで6年前に解雇されましたが、その後、解雇をめぐる裁判で大学側が教授の地位や賃金の支払いを認めることなどで和解したということです。
しかし、賃金の支払いは行われているものの、復職が認められず、大学への立ち入りや教授会への出席なども出来ない状態が続いているということです。
これをうけて男性教授は、大学と大学の理事らに対し、教授として復職し業務を出来るようにすることや、慰謝料などとして900万円あまりの支払いを求める訴えを4日、東京地方裁判所立川支部に起こしました。
訴えについて都留文科大学は「訴状が届いていないので詳しい内容はコメントできません」としています。


都留文科大学に異を唱えた専任教員3名が所属学科から不当に排除された問題で大学を提訴

三多摩法律事務所
 ∟●都留文科大学に異を唱えた専任教員3名が所属学科から不当に排除された問題で大学を提訴(2018-06-20)

 公立大学法人都留文科大学は、2012年3月から違法に退職手当の一部を不払いにしており、2度にわたる訴訟では、いずれも教員の完全勝訴判決が確定しました。

 この問題や不合理な人事その他の不当労働行為等に対して、都留文科大学教職員組合(労働組合)は大学教職員の権利を守るために、法令に基づく健全な大学運営を求めて、裁判支援や労働委員会への救済手続きの申し立てなど、活発に活動しました。

 これに対し大学当局は、本年4月より「社会学科」を「地域社会学科」へ変更することに乗じて、他の教員は全員を引き続き「地域社会学科」へ配属したにもかかわらず、組合の書記長を経験し、学長の専断的な大学運営に対する意見を述べてきた3名の専任教員に対しては、意向確認すらせず、理由なく「地域社会学科」から排除しました。公的性格を有する公立大学で、このような露骨な不当労働行為が許されるはずもありません。

 この問題について、上記3名の専任教員が原告となり、「地域社会学科」に所属していることの地位確認を求めるとともに、学科から排除されるためにゼミ(演習)の担当を外される等によって被る精神的苦痛について慰謝料500万円の支払いを求める裁判を3月に提起しました。原告となった3名の権利を守るために尽力する所存です。ご支援をお願いいたします。


組合理由に排除は不当 都留文科大学教授ら提訴

日本共産党山梨県委員会(04/03/2018)

組合理由に排除は不当 都留文科大学教授ら提訴

 都留文科大学の教授2人と准教授1人の3氏が3月26日、教職員組合活動などを理由に改編される新学科に配属されないのは不当だとして専任教員としての地位確認と慰謝料など2130万円を大学に求めて東京地裁に提訴しました。

 訴状によれば、大学は4月から社会学科が地域社会学科に改編されるにあたり、社会学科の原告3人には意向を確認しないで新学科配属を認めず専任教員としてゼミを担当させないなどの決定をしたとしています。

 原告は、3人が労働組合の中心的役割を担うとともに、大学の自治や民主的運営、教員の権利実現のために積極的意見を述べてきたことによる報復的で不当労働行為だと主張しています。

 都留文科大学では学校教育法の改正により、学長の権限が強まり、2013年には退職手当規程の不利益変更が強行され、退職者6名による訴訟(2016年最高裁で大学側敗訴確定)などの労働争議が起こっています。

 記者会見で原告の教授は「教員や公務員を多く養成している大学で学長によるトップダウンが進められ、異論を指摘する人を排除する。日本の大学のあり方が問われている。日本社会にとって見過ごせない問題だという思いで提訴した」と語りました。


2017年03月07日

教授の処遇巡り、都留文科大対応は不当

教授の処遇巡り、都留文科大対応は不当(毎日新聞2017年3月3日)

 自治労連の県組織は2日、教授の処遇を明らかにしない都留文科大の対応は不当労働行為に当たるとして、県労働委員会に救済を申し立てた。この教授は同日の記者会見で、処遇の説明を受けていない教員はほかに2人おり、いずれも同大教職員組合の書記長経験者だと説明。「差別でありパワハラだ」と訴えた。

 救済を申し立てたのは「自治労連山梨自治体一般労組」(河村厚夫執行委員長)。申し立て書は、都留文科大が来春、文学部の「社会学科」を「地域社会学科」に改める予定だと説明。この学科再編に伴う同大による教授への対応に問題があると指摘している。

 そのうえで同大に対し、▽他の教員と同じ条件で新しい学科に移行させる▽労働条件の変更にあたっては労組に事前に提示し、本人の同意を得る▽労組員に対する不利益な扱いをしない▽不当労働行為に謝罪する--の4点を求めている。

 県庁で会見した教授によると、同大は昨年10月、担当教員13人(定年退職予定の1人を除く)のうち10人について、新学科への移行を踏まえた配置案を示したという。ところが、この教授を含む教員3人に対しては「今に至るまで意向の確認がない」と述べた。同大事務局は、申し立てについて「内容を確認し、適切に対応する」としている。

[同ニュース]
■朝日新聞(2017年3月3日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20170303asahi.pdf
■山日新聞(2017年3月2日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20170302yamanichi

2017年01月25日

宮崎大学不当処分事件ならびに都留文科大学不当解雇事件について

 2012年,宮崎大学が事実無根の「セクハラ」を理由に,退職した教員の退職金を支給しなかった事件について,最高裁は2016年10月18日宮崎大学の上告を棄却した。これにより40代教員の完全勝訴が確定した。

 なお,宮崎大学は,一審判決を変更した福岡高裁宮崎支部の控訴審判決(2015年10月21日)を不服とし,上告していた。

 また,この事件では,同じ事案を理由に,都留文科大学が2012年に同教員を不当解雇している。この不当解雇事件についても,すでに,東京地裁立川支部は,2014年4月21日解雇無効の判決を下している。

 宮崎大学及び都留文科大学の両大学から不当な処分を受けた事件について,当事者の教員から簡単ではあるが,正確な経過と事実についてのコメントが寄せられた。以下,それを紹介する。(2017年1月24日,ホームページ管理人)

 宮崎大学がセクハラ等を行ったとして40代元教員を懲戒解雇相当とした事件について、平成28年10月18日最高裁の判決が出た。大橋正春裁判長は宮崎大学の上告(宮崎大学は福岡高裁で敗訴したため上告)を棄却し、40代男性の完全勝訴が確定した。福岡高裁では、宮崎大学の主張がすべて否定され、40代男性に対し、退職金に加え慰謝料も認められる判決を出している。

 なお、この裁判に関しては、宮崎大学に証拠保全(立ち入り調査)が裁判所職員立ち会いのもと行われ、会議録や職員のパソコンなどが調べられた。学生ではなく事務員のパソコンで懲戒解雇相当を決定する会議の直前に作成された(学生の署名もない)ハラスメント申立書や、争点となった卒論の本人調査が懲戒解雇相当を決定する前には行われていない(卒論作成者本人から聞く前にその卒論を名目に懲戒解雇相当を決定している)資料等が見つかっている。また、問題になった卒論を書いた学生は、40代男性のゼミとは全く関係ない他学科の学生で指導教員(T教員)が別にいた。さらにハラスメント申立者として記載されていた学生(実際申し立てたかも不明)は、問題になった卒論とは全く無関係な人物ばかりで、40代男性と全く面識のない学生も含まれている。ハラスメント調査を中心的に行った女性教員が数回にわたり行った上への虚偽報告がすべてのもとになっていることが伺えた。

 都留文科大学は、無実の人をハラスメントがあったと報道されただけで解雇したのである。


2015年10月29日

二審も元都留文大教員勝訴 「退職金減額は不当」 450万円支払い命令

産経新聞(2015.10.28)

 山梨県都留市の条例に合わせて退職金を減額されたのは不当だとして、都留文科大(同市)の元教員6人が、大学に減額分などの支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は28日、一審東京地裁立川支部に続き、減額分計約450万円の支払いを命じた。

 大学側は「退職金の算出方法は市の条例に準じるという労使慣行が成立していた」と主張したが、浜秀樹裁判長は「そのような労使慣行は認められず、減額は無効」と退けた。一審が認めた慰謝料の請求は棄却した。

 判決によると、都留市が職員の退職金を減額したのに合わせ、大学は平成25年3月、教職員に減額を通知。同月末付で退職した6人の支給額は1人当たり最大約184万円減った。市立大だった都留文科大は21年、公立大学法人となり、教職員は公務員ではなくなっていた。


2015年06月13日

都留文科大学の退職手当減額は違法! 退職手当全額と慰謝料の支払いを命じた東京地裁立川支部判決

三多摩法律事務所
 ∟●都留文科大学の退職手当減額は違法! 退職手当全額と慰謝料の支払いを命じた東京地裁立川支部判決(更新日:2015-06-13)

 公立大学法人都留文科大学による教職員の退職手当の一方的な切り下げに対し、6名の退職教員が、一方的な退職手当の切り下げは違法であるとして切り下げ前の退職手当の支払いと慰謝料の支払を求めた裁判で、本年4月16日、教員の請求を認める画期的な勝訴判決を得ました(東京地方裁判所立川支部)。

 今回、裁判所が違法と断じた退職手当の切り下げは、退職手当金を算出する際に「100分の104」とされていた「調整率」を「100分の98」に引き下げ、その後も段階的に「100分の87」まで引き下げるというものでした。大学は、この「調整率」の引き下げを強行するために、退職手当規程に「都留市条例を準用する」旨の規定を、教職員や教職員組合に説明することなく無断で挿入するという手法をとりました。しかも大学は、3月29日までに退職すれば引き下げ前の「調整率」を適用するが、年度末(3月31日)まで勤務すれば引き下げた「調整率」を適用するとしました。退職手当の引き下げに納得はできないが教員の職務を全うしたいと考えた6名の退職教員は、年度末まで大学に勤めました。しかしその結果退職手当が減額され、定年退職した教員の中には180万円以上減額された方もいました。
 大学は、国家公務員や山梨県職員、都留市職員等の公務員が同様の引き下げを行ったことを理由に、退職手当の引き下げを強行しました。しかし、大学は2009年4月1日に都留市から独立した経営を行う目的で公立大学法人となり、教職員は非公務員となりました。公務員や都留市職員の退職手当が引き下げられたからといって、民間の労働者である大学教職員の退職手当を引き下げる理由はありません。また、大学は法人化後も毎年多額の利益を計上しており、約7億円もの退職手当基金も存在したことから、退職手当を引き下げる経営上の必要性も全くありませんでした。まして、退職手当規程に「都留市条例を準用する」旨の規定を、教職員や教職員組合に一切説明することなく無断で挿入するなど、あってはならないことです。 

 今回の判決は、このような退職手当規程の変更は、労働契約法や労働基準法の定める手続きを何ら経ることなく行なわれたものであるから、都留市条例を準用する旨の規定はそもそも退職手当規程に存在するものではなく、効力も有しないと判断し、切下げられた退職手当の全額を支払うよう大学に命じました。
 また、大学が、年度末(3月31日)に退職を予定していた教員に対して、年度末よりも前に自己都合退職するか、あるいは年度末に退職して退職手当引き下げの不利益を受けるかのいずれかを迫ったことは、意思決定の自由を侵害する不法行為であると断じました。そして、2013年3月31日に定年退職した原告3名に対して各5万円、同日に自己都合退職した原告3名に対して各1万円の慰謝料を支払うことを大学に命じました。

 2012年11月に国家公務員の退職手当を引き下げる法律が成立して翌年1月から施行されたことをきっかけに、全国の国公立大学法人において同種の事件が起こっています。本件は数少ない勝訴例として意義のあるものです。
 しかし、この判決に対して大学は控訴し、今後東京高裁での控訴審がはじまります。大学の違法な退職手当の切下げを許さないために、引き続きのご支援をよろしくお願いします。


2014年03月04日

都留文科大のセクハラ不祥事、教授停職処分無効 115万円支払い命ず 地裁・都留文科大に

毎日新聞(2014年3月3日)

 女子学生にセクハラ行為をしたなどとして都留文科大(都留市)から停職処分を受けた元教授の男性(66)が処分の無効確認などを求めた訴訟で、甲府地裁は25日、処分は無効とし、同大学に慰謝料など計約115万を支払うよう命じた。

 同大事務局の重原達也次長は「判決文を読み、対応を判断したい」としている。【藤河匠】