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2004年05月04日

9条改憲についての立場、5月3日各新聞社説・論説

 日本の新聞各社は、5月3日憲法記念日の社説・論説にて,改憲問題に関する自社の主張を一斉に掲げた。私はそのなかで,琉球新報の「平和憲法の危機・九条への“復帰運動”を」と題する社説が一番気に入った。憲法問題に対する新聞社の一貫した姿勢が伝わってくる。以下に一部を抜粋しておきたい。

琉球新報(5月3日)より部分抜粋

平和憲法の危機・九条への“復帰運動”を 

「 日本国憲法は米軍統治下にあった県民にとってあこがれであり、復帰運動のけん引力でもあった。…

 …沖縄で初の「憲法記念日」を祝ったのは米軍施政権下にあった一九六五年である。四月に立法院が「住民の祝祭日に関する立法の一部改正」を全会一致で可決、本土と同じ五月三日に憲法記念日を設定した。

 琉球新報の社説は「憲法記念日を祝う意義」との見出しで、「日本国憲法の適用下にはいることを望む百万近い国民のあることを知らせるとともに、その日まで、施政権者に日本国憲法に沿った統治を行うことを自覚させる役割を果たさせたい」と主張している。…

…わたしたちは二十七年間の異民族支配下で苦難を体験したあと、施政権返還は実現したが、憲法第九条への復帰はまだ果たしていない。日本国民の義務として第二の復帰運動が必要だ。」

 その他,新聞各社の社説・論説を「9条改憲否定論」,「9条改憲肯定論」「改憲の賛否が明示的でないもの」に分類すると以下のようになった。(日付変更によるリンク先変更は可能な限り修正した)。

9条改憲を否定する社説

国が暴走して戦禍を招き、国民の人権を踏みにじることがないようにと、厳しく規制しているのが第九条だろう。(北海道新聞)
9条改正は世界との付き合いのために人並みのことができるようにする現状追随がテーマではない。(毎日新聞)
現在の憲法は時代に合わなくなったという。「解釈改憲」の積み重ねも限界だという。だから時代に合わせて改憲し、憲法に拘束されない国になりたいというのだろうか。憲法とは高い理想を掲げるべきものである。平和を念願し、それを追い求めることがどうして間違いだと言えるだろう。(東奥日報)
戦争放棄は崇高な理念。 民族紛争が深刻化する中で日本は平和な日々が続く。ありがたいと思う。恒久の平和を願って戦争の放棄を明確にしている憲法のたまものである。(岩手日報)
国家像は目的ではなく日本や世界の人々の幸せと平和のための手段です。国家より国民が先というのは憲法を考える時の基本です。(東京新聞)
憲法の平和主義は、武力に頼らぬ紛争処理を追求する国連憲章と理念を共有する。米国の力の論理とは対照をなす思想だ。日米同盟一辺倒から国連中心の国際協調へ、憲法改正論議の前に日本外交の在り方が問われている。(新潟日報)
ブッシュ政権の後押しを国際協調と言い換え、無理やり「非戦闘地域」をつくり出し、憲法をすり抜けてイラクへ自衛隊を送ることへの危うさと疑問を、国民は敏感に感じ取っているのだろう。武力ですべてを解決できないことも、イラクの現状が雄弁に物語っている。 (神戸新聞)
「非戦闘地域」という条件でイラクに自衛隊を派遣したのは、憲法の一線を超えたと言ってもよい。PKOをぎりぎりの国際貢献策とするのが日本の姿勢ではないか。国際貢献の名のもとに、歯止めなき武力行使の道に進むことを懸念する。(中国新聞)
警戒すべきは改憲論議が日米同盟の強化に特化された形で進められることだ。これでは平和憲法のもとで培ってきた国際的信用も一挙になくしてしまうことになる。(愛媛新聞)
国内では国会や各党の憲法調査会などによる改憲の流れが勢いを増しつつある。きょうは憲法記念日。憲法をもっと生活者のものとしたい。憲法を改めるかどうかを決めるのは、われわれ主権者なのである。(南日本新聞南風録)
わたしたちは二十七年間の異民族支配下で苦難を体験したあと、施政権返還は実現したが、憲法第九条への復帰はまだ果たしていない。日本国民の義務として第二の復帰運動が必要だ。(琉球新報)

9条改憲を肯定する社説

『新憲法』を政治日程に乗せよ。「イラク戦争などで露呈した国連の機能不全を考えれば、「国際的機構の活動」への参加だけでは十分な役割を果たせない。」(読売新聞)
最近の議論では9条2項を全面的に改めて自衛権、ないし自衛のための組織を明記し、新たに3項を設けて自衛の組織を国際貢献や国際協力に活用できるとする案が有力になっている。基本的に支持できる内容である。(日経新聞)
問題は、こうした脅威に対し、現憲法下では日本が総力を挙げて対処することが難しいことだ。最大の要因は、「戦力不保持」などを規定した憲法九条によって、自衛隊が国内的には軍隊としての地位や権限を与えられていないため、その活用ができないことにつきる。(産経新聞)
現在は「改正か護憲か」は過ぎ、「どう改正するか」の段階を走っている、と見るべきだ。(河北新報)
九十六条は憲法改正の権利が国民にあることを認めた規定とも言えるが、その権利が法律の不備によって行使できない状態なのである。あるべき法律を制定しない国会の怠慢、不作為はそれこそ憲法違反と言ってよい。(北国新聞)

改憲の賛否が明示的でない社説,あるいは改憲に懸念を示しつつも立場が不明瞭な社説

自衛隊はよいが、あっさりそれを軍隊というのはどうか。日米安保条約は重要だが、英国軍のように米国と一緒になって外国で戦争するのはごめんだ。国連との協調はもっと大切に……。世論調査からうかがえるのも、そんな常識的な民意である。(朝日新聞)
改憲で平和をどう守るか(福島民報
憲法は政府が国民に押し付けるものではない。初めに日程ありきの進め方では、改憲の作業として粗っぽい。国民が論議に加わる環境を整えることが優先する課題である。(信濃毎日新聞)
多様な構想を示し、国民の関心を呼び起こすことから論議を始めたい。(北日本新聞)
九条だけが憲法改正ではないが、日本の将来を託する問題だけに、いま一度、真剣に論議を尽くすべきである。(福井新聞)
平和条項をめぐって憲法解釈が限界にきたいま、国民一人ひとりが憲法と平和のあり方について向き合わなくてはならない時期である。(山陰中央新報)
現実追認の議論だけでは物足りない。憲法の理念や歴史を踏まえた冷静な議論を期待したい。(徳島新聞)
米政権は封印解除を期待する。「最後の一線」を越えるのか。それとも踏みとどまるのか。この問題の扱いによって、改正論議への基本姿勢も変わってくる。(高知新聞)
憲法改正で社会・国家の構造転換をめざすのか、現憲法の原則を一層発展させて新しい社会づくりをめざすのか。強まる改憲論のなかで、その選択が、いま問われている。(西日本新聞)
新世紀の文明社会に軍隊がまだなお必要なのだろうか。平和憲法下で外交能力を高め、日本が国連をリードする方向性は見えないのだろうか。すべての国民が関心を持って、憲法改正論議に加わりたい。(宮崎日日新聞)
憲法改正は全国民にとって最重要のテーマである。いま大切なのは、国民が憲法問題と冷静に向き合い、論議を深めることができるような環境が準備されることではないか。(熊本日日新聞)

投稿者 管理者 : 2004年05月04日 01:10

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