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2004年05月10日

イラク占領と日本のODA50億ドルの欺瞞性・違法性

 イラク国際戦犯民衆法廷・東海公聴会実行委員会は,4月29日,ODA研究の第一人者新潟大学の鷲見一夫教授を迎えて『イラク占領と日本のODA』と題する講演会を開催しました。この講演会にて鷲見氏が講演した内容の配布資料を,名古屋在住のペンネーム「たんぽぽ」さんがテキスト化しHP掲載しています。ここにそれをリンクし転載します。

 日本政府は,イラク「復興支援」と称して,50億ドル(約5300億円)ものODAを行おうとしています。国民の血税をもとにしたこのイラクODAについて,鷲見氏は「援助」の欺瞞性,ODA「要請主義」原則の放棄,日本の債権放棄問題,米日大企業への利益環流問題の側面から分析し,この「復興援助」の重大な問題性を論じています。戦争経済という側面からみたイラク戦争・占領問題について考えて頂きたいと思います。

 なお,ペンネーム「たんぽぽ」さんについて,ご紹介しておきたいと思います。HPは以下(右欄に「たんぽぽだより」でリンク)。http://www.geocities.jp/jinkenyogo/report/ 
 この方は,「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」(名古屋)の原告の1人であり,同時に現在名古屋で会社勤めのかたわら同会の女性ボランティアスタッフとして活躍されている方です。私は面識はありませんが,継続的に様々な情報を送って下さっています。鷲見氏の上記講演会のビデオ映像も送っていただきました。授業で学生に見せようと思っています。

 鷲見氏の同講演会資料は以下4つあります。
講演「イラク占領と日本のODA」
 同上[資料]「イラク復興支援に群がる「援助」マフィア」
 同上[資料]「日本の対イラクODA の問題点」
論文「イラク復興支援50億ドル + 債権放棄の欺瞞性と違法性」

「イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)・東海公聴会」市民の立場からODA問題に取り組んでいる数少ない研究者のひとり、鷲見一夫・新潟大教授をお迎えしての学習会。(2004.4.29 名古屋市にて)

イラク占領と日本のODA

新潟大学 鷲見 一夫教授

(「おわりに」の抜粋)
 対イラク「援助」において、日本の拠出額50億ドルは、異常に突出している。このことは、日本に次いで拠出額の多いサウジアラビアが10億ドル、イギリスが9.11億ドルであるのと比べてみれば歴然としている。また、日本は、対イラク債権の最大保有国でもある。それ故、日本は、「援助」拠出額の点でも、また債権放棄の点でも、これに躊躇の姿勢を示す国々に対して率先垂範の姿勢を示すことにより、これに加わる「呼び水」的役割を果たそうとしているのである。
 いま仮に日本が対イラク公的債務約70億ドルの90%の放棄に応じたとすれば、約6750億円もの税金の無駄遣いである。これに対イラクODAの50億ドルを加えれば、およそ1兆2000億円もの公的支出である。
 対イラクODAが、すべて無駄であるというのではない。しかし、それには前提条件がある。つまり、それが、イラク国民の意思として「要請」されたものであり、また十分なニーズ調査に裏打ちされたものでなければならない。そうでなければ、「援助」は、一部特権階級とそれに結びついた先進国企業の食い物にされるのが落ちであり、また「腐敗」の種となるだけである。
 実際にも、対イラク「援助」は、これに群がる欧米・日本企業の格好のターゲットになっている。それを象徴するのがブッシュ政権関係者と結びついたハリバートン社、ベクテル社などの縁故受注である。
 日本では、1990年のイラクによるクウェートの侵攻以来、イラク向け貿易保険の引き受けが停止されてきた。しかし、復興支援事業における日本企業の受注をバックアップするために、日本政府は、2003年9月に、13年ぶりに貿易保険の引き受けを再開した。その再開第一号は、三菱重工業のハルサ火力発電所の復旧のための部品輸出に対してである。
 しかし、報じられるところでは、この復旧工事に関しては、「日本人技術者は派遣しない」とのことである。これで、どうして被害状況を点検し、復旧工事の度合いと金額を見積もることができるというのであろうか?
 三菱重工業は、イラク人技術者を通じての遠隔操作により、この復旧工事を行うことを予定しているようである。しかし、この火力発電所の建設に携わらなかったイラク人技術者が、はたしてどの程度において詳細な点検作業と復旧作業を行うことができるのであろうか?
 また、このような遠隔操作では、資材と資金の着服・流用は防止できない。三菱重工業の社員が現地チェックを行わずして、同社は、このような着服・流用を、どのようにして食い止めることができるのであろうか?日本政府はまた、このような「援助腐敗」を防止する監督責任を、どのようにして果たし得るのであろうか?


投稿者 管理者 : 2004年05月10日 00:05

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