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2004年06月17日

教育基本法改正問題、愛国心・愛される国造りが先だ

琉球新報社説(2004年6月11日)

 子供たちへの「愛国心」教育が強化される。しかし、今、なぜ愛国心なのか。「国を愛し、大切にする心」という大義を振りかざし、政府・与党が目指す本当の狙いは何か。
 与党の幹事長、政調会長らで構成する「与党・教育基本法改正に関する協議会」が九日、「愛国心」醸成について、同法改正案の中間報告に明記する方針を確認した。
 協議会は、家庭教育や学校と地域の連携、私学振興の重要性、教員の資質向上など九項目を、新たに条文に追加することも了承している。

 しかし、教育基本法改正の焦点は、「愛国心」問題である。「国を愛するという表現がないなら、何の意味もない」との自民党内の強硬論に、今回の教育基本法改正の狙いが、はっきりと表れている。

 だが、与党・公明党は「戦前の国家主義を連想させる」として、愛国心を盛り込むことには難色を示してきた経緯がある。国民の多くが、同じ懸念を抱いてきた。

 それが一転、「自分の文化、郷土、国を愛することができない人間に、他の国家、民族を愛する心は生まれない」(浜四津敏子・公明党代表代行)として、容認に動いた。
 自民党内には「公明党に配慮するあまり、(改正案が)自民党らしくなくなるのが心配」との懸念もあった。与党内の不協和音を、公明党は警戒したのであろう。
 政治的駆け引きの中で、懸念される「戦前回帰」の危険性を払しょくせぬままに、「愛国心」醸成を教育の基本に据える。

 なぜ、いま「愛国心」なのか。国旗・国歌法の制定、通信傍受法(いわゆる盗聴法)、住民基本台帳法(国民総背番号制)、有事法制の制定、対米支援法による自衛隊海外派兵、そして自衛隊を「軍隊」とするための改憲論議が進む国会である。
 「戦争のできない国家」から、「戦争のできる国家」への準備が進んでいるように見える。有事法制を整備し、国家のために尽くす国民を育てる。それが「愛国心」醸成の狙いだとしたら、戦前の国家主義の恐怖を想起せざるを得ない。
 それとも、与党は国を愛する心を教育で強制せねばならぬほどに、国民の愛国心を信用していないのであろうか。だとするならば、政権を担う与党として、国民の信頼を醸成する政治を行えない自らの不徳を、まず恥じるべきである。
 財政を破たんさせ、地方にツケを回し、老後に不安を残す年金改革を強行採決するようでは、信頼醸成どころか不信を増すばかりである。
 「愛国心」を国民に強制する前に、与党がまずやるべきことは、国民から信頼される「国」を論じ、実現することではなかろうか。

[直近の情勢]
「愛国心」の表現は自公案併記へ 教育基本法検討会(朝日新聞6/16)
「愛国心」は参院選後に調整 教育基本法改正、与党報告 (朝日新聞6/16)
「教育基本法の改正に関する意見書」など採択へ−都議会議会運営委(毎日新聞6/16)
教育基本法改正:「愛国心」一本化できず 与党協議会(毎日新聞6/16)
愛国心は両論併記=教育法改正で中間報告−与党(時事通信6/16)

投稿者 管理者 : 2004年06月17日 00:16

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