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2004年07月26日

大学評価学会、「学会通信」第2号

大学評価学会(暫定的ホームページ)

「大学評価学会通信」第2号(2004年7月24日)を掲載しました。

「大学評価学会通信」第2号(2004年7月24日)

目 次

季研究集会のプログラムが決まりました  ……… 1
『現代社会と大学評価』創刊号について  ……… 2
訪問印象記      重本直利     ……… 2
文部科学省を訪問して  田中昌人    ……… 5
専門委員会への参加を呼びかけます    ……… 6
大学評価の基本的前提は何か 永岑三千輝 ……… 7
運営委員会報告             ……… 8

(同上、5ページ)
河村健夫文部科学大臣宛別紙「2006年問題に関する文部科学省への要請書」を提出

文部科学大臣  河村建夫 殿

「2006年問題」に関する文部科学省への要請書

要請趣旨

 大学評価学会は、下記の要請に関する事項を「2006年問題」として学会内に特別委員会を設けて、緊急的課題として取り組んでおります。
一つは、1966年12月16日に国際連合総会において採択され、日本では1979年9月21日に発効した国際人権規約の「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」の内、第13条2項(c)の高等教育における「無償教育の漸進的導入」について、日本政府が、それに「拘束されない権利を留保する」としていることに関して、2001年8月31日における国際連合の「経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の最終見解―日本―」は、「拘束されない権利の留保の撤回を検討することを要求する」として日本政府に対し2006年6月30日までに回答を求めている問題です。
関連するいま一つは、国際連合の児童の権利委員会が、日本における「過度に競争的な教育制度の改革」を行い、「高校を卒業したすべての者が高等教育に平等にアクセスすることを確保する」ように求めて、2004年1月30日に行った勧告に対して、日本政府に2006年5月31日までに回答を求めている問題です。
この期限に向けて、日本政府および文部科学省が勧告に基づいて各方面に広く意見を求め、協議を行い、その経過を公表し、具体的な措置を講ずることを求めます。第一の件に関しては、1984年の日本育英会法の制定に際しても衆参両院文教委員会の各付帯決議において「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること」とされています。以来、20年が経過し、今日、学費の負担が高等教育を受ける機会均等を損なう教育上の差別を生ずるまでになっており、「無償教育の漸進的な導入」に基づく政策の具体化は、世界人権宣言第26条、国際人権規約の社会権規約第13条、児童の権利に関する条約第28条、第29条を誠実に履行し、日本国憲法第14条、第26条、教育基本法第3条、第10条、第11条を生かす上で不可欠の事項になっていると考えます。 

要請内容

1.日本国憲法第98条に基づき、国際人権規約の内、社会権規約第13条2項(c)の「高等教育における無償教育の漸進的導入」に対する日本政府の国際連合「経済的、社会的および文化的権利に関する委員会」への回答(2006年6月30日が回答期限)に向けて、早急に具体的な協議および措置を講ずることを求めます。
2.日本国憲法第98条に基づき、国際連合「児童の権利に関する委員会」が、2004年1月30日に日本政府に対して行った勧告第50項(a)への回答(2006年5月31日が回答期限)に向けて、早急に具体的な協議および措置を講ずることを求めます。

2004年6月21日
大学評価学会・国連社会権委員会2006年問題特別委員会
(略称;2006年問題委員会、委員長・田中昌人)

(同上7ページ)
 永岑三千輝氏「大学評価の基本的前提はなにか」は,大学評価の基本的前提ともいうべき「学問の自由、その制度的保障としての大学の自治」の重要性の視点から横浜市立大学の問題を論じている。
 この部分は、以下、テキスト文字の形式で掲載しておきたい。

大学評価の基本的前提はなにか

横浜市立大学 永岑三千輝

 大学の評価においては、その大学が研究教育の使命、真理の探究や学芸の振興をどれほど推進しているかが核心となろう。その使命達成度を評価する場合、制度的保障がどのようになっているかがポイントになろう。大学がどれだけ自立的自律的であるか、学問の自由、その制度的保障としての大学の自治(そのためのルール)がどの程度きちんと確立し守られているか、が決定的に重要になると思われる。その観点から、今年3月に市議会で定められた独立行政法人・横浜市立大学の定款をみると、私の理解するところでは、およそ大学の独立性や自治の保障は無きに等しいといわなければならない。心ある人々は「諦観」といっている。以下では、「横浜市立大学を考える大学人の会」(代表・今井清一名誉教授)での最近の議論を踏まえて、いくつかの問題点を指摘しておこう。
 理事長(法人・経営)と学長(大学・研究教育)を分離し、理事長を市長(行政当局)が任命し、その理事長が学長を任命する。理事長に対する大学人からの信任・不信任のシステムは制度化されていない。今までは市長が学内選挙の結果を尊重し学長を任命していたが、定款は、教員がごく少数しか占めない可能性がある学長選考委員会を設けるだけである。学内の民意を問うシステムは設定されていない。
 そもそも大学の教員は研究教育の主体的担い手であり、その教員人事がどのように行われるかが大学にとって死活的に重要である。国立大学法人法においても、また首都大学東京の案においても教員人事に関する事項は教育研究評(審)議会の審議事項となっているが、本学定款には規定がない。新大学人事として現実には、いかなる法的規定、いかなる学則、いかなる選考規則に基づくか不明のまま、大学改革推進本部(行政当局)と最高経営責任者(孫福氏の突然の死去で空席)のもとに「教員選考委員会」を置いて人事を進めている。行政当局の組織と決定による教員選考であり、行政当局に指名された少数の大学人だけが選考に関与する。ここには大学の自治はない。
 行政当局が指名し組織した「教育・研究評価検討プロジェクト」が中間案を出した。それには「新たな教員人事制度の構築に向けた取り組み」という副題が付されている。その「評価の考え方」は、「組織の目標と教員個人の目標を結合させ」、「教員全体が、組織の目標やみずからに求められている役割を認識し、みずからの能力を高めよりいっそう発揮できるようにする」という。
 それでは、肝心の「組織の目標」は誰がどのように決めるのか?中間案の説明会で当局の責任者は、地方独立行政法人法にしたがい設置者である地方公共団体(本学の場合=市)の長が決めるという紋切り型の法律解釈を示した。だが、「決める」という最終的な法律上の枠組みだけに着目するのは問題である。法律に従う場合でも、大学の自治、大学の独立性や自律性を尊重するならば、すなわち単なる行政法人ではなく、地方独立行政法人法の条項にわざわざ公立大学法人に関する特別規定をいれたとすれば、すなわち特に「独立」制を重んじるべき大学であるならば、教授会や評議会といった大学教員の自治的組織が大学という組織の自立的で自律的な目標の検討・決定を行うべきである。決定に至る重要部分が大学人の手になければ、大学人は行政命令に服するだけの行政職員になってしまう。
 だが、そのような発想は大学改革推進本部の発言(中間案説明会での私の質問に対する返答)には見られない。行政当局の指名した人々による「プロジェクト委員会」で決めて、「組織の目標」としようというのであろうか。定款は、中期目標について経営審議会と教育研究審議会が「意見をいう」とあるが、その経営審議会や教育研究審議会が大学内の民意を客観的かつ公正に反映するシステムは保障されていないのである。その根本を問題にしている。地方独立行政法人法78条には、「設立団体の長は、公立大学法人に係わる中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該公立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮しなければならない」とあるので、まさにその「公立大学法人」の意見がどこまで大学の真に民主的な創意を結集したものであるのか、その制度的保障をこそ構築していくべきなのである。
 大学が自主性・自律性を発揮するためには研究教育を担う大学人が組織として大学の目標や計画の設定に参加できるシステムでなければならない。学則でそれを明確にすべきだと考えるが、横浜市の定款では、「重要な規程の制定及び改廃に関する事項」は経営審議会の審議事項となっており、その学則を決める経営審議会が理事長をはじめ行政当局の意向が貫徹する(上からの支配力の貫徹)とすれば、行政の大学支配のシステムだけは幾重にも保障されていることになる。大学としての自立的な意思決定システムを確立し、それを通じて決めないかぎり、「大学の目標」は、上から、あるいは外から押し付けられた目標でしかない。そうした、「上から」、「外から」決められた「組織の目標」に従うというのでは、大学の自律性はない。そうした「組織の目標」に合致しているかどうかで、教員の評価が決まるとすれば、およそ大学における学問の自由は成り立たない。
 新大学の目標や意思の決定システムに関わる問題は本来、現大学の評議会・教授会で審議すべきだが、評議会・教授会の審議権は無視されたままである。いったい自由な教授会・評議会における組織的討議を経ないで大学らしい大学になるのか、きわめて由々しい事態が進行している、というのが私の見方である。


投稿者 管理者 : 2004年07月26日 00:17

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