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2004年11月08日

都立大学法学部法律学科の崩壊

「首大非就任者の会」ホームページ
 ∟●都立大学法学部法律学科の崩壊

都立大学法学部法律学科の崩壊

人見 剛,水林 彪

 「25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではないーー都立大学文系3学部にける人材流出の実態ーー」の「5 法学部」の末尾の文章は、「『首都大学東京都市教養学部法学系法律学コース』は,名ばかりでなく,実においても,『東京都立大学法学部法律学科』とはほとんど異質な組織とならざるをえない」ことを指摘した。その際、立論の根拠としたのは、文章作成時点において公表されていた情報に規定されて、もっぱら法学部から大量の首大非就任者が出たという事実であった。しかるに、先般、「首都大学東京」HPにおいて、「首都大学東京都市教養学部都市教養学科法律学コース」(以下、略して「首大法律学コース」よぶ)の予定教員のリストが発表されたことにより、廃止される東京都立大学法学部法律学科と新設される首大法律学コースの教員編成を具体的に比較検討することができるようになり、両組織が名実ともに全くといってよいほど異質の組織であること、東京都立大学法学部法律学科は8.1事件を契機に実質的にも消滅させられてしまったこと、が一層明瞭となった。本コメントでは、このことを記しておくこととする。

 別表は、2003年8月1日時点において「都立大学法学部法律学科」に在籍していた教員のリストと、首大HPに発表されている「首大法律学コース」の教員のリストとを一つの表にまとめて示したものである。特に注目すべきは、以下の3点である。

(1) 2003年8月1日時点において、東京都立大学法学部の教員であっ たもののうち、民法、行政法、社会法、法哲学、法社会学、日本法制史、西 洋法制史の7つの専門分野の教員は、全て(定年退職者1名を除く12名)、 首大に就任しなかった。全員、首大に移行した分野は、わずかに、憲法、刑 事法、国際法の3分野のみである。

(2) 首大法律学コースには、社会法分野(労働法、社会保障法など)と基 礎法学分野(法哲学、法社会学、日本法制史、西洋法制史)の専任教員が存 在しない。

(3) 民法、民訴法、行政法の3分野において、首大法律学コースの人事補充は、人員の点からみた場合、不足している。民法は4分の3、民訴法および行政法はそれぞれ、2分の1である。

 首大HPの「教員採用」欄によれば、現在公募されている法律コース教員は、知的財産法、法哲学、法社会学の3分野、各1名である。この新規公募と既に公表された上記教員リストを総合するならば、そこに、開設時点における首大都市教養学部法律コースの特徴は、次のようにまとめることができよう。

 1. 民法、民訴法、行政法などの基幹的実定法分野が非常に手薄である。

 2. 社会法の専任教員がゼロである。

 3. 法哲学・法社会学の教員をかりに採用できたとしても、法を歴史的に研究する法制史分野の専任教員を欠くこととなる。基礎法学分野全体の教員数も、東京都立大学法学部に比して半減する。

 4. 基幹的実定法分野や基礎法分野を縮小した分を、知財法、国際私法などのいわゆる先端的分野の拡大に振り向けているように見える。

 右の諸点は、おのずと、首大全体の理念を象徴的に表現しているように思われる。すなわち、基礎的基幹的学問領域を軽視する発想である。「都市教養学」という得体のしれない名称の中にも、一応は「教養」という語が見えるが、上記の「首大都市教養学部都市教養学科法律コース」の特徴は、「教養」重視とは正反対の方向であると言わねばならない。

 土台・柱・壁などの骨格部分の工事では大幅に手を抜き、その分、見栄えのよい流行の家具調度品を揃えることに資金を回した家屋を想起させられる。そこに住む人すなわち首大学生諸君はどうなってしまうのであろうか? ……


投稿者 管理者 : 2004年11月08日 00:46

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