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2004年11月18日

<非戦の回廊 揺らぐ三原則>(17)国民会議提言 「平等主義」に挑戦状

神戸新聞(2004/11/17)

(17)国民会議提言 「平等主義」に挑戦状

 玄関のガラスに一九三六年の二・二六事件で撃ち込まれた弾痕が残っていた東京・永田町の旧首相官邸。二○○○年三月二十七日、当時の首相小渕恵三の私的諮問機関「教育改革国民会議」の初会合が開かれた。
 委員二十六人の中に財界人が三人いた。経団連・創造的人材育成協議会会長のリコー会長浜田広、日経連・教育特別委員会会長の東京海上火災保険会長河野俊二、国民会議副座長も務めた経済同友会特別顧問のウシオ電機会長牛尾治朗。
 政府内で教育政策を議論する場に主要経済三団体の幹部がそろったのはこれが初めてだった。
 牛尾の意向が強く反映され、その年十二月に提出された最終報告は「大事にした平等主義は一律主義、画一主義に陥る危険性をはらみ、新しい価値を創造し、社会をけん引するリーダーの輩出を妨げた」と戦後教育を総括した。
 奉仕活動の義務化や道徳と伝統文化の尊重、習熟度別学級の導入など中央教育審議会が踏み込めずにいた課題が前面に押し出され、「個の尊重」「機会均等」を掲げる憲法や教育基本法に挑戦状を突きつけるような提言だった。
 だが十分な議論もしないまま文部科学省は次々と法案化し、教育現場に投げ込んだ。「いま思えば、国民会議が始まりだった。だが、その時は気付かなかった」と文科省幹部はうつむいた。
 自治を尊重され、競争や淘汰(とうた)とは無縁だった国立大学。二○○一年六月、首相小泉純一郎の指示で、文科相遠山敦子は二週間で国立大の再編・統合、民間の経営手法、第三者評価による予算配分、競争的資金導入などから成る「遠山プラン」をまとめた。
 政治家を除けば、牛尾や日本経団連会長奥田碩のほか経済学者ら経済専門家だけで構成する経済財政諮問会議は大学間競争を促すこの案を「素晴らしい」と評価。文科省が政策の柱にしてきた義務教育にも口を挟む。
 「(文科省は)どういう人間をつくりたいのか」「教育委員会をきちっとするのが大事」…。
 国の財政負担軽減を目的に、国が公立小中学校教員の給与の半額を補助する義務教育費国庫負担制度廃止も主張。「教育論ではなく財政論からの議論ばかり」との遠山らの声が財政諮問会議に届いている気配はない。
 さらに株式会社の私立学校経営への参入など、教育に規制緩和や自由化を迫る動きもある。教育が経済の論理にさらされている。(敬称略)


投稿者 管理者 : 2004年11月18日 00:51

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