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2004年11月24日

敗訴者負担法案が廃案に?

澤藤統一郎の事務局長日記(2004年11月23日)

朝日と共同通信が報道している。政府は「弁護士報酬の敗訴者負担制度」導入を断念したという。今、前国会から継続審議となっていた「民事訴訟費用法改正案」を廃案とする方針を固めた、というのだ。「方針を固めた」とは微妙な報道。複数報道だが、それぞれ独自の取材で感触を得たということなのだろう。そのアナウンス効果も大きい。

噂としては、これまでもそれに類する話は聞かされてきた。司法アクセス検討会の推進派委員が「完敗だ」といったとか。しかし、仮にも政府提出の法案、しかも推進派から見れば相当に譲歩した内容。廃案は困難、修正が現実的目標、などと考えてきた。廃案が本当なら感慨深いものがある。

この法案には、民主的な法律団体、消費者・労働・公害・患者団体などがこぞって反対してきた。当初は頼りなかった日弁連も、対策本部発足以来、本腰を据えて取り組んだ。そして、少なくない国会議員も反対に回ってくれた。訴訟は本来弱者の権利を擁護すべきもの。その弱者の司法へのアクセスを阻害する。その理が、社会に浸透した。清水鳩子さんや瀬戸・坂弁護士らを先頭とする運動あればこその成果。

だが、この問題の複雑さは、廃案だけでは問題が片づかないこと。とりわけ、格差ある当事者間の訴訟外での敗訴者負担の合意を有効と認めて良いのかという問題が残されている。消費者約款、銀行取引約款、金融商品取引約款、入院申込書、手術承諾書、借地借家契約、労働契約、就業規則等々に、管轄合意と並んで「本契約に関する訴訟においては、弁護士報酬は敗訴当事者が負担する」という条項が滑り込まされる恐れがある。これを無効とする立法措置が求められるのだ。

これまでの運動の勝利の意義を確認するとともに、残された課題での運動の再出発が必要であろう。


投稿者 管理者 : 2004年11月24日 01:43

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