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2004年12月13日

日本私大教連、財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明

日本私大教連
 ∟●財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明(2004年12月6日)

財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明

意図的で浅薄かつ狭隘な議論にもとづく私大助成削減の建議を撤回し
私大経常費助成を削減するな

2004年12月6日
日本私大教連
(日本私立大学教職員組合連合)

 財政制度等審議会(以下、財政審)は11月19日、2005年度予算編成に関する「建議」をまとめ、谷垣禎一財務相に提出した。その中で財政審は、私立大学等に対する経常費補助について、学生数の減少を理由に、「予算縮減にむけ厳しく見直しを図るべき」との考えを示しているが、これは極めて意図的で浅薄かつ狭隘な観点に立ったものであり、到底容認することはできない。私たちはこれに断固として抗議するとともに、来年度予算編成において私大助成の削減を行わないよう強く要望するものである。

 そもそも私大助成は、私立学校振興助成法と国権の最高機関である国会の附帯決議により、経常費に対する2分の1補助の実現が行政の責務によるものとして要請されているものである。また、私大助成の趣旨と私立大学が担っている大きな役割に鑑み、国の責任として私学振興を図るべきことが国会においても繰り返し確認されてきた。

 しかし実際には、私立大学等の全経常費に占める補助金の割合は1980年の29.5%をピークに漸減し、ここ数年はわずか12%程度にまで落ち込んでいる。しかも経常費補助の内訳をみれば、私立大学等の教育・研究条件整備のための基盤的経費に対する補助である「一般補助」は20年にわたり抑制・削減され、2004年度予算では最高時(81年度予算)の8割程度にまで縮減されてしまっている。

 こうした法治国家における行政の責任をあいまいにしたままで、財政審の歳出合理化部会・財政構造改革部会合同部会(11月1日)では、「単なる機関助成から競争原理に基づく支援へ」財源をシフトするという文脈の中で、「学生数が最近非常に減少している」ことのみを根拠として、私学の経常費助成が特に「ポイント」になっていると槍玉に挙げている。そこでは、上述したような私大助成の経緯や現状、日本の高等教育において私立大学が果たしてきた、そして今後果たすことが期待される役割などについては、一切触れられていない。「法律」よりも「政策」を上に置き、補助金削減という命題を私立大学等経常費補助にあてはめんがために、学生数「減少」を引き合いに出しただけの、極めて杜撰な議論と言わざるを得ない。

 財政審が学生数減少の根拠としているデータは、私立大学等の学生総数から聴講生、選科生、研究生等を除いたものであり、その妥当性自体疑義をはさまなければならない。財政審は生涯学習社会への対応、社会人教育、優秀な大学院生の養成など必要ないとでも主張するつもりなのか。そのための経費支出など取るに足らないとでも言い張るのであろうか。また付け加えれば、財政審に資料として提出された学生減のグラフには、学生数の算出基礎も出所も注記されておらず、また議事録を見る限り口頭での説明もまったくされていない。あたかも、私立大学等の学生総数は増加しているという事実を隠蔽するかの如くである。

 百歩譲って、この恣意的なデータに基づいたとしても、私大助成削減の根拠とは決してなりえない。たとえば、このデータから学生一人当たりの経常費補助額を算出してみても、80年代前半には15万円前後だったものが、90年代には12万円台で推移し、ここ数年でようやく14万円台に回復したことがわかる。2004年度は14.6万円であり、この額は1984年度とほぼ水準である。同様に、「一般補助」の学生一人当たり補助額を算出してみれば、1980年度には14.9万円だったものが、2004年度ではわずか9.8万円でしかなく、大きく減少しているのである。

 これだけをとってみても、「学生数が減少しているのに補助金が増え続けている」などとは到底いえないのであって、財政審の議論がいかに意図的で浅薄かつ狭隘なものかが明らかである。

 私立大学は日本の大学教育の約75%を担っており、日本の高等教育において非常に大きな役割を果たしている。安直な補助金削減は、私立大学のみならず高等教育全体の水準低下、ひいては国力低下につながりかねない愚策である。

 私たちは、財務省がこうした愚策をおこなわないよう、あらためて強く要望する。そして、私大助成が長期にわたり極めて低い水準に抑制されてきた事実、そもそも日本の高等教育予算がOECDの中で最低の水準にある現実こそを見直し、それらを増額・充実させることが国の責務であることを訴えるものである。

以上


投稿者 管理者 : 2004年12月13日 00:01

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