個別エントリー別

« 山口大授業料値上げ 新年度から | メイン | 湘南工科大解雇事件本訴裁判,横浜地裁で結審 判決は5月19日の予定 »

2005年01月21日

全大教、国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見

「意見広告の会」ニュース242より

国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見

2005年1月19日

各単組委員長 殿

全国大学高専教職員組合
書記長 森田 和哉

 全大教は1月18日に「国立大学の学生納付金据え置きを求める要望書」(別記参照)にもとづく会見をおこないました。
 出席者は、全大教から斉藤副委員長、森田書記長、藤田・森戸書記次長、文科省から国立大学法人支援課の池田企画官、真子課長補佐、尾藤課長補佐、尾川教育振興係長、田畑総括係長、佐藤庶務係長でした。以下、会見の内容を報告します。

文科省 提出された要望書にお答えします。財務省との折衝の結果、国立大学の学生納付金標準額について来年度から1万5,000円を引き上げ53万5,800円とする省令改正を年度内に実施する。学生納付金標準額の改訂を含めた平成17年度予算内示については昨年12月下旬に各大学に送付した。
文科省としては、国立大学の役割は従来と変わっていないという認識で学生納付金据え置きの予算要求をした。しかし、財務省は、これまでは2年に1度の学生納付金改定があったこと、私立大と同じ土俵でというイコールフッティング論、受益者負担の観点から学生納付金を引き上げるべきとの主張があり、協議の結果今回の学生納付金標準額の引き上げに至った。
全大教要望書に、国立大学法人法等成立時の附帯決議で「学生納付金については、……適正な金額、水準を維持する」との指摘があるが、今回の授業料の改定は「適正な金額、水準」の範囲内を確保していると考える。

全大教 授業料の引き上げには反対である。法人になっても従来と同じように引き上げられると、授業料と入学金引き上げの悪循環が始まるのは必至である。

文科省 引き上げなくてすめば良かったが、国の財政事情等が許さなかった。但し、学生納付金の引き上げを2年に1度行うことはルール化されているわけでない。入学金などは私立大では最近引き下げの傾向があり、国立大学も最近は改定していない。

全大教 勤労者の賃金ベースが上がっていない中で授業料を引き上げるのは問題である。受益者負担を主張しているが、文科省の中教審「我が国の高等教育の将来像(中間報告)」でも「高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体であ驕vとしている。

文科省 私どもが受益者負担論を言っているわけではない。なお、学生納付金改定分は各大学の自己収入の増収分となる。学生納付金を改定しない場合はその分について、運営費交付金の減額が予定されていたが、財務省等と交渉し、今回は減額をしないこととなった。学生納付金改訂は運営費交付金に影響しないようにさせた。

全大教 授業料の引き上げをしない大学でも運営費交付金は減額されないということか。

文科省 授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、営費交付金は変わらない。運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。

全大教 文科省として授業料に関わって各大学を指導するようなことはないと考えるがどうか。

文科省 指導するようなことはない。各大学で検討中のようである。

全大教 2005年度大学関係予算の主な特徴はどうか。

文科省 平成16年度と比べて平成17年度運営費交付金では、特別教育研究経費(45億円増)、教育研究経費等(46億円増)の一方で、効率化係数(97億円減)や経営改善係数(92億円減)により差し引きマイナス98億円となっている。事業費総額ニしては91億円の増となっており、全体でみると国立大学の水準を何とか確保できたと考えている。(別記予算資料を参照)

最後に、引き続き適時、会見を行うことを確認して終了した。

全大教文科省会見報告に見る文科省の欺瞞

『予算・授業料情報』No.14(2005年1月20日発行)

国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 全大教は森田書記長名による19日付の各単組委員長あての「国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見」の中で18日の会見内容を伝えている。そ
れによると、

【文科省】 授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、運営費交付金は変わらない。運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の
標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。
s
とある。ここに示された文科省の回答は欺瞞に満ちている。重要なセンテンスについて緊急に検討しておく。「  」が文科省回答、◎が本事務局コメント。

「授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、運営費交付金は変わらない。」

◎これは当然であり、文科省の「功績」での何でもない。なぜなら、運営費交付金は既に値上げを前提にその分縮減されているからである。国立大学法人全体については、本事務局配信の「文科省資料A」(http://www.shutoken-net.jp/041229_5b_jimukyoku.pdf)の「収入欄」(左のコラム)を参照して頂きたい。個別大学法人については、各大学宛の内示額(書式はhttp://www.shutoken-net.jp/050106_2naiji.pdf)のg項に「授業料標準額改定増収額」が減額要因として記入されている。例えば東京大学の場合、運営費交付金の算出式のg項には351,990千円が△減印付で計上されている。要するに、「値上げを見込んで運営費交付金を減らしているのに、値上げしないなら大学の収入は減りますよ」ということなのである。

「運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。」

◎これは奇怪な回答である。上記のように、そしてまた本事務局が『予算・授業料情報』No12の末尾で強調したように運営費交付金は授業料値上げ増額分を見込んで、既に減額されているのである。この上、さらに同額分を個別大学の運営費交付金から減額することなど、公表されている運営費交付金算出の仕組みからしてあり得ない。そのような主張を財務省が行っているのであれば、それは大問題であり、文科省はその詳細な事実を直ちに公表しなければならない。もし、財務省がそのような主張をしていないのであれば、文科省が大学に対して嘘をついているのである。

「この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。」

◎こんなことは「文科省の手柄」でも何でもない。むしろ、授業料値上げは、概算要求で提出した特殊要因経費が大幅に削減された分を補填するためではないかという本事務局の分析(『予算・授業料情報』No12)の正しさを問わず語りに示しているのである。

「学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。」

◎これは文科省の全くの嘘である。上記のように両者は完全に連動している。「これからの検討交渉課題となろう」と“脅迫”することによって、「今回、文科省も頑張ったのだ」と思わせようとする文科省の許し難い欺瞞的態度が現れている。

『予算・授業料情報』No.15、授業料値上げ推進側の言い分はここがおかしい(2005年1月20日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局)

投稿者 管理者 : 2005年01月21日 01:01

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/463

コメント