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2005年01月23日

首都圏ネットワーク、「通常国会開会に当たっての声明」

通常国会開会に当たっての声明(2005年1月21日)

通常国会開会に当たっての声明

授業料を据え置き、
付属病院経営の破たんを回避し、
国立大学施設整備を推進するために、
05年度国立大学予算の組み替え要求を提出することを国会各派に要請します

2005年1月21日
国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 国立大学法人法(以下単に、法人法)の施行に伴い、2004年4月1日に、すべての国立大学の設置者が、国から個々の国立大学法人に移行しました。法人化初年度に当たる2004年度予算は、従前の予算策定の仕組みをそのまま用いたものでした。従って、法人法のもとにおける新しい予算編成は、2005年度予算が初めてのことになります。

 私たちは、今後における政府の国立大学法人に対する財政責任の果たし方を左右するものとして、2005年度予算に注目し、分析してきました。その結果、2005年度予算にはいくつもの大きな問題点が存在することが判明しました。国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局「05年度国立大学関連予算案を全面的に批判する」(2005年1月18日)(http://www.shutoken-net.jp/050118_3jimukyoku.html)に詳しい分析があるので、ここでは次の3点だけを指摘しておきたいと思います。

 第1に、国立大学法人に対する政府の交付金の総額を逓減させる方法として、「効率化係数」(「運営費交付金」を毎年1%減額)、および、「経営改善係数」(「病院収入」を毎年2%増額させ、その分を「運営費交付金」から減額する)に加えて、「授業料値上げ」という新しい方法を組入れたことを、問題視せざるを得ません。05年度予算案は、退職手当等特殊要因経費に関する概算要求を95億円減額し、それを埋め合わせるために、文科省からの概算要求では据え置きが予定されていた国立大学学生納付金(以下、授業料)標準額を15,000円値上げし(総額81億円)、「授業料等収入」を86億円増額させているのです。

 第2に、付属病院経営が破綻せざるをえない予算となっていることです。一般に、医療比率(患者の診療に直接必要な医療費用請求額)は40%程度と言われています。05年度予算案にあるとおり病院収入を105億円増加させようとすれば、42億の経費増が必要となりますが、支出は対前年度でわずか19億円の増加しか予定されていません。しかも、収入である病院診療関係の運営費交付金は実に対前年度比で85億円減となっているのです。これでは、病院経営が破綻することは明らかです。

 第3に、05年度予算案では公共事業関係費は対前年度3.6%に留まっているのに対して、国立大学関係施設整備費補助金は23.3%減(124億円減)と激減していることです。一応、今年度補正予算において防災対策事業(老朽改善)用に施設整備費補助金が350億円用意され、次年度に繰越されることになっています。しかし、06年度以降の予算は05年度が基準となるため、新規はおろか老朽改善も不可能となると予想されます。

 私たちは、05年度予算案を否決し、かつ、次のような予算組み替え要求を提出されるよう、国会の各派に要請します。

第1.授業料の据え置きを実現し、かつ、付属病院経営の破綻を回避することを目的として、(1)支出に関連して、当然増の退職手当等を、文科省からの概算要求通り1,478億円(政府予算案比:95億増)とすること、ならびに、(2)収入に関連して、授業料等収入を概算要求通り据え置きとし、3,485億円(政府予算案比:82億減)とすること、病院収入を6,005億円(政府予算案比:56億円減)(病院経費19億円増が生み出す収入増を48億円として算出(経費/収入=40%として)とすること、および、支出増、病院収入減、授業料減を加算して運営費交付金を233億円増とすること。

第2.『国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成13~17年度)』を来年度中に達成し、次期(平成18~22年度)へと接続させることを目的として、今年度補正予算分350億円を前倒しせず、来年度政府案409億円に加えた759億円を来年度の施設整備費とすること。

 なお、05年度予算案が「授業料値上げ」を第3の逓減方式として組入れていることについては、国大協を含む国立大学関係団体・者から特に強い批判が寄せられていること(注1)、そして、その批判には幾重にも根拠があることを申し添えておきます。授業料値上げは、法人法案議決にあたって衆参の文部(教)科学委員会が採択した付帯決議は言うまでもなく、法人法案の国会審議における文科大臣および、副大臣の答弁とも矛盾するものです(注2)。そして、授業料を、高等教育予算の項目として実質的に組入れることは、高等教育の機会均等を、無償制の漸進的導入により実現すべきであるとする、国際的に確認された条理にも反します。高等教育への無償制の漸進的導入を義務付けた国際人権規約A規約13条2項(C)を日本は留保しています。しかし、この留保を撤回すべきとの勧告が、関連する条約実施監視機関(社会権規約委員会、第2回日本政府報告書に対する最終所見(2001)から示されているように、この留保が非常識であることは国際的に確認されています。05年度予算案が、無償制の導入により授業料を名目化すべきことを求めている国際条理に反することは明白です。
《注1》12月8日に国立大学協会が意見書「国立大学関連予算の充実について」を提出。中四国10大学長の声明、北東北3大学長の声明、東京11大学長が声明を公表。尾池京都大学総長は「今回の改訂は決して容認できることではない」(新年名刺交換会挨拶)と強く授業料値上げを批判、「今年最悪の知らせ」と発言。平山岩手大学長は、「これは大学の問題であるとともに、地域の将来につながる問題。経済格差が高等教育の機会均等を奪いかねず、危機感を覚えている」「一度引き上げが容認されれば今後も引き上げが起こるかもしれない。そうなると地方と都会の差がますます大きくなることを懸念している」(『盛岡タイムス』2004年12月21日))と発言。長谷川佐賀大学長は、授業料値上げを通じた運営費交付金の削減は、競争的資金へのシフトをもたらし、「大学の死活に関わる基盤的教育研究経費の維持は不安定とならざるを得なく、全体として基盤的経費の減額が予想されます」と発言。
《注2》当時の遠山文部科学大臣は「学生にとって今回の法人化によって授業料が高くなってしまったり利用しにくくなったりということは,これは絶対避けなくてはいけないと思っています。」と語り、また,当時の河村副大臣も、「授業料等については、これからこういう時代であります。ましてや、デフレ経済のさなかにあるわけでありますから、むしろ抑制ぎみに考えていかなきゃなりません。」と述べています。


投稿者 管理者 : 2005年01月23日 01:13

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